説明

路面性状測定装置

【課題】一台でキメ深さやIRIを測定できる多機能の路面性状測定装置であって安価かつ高精度なものを車載可能とすべく、移動距離計の測定値からタイヤ変形等の悪影響が取り除かれるようにする
【解決手段】車両に移動距離計15と高さ計16と高さ計51と演算部20とを搭載する。高さ計16,51には、排水用凹部の開口幅より短い第一基準長Nに対応した狭い範囲を測定するものを、採用する。演算部20は、移動距離測定値ΔSと高さ測定値K,Jとに基づき踏面算出を行って第二基準長M対応のIRIを算出し、移動距離測定値ΔSと高さ測定値Kとに基づき踏面算出を行わないで第一基準長N対応のキメ深さ等を算出し、更に基準長Mだけ離れた高さ計16,51での路面形状について相関を算出して選択的に移動距離測定値ΔSを校正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車等の車両に搭載される路面性状測定装置に関し、詳しくは、車両を移動させながら移動経路に沿って路面の形状を測定する路面性状測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
道路や滑走路などの路面について凹凸状態による路面性状を表す指標として、高周波重視の第一路面性状値「キメ深さ」や「テクスチャ深さSMTD(Sensor Measured Texture Depth)」、あるいは中間周波重視の第二路面性状値「国際ラフネス指数(IRI)」、さらには低周波重視の第三路面性状値「3mσ」(σ3mとも称される)や「8mプロフィルメータによる路面凹凸測定方法」(JHS220)(PrI,TCR)などが用いられている。
本発明の説明に役立つ部分を掻い摘んで説明すると、キメ深さやテクスチャ深さ(SMTD等)は、数cmや数mmさらにはそれより細かなピッチを第一基準長とした測定と演算とによって得られる。
【0003】
また、国際ラフネス指数(IRI)は、25cmや数十cmを第二基準長としてそのピッチで測定を行い更に所定の演算を行って得られる(例えば非特許文献1,非特許文献2参照)。
さらに、3mσは、日本道路公団規格JHS223に規定されている「3mプロフィルメータによる路面凹凸測定方法」に則って、3m(三メートル)を第三基準長とした測定と演算とによって得られる。PrI,TCRは、8mを第三基準長として同様に得られる(例えば非特許文献3参照)。
何れの測定も3mプロフィルメータ等の路面性状測定装置を用いて行われ、その装置には、路面上を移動する移動手段と、その移動距離を測定する移動距離計と、路面までの高さを測定する高さ計と、所望の路面性状値(第一,第二,第三路面性状値)を算出する演算部とが具わっている。
【0004】
移動手段には、台車を手押しや人手で牽引する手動式と、台車を自動車等で牽引する車両牽引式と、自動車等の自走車両に全てを搭載する車載式(例えば特許文献1,特許文献2参照)とが挙げられるが、後述するように先願発明は多機能の装置を安価に提供するために移動手段として手動の台車を採用することを前提とするので、手動の台車をベースにした路面性状測定装置70について、図面を参照して説明する。図18は、(a)が路面性状測定装置70の外観斜視図、(b)がその簡略側面図、(c)がそれを用いた測定状況の模式図である。
【0005】
路面性状測定装置70は(図18(a)参照)、手動牽引式の台車をベースにした3mプロフィルメータであり、その台車には、3mの第三基準長Lに対応した長さを持つ棒状の枠部11と、その両端それぞれに一組ずつ装備された基準車輪73と、掴んで引っ張るための牽引部74とが具わっている。枠部11は、大抵、ステンレス等からなる丈夫なビーム状・梁状のフレームであり、使用時に第三基準長Lに対応した長さになれば、折り畳み可能であっても伸縮可能であっても長さ固定であっても良い。基準車輪73は、適宜な距離を保って軸支された四個が一組で、何れも、硬質ゴム等からなり、枠部11の移動に応じて路面上を転動するようになっている。牽引部74は、手を掛けやすいよう基準車輪73支持部材か又は枠部11から斜め上に伸びたアームやハンドルからなり、大抵、タッチパネル等の付いた操作部75が取り付けられている。
【0006】
また(図18(a),(b)参照)、基準車輪73の何れかに対して、枠部11の移動距離を測定するため例えばロータリエンコーダからなる移動距離計15が設けられており、枠部11の中央には、収納ボックスや機器箱からなる測定部12が付設されている。測定部12には、路面80までの高さを測定する高さ計76と図示しない演算部とが納められている。演算部は、バッテリ駆動の電子回路等からなり、移動距離計15及び操作部75と適宜なケーブルにて信号送受可能に接続されていれば、測定部12内のどこに在っても良い。高さ計76は、路面80に向けた適宜な変位計や距離計からなり、測定部12内で枠部11の中央位置に設置される。より具体的には、一組の基準車輪73四個の中央位置と別の組の基準車輪73四個の中央位置とが第三基準長Lになっていて、その丁度真ん中のところに(即ち基準車輪73の各組から第三基準長Lの半分「L/2」ずつ寄ったところに)、鉛直下方向きで、高さ計76が設けられている(図18(b)参照)。
【0007】
そして(図18(c)参照)、牽引部74を手で引いて路面性状測定装置70を移動させながら、操作部75を操作して測定を開始させると、移動距離計15によって路面80上の移動距離が測定されるとともに、高さ計76によって高さ計76から路面80までの高さが測定され、路面性状測定装置70が1.5m移動する度に、演算部によって高さ測定値に基づく所定演算が遂行されて、3mの第三基準長Lに対応した第三路面性状値「3mσ」が算出される。
【0008】
これに対し(図18(d)参照)、第三基準長Lより桁違いに短い第一基準長や第二基準長に対応したテクスチャ深さSMTD(第一路面性状値)や国際ラフネス指数IRI(第二路面性状値)を測定する路面性状測定装置79には、同じ手動式であっても、ずっと短い台車が用いられている。なお、車載式のものは、高速で移動・走行しながら測定できるようになった代わりに、高価な車両が必要であり、そのうえ、国際ラフネス指数IRIに適した逐次2点法での測定では一対の変位計の姿勢を制御する姿勢制御機構を導入したり(例えば特許文献1参照)、長い第三基準長Lに対応した3mσの測定では車両等コンパクト化のため高さ計を増やしたり演算内容を変えている(例えば特許文献2参照)。
【0009】
また、図18(e)は路面80の表層部の縦断面の拡大図であるが、この路面80は、浸透水性のアスファルトやコンクリートからなる舗装材81で舗装されたものである。浸透水性の舗装材81は最近多用されているが、これには排水のため意識的に微細な凹凸が付けられている。凹部82は、例えば粒材と粒材との間に残された数mm程度の排水用小溝・排水用小孔・排水用空隙であり、凸部は、そのような粒材のうち最上位のもので構成され、その上面は、舗装時に平らに均されて、自動車等の走行時に車輪が接触転動する踏面83となっている。そのような微細凹凸を把握するには、凹部82の開口幅より短い例えば1mmを第一基準長Nとして、そのピッチNでのキメ深さ測定や、テクスチャ深さSMTD測定が行われる。
【0010】
【特許文献1】 特開平6−94445号公報
【特許文献2】 特開平7−318342号公報
【非特許文献1】小関祐二・鈴木康豊・関口英輔著「国際ラフネス指数(IRI)について」、社団法人日本アスファルト協会「アスファルト 第44巻 第210号」平成14年1月発行、p.55−65
【非特許文献2】「平成8年制定 コンクリート標準示方書[舗装編]」社団法人土木学会発行、p.163−168
【非特許文献3】峰岸順一著「平坦性」、社団法人日本アスファルト協会「アスファルト 第44巻 第208号」平成13年7月発行、p.38−47
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
[未公開の先願] 特願2004−68114号
本願の発明は手動限定の先願発明を改造して車載も可能なようにしようとするものなので、本願発明の解決課題の提起に先立って、ここに先願発明の内容を再掲する。
先願の発明は、手動の台車をベースにした路面性状測定装置に関し、詳しくは、台車を手押しや人手で牽引して移動させながら移動経路に沿って路面の形状を測定する路面性状測定装置に関する。
【0012】
{先願発明に係る解決課題}
現在のところ、道路舗装後に最も多く行われている路面性状測定は、国内規格に則った第三基準長L=3m対応の第三路面性状値「3mσ」の測定であるが、上述のような浸透水性舗装の増加により、第一基準長N対応の第一路面性状値「キメ深さ」や「テクスチャ深さSMTD」を測定するニーズが高まっており、さらに、国際化の流れに押されて、第二基準長M対応の第二路面性状値「国際ラフネス指数IRI」を測定するニーズも高まりつつある。そして、それらの路面性状ごとに別個の路面性状測定装置を揃えるのは費用が嵩むうえ、装置を替えて同じところを何度も測定しなおすのは面倒で工数もかかるので、一台で3mσもSMTD等も測定できるようにするのが望ましい。
【0013】
しかしながら、3mσの測定には、図18(c)のような長い手動の台車か大型車両が使われ、キメ深さやテクスチャ深さSMTDあるいは国際ラフネス指数IRIの測定には、図18(d)のような短い手動の台車か普通サイズの車両が使われるので、3mσ等の第三路面性状値の測定と、その他の第一路面性状値や第二路面性状値の測定は、別個の路面性状測定装置で別々に行われていた。また、上掲した特許文献1や特許文献2による技術的工夫も、自動車利用の車載式を前提として各路面性状の特性に基づく測定や演算の手法を特化させたものであり、一台で3mσもSMTD等も測定するようにはなっていない。
【0014】
しかも、自動車はそれ自体が高価なのに揺動・傾動しやすいためその影響を抑制するのに姿勢制御機構を追加すると更に原価が上がってしまうという不都合がある。コストダウンのため自動車をコンパクトにしても、揺動・傾動が激しくなることから、姿勢制御機構を付けなければ高さ計の増設や演算手法等の工夫で補償・補正しなければならないので、コストは高止まりするうえ、補償・補正しきれないと測定精度を損ねかねない。このような不都合すなわち揺動・傾動の影響が大きいという不都合は、手動であっても短い台車を用いる従来の第一路面性状値測定にも、付きまとっている。
【0015】
そこで、一台で3mσ等の第三路面性状値ばかりかSMTD等の第一路面性状値やIRI等の第二路面性状値なども測定できる多機能の路面性状測定装置を提供するとともに、そのような路面性状測定装置を安価であっても高精度なものにするよう、台車の選定に加えて、機能の組み合わせ方や、高さ計などの測定器具の設置、演算の仕方などに、工夫を凝らすことが技術的な課題となる。
【0016】
{先願発明に係る解決手段および作用効果}
先願発明1の路面性状測定装置は、このような課題を解決するために創案されたものであり、三メートル又はそれ以上の第三基準長に対応した長さを持つ枠部を有しその両端それぞれに基準車輪が装備されている手動の台車と、その移動距離を測定する移動距離計と、前記枠部の中央に付設され路面までの高さを測定する高さ計(第一高さ計)と、前記移動距離計の移動距離測定値と前記高さ計の高さ測定値(基準位置高さ測定値)とに基づいて前記第三基準長対応の第三路面性状値を算出する演算部とを備えた路面性状測定装置において、前記高さ計(第一高さ計)が、路面の排水用凹部の開口幅より短い第一基準長に対応した範囲またはそれより狭い範囲を測定するものであり、前記演算部が、前記移動距離測定値と前記高さ測定値(基準位置高さ測定値)とに基づいて前記第一基準長対応の第一路面性状値を算出するとともに、前記第三路面性状値の算出に際しては踏面の算出を行い、前記第一路面性状値の算出に際しては踏面の算出を行わないようになっている、というものである。
【0017】
このような路面性状測定装置にあっては、手動牽引式3mプロフィールメータのように比較的安価で而も長くて揺動・傾動の少ない路面性状測定装置をベースにして、もとより具わっている第三基準長対応の第三路面性状値の算出機能に加え、第一基準長対応の第一路面性状値の算出も行うようにしたことにより、多機能なものとなって、国内規格に則り現状では欠かせない低周波重視の第三路面性状値も、浸透水性舗装では是非知りたい高周波重視の第一路面性状値も、一度の作業で同時に得ることができる。しかも、揺動・傾動が少ないので、高価な姿勢制御機構などは、要らない。
また、多機能化に際して、高さ計の特性を第一基準長に適合させるとともに、第一路面性状値算出のときは踏面の算出を行わないで、排水用凹部の中の微細形状まで路面性状値に反映させるようにし、その一方、第三路面性状値算出のときは排水用凹部を恰も埋めたのと等価になる踏面の算出を行うようにしたことにより、低周波重視と高周波重視という異質の測定に高さ計が不都合なく共用されて、部材費のコストアップが回避される。
