説明

路面凍結予測装置

【課題】路面の凍結の可能性及び範囲を精度よく予測することが可能な路面凍結予測装置を提供する。
【解決手段】本発明の一実施形態に係る路面凍結予測装置1は、車両の走行経路における路面状況を予め検出する検出手段2と、路面状況の検出結果に基づいて、走行経路における凍結候補地点に関する情報を予め取得する取得手段10と、走行経路の走行時に、凍結候補地点に関する情報と外気温度とに基づいて、凍結候補地点の凍結を予測する予測手段12とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、路面凍結予測装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に路面凍結予測装置が開示されている。この路面凍結予測装置は、凍結基本因子としての外気温度に加えて、路面の凍結を助長させる凍結助長因子に基づいて、現在位置周辺の路面の凍結を予測する。特許文献1には、凍結助長因子として、湿度を上昇させ易い地形、風が発生し易い地形、日陰が発生し易い地形が挙げられている。
【特許文献1】特開2001−165677号広報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載の路面凍結予測装置では、上記したように、特定の傾向を有する地形に基づいて路面凍結の予測を行っているため、予測の精度が低い。また、凍結の範囲を限定し難いため、予測の範囲を広げざるを得ない。その結果、この予測に基づいて運転支援が行われると、ドライバは不必要な状況でも凍結の可能性を注意喚起されてしまうこととなる。
【0004】
そこで、本発明は、路面の凍結の可能性及び範囲を精度よく予測することが可能な路面凍結予測装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の路面凍結予測装置は、車両の走行経路における路面状況を予め検出する検出手段と、路面状況の検出結果に基づいて、走行経路における凍結候補地点に関する情報を予め取得する取得手段と、走行経路の走行時に、凍結候補地点に関する情報と外気温度とに基づいて、凍結候補地点の凍結を予測する予測手段と、を備える。
【0006】
この路面凍結予測装置によれば、予め検出された走行経路における実際の路面状況を利用して、この走行経路における凍結候補地点の凍結を予測することができるので、路面の凍結の可能性及び範囲を精度よく予測することができる。
【0007】
上記した検出手段は、路面状況として水分分布を検出し、上記した取得手段は、水分分布が存在する地点を凍結候補地点とすることが好ましい。これによれば、水溜り等に起因する局所的な路面の凍結を予測することができ、路面の凍結の可能性及び範囲をより精度よく予測することができる。
【0008】
上記した凍結候補地点に関する情報は、凍結候補地点の位置情報であることが好ましい。これによれば、局所的な路面の凍結を予測することができ、路面の凍結の範囲をより精度よく予測することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、路面の凍結の可能性及び範囲を精度よく予測することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。
【0011】
図1は、本発明の実施形態に係る路面凍結予測装置の電気的な構成を示す図である。図1に示す路面凍結予測装置1は、自律センサ2と、報知部3と、地図DB4と、ECU(Electronic Control Unit)5とを備える。なお、本実施形態では、自律センサ2が特許請求の範囲に記載の検出手段に相当する。
【0012】
自律センサ2は、車両走行中に走行経路における路面状況を逐次検出する。例えば、自律センサ2は、路面状況として、水分分布の存在、すなわち水溜り等の存在を検知する。自律センサ2は、この路面状況の検出結果をECU5へ送信する。また、自律センサ2は、車両の外気温度を逐次検出し、ECU5へ送信する。
【0013】
報知部3は、ECU5からの報知指令に応じて、ドライバへ報知を行う。報知の手法としては、文字を用いた報知、画像を用いた報知、警報音や音声を用いた報知等、様々な手法が適用可能である。この場合、報知部3として、モニタやスピーカ等が用いられる。
【0014】
地図DB4は、地図を記憶するデータベースであり、例えば、ナビゲーションシステムにおける地図データベースである。この場合、地図DB4は、ECU5からの指令に応じて、車両の位置情報をECU5へ送信する。
【0015】
