説明

車両の走行制御装置

【課題】追従走行制御中に、先行車を見失った場合であっても、運転者に不快感及び違和感を与えることなく、運転者のフィーリングに合った報知を行うことができるようにする。
【解決手段】先行車を捕捉する前方認識装置3と、前方認識装置3で先行車を捕捉した場合に、この先行車に対する追従走行制御を行う制御ユニット2と、前方認識装置3が先行車を捕捉したとき或いは捕捉した先行車が離脱したときに報知するブザー6cとを備え、制御ユニット2は、前方認識装置3が先行車をロストしたときはブザー6cによる報知を禁止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、追従走行制御中に先行車を見失った場合であっても、その旨を運転者に報知しないようにした車両の走行制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の車両に搭載したカメラ、ミリ波レーダ、レーザレーダ等を備える前方認識装置を用いて自車前方の走行環境を検出し、自車前方に先行車を検出した場合は、自車或いは先行車の車速に基づいて目標車間距離を設定し、この目標車間距離を維持した状態で追従走行制御を行う走行制御装置が種々提案されている。
【0003】
又、この種の走行制御装置では、追従走行制御中に先行車を見失った(ロストした)場合、ロスト後に再捕捉した場合、或いは追従走行制御から、設定車速(セット車速)を維持して走行する定速走行制御へ自動的に切り替わる場合等において、運転者にその旨を報知する報知手段(例えばブザー)が併設されている。
【0004】
例えば特許文献1(特許第3132430号公報)には、追従走行制御中に先行車がロストした場合、その旨を運転者に報知すると共に、ロスト直前に報知されている場合は、その報知状態を保持する技術が開示されている。この文献に開示されている技術によれば、先行車を一時的にロストしても、その直前で報知状態が途切れることがなく、この報知状態を継続させることができる。
【特許文献1】特許第3132430号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、追従走行制御中に先行車をロストした場合、直ちに定速走行制御へ移行することはない。すなわち、実際には先行車が存在してるが、この先行車がカーブや登坂路に進入する等して、前方認識装置が先行車を一時的に見失ったに過ぎない場合が考えられるからである。
【0006】
このような場合、ロスト後に前方認識装置が先行車を再捕捉する可能性があり、従って、走行制御装置は、前方認識装置が先行車をロストした直後から、自車速をロスト時の車速で一定時間保持する制御を行う。そして、この保持時間内に先行車が再捕捉された場合は、追従走行制御が継続され、又、先行車が捕捉されなかった場合は、定速走行制御へ自動的に切り替わるか、当該走行制御が自動的に解除される。
【0007】
この場合、上述した文献に開示されている技術では、先行車をロストしたとき、その旨が運転者に報知され、その後、再捕捉したときも、その旨が運転者に報知される。しかし、先行車をロストした際の速度は一定に保持されているため、先行車をロスト後、この先行車を短時間に再捕捉した場合、自車両の挙動は大きく変化しておらず、車両挙動が大きく変化していないにも拘わらず、短時間の間に二度も報知されることにより、運転者に不快感を与えてしまう。
【0008】
又、先行車をロストしてから一定時間経過後に定速走行制御へ移行する場合、ロスト時に、その旨が報知されても、定速走行制御へ移行するまでの間は速度が保持されており、従って、車両挙動が変化しないため、運転者に違和感を与えてしまう不都合がある。