身体装着型電子機器
【課題】使用者が移動すべき方位を確実かつ直接的に誘導案内できる身体装着型電子機器を提供する。
【解決手段】使用者の身体の一部に装着される身体装着型電子機器において、第2回転盤109Bの溝部D上に移動可能におかれている錘109Cを、第1回転盤109AのスリットSに沿って移動させ、使用者が移動すべき方位に向かって使用者を引っ張るような牽引力を使用者に付与し、使用者が出発地から目的地に向かって移動する際に、移動すべき方位である「北」などを確実かつ直接的に誘導案内する。
【解決手段】使用者の身体の一部に装着される身体装着型電子機器において、第2回転盤109Bの溝部D上に移動可能におかれている錘109Cを、第1回転盤109AのスリットSに沿って移動させ、使用者が移動すべき方位に向かって使用者を引っ張るような牽引力を使用者に付与し、使用者が出発地から目的地に向かって移動する際に、移動すべき方位である「北」などを確実かつ直接的に誘導案内する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用者が出発地から目的地に向かって移動する際に、移動すべき方位を案内する身体装着型電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、出発地である現在位置から目的地までの経路を案内する装置として、自動車用の経路誘導装置(いわゆるカーナビゲーション装置)が知られている。一般的なカーナビゲーション装置では、GPS(Global Positioning System)等を利用して移動体としての自動車の現在位置を特定し、特定された移動体の現在位置と目的地までの経路とを表示する。
【0003】
また、記憶媒体にフラッシュメモリ等を使用して小型化した、簡易型のナビゲーション装置(いわゆるPND:Personal Navigation Device)が提供されており、歩行者用の経路誘導装置として利用されている。例えば、特許文献1には、歩行者が進路変更点となる交差点に到達したときに、誘導経路の方位と歩行者の進行方位を比較し、誘導経路の方位と歩行者の進行方位とが異なったときに振動子を駆動してこれを報知する歩行者用経路誘導装置が開示されている。また、画像や音声、又はこれらの組み合わせにより、歩行者に経路を誘導する技術が公知技術として記載されている。
【特許文献1】特開平10−332407号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載の振動子を利用した歩行者用経路誘導装置では、使用者に進行方位を変更すべきであることを報知できるにすぎず、直接的に経路を誘導することはできない。
【0005】
また、GPS測位情報に基づいて誘導経路又は経路上の特定点の位置関係を機器画面に表示する場合は、利用者の利便性を考えると、カラー表示部が必要となる上、その表示画面サイズを小さくした場合には視認性が悪くなるという問題がある。また、音声により経路を誘導する場合、生活雑音等が大きい地域では音声メッセージを聞き取りにくくなるため、確実に経路を誘導できなくなる上、静閑な場所で利用すると住空間の調和を乱す虞がある。
【0006】
本発明は、使用者に対して移動すべき方位を確実かつ直接的に知らせて誘導案内することができる身体装着型電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、上記目的を達成するためになされたもので、使用者の身体の一部に装着され、使用者が第1地点から第2地点に向かって移動する際に、使用者が移動すべき方位を案内する身体装着型電子機器において、使用者が移動すべき方位に向かって使用者を引っ張るような力(牽引力)を発生させる牽引力発生手段を備えることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、使用者の身体の一部に装着され、使用者が第1地点から第2地点に向かって移動する際に、使用者が移動すべき方位を案内する身体装着型電子機器において、前記第1地点である現在位置を取得する現在位置取得手段と、前記現在位置取得手段により取得された現在位置において、使用者が移動すべき方位を決定する移動方位決定手段と、前記移動方位決定手段により決定された移動方位に向かって使用者を引っ張るような力を発生する牽引力発生手段と、を備えることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、使用者の身体の一部に装着される装置本体を備え、使用者が第1地点から第2地点に向かって移動する際に、使用者が移動すべき方位を案内する身体装着型電子機器において、前記装置本体の前記第1地点である現在位置を取得する現在位置取得手段と、前記現在位置取得手段により取得された現在位置において、使用者が移動すべき方位を決定する移動方位決定手段と、前記装置本体の姿勢を検出する姿勢検出手段と、この姿勢検出手段により検出された前記装置本体の姿勢が予め定められた姿勢になった場合に、前記移動方位決定手段により取得された移動方位に向かって使用者を引っ張るような力を発生する牽引力発生手段と、を備えることを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、使用者の身体の一部に装着される装置本体を備え、使用者が第1地点から第2地点に向かって移動する際に、使用者が移動すべき方位を案内する身体装着型電子機器において、前記装置本体の前記第1地点である現在位置を取得する現在位置取得手段と、前記現在位置取得手段により取得された現在位置において、使用者が移動すべき方位を決定する移動方位決定手段と、前記装置本体に対する操作を検出する操作検出手段と、この操作検出手段により前記装置本体に対する操作が検出された場合に、前記移動方位決定手段により決定された移動方位に向かって使用者を引っ張るような力を発生する牽引力発生手段と、を備えることを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項2から4のいずれか一項に記載の身体装着型電子機器において、前記移動方位決定手段は、前記現在位置取得手段により取得された現在位置に関する第1地点情報と前記第2地点に関する第2地点情報とに基づいて前記使用者が移動すべき方位を決定することを特徴とする。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項2から4のいずれか一項に記載の身体装着型電子機器において、前記第1地点と、この第1地点とは異なる第2地点とを結ぶ経路を取得する経路取得手段を備え、前記移動方位決定手段は、前記現在位置取得手段により取得された現在位置に関する第1地点情報と前記経路取得手段により取得された経路に関する情報とに基づいて前記使用者が移動すべき方位を決定することを特徴とする。
【0013】
請求項7に記載の発明は、請求項1から6のいずれか一項に記載の身体装着型電子機器において、前記牽引力発生手段は、上下方向に互いに重なって設けられた第1及び第2回転盤と、前記第1回転盤に設けられたスリットと前記第2回転盤上に前記スリットを横切るように設けられた溝部との間に保持され、前記第1回転盤及び前記第2回転盤を相対的に回転駆動させたときに前記スリットに沿って移動する移動部材と、前記第1回転盤と前記第2回転盤をそれぞれ独立して駆動可能な駆動部と、前記駆動部を制御して、前記移動方位決定手段により決定された移動方位に前記スリットの長手方向が一致するように前記第1回転盤を回転させた後、前記第2回転盤を所定方向に回転させることにより、前記スリットに沿って前記移動部材を移動させる駆動制御部と、を備えることを特徴とする。
【0014】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の身体装着型電子機器において、前記装置本体が向いている方位(例えば、12時方向の方位)を取得する方位取得手段(方位センサ)を備え、前記駆動制御部は、前記方位取得手段により取得された方位と前記移動方位に基づいて、前記第1回転盤を回転させることを特徴とする。
【0015】
請求項9に記載の発明は、請求項7又は8に記載の身体装着型電子機器において、前記溝部は、前記第2回転盤を定速回転させたときに、前記スリットに沿って前記移動部材を第1速度で移動させる第1誘導溝と、前記第1速度よりも遅い第2速度で移動させる第2誘導溝と、が交互に配設されてなり、前記駆動制御部は、前記移動部材が前記第1誘導溝により誘導されて前記スリットに沿って移動する際に、前記移動部材が前記移動方位とは逆方向に移動するように前記第2回転盤を回転させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、視覚や聴覚に頼ることなく、人が引っ張られるという感覚を擬似的に生じさせることにより、移動方位を直接的に案内するので、使用者は前記第1地点である現在位置において移動すべき方位を容易に知得することができる。また、経路情報に基づいて移動方位を案内することで、容易に経路を誘導することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。本実施形態は、本発明に係る身体装着型電子機器を腕時計に適用したものである。
図1は本実施形態に係る腕時計の外観図で、図2は図1に示す時計本体10のA−A断面図である。
【0018】
図1に示すように、腕時計1は、時計本体10と、この時計本体の両端部に係止されたリストバンド11とで構成される。時計本体10は、日付や時刻、及び方位等の各種情報を表示する液晶表示画面107と、使用者が目的地情報等を入力可能なスイッチ(操作部)106a〜106fとを備える。腕時計1は、例えば、使用者の手首又は腕に着脱可能に装着され、装着時には時計本体10は使用者の腕Uと接触することとなる。
