説明

車両およびその制御方法

【課題】燃費と快適性とを考慮して走行する通常走行モードと通常走行モードより燃費を優先して走行する燃費優先走行モードとを切り替えて設定するモード設定スイッチにより燃費優先モードが設定されているときに、通常走行モードで走行するときに対する燃費の向上の程度を運転者に報知する。
【解決手段】通常走行モードとエコモードとを切り替えるエコスイッチによりエコモードが設定されているときには、エコモードでの走行における燃費であるエコモード時燃費Feを演算すると共に(S220,S230)、通常走行モードで走行したと仮定したときに推定される燃費である通常走行モード時燃費Fnを演算し(S240)、エコモード時燃費Feと通常走行モード時燃費Fnとの両方をメータ表示ユニットに表示する。これにより、エコモード時燃費Feの通常走行モード時燃費Fnに対する向上の程度を運転者に報知することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両およびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の車両としては、経済的な省燃費モード(ECOモード)が選択された状態で走行したときには、イグニッションオフ時にECOモード運転操作を評価してスピードメータの液晶パネルに表示するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この車両では、ECOモード運転操作を評価することにより、運転者にECOモード運転操作の向上を促している。
【特許文献1】特開2002−114056号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述の車両では、運転者は、ECOモードを選択したときに、運転操作に関する評価を得ることはできるものの、ECOモードを選択しないときに比してどの程度燃費が向上しているかを認識することができない。
【0004】
本発明の車両およびその制御方法は、燃費と快適性とを考慮して走行する通常走行モードと通常走行モードより燃費を優先して走行する燃費優先走行モードとを切り替えて設定するモード設定スイッチにより燃費優先モードが設定されているときに、通常走行モードで走行するときに対する燃費の向上の程度を運転者に報知することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の車両およびその制御方法は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0006】
本発明の車両は、
走行用の動力を出力する動力出力装置を搭載する車両であって、
燃費と快適性とを考慮して走行する通常走行モードと該通常走行モードより燃費を優先して走行する燃費優先走行モードとを切り替えて設定するモード設定スイッチと、
走行状態に関連する情報を表示可能な表示手段と、
前記モード設定スイッチの状態と運転者による走行要求操作とに基づく駆動力により走行するよう前記動力出力装置を制御する走行制御手段と、
前記モード設定スイッチにより燃費優先走行モードが設定されているとき、前記燃費優先走行モードにおける燃費と前記通常走行モードにおける燃費とを演算し、該演算した燃費優先走行モードにおける燃費と通常走行モードにおける燃費とが共に表示されるよう前記表示手段を制御する表示制御手段と、
を備えることを要旨とする。
【0007】
この本発明の車両では、燃費と快適性とを考慮して走行する通常走行モードと通常走行モードより燃費を優先して走行する燃費優先走行モードとを切り替えて設定するモード設定スイッチの状態と運転者による走行要求操作とに基づく駆動力により走行するよう動力出力装置を制御し、モード設定スイッチにより燃費優先走行モードが設定されているときには、燃費優先走行モードにおける燃費と通常走行モードにおける燃費とを演算すると共に演算した燃費優先走行モードにおける燃費と通常走行モードにおける燃費とが共に表示されるよう表示手段を制御する。これにより、燃費優先モードが設定されているときに、通常走行モードで走行するときに対する燃費の向上の程度を運転者に報知することができる。ここで、「走行要求操作」には、アクセル操作などが含まれる。
【0008】
こうした本発明の車両において、前記動力出力装置は、内燃機関と電動機とを有し、該内燃機関の間欠運転を伴って走行用の動力を出力する装置であり、前記走行制御手段は、前記走行要求操作に基づいて走行に要求される要求パワーを設定し、前記モード設定スイッチにより通常走行モードが設定されているときには前記設定した要求パワーが第1の閾値より大きいときに前記内燃機関の運転を伴って走行するよう前記内燃機関と前記電動機とを制御すると共に前記設定した要求パワーが前記第1の閾値以下のときに前記内燃機関の運転停止を伴って走行するよう前記内燃機関と前記電動機とを制御し、前記モード設定スイッチにより燃費優先走行モードが設定されているときには前記設定した要求パワーが前記第1の閾値より大きい第2の閾値より大きいときに前記内燃機関の運転を伴って走行するよう前記内燃機関と前記電動機とを制御すると共に前記設定した要求パワーが前記第2の閾値以下のときに前記内燃機関の運転停止を伴って走行するよう前記内燃機関と前記電動機とを制御する手段であり、前記表示制御手段は、前記モード設定スイッチにより燃費優先走行モードが設定されているときであって前記要求パワーが前記第1の閾値より大きく前記第2の閾値以下のときには、前記モード設定スイッチにより燃費優先走行モードが設定されていることによって前記内燃機関を運転停止する旨が表示されるよう前記表示手段を制御する手段である、ものとすることもできる。こうすれば、燃費優先走行モードにおける特徴をより運転者に報知することができる。この場合、前記動力出力装置は、車軸に連結された駆動軸に接続されると共に該駆動軸とは独立に回転可能に前記内燃機関の出力軸に接続され、電力と動力の入出力を伴って前記駆動軸と前記出力軸とに動力を入出力可能な電力動力入出力手段を備えるものとすることもできる。
【0009】
また、本発明の車両において、前記表示制御手段は、前記モード設定スイッチにより燃費優先走行モードが設定されているとき、前記動力出力装置の駆動状態に基づく損失を考慮して前記燃費優先走行モードにおける燃費と前記通常走行モードにおける燃費とを演算する手段であるものとすることもできる。こうすれば、燃費優先走行モードにおける燃費と通常走行モードにおける燃費とをより適正に演算することができる。
【0010】
さらに、本発明の車両において、前記走行制御手段は、前記モード設定スイッチにより燃費優先走行モードが設定されているとき、前記モード設定スイッチにより通常走行モードが設定されているときに比して小さくなる傾向の駆動力により走行するよう前記動力出力装置を制御する手段であるものとすることもできる。
【0011】
本発明の車両の制御方法は、
走行用の動力を出力する動力出力装置と、燃費と快適性とを考慮して走行する通常走行モードと該通常走行モードより燃費を優先して走行する燃費優先走行モードとを切り替えて設定するモード設定スイッチと、走行状態に関連する情報を表示可能な表示手段と、を備える車両の制御方法であって、