したがって、この発明によれば、第三路面性状値ばかりか第一路面性状値も同時測定可能な多機能の路面性状測定装置であって高精度なものを安価に提供することができる。
【0018】
また、先願発明2の路面性状測定装置は、上記先願発明1の路面性状測定装置であって、上下方向の加速度を検出する加速度計が、前記高さ計の上方または極近傍に設けられ、前記演算部が、前記加速度計の加速度検出値に基づいて上下変位を算出するとともに、その上下変位算出値を前記高さ測定値(基準位置高さ測定値)に加算または減算して前記第一路面性状値に関する補正を行うようになっている、というものである。
このような路面性状測定装置にあっては、加速度計を導入して高さ計の上下動を検知するとともに、演算によって第一路面性状値に関する補正を行うようにしたことにより、上下動の影響を受けやすい第一路面性状値について精度の向上が期待できる。しかも、揺動・傾動の少ない路面性状測定装置をベースにしているため、上下変位算出値を高さ測定値に加算する又は減算するといった簡便な手法でも精度の良い補正がなされる。これにより、精度向上をほんの僅かな部材追加で実現することができる。
【0019】
さらに、先願発明3の路面性状測定装置は、上記先願発明2の路面性状測定装置であって、前記枠部の傾きを検出する傾斜計が設けられ、前記演算部が、前記第一路面性状値の算出に際し前記傾斜計の傾き検出値に基づいて前記高さ測定値(基準位置高さ測定値)から鉛直方向射影成分と水平方向射影成分とを算出し前記鉛直方向射影成分にて前記高さ測定値(基準位置高さ測定値)を補正するとともに前記水平方向射影成分を加算または減算して前記移動距離測定値を補正するようになっている、というものである。
このような路面性状測定装置にあっては、傾斜計を導入して高さ計の傾きを検知するとともに、演算によって第一路面性状値に関する補正を行うようにしたことにより、上下動ばかりか傾きの影響も受けやすい第一路面性状値について更なる精度の向上が期待できる。しかも、揺動・傾動の少ない路面性状測定装置をベースにしているため、高さ測定値の射影成分で置換・加算・減算するといった簡便な手法でも精度の良い補正がなされる。これにより、更なる精度向上を僅かな部材追加で実現することができる。
【0020】
また、先願発明4の路面性状測定装置は、上記先願発明3の路面性状測定装置であって、前記第三基準長と前記第一基準長との中間の第二基準長だけ前記高さ計(第一高さ計)から離隔したところに路面までの高さを測定する他の高さ計(第二高さ計)が設けられ、前記演算部が、前記移動距離測定値と前記高さ測定値(基準位置高さ測定値)と前記傾き検出値と前記の他の高さ計の離隔位置高さ測定値とに基づいて前記第二基準長対応の第二路面性状値を算出するものであってその際に前記離隔位置高さ測定値に関して踏面の算出を行い前記高さ測定値(基準位置高さ測定値)に関しては前記第三路面性状値の算出に係る踏面の算出結果を用いるようになっている、というものである。
このような路面性状測定装置にあっては、逐次2点法での測定に最小限必要な第二高さ計を導入するとともに、演算によって国際ラフネス指数IRIといった第二基準長対応の第二路面性状値を算出するようにしたことにより、更なる多機能化が僅かな部材追加で実現する。また、第二高さ測定値に関して踏面の算出を行うようにもしたことにより、第二高さ計に第一高さ計と同一仕様のものを使えるようになるので、仕様共通化によるコストの低減や在庫軽減まで図れる。しかも、そのようにしても、高さ測定値(基準位置高さ測定値)の利用時には第三路面性状値の算出に係る踏面の算出結果を用いるようにしたことにより、演算負担まで最小限の増加に抑えられる。
【0021】
また、先願発明5の路面性状測定装置は、上記先願発明4の路面性状測定装置であって、前記演算部が、前記第二路面性状値の算出に際し前記傾き検出値の差分と前記高さ測定値(基準位置高さ測定値)とに基づき前記移動距離測定値を補正して前記高さ計(第一高さ計)の路面上測定位置が前記第二基準長だけ移動したか否かを判定するようになっている、というものである。
また、先願発明6の路面性状測定装置は、上記先願発明5の路面性状測定装置であって、前記演算部が、前記路面上測定位置の前記第二基準長の移動ごとに路面の高低差を算出するものであって、その算出に際し、前記傾き検出値と前記高さ測定値(基準位置高さ測定値)と前記離隔位置高さ測定値も前記路面上測定位置の前記第二基準長の移動ごとの値を用いるようになっている、というものである。
このような路面性状測定装置にあっては、第一路面性状値の精度向上に寄与した傾斜計の傾き検出値を再利用することにより、第二路面性状値についても、揺動・傾動の少ない路面性状測定装置をベースにしていることの利点を活用して、簡便な手法の判定や演算で殆どコストを掛けることなく高精度な結果を得ることができる。
【0022】
{先願発明を実施するための具体的な形態}
このような先願発明の路面性状測定装置について、これを実施するための具体的な形態を、以下の具体例1〜3により説明する。
図12〜図13に示した具体例1は、上述した先願発明1〜2を具現化したものであり、図14〜図15に示した具体例2は、上述した先願発明3を具現化したものであり、図16〜図17に示した具体例3は、上述した先願発明4〜6を具現化したものである。
なお、それらの図示に際し従来(図18参照)と同様の構成要素には同一の符号を付して示したので、重複する再度の説明は割愛し、以下、従来との相違点を中心に説明する。
【0023】
{先願発明の具体例1}
先願発明の路面性状測定装置の具体例1について、その具体的な構成を、図面を引用して説明する。図12は、路面性状測定装置10の構造を示し、(a)が簡略側面図、(b)が演算部のブロック図である。
【0024】
この路面性状測定装置10は手動牽引式3mプロフィルメータ兼キメ深さ測定器なので、その機械部分には、既述した路面性状測定装置70の機構がそのまま引き継がれている。すなわち(図18(a)及び図12(a)参照)、3mの第三基準長Lに対応した長さを持つ枠部11を有する台車がベースであり、それに、演算部20等を納めた測定部12と、台車の移動距離を測定する移動距離計15とが、付設されている。この移動距離計15が、ロータリエンコーダを用いたものであり、一定距離進む度にパルスpを出力するようになっているのも、同様である。基準車輪73の四つ組が枠部11の両端それぞれに装備されていることや、手動牽引用の牽引部74に操作部75が取着されていることも、同様である。
【0025】
路面80までの高さを測定する高さ計(第一高さ計)が枠部11の中央(両端からL/2のところ)に付設されていることも同様であるが、その高さ計は、従来の高さ計76ではなく、数mmの凹部82開口幅や1mmの第一基準長Nよりも狭い範囲を測定する非接触式の高さ計16になっている。そのような高さ計16としては、ビーム径を細く絞り込めるレーザ距離計・レーザ変位計などが好適である。この高さ計16は高さ測定値K(基準位置高さ測定値)を数kHzで繰り返し出力するようになっている。
また、測定部12内で高さ計16の上方に当たるところに、上下方向の加速度を検出して加速度検出値βを出力する加速度計13が設置されている。このような加速度計13には、サーボ加速度計(一軸のみ)などが好適である。
【0026】
演算部20は(図12(b)参照)、大抵マイクロプロセッサやデジタルシグナルプロセッサで具現化され、これには、プログラムメモリやデータメモリが内蔵または外付けされる他、例えば正確な計時のために水晶発振子を組み込んだタイマー回路などからなり時刻tを出力する時計14が付設されるとともに、図示は割愛したが、電池や,電源回路,A/D変換器,操作部75とのインターフェイス等も付設されている。これらも演算部20と一緒に測定部12に収納されている。
【0027】
演算部20は、加速度計13の加速度検出値βと時計14の時刻tと移動距離計15のパルスpと高さ計16の高さ測定値K(基準位置高さ測定値)とを入力し、これらを用いて所定の演算等を行って、3mσ(第三基準長L対応の第三路面性状値)とピッチNのキメ深さ(第一基準長N対応の第一路面性状値)とを算出するものであり、そのために、上下変位算出部21,凹凸二次元形状演算部22,テクスチャ演算部23,積算部24,踏面算出部25,3mσ算出部26といったプログラムがインストールされている。また、そのデータメモリには、凹凸データ22a,テクスチャデータ23a,踏面データ25a,3mσデータ26aの領域がそれぞれ割り付けられている。
【0028】
詳述すると、上下変位算出部21は、高さ測定値Kの入力タイミングに同期して起動され、その度に、加速度検出値βと時刻tとを入力して上下変位算出値Dを算出するものである。具体的には、そのときの加速度検出値βと前回起動時からの経過時間Δtとの積を足し込む(ΣβΔt)ことで上下方向速度Vを算出し、この上下方向速度Vと経過時間Δtとの積を足し込む(ΣVΔt)ことで上下方向変位の倍数Wを算出し、これを半分にする(W/2)ことで上下変位算出値Dを算出するようになっている。
【0029】
積算部24は、パルスpの入力がある度に単位距離を積み重ねて移動距離測定値ΔSを算出するものであるが、その積算演算に際して、高さ測定値Kの入力タイミングに同期して移動距離測定値ΔSを凹凸二次元形状演算部22及び踏面算出部25に送出するとともに、その送出後は積算値をゼロクリアするようになっている。そのため、移動距離測定値ΔSは、高さ測定値Kの各入力の時間間隔に即ち高さ計16による測定の間に高さ計16の前進した距離を示すものとなる。
【0030】
凹凸二次元形状演算部22は、高さ測定値Kの入力タイミングに同期して起動され、その度に、補正のため高さ測定値Kに上下変位算出値Dを加算して高さ測定値(K+D)を算出し、さらに移動距離測定値ΔSと高さ測定値(K+D)とを組データ(ΔS:K+D)にし、これを凹凸データ22aに貯め込んで蓄積するようになっている。このような凹凸データ22aは、移動距離測定値ΔSが台車の移動速度に応じて増減する性質のものなので、路面80の凹凸二次元形状を可変ピッチで表すものとなっている。
【0031】
テクスチャ演算部23は、凹凸データ22aが溢れない程度の適宜な周期で又は操作等に応じて不定期に起動され、可変ピッチの凹凸データ22aから、例えば折れ線での近似演算や高次関数での内挿演算などを行って、第一基準長Nを基準とした固定ピッチの凹凸二次元形状データであるテクスチャデータ23aを算出するようになっている。そして、これら上下変位算出部21と凹凸二次元形状演算部22とテクスチャ演算部23は、次に述べるような踏面の算出を行うことなく、移動距離測定値ΔSと高さ測定値Kと加速度検出値βから、第一基準長N対応の第一路面性状値であるピッチNのキメ深さを算出するものとなっている。
【0032】
踏面算出部25は、移動距離測定値ΔSと高さ測定値Kとから凹部82の影響を排除・緩和するような演算を行って踏面高さKmを算出するものであり、そのために、高さ測定値Kの入力タイミングに同期して起動されて、その度に、踏面算出に必要なデータ蓄積を行うとともに、台車が第三基準長Lの半分(L/2)である1.5mを移動したことの判定を行う。そして、台車が1.5m移動する度に、踏面高さKmを算出して3mσ算出部26に送出するようになっている。
【0033】
踏面算出用データの蓄積は、移動距離測定値ΔSと高さ測定値Kとを組データ(ΔS:K)にして踏面データ25aに貯め込むことで行われる。
また、台車1.5m移動の判定は、前回の踏面高さKm算出時から今に至る移動距離測定値ΔSの和が1.5mに到達したか否かでなされる。
踏面高さKmの算出は、踏面データ25aを最新データから過去データへ順に読み出すのを、その間の移動距離(ΣΔS)が一定値に達するまで繰り返し、読み出した各データのうちから最も高い位置の高さ測定値Kを選出することで行われる(MAX)。なお、上記一定値は、凹部82の開口より大きな距離に設定される。例えば数cmにされる。
【0034】
3mσ算出部26は、踏面高さKmを受け取る度に、3mσデータ26aに貯め込んで蓄積するとともに、3mσデータ26aが溢れない程度の適宜な周期で又は操作等に応じて不定期に、3mσデータ26aから標準偏差すなわち3mσの算出等を行うようになっている。そのため、3mσデータ26aは、固定値である第三基準長Lの半分(L/2)を測定ピッチとした測定データとなり、算出された標準偏差値3mσは、第三基準長L対応の第三路面性状値となる。なお、3mσの具体的な算出手順は、公知であり、日本道路公団規格JHS223に規定され、非特許文献3等で解説されているので、ここでの説明は割愛する。
【0035】
この具体例1の路面性状測定装置10について、その使用態様及び動作を、図面を引用して説明する。図13は、(a)〜(c)何れも台車移動経路に沿った路面80の縦断面を模式的に表示したものである。なお、表示倍率はそれぞれ異なる。
【0036】
手で引きながら測定するといった使い方は従来通りなので(図18(c)参照)、ここでは測定中の特徴的な動作等を説明する。
