説明

車両の吸気音導入装置

【課題】吸気音を効率良く車室内に導入可能とするとともに、レイアウトの自由度を向上可能な車両の吸気音導入装置を提供する。
【解決手段】ボンネットフード2の下面に取り付けられた内張り部材12を備える吸気音導入装置1において、内張り部材12の構成を、エンジンルーム4側に向けて開口してエアクリーナ20のボンネットフード2と対向する面に設けられた吸気経路側開口部22と対向するエンジンルーム側開口部14と、ダッシュパネル8側に開口してエアボックス10と対向する位置に配置されるダッシュパネル側開口部16と、内張り部材12の一部とボンネットフード2との間に形成された空洞内に形成されてエンジンルーム側開口部14とダッシュパネル側開口部16を連通させる連通経路24を有する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、自動車等の吸気系から発生する吸気音の音質向上を図るための吸気音導入装置に関し、レイアウトの自由度を向上可能な車両の吸気音導入装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から用いられている車両の吸気音導入装置としては、例えば、特許文献1に記載されているものがある。この吸気音導入装置は、エンジンルーム内のダッシュパネル側を区画して第二エンジンルームを構成し、エンジンルーム内からフェンダー内部を経由し、更に第二エンジンルーム内を通るようにして、エンジンへの吸気通路の外気導入部の側壁開口部と、運転席側のダッシュパネル上部とをフレキシブルチューブで連結している。
このような構成の吸気音導入装置であれば、加速時等に発生する吸気音を、効率良く居室内に導入することが可能となるため、スポーティなサウンドを演出することが可能となる。
【特許文献1】特開2004―218458号公報(第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載の吸気音導入装置は、エンジンルーム内に第二エンジンルームを構成する必要があるため、エンジンルーム内の空間に余裕が無い車両には、適用が困難となるという問題が発生するおそれがある。
また、エンジンルーム内にフレキシブルチューブを配置する必要があるため、エンジンルーム内の空間に余裕が無い車両には、適用が困難となるという問題が発生するおそれがある。
本発明は、上記のような問題点に着目してなされたもので、エンジンルーム内の既存のスペースを利用することにより、吸気音を効率良く車室内に導入可能とするとともに、レイアウトの自由度を向上可能な車両の吸気音導入装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、本発明は、エンジンルームを上方から覆うボンネットフードの下面に取り付けられる内張り部材を備える車両の吸気音導入装置であって、
前記内張り部材は、当該内張り部材を貫通して前記エンジンルーム側に向けて開口するエンジンルーム側開口部と、前記内張り部材を貫通してダッシュパネル側に向けて開口するダッシュパネル側開口部と、を有し、
前記ボンネットフードと前記内張り部材との間の少なくとも一部に、前記エンジンルーム側開口部と前記ダッシュパネル側開口部とを連通させる連通経路を形成したことを特徴とする車両の吸気音導入装置を提供するものである。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、エンジンルーム内に既存の部材である内張り部材によって、エンジンルーム内で発生する吸気音を効率良く車室内へ導入することが可能となるとともに、レイアウトの自由度を向上させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
(第一実施形態)
(構成)
図1は、本実施形態の吸気音導入装置1を搭載した車両Cを上方から見た状態を示す図であり、図2は、吸気音導入装置1を搭載した車両Cを、図1中に記載した矢印IIの方向から見た図である。
図1及び図2中に示すように、本実施形態の吸気音導入装置1は、ボンネットフード2が閉じた状態で、エンジンルーム4内に配置されている。
エンジンルーム4は、車室6の車両前後方向の前方に設けられており、ダッシュパネル8によって車室6と隔離されている。
【0007】
ダッシュパネル8のエンジンルーム4側の面のうち、ダッシュパネル8の上側の部分(ダッシュアッパーパネル)には、エアボックス10が取り付けられている。
ボンネットフード2は板状に形成されており、閉じた状態でエンジンルーム4を上方から覆い、開いた状態でエンジンルーム4を上方へ開放するように、開閉自在に車両Cへ取り付けられている。ボンネットフード2の下面には、内張り部材12が取り付けられている。
【0008】
内張り部材12は、エンジンルーム4内に既存の部材であり、例えば、フェルト等を圧縮して形成された吸音材によって形成され、エンジンルーム側開口部14と、ダッシュパネル側開口部16とを有している。
エンジンルーム側開口部14は、内張り部材12を貫通してエンジンルーム4側に向けて開口しており、外気からエンジン(図示せず)への吸気経路をなす吸気ダクト18に備えられたエアクリーナ20の、ボンネットフード2と対向する面に設けられた吸気経路側開口部22と対向している。
【0009】
ダッシュパネル側開口部16は、内張り部材12を貫通してダッシュパネル8側に開口しており、エアボックス10と対向する位置に配置されている。
内張り部材12の一部は、下方に突出してボンネットフード2との間に隙間を有しており、この隙間が、エンジンルーム側開口部14と、ダッシュパネル側開口部16とを連通させる連通経路24を形成している。
【0010】
図3は、図1のIII―III線断面図であり、内張り部材12のボンネットフード2への取り付け状態を示す図である。
図3中に示すように、内張り部材12は、ボンネットフード2の下面に、複数の止め具26を用いて取り付けられている。ボンネットフード2の下面には、各止め具26の先端側が取り付けられる複数の取り付け部28が形成されている。
【0011】