(a)前記モード設定スイッチの状態と運転者による走行要求操作とに基づく駆動力により走行するよう前記動力出力装置を制御し、
(b)前記モード設定スイッチにより燃費優先走行モードが設定されているとき、前記燃費優先走行モードにおける燃費と前記通常走行モードにおける燃費とを演算し、該演算した燃費優先走行モードにおける燃費と通常走行モードにおける燃費とが共に表示されるよう前記表示手段を制御する、
ことを特徴とする。
【0012】
この本発明の車両の制御方法では、燃費と快適性とを考慮して走行する通常走行モードと通常走行モードより燃費を優先して走行する燃費優先走行モードとを切り替えて設定するモード設定スイッチの状態と運転者による走行要求操作とに基づく駆動力により走行するよう動力出力装置を制御し、モード設定スイッチにより燃費優先走行モードが設定されているときには、燃費優先走行モードにおける燃費と通常走行モードにおける燃費とを演算すると共に演算した燃費優先走行モードにおける燃費と通常走行モードにおける燃費とが共に表示されるよう表示手段を制御する。これにより、燃費優先モードが設定されているときに、通常走行モードで走行するときに対する燃費の向上の程度を運転者に報知することができる。ここで、「走行要求操作」には、アクセル操作などが含まれる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に、本発明を実施するための最良の形態を実施例を用いて説明する。
【実施例】
【0014】
図1は、本発明の一実施例であるハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。実施例のハイブリッド自動車20は、図示するように、エンジン22と、エンジン22の出力軸としてのクランクシャフト26にダンパ28を介して接続された3軸式の動力分配統合機構30と、動力分配統合機構30に接続された発電可能なモータMG1と、動力分配統合機構30に接続された駆動軸としてのリングギヤ軸32aに取り付けられた減速ギヤ35と、この減速ギヤ35に接続されたモータMG2と、走行に関する情報を表示するメータ表示ユニット90と、車両全体をコントロールするハイブリッド用電子制御ユニット70とを備える。
【0015】
エンジン22は、例えばガソリンまたは軽油などの炭化水素系の燃料により動力を出力する内燃機関であり、エンジン用電子制御ユニット(以下、エンジンECUという)24により燃料噴射制御や点火制御,吸入空気量調節制御などの運転制御を受けている。エンジンECU24には、エンジン22の運転状態を検出する各種センサからの信号、例えば、エンジン22のクランクシャフト26のクランク角を検出する図示しないクランクポジションセンサからのクランクポジションなどが入力されている。エンジンECU24は、ハイブリッド用電子制御ユニット70と通信しており、ハイブリッド用電子制御ユニット70からの制御信号によりエンジン22を運転制御すると共に必要に応じてエンジン22の運転状態に関するデータをハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。なお、エンジンECU24は、図示しないクランクポジションセンサからのクランクポジションに基づいてクランクシャフト26の回転数、即ちエンジン22の回転数Neも演算している。
【0016】
動力分配統合機構30は、外歯歯車のサンギヤ31と、このサンギヤ31と同心円上に配置された内歯歯車のリングギヤ32と、サンギヤ31に噛合すると共にリングギヤ32に噛合する複数のピニオンギヤ33と、複数のピニオンギヤ33を自転かつ公転自在に保持するキャリア34とを備え、サンギヤ31とリングギヤ32とキャリア34とを回転要素として差動作用を行なう遊星歯車機構として構成されている。動力分配統合機構30は、キャリア34にはエンジン22のクランクシャフト26が、サンギヤ31にはモータMG1が、リングギヤ32にはリングギヤ軸32aを介して減速ギヤ35がそれぞれ連結されており、モータMG1が発電機として機能するときにはキャリア34から入力されるエンジン22からの動力をサンギヤ31側とリングギヤ32側にそのギヤ比に応じて分配し、モータMG1が電動機として機能するときにはキャリア34から入力されるエンジン22からの動力とサンギヤ31から入力されるモータMG1からの動力を統合してリングギヤ32側に出力する。リングギヤ32に出力された動力は、リングギヤ軸32aからギヤ機構60およびデファレンシャルギヤ62を介して、最終的には車両の駆動輪63a,63bに出力される。
【0017】
モータMG1およびモータMG2は、いずれも発電機として駆動することができると共に電動機として駆動できる周知の同期発電電動機として構成されており、インバータ41,42を介してバッテリ50と電力のやりとりを行なう。インバータ41,42とバッテリ50とを接続する電力ライン54は、各インバータ41,42が共用する正極母線および負極母線として構成されており、モータMG1,MG2のいずれかで発電される電力を他のモータで消費することができるようになっている。したがって、バッテリ50は、モータMG1,MG2のいずれかから生じた電力や不足する電力により充放電されることになる。なお、モータMG1,MG2により電力収支のバランスをとるものとすれば、バッテリ50は充放電されない。モータMG1,MG2は、いずれもモータ用電子制御ユニット(以下、モータECUという)40により駆動制御されている。モータECU40には、モータMG1,MG2を駆動制御するために必要な信号、例えばモータMG1,MG2の回転子の回転位置を検出する回転位置検出センサ43,44からの信号や図示しない電流センサにより検出されるモータMG1,MG2に印加される相電流などが入力されており、モータECU40からは、インバータ41,42へのスイッチング制御信号が出力されている。モータECU40は、ハイブリッド用電子制御ユニット70と通信しており、ハイブリッド用電子制御ユニット70からの制御信号によってモータMG1,MG2を駆動制御すると共に必要に応じてモータMG1,MG2の運転状態に関するデータをハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。なお、モータECU40は、回転位置検出センサ43,44からの信号に基づいてモータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2も演算している。
【0018】
バッテリ50は、バッテリ用電子制御ユニット(以下、バッテリECUという)52によって管理されている。バッテリECU52には、バッテリ50を管理するのに必要な信号、例えば、バッテリ50の端子間に設置された図示しない電圧センサからの端子間電圧,バッテリ50の出力端子に接続された電力ライン54に取り付けられた図示しない電流センサからの充放電電流,バッテリ50に取り付けられた温度センサ51からの電池温度Tbなどが入力されており、必要に応じてバッテリ50の状態に関するデータを通信によりハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。また、バッテリECU52は、バッテリ50を管理するために電流センサにより検出された充放電電流の積算値に基づいて残容量(SOC)を演算したり、演算した残容量(SOC)と電池温度Tbとに基づいてバッテリ50を充放電してもよい最大許容電力である入出力制限Win,Woutを演算している。なお、バッテリ50の入出力制限Win,Woutは、電池温度Tbに基づいて入出力制限Win,Woutの基本値を設定し、バッテリ50の残容量(SOC)に基づいて出力制限用補正係数と入力制限用補正係数とを設定し、設定した入出力制限Win,Woutの基本値に補正係数を乗じることにより設定することができる。