路面80上を移動させながら路面性状測定装置10で路面80の測定を行うと、一度の移動で、低周波を重視した3mσ(第三路面性状値)と、高周波を重視した不定ピッチの凹凸二次元形状(第一路面性状値)及び固定ピッチNのキメ深さ(第一路面性状値)とを、同時に測定することができるので、以下、測定データの入力状態とキメ深さの算出と3mσの算出について順に詳述する。
【0037】
路面性状測定装置10を移動させると、数kHzで高さ測定値K(基準位置高さ測定値)が演算部20に入力されるとともに他のデータβ,t,ΔSも入力または算出される(図13(a)参照)。路面性状測定装置10の移動手段が手動式なので、移動速度が多少変動するのは避けられず、移動距離測定値ΔSも多少増減変化するが、移動距離測定値ΔSは1mm前後かそれ以下に収まるので、数mm幅の開口を持った凹部82を高さ測定から外すことは無い。また、高さ計16(第一高さ計)の測定範囲を決めるレーザビーム径が充分に絞られているので、凹部82内部の底面や側面まで明瞭な測定がなされて、路面80が透水性アスファルト等であっても、その微細な凹凸形状を適切に反映した一連の高さ測定値Kが得られる(図中の矢線を参照)。
【0038】
移動距離測定値ΔSと高さ測定値Kとを組みにして多数を連ねたものが原始的な凹凸二次元形状データであるが、台車が移動距離測定値ΔSだけ移動している間に高さ計16が上下動すると、高さ測定値Kには路面80の高さ変化ばかりか高さ計16の上下方向変位(D)まで入り込んでしまう(図13(b)におけるK1→K2を参照)。これに対し、上下変位算出部21では加速度検出値βと時刻tとから高さ計16の上下方向変位に相当する上下変位算出値Dが算出され、凹凸二次元形状演算部22では上下変位算出値Dを用いて高き測定値Kが補正されるので、移動距離測定値ΔSと高さ測定値(K+D)との組を蓄積した凹凸データ22aは、台車移動時の高さ計16の上下動の悪影響を排したものとなる。また、テクスチャ演算部23によって、凹凸データ22aからテクスチャデータ23aが算出されるが、その演算は近似や内挿にて1mmピッチNの一連データに変換するものなので、テクスチャデータ23aも、上下動の影響の無い正確なものとなる。
【0039】
また、並行して踏面算出部25による台車移動量の確認が行われ、台車が第三基準長Lの半分(L/2)である1.5mを移動したと判定されると、その度に、やはり踏面算出部25によって踏面高さKmが算出される。踏面高さKmは(図13(c)参照)、数cm幅の極薄平板(図では両端矢付き実線)を路面80上に乗せておいて、その高さを高さ計16で測定したときの高さ測定値と同じになるので、仮に凹部82を埋めて踏面83で路面80を均してから路面80の高さ測定を行ったときの測定値と等価になる。そして、このような踏面高さKmが3mσ算出部26によって3mσデータ26aに蓄積され、さらに、3mσ算出部26によって3mσデータ26aから標準偏差3mσが算出されるので、高さ計16のビーム径すなわち測定範囲が1mm(第一基準長N)より狭くても、そして1mmより広い凹部82が路面80にあっても、凹部82の影響の無い適切な3mσが得られる。
【0040】
こうして、一度の測定作業で、低周波を重視した3mσ(第三路面性状値)と、高周波を重視したピッチNのキメ深さ(第一路面性状値)が、同時に得られる。そして、それらの異質な路面性状値は、必要なとき、操作等に応じて、操作部75のパネルや他のディスプレイ等に表示されたり、データ蓄積や更なるデータ加工等のためのデータ送信に供される。
【0041】
{先願発明の具体例2}
先願発明の路面性状測定装置の具体例2について、その具体的な構成を、図面を引用して説明する。図14は、路面性状測定装置30の構造を示し、(a)が簡略側面図、(b)が演算部のブロック図である。また、図15(a)は、SMTD算出手法の説明図であり、横軸に移動距離を採り縦軸に高さを採って回帰曲線からの偏倚状態を示している。
【0042】
この路面性状測定装置30が上述した具体例1の路面性状測定装置10と相違するのは、補正精度向上のために、傾斜計31が追加された点と、凹凸二次元形状演算部22及びテクスチャ演算部23が改造されて其々凹凸二次元形状演算部32及びテクスチャ演算部33になっている点である。
傾斜計31は、測定部12に納めて設置され、枠部11ひいては高さ計16の傾きを検出して、その傾き検出値αを演算部20に送出するものである。これには、傾斜計(液面型など)と角速度計とを組合わせて信号処理により予測傾斜を算出する方式などが好適である。
【0043】
凹凸二次元形状演算部32は、凹凸二次元形状演算部22同様、高さ測定値K(基準位置高さ測定値)の入力タイミングに同期して起動されて、その度に、移動距離測定値と高さ測定値とを組データにし、これを凹凸データ22aに貯め込んで蓄積するようになっているが、組データ算出時の補正内容が凹凸二次元形状演算部22と異なる。すなわち、凹凸二次元形状演算部32は、先ず、傾き検出値αから前回起動時と今回起動時の傾斜差Δα(傾き検出値の差分)を算出し、次にそれを用いて高さ測定値Kから鉛直方向射影成分(K・cosΔα)と水平方向射影成分(K・sinΔα)とを算出するようになっている。
【0044】
さらに、移動距離測定値ΔSについては水平方向射影成分(K・sinΔα)を減算して移動距離測定値(ΔS−K・sinΔα)を算出し、高さ測定値Kについては鉛直方向射影成分(K・cosΔα)で置き換えるとともに上下変位算出値Dを加算して高さ測定値(D+K・cosΔα)を算出する。それから、移動距離測定値(ΔS−K・sinΔα)と高さ測定値(D+K・cosΔα)とを対にして、組データ(ΔS−K・sinΔα:D+K・cosΔα)を作り上げるようになっている。
【0045】
テクスチャ演算部33は、テクスチャ演算部23と同様にピッチNのキメ深さの算出を行うのに加えて、テクスチャ深さSMTDの算出も行うようになっている。テクスチャ深さSMTDの算出手順は、公知なので掻い摘んで説明すると(図15(a)参照)、先ず一連の高さ測定値Kから回帰曲線(図では一点鎖線)を求め、次にその回帰曲線からの各高さ測定値Kの偏倚量(図では黒点付き細線の長さ)について自乗平均を演算する、というものである。このテクスチャ深さSMTDも第一基準長N対応の第一路面性状値である。
【0046】
この具体例2の路面性状測定装置30について、その使用態様及び動作を、図面を引用して説明する。図15(b)は、移動経路に沿った路面の縦断面を模式的に表示したものであり、図15(c)は、測定箇所の位置関係を示すベクトル図である。
傾斜計31の導入と凹凸二次元形状演算部22の改造とにより上述の具体例1の動作とは異なることになった凹凸二次元形状データの補正内容について詳述する。
【0047】
台車が移動距離測定値ΔSだけ移動している間に(図15(b)における実線矢印と破線矢印を参照、また図15(c)における位置41→位置42も参照)、高さ計16は、枠部11に随伴して、上下動するのに加えて(図15(b)のDを参照)、傾動もする(図15(b)のα1,α2を参照)。そのため(図15(c)参照)、高さ測定値Kには、路面80の高さ変化ばかりか、高さ計16の上下方向変位(D)と、さらには高さ計16の傾斜差Δα(即ちα2−α1)に対応した分(K2・(1−cosΔα))も、入り込んでしまう。また、傾斜差Δα対応分のレーザビーム照射位置のずれ量すなわち路面80上での測定位置の変動量(K・sinΔα)が、移動距離測定値ΔSに入り込んでしまう。
【0048】
これに対し、凹凸二次元形状演算部32では、上下変位算出部21からの上下変位算出値Dだけでなく、移動距離計15からの傾き検出値αも、補正演算に用いられる。そして、高さ測定値K2は、上下変位算出値Dと高さ測定値K2の鉛直方向射影成分(K2・cosΔα)とで補正されて、高さ測定値(D+K2・cosΔα)にされる。また、移動距離測定値ΔSは、高さ測定値K2の水平方向射影成分(K・sinΔα)で補正されて、移動距離測定値(ΔS−K・sinΔα)となる。
【0049】
このような測定値を組にして蓄積した凹凸データ22aの表す凹凸二次元形状は、台車移動時の高さ計16の上下動の悪影響ばかりか傾動の悪影響も排したものとなり、精度が向上する。それから導出されるピッチNのキメ深さやテクスチャ深さSMTDも同じく高精度になる。なお、枠部11の長さが3mと長いうえ両端それぞれに四個一組の基準車輪が各々路面に接して回動可能となっていることから、例えば交通量の多い一般道路の管渠の段差40mmに前側二輪が乗り上げたような場合でも傾斜角変化が0.4°程度なので、枠部11の傾きは精々1°までとして良く、上述の比較的簡便な演算内容の補正でも十分な精度の測定結果を得ることができる。
【0050】
{先願発明の具体例3}
先願発明の路面性状測定装置の具体例3について、その具体的な構成を、図面を引用して説明する。図16は、路面性状測定装置50の構造を示し、(a)が簡略側面図、(b)が演算部のブロック図である。
【0051】
この路面性状測定装置50が上述した具体例2の路面性状測定装置30と相違するのは、国際ラフネス指数IRI(第二路面性状値)も算出するために、高さ計51(他の高さ計,第二高さ計)が測定部12に追加収納された点と、踏面算出部52と高低差算出部53と加算部54と国際ラフネス指数算出部55といったプログラムが演算部20に追加インストールされた点と、それに随伴して踏面データ52aと前回データ53aの領域がデータメモリに追加割付された点である。
【0052】
高さ計51には、部材共通化等のため、高さ計16と同じものが採用されるが、高さ計51は、高さ計16から第二基準長Mたとえば25cmだけ進行方向・前方に離隔したところに設けられて、そこから路面80までの高さを測定し、その高さ測定値J(離隔位置高さ測定値)を演算部20に送出するようになっている。
踏面算出部52及び踏面データ52aは、それぞれ踏面算出部25及び踏面データ25aと同様のものなので、繰り返しとなる説明は割愛するが、高さ測定値Kではなく高さ測定値Jを入力し、この高さ測定値Jと移動距離測定値ΔSとから踏面算出の演算を行って、踏面高さKm同様の踏面高さJmを算出するようになっている。また、何れの踏面高さJm,Kmも高低差算出部53向けに随時算出されるようになっている。
【0053】
高低差算出部53は、踏面高さJmと移動距離測定値ΔSと傾き検出値αと踏面高さKmとから逐次2点法の演算を行ってピッチMすなわち第二基準長M毎に路面80の高低差ΔHを算出するものである。逐次2点法を的確に遂行するために、高低差算出部53は、高低差ΔHを算出したときには、そのときの踏面高さJmと傾き検出値αと踏面高さKmとを前回データ53aに一時記憶しておくようになっている。
【0054】
さらに、傾斜差Δαと踏面高さJm,Kmとに基づき移動距離測定値ΔS具体的には高低差ΔH前回算出後の和ΣΔSを補正して高さ計16の路面上測定位置がピッチM(第二基準長M)だけ移動したか否かを判定するとともに、高さ計16の路面上測定位置が前回の高低差ΔH算出時位置からピッチMだけ移動したことが判明すると、そのときの傾斜差Δα及び踏面高さJm,Km(α2,J2,K2)と、前回データ53aの傾斜差Δα及び踏面高さJm,Km(α1,J1,K1)とから、路面80の高低差ΔHを算出するようになっている。
【0055】
具体的には、前回の高低差ΔH算出時位置からの高さ計16の移動距離ΣΔSは、近似的に M−K2・sin(α2−α1)で算出される。また、高低差ΔHは、やはり近似的に −{(J1−K1)・cosΔα1}+M・sinα1 で算出される。
加算部54は、高低差ΔHが算出される度に、それを足し込んで、ピッチMの高さ測定値Hを算出する。
国際ラフネス指数算出部55は、一連の高さ測定値Hから、標準偏差算出等の公知演算を行って(非特許文献1,非特許文献2等を参照)、第二基準長M対応の国際ラフネス指数IRI(第二路面性状値)を算出するようになっている。
【0056】
この具体例3の路面性状測定装置50について、その使用態様及び動作を、図面を引用して説明する。図17は、(a)が移動経路に沿った路面80の模式的な縦断面図および位置関係を示すベクトル図であり、(b)がその要部の拡大図である。
高き計51の導入と高低差算出部53等のインストールとにより新たに加わった国際ラフネス指数IRIの測定について詳述する。
【0057】
台車が例えば25cmのピッチMすなわち第二基準長Mほど移動している間に(図17(a)参照)、枠部11に随伴して高さ計16が位置61から位置62へ移動し、高さ計51が位置63から位置64へ移動したとき、枠部11が前進に加えて上下動も傾動もするので、高さ計16と高さ計51との離隔距離が第二基準長Mであっても、位置62と位置63は重なるより重ならない場合が多く、先行の高さ計51での前回測定位置と後行の高さ計16での今回測定位置も一致するのは稀である。しかし、国際ラフネス指数IRIに適合した逐次2点法を適切に遂行するには、それらの路面上測定位置を一致させる又は充分に近づけることが必要である(図17の測定位置66を参照)。それを路面性状測定装置50では以下のようして的確に而も簡便に成し遂げている。