【0019】
図2に示すように、時計本体10の内部には、裏蓋113と側壁部材117により収容部が形成されており、この収容部には機器モジュール114が配設される。なお、図2には現れていないが、機器モジュール114の内部には、現在時刻を計時する時計部120や液晶表示画面107の表示制御を行う表示駆動部等が設けられる。
【0020】
液晶表示画面107は機器モジュール114の上方に配置され、取付部材115によって固定されている。また、液晶表示画面107の上方は側壁部材117で支持された風防112で覆われており、風防112の周囲にはベゼル116が周設されている。
【0021】
また、機器モジュール114は、この腕時計1を装着した使用者が目的地に向かって移動する際に、使用者が移動すべき方位に向かって使用者を引っ張るような牽引力を発生させる牽引力発生手段を備える。本実施形態は、牽引力発生手段は、第1回転盤109Aと、第2回転盤109Bと、移動部材としての錘109Cと、モータ及び伝達機構からなる駆動部108と、駆動部108を制御する制御部111とを備えて構成される。
【0022】
第1回転盤109Aと第2回転盤109Bは、上下に重なって配設され(ここでは、第1回転盤109Aが上)、軸118を中心として回転可能に支持されている。錘109Cは、第1回転盤109Aの略中心から半径方向に設けられたスリットS(図3参照)と、第2回転盤109Bに環状に設けられた溝部D(図4参照)との間に保持される。
【0023】
第2回転盤109Bの溝部Dは、第1回転盤109Aと第2回転盤109Bを重ねた状態で常にスリットSを横切るように形成される。したがって、錘109Cは、スリットSと溝部Dの交差する位置に保持されることとなり、第1回転盤及び第2回転盤を相対的に回転させたときに、スリットSと交差する溝部Dの位置(中心からの距離)に応じてスリットSに沿って移動する。
【0024】
本実施形態では、第2回転盤109Bに設けられる溝部Dは、第2回転盤109Bを定速回転させたときに、スリットSに沿って錘109Cを高速で一気に移動させるための第1誘導溝D1と、低速で移動させる第2誘導溝D2と、が交互に配設されてなる。図4において、a−b間及びc−d間が第1誘導溝D1となり、b−c間及びd−a間が第2誘導溝となる。
【0025】
具体的には、第1誘導溝D1は回転角に対する半径方向の変位が大きく、第2誘導溝D2は回転角に対する半径方向の変位が小さくなるようにしている。図4において、例えば、第1誘導溝D1では、回転角40°に対する半径方向の変位(スリットSに沿った移動距離)がほぼスリット長であり、第2誘導溝D2では、回転角140°に対する半径方向の変位がほぼスリット長となるようにしている。特に、第2誘導溝D2を折れ線形状として、b−b1間は回転角40°に対する半径方向の変位がスリット長の約1/2、b1−b2間及びb2−b3間は回転角40°に対する半径方向の変位がスリット長の約1/4、b3−c間は回転角20°に対する半径方向の変位が0となるように形成している。
【0026】
これにより、錘109Cが第1誘導溝D1とスリットSの交差部分を移動するときの速度は,第2誘導溝D2とスリットSの交差部分を移動するときの速度よりも大きくなる。すなわち、第1回転盤109Aを固定した状態で、第2回転盤109Bを時計回りに定速回転させると、錘109CはスリットSに沿って周縁側から中心側に高速で移動し、中心側から周縁側に低速で移動することとなる。
【0027】
ここで、錘109CがスリットSに沿って中心に向かって高速で移動すると、この腕時計1を装着した使用者は時計本体10の重心変動を顕著に感じる。その結果、使用者は、錘109Cの移動方向とは逆方向に腕を引っ張られているという感覚を受ける。一方、錘109CがスリットSに沿って周縁側に向かって低速で移動するときは、高速で移動するときに比べて時計本体10の重心変動は微小となるので、使用者は腕を引っ張られるという感覚を受けない。
【0028】
したがって、第1回転盤109aを固定したまま第2回転盤109bを連続的に定速回転させると、使用者は、錘109Cが高速で移動するときに、錘109Cの移動方向とは逆方向に腕を引っ張られるという感覚だけを受けることになる。本実施形態では、このような現象を利用して、使用者に移動すべき方位を案内する。
【0029】
図5は、時計本体10に内蔵されている各構成要素を機能的に示したブロック図である。図3に示すように、時計本体10は、傾斜センサ101、方位センサ102、GPSシステム103、GPSアンテナ104、記憶部105、操作部106、表示部107、駆動部108,通信部110、時計部120、及び制御部111を備えて構成される。
【0030】
傾斜センサ101は、時計本体10の空間姿勢を検出するための姿勢検出手段を構成している。具体的には、時計本体10の盤面が地面に対して水平であるか否かを検出する。傾斜センサ101により検出された時計本体10の姿勢が予め定められた姿勢(例えば、地面に対して水平)になった場合(傾斜センサが“オン”)に、第1及び第2回転盤109A,109Bが駆動され、移動方位が案内される。
【0031】
方位センサ102は、例えば、地磁気センサであり、時計本体10が向いている方位を取得するための方位検出手段を構成している。例えば、時計本体が水平となっている場合、盤面の3時方向、6時方向、9時方向、12時方向に、第1地点である現在位置における絶対方位を対応させることができる。
【0032】
GPSシステム103は、複数のGPS衛星から放射された電波信号(GPS衛星の軌道と衛星に搭載された原子時計からの時刻データを含む)を、GPSアンテナ104を介して受信し、所定の演算処理を行うことにより使用者の現在位置を取得するための現在位置取得手段を構成している。例えば、GPSシステム103により、使用者の現在位置に関する情報(現在位置情報)として、緯度・経度及び現在位置における絶対方位(東・西・南・北)を検出することができる。
【0033】
記憶部105は、ハードディスクや不揮発性メモリ等の記憶媒体で構成され、道路地図情報を記憶する。この道路地図情報は、例えば、使用者の現在位置情報と操作部106により入力された目的地情報に基づいて、現在位置と目的地とを結ぶ経路を算出するのに用いられる。
【0034】
操作部106は、図1に示すように6つのスイッチ106a〜106fで構成され、使用者はこれらを操作することで目的地情報等を入力したり、時刻合わせをしたりする。
【0035】
表示部(液晶表示画面)107は、傾斜センサ101及び方位センサ102による検出結果に基づいて、現在位置における絶対方位を表示する。例えば、時計本体10の盤面が地面に対して水平となるように時計本体を保持した場合に、4方向(3時、6時、9時、12時方向)がどの絶対方位に対応しているかを示す。また、一般的なナビゲーション装置のように、道路地図、現在位置、及び目的地までの経路等を表示したり、日時を表示したりできる。
【0036】
駆動部108は、第1及び第2回転盤109A,109Bに、例えば、歯車伝達機構を介して接続される。この駆動部108は、後述する制御部111による駆動制御に基づいて、第1回転盤109Aと第2回転盤109Bをそれぞれ独立して、または一体的に駆動可能に構成される。
【0037】
通信部110は、所定の通信ネットワークに接続されたサーバや携帯電話等の外部機器と、アンテナを介して各種情報の送受信を行うとともに、情報の送受信に関する信号処理を行う。例えば、外部機器に現在位置情報と目的地情報を送信し、外部機器によって経路を算出させ、経路情報を受信することが可能となる。この場合、道路地図情報を記憶する記憶部105は不要となるため、装置構成を簡素化することができる。
【0038】
時計部120は、現在時刻を計時する。時計部120から出力された日時情報に基づいて、表示部107における日時表示が制御される。
【0039】
制御部111は、CPU、ROM、及びRAMで構成される。CPUは、ROMに記憶されている各種プログラムを読み出してRAMの作業領域に展開し、これを実行することにより腕時計1の全体及び各構成部の動作を制御する。
【0040】
具体的には、制御部111は、出発地(第1地点)と目的地(第2地点)を結ぶ経路を取得するための経路取得手段を構成している。ここで、目的地と出発地を結ぶ経路には、予め使用者により設定された経路、及び操作部106により入力された目的地と出発地に関する情報(目的地情報、出発地情報)に基づいて算出された経路を含む。
【0041】
例えば、操作部106から入力された目的地情報及び出発地情報、並びに記憶部105に記憶されている道路地図情報に基づいて経路を決定する。このとき、現在位置を出発地とする場合は、出発地情報の入力は不要となる。
【0042】
図6は、図1に示す腕時計1を腕に装着し、表示部107に経路過程を表示した状態の一例を示す図であり、出発地と目的地、及びこれらを結ぶ経路の関係について示している。
図6に示すように、第1地点である出発地(現在地又は現在位置)と第2地点である目的地とが設定されると、これらの地点を含む道路地図情報が参照される。そして、使用者の要求(例えば、最短ルート、方向転換が少ない等)に従って経路が決定される。なお、目的地に到達するのに複数の経路が存在する場合は、使用者によって選択できるようにしてもよい。
【0043】
また、制御部111は、GPSシステム103により取得された現在位置情報と、取得された経路に関する情報(経路情報)とに基づいて、使用者が移動すべき方位を決定するための移動方位決定手段を構成している。例えば、図6において、経路Cに沿って目的地まで誘導する場合、使用者の現在位置がP1であれば移動方位は「北」となり、使用者の現在位置がP2であれば移動方位は「西」となる。
【0044】