【0019】
メータ表示ユニット90は、運転席近傍に配置されて液晶パネルとして構成されており、シフトポジションSPを表示するシフトポジション表示部91や、車速Vを表示するスピードメータ部92,後述のエコスイッチ89がオンされているときに「エコモード」を点灯するエコモード表示部93,燃費に関する情報を表示する燃費表示部94などを備える。この表示ユニット90は、メータ用電子制御ユニット(以下、メータECUという)99によって制御されている。このメータECU99は、ハイブリッド用電子制御ユニット70と通信しており、ハイブリッド用電子制御ユニット70との間で必要なデータの送受信を行なっている。
【0020】
ハイブリッド用電子制御ユニット70は、CPU72を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPU72の他に処理プログラムを記憶するROM74と、データを一時的に記憶するRAM76と、図示しない入出力ポートおよび通信ポートとを備える。ハイブリッド用電子制御ユニット70には、イグニッションスイッチ80からのイグニッション信号,シフトレバー81の操作位置を検出するシフトポジションセンサ82からのシフトポジションSP,アクセルペダル83の踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Acc,ブレーキペダル85の踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ86からのブレーキペダルポジションBP,車速センサ88からの車速V,燃費と快適性とを考慮して走行する通常走行モードと通常走行モードより燃費を優先して走行する燃費優先走行モード(以下エコモードという)とを切り替えて設定するエコスイッチ89からのエコスイッチ信号などが入力ポートを介して入力されている。ハイブリッド用電子制御ユニット70は、前述したように、エンジンECU24やモータECU40,バッテリECU52,メータECU99と通信ポートを介して接続されており、エンジンECU24やモータECU40,バッテリECU52,メータECU99と各種制御信号やデータのやりとりを行なっている。なお、エコスイッチ89は、オフされているときに通常走行モードを設定し、オンされているときにエコモードを設定するものとした。
【0021】
こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20は、運転者によるアクセルペダル83の踏み込み量に対応するアクセル開度Accと車速Vとに基づいて駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力すべき要求トルクを計算し、この要求トルクに対応する要求動力がリングギヤ軸32aに出力されるように、エンジン22とモータMG1とモータMG2とが運転制御される。エンジン22とモータMG1とモータMG2の運転制御としては、要求動力に見合う動力がエンジン22から出力されるようにエンジン22を運転制御すると共にエンジン22から出力される動力のすべてが動力分配統合機構30とモータMG1とモータMG2とによってトルク変換されてリングギヤ軸32aに出力されるようモータMG1およびモータMG2を駆動制御するトルク変換運転モードや要求動力とバッテリ50の充放電に必要な電力との和に見合う動力がエンジン22から出力されるようにエンジン22を運転制御すると共にバッテリ50の充放電を伴ってエンジン22から出力される動力の全部またはその一部が動力分配統合機構30とモータMG1とモータMG2とによるトルク変換を伴って要求動力がリングギヤ軸32aに出力されるようモータMG1およびモータMG2を駆動制御する充放電運転モード、エンジン22の運転を停止してモータMG2からの要求動力に見合う動力をリングギヤ軸32aに出力するよう運転制御するモータ運転モードなどがある。なお、トルク変換運転モードと充放電運転モードは、いずれもエンジン22の運転を伴って要求動力がリングギヤ軸32aに出力されるようエンジン22とモータMG1,MG2とを制御するモードであり、実質的な制御における差異はないため、以下、両者を合わせてエンジン運転モードという。
【0022】
次に、こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20の動作、特にエコモードが設定されているとき(エコスイッチ89がオンのとき)の動作について説明する。図2はハイブリッド用電子制御ユニット70により実行されるエコモード時制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、エコスイッチ89がオンされているときに所定時間毎(例えば数msec毎)に繰り返し実行される。
【0023】
エコモード時制御ルーチンが実行されると、ハイブリッド用電子制御ユニット70のCPU72は、まず、アクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Accや車速センサ88からの車速V,モータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2,バッテリ50の入出力制限Win,Wout,エコスイッチ89からのエコスイッチ信号(この場合オン信号)など制御に必要なデータを入力する処理を実行する(ステップS100)。ここで、モータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2は、回転位置検出センサ43,44により検出されたモータMG1,MG2の回転子の回転位置に基づいて演算されたものをモータECU40から通信により入力するものとした。また、バッテリ50の入出力制限Win,Woutは、バッテリ50の電池温度Tbとバッテリ50の残容量(SOC)とに基づいて設定されたものをバッテリECU52から通信により入力するものとした。
【0024】
こうしてデータを入力すると、アクセル開度Accに基づいて制御用アクセル開度Acc*を設定する(ステップS110)。ここで、制御用アクセル開度Acc*の設定は、アクセル開度Accと制御用アクセル開度Acc*との関係を予め定めて制御用アクセル開度設定用マップとしてROM74に記憶しておき、アクセル開度Accが与えられると記憶したマップから対応する制御用アクセル開度Acc*を導出して設定するものとした。制御用アクセル開度設定用マップの一例を図3に示す。なお、図3では、参考のために通常走行モード時の制御用アクセル開度Acc*についても図示した。図3の例では、通常走行モード時の制御用アクセル開度Acc*は、アクセル開度Accが設定されるものとし、エコモード時の制御用アクセル開度Acc*は、駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力するトルクのアクセル操作に対する応答性を低下させるために、通常走行モード時にして小さい値が設定されるものとした。
