説明

車両制御装置

【課題】四輪操舵装置を備える車両を、操舵時に進行方向に対して好適に平行移動させる。
【解決手段】車両10は、前輪を操舵可能な前輪側操舵機構250,260と、操舵される前輪の舵角に対し、走行状態に応じて異なる舵角をとるように後輪を操舵可能な後輪側操舵機構270,280とを有する。この車両を制御する車両制御装置100は、予め設定された車両のヨー角を特定するための第1関数から、ヨー角を零とした場合における前輪の舵角と後輪の舵角との関係を表す第2関数に含まれる時定数τ1,τ2の値を、決定する時定数決定手段と、決定された値を時定数に代入した第2関数を用い、ヨー角を零とした場合における、操舵される前輪の舵角σfに対し後輪がとるべき舵角たる後輪目標舵角σrを決定する目標舵角決定手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前輪の舵角及び車速等に応じて後輪を操舵する四輪操舵装置(4 Wheel Steering:4WS)を備える車両を制御する車両制御装置の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の装置として、運転者のハンドル操作により入力された操舵入力が前輪及び後輪の各操舵軸に伝達される伝達特性を目標伝達特性にすべく、操舵系を制御する装置が提案されている。この装置によれば、前後輪の各伝達特性が、操舵周波数に関わらず、操舵入力に対する車両のヨーレイト及び横加速度の発生特性が一定となるように設定される。設定された伝達特性に応じて、前輪を操舵した後に時間遅れをもって、後輪が操舵される。これらにより、車両の運動性能及び操縦安定性を飛躍的に向上させることが可能となるとされている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、車両の旋回方向内外側間で車輪制動力を異ならせることにより、車両に発生するヨーレイト及び横加速度のいずれの特性も自由に制御する装置が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
また、車両の前後のロール剛性配分を変更可能な装置を備え、前輪及び後輪の各位置における車体振動を減衰させる減衰力を変更することにより、車両の回頭性又は走行安定性を向上させる装置が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0005】
更には、前方車両との車間距離を一定に保持可能であるACC(Adaptive cruise control)システムと協調制御され、該システムにより車間距離が短く設定された場合に、後輪操舵制御ゲインを大きい値とし車両に生じるヨーレイト及び横移動速度を大きくして、車両の挙動が機敏であるように運転者に感じさせると共に、車間距離が長い場合に、後輪操舵制御ゲインを小さい値とし該ヨーレイト及び横移動速度を小さくして、車両の挙動が緩慢であるように運転者に感じさせる装置も提案されている(例えば、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公平4−46792号公報
【特許文献2】特開平3−157268号公報
【特許文献3】特開2001−301640号公報
【特許文献4】特開2006−327359号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで本願発明者の知るところによれば、四輪操舵装置を備える車両が、一の車線を継続して走行するための制御(即ち、車線維持制御)により、進行方向に沿って(言い換えれば、進行方向に対し平行に)移動する際に、比較的高速では、前輪の舵角に対し後輪が同位相且つ同舵角で操舵される。この場合、定常的に進行方向に平行な舵角方向に沿って車両が進行するが、同舵角をとる前輪及び後輪の動特性に差異があるために、車両に過渡的な挙動が生じる。すると、車両を進行方向に対し平行移動させようとした場合、車両が旋回してしまう或いは進行方向と違う方向を向きながら横移動(以下適宜「不適切な横移動」と称する)をしてしまう。
【0008】
