説明

車両の制御装置

【課題】電動油圧ポンプが故障した場合、可能な限りアイドルストップを実行して燃費性能の悪化を回避すると共に、登降坂路での発進応答性の遅れによる後退を防止するようにした車両の制御装置を提供する。
【解決手段】しきい値(第1のしきい値。ブレーキ許可液圧1,2)を走行路の勾配から決定すると共に、電動油圧ポンプが故障と判定された場合には故障と判定されない場合に比して大きな値に決定し(S12からS18)、所定の許可条件が成立したと判断されると共に(S10)、検出された液圧が決定された(第1の)しきい値を超えるとき(S20)、アイドルストップの実行を許可する(S22)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は車両の制御装置に関し、より具体的には信号待ちするときなどにエンジンをアイドルストップさせるようにした車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
信号待ちするときなどにエンジンをアイドルストップさせる車両においてはエンジンで駆動される油圧ポンプと別に電動油圧ポンプを備えることが多く、その例として特許文献1記載の技術を挙げることができる。
【0003】
電動油圧ポンプを備える場合、電動油圧ポンプが故障すると、エンジンで駆動される油圧ポンプからの油圧供給に依存することとなるため、アイドルストップを終了してエンジンを再始動するとき、自動変速機の変速動作が遅れて車両の発進に遅れを生じるという不都合がある。
【0004】
そのため、特許文献1記載の技術にあっては、アイドルストップの許可条件の一つに電動油圧ポンプが故障していないことを加えることで、そのような不都合を解消している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3613989号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1記載の技術は上記のように構成して電動油圧ポンプの故障時の不都合を解消しているが、その結果、アイドルストップを実行する機会が減少して燃費性能が悪化するという新たな問題を生じてしまう。
【0007】
他方、電動油圧ポンプの故障時でもアイドルストップを常に実行すると、車両が登降坂路でアイドルストップした場合、発進応答性の遅れによって車両が後退する恐れがある。
【0008】
従って、この発明の目的は上記した不都合を解消し、電動油圧ポンプが故障した場合、可能な限りアイドルストップを実行して燃費性能の悪化を回避すると共に、登降坂路での発進応答性の遅れによる後退を防止するようにした車両の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、請求項1にあっては、車両に搭載されるエンジンと、前記エンジンで駆動される油圧ポンプと、前記油圧ポンプから供給される油圧で動作して前記エンジンの出力を変速して駆動輪に伝達する自動変速機と、所定の許可条件が成立したときに前記エンジンのアイドルストップを実行する車両の制御装置において、電動モータで駆動されて前記自動変速機に油圧を供給する電動油圧ポンプと、前記電動油圧ポンプの故障を判定する電動油圧ポンプ故障判定手段と、制動装置の液圧を検出する液圧検出手段と、しきい値を走行路の勾配から決定すると共に、前記電動油圧ポンプ故障判定手段によって前記電動油圧ポンプが故障と判定された場合には故障と判定されない場合に比して大きな値に決定するしきい値決定手段と、前記所定の許可条件が成立したと判断されると共に、前記検出された液圧が前記決定されたしきい値を超えるとき、前記アイドルストップの実行を許可するアイドルストップ許可手段とを備える如く構成した。
【0010】
請求項2に係る車両の制御装置にあっては、前記検出された液圧が第2のしきい値未満と判断されるとき、前記制動装置の制動力を所定時間だけ保持させる制動保持手段と、前記第2のしきい値を前記電動油圧ポンプが故障と判定された場合には故障と判定されない場合に比して大きな値に決定する第2しきい値決定手段とを備える如く構成した。
【0011】
請求項3に係る車両の制御装置にあっては、前記第2しきい値決定手段は、前記走行路の勾配から前記第2のしきい値を決定する如く構成した。
【0012】
請求項4に係る車両の制御装置にあっては、前記制動保持手段は、前記所定時間を、前記電動油圧ポンプが故障と判定された場合には故障と判定されない場合に比して大きな値に決定する如く構成した。
【0013】
請求項5に係る車両の制御装置にあっては、前記制動保持手段は、前記走行路の勾配から前記所定時間を決定する如く構成した。
【0014】
請求項6に係る車両の制御装置にあっては、前記しきい値決定手段は、前記走行路の勾配が所定値以下のとき、前記しきい値を前記電動油圧ポンプが故障と判定された場合と故障と判定されない場合とで同一の値に決定する如く構成した。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係る車両の制御装置にあっては、しきい値を走行路の勾配から決定すると共に、電動油圧ポンプ故障判定手段によって電動油圧ポンプが故障と判定された場合には故障と判定されない場合に比して大きな値に決定するしきい値決定手段と、所定の許可条件が成立したと判断されると共に、検出された制動装置の液圧が決定されたしきい値を超えるとき、アイドルストップの実行を許可するアイドルストップ許可手段とを備える如く構成したので、電動油圧ポンプが故障している場合でも、制動装置の液圧がしきい値を超えれば、所定の許可条件が成立している限り、アイドルストップを実行することとなって燃費性能の悪化を回避することができる。
