説明

車両の制御装置

【課題】車両の制御装置において、電気モータを作動させる電力を十分に確保することで車両の走行安定性の向上を可能とする。
【解決手段】エンジン11とモータジェネレータ14との駆動力を駆動輪16に伝達可能なハイブリッド車両にて、ハイブリッドECU100は、エンジン11の駆動力により車両を走行可能なエンジン走行モードとモータジェネレータ14の駆動力により車両を走行可能なEV走行モードとを切替可能であり、所定の条件が成立したらエンジン11への燃料供給を停止する減速フューエルカットを実行可能とする一方、エンジン走行モードで走行するときに所定の条件が成立してもバッテリ27の充電状態量が所定値より低かったら燃料供給を停止せずにモータジェネレータ14による発電を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、内燃機関と変速機と電動機を駆動連結したハイブリッド車両が提案されている。例えば、下記特許文献1に記載されたハイブリッド車両の制御装置では、減速回生時にエネルギ貯蔵手段の残容量が少ない時には、エンジンを気筒休止することでエンジンのポンピングロスを低減し、回生エネルギを増大させる一方、減速回生時にエネルギ貯蔵手段の残容量が多い時には、エンジンの気筒休止を禁止することでエンジンのポンピングロスを増大させ、車両の減速度を増大するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−153996号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来のハイブリッド車両の制御装置では、モータの減速回生時に、エネルギ残容量が少ないと、エンジンを気筒休止してエンジンブレーキを調整することで、回生エネルギを増大させている。ところが、この場合、エンジンブレーキの調整により得られる回生エネルギの量は決まっていることから、所望のエネルギを確保することが困難となってしまうおそれがある。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、電気モータを作動させる電力を十分に確保することで車両の走行安定性の向上を可能とする車両の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の車両の制御装置は、内燃機関と、電気モータと、前記内燃機関の駆動力または前記電気モータの駆動力を駆動輪側に伝達可能であると共に前記内燃機関の駆動力または前記駆動輪の駆動力を前記電気モータに伝達可能な駆動力伝達装置と、前記駆動力伝達装置の駆動力により前記電気モータが駆動して発生した電力を充電可能であると共に前記電気モータへ電力を供給可能な二次電池と、前記内燃機関の駆動力を前記駆動力伝達装置により前記駆動輪側へ伝達する内燃機関走行モードと前記電気モータの駆動力を前記駆動力伝達装置により前記駆動輪側へ伝達する電気モータ走行モードとを切替可能な走行モード切替手段と、運転者が選択操作することで選択された走行モードを前記走行モード切替手段に指示する走行モード選択手段と、前記二次電池の充電量を検出する充電量検出手段と、予め設定された所定の条件が成立したら前記内燃機関への燃料供給を停止する燃料供給停止手段と、車両が内燃機関走行モードで走行するときに前記所定の条件が成立しても前記二次電池の充電量が予め設定された所定値より低い場合に前記燃料供給停止手段の作動を停止すると共に前記電気モータによる発電を行う充電制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0007】
上記車両の制御装置にて、前記充電制御手段は、車両が内燃機関走行モードで走行するときに前記所定の条件が成立しても、前記二次電池の充電量が予め設定された所定値より低く、且つ、発電許可効率が発電最大効率より低い場合に前記燃料供給停止手段の作動を停止すると共に前記電気モータによる発電を行うことが好ましい。
【0008】
上記車両の制御装置にて、前記充電制御手段は、前記電気モータにより機関出力トルクと機関ブレーキトルクに対応した回生制御を行って発電することが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る車両の制御装置は、車両が内燃機関走行モードで走行するときに、所定の条件が成立しても二次電池の充電量が予め設定された所定値より低い場合に、内燃機関に対する燃料供給を継続して電気モータによる発電を行うので、電気モータを作動させる電力を十分に確保することで車両の走行安定性の向上を可能とするという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明の実施形態1に係る車両の制御装置を表す概略構成図である。
【図2】図2は、実施形態1の車両の制御装置における変速操作装置を表す概略図である。
【図3】図3は、実施形態1の車両の制御装置における発電制御の処理を表すフローチャートである。
【図4】図4は、エンジン回転数に対するエンジンブレーキトルクを表すグラフである。
【図5】図5は、エンジン回転数に対するファイアリング時の最小トルクを表すグラフである。
【図6】図6は、本発明の実施形態2に係る車両の制御装置における発電制御の処理を表すフローチャートである。
【図7】図7は、本発明の実施形態3に係る車両の制御装置における発電制御の処理を表すフローチャートである。
【図8】図8は、バッテリ充電量に対する発電許可効率を表すグラフである。
【図9】図9は、最大効率曲線を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明に係る車両の制御装置の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではなく、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせて構成するものも含むものである。
【0012】
〔実施形態1〕
図1は、本発明の実施形態1に係る車両の制御装置を表す概略構成図、図2は、実施形態1の車両の制御装置における変速操作装置を表す概略図、図3は、実施形態1の車両の制御装置における発電制御の処理を表すフローチャート、図4は、エンジン回転数に対するエンジンブレーキトルクを表すグラフ、図5は、エンジン回転数に対するファイアリング時の最小トルクを表すグラフである。
