説明

車両の変速制御装置

【課題】クルーズ時におけるエンジンの低Ne化の制御中において、車両に振動が発生した場合に、迅速に共振から回避することができ、しかも、車速の変動を抑えることができる車両の変速制御装置を提供する。
【解決手段】クルーズ走行状態と判定されると、目標エンジン回転数Npを所定のクルーズ回転数に設定すると共に、車速Vが一定となる関係で、無段変速機106により、変速比を小さくしつつ、エンジン回転数Neを目標エンジン回転数Npに向けて低下させるエンジン回転数低下制御部236と、エンジン回転数の低下制御中に、振動抑制制御判定部238により、車体振動値Saが所定値Sth以上であると判定したときに、無段変速機106により、エンジン回転数Neを制御して、車体振動値Saが所定値Sth未満になるように制御する第1振動抑制制御部240及び第2振動抑制制御部242とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の変速制御装置に関し、例えば電動ベルト式無段変速機を備えた車両(自動二輪車等)に用いて好適な車両の変速制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、環境意識の高まりにより、自動二輪車においても燃費性能の向上が求められている。
【0003】
燃費性能を向上させる手段の1つとして、原動機(エンジン)の低回転化(低Ne化)がある。すなわち、無段変速機を用いた自動二輪車においては、クルーズ時(車速が略一定のとき)に無段変速機の変速比を高レシオ化することにより、エンジン回転数を低減することができ、燃費性能の向上を図ることができる。
【0004】
しかし、この際、エンジン回転数によっては、車体の振動が大きくなる場合があり、この振動は運転者に不快感を与えるという課題があった。
【0005】
一方、車体振動を低減する方法として、従来においては、車両に発生する振動を無段変速機の変速比を制御してエンジン回転数をずらして、振動を抑制する技術が開示されている(例えば特許文献1参照)。また、従来では、振動成分を打ち消すような目標トルクを実現するように、スロットル開度、燃料噴射量、点火時期、変速比等のうちの少なくとも1つを制御することで、車両の振動を低減する技術が開示されている(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3505839号公報
【特許文献2】特開2007−231875号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1及び2に記載された手法は、車両の加減速に伴う振動抑制を制御の対象としており、上述したクルーズ時におけるエンジン回転数の低Ne化に伴う振動発生の低減を目的としていないため、振動は抑制できても、車速の変動を抑制することができない。すなわち、クルーズ時特有の振動抑制制御が求められているのが現状である。
【0008】
本発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、クルーズ時におけるエンジンの低Ne化の制御中において、車両に振動が発生した場合に、迅速に共振から回避することができ、しかも、車速の変動を抑えることができる車両の変速制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
[1] 本発明の請求項1に記載の車両の変速制御装置は、エンジン(104)の回転数(Ne)を検出するエンジン回転数検出手段(148)と、車両(12)の車速(V)を検出する車速検出手段(191)と、前記車両(12)の運転状態に応じて、変速用電動モータ(164)によって変速比を変える電動ベルト式無段変速機(106)と、車体の振動の大きさを判定する振動判定手段(238)と、スロットル操作手段(220)の操作状態を検出するスロットル開度検出手段(226)と、エンジン(104)に連結される吸気通路(212)に設けられ、スロットル開度に応じてエンジン(104)への吸気量を制御する吸気量制御手段(216)と、を備えた車両の変速制御装置において、少なくとも前記スロットル開度検出手段(226)の検出信号に基づいて、巡航走行状態と判定されると、目標エンジン回転数を所定のクルーズ回転数(Np)に設定すると共に、前記車速(V)が一定となる関係で、少なくとも前記電動ベルト式無段変速機(106)により、変速比を小さくしつつ、前記エンジンの回転数(Ne)を前記所定のクルーズ回転数(Np)に向けて低下させるエンジン回転数低下制御手段(236)と、前記エンジン回転数低下制御手段(236)による制御中に、前記振動判定手段(238)により前記車体の振動が所定値(Sth)以上であると判定したときに、前記エンジン回転数(Ne)に応じて前記エンジン回転数(Ne)の低下制御を継続するか、前記車速(V)が一定となる関係で、前記電動ベルト式無段変速機(106)と前記吸気量制御手段(216)により変速比を大きくしつつ、前記エンジン(104)への吸気量を減量制御することにより、前記エンジン回転数(Ne)を上昇させるかを選択して、前記車体の振動が前記所定値(Sth)未満になるように制御する振動抑制制御手段(240又は242)とを有することを特徴とする。
【0010】
[2] 請求項2に記載の本発明は、請求項1記載の変速制御装置において、前記エンジン回転数低下制御手段(236)は、前記車速(V)の変動幅(dV)が所定値(Vth)以下となるように変速比を変化させた後に、前記吸気量制御手段(216)によるエンジン(104)への吸気量を変化させることを特徴とする。
【0011】
[3] 請求項3に記載の本発明は、請求項1又は2記載の変速制御装置において、前記車両(12)は、さらに、燃費を優先する燃費優先モードと、走行性能を優先するスポーツモードの変速モード選択手段(206)を具備し、前記振動抑制制御手段(240)は、前記変速モード選択手段(206)にて前記燃費優先モードが選択されている場合に、前記エンジン回転数低下制御手段(236)による制御中に、前記振動判定手段(238)により前記車体の振動が所定値(Sth)以上であると判定したときに、現在のエンジンの回転数(Ne)と予め設定された判定値(Nr)の上下関係に応じて、前記エンジン回転数低下制御手段(236)によりエンジンの回転数(Ne)の低下制御を継続するか、前記車速(V)が一定となる関係で、少なくとも前記電動ベルト式無段変速機(106)により、変速比を大きくしつつ、前記エンジンの回転数(Ne)を上昇させるかを選択し、前記車体の振動が前記所定値(Sth)未満になるように制御することを特徴とする。
【0012】
[4] 請求項4に記載の本発明は、請求項3記載の変速制御装置において、前記振動抑制制御手段(240)は、前記現在のエンジンの回転数(Ne)が前記判定値(Nr)以上の場合、前記エンジン回転数低下制御手段(236)によるエンジン回転数の低下制御を継続させて、前記エンジンの回転数(Ne)を低下させ、前記現在のエンジンの回転数(Ne)が前記判定値(Nr)未満の場合、少なくとも前記電動ベルト式無段変速機(106)により、変速比を大きくしつつ、前記エンジンの回転数(Ne)を上昇させることを特徴とする。
【0013】
[5] 請求項5に記載の本発明は、請求項4記載の変速制御装置において、前記振動抑制制御手段(240)は、前記エンジンの回転数(Ne)が前記判定値(Nr)未満となった場合、前記電動ベルト式無段変速機(106)による前記変速比を大きくする制御に先行して、前記吸気量制御手段(216)により、エンジン(104)への吸気量を増量制御することを特徴とする。
【0014】
[6] 請求項6に記載の本発明は、請求項4記載の変速制御装置において、前記振動抑制制御手段(240)は、前記エンジンの回転数(Ne)が前記判定値(Nr)以上となった場合、前記エンジンの回転数(Ne)の低下に対して、前記吸気量制御手段(216)により、エンジン(104)への吸気量を増量させる方向に制御し、前記エンジンの回転数(Ne)が前記判定値(Nr)未満となった場合、前記エンジンの回転数(Ne)の上昇に対して、前記吸気量制御手段(216)により、エンジン(104)への吸気量を減量させる方向に制御することを特徴とする。
