説明

車両制御装置及びハイブリッド車両

【課題】環境を考慮して走行モードやエンジン出力を制御する車両制御装置及びハイブリッド車両を得る。
【解決手段】現在位置を検出する位置検出部21と、地図データを記憶する地図データベース22と、地図データ内の特定区間の閾値のリストを記憶する記憶部25と、特定区間規模判定部24と、車両制御部28とを備える。特定区間規模判定部24は、位置検出部21からの現在位置が地図データベース22からの地図データにおける特定区間の場合、この特定区間の規模を判定する。車両制御部28は、特定区間規模判定部24からの情報と記憶部25からの閾値のリストを基に車両の走行モードとエンジン出力を制御する駆動制御部17に車両を電動機走行モード及びエンジン出力低下の少なくともいずれかとする制御信号を出力するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、内燃機関のエンジンと電動機とを駆動源とするハイブリッド車両及びこれを制御する車両制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のハイブリッド型車両においては、現在地を検出し、走行道路位置に応じて電動機単独走行の電動機モードと、電動機とエンジンを併用して走行する併用モードと、エンジン単独走行のエンジンモードとを変更している。その際、車速やスロットル開度等の走行状態に従って各モードを切り替えながら走行する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6‐187595号公報(第2〜3頁、第5〜6頁、第2図、第10図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のハイブリッド型車両においては、現在走行している走行道路と、車速やスロットル開度等の走行状態に従って、各走行モードを切り替えて走行している。そのため、例えばトンネルの長さに関係なく走行モードが切り替えられるので、排気ガスの影響を受けにくい短いトンネルにおいても電動機モードに切り替えられる場合があった。また、逆に、排気ガスを抑えたい場所、例えば自宅等の登録地点周辺や駐車場においては、排気ガスの影響を考慮していないので、登録地点からの距離や駐車場の大きさに応じたモード切り替えとはなっていなかった。これらのように、環境を考慮した走行モードになっていないという問題があった。
【0005】
この発明は、上述のような問題点を解決するためになされたもので、環境を考慮して走行モードやエンジン出力を制御する車両制御装置及びハイブリッド車両を得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る車両制御装置は、現在位置を検出する位置検出部と、地図データを記憶する地図データベースと、地図データ内の特定区間の閾値のリストを記憶する記憶部と、、特定区間規模判定部と、車両制御部とを備える。特定区間規模判定部は、位置検出部からの現在位置が地図データベースからの地図データにおける特定区間の場合、この特定区間の規模を判定する。車両制御部は、特定区間規模判定部からの情報と記憶部からの閾値のリストを基に車両の走行モードとエンジン出力を制御する駆動制御部に車両を電動機走行モード及びエンジン出力低下の少なくともいずれかとする制御信号を出力するものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、特定区間の規模を判定し閾値のリストを基に、車両を電動機による走行モードとしたり、エンジン出力を低下させたりするため、環境に考慮した車両制御装置及びハイブリッド車両が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】この発明の実施の形態1の車両制御装置及びハイブリッド車両を示すブロック図である。
【図2】この発明の実施の形態1の地図データ構造を示す例である。
【図3】この発明の実施の形態1のノードリストの例である。
【図4】この発明の実施の形態1のリンクリストの例である。
【図5】この発明の実施の形態1の背景データの例である。
【図6】この発明の実施の形態1の特定区間の閾値のリストである。
