説明

車両のヨーモーメント制御装置

【課題】 車両の運動状態を制御する主操作部材に設けた副操作部材の操作でヨーモーメント発生装置の作動を制御するものにおいて、副操作部材が出力する指令信号のノイズの影響を低減する。
【解決手段】 運転者がステアリングホイール7に設けたグリップ9L,9Rを操作すると、そのグリップ9L,9Rの操作に応じてヨーモーメント発生装置が車両のヨーモーメントを変化させるので、ステアリングホイール7を操作して車両の運動状態を制御するのと同時並行して、車両の旋回を補助あるいは抑制することができる。このとき車速の増加に応じてグリップ9L,9Rの操作量に対するヨーモーメントの変化量を変更するので、運転者によるステアリングホイール7の保持力や操作力が増加するためにグリップ9L,9Rの操作にノイズが乗り易くなっても、そのノイズの影響を最小限に抑えてヨーモーメント発生装置が不適切なヨーモーメントを発生するのを防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転者により操作されて車両の運動状態を制御する主操作部材と、前記主操作部材に設けられて運転者により操作される副操作部材と、車両にヨーモーメントを発生させるヨーモーメント発生装置と、前記副操作部材の操作に応じて前記ヨーモーメント発生装置が発生するヨーモーメントを制御する制御手段とを備えた車両のヨーモーメント制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
運転者の足で操作されるペダルを中間部において前後揺動可能に枢支し、中立位置から前方に揺動したときにアクセルペダルとして機能させ、中立位置から後方に揺動したときにブレーキペダルとして機能させるものにおいて、ペダルの左右両側に一対のスイッチを配置し、それらのスイッチをシフトアップ/シフトダウンの指令や、左右のウインカーの点灯の指令に用いるものが、下記特許文献1により公知である。
【0003】
また左右の後輪のブレーキを左右のブレーキペダルにより独立して作動させる状態と、ハンドルの切れ角が所定値以上になったときに旋回内輪側のブレーキを自動的に作動させる状態とを切り換え可能にしたものが、下記特許文献2により公知である。
【0004】
また走行速度が所定値未満の状態では左右の後輪のブレーキをそれぞれ左右のブレーキペダルにより独立して作動させ、走行速度が所定値以上の状態では左右一方のブレーキペダルで左右両方の後輪のブレーキを同時に作動させるものが、下記特許文献3により公知である。
【特許文献1】特開2004−352228号公報
【特許文献2】特許第3090858号公報
【特許文献3】特開平9−193759号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、運転者が手や足で操作部材を操作して指令信号を出力することで左右の車輪の制動力を個別に制御し、旋回を補助するヨーモーメントや旋回を抑制するヨーモーメントを発生させるものでは、運転者が緊張状態にある高車速時に操作部材を強く握ったり強く踏んだりするため、運転者の手や足のふるえによって操作部材が無駄な動きをして指令信号にノイズが乗り易くなり、このノイズによってヨーモーメント発生装置が発生するヨーモーメントが変動して車両が不適切な挙動を示す虞がある。
【0006】
本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、車両の運動状態を制御する主操作部材に設けた副操作部材の操作でヨーモーメント発生装置の作動を制御するものにおいて、副操作部材が出力する指令信号のノイズの影響を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明によれば、運転者により操作されて車両の運動状態を制御する主操作部材と、前記主操作部材に設けられて運転者により操作される副操作部材と、車両にヨーモーメントを発生させるヨーモーメント発生装置と、前記副操作部材の操作に応じて前記ヨーモーメント発生装置が発生するヨーモーメントを制御する制御手段とを備えた車両のヨーモーメント制御装置であって、車速を検出する車速センサを備え、前記制御手段は前記車速センサで検出した車速の増加に応じて、前記副操作部材の操作量に対するヨーモーメントの変化量を小さくすることを特徴とする車両のヨーモーメント制御装置が提案される。