【0015】
[7] 請求項7に記載の本発明は、請求項1記載の変速制御装置において、前記車両(12)は、さらに、燃費を優先する燃費優先モードと、走行性能を優先するスポーツモードの変速モード選択手段(206)を具備し、前記振動抑制制御手段(242)は、前記変速モード選択手段(206)にて前記スポーツモードが選択されている場合に、前記エンジン回転数低下制御手段(236)による制御中に、前記振動判定手段(238)により前記車体の振動が所定値(Sth)以上であると判定したときに、常に、前記車速(V)が一定となる関係で、少なくとも前記電動ベルト式無段変速機(106)により、変速比を大きくしつつ、前記エンジンの回転数(Ne)を上昇させて、前記車体の振動が前記所定値(Sth)未満になるように制御することを特徴とする。
【0016】
[8] 請求項8に記載の本発明は、請求項7記載の変速制御装置において、前記振動抑制制御手段(242)は、前記エンジンの回転数(Ne)の上昇に対して、前記吸気量制御手段(216)により、エンジン(104)への吸気量を減量させる方向に制御することを特徴とする。
【0017】
[9] 請求項9に記載の本発明は、請求項1記載の変速制御装置において、前記振動判定手段(238)は、振動検出手段(228)の出力によって前記車体の振動の大きさを判定し、前記振動検出手段(228)はハンドル(20)を操向可能に支承する部材に配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
(1) 請求項1に係る本発明によれば、エンジンの低回転数化制御中に、車両に振動が発生したことを検出した場合には、車速の変化が少なくなるように、変速比とエンジンの回転数を変化させることで、迅速に共振から回避し、乗車振動の発生時間を短くすることができ、しかも、車速の変動を抑えることができる。
【0019】
(2) 請求項2に係る本発明によれば、エンジンへの吸気量の変化がエンジンの出力増加に結びつくまでは、タイムラグが生じるため、変速比を先に変化させることで、車速変動幅を所定値以下に抑えやすくなる。
【0020】
(3) 請求項3に係る本発明によれば、燃費優先モード下において、エンジンの低回転数化制御中に、車両に振動が発生したことを検出した場合には、車速の変化が少なくなるように、変速比とエンジンの回転数を変化させることで、迅速に共振から回避し、乗車振動の発生時間を短くすることができる。
【0021】
(4) 請求項4に係る本発明によれば、前記現在のエンジン回転数が判定値以上のときは、エンジンの回転数を下げることで、共振を回避するので、低燃費を向上させることができる。
【0022】
(5) 請求項5に係る本発明によれば、振動の発生源であるエンジンの回転数を上昇させることが優先されるため、迅速に共振を回避することができる。
【0023】
(6) 請求項6に係る本発明によれば、前記エンジンの回転数が前記判定値Nr以上となって、前記エンジンの回転数の低下制御が行われると、後輪駆動力が低下し、クルーズ走行に必要な車速を確保できなくなる。そこで、前記吸気量制御手段により、エンジンへの吸気量を増量させる方向に制御することで、後輪駆動力が向上し、前記エンジンの回転数の低下制御と相俟ってクルーズ走行に必要な一定の後輪駆動力を得ることができる。
【0024】
同様に、前記エンジンの回転数が前記判定値Nr未満となって、前記エンジンの回転数の上昇制御が行われると、後輪駆動力が向上し、クルーズ走行に必要な車速を確保できなくなる。そこで、前記吸気量制御手段により、エンジンへの吸気量を減量させる方向に制御することで、後輪駆動力が低下し、前記エンジンの回転数の上昇制御と相俟ってクルーズ走行に必要な一定の後輪駆動力を得ることができる。
【0025】
(7) 請求項7に係る本発明によれば、スポーツモード下において、エンジンの低回転数化制御中に、車両に振動が発生したことを検出した場合には、常にエンジンの回転数を上昇させる方向に制御して振動低減を図るため、クルーズ回転数を燃費優先モードよりも高く設定することとなり、結果として、再加速時に必要な余裕駆動力が燃費優先モードよりも大きくなり、再加速時の動力性能を向上させることができる。
【0026】
(8) 請求項8に係る本発明によれば、前記エンジンの回転数が前記判定値未満となって、前記エンジンの回転数の上昇制御が行われると、後輪駆動力が向上し、クルーズ走行に必要な車速を確保できなくなる。そこで、前記吸気量制御手段により、エンジンへの吸気量を減量させる方向に制御することで、後輪駆動力が低下し、前記エンジンの回転数の上昇制御と相俟ってクルーズ走行に必要な一定の後輪駆動力を得ることができる。
【0027】
(9) 請求項9に係る本発明によれば、運転者が最も振動を感じる部位に振動検出手段を配置することで、運転者が感じる振動を振動判定手段に反映させることができ、共振の発生を効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本実施の形態に係る変速制御装置が設置される自動二輪車を一部省略して示す側面図である。
【図2】自動二輪車の前部を一部破断して示す平面図である。
【図3】ユニットエンジンを示す断面図である。
【図4】自動二輪車に適用される左側ハンドルスイッチの一例を示す斜視図である。
【図5】ユニットエンジンの制御系の一部を示すブロック図である。
【図6】本実施の形態に係る変速制御装置(変速制御部)の基本的な制御動作を示す説明図である。
【図7】本実施の形態に係る変速制御装置(変速制御部)の構成を示すブロック図である。
【図8】エンジン回転数低下制御部の構成を示すブロック図である。
【図9】第1振動抑制制御部の構成を示すブロック図である。
【図10】第2振動抑制制御部の構成を示すブロック図である。
【図11】エンジン回転数低下制御部の処理動作を示すフローチャートである。
【図12】第1振動抑制制御部の処理動作を示すフローチャートである。
【図13】第2振動抑制制御部の処理動作を示すフローチャートである。
【図14】主として、エンジン回転数低下制御部による制御のタイミングチャートである。
【図15】主として、第1振動抑制制御部による制御のタイミングチャートである。
【図16】主として、第2振動抑制制御部による制御のタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明に係る車両の変速制御装置を例えば自動二輪車に適用した実施の形態例を図1〜図16を参照しながら説明する。
【0030】
本実施の形態に係る車両の変速制御装置10(図7参照)が搭載される自動二輪車12は、図1及び図2に示すように、例えばスクータ型車両であって、車体フレーム14、前輪16、後輪18、ハンドル20を有する。
【0031】
車体フレーム14の前方部分は、前輪16を軸支するフロントフォーク22と、該フロントフォーク22に連結されるハンドル20を操向可能に支承するヘッドパイプ24及びハンドルポスト25とを備える。後輪18を後端で支持するユニットエンジン26が車体フレーム14の前後方向中間部で上下揺動可能に支承され、ユニットエンジン26よりも前方で車体フレーム14には、側面視で上下に長く形成される燃料タンク28と、該燃料タンク28よりも後方に配置されるラジエータ30とが搭載される。また、車体フレーム14には、ユニットエンジン26を上方から覆うようにして収納ボックス32が取り付けられており、この収納ボックス32上に、前部シート34及び後部シート36を有してタンデム型に構成される乗車用シート38が配置される。さらに、車体フレーム14、ユニットエンジン26の前部、燃料タンク28、ラジエータ30及び収納ボックス32を覆う合成樹脂製の車体カバー40が車体フレーム14に取付けられている。
【0032】
