説明

車両の下部車体構造

【課題】大きなフレーム補強を必要とせず、車体の前後方向および左右方向の耐力、車体のねじり剛性の向上を図ることができる車両の下部車体構造の提供を目的とする。
【解決手段】フロアパネル3上には前後方向に延びるシートスライドレール16,17が車幅方向に離間して複数配設され、シートスライドレール16,17の間を連結する連結フレーム部材35〜40をフロアパネル3に固定したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車室の底部を形成するフロアパネルと、該フロアパネルに沿って前後方向に配設されるシートスライドレールと、該シートスライドレールに摺動可能に設けられて乗員が着座可能なシートとを備えたような車両の下部車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上述例の車両の下部車体構造としては特許文献1に開示された構造がある。
すなわち、フロアパネルに沿って前後方向に配設されるシートスライドレールを設け、このシートスライドレールを車幅方向に一対配設すると共に、該シートスライドレールで第2列目の後席シートと第3列目の後席シートとを摺動すべく、このシートスライドレールをロングレールに設定して、多様な座席配列パターンを形成することができるように構成したものである。
しかしながら、この従来構造において下部車体剛性を向上させるためには、フロアパネル下面に大きいクロスメンバを設ける等、大きなフレーム補強が必要となる問題点があった。
【0003】
特に、上述のような第3列目の後席シートのシートバックとバックドア等の車両背面部との間の空間が少ない車両においては、車体剛性および車体のねじり剛性を、過大な質量増加を招くことなく、向上させることが要請される。
【0004】
【特許文献1】特開2003−146120号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、この発明は、車室の底部を形成するフロアパネル上に、前後方向に延びるシートスライドレールを車幅方向に離間して複数配設し、該シートスライドレールの間を連結する連結フレーム部材をフロアパネルに固定することで、大きなフレーム補強を必要とせず、車体の前後方向および左右方向の耐力、車体のねじり剛性の向上を図ることができる車両の下部車体構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明による車両の下部車体構造は、車室の底部を形成するフロアパネルと、該フロアパネルに沿って前後方向に配設されるシートスライドレールと、該シートスライドレールに摺動可能に設けられ乗員が着座可能なシートとを備えた車両において、上記フロアパネル上には前後方向に延びるシートスライドレールが車幅方向に離間して複数配設され、該シートスライドレールの間を連結する連結フレーム部材を上記フロアパネルに固定したものである。
上記構成によれば、フロアパネルに沿って前後方向に延びるシートスライドレールの間を、上記連結フレーム部材にて連結し、かつ、該連結フレーム部材をフロアパネルに固定したので、フロアパネル下面に大きいクロスメンバを設ける等の大きなフレーム補強を必要とすることなく、車体の前後方向および左右方向の耐力と、車体のねじり剛性の向上とを図ることができ、後突耐力、側突耐力を確保することができる。
【0007】
この発明の一実施態様においては、上記シートスライドレールは、一対のロングレールと、該ロングレールの間に配設された一対のショートレールとから構成され、上記連結フレーム部材は各レール間を接続するように配設されたものである。
上記構成によれば、一対のロングレールと、一対のショートレールとから上記シートスライドレールを構成すると共に、ロングレール、ショートレールの各レール間を上記連結フレーム部材にて接続したので、車体剛性をさらに向上させることができ、しかも、前後方向の長さが長い一対のロングレールを利用することで、荷重を広範囲に分散させることができ、この結果、衝突耐力の更なる向上を図ることができる。
【0008】
この発明の一実施態様においては、上記シートは前後に配設された複数列のシートから構成され、該複数列のシートは、少なくとも上記ロングレールを共用するように配設されたものである。
上記構成によれば、複数列のシートにより多人数乗車が達成できるシートレイアウトを確保しつつ、長いスパンのロングレールにてシートを支持するため、シート支持剛性の向上を図ることができる。
【0009】
この発明の一実施態様においては、上記連結フレーム部材は、前後方向に離間して複数配設されたものである。