内張り部材12のうち、ボンネットフード2とともに連通経路24を形成する部分は、内張り部材12を成形する際に、連通経路24を形成する部分を下方に突出するようにプレス成形することにより、内張り部材12のその他の部分と一体成形されている。すなわち、内張り部材12のうち、ボンネットフード2とともに連通経路24を形成する部分は、図4に示すような従来の内張り部材12のうち、隣り合う二つの取り付け部28間の部分のみをプレス成形することにより、内張り部材12のその他の部分と一体成形されている。内張り部材12のうち、ボンネットフード2とともに連通経路24を形成する部分は、その車幅方向の両端部が、それぞれ、隣り合う二つの取り付け部28の近傍に配置されるように形成されている。なお、図4は、従来の内張り部材12及び内張り部材12が取り付けられたボンネットフード2を、車両前後方向の前方から見た状態を示す図である。
【0012】
内張り部材12が取り付けられるエンジンルーム4内のスペースとしては、歩行者保護の要件により、ボンネットフード2とエンジンとの間に形成された隙間を用いている。このため、内張り部材12が配置されるエンジンルーム4内において、内張り部材12のうち、ボンネットフード2とともに連通経路24を形成する部分、すなわち、下方に突出した部分を配置するためのスペースは、容易に確保することが可能である。
【0013】
図5は、図2中に符号Vで示した円の内部及びその周辺の拡大図である。
図5中に示すように、吸気経路側開口部22は、弾性膜部材30によって閉塞されている。
弾性膜部材30は、例えば、ゴム等の弾性体によって円板状に形成されており、エンジンの吸気工程における吸気ダクト18内の吸気脈動に応じて、弾性膜部材30の面外方向(図2中に記載した「上下方向」と同一の方向)へ弾性変形する。
【0014】
エアクリーナ20は、例えば、オイルフィルター等のフィルター部32を有しており、外気から導入されエアクリーナ20内を通過してエンジンへ吸気される気体を、フィルター部32を通過させることにより清浄化する。
吸気ダクト18は、ダストサイド側吸気ダクト34と、クリーンサイド側吸気ダクト36とから構成されている。ダストサイド側吸気ダクト34の一方の開口端は、エアクリーナ20に連結されており、ダストサイド側吸気ダクト34の他方の開口端は、外気中に開放されている。
【0015】
クリーンサイド側吸気ダクト36の一方の開口端は、エアクリーナ20に連結されており、クリーンサイド側吸気ダクト36の他方の開口端は、エンジンに連結されている。
エンジンルーム側開口部14と吸気経路側開口部22との間には、エンジンルーム側遮蔽材38が配置されている。エンジンルーム側遮蔽材38は、ボンネットフード2が閉じた状態において、エンジンルーム側開口部14と吸気経路側開口部22とを連通するとともに、エンジンルーム側開口部14と吸気経路側開口部22との間に形成される空間を、外気から隔離している。
【0016】
図6は、図2中に符号VIで示した円の内部及びその周辺の拡大図である。
図6中に示すように、ダッシュパネル側開口部16とエアボックス10の外周面との間には、エアボックス側連通部材40が配置されている。エアボックス側連通部材40は、ダッシュパネル側開口部16と、エアボックス10の外周面に設けられたエアボックス側開口部42とを連通させている。エアボックス側開口部42は、ダッシュパネル側開口部16に開口している。
【0017】
また、エアボックス側連通部材40は、蛇腹状に形成され、軸方向への伸縮性とともに径方向への可撓性を有するエアボックス側遮蔽材44を備えている。エアボックス側遮蔽材44の両端は、それぞれ、内張り部材12及びエアボックス10に固定されており、ボンネットフード2の開閉時において、ダッシュパネル側開口部16とエアボックス側開口部42との間に形成される空間を、外気から隔離する。
【0018】
(動作)
次に、吸気音導入装置1の動作について説明する。
エンジンの吸気工程においては、ダストサイド側吸気ダクト34からエアクリーナ20を経由してクリーンサイド側吸気ダクト36内に存在する気体が、エンジンが備えるシリンダー(図示せず)内へ吸気される(図2参照)。
ここで、エンジンは、吸気動作に伴って、クリーンサイド側吸気ダクト36内に存在する気体に吸気脈動を発生させる圧力源をなしており、この吸気脈動が吸気音を構成する。エンジンの吸気動作に伴って発生する吸気脈動は、クリーンサイド側吸気ダクト36内に存在する気体に発生する圧力変動であり、この圧力変動は、複数の周波数の圧力変動から構成されている。すなわち、エンジンの吸気動作に伴って発生する吸気脈動は、複数の周波数の吸気脈動から構成されている。
【0019】
クリーンサイド側吸気ダクト36内に発生した吸気脈動は、クリーンサイド側吸気ダクト36から、エアクリーナ20へ伝播され、エアクリーナ20へ伝播された吸気脈動に応じて、弾性膜部材30が面外方向へ弾性変形する(図2参照)。
弾性膜部材30が面外方向へ弾性変形すると、この弾性変形を介して、エアクリーナ20へ伝播された吸気脈動が、エンジンルーム側遮蔽材38内を経由し、エンジンルーム側開口部14を通過する(図2参照)。
【0020】
ここで、エンジンルーム側遮蔽材38は、エンジンルーム側開口部14と吸気経路側開口部22とを連通しているため、エンジンルーム側遮蔽材38内を経由し、エンジンルーム側開口部14を通過する吸気脈動は、効率良く連通経路24へ伝播される(図3参照)。
また、エンジンルーム側遮蔽材38は、エンジンルーム側開口部14と吸気経路側開口部22との間に形成される空間を、外気から隔離している。このため、エンジンルーム4内で発生する放射音等、車室6へ導入することが望ましくない騒音が、連通経路24へ伝播されることが防止されるとともに、エンジンルーム4内に存在する高温の空気が、連通経路24へ導入されることが防止されている(図5参照)。
【0021】
エンジンルーム側開口部14を通過した吸気脈動は、連通経路24へ伝播され、連通経路24へ伝播された吸気脈動は、ダッシュパネル側開口部16を通過する(図2参照)。
ここで、連通経路24を有する内張り部材12は、フェルト等を圧縮して形成された吸音材によって形成されている。このため、エンジンの吸気動作に伴って発生する吸気脈動を構成する複数の周波数の吸気脈動のうち、不快に感じられるおそれのある高周波の吸気脈動が、内張り部材12によって吸音される(図3参照)。
ダッシュパネル側開口部16を通過した吸気脈動は、エアボックス側連通部材40を経由して、エアボックス側開口部42を通過し、エアボックス10内へ伝播される(図2参照)。
【0022】
ここで、エアボックス側連通部材40が備えるエアボックス側遮蔽材44は、ダッシュパネル側開口部16とエアボックス側開口部42との間に形成される空間を、外気から隔離している。このため、エアボックス側連通部材40を経由して、エアボックス側開口部42を通過する吸気脈動によって構成される吸気音が、外気へ放出されることが防止されるとともに、エンジンルーム4内に存在する高温の空気が、エアボックス側連通部材40へ導入されることが防止されている(図6参照)。