【0016】
また、電動油圧ポンプの故障時にアイドルストップを実行すると、車両が登降坂路でアイドルストップした場合、発進応答性の遅れによって車両が後退する恐れがあるが、しきい値を走行路の勾配から決定することで、登降坂路での制動に必要とされる液圧を保証することが可能となり、よって登降坂路での発進応答性の遅れによる車両の後退を防止することができる。
【0017】
請求項2に係る車両の制御装置にあっては、検出された液圧が第2のしきい値未満と判断されるとき、制動装置の制動力を所定時間だけ保持させる制動保持手段と、第2のしきい値を電動油圧ポンプが故障と判定された場合には故障と判定されない場合に比して大きな値に決定する第2しきい値決定手段とを備える如く構成したので、上記した効果に加え、登降坂路での発進応答性の遅れによる車両の後退を確実に防止することができる。
【0018】
請求項3に係る車両の制御装置にあっては、第2しきい値決定手段は、走行路の勾配から第2のしきい値を決定する如く構成したので、上記した効果に加え、登降坂路での発進応答性の遅れによる車両の後退を一層確実に防止することができる。
【0019】
請求項4に係る車両の制御装置にあっては、制動保持手段は、所定時間を、電動油圧ポンプが故障と判定された場合には故障と判定されない場合に比して大きな値に決定する如く構成したので、上記した効果に加え、電動油圧ポンプが故障しているときの発進応答性の遅れによる車両の後退を一層確実に防止することができる。
【0020】
請求項5に係る車両の制御装置にあっては、制動保持手段は、走行路の勾配から所定時間を決定する如く構成したので、上記した効果に加え、電動油圧ポンプが故障しているときの登降坂路での発進応答性の遅れによる車両の後退を一層確実に防止することができる。
【0021】
請求項6に係る車両の制御装置にあっては、しきい値決定手段は、走行路の勾配が所定値以下のとき、しきい値を電動油圧ポンプが故障と判定された場合と故障と判定されない場合とで同一の値に決定する如く構成したので、上記した効果に加え、制動装置の操作で運転者に違和感を与えることがない。
【0022】
即ち、しきい値を走行路の勾配から例えば勾配の増加につれて増加するように決定することで車両が登降坂路でアイドルストップした場合の発進応答性の遅れによる車両の後退を防止できるが、走行路の勾配が所定値以下の例えば平坦路などにあってはそのような車両の後退の恐れがない。
【0023】
従って、平坦路などでしきい値を電動油圧ポンプが故障と判定された場合と否とで同一の値に決定することで、運転者は制動装置に同一の踏力を与えるのみで制動装置の検出された液圧がしきい値を超えてアイドルストップさせることが可能となり、電動油圧ポンプが故障と判定された場合と否とで必要な踏力が相違するなどの違和感を与えることがない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】この発明の実施例に係る車両の制御装置を全体的に示す概略図である。
【図2】図1に示すブレーキ液圧供給機構の油圧回路図である。
【図3】図1に示す変速機油圧供給機構の油圧回路図である。
【図4】図1に示す装置の動作を示すフロー・チャートである。
【図5】図4フロー・チャートの処理で使用されるブレーキ許可液圧などの特性を示す説明図である。
【図6】図5の特性の検索に使用される走行路の勾配の算出を示す説明図である。
【図7】図4フロー・チャートの処理を説明するタイム・チャートである。
【図8】図4フロー・チャートと平行して実行される図1に示す装置の動作を示すフロー・チャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付図面に即してこの発明に係る車両の制御装置を実施するための形態を説明する。
【実施例】
【0026】
図1は、この発明の実施例に係る車両の制御装置を全体的に示す概略図、図2は図1に示すブレーキ液圧供給機構、図3は図1に示す変速機油圧供給機構の油圧回路図である。
【0027】
図1において、符号10はエンジン(内燃機関)を示す。エンジン10は駆動輪12を備えた車両14に搭載される(車両14は駆動輪12などで部分的に示す)。
【0028】
エンジン10の吸気系に配置されたスロットルバルブ(図示せず)は車両運転席床面に配置されるアクセルペダルとの機械的な接続が絶たれ電動モータなどのアクチュエータからなるDBW(Drive By Wire)機構16に接続され、DBW機構16で開閉される。
【0029】
スロットルバルブで調量された吸気はインテークマニホルド(図示せず)を通って流れ、各気筒の吸気ポート付近でインジェクタ20から噴射された燃料と混合して混合気を形成し、吸気バルブ(図示せず)が開弁されたとき、当該気筒の燃焼室(図示せず)に流入する。燃焼室において混合気は点火されて燃焼し、ピストンを駆動してクランクシャフト22を回転させた後、排気となってエンジン10の外部に放出される。
【0030】
クランクシャフト22の回転はトルクコンバータ24を介して自動変速機26に入力される。自動変速機26は無段変速機(Continuous Variable Transmission。以下「CVT」という)26からなる。
【0031】
即ち、クランクシャフト22はトルクコンバータ24のポンプ・インペラ24aに接続される一方、それに対向配置されて流体(作動油)を収受するタービン・ランナ24bはメインシャフト(入力軸)MSに接続される。
【0032】
CVT26はメインシャフトMS、より正確にはその外周側シャフトに配置されたドライブプーリ26aと、メインシャフトMSに平行なカウンタシャフト(出力軸)CS、より正確にはその外周側シャフトに配置されたドリブンプーリ26bと、その間に掛け回される無端可撓部材、例えば金属製のベルト26cからなる。