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑み、追従走行制御中に、先行車を見失った場合であっても、運転者に不快感及び違和感を与えることなく、運転者のフィーリングに合った報知を行うことのできる車両の走行制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため本発明は、自車両前方を走行する先行車を捕捉する前方認識手段と、前記前方認識手段で前記先行車を捕捉した場合に該先行車に対する追従走行制御を行う走行制御手段と、前記前方認識手段が前記先行車を捕捉したとき或いは捕捉した該先行車が捕捉されなくなったときに報知する報知手段とを備える車両の走行制御装置において、前記走行制御手段は、前記前方認識手段が前記先行車を見失うことにより捕捉されなくなったときは前記報知手段による報知を禁止することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、前方認識手段が先行車を見失っても、直ちに車両挙動が大きく変化することはなく、従って、報知手段による報知を禁止することで、運転者に不快感及び違和感を与えることなく、運転者のフィーリングに合った報知を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面に基づいて本発明の一実施形態を説明する。図1に走行制御装置を搭載した車両の概略構成図を示す。
【0013】
図1の符号1は自動車等の車両(自車両)であり、この車両1に、車両の運転状態を制御すると共に走行制御手段としての機能を備える制御ユニット2が搭載されている。この制御ユニット2は、マイクロコンピュータを主体に構成され、周知のCPU、ROM、RAM、及びEEPROM等の不揮発性記憶手段等を有している。CPUは、ROMに記憶されている制御プログラムに従い、各センサ・スイッチ類からの検出信号等を処理し、RAMに格納される各種データ、及び不揮発性メモリに格納されている各種学習値データ等に基づき、エンジン制御、ブレーキ制御等の車両走行制御を行う。
【0014】
この制御ユニット2の入力側に、自車両1前方を認識し先行車を捕捉する前方認識手段としての前方認識装置3、自車両1の車速(自車速)Vspを検出する車速センサ4、定速走行(クルーズ)制御をON/OFFするクルーズスイッチ5、スロットル弁の開度を検出するスロットル開度センサ8b等が接続されている。又、この制御ユニット2の出力側に、速度メータ、回転メータ等が所定に配設されているコンビネーションメータ6に設けられているスピーカ6a、表示手段としての追尾ランプ6b、報知手段としてのブザー6cが接続されており、更に、エンジン7の吸気系に配設されている電子制御スロットル装置8に設けられていると共にスロットル弁を開閉動作させるスロットルアクチュエータ8a及びブレーキブースタ9が接続されている。ブレーキブースタ9は、4輪に併設されているブレーキホイールシリンダ9aに対してブレーキ油圧を強制的に供給するものであり、ブレーキブースタ9を介して各ブレーキホイールシリンダ9aにブレーキ油圧が供給されると各車輪が制動され、走行中の自車両1は強制的に減速される。
【0015】
前方認識装置3にステレオカメラ3aとステレオ画像処理部3bが設けられている。ステレオカメラ3aは、ステレオ光学系として例えば電荷結合素子(CCD)等の固体撮像素子を用いた左右一対のCCDカメラで構成されている。この各CCDカメラは、それぞれ車室内の天井前方に一定の間隔を持って取り付けられ、車外の対象を異なる視点からステレオ撮像し、画像データをステレオ画像処理部3bに入力する。
【0016】
又、ステレオ画像処理部3bは、左右一対のステレオカメラ3aで撮像した、自車両1の前方のステレオ画像に対し、対応する位置のずれ量から距離情報を求め距離画像を生成する。そして、このデータを基に先行車を認識すると共に自車両1と先行車との相対距離を求め、認識した先行車のデータを制御ユニット2へ出力する。
【0017】
制御ユニット2は、先行車と自車両1との車間距離を適切に維持するACC(Adaptive Cruise Control:車間距離制御)制御を実行する機能を備えている。ACC制御では、ステレオ画像処理部3bで認識した先行車に関する情報と、車速センサ4で検出した自車速Vspとに基づき、先行車と自車両1との車間距離を適切に維持する制御が行われる。このACC制御は、クルーズスイッチ5をONすることで起動される。