【0058】
すなわち、前回の高低差ΔH算出時位置である路面上測定位置65からの台車および高さ計16の移動距離ΣΔSが上述の式「M−K2・sin(α2−α1)」の算出値に達すると、高低差算出部53によって、先行の高さ計51での前回測定位置と後行の高さ計16での今回測定位置が路面80上の位置66で重なったものと判定されて、新たな高低差ΔHの算出が行われる。これにより、ピッチMの移動が台車でなく路面上測定位置の離隔距離を基準としたものになるので、逐次2点法に対して的確に適合した高さ測定がなされることとなる。
【0059】
また、高低差ΔHが上述式「−{(J1−K1)・cosΔα1}+M・sinα1」で算出され、それに基づき、加算部54にて高さ測定値Hが算出され、国際ラフネス指数算出部55によって最終目的の国際ラフネス指数IRIが算出される。
こうして得られた路面性状値は、その算出過程で使用された移動距離ΣΔSや高低差ΔHの算出式が上述したような簡便な近似式であるが、やはり枠部11の長さが3mと長いうえ両端それぞれに四個一組の基準車輪が付いていることから、実用に適う十分な精度を示す。
【0060】
{先願発明に係る具体例の変形等}
上記具体例では、演算部20がマイクロプロセッサ等で具現されていたが、演算部の具体化は、これに限られる訳でなく、例えばシステムLSIやプログラム可能論理回路などで行っても良く、適宜組み合わせても良い。
また、上記具体例で示した路面性状値の補正時の加減は一例であり、路面性状値の補正時に補正値を加算するか減算するかは、基準方向の設定等に応じて適宜定められる。
さらに、上記具体例では、各測定値・検出値の入力タイミングを高さ測定値Kを基準に揃えていたが、これは必須ではないので、他の基準を採用しても良く、揃っていなくても良く、例えばパルスpの入力やその逓倍のタイミングを併用するのも良い。
【0061】
[本願の発明が解決しようとする課題]
このような先願発明によって、台車を手押しや人手で牽引する手動式に適用が限られるものの、基準長の異なる路面性状値を同時に精度良く測定しうる路面性状測定装置が安価に提供されるようになった。
そして、多機能で高精度の路面性状測定装置を安価に実現できることが判明すると、高速走行の可能な自動車等の自走車両に全てを搭載する車載式への適用が要請される。
もっとも、車載化に伴い、手動式では無視できた幾つかの技術課題が無視できなくなる。特に、高速走行下で精度の良い移動距離測定を安価に行うことが重要な課題として浮かんでくる。
【0062】
高速走行下でもmmオーダーの狭ピッチで移動距離を測定しうる車載可能な移動距離計として、空間フィルタ式速度検出器などの非接触式移動距離計が知られており市販もされているが、コスト面の制約等から採用しづらい。しかも、空間フィルタ式速度検出器は、路面や軌道上の模様から所定間隔の規則的な反射ムラを抽出することにより速度や距離を検出していることから、模様の無いところでは機能しない。
また、車両コストは別として、路面性状測定装置の原価は低廉に維持することが前提なので、車載化に伴う技術課題は、従来装置と異なる手法で解決しなければならず、姿勢制御機構の導入や(例えば特許文献1参照)、基準長より短いベースの採用は(例えば特許文献2参照)、装置の複雑化や原価高騰を招きがちなので、避けたい。
【0063】
そうすると、移動距離計には、車両に予め搭載されていて車軸や駆動軸といったシャフトの回転を検出する標準の車速センサを流用するか、高分解能のセンサを追加するにしても標準の車速センサと同じくシャフトに付設してその回転を検出する車速センサを採用したくなる。
しかしながら、このようなシャフト回転検出式の車速センサを移動距離計に採用した場合、コスト制約はクリアできても、そのままでは測定精度に難がある。具体的には、走行中に気温や路面状態等の変化に起因してタイヤの温度や内圧が変わると、タイヤ径や滑り率も変動するため、車速センサでの検出値が実際の速度や距離から乖離してしまうのである。また、標準の車速センサ等の場合、通常のスピードメータの要求仕様に基づいて例えば10cm移動毎にしかパルスが出力されないため、それより短い第一基準長のピッチで繰り返されるキメ深さ測定やテクスチャ深さSMTD測定が難しい。
【0064】
そこで、高価な測定器具を追加しなくても移動距離計の測定値からタイヤ変形等の悪影響が取り除かれるようにすることが、第1技術課題となる。
また、移動距離計の分解能より細かいピッチで測定が繰り返されるようにすることも、更なる課題、第2技術課題となる。
【課題を解決するための手段】
【0065】
本発明の路面性状測定装置は(解決手段1)、このような課題を解決するために創案されたものであり、 車両に搭載される移動距離計と第一高さ計と第二高さ計と演算部とを具えた路面性状測定装置において、 前記移動距離計が、前記車両の車軸またはその駆動軸の回転を検出することにより、前記車両の移動距離を測定するものであり、 前記第一高さ計が、路面の排水用凹部の開口幅より短い第一基準長に対応した範囲またはそれより狭い範囲を測定対象として、前記路面までの高さを測定するものであり、 第二高さ計が、前記第一基準長より長い第二基準長だけ前記第一高さ計から前記車両の前後方向へ離隔したところに設けられ、前記第一基準長に対応した範囲またはそれより狭い範囲を測定対象として、路面までの高さを測定するものであり、 前記演算部が、前記移動距離計にて得た移動距離測定値と前記第一高さ計にて得た基準位置高さ測定値とに基づいて前記第一基準長対応の第一路面性状値を算出し、前記移動距離測定値と前記基準位置高さ測定値と前記第二高さ計にて得た離隔位置高さ測定値とに基づいて前記第二基準長対応の第二路面性状値を算出し、前記第二路面性状値の算出に際しては踏面の算出を行うが前記第一路面性状値の算出に際しては踏面の算出を行わないものであって、更に、前記基準位置高さ測定値に基づく踏面と前記離隔位置高さ測定値に基づく踏面との両踏面のずれを前記第二基準長の近傍に制限した範囲内で両踏面の相関を算出して最大相関値を選出するとともにそのときのずれ量を採択し、この採択ずれ量に応じて前記移動距離測定値を拡縮する校正処理を前記最大相関値に応じて選択的に行うようになっている、というものである。
【0066】
また、本発明の路面性状測定装置は(解決手段2)、上記解決手段1の前記演算部の機能のうち相関算出について相関対象データを踏面から第一基準長対応の路面性状値に変更したものである。具体的には、「更に」以降が、更に、前記移動距離測定値と前記離隔位置高さ測定値とに基づいて前記第一基準長対応の離隔位置路面性状値を算出し、前記第一路面性状値と前記離隔位置路面性状値とに基づき両者のずれを前記第二基準長の近傍に制限した範囲内で両者の相関を算出して最大相関値を選出するとともにそのときのずれ量を採択し、この採択ずれ量に応じて前記移動距離測定値を拡縮する校正処理を前記最大相関値に応じて選択的に行うようになっていることを特徴とする。
【0067】
なお、「第二基準長の近傍」は、主として車両のタイヤの変形や滑りを考慮し、なるべくなら車両の揺れや傾き等も考慮して、第二基準長走行時に移動距離測定値が第二基準長から乖離・変動する範囲に応じて設定され、その最大範囲より僅かに広い範囲を占めるように設定するのが望ましい。
【0068】
さらに、本発明の路面性状測定装置は(解決手段3)、上記解決手段1,2の路面性状測定装置であって、前記移動距離計はその分解能が前記第一基準長より粗いものであり、前記演算部が、前記移動距離測定値について前記移動距離計の分解能を超える細分化を予測演算にて行うようになっていることを特徴とする。
【0069】
また、本発明の路面性状測定装置は(解決手段4)、上記解決手段1,2の路面性状測定装置であって、前記移動距離計はその分解能が前記第一基準長より粗いものであり、前記演算部が、前記基準位置高さ測定値と前記離隔位置高さ測定値とを一時記憶しておくものであって、前記移動距離測定値について前記移動距離計の分解能を超える細分化を補間演算にて行うようになっていることを特徴とする。
【0070】
また、本発明の路面性状測定装置は(解決手段5)、上記解決手段1〜4の路面性状測定装置であって、前記車両に搭載されて路面までの高さを測定する第三高さ計が、前記第二基準長より長い三メートル以上の第三基準長の半分だけ前記第一高さ計から前記車両の前方向へ離隔したところに設けられ、前記車両に搭載されて路面までの高さを測定する第四高さ計が、前記第三基準長の半分だけ前記第一高さ計から前記車両の後方向へ離隔したところに設けられ、前記演算部が、前記基準位置高さ測定値と前記第三高さ計にて得た前方高さ測定値と前記第四高さ計にて得た後方高さ測定値とに基づいて前記第三基準長対応の第三路面性状値を算出するものであって、その際に、前記基準位置高さ測定値に関しては前記第二路面性状値の算出に係る踏面の算出結果を用いるようになっていることを特徴とする。
【0071】
また、本発明の路面性状測定装置は(解決手段6)、上記解決手段1〜5の路面性状測定装置であって、上下方向の加速度を検出する加速度計が、前記第一高さ計の上方または極近傍に設けられ、前記演算部が、前記加速度計の加速度検出値に基づいて上下変位を算出するとともに、その上下変位算出値を前記基準位置高さ測定値に加算または減算して前記第一路面性状値に関する補正を行うものであることを特徴とする。
【0072】
また、本発明の路面性状測定装置は(解決手段7)、上記解決手段6の路面性状測定装置であって、前記車両の傾きを検出する傾斜計が設けられ、前記演算部が、前記第一路面性状値の算出に際し前記傾斜計にて得た傾き検出値に基づいて前記基準位置高さ測定値から鉛直方向射影成分と水平方向射影成分とを算出し前記鉛直方向射影成分にて前記基準位置高さ測定値を補正するとともに前記水平方向射影成分を加算または減算して前記移動距離測定値を補正するものであることを特徴とする。
【0073】
また、本発明の路面性状測定装置は(解決手段8)、上記解決手段7の路面性状測定装置であって、前記演算部が、前記第二路面性状値の算出に際し前記傾き検出値の差分と前記基準位置高さ測定値とに基づき前記移動距離測定値を補正して前記高さ計の路面上測定位置が前記第二基準長だけ移動したか否かを判定するものであることを特徴とする。
【0074】
また、本発明の路面性状測定装置は(解決手段9)、上記解決手段8の路面性状測定装置であって、前記演算部が、前記路面上測定位置の前記第二基準長の移動ごとに路面の高低差を算出するものであって、その算出に際し、前記傾き検出値と前記高さ測定値と前記離隔位置高さ測定値も前記路面上測定位置の前記第二基準長の移動ごとの値を用いるものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0075】
このような本発明の路面性状測定装置にあっては(解決手段1,2)、高さ計の特性を第一基準長に適合させるとともに、第一路面性状値算出のときは踏面の算出を行わないで、排水用凹部の中の微細形状まで路面性状値に反映させるようにし、その一方、第二路面性状値算出のときは排水用凹部を恰も埋めたのと等価になる踏面の算出を行うようにしたことにより、重視する周波数の違う異質の測定に高さ計が不都合なく共用されて、部材費のコストアップが回避される。このような先願の利点を引き継ぐとともに、逐次2点法で測定される第二路面性状値の算出に要する第一,第二高さ計の測定値を用いた相関演算によって第二基準長近傍のずれ量を求め、これで移動距離計の測定値を校正するようにもしたことにより、やはり空間フィルタ式速度検出器などを追加することなく演算にて、移動距離計の測定精度を高めることができる。
【0076】
しかも、シャフト回転検出式の移動距離計を基本としているので、路面状況等によらず確実に移動距離測定値が得られるうえ、相関による校正処理は、相関値に応じて選択的に行われるようにしたことにより、適切な採択ずれ量が得られたときだけ行われ、信頼のおけないようなときには処理が回避される。
これにより、高価な測定器具を追加しなくてもシャフト回転検出式の移動距離計の測定値からタイヤ変形等の悪影響が的確に取り除かれるので、第1技術課題が解決される。
したがって、この発明によれば、第一路面性状値ばかりか第二路面性状値も同時測定可能な多機能の路面性状測定装置であって手動式に限らず車載式でも高精度なものを安価に提供することができる。
【0077】
また、本発明の路面性状測定装置にあっては(解決手段3)、予測演算にて移動距離測定値が細分化されるようにしたことにより、移動距離計の分解能より細かいピッチで測定が繰り返えされて、第一路面性状値も的確に求まることとなる。なお、予測演算は、直前の測定値や測定時間を所定の分割数で分割するといった比較的容易な手法で具現化できるうえ、その分割数を増減させる等のことで簡便に相関による校正処理と組み合わせることもできる。したがって、この発明によれば、第1技術課題に加えて第二技術課題も演算にて簡便かつ安価に解決される。