ECU5は、演算を行うCPU(Central Processing Unit)、CPUに各処理を実行させるためのプログラム等を記憶するROM(Read Only Memory)、演算結果などの各種データを記憶するRAM(Random Access Memory)などから構成されている。このような構成により、ECU5には、情報取得部10と、凍結予測部12と、報知制御部14とが構築される。なお、本実施形態では、情報取得部10が特許請求の範囲に記載の取得手段に相当し、凍結予測部12が特許請求の範囲に記載の予測手段に相当する。
【0016】
情報取得部10は、自律センサ2から受ける路面状況の検出結果に基づいて、走行経路における凍結候補地点に関する情報を取得する。すなわち、情報取得部10は、自律センサ2によって水溜り等の存在が検出されたときに、これらの水溜り等が存在する地点に関する情報を取得する。
【0017】
凍結候補地点に関する情報としては、例えば、凍結候補地点の位置情報である。凍結候補地点の位置情報としては、ナビゲーションシステムのGPS機能によって検出時の車両の位置、例えば緯度・経度を取得することによって取得可能である。情報取得部10は、これらの凍結候補地点に関する情報を地図DB4における地図データ上にマッピングすることによって記録する。
【0018】
凍結予測部12は、地図DB4における地図データ上に記録された凍結候補地点に関する情報と、自律センサ2からの外気温度とに基づいて、凍結候補地点の凍結の可能性及び範囲の予測を行う。
【0019】
報知制御部14は、凍結の可能性がある場合には、地図DB4における地図データに基づいて、車両が凍結候補地点の付近に差し掛かるときに、報知部3へ報知指令を送信し、凍結候補地点の手前で事前にドライバに対して報知を行わせる。
【0020】
次に、路面凍結予測装置1の動作を説明する。図2は、本実施形態の路面凍結予測装置による路面状況検出処理を示すフローチャートであり、図3は、本実施形態の路面凍結予測装置による路面凍結予測処理を示すフローチャートである。
【0021】
以下では、毎日のように通行する通勤経路において、前日に実際の路面状況を予め検知し、翌日にこの実際の路面状況に基づいて凍結の可能性及び範囲を予測して、事前にドライバに報知を行う場合について説明する。
(路面状況検出処理)
【0022】
例えば、雨天の第N日の帰宅時、自律センサ2によって路面に水溜りが検出されると(S01)、その検出結果がECU5へ送信される。ECU5の情報取得部10では、この検出結果に基づいて、水溜りが存在する地点を凍結候補地点とし、この凍結候補地点に関する情報として凍結候補地点の位置情報が取得される。この凍結候補地点の位置情報は、地図DB4における地図データ上にマッピングされることによって記録される。
【0023】
このようにして、自律センサ2及び情報取得部10によって、路面状況が予め検出され、凍結候補地点に関する情報が予め取得・記録される(S02)。
(路面凍結予測処理)
【0024】
次に、第N+1日の出勤時、ドライバによって車両のエンジンが始動されると、自律センサ2によって予測時の外気温度の取得が行われ、凍結予測部12によって予測時の外気温度に基づいて凍結の可能性の予測が行われる。例えば、予測時の外気温度が氷点下以下である場合に、路面凍結の可能性があると予測される(S11)。路面凍結の可能性がある場合には、報知制御部14によって事前報知指令が行われ、報知部3によってドライバに報知、注意喚起が行われる(S12)。
【0025】
その後、ドライバがカーナビゲーションシステムに目的地の設定を行わずに運転を開始し(S13)、車両が凍結候補地点である水溜り地点の付近に差し掛かったことが地図DB4における地図データから検知されると、報知制御部14によって路面凍結の可能性の報知指令が行われ、報知部3によって凍結候補地点の手前で事前にドライバに報知、注意喚起が行われる(S14)。
【0026】
一方、ドライバが運転を開始する前にナビゲーションシステムに目的地の設定を行う場合(S13)、現在地から目的地までのルートが凍結候補地点を含むか否かの判別が行われる(S15)。ルートが凍結候補地点を含む場合には、凍結候補地点を回避する回避ルートを構築し、ドライバに提供する(S16)。そして、ドライバがこの回避ルートを選択しない場合には、上記したステップS14の報知処理が行われる(S17)。
【0027】