エアボックス10内へ吸気脈動が伝播されると、この吸気脈動によって構成される吸気音は、エアボックス10及びダッシュパネル8を介して車室6内に伝播されて、迫力感のある吸気音が車室6内へ導入される(図2参照)。
【0023】
(応用例)
なお、本実施形態の吸気音導入装置1では、エアボックス側連通部材40が備えるエアボックス側遮蔽材44を、軸方向への伸縮性とともに径方向への可撓性を有するとともに、エアボックス側遮蔽材44の両端が、それぞれ、内張り部材12及びエアボックス10に固定されている構成としたが、エアボックス側遮蔽材44の構成は、これに限定されるものではい。すなわち、例えば、図7に示すように、エアボックス側遮蔽材44を、一方の端部のみが内張り部材12に固定され、他方の端部がエアボックス10に固定されていない構成としてもよい。この場合、ボンネットフード2が開いた状態では、ダッシュパネル側開口部16とエアボックス側開口部42との間に形成される空間が、外気に開放され、ボンネットフード2が閉じた時のみ、ダッシュパネル側開口部16とエアボックス側開口部42との間に形成される空間が、外気から隔離されることとなる。要は、エアボックス側遮蔽材44の構成は、少なくともボンネットフード2が閉じた状態において、ダッシュパネル側開口部16とエアボックス側開口部42との間に形成される空間が、外気から隔離される構成であればよい。
【0024】
また、本実施形態の吸気音導入装置1では、内張り部材12のうち、ボンネットフード2とともに連通経路24を形成する部分を、その車幅方向の両端部が、それぞれ、隣り合う二つの取り付け部28の近傍に配置されるように形成したが、内張り部材12の構成は、これに限定されるものではない。すなわち、内張り部材12を形成する材料の、面外方向への剛性が高い場合等は、例えば、図8に示すように、内張り部材12のうち、ボンネットフード2とともに連通経路24を形成する部分を、その車幅方向の両端部のうち一方のみが、隣り合う取り付け部28の近傍に配置されるように形成してもよい。同様に、例えば、図9に示すように、内張り部材12のうち、ボンネットフード2とともに連通経路24を形成する部分を、その車幅方向の両端部が、隣り合う取り付け部28の近傍から離れた位置に配置されるように形成してもよい。
【0025】
また、本実施形態の吸気音導入装置1では、内張り部材12の構成を、内張り部材12のうち、ボンネットフード2とともに連通経路24を形成する部分が、隣り合う二つの取り付け部28間の部分のみに形成されている構成としたが、内張り部材12の構成は、これに限定されるものではない。すなわち、内張り部材12の構成を、例えば、図10に示すように、内張り部材12のうち、ボンネットフード2とともに連通経路24を形成する部分が、車幅方向の全体に亘って形成されている構成としてもよい。要は、連通経路24は、ボンネットフード2と内張り部材12との間の少なくとも一部に形成されていればよく、連通経路24の壁面の少なくとも一部が、内張り部材12によって形成されていればよい。
【0026】
また、本実施形態の吸気音導入装置1では、エアボックス側連通部材40の構成を、エアボックス側遮蔽材44を備えた構成としたが、これに限定されるものではなく、エアボックス側連通部材40の構成を、エアボックス側遮蔽材44を備えていない構成としてもよい。もっとも、本実施形態の吸気音導入装置1のように、エアボックス側連通部材40の構成を、エアボックス側遮蔽材44を備えた構成とすることが、エアボックス側開口部42を通過する吸気脈動によって構成される吸気音が、外気へ放出されることが防止されるとともに、エンジンルーム4内に存在する高温の空気が、エアボックス側連通部材40へ導入されることが防止されるため、好適である。
【0027】
また、本実施形態の吸気音導入装置1では、エンジンルーム側開口部14と吸気経路側開口部22との間に、エンジンルーム側遮蔽材38を配置したが、これに限定されるものではなく、エンジンルーム側開口部14と吸気経路側開口部22との間に、エンジンルーム側遮蔽材38が配置されていない構成としてもよい。もっとも、本実施形態の吸気音導入装置1のように、エンジンルーム側開口部14と吸気経路側開口部22との間に、エンジンルーム側遮蔽材38を配置することが、エンジンルーム側開口部14を通過する吸気脈動が、効率良く連通経路24へ伝播されるため、好適である。また、車室6へ導入することが望ましくない騒音が、連通経路24へ伝播されることが防止されるとともに、エンジンルーム4内に存在する高温の空気が、連通経路24へ導入されることが防止されるため、好適である。
【0028】
また、本実施形態の吸気音導入装置1では、ダッシュパネル8のエンジンルーム4側の面に、エアボックス10が取り付けられている構成としたが、これに限定されるものではなく、ダッシュパネル8のエンジンルーム4側の面に、エアボックス10が取り付けられていない構成としてもよい。もっとも、本実施形態の吸気音導入装置1のように、ダッシュパネル8のエンジンルーム4側の面に、エアボックス10を取り付けることが、ダッシュパネル側開口部16を通過した吸気脈動によって構成される吸気音が、エアボックス10及びダッシュパネル8を介して効率良く車室6内に伝播されるため、好適である。
【0029】
また、本実施形態の吸気音導入装置1では、エアボックス10の外周面に、ダッシュパネル側開口部16に向けて開口するエアボックス側開口部42を設けたが、エアボックス10の構成は、これに限定されるものではなく、エアボックス10の構成を、エアボックス側開口部42を設けていない構成としてもよい。もっとも、本実施形態の吸気音導入装置1のように、エアボックス10の外周面にエアボックス側開口部42を設けることが、ダッシュパネル側開口部16を通過し、エアボックス側連通部材40を経由して、エアボックス側開口部42を通過した吸気脈動がエアボックス10内へ効率良く伝播されるため、好適である。
【0030】
また、本実施形態の吸気音導入装置1では、エンジンルーム側開口部14が、エアクリーナ20に設けられた吸気経路側開口部22と対向しているが、エンジンルーム側開口部14が対向する位置は、これに限定されるものではない。すなわち、例えば、エンジンルーム側開口部14が、エアクリーナ20のうち、吸気経路側開口部22が設けられていない部分と対向していてもよい。要は、エンジンルーム側開口部14は、エンジンルーム4側に向けて開口していればよい。