【0025】
こうして制御用アクセル開度Acc*を設定すると、設定した制御用アクセル開度Acc*と車速Vとに基づいて車両に要求されるトルクとして駆動輪63a,63bに連結された駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力すべき要求トルクTr*とエンジン22に要求される要求パワーPe*とを設定する(ステップS120)。要求トルクTr*は、実施例では、制御用アクセル開度Acc*と車速Vと要求トルクTr*との関係を予め定めて要求トルク設定用マップとしてROM74に記憶しておき、制御用アクセル開度Acc*と車速Vとが与えられると記憶したマップから対応する要求トルクTr*を導出して設定するものとした。図4に要求トルク設定用マップの一例を示す。要求パワーPe*は、設定した要求トルクTr*にリングギヤ軸32aの回転数Nrを乗じたものとバッテリ50が要求する充放電要求パワーPb*とロスLossとの和として計算することができる。なお、リングギヤ軸32aの回転数Nrは、車速Vに換算係数kを乗じること(Nr=k・V)によって求めたり、モータMG2の回転数Nm2を減速ギヤ35のギヤ比Grで割ること(Nr=Nm2/Gr)によって求めることができる。
【0026】
続いて、設定した要求トルクTr*を閾値Trefと比較すると共に要求パワーPe*を閾値Prefと比較する(ステップS130)。ここで、閾値Trefおよび閾値Prefは、エコモード時におけるモータ運転モードの範囲を設定するものであり、モータMG2の性能やバッテリ50の容量などにより設定することができる。この閾値Trefおよび閾値Prefは、実施例では、通常走行モード時におけるモータ運転モード範囲を設定する閾値Tref0および閾値Pref0に比して大きい値を用いるものとした。これは、モータ運転モードの範囲を広くしてエンジン22の運転を停止しやすくすることにより、エンジン22の燃料消費量を抑制するためである。このステップS130の処理は、エンジン運転モードとモータ運転モードとを選択する処理であり、実施例では、要求トルクTr*が閾値Trefより大きいときや要求パワーPe*が閾値Prefより大きいときにはエンジン運転モードを選択し、要求トルクTr*が閾値Tref以下で且つ要求パワーPe*が閾値Pref以下のときにはモータ運転モードを選択するものとした。なお、通常走行モード時には、要求トルクTr*が閾値Tref0より大きいときや要求パワーPe*が閾値Pref0より大きいときにはエンジン運転モードを選択し、要求トルクTr*が閾値Tref0以下で且つ要求パワーPe*が閾値Pref0以下のときにはモータ運転モードを選択するものとした。
【0027】
要求トルクTr*が閾値Trefより大きいときや要求パワーPe*が閾値Prefより大きいときには、エンジン運転モードを選択し、設定した要求パワーPe*に基づいてエンジン22を運転すべき運転ポイント(以下、エコモード時運転ポイントという)としての目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを設定する(ステップS140)。この設定は、エンジン22を効率よく動作させる動作ラインと要求パワーPe*とに基づいて行なわれる。エンジン22の動作ラインの一例と目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを設定する様子を図5に示す。図示するように、目標回転数Ne*と目標トルクTe*は、動作ラインと要求パワーPe*(Ne*×Te*)が一定の曲線との交点により求めることができる。
【0028】
次に、エンジン22の目標回転数Ne*とモータMG2の回転数Nm2と動力分配統合機構30のギヤ比ρと減速ギヤ35のギヤ比Grとを用いて次式(1)によりモータMG1の目標回転数Nm1*を計算すると共に計算した目標回転数Nm1*と入力したモータMG1の回転数Nm1とエンジン22の目標トルクTe*と動力分配統合機構30のギヤ比ρとに基づいて式(2)によりモータMG1から出力すべきトルクとしてのトルク指令トルクTm1*を計算する(ステップS150)。ここで、式(1)は、動力分配統合機構30の回転要素に対する力学的な関係式である。エンジン22からパワーを出力している状態で走行しているときの動力分配統合機構30の回転要素における回転数とトルクとの力学的な関係を示す共線図の一例を図6に示す。図中、左のS軸はモータMG1の回転数Nm1であるサンギヤ31の回転数を示し、C軸はエンジン22の回転数Neであるキャリア34の回転数を示し、R軸はモータMG2の回転数Nm2を減速ギヤ35のギヤ比Grで除したリングギヤ32の回転数Nrを示す。なお、R軸上の2つの太線矢印は、モータMG1から出力されたトルクTm1がリングギヤ軸32aに作用するトルクと、モータMG2から出力されるトルクTm2が減速ギヤ35を介してリングギヤ軸32aに作用するトルクとを示す。式(1)は、この共線図を用いれば容易に導くことができる。また式(2)は、モータMG1を目標回転数Nm1*で回転させるためのフィードバック制御における関係式であり、式(2)中、右辺第2項の「k1」は比例項のゲインであり、右辺第3項の「k2」は積分項のゲインである。
【0029】
Nm1*=Ne*・(1+ρ)/ρ-Nm2/(Gr・ρ) (1)
Tm1*=-ρ・Te*/(1+ρ)+k1(Nm1*-Nm1)+k2∫(Nm1*-Nm1)dt (2)
【0030】
そして、要求トルクTr*に設定したトルク指令Tm1*を動力分配統合機構30のギヤ比ρで除したものを加えて更に減速ギヤ35のギヤ比Grで除してモータMG2から出力すべきトルクの仮の値である仮トルクTm2tmpを次式(3)により計算すると共に(ステップS180)、バッテリ50の入出力制限Win,Woutと設定したトルク指令Tm1*に現在のモータMG1の回転数Nm1を乗じて得られるモータMG1の消費電力(発電電力)との偏差をモータMG2の回転数Nm2で割ることによりモータMG2から出力してもよいトルクの上下限としてのトルク制限Tm2min,Tm2maxを次式(4)および式(5)により計算すると共に(ステップS190)、設定した仮トルクTm2tmpを式(6)によりトルク制限Tm2min,Tm2maxで制限してモータMG2のトルク指令Tm2*を設定する(ステップS200)。ここで、式(3)は、図6の共線図から容易に導くことができる。
【0031】
Tm2tmp=(Tr*+Tm1*/ρ)/Gr (3)
Tm2min=(Win-Tm1*・Nm1)/Nm2 (4)
Tm2max=(Wout-Tm1*・Nm1)/Nm2 (5)
Tm2*=max(min(Tm2tmp,Tm2max),Tm2min) (6)
【0032】