【0018】
すなわち、クルーズスイッチ5がONされると、ステレオ画像処理部3bで認識した先行車情報を読込み、自車両1前方の走行路に先行車が走行しているか否かを識別する。そして、先行車が検出されていない場合は、運転者が設定したセット車速に自車両1の車速Vspを維持させる定速走行制御を行う。又、先行車が検出され、且つ先行車の車速がセット車速以下の場合は先行車に対して所定の車間距離を維持した状態で追従する追従走行制御が実行される。
【0019】
定速走行制御では、セット車速を目標車速として設定し、電子制御スロットル装置8に設けられているスロットルアクチュエータ8aを動作させてスロットル弁を開閉動作させ、自車速Vspを目標車速に維持させる制御を行う。又、追従走行制御では、先行車或いは自車両1の車速に基づいて設定した目標車間距離を維持するように、上述と同様、スロットル弁を開閉動作させて自車速Vspを制御する。その際、先行車がブレーキを作動させる等して減速した結果、自車両と先行車との車間距離が目標車間距離よりも短くなり、スロットル弁を全閉させて減速させただけでは、車間距離を目標車間距離まで戻すことが出来ない場合、ブレーキブースタ9を作動させ、4輪に併設されているブレーキホイールシリンダ9aに対してブレーキ油圧を供給し、各車輪を強制的に制動させて減速させる。
【0020】
ところで、前方認識装置3が先行車1’を一瞬見失った場合、制御ユニット2は、先行車が自車両1前方に存在しているか否かを、ステレオ画像処理部3bからの情報のみでは明確に判定することができない。従って、このような場合、制御ユニット2は自車速Vspを一定時間保持した状態でACC制御を継続する保持制御が行われる。
【0021】
尚、先行車を見失う態様としては、図5(a)に示すように、自車両1が先行車1’を追従走行制御中、当該先行車1’がカーブに進入して、ステレオカメラ3aの捕捉範囲から外れ、ステレオ画像処理部3bにおいて先行車1’を見失う(ロストした)場合が考えられる。或いは先行車が登坂路に進入した際に、この先行車がステレオカメラ3aの捕捉範囲から外れて見失う(ロストした)場合が考えられる。又、平坦な直線路を走行中であっても逆光の影響でCCDが自車両1前方の画像を捕らえることができなくなって先行車1’を見失う(ロストした)場合も考えられる。
【0022】
そして、一定の保持時間内に、自車両1前方の走行路に先行車が捕捉された場合は、追従走行制御を再開させ、又、保持時間経過後も先行車が捕捉されない場合はACC制御をキャンセルし、運転者のアクセル操作により車速を制御する通常制御へ移行する。
【0023】
ACC制御では、自車両1前方の走行路に先行車を捕捉した場合、或いは当該先行車を捕捉後にロストした場合、又はACC制御を自動的にキャンセルする場合等のように、走行条件が変化する場合、追尾ランプ6bの表示、或いはブザー6cの吹鳴(ブザー音)により、その旨を運転者に報知する。
【0024】
制御ユニット2で実行される運転者への報知は、具体的には図2〜図4に示すフローチャートに従って行われる。イグニッションスイッチをONした後、クルーズスイッチ5をONすると、先ず、図2、図3に示すブザー制御ルーチンが、設定演算周期毎に起動される。
【0025】
そして、ステップS1で、先行車状態変化フラグFs、保持制御終了フラグFe、切替りフラグFcを初期化する(Fs=0,Fe=0,Fc=0)。次いで、ステップS2で、ステレオ画像処理部3bからの情報に基づき、自車両1前方の走行路に先行車を捕捉した(なし→あり)か、又は、捕捉後に離脱した(あり→なし)か、或いは捕捉後にロストした(あり→なし)か、或いは変化なしかについて調べる。尚、ここで、離脱とは、図5(b)に示すように、先行車1’がステレオカメラ3aの捕捉範囲内にあるが、図の破線で示すように、走行レーンを変更して、自車両1前方の走行路から外れた状態、或いは自車両1が走行レーンを変更した結果、相対的に先行車1’が自車両1前方の走行路から外れた状態を言う。
【0026】