【0031】
また、本実施形態の吸気音導入装置1では、吸気経路側開口部22が、弾性膜部材30によって閉塞されているが、これに限定されるものではなく、弾性膜部材30を備えない構成として、吸気経路側開口部22が、外気へ開放されていてもよい。もっとも、本実施形態の吸気音導入装置1のように、吸気経路側開口部22を弾性膜部材30によって閉塞することが、エンジンルーム4内及び内張り部材12内に存在する高温の空気が、エアクリーナ20内へ導入されることが防止されるため、好適である。
【0032】
また、本実施形態の吸気音導入装置1では、内張り部材12を吸音材によって形成したが、内張り部材12を形成する材料は、これに限定されるものではない。すなわち、例えば、内張り部材12を形成する材料を、吸音材以外の材料としてもよい。もっとも、本実施形態の吸気音導入装置1のように、内張り部材12を吸音材によって形成することが、エンジンの吸気動作に伴って発生する吸気脈動を構成する複数の周波数の吸気脈動のうち、不快に感じられるおそれのある高周波の吸気脈動が、内張り部材12によって吸音されるため、好適である。
【0033】
また、本実施形態の吸気音導入装置1では、吸気経路側開口部22がエアクリーナ20に設けられているが、吸気経路側開口部22を設ける位置は、これに限定されるものではない。すなわち、例えば、吸気経路側開口部22を、クリーンサイド側吸気ダクト36の外周面に設けてもよい。
また、本実施形態の吸気音導入装置1では、ダッシュパネル側開口部16とエアボックス10の外周面との間に、エアボックス側連通部材40を配置したが、これに限定されるものではなく、ダッシュパネル側開口部16とエアボックス10の外周面との間に、エアボックス側連通部材40を配置しなくともよい。
【0034】
また、本実施形態の吸気音導入装置1では、内張り部材12が、車室6の車両前後方向の前方に設けられるとともに、ダッシュパネル8によって車室6と隔離されたエンジンルーム4内に配置されている構成としたが、内張り部材12を配置する場所は、これに限定されるものではない。すなわち、例えば、車両の構成が、エンジンルーム4が車室6よりも車両前後方向の後方に設けられている構成である場合、内張り部材12を配置する場所を、車室6よりも車両前後方向の後方に設けられているエンジンルーム4内に配置してもよい。また、例えば、車両の構成が、エンジンルーム4が車室6よりも下方に設けられている構成である場合、内張り部材12を配置する場所を、車室6よりも下方に設けられているエンジンルーム4内に配置してもよい。要は、内張り部材12を配置する場所は、車両の構成、具体的には、エンジンルーム4の位置に応じて、適宜変更することが可能である。
【0035】
(第一実施形態の効果)
(1)本実施形態の吸気音導入装置では、ボンネットフードの下面に取り付けられる内張り部材を、エンジンルーム側に向けて開口するエンジンルーム側開口部と、ダッシュパネル側に向けて開口するダッシュパネル側開口部とを有する構成とし、ボンネットフードと内張り部材との間の一部に、エンジンルーム側開口部とダッシュパネル側開口部とを連通させる連通経路を形成している。
【0036】
このため、エンジンルーム内において発生する吸気音を構成する吸気脈動が、エンジンルーム側開口部を通過し、連通経路を経由して、ダッシュパネル側開口部を通過し、ダッシュパネルへ伝播されることとなる。
その結果、エンジンルーム内において発生する吸気音を、車室内へ効率良く導入することが可能となる。また、内張り部材はエンジンルーム内に既存の部材であるため、内張り部材を取り付けるために、エンジンルーム内に新たなスペースを確保する必要が無く、レイアウトの自由度を向上可能となる。
【0037】
(2)また、本実施形態の吸気音導入装置では、エンジンルーム側遮蔽材が、エンジンルーム側開口部と吸気経路側開口部とを連通しているため、エンジンルーム側遮蔽材内を経由し、エンジンルーム側開口部を通過する吸気脈動が、効率良く連通経路へ伝播される。
その結果、車室内へ導入される吸気音の音質を向上させることが可能となる。
【0038】
(3)また、本実施形態の吸気音導入装置では、エンジンルーム側遮蔽材が、エンジンルーム側開口部と吸気経路側開口部との間に形成される空間を、外気から隔離している。
このため、エンジンルーム内で発生する放射音等、車室へ導入することが望ましくない騒音が、連通経路へ伝播されることが防止されるとともに、エンジンルーム内に存在する高温の空気が、連通経路へ導入されることが防止されている。
その結果、車室内へ導入される吸気音の音質を向上させることが可能となる。また、車室内の温度が高温となることを防止することが可能となるとともに、連通経路内への異物の侵入を防止することが可能となる。
【0039】
(4)また、本実施形態の吸気音導入装置では、連通経路を有する内張り部材が、フェルト等を圧縮して形成された吸音材によって形成されているため、エンジンの吸気動作に伴って発生する吸気脈動を構成する複数の周波数の吸気脈動のうち、不快に感じられるおそれのある高周波の吸気脈動が、内張り部材によって吸音される。
その結果、車室内へ導入される吸気音の音質を向上させることが可能となる。
【0040】
(5)また、本実施形態の吸気音導入装置では、エアボックス側連通部材が備えるエアボックス側遮蔽材が、ダッシュパネル側開口部とエアボックス側開口部との間に形成される空間を、外気から隔離している。
このため、ダッシュパネル側開口部からエアボックス側開口部へ移動する吸気脈動によって構成される吸気音が、外気へ放出されることが防止されるとともに、エンジンルーム内に存在する高温の空気が、エアボックス側連通部材へ導入されることが防止されている。
その結果、車外への吸気音の漏洩を防止することが可能となるため、車外騒音を低減させることが可能となるとともに、車室内へ導入される吸気音の音質を向上させることが可能となる。また、車室内の温度が高温となることを防止することが可能となるとともに、エアボックス内への異物の侵入を防止することが可能となる。
【0041】
(6)また、本実施形態の吸気音導入装置では、エアクリーナに設けられた吸気経路側開口部が、弾性膜部材によって閉塞されているため、エンジンルーム内に存在する高温の空気が、エアクリーナ内へ導入されることが防止されるとともに、エアクリーナ内への異物の侵入を防止することが可能となる。
【0042】