【図7】この発明の実施の形態1のハイブリッド車両の駆動制御部の動作を示すフローチャートである。
【図8】この発明の実施の形態1の車両制御装置の動作を示すフローチャートである。
【図9】この発明の実施の形態1の特定区間の総リンク長とモータ走行可能距離との関係を示す図である。
【図10】この発明の実施の形態2の車両制御装置及びハイブリッド車両を示すブロック図である。
【図11】この発明の実施の形態2の電波状態の閾値のリストである。
【図12】この発明の実施の形態3の車両制御装置及びハイブリッド車両を示すブロック図である。
【図13】この発明の実施の形態3の周辺情報の閾値のリストである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1におけるハイブリッド車両1及びこれを制御する車両制御装置2を示すブロック図である。ハイブリッド車両の車体の中に設置されている駆動部は、ガソリン、軽油等の燃料によって駆動される内燃機関のエンジン10と、電力によって回転する交流モータ等のモータ(電動機)11とを有し、車両用の動力源として併用して使用する。更に、ドラムブレーキ、ディスクブレーキ等の制動装置を配設することもできる。またこれらは、乗用車、バス、トラック等に配置することができる。なお、エンジン10とモータ11の連動方式は、エンジンを発電のみに使うシリーズ方式や、搭載している複数の動力源を車輪の駆動に使用するパラレル方式などの駆動方式を配置することができる。図1は、エンジンからの動力をプラネタリーギアやクラッチ等の動力分割機構12により分割し、モータ11(モータ軸を通して駆動輪13を駆動)と発電機14に振り分けるスプリット方式の概略図である。なお、モータは各駆動輪に直接接続しても良い。
【0010】
図1記載のハイブリッド車両1は、例えば、エンジン単独走行のエンジン走行モードの場合は、同軸上に配置されているモータ11には電力を供給せずに駆動輪13を駆動して走行する。その際、エンジンに余剰パワーが有る場合は動力分割機構12により発電機14を回して発電し、バッテリ15を充電しても良い。
【0011】
モータとエンジンを併用して走行する併用走行モードの場合は、エンジン10によって駆動輪13を駆動すると共に、モータ11にもバッテリ15から電力を供給して駆動輪13を駆動する。加速したいときなど大パワーが必要なときに用いられる事が多い。
【0012】
モータ単独走行のモータ走行モードの場合は、モータ11はバッテリ15から電力が供給され、駆動輪13を駆動して走行する。その際、エンジン10は動力分割機構12により発電機14を回して発電し、バッテリ15を充電しても良い。なお、排気ガスを抑えたい区間の場合は、エンジン出力を通常よりも低下させたり、止めたりして排気ガスを抑制するとより良い。
【0013】
バッテリ15は発電機14により発電された電力の蓄電手段であり、また制動時に発生するモータ11からの回生電流を蓄電する。また、バッテリ15は充電と放電とを繰り返すことができる二次電池であり、鉛蓄電池、ニッケルカドミウム電池、ニッケル水素電池等が一般的であるが、電気自動車等に使用される高性能鉛蓄電池、リチウムイオン電池、ナトリウム硫黄電池等であってもよい。さらにバッテリ15は蓄電量を検出するための容量検出センサ等の充電量検出部16を備える。
【0014】
駆動制御部17は、充電量検出部16からのバッテリの充電量と、後述する速度検出部20からの車両速度、及び、後述する車両制御部28からの信号により、エンジン10とモータ11と動力分割機構12の制御、及び、エンジン10とモータ11による走行モードの切り替えを行う。また、現在の走行モードや、エンジン10、モータ11、動力分割機構12の状態を車両制御部28に出力する機能も備える。
【0015】
車両制御装置2は、速度検出部20、位置検出部21、地図データベース22、特定区間走行判定部23、特定区間規模判定部24、記憶部25、操作部26、表示部27、及び、車両制御部28からなる。なお、車両制御部28、特定区間走行判定部23、特定区間規模判定部24は、CPU(Central Processing Unit)等の演算手段と半導体メモリから構成され、アプリケーションプログラムによって動作する。
【0016】