上記構成によれば、連結フレーム部材を前後方向に離間して複数設けることにより、車体剛性をさらに向上させることができる。
【0010】
この発明の一実施態様においては、上記各レール間を接続する連結フレーム部材は、車幅方向に沿って一直線状に配設されたものである。
上記構成によれば、連結フレーム部材を車幅方向に一直線状に設けたので、側突耐力のさらなる向上を図ることができる。
【0011】
この発明の一実施態様においては、上記フロアパネルには前後方向に延びる車体フレームが設けられ、該車体フレームに沿って上記シートスライドレールが配設されると共に、該車体フレームとシートスライドレールとを連結する連結部材が設けられたものである。
上述の車体フレームは、リヤサイドフレームに設定してもよい。
【0012】
上記構成によれば、前後方向に延びる車体フレームに沿ってシートスライドレールを配設し、この車体フレームとシートスライドレールとを連結部材で連結したので、大きなフレーム補強を必要とすることなく、上記連結構造により車体の前後方向の耐力を向上させることができて、車体の剛性向上、強度向上を図ることができる。
特に、後突エネルギの入力時には、該エネルギを車体フレームおよびシートスライドレールに分散させることができるので、後突に対する耐力向上を図ることができる。
【0013】
この発明の一実施態様においては、上記フロアパネルの外側部には前後方向に延びるサイドシルが設けられ、該サイドシルと上記シートスライドレールとを接続する連結部材が設けられたものである。
上記構成によれば、シートスライドレールを上記連結部材にて剛性が高いサイドシルと接続したので、車体全体の剛性向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、車室の底部を形成するフロアパネル上に、前後方向に延びるシートスライドレールを車幅方向に離間して複数配設し、該シートスライドレールの間を連結する連結フレーム部材をフロアパネルに固定したので、大きなフレーム補強を必要とせず、車体の前後方向および左右方向の耐力、車体のねじり剛性の向上を図ることができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
大きなフレーム補強(過大な質量の増加)を必要とすることなく、車体の前後方向の耐力、左右方向の耐力、車体のねじり剛性の向上を図るという目的を、車室の底部を形成するフロアパネルと、該フロアパネルに沿って前後方向に配設されるシートスライドレールと、該シートスライドレールに摺動可能に設けられ乗員が着座可能なシートとを備えた車両において、上記フロアパネル上に前後方向に延びるシートスライドレールを車幅方向に離間して複数配設し、該シートスライドレールの間を連結する連結フレーム部材を上記フロアパネルに固定するという構造にて実現した。
【実施例】
【0016】
この発明の一実施例を以下図面に基づいて詳述する。
図面はモノコック型の車両の下部車体構造を示し、図1〜図4において、車室の底部を形成するフロアパネル1を設け、このフロアパネル1の後部には段部2を介して後部フロアパネルとしてのリヤフロア3を連設し、このリヤフロア3の後部における車幅方向中間部にはスペアタイヤを格納可能なスペアタイヤパン4が一体に段下げ(凹設)形成されている。
【0017】
上述のリヤフロア3の左右両側部の車輪(つまり後輪)と対応した位置には車室内方向に膨出された左右のリヤホイールハウス5,5が設けられている。
一方、上述のフロアパネル1の車幅方向中央には、車室内方に突出したトンネル部6を設けている。
このトンネル部6はダッシュロアパネル(ダッシュパネル)と上記段部2との間にわたって車両の前後方向に延びるもので、該トンネル部6は車体剛性の中心となる。
また、上述のフロアパネル1およびリヤフロア3前部の左右両外側部には、前後方向に延びる左右のサイドシル7,7が設けられている。
【0018】
このサイドシル7は図18に示すように、サイドシルインナ8とサイドシルアウタ9とを接合固定して、車両の前後方向に延びるサイドシル閉断面10を備えた車体剛性部材(剛性が高い部材)である。
【0019】
図3、図4に示すように、上述の各サイドシル7,7の後部には上下方向に延びる左右の各リヤピラー11,11の下部が配設されている。このリヤピラー111,11は、図3,図4に示すように、リヤピラーインナ12とリヤピラーアウタ13とを接合固定して、上下方向に延びるリヤピラー閉断面14を備えた車体剛性部材である。
【0020】