こうしてエンジン22の目標回転数Ne*や目標トルクTe*,モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*を設定すると、エンジン22の目標回転数Ne*と目標トルクTe*についてはエンジンECU24に、モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*についてはモータECU40にそれぞれ送信する(ステップS210)。目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを受信したエンジンECU24は、エンジン22が目標回転数Ne*と目標トルクTe*とによって示される運転ポイントで運転されるようにエンジン22における吸入空気量制御や燃料噴射制御,点火制御などの制御を行なう。また、トルク指令Tm1*,Tm2*を受信したモータECU40は、トルク指令Tm1*でモータMG1が駆動されると共にトルク指令Tm2*でモータMG2が駆動されるようインバータ41,42のスイッチング素子のスイッチング制御を行なう。こうした制御により、バッテリ50の入出力制限Win,Woutの範囲内でエンジン22を効率よく運転して駆動軸としてのリングギヤ軸32aに要求トルクTr*を出力して走行することができる。
【0033】
一方、ステップS130で要求トルクTr*が閾値Tref以下で且つ要求パワーPe*が閾値Pref以下のときには、モータ運転モードを選択し、エンジン22の運転が停止されるようエンジン22の目標回転数Ne*および目標トルクTe*に共に値0を設定し(ステップS160)、モータMG1のトルク指令Tm1*に値0を設定し(ステップS170)、要求トルクTr*に基づいてモータMG2のトルク指令Tm2*を設定し(ステップS180〜S200)、設定したエンジン22の目標回転数Ne*と目標トルクTe*についてはエンジンECU24に、モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*についてはモータECU40にそれぞれ送信する(ステップS210)。この場合、エンジン22を運転停止してバッテリ50の入出力制限Win,Woutの範囲内でモータMG2から駆動軸としてのリングギヤ軸32aに要求トルクTr*を出力して走行することができる。
【0034】
次に、エコモード時の燃料消費量(以下、エコモード時燃料消費量という)Qfeを演算すると共に(ステップS220)、演算したエコモード時燃料消費量Qfeに基づいてエコモード時燃費Feを演算する(ステップS230)。ここで、エコモード時燃料消費量Qfeは、実施例では、目標回転数Ne*や目標トルクTe*に基づいて、運転ポイント(この場合、エコモード時運転ポイント)でエンジン22を運転する際に消費されると想定される燃料消費量を演算するものとした。なお、目標回転数Ne*および目標トルクTe*が共に値0のときには、エンジン22が運転停止されるため、エコモード時燃料消費量Qfeには値0が設定される。エコモード時燃費Feは、実施例では、過去の所定時間における移動距離をその所定時間におけるエコモード時燃料消費量Qfeの和(以下、積算エコモード時燃料消費量という)Qfesumで除することにより演算するものとした。なお、モータ運転モードで走行するときには、エコモード時燃料消費量Qfeが値0となるため、この場合、過去の所定時間は、過去にエンジン運転モードが選択されたときから現在までの時間、即ち、積算エコモード時燃料消費量Qfesumが値0でなくなる時間を用いるものとした。
【0035】
続いて、通常走行モードで走行したと仮定したときの燃費(以下、通常走行モード時燃費という)Fnを推定する(ステップS240)。通常走行モード時燃費Fnは、実施例では、図7に例示する通常走行モード時燃費推定処理により推定するものとした。以下、図2のエコモード時制御ルーチンの説明を一旦中断し、図7の通常走行モード時燃費推定処理について説明する。
【0036】
通常走行モード時燃費推定処理では、まず、アクセル開度Accに基づいて制御用アクセル開度Acc*を設定し(ステップS300)、設定した制御用アクセル開度Acc*を用いて図2のルーチンのステップS120の処理と同様に要求トルクTr*および要求パワーPe*を設定する(ステップS310)。ここで、制御用アクセル開度Acc*は、前述したように、アクセル開度Accがそのまま設定される(図3中、一点鎖線参照)。また、閾値Tref0および閾値Pref0は、前述したように、エコモード時における閾値Trefおよび閾値Prefに比して大きい値が用いられる。
【0037】
続いて、要求トルクTr*を閾値Tref0と比較すると共に要求パワーPe*を閾値Pref0と比較し(ステップS320)。要求トルクTr*が閾値Tref0より大きいときや要求パワーPe*が閾値Pref0より大きいときには、図2のルーチンのステップS140の処理と同様にエンジン22を運転すべき運転ポイント(以下、通常走行モード時運転ポイントという)としての目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを設定し(ステップS330)、要求トルクTr*が閾値Tref0以下で且つ要求パワーPe*が閾値Pref0以下のときにはエンジン22の目標回転数Ne*および目標トルクTe*に共に値0を設定し(ステップS340)、設定した目標回転数Ne*および目標トルクTe*に基づいて通常走行モード時燃料消費量Qfnを演算し(ステップS350)、演算した通常走行モード時燃料消費量Qfnに基づいて通常走行モード時燃費Fnを演算して(ステップS360)、通常走行モード時燃費推定処理を終了する。実施例では、通常走行モード時燃料消費量Qfnについてはエコモード時燃料消費量Qfeと同様に演算するものとし、通常走行モード時燃費Fnについてはエコモード時燃費Feと同様に演算するものとした。なお、この図7の通常走行モード時燃費推定処理で設定した制御用アクセル開度Acc*や要求トルクTr*,要求パワーPe*,エンジン22の目標回転数Ne*および目標トルクTe*は、通常走行モード時燃費Fnを演算するために設定したものであり、エンジン22やモータMG1,MG2の制御に用いるために設定したものではない。
【0038】
以上、通常走行モード時燃費推定処理について説明した。図2のエコモード時制御ルーチンの説明に戻る。ステップS240で通常走行モード時燃費Fnを設定すると、エコスイッチ信号(この場合オン信号)とエコモード時燃費Feと通常走行モード時燃費FnとをメータECU99に送信して(ステップS250)、エコモード時制御ルーチンを終了する。エコスイッチ信号とエコモード時燃費Feと通常走行モード時燃費Fnとを受信したメータECU99は、メータ表示ユニット90のエコモード表示部93に「エコモード」を点灯すると共に燃費表示部94にエコモード時燃費Feと通常走行モード時燃費Fnとを表示する(図1参照)。このように、エコモードが設定されているときに、エコモード時燃費Fe(現在の走行における燃費)と通常走行モード時燃費Fn(通常走行モードで走行したと仮定したときの燃費)との両方を表示することにより、エコモード時燃費Feの通常走行モード時燃費Fnに対する向上の程度を運転者に報知することができる。
【0039】
以上説明した実施例のハイブリッド自動車20によれば、通常走行モードとエコモードとを切り替えるエコスイッチ89によりエコモードが設定されているときには、エコモードでの走行における燃費であるエコモード時燃費Feと通常走行モードで走行したと仮定したときに推定される燃費である通常走行モード時燃費Fnとの両方をメータ表示ユニット90に表示するから、エコモード時燃費Feの通常走行モード時燃費Fnに対する向上の程度を運転者に報知することができる。