速度検出部20は、車両からの速度パルス等を受け、車両速度を求める。位置検出部21は、GPS(Global Positioning System)等の衛星測位システムからの受信信号と、車両速度と、ジャイロセンサからの方位情報と、マップマッチングとを用いて自車位置を検出する。地図データベースは、HDD(Hard Disk Drive)等の磁気ディスクや、DVD(Digital Versatile Disc)、大容量メモリ等から構成され、地図データを記憶する。これは、車両制御部28が走行モードやエンジン制御を判断する際に道路の種類やエリアの種類を取得するためアクセスする地図データである。
【0017】
図2は地図データベース22に記憶された地図データの例である。地図データとして、地図管理情報、及び、1個以上のメッシュデータを有している。地図データは、地図の詳しさの度合いにより階層化されており、階層毎に全国を幾つかの矩形領域(メッシュ)に分割し、階層ごとに各メッシュに対応してメッシュデータを有する。上層のメッシュは下層のメッシュを複数個集めたもので、メッシュの大きさは上層ほど大きくなる。
【0018】
地図管理情報は、階層毎に各メッシュデータを管理するデータで、階層毎に、各領域と各メッシュデータとを対応付ける情報、各メッシュデータの当該地図情報における格納位置、データサイズを有している。
【0019】
メッシュデータは、経路探索やマップマッチングや道路表示に使用する道路データと、河川、海、地名、ランドマーク等の地図背景を表示するための背景データ等と、これらのデータを管理するメッシュヘッダとから成る。道路データは図3、4に示すように、ノードリスト、リンクリストとこれらを管理するデータとから成る。背景データは図5に示すデータから成る。
【0020】
図3は、ノードリストの例である。ノードリストはノードレコードの並びである。ノードは道路上に位置する交差点などの地点を表し、各ノードに対応してノードレコードが設けられる。ノードレコードは、ノードを識別するためのノードIDと、ノードの地理的位置を表すノード座標と、信号機の有無及び右左折規制などのノードに関する各種属性を表すノード属性情報と、ノードに接続するリンクの数を表す接続リンク数と、ノードに接続するリンクを示すための接続リンクID列とから成る。
【0021】
図4はリンクリストの例である。リンクリストはリンクレコードの並びである。リンクはノード間を結ぶ道路を表し、各リンクに対応してリンクレコードが設けられる。リンクレコードは、リンクを識別するためのリンクIDと、このリンクのリンク長及び幅員及び種属性などを表すリンク属性情報と、リンクの形状を折れ線で表したときの各頂点の地理的位置を示す座標の並びであるリンク形状情報と、リンクの始点側のノードを表す始点ノードIDと、リンクの終点側のノードを表す終点ノードIDとから成る。
【0022】
なお、リンク属性情報には、リンクがトンネルに該当することを表す属性や、駐車場内にあるリンクであることを表す属性、スクールゾーンに位置するリンクであることを表す属性、リンクが細街路であることを表す属性、交差点近傍に位置するリンクであることを表す属性、横断歩道近傍に位置するリンクであることを表す属性、見通しの悪いカーブに位置するリンクであることを表す属性等がある。
【0023】
図5は、背景データの例である。背景データは、面、線、点の地図背景を表す背景レコードの並びである。背景レコードは、種別を示す背景種別と、背景の種類等を表す背景属性情報と、背景の形状種別(点、線、面)を折れ線、多角形で表したときの頂点の地理的位置を表す座標値の並びまたはこれらの座標値の数を示す背景形状情報と、背景の名称の文字列を表す文字列情報とから成る。
【0024】
さて、特定区間走行判定部23は、位置検出部21からの現在位置と、地図データベース22からのデータとから、トンネルや、駐車場、自宅等の登録地点周辺等の特定区間を走行しているかを判定する。具体的には、上述した道路データ中のリンク属性情報を用いる。その際、トンネル、駐車場、細街路、スクールゾーン、見通しの悪いカーブ、交差点近傍、横断歩道近傍、ユーザによる登録地点周辺等を特定区間と呼び、特定区間を走行しているか否かの判定に使用する。あるいは、上述した背景データ中の背景属性情報を用いても良い。背景属性情報でトンネル、駐車場、スクールゾーン、細街路、交差点近傍、横断歩道近傍、見通しの悪いカーブなどを表すようにし、これらの領域を通過しているときに特定区間を走行中とする。