【0013】
実施形態1のハイブリッド車両は、図1に示すように、動力源としてのエンジン(内燃機関)11と、手動式(足踏み式)のクラッチ12と、手動式の多段変速機(動力伝達装置)13と、動力源としてのモータジェネレータ(電気モータ)14と、最終減速装置(動力伝達装置)15と、駆動輪16とを有している。
【0014】
エンジン11としては、燃焼室内で燃料を燃焼させ、これにより発生した熱エネルギを機械的エネルギに変換する熱機関たる内燃機関であって、ピストンの往復運動によって出力軸(クランクシャフト)21から機械的な動力を出力可能となっている。このエンジン11は、燃料噴射装置及び点火装置を有しており、この燃料噴射装置及び点火装置は、動作がエンジン用の電子制御装置(以下、エンジンECUと称する。)101により制御される。このエンジンECU101は、燃料噴射装置の燃料噴射量や燃料噴射時期等を制御すると共に、点火装置の点火時期を制御して、エンジン11の出力軸21から出力される機械的な動力(エンジン出力トルク)の大きさを調整することができる。
【0015】
このエンジンECU101は、CPU(中央演算処理装置)、所定の制御プログラムなどを予め記憶しているROM(Read Only Memory)、そのCPUの演算結果を一時記憶するRAM(Random Access Memory)、予め用意された情報等を記憶するバックアップRAM等で構成されている。
【0016】
モータジェネレータ14は、供給された電力を機械的な動力(モータ出力トルク)に変換して出力軸22から出力するモータ(電動機)としての機能と、出力軸22に入力された機械的な動力を電力に変換して回収するジェネレータ(発電機)としての機能とを兼ね備えている。このモータジェネレータ14は、例えば、永久磁石型交流同期電動機として構成されており、インバータ23から三相の交流電力が供給されて回転磁界を形成するステータ24と、その回転磁界に引き付けられて回転する回転子としてのロータ25とを有している。そのロータ25は、出力軸22と一体になって回転する。また、このモータジェネレータ14は、ロータ25の回転角位置を検出する回転センサ(レゾルバ)が設けられており、その回転センサが検出信号をモータジェネレータ用の電子制御装置(以下、モータECUと称する。)102に送信する。このモータECU102は、CPU、所定の制御プログラム等を予め記憶しているROM、そのCPUの演算結果を一時記憶するRAM、予め用意された情報等を記憶するバックアップRAM等で構成されている。
【0017】
また、モータジェネレータ14は、出力軸22が歯車対(動力伝達装置)26を介して多段変速機13の出力軸38に連結可能となっている。そして、モータジェネレータ14は、モータとして機能するときには、モータ出力トルクを多段変速機13の出力軸38に伝達する一方、ジェネレータとして機能するときには、多段変速機13の出力軸38からの機械的な動力が出力軸22に入力される。
【0018】
この歯車対26は、互いに噛み合い状態にある第1ギア26aと第2ギア26bとで構成される。第1ギア26aは、ロータ25と一体になって回転できるようにモータジェネレータ14の出力軸22に装着される。一方、第2ギア26bは、第1ギア26aよりも大径に成形され、多段変速機13の出力軸38と一体になって回転できるようにこの出力軸38に固定される。この場合、歯車対26は、ロータ25側から回転トルクが入力されることによって減速機構として機能する一方、多段変速機13の出力軸38側から回転トルクが入力されることによって増速機構として機能する。
【0019】
モータジェネレータ14は、インバータ23を介してバッテリ(二次電池)27が接続されている。このバッテリ27からの直流電力は、インバータ23で交流電力に変換されてモータジェネレータ14に供給される。この交流電力が供給されたモータジェネレータ14は、モータとして作動して、出力軸22からモータ出力トルクを出力する。一方、このモータジェネレータ14をジェネレータとして作動させたときは、このモータジェネレータ14からの交流電力をインバータ23で直流電力に変換してバッテリ27に回収、または、電力の回生を行いながら駆動輪16に制動力(回生制動)を加えることができる。この場合、このモータジェネレータ14は、多段変速機13から出力された機械的な動力(出力トルク)が出力軸22を介してロータ25に入力され、この入力トルクを交流電力に変換する。このインバータ23の動作は、モータECU102によって制御される。
【0020】
バッテリ27は、その充電状態(SOC:State of Charge)などを管理するバッテリ用の電子制御装置(以下、バッテリECUと称する。)103が接続されている。このバッテリECU103は、バッテリ27の充電状態、つまり、充電状態量(SOC量)を検出するSOCセンサ(充電量検出手段)61、バッテリ27の温度を検出する温度センサ62が設けられている。バッテリECU103は、SOCセンサ61が検出したバッテリ27の充電状態量(SOC量)に関する信号、温度センサ62が検出したバッテリ27の温度に関する信号をバッテリECU103に送信する。このバッテリECU103は、この信号に基づいてバッテリ27の充電状態の判定を行い、充電及び放電の要否を判定する。
【0021】
多段変速機13は、エンジン11の動力(エンジン出力トルク)やモータジェネレータ14の動力(モータ出力トルク)を駆動力とし、最終減速装置15を介して左右の駆動輪16に伝達するものである。
【0022】
この手動式の多段変速機13は、前進5段、後退1段の変速段を有するものであって、前進用の変速段として第1速ギア段31、第2速ギア段32、第3速ギア段33、第4速ギア段34、第5速ギア段35を有し、後退用の変速段として後退ギア段36を有している。前進用の変速段は、変速比が第1速ギア段31、第2速ギア段32、第3速ギア段33、第4速ギア段34、第5速ギア段35の順に小さくなるよう構成されている。また、この多段変速機13は、エンジン11のエンジン出力トルクが伝達される入力軸37と、この入力軸37に対して間隔を空けて平行に配置された出力軸38を有している。なお、この多段変速機13は、その構成を簡易的に説明しており、各変速段の数や配置については、図1のものに限るものではない。