そして、自車両1前方の走行路に先行車を捕捉している状態から捕捉できなくなった状態に変化した場合(あり→なし)、ステップS3へ進む。又、自車両1前方の走行路に先行車の捕捉状態が継続している場合はステップS5へジャンプする。すなわち、追従走行制御が継続されている場合、或いは定速走行制御が継続されている場合は、ステップS5へジャンプする。
【0027】
ステップS3へ進むと、先行車ありからなしに変化した原因が、ロストによるものか、離脱によるものかを判定し、ロストによる場合はステップS4へ進み、離脱による場合は、そのままステップS5へ進む。
【0028】
ステップS4では、警報マスクフラグFmをセットして(Fm←1)、ステップS5へ進む。尚、この警報マスクフラグFmは、イグニッションスイッチをONした際に初期化(Fm←0)される。このように、警報マスクフラグFmは、追従走行制御を実行している際に、自車両1前方前方の走行路に先行車を捕捉できなくなり、その原因がロストの場合のみ、警報マスクフラグFmがセットされる。
【0029】
そして、ステップS2或いはステップS3或いはステップS4からステップS5へ進むと、警報マスクフラグFmがセットされているか否か、すなわち、先行車をロストしたか、それ以外かを判定し、Fm=1(ロスト)の場合は、ステップS7へ分岐し、Fm=0(ロスト以外)の場合は、ステップS6へ進む。
【0030】
例えばステップS3で、先行車をロストしたと判定されて、ステップS4で警報マスクフラグFmがセットされた場合、ステップS5からステップS7へ進む。又、警報マスクフラグFmがセットされた後、次の演算周期でロストの状態が継続されている場合は、ステップS2からステップS5へ進み、このとき警報マスクフラグFmがセットされている(Fm=1)ため、ステップS7へ進む。
【0031】
ステップS6では、先行車の状態が変化したか否か、すなわち、先行車ありの状態からなしの状態に変化したか、或いは先行車なしの状態からありの状態に変化したか、或いは先行車が別の先行車と切替わったか否かを調べる。そして、上述した何れかの場合は、先行車の状態が変化したと判定し、ステップS8へ進み、先行車状態変化フラグFsをセットして(Fs=1)、ステップS16へ進む。又、それ以外の場合、すなわち、先行車の状態が変化しない場合は、そのままステップS16へ進む。
【0032】
一方、ステップS5からステップS7へ分岐すると、自車両1前方の走行路に先行車を捕捉しているか否か(先行車ありか否か)を調べ、ロスト状態が継続している(先行車なし)の場合はステップS9へ分岐し、又、先行車をロスト後に再捕捉した(先行車ありに変化した)場合は、ステップS10へ進む。
【0033】
ステップS9へ進むと、マスク時間計測タイマの計時時間Tmをインクリメントする(Tm←Tm+1)。尚、このマスク時間計測タイマの計時時間Tmは、イグニッションスイッチをONした際に初期化(Tm←0)されている。
【0034】
その後、ステップS11へ進むと、計時時間Tmと保持時間Toとを比較する。この保持時間Toは、後述するブザー6cの吹鳴を禁止する時間(マスク時間)を設定するもので、本実施形態では、おおよそ1〜2[sec]に設定されている。
【0035】
そして、Tm<Toの場合は、そのままステップS16へ進む。又、Tm≧To、すなわち、先行車をロスト後、保持時間Toを経過した後も、自車両1前方の走行路に先行車が捕捉されなかった場合は、ステップS12へ分岐する。ステップS12へ進むと保持制御終了フラグFeをセットし(Fe←1)、続くステップS13で、警報マスクフラグFmとマスク時間計測タイマの計時時間Tmとを共にクリアして(Fm←0,Tm←0)、ステップS16へ進む。又、上述したステップS7からステップS10へ進むと、警報マスクフラグFmとマスク時間計測タイマの計時時間Tmとを共にクリアし(Fm←0,Tm←0)、ステップS14へ進む。
【0036】