車体フレーム14は、ヘッドパイプ24と、該ヘッドパイプ24に連設されて後ろ下がりに延びる左右一対の上ダウンフレーム42と、上ダウンフレーム42よりも下方でヘッドパイプ24に連設されて後ろ下がりに延びる傾斜部44aの後端に水平部44bが一体に連設されてなると共に、上ダウンフレーム42の後端部に後端が溶接される左右一対の下ダウンフレーム44と、両上ダウンフレーム42の中間部から後ろ上がりに延びる左右一対のシートレール46と、上ダウンフレーム42の後部及びシートレール46の後部間を連結する左右一対のリヤフレーム48と、上ダウンフレーム42、下ダウンフレーム44及びリヤフレーム48の外側方に配置されて前後に延びる左右一対のサポートフレーム50とを備えている。
【0033】
両サポートフレーム50は、車体カバー40がその左右に備えるステップフロア52を下方から支持するものであり、両サポートフレーム50の前端は下ダウンフレーム44における傾斜部44aの下部に結合され、また、両サポートフレーム50の後端はリヤフレーム48の中間部に結合される。
【0034】
車体カバー40は、ヘッドパイプ24の前部及び前輪16の上部を覆うフロントカバー54と、該フロントカバー54の左右両側に接合される左右一対のフロントサイドカバー56と、前部シート34に座乗した運転者の脚部前方を覆うと共に、ヘッドパイプ24を後方側から覆うようにして両フロントサイドカバー56に接合されるレッグシールド58と、該レッグシールド58の上部に位置し、同じくヘッドパイプ24を後方側から覆うようにして両フロントサイドカバー56に接合されるインナーカバー60と、レッグシールド58に連なって後方に延びると共に、その下端部でステップフロア52を形成する左右一対のフロアセンターカバー62と、ステップフロア52の外縁から下方にそれぞれ垂下される左右一対のフロアサイドカバー64と、ステップフロア52の後部に設けられる左右一対のパッセンジャーステップ66と、乗車用シート38の両側下方に配置されると共に、フロアサイドカバー64に連設されて後方に延びる左右一対のボディサイドカバー68と、該ボディサイドカバー68の後ろ側下部に連設される左右一対のリヤロアカバー70と、収納ボックス32の後部膨出部72及びグラブレール74の後部間に配置されるリヤアッパーカバー76と、左右一対のテールライトユニット78間に配置されると共に、収納ボックス32の後部膨出部72を後方から覆うようにしてリヤアッパーカバー76に連なるリヤセンターカバー80とを備える。
【0035】
後輪18を後方から覆うリヤフェンダ82には、ライセンスプレート84、リフレクタ86及びライセンスライト88が取り付けられ、このリヤフェンダ82は、左右一対のテールライトユニット78、車体カバー40の一部を構成するカバー部材であるリヤアッパーカバー76及びリヤセンターカバー80と共に、収納ボックス32の後部膨出部72に取付けられている。
【0036】
前輪16を上方から覆うフロントフェンダ90はフロントフォーク22に支持され、ハンドル20には、左右一対のバックミラー92と、各灯器等を操作するためのスイッチケース94等が取り付けられている。フロントカバー54の前部両側と、左右一対のフロントサイドカバー56の前部との間にはヘッドライト96が配置され、ヘッドライト96の下方で両フロントサイドカバー56の前部にはウインカ98が配置されている。フロントカバー54、両フロントサイドカバー56及びレッグシールド58の上部には、メータ類を配置するためのメータパネル100が接合され、該メータパネル100の前部には上方に隆起するようにしてメータバイザ100aが一体に設けられ、メータバイザ100aの前方にはウインドシールド102が配置されている。
【0037】
ユニットエンジン26は、シリンダ軸線をほぼ水平とした水冷式のエンジン104と、該エンジン104の出力を、伝達ベルト及びプーリによって無段階に変速して後輪18に伝達するベルト式の無段変速機106とで構成され、該無段変速機106は、変速用のアクチュエータとしての電動モータ108の作動に応じてクランクシャフト側の駆動プーリを駆動して変速比を無段階に変化させる。無段変速機106の変速機ケース110は、エンジン104におけるクランクケース112の左側にエンジン104から張り出すようにして連設され、後輪18の左側まで延設されている。また、両上ダウンフレーム42の後端、すなわち、下端にはブラケット114が取り付けられ、両ブラケット114にメインスタンド116が回動可能に支持されている。このメインスタンド116を起立させると、後輪18を浮かせてスクータ型車両を自立させることができ、スクータ型車両の走行時には、後輪18を接地させるようにメインスタンド116を格納すればよい。
【0038】
ここで、エンジン104と無段変速機106とを一体化したユニットエンジン26について図3を参照しながら説明する。
【0039】
ユニットエンジン26は、出力軸であるクランクシャフト120を有し、このクランクシャフト120のコンロッド122を介してピストン124が連結されている。ピストン124は、シリンダブロック126に設けられたシリンダ128内を摺動可能とされている。シリンダブロック126の上端にはシリンダヘッド130が固定されており、該シリンダヘッド130及びシリンダ128並びにピストン124によって、混合気を燃焼させる燃焼室132が形成されている。
【0040】
シリンダヘッド130には、燃焼室132への混合気の吸気及び排気を制御するバルブ(図示せず)と、圧縮された混合気に点火するための点火プラグ134とが配設されている。前記バルブの開閉動作は、シリンダヘッド130に軸支されるカムシャフト136の回転によって制御される。上方にシリンダヘッドカバー138を配設するカムシャフト136の右端部には従動スプロケット140が備えられており、該従動スプロケット140とクランクシャフト120に設置された駆動スプロケット142との間には、無端状のカムチェーン144が掛け渡されている。
【0041】
クランクシャフト120を軸支するクランクケース112の右端部には、クランクシャフト120の右端部に固定されるACGスタータモータ146が収納され、その近傍には、ACGスタータモータ146の回転数からエンジン104の回転数(エンジン回転数Ne)を検出するエンジン回転数センサ148が設けられている。一方、クランクシャフト120の図示左方には、駆動プーリ150、Vベルト152及び従動プーリ154から構成される無段変速機106が連結されている。駆動プーリ150には、クランクシャフト120に同期して回転することで、無段変速機106等を強制的に冷却するファン156が形成されている。無段変速機106は、クランクシャフト120の左端部に接続された駆動プーリ150と、クランクシャフト120に対して平行に伝動ケース158に軸支された従動軸160に遠心式の発進クラッチ162を介して装着された従動プーリ154との間に、無端状のVベルト152を巻き掛けて構成される無段変速のベルトコンバータである。無段変速機106には、駆動プーリ150の近傍に、変速比を任意に変更するための変速比制御モータ164が備えられている。
【0042】
駆動プーリ150は、クランクシャフト120の左端部に固定された駆動側固定プーリ半体166と、クランクシャフト120に対してその軸方向に摺動可能に装着された駆動側可動プーリ半体168とを備えている。該駆動側可動プーリ半体168には、その図示右方に送りねじが設けられており、ピニオンギヤ170、第1伝達ギア172、第2伝達ギア174を介して伝達される変速比制御モータ164の駆動力によって回転することで、軸方向に自在に摺動するように構成されている。なお、駆動側可動プーリ半体168の近傍には、該駆動側可動プーリ半体168の位置を検出することで変速比を検知する変速比センサ176が設けられている。
【0043】
他方、従動プーリ154は、発進クラッチ162のクラッチシュー178を保持する回転体と一体的に回転するスリーブ180に固定された従動側固定プーリ半体182と、スリーブ180に対してその軸方向に摺動可能な従動側可動プーリ半体184とを備えている。そして、Vベルト152は、駆動側固定プーリ半体166と駆動側可動プーリ半体168との間、及び従動側固定プーリ半体182と従動側可動プーリ半体184との間にそれぞれ形成された略V字断面のベルト溝に巻き掛けられている。また、従動側可動プーリ半体184の背面側には、該従動側可動プーリ半体184を従動側固定プーリ半体182に向けて常時付勢するスプリング186が配設されている。