(7)また、本実施形態の吸気音導入装置では、エアボックス側連通部材が備えるエアボックス側遮蔽材が、軸方向への伸縮性とともに径方向への可撓性を有しているとともに、エアボックス側遮蔽材の両端が、それぞれ、内張り部材及びエアボックスに固定されている。
このため、ボンネットフードの開閉時の両方において、ダッシュパネル側開口部とエアボックス側開口部との間に形成される空間を、外気から隔離することが可能となる。
その結果、エアボックス内への異物の侵入を恒常的に防止することが可能となる。
【0043】
(8)また、本実施形態の吸気音導入装置では、エアボックスの外周面にエアボックス側開口部が設けられているとともに、エアボックス側連通部材が、ダッシュパネル側開口部とエアボックス側開口部とを連通させている。
このため、ダッシュパネル側開口部を通過し、エアボックス側連通部材を経由してエアボックス側開口部を通過する吸気脈動が、効率良くエアボックス内へ伝播され、車室内へ導入される吸気音の音質を向上させることが可能となる。
【0044】
(第二実施形態)
(構成)
次に、本発明の第二実施形態について説明する。
図11は、本実施形態の吸気音導入装置1の構成を示す図である。
図11中に示すように、本実施形態の吸気音導入装置1の構成は、以下の点を除き、上述した第一実施形態と同様の構成となっている。すなわち、本実施形態の吸気音導入装置1は、内張り部材12の下面に、連通経路構成部材46が取り付けられている。連通経路構成部材46は、内張り部材12の下面において、内張り部材12と共に、複数の止め具26を用いてボンネットフード2の下面に取り付けられている。
【0045】
図12は、連通経路構成部材46を示す図である。
図12中に示すように、連通経路構成部材46は、車両前後方向から見て下方へ突出する形状に形成されており、内張り部材12との間に車両上下方向の隙間を有している。この隙間の車両前後方向前方の開口端は、エンジンルーム側に向けて開口するエンジンルーム側開口部(図示せず)を形成しており、隙間の車両前後方向後方の開口端は、ダッシュパネル側に向けて開口するダッシュパネル側開口部(図示せず)を形成している。また、連通経路構成部材46と内張り部材12との間の隙間によって形成される空間のうち、隣り合う二つの取り付け部28間に形成される空間は、全体として、エンジンルーム側開口部とダッシュパネル側開口部とを連通させる連通経路24を形成している。
【0046】
内張り部材12は、全体として、ボンネットフード2の形状に沿って形成されており、ボンネットフード2の下面に、複数の止め具26を用いて取り付けられている。ボンネットフード2の下面には、各止め具26の先端側が取り付けられる取り付け部28が形成されている。
その他の構成は、上述した第一実施形態と同様である。
【0047】
(動作)
次に、本実施形態の吸気音導入装置1の動作について説明する。なお、以下の説明では、連通経路構成部材46以外の構成については、上述した第一実施形態と同様であるため、異なる部分の動作を中心に説明する。
エンジンの吸気工程において、クリーンサイド側吸気ダクト36内に発生した吸気脈動は、クリーンサイド側吸気ダクト36から、エアクリーナ20へ伝播され、エアクリーナ20へ伝播された吸気脈動に応じて、弾性膜部材30が面外方向へ弾性変形する(図2参照)。
【0048】
弾性膜部材30が面外方向へ弾性変形すると、この弾性変形を介して、エアクリーナ20へ伝播された吸気脈動が、エンジンルーム側遮蔽材38内を経由し、エンジンルーム側開口部14を通過して、連通経路24へ伝播され、ダッシュパネル側開口部16を通過する(図2参照)。
ダッシュパネル側開口部16を通過した吸気脈動は、エアボックス側連通部材40を経由して、エアボックス側開口部42を通過し、エアボックス10内へ伝播され、この吸気脈動によって構成される吸気音が、エアボックス10及びダッシュパネル8を介して車室6内に伝播されて、迫力感のある吸気音が車室6内へ導入される(図2参照)。
【0049】
(応用例)
なお、本実施形態の吸気音導入装置1では、連通経路構成部材46と内張り部材12との間の隙間によって形成される空間のうち、隣り合う二つの取り付け部28間に形成される空間が、全体として連通経路24を形成している構成としたが、これに限定されるものではない。すなわち、例えば、連通経路構成部材46と内張り部材12との間の隙間によって形成される空間のうち、隣り合う二つの取り付け部28間に形成される空間の一部が、連通経路24を形成している構成としてもよい。要は、連通経路24は、内張り部材12と連通経路構成部材46との間の少なくとも一部に形成されていればよい。
【0050】
(第二実施形態の効果)
(1)本実施形態の吸気音導入装置では、内張り部材の下方側に取り付けられている連通経路構成部材が、エンジンルーム側開口部と、ダッシュパネル側開口部とを有している。また、連通経路構成部材と内張り部材との間の隙間によって形成される空間のうち、隣り合う二つの取り付け部間に形成される空間が、エンジンルーム側開口部とダッシュパネル側開口部とを連通させる連通経路を形成している。
【0051】
このため、エンジンルーム側開口部と、ダッシュパネル側開口部及び連通経路よりも上方に、内張り部材が配置されることとなり、連通経路内を通過する吸気脈動によって構成される吸気音が、ボンネットフードを透過して車外へ放出されることを防止することが可能となる。
その結果、車外騒音を低減させることが可能となるとともに、連通経路を経由する吸気脈動を、効率良く車室へ伝播させることが可能となるため、車室内へ導入される吸気音の音質を向上させることが可能となる。
【0052】
(第三実施形態)
(構成)
次に、本発明の第三実施形態について説明する。
図13は、本実施形態の吸気音導入装置1の構成を示す図である。
図13中に示すように、本実施形態の吸気音導入装置1の構成は、以下の点を除き、上述した第一実施形態と同様の構成となっている。すなわち、本実施形態の吸気音導入装置1は、エアクリーナ20の内部に配置された二次音源48と、この二次音源48に接続された位相制御手段(図示せず)とを備えている。
【0053】
二次音源48は、例えば、スピーカー等の音声を出力可能な機材によって形成されており、クリーンサイド側吸気ダクト36内の吸気脈動と同相または逆相、すなわち、クリーンサイド側吸気ダクト36内の吸気音と干渉する二次音源出力音を、連通経路24内へ出力する機能を有している。二次音源48から二次音源出力音が出力される方向は、上方、すなわち、エンジンルーム側開口部14へ向けられている。二次音源48が出力する二次音源出力音の位相は、位相制御手段によって制御されている。