【0023】
ここで、第1速ギア段31は、互いに噛み合い状態にある第1速ドライブギア31aと第1速ドリブンギア31bとで構成され、第1速ドライブギア31aは入力軸37上に配置され、第1速ドリブンギア31bは出力軸38上に配置される。第2速ギア段32は、互いに噛み合い状態にある第2速ドライブギア32aと第2速ドリブンギア32bとで構成され、第2速ドライブギア32aは入力軸37上に配置され、第2速ドリブンギア32bは出力軸38上に配置される。第3速ギア段33は、互いに噛み合い状態にある第3速ドライブギア33aと第3速ドリブンギア33bとで構成され、第3速ドライブギア33aは入力軸37上に配置され、第3速ドリブンギア33bは出力軸38上に配置される。第4速ギア段34は、互いに噛み合い状態にある第4速ドライブギア34aと第4速ドリブンギア34bとで構成され、第4速ドライブギア34aは入力軸37上に配置され、第4速ドリブンギア34bは出力軸38上に配置される。第5速ギア段35は、互いに噛み合い状態にある第5速ドライブギア35aと第5速ドリブンギア35bとで構成され、第5速ドライブギア35aは入力軸37上に配置され、第5速ドリブンギア35bは出力軸38上に配置される。
【0024】
後退ギア段36は、後退ドライブギア36aと後退ドリブンギア36bと後退中間ギア36cとで構成される。後退ドライブギア36aは入力軸37上に配置され、後退ドリブンギア36bは出力軸38上に配置され、後退中間ギア36cは、後退ドライブギア36a及び後退ドリブンギア36bと噛み合い状態にあり、回転軸39上に配置される。
【0025】
なお、実際の多段変速機13の構成においては、各変速段のドライブギアのうちのいずれかが、入力軸37と一体回転するように配設される一方、残りのドライブギアが入力軸37に対して相対回転するように配設される。また、各変速段のドリブンギアは、そのうちの何れかが出力軸38と一体回転するように配設される一方、残りが出力軸38に対して相対回転するように配設される。
【0026】
また、入力軸37や出力軸38は、運転者による変速操作装置(走行モード切替手段)41により、軸線方向に移動するスリーブを有している。このスリーブは、変速操作装置41を運転者が操作したときに軸線方向へ移動し、移動された方向に位置する相対回転可能なドライブギアやドリブンギアを入力軸37や出力軸38と一体回転させる。この手動式の多段変速機13は、スリーブが運転者の変速操作に対応した方向に移動し、変速操作に応じた変速段への切り替えやニュートラル位置への切り替えを行うことができる。
【0027】
この変速操作装置41は、図1及び図2に示すように、運転者が変速操作するときに操作するシフトレバー(走行モード選択手段)42と、このシフトレバー42を変速段ごとにガイドする、所謂、シフトゲージ43とを有している。ここで、シフトゲージ43は、ガイド溝43aを有すると共に、エンジン走行モードを実現するための第1速から第5速までの操作位置「1」〜「5」及び後退の操作位置「R」と、EV走行モードを実現するための操作位置「EV」とを有している。
【0028】
本実施形態のハイブリッド車両においては、その走行モードとして、エンジン走行モード、EV走行モード、ハイブリッド走行モードが少なくとも用意されている。そして、運転者が変速操作装置41を操作し、シフトレバー42を操作位置「1」〜「5」、「R」のいずれかに移動したときに、エンジン走行モードまたはハイブリッド走行モードが選択され、操作位置「EV」に移動したときに、EV走行モードが選択される。
【0029】
図1に戻り、クラッチ12は、エンジン11と多段変速機13との間に介装され、このエンジン11の出力軸21と多段変速機13の入力軸37との間で、動力を伝達可能な接続状態と、動力の伝達を遮断可能な切断状態とに切替可能となっている。このクラッチ12は、乾式または湿式の単板クラッチ、多板クラッチであって、円板状の摩擦板を有し、この摩擦板の摩擦力によりエンジン11のエンジン出力トルクを出力軸21から多段変速機13の入力軸37に伝達することができる。クラッチ12は、運転者によるクラッチペダル45の踏込み操作により、その作動状態の切替動作(接続状態と切断状態の切替動作)を行うことができる。
【0030】
最終減速装置15は、多段変速機13の出力軸38から入力された入力トルクを減速して、左右の駆動輪16に分配するものである。この最終減速装置15は、出力軸38の端部に固定されたピニオンギア51と、このピニオンギア51に噛み合って回転トルクを減速させながら回転方向を直交方向へと変換するリングギア52と、このリングギア52を介して入力された回転トルクを左右の駆動輪16に分配する差動機構53とを有している。
【0031】
更に、このハイブリッド車両は、車両全体の動作を統括的に制御する電子制御装置(以下、ハイブリッドECUと称する。)100が設けられている。このハイブリッドECU100は、CPU、所定の制御プログラム等を予め記憶しているROM、そのCPUの演算結果を一時記憶するRAM、予め用意された情報等を記憶するバックアップRAM等で構成されており、エンジンECU101、モータECU102、バッテリECU103との間で各種センサの検出信号や制御指令等の情報の授受ができる。
【0032】
そして、ハイブリッドECU100は、運転者が変速操作装置41を操作した操作結果に基づいてエンジン走行モード、EV走行モード、ハイブリッド走行モードのいずれかを実現可能としている。変速操作装置41は、図2に示すように、シフトゲージ43に、シフトレバー42がEV走行モードにおける操作位置「EV」に位置しているのか否かを検出するEV走行モード選択位置検出部63が設けられている。このEV走行モード選択位置検出部63は、検出信号をハイブリッドECU100に送信可能となっている。
【0033】
また、この変速操作装置41は、シフトゲージ43に、シフトレバー42がエンジン走行モード(ハイブリッド走行モード)における前進操作位置「1」〜「5」、または、後退操作位置「R」にあるのか否か、つまり、運転者がどの変速段を選択したのか否かを検出する変速位置検出部64が設けられている。この変速位置検出部64は、検出信号をハイブリッドECU100に送信可能となっている。
【0034】