【0044】
発進クラッチ162は、従動プーリ154の回転数が所定値に満たない場合は、従動プーリ154と従動軸160との間の駆動力伝達を遮断している。そして、エンジン回転数Neが上昇し、従動プーリ154の回転数が所定値以上となると、遠心力によってクラッチシュー178がアウタケース188の内周面を押圧するように構成されている。これによって、従動プーリ154の回転がスリーブ180及びクラッチシュー178を介してアウタケース188に伝達され、該アウタケース188に固定された従動軸160及び該従動軸160と噛合する伝達軸190、該伝達軸190と噛合する後輪18の車軸(図示せず)を回転させることになる。なお、アウタケース188の近傍には、該アウタケース188の回転数から車速を検知する車速センサ191が設けられている。
【0045】
無段変速機106の変速比の変更は、変速比制御モータ164を変速比のアップ/ダウンに応じた方向へ回転駆動することによって行われる。変速比制御モータ164の回転方向がシフトアップ方向(トップレシオ方向)であれば、駆動側可動プーリ半体168を図示左方向へ摺動させる。すると、この摺動した分だけ駆動側可動プーリ半体168が駆動側固定プーリ半体166に接近して駆動プーリ150のベルト溝幅が減少するので、駆動プーリ150とVベルト152との接触位置が半径方向外側にずれ、Vベルト152の巻き掛け径が増大する(図3では、クランクシャフト120の上側にローレシオ位置168(L)を示し、クランクシャフト120の下側にトップレシオ位置168(H)を示している)。
【0046】
上記した変速動作に伴って、従動プーリ154においては、クランクシャフト120と従動軸160の距離が不変で、且つ、Vベルト152が無端状であるので、巻き掛け径を縮小しようとする力が働く。従って、従動側可動プーリ半体184は、スプリング186が付勢する弾性力に抗して図示左方向へ摺動し、従動側固定プーリ半体182と従動側可動プーリ半体184とから形成される溝幅が増加することになる。このように、無段変速機106による変速比の変更は、Vベルト152の巻き掛け径(伝達ピッチ径)が連続的に変化することで実現される。
【0047】
上述したように、無段変速機106は、変速比制御モータ164を制御することによって任意の変速比を無段階に選択することが可能である。従って、その制御の仕方によって、無段変速によるなめらかな走行はもとより、いくつかの固定した変速比を設定(例えば、7段階)することにより、乗員の指令によって固定変速比間でシフトチェンジを行うマニュアルミッション的な変速制御や、さらには、有段変速機において自動変速が行われるマニュアルオートシフト的な乗車フィーリングが得られる変速制御を行うことが可能となる。
【0048】
図4は、自動二輪車12に適用される左側ハンドルスイッチの斜視図である。パイプ状のハンドル20の図示左方には、左側ハンドルグリップ192が装着され、その車両前方向には、左側ブレーキレバー194が配設されている。そして、左側ハンドルグリップ192とブレーキフルードのリザーバータンク196との間には、左側スイッチケース198が設置されている。該左側スイッチケース198には、ウィンカースイッチ200、ホーンスイッチ202、ヘッドライトの光軸切替スイッチ204、そして、中立状態からプラス(+)方向及びマイナス(−)方向にシーソー式に揺動するシフトスイッチ206が設けられている。
【0049】
また、自動二輪車12は、燃費性能を重視する燃費優先モード(Dモード)及び走行性能を重視するスポーツモード(Sモード)の2種類から選べる「無段変速モード」が少なくとも用意されている。各変速モードの切替操作は、DモードとSモードとの切替をシフトスイッチ206で行うことができるようになっている。
【0050】
また、自動二輪車12は、図5に模式的に示すように、上述したユニットエンジン26等をコントロールするエンジン制御装置(エンジン・コントロール・ユニット:ECU210)を有する。
【0051】
また、ユニットエンジン26のエンジン104には、吸気管212及び排気管214が設けられ、吸気管212にはスロットルバルブ216が設けられ、吸気管212のエンジン104寄りの位置には燃料噴射弁218が設けられる。スロットルバルブ216は、スロットルグリップ220の回動操作に応じてスロットルバルブモータ222の駆動によって回動し、その回動量(吸気弁の開度)がバルブ開度センサ224で検出される。
【0052】
ECU210には、上述したシフトスイッチ206からの走行モード選択信号(走行モードM)と、エンジン回転数センサ148からの検出信号(エンジン回転数Ne)と、車速センサ191からの検出信号(車速V)と、変速比センサ176からの検出信号(駆動側のVベルト152の巻き掛け径:以下、巻き付け径Raと記す)と、スロットルグリップ220の操作回動量を検知するグリップ開度センサ226からの検出信号(グリップ開度Ag)と、バルブ開度センサ224からの検出信号(バルブ開度Av)と、車体の発生する振動を検出する振動センサ228(例えば加速度センサ)からの検出信号(車体振動値Sa)とが少なくとも入力されるようになっている。
【0053】
振動センサ228は、図1及び図2に示すように、ハンドル20を操向可能に支承する部材(ヘッドパイプ24、ハンドルポスト25等)に配置することが好ましい。
【0054】
そして、ECU210は、本実施の形態に係る変速制御装置10として機能する変速制御部230を有する。ここで、この変速制御部230の詳細な構成、機能の説明に先立って、基本的な制御動作を図6に基づいて説明する。
【0055】
変速制御部230には、エンジン回転数、グリップ開度、車速、走行モード、車体振動値が入力され、クルーズ走行判定や振動抑制制御判定が行われて、クルーズ用の目標エンジン回転数、目標バルブ開度、変速比制御モータの制御値の各設定(算出を含む)が行われ、これら設定(算出)された値に基づいて、スロットルバルブ駆動部によるスロットルバルブモータ222の駆動、並びに変速モータ駆動部による変速比制御モータ164の駆動を行う。
【0056】
先ず、手順F1では、車速とグリップ開度の変化状態によって、自動二輪車12がクルーズ走行状態と判定された場合には、目標エンジン回転数をクルーズ走行用のエンジン回転数Np(例えばアイドル時の回転数+100rpm等)に設定する。
【0057】
手順F2では、振動センサ228からの車体振動値がしきい値(判定用振動値)以上の場合に、車体振動の抑制制御が必要であると判定する。
【0058】
手順F3では、クルーズ走行判定時の車速を維持しながら、エンジン回転数を低回転化させるための目標バルブ開度及び変速比制御モータ164の制御値を算出する。その際に、振動抑制制御が必要であると判定されれば、目標値を変更する。
【0059】
手順F4では、手順F3で設定(算出)された目標値になるように、スロットルバルブ216の開度と巻き付け径を変化させる。
【0060】
次に、本実施の形態に係る変速制御装置10(変速制御部230)の構成及び処理動作について図7〜図16を参照しながら説明する。
【0061】
変速制御部230は、図7に示すように、クルーズ走行判定部232と、基準車速設定部234と、エンジン回転数低下制御部236と、振動抑制制御判定部238と、燃費優先モード用の第1振動抑制制御部240と、スポーツモード用の第2振動抑制制御部242とを有する。
【0062】
クルーズ走行判定部232は、車速Vとグリッド開度Agに基づいて巡航走行状態(クルーズ走行状態)であるか否かを判定する。具体的には、車速Vの変動幅dVが予め設定された所定値Vth以下であって、且つ、グリップ開度Agの変動幅dAgが予め設定された所定値Ath以下の状態が所定時間Ta継続されている場合に、クルーズ走行状態であると判定する。所定値Va、Ath及び所定時間Taは、予めクルーズ走行状態を想定した実験等に基づいて設定される。
【0063】
基準車速設定部234は、クルーズ走行状態であると判定された際の車速Vを基準車速Vaとして設定する。