【0008】
また請求項2に記載された発明によれば、請求項1の構成に加えて、前記主操作部材はステアリングホイールであり、前記副操作部材はステアリングホイール本体の一部を回転可能としたグリップであることを特徴とする車両のヨーモーメント制御装置が提案される。
【0009】
また請求項3に記載された発明によれば、請求項1の構成に加えて、前記主操作部材はアクセルペダルであり、前記副操作部材はペダル本体に左右揺動可能に設けた被踏部であることを特徴とする車両のヨーモーメント制御装置が提案される。
【0010】
尚、実施の形態の油圧制御装置4は本発明のヨーモーメント発生装置に対応し、実施の形態のステアリングホイール7およびアクセルペダル18は本発明の主操作部材に対応し、実施の形態のグリップ9L,9Rおよび被踏部23は本発明の副操作部材に対応し、実施の形態の電子制御ユニットUは本発明の制御手段に対応する。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の構成によれば、運転者が主操作部材に設けた副操作部材を操作すると、その副操作部材の操作に応じてヨーモーメント発生装置が車両のヨーモーメントを変化させるので、主操作部材を操作して車両の運動状態を制御するのと同時並行して、副操作部材を操作して車両の旋回を補助あるいは抑制することができる。このとき車速の増加に応じて副操作部材の操作量に対するヨーモーメントの変化量を変更するので、運転者による主操作部材の保持力や操作力が増加するために副操作部材の操作にノイズが乗り易くなっても、そのノイズの影響を最小限に抑えてヨーモーメント発生装置が不適切なヨーモーメントを発生するのを防止することができる。
【0012】
また請求項2の構成によれば、主操作部材としてのステアリングホイールのステアリングホイール本体の一部を回転可能としたグリップで副操作部材を構成したので、ステアリングホイールを操作して車両を旋回させながら、グリップを回転させて旋回を補助あるいは抑制することができる。このとき、ステアリングホイール本体およびグリップは共に運転者の同じ手で操作可能であるため、運転者の操作負担が軽減される。
【0013】
また請求項3の構成によれば、主操作部材としてのブレーキペダルのペダル本体に左右揺動可能に設けた被踏部で副操作部材を構成したので、ブレーキペダルを操作して車両を制動しながら、被踏部を左右揺動させて旋回を補助あるいは抑制することができる。このとき、ペダル本体および被踏部は共に運転者の同じ足で操作可能であるため、運転者の操作負担が軽減される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を添付の図面に基づいて説明する。
【0015】
図1〜図6は本発明の第1の実施の形態を示すもので、図1はヨーモーメント制御装置を搭載した車両の全体構成を示す図、図2はヨーモーメント制御装置の構成を示すブロック図、図3はステアリングホイールの斜視図、図4は制御系のブロック図、図5は補正係数を検索するマップを示す図、図6は車速によるヨーモーメントの指令値の変化を示す図である。
【0016】
図1および図2に示すように、本実施の形態のヨーモーメント制御装置を搭載した四輪の車両は、エンジンEの駆動力がトランスミッションTを介して伝達される駆動輪たる左右の前輪WFL,WFRと、車両の走行に伴って回転する従動輪たる左右の後輪WRL,WRRとを備える。運転者により操作されるブレーキペダル1は電子制御負圧ブースタ2を介してマスタシリンダ3に接続される。電子制御負圧ブースタ2は、ブレーキペダル1の踏力を機械的に倍力してマスタシリンダ3を作動させるとともに、自動制動時にはブレーキペダル1の操作によらずに電子制御ユニットUからの制動指令信号によりマスタシリンダ3を作動させる。尚、電子制御負圧ブースタ2の入力ロッドはロストモーション機構を介してブレーキペダル1に接続されており、電子制御負圧ブースタ2が電子制御ユニットUからの信号により作動して前記入力ロッドが前方に移動しても、ブレーキペダル1は初期位置に留まるようになっている。