シフトレバー42が前進操作位置「1」〜「5」または後退操作位置「R」に操作されている場合、ハイブリッドECU100は、エンジン走行モードまたはハイブリッド走行モードのうちのいずれか一方を選択する。例えば、このハイブリッドECU100は、設定した運転者の駆動要求(要求駆動力)、バッテリECU103から送られてきたバッテリ27の充電状態量、車両走行状態の情報(車両横加速度、駆動輪16のスリップ状態等の情報)に基づいて、エンジン走行モードとハイブリッド走行モードの切り替えを行う。
【0035】
ハイブリッドECU100は、エンジン走行モードを選択した場合、エンジントルクのみで要求駆動力を発生させるように、エンジンECU101、モータECU102に制御指令を送る。この場合に、エンジンECU101への制御指令として、例えば、現状の変速段または変速操作後の変速段でその要求駆動力を満足させるエンジントルクの情報が送信される。これにより、そのエンジンECU101は、そのエンジントルクを発生させるようにエンジン11の燃料噴射量等の制御を行う。一方、モータECU102は、モータジェネレータ14がモータとしてもジェネレータとしても動作させないよう制御指令を送る。また、このエンジン走行モードにおいては、運転者がアクセルペダルから足を離したとき、エンジンECU101に対して燃料供給を停止するようにフューエルカット制御指令を送る。
【0036】
これに対して、このハイブリッドECU100は、ハイブリッド走行モードを選択した場合、エンジントルクとモータまたはジェネレータとしての出力で要求駆動力を発生させるように、エンジンECU101及びモータECU102に制御指令を送る。この場合、エンジントルクとモータ力行トルクの双方を用いるときには、エンジンECU101とモータECU102への制御指令として、例えば、現状の変速段または変速操作後の変速段でその要求駆動力を満足させるエンジントルクとモータ力行トルクの情報が夫々に送信される。これにより、そのエンジンECU101は、そのエンジントルクを発生させるようにエンジン11の制御を行い、モータECU102は、そのモータ力行トルクを発生させるようにモータジェネレータ14への給電量を制御する。また、モータジェネレータ14で電力の回生を行わせるときには、モータECU102に対してモータジェネレータ14をジェネレータとして動作させるよう制御指令を送る。その際、例えば、エンジンECU101には、モータ回生トルクの分だけ増加させたエンジントルクの情報が送られる。
【0037】
また、シフトレバー42が操作位置「EV」に操作されている場合、ハイブリッドECU100は、モータ力行トルクのみで要求駆動力を発生させるように、エンジンECU101及びモータECU102に制御指令を送る。この場合には、モータECU102への制御指令として、その要求駆動力を満足させるモータ力行トルクの情報が送信される。多段変速機13がニュートラル状態のときにエンジン11が駆動していると、燃費を悪化させてしまうので、ハイブリッドECU100は、エンジンECU101に、燃費を向上させるようにエンジン11の動作を停止させる制御指令を送る。更に、このEV走行モードにおいては、運転者がアクセルペダルから足を離したとき、または、ブレーキ操作などでハイブリッド車両の減速要求を行ったときに、モータECU102に対して回生制動できるよう制御指令を送らせてもよい。
【0038】
本実施形態では、変速操作装置41は、シフトレバー42を、EV走行モードにおける操作位置「EV」に操作可能であると共に、エンジン走行モード(ハイブリッド走行モード)における操作位置「1」〜「5」、後退操作位置「R」に操作可能であることから、車両の走行モードをEV走行モードとエンジン走行モード(ハイブリッド走行モード)との間で切替可能な走行モード切替手段として機能し、また、シフトレバー42は、走行モード選択手段として機能する。
【0039】
このように構成された本実施形態の車両の制御装置では、予め設定された所定の条件が成立したらエンジン11への燃料供給を停止する燃料供給停止手段(減速フューエルカット制御)と、車両がエンジン走行モードで走行するときに所定の条件が成立してもバッテリ27の充電状態量(充電量)が予め設定された所定値より低い場合に燃料供給停止手段の作動を停止すると共にモータジェネレータ14による発電を行う充電制御手段とを設けている。
【0040】
この場合、充電制御手段は、モータジェネレータ14によりエンジントルク(機関出力トルク)とエンジンブレーキトルク(機関ブレーキトルク)に対応した回生制御を行って発電する。
【0041】
なお、燃料供給停止手段と充電制御手段は、ハイブリッドECU100が機能する。
【0042】
ここで、実施形態1の車両の制御装置における発電制御の処理を図3のフローチャートに基づいて詳細に説明する。
【0043】
実施形態1の車両の制御装置における発電制御において、シフトレバー42が前進操作位置「1」〜「5」に操作されることで、ハイブリッドECU100は、エンジン走行モードまたはハイブリッド走行モードのうちのいずれか一方を選択している。このとき、図3に示すように、ステップS11にて、ハイブリッドECU100は、減速フューエルカット要求があるかどうかを判定する。この減速フューエルカットの実施条件は、現在のエンジン回転数が予め設定されているアイドル回転数よりも高く、且つ、運転者がアクセルペダルを踏込んでいないときである。この場合、現在のエンジン回転数は、エンジン回転数センサ65が検出した検出結果を適用し、運転者によるアクセルペダルの踏込み状態は、アクセル開度センサ66が検出したアクセル開度を適用する。ここで、減速フューエルカット要求がないと判定されたら、何もしないでこのルーチンを抜ける。
【0044】
一方、ここで、減速フューエルカット要求があると判定されたら、ステップS12にて、ハイブリッドECU100は、クラッチ12が完全係合しているかどうかを判定する。この場合、ハイブリッドECU100は、クラッチセンサ67の検出結果に基づいて判定を行う。ここで、クラッチ12が完全係合していない、つまり、運転者がクラッチペダル45を少しでも踏込んでいると判定されたら、ステップS19にて、ハイブリッドECU100は、エンジンECU101に対して燃料供給を停止するようにフューエルカット制御指令を送り、エンジンECU101は、エンジン11における燃料噴射及び点火を停止する。