または、現在位置情報と目的地情報とに基づいて、使用者が移動すべき方位を決定するようにしてもよい。図6において、例えば、使用者が出発地から目的地まで移動する際、現在位置が出発地であれば移動方位は「ほぼ北西」となる。つまり、実際に道路が存在するか否かは関係なく、目的地の方角を単に案内する。使用者が自由に経路を選択したい場合には、このように目的地の方角だけを案内した方が有効である。
【0045】
さらに、制御部111は、駆動部108を制御して、決定した移動方位にスリットSの長手方向が一致するように第1回転盤109Aを回転させた後、第2回転盤109Bを所定の方向に定速回転させることにより、スリットSに沿って錘109Cを移動させるための駆動制御部を構成している。これにより、使用者の現在位置において移動すべき方位を案内できるとともに、所定の経路に沿って目的地まで誘導することができる。
【0046】
また、制御部111は、操作部106により経路誘導を開始させる操作(誘導開始スイッチ)が行われたことを検出するための操作検出手段を構成し、誘導開始スイッチがオンとなった場合に第1及び第2回転盤109A,A09Bを回転させる。なお、本実施形態では、操作部106により方位案内を開始させる操作が行われたときだけでなく、傾斜センサ101がオン(時計本体10が地面に対して水平)になったときにも第1及び第2回転盤109A,109Bを回転させる。すなわち、使用者が方位案内を所望するときだけ回転盤を駆動するので、錘109Cが無闇に移動して装着感が悪化するのを防止できる。
【0047】
図7は、本実施形態に係る方位案内処理の一例について示したフローチャートである。このフローチャートは、制御部111のCPUが方位案内に関するプログラムを実行することにより実現される。また、図8〜11は、第1回転盤109Aを固定して、第2回転盤109Bを回転させたときの錘109Cの移動状態を示した説明図である。
【0048】
ステップS101では、第1地点を示す出発地情報を入力又は取得する。例えば、使用者が操作部106を操作することにより出発地情報を入力する。また、現在位置を出発地とする場合は、GPSシステム103から入力された現在位置情報を出発地情報として取得する。
ステップS102では、使用者が操作部106を操作することにより目的情報を入力又は取得する。なお、ステップS101、S102において、出発地情報及び目的地情報は、例えば、緯度・経度、住所、施設名、郵便番号、電話番号、その他地図上の位置を特定可能なコードにより入力することができる。また、予め設定されている出発地又は目的地の中から所望のものを選択させることにより、入力できるようにしてもよい。
【0049】
ステップS103では、ステップS101、S102において取得された出発地情報及び目的地情報に基づいて、対応する道路地図情報を取得する。すなわち、出発地及び目的地が含まれる道路地図情報を取得する。
【0050】
ステップS104では、目的地情報、出発地情報(現在位置情報)、及び道路地図情報に基づいて経路を決定する(図6参照)。
ステップS105では、GPSシステム103により現在位置を検出し、現在位置情報として、現在位置の緯度・経度、及び絶対方位を取得する。この現在位置情報は、一定時間間隔で取得されて、RAMに記憶される。RAMに記憶された現在位置情報の軌跡に基づいて、使用者の進行方位を算出することができる。
【0051】
ステップS106では、ステップS101により入力された第1地点を示す出発地情報又はステップS105で取得された現在位置情報と、ステップS104で決定された経路情報とに基づいて、移動すべき方位を決定する。例えば、図6において、地点P1での移動方位は「北」となり、地点P2での移動方位は「西」となる。ここで、移動方位は、使用者の進行方位を基準とした相対方位で表すようにしてもよい。
【0052】
ステップS107では、傾斜スイッチ又は誘導開始スイッチがオンになっているか否か、すなわち、時計本体10が地面に対して水平であるか否かを判定する。そして、時計本体10が地面に対して水平である場合にはステップS108に移行し、水平となっていない場合はステップS105に移行する。
【0053】
ステップS108では、方位センサ102により、時計本体10が向いている方位を取得する。時計本体10は地面に対して水平となっているので、盤面内の特定方向(例えば、12時方向)の指す方位を検出すれば、時計本体10の3時方向、6時方向、9時方向、12時方向の指す方位がわかる。
【0054】
ステップS109では、スリットの長手方向がステップS106で決定された移動方位を向くように、第1及び第2回転盤109A,109Bを一体的に回転駆動させる。具体的には、第1回転盤109AのスリットSが現在向いている方向と、前記決定された移動方位に基づいて差分を算出して回転量を決定し、第1及び第2の各回転盤109A,109Bを一体的に回転駆動させる。
【0055】
例えば、移動方位が「北」で、ステップS108で取得された時計本体10の12時方向の方位が「北」である場合、第1及び第2回転盤109A,109Bは図8に示す位置まで一体的に回転される。すなわち、スリットSの長手方向が北を向くように第1回転盤109Aは回転され、第2回転盤109Bは第1回転盤109Aと一体的に回転されるので、第1誘導溝D1の始点aの部分とスリットSが交差した状態となる。また、錘109Cは、スリットSの周縁側端部S1に位置することとなる。
【0056】
ステップS110では、第2回転盤109Bのみを時計回りに定速で回転駆動させ、錘109CをスリットSに沿って移動させる。
例えば、図8に示す状態から第2回転盤109Bが40°回転されると、図9に示す状態に遷移する。つまり、第1誘導溝D1の終点(第2誘導溝の始点)bの部分とスリットSが交差した状態となる。このとき、錘109Cは、スリットSの周縁側端部S1から中心側端部S2に一気に移動する。
【0057】
さらに、第2回転盤109Bが40°回転(回転開始から80°)されると図10に示す状態に遷移し、第2誘導溝D2の第1中間点b1の部分とスリットS1が交差した状態となる。さらに、第2回転盤109Bが80°回転(回転開始から160°)されると図11に示す状態に遷移し、第2誘導溝D2の第3中間点b3とスリットSが交差した状態となる。このとき、錘109Cは、スリットSの中心側端部S2から周縁側端部S1にゆっくりと移動する。
【0058】
さらに、第2回転盤109Bが回転され、c−d間の第1誘導溝D1、d−a間の第2誘導溝D2とスリットSが交差する状態を経て、図8に示す状態へと戻る。このとき、錘109Cは、スリットSの周縁側端部S1から中心側端部S2に一気に移動した後、中心側端部S2から周縁側端部S1にゆっくりと移動する。
【0059】
図12は、第2回転盤109Bを、図8に示す状態から一回転させたときの錘109Cの変位を示した説明図である。なお、図12では錘109Cの変位を直線で表しているため、錘109Cが第1誘導溝D1、第2誘導溝D2をそれぞれ等速度v1,v2で移動するようにみえるが、実際には、速度の向きは中心側から外側へ、又は外側から中心側へと変化するため、速度の大きさも一定ではないことは明らかである。つまり、図12は、錘109Cが第1誘導溝D1とスリットSの交差部分を移動するときの速度が,第2誘導溝D2とスリットSの交差部分を移動するときの速度よりも大きくなることを示しているにすぎない。
【0060】
このように、錘109CがスリットSに沿って第1及び第2の各回転盤109A,109Bの中心に向かって高速で移動する(例えば、図9中において12時の位置から6時の位置に向かって、錘109CがスリットSに沿って高速で移動する)と、この腕時計1を装着した使用者は時計本体10の重心変動を顕著に感じる。その結果、使用者は、錘109Cの移動方向とは逆方向(図9中において6時の位置から12時の位置の方向)、すなわち移動方位(図9の「北」)に腕を引っ張られているという感覚を受ける。本実施形態では、第2回転盤109Bを一回転した場合に、2回腕を引っ張られるという感覚を受けることになる。なお、第2回転盤109Bを連続回転させれば、腕を引っ張られるという感覚を使用者に連続して与えることができるので、移動方位を確実に案内することができる。
【0061】
上述したように、本実施形態に係る方位案内処理によれば、現在位置における移動すべき方位を使用者に直接的に案内することができるとともに、目的地までの経路を誘導することができる。また、表示部107に特定方向の絶対方位を表示させることにより、移動方位がどの方位であるのかを使用者に知得させることもできる。
【0062】
また、移動方位を示唆するスリットSを設けた第1回転盤109Aを、任意の方向に回転させることができるので、時計本体10の向きにかかわらず、任意の方位を示唆できるという利点がある。
【0063】
また、錘109Cを移動させる溝部Dを設けた第2回転盤109Bの回転方向を反転させるだけで、示唆する方向を180°変更することができるので、第1回転盤109AのスリットSが現在向いている方向(中心から周縁側に向かう方向)を、必ずしも移動方位に一致させる必要はなくなる。例えば、スリットSが現在「北」を向いていて、移動方位「南」を示唆する場合は、第1回転盤109Aを回転させる必要はなく、第2回転盤109Bを反時計回りに回転させることで、移動方位を案内することができる。これにより、第1回転盤109Aをより早く所望の状態とすることができるので、移動方位を案内するまでの時間を短縮できる。
【0064】
以上、本発明者によってなされた発明を実施形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
【0065】
本発明に係る身体装着型電子機器は、上記実施形態で示した腕時計に限定されず、使用者の身体の一部に直接的又は間接的に接触する電子機器に適用することができる。