【0025】
特定区間規模判定部24は、特定区間走行判定部23の規模を判定する。具体的には、上述した道路データ中のリンク属性情報を用い、1つの特定区間に属するリンク長の総和を特定区間の規模とする。あるいは、上述した背景データ中の背景属性情報を用いても良い。この場合、背景レコードに面積を追加し、トンネル、駐車場、スクールゾーン、細街路、交差点近傍、横断歩道近傍、見通しの悪いカーブの面積を特定区間の規模としてもよい。なお、登録地点や交差点、横断歩道のような地点の場合は、これらの地点と現在位置との距離を求め、これを規模として判定する。
【0026】
記憶部25は、不揮発性の半導体メモリやHDD等から構成され、後述する図6に示すような車両の走行モードをモータによるモータ走行モードに変更したり、エンジン出力を低下させたりする際の基準となる地図データ内の特定区間の閾値のリストを記憶する
【0027】
操作部26は、液晶ディスプレイ等からなる表示部27の上に形成されているタッチパネルや、リモコンで構成され、記憶部25に記憶されている特定区間の閾値のリストを修正する際に使用する。環境に配慮する特定区間を入力したり、モータ走行モードに切り替える際の特定区間の規模の閾値を入力したりする。例えば、自宅等の任意の地点を特定区間の登録地点としたり、この登録地点からの距離や、駐車場の大きさ等の閾値を入力したりする。また、予め入力されている特定区間の規模の閾値、例えばトンネルの長さ、細街路の長さ、スクールゾーンの長さ、見通しの悪いカーブの長さ、交差点からの距離、横断歩道からの距離等を変更しても良い。また、本実施の形態1の車両制御装置2は、カーナビゲーション装置としても使用できるため、出発地や目的地を入力しても良い。表示部27は、操作部26の操作状況を表示したり、カーナビゲーション装置の経路や地図を表示したりしても良い。
【0028】
車両制御部28は、車両制御装置2全体を制御する。駆動制御部17からの現在の走行モードとエンジン出力の情報を取得すると共に、充電量検出部16からのバッテリの容量情報と、速度検出部20からの車両速度を取得する。また、記憶部25に格納されている、例えば、図6に示すような走行モードやエンジン出力を切り替える際の特定区間の閾値のリストと、特定区間規模判定部24からの特定区間の規模とを比較する。これらの情報から、モータ走行モードへの切り替えやエンジン出力を低下又はエンジン停止を判断し、ハイブリッド車両1の駆動制御部17に制御信号を出力する。
【0029】
まず、このように構成されたハイブリッド車両1の駆動制御部17の基本的な動作について、図7のフローチャートに従って説明する。ステップS100では、充電量検出部16からバッテリ充電量を取得し、規定値以上の充電量の場合はステップS110に進み、規定値未満の充電量の場合はステップS140に進む。
【0030】
ステップS110では、速度検出部20より現在の車両走行速度を取得し、規定値未満の速度の場合はステップS130に進み、規定値以上の速度の場合はステップS120に進む。その後、ステップS120では、車両制御装置2から車両の走行モードを取得し、モータ走行優先モードの場合はステップS130に進み、エンジン走行優先の場合はステップS140に進む。ステップS130では、モータ走行モードに切り替え、ステップS140ではエンジン走行モードに切り替える。
【0031】
次に、車両制御装置2の動作について、図8のフローチャートに従って説明する。ステップS200では、位置検出部21により自車走行位置を検出する。次に、地図データベース22にアクセスし、図4のリンクリストと自車走行位置を基に、車両が走行しているリンクのリンクレコードを参照し、リンク種別を取得する(ステップS210)。ステップS220では、図6のリストによりリンク種別が特定区間のリンク種別で且つ許可の場合はステップS230に進む。リンク種別が特定区間のリンク種別でないかまたは不許可の場合はS280に進む。
【0032】