【0045】
一方、ここで、クラッチ12が完全係合していると判定されたら、ステップS13にて、バッテリ27の充電状態量(SOC量)が予め設定された所定値SOCtよりも低いかどうかを判定する。この場合、予め設定された所定値SOCtとは、EV走行モードで車両が発進及び走行可能なSOC量である。ここで、SOC量が所定値SOCtよりも低くないと判定されたら、ステップS19にて、ハイブリッドECU100は、エンジンECU101に対して燃料供給を停止するようにフューエルカット制御指令を送り、エンジンECU101は、エンジン11における燃料噴射及び点火を停止する。
【0046】
一方、ここで、SOC量が所定値SOCtよりも低いと判定されたら、ステップS14にて、ハイブリッドECU100は、現在における減速フューエルカットを実行したときのエンジンブレーキトルクを確保するためのモータジェネレータ14のモータトルクTebを推定する。この場合、図4に示すように、エンジン回転数に対するエンジンブレーキトルクが予め設定されていることから、エンジン回転数センサ65が検出した現在のエンジン回転数に基づいてエンジンブレーキトルクを求め、求めたエンジンブレーキトルクに減速比を乗算することで、モータトルクTebを求める。ここで、減速比とは、多段変速機13と最終減速装置15と歯車対26の減速比である。
【0047】
続いて、ステップS15にて、ハイブリッドECU100は、エンジン11をファイアリングしたときの最小モータトルクTeminを算出する。エンジン11は、エンジンブレーキトルクより大きなトルクを出力することはできず、このエンジン11をファイアリングするときの最小トルクが存在する。この場合、図5に示すように、エンジン回転数に対するファイアリング時の最小エンジントルクが予め設定されていることから、エンジン回転数センサ65が検出した現在のエンジン回転数に基づいて最小エンジントルクを求め、求めた最小エンジントルクに減速比を乗算することで、最小モータトルクTeminを算出する。ここで、減速比とは、多段変速機13と最終減速装置15と歯車対26の減速比である。
【0048】
次に、ステップS16にて、ハイブリッドECU100は、モータジェネレータ14による最大回生エネルギWinを算出する。この最大回生エネルギWinは、バッテリ27の充電状態(SOC量や温度など)によって設定されるものであり、例えば、SOC量が高いと最大回生エネルギWinが低くなる。続いて、ステップS17にて、ハイブリッドECU100は、最大回生エネルギWinに基づいてモータ回生最大トルクTmgmaxを算出する。
【0049】
そして、ステップS18にて、モータ回生最大トルクTmgmaxが、モータトルクTebと最小モータトルクTeminとの加算値より大きいかどうかを判定する。ここで、モータ回生最大トルクTmgmaxが加算値より大きくないと判定されたら、ステップS19にて、ハイブリッドECU100は、エンジンECU101に対して燃料供給を停止するようにフューエルカット制御指令を送り、エンジンECU101は、エンジン11における燃料噴射及び点火を停止する。このとき、エンジン11が停止していることから、ハイブリッドECU100は、モータECU102に対してモータジェネレータ14により回生制動を行うように制御指令を送る。すると、モータECU102は、モータジェネレータ14によりエンジントルクの回生制動を行うことで、エンジンブレーキによる減速度を確保する。
【0050】
一方、ステップS18にて、モータ回生最大トルクTmgmaxが加算値より大きいと判定されたら、ステップS20にて、ハイブリッドECU100は、エンジンECU101に対して燃料供給を継続するようにファイアリング制御指令を送り、エンジンブレーキトルクを発生させる。また、ハイブリッドECU100は、モータECU102に対してモータジェネレータ14により回生制動を行うように制御指令を送る。すると、モータECU102は、モータジェネレータ14によりエンジントルクとエンジンブレーキトルクに対応した回生制動を行うことで、バッテリ27の充電を行う。なお、バッテリ27により多くの充電を行いたい場合には、エンジン11への燃料供給量を増加してエンジントルクを上昇させることで、モータジェネレータ14による回生量を増加させればよい。
【0051】
なお、このときの発電トルクは、例えば、以下のように設定すればよい。
例1
エンジン:ファイアリング時の最低エンジントルク
モータジェネレータ:エンジンブレーキトルク+ファイアリング時の最低エンジントルク
例2
モータ回生最大トルク>エンジンブレーキトルクの場合
エンジン:0トルク
モータジェネレータ:エンジンブレーキトルク
モータ回生最大トルク<エンジンブレーキトルクの場合
エンジン:モータ回生最大トルク−エンジンブレーキトルク
モータジェネレータ:モータ回生最大トルク
【0052】
このように実施形態1の車両の制御装置にあっては、エンジン11とモータジェネレータ14との駆動力を駆動輪16に伝達可能なハイブリッド車両にて、ハイブリッドECU100は、エンジン11の駆動力により車両を走行可能なエンジン走行モードとモータジェネレータ14の駆動力により車両を走行可能なEV走行モードとを切替可能であり、所定の条件が成立したらエンジン11への燃料供給を停止する減速フューエルカットを実行可能とする一方、エンジン走行モードで走行するときに所定の条件が成立してもバッテリ27の充電状態量が所定値より低かったら燃料供給を停止せずにモータジェネレータ14による発電を行うようにしている。
【0053】
従って、バッテリ27の充電状態量が所定値より低かったら、減速フューエルカットを実行せずに、モータジェネレータ14による発電を行うため、バッテリ27の充電状態量を増加させることができる。その結果、常時、バッテリ27の電力を十分に確保することで、モータジェネレータ14で走行するEV走行モードの選択が可能となり、車両の走行安定性を向上することができる。
【0054】