【0054】
図14は、位相制御手段50による二次音源出力音の位相の制御システムを示す図である。
図14中に示すように、位相制御手段50は、エンジン52に取り付けられたクランクシャフト角度センサー(図示せず)と、スロットルバルブ54に取り付けられたスロットル開度センサー(図示せず)と、二次音源48と接続されている。
クランクシャフト角度センサーは、クランクシャフト56に設けられたロータ(図示せず)の信号波を検出し、その検出した信号波に含まれるパルス信号を、クランクシャフトの角度を示すクランク角信号S1として、位相制御手段50へ送信する機能を有している。
スロットル開度センサーは、スロットルバルブ54の開度を検出し、この検出したスロットルバルブ54の開度に応じた電圧信号を、スロットルバルブ54の開度を示すスロットルバルブ開度信号S2として、位相制御手段50へ送信する機能を有している。
【0055】
以下、スロットルバルブ54及びスロットルバルブ54と関連する部分の構成について説明する。
スロットルバルブ54は、エアクリーナ20と吸気ポート58との間に取り付けられ、アクセルペダル(図示せず)と連結されており、アクセルペダルの踏み込み量に応じて、エアクリーナ20から吸気ポート58への通気量を増減させる。アクセルペダルの踏み込み量を減少させて、エアクリーナ20から吸気ポート58への通気量を減少させると、エンジン52の回転数が低下する。また、アクセルペダルの踏み込み量を増加させて、エアクリーナ20から吸気ポート58への通気量を増加させると、エンジン52の回転数が上昇する。
【0056】
エンジン52は、吸気工程において、ダストサイド側吸気ダクト34の他方の開口端から導入され、エアクリーナ20を通過することにより清浄化されてクリーンサイド側吸気ダクト36内に存在する気体を、吸気ポート58を介して、シリンダー60内へ吸気する。
位相制御手段50は、クランク角信号S1及びスロットルバルブ開度情報信号S2を受信すると、これらの信号に含まれる情報からエンジン52の駆動状態を検出する。そして、エンジン52の駆動状態に応じて、出力電圧制御マップ及び位相制御マップから読み取られた値に基づき、二次音源出力音の位相を決定する。
【0057】
また、位相制御手段50は、クリーンサイド側吸気ダクト36内の吸気脈動と位相を同相または逆相とした二次音源出力音を生成し、この生成した二次音源出力音を出力させる二次音源出力信号S3を、二次音源48へ送信する機能を有している。すなわち、位相制御手段50は、エンジン52の駆動状態に応じて二次音源出力音の位相を制御する機能を有している。出力電圧制御マップ及び位相制御マップの説明については、後述する。
【0058】
なお、本実施形態では、位相制御手段50は、エンジン52の駆動状態が、エンジン52の回転数が低い緩加速時である場合には、二次音源出力音の位相を、クリーンサイド側吸気ダクト36内の吸気脈動の位相と逆相としている。また、エンジン52の駆動状態が、エンジン52の回転数が高い急加速時である場合には、二次音源出力音の位相を、クリーンサイド側吸気ダクト36内の吸気脈動の位相と同相としている。
【0059】
図15は、クランク角信号S1及びスロットルバルブ開度信号S2の構成を示す図である。
図15中に示すように、クランク角信号S1は、クランクシャフト56の回転角(以下、「クランク角」と記載する)が10°CAの間隔となる毎にパルス信号が存在し、且つクランク角が180°CA毎に歯抜け信号SCが存在する信号である。歯抜け信号SCは、クランクシャフト56の回転位置を把握するための信号であり、シリンダー60内において、ピストン62が下死点及びその近傍の位置に存在する状態を示している。したがって、このクランク角信号S1は、エンジン52の回転速度と、クランクシャフト56の回転位置を検出することが可能な信号となっている。なお、図中に示す四箇所の「TDC」は、それぞれ、コンロッド64とクランクシャフト56が一直線に並んだ状態のうち、ピストン62が上死点にある状態を示している(図14参照)。
また、スロットルバルブ開度信号S2は、スロットルバルブ54の開度に応じた電圧信号Vsvが、スロットルバルブ54の開度に応じて増減する状態を示している。電圧信号Vsvの上限値は、5Vに設定されており、電圧信号Vsvの下限値は、0Vに設定されている。
【0060】
図16は、出力電圧制御マップ及び位相制御マップの構成を示す図である。なお、図16中では、出力電圧制御マップを「電圧マップVM」と記載して示しており、位相制御マップを「位相マップPM」と記載して示している。
図16中に示すように、電圧マップVM及び位相マップPMは、共に、横軸がエンジンの回転数(図中では、「ENG回転数」と記載)を示しており、縦軸がエンジンの負荷(図中では、「ENG負荷」と記載)を示している。横軸に示されているエンジンの回転数は、エンジン52の回転速度に応じた値となっており、縦軸に示されているエンジンの負荷は、スロットルバルブ54の開度に応じた電圧信号に応じた値となっている。
また、電圧マップVM及び位相マップPMは、共に、複数のマス目を有する格子状に形成されており、各マス目には、それぞれ、エンジン52の回転速度及びスロットルバルブ54の開度に応じた電圧信号に基づいて設定された位相が記載されている。
その他の構成は、上述した第一実施形態と同様である。
【0061】
(動作)
次に、本実施形態の吸気音導入装置1の動作について説明する。なお、以下の説明では、二次音源48及び位相制御手段50以外の動作については、上述した第一実施形態と同様であるため、異なる部分の動作を中心に説明する。
エンジン52を駆動させると、エンジン52に取り付けられたクランクシャフト角度センサーは、クランクシャフト56に設けられたロータの信号波を検出し、その検出した信号波に含まれるパルス信号を、クランクシャフトの角度を示すクランク角信号S1として、位相制御手段50へ送信する(図14参照)。
【0062】
また、スロットルバルブ54に取り付けられたスロットル開度センサーは、スロットルバルブ54の開度を検出し、この検出したスロットルバルブ54の開度に応じた電圧信号を、スロットルバルブ54の開度を示すスロットルバルブ開度信号S2として、位相制御手段50へ送信する(図14参照)。
クランク角信号S1及びスロットルバルブ開度情報信号S2を受信した位相制御手段50は、これらの信号に含まれる情報からエンジン52の駆動状態を検出する(図14参照)。