ステップS14では、再捕捉された先行車が、前回捕捉した先行車と異なっているか否か、すなわち、先行車が、前回認識した先行車と自車両1との間に割り込んだ別の先行車であったり、比較的遠くを走行していた先行車に対して自車両1が近接した場合等、先行車が切替わったか否かを調べる。尚、前回捕捉した先行車と今回捕捉した先行車とが同一か否かの判定は種々のものが考えられる。例えば、車種毎に設けられている車両モデル画像とのパターンマッチングにより先行車の種別を認識するものでは、前回認識した先行車のモデル画像と今回認識した先行車のモデル画像とが一致するか否かで判定する。或いは前回認識した先行車と今回認識した先行車の、左右テールランプの間隔及びテールランプの位置などを比較して判定する。或いは前回認識した先行車と今回認識した先行車のナンバープレートに表記されている車両登録番号を比較して、一致するか否かを判定する。
【0037】
そして、今回認識した先行車と前回認識した先行車とが同一と判定した場合は、そのままステップS16へ進む。又、今回認識した先行車と前回認識した先行車とが異なる、すなわち、先行車が切替わったと判定した場合は、ステップS15へ進み、切替りフラグFcをセットして(Fc←1)、ステップS16へ進む。
【0038】
そして、ステップS16において、先行車状態変化フラグFs、保持制御終了フラグFe、切替りフラグFcの値を参照し、これらのフラグの内の少なくとも1つがセットされているか否かを調べる。そして、少なくとも1つがセットされている場合は(Fs=1,and/or,Fe=1,and/or,Fc=1)、ブザー6cの吹鳴を許可すべくステップS17へ分岐し、ブザー6cを短時間(0.5[sec]程度)だけ吹鳴(ON)させて、ルーチンを抜ける。一方、上述したフラグFs,Fe,Fcの何れもクリアされている場合は(Fs=0,and,Fe=0,and,Fc=0)、そのままルーチンを抜ける。
【0039】
従って、先行車をロストした場合は、マスク時間計測タイマの計時時間Tmが保持時間Toを経過するまで(Tm≧To)は、上述したフラグFs,Fe,Fcは、その何れもがクリアされているため(Fs=0,and,Fe=0,and,Fc=0)、その間、ブザー6cが吹鳴することはない。又、ロスト後、保持時間Toが経過する前に、前回と同一の先行車が認識されても、各フラグFs,Fe,Fcは全てクリアされているため、ブザー6cが吹鳴することはない。一方、ロスト後、保持時間Toが経過し、或いは保持時間To内に前回捕捉した先行車とは別の先行車が自車両1前方の走行路に捕捉された場合は、保持制御終了フラグFe、或いは切替りフラグFcがセットされるため(ステップS12、ステップS15参照)、ブザー6cは吹鳴される。
【0040】
このように、本実施形態によるブザー制御では、先行車をロストした場合であっても、保持時間To内に、ロスト前と同一の先行車が再捕捉された場合は、ブザー6cを吹鳴させることなく、追従走行制御が再開される。一方、保持時間Toを経過しても先行車が捕捉されなかった場合は、ブザー6cが吹鳴されると同時に、定速走行制御へ移行する。その際、追従走行制御時の自車速Vspがセット車速よりも遅い場合は、セット車速へ復帰させるために加速運転となる。又、先行車をロストした後、保持時間To内に、ロスト前と別の先行車が自車両1前方の走行路に再捕捉された場合は、ブザー6cを吹鳴させると同時に、この別の先行車に対して追従走行制御が行われる。
【0041】
ところで、追従走行制御中において、先行車がカーブや登坂路に進入する等して、ステレオ画像処理部3bは先行車をロストした場合であっても、運転者は先行車を依然として目視により認識している場合が多い。本実施形態では、先行車をロストしても、直ちにブザー6cを吹鳴させず、又、ロスト後、保持時間To内に同一の先行車を認識した場合は、ブザー6cを吹鳴させることなく追従走行制御を再開させるようにしたので、ブザー6cが頻繁に吹鳴されず、運転者に違和感や不快感を与えることがない。更に、ロスト後に捕捉した先行車が、ロスト前の先行車と異なる場合は、ブザー6cを吹鳴させるようにしたので、運転者に安心感を与えることができる。その結果、運転者のフィーリングに合ったブザー制御を行うことができる。
【0042】