ステップS230では、地図データベース22にアクセスし、図4のリンクリストから同じリンク属性のリンクを辿り、リンク長を累積し総リンク長を算出する。その後、ステップS240では、図6のリストから該当するリンク種別の閾値を取得し、特定区間の総リンク長、又は、特定地点からの距離と比較する。閾値を満足する場合は、ステップS250に進み、満足しない場合は、S280に進む。
【0033】
例えば、図6の場合、トンネルの長さが50m以上の場合や、細街路の長さ、スクールゾーンの長さ、見通しの悪いカーブの長さが10m以上の場合にモータ走行モードに変更する。また、駐車場の大きさが10m以上の場合もモータ走行モードに変更する。更に、交差点からの距離が10m以内の場合や、横断歩道からの距離が10m以内の場合、登録地点から10m以内の場合も、モータ走行モードに変更することを意味している。
【0034】
ステップS250では、充電量検出部16からバッテリの充電量を取得し、モータ走行可能距離を算出する。ステップS260では、図9(a)に示すように、特定区間の総リンク長よりモータ走行可能距離が長い場合は特定区間全てをモータ走行可能な範囲内と判断し、ステップS270に進む。図9(b)に示すように特定区間の総リンク長よりモータ走行可能距離が短い場合は、通常は特定区間の総リンク長の中心部とモータ走行可能距離の中心部を合わせ、自車位置がモータ走行可能範囲内であればステップS270に進む。自車位置がモータ走行可能範囲外であればステップS280に進む。つまり、このような場合は、中心部をモータ走行モードとして走行する。
【0035】
なお、特定区間の総リンク長よりモータ走行可能距離が短い場合で、特定区間が直線状の時などは、中心部が排気ガスが滞留しやすい場所なので、中心部に合わせてモータ走行可能距離をあわせるが、特定区間が曲線状の時は、カーブしている場所に排気ガスが滞留しやすいので、この部分にあわせると良い。つまり、特定区間内の中心部、カーブ状の場所、山やビルの谷間、交差点、道が狭くなっている細街路など、排気ガスが滞留しやすい一部の場所に合わせてモータ走行を行うと良い。
【0036】
ステップS270では、駆動制御部17に対してモータ走行優先モードを送信する。ステップS280では、駆動制御部17に対してエンジン走行優先モードを送信する。なお、バッテリの充電量がほとんど無い場合は、エンジン走行モードを継続するが、その場合でも、エンジン出力を低下させると排気ガスを減少させる事が出来るため、環境に配慮した走行が可能である。そのため、このような場合は、エンジン出力低下の制御信号を出力すると良い。
【0037】
なお、エンジンを発電のみに使うシリーズ方式のハイブリッド車両の場合、常にモータ走行モードとなっている。このようなハイブリッド車両の場合は、環境に配慮する区間においては、エンジン出力を低下させたり、エンジンを停止させたりすることにより、排気ガスの抑制を行うと良い。モータ走行モードとエンジン走行モードを有するハイブリッド車両においては、エンジン走行モードからモータ走行モードに変更する際、エンジン出力を発電に廻す事が出来るが、この場合は、エンジン出力の変化を抑える事が出来るため、エンジン走行モードに比べて排気ガスを抑える事が出来るが、より好ましくは、モータ走行モードの際には、エンジン出力を低下させたり、エンジンを停止させたりすると更に排気ガスを減少させる事が出来る。
【0038】
なお、図6の特定区間の閾値のリストは、操作部26からのユーザの入力により変更可能とするとよい。例えば、図6では、駐車場の大きさは10m以上となっているが、例えば20mに変更しても良い。また、10m以上の見通しの悪いカーブはモータ走行モードが「許可」となっているが、これを「不許可」に変更することにより、モータ走行モードを使用不可に設定しても良い。また、適宜特定区間を追加しても良い。
【0039】
このように構成された、車両制御装置及びハイブリッド車両においては、モータ走行モードとしたり、エンジン出力低下させたりするので、特定区間における排気ガスの排出を抑えた走行が可能となる。また、特定区間の全行程をモータ走行できるほど十分なバッテリ充電量でない場合でも、排気ガスが滞留しやすい特定区間の一部をモータ走行するため、排気ガスの滞留を極力抑えることができる。このように、環境を考慮した走行モードとエンジン出力を制御する車両制御装置及びハイブリッド車両が得られる。
【0040】
実施の形態2.