【0040】
実施例のハイブリッド自動車20では、エコモードが設定されているときには、メータ表示ユニット90に「エコモード」を点灯すると共にエコモード時燃費Feと通常走行モード時燃費Fnとを表示するものとしたが、これらに加えて他の情報を表示するものとしてもよい。例えば、要求トルクTr*が閾値Tref以下で閾値Tref0より大きく要求パワーPe*が閾値Pref以下で閾値Pref0より大きいときを考えると、エコモードが設定されているときにはモータ運転モードで走行することになり、通常走行モードが設定されているときにはエンジン運転モードで走行することになる。このため、エコモードが設定されているときに、要求トルクTr*が閾値Tref以下で閾値Tref0より大きく要求パワーPe*が閾値Pref以下で閾値Pref0より大きいときには、エコモードが設定されていることによってエンジン22を運転停止している旨をメータ表示ユニット90に表示するものとしてもよい。こうすれば、エコモードでの走行における特徴を運転者により報知することができる。
【0041】
実施例のハイブリッド自動車20では、エコモードが設定されているときには、ステップS140で設定したエコモード時運転ポイントでエンジン22を運転する際に消費されると想定される燃料消費量(エコモード時想定燃料消費量)をエコモード時燃料消費量Qfeとして演算するものとしたが、エンジン22を運転する際に実際に噴射された燃料量(エコモード時実燃料消費量)をエコモード時燃料消費量QfeとしてエンジンECU24から通信に入力して用いるものとしてもよい。この場合、通常走行モード時燃料消費量Qfnについては、ステップS330で設定した通常走行モード時運転ポイントでエンジン22を運転する際に消費されると想定される燃料消費量を通常走行モード時燃料消費量Qfnの基本値Qfntmpとして設定し、エコモード時想定燃料消費量とエコモード時実燃料消費量とのズレに基づいて補正係数kfnを設定し、基本値Qfntmpに補正係数kfnを乗じることにより通常走行モード時燃料消費量Qfnを演算するものとしてもよい。
【0042】
実施例のハイブリッド自動車20では、エコモードが設定されているときには、エコモード時燃料消費量Qfeに基づいてエコモード時燃費Feを演算すると共に通常走行モード時燃料消費量Qfnに基づいて通常走行モード時燃費Fnを演算するものとしたが、エコモード時燃料消費量Qfeや通常走行モード時燃料消費量Qfnに加えて、エンジン22やモータMG1,MG2の駆動状態(回転数およびトルク)における損失を考慮してエコモード時燃費Feや通常走行モード時燃費Fnを演算するものとしてもよい。こうすれば、エコモード時燃費Feや通常走行モード時燃費Fnをより適正に演算することができる。なお、この場合、通常走行モード時におけるモータMG1,MG2のトルクについては、図7のルーチンのステップS310,S330,S340で設定した要求トルクTr*や目標回転数Ne*,目標トルクTe*を用いて図2のルーチンのステップS150,S170〜S200の処理と同様にモータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*を設定して用いるものとしてもよい。このように、エンジン22やモータMG1,MG2の損失を考慮してエコモード時燃費Feや通常走行モード時燃費Fnを演算する場合、現在の損失だけでなく、未来の損失も予測して考慮するものとしてもよい。この場合、例えば、エコモード時燃費Feについては、車重Mや重力加速度g,路面勾配θ,エコモード時における要求トルクTr*などを用いてエコモードにおける加速度αeを演算し、演算した加速度αeを用いてエコモード時における所定時間後の車速Vを予測し、予測した車速Vを用いて演算した未来のエンジン22やモータMG1,MG2の駆動状態を用いてエコモード時における所定時間後の損失Loeを演算し、エコモード時燃料消費量Qfeと損失Loeとを考慮してエコモード時燃費Feを演算するものとしてもよい。また、通常走行モード時燃費Fnについては、車重Mや重力加速度g,路面勾配θ,通常走行モード時における要求トルクTr*などを用いて通常走行モードにおける加速度αnを演算し、演算した加速度αnを用いて通常走行モード時における所定時間後の車速Vを予測し、予測した車速Vを用いて演算した未来のエンジン22やモータMG1,MG2の駆動状態を用いて通常走行モード時における所定時間後の損失Lonを演算し、通常走行モード時燃料消費量Qfnと損失Lonとを考慮して通常走行モード時燃費Fnを演算するものとしてもよい。
【0043】
実施例のハイブリッド自動車20では、エコモードが設定されているときには、通常走行モードが設定されているときに比して小さくなる傾向に制御用アクセル開度Acc*を設定するものとしたが、通常走行モードが設定されているかエコモードが設定されているかに拘わらず同じ制御用アクセル開度Acc*を設定するものとしてもよい。
【0044】
実施例のハイブリッド自動車20では、通常走行モードが設定されているかエコモードが設定されているかに拘わらず同じ図4の要求トルク設定用マップを用いて要求トルクTr*を設定するものとしたが、エコモードが設定されているときに、通常走行モードが設定されているときに比して小さくなる傾向に要求トルクTr*を設定するものとしてもよい。
【0045】
実施例のハイブリッド自動車20では、エコモードが設定されているときについて説明したが、通常走行モードが設定されているときには、「エコモード」は点灯せず、エコモード時燃費Fe(エコモードで走行したと仮定したときの燃費)と通常走行モード時燃費Fn(現在の走行における燃費)の両方または通常走行モード時燃費Fnだけを表示するものとすればよい。なお、通常走行モードが設定されているときには、アクセル開度Accをそのまま制御用アクセル開度Acc*に設定し、設定した制御用アクセル開度Acc*を用いて図2のルーチンステップS120の処理と同様に要求トルクTr*および要求パワーPe*を設定し、要求トルクTr*が閾値Tref0より大きいときや要求パワーPe*が閾値Pref0より大きいときには図2のルーチンのステップS140の処理と同様にエンジン22の目標回転数Ne*および目標トルクTe*を設定し、要求トルクTr*が閾値Tref0以下で且つ要求パワーPe*が閾値Pref0以下のときにはエンジン22の目標回転数Ne*および目標トルクTe*に共に値0を設定し、設定したエンジン22の目標回転数Ne*および目標トルクTe*に基づいて図2のルーチンのステップS150,S170〜S200の処理と同様にモータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*を設定し、目標回転数Ne*および目標トルクTe*に基づいてエンジン22を制御すると共にトルク指令Tm1*,Tm2*に基づいてモータMG1,MG2を制御すればよい。
【0046】