また、上述のトンネル部6における左右の縦壁部とサイドシル7の左右のサイドシルインナ8,8との間には、フロアパネル1に接合固定して、車幅方向に延びる車体剛性部材としてのクロスメンバ15,15を接続している。ここで、該クロスメンバ15とフロアパネル1との間には車幅方向に延びる閉断面を形成して、下部車体剛性を確保すべく構成している。
【0021】
さらに、図4に示すように、リヤホイールハウス5とスペアタイヤパン4との間において、リヤフロア3の車室内側には、該リヤフロア3に沿って前後方向に延びるシートスライドレールとしての左右一対のロングレール16,16(ロアレール)を、車幅方向に離間して、平行に配設している。
【0022】
これら左右一対のロングレール16,16の前端部は、上述の段部2よりも前方に位置し、ロングレール16,16の後端部はスペアタイヤパン4の前後方向中間位置で、かつ、リヤホイールホウス5の後ろ側面5aよりも、さらに後方に位置するものである。
【0023】
また、図4に示すように、上述の左右一対のロングレール16,16間には、トンネル部6の左右の縦壁部外方位置に対応すべく、リヤフロア3の車室内側において、該リヤフロア3に沿って前後方向に延びるシートスライドレールとしての左右一対のショートレール17,17(ロアレール)を、車幅方向に離間して平行に配設している。
【0024】
これら左右一対のショートレール17,17の前端部は、上記ロングレール16,16の前端部と同一位置に位置し、ショートレール17,17の後端部は、スペアタイヤパン4の前部に位置するものである。
要するに、上記シートスライドレールは、一対のロングレール16,16と、該ロングレール16,16の間に配設された一対のショートレール17,17とから構成されている。ロングレール16は図4に平面図で示すように、後述するリヤサイドフレーム24に沿って重合するように配設されている。
【0025】
そして、上述のシートスライドレール(ロングレール16、ショートレール17参照)には、乗員が着座可能なシートとして第2列目シート18,18(前席シート)と、第3列目シート19(後席シート)との複数のシートを前後方向に摺動可能に配設している。
【0026】
図1〜図5に示すように、車室内において前後方向に配設した複数のシート18,19のうち、第2列目シート18は、左右独立したセパレートシートが用いられ、第3列目シート19は、3人乗車が可能なベンチシートが用いられており、これら前後のシート18,19および図示しない運転席シート、助手席シートとで、多人数乗車が達成できるシートレイアウトを確保すべく構成している。
【0027】
ここで、上述の第2列目シート18は、図2、図3、図5に示すように、ロングレール16とショートレール17とに対して摺動可能に構成された複数のアッパレール20と、シート支持部材21とにより支持されており、この第2列目シート18は、シートクッション18Cと、シートバック18Bと、ヘッドレスト18Hと、シートバック18Bの車幅方向外方に起伏可能に設けられたアームレスト18Aとを、それぞれ備えている。
【0028】
また、上述の第3列目シート19は、図3、図5に示すように、車幅方向のスパンが長い左右一対のロングレール16,16に対して摺動可能に構成された一対のアッパレール22と、シート支持部材23とにより支持されており、この第3列目シート19は、シートクッション19Cと、シートバック19Bと、2つのヘッドレスト19H,19Hとを備えている。
【0029】
上述の第2列目シート18,18は、左右のそれぞれのシート18,18がロングレール16とショートレール17とに沿って前後方向に摺動可能に形成され、また第3列目シート19は車幅方向のスパンが長く、かつ、前後方向の長さも長い左右一対のロングレール16,16に沿って前後方向に摺動可能に形成されている。
【0030】
要するに、上述のロングレール16,16は前席シート(第2列目シート18参照)と後席シート(第3列目シート19参照)とで共用するように構成したものであり、また、この左右一対のロングレール16,16は同じシートとしての第3列目シート19を支持している。
【0031】
一方、図5、図6(但し、図6は図4のA−A線に沿う要部拡大断面図)に示すように、リヤフロア3の下面つまり車室外側において該リヤフロア3の左右の両側部を車両の前後方向に延びる車体フレーム(車体剛性部材)としてのリヤサイドフレーム24を車幅方向に離間して一対設けている。
このリヤサイドフレーム24はリヤフロア3の下面に接合固定され、これら両者24,3間には前後方向に延びるリヤサイド閉断面25が形成されている。
【0032】
上述の左右一対のロングレール16,16は、この一対のリヤサイドフレーム24,24に沿って配設されたものであり、車室外側に位置するリヤサイドフレーム24と、車室内側に位置するロングレール16とは、図6に示すように、リヤフロア3を介して上下に重合されて車両の前後方向に延設配置されたものである。なお、図6においては車両左側の重合構造のみを示すが、車両右側においても同様に構成されている。