【0063】
以下に、位相制御手段50の具体的な動作を示す。
まず、クランク角信号S1に含まれる歯抜け信号SC、すなわち、クランク角が180°CA毎に存在する信号を検出し、歯抜け信号SC後の1パルス目の信号の立下りを、二次音源出力音の位相基準とする。さらに、歯抜け信号SCの発生周期から、エンジン52の回転速度を算出する(図15参照)。
また、位相制御手段50は、スロットルバルブ開度信号S2に含まれるスロットルバルブ54の開度に応じた電圧信号Vsvを検出する(図15参照)。そして、エンジン52の回転速度及びスロットルバルブ54の開度に応じた電圧信号に応じて、電圧マップVM及び位相マップPMに記載された位相を読み取り、この位相に基づいて、二次音源の位相を決定する(図16参照)。
【0064】
二次音源の位相を決定した位相制御手段50は、クリーンサイド側吸気ダクト36内の吸気脈動と位相を同相または逆相とした二次音源出力音を生成し、この生成した二次音源出力音を二次音源48から出力させる二次音源出力信号S3を、二次音源48へ送信する(図14参照)。
二次音源出力信号S3を受信した二次音源48は、クリーンサイド側吸気ダクト36内の吸気脈動と位相を同相または逆相とした二次音源出力音を、エアクリーナ20の内部からエンジンルーム側開口部14へ向けて出力する(図14参照)。
【0065】
エンジンの駆動中に、エンジンの吸気工程において、クリーンサイド側吸気ダクト36内に発生した吸気脈動は、クリーンサイド側吸気ダクト36から、エアクリーナ20へ伝播され、エアクリーナ20へ伝播された吸気脈動に応じて、弾性膜部材30が面外方向へ弾性変形する。そして、弾性膜部材30の弾性変形を介して、エアクリーナ20へ伝播された吸気脈動が、エンジンルーム側遮蔽材38内を経由し、エンジンルーム側開口部14を通過して、連通経路24へ伝播される(図2参照)。
【0066】
このとき、エアクリーナ20内に配置された二次音源48から、クリーンサイド側吸気ダクト36内の吸気脈動と位相を同相または逆相とした二次音源出力音が、エンジンルーム側開口部14へ向けて出力される(図14参照)。
ここで、二次音源48から出力された二次音源出力音の位相が、クリーンサイド側吸気ダクト36内の吸気脈動の位相と同相である場合、二次音源出力音とクリーンサイド側吸気ダクト36内の吸気脈動は、互いに打ち消しあうこととなる。したがって、吸気脈動によって構成される吸気音が消音されることとなる。
【0067】
また、二次音源48から出力された二次音源出力音の位相が、クリーンサイド側吸気ダクト36内の吸気脈動の位相と逆相である場合、二次音源出力音とクリーンサイド側吸気ダクト36内の吸気脈動は、互いに重畳することとなる。
したがって、吸気脈動によって構成される吸気音が増音されることとなり、増音された吸気音が、エアボックス10及びダッシュパネル8を介して車室6内に伝播されて、迫力感のある吸気音が車室6内へ導入される(図2参照)。
【0068】
(応用例)
なお、本実施形態の吸気音導入装置1では、二次音源48をエアクリーナ20内に配置したが、二次音源48を配置する位置は、これに限定されるものではなく、例えば、二次音源48を、連通経路内に配置してもよい。要は、二次音源48を配置する位置は、二次音源48から出力される二次音源出力音が、少なくとも連通経路内へ出力される位置であればよい。
また、本実施形態の吸気音導入装置1では、エンジン52の駆動状態を、クランクシャフト56の角度及びスロットルバルブ54の開度としたが、エンジン52の駆動状態は、これに限定されるものではなく、エンジン52の駆動状態を、例えば、車両の速度としてもよい。
【0069】
また、本実施形態の吸気音導入装置1では、エンジン52の駆動状態に応じて、連通経路24内へ出力される二次音源出力音の位相を、クリーンサイド側吸気ダクト36内の吸気脈動と同相または逆相に制御する構成としたが、これに限定されるものではない。すなわち、運転者による、車室6内に設けたスイッチ等の操作に応じて、連通経路24内へ出力される二次音源出力音の位相を制御する構成としてもよい。この場合、例えば、運転者によるスイッチ等の操作に応じて、緩加速時等、運転者が静粛性を求めるときには、連通経路24内へ出力される二次音源出力音の位相を、クリーンサイド側吸気ダクト36内の吸気脈動と逆相に制御することにより、吸気音を消音することが可能となる。また、急加速時には、連通経路24内へ出力される二次音源出力音の位相を、クリーンサイド側吸気ダクト36内の吸気脈動と同相に制御することにより、増音された吸気音を、車室6内へ効率良く導入することが可能となる。
【0070】
(第三実施形態の効果)
(1)本実施形態の吸気音導入装置では、エンジンの駆動状態に応じて、連通経路内へ出力される二次音源出力音の位相を、クリーンサイド側吸気ダクト内の吸気脈動と同相または逆相に制御しているため、エンジンの駆動状態に応じて、吸気音を消音または増音させることが可能となる。
その結果、緩加速時等、静粛性を確保したい場合には、吸気音を消音することが可能となるとともに、急加速時には、増音された吸気音を、車室内へ効率良く導入することが可能となる。
【0071】
(2)また、本実施形態の吸気音導入装置では、エンジンの駆動状態に応じて、出力電圧制御マップ及び位相制御マップから読み取られた値に基づき、二次音源出力音の位相を決定している。
このため、出力電圧制御マップ及び位相制御マップに記載された値を書き換えることにより、吸気音が消音されるエンジンの駆動状態と、吸気音が増音されるエンジンの駆動状態とを、任意の状態に設定することが可能となる。
その結果、車両特性や車両の所有者等の嗜好に合わせて、吸気音の特性を設定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の第一実施形態の吸気音導入装置1を搭載した車両Cを上方から見た状態を示す図である。
【図2】吸気音導入装置1を搭載した車両Cを、図1中に記載した矢印IIの方向から見た図である。
【図3】図1のIII―III線断面図であり、内張り部材12のボンネットフード2への取り付け状態を示す図である。
【図4】従来の内張り部材12のボンネットフード2への取り付け状態を示す図である。
【図5】図2中に符号Vで示した円の内部及びその周辺の拡大図である。
【図6】図2中に符号VIで示した円の内部及びその周辺の拡大図である。
【図7】変形例のエアボックス側遮蔽材44を示す図である。
【図8】内張り部材12のボンネットフード2への取り付け状態の変形例を示す図である。