実施の形態1の車両制御装置は、カーナビ機能を有する事が可能であるが、本実施の形態2においては、カーナビ機能を有さない車両制御装置においても、通常の車両に備えられているラジオ等の電波状態を用いて、環境に考慮した走行を行う車両制御装置及びハイブリッド車両について述べる。
【0041】
図10に示す車両制御装置3は、電波状態を検出する電波状態検出部30を有する。これは、GPS等の衛星測位システムからの電波や、ラジオ、テレビ、携帯電話等からの電波であっても良い。これらの電波状態をモニタしておく。電波状態がある値より悪化した場合、その地点は、トンネルや、ビルの谷間、地下駐車場や立体駐車場など排気ガスが滞留しやすい閉鎖的な場所であることが多い。そのため、車両制御部31は、電波状態が、例えば図11に示すようなある閾値を満足した場合(電波のS/N比が所定値以下の場合や電波が所定時間以上検出されないとき)にモータ走行モードに切り替える制御信号や、エンジン出力の低下や停止を行う制御信号を駆動制御部17に出力する。駆動制御部17は、モータ走行モードに切り替えたり、エンジン出力を低下させたり、エンジンを停止させたりして排気ガスを抑制する。
【0042】
なお、山間部など環境基準は厳しくないが、電波状態の悪い場合がある。このような時は、テレビ等の放送局のチャンネル情報をあらかじめモニタしておくと良い。チャンネル情報やチャンネルの組合せにより大雑把な現在位置が推定できたり、チャンネル情報が切り替わるとき、つまり、放送局の電波エリアが変わるところは、県境等の山間部であったりすることが多いため、このような場合は、エンジン走行モードを継続すると良い。
【0043】
なお、図11に示す閾値のリストは、ユーザが適宜修正できるようにしても良い。また、実施の形態1の図1の構成の車両制御装置2においても、位置検出部21からのデータ、例えばGPSからの信号(電波強度、衛星数等)をもちいて排気ガスを抑制する区間を判定できる事は言うまでも無い。
【0044】
このように構成された車両制御装置及びハイブリッド車両においては、地図データが更新されずに古くなっていた場合や、地図データに不備がある場合においても、排気ガスが滞留しやすい場所においてモータ走行モードに変更するため、環境に考慮した走行モードとエンジン出力を制御する車両制御装置及びハイブリッド車両が得られる。また、カーナビを備えていなくても通常の車両が有するラジオ等を用いることができるため、安価に構成する事が出来る。
【0045】
実施の形態3.
実施の形態1、2の車両制御装置及びハイブリッド車両は、設定された特定区間や、電波状態から排気ガスが滞留しやすい場所を推定してモータ走行モード等を変更していたが、本実施の形態3においては、センサー等の車両周辺検出部を備えることにより、車両周辺情報を検出して、適切に排気ガスを抑制した走行を行う車両制御装置及びハイブリッド車両について述べる。
【0046】
図12に示す車両制御装置4は、車両周辺の情報を検出する車両周辺検出部40を有する。これは、例えば、COセンサーやNOxセンサー、粉塵センサー等のセンサーであったり、車載カメラであったりしても良い。センサーの情報を用いる場合、例えば図13に示すようなある閾値を越えた場合や、閾値を越えた状態が所定時間以上継続する場合、この区間は排気ガスが滞留しやすい場所であることがわかるため、車両制御部41は、モータ走行モードに切り替えたり、エンジン出力の低下や停止を行ったりする制御信号を駆動制御部17出力する。駆動制御部17は、モータ走行モードに切り替えたり、エンジン出力を低下させたり、エンジンを停止させたりして排気ガスを抑制する。
【0047】
また、車両周辺検出部40が車載カメラの場合、車両制御部41は、まず、カメラからの車両周辺の画像を解析する。駐車場等車両周辺に塀や壁などがあり、例えば図13に示すようなある閾値を満足する場合、この場所は排気ガスが滞留しやすい閉鎖的な場所であることが多い。また、車載の前方カメラがトンネルを認識した際、トンネルの出口が見えなかったり、出口の大きさがある閾値以下であったりする場合は、ここも排気ガスが滞留しやすい場所であることが多い。このような場合車両制御部41は、モータ走行モードに切り替えたり、エンジン出力の低下や停止を行ったりする制御信号を駆動制御部17出力する。駆動制御部17は、モータ走行モードに切り替えたり、エンジン出力を低下させたり、エンジンを停止させたりして排気ガスを抑制する。