【0033】
また、この実施例においては、図6に示すように、ロングレール16の車幅方向の中心部と、リヤサイドフレーム24の車幅方向の中心部とが、リヤフロア3を介して上下に一致または略一致するように、これら両者16,24を上下にオーバラップさせている。
【0034】
図6に示すように、上述のロングレール16はその前後複数箇所がボルト、ナット等の締結部材26を用いてリヤフロア3に固定されている。
しかも、車室内側のロングレール16と、車室外側のリヤサイドフレーム24とを上下に連結する一対の連結部材27,27を設けている。
【0035】
図6の実施例においては、リヤフロア3に開口部28を形成し、この開口部28を介して連結部材27を車室内側と車室外側との両側に位置させて、該連結部材27の上片27aとロングレール16の側片16aとを溶接手段により接合固定すると共に、連結部材27の下片27bとリヤサイドフレーム24の縦壁部24aとを、ボルト、ナット等の締結部材29を用いて固定することにより、連結部材27でリヤフロア3を介してリヤサイドフレーム24とロングレール16とを連結して、車体の前後方向の耐力向上を図ると共に、後突に対する耐力の向上を図るように構成している。この連結部材27を設ける位置は可及的後方が望ましい。
図6に示す連結構造に代えて、図7に示す連結構造を採用してもよい。
【0036】
すなわち、図7に示す連結構造は、上記連結部材27をアッパ連結部材27Uと、ロア連結部材27Lとに2分割し、アッパ連結部材27Uの上片27cとロングレール16の側片16aとを溶接手段により接合固定し、ロア連結部材27Lの下片27dとリヤサイドフレーム24の縦壁部24aとを、ボルト、ナット等の締結部材29を用いて固定し、さらにアッパ連結部材27Uの下片27eと、ロア連結部材27Lの上片27fとを、リヤフロア3を挟持した状態において、ボルト、ナット等の締結部材30を用いて共締め固定することにより、上下の各連結部材27U,27Lでリヤフロア3を介してリヤサイドフレーム24とロングレール16とを連結したものである。
【0037】
このように構成すると、図6の連結構造に対して部品点数が多くなるが、リヤフロア3に形成される開口部は、例えば、ボルト孔のみでよく、該リヤフロア3に対する開口面積を少なくすることができる。
【0038】
ところで、上述のリヤホイールハウス5は、図3、図4に示すように左右の後輪と対応して車幅方向に一対設けられている。図8は図4の右側要部の斜視図であって、右側のリヤホイールハウス5と同側のロングレール16との連結構造を示すが、左側の連結構造は右側のそれと同様に構成されている。
【0039】
図8に示すように、リヤホイールハウス5に対して上述のロングレール16は近接して前後方向に延設配置されていて、このロングレール16の後部とリヤホイールハウス5の後ろ側面5aとを、そのデッドスペースを有効利用して、連結部材31で連結し、車体の前後方向の耐力および後突に対する耐力の向上を図るように構成している。ここで、上述の連結部材31は図8に示すようにデッドスペースを利用して配設されたものであるから、該連結部材31が邪魔になることはない。そして、後面衝突時にその衝突荷重を、連結部材31を介してリヤホイールハウス5に伝達すべく構成したものである。
【0040】
上述の連結部材31は、ロングレール16後部の側片16aにおけるリヤホイールハウス5側の側面部(つまり車外側の側面部)に沿って並設される後部31Rと、該側面部からリヤホイールハウス5の後ろ側面5aに至るように滑らかに湾曲する前部31Fとを有し、ロングレール16の後部と、リヤホイールハウス5の後ろ側面5aとを接続するように前後方向に延設されている。
【0041】
また、上述の連結部材31の前端部には複数の接合フランジ部31aが一体形成されており、これら複数の接合フランジ部31aがリヤホイールハウス5の後ろ側面5aに溶接手段等により接合固定されている。
【0042】
さらに、上述の連結部材31における少なくとも後部31Rは閉断面32構造に形成されており、該連結部材31をそれ自体の剛性向上を確保する一方、ロングレール16に並設されて前後方向に延びる該連結部材31の後部31Rは、図9に断面図で示すように、ボルト、ナット等の締結部材33を用いて、該ロングレール16のリヤホイールハウス5側の側片16aの外側面部に接続されている。この締結部材33による接続箇所は1箇所または複数箇所に設定することができる。
【0043】