実施例のハイブリッド自動車20では、減速ギヤ35を介して駆動軸としてのリングギヤ軸32aにモータMG2を取り付けるものとしたが、リングギヤ軸32aにモータMG2を直接取り付けるものとしてもよいし、減速ギヤ35に代えて2段変速や3段変速,4段変速などの変速機を介してリングギヤ軸32aにモータMG2を取り付けるものとしても構わない。
【0047】
実施例のハイブリッド自動車20では、モータMG2の動力を減速ギヤ35により変速してリングギヤ軸32aに出力するものとしたが、図8の変形例のハイブリッド自動車120に例示するように、モータMG2の動力をリングギヤ軸32aが接続された車軸(駆動輪63a,63bが接続された車軸)とは異なる車軸(図8における車輪64a,64bに接続された車軸)に出力するものとしてもよい。
【0048】
実施例のハイブリッド自動車20では、エンジン22の動力を動力分配統合機構30を介して駆動輪63a,63bに接続された駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力するものとしたが、図9の変形例のハイブリッド自動車220に例示するように、エンジン22のクランクシャフト26に接続されたインナーロータ232と駆動輪63a,63bに動力を出力する駆動軸に接続されたアウターロータ234とを有し、エンジン22の動力の一部を駆動軸に伝達すると共に残余の動力を電力に変換する対ロータ電動機230を備えるものとしてもよい。
【0049】
また、こうしたハイブリッド車に本発明を適用する場合に限定されるものではなく、エンジンを備えない電気自動車に本発明を適用するものとしてもよいし、電動機や発電機を搭載しないガソリンエンジン車に本発明を適用するものとしても構わない。さらに、車両の制御方法の形態としてもよい。
【0050】
実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、エンジン22と動力分配統合機構30とモータMG1,MG2とを組み合わせたものが「動力出力装置」に相当し、エコスイッチ89が「モード設定スイッチ」に相当し、メータ表示ユニット90が「表示手段」に相当し、エコスイッチ89の状態とアクセル開度Accとに基づいて走行するようエンジン22の目標回転数Ne*および目標トルクTe*を設定すると共にモータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*を設定してエンジンECU24とモータECU40とに送信するハイブリッド用電子制御ユニット70と、受信した目標回転数Ne*および目標トルクTe*に基づいてエンジン22を制御するエンジンECU24と、受信したトルク指令Tm1*,Tm2*に基づいてモータMG1,MG2を制御するモータECU40と、が「走行制御手段」に相当し、通常走行モードとエコモードとを切り替えるエコスイッチ89によりエコモードが設定されているときには、エコモードでの走行における燃費であるエコモード時燃費Feと通常走行モードで走行したと仮定したときに推定される燃費である通常走行モード時燃費Fnとを演算すると共にエコスイッチ信号とエコモード時燃費Feと通常走行モード時燃費FnとをメータECU99に送信するハイブリッド用電子制御ユニット70と、メータ表示ユニット90に「エコモード」を点灯すると共にエコモード時燃費Feと通常走行モード時燃費Fnとを表示するメータECU99とが「表示制御手段」に相当する。また、エンジン22が「内燃機関」に相当し、モータMG2が「電動機」に相当し、動力分配統合機構30とモータMG1とを組み合わせたものや対ロータ電動機230が「電力動力入出力手段」に相当する。
【0051】
ここで、「動力出力装置」としては、エンジン22と動力分配統合機構30とモータMG1,MG2とを組み合わせたものに限定されるものではなく、エンジン22と対ロータ電動機230とモータMG2とを組み合わせたものとしたり、エンジンとしたり、モータとしたりするなど、走行用の動力を出力するものであれば如何なるものとしても構わない。「モード設定スイッチ」としては、エコスイッチ89に限定されるものではなく、燃費と快適性とを考慮して走行する通常走行モードと通常走行モードより燃費を優先して走行する燃費優先走行モードとを切り替えて設定するものであれば如何なるものとしても構わない。「表示手段」としては、メータ表示ユニット90に限定されるものではなく、走行状態に関連する情報を表示可能なものであれば如何なるものとしても構わない。「走行制御手段」としては、エコスイッチ89の状態とアクセル開度Accとに基づいて走行するようエンジン22の目標回転数Ne*および目標トルクTe*を設定してエンジン22を制御すると共にモータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*を設定してモータMG1,MG2を制御するものに限定されるものではなく、モード設定スイッチの状態と運転者による走行要求操作とに基づく駆動力により走行するよう動力出力装置を制御するものであれば如何なるものとしても構わない。「表示制御手段」としては、通常走行モードとエコモードとを切り替えるエコスイッチ89によりエコモードが設定されているときには、エコモードでの走行における燃費であるエコモード時燃費Feと通常走行モードで走行したと仮定したときに推定される燃費である通常走行モード時燃費Fnとを演算してメータ表示ユニット90に「エコモード」を点灯すると共にエコモード時燃費Feと通常走行モード時燃費Fnとを表示するものに限定されるものではなく、これらに加えて他の情報例えば要求トルクTr*が閾値Tref以下で閾値Tref0より大きく要求パワーPe*が閾値Pref以下で閾値Pref0より大きいときにエコモードが設定されていることによってエンジン22を運転停止している旨をメータ表示ユニット90に表示するものとするなど、モード設定スイッチにより燃費優先走行モードが設定されているとき、燃費優先走行モードにおける燃費と通常走行モードにおける燃費とを演算し、演算した燃費優先走行モードにおける燃費と通常走行モードにおける燃費とが共に表示されるよう表示手段を制御するものであれば如何なるものとしても構わない。「内燃機関」としては、ガソリンまたは軽油などの炭化水素系の燃料により動力を出力する内燃機関に限定されるものではなく、水素エンジンなど如何なるタイプの内燃機関であっても構わない。「電動機」としては、同期発電電動機として構成されたモータMG2に限定されるものではなく、誘導電動機など、駆動軸に動力を入出力可能なものであれば如何なるタイプの電動機であっても構わない。「電力動力入出力手段」としては、モータMG1と動力分配統合機構30とを組み合わせたものや対ロータ電動機230に限定されるされるものではなく、車軸に連結された駆動軸に接続されると共に駆動軸とは独立に回転可能に内燃機関の出力軸に接続され、電力と動力の入出力を伴って駆動軸と出力軸とに動力を入出力可能なものであれば如何なるものとしても構わない。なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための最良の形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0052】