次に、図4に示す追尾ランプ表示制御ルーチンについて説明する。このルーチンは設定演算周期毎に実行され、先ず、ステップS21で、自車両1前方の走行路に先行車が捕捉されているか否かを調べ、捕捉されていない(先行車なし)場合はステップS21へ進み、又、捕捉されている(先行車あり)場合は、ステップS24へ分岐する。
【0043】
ステップS22へ進むと、警報マスクフラグFmの値を調べ、先行車なしの原因がロストか否かを調べる。そして、Fm=0のロストではない場合は、ステップS23へ進み、又、Fm=1のロストの場合はステップS24へ進む。
【0044】
ステップS21で先行車なしと判定され、且つステップS22でFm=0のロストではないと判定された状態は、自車両1の前方に捕捉すべき先行車が存在しない状態であるため、ステップS23へ進み、追尾ランプ6bを消灯して、ルーチンを抜ける。
【0045】
一方、ステップS21或いはステップS22からステップS24へ進むと、先行車を捕捉している状態、或いはロストしている状態であるため、追尾ランプ6bを点灯させてルーチンを抜ける。
【0046】
このように、先行車をロストしてる状態では、ブザー6cはOFF(停止)しているが、追尾ランプ6bは継続的に点灯しており、ステレオ画像処理部3bが先行車をロストしても運転者が先行車を目視により認識している状態に近い表示態様となる。その結果、運転者のフィーリングに合った追尾ランプ6bの表示制御を行うことができる。
【0047】
次に、上述した図3〜図4に示すフローチャートに従って制御されるブザー6cのON/OFF動作、及び追尾ランプ6bの点灯動作の一例を、図6のタイムチャートを参照して説明する。
【0048】
ACC制御により、先行車に対して追従走行制御を行うと追尾ランプ6bが点灯状態となり、一方、警報マスクフラグFmはクリアされている。この状態から前方認識装置3が先行車をロストすると、警報マスクフラグFmがセットされて(Fm←1)、ブザー6cはOFF状態が維持されるが、追尾ランプ6bは点灯状態が維持されている(経過時間t1)。前述したように、前方認識装置3が先行車をロストしても、運転者は先行車を目視により認識している場合が多く、このような状況では、追尾ランプ6bの点灯状態を継続させると共に、ブザー6cはONさせないことにより、運転者のフィーリングに合った制御を行うことができる。
【0049】
その後、前方認識装置3が保持時間To以内に先行車を再捕捉すると、警報マスクフラグFmがクリアされるのみで(Fm←0)、ブザー6cのOFF状態、及び追尾ランプ6bの点灯状態は維持される(経過時間t2)。従って、制御ユニット2は、前方認識装置3が先行車をロストしたことを運転者に殆ど意識させることなく、ACC制御を継続させることができる。
【0050】
又、先行車をロストしたときから(経過時間t3)、保持時間Toが経過しても先行車を捕捉できない場合、警報マスクフラグFmをクリアし(Fm←0)、保持制御終了フラグFeをセットする。すると、ブザー6cがON動作すると共に、追尾ランプ6bが消灯される(経過時間t4)。
【0051】
ACC制御では、上述した経過時間t4に至るまでは追従制御が継続されており、その際、先行車をロストした場合は、そのときの自車速Vspが維持される。一方、経過時間t4では、先行車なしと判定されるため、追従走行制御から定速走行制御に切り替わり、自車速Vspをセット車速に復帰させるべく加速運転が開始される。その際、ブザー6cをONさせることで、運転者に対して運転状態の切り替わりを容易に把握させることができる。
【0052】
尚、先行車をロストした後、異なる先行車を捕捉した場合は、ブザー6cをON動作させて、先行車の切り替わりを運転者に報知する。この場合、運転者は目視により先行車の切り替わりを把握しているため、ブザー6cの吹鳴を違和感なく聞くことができる。又、先行車或いは自車両1が走行レーンを変更することにより、相対的に先行車が自車両1の前方から離脱し、ACC制御では、追従走行制御から定速走行制御へ移行した場合も、ブザー6cが吹鳴して加速運転へ移行するため、自車両1の挙動変化とブザー6cの吹鳴とのタイミングが一致し、運転者に安心感を与えることができる。