図8、図9に示す連結構造に代えて、図10、図11または図12に示す連結構造を採用してもよい。
すなわち、図10に示す連結構造は、上述の連結部材31の前端部に該連結部材31とは別体で、かつリヤホイールハウス5の後ろ側面5aの曲面形状に対応する接合フランジ34を予め接合固定し、この接合フランジ34をリヤホイールハウス5の後ろ側面5aに連結し、図8の構造に対して両者5a,34の接合面積を増大すべく構成したものである。
【0044】
図11に示す連結構造は、連結部材31の下面がリヤフロア3上面に当接するように、該連結部材31として閉断面32が大きいものを用い、この連結部材31の剛性向上を図ったものである。
【0045】
図12に示す連結構造は、図11の構成に加えて、ボルト、ナット等の締結部材33Aを用いて、連結部材31と、リヤフロア3と、リヤサイドフレーム24の接合フランジ部24bとの三者を共締め固定し、前後方向の剛性をさらに向上させたものである。
【0046】
図10、図11、図12においても、その他の構成については図8、図9と同様あるから、図10〜図12において前図と同一の部分には同一符号を付している。
【0047】
一方、図4に示すように、左右の各ロングレール16とショートレール17との間を接続して車幅方向に延びる第1の連結フレーム部材35,36,37を、前後方向に離間して複数かつ平行に配設し、これらの各第1の連結フレーム部材35,36,37をリヤフロア3に固定している。
【0048】
また、同図に示すように、左右の各ショートレール17,17間を接続して車幅方向に延びる第2の連結フレーム部材38,39,40を、前後方向に離間して複数かつ平行に配設し、これらの各第2の連結フレーム部材38,39,40をリヤフロア3に固定している。
【0049】
ここで、左右両側に位置する第1の連結フレーム部材35,36,37と、中央に位置する第2の連結フレーム部材38,39,40とは車幅方向に一直線状に並ぶように配設されている。
【0050】
すなわち、図3に実線で、また図4に仮想線で示す前後のシート18,19のノーマル状態下(シート18,19を前後方向にシートスライドさせない状態下)において、第2列目シート18のシートクッション18C下方と対応する部位においては、各連結フレーム部材35,38,35を車幅方向に一直線状に配置し、第2列目シート18のシートバック18B下方と対応する部位においては、各連結フレーム部材36,39,36を車幅方向に一直線状に配置し、第3列目シート19のシートクッション19Cの前部下方と対応する部位においては、各連結フレーム部材37,40,37を車幅方向に一直線状に配置して、平面から見て各レール16,17と各連結フレーム部材35〜40とを井型状に組合わせ、擬似ラダーフレーム(ladder frame)構造と成して、車体の前後方向の耐力向上と、左右方向の耐力向上と、車体のねじり剛性の向上とを図るように構成している。
【0051】
図13は図4のC−C線に沿う要部拡大断面図であって、ロングレール16と連結フレーム部材36とは、ボルト、ナット等の締結部材41により固定されている。ここで、締結部材41による両者16,36の固定構造に代えて、溶接による両者16,36の固定構造を採用してもよい。なお、各レール16,17と各連結フレーム部材35〜40の他の固定箇所についても、図13と同様に締結固定(または溶接固定)することができる。
【0052】
図13に示す構造に代えて、図14の構造、または、図15の構造を採用してもよい。
すなわち、図14に示す構造は、図13の構造に加えて、ロングレール16の車外側の側片16aと、リヤサイドフレーム24の車外側の縦壁部24aとを上下に連結する連結部材27を設け、該連結部材27の上片27aとロングレール16とを、ボルト、ナット等の締結部材42を用いて固定し、連結部材27の下片27bと、リヤサイドフレーム24の車外側の縦壁部24aとをボルト、ナット等の締結部材29を用いて固定し、また、連結フレーム部材36の下部とロア連結部材27Lの上片27fとを、リヤフロア3を挟持した状態において、ボルト、ナット等の締結部材43を用いて共締め固定し、さらに、ロア連結部材27Lの下片27dと、リヤサイドフレーム24の車内側の縦壁部24aとを、ボルト、ナット等の締結部材29を用いて固定し、図6の構造と類似する連結構造と成したものである。
【0053】
このように、ロングレール16、連結フレーム部材36、リヤフロア3、リヤサイドフレーム24を、連結部材27,27Lおよび締結部材29,41,42,43で相互連結することにより、車体剛性のさらなる向上を図るように構成している。
【0054】