このような課題に対し、上述した特許文献1に開示された装置によれば、ヨーレイト及び横加速度の発生特性を設定し前後輪を位相遅れで操舵することにより、上述した特許文献2に開示された装置によれば、車輪制動力を変更しヨーレイト及び横加速度の特性を制御することにより、上述した特許文献3に開示された装置によれば、前後輪の各位置における車体振動の減衰力を変更することにより、上述した特許文献4に開示された装置によれば、後輪操舵制御ゲインを変更することにより、車線維持制御における車両の不適切な横移動を抑制しようとする対策も考えられる。しかしながら、これらの各制御は、複数の段階を要する複雑なものであり、このような対策では、前後輪の操舵が非効率に行われることが予想される。
【0009】
本発明は、例えば上述した問題点に鑑みなされたものであり、四輪操舵装置を備える車両を、操舵時に進行方向に対して好適に平行移動或いは略平行移動させ得る車両制御装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る車両制御装置は、上記課題を解決するために、前輪を操舵可能な前輪側操舵機構と、前記操舵される前輪の舵角に対し、走行状態に応じて異なる舵角をとるように後輪を操舵可能な後輪側操舵機構とを有する車両を制御する車両制御装置であって、予め設定された前記車両のヨー角を特定するための第1関数から、前記ヨー角を零とした場合における前記前輪の舵角と前記後輪の舵角との関係を表す第2関数に含まれる時定数の値を、決定する時定数決定手段と、前記決定された値を前記時定数に代入した前記第2関数を用い、前記ヨー角を零とした場合における前記操舵される前輪の舵角に対し前記後輪がとるべき舵角たる後輪目標舵角を決定する目標舵角決定手段と、前記前輪側操舵機構を制御することに並行して、前記後輪が前記決定された後輪目標舵角をとるように前記後輪側操舵機構を制御する制御手段とを備える。
【0011】
本発明において、「前輪側操舵機構」は、ドライバのハンドル操作によるステアリング量に対応する舵角に、前輪を操舵する機構を示す。また「後輪側操舵機構」は、ステアリング量に対応する前輪の舵角に対し、例えば、車両の速度等の走行状態に応じて異なる舵角をとるように、後輪の舵角を操舵する機構を示す。即ち、前輪の舵角と後輪の舵角との関係は、固定されておらず、走行状態に応じて変化し得る。これら前後輪の操舵機構は、所謂、四輪操舵装置(4WS)を構成しており、その形態は、前輪の操舵が前輪側のインプットギアボックス及び後輪側のステアリングギアボックスを介して後輪に伝達される機械式、ステアリング量に基づいてアクチュエータ或いはモータ、各種バルブ等を制御することにより後輪を操舵する電子制御式等、前輪の舵角に対し後輪を操舵し得る各種形態を採る。
【0012】
本発明に係る車両制御装置によれば、その動作時には、例えば、ECU(Electronic Control Unit:電子制御ユニット)等の各種処理ユニット、各種コントローラ或いはマイコン装置等各種コンピュータシステム等の形態を採り得る時定数決定手段により、予め設定されている第1関数が参照される。ここで「第1関数」は、四輪操舵を可能とする車両の動特性を表す複数の関数のうちの一の関数を示す。この第1関数は、具体的には、例えば、前輪の動特性を反映してなる前輪の舵角項から、後輪の動特性を反映してなる後輪の舵角項を減じる旨を表す。第1関数は、例えば、ラプラス変換がなされたS関数であって、この第1関数から、車両が重心を中心に旋回する量たる、ヨーイング量に該当するヨー角が特定可能である。第1関数は、車両が決まれば、予め実験的に、経験的に、理論的に若しくはシミュレーション等に基づいて、一義的に特定されるものである。第1関数は、各種パラメータ(例えば、目標となる前輪若しくは後輪の舵角、コーナリングパワー等)を入力としてヨー角を出力とする形の関数或いはテーブルとして、時定数特定手段が内蔵する又は時定数特定手段に外付けされたメモリ等の記憶手段に記憶されている。
【0013】
尚、第1関数の「特定」とは、車両を固定した場合における、(i)特定対象(例えばこの場合、ヨー角)、又は(ii)予め実験的に、経験的に、理論的に若しくはシミュレーション等に基づいて特定対象との相関が明らかにされている、特定対象を導出し得る手法が確立されている、若しくは特定対象と一義的に扱い得る旨が許可されている、特定対象と一対一、一対多、多対一若しくは多対多に対応する各種の状態量、物理量若しくは指標値を特定する意味である。しかも、例えば何らかの検出手段を介して直接的に若しくは間接的に検出すること、何らかの検出手段を介して直接的に若しくは間接的に検出された各種の状態量、物理量若しくは指標値を、例えば電気信号等の各種信号等として取得すること若しくは認識すること、予め然るべき記憶手段等に記憶されたマップ等から選択すること、又は予め設定されたアルゴリズムや計算式に従って導出若しくは同定すること等を包括する意味である。更に、これらの検出等が適宜に組み合わされ得る概念である。