【0033】
ドライブプーリ26aは、メインシャフトMSの外周側シャフトに相対回転不能で軸方向移動不能に配置された固定プーリ半体26a1と、メインシャフトMSの外周側シャフトに相対回転不能で固定プーリ半体26a1に対して軸方向に相対移動可能な可動プーリ半体26a2からなる。
【0034】
ドリブンプーリ26bは、カウンタシャフトCSの外周側シャフトに相対回転不能で軸方向移動不能に配置された固定プーリ半体26b1と、カウンタシャフトCSに相対回転不能で固定プーリ半体26b1に対して軸方向に相対移動可能な可動プーリ半体26b2からなる。
【0035】
CVT26は前後進切換機構28を介してエンジン10に接続される。前後進切換機構28は、車両14の前進方向への走行を可能にする前進クラッチ28aと、後進方向への走行を可能にする後進ブレーキクラッチ28bと、その間に配置されるプラネタリギヤ機構28cからなる。CVT26はエンジン10に前進クラッチ28aを介して接続される。
【0036】
プラネタリギヤ機構28cにおいて、サンギヤ28c1はメインシャフトMSに固定されると共に、リングギヤ28c2は前進クラッチ28aを介してドライブプーリ26aの固定プーリ半体26a1に固定される。
【0037】
サンギヤ28c1とリングギヤ28c2の間には、ピニオン28c3が配置される。ピニオン28c3は、キャリア28c4でサンギヤ28c1に連結される。キャリア28c4は、後進ブレーキクラッチ28bが作動させられると、それによって固定(ロック)される。
【0038】
カウンタシャフトCSの回転はギヤを介してセカンダリシャフト(中間軸)SSから駆動輪12に伝えられる。即ち、カウンタシャフトCSの回転はギヤ30a,30bを介してセカンダリシャフトSSに伝えられ、その回転はギヤ30cを介してディファレンシャル32から左右の駆動輪(右側のみ示す)12に伝えられる。
【0039】
駆動輪(前輪)12と従動輪(後輪。図示せず)の付近にはディスクブレーキ(制動装置)34が配置される。ディスクブレーキ34はキャリパ34aとディスク34bなどを備える。
【0040】
車両運転席床面にはブレーキペダル36が配置される。ブレーキペダル36はマスタバック38とマスタシリンダ40とブレーキ液圧供給機構42を介して接続されるディスクブレーキ34に接続される。マスタシリンダ40は、ブレーキ液を貯留するリザーバ40aとリザーバ40aに貯留されるブレーキ液が充満される油室内を摺動自在なピストン(図示せず)を備える。
【0041】
運転者がブレーキペダル36を踏み込むと、その踏み込み力はマスタバック38で増力されてマスタシリンダ40に伝えられる。マスタシリンダ40のピストンは増力された踏み込み力に相当する距離だけストロークする。ピストンのストロークによって生成された液圧(ブレーキ液の圧力)はブレーキ液圧供給機構42に送られる。
【0042】
図2に示す如く、ブレーキ液圧供給機構42において液路42aからリニアソレノイドバルブ(電磁ソレノイドバルブ)42bに送られ、それから液路42c,42dを介して左右の駆動輪12のディスクブレーキ34に送られる。従動輪(後輪)側には液路42eを介して生成された液圧が送られる。
【0043】
リニアソレノイドバルブ42bのスプールは液路42aを液路42c,42dに連通させる連通位置と遮断位置の2位置の間では移動自在であり、ソレノイド42b1が通電されてPWM制御されることで任意の量の液圧がディスクブレーキ34のキャリパ34aのピストン(図示せず)にキャリパ圧として送られ、ピストンでディスク34bを押圧してディスクブレーキ34を動作させ、車両14を制動(減速)させる。
【0044】
図1の説明に戻ると、前後進切換機構28において前進クラッチ28aと後進ブレーキクラッチ28bの切換は、車両運転席に設けられたレンジセレクタ44を運転者が操作して例えばP,R,N,Dなどのレンジのいずれかを選択することで行われる。運転者のレンジセレクタ44の操作によるレンジ選択は変速機油圧供給機構46(後述)のマニュアルバルブに伝えられる。
【0045】
レンジセレクタ44を介して例えばD,S,Lレンジが選択されると、それに応じてマニュアルバルブのスプールが移動し、後進ブレーキクラッチ28bのピストン室から作動油(油圧)が排出される一方、前進クラッチ28aのピストン室に油圧が供給されて前進クラッチ28aが締結される。
【0046】
前進クラッチ28aが締結されると、全ギヤがメインシャフトMSと一体に回転し、ドライブプーリ26aはメインシャフトMSと同方向(前進方向)に駆動され、よって車両14は前進方向に走行する。
【0047】
Rレンジが選択されると、前進クラッチ28aのピストン室から作動油が排出される一方、後進ブレーキクラッチ28bのピストン室に油圧が供給されて後進ブレーキクラッチ28bが作動する。従ってキャリア28c4が固定されてリングギヤ28c2はサンギヤ28c1とは逆方向に駆動され、ドライブプーリ26aはメインシャフトMSとは逆方向(後進方向)に駆動され、車両は後進方向に走行する。
【0048】
PあるいはNレンジが選択されると、両方のピストン室から作動油が排出されて前進クラッチ28aと後進ブレーキクラッチ28bが共に開放され、前後進切換装置28を介しての動力伝達が断たれ、エンジン10とCVT26のドライブプーリ26aとの間の動力伝達が遮断される。
【0049】
図3は変速機油圧供給機構46の油圧回路図である。
【0050】