【0017】
マスタシリンダ3の一対の出力ポート3a,3bは、本発明のヨーモーメント発生装置としての油圧制御装置4を介して、前輪WFL,WFRおよび後輪WRL,WRRにそれぞれ設けられたブレーキキャリパ5FL,5FR,5RL,5RRに接続される。油圧制御装置4は4個のブレーキキャリパ5FL,5FR,5RL,5RRに対応して4個の圧力補正器6…を備えており、それぞれの圧力補正器6…は電子制御ユニットUに接続されて前輪WFL,WFRおよび後輪WRL,WRRに設けられたブレーキキャリパ5FL,5FR,5RL,5RRの作動を個別に制御する。
【0018】
従って、各車輪WFL,WFR,WRL,WRRのブレーキキャリパ5FL,5FR,5RL,5RRに伝達されるブレーキ油圧を圧力補正器6…によって独立に制御すれば、車両のヨーモーメントを任意に制御して旋回を補助あるいは抑制することができ、また制動時における車輪WFL,WFR,WRL,WRRのロックを抑制するアンチロックブレーキ制御を行うことができる。
【0019】
図1および図3に示すように、ステアリングホイール7は環状のステアリングホイール本体8を備えており、運転者が左右の手で握る2カ所が別部材のグリップ9L,9Rで構成される。各グリップ9L,9Rはその接線方向に延びる回転軸10,10まわりに回転可能であり、その回転角がグリップ回転角センサSaL,SaRにより検出される。グリップ9L,9Rは、図示せぬリターンスプリングで中立位置に向けて付勢される。
【0020】
図1および図4に示すように、電子制御ユニットUは、左ヨーモーメント指令値算出手段M1Lと、右ヨーモーメント指令値算出手段M1Rと、加算手段M2と、補正係数算出手段M3と、乗算手段M4と、アクチュエータ制御手段M5とを備える。左ヨーモーメント指令値算出手段M1Lおよび右ヨーモーメント指令値算出手段M1Rには、左右のグリップ回転角センサSaL,SaRがそれぞれ接続され、補正係数算出手段M3には、車速を検出する車速センサSbが接続され、アクチュエータ制御手段M5には、油圧制御装置4の圧力補正器6…に接続される。
【0021】
次に、上記構成を備えた本発明の第1の実施の形態の作用を説明する。
【0022】
運転者がステアリングホイール7を左右に回転させると、前輪WFL,WFRが左右に操舵されて車両が旋回する。運転者が通常ステアリングホイール本体8を左手で握る位置に設けられた左グリップ9Lを回転させると、左グリップ回転角センサSaLにより検出された左グリップ9Lの回転角が電子制御ユニットUの左ヨーモーメント指令値算出手段M1Lに入力される。左ヨーモーメント指令値算出手段M1Lは左グリップ9Lの回転角に応じた左ヨーモーメントの指令値を算出する。また運転者が通常ステアリングホイール本体8を右手で握る位置に設けられた右グリップ9Rを回転させると、右グリップ回転角センサSaRにより検出された右グリップ9Rの回転角が電子制御ユニットUの右ヨーモーメント指令値算出手段M1Rに入力される。右ヨーモーメント指令値算出手段M1Rは右グリップ9Rの回転角に応じた右ヨーモーメントの指令値を算出する。
【0023】
左右のヨーモーメント指令値算出手段M1L,M1Rで算出した左右のヨーモーメントの指令値は加算手段M2で加算される。通常、左右のグリップ9L,9Rはその一方だけが操作されるが、左右のグリップ9L,9Rが同時に操作された場合には、左ヨーモーメント指令値算出手段M1Lが算出した左ヨーモーメントの指令値と、右ヨーモーメント指令値算出手段M1Rが算出した右ヨーモーメントの指令値とが加算されて相殺され、その差分のヨーモーメントの指令値が加算手段M2から出力される。
【0024】