【0048】
なお、図13に示す閾値のリストは、ユーザが適宜修正できるようにしても良い。また
、実施の形態1ないし実施の形態3の構成の車両制御装置を適宜組み合わせてもよい。例えば、カーナビと車載カメラやセンサーを組み合わせたり、ラジオと車載カメラを組み合わせたり、カーナビとラジオとセンサーを組み合わせても良い。これらにより、より適切に排気ガスを抑制することができる。
【0049】
このように構成された車両制御装置及びハイブリッド車両においては、車両周辺検出部により車両周辺の状況が判断できるため、適切に排気ガスを抑制する区間を判定でき、環境を考慮した車両制御装置及びハイブリッド車両が得られる。
【符号の説明】
【0050】
1 ハイブリッド車両
2、3、4 車両制御装置
10 エンジン
11 モータ
12 動力分割機構
13 駆動輪
14 発電機
15 バッテリ
16 充電量検出部
17 駆動制御部
20 速度検出部
21 位置検出部
22 地図データベース
23 特定区間走行判定部
24 特定区間規模判定部
25 記憶部
26 操作部
27 表示部
28 車両制御部
30 電波状態検出部
31 車両制御部
40 車両周辺検出部
41 車両制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
現在位置を検出する位置検出部と、
地図データを記憶する地図データベースと、
前記地図データ内の特定区間の閾値のリストを記憶する記憶部と、
前記位置検出部からの現在位置が前記地図データベースからの地図データにおける特定区間の場合、この特定区間の規模を判定する特定区間規模判定部と、
前記特定区間規模判定部からの情報と前記記憶部からの前記閾値のリストを基に車両の走行モードとエンジン出力を制御する駆動制御部に前記車両を電動機走行モード及びエンジン出力低下の少なくともいずれかとする制御信号を出力する車両制御部とを備える車両制御装置。
【請求項2】
前記車両制御部は、前記車両に搭載されているバッテリの充電量を検出する充電量検出部からのバッテリの充電量より走行可能距離を計算し、前記特定区間の規模が前記走行可能距離よりも大きい場合、前記特定区間の一部について前記駆動制御部に制御信号を出力する請求項1記載の車両制御装置。
【請求項3】
前記特定区間の一部は、前記特定区間の中央部、カーブ、山やビルの谷間、交差点、又は、細街路である請求項2記載の車両制御装置。
【請求項4】
電波状態を検出する電波状態検出部と、
前記電波状態の閾値のリストを記憶する記憶部と、
前記電波状態検出部からの電波状態と前記記憶部からの前記閾値のリストを基に車両の走行モードとエンジン出力を制御する駆動制御部に前記車両を電動機走行モード及びエンジン出力低下の少なくともいずれかとする制御信号を出力する車両制御部とを備える車両制御装置。
【請求項5】
車両周辺の周辺情報を検出する車両周辺検出部と、
前記周辺情報の閾値のリストを記憶する記憶部と、
前記車両周辺検出部からの周辺情報と前記記憶部からの前記閾値のリストを基に車両の走行モードとエンジン出力を制御する駆動制御部に前記車両を電動機走行モード及びエンジン出力低下の少なくともいずれかとする制御信号を出力する車両制御部とを備える車両制御装置。
【請求項6】
ユーザの操作を入力する操作部を備え、
前記車両制御部は前記操作部からのユーザの操作入力により前記閾値のリストを修正する請求項1、請求項4、又は、請求項5のいずれか1項に記載の車両制御装置。
【請求項7】
電気を充放電するバッテリと、
このバッテリから電力供給を受けて車両の駆動輪を駆動する電動機と、
前記バッテリに充電を行う発電機及び前記駆動輪の少なくともいずれかを駆動するエンジンと、
前記電動機と前記エンジンの出力とを制御し車両の走行モードを制御する駆動制御部と、
請求項1、請求項4及び請求項5記載の車両制御装置の少なくとも1つを車体中に備えるハイブリッド車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−156969(P2011−156969A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−20393(P2010−20393)
【出願日】平成22年2月1日(2010.2.1)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】