【0078】
さらに、本発明の路面性状測定装置にあっては(解決手段4)、補間演算にて移動距離測定値が細分化されるようにしたことにより、移動距離計の分解能より細かいピッチで測定が繰り返えされて、第一路面性状値も的確に求まることとなる。なお、補間演算は、一時記憶を利用することにより以前の測定値や測定時間から比較的容易な手法で具現化できるうえ、不等分割も一層適切に行えるので車両速度の急な変化があっても細分化がより精度良く行える。この場合も、分割数を増減させる等のことで簡便に相関による校正処理と組み合わせることができる。したがって、この発明によれば、第1技術課題に加えて第二技術課題が演算にて簡便かつ安価に解決されるうえ、速度変化にも強い路面性状測定装置を実現することができる。
【0079】
また、本発明の路面性状測定装置にあっては(解決手段5)、第三,第四高さ計を第三基準長対応位置に追加設置して第三路面性状値の算出を行う際に、第二路面性状値の算出に係る踏面の算出結果を用いるようにしたことにより、第一高さ計の共用化と演算負担の増加抑制とを同時に図りながら更なる多機能化を実現することができる。
【0080】
また、本発明の路面性状測定装置にあっては(解決手段6,7,8,9)、それぞれ先願発明2,3,5,6の利点を引き継いでいるが、これらは、姿勢変動の大きな車載式にあっては特に有益である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0081】
このような本発明の路面性状測定装置について、これを実施するための具体的な形態を、以下の実施例1〜7により説明する。
図1〜2に示した実施例1は、上述した解決手段1,6〜9(出願当初の請求項1,6〜9)を具現化したものであり、図3に示した実施例2は、上述した解決手段2,6〜9(出願当初の請求項2,6〜9)を具現化したものであり、図4に示した実施例3は、それらの合体例・拡張例である。また、図5〜6に示した実施例4は、上述した解決手段3(出願当初の請求項3)を具現化したものであり、図7〜8に示した実施例5は、上述した解決手段4(出願当初の請求項4)を具現化したものであり、図9に示した実施例6は、その変形例である。さらに、図10〜11に示した実施例7は、上述した解決手段5(出願当初の請求項5)を具現化したものである。
なお、それらの図示に際し先願発明(図12〜17)や従来(図18参照)と同様の構成要素には同一の符号を付して示したので、重複する再度の説明は割愛し、以下、それらとの相違点を中心に説明する。
【実施例1】
【0082】
本発明の路面性状測定装置の実施例1について、その具体的な構成を、図面を引用して説明する。図1は、路面性状測定装置100の構造を示し、(a)が簡略側面図、(b)が演算部20のブロック図である。また、図2は、演算部20における相関算出部の説明図である。
【0083】
この路面性状測定装置100が既述した先願発明の具体例3の路面性状測定装置50(図16参照)と相違するのは、移動手段である装置搭載先の車両が手動牽引式の台車から自走式の自動車90になった点と、演算部20に相関算出部101及び校正処理部102が追加された点と、演算部20において積算部24がパルス距離変換係数103を参照する変換係数可変式の積算部104になった点である。また、ここでは、演算部20から3mσ算出部26が省かれている。
【0084】
自動車90は(図1(a)参照)、一般的な四輪の乗用車や貨物自動車で良いが、なるべくならホイールベースやトレッドが大きくて揺れ等の少ないものが望ましく、その車体の底部の中央部分に測定部12が取り付けられる。測定部12は、箱体のまま装着しても良く、箱体から内蔵品である加速度計13や,時計14,傾斜計31,第一高さ計16,第二高さ計51といった測定機器を出してそれらを個々に自動車90の車体へ直付け装着しても良く、それらを適宜な高剛性のビームやプレートに装着してから車体下面に取り付けるようにしても良い。それらの測定機器13,14,31,16,51は、搭載先こそ異なれ、既述したものと同じ機能を果たすものである。
【0085】
そのうち、本発明に必須の高さ計16,51について再掲すると、第一高さ計16は、第一基準長Nに対応したテクスチャ深さSMTD(第一路面性状値)の測定のために、数mmの凹部82開口幅や1mmの第一基準長Nよりも狭い範囲を測定する非接触式の高さ計が採用され、車体底部の中央に装着されて、そこから路面80までの高さを測定し、その高さ測定値K(基準位置高さ測定値)を演算部20に送出するようになっている。第二高さ計51は、部材共通化等のため高さ計16と同じものが採用され、第二基準長Mに対応した国際ラフネス指数IRI(第二路面性状値)の測定のために、第一高さ計16から第二基準長Mだけ例えば25cmだけ自動車90の進行方向へ例えば前方へ離隔したところに設けられて、そこから路面80までの高さを測定し、その高さ測定値J(離隔位置高さ測定値)を演算部20に送出するようになっている。
【0086】
移動距離計15も、本発明に必須であり、既述の通り例えばロータリエンコーダからなり第一基準長Nより短い一定距離たとえば0.5mmといった微小距離を進む度にパルスpを発生して演算部20に送出するようになっているが、搭載先が自動車90になり、それに伴って車輪が硬質ゴム製等の変形しにくいものから空気の入った変形しやすいタイヤになったため、車輪の直接測定が難しいので、移動距離計15は、自動車90の車軸に臨んで設けられ又は車軸の駆動軸に臨んで設けられて、その軸回転を検出することにより、自動車90の移動距離を測定するようになっている。移動距離計15の付設に適した車軸には、従動輪側ではハブシャフト・車輪軸が挙げられ、駆動輪側では、ハブシャフトの他、車輪とディファレンシャルとの間に介挿されて回転伝動を行うシャフト類があればそれでも良い。また、移動距離計15の付設に適した駆動軸には、エンジンや電動モータ等の駆動源とディファレンシャルとの間に介挿されて回転伝動を行うプロペラシャフト等が挙げられる。
【0087】
演算部20は(図1(b)参照)、3mσ算出部26の削除により第三基準長L対応の3mσの算出を行わないものとなっているが、上下変位算出部21と凹凸二次元形状演算部32とテクスチャ演算部33を引き継いでいるので、移動距離計15にて得た移動距離測定値ΔSと第一高さ計16にて得た基準位置高さ測定値Kとに基づいて、第一基準長Nに準じた可変ピッチの凹凸二次元形状を凹凸データ22aに算出するとともに、第一基準長Nに対応した固定ピッチNのキメ深さ・テクスチャ深さSMTD(第一路面性状値)をテクスチャデータ23aに算出するようになっている。その際、加速度計13と時計14と傾斜計31の測定値に基づく補正も行うようになっている。
【0088】
また、演算部20は、踏面算出部25と踏面算出部52と高低差算出部53と加算部54と国際ラフネス指数算出部55も引き継いでいるので、移動距離測定値ΔSと基準位置高さ測定値Kと第二高さ計51にて得た離隔位置高さ測定値Jとに基づいて、第二基準長Mに対応した国際ラフネス指数IRI(第二路面性状値)の算出も行うようになっている。しかも、その国際ラフネス指数IRI(第二路面性状値)の算出に際しては傾斜計31の傾き検出値αに基づく補正に加えて踏面の算出を行うが、キメ深さ・テクスチャ深さ(第一路面性状値)の算出に際しては踏面の算出を行わないものとなっている。
【0089】
このような第一,第二路面性状値の算出手段は既述したものと同じであるが、移動距離計15のパルスpから移動距離測定値ΔSを生成する積算部104にあっては、パルス距離変換係数103(S/P)が可変設定できるようになっている。すなわち、積算部24では固定されていた単位距離が積算部104では校正処理部102によって更新されるようになっており、積算部104は、パルスpの入力がある度にパルス距離変換係数103を積み重ねて移動距離測定値ΔSを算出するようになっている。基準位置高さ測定値Kの入力タイミングに同期して移動距離測定値ΔSを凹凸二次元形状演算部32,踏面算出部25,52,高低差算出部53等に送出することや、その送出後に積算値をゼロクリアすることは、既述した積算部24と同じである。パルス距離変換係数103は、初期値が積算部24の単位距離と同じにされ、その後は随時、校正処理部102によって拡縮(増減等)されるようになっている。
【0090】
相関算出部101は(図1(b)参照)、基準位置高さ測定値Kに基づく踏面高さKmと離隔位置高さ測定値Jに基づく踏面高さJmとの両踏面のずれを第二基準長Mの近傍(Zm1〜Zm9)に制限した範囲内で両踏面の相関値Rm1〜Rm9を算出して最大相関値Rmを選出するとともにそのときのずれ量Zmを採択するものである。具体的には(図2参照)、踏面高さKmと移動距離測定値ΔSとの組データを路面形状の特定に十分な個数(図2では12組を図示)だけ先入れ先出し方式(FIFO)で記憶保持するとともに、第二基準長Mの移動距離をカバーする個数と路面形状の特定に十分な個数と第二基準長Mの近傍の半分強をカバーする個数との合計数(図2では38組を図示)だけ、踏面高さJmと移動距離測定値ΔSとの組データを、先入れ先出し方式(FIFO)で記憶保持しておき、両組データの相関を算出するようになっている。
【0091】
しかも、その相関算出に際しては、踏面高さKm側は同じ全データを繰り返し使用し、踏面高さJm側は先頭から一組ずつずらしながら第二基準長Mの近傍(図2では矢付き実線や矢付き波線で9組を図示)を移動させることにより両踏面のずれを第二基準長Mの近傍に制限した範囲内で、両踏面の相関値とずれ量との組(Rm1,Zm1)〜(Rm9,Zm9)を近傍対応個数だけ算出するようになっている。さらに、相関算出部101は、それらの相関値Rm1〜Rm9の中から最大相関値Rmを選出するとともに、最大相関値Rmを算出したときのずれ量を採択ずれ量Zmに採択して、これらの最大相関値Rmと採択ずれ量Zmを校正処理部102に送出するようになっている。
【0092】
校正処理部102は(図1(b)参照)、校正処理を最大相関値Rmに応じて選択的に実行するものであり、校正処理実行時には採択ずれ量Zmに応じて移動距離測定値ΔSを拡縮するようになっている。具体的には、最大相関値Rmが相関の強いことを示す所定の閾値たとえば0.9以上のときだけ、校正処理を実行するようになっている。また、移動距離測定値ΔSの拡縮は、第二基準長Mと採択ずれ量Zmとから例えば式[M/(M+Zm)]にて拡縮係数φを算出し、この係数φをパルス距離変換係数103に乗じる等のことで、行われるようになっている。なお、パルス距離変換係数103の不所望な急変を防止するため、例えば、緩和係数γを0<γ<1で定め、それを用いて拡縮係数φを{1+(φ−1)/(1+γ)}に変換してから拡縮に供するようにしても良い。
【0093】
この実施例1の路面性状測定装置100について、その使用態様及び動作を説明する。
【0094】
自動車90を走行させると、移動速度こそ異なれ、手動牽引式の路面性状測定装置50と同様、路面性状測定装置100の場合も、数kHzで基準位置高さ測定値K及び離隔位置高さ測定値Jが演算部20に入力されるとともに、他のデータβ,t,ΔSも演算部20に入力され又は算出され、さらに、高周波を重視した不定ピッチの凹凸二次元形状(第一路面性状値)及び固定ピッチNのキメ深さ(第一路面性状値)と、中間周波を重視した国際ラフネス指数IRIとが、同時に測定される。自動走行なので手動牽引のときより速やかに複数の路面性状を測定することができ、自動車90のタイヤ径や滑り状態が変化しなければ路面性状測定装置50と同様にして所期の精度で所望の測定結果が得られる。
【0095】
そして、走行中に気温や路面状態等の変化に起因してタイヤの温度や内圧が変わり、そのため、例えば、タイヤ径が小さくなると、移動距離計15のパルスpの間に走行する距離も同じ比率で減るので、移動距離測定値ΔSは実際値より同率で見掛上大きくなる。逆にタイヤ径が大きくなると、移動距離計15のパルスpの間に走行する距離も同じ比率で増えるため、移動距離測定値ΔSは実際値より同率で見掛上小さくなる。見掛の移動距離測定値ΔSが伸縮すると、第二基準長Mは不変なので、踏面高さJmと移動距離測定値ΔSとの組データにて表される見掛の凹凸二次元形状も伸縮する。
【0096】
凹凸二次元形状が伸張すると、最大相関値Rmの算出されるときの採択ずれ量Zmがプラスの値になり、これに伴って拡縮係数φは“1”より小さくなるのに対し、凹凸二次元形状が収縮すると、最大相関値Rmの算出されるときの採択ずれ量Zmがマイナスの値になって、拡縮係数φは“1”より大きくなる。そして、最大相関値Rmが閾値以上になったときには、拡縮係数φがパルス距離変換係数103に乗じられ、これによって、移動距離測定値ΔSの不所望な伸縮が相殺される。
【0097】
こうして、シャフト回転検出式の移動距離計15の測定値からタイヤ変形等の悪影響が的確に取り除かれるので、牽引式はもちろんのこと、車載式であっても、正確な移動距離測定値ΔSに基づいて精度の良い路面性状測定が行われる。