図示の如く、変速機油圧供給機構46には油圧ポンプ46aが設けられる。油圧ポンプ46aはギヤポンプからなり、エンジン(E)10によって駆動され、リザーバ46bに貯留された作動油を汲み上げてPH制御バルブ(PH REG VLV)46cに圧送する。
【0051】
PH制御バルブ46cの出力(PH圧(ライン圧))は、一方では油路46dから第1、第2のレギュレータバルブ(DR REG VLV, DN REG VLV)46e,46fを介してCVT26のドライブプーリ26aの可動プーリ半体26a2のピストン室(DR)26a21とドリブンプーリ26bの可動プーリ半体26b2のピストン室(DN)26b21に接続されると共に、他方では油路46gを介してCRバルブ(CR VLV)46hに接続される。
【0052】
CRバルブ46hはPH圧を減圧してCR圧(制御圧)を生成し、油路46iから第1、第2、第3の(電磁)リニアソレノイドバルブ46j,46k,46l(LS-DR, LS-DN, LS-CPC)に供給する。
【0053】
第1、第2のリニアソレノイドバルブ46j,46kはそのソレノイドの励磁に応じて決定される出力圧を第1、第2のレギュレータバルブ46e,46fに作用させ、よって油路46dから送られるPH圧の作動油を可動プーリ半体26a2,26b2のピストン室26a21,26b21に供給し、それに応じてプーリ側圧を発生させる。
【0054】
従って、可動プーリ半体26a2,26b2を軸方向に移動させるプーリ側圧が発生させられてドライブプーリ26aとドリブンプーリ26bのプーリ幅が変化し、ベルト26cの巻掛け半径が変化する。このように、プーリの側圧を調整することで、エンジン10の出力を駆動輪12に伝達するレシオ(変速比)を無段階に変化させることができる。
【0055】
CRバルブ46hの出力(CR圧)は油路46mを介してCRシフトバルブ(CR SFT VLV)46nにも接続され、そこから前記したマニュアルバルブ(MAN VLV。符号46oで示す)を介して前後進切換装置28の前進クラッチ28aのピストン室(FWD)28a1と後進ブレーキクラッチ28bのピストン室(RVS)28b1に接続される。
【0056】
マニュアルバルブ46oは、前記した如く、運転者によって操作(選択)されたレンジセレクタ44の位置に応じてCRシフトバルブ46nの出力を前進クラッチ28aと後進ブレーキクラッチ28bのピストン室28a1,28b1のいずれかに接続する。
【0057】
また、PH制御バルブ46cの出力は、油路46pを介してTCレギュレータバルブ(TC REG VLV)46qに送られ、TCレギュレータバルブ46qの出力はLCコントロールバルブ(LC CTL VLV)46rを介してLCシフトバルブ(LC SFT VLV)46sに接続される。
【0058】
LCシフトバルブ46sの出力は一方ではトルクコンバータ24のロックアップクラッチ24cのピストン室24c1に接続されると共に、他方ではその背面側の室24c2に接続される。
【0059】
LCシフトバルブ46sを介して作動油がピストン室24c1に供給される一方、背面側の室24c2から排出されると、ロックアップクラッチ24cが係合(オン)され、背面側の室24c2に供給される一方、ピストン室24c1から排出されると、解放(オフ)される。ロックアップクラッチ24cのスリップ量は、ピストン室24c1と背面側の室24c2に供給される作動油の量によって決定される。
【0060】
CRバルブ46hの出力は油路46tを介してLCコントロールバルブ46rとLCシフトバルブ46sに接続されると共に、油路46tには第4のリニアソレノイドバルブ(LS−LC)46uが介挿される。ロックアップクラッチ24cのスリップ量は、第4のリニアソレノイドバルブ46uのソレノイドの励磁・非励磁によって調整(制御)される。
【0061】
さらに、油圧ポンプ46aの下流でPH制御バルブ46cの上流に相当する位置には電動モータ46vに接続されるEOP(Electric Oil Pump。電動油圧ポンプ)46wがチェックバルブ46xを介して接続される。
【0062】
EOP46wも油圧ポンプ46aと同様にギヤポンプからなり、電動モータ46vで駆動され、リザーバ46bに貯留された作動油を汲み上げてPH制御バルブ(PH REG VLV)46cに圧送する。
【0063】
この明細書において自動変速機はトルクコンバータ24とCVT26と前後進切換機構28(より具体的にはその前進クラッチ28a(あるいは後進ブレーキクラッチ28b))からなる。
【0064】
図1の説明に戻ると、エンジン10のカム軸(図示せず)付近などの適宜位置にはクランク角センサ50が設けられ、ピストンの所定クランク角度位置ごとにエンジン回転数NEを示す信号を出力する。吸気系においてスロットルバルブの下流の適宜位置には絶対圧センサ52が設けられ、吸気管内絶対圧(エンジン負荷)PBAに比例した信号を出力する。
【0065】
DBW機構16のアクチュエータにはスロットル開度センサ54が設けられ、アクチュエータの回転量を通じてスロットルバルブの開度THに比例した信号を出力する。
【0066】
また前記したアクセルペダル(符号56で示す)の付近にはアクセル開度センサ56aが設けられて運転者のアクセルペダル操作量に相当するアクセル開度APに比例する信号を出力すると共に、ブレーキペダル36の付近にはブレーキスイッチ36aが設けられて運転者のブレーキペダル36の操作に応じてオン信号を出力する。
【0067】
さらに、エンジン10の冷却水通路(図示せず)の付近には水温センサ60が設けられ、エンジン冷却水温TW、換言すればエンジン10の温度に応じた出力を生じる。
【0068】