【0014】
このような第1関数から、時定数特定手段により、ヨー角を零とした場合における第2関数に含まれる時定数の値が、決定される。ここで「第2関数」は、前後輪の舵角の関係を表すものであり、例えば二つの時定数等の時定数を含む関数として、予め設定されている。より具体的には、第1関数におけるヨー角を零或いは「0」とする場合における第2関数に含まれる、時定数(例えば、後輪の目標舵角を算出するための時定数τ1,τ2)の値が、第1関数から決定される。
【0015】
続いて、ECU等の形態を採り得る目標舵角決定手段により、上述のように時定数決定手段により決定された値を、時定数に代入した第2関数が用いられて、後輪目標舵角が決定される。即ち、車両の走行状態に係る各種変数或いはパラメータに基づいて、ヨー角が零に対応する後輪目標舵角が決定される。ここで「走行状態」は、車速の他、前後輪の各舵角、前後輪の各コーナリングパワー、ドライバ重量等を含む車両の総重量、及び車両がヨーイングする際の慣性モーメント等の変動し得る複数の要素で表される。これら複数の要素を夫々表す複数の変数或いはパラメータが、第2関数に含まれている。また「後輪目標舵角」は、ヨー角が零に対応する場合における、前輪の舵角に対する後輪の舵角の目標値を示す。この後輪目標舵角を決定するには、第2関数における複数の変数或いはパラメータに、それらの各実数の値が入力される。
【0016】
こうして、後輪目標舵角が決定されると、ECU等の形態を採り得る制御手段により、前輪側操舵機構が制御され、ステアリング量に対応する舵角に前輪が操舵されるのと並行して、後輪側操舵機構が制御され、前輪の舵角に対し、後輪が後輪目標舵角に操舵される。
【0017】
以上のように、車両に生じるヨー角を零とする、前後輪の舵角の関係を導き、この関係を用いて、前輪の舵角に対する後輪の目標舵角を決定すると共に、この目標舵角に後輪を操舵する。これにより、車両を進行方向に対し平行移動させようとした場合、車両の方向が進行方向から逸れることを効果的に抑制すること、即ち、不適切な横移動を効果的に抑制することが可能となる。また、実質的に、前後輪がとるべき舵角の関係を規定することのみにより、車両における不適切な横移動を抑制することも可能となる。この際、従来のように前後輪を位相遅れで操舵したり、車輪制動力、車体振動の減衰力又は後輪操舵制御ゲインを変更する旨の複雑な制御を行う必要がない。
【0018】
これらの結果、四輪操舵装置を備える車両を、操舵時に進行方向に対して好適に平行移動させることが可能となり、不適切な横移動を効率的に抑制可能となる。
【0019】
本発明に係る車両制御装置の一態様では、前記時定数決定手段は、前記時定数の値を、前記車両の横加速度と、前記車両のローリングに作用するロール剛性とに基づいて、前記第1関数から決定する。
【0020】
本発明に係る「横加速度」は、車両における横向きの加速度を示す。また「ロール剛性」は、ローリングの発生に影響を与える車両の一特性であって、ローリングが抑制される車両の剛性率を示す。このロール剛性は、具体的には、例えば車両に生じるローリングが、車両の前後(言い換えれば、前輪側及び後輪側)に対し配分される配分率たるロール剛性配分率であってもよい。この態様によれば、車両が進行方向に沿ってコーナリングを行う場合が想定される。即ち、コーナリング時には、タイヤがコーナリング中心に向かおうとする力たるコーナリングパワーが考慮される。ここで、コーナリングパワーは、上述した横加速度及びロール剛性に対応しており、このコーナリングパワーを表す変数或いはパラメータは、第1関数に含まれている。仮に、横加速度が大きく車両が大きく傾けられ(即ち、ローリングが大きくなり)、コーナリングパワーのバランスが崩れると、車両に過渡的な挙動が生じる。この場合にも、コーナリングパワーを表す変数或いはパラメータを含む第1関数を用いて、時定数の値を決定する。更に、この値を時定数に代入した第2関数が用いられて、ヨー角が零に対応する後輪目標舵角が決定される。これらにより、コーナリング時でも車両が進行方向から逸れることがなく、車両に生じる不適切な横移動を抑制することが可能となる。