このように、本実施形態の路面凍結予測装置1によれば、例えば、通勤経路における実際の路面状況に応じて凍結候補地点を前日の帰宅時に検出し、この実際の路面状況に基づいて、翌日の出勤時の通勤経路における凍結候補地点の凍結を予測することができるので、路面の凍結の可能性及び範囲を精度よく予測することができる。すなわち、予め検出された走行経路における実際の路面状況を利用して、この走行経路における凍結候補地点の凍結を予測することができるので、路面の凍結の可能性及び範囲を精度よく予測することができる。また、水溜り等に起因する局所的な路面の凍結を予測することができ、路面の凍結の可能性及び範囲をより精度よく予測することができる。
【0028】
また、本実施形態の路面凍結予測装置1によれば、この高精度な予測に基づいて運転支援を行うことによって、ドライバに対する不必要な注意喚起を低減することができる。
【0029】
ここで、凍結し易い場所付近に路面状態を検知するインフラ設備を設置し、付近を通行する車両に情報提供することによって、ドライバに路面の凍結の可能性を知らせるサービスが考案されているが、この種のシステムでは、費用対効果の観点から、必ずしも全ての路面凍結の可能性がある場所にインフラセンサが設置されるとは限らない。しかしながら、本実施形態の路面凍結予測装置1によれば、インフラセンサが設置されていない場合であっても、ドライバに事前に路面凍結の可能性を報知することができる。
【0030】
なお、本発明は上記した本実施形態に限定されることなく種々の変形が可能である。例えば、本実施形態の路面凍結予測装置1は、路面凍結の可能性及び範囲を予測するために、予め検出した実際の走行経路上の水分分布の存在に基づいたが、予め検出した実際の走行経路上の水分分布の発生を促す存在に基づいてもよい。
【0031】
この場合、自律センサ2は、路面状況として、水分分布の発生、すなわち水溜りの発生を促す陥没等の存在を検知する。また、自律センサ2は、例えばG−Book等のサービスから気象情報を参照し、所定時間範囲の天候や気温まで検出する。そして、ECU5の情報取得部10は、検出時に凍結候補地点に関する情報として検出日時や外気温度等をも取得し、予測時に予測日時や、この予測日時を含む所定時間範囲の天候及び外気温度をも取得する。これによって、凍結予測部12は、検出日時から予測日時までの間に雨等が降った場合に、陥没に水溜りが発生する可能性、すなわち、陥没地点において凍結の可能性があると予測してもよい。
【0032】
また、凍結予測部12は、予測時の外気温度が氷点下以下に達していない場合でも、外気温度が氷点下を上回った日時から予測日時までの時間が短い場合に、凍結候補地点において凍結の可能性があると予測してもよい。
【0033】
また、報知制御部14及び報知部3は、危険度レベルに応じて報知の手法を変更してもよい。例えば、報知制御部14及び報知部3は、通常の報知では電子音声によるメッセージを用い、凍結候補地点の付近にカーブが存在する場合の報知では、警報音を用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施形態に係る路面凍結予測装置の電気的な構成を示す図である。
【図2】図1に示す路面凍結予測装置による路面状況検出処理を示すフローチャートである。
【図3】図2に示す路面凍結予測装置による路面凍結予測処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0035】
1…路面凍結予測装置、2…自律センサ(検出手段)、3…報知部、4…地図DB、10…情報取得部(取得手段)、12…凍結予測部(予測手段)、14…報知制御部。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の走行経路における路面状況を予め検出する検出手段と、
前記路面状況の検出結果に基づいて、前記走行経路における凍結候補地点に関する情報を予め取得する取得手段と、
前記走行経路の走行時に、前記凍結候補地点に関する情報と外気温度とに基づいて、前記凍結候補地点の凍結を予測する予測手段と、
を備える路面凍結予測装置。
【請求項2】
前記検出手段は、前記路面状況として水分分布を検出し、
前記取得手段は、前記水分分布が存在する地点を前記凍結候補地点とする、
請求項1に記載の路面凍結予測装置。
【請求項3】
前記凍結候補地点に関する情報は、前記凍結候補地点の位置情報である、
請求項1に記載の路面凍結予測装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2010−151543(P2010−151543A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−328438(P2008−328438)
【出願日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】