また、実施形態1の車両の制御装置では、モータ回生最大トルクTmgmaxがモータトルクTebと最小モータトルクTeminとの加算値より大きくないときには、減速フューエルカットを実行することでエンジン11を停止し、モータジェネレータ14によりエンジントルクの回生制動を行ってエンジンブレーキ相当の減速度を確保する。一方、モータ回生最大トルクTmgmaxがモータトルクTebと最小モータトルクTeminとの加算値より大きいと判定されたら、減速フューエルカットを実行せずにエンジン11を作動状態とし、エンジンブレーキトルクを発生させると共に、モータジェネレータ14によりエンジントルクとエンジンブレーキトルクに対応した回生制動を行うことで、バッテリ27の充電を行う。このようにバッテリ27における現在の充電量に応じた充電制御を行うことで、安定した車両の走行を確保することができる。
【0055】
また、実施形態1の車両の制御装置では、ハイブリッドECU100は、モータジェネレータ14によりエンジントルクとエンジンブレーキトルクに対応した回生制御を行うことで、所定の発電を行うようにしている。従って、バッテリ27に十分な充電を行うことができる。
【0056】
[実施形態2]
図6は、本発明の実施形態2に係る車両の制御装置における発電制御の処理を表すフローチャートである。なお、上述した実施形態と同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0057】
実施形態2の車両の制御装置は、予め設定された所定の条件が成立したらエンジン11への燃料供給を停止する燃料供給停止手段(減速フューエルカット制御)と、車両がエンジン走行モードで走行するときに所定の条件が成立してもバッテリ27の充電状態量(充電量)が予め設定された所定値より低い場合に燃料供給停止手段の作動を停止すると共にモータジェネレータ14による発電を行う充電制御手段とを設けている。
【0058】
そして、実施形態2の車両の制御装置は、バッテリ27の充電状態量(SOC量)に応じて変動するエンジン11に要求する発電上乗せエネルギを用いて、バッテリ27の充電状態を判定している。
【0059】
以下、実施形態2の車両の制御装置における発電制御の処理を図6のフローチャートに基づいて詳細に説明する。
【0060】
実施形態2の車両の制御装置における発電制御において、シフトレバー42が前進操作位置「1」〜「5」に操作されることで、ハイブリッドECU100は、エンジン走行モードまたはハイブリッド走行モードのうちのいずれか一方を選択している。このとき、図6に示すように、ステップS31にて、ハイブリッドECU100は、減速フューエルカット要求があるかどうかを判定する。ここで、減速フューエルカット要求がないと判定されたら、何もしないでこのルーチンを抜ける。
【0061】
一方、減速フューエルカット要求があると判定されたら、ステップS32にて、ハイブリッドECU100は、クラッチ12が完全係合しているかどうかを判定する。ここで、クラッチ12が完全係合していないと判定されたら、ステップS38にて、ハイブリッドECU100は、エンジンECU101に対して燃料供給を停止するようにフューエルカット制御指令を送り、エンジンECU101は、エンジン11における燃料噴射及び点火を停止する。
【0062】
一方、クラッチ12が完全係合していると判定されたら、ステップS33にて、ハイブリッドECU100は、モータジェネレータ14による最大回生エネルギWinを算出する。この最大回生エネルギWinは、バッテリ27の充電状態(SOC量や温度など)によって設定されるものであり、例えば、SOC量が高いと最大回生エネルギWinが低くなる。また、ステップS34にて、バッテリ27への発電上乗せトルクTpchgを算出する。この場合、バッテリ27の充電状態(SOC量や温度など)に基づいて上乗せ発電量Pchgを設定し、この上乗せ発電量Pchgに基づいて発電上乗せトルクTpchgを算出する。この上乗せ発電量Pchgは、例えば、SOC量が高いと低くなるものであり、上限が最大回生エネルギWinとする。
【0063】
次に、ステップS35にて、ハイブリッドECU100は、現在における減速フューエルカットを実行したときのエンジンブレーキトルクを確保するためのモータジェネレータ14のモータトルクTebを推定する。このモータトルクTebの推定方法は、実施形態1と同様である。続いて、ステップS36にて、ハイブリッドECU100は、エンジン11をファイアリングしたときの最小モータトルクTeminを算出する。この最小モータトルクTeminの算出方法は、実施形態1と同様である。
【0064】
そして、ステップS37にて、発電上乗せトルクTpchgが、モータトルクTebと最小モータトルクTeminとの加算値より大きいかどうかを判定する。ここで、発電上乗せトルクTpchgが加算値より大きくないと判定されたら、ステップS38にて、ハイブリッドECU100は、エンジンECU101に対して燃料供給を停止するようにフューエルカット制御指令を送り、エンジンECU101は、エンジン11における燃料噴射及び点火を停止する。このとき、エンジン11が停止していることから、ハイブリッドECU100は、モータECU102に対してモータジェネレータ14により回生制動を行うように制御指令を送る。すると、モータECU102は、モータジェネレータ14によりエンジントルクの回生制動を行うことで、エンジンブレーキ相当の減速度を確保する。
【0065】
一方、ステップS37にて、発電上乗せトルクTpchgが加算値より大きいと判定されたら、ステップS39にて、ハイブリッドECU100は、エンジンECU101に対して燃料供給を継続するようにファイアリング制御指令を送り、エンジンブレーキトルクを発生させる。また、ハイブリッドECU100は、モータECU102に対してモータジェネレータ14により回生制動を行うように制御指令を送る。すると、モータECU102は、モータジェネレータ14によりエンジントルクとエンジンブレーキトルクに対応した回生制動を行うことで、バッテリ27の充電を行う。
【0066】
なお、このときの発電トルクは、例えば、以下のように設定すればよい。
発電上乗せトルク>エンジンブレーキトルク+ファイアリング時の最低エンジントルクの場合
エンジン:発電上乗せトルク−エンジンブレーキトルク
モータジェネレータ:発電上乗せトルク
発電上乗せトルク<エンジンブレーキトルク+ファイアリング時の最低エンジントルクの場合
エンジン:ファイアリング時の最低エンジントルク
モータジェネレータ:エンジンブレーキトルク+ファイアリング時の最低エンジントルク
【0067】