【0021】
本発明に係る車両制御装置の他の態様では、前記時定数決定手段は、前記時定数の値を、前記車両の前後加速度に基づいて、前記第1関数から決定する。
【0022】
本発明に係る「前後加速度」は、車両における前後方向の加速度たる、車速の変化率を示す。この態様によれば、進行方向に沿って走行する車両が、過渡的な挙動が生じるかのように加速及び/又は減速する場合が想定される。即ち、このような加減速の時機又は時期には、上述した前後加速度に応じて変動する、例えば車両重心位置及びタイヤ荷重が考慮される。ここで、車両重心位置に係る距離を表す変数或いはパラメータ、及びタイヤ荷重に応じたコーナリングパワーを表す変数或いはパラメータの各々は、第1関数に含まれている。仮に、前後加速度が大きく、車両に過渡的な挙動が生じる場合にも、車両重心位置に係る距離、及びコーナリングパワーを表す変数或いはパラメータを含む第1関数を用いて、時定数の値を決定する。更に、この値を時定数に代入した第2関数が用いられて、ヨー角が零に対応する後輪目標舵角が決定される。これらにより、加減速の時機又は時期でも車両が進行方向から逸れることがなく、車両に生じる不適切な横移動を抑制することが可能となる。
【0023】
本発明に係る車両制御装置の他の態様では、前記第2関数は、変数として、前記前輪の舵角σf、前記後輪目標舵角σr、ラプラス演算子s、前記前輪に生じるコーナリングパワーKf、前記後輪に生じるコーナリングパワーKr、前記前輪の舵軸から前記後輪の舵軸までの距離l、前記車両の重心から前記前輪の舵軸までの距離lf、前記重心から前記後輪の舵軸までの距離lr、前記車両の重量m、前記車両のヨーイングに作用する、前記ヨー角に係る慣性モーメントI、前記車両の速度V、並びに前記時定数としての係数τ1及びτ2を含んでいる場合に、式(1)で示され、
【0024】
【数1】

【0025】
前記式(1)における係数τ1及びτ2は、式(2)及び式(3)で夫々示される。
【0026】
【数2】

【0027】
【数3】

【0028】
この態様によれば、後輪目標舵角σrが、第2関数の一例としての式(1)の通りに、前輪の舵角σfにおける関数として示される。また、第2関数に含まれる時定数の一例である、式(2)及び式(3)により示される係数τ1及びτ2が、第1関数から、簡潔に決定される。このように、整然たる三式を用い、前輪の舵角σfに対する後輪目標舵角σrを比較的単純な演算により、決定することが可能である。
【0029】
尚、上述した係数τ1及びτ2の関係について、例えば車両が、コーナリング時にコーナ外側を向く挙動傾向があるアンダーステア特性を有する場合に、係数τ1は係数τ2より小さいが、他の車両特性によってはそれに限定されない。
【0030】
本発明に係る車両制御装置の他の態様では、前記後輪側操舵機構は、前記操舵される前輪の舵角に対し、前記車両の速度に応じて逆位相又は同位相となる舵角をとるように前記後輪を操舵する。
【0031】
当該車両制御装置は、所謂、四輪操舵装置における基本制御として、前輪の舵角に対する後輪の舵角を、車速に応じて自動的に設定する。具体的には、ECU等の形態を採り得る設定手段により、車速が所定値以下である、即ち、車両が停止又は比較的低速走行している場合に、ステアリング量に対応する前輪の舵角がとる位相と、逆の位相をとる(即ち、前輪の舵角に対し逆位相となる)ように後輪の舵角が設定される。また、車速が所定値以上である、即ち、車両が比較的高速走行している場合に、ステアリング量に対応する前輪の舵角がとる位相と、同じ位相をとる(即ち、前輪の舵角に対し同位相となる)ように後輪の舵角が設定される。
【0032】
この態様に係る車両制御装置によれば、例えば上述したように後輪の舵角が車速に応じて自動的に設定されると、設定された後輪の舵角を含む各種パラメータを入力とする第1関数から、時定数特定手段により、ヨー角を零とした場合における第2関数が含む時定数の値が、決定される。すると、目標舵角決定手段により、決定された値を時定数に代入した第2関数が用いられ、後輪目標舵角が決定される。続いて、制御手段により、後輪側操舵機構が制御され、前輪の舵角に対し、後輪が決定された後輪目標舵角に操舵される。このように、上述した基本制御を行いつつ、車両における不適切な横移動を抑制するための操舵制御を行うことが可能である。
【0033】