しかも、十分な相関が得られないときには校正処理が行われないので、不確実で不適切かもしれない処理は確実に回避され、以前のパルス距離変換係数103を用いて測定が続行されるため、路面形状の相関に基づく距離測定が行えるか否かに拘わらず常に所望の路面性状値が得られる。
【実施例2】
【0098】
本発明の路面性状測定装置の実施例2について、その具体的な構成を、図面を引用して説明する。図3は、演算部20のブロック図である。
この路面性状測定装置200が上述した実施例1の路面性状測定装置100と相違するのは、凹凸二次元形状演算部201が追加された点と、相関算出部101が相関算出部202に変更された点である。
【0099】
凹凸二次元形状演算部201は、上下変位算出値Dと移動距離測定値ΔSと傾き検出値αと基準位置高さ測定値Kとから凹凸データKsを算出する凹凸二次元形状演算部32と同様のものであるが、基準位置高さ測定値Kに代えて離隔位置高さ測定値Jを入力することにより凹凸データJsを算出するようになっている。既述したように凹凸データKsは基準位置高さ測定値Kに上下変位と傾きの影響を排する補正を施したものであり、同様に凹凸データJsは離隔位置高さ測定値Jに上下変位と傾きの影響を排する補正を施したものとなる。
【0100】
相関算出部202は、踏面高さKmと踏面高さJmと移動距離測定値ΔSとから最大相関値Rmと採択ずれ量Zmとを算出していた相関算出部101と同様のものであるが、凹凸データKsと凹凸データJsと移動距離測定値ΔSとから最大相関値Rsと採択ずれ量Zsとを算出するようになっている。なお、相関算出部202に入力する移動距離測定値ΔSは、積算部104の出力そのままでも良いが、凹凸二次元形状演算部32,201で補正を施した後の方が好ましい。最大相関値Rs及び採択ずれ量Zsは、校正処理部102へ送出され、それぞれ最大相関値Rm及び採択ずれ量Zmに代えて校正処理部102に入力されるようになっている。
【0101】
この場合も、自動車90のタイヤ径や滑り状態が変化しなければ路面性状測定装置50,100と同様にして所期の精度で所望の測定結果が得られる。また、タイヤ径の拡縮等に起因して見掛の移動距離測定値ΔSが伸縮すると、路面性状測定装置100と同様、路面形状の相関に基づく距離測定を利用して拡縮係数φが求められ、拡縮係数φが得られると、拡縮係数φがパルス距離変換係数103に乗じられて、移動距離測定値ΔSの不所望な伸縮が相殺される。
ただし、相関算出の対象が踏面高さKm,Jmから凹凸データKs,Jsに替わっているので、拡縮係数φの算出は次のようにして行われる。
【0102】
すなわち、凹凸二次元形状が伸張すると、最大相関値Rsの算出されるときの採択ずれ量Zsがプラスの値になり、これに伴って拡縮係数φは“1”より小さくなるのに対し、凹凸二次元形状が収縮すると、最大相関値Rsの算出されるときの採択ずれ量Zsがマイナスの値になって、拡縮係数φは“1”より大きくなる。そして、最大相関値Rsが閾値以上になったときには、拡縮係数φがパルス距離変換係数103に乗じられ、これによって、移動距離測定値ΔSの不所望な伸縮が相殺される。
【0103】
凹凸二次元形状は踏面よりも路面形状を細かく表しているので、この場合、路面形状の相関に基づく距離測定について、分解能が向上する一方、微細パターンの繰り返しには過剰反応しやすくなっている。そこで、例えば閾値を0.95以上に高めるといったことも行って、校正実行の判定を厳密化することにより、移動距離測定値ΔSの確度ひいては路面性状測定の精度が更に向上することとなる。
【実施例3】
【0104】
本発明の路面性状測定装置の実施例3について、その具体的な構成を、図面を引用して説明する。図4は、路面性状測定装置300の構造を示し、(a)が簡略側面図、(b)が演算部20のブロック図である。
【0105】
この路面性状測定装置300が上述した実施例1,2の路面性状測定装置100,200と相違するのは、路面性状測定装置100の相関算出部101と路面性状測定装置200の相関算出部202とが併存している点と、路面模様の相関算出に供される受光量Kp,Jpが演算部20に入力されるようになった点と、その受光量Kp,Jpを対象とする新たな相関算出部303が追加されている点と、それに伴い校正処理部102が改造されて校正処理部304になっている点である。
【0106】
高さ計16,51にはレーザ距離計やレーザ変位計といった光学式のものが採用されているが、そのような光学式の高さ計は高さ測定値だけでなくそれに加えて受光量も出力するようになっているのが一般的なので、新たな測定器具を追加しなくても其々の受光量Kp,Jpを演算部20に取り込むことができる。そこで、この第一高さ計16は基準位置高さ測定値Kに加えてフォトセンサ301の基準位置受光量Kpも演算部20に送出するようになっており、第二高さ計516は離隔位置高さ測定値Jに加えてフォトセンサ302の離隔位置受光量Jpも演算部20に送出するようになっている。なお、高さ計16,51が受光量Kp,Jpを出力するようになっていない場合、受光量取得のため、例えば、図示しない半透明鏡を高さ計の受光光路途中に介在させて、その鏡で反射した光を別置の光検出器に導くようにしても良い。
【0107】
相関算出部303は、相関算出部101,202と同様のものであるが、基準位置受光量Kpと離隔位置受光量Jpと移動距離測定値ΔSとから最大相関値Rpと採択ずれ量Zpとを算出し、算出した最大相関値Rp及び採択ずれ量Zpを校正処理部304に送出するようになっている。
相関算出部101で算出した最大相関値Rm及び採択ずれ量Zmも、相関算出部202で算出した最大相関値Rs及び採択ずれ量Zsも、校正処理部304に送出されるようになっている。
【0108】
校正処理部304は、校正処理部102の判定機能を一組のデータに適合したものから三組のデータに適合するよう拡張したものであり、例えば、最も簡便な場合、最大相関値Rs,Rm,Rpから最大のものを選出し、それから、その最大相関値および同組の採択ずれ量に基づいて校正処理部102と同様のことを行うようになっている。最大相関値Rs,Rm,Rpそれぞれに異なる閾値を用いて閾値を上回る程度を比べる等のことにより、三組のデータから一組を選出するようにしても良い。最大相関値Rs,Rm,Rpそれぞれに閾値を設定し、閾値を上回ったものが一つならばそれを選出し、二つ以上のときには、予め定めた優先順位に従って何れか一つを選出するようにしても良い。最大相関値だけでなく、閾値を上回った組における採択ずれ量Zs,Zm,Zpの差が所定値より小さきときに限って校正処理を続行するようにしても良い。
【0109】
この場合、相関算出部101,202によって大小二種類の路面形状相関が算出されるのに加え、相関算出部303によって路面の濃淡模様に係る相関も算出される。そして、路面形状の相関に基づく距離測定に加えて、路面の濃淡模様の相関に基づく距離測定もなされる。そのため、細かな形状や大まかな形状に基づいて移動距離測定値ΔSの校正処理が行えるばかりか、形状変化のない路面であっても、濃淡があれば、移動距離測定値ΔSの校正処理が行える。
このように異質の測定手法を並行して行うとともにその結果を統合して選択的に校正処理を実行するようにしたことにより、移動距離測定値ΔSの確度ひいては路面性状測定の精度をより一層向上させることができる。
【実施例4】
【0110】
本発明の路面性状測定装置の実施例4について、その具体的な構成を、図面を引用して説明する。図5は、路面性状測定装置400の構造を示し、演算部20のブロック図である。また、図6は、(a)〜(c)いずれも移動距離測定値ΔSの細分化に適う予測演算の説明図である。
【0111】
この路面性状測定装置400が上述した実施例3の路面性状測定装置300と相違するのは、移動距離計15が第一基準長Nより分解能の粗い移動距離計401になった点と、それを補償するため演算部20に予測演算部402と細分化部403が追加された点である。
移動距離計401は、コスト削減のため、自動車90に標準装備されてシャフトの回転を検出する車速センサが流用され、一定距離(S/q)例えば100mm移動毎にパルスqを出力するようになっている。
【0112】
予測演算部402及び細分化部403は、移動距離測定値ΔSについて移動距離計401の分解能を超える細分化をパルス間隔の予測演算にて行うものであり、そのために、移動距離計401のパルスqから移動距離計15の出力パルスと等価なトリガーパルスpを発生するようになっている。予測演算部402は、移動距離計401のパルスqと時計14の時刻tとを入力して、パルスqの時間間隔からパルスpを発生すべき時間間隔Δtを予測し、このパルス発生時間間隔Δtを細分化部403に送出するようになっている。細分化部403は、パルス発生時間間隔Δtと時刻tとを入力して、パルス発生時間間隔Δt毎にトリガーパルスpを発生し、このパルスpを積算部104に送出するようになっている。
【0113】
パルス発生時間間隔Δtの予測手法としては、パルス発生時間間隔Δtを一定にするシンプルな手法や(図6(a)参照)、パルス発生時間間隔Δtの増減分を一定にする手法(図6(b)参照)、パルスqの時間間隔の変化を表す多項式によりパルス発生時間間隔Δtを予測する手法(図6(c)参照)などが例示できる。
パルス発生時間間隔Δtを一定にする場合(図6(a)参照)、パルスqの直前の時間間隔(t2−t1)を所定の分割数たとえば“100”や“256”で割ってパルス発生時間間隔Δtを算出し、これを繰り返し用いてパルス発生時間間隔Δt経過する度にパルスpを発生するようになっている。
【0114】
パルス発生時間間隔Δtの増減分を一定にする場合(図6(b)参照)、やはりパルスqの直前の時間間隔(t3−t2)を所定分割数で割ってパルス発生時間間隔Δtを算出するが、これは初期値Δt0としてだけ用いる。さらに、直前の時間間隔(t3−t2)に加え、もう一つ前の時間間隔(t2−t1)も用いて、差分Δ2tを式{(t3−t2)−(t2−t1)}/{(所定分割数)×(所定分割数)}にて算出し、この差分Δ2tでパルス発生時間間隔Δtを増減する。具体的には、パルスpを発生する度にパルス発生時間間隔Δtを初期値Δt0から始めて差分Δ2tずつ変えるようになっている。
【0115】
多項式を用いて予測する場合(図6(c)参照)、例えば横軸に移動距離(ΔS)を採り縦軸に時間間隔(t)を採ったグラフを表わせるデータ領域を確保しておき、そこに、一定距離(S/q)を自動車90が走行した度に得られた一連のパルスqの時間間隔(t6−t5),(t5−t4),(t4−t3),(t3−t2),(t2−t1)を記憶保持して、更にそのグラフ(図では太い実線)に整合する多項式たとえば四次式を最小自乗法等の常套手段で求める。それから、その多項式で延長したグラフ(図では太い破線)について、一定距離(S/q)を所定の分割数たとえば“100”や“256”で割った細分距離で横軸(ΔS)を細分して(図では細い破線)、それぞれ(図では細い破線と太い破線との交点)の縦軸値を求め、これらの縦軸値を上記の所定分割数で割れば随時変化するパルスpのパルス発生時間間隔Δtが得られる。
【0116】
この場合、移動距離計401の分解能が第一基準長Nより粗くなっているため、パルスqの時間間隔も同じ比率で長くなり、そのままでは移動距離測定値ΔSの更新に必要な精度を満足しないが、予測演算部402の予測演算によってパルス発生時間間隔Δtが算出され、さらに細分化部403によってトリガーパルスpが生成され、そのパルスpのパルス発生時間間隔Δtが十分に短くなっているので、積算部104が移動距離計15でトリガーされていたときと同様に動作する。これにより、移動距離測定値ΔSの分解能が第一基準長Nより細かくなったのと等価になる。
【0117】
適切な移動距離測定値ΔSが得られれば、他の部分は路面性状測定装置300と同じになっているので、路面性状測定装置400でも、第一基準長Nに対応したテクスチャ深さSMTD(第一路面性状値)や、第二基準長Mに対応した国際ラフネス指数IRI(第二路面性状値)が、的確に求まる。
したがって、路面性状測定装置400にあっては、路面形状の相関や濃淡模様の相関に基づく距離測定による選択的な移動距離測定値ΔSの校正処理にて得られる効果を何ら損なうことなく、車速センサの流用により移動距離計15の分だけ原価を低減することができる。
【実施例5】
【0118】
本発明の路面性状測定装置の実施例5について、その具体的な構成を、図面を引用して説明する。図7は、路面性状測定装置500の構造を示し、演算部20のブロック図である。また、図8は、(a)〜(c)いずれも移動距離測定値ΔSの細分化に適う補間演算の説明図である。
【0119】
この路面性状測定装置500が上述した実施例4の路面性状測定装置400と相違するのは、演算部20に一時記憶部501が追加された点と、パルスpの時間間隔ひいては移動距離測定値ΔSに係る細分化を予測演算にて行う予測演算部402及び細分化部403がそれぞれ補間演算部502及び細分化部503に改造されて細分化を補間演算にて行うようになっている点である。