以上、本発明を実施するための最良の形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、車両の製造産業などに利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の一実施例であるハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。
【図2】ハイブリッド用電子制御ユニット70により実行されるエコモード時制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図3】制御用アクセル開度設定用マップの一例を示す説明図である。
【図4】要求トルク設定用マップの一例を示す説明図である。
【図5】エンジン22の動作ラインの一例と目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを設定する様子を示す説明図である。
【図6】エンジン22からパワーを出力している状態で走行しているときの動力分配統合機構30の回転要素における回転数とトルクとの力学的な関係を示す共線図の一例を示す説明図である。
【図7】通常走行モード時燃費推定処理の一例を示すフローチャートである。
【図8】変形例のハイブリッド自動車120の構成の概略を示す構成図である。
【図9】変形例のハイブリッド自動車220の構成の概略を示す構成図である。
【符号の説明】
【0055】
20,120,220 ハイブリッド自動車、22 エンジン、24 エンジン用電子制御ユニット(エンジンECU)、26 クランクシャフト、28 ダンパ、30 動力分配統合機構、31 サンギヤ、32 リングギヤ、32a リングギヤ軸、33 ピニオンギヤ、34 キャリア、35 減速ギヤ、40 モータ用電子制御ユニット(モータECU)、41,42 インバータ、43,44 回転位置検出センサ、50 バッテリ、51 温度センサ、52 バッテリ用電子制御ユニット(バッテリECU)、54 電力ライン、60 ギヤ機構、62 デファレンシャルギヤ、63a,63b 駆動輪、64a,64b 車輪、70 ハイブリッド用電子制御ユニット、72 CPU、74 ROM、76 RAM、80 イグニッションスイッチ、81 シフトレバー、82 シフトポジションセンサ、83 アクセルペダル、84 アクセルペダルポジションセンサ、85 ブレーキペダル、86 ブレーキペダルポジションセンサ、88 車速センサ、89 エコスイッチ、90 メータ表示ユニット、91 シフトポジション表示部、92 スピードメータ部、93 エコモード表示部、94 燃費表示部、99 メータ用電子制御ユニット(以下、メータECUという)、230 対ロータ電動機、232 インナーロータ、234 アウターロータ、MG1,MG2 モータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行用の動力を出力する動力出力装置を搭載する車両であって、
燃費と快適性とを考慮して走行する通常走行モードと該通常走行モードより燃費を優先して走行する燃費優先走行モードとを切り替えて設定するモード設定スイッチと、
走行状態に関連する情報を表示可能な表示手段と、
前記モード設定スイッチの状態と運転者による走行要求操作とに基づく駆動力により走行するよう前記動力出力装置を制御する走行制御手段と、
前記モード設定スイッチにより燃費優先走行モードが設定されているとき、前記燃費優先走行モードにおける燃費と前記通常走行モードにおける燃費とを演算し、該演算した燃費優先走行モードにおける燃費と通常走行モードにおける燃費とが共に表示されるよう前記表示手段を制御する表示制御手段と、
を備える車両。
【請求項2】
請求項1記載の車両であって、
前記動力出力装置は、内燃機関と電動機とを有し、該内燃機関の間欠運転を伴って走行用の動力を出力する装置であり、
前記走行制御手段は、前記走行要求操作に基づいて走行に要求される要求パワーを設定し、前記モード設定スイッチにより通常走行モードが設定されているときには前記設定した要求パワーが第1の閾値より大きいときに前記内燃機関の運転を伴って走行するよう前記内燃機関と前記電動機とを制御すると共に前記設定した要求パワーが前記第1の閾値以下のときに前記内燃機関の運転停止を伴って走行するよう前記内燃機関と前記電動機とを制御し、前記モード設定スイッチにより燃費優先走行モードが設定されているときには前記設定した要求パワーが前記第1の閾値より大きい第2の閾値より大きいときに前記内燃機関の運転を伴って走行するよう前記内燃機関と前記電動機とを制御すると共に前記設定した要求パワーが前記第2の閾値以下のときに前記内燃機関の運転停止を伴って走行するよう前記内燃機関と前記電動機とを制御する手段であり、
前記表示制御手段は、前記モード設定スイッチにより燃費優先走行モードが設定されているときであって前記要求パワーが前記第1の閾値より大きく前記第2の閾値以下のときには、前記モード設定スイッチにより燃費優先走行モードが設定されていることによって前記内燃機関を運転停止する旨が表示されるよう前記表示手段を制御する手段である、
車両。
【請求項3】
前記動力出力装置は、車軸に連結された駆動軸に接続されると共に該駆動軸とは独立に回転可能に前記内燃機関の出力軸に接続され、電力と動力の入出力を伴って前記駆動軸と前記出力軸とに動力を入出力可能な電力動力入出力手段を備える請求項2記載の車両。
【請求項4】
前記表示制御手段は、前記モード設定スイッチにより燃費優先走行モードが設定されているとき、前記動力出力装置の駆動状態に基づく損失を考慮して前記燃費優先走行モードにおける燃費と前記通常走行モードにおける燃費とを演算する手段である請求項1ないし3のいずれか1つの請求項に記載の車両。
【請求項5】
前記走行制御手段は、前記モード設定スイッチにより燃費優先走行モードが設定されているとき、前記モード設定スイッチにより通常走行モードが設定されているときに比して小さくなる傾向の駆動力により走行するよう前記動力出力装置を制御する手段である請求項1ないし4のいずれか記載の車両。
【請求項6】
走行用の動力を出力する動力出力装置と、燃費と快適性とを考慮して走行する通常走行モードと該通常走行モードより燃費を優先して走行する燃費優先走行モードとを切り替えて設定するモード設定スイッチと、走行状態に関連する情報を表示可能な表示手段と、を備える車両の制御方法であって、
(a)前記モード設定スイッチの状態と運転者による走行要求操作とに基づく駆動力により走行するよう前記動力出力装置を制御し、
(b)前記モード設定スイッチにより燃費優先走行モードが設定されているとき、前記燃費優先走行モードにおける燃費と前記通常走行モードにおける燃費とを演算し、該演算した燃費優先走行モードにおける燃費と通常走行モードにおける燃費とが共に表示されるよう前記表示手段を制御する、
ことを特徴とする車両の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−198223(P2009−198223A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−37897(P2008−37897)
【出願日】平成20年2月19日(2008.2.19)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】