本発明の作用及び他の利得は次に説明する実施するための最良の形態から明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施形態に係る車両の構成を概念的に表してなるブロック図である。
【図2】図1の車両の運動モデルを説明するための二次元座標である。
【図3】図1の車両の運動モデルを表す各種変数を説明するための変数表である。
【図4】図1のECUによるヨーイング抑制制御処理を示すフローチャートである。
【図5】本発明に係る時定数及び前後加速度の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施形態について図を参照しつつ説明する。
【0036】
<実施形態>
<実施形態の構成>
始めに、図1を参照して、本発明の実施形態に係る車両10の構成について説明する。ここに、図1は、車両10において、本発明に係る車両制御装置に関連する部分の構成を概念的に表してなる概略構成図である。
【0037】
図1において、車両10は、左前輪FL及び右前輪FR(以下、適宜「前輪」と略称する)並びに左後輪RL及び右後輪RR(以下、適宜「後輪」と略称する)を備え、これら前輪及び後輪が後述する4輪バイワイヤ機構200により操舵されることによって所望の方向に進行することが可能に構成されている。
【0038】
図1において、車両10は、ECU100及び4輪バイワイヤ機構200を備える。
【0039】
ECU100は、夫々不図示のCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)を備え、車両10の動作全体を制御することが可能に構成された電子制御ユニットであり、本発明に係る「車両制御装置」の一例である。尚、ECU100は、本発明に係る「時定数決定手段」、「目標舵角決定手段」及び「制御手段」の夫々一例として機能する一体の電子制御ユニットであるが、本発明に係るこれら各手段の物理的、機械的及び電気的な構成は、これに限定されるものではなく、例えば複数のECU、各種処理ユニット、各種コントローラ或いはマイコン装置等各種コンピュータシステム等として構成されていてもよい。
【0040】
4輪バイワイヤ機構200は、ECU100によりその駆動状態が制御される、本発明に係る「前輪側操舵機構」及び「後輪側操舵機構」の一例たる電子制御式四輪操舵装置である。4輪バイワイヤ機構200は、ステアリングホイール210、ステアリングシャフト220、反力装置230、操舵角センサ240、前輪用アクチュエータ250、操舵シャフト260、後輪用アクチュエータ270及び操舵シャフト280を備える。
【0041】
ステアリングホイール210は、ドライバによる操舵入力が可能に構成された物理的な操作手段である。
【0042】
ステアリングシャフト220は、一端部がステアリングホイール210に連結され、ステアリングホイール210の回転に連動して回転可能に構成された軸体である。ステアリングシャフト220の他端部は、反力装置230に連結されている。
【0043】
反力装置230は、ステアリングホイール210に加えられる入力操舵トルクに対する反力トルクを生成する装置である。反力装置230からの反力トルクにより、ステアリングホイール210を操作するドライバは、常に適切な操舵感を得ることが可能となっている。
【0044】
操舵角センサ240は、ステアリングホイール210のステアリング量たる操舵角を検出することが可能に構成されたセンサである。操舵角センサ240は、ECU100と電気的に接続されており、検出された操舵角δstは、一定又は不定の周期でECU100により把握される構成となっている。
【0045】
前輪用アクチュエータ250は、本発明に係る「前輪側操舵機構」の一部として機能するように構成された駆動装置である。前輪用アクチュエータ250は、左右の前輪を相互に連結する操舵シャフト260に対し、当該操舵シャフト260を図中左右方向に往復運動させるための駆動力を付与することが可能に構成されている。前輪用アクチュエータ250は、ECU100と電気的に接続されており、操舵シャフト260に対する駆動力の付与状態は、ECU100により制御される構成となっている。
【0046】
補足すると、操舵シャフト260に対し図中左右方向に駆動力が付与され、操舵シャフト260が左右方向に変位した場合、タイロッド及びナックル等を介して操舵シャフト260に連結された左右の前輪は、夫々同一方向に回頭し前輪が操舵される。