図15に示す構造は、図14における車外側の連結部材27を上下に2分割し、アッパ連結部材27Uの上片27cとロングレール16とを、ボルト、ナット等の締結部材42で固定し、ロア連結部材27Lの下片27dとリヤサイドフレーム24とを、ボルト、ナット等の締結部材29で固定し、アッパ連結部材27Uの下片27eと、ロア連結部材27Lの上片27fとを、リヤフロア3を挟持した状態において、ボルト、ナット等の締結部材30を用いて共締め固定し、図7の構造と類似する連結構造と成して、車体剛性の向上を図るように構成したものである。なお、図15において図14と同一の部分には同一符号を付して、その詳しい説明を省略している。
【0055】
ここで、ロングレール16と他の連結フレーム部材35,37との連結構造についても、図14または図15と同様の連結構造を採用することができる。
一方、図4に示すように、左右一対のロングレール16,16の後端部相互間にも、車幅方向に延びる連結フレーム部材44を横架固定することができるが、スペアタイヤパン4にスペアタイヤを格納する場合には、この連結フレーム部材44は省略するとよい。
【0056】
図16は図4の平面図から要部、特に擬似ラダーフレームを抽出して示す平面図であって、図16に示す構成にあっては、ロングレール16,16の後部とリヤホイールハウス5,5(前図参照)とを前後に連結する連結部材31を設ける関係上、ロングレール16とリヤサイドフレーム24とを上下に連結する連結部材27は上記連結部材31と干渉しないように前方へオフセットして取付けたが、連結部材31および連結フレーム部材44を用いない場合には、図17に示すように、ロングレール16の後端部とその対応位置のリヤサイドフレーム24とを連結部材27,27にて上下に連結することができる。
【0057】
図17に示すように連結部材27をロングレール16の可及的後端側に設けると、後突に対してさらに有利となる。
【0058】
ところで、図4のD−D線矢視断面図を図18に示すように、フロアパネル1および後部フロアパネルとしてのリヤフロア3の外側部に設けられたサイドシル7と、ロングレール16とを車幅方向に接続する連結部材45を設けている。
【0059】
図18に示すように、上述の連結部材45は、車幅方向内方の立上がり片45aと、車幅方向外方の立上がり片45bと、これら両立上がり片45a,45bを連結する底片45cとを凹形状に一体形成したもので、内方の立上がり片45aとロングレール16とを、ボルト、ナット等の締結部材46で固定し、外方の立上がり片45bとサイドシルインナ8とを溶接手段等によって接合固定し、底片45cはリヤフロア3に固定している。
【0060】
また、図4に示すように上述の連結部材45は連結フレーム部材35と対応した位置に設けられている。
この実施例では、図4に平面図で示すように、左側の連結部材45と、左側の連結フレーム部材35と、中央の連結フレーム部材38と、右側の連結フレーム部材35と、右側の連結部材45とが車幅方向に一直線状に延びるように配置されていて、車体全体の剛性および側突剛性の向上を図るように構成している。
【0061】
図18に示す凹状の連結部材45に代えて、図19に示すように閉断面45dをもった偏平なボックス形状の連結部材45を設け、この連結部材45の左右両端部を、ロングレール16およびサイドシルインナ8に溶接手段等により接合固定してもよい。また、サイドシルインナ8とサイドシルアウタ9との間には、サイドシルレインフォースメント47を設けてもよい。
さらに図19に示す構造に代えて、図20の構造を採用してもよい。
【0062】
図20に示す構造は、ハイドロフォーム成形品(ハイドロフォーム成形によるパイプ部材)により連結部材45を形成したもので、この連結部材45は車幅方向に延びる閉断面45dと、両サイドの立上がり片45a,45bとを備えており、ボルト、ナット等の締結部材48を用いて一方の立上がり片45aと、ロングレール16とを連結固定すると共に、ボルト、ナット等の締結部材49を用いて他方の立上がり片45bと、サイドシルインナ8とを連結固定したものであって、図19、図20に示す実施例においてはいずれも閉断面構造の連結部材45を用いているので、図18の構造に対して側突剛性のさらなる向上を図ることができる。
【0063】
図21は図4、図16で示した構造に加えて、左右のサイドシル7の後部に、上下方向に延びるリヤピラー11の下部を配設し、このリヤピラー11の下部と上述のロングレール16とを車幅方向に接続する左右の連結部材50,50を設けたものである。
【0064】
これら左右の各連結部材50,50は、前述の連結フレーム部材36,39,36と車幅方向に一直線状に並ぶように配設されると共に、リヤフロア3に固定されたものである。