一方、車速センサSbで検出した車速が入力された補正係数算出手段M3は、車速をパラメータとする図5のマップに基づいて補正係数Kを算出する。補正係数Kは、車速が0のときに最大値の1をとり、車速が0から増加すると前記最大値から次第に減少する。
【0025】
加算手段M2が出力するヨーモーメントの指令値と補正係数Kとが乗算手段M4において乗算されて最終的な指令値が算出され、その指令値に基づいてアクチュエータ制御手段M5が油圧制御装置4の圧力補正器6…を作動させて左右の車輪の制動力を自動的かつ個別に制御することで、前記最終的な指令値に対応するヨーモーメントを発生させる。
【0026】
例えば、右旋回中にアンダーステア傾向だと判断した運転者が右グリップ9Rを回転させると、旋回内輪である右車輪だけに制動力が作用して車両を右に旋回させるヨーモーメントが発生し、このヨーモーメントによりアンダーステア傾向を解消させることができる。逆に右旋回中にオーバーステア傾向だと判断した運転者が左グリップ9Lを回転させると、旋回外輪である左車輪だけに制動力が作用して車両を左に旋回させるヨーモーメントが発生し、このヨーモーメントによりオーバーステア傾向を解消させることができる。
【0027】
左旋回中でも、あるいは直進走行中でも、同様にして左右のグリップ9L,9Rの操作によりヨーモーメントの制御を行うことができる。このとき発生するヨーモーメントの大きさは、グリップ9の回転角に応じて補正することができる。
【0028】
以上のように、ステアリングホイール本体8の一部を回転可能とした左右のグリップ9L,9Rを回転させるだけで任意の方向および任意の大きさのヨーモーメントを発生させることができるので、ステアリングホイール7を操作して車両を旋回させながら、左右のグリップ9L,9Rを回転させて旋回を補助あるいは抑制することができる。このとき、ステアリングホイール本体8に添えた運転者の手で左右のグリップ9L,9Rを操作可能であるため、運転者の操作負担が軽減される。
【0029】
図6は、左グリップ9Lあるいは右グリップ9Rを中立位置から限界位置まで回転させたときのヨーモーメントの指令値を、車速が大きい場合と車速が小さい場合とについて示すものである。即ち、車速が大きい場合には運転者が緊張してステアリングホイール7を強く握るので、グリップ9L,9Rを操作するときに微妙にふるえてしまい、ヨーモーメントの指令値にノイズが乗り易くなる。しかしながら、高車速時には補正係数Kが小さくなってヨーモーメントの指令値が小さくなるので、ノイズの影響によるヨーモーメントの変動を低減することができる。
【0030】
逆に、車速が小さい場合には運転者がステアリングホイール7を強く握ることはないので、グリップ9L,9Rの操作により出力されるヨーモーメントの指令値にノイズが乗り難くなる。この低車速時には補正係数Kが大きくなってヨーモーメントの指令値が大きくなるので、グリップ9L,9Rを操作する運転者の意思を充分に反映したヨーモーメントの制御が可能になる。
【0031】
図7および図8は本発明の第2の実施の形態を示すもので、図7はアクセルペダルの分解斜視図、図8は図7の8A方向および8B方向矢視図である。
【0032】
第1の実施の形態では、ステアリングホイール7に設けた左右のグリップ9L,9Rでヨーモーメントを増減する運転者の意思を電子制御ユニットUに入力しているが、第2の実施の形態では前記グリップ9L,9Rの代わりにアクセルペダル18を用いている。
【0033】
アクセルペダル18は車体に固定したブラケット19に左右方向に配置したピン20を介して上端を枢支されたペダルアーム21を備えており、ペダルアーム21の下端に設けたペダル本体22の表面(運転者に対向する面)に、運転者の足Fによって踏まれる被踏部23が上下方向に延びるピン24を介して左右揺動可能に枢支される。被踏部23はペダル本体22との間に配置した一対のリターンスプリング25,25によって該ペダル本体22と平行になるように付勢される。ペダル本体22の下端部には被踏部23と一体に揺動するピン24に接続された被踏部揺動角センサScが設けられており、この被踏部揺動角センサScにより被踏部23の揺動角が検出される。