【0120】
一時記憶部501は、各測定器具13,14,31,16,301,51,302から送出されて演算部20に入力された加速度検出値β,時刻t,傾き検出値α,基準位置高さ測定値K,基準位置受光量Kp,離隔位置高さ測定値J,離隔位置受光量Jpを先入れ先出し方式(FIFO)で記憶保持するとともに、パルスpをランダムアクセス方式で記憶保持するようになっている。書込は、パルスq,p以外の何れかの測定値が演算部20に入力される度に行われ、読出は、細分化部503から許可された範囲について、測定値を要する処理部21,32,25,52,101,202,303が総て入力待ちになる度に行われるようになっている。
【0121】
一時記憶部501の記憶容量は、車速センサの分解能対応距離(S/q)を走行中に入力された各測定値を入側用と出側用とで二組ほど記録しておける容量が欲しいところ、これを時間軸で見るとパルスqの時間間隔で二回分の時間に相当し、自動車90の走行速度が低下すると必要容量が増加するようにも見られるが、その場合は、そもそも総ての測定値が後続の演算に使われる訳ではないので、精度を悪化させることなく、データを間引くことができる。そこで、この一時記憶部501には、例えば一つおきにデータを取捨するといった適宜な間引き処理が組み合わされており、満杯近くなると間引き処理が行われて、データが半分に圧縮され、メモリオーバーフローが回避されるようになっている。
【0122】
補間演算部502及び細分化部503は、移動距離測定値ΔSについて移動距離計401の分解能を超える細分化をパルス間隔の補間演算にて行うものであり、そのために、移動距離計401のパルスqから移動距離計15の出力パルスと等価なトリガーパルスpを発生するようになっている。補間演算部502は、移動距離計401のパルスqと時計14の時刻tとを入力して、パルスqの時間間隔からパルスpを発生すべきであった時間間隔Δtを補間演算にて求め、このパルス発生時間間隔Δtを細分化部503に送出するようになっている。細分化部503は、パルス発生時間間隔Δtを入力して、パルス発生時間間隔Δt毎にトリガーパルスpを発生し、このパルスpを適宜なデータ形式で一時記憶部501に書き込むようになっている。パルスpの書込は一時記憶部501に記憶されている過去の時刻tを参照しながら時間を遡って行われるようになっている。
【0123】
パルス発生時間間隔Δtの補間手法としては、予測手法のときと同様、パルス発生時間間隔Δtを一定にする手法や(図8(a)参照)、パルス発生時間間隔Δtの増減分を一定にする手法(図8(b)参照)、パルスqの時間間隔の変化を表す多項式によりパルス発生時間間隔Δtを補間する手法(図8(c)参照)などが例示できる。
パルス発生時間間隔Δtを一定にする場合(図8(a)参照)、パルスqの直前の時間間隔(t2−t1)を所定の分割数たとえば“100”や“256”で割ってパルス発生時間間隔Δtを算出し、これを繰り返し用いてパルス発生時間間隔Δt経過する度にパルスpが発生していたかのような書込を一時記憶部501へ行うようになっている。
【0124】
パルス発生時間間隔Δtの増減分を一定にする場合(図8(b)参照)、やはりパルスqの直前の時間間隔(t3−t2)を所定分割数で割ってパルス発生時間間隔Δtを算出するが、これは初期値Δt0としてだけ用いる。さらに、直前の時間間隔(t3−t2)に加え、もう一つ前の時間間隔(t2−t1)も用いて、差分Δ2tを式{(t3−t2)−(t2−t1)}/{(所定分割数)×(所定分割数)}にて算出し、この差分Δ2tでパルス発生時間間隔Δtを増減する。具体的には、パルスpを発生する度にパルス発生時間間隔Δtを初期値Δt0から始めて差分Δ2tずつ変えるようになっている。この場合のパルスpについても、そのようなパルスpが発生していたかのような書込を一時記憶部501へ行うようになっている。
【0125】
多項式を用いて予測する場合(図8(c)参照)、例えば横軸に移動距離(ΔS)を採り縦軸に時間間隔(t)を採ったグラフを表わせるデータ領域を確保しておき、そこに、一定距離(S/q)を自動車90が走行した度に得られた一連のパルスqの時間間隔(t6−t5),(t5−t4),(t4−t3),(t3−t2),(t2−t1)を記憶保持して、更にそのグラフ(図では太い実線)に整合する多項式たとえば四次式を最小自乗法等の常套手段で求める。それから、直近の時間間隔(t6−t5)のグラフ(図では太い実線の一部)について、一定距離(S/q)を所定の分割数たとえば“100”や“256”で割った細分距離で横軸(ΔS)を細分して(図では細い実線)、それぞれ(図では細い実線と太い実線との交点)の縦軸値を求め、これらの縦軸値を上記の所定分割数で割れば随時変化するパルスpのパルス発生時間間隔Δtが得られる。この場合のパルスpについても、そのようなパルスpが発生していたかのような書込を一時記憶部501へ行うようになっている。
【0126】
この場合も、補間演算部502の補間演算によってパルス発生時間間隔Δtが算出され、きらに細分化部503によってトリガーパルスpが生成され、そのパルスpのパルス発生時間間隔Δtが十分に短くなっているので、移動距離測定値ΔSの分解能が第一基準長Nより細かくなったのと等価になる。
なお、この補間演算の場合は、補間対象とされるパルスqの時間間隔(t6−t5)が確定しているので、上述の手法で一連のパルス発生時間間隔Δtを算出した後、その総和ΣΔtを算出し、それを用いて配分比Δp=(Δt/ΣΔt)を算出し、それを用いてパルス発生時間間隔Δtを式Δt=Δp・(t6−t5)で修正することにより、誤差が累積しないで散逸するようになっている。
【0127】
そして、適切な移動距離測定値ΔSが得られれば、他の部分は路面性状測定装置400と同じになっているので、路面性状測定装置500でも、第一基準長Nに対応したテクスチャ深さSMTD(第一路面性状値)や、第二基準長Mに対応した国際ラフネス指数IRI(第二路面性状値)が、的確に求まる。
したがって、路面性状測定装置500にあっては、路面形状の相関や濃淡模様の相関に基づく距離測定による選択的な移動距離測定値ΔSの校正処理にて得られる効果を何ら損なうことなく、車速センサの流用により移動距離計15の分だけ原価を低減することができる。しかも、急な速度変化があっても測定精度は良好に維持される。
【実施例6】
【0128】
本発明の路面性状測定装置の実施例6について、その具体的な構成を、図面を引用して説明する。図9は、路面性状測定装置600の構造を示し、演算部20における移動距離測定値ΔSの校正処理部601および細分化部602に関するブロック図である。
【0129】
この路面性状測定装置600が上述した実施例5の路面性状測定装置500と相違するのは、校正処理部304とパルス距離変換係数103との組合わせに代わって校正処理部601及び細分化部602が移動距離測定値ΔSの校正処理を実行するようになった点と、それに伴ってパルス距離変換係数可変の積算部104がパルス距離変換係数固定の積算部24に戻された点である。
【0130】
校正処理部601は、校正処理部304と同様のものであり、同様にして拡縮係数φを求めるが、拡縮係数φでパルス距離変換係数103を修正するのでなく、拡縮係数φを細分化部602に送出するようになっている。
細分化部602は、細分化部503とほぼ同様のものであるが、細分化のための分割数を固定せず可変するようになった点で細分化部503と異なる。具体的には、固定時の分割数を拡縮係数φで除するようになっている。なお、分割数に端数が生じた場合は、それに起因する誤差が累積しないよう、端数を次の細分化処理に引き継ぐようにもなっている。
【0131】
この場合、パルス距離変換係数は固定されているが、その代わり拡縮係数φに応じてパルス分割数が増減するので、上述した路面性状測定装置500と同様、移動距離測定値ΔSが相関に基づく校正処理によって適切に拡縮される。
したがって、路面性状測定装置600にあっても、路面形状の相関や濃淡模様の相関に基づく距離測定による選択的な移動距離測定値ΔSの校正処理にて得られる効果を何ら損なうことなく、車速センサの流用により移動距離計15の分だけ原価を低減することができるうえ、急な速度変化があっても測定精度が良好に維持される。
【実施例7】
【0132】
本発明の路面性状測定装置の実施例7について、その具体的な構成を、図面を引用して説明する。図10は、路面性状測定装置700の簡略側面図であり、図11は、演算部20のブロック図である。
【0133】
この路面性状測定装置700が上述した実施例6の路面性状測定装置600と相違するのは、第三基準長Lに対応した低周波重視の3mσ(第三路面性状値)をも測定するために、第三高さ計701及び第四高さ計702が自動車90に追加搭載された点と、踏面算出部703,704及び3mσ算出部705が演算部20に追加された点である。
【0134】
第三高さ計701にも第四高さ計702にも部材共通化等のため高さ計16,51と同じものが採用されており、何れの高さ計701,702も、自動車90の下面に装着されて、そこから路面80までの高さを測定するようになっている。
第三高さ計701は、第一高さ計16から自動車90の前方向すなわち進行方向へ第三基準長Lの半分(L/2)だけ離れたところに設けられて、路面80までの前方高さ測定値を演算部20に送出するようになっている。
【0135】
第四高さ計702は、第一高さ計16から自動車90の後方向へ即ち第三高さ計701とは反対側へ第三基準長Lの半分(L/2)だけ離れたところに設けられて、路面80までの後方高さ測定値を演算部20に送出するようになっている。
踏面算出部703,704は踏面算出部25,52と同様のものであるが、踏面算出部703は第三高さ計701にて得た前方高さ測定値を入力してその踏面を求めるようになっており、踏面算出部704は第四高さ計702にて得た後方高さ測定値を入力してその踏面を求めるようになっている。
【0136】
3mσ算出部705は、基本部分は既述の3mσ算出部26と同じであり、高低差算出部53用に踏面算出部25で算出した踏面高さKmから既述の適宜タイミングで3mσを算出するものであるが、踏面高さKmをそのまま3mσ算出に用いるのでなく踏面算出部703,704からの踏面高さで修正してから3mσ算出に供するようになっている。具体的には、踏面算出部703,704からの踏面高さの平均を前後高さ平均値として、走行測定時の前後高さ平均値と車両停止時の前後高さ平均値との差を踏面高さKmに加算するようになっている。
【0137】
車載式の場合、走行測定中に、自動車90の揺動や傾動などに起因して、3mの第三基準長Lの両端位置が基準車輪73で支持したときより大きく上下動しがちであり、その影響は両端変動の平均分だけ第三基準長Lの中央位置に及ぶところ、この路面性状測定装置700にあっては、その影響分に相当する前後高さ平均値にて踏面高さKmが修正されるので、不所望な影響が打ち消されて、3mσの測定も適切に行われる。
しかも、高さ計701,702の追加コストが部材共通化にて抑制されている。また、第一高さ計16の高さ測定値K,Kmを凹凸二次元形状演算部32と高低差算出部53と3mσ算出部705とで利用するようにしたことにより、高さ計の更なる増加ひいてはコストアップが回避されている。
【0138】
[その他]
なお、上記実施例では、いずれも自動車に搭載されていたが、本発明の路面性状測定装置は、自走式の車両に限らず、自動車牽引式の車両や、手動牽引式の車両にも、搭載することができる。
また、路面性状測定装置70のように手動牽引式の台車に搭載する場合には、蛇行抑制のため、車輪73の進行方向を固定する手段か進行方向を所定範囲に制限する手段を基準車輪73に付設するのも良い。その場合、固定手段や制限手段は、固定や制限を自在にロック/ロック解除しうるようになっているのが、好ましい。
【0139】
さらに、上記実施例4〜6ではパルス発生時間間隔Δtを可変するようになったが、一般にラインセンサ等の受光素子での測定における検出時間間隔は一定になっていることが多いため、パルス発生時間間隔Δtを変化させると両者を同期させるのが難しい。そこで、移動速度からパルス発生時間間隔の最小値を算出し、その半分以下の時間間隔(繰り返し出力の頻度では2倍程度かそれ以上)で測定しうるものを高さ計16等に採用したうえで、高さ計16等の出力データから、パルス発生時間間隔Δtに基づくサンプリングタイミングに最も近いところのデータを選出して、後続の演算に使用すると良い。このような間引き手法の他、補間演算による手法も、有効である。これらの手法は、パルス発生時間間隔Δtが可変のときに限らず、パルス発生時間間隔Δtが一定であっても検出時間間隔と同期の採れていないときには、有用である。
【図面の簡単な説明】
【0140】
【図1】本発明の実施例1について、路面性状測定装置の構造を示し、(a)が簡略側面図、(b)が演算部のブロック図である。
【図2】演算部における相関算出部の説明図である。
【図3】本発明の実施例2について、路面性状測定装置の構造を示し、演算部のブロック図である。