【0053】
このように、本実施形態では、前方認識装置3が先行車をロストしても直ちにブザー6cを吹鳴させず、更に、ロスト後に同一の先行車を再捕捉した場合にもブザー6cを吹鳴させないようにしたので、運転者に不快感及び違和感を与えることがなくなり、運転者のフィーリングに合った報知を行うことができる。
【0054】
尚、本発明は、上述した実施形態に限るものではなく、例えば報知手段はブザー6cに限らずスピーカ6aであっても良く、この場合の報知はスピーカ6aからの音声によって行われる。又、前方認識手段はステレオカメラ3aを備える前方認識装置3に限らず、レーザレーダやミリ波レーダを備えるものであっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】走行制御装置を搭載した車両の概略構成図
【図2】ブザー制御ルーチンを示すフローチャート(その1)
【図3】ブザー制御ルーチンを示すフローチャート(その2)
【図4】追尾ランプ表示制御ルーチンを示すフローチャート
【図5】(a)は先行車をロストした状態を示す説明図、(b)は先行車が離脱した状態を示す説明図
【図6】制御例を示すタイムチャート
【符号の説明】
【0056】
1…自車両、
1’…先行車、
2…制御ユニット、
3…前方認識装置、
6a…スピーカ、
6b…追尾ランプ、
6c…ブザー、
Fc…切替りフラグ、
Fe…保持制御終了フラグ、
Fm…警報マスクフラグ、
Fs…先行車状態変化フラグ、
To…保持時間、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両前方を走行する先行車を捕捉する前方認識手段と、前記前方認識手段で前記先行車を捕捉した場合に該先行車に対する追従走行制御を行う走行制御手段と、前記前方認識手段が前記先行車を捕捉したとき或いは捕捉した該先行車が捕捉されなくなったときに報知する報知手段とを備える車両の走行制御装置において、
前記走行制御手段は、前記前方認識手段が前記先行車を見失うことにより捕捉されなくなったときは前記報知手段による報知を禁止する
ことを特徴とする車両の走行制御装置。
【請求項2】
前記前方認識手段で前記先行車を捕捉した場合に表示する表示手段を有し、
前記走行制御手段は、前記前方認識手段が前記先行車を見失うことにより捕捉されなくなった場合であっても前記表示手段を継続的に表示させる
ことを特徴とする請求項1記載の車両の走行制御装置。
【請求項3】
前記走行制御手段は、前記前方認識手段が前記先行車を見失うことにより捕捉されなくなった後に該先行車を再捕捉した場合も前記報知手段による報知を禁止する
ことを特徴とする請求項1或いは2記載の車両の走行制御装置。
【請求項4】
前記走行制御手段は、前記前方認識手段が前記先行車を見失うことにより捕捉されなくなったときから予め設定した保持時間が経過した後も該先行車が捕捉されなかった場合は、前記報知手段による報知を許可する
ことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の車両の走行制御装置。
【請求項5】
前記走行制御手段は、前記前方認識手段が前記先行車を見失うことにより捕捉されなくなった後に別の先行車を再捕捉した場合は前記報知手段による報知を許可する
ことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の車両の走行制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−132323(P2009−132323A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−311213(P2007−311213)
【出願日】平成19年11月30日(2007.11.30)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】