【0064】
エンジン回転数低下制御部236は、図8に示すように、目標エンジン回転数設定部244、目標レシオ設定部246と、第1変速モータ駆動部248と、第1スロットルバルブ駆動部250と、第1制御終了判定部252とを有する。
【0065】
目標エンジン回転数設定部244は、クルーズ走行状態と判定された際に、目標エンジン回転数を、所定のクルーズ回転数Npに設定する。
【0066】
目標レシオ設定部246は、クルーズ走行状態と判定された際に、そのときの巻き付け径Raに基づいて高レシオ側にシフトさせるための目標レシオを設定する。
【0067】
第1変速モータ駆動部248は、車速変動幅dV(|現在の車速V−基準車速Va|)が許容変動幅Vth以下となる範囲で、変速比制御モータ164を駆動して、無段変速機106の現在の巻き付け径Raを目標レシオに対応する径となるように高レシオ側にシフトさせる。すなわち、変速比を高レシオ側にシフトさせる。このとき、エンジン回転数Neが目標エンジン回転数Npに向けて低下していくが、第1変速モータ駆動部248は、エンジン回転数Ne×巻き付け径Raが略一定となるようにして巻き付け径Raを目標レシオに向けてシフトする。
【0068】
第1スロットルバルブ駆動部250は、車速変動幅dVが許容変動幅Vth以下となる範囲で、巻き付け径Raの高レシオ側へのシフトに対して、後輪18の駆動力が略一定となるように、すなわち、エンジン回転数Neの低下変化が微小となるように、スロットルバルブモータ222を駆動して、スロットルバルブ216の開度(バルブ開度Av)を増加させる。これにより、エンジン出力が増加し、後輪18の駆動力が略一定となる。このとき、エンジン出力×巻き付け径Raが略一定となるように、スロットルバルブ216を開く方向に制御する。
【0069】
第1制御終了判定部252は、現在の車体振動値Saが予め設定された判定用振動値Sth未満の状態で、車速変動幅dVが許容変動幅Vth以下であって、且つ、現在のエンジン回転数Neが目標エンジン回転数Np以下である場合に、エンジン回転数低下制御の終了と判定し、巻き付け径Raのシフト動作を停止する。
【0070】
振動抑制制御判定部238(図7参照)は、現在の車体振動値Saと予め設定された判定用振動値Sthとを比較して、現在の車体振動値Saが判定用振動値Sth以上の場合に、振動抑制制御が必要であると判定する。
【0071】
第1振動抑制制御部240は、図9に示すように、判定用エンジン回転数設定部254と、制御方向判定部256と、上述した第1変速モータ駆動部248と、上述した第1スロットルバルブ駆動部250と、第2変速モータ駆動部258と、第2スロットルバルブ駆動部260と、第2制御終了判定部262とを有する。
【0072】
判定用エンジン回転数設定部254は、クルーズ走行と判定された際のエンジン回転数よりも低く、且つ、設定された目標エンジン回転数Npよりも高い回転数であって、振動抑制制御の方向を判定するための判定用エンジン回転数Nrを設定する。
【0073】
制御方向判定部256は、振動抑制制御が必要であると判定された際のエンジン回転数Neと判定用エンジン回転数Nrとを比較して、上述した第1変速モータ駆動部248と第1スロットルバルブ駆動部250によるエンジン回転数低下制御を継続するか、あるいは第2変速モータ駆動部258と第2スロットルバルブ駆動部260によるエンジン回転数上昇制御とを行うかを判定する。
【0074】
第2変速モータ駆動部258は、車速変動幅dVが許容変動幅Vth以下となる範囲で、変速比制御モータ164を駆動して、無段変速機106の現在の巻き付け径Raを低レシオ側にシフトさせる。このとき、後輪18側の負荷が低減することで、エンジン回転数Neが上昇していくが、第2変速モータ駆動部258は、エンジン回転数Ne×巻き付け径Raが略一定となるようにして巻き付け径Raを低レシオ側にシフトさせる。
【0075】
第2スロットルバルブ駆動部260は、2つの制御を行い、先ず、第1の制御は、第2変速モータ駆動部258による制御に先立って行われ、車速変動幅dVが許容変動幅Vth以下となる範囲で、スロットルバルブモータ222を駆動して、スロットルバルブ216の開度(バルブ開度Av)を増加させる。これにより、エンジン出力が増加し、それに伴って、エンジン回転数Neが上昇する。第2の制御は、第2変速モータ駆動部258による制御の後に行われ、車速変動幅dVが許容変動幅Vth以下となる範囲で、巻き付け径Raの低レシオ側へのシフトに対して、後輪18の駆動力が略一定となるように、すなわち、エンジン回転数Neの低下変化が微小となるように、スロットルバルブモータ222を駆動して、スロットルバルブ216の開度(バルブ開度Av)を減少させる。これにより、エンジン出力が低減し、後輪18の駆動力が略一定となる。このとき、エンジン出力×巻き付け径Raが略一定となるように、スロットルバルブ216を閉じる方向に制御する。
【0076】
第2制御終了判定部262は、現在の車体振動値Saが予め設定された判定用振動値Sth未満の状態で、車速変動幅dVが許容変動幅Vth以下であって、且つ、現在のエンジン回転数Neが目標エンジン回転数Np以下である場合に、振動抑制制御の終了と判定し、巻き付け径Raのシフト動作を停止する。なお、現在の車体振動値Saが予め設定された判定用振動値Sth未満であって、且つ、現在のエンジン回転数Neが目標エンジン回転数Npを超えていれば、エンジン回転数低下制御部236での制御へ戻る。
【0077】
一方、第2振動抑制制御部242は、図10に示すように、上述した第2変速モータ駆動部258と、第2スロットルバルブ駆動部260と、第2制御終了判定部262とを有する。従って、ここでは、重複説明を省略する。
【0078】
次に、燃費優先モードでの変速制御装置(変速制御部)の動作について図11及び図12を参照しながら説明する。
【0079】
先ず、図11のステップS1及びステップS2において、クルーズ走行判定部232は、車速Vとグリッド開度Agに基づいてクルーズ走行状態であるか否かを判定する。具体的には、車速Vの変動幅dVが予め設定された所定値Vth以下であって、且つ、グリップ開度Agの変動幅dAgが予め設定された所定値Ath以下の状態が所定時間Ta継続されている場合に、クルーズ走行状態であると判定する。
【0080】
クルーズ走行状態であると判定された時点で、次のステップS3に進み、基準車速設定部234は、例えば図14のタイミングチャートに示すように、クルーズ走行状態であると判定された時点taの車速Vを基準車速Vaとして設定する。
【0081】
図11のステップS4以降からエンジン回転数低下制御部236による制御に入る。すなわち、先ず、ステップS4において、目標エンジン回転数設定部244は、目標エンジン回転数を、所定のクルーズ回転数Npに設定する。
【0082】
ステップS5において、目標レシオ設定部246は、例えば図14のタイミングチャートに示すように、クルーズ走行状態であると判定された時点taの巻き付け径Raに基づいて高レシオ側にシフトさせるための目標レシオRbを設定する。
【0083】
図4のステップS6において、第1変速モータ駆動部248は、車速変動幅dVが許容変動幅Vth以下となる範囲で、変速比制御モータ164を駆動して、無段変速機106の現在の巻き付け径Raを目標レシオRbに対応する径となるように高レシオ側にシフトさせる。このとき、エンジン回転数Neが目標エンジン回転数Npに向けて低下していくが、第1変速モータ駆動部248は、エンジン回転数Ne×巻き付け径Raが略一定となるようにして巻き付け径Raを目標レシオに向けてシフトする。
【0084】
ステップS7において、第1スロットルバルブ駆動部250は、車速変動幅dVが許容変動幅Vth以下となる範囲で、巻き付け径Raの高レシオ側へのシフトに対して、後輪18の駆動力が略一定となるように、スロットルバルブモータ222を駆動して、スロットルバルブ216の開度(バルブ開度Av)を増加させる。これにより、エンジン出力が増加し、後輪18の駆動力が略一定となる。このとき、エンジン出力×巻き付け径Raが略一定となるように、スロットルバルブ216を開く方向に制御する。