【0034】
尚、運転者がアクセルペダル18に足を乗せる場合に爪先が右側に傾く場合が多いため、被踏部23の揺動軸となるピン24の上部を右側に傾けて配置することで、被踏部23の操作性を高めることができる。
【0035】
車両の走行中にアクセルペダル18を操作すると車両が加速あるいは減速するが、その際に運転者の足Fでアクセルペダル18の被踏部23をピン24まわりに左右に揺動させると、被踏部揺動角センサScで検出した被踏部23の揺動角に基づいて、電子制御ユニットUが電子制御負圧ブースタ2および油圧制御装置4を介して左右の車輪の制動力を別個に制御する。
【0036】
例えば、アクセルペダル18を踏む際に被踏部23の右側に踏力を加えると、電子制御負圧ブースタ2の作動によりマスタシリンダ3が発生するブレーキ油圧のうち、右側の車輪に伝達されるブレーキ油圧が油圧制御装置4によって増圧され、かつ左側の車輪に伝達されるブレーキ油圧が油圧制御装置4によって減圧されることで、右旋回方向のヨーモーメントを発生させることができる。逆に、アクセルペダル18を踏む際に被踏部23の左側に踏力を加えると、マスタシリンダ3が発生するブレーキ油圧のうち、左側の車輪に伝達されるブレーキ油圧が油圧制御装置4によって増圧され、かつ右側の車輪に伝達されるブレーキ油圧が油圧制御装置4によって減圧されることで、左旋回方向のヨーモーメントを発生させることができる。
【0037】
よって、アクセルペダル18に足を置いての加速中、定速走行中、減速中の何れの場合にも任意の方向および任意の大きさのヨーモーメントを発生させることができ、しかも右足だけで加減速およびヨーモーメントの制御を同時に行うことができるので、運転者の操作負担が軽減される。
【0038】
車速が大きい場合には運転者がアクセルペダル18を踏む踏力が大きくなるため、ペダル本体22が左右にふるえてしまい、ヨーモーメントの指令値にノイズが乗り易くなる。しかしながら高車速時には補正係数Kが小さくなってヨーモーメントの指令値が小さくなるので、ノイズの影響によるヨーモーメントの変動を低減することができる。
【0039】
逆に、車速が小さい場合には運転者がアクセルペダル18を踏む踏力が小さくなるため、ペダル本体22が左右にふるえることがなくなってヨーモーメントの指令値にノイズが乗り難くなる。この低車速時には補正係数Kが大きくなってヨーモーメントの指令値が大きくなるので、アクセルペダル18を操作する運転者の意思を充分に反映したヨーモーメントの制御が可能になる。
【0040】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。
【0041】
例えば、実施の形態では本発明のヨーモーメント発生装置として左右の車輪に制動力を任意に配分可能な油圧制御装置4(制動力左右配分装置)を例示したが、その他のヨーモーメント発生装置として、エンジンの駆動力を左右の車輪に任意に配分可能な駆動力左右配分装置や、前輪だけを操舵する通常の操舵装置や、前輪に加えて後輪を操舵可能な四輪操舵装置や、左右のサスペンションのダンパーの硬さを個別に制御可能な減衰力可変装置を採用することができる。
【0042】
ヨーモーメント発生装置として通常の操舵装置を採用した場合には、ステアリングホイール7の操作による前輪の操舵と、左右のグリップ9L,9Rの操作による前輪の操舵とを重畳することで、グリップ9L,9Rを操作した分だけヨーモーメントを増減することができる。またアクセルペダル18の被踏部23を操作すれば、その分だけ前輪の操舵量を増減して任意のヨーモーメントを発生させることができる。
【0043】
ヨーモーメント発生装置として四輪操舵装置を採用した場合には、ステアリングホイール7のグリップ9L,9Rあるいはアクセルペダル18の被踏部23の操作量に応じて後輪が操舵され、その操舵量に応じたヨーモーメントを発生させることができる。
【0044】