【図9】内張り部材12のボンネットフード2への取り付け状態の変形例を示す図である。
【図10】内張り部材12のボンネットフード2への取り付け状態の変形例を示す図である。
【図11】本発明の第二実施形態の吸気音導入装置1の構成を示す図である。
【図12】連通経路構成部材46を示す図である。
【図13】本発明の第三実施形態の吸気音導入装置1の構成を示す図である。
【図14】位相制御手段50による二次音源出力音の位相の制御システムを示す図である。
【図15】クランク角信号S1及びスロットルバルブ開度信号S2の構成を示す図である。
【図16】出力電圧制御マップ及び位相制御マップの構成を示す図である。
【符号の説明】
【0073】
1 吸気音導入装置
2 ボンネットフード
4 エンジンルーム
6 車室
8 ダッシュパネル
10 エアボックス
12 内張り部材
14 エンジンルーム側開口部
16 ダッシュパネル側開口部
18 吸気ダクト
20 エアクリーナ
22 吸気経路側開口部
24 連通経路
26 止め具
28 取り付け部
30 弾性膜部材
32 フィルター部
34 ダストサイド側吸気ダクト
36 クリーンサイド側吸気ダクト
38 エンジンルーム側遮蔽材
40 エアボックス側連通部材
42 エアボックス側開口部
44 エアボックス側遮蔽材
46 連通経路構成部材
48 二次音源
50 位相制御手段
52 エンジン
54 スロットルバルブ
56 クランクシャフト
58 吸気ポート
60 シリンダー
62 ピストン
64 コンロッド
C 車両
S1 クランク角信号
S2 スロットルバルブ開度信号
S3 二次音源出力信号
SC 歯抜け信号
VM 電圧マップ
PM 位相マップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンルームを上方から覆うボンネットフードの下面に取り付けられる内張り部材を備える車両の吸気音導入装置であって、
前記内張り部材は、当該内張り部材を貫通して前記エンジンルーム側に向けて開口するエンジンルーム側開口部と、前記内張り部材を貫通してダッシュパネル側に向けて開口するダッシュパネル側開口部と、を有し、
前記ボンネットフードと前記内張り部材との間の少なくとも一部に、前記エンジンルーム側開口部と前記ダッシュパネル側開口部とを連通させる連通経路を形成したことを特徴とする車両の吸気音導入装置。
【請求項2】
エンジンルームを上方から覆うボンネットフードの下面に取り付けられる内張り部材を備える車両の吸気音導入装置であって、
前記内張り部材の下面に、前記エンジンルーム側に向けて開口するエンジンルーム側開口部と、ダッシュパネル側に向けて開口するダッシュパネル側開口部と、を有する連通経路構成部材を取り付け、
前記内張り部材と前記連通経路構成部材との間の少なくとも一部に、前記エンジンルーム側開口部と前記ダッシュパネル側開口部とを連通させる連通経路を形成したことを特徴とする車両の吸気音導入装置。
【請求項3】
前記ダッシュパネルの前記エンジンルーム側の面に取り付けられるエアボックスの外周面と前記ダッシュパネル側開口部との間に、前記連通経路と前記エアボックスの外周面とを連通させるエアボックス側連通部材を配置したことを特徴とする請求項1または2に記載した車両の吸気音導入装置。
【請求項4】
前記ダッシュパネル側開口部は、前記エアボックスと対向する位置に配置され、
前記エアボックスの外周面に、前記ダッシュパネル側開口部に向けて開口するエアボックス側開口部を設けたことを特徴とする請求項3に記載した車両の吸気音導入装置。
【請求項5】
前記エアボックス側連通部材は、少なくとも前記ボンネットフードが閉じた状態において前記ダッシュパネル側開口部と前記エアボックス側開口部との間に形成される空間を外気から隔離するエアボックス側遮蔽材を備えることを特徴とする請求項3または4に記載した車両の吸気音導入装置。
【請求項6】
エンジンに連通する吸気経路に、上方に向けて開口する吸気経路側開口部を設け、
前記エンジンルーム側開口部は、前記吸気経路側開口部と対向していることを特徴とする請求項1から5のうちいずれか1項に記載した車両の吸気音導入装置。
【請求項7】
前記エンジンルーム側開口部と前記吸気経路側開口部との間に、前記エンジンルーム側開口部と前記吸気経路側開口部とを連通し、且つ前記エンジンルーム側開口部と吸気経路側開口部との間に形成される空間を外気から隔離するエンジンルーム側遮蔽材を配置したことを特徴とする請求項6に記載した車両の吸気音導入装置。
【請求項8】
前記吸気経路側開口部は、前記吸気経路内の吸気脈動に応じて面外方向に弾性変形する弾性膜部材によって閉塞されることを特徴とする請求項6または7に記載した車両の吸気音導入装置。
【請求項9】
前記吸気経路内の吸気音と干渉する二次音源出力音を少なくとも前記連通経路内へ出力する二次音源と、前記二次音源出力音の位相を制御する位相制御手段と、を備えたことを特徴とする請求項6から8のうちいずれか1項に記載した車両の吸気音導入装置。
【請求項10】
前記位相制御手段は、前記エンジンの駆動状態に応じて前記二次音源出力音の位相を制御し、
前記エンジンの駆動状態を、クランクシャフトの角度及び前記エンジンの吸気量を増減させるスロットルバルブの開度とし、
前記クランクシャフトの角度を検出するクランク角情報検出手段及び前記スロットルバルブの開度情報を検出するスロットルバルブ開度情報検出手段を備え、
前記位相制御手段は、前記クランクシャフトの角度及び前記スロットルバルブの開度情報に応じて前記二次音源出力音の位相を制御することを特徴とする請求項9に記載した車両の吸気音導入装置。
【請求項11】
エンジンに連通する吸気経路側に向けて開口するエンジンルーム側開口部と、ダッシュパネル側に向けて開口するダッシュパネル側開口部とを連通させる連通経路を備え、
前記連通経路の壁面の少なくとも一部は、エンジンルームを上方から覆うボンネットフードの下面に取り付けられる内張り部材によって形成されることを特徴とする車両の吸気音導入装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2008−2318(P2008−2318A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−171288(P2006−171288)
【出願日】平成18年6月21日(2006.6.21)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】