【0085】
ところで、クルーズ走行時に、エンジン回転数の低下制御を行う場合、変速比が高レシオ側にシフトされると同時に、スロットルバルブ開度は開き方向に動く。これは、クレーム走行に必要な後輪の駆動力が一定であることに対し、ただ単に、変速比を高レシオ側にシフトするだけであれば、後輪18の駆動力が低下するため、その減少した駆動力を補うために、エンジン側の出力を増やす必要があるからである。但し、変速比を高レシオ側にシフトすると、後輪18の回転数が上昇するため、それをクルーズ走行状態(一定速度)にするために、エンジン回転数は下がることとなる。
【0086】
図11のステップS8において、振動抑制制御判定部238は、現在の車体振動値Saが予め設定された判定用振動値Sth未満であるか否かを判別する。この判別結果が肯定(YES)であれば、次のステップS9に進み、第1制御終了判定部252は、車速変動幅dVが許容変動幅Vth以下で、且つ、現在のエンジン回転数Neが目標エンジン回転数Np以下であるか否かを判別する。この判別結果が否定(NO)であれば、上述したステップS6以降の処理に戻る。反対に、上述のステップS9での判別結果が肯定(YES)であれば、エンジン回転数低下制御の終了と判定し、変速比制御モータ164による変速比のシフト動作を停止する。これは、図14のエンジン回転数のタイミングチャートにおいて二点鎖線Laで示すように、現在の車体振動値Saが判定用振動値Sth以上と判別される時点tbに達する前に、現在のエンジン回転数Neが目標エンジン回転数Np以下となった場合を示す。
【0087】
一方、上述したステップS8において、現在の車体振動値Saが判定用振動値Sth以上であると判別された場合は、ステップS10に進み、シフトスイッチからの走行モードMに基づいて、現在の走行モードが燃費優先モードであるか否かが判別される。燃費優先モードであれば、図12のステップS11以降の第1振動抑制制御部240による制御に入る。
【0088】
すなわち、ステップS11において、判定用エンジン回転数設定部254は、クルーズ走行と判定された際のエンジン回転数よりも低く、且つ、設定された目標エンジン回転数Npよりも高い回転数であって、振動抑制制御の方向を判定するための判定用エンジン回転数Nrを設定する。図14のタイミングチャートで見た場合、クルーズ走行と判定された時点taのエンジン回転数Nmよりも低く、目標エンジン回転数Npよりも高いエンジン回転数を判定用エンジン回転数Nrとする。
【0089】
ステップS12において、制御方向判定部256は、振動抑制制御が必要であると判定された際のエンジン回転数Neと判定用エンジン回転数Nrとを比較して、エンジン回転数低下制御を継続するか、あるいはエンジン回転数上昇制御とを行うかを判定する。図14のタイミングチャートで見た場合、車体振動値Saが判定用振動値Sth以上となった時点tbのエンジン回転数Ne(=Na)と判定用エンジン回転数Nrとを比較する。
【0090】
そして、エンジン回転数Naが判定用エンジン回転数Nr以上であれば、ステップS13及びステップS14において、上述したエンジン回転数低下制御を継続する。これにより、図14の実線Lbに示すように、目標エンジン回転数Npに向けてエンジン回転数が低下していくこととなる。ステップS15において、振動抑制制御判定部238は、現在の車体振動値Saが判定用振動値Sth未満であるか否かを判別する。この判別結果が否定(NO)であれば、ステップS13に戻り、エンジン回転数低下制御を継続する。ステップS15での判別結果が肯定(YES)であれば、次のステップS16に進み、第1制御終了判定部252は、車速変動幅dVが許容変動幅Vth以下で、且つ、現在のエンジン回転数Neが目標エンジン回転数Np以下であるか否かを判別する。この判別結果が否定(NO)であれば、上述したステップS6以降の処理に戻る。反対に、上述のステップS16での判別結果が肯定(YES)であれば、エンジン回転数低下制御の終了と判定し、変速比制御モータ164による変速比のシフト動作を停止する。
【0091】
一方、上述のステップS12において、エンジン回転数Naが判定用エンジン回転数Nr未満であると判別された場合は、ステップS17に進み、第2スロットルバルブ駆動部260は、車速変動幅dVが許容変動幅Vth以下となる範囲で、スロットルバルブモータ222を駆動して、スロットルバルブ216の開度(バルブ開度Av)を増加させる(図15の実線Lc参照)。これにより、エンジン出力が増加し、それに伴って、エンジン回転数Neが上昇する(図15の実線Ld参照)。
【0092】
つまり、車体振動値Saが判定用振動値Sth以上となった時点tbのエンジン回転数Ne(=Na)が判定用エンジン回転数Nr以上であれば、図15の実線Lbで示すようにエンジン回転数が低下していき、時点tbのエンジン回転数Ne(=Na)が判定用エンジン回転数Nr未満であれば、図15の実線Ldで示すようにエンジン回転数が上昇していくこととなる。
【0093】
その後、ステップS18において、第2変速モータ駆動部258は、車速変動幅dVが許容変動幅Vth以下となる範囲で、変速比制御モータ164を駆動して、無段変速機106の現在の巻き付け径Raを低レシオ側にシフトさせる(図15の実線Le参照)。このとき、後輪18側の負荷が低減することで、エンジン回転数Neが上昇していくが、第2変速モータ駆動部258は、エンジン回転数Ne×巻き付け径Raが略一定となるようにして巻き付け径Raを低レシオ側にシフトさせる。
【0094】
ステップS19において、第2スロットルバルブ駆動部260は、車速変動幅dVが許容変動幅Vth以下となる範囲で、巻き付け径Raの低レシオ側へのシフトに対して、後輪18の駆動力が略一定となるように、すなわち、エンジン回転数Neの低下変化が微小となるように、スロットルバルブモータ222を駆動して、スロットルバルブ216の開度(バルブ開度Av)を減少させる(図15の実線Lf参照)。これにより、エンジン出力が低減し、後輪18の駆動力が略一定となる。このとき、エンジン出力×巻き付け径Raが略一定となるように、スロットルバルブ216を閉じる方向に制御する。
【0095】
ステップS20において、振動抑制制御判定部238は、現在の車体振動値Saが判定用振動値Sth未満であるか否かを判別する。この判別結果が否定(NO)であれば、上述したステップS18に戻り、エンジン回転数上昇制御を継続する。反対に、上述のステップS20での判別結果が肯定(YES)であれば、エンジン回転数上昇制御の終了と判定し、変速比制御モータ164による変速比のシフト動作を停止する。
【0096】
つまり、このエンジン回転数上昇制御においては、現在の車体振動値Saが判定用振動値Sth以上となった時点tbで、変速比を低レシオ側にシフトするが、スロットルバルブ216が開いたままであると、エンジン出力が大きくなり、実質的に後輪の駆動力がクルーズ走行に必要な駆動力を上回ることになる。そこで、変速比を低レシオ側にシフトすると共に、スロットルバルブ開度を閉じる方向に動かすことで、後輪の駆動力は略同一のままエンジン回転数Neが上昇することによって、共振が回避されることになる。
【0097】
上述した図11のステップS10において、スポーツモードであると判別された場合は、図13のステップS21以降に進み、強制的に、第2変速モータ駆動部258及び第2スロットルバルブ駆動部260によるエンジン回転数上昇制御を行う。
【0098】
すなわち、ステップS21において、第2変速モータ駆動部258は、車速変動幅dVが許容変動幅Vth以下となる範囲で、変速比制御モータ164を駆動して、無段変速機106の現在の巻き付け径Raを低レシオ側にシフトさせる(図16の実線Le参照)。このとき、後輪18側の負荷が低減することで、エンジン回転数Neが上昇していくが(図16の実線Ld参照)、第2変速モータ駆動部258は、エンジン回転数Ne×巻き付け径Raが略一定となるようにして巻き付け径Raを低レシオ側にシフトさせる。
【0099】