例えば、図13に示すように、本体を与える長手の支柱23と、該支柱23の上端部に使用者にて把持される取っ手22と、を備える杖2に適用できる。具体的には、取っ手22に身体装着型電子機器の装置本体21を搭載する。杖2の使用時には、支柱23の下端部が接地され、このとき取っ手22及び装置本体21は地面に対して水平となるので、現在位置における方位を常時取得できる。したがって、使用者は杖の状態を意識することなく、方位案内を受けることができる。また、杖2を地面から一定時間離したときに、方位案内処理が実行されるようにしてもよい。
【0066】
また、本発明に係る身体装着型電子機器を、携帯電話やPDA(Personal Digital Assistant)等に適用することもできる。この場合、使用者は、身体装着型電子機器からの牽引力を指先にて感じることになる。
【0067】
また、上記実施形態では、2枚の回転盤109A、109Bと錘109Cにより、使用者の腕を引っ張るような牽引力を発生させるようにしているが、その他の機構により牽引力を発生させるようにしてもよい。
例えば、図14に示すクランク−スライダ機構を利用できる。すなわち、図14では、クランクシャフト31に第1コネクティングロッド32の一端が連結され、このコネクティングロッド32はクランクシャフト31の回転運動にかかわらず、定点Fを通るように取り付けられる。また、第1コネクティングロッド32の他端と第2コネクティングロッド33の一端は互いに回転自在に連結され、第2コネクティングロッド33の他端にスライダ34が固定される。
【0068】
このようなクランク−スライダ機構では、クランクシャフト31を回転駆動させると、スライダ34は軸に沿って往復運動を行うが、スライダ34の運動の向きがクランク側に変わるときの加速度の変化を極端に大きくすることができる。この加速度の変化を利用して、一方向に牽引力を発生させることができる。
また、任意の形をした板を回転軸に取り付け,板と他の部品との接触を用いて運動を伝達する、いわゆるカム機構を利用して牽引力を発生させることもできる。
【0069】
また、第1回転盤109Aに形成されるスリットSの形状及び第2回転盤109Bに形成される溝部Dの形状は上記実施形態に示したものに限定されない。
例えば、図15、図16に示す回転盤の組を利用することができる。すなわち、図15に示すように、第1回転盤109Aには、回転盤の周縁部に端部が近接するようにスリットSが形成されている。また、図16に示すように、第2回転盤109Bには、ほぼ楕円形状となるように、誘導溝Dが形成されている。このような形状とすることにより、スリットSと溝部Dとの間に保持される錘109Cの最大移動量は回転盤の直径に近くなり、上記実施形態で示した場合よりも大きくなるため、より大きな牽引力を発生させることが可能となる。
【0070】
さらに、第1回転盤109Aには、スリットSの代わりに一方向に延びる溝を形成するようにしてもよい。また、第2回転盤109Bに形成される溝部Dは、説明を簡単にするために直線的な折れ線形状としているが、実際には錘109Cをなめらかに移動させるように計算された曲線形状とするのが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明に係る身体装着型電子機器を腕時計に適用した実施形態に係る腕時計の外観図である。
【図2】図1に示す時計本体のA−A断面図である。
【図3】第1回転盤の一例を示す説明図である。
【図4】第2回転盤の一例を示す説明図である。
【図5】時計本体に内蔵されている各構成要素を機能的に示したブロック図である。
【図6】図1に示す腕時計を腕に装着し、表示部に経路過程を表示した状態の一例を示す図である。
【図7】本実施形態に係る方位案内処理の一例について示したフローチャートである。
【図8】第2回転盤を回転させる直前の状態を示した説明図である。
【図9】第2回転盤を回転させたときの錘の移動状態を示した説明図である。
【図10】第2回転盤をさらに回転させたときの錘の移動状態を示した説明図である。
【図11】第2回転盤をさらに回転させたときの錘の移動状態を示した説明図である。
【図12】第2回転盤を、図8に示す状態から一回転させたときの錘の変位を示した説明図である。
【図13】本発明に係る身体装着型電子機器を杖に適用した実施形態に係る杖の外観図である。
【図14】本発明に係る身体装着型電子機器の牽引力発生手段に適用し得るクランク−スライダ機構を示した説明図である。
【図15】第1回転盤の変形例について示した説明図である。
【図16】第2回転盤の変形例について示した説明図である。
【符号の説明】
【0072】
1 腕時計
10 時計本体
11 リストバンド
101 傾斜センサ(姿勢検出手段)
102 方位センサ(方位取得手段)
103 GPSシステム(現在位置取得手段)
104 GPSアンテナ
105 記憶部
106 操作部
107 表示部
108 駆動部(牽引力発生手段)
109A,109B 回転盤(牽引力発生手段)
109C 錘
110 通信部
111 制御部(移動方位決定手段、操作検出手段、経路取得手段、駆動制御部、牽引力発生手段)
120 時計部
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用者が出発地から目的地に向かって移動する際に、移動すべき方位を案内する身体装着型電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、出発地である現在位置から目的地までの経路を案内する装置として、自動車用の経路誘導装置(いわゆるカーナビゲーション装置)が知られている。一般的なカーナビゲーション装置では、GPS(Global Positioning System)等を利用して移動体としての自動車の現在位置を特定し、特定された移動体の現在位置と目的地までの経路とを表示する。
【0003】
また、記憶媒体にフラッシュメモリ等を使用して小型化した、簡易型のナビゲーション装置(いわゆるPND:Personal Navigation Device)が提供されており、歩行者用の経路誘導装置として利用されている。例えば、特許文献1には、歩行者が進路変更点となる交差点に到達したときに、誘導経路の方位と歩行者の進行方位を比較し、誘導経路の方位と歩行者の進行方位とが異なったときに振動子を駆動してこれを報知する歩行者用経路誘導装置が開示されている。また、画像や音声、又はこれらの組み合わせにより、歩行者に経路を誘導する技術が公知技術として記載されている。
【特許文献1】特開平10−332407号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載の振動子を利用した歩行者用経路誘導装置では、使用者に進行方位を変更すべきであることを報知できるにすぎず、直接的に経路を誘導することはできない。
【0005】
また、GPS測位情報に基づいて誘導経路又は経路上の特定点の位置関係を機器画面に表示する場合は、利用者の利便性を考えると、カラー表示部が必要となる上、その表示画面サイズを小さくした場合には視認性が悪くなるという問題がある。また、音声により経路を誘導する場合、生活雑音等が大きい地域では音声メッセージを聞き取りにくくなるため、確実に経路を誘導できなくなる上、静閑な場所で利用すると住空間の調和を乱す虞がある。
【0006】
本発明は、使用者に対して移動すべき方位を確実かつ直接的に知らせて誘導案内することができる身体装着型電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、上記目的を達成するためになされたもので、使用者の身体の一部に装着され、使用者が第1地点から第2地点に向かって移動する際に、使用者が移動すべき方位を案内する身体装着型電子機器において、使用者が移動すべき方位に向かって使用者を引っ張るような力(牽引力)を発生させる牽引力発生手段を備えることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、使用者の身体の一部に装着され、使用者が第1地点から第2地点に向かって移動する際に、使用者が移動すべき方位を案内する身体装着型電子機器において、前記第1地点である現在位置を取得する現在位置取得手段と、前記現在位置取得手段により取得された現在位置において、使用者が移動すべき方位を決定する移動方位決定手段と、前記移動方位決定手段により決定された移動方位に向かって使用者を引っ張るような力を発生する牽引力発生手段と、を備えることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、使用者の身体の一部に装着される装置本体を備え、使用者が第1地点から第2地点に向かって移動する際に、使用者が移動すべき方位を案内する身体装着型電子機器において、前記装置本体の前記第1地点である現在位置を取得する現在位置取得手段と、前記現在位置取得手段により取得された現在位置において、使用者が移動すべき方位を決定する移動方位決定手段と、前記装置本体の姿勢を検出する姿勢検出手段と、この姿勢検出手段により検出された前記装置本体の姿勢が予め定められた姿勢になった場合に、前記移動方位決定手段により取得された移動方位に向かって使用者を引っ張るような力を発生する牽引力発生手段と、を備えることを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、使用者の身体の一部に装着される装置本体を備え、使用者が第1地点から第2地点に向かって移動する際に、使用者が移動すべき方位を案内する身体装着型電子機器において、前記装置本体の前記第1地点である現在位置を取得する現在位置取得手段と、前記現在位置取得手段により取得された現在位置において、使用者が移動すべき方位を決定する移動方位決定手段と、前記装置本体に対する操作を検出する操作検出手段と、この操作検出手段により前記装置本体に対する操作が検出された場合に、前記移動方位決定手段により決定された移動方位に向かって使用者を引っ張るような力を発生する牽引力発生手段と、を備えることを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項2から4のいずれか一項に記載の身体装着型電子機器において、前記移動方位決定手段は、前記現在位置取得手段により取得された現在位置に関する第1地点情報と前記第2地点に関する第2地点情報とに基づいて前記使用者が移動すべき方位を決定することを特徴とする。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項2から4のいずれか一項に記載の身体装着型電子機器において、前記第1地点と、この第1地点とは異なる第2地点とを結ぶ経路を取得する経路取得手段を備え、前記移動方位決定手段は、前記現在位置取得手段により取得された現在位置に関する第1地点情報と前記経路取得手段により取得された経路に関する情報とに基づいて前記使用者が移動すべき方位を決定することを特徴とする。