上記したクランク角センサ50などの出力は、エンジンコントローラ66に送られる。エンジンコントローラ66はマイクロコンピュータを備え、それらセンサ出力に基づいて目標スロットル開度を決定してDBW機構16の動作を制御すると共に、燃料噴射量を決定してインジェクタ20を駆動する。
【0069】
メインシャフトMSにはNTセンサ(回転数センサ)70が設けられ、タービン・ランナ24bの回転数、具体的にはメインシャフトMSの回転数NT(変速機入力軸回転数)、より具体的には前進クラッチ28aの入力軸回転数を示すパルス信号を出力する。
【0070】
CVT26のドライブプーリ26aの付近の適宜位置にはNDRセンサ(回転数センサ)72が設けられてドライブプーリ26aの回転数NDR、換言すれば前進クラッチ28aの出力軸回転数に応じたパルス信号を出力する。
【0071】
ドリブンプーリ26bの付近の適宜位置にはNDNセンサ(回転数センサ)74が設けられてドリブンプーリ26bの回転数NDN、即ち、カウンタシャフトCSの回転数(変速機出力軸回転数)を示すパルス信号を出力すると共に、セカンダリシャフトSSのギヤ30bの付近にはVセンサ(回転数センサ)76が設けられてセカンダリシャフトSSの回転数を通じて車速Vを示すパルス信号を出力する。
【0072】
前記したレンジセレクタ44の付近にはレンジセレクタスイッチ44aが設けられ、運転者によって選択されたR,N,Dなどのレンジに応じた信号を出力する。
【0073】
図2に示す如く、ブレーキ液圧供給機構42においてマスタシリンダ40とリニアソレノイドバルブ42bの間の液路には液圧センサ80が配置されてディスクブレーキ34の液圧、具体的にはマスタシリンダ40の生成する液圧(マスタシリンダ圧)に応じた信号を出力する。
【0074】
また、図3に示す如く、油圧供給機構46においてCVT26のドリブンプーリ26bに通じる油路には油圧センサ82が配置されてドリブンプーリ26bの可動プーリ半体26b2のピストン室26b21に供給される油圧に応じた信号を出力する。リザーバ46bには油温センサ84が配置されて油温(作動油ATFの温度TATF)に応じた信号を出力する。
【0075】
尚、油圧センサ82は図3に想像線で示す如く、前進クラッチ28aのピストン室28a1とマニュアルバルブ46oの間の油路、あるいはトルクコンバータ24のロックアップクラッチ24cに通じる油路に配置してその部位の油圧を検出するようにしても良い。
【0076】
車両14の中央位置付近には傾斜センサ86が設けられ、車両14の前後(車長)方向の傾斜を通じて車両14が走行する走行路の勾配を示す出力を生じる。
【0077】
上記したNTセンサ70などの出力は、図示しないその他のセンサの出力も含め、シフトコントローラ90に送られる。シフトコントローラ90もマイクロコンピュータを備えると共に、エンジンコントローラ66と通信自在に構成される。
【0078】
シフトコントローラ90は、それら検出値に基づき、ブレーキ液圧供給機構42のリニアソレノイドバルブ42bと変速機油圧供給機構46の第1、第4のオン・オフソレノイド46uなどの電磁ソレノイドを励磁・非励磁して前後進切換装置28とCVT26とトルクコンバータ24とディスクブレーキ34の動作を制御する。
【0079】
さらにシフトコントローラ90は、それら検出値に基づき、変速機油圧供給機構46の電動モータ46vの通電量を決定し、駆動回路(図示せず)を介して電動モータ46vに通電してEOP46wを駆動する。
【0080】
また、エンジンコントローラ66は燃料噴射制御などに加え、車両14のアイドルストップ制御を実行する。
【0081】
図4はこの実施例に係る装置の動作、具体的にはエンジンコントローラ66のアイドルストップ(IS)制御、より具体的にはそのアイドルストップの許可・禁止を示すフロー・チャートである。図示のプログラムは所定時間、例えば10msecごとに実行される。
【0082】
以下説明すると、S10においてIS(アイドルストップ)許可条件が成立しているか否か判断する。
【0083】
IS(アイドルストップ)許可条件はブレーキペダル36が運転者によって操作されており(踏まれており)、かつアクセルペダル56が操作されていず(踏まれていず)、かつ車速Vが零であり、かつCVT26のレシオ(変速比)がローであることであり、それらが全て満足されるとき、成立する。
【0084】
上記した条件の成否は、ブレーキスイッチ36a,アクセル開度センサ56a、Vセンサ76の出力とシフトコントローラ90に通信して得た情報から判断する。
【0085】
S10で否定されるときは以降の処理をスキップする一方、肯定されるときはS12に進み、EOP46wが正常か否か判断する。これはEOP46wを駆動する電動モータ46vの駆動回路の温度を適宜配置した温度センサで検出するなどして判断する。
【0086】
具体的には、検出された駆動回路の温度が規定値を超えるとき、駆動回路、即ち、電動モータ46vが異常で、よってそれに接続されるEOP46wも異常と判断する。
【0087】
S12で肯定されてEOP46wが正常と判断されるときはS14に進み、ブレーキ許可液圧1を走行路の勾配から算出する。より具体的には、傾斜センサ86の出力で検出される走行路の勾配から図5に示す特性(EOP正常時ブレーキ許可液圧特性)を検索してブレーキ許可液圧1を算出する。
【0088】
一方、S12で否定されてEOP46wが正常ではない、即ち、故障と判断されるときはS16に進み、同様にブレーキ許可液圧2を走行路の勾配から算出する。より具体的には、同様に傾斜センサ86の出力で検出される走行路の勾配から同図に示す特性(EOP故障時ブレーキ許可液圧特性)を検索してブレーキ許可液圧2を算出する。
【0089】