【0065】
このように、剛性が高いリヤピラー11の下部に対応した位置に連結部材50を設けると、下部車体剛性のさらなる向上を図ることができる。
【0066】
なお、図5において60はルーフ部、61はバックドアである。また、図中、矢印Fは車両前方を示し、矢印Rは車両後方を示し、矢印OUTは車両外方を示し、矢印INは車両内方を示す。
【0067】
このように、上記実施例の車両の下部車体構造は、車室の底部を形成するフロアパネル(フロアパネル1、リヤフロア3参照)と、該フロアパネル(リヤフロア3参照)に沿って前後方向に配設されるシートスライドレール(ロングレール16、ショートレール17参照)と、該シートスライドレールに摺動可能に設けられ乗員が着座可能なシート18,19とを備えた車両において、上記フロアパネル(リヤフロア3参照)上には前後方向に延びるシートスライドレール(ロングレール16、ショートレール17参照)が車幅方向に離間して複数配設され、該シートスライドレールの間を連結する連結フレーム部材35〜40を上記フロアパネル(リヤフロア3参照)に固定したものである。
この構成によれば、フロアパネル(リヤフロア3)に沿って前後方向に延びるシートスライドレール(ロングレール16、ショートレール17参照)の間を、上記連結フレーム部材35〜40にて連結し、かつ、該連結フレーム部材35〜40をフロアパネル(リヤフロア3参照)に固定したので、フロアパネル下面に大きいクロスメンバを設ける等の大きなフレーム補強を必要とすることなく、車体の前後方向および左右方向の耐力と、車体のねじり剛性の向上とを図ることができ、後突耐力、側突耐力を確保することができる。
【0068】
また、上記シートスライドレールは、一対のロングレール16,16と、該ロングレール16,16の間に配設された一対のショートレール17,17とから構成され、上記連結フレーム部材35〜40は各レール16,17間を接続するように配設されたものである。
この構成によれば、一対のロングレール16,16と、一対のショートレール17,17とから上記シートスライドレールを構成すると共に、ロングレール16、ショートレール17の各レール間を上記連結フレーム部材35〜40にて接続したので、車体剛性をさらに向上させることができ、しかも、前後方向の長さが長い一対のロングレール16を利用することで、荷重を広範囲に分散させることができ、この結果、衝突耐力の更なる向上を図ることができる。
【0069】
さらに、上記シート18,19は前後に配設された複数列のシート18,19から構成され、該複数列のシート18,19は、少なくとも上記ロングレール16を共用するように配設されたものである。
この構成によれば、複数列のシート18,19により多人数乗車が達成できるシートレイアウトを確保しつつ、車幅方向に長いスパンの一対のロングレール16,16にてシート19を支持するため、シート支持剛性の向上を図ることができる。
【0070】
加えて、上記連結フレーム部材35〜40は、前後方向に離間して複数配設されたものである。
この構成によれば、連結フレーム部材35〜40を前後方向に離間して複数設けることにより、車体剛性をさらに向上させることができる。
【0071】
また、上記各レール16,17間を接続する連結フレーム部材35〜40は、車幅方向に沿って一直線状に配設されたものである。
この構成によれば、連結フレーム部材35〜40を車幅方向に一直線状に設けたので、側突耐力のさらなる向上を図ることができる。
【0072】
さらに、上記フロアパネル(リヤフロア3参照)には前後方向に延びる車体フレーム(リヤサイドフレーム24参照)が設けられ、該車体フレーム(リヤサイドフレーム24)に沿って上記シートスライドレール(ロングレール16参照)が配設されると共に、該車体フレーム(リヤサイドフレーム24)とシートスライドレール(ロングレール16参照)とを連結する連結部材27,27U,27Lが設けられたものである。
この構成によれば、前後方向に延びる車体フレーム(リヤサイドフレーム24)に沿ってシートスライドレール(ロングレール16)を配設し、この車体フレーム(リヤサイドフレーム24)とシートスライドレール(ロングレール16)とを連結部材27,27U,27Lで連結したので、大きなフレーム補強を必要とすることなく、上記連結構造により車体の前後方向の耐力を向上させることができて、車体の剛性向上、強度向上を図ることができる。
特に、後突エネルギの入力時には、該エネルギを車体フレーム(リヤサイドフレーム24)およびシートスライドレール(ロングレール16)に分散させることができるので、後突に対する耐力向上を図ることができる。
【0073】