ステップS22において、第2スロットルバルブ駆動部260は、車速変動幅dVが許容変動幅Vth以下となる範囲で、巻き付け径Raの低レシオ側へのシフトに対して、後輪18の駆動力が略一定となるように、すなわち、エンジン回転数Neの低下変化が微小となるように、スロットルバルブモータ222を駆動して、スロットルバルブ216の開度(バルブ開度Av)を減少させる(図16の実線Lg参照)。これにより、エンジン出力が低減し、後輪18の駆動力が略一定となる。このとき、エンジン出力×巻き付け径Raが略一定となるように、スロットルバルブ216を閉じる方向に制御する。
【0100】
ステップS23において、振動抑制制御判定部238は、現在の車体振動値Saが判定用振動値Sth未満であるか否かを判別する。この判別結果が否定(NO)であれば、ステップS21に戻り、エンジン回転数上昇制御を継続する。ステップS23での判別結果が肯定(YES)であれば、次のステップS24に進み、第2制御終了判定部262は、車速変動幅dVが許容変動幅Vth以下で、且つ、現在のエンジン回転数Neが目標エンジン回転数Np以下であるか否かを判別する。この判別結果が否定(NO)であれば、上述したステップS6以降の処理に戻る。反対に、上述のステップS24での判別結果が肯定(YES)であれば、エンジン回転数上昇制御の終了と判定し、変速比制御モータ164による変速比のシフト動作を停止する。
【0101】
このように、本実施の形態に係る変速制御装置10(変速制御部230)においては、少なくともグリップ開度センサ226の検出信号に基づいて、クルーズ走行状態と判定されると、目標エンジン回転数を所定のクルーズ回転数Npに設定すると共に、車速が一定となる関係で、無段変速機106(変速比制御モータ164)により、変速比を小さくしつつ(高レシオ側にシフト)、エンジン回転数Neを所定のクルーズ回転数Npに向けて低下させるエンジン回転数低下制御を行い、該エンジン回転数低下制御中に、車体の振動値Saが判定用振動値Sth以上であると判定したときに、少なくとも無段変速機106(変速比制御モータ164)により、エンジン回転数Neを制御して、車体振動値Saが判定用振動値Sth未満になるように制御するようにしたので、エンジン回転数低下制御中に、自動二輪車12に振動が発生したことを検出した場合には、車速の変化が少なくなるように、変速比とエンジンの回転数を変化させることで、迅速に共振から回避し、乗車振動の発生時間を短くすることができ、しかも、車速の変動を抑えることができる。
【0102】
エンジン回転数低下制御部236は、車速の変動幅dVが所定値Vth以下となるように変速比を変化させた後に、第1スロットルバルブ駆動部250によるエンジン104への吸気量を変化させるようにしたので、エンジン104への吸気量の変化がエンジン104の出力増加に結びつくまでは、タイムラグが生じるため、変速比を先に変化させることで、車速変動幅dVを所定値Vth以下に抑えやすくなる。
【0103】
燃費優先モードが選択されている場合に動作する第1振動抑制制御部240は、エンジン回転数低下制御中に、振動抑制制御判定部238により車体振動値Saが所定値Sth以上であると判定したときに、現在のエンジン回転数Neと判定用エンジン回転数Nrの上下関係に応じて、エンジン回転数低下制御を継続するか、車速が一定となる関係で、少なくとも無段変速機106(変速比制御モータ164)により、変速比を大きくしつつ(低レシオ側にシフト)、エンジン回転数Neを上昇させるかを選択し、車体振動値Saが所定値Sth未満になるように制御するようにしている。そのため、燃費優先モード下において、エンジン104の低回転数化制御中に、車両に振動が発生したことを検出した場合には、車速の変化が少なくなるように、変速比とエンジン回転数を変化させることで、迅速に共振から回避し、乗車振動の発生時間を短くすることができる。
【0104】
また、第1振動抑制制御部240は、現在のエンジン回転数Neが判定用エンジン回転数Nr以上の場合、エンジン回転数低下制御を継続させて、エンジン回転数Neを低下させ、現在のエンジン回転数Neが判定用エンジン回転数Nr未満の場合、少なくとも無段変速機106により、変速比を大きくしつつ、エンジン回転数Neを上昇させるようにしている。特に、現在のエンジン回転数Neが判定用エンジン回転数Nr以上の場合に、エンジン回転数Neを下げることで、共振を回避するので、低燃費を向上させることができる。
【0105】
第1振動抑制制御部240は、エンジン回転数Neが判定値Nr未満である場合に、無段変速機106による変速比を大きくする制御に先行して、第2スロットルバルブ駆動部260により、エンジン104への吸気量を増量制御するようにしている。この場合、振動の発生源であるエンジン104の回転数を上昇させることが優先されるため、迅速に共振を回避することができる。
【0106】
第1振動抑制制御部240は、エンジン回転数Neが判定用エンジン回転数Nr以上となった場合、エンジン回転数Neの低下制御に対して、第1スロットルバルブ駆動部250により、エンジン104への吸気量を増量させる方向に制御し、エンジン回転数Neが判定用エンジン回転数Nr未満となった場合に、エンジン回転数Neの上昇制御に対して、第2スロットルバルブ駆動部260により、エンジン104への吸気量を減量させる方向に制御するようにしている。この場合、エンジン回転数Neが判定値Nr以上となって、エンジン回転数Neの低下制御が行われると、後輪18の駆動力が低下し、クルーズ走行に必要な車速を確保できなくなる。そこで、第1スロットルバルブ駆動部250により、エンジン104への吸気量を増量させる方向に制御することで、後輪18の駆動力が向上し、エンジン回転数Neの低下制御と相俟ってクルーズ走行に必要な一定の後輪18の駆動力を得ることができる。
【0107】
同様に、エンジン回転数Neが判定用エンジン回転数Nr未満となって、エンジン回転数Neの上昇制御が行われると、後輪18の駆動力が向上し、クルーズ走行に必要な車速を確保できなくなる。そこで、第2スロットルバルブ駆動部260により、エンジン104への吸気量を減量させる方向に制御することで、後輪18の駆動力が低減し、エンジン回転数Neの上昇制御と相俟ってクルーズ走行に必要な一定の後輪18の駆動力を得ることができる。
【0108】
スポーツモードが選択されている場合に動作する第2振動抑制制御部242は、エンジン回転数低下制御中に、振動抑制制御判定部238により車体振動値Saが所定値Sth以上であると判定したときに、常に、車速が一定となる関係で、少なくとも無段変速機106により、変速比を大きくしつつ、エンジン回転数Neを上昇させて、車体振動値Saが所定値Sth未満になるように制御するようにしている。この場合、スポーツモード下において、エンジンの低回転数化制御中に、車両に振動が発生したことを検出した場合には、常に、エンジン104の回転数を上昇させる方向に制御して振動低減を図るため、クルーズ回転数を燃費優先モードよりも高く設定することとなり、結果として、再加速時に必要な余裕駆動力が燃費優先モードよりも大きくなり、再加速時の動力性能を向上させることができる。
【0109】
また、第2振動抑制制御部は、エンジン回転数Neの上昇に対して、第2スロットルバルブ駆動部260により、エンジン104への吸気量を減量させる方向に制御している。エンジン回転数Neが判定用エンジン回転数Nr未満となって、エンジン回転数Neの上昇制御が行われると、後輪18の駆動力が向上し、クルーズ走行に必要な車速を確保できなくなる。そこで、第2スロットルバルブ駆動部260により、エンジン104への吸気量を減量させる方向に制御することで、後輪18の駆動力が低下し、上述のエンジン回転数Neの上昇制御と相俟ってクルーズ走行に必要な一定の後輪駆動力を得ることができる。
【0110】
また、振動抑制制御判定部238は、振動センサ228の出力によって車体の振動の大きさを判定するようにしており、特に、振動センサをハンドルを操向可能に支承する部材(ヘッドパイプ24、ハンドルポスト25等)に配置するようにしている。この場合、運転者が最も振動を感じる部位に振動センサ228を配置することで、運転者が感じる振動を振動抑制制御判定部238に反映させることができ、共振の発生を効果的に抑制することができる。