【0047】
後輪用アクチュエータ270は、本発明に係る「後輪用操舵機構」の他の一例として機能するように構成された駆動装置である。後輪用アクチュエータ270は、左右の後輪を相互に連結する操舵シャフト280に対し、当該操舵シャフト280を図中左右方向に往復運動させるための駆動力を付与することが可能に構成されている。後輪用アクチュエータ270は、ECU100と電気的に接続されており、操舵シャフト280に対する駆動力の付与状態は、ECU100により制御される構成となっている。
【0048】
補足すると、操舵シャフト280に対し図中左右方向に駆動力が付与され、操舵シャフト280が左右方向に変位した場合、タイロッド及びナックル等を介して操舵シャフト280に連結された左右の後輪は、夫々同一方向に回頭し後輪が操舵される。
【0049】
尚、本実施形態では、四輪操舵装置として、ステアリングホイール210及び前輪間が機械的に連結していない、上述した4輪バイワイヤ機構200を使用するが、ステアリングホイール210及び前輪間が機械的に連結した機構であっても構わない。また、本発明に係る四輪操舵装置(即ち、「前輪側操舵機構」及び「後輪側操舵機構」)には、車両安定性を実現すべく、ステアリングのギア比を自動的に調整可能なギア比可変機構等を備える、所謂、4輪アクティブステア機構が含まれる。
【0050】
一方、図1において、車両10には、前輪及び後輪の操舵に関連する各種のセンサが備わっている。即ち、車両10は、車速センサ11、横加速度センサ12、前後加速度センサ13、前輪舵角センサ14及び後輪舵角センサ15を備える。
【0051】
車速センサ11は、車両10の速度(即ち、車速)Vを検出することが可能に構成されたセンサである。車速センサ11は、ECU100と電気的に接続されており、検出された車速Vは、ECU100によって一定又は不定の周期毎に把握される構成となっている。
【0052】
横加速度センサ12は、車両10の横加速度Vsを検出することが可能に構成されたセンサである。横加速度センサ12は、ECU100と電気的に接続されており、検出された横加速度Vsは、ECU100により一定又は不定の周期で把握される構成となっている。尚、横加速度Vsは、操舵角δst、並びにECU100に予め記憶されているハイブリッド車両10の体様及び様式(所謂、車両モデル)に基づいて算出される算出値であっても構わない。
【0053】
前後加速度センサ13は、車速Vの変化率たる、車両10の前後加速度Vfrを検出することが可能に構成されたセンサである。前後加速度センサ13は、ECU100と電気的に接続されており、検出された前後加速度Vfrは、ECU100により一定又は不定の周期で把握される構成となっている。尚、前後加速度Vfrは、ブレーキ機構におけるブレーキ圧、又はエンジンの出力トルク等に基づいて算出される算出値であっても構わない。
【0054】
前輪舵角センサ14は、左前輪FL及び右前輪FRからなる前輪の実舵角(以下、適宜「前輪実舵角」と略称し、本実施形態では、常に等しいとする)δf0を検出することが可能に構成されたセンサである。前輪舵角センサ14は、ECU100と電気的に接続されており、検出された前輪実舵角δf0は、ECU100により一定又は不定の周期で把握される構成となっている。
【0055】
後輪舵角センサ15は、左後輪RL及び右後輪RRからなる後輪の実舵角(以下、適宜「後輪実舵角」と略称し、本実施形態では、常に等しいとする)δr0を検出することが可能に構成されたセンサである。後輪舵角センサ15は、ECU100と電気的に接続されており、検出された後輪実舵角δr0は、ECU100により一定又は不定の周期で把握される構成となっている。
【0056】
<実施形態の動作>
本実施形態に係る車両10では、4輪バイワイヤ機構200により、前輪実舵角δf0及び後輪実舵角δr0を操舵対象とする四輪操舵が行われる。この際に、ECU100は、操舵角σstに応じて前輪及び後輪について夫々決定される前輪目標舵角σf及び後輪目標舵角σrを制御目標として制御する。
【0057】