また、上記フロアパネル(フロアパネル1、リヤフロア3参照)の外側部には前後方向に延びるサイドシル7が設けられ、該サイドシル7と上記シートスライドレール(ロングレール16)とを接続する連結部材45が設けられたものである。
この構成によれば、シートスライドレール(ロングレール16)を上記連結部材45にて剛性が高いサイドシル7と接続したので、車体全体の剛性向上を図ることができる。
【0074】
この発明の構成と、上述の実施例との対応において、
この発明のシートスライドレールは、実施例のロングレール16、ショートレール17に対応し、
以下同様に、
シートスライドレールが配設されるフロアパネルは、リヤフロア3に対応し、
車体フレームは、リヤサイドフレーム24に対応するも、
この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の車両の下部車体構造を示す斜視図
【図2】図1の正面図
【図3】車両の下部車体構造を示す平面図
【図4】シートを取外した状態の平面図
【図5】図3の要部側面図
【図6】図4のA−A線に沿う要部拡大断面図
【図7】連結構造の他の実施例を示す断面図
【図8】図4の部分斜視図
【図9】図8のB−B線矢視断面図
【図10】ロングレールとホイールハウスとの連結構造の他の実施例を示す部分斜視図
【図11】連結部材の他の実施例を示す断面図
【図12】連結部材取付け構造の他の実施例を示す断面図
【図13】図4のC−C線に沿う要部拡大断面図
【図14】連結構造の他の実施例を示す断面図
【図15】連結構造のさらに他の実施例を示す断面図
【図16】図4の要部平面図
【図17】連結部材取付け位置の他の実施例を示す平面図
【図18】図4のD−D線矢視断面図
【図19】サイドシルとロングレールとの連結構造の他の実施例を示す断面図
【図20】サイドシルとロングレールとの連結構造のさらに他の実施例を示す断面図
【図21】連結部材によるリヤピラーとロングレールとの連結構造を示す平面図
【符号の説明】
【0076】
1…フロアパネル
3…リヤフロア
7…サイドシル
16…ロングレール(シートスライドレール)
17…ショートレール(シートスライドレール)
18,19…シート
24…リヤサイドフレーム(車体フレーム)
27,27U,27L…連結部材
35〜40…連結フレーム部材
45…連結部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室の底部を形成するフロアパネルと、該フロアパネルに沿って前後方向に配設されるシートスライドレールと、該シートスライドレールに摺動可能に設けられ乗員が着座可能なシートとを備えた車両において、
上記フロアパネル上には前後方向に延びるシートスライドレールが車幅方向に離間して複数配設され、
該シートスライドレールの間を連結する連結フレーム部材を上記フロアパネルに固定した
車両の下部車体構造。
【請求項2】
上記シートスライドレールは、一対のロングレールと、該ロングレールの間に配設された一対のショートレールとから構成され、上記連結フレーム部材は各レール間を接続するように配設された
請求項1記載の車両の下部車体構造。
【請求項3】
上記シートは前後に配設された複数列のシートから構成され、
該複数列のシートは、少なくとも上記ロングレールを共用するように配設された
請求項2記載の車両の下部車体構造。
【請求項4】
上記連結フレーム部材は、前後方向に離間して複数配設された
請求項1〜3の何れか1に記載の車両の下部車体構造。
【請求項5】
上記各レール間を接続する連結フレーム部材は、車幅方向に沿って一直線状に配設された
請求項2〜4の何れか1に記載の車両の下部車体構造。
【請求項6】
上記フロアパネルには前後方向に延びる車体フレームが設けられ、
該車体フレームに沿って上記シートスライドレールが配設されると共に、該車体フレームとシートスライドレールとを連結する連結部材が設けられた
請求項1〜5の何れか1に記載の車両の下部車体構造。
【請求項7】
上記フロアパネルの外側部には前後方向に延びるサイドシルが設けられ、
該サイドシルと上記シートスライドレールとを接続する連結部材が設けられた
請求項1〜6の何れか1に記載の車両の下部車体構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2008−68736(P2008−68736A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−249196(P2006−249196)
【出願日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】