【0111】
なお、本発明に係る変速制御装置は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【符号の説明】
【0112】
10…変速制御装置 12…自動二輪車
14…車体フレーム 16…前輪
18…後輪 20…ハンドル
24…ヘッドパイプ 25…ハンドルポスト
26…ユニットエンジン 104…エンジン
106…無段変速機 108…電動モータ
148…エンジン回転数センサ 164…変速比制御モータ
176…変速比センサ 191…車速センサ
206…シフトスイッチ 210…ECU
212…吸気管 214…排気管
216…スロットルバルブ 220…スロットルグリップ
222…スロットルバルブモータ 224…バルブ開度センサ
226…グリップ開度センサ 228…振動センサ
230…変速制御部 232…クルーズ走行判定部
234…基準車速設定部 236…エンジン回転数低下制御部
238…振動抑制制御判定部 240…第1振動抑制制御部
242…第2振動抑制制御部 244…目標エンジン回転数設定部
246…目標レシオ設定部 248…第1変速モータ駆動部
250…第1スロットルバルブ駆動部 252…第1制御終了判定部
254…判定用エンジン回転数設定部 256…制御方向判定部
258…第2変速モータ駆動部 260…第2スロットルバルブ駆動部
262…第2制御終了判定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン(104)の回転数(Ne)を検出するエンジン回転数検出手段(148)と、
車両(12)の車速(V)を検出する車速検出手段(191)と、
前記車両(12)の運転状態に応じて、変速用電動モータ(164)によって変速比を変える電動ベルト式無段変速機(106)と、
車体の振動の大きさを判定する振動判定手段(238)と、
スロットル操作手段(220)の操作状態を検出するスロットル開度検出手段(226)と、
エンジン(104)に連結される吸気通路(212)に設けられ、スロットル開度に応じてエンジン(104)への吸気量を制御する吸気量制御手段(216)と、を備えた変速制御装置において、
少なくとも前記スロットル開度検出手段(226)の検出信号に基づいて、巡航走行状態と判定されると、目標エンジン回転数を所定のクルーズ回転数(Np)に設定すると共に、前記車速(V)が一定となる関係で、少なくとも前記電動ベルト式無段変速機(106)により、変速比を小さくしつつ、前記エンジンの回転数(Ne)を前記所定のクルーズ回転数(Np)に向けて低下させるエンジン回転数低下制御手段(236)と、
前記エンジン回転数低下制御手段(236)による制御中に、前記振動判定手段(238)により前記車体の振動が所定値(Sth)以上であると判定したときに、前記エンジン回転数(Ne)に応じて前記エンジン回転数(Ne)の低下制御を継続するか、前記車速(V)が一定となる関係で、前記電動ベルト式無段変速機(106)と前記吸気量制御手段(216)により変速比を大きくしつつ、前記エンジン(104)への吸気量を減量制御することにより、前記エンジン回転数(Ne)を上昇させるかを選択して、前記車体の振動が前記所定値(Sth)未満になるように制御する振動抑制制御手段(240又は242)とを有することを特徴とする変速制御装置。
【請求項2】
請求項1記載の変速制御装置において、
前記エンジン回転数低下制御手段(236)は、
前記車速(V)の変動幅(dV)が所定値(Vth)以下となるように変速比を変化させた後に、前記吸気量制御手段(216)によるエンジン(104)への吸気量を変化させることを特徴とする変速制御装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の変速制御装置において、
前記車両(12)は、さらに、燃費を優先する燃費優先モードと、走行性能を優先するスポーツモードの変速モード選択手段(206)を具備し、
前記振動抑制制御手段(240)は、
前記変速モード選択手段(206)にて前記燃費優先モードが選択されている場合に、前記エンジン回転数低下制御手段(236)による制御中に、前記振動判定手段(238)により前記車体の振動が所定値(Sth)以上であると判定したときに、現在のエンジンの回転数(Ne)と予め設定された判定値(Nr)の上下関係に応じて、前記エンジン回転数低下制御手段(236)によりエンジンの回転数(Ne)の低下制御を継続するか、前記車速(V)が一定となる関係で、少なくとも前記電動ベルト式無段変速機(106)により、変速比を大きくしつつ、前記エンジンの回転数(Ne)を上昇させるかを選択し、前記車体の振動が前記所定値(Sth)未満になるように制御することを特徴とする変速制御装置。
【請求項4】
請求項3記載の変速制御装置において、
前記振動抑制制御手段(240)は、
前記現在のエンジンの回転数(Ne)が前記判定値(Nr)以上の場合、前記エンジン回転数低下制御手段(236)によるエンジン回転数の低下制御を継続させて、前記エンジンの回転数(Ne)を低下させ、
前記現在のエンジンの回転数(Ne)が前記判定値(Nr)未満の場合、少なくとも前記電動ベルト式無段変速機(106)により、変速比を大きくしつつ、前記エンジンの回転数(Ne)を上昇させることを特徴とする変速制御装置。
【請求項5】
請求項4記載の変速制御装置において、
前記振動抑制制御手段(240)は、
前記エンジンの回転数(Ne)が前記判定値(Nr)未満となった場合、前記電動ベルト式無段変速機(106)による前記変速比を大きくする制御に先行して、前記吸気量制御手段(216)により、エンジン(104)への吸気量を増量制御することを特徴とする変速制御装置。
【請求項6】
請求項4記載の変速制御装置において、
前記振動抑制制御手段(240)は、
前記エンジンの回転数(Ne)が前記判定値(Nr)以上となった場合、前記エンジンの回転数(Ne)の低下に対して、前記吸気量制御手段(216)により、エンジン(104)への吸気量を増量させる方向に制御し、
前記エンジンの回転数(Ne)が前記判定値(Nr)未満となった場合、前記エンジンの回転数(Ne)の上昇に対して、前記吸気量制御手段(216)により、エンジン(104)への吸気量を減量させる方向に制御することを特徴とする変速制御装置。
【請求項7】
請求項1記載の変速制御装置において、
前記車両(12)は、さらに、燃費を優先する燃費優先モードと、走行性能を優先するスポーツモードの変速モード選択手段(206)を具備し、
前記振動抑制制御手段(242)は、
前記変速モード選択手段(206)にて前記スポーツモードが選択されている場合に、前記エンジン回転数低下制御手段(236)による制御中に、前記振動判定手段(238)により前記車体の振動が所定値(Sth)以上であると判定したときに、常に、前記車速(V)が一定となる関係で、少なくとも前記電動ベルト式無段変速機(106)により、変速比を大きくしつつ、前記エンジンの回転数(Ne)を上昇させて、前記車体の振動が前記所定値(Sth)未満になるように制御することを特徴とする変速制御装置。
【請求項8】
請求項7記載の変速制御装置において、
前記振動抑制制御手段(242)は、
前記エンジンの回転数(Ne)の上昇に対して、前記吸気量制御手段(216)により、エンジン(104)への吸気量を減量させる方向に制御することを特徴とする変速制御装置。
【請求項9】
請求項1記載の変速制御装置において、
前記振動判定手段(238)は、振動検出手段(228)の出力によって前記車体の振動の大きさを判定し、
前記振動検出手段(228)はハンドル(20)を操向可能に支承する部材に配置されていることを特徴とする変速制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−214071(P2012−214071A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−79231(P2011−79231)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】