図示の如く、ブレーキ許可液圧1,2は走行路の勾配から検索自在に設定され、勾配が微小値(5%)以下のときは同一(一定)の値に設定されると共に、その値を超えた後は勾配が増加するにつれて増加するように設定される。
【0090】
また、図5から明らかな如く、ブレーキ許可液圧2は、勾配が微小値を超えた後、ブレーキ許可液圧1よりも、大きく設定される。即ち、ブレーキ許可特性は、EOP46wが故障と判定された場合(故障時)にはEOP46wが故障と判定されない場合(正常時)に比して大きく設定される。
【0091】
即ち、ブレーキ許可液圧1,2は、走行路の勾配が所定値以下のとき、EOP46wが故障と判定された場合と故障と判定されない場合とで同一の値に設定される一方、走行路の勾配が所定値を超えるとき、EOP46wが故障と判定された場合には故障と判定されない場合に比して大きく設定され、よって後述の如く第1のしきい値が同様の特性となるように決定される。
【0092】
走行路の勾配は傾斜センサ86の出力から求められるが、それに代え、図6に示す如く、演算によって走行路の勾配を算出(検出)しても良い。走行路の勾配は、100×垂直距離[m]/水平距離[m]で示される。
【0093】
図4フロー・チャートにあっては次いでS18に進み、算出されたブレーキ許可液圧1あるいは2を第1のしきい値と決定(設定)する。
【0094】
次いでS20に進み、液圧センサ80から検出されたディスクブレーキ34の液圧(マスタシリンダ圧)がS18で決定(設定)された第1のしきい値(ブレーキ許可液圧1あるいは2)を超えたか否か判断し、肯定されるときはS22に進み、IS(アイドルストップ)を許可する一方、否定されるときはS24に進み、ISを禁止する。
【0095】
図7は図4フロー・チャートの動作を説明するタイム・チャートである。
【0096】
図示の如く、運転者のブレーキペダル36の操作によって増加されるマスタシリンダ40の液圧(マスタシリンダ圧)が、例えば時刻t1で第1のしきい値(ブレーキ許可液圧1あるいは2)を超えたと判断されるとき、S10で述べた条件も成立すれば、IS(アイドルストップ)が許可(エンジン10が停止)される。
【0097】
図8は、この実施例に係る装置の動作、具体的にはエンジンコントローラ66によって図4のアイドルストップ制御と平行して実行されるブレーキ保持制御を示すフロー・チャートである。図示のプログラムも所定時間、例えば10msecごとに実行される。
【0098】
以下説明すると、S100においてEOP46wが正常か否か判断する。これはS12で述べたと同様の手法で判断する。
【0099】
S100で肯定されてEOP46wが正常と判断されるときはS102に進み、S12からS14の処理と同様、ブレーキ保持液圧1を走行路の勾配から算出する。
【0100】
具体的には、検出された走行路の勾配から図5に示すEOP正常時ブレーキ保持液圧特性を検索してブレーキ保持液圧1を算出する。次いでS104に進み、検出された走行路の勾配から同様の特性(図示せず)を検索して保持時間(所定時間)1を決定(算出)する。
【0101】
また、S100で否定されてEOP46wが故障と判断されるときはS106に進み、ブレーキ保持液圧2を走行路の勾配から算出する。具体的には、図5に示すEOP故障時ブレーキ保持液圧特性を検出された走行路の勾配から検索してブレーキ保持液圧2を算出し、S108に進み、検出された走行路の勾配から同様の特性(図示せず)を検索して保持時間(所定時間)2を決定(算出)する。
【0102】
図示の如く、ブレーキ保持液圧1,2も走行路の勾配から検索自在に設定され、勾配が所定値(微小値(5%))以下のとき同一(一定)の値に設定されると共に、それ以後は勾配が増加するにつれて増加するように設定される。
【0103】
また、ブレーキ保持液圧1,2も、ブレーキ許可液圧と同様、勾配が微小値を超えた後、EOP46wが故障している場合(「故障時ブレーキ保持液圧2」と示す場合)にはEOP46wが故障していない場合(「正常時ブレーキ保持液圧1」と示す場合)に比して大きく設定される。
【0104】
即ち、ブレーキ保持液圧1,2も、走行路の勾配が所定値以下のとき、EOP46wが故障と判定された場合と故障と判定されない場合とで同一の値に設定される一方、走行路の勾配が所定値を超えるとき、EOP46wが故障と判定された場合には故障と判定されない場合に比して大きく設定され、よって後述の如く第2のしきい値が同様の特性となるように決定される。
【0105】
保持時間1,2(所定時間)はディスクブレーキ34がブレーキ(制動)動作を保持すべき時間を意味するが、図7タイム・チャートに示す如く、保持時間も、EOP46wが故障しているときの保持時間2は然らざる場合の保持時間1よりも長く設定される。
【0106】
特性の図示は省略するが、保持時間1,2も走行路の勾配から検索自在に設定され、勾配が所定値(微小値(5%))以下のとき同一(一定)の値に設定されると共に、それ以後は勾配が増加するにつれて増加するように設定される。
【0107】
図8フロー・チャートにあっては次いでS110に進み、算出されたブレーキ保持液圧1(あるいは2)を第2のしきい値と決定(設定)する。次いでS112に進み、液圧センサ80から検出された液圧(マスタシリンダ圧)がS110で決定(設定)された第2のしきい値(ブレーキ保持液圧1あるいは2)未満か否か判断する。
【0108】
S112で否定されるときは以降の処理をスキップする一方、肯定されるときはS114に進み、設定された保持時間1(あるいは2)の間、ブレーキ作動、即ち、設定された保持時間の間だけディスクブレーキ34を動作させて制動力を保持させる。換言すれば、設定された保持時間の間、リニアソレノイドバルブ42bに通電し続け、ディスクブレーキ34に液圧を供給し続けて制動力を保持させる。