このように実施形態2の車両の制御装置にあっては、発電上乗せトルクTpchgがモータトルクTebと最小モータトルクTeminとの加算値より大きくないときには、減速フューエルカットを実行することでエンジン11を停止し、モータジェネレータ14によりエンジントルクの回生制動を行ってエンジンブレーキ相当の減速度を確保する。一方、発電上乗せトルクTpchgがモータトルクTebと最小モータトルクTeminとの加算値より大きいと判定されたら、減速フューエルカットを実行せずにエンジン11を作動状態とし、エンジンブレーキトルクを発生させると共に、モータジェネレータ14によりエンジントルクとエンジンブレーキトルクに対応した回生制動を行うことで、バッテリ27の充電を行う。このようにバッテリ27の充電状態量(SOC量)に応じて変動するエンジン11に要求する発電上乗せエネルギを用いてバッテリ27の充電状態を判定し、現在の充電量に応じた充電制御を行うことで、安定した車両の走行を確保することができる。
【0068】
[実施形態3]
図7は、本発明の実施形態3に係る車両の制御装置における発電制御の処理を表すフローチャート、図8は、バッテリ充電量に対する発電許可効率を表すグラフ、図9は、最大効率曲線を表すグラフである。なお、上述した実施形態と同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0069】
実施形態3の車両の制御装置では、ハイブリッドECU100は、車両がエンジン走行モードで走行するときに所定の条件が成立しても、バッテリ27の充電状態量が所定値より低く、且つ、発電許可効率が発電最大効率より低い場合に減速フューエルカットを実行せずにモータジェネレータ14による発電を行うようにしている。
【0070】
以下、実施形態3の車両の制御装置における発電制御の処理を図7のフローチャートに基づいて詳細に説明する。
【0071】
実施形態3の車両の制御装置における発電制御において、シフトレバー42が前進操作位置「1」〜「5」に操作されることで、ハイブリッドECU100は、エンジン走行モードまたはハイブリッド走行モードのうちのいずれか一方を選択している。このとき、図7に示すように、ステップS41にて、ハイブリッドECU100は、減速フューエルカット要求があるかどうかを判定する。ここで、減速フューエルカット要求がないと判定されたら、何もしないでこのルーチンを抜ける。
【0072】
一方、減速フューエルカット要求があると判定されたら、ステップS42にて、ハイブリッドECU100は、クラッチ12が完全係合しているかどうかを判定する。ここで、クラッチ12が完全係合していないと判定されたら、ステップS51にて、ハイブリッドECU100は、エンジンECU101に対して燃料供給を停止するようにフューエルカット制御指令を送り、エンジンECU101は、エンジン11における燃料噴射及び点火を停止する。
【0073】
一方、クラッチ12が完全係合していると判定されたら、ステップS43にて、ハイブリッドECU100は、現在における減速フューエルカットを実行したときのエンジンブレーキトルクを確保するためのモータジェネレータ14のモータトルクTebを推定する。このモータトルクTebの推定方法は、実施形態1と同様である。続いて、ステップS44にて、ハイブリッドECU100は、エンジン11をファイアリングしたときの最小モータトルクTeminを算出する。この最小モータトルクTeminの算出方法は、実施形態1と同様である。
【0074】
次に、ステップS45にて、ハイブリッドECU100は、モータジェネレータ14による最大回生エネルギWinを算出する。続いて、ステップS46にて、ハイブリッドECU100は、最大回生エネルギWinに基づいてモータ回生最大トルクTmgmaxを算出する。
【0075】
そして、ステップS47にて、モータ回生最大トルクTmgmaxが、モータトルクTebと最小モータトルクTeminとの加算値より大きいかどうかを判定する。ここで、モータ回生最大トルクTmgmaxが加算値より大きくないと判定されたら、ステップS51にて、ハイブリッドECU100は、エンジンECU101に対して燃料供給を停止するようにフューエルカット制御指令を送り、エンジンECU101は、エンジン11における燃料噴射及び点火を停止する。このとき、エンジン11が停止していることから、ハイブリッドECU100は、モータECU102に対してモータジェネレータ14により回生制動を行うように制御指令を送る。すると、モータECU102は、モータジェネレータ14によりエンジントルクの回生制動を行うことで、エンジンブレーキによる減速度を確保する。
【0076】
一方、ステップS47にて、モータ回生最大トルクTmgmaxが加算値より大きいと判定されたら、ステップS48にて、ハイブリッドECU100は、発電許可効率γを算出する。図8に示すように、この発電許可効率γは、バッテリ27のSOC量の減少に応じて低下するものであり、これによりモータジェネレータ14が発電する度合いを増加させるようにしている。
【0077】
続いて、ステップS49にて、ハイブリッドECU100は、最大発電効率γmaxを算出する。発電効率は下記数式により算出することができる。
発電効率=(エンジンブレーキ相当トルク+エンジン軸トルク)×モータ回転数×ハイブリッドシステム効率/(エンジン軸トルク/エンジン効率)
=(エンジン図示トルク×モータ回転数×ハイブリッドシステム効率)/(エンジン図示トルク/エンジン図示トルク効率)
=モータ回転数×エンジン図示トルク効率×ハイブリッドシステム効率
ここで、エンジン軸トルクとは、エンジン11からクラッチ12に伝達されるトルクであり、エンジン図示トルクとは、エンジン軸トルクにエンジンブレーキトルクを乗算したものである。そして、エンジン図示トルク効率は、下記数式により算出することができる。
エンジン図示トルク効率=(エンジン軸トルク+エンジンブレーキトルク)×エンジン回転数/燃料のエネルギ
【0078】
ここで、モータ回転数は、車速に依存するものであることから制御することができず、(エンジン図示トルク効率×ハイブリッドシステム効率)が大きくなる領域でモータジェネレータ14による回生制動を行うことが望ましい。
【0079】