【図4】本発明の実施例3について、路面性状測定装置の構造を示し、(a)が簡略側面図、(b)が演算部のブロック図である。
【図5】本発明の実施例4について、路面性状測定装置の構造を示し、演算部のブロック図である。
【図6】(a)〜(c)いずれも移動距離測定値の細分化に適う予測演算の説明図である。
【図7】本発明の実施例5について、路面性状測定装置の構造を示し、演算部のブロック図である。
【図8】(a)〜(c)いずれも移動距離測定値の細分化に適う補間演算の説明図である。
【図9】本発明の実施例6について、路面性状測定装置の構造を示し、演算部における移動距離測定値の校正処理部および細分化部についてのブロック図である。
【図10】本発明の実施例7について、路面性状測定装置の簡略側面図である。
【図11】演算部のブロック図である。
【図12】先願発明の具体例1について、路面性状測定装置の構造を示し、(a)が簡略側面図、(b)が演算部のブロック図である。
【図13】(a)〜(c)何れも移動経路に沿った路面の縦断面を模式的に表示したものである。
【図14】先願発明の具体例2について、路面性状測定装置の構造を示し、(a)が簡略側面図、(b)が演算部のブロック図である。
【図15】(a)は、SMTD算出手法の説明図であって横軸に移動距離を採り縦軸に高さを採って回帰曲線からの偏倚状態を示している。(b)は、移動経路に沿った路面の縦断面を模式的に表示したものであり、(c)は、測定箇所の位置関係を示すベクトル図である。
【図16】先願発明の具体例3について、路面性状測定装置の構造を示し、(a)が簡略側面図、(b)が演算部のブロック図である。
【図17】(a)が移動経路に沿った路面の模式的な縦断面図および位置関係を示すベクトル図であり、(b)がその要部の拡大図である。
【図18】従来の路面性状測定装置について、(a)が手動牽引式3mプロフィルメータの外観斜視図、(b)がその簡略側面図、(c)がそれを用いた測定状況の模式図、(d)が他の装置を用いたSMTDやIRIの測定状況の模式図、(e)が路面の表層部の縦断面の拡大図である。
【符号の説明】
【0141】
10 路面性状測定装置(手動牽引式3mプロフィルメータ)
11 枠部(3mのフレーム、梁、ビーム、手動の台車)
12 測定部(機器箱、収納ボックス)
13 加速度計
14 時計(計時ユニット、タイマー)
15 移動距離計(エンコーダ)
16 高さ計(変位計、距離計、第一高さ計)
20 演算部(マイクロプロセッサ、システムLSI)
21 上下変位算出部(一定周期)
22 凹凸二次元形状演算部(上下動補正付き)
22a 凹凸データ(データ蓄積用メモリ)
23 テクスチャ演算部(ピッチM、キメ深さ)
23a テクスチャデータ(データ蓄積用メモリ)
24 積算部(リスタートタイプ)
25 踏面算出部(転動接触幅から最大値選出)
25a 踏面データ(データ蓄積用メモリ)
26 3mσ算出部(ピッチL/2+標準偏差)
26a 3mσデータ(データ蓄積用メモリ)
30 路面性状測定装置(手動牽引式3mプロフィルメータ)
31 傾斜計
32 凹凸二次元形状演算部(上下動+傾き補正付き)
33 テクスチャ演算部(キメ深さ+SMTD)
41,42 位置(高さ計の移動位置)
50 路面性状測定装置(手動牽引式3mプロフィルメータ)
51 高さ計(変位計、距離計、第二高さ計)
52 踏面算出部(転動接触幅から最大値選出)
52a 踏面データ(データ蓄積用メモリ)
53 高低差算出部(ピッチN)
53a 前回データ(データ保持用メモリ)
54 加算部(Σ演算)
55 国際ラフネス指数算出部(IRI算出)
61〜64 位置(高さ計の移動位置)
65,66 位置(高さ計による路面上の測定位置)
70 路面性状測定装置(手動牽引式3mプロフィルメータ)
73 基準車輪(四個一組、手動の台車)
74 牽引部(アーム、ハンドル、手動の台車)
75 操作部(タッチパネル)
76 高さ計(変位計、距離計)
79 路面性状測定装置(SMTD測定装置、IRI測定装置)
80 路面(道路、滑走路)
81 舗装材(浸透水性アスファルト・コンクリート)
82 凹部(排水用小溝、排水用小孔、排水用空隙)
83 踏面(凸部上面、舗装面、走行面、転動接触面)
90 自動車(自走車両、移動手段)
L,M,N 基準長(L>M>N)
100 路面性状測定装置(車載式、SMTD測定装置、IRI測定装置)
101 相関算出部(踏面データに基づく相関)
102 校正処理部(単一相関)
103 パルス距離変換係数(S/P)
104 積算部(変換係数可変式)
200 路面性状測定装置(車載式、SMTD測定装置、IRI測定装置)
201 凹凸二次元形状演算部(上下動+傾き補正付き)
202 相関算出部(凹凸データに基づく相関)
300 路面性状測定装置(車載式、SMTD測定装置、IRI測定装置)
301,302 フォトセンサ(受光量出力部)
303 相関算出部(濃淡データに基づく相関)
304 校正処理部(複数相関)
400 路面性状測定装置(車載式、SMTD測定装置、IRI測定装置)
401 移動距離計(既載の車速センサ)
402 予測演算部(パルス間隔予測演算)
403 細分化部(二次トリガ・疑似パルス生成)
500 路面性状測定装置(車載式、SMTD測定装置、IRI測定装置)
501 一時記憶部(FIFO)
502 補間演算部(パルス間隔補間演算)
503 細分化部(二次トリガ・疑似パルス生成)
600 路面性状測定装置(車載式、SMTD測定装置、IRI測定装置)
601 校正処理部(複数相関)
602 細分化部(二次トリガ・疑似パルス生成)
700 路面性状測定装置(車載式、SMTD,IRI,3mσ測定装置)
701 高さ計(変位計、距離計、第三高さ計)
702 高さ計(変位計、距離計、第四高さ計)
703,704 踏面算出部(転動接触幅から最大値選出)
705 3mσ算出部(ピッチL/2+標準偏差)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される移動距離計と第一高さ計と第二高さ計と演算部とを具えた路面性状測定装置において、
前記移動距離計が、前記車両の車軸またはその駆動軸の回転を検出することにより、前記車両の移動距離を測定するものであり、
前記第一高さ計が、路面の排水用凹部の開口幅より短い第一基準長に対応した範囲またはそれより狭い範囲を測定対象として、前記路面までの高さを測定するものであり、
第二高さ計が、前記第一基準長より長い第二基準長だけ前記第一高さ計から前記車両の前後方向へ離隔したところに設けられ、前記第一基準長に対応した範囲またはそれより狭い範囲を測定対象として、路面までの高さを測定するものであり、
前記演算部が、前記移動距離計にて得た移動距離測定値と前記第一高さ計にて得た基準位置高さ測定値とに基づいて前記第一基準長対応の第一路面性状値を算出し、前記移動距離測定値と前記基準位置高さ測定値と前記第二高さ計にて得た離隔位置高さ測定値とに基づいて前記第二基準長対応の第二路面性状値を算出し、前記第二路面性状値の算出に際しては踏面の算出を行うが前記第一路面性状値の算出に際しては踏面の算出を行わないものであって、更に、前記基準位置高さ測定値に基づく踏面と前記離隔位置高さ測定値に基づく踏面との両踏面のずれを前記第二基準長の近傍に制限した範囲内で両踏面の相関を算出して最大相関値を選出するとともにそのときのずれ量を採択し、この採択ずれ量に応じて前記移動距離測定値を拡縮する校正処理を前記最大相関値に応じて選択的に行うようになっている
ことを特徴とする路面性状測定装置。
【請求項2】
車両に搭載される移動距離計と第一高さ計と第二高さ計と演算部とを具えた路面性状測定装置において、
前記移動距離計が、前記車両の車軸またはその駆動軸の回転を検出することにより、前記車両の移動距離を測定するものであり、
前記第一高さ計が、路面の排水用凹部の開口幅より短い第一基準長に対応した範囲またはそれより狭い範囲を測定対象として、前記路面までの高さを測定するものであり、
第二高さ計が、前記第一基準長より長い第二基準長だけ前記第一高さ計から前記車両の前後方向へ離隔したところに設けられ、前記第一基準長に対応した範囲またはそれより狭い範囲を測定対象として、路面までの高さを測定するものであり、
前記演算部が、前記移動距離計にて得た移動距離測定値と前記第一高さ計にて得た基準位置高さ測定値とに基づいて前記第一基準長対応の第一路面性状値を算出し、前記移動距離測定値と前記基準位置高さ測定値と前記第二高さ計にて得た離隔位置高さ測定値とに基づいて前記第二基準長対応の第二路面性状値を算出し、前記第二路面性状値の算出に際しては踏面の算出を行うが前記第一路面性状値の算出に際しては踏面の算出を行わないものであって、更に、前記移動距離測定値と前記離隔位置高さ測定値とに基づいて前記第一基準長対応の離隔位置路面性状値を算出し、前記第一路面性状値と前記離隔位置路面性状値とに基づき両者のずれを前記第二基準長の近傍に制限した範囲内で両者の相関を算出して最大相関値を選出するとともにそのときのずれ量を採択し、この採択ずれ量に応じて前記移動距離測定値を拡縮する校正処理を前記最大相関値に応じて選択的に行うようになっている
ことを特徴とする路面性状測定装置。
【請求項3】
前記移動距離計はその分解能が前記第一基準長より粗いものであり、前記演算部が、前記移動距離測定値について前記移動距離計の分解能を超える細分化を予測演算にて行うようになっていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載された路面性状測定装置。
【請求項4】
前記移動距離計はその分解能が前記第一基準長より粗いものであり、前記演算部が、前記基準位置高さ測定値と前記離隔位置高さ測定値とを一時記憶しておくものであって、前記移動距離測定値について前記移動距離計の分解能を超える細分化を補間演算にて行うようになっていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載された路面性状測定装置。
【請求項5】
前記車両に搭載されて路面までの高さを測定する第三高さ計が、前記第二基準長より長い三メートル以上の第三基準長の半分だけ前記第一高さ計から前記車両の前方向へ離隔したところに設けられ、前記車両に搭載されて路面までの高さを測定する第四高さ計が、前記第三基準長の半分だけ前記第一高さ計から前記車両の後方向へ離隔したところに設けられ、前記演算部が、前記基準位置高さ測定値と前記第三高さ計にて得た前方高さ測定値と前記第四高さ計にて得た後方高さ測定値とに基づいて前記第三基準長対応の第三路面性状値を算出するものであって、その際に、前記基準位置高さ測定値に関しては前記第二路面性状値の算出に係る踏面の算出結果を用いるようになっていることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れかに記載された路面性状測定装置。
【請求項6】
上下方向の加速度を検出する加速度計が、前記第一高さ計の上方または極近傍に設けられ、前記演算部が、前記加速度計の加速度検出値に基づいて上下変位を算出するとともに、その上下変位算出値を前記基準位置高さ測定値に加算または減算して前記第一路面性状値に関する補正を行うものであることを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れかに記載された路面性状測定装置。
【請求項7】
前記車両の傾きを検出する傾斜計が設けられ、前記演算部が、前記第一路面性状値の算出に際し前記傾斜計にて得た傾き検出値に基づいて前記基準位置高さ測定値から鉛直方向射影成分と水平方向射影成分とを算出し前記鉛直方向射影成分にて前記基準位置高さ測定値を補正するとともに前記水平方向射影成分を加算または減算して前記移動距離測定値を補正するものであることを特徴とする請求項6記載の路面性状測定装置。
【請求項8】
前記演算部が、前記第二路面性状値の算出に際し前記傾き検出値の差分と前記基準位置高さ測定値とに基づき前記移動距離測定値を補正して前記高さ計の路面上測定位置が前記第二基準長だけ移動したか否かを判定するものであることを特徴とする請求項7記載の路面性状測定装置。
【請求項9】
前記演算部が、前記路面上測定位置の前記第二基準長の移動ごとに路面の高低差を算出するものであって、その算出に際し、前記傾き検出値と前記高さ測定値と前記離隔位置高さ測定値も前記路面上測定位置の前記第二基準長の移動ごとの値を用いるものであることを特徴とする請求項8記載の路面性状測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2007−47137(P2007−47137A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−254085(P2005−254085)
【出願日】平成17年8月5日(2005.8.5)
【出願人】(503263894)株式会社クマタカ エンジニアリング (1)
【Fターム(参考)】