ヨーモーメント発生装置としてダンパーの硬さを個別に制御可能な減衰力可変装置を採用した場合には、旋回外輪側のダンパーを硬くして旋回内輪側のダンパーを柔らかくすることで、遠心力による旋回方向外側への車体の倒れを抑制して旋回を補助するヨーモーメントを発生させることができる。
【0045】
またステアリングホイール7のグリップ9L,9Rあるいはアクセルペダル18の被踏部23は無段階(連続的)に回転あるいは揺動するものであっても良いし、段階的に回転あるいは揺動するものであっても良い。
【0046】
また実施の形態ではステアリングホイール7のグリップ9L,9Rあるいはアクセルペダル18の被踏部23を備えているが、本発明はその両方を備えるものでも良い。
【0047】
また第1の実施の形態のステアリングホイール7は左右のグリップ9L,9Rを備えているが、右手あるいは左手で操作する単一のグリップを設け、そのグリップを中立位置から正逆二つの方向に回転させて右ヨーモーメントおよび左ヨーモーメントの発生を指令しても良い。
【0048】
またグリップ9L,9Rを柔軟性を有する材料で構成し、それが回転してもステアリングホイール本体8が円形を維持するようにすれば操作性が更に向上する。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】第1の実施の形態に係るヨーモーメント制御装置を搭載した車両の全体構成を示す図
【図2】ヨーモーメント制御装置の構成を示すブロック図
【図3】ステアリングホイールの斜視図
【図4】制御系のブロック図
【図5】補正係数を検索するマップを示す図
【図6】車速によるヨーモーメントの指令値の変化を示す図
【図7】第2の実施の形態に係るアクセルペダルの分解斜視図
【図8】図7の8A方向および8B方向矢視図
【符号の説明】
【0050】
4 油圧制御装置(ヨーモーメント発生装置、制動力左右配分装置)
7 ステアリングホイール(主操作部材)
8 ステアリングホイール本体
9L 左グリップ(副操作部材)
9R 右グリップ(副操作部材)
18 アクセルペダル(主操作部材)
22 ペダル本体
23 被踏部(副操作部材)
Sb 車速センサ
U 電子制御ユニット(制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転者により操作されて車両の運動状態を制御する主操作部材(7,18)と、
前記主操作部材(7,18)に設けられて運転者により操作される副操作部材(9L,9R,23)と、
車両にヨーモーメントを発生させるヨーモーメント発生装置(4)と、
前記副操作部材(9L,9R,23)の操作に応じて前記ヨーモーメント発生装置(4)が発生するヨーモーメントを制御する制御手段(U)と、
を備えた車両のヨーモーメント制御装置であって、
車速を検出する車速センサ(Sb)を備え、前記制御手段(U)は前記車速センサ(Sb)で検出した車速の増加に応じて、前記副操作部材(9L,9R,23)の操作量に対するヨーモーメントの変化量を小さくすることを特徴とする車両のヨーモーメント制御装置。
【請求項2】
前記主操作部材はステアリングホイール(7)であり、
前記副操作部材はステアリングホイール本体(8)の一部を回転可能としたグリップ(9L,9R)であることを特徴とする、請求項1に記載の車両のヨーモーメント制御装置。
【請求項3】
前記主操作部材はアクセルペダル(18)であり、
前記副操作部材はペダル本体(22)に左右揺動可能に設けた被踏部(23)であることを特徴とする、請求項1に記載の車両のヨーモーメント制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−168839(P2008−168839A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−5665(P2007−5665)
【出願日】平成19年1月15日(2007.1.15)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】