【0109】
上記した如く、この実施例にあっては、車両14に搭載されるエンジン10と、前記エンジンで駆動される油圧ポンプ46aと、前記油圧ポンプ46aから供給される油圧で動作して前記エンジンの出力を変速して駆動輪12に伝達するCVT(自動変速機)26と、所定の許可条件が成立したときに前記エンジン10のアイドルストップを実行する車両の制御装置(エンジンコントローラ)90において、電動モータ46vで駆動されて前記CVT26に油圧を供給するEOP(電動油圧ポンプ)46wと、前記EOP46wの故障を判定するEOP故障判定手段(S12)と、ディスクブレーキ(制動装置)34の液圧(例えばマスタシリンダ圧)を検出する液圧検出手段(液圧センサ80)と、しきい値(第1のしきい値。ブレーキ許可液圧1,2)を走行路の勾配から決定すると共に、前記EOP故障判定手段によって前記EOP46wが故障と判定された場合には故障と判定されない場合に比して大きな値に決定するしきい値決定手段(S12からS18)と、前記所定の許可条件が成立したと判断されると共に(S10)、前記検出された液圧が前記決定されたしきい値を超えるとき(S20)、前記アイドルストップの実行を許可するアイドルストップ許可手段(S22)とを備える如く構成したので、EOP46wが故障している場合でも、ディスクブレーキ34の液圧が(第1の)しきい値を超えれば、所定の許可条件が成立している限り、アイドルストップを実行することとなって燃費性能の悪化を回避することができる。
【0110】
また、EOP46wの故障時にアイドルストップを実行すると、車両14が登降坂路でアイドルストップした場合、発進応答性の遅れによって車両14が後退(あるいは前進)する恐れがあるが、(第1の)しきい値を走行路の勾配から決定することで、登降坂路での制動に必要とされる液圧を保証することが可能となり、よって登降坂路での発進応答性の遅れによる後退(あるいは前進。特に登坂路での後退)を防止することができる。
【0111】
即ち、最初に述べた如く、特許文献1記載の技術のようにアイドルストップの許可条件の一つにEOP46wが故障していないことを加えると、アイドルストップを実行する機会が減少して燃費性能を悪化させるが、それを回避するためにEOP46wの故障時でもアイドルストップを常に実行すると、車両14が登降坂路で停止した場合、発進応答性の遅れによって後退(あるいは前進)する恐れがある。
【0112】
そこで、この実施例においては、アイドルストップの許可条件と別に、検出されたディスクブレーキ34の液圧(例えばマスタシリンダ圧)が走行路の勾配から決定されるブレーキ許可液圧(第1のしきい値)を超えるか否かの判定を追加し、図7に示す如く、例えば時刻t1で検出された液圧がブレーキ許可液圧(第1のしきい値)を越えていればアイドルストップを許可するように構成した(S20,S22)。
【0113】
また、図5に示す如く、ブレーキ許可液圧をEOP46wが故障している場合には故障していない場合に比して大きく設定し、よってEOP46wの故障時には、然らざる場合に比してアイドルストップを許可し難く構成したので、上記した効果に加え、登降坂路での発進応答性の遅れによる車両14の後退を勾配の多寡に関わらず確実に防止することができる。
【0114】
また、前記検出された液圧が第2のしきい値未満と判断されるとき(S112)、前記ディスクブレーキ34の制動力を保持時間1,2(所定時間)だけ保持させる制動保持手段(S104,S108,S114)と、前記第2のしきい値を前記EOP46wが故障と判定された場合には故障と判定されない場合に比して大きな値に決定する第2しきい値決定手段(S100,S102,S106,S110)とを備える如く構成したので、上記した効果に加え、登降坂路での発進応答性の遅れによる車両14の後退(あるいは前進)を確実に防止することができる。
【0115】
また、前記第2しきい値決定手段は、前記走行路の勾配から前記第2のしきい値を決定する(S102,S106,S110)如く構成したので、上記した効果に加え、登降坂路での発進応答性の遅れによる車両14の後退(あるいは前進)を、勾配の多寡に関わらず、一層確実に防止することができる。
【0116】
従って、図7タイム・チャートにおいて例えば時刻t2において検出された液圧(マスタシリンダ圧)がブレーキ保持液圧(第2のしきい値)未満と判断されると、その時点からEOP46wの故障(あるいは正常)によって決定される保持時間だけディスクブレーキ34のピストンにキャリパ圧が送られ続ける。
【0117】
その結果、例えば時刻t3においてブレーキスイッチ(SW)36aがオフして運転者がブレーキペダル36から足を離してエンジン(ENG)10の始動要求がなされ、時間t4だけ始動ディレイ(DLY)が生じて油圧ポンプ46aからの油圧供給動作が遅れたとしても、ディスクブレーキ34のキャリパ圧の供給は継続される。
【0118】
従って、EOP46wの故障によって発進応答性に遅れが生じたとしても、検出された液圧がブレーキ保持液圧を下回ったときは設定された保持時間の間はディスクブレーキ34を動作させるので、車両14が登降坂路で停止した場合でも後退を確実に防止することができる。
【0119】
また、前記制動保持手段は、前記保持時間1,2(所定時間)を、前記EOP46wが故障と判定された場合には故障と判定されない場合に比して大きな値に決定する如く構成したので、上記した効果に加え、EOP46wが故障しているときの発進応答性の遅れによる車両14の後退を一層確実に防止することができる。
【0120】