【0013】
請求項7に記載の発明は、請求項1から6のいずれか一項に記載の身体装着型電子機器において、前記牽引力発生手段は、上下方向に互いに重なって設けられた第1及び第2回転盤と、前記第1回転盤に設けられたスリットと前記第2回転盤上に前記スリットを横切るように設けられた溝部との間に保持され、前記第1回転盤及び前記第2回転盤を相対的に回転駆動させたときに前記スリットに沿って移動する移動部材と、前記第1回転盤と前記第2回転盤をそれぞれ独立して駆動可能な駆動部と、前記駆動部を制御して、前記移動方位決定手段により決定された移動方位に前記スリットの長手方向が一致するように前記第1回転盤を回転させた後、前記第2回転盤を所定方向に回転させることにより、前記スリットに沿って前記移動部材を移動させる駆動制御部と、を備えることを特徴とする。
【0014】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の身体装着型電子機器において、前記装置本体が向いている方位(例えば、12時方向の方位)を取得する方位取得手段(方位センサ)を備え、前記駆動制御部は、前記方位取得手段により取得された方位と前記移動方位に基づいて、前記第1回転盤を回転させることを特徴とする。
【0015】
請求項9に記載の発明は、請求項7又は8に記載の身体装着型電子機器において、前記溝部は、前記第2回転盤を定速回転させたときに、前記スリットに沿って前記移動部材を第1速度で移動させる第1誘導溝と、前記第1速度よりも遅い第2速度で移動させる第2誘導溝と、が交互に配設されてなり、前記駆動制御部は、前記移動部材が前記第1誘導溝により誘導されて前記スリットに沿って移動する際に、前記移動部材が前記移動方位とは逆方向に移動するように前記第2回転盤を回転させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、視覚や聴覚に頼ることなく、人が引っ張られるという感覚を擬似的に生じさせることにより、移動方位を直接的に案内するので、使用者は前記第1地点である現在位置において移動すべき方位を容易に知得することができる。また、経路情報に基づいて移動方位を案内することで、容易に経路を誘導することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。本実施形態は、本発明に係る身体装着型電子機器を腕時計に適用したものである。
図1は本実施形態に係る腕時計の外観図で、図2は図1に示す時計本体10のA−A断面図である。
【0018】
図1に示すように、腕時計1は、時計本体10と、この時計本体の両端部に係止されたリストバンド11とで構成される。時計本体10は、日付や時刻、及び方位等の各種情報を表示する液晶表示画面107と、使用者が目的地情報等を入力可能なスイッチ(操作部)106a〜106fとを備える。腕時計1は、例えば、使用者の手首又は腕に着脱可能に装着され、装着時には時計本体10は使用者の腕Uと接触することとなる。
【0019】
図2に示すように、時計本体10の内部には、裏蓋113と側壁部材117により収容部が形成されており、この収容部には機器モジュール114が配設される。なお、図2には現れていないが、機器モジュール114の内部には、現在時刻を計時する時計部120や液晶表示画面107の表示制御を行う表示駆動部等が設けられる。
【0020】
液晶表示画面107は機器モジュール114の上方に配置され、取付部材115によって固定されている。また、液晶表示画面107の上方は側壁部材117で支持された風防112で覆われており、風防112の周囲にはベゼル116が周設されている。
【0021】
また、機器モジュール114は、この腕時計1を装着した使用者が目的地に向かって移動する際に、使用者が移動すべき方位に向かって使用者を引っ張るような牽引力を発生させる牽引力発生手段を備える。本実施形態は、牽引力発生手段は、第1回転盤109Aと、第2回転盤109Bと、移動部材としての錘109Cと、モータ及び伝達機構からなる駆動部108と、駆動部108を制御する制御部111とを備えて構成される。
【0022】
第1回転盤109Aと第2回転盤109Bは、上下に重なって配設され(ここでは、第1回転盤109Aが上)、軸118を中心として回転可能に支持されている。錘109Cは、第1回転盤109Aの略中心から半径方向に設けられたスリットS(図3参照)と、第2回転盤109Bに環状に設けられた溝部D(図4参照)との間に保持される。
【0023】
第2回転盤109Bの溝部Dは、第1回転盤109Aと第2回転盤109Bを重ねた状態で常にスリットSを横切るように形成される。したがって、錘109Cは、スリットSと溝部Dの交差する位置に保持されることとなり、第1回転盤及び第2回転盤を相対的に回転させたときに、スリットSと交差する溝部Dの位置(中心からの距離)に応じてスリットSに沿って移動する。
【0024】
本実施形態では、第2回転盤109Bに設けられる溝部Dは、第2回転盤109Bを定速回転させたときに、スリットSに沿って錘109Cを高速で一気に移動させるための第1誘導溝D1と、低速で移動させる第2誘導溝D2と、が交互に配設されてなる。図4において、a−b間及びc−d間が第1誘導溝D1となり、b−c間及びd−a間が第2誘導溝となる。
【0025】
具体的には、第1誘導溝D1は回転角に対する半径方向の変位が大きく、第2誘導溝D2は回転角に対する半径方向の変位が小さくなるようにしている。図4において、例えば、第1誘導溝D1では、回転角40°に対する半径方向の変位(スリットSに沿った移動距離)がほぼスリット長であり、第2誘導溝D2では、回転角140°に対する半径方向の変位がほぼスリット長となるようにしている。特に、第2誘導溝D2を折れ線形状として、b−b1間は回転角40°に対する半径方向の変位がスリット長の約1/2、b1−b2間及びb2−b3間は回転角40°に対する半径方向の変位がスリット長の約1/4、b3−c間は回転角20°に対する半径方向の変位が0となるように形成している。
【0026】
これにより、錘109Cが第1誘導溝D1とスリットSの交差部分を移動するときの速度は,第2誘導溝D2とスリットSの交差部分を移動するときの速度よりも大きくなる。すなわち、第1回転盤109Aを固定した状態で、第2回転盤109Bを時計回りに定速回転させると、錘109CはスリットSに沿って周縁側から中心側に高速で移動し、中心側から周縁側に低速で移動することとなる。
【0027】
ここで、錘109CがスリットSに沿って中心に向かって高速で移動すると、この腕時計1を装着した使用者は時計本体10の重心変動を顕著に感じる。その結果、使用者は、錘109Cの移動方向とは逆方向に腕を引っ張られているという感覚を受ける。一方、錘109CがスリットSに沿って周縁側に向かって低速で移動するときは、高速で移動するときに比べて時計本体10の重心変動は微小となるので、使用者は腕を引っ張られるという感覚を受けない。
【0028】
したがって、第1回転盤109aを固定したまま第2回転盤109bを連続的に定速回転させると、使用者は、錘109Cが高速で移動するときに、錘109Cの移動方向とは逆方向に腕を引っ張られるという感覚だけを受けることになる。本実施形態では、このような現象を利用して、使用者に移動すべき方位を案内する。
【0029】
図5は、時計本体10に内蔵されている各構成要素を機能的に示したブロック図である。図3に示すように、時計本体10は、傾斜センサ101、方位センサ102、GPSシステム103、GPSアンテナ104、記憶部105、操作部106、表示部107、駆動部108,通信部110、時計部120、及び制御部111を備えて構成される。
【0030】
傾斜センサ101は、時計本体10の空間姿勢を検出するための姿勢検出手段を構成している。具体的には、時計本体10の盤面が地面に対して水平であるか否かを検出する。傾斜センサ101により検出された時計本体10の姿勢が予め定められた姿勢(例えば、地面に対して水平)になった場合(傾斜センサが“オン”)に、第1及び第2回転盤109A,109Bが駆動され、移動方位が案内される。
【0031】
方位センサ102は、例えば、地磁気センサであり、時計本体10が向いている方位を取得するための方位検出手段を構成している。例えば、時計本体が水平となっている場合、盤面の3時方向、6時方向、9時方向、12時方向に、第1地点である現在位置における絶対方位を対応させることができる。
【0032】