この制御方法として、ECU100は、四輪操舵制御における基本制御として、車両10の現在の走行状態(即ち、操舵角センサ240により検出された操舵角σst、及び車速センサ11により検出された車速V)に応じた対応関係をなすように前輪目標舵角σf1及び後輪目標舵角σr1(以下、適宜「車両運動制御用前後輪目標舵角σf1,σr1」と称する)を設定する。具体的には、車速Vが予め設定された車速閾値V0以下である場合に、前輪目標舵角σf1に対し位相が逆となる後輪目標舵角σr1を設定し、車速Vが車速閾値V0以上である場合に、前輪目標舵角σf1に対し位相が同一となる後輪目標舵角σr1を設定する。
【0058】
本実施形態では、これに併行して、ECU100は、前後輪の動特性の差異を要因とする、車両10の不適切な横移動を抑制すべく、車両運動制御用前後輪目標舵角σf1,σr1を補正する。この補正方法として、車両10の不適切な横移動を助長する車両10のヨーイングを抑制するための、後述するヨーイング抑制制御処理を実行する。
【0059】
ここで、図2及び図3を参照し、四輪操舵が行われる車両10の運動について説明する。ここに、図2は、進行方向に沿って走行する車両10の運動モデルについて説明するための二次元座標を示し、図3は、該運動モデルを表す各種変数を説明するための変数表を示す。尚、同図において、図1と重複する箇所には同一の符号を付してその説明を適宜省略することとする。
【0060】
図2において、縦軸は、横方向の移動量たる横移動距離yを、横軸は、進行方向への移動量たる進行方向移動距離xを夫々表している。車両10は、横移動距離y及び進行方向移動距離xの対応位置にあり、進行方向たる横軸右方向に向けて走行する。本実施形態では、原点0(0,0)に対し車両10がとり得る運動を表すモデルとして、車両10の重心Gが横移動した距離y(以下、適宜「横移動距離y」と略称する)、横軸に対する車両10の向きを表す角度θ(以下、適宜「ヨー角θ」と略称する)、及び変量Δを夫々算出するための三式が設定されている。ここで、前輪目標舵角σf、後輪目標舵角σr、ラプラス演算子s、前輪に生じるコーナリングパワーKf、後輪に生じるコーナリングパワーKr、前輪の舵軸から後輪の舵軸までの距離l、車両10における重心Gから前輪の舵軸までの距離lf、車両における重心Gから後輪の舵軸までの距離lr、車両10の重量m、ヨーイングに作用する車両10のヨー角慣性モーメントI及び車速Vの各変数を含む、上述した3つのモデル式は、式(4)から式(6)で表される。尚、モデル式(4)から式(6)は、ラプラス変換がなされたS関数として設定されるが、その変換形式についてこれに限定されない。
【0061】
【数4】

【0062】
【数5】

【0063】
【数6】

【0064】
これらモデル式(4)から式(6)は、ECU100のROMに予め記憶されており、特に、ヨー角θを表す式(5)は、本発明に係る「第1関数」の一例であって、車両10のヨーイング量に該当するヨー角θの算出に用いられる。
【0065】
ECU100は、ROMに記憶されているヨー角θのモデル式(5)を用い、車両10に生じるヨーイングを抑制し得る、前輪目標舵角σf及び後輪目標舵角σrの関係を導く。具体的には、モデル式(5)について、ヨー角θを「0」に置き換えた後に、単純化及び移項を行うことにより、モデル式(5)から、本発明に係る「第2関数」の一例たる、前輪目標舵角σf及び後輪目標舵角σrの関係式(1)を導出する。この関係式(1)に含まれる係数τ1及びτ2は、本発明に係る「時定数」の一例であり、関係式(1)を更に単純化すべく、式(2)及び式(3)で夫々表される。これら式(1)から式(3)もまた、ECU100のROMに予め記憶されている。
【0066】
式(1)
【0067】
式(2)
【0068】
式(3)
【0069】
ECU100は、関係式(1)を用い、車両10の走行状態を表す図3の各種変数に応じた、後輪目標舵角σrの補正値を決定する。
【0070】
<ヨーレイト抑制制御処理>
ここで、図4を参照し、ヨーレイト抑制制御処理の詳細について説明する。ここに、図4は、ヨーレイト抑制制御処理のフローチャートである。
【0071】
図4において、ECU10は、車両10を進行方向に対し平行移動させるための制御(以下、適宜「車両平行移動用制御」と称する)として、先ず、フィードバック又はフィードフォワード制御値たる目標舵角σ(以下、適宜「車両平行移動用目標舵角σ」と称する)を設定する(ステップS51)。尚、車両平行移動用目標舵角σの設定について、例えば目標横移動速度、目標横移動時間及び目標横移動軌跡等が使用される。
【0072】