従って、エンジン図示トルク効率×ハイブリッドシステム効率を表す図9に示すように、所定のエンジン回転数に対して、このエンジン回転数の低下に伴ってエンジン軸トルクが増加する最大効率曲線が設定される。この場合、車速と変速段に基づいてエンジン回転数が設定されることから、このエンジン回転数に対応する最大効率曲線に対応する位置が最大発電効率γmaxとすることができる。なお、モータジェネレータ14による最大回生エネルギWinが設定されている場合には、最大発電効率γmaxが低下して最大発電効率γmax1となる。
【0080】
そして、ステップS50にて、ハイブリッドECU100は、発電許可効率γが最大発電効率γmaxより低いかどうかを判定する。ここで、発電許可効率γが最大発電効率γmaxより低くないと判定されたら、ステップS51に移行し、前述と同様の処理を行う。一方、発電許可効率γが最大発電効率γmaxより低いと判定されたら、ステップS52にて、ハイブリッドECU100は、エンジンECU101に対して燃料供給を継続するようにファイアリング制御指令を送り、エンジンブレーキトルクを発生させる。また、ハイブリッドECU100は、モータECU102に対してモータジェネレータ14により回生制動を行うように制御指令を送る。すると、モータECU102は、モータジェネレータ14によりエンジントルクとエンジンブレーキに対応した回生制動を行うことで、バッテリ27の充電を行う。なお、バッテリ27により多くの充電を行いたい場合には、エンジン11への燃料供給量を増加してエンジントルクを上昇させることで、モータジェネレータ14による回生量を増加させればよい。
【0081】
なお、このときの発電トルクは、例えば、以下のように設定すればよい。
エンジン:発電許可効率γを算出する際に使用したエンジン軸トルク
モータジェネレータ:モータ軸に換算したエンジン軸トルク+エンジンブレーキ相当のトルク
【0082】
このように実施形態3の車両の制御装置にあっては、ハイブリッドECU100は、車両がエンジン走行モードで走行するときに所定の条件が成立しても、バッテリ27の充電状態量が所定値より低く、且つ、発電許可効率が発電最大効率より低い場合に減速フューエルカットを実行せずにモータジェネレータ14による発電を行うようにしている。
【0083】
従って、充電状態量だけでなく、発電効率を考慮してモータジェネレータ14による発電の判定を行うことで、このモータジェネレータ14による発電量の確保と燃費の向上との両立を可能とすることができる。
【0084】
なお、上述した各実施形態では、ハイブリッド車両を、エンジン11、クラッチ12、手動式の多段変速機13、モータジェネレータ14、最終減速装置15、駆動輪16により構成したが、この構成に限定されるものではなく、例えば、エンジン11から駆動輪16への駆動力伝達経路やモータジェネレータ14から駆動輪16への駆動力伝達経路は、これに限るものではない。また、本発明の車両の制御装置は、内燃機関を気筒休止する機構の有無に拘わらず有効である。
【産業上の利用可能性】
【0085】
以上のように、本発明に係る車両の制御装置は、二次電池の充電量が低い場合に内燃機関に対する燃料供給を継続して電気モータによる発電を行うことで、電気モータを作動させる電力を十分に確保することで車両の走行安定性の向上を可能とするものであり、いずれの車両の走行を制御する装置にも有用である。
【符号の説明】
【0086】
11 エンジン(内燃機関)
12 クラッチ
13 多段変速機(動力伝達装置)
14 モータジェネレータ(電気モータ)
15 最終減速装置(動力伝達装置)
16 駆動輪
23 インバータ
26 歯車対(動力伝達装置)
27 バッテリ(二次電池)
41 変速操作装置(走行モード切替手段)
42 シフトレバー(走行モード選択手段)
61 SOCセンサ(充電量検出手段)
62 温度センサ
65 エンジン回転数センサ
66 アクセル開度センサ
100 ハイブリッドECU(燃料供給停止手段、充電制御手段)
101 エンジンECU
102 モータECU
103 バッテリECU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関と、
電気モータと、
前記内燃機関の駆動力または前記電気モータの駆動力を駆動輪側に伝達可能であると共に前記内燃機関の駆動力または前記駆動輪の駆動力を前記電気モータに伝達可能な駆動力伝達装置と、
前記駆動力伝達装置の駆動力により前記電気モータが駆動して発生した電力を充電可能であると共に前記電気モータへ電力を供給可能な二次電池と、
前記内燃機関の駆動力を前記駆動力伝達装置により前記駆動輪側へ伝達する内燃機関走行モードと前記電気モータの駆動力を前記駆動力伝達装置により前記駆動輪側へ伝達する電気モータ走行モードとを切替可能な走行モード切替手段と、
運転者が選択操作することで選択された走行モードを前記走行モード切替手段に指示する走行モード選択手段と、
前記二次電池の充電量を検出する充電量検出手段と、
予め設定された所定の条件が成立したら前記内燃機関への燃料供給を停止する燃料供給停止手段と、
車両が内燃機関走行モードで走行するときに前記所定の条件が成立しても前記二次電池の充電量が予め設定された所定値より低い場合に前記燃料供給停止手段の作動を停止すると共に前記電気モータによる発電を行う充電制御手段と、
を備えることを特徴とする車両の制御装置。
【請求項2】
前記充電制御手段は、車両が内燃機関走行モードで走行するときに前記所定の条件が成立しても、前記二次電池の充電量が予め設定された所定値より低く、且つ、発電許可効率が発電最大効率より低い場合に前記燃料供給停止手段の作動を停止すると共に前記電気モータによる発電を行うことを特徴とする請求項1に記載の車両の制御装置。
【請求項3】
前記充電制御手段は、前記電気モータにより機関出力トルクと機関ブレーキトルクに対応した回生制御を行って発電することを特徴とする請求項1または2に記載の車両の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−106536(P2012−106536A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−255234(P2010−255234)
【出願日】平成22年11月15日(2010.11.15)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】