GPSシステム103は、複数のGPS衛星から放射された電波信号(GPS衛星の軌道と衛星に搭載された原子時計からの時刻データを含む)を、GPSアンテナ104を介して受信し、所定の演算処理を行うことにより使用者の現在位置を取得するための現在位置取得手段を構成している。例えば、GPSシステム103により、使用者の現在位置に関する情報(現在位置情報)として、緯度・経度及び現在位置における絶対方位(東・西・南・北)を検出することができる。
【0033】
記憶部105は、ハードディスクや不揮発性メモリ等の記憶媒体で構成され、道路地図情報を記憶する。この道路地図情報は、例えば、使用者の現在位置情報と操作部106により入力された目的地情報に基づいて、現在位置と目的地とを結ぶ経路を算出するのに用いられる。
【0034】
操作部106は、図1に示すように6つのスイッチ106a〜106fで構成され、使用者はこれらを操作することで目的地情報等を入力したり、時刻合わせをしたりする。
【0035】
表示部(液晶表示画面)107は、傾斜センサ101及び方位センサ102による検出結果に基づいて、現在位置における絶対方位を表示する。例えば、時計本体10の盤面が地面に対して水平となるように時計本体を保持した場合に、4方向(3時、6時、9時、12時方向)がどの絶対方位に対応しているかを示す。また、一般的なナビゲーション装置のように、道路地図、現在位置、及び目的地までの経路等を表示したり、日時を表示したりできる。
【0036】
駆動部108は、第1及び第2回転盤109A,109Bに、例えば、歯車伝達機構を介して接続される。この駆動部108は、後述する制御部111による駆動制御に基づいて、第1回転盤109Aと第2回転盤109Bをそれぞれ独立して、または一体的に駆動可能に構成される。
【0037】
通信部110は、所定の通信ネットワークに接続されたサーバや携帯電話等の外部機器と、アンテナを介して各種情報の送受信を行うとともに、情報の送受信に関する信号処理を行う。例えば、外部機器に現在位置情報と目的地情報を送信し、外部機器によって経路を算出させ、経路情報を受信することが可能となる。この場合、道路地図情報を記憶する記憶部105は不要となるため、装置構成を簡素化することができる。
【0038】
時計部120は、現在時刻を計時する。時計部120から出力された日時情報に基づいて、表示部107における日時表示が制御される。
【0039】
制御部111は、CPU、ROM、及びRAMで構成される。CPUは、ROMに記憶されている各種プログラムを読み出してRAMの作業領域に展開し、これを実行することにより腕時計1の全体及び各構成部の動作を制御する。
【0040】
具体的には、制御部111は、出発地(第1地点)と目的地(第2地点)を結ぶ経路を取得するための経路取得手段を構成している。ここで、目的地と出発地を結ぶ経路には、予め使用者により設定された経路、及び操作部106により入力された目的地と出発地に関する情報(目的地情報、出発地情報)に基づいて算出された経路を含む。
【0041】
例えば、操作部106から入力された目的地情報及び出発地情報、並びに記憶部105に記憶されている道路地図情報に基づいて経路を決定する。このとき、現在位置を出発地とする場合は、出発地情報の入力は不要となる。
【0042】
図6は、図1に示す腕時計1を腕に装着し、表示部107に経路過程を表示した状態の一例を示す図であり、出発地と目的地、及びこれらを結ぶ経路の関係について示している。
図6に示すように、第1地点である出発地(現在地又は現在位置)と第2地点である目的地とが設定されると、これらの地点を含む道路地図情報が参照される。そして、使用者の要求(例えば、最短ルート、方向転換が少ない等)に従って経路が決定される。なお、目的地に到達するのに複数の経路が存在する場合は、使用者によって選択できるようにしてもよい。
【0043】
また、制御部111は、GPSシステム103により取得された現在位置情報と、取得された経路に関する情報(経路情報)とに基づいて、使用者が移動すべき方位を決定するための移動方位決定手段を構成している。例えば、図6において、経路Cに沿って目的地まで誘導する場合、使用者の現在位置がP1であれば移動方位は「北」となり、使用者の現在位置がP2であれば移動方位は「西」となる。
【0044】
または、現在位置情報と目的地情報とに基づいて、使用者が移動すべき方位を決定するようにしてもよい。図6において、例えば、使用者が出発地から目的地まで移動する際、現在位置が出発地であれば移動方位は「ほぼ北西」となる。つまり、実際に道路が存在するか否かは関係なく、目的地の方角を単に案内する。使用者が自由に経路を選択したい場合には、このように目的地の方角だけを案内した方が有効である。
【0045】
さらに、制御部111は、駆動部108を制御して、決定した移動方位にスリットSの長手方向が一致するように第1回転盤109Aを回転させた後、第2回転盤109Bを所定の方向に定速回転させることにより、スリットSに沿って錘109Cを移動させるための駆動制御部を構成している。これにより、使用者の現在位置において移動すべき方位を案内できるとともに、所定の経路に沿って目的地まで誘導することができる。
【0046】
また、制御部111は、操作部106により経路誘導を開始させる操作(誘導開始スイッチ)が行われたことを検出するための操作検出手段を構成し、誘導開始スイッチがオンとなった場合に第1及び第2回転盤109A,A09Bを回転させる。なお、本実施形態では、操作部106により方位案内を開始させる操作が行われたときだけでなく、傾斜センサ101がオン(時計本体10が地面に対して水平)になったときにも第1及び第2回転盤109A,109Bを回転させる。すなわち、使用者が方位案内を所望するときだけ回転盤を駆動するので、錘109Cが無闇に移動して装着感が悪化するのを防止できる。
【0047】
図7は、本実施形態に係る方位案内処理の一例について示したフローチャートである。このフローチャートは、制御部111のCPUが方位案内に関するプログラムを実行することにより実現される。また、図8〜11は、第1回転盤109Aを固定して、第2回転盤109Bを回転させたときの錘109Cの移動状態を示した説明図である。
【0048】
ステップS101では、第1地点を示す出発地情報を入力又は取得する。例えば、使用者が操作部106を操作することにより出発地情報を入力する。また、現在位置を出発地とする場合は、GPSシステム103から入力された現在位置情報を出発地情報として取得する。
ステップS102では、使用者が操作部106を操作することにより目的情報を入力又は取得する。なお、ステップS101、S102において、出発地情報及び目的地情報は、例えば、緯度・経度、住所、施設名、郵便番号、電話番号、その他地図上の位置を特定可能なコードにより入力することができる。また、予め設定されている出発地又は目的地の中から所望のものを選択させることにより、入力できるようにしてもよい。
【0049】
ステップS103では、ステップS101、S102において取得された出発地情報及び目的地情報に基づいて、対応する道路地図情報を取得する。すなわち、出発地及び目的地が含まれる道路地図情報を取得する。
【0050】
ステップS104では、目的地情報、出発地情報(現在位置情報)、及び道路地図情報に基づいて経路を決定する(図6参照)。
ステップS105では、GPSシステム103により現在位置を検出し、現在位置情報として、現在位置の緯度・経度、及び絶対方位を取得する。この現在位置情報は、一定時間間隔で取得されて、RAMに記憶される。RAMに記憶された現在位置情報の軌跡に基づいて、使用者の進行方位を算出することができる。
【0051】
ステップS106では、ステップS101により入力された第1地点を示す出発地情報又はステップS105で取得された現在位置情報と、ステップS104で決定された経路情報とに基づいて、移動すべき方位を決定する。例えば、図6において、地点P1での移動方位は「北」となり、地点P2での移動方位は「西」となる。ここで、移動方位は、使用者の進行方位を基準とした相対方位で表すようにしてもよい。
【0052】
ステップS107では、傾斜スイッチ又は誘導開始スイッチがオンになっているか否か、すなわち、時計本体10が地面に対して水平であるか否かを判定する。そして、時計本体10が地面に対して水平である場合にはステップS108に移行し、水平となっていない場合はステップS105に移行する。
【0053】
ステップS108では、方位センサ102により、時計本体10が向いている方位を取得する。時計本体10は地面に対して水平となっているので、盤面内の特定方向(例えば、12時方向)の指す方位を検出すれば、時計本体10の3時方向、6時方向、9時方向、12時方向の指す方位がわかる。
【0054】
ステップS109では、スリットの長手方向がステップS106で決定された移動方位を向くように、第1及び第2回転盤109A,109Bを一体的に回転駆動させる。具体的には、第1回転盤109AのスリットSが現在向いている方向と、前記決定された移動方位に基づいて差分を算出して回転量を決定し、第1及び第2の各回転盤109A,109Bを一体的に回転駆動させる。
【0055】
例えば、移動方位が「北」で、ステップS108で取得された時計本体10の12時方向の方位が「北」である場合、第1及び第2回転盤109A,109Bは図8に示す位置まで一体的に回転される。すなわち、スリットSの長手方向が北を向くように第1回転盤109Aは回転され、第2回転盤109Bは第1回転盤109Aと一体的に回転されるので、第1誘導溝D1の始点aの部分とスリットSが交差した状態となる。また、錘109Cは、スリットSの周縁側端部S1に位置することとなる。
【0056】
ステップS110では、第2回転盤109Bのみを時計回りに定速で回転駆動させ、錘109CをスリットSに沿って移動させる。