また、前記制動保持手段は、前記走行路の勾配から前記保持時間1,2(所定時間)を決定する(S104,S106S104、S108)如く構成したので、上記した効果に加え、EOP46wが故障しているときの登降坂路での発進応答性の遅れによる車両14の後退を一層確実に防止することができる。
【0121】
また、前記しきい値決定手段は、前記走行路の勾配が所定値(微小値(5%))以下のとき、前記しきい値を前記EOP46wが故障と判定された場合と故障と判定されない場合とで同一の値に決定する如く構成したので、上記した効果に加え、ディスクブレーキ3434の操作で運転者に違和感を与えることがない。
【0122】
即ち、しきい値を走行路の勾配から、図5に示す如く、勾配の増加につれて増加するように決定することで車両14が登降坂路でアイドルストップした場合の発進応答性の遅れによる車両14の後退を防止できるが、走行路の勾配が所定値以下の例えば平坦路(あるいはほぼ平坦路)にあってはそのような車両14の後退の恐れがない。
【0123】
従って、平坦路(あるいはほぼ平坦路)などでしきい値をEOP46wが故障と判定された場合と否とで同一の値に決定することで、運転者はディスクブレーキ34に同一の踏力を与えるのみでディスクブレーキ34の検出液圧がしきい値を超えてアイドルストップさせることが可能となり、EOP46wが故障と判定された場合と否とで必要な踏力が相違するなどの違和感を与えることがない。
【0124】
尚、上記においてブレーキ許可液圧1,2(第1のしきい値)を走行路の勾配から予め設定された特性を検索して算出(決定)するようにしたが、それに限られるものではなく、走行路の勾配から演算などで直接算出(決定)しても良い。
【0125】
また、ブレーキ保持液圧1,2(第2のしきい値)も走行路の勾配から予め設定された特性を検索して算出(決定)するようにしたが、それに限られるものではなく、走行路の勾配から演算などで直接算出(決定)しても良い。保持時間1,2(所定時間)も同様である。
【0126】
また、ディスクブレーキ34の液圧をマスタシリンダ圧から検出するようにしたが、それに代え、キャリパ圧など、ディスクブレーキ34の液圧を示すパラメータであれば、どのようなものから検出しても良い。
【0127】
また、自動変速機としてCVTを図示したが、それに限られるものではなく、有段変速機であっても良い。さらにCVTも無端可撓部材がベルトに限られるものではなく、チェーンであっても良い。
【符号の説明】
【0128】
10 エンジン(内燃機関)、12 駆動輪、14 車両、16 DBW機構、24 トルクコンバータ、26 自動変速機(CVT)、28 前後進切換装置、34 ディスクブレーキ(制動装置)、36 ブレーキペダル、38 マスタバック、40 マスタシリンダ、42 ブレーキ液圧供給機構、42b リニアソレノイドバルブ、46 変速機油圧供給機構、46a 油圧ポンプ、46w EOP(電動油圧ポンプ)、66 エンジンコントローラ、76 Vセンサ、80 液圧センサ、82 油圧センサ、86 傾斜センサ、90 シフトコントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されるエンジンと、前記エンジンで駆動される油圧ポンプと、前記油圧ポンプから供給される油圧で動作して前記エンジンの出力を変速して駆動輪に伝達する自動変速機と、所定の許可条件が成立したときに前記エンジンのアイドルストップを実行する車両の制御装置において、電動モータで駆動されて前記自動変速機に油圧を供給する電動油圧ポンプと、前記電動油圧ポンプの故障を判定する電動油圧ポンプ故障判定手段と、制動装置の液圧を検出する液圧検出手段と、しきい値を走行路の勾配から決定すると共に、前記電動油圧ポンプ故障判定手段によって前記電動油圧ポンプが故障と判定された場合には故障と判定されない場合に比して大きな値に決定するしきい値決定手段と、前記所定の許可条件が成立したと判断されると共に、前記検出された液圧が前記決定されたしきい値を超えるとき、前記アイドルストップの実行を許可するアイドルストップ許可手段とを備えることを特徴とする車両の制御装置。
【請求項2】
前記検出された液圧が第2のしきい値未満と判断されるとき、前記制動装置の制動力を所定時間だけ保持させる制動保持手段と、前記第2のしきい値を前記電動油圧ポンプが故障と判定された場合には故障と判定されない場合に比して大きな値に決定する第2しきい値決定手段とを備えることを特徴とする請求項1記載の車両の制御装置。
【請求項3】
前記第2しきい値決定手段は、前記走行路の勾配から前記第2のしきい値を決定することを特徴とする請求項2記載の車両の制御装置。
【請求項4】
前記制動保持手段は、前記所定時間を、前記電動油圧ポンプが故障と判定された場合には故障と判定されない場合に比して大きな値に決定することを特徴とする請求項2記載の車両の制御装置。
【請求項5】
前記制動保持手段は、前記走行路の勾配から前記所定時間を決定することを特徴とする請求項2または4記載の車両の制御装置。
【請求項6】
前記しきい値決定手段は、前記走行路の勾配が所定値以下のとき、前記しきい値を前記電動油圧ポンプが故障と判定された場合と故障と判定されない場合とで同一の値に決定することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の車両の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−24250(P2013−24250A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−156093(P2011−156093)
【出願日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】