例えば、図8に示す状態から第2回転盤109Bが40°回転されると、図9に示す状態に遷移する。つまり、第1誘導溝D1の終点(第2誘導溝の始点)bの部分とスリットSが交差した状態となる。このとき、錘109Cは、スリットSの周縁側端部S1から中心側端部S2に一気に移動する。
【0057】
さらに、第2回転盤109Bが40°回転(回転開始から80°)されると図10に示す状態に遷移し、第2誘導溝D2の第1中間点b1の部分とスリットS1が交差した状態となる。さらに、第2回転盤109Bが80°回転(回転開始から160°)されると図11に示す状態に遷移し、第2誘導溝D2の第3中間点b3とスリットSが交差した状態となる。このとき、錘109Cは、スリットSの中心側端部S2から周縁側端部S1にゆっくりと移動する。
【0058】
さらに、第2回転盤109Bが回転され、c−d間の第1誘導溝D1、d−a間の第2誘導溝D2とスリットSが交差する状態を経て、図8に示す状態へと戻る。このとき、錘109Cは、スリットSの周縁側端部S1から中心側端部S2に一気に移動した後、中心側端部S2から周縁側端部S1にゆっくりと移動する。
【0059】
図12は、第2回転盤109Bを、図8に示す状態から一回転させたときの錘109Cの変位を示した説明図である。なお、図12では錘109Cの変位を直線で表しているため、錘109Cが第1誘導溝D1、第2誘導溝D2をそれぞれ等速度v1,v2で移動するようにみえるが、実際には、速度の向きは中心側から外側へ、又は外側から中心側へと変化するため、速度の大きさも一定ではないことは明らかである。つまり、図12は、錘109Cが第1誘導溝D1とスリットSの交差部分を移動するときの速度が,第2誘導溝D2とスリットSの交差部分を移動するときの速度よりも大きくなることを示しているにすぎない。
【0060】
このように、錘109CがスリットSに沿って第1及び第2の各回転盤109A,109Bの中心に向かって高速で移動する(例えば、図9中において12時の位置から6時の位置に向かって、錘109CがスリットSに沿って高速で移動する)と、この腕時計1を装着した使用者は時計本体10の重心変動を顕著に感じる。その結果、使用者は、錘109Cの移動方向とは逆方向(図9中において6時の位置から12時の位置の方向)、すなわち移動方位(図9の「北」)に腕を引っ張られているという感覚を受ける。本実施形態では、第2回転盤109Bを一回転した場合に、2回腕を引っ張られるという感覚を受けることになる。なお、第2回転盤109Bを連続回転させれば、腕を引っ張られるという感覚を使用者に連続して与えることができるので、移動方位を確実に案内することができる。
【0061】
上述したように、本実施形態に係る方位案内処理によれば、現在位置における移動すべき方位を使用者に直接的に案内することができるとともに、目的地までの経路を誘導することができる。また、表示部107に特定方向の絶対方位を表示させることにより、移動方位がどの方位であるのかを使用者に知得させることもできる。
【0062】
また、移動方位を示唆するスリットSを設けた第1回転盤109Aを、任意の方向に回転させることができるので、時計本体10の向きにかかわらず、任意の方位を示唆できるという利点がある。
【0063】
また、錘109Cを移動させる溝部Dを設けた第2回転盤109Bの回転方向を反転させるだけで、示唆する方向を180°変更することができるので、第1回転盤109AのスリットSが現在向いている方向(中心から周縁側に向かう方向)を、必ずしも移動方位に一致させる必要はなくなる。例えば、スリットSが現在「北」を向いていて、移動方位「南」を示唆する場合は、第1回転盤109Aを回転させる必要はなく、第2回転盤109Bを反時計回りに回転させることで、移動方位を案内することができる。これにより、第1回転盤109Aをより早く所望の状態とすることができるので、移動方位を案内するまでの時間を短縮できる。
【0064】
以上、本発明者によってなされた発明を実施形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
【0065】
本発明に係る身体装着型電子機器は、上記実施形態で示した腕時計に限定されず、使用者の身体の一部に直接的又は間接的に接触する電子機器に適用することができる。
例えば、図13に示すように、本体を与える長手の支柱23と、該支柱23の上端部に使用者にて把持される取っ手22と、を備える杖2に適用できる。具体的には、取っ手22に身体装着型電子機器の装置本体21を搭載する。杖2の使用時には、支柱23の下端部が接地され、このとき取っ手22及び装置本体21は地面に対して水平となるので、現在位置における方位を常時取得できる。したがって、使用者は杖の状態を意識することなく、方位案内を受けることができる。また、杖2を地面から一定時間離したときに、方位案内処理が実行されるようにしてもよい。
【0066】
また、本発明に係る身体装着型電子機器を、携帯電話やPDA(Personal Digital Assistant)等に適用することもできる。この場合、使用者は、身体装着型電子機器からの牽引力を指先にて感じることになる。
【0067】
また、上記実施形態では、2枚の回転盤109A、109Bと錘109Cにより、使用者の腕を引っ張るような牽引力を発生させるようにしているが、その他の機構により牽引力を発生させるようにしてもよい。
例えば、図14に示すクランク−スライダ機構を利用できる。すなわち、図14では、クランクシャフト31に第1コネクティングロッド32の一端が連結され、このコネクティングロッド32はクランクシャフト31の回転運動にかかわらず、定点Fを通るように取り付けられる。また、第1コネクティングロッド32の他端と第2コネクティングロッド33の一端は互いに回転自在に連結され、第2コネクティングロッド33の他端にスライダ34が固定される。
【0068】
このようなクランク−スライダ機構では、クランクシャフト31を回転駆動させると、スライダ34は軸に沿って往復運動を行うが、スライダ34の運動の向きがクランク側に変わるときの加速度の変化を極端に大きくすることができる。この加速度の変化を利用して、一方向に牽引力を発生させることができる。
また、任意の形をした板を回転軸に取り付け,板と他の部品との接触を用いて運動を伝達する、いわゆるカム機構を利用して牽引力を発生させることもできる。
【0069】
また、第1回転盤109Aに形成されるスリットSの形状及び第2回転盤109Bに形成される溝部Dの形状は上記実施形態に示したものに限定されない。
例えば、図15、図16に示す回転盤の組を利用することができる。すなわち、図15に示すように、第1回転盤109Aには、回転盤の周縁部に端部が近接するようにスリットSが形成されている。また、図16に示すように、第2回転盤109Bには、ほぼ楕円形状となるように、誘導溝Dが形成されている。このような形状とすることにより、スリットSと溝部Dとの間に保持される錘109Cの最大移動量は回転盤の直径に近くなり、上記実施形態で示した場合よりも大きくなるため、より大きな牽引力を発生させることが可能となる。
【0070】
さらに、第1回転盤109Aには、スリットSの代わりに一方向に延びる溝を形成するようにしてもよい。また、第2回転盤109Bに形成される溝部Dは、説明を簡単にするために直線的な折れ線形状としているが、実際には錘109Cをなめらかに移動させるように計算された曲線形状とするのが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明に係る身体装着型電子機器を腕時計に適用した実施形態に係る腕時計の外観図である。
【図2】図1に示す時計本体のA−A断面図である。
【図3】第1回転盤の一例を示す説明図である。
【図4】第2回転盤の一例を示す説明図である。
【図5】時計本体に内蔵されている各構成要素を機能的に示したブロック図である。
【図6】図1に示す腕時計を腕に装着し、表示部に経路過程を表示した状態の一例を示す図である。
【図7】本実施形態に係る方位案内処理の一例について示したフローチャートである。
【図8】第2回転盤を回転させる直前の状態を示した説明図である。
【図9】第2回転盤を回転させたときの錘の移動状態を示した説明図である。
【図10】第2回転盤をさらに回転させたときの錘の移動状態を示した説明図である。
【図11】第2回転盤をさらに回転させたときの錘の移動状態を示した説明図である。
【図12】第2回転盤を、図8に示す状態から一回転させたときの錘の変位を示した説明図である。
【図13】本発明に係る身体装着型電子機器を杖に適用した実施形態に係る杖の外観図である。
【図14】本発明に係る身体装着型電子機器の牽引力発生手段に適用し得るクランク−スライダ機構を示した説明図である。
【図15】第1回転盤の変形例について示した説明図である。
【図16】第2回転盤の変形例について示した説明図である。
【符号の説明】
【0072】
1 腕時計
10 時計本体
11 リストバンド
101 傾斜センサ(姿勢検出手段)
102 方位センサ(方位取得手段)
103 GPSシステム(現在位置取得手段)
104 GPSアンテナ
105 記憶部
106 操作部
107 表示部
108 駆動部(牽引力発生手段)
109A,109B 回転盤(牽引力発生手段)
109C 錘
110 通信部
111 制御部(移動方位決定手段、操作検出手段、経路取得手段、駆動制御部、牽引力発生手段)
120 時計部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の身体の一部に装着され、使用者が第1地点から第2地点に向かって移動する際に、使用者が移動すべき方位を案内する身体装着型電子機器において、
使用者が移動すべき方位に向かって使用者を引っ張るような力を発生する牽引力発生手段を備えることを特徴とする身体装着型電子機器。
【請求項2】
使用者の身体の一部に装着され、使用者が第1地点から第2地点に向かって移動する際に、使用者が移動すべき方位を案内する身体装着型電子機器において、
前記第1地点である現在位置を取得する現在位置取得手段と、
前記現在位置取得手段により取得された現在位置において、使用者が移動すべき方位を決定する移動方位決定手段と、
前記移動方位決定手段により決定された移動方位に向かって使用者を引っ張るような力を発生する牽引力発生手段と、
を備えることを特徴とする身体装着型電子機器。
【請求項3】
使用者の身体の一部に装着される装置本体を備え、使用者が第1地点から第2地点に向かって移動する際に、使用者が移動すべき方位を案内する身体装着型電子機器において、
前記装置本体の前記第1地点である現在位置を取得する現在位置取得手段と、
前記現在位置取得手段により取得された現在位置において、使用者が移動すべき方位を決定する移動方位決定手段と、
前記装置本体の姿勢を検出する姿勢検出手段と、
この姿勢検出手段により検出された前記装置本体の姿勢が予め定められた姿勢になった場合に、前記移動方位決定手段により取得された移動方位に向かって使用者を引っ張るような力を発生する牽引力発生手段と、
を備えることを特徴とする身体装着型電子機器。
【請求項4】
使用者の身体の一部に装着される装置本体を備え、使用者が第1地点から第2地点に向かって移動する際に、使用者が移動すべき方位を案内する身体装着型電子機器において、
前記装置本体の前記第1地点である現在位置を取得する現在位置取得手段と、
前記現在位置取得手段により取得された現在位置において、使用者が移動すべき方位を決定する移動方位決定手段と、
前記装置本体に対する操作を検出する操作検出手段と、
この操作検出手段により前記装置本体に対する操作が検出された場合に、前記移動方位決定手段により決定された移動方位に向かって使用者を引っ張るような力を発生する牽引力発生手段と、
を備えることを特徴とする身体装着型電子機器。
【請求項5】
前記移動方位決定手段は、前記現在位置取得手段により取得された現在位置に関する第1地点情報と前記第2地点に関する第2地点情報とに基づいて前記使用者が移動すべき方位を決定することを特徴とする請求項2から4のいずれか一項に記載の身体装着型電子機器。
【請求項6】
前記第1地点と、この第1地点とは異なる第2地点とを結ぶ経路を取得する経路取得手段を備え、
前記移動方位決定手段は、前記現在位置取得手段により取得された現在位置に関する第1地点情報と前記経路取得手段により取得された経路に関する情報とに基づいて前記使用者が移動すべき方位を決定することを特徴とする請求項2から4のいずれか一項に記載の身体装着型電子機器。
【請求項7】
前記牽引力発生手段は、
上下方向に互いに重なって設けられた第1及び第2回転盤と、
前記第1回転盤に設けられたスリットと前記第2回転盤上に前記スリットを横切るように設けられた溝部との間に保持され、前記第1回転盤及び前記第2回転盤を相対的に回転駆動させたときに前記スリットに沿って移動する移動部材と、
前記第1回転盤と前記第2回転盤をそれぞれ独立して駆動可能な駆動部と、
前記駆動部を制御して、前記移動方位決定手段により決定された移動方位に前記スリットの長手方向が一致するように前記第1回転盤を回転させた後、前記第2回転盤を所定方向に回転させることにより、前記スリットに沿って前記移動部材を移動させる駆動制御部と、
を備えることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の身体装着型電子機器。
【請求項8】
前記装置本体が向いている方位を取得する方位取得手段を備え、
前記駆動制御部は、前記方位取得手段により取得された方位と前記移動方位に基づいて、前記第1回転盤を回転させることを特徴とする請求項7に記載の身体装着型電子機器。
【請求項9】
前記溝部は、前記第2回転盤を定速回転させたときに、前記スリットに沿って前記移動部材を第1速度で移動させる第1誘導溝と、前記第1速度よりも遅い第2速度で移動させる第2誘導溝と、が交互に配設されてなり、
前記駆動制御部は、前記移動部材が前記第1誘導溝により誘導されて前記スリットに沿って移動する際に、前記移動部材が前記移動方位とは逆方向に移動するように前記第2回転盤を回転させることを特徴とする請求項7又は8に記載の身体装着型電子機器。
【請求項1】
使用者の身体の一部に装着され、使用者が第1地点から第2地点に向かって移動する際に、使用者が移動すべき方位を案内する身体装着型電子機器において、
使用者が移動すべき方位に向かって使用者を引っ張るような力を発生する牽引力発生手段を備えることを特徴とする身体装着型電子機器。
【請求項2】
使用者の身体の一部に装着され、使用者が第1地点から第2地点に向かって移動する際に、使用者が移動すべき方位を案内する身体装着型電子機器において、
前記第1地点である現在位置を取得する現在位置取得手段と、
前記現在位置取得手段により取得された現在位置において、使用者が移動すべき方位を決定する移動方位決定手段と、
前記移動方位決定手段により決定された移動方位に向かって使用者を引っ張るような力を発生する牽引力発生手段と、
を備えることを特徴とする身体装着型電子機器。
【請求項3】
使用者の身体の一部に装着される装置本体を備え、使用者が第1地点から第2地点に向かって移動する際に、使用者が移動すべき方位を案内する身体装着型電子機器において、
前記装置本体の前記第1地点である現在位置を取得する現在位置取得手段と、
前記現在位置取得手段により取得された現在位置において、使用者が移動すべき方位を決定する移動方位決定手段と、
前記装置本体の姿勢を検出する姿勢検出手段と、
この姿勢検出手段により検出された前記装置本体の姿勢が予め定められた姿勢になった場合に、前記移動方位決定手段により取得された移動方位に向かって使用者を引っ張るような力を発生する牽引力発生手段と、
を備えることを特徴とする身体装着型電子機器。
【請求項4】
使用者の身体の一部に装着される装置本体を備え、使用者が第1地点から第2地点に向かって移動する際に、使用者が移動すべき方位を案内する身体装着型電子機器において、
前記装置本体の前記第1地点である現在位置を取得する現在位置取得手段と、
前記現在位置取得手段により取得された現在位置において、使用者が移動すべき方位を決定する移動方位決定手段と、
前記装置本体に対する操作を検出する操作検出手段と、
この操作検出手段により前記装置本体に対する操作が検出された場合に、前記移動方位決定手段により決定された移動方位に向かって使用者を引っ張るような力を発生する牽引力発生手段と、
を備えることを特徴とする身体装着型電子機器。
【請求項5】
前記移動方位決定手段は、前記現在位置取得手段により取得された現在位置に関する第1地点情報と前記第2地点に関する第2地点情報とに基づいて前記使用者が移動すべき方位を決定することを特徴とする請求項2から4のいずれか一項に記載の身体装着型電子機器。
【請求項6】
前記第1地点と、この第1地点とは異なる第2地点とを結ぶ経路を取得する経路取得手段を備え、
前記移動方位決定手段は、前記現在位置取得手段により取得された現在位置に関する第1地点情報と前記経路取得手段により取得された経路に関する情報とに基づいて前記使用者が移動すべき方位を決定することを特徴とする請求項2から4のいずれか一項に記載の身体装着型電子機器。
【請求項7】
前記牽引力発生手段は、
上下方向に互いに重なって設けられた第1及び第2回転盤と、
前記第1回転盤に設けられたスリットと前記第2回転盤上に前記スリットを横切るように設けられた溝部との間に保持され、前記第1回転盤及び前記第2回転盤を相対的に回転駆動させたときに前記スリットに沿って移動する移動部材と、
前記第1回転盤と前記第2回転盤をそれぞれ独立して駆動可能な駆動部と、
前記駆動部を制御して、前記移動方位決定手段により決定された移動方位に前記スリットの長手方向が一致するように前記第1回転盤を回転させた後、前記第2回転盤を所定方向に回転させることにより、前記スリットに沿って前記移動部材を移動させる駆動制御部と、
を備えることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の身体装着型電子機器。
【請求項8】
前記装置本体が向いている方位を取得する方位取得手段を備え、
前記駆動制御部は、前記方位取得手段により取得された方位と前記移動方位に基づいて、前記第1回転盤を回転させることを特徴とする請求項7に記載の身体装着型電子機器。
【請求項9】
前記溝部は、前記第2回転盤を定速回転させたときに、前記スリットに沿って前記移動部材を第1速度で移動させる第1誘導溝と、前記第1速度よりも遅い第2速度で移動させる第2誘導溝と、が交互に配設されてなり、
前記駆動制御部は、前記移動部材が前記第1誘導溝により誘導されて前記スリットに沿って移動する際に、前記移動部材が前記移動方位とは逆方向に移動するように前記第2回転盤を回転させることを特徴とする請求項7又は8に記載の身体装着型電子機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2008−286547(P2008−286547A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−129499(P2007−129499)
【出願日】平成19年5月15日(2007.5.15)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年5月15日(2007.5.15)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】
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