続いて、ROMに記憶されている式(2)及び式(3)を読み出し、係数τ1,τ2を算出する(ステップS52)。この算出において、ECU100は、式(2)及び式(3)に夫々含まれている、前輪コーナリングパワーKf及び後輪コーナリングパワーKrを特定する際に、横加速度センサ12により検出される横加速度Vs、及び車両モデルの一要素としてROMに予め記録されているロール剛性配分率を取得する。すると、これら横加速度Vs及びロール剛性配分率に対応する前後輪のコーナリングパワーKf,Krを特定し、これらの値を式(2)及び式(3)に代入する。この結果、係数τ1,τ2の具体的な値が、式(2)及び式(3)から、算出可能となる。
【0073】
また、上述したコーナリングパワーKf,Krを特定する際に、横加速度Vs及びロール剛性配分率に加えて、前後加速度センサ13により検出される前後加速度Vfrを取得する。この前後加速度Vfrに応じて車両10全体の荷重が前後方向に移動することに伴い、タイヤの垂直荷重が変化する。この荷重変化、並びに上述した横加速度Vs及びロール剛性配分率に対応したコーナリングパワーKf,Krを特定する。この結果、横加速度Vs、ロール剛性配分率及び前後加速度Vfrに応じた係数τ1,τ2が算出される。
【0074】
続いて、算出された係数τ1,τ2の値、及びステップS51で設定された車両平行移動用目標舵角σたる前輪目標舵角σfを代入した式(1)を用いて、前輪目標舵角σfに対する後輪目標舵角σrを算出する。即ち、ヨー角θが零に対応する前後輪の目標舵角σf,σr(以下、適宜「車両平行移動用前後輪目標舵角σf,σr」と称する)を算出する(ステップS53)。この算出された車両平行移動用後輪目標舵角σrが、車両運動制御用後輪目標舵角σr1の補正値となる。
【0075】
続いて、算出された車両平行移動用前後輪目標舵角σf,σrを、当該処理に併行して設定される車両運動制御用前後輪目標舵角σf1,σr1に夫々加算した、最終的な前後輪目標舵角σf2,σr2を決定する(ステップS54)。
【0076】
すると、4輪バイワイヤ機構200を制御して、前輪実舵角σf0が決定した前輪目標舵角σf2をとるように前輪を操舵し、後輪軸舵角σr0が決定した後輪目標舵角σr2をとるように後輪を操舵する(ステップS55)。これにより、一連のヨーレイト抑制制御処理を終了する。
【0077】
本実施形態のヨーレイト抑制制御処理によれば、車両10に生じるヨーレイト量に該当するヨー角σを零とする、前後輪の目標舵角σf,σrの関係を導き、この関係において、前輪の目標舵角σfに対する後輪目標舵角σrを決定する。これにより、ヨーレイトを抑制するように後輪目標舵角σrが補正されることになり、車両10が進行方向から逸れることがなく、車両10に生じる不適切な横移動を抑制することが可能となる。また、これらを行う際に、複雑な制御を行う必要がなく、比較的容易にして、車両10における不適切な横移動の抑制を行うことが可能となる。
【0078】
また、コーナリングパワーKf,Krを表す変数を含む関係式(1)を用いて後輪目標舵角σrを決定することにより、コーナリング時にも車両10が進行方向から逸れることがなく、車両10における不適切な横移動を抑制することが可能となる。
【0079】
更には、前後加速度Vfrに対応したコーナリングパワーKf,Krを表す変数を含む関係式(1)を用いて後輪目標舵角σrを決定することにより、過渡的な挙動が生じる程の加減速が行われる時機又は時期でも、車両10が進行方向から逸れることがなく、車両10における不適切な横移動を抑制することが可能となる。
【0080】
尚、本実施形態によれば、前後輪のコーナリングパワーKf,Krを特定する際に、横加速度Vs、ロール剛性配分率及び前後加速度Vfrを取得するが、これらに代えて又は加えて、前後のタイヤに生じる前後力、横力及び上下力を取得してもよい。即ち、取得した前後力、横力及び上下力に対応するコーナリングパワーKf,Krを特定し、該コーナリングパワーKf,Krを表す変数を含む関係式(1)を用いて後輪目標舵角σrを決定する。これにより、例えばタイヤに生じる前後力、横力及び上下力のうち、少なくともいずれかの力が変化するコーナリング時に、車両10における不適切な横移動を抑制することが可能となる。
【0081】
更に、前後輪のコーナリングパワーKf,Krを特定する際に、上述した横加速度Vs、ロール剛性配分率、前後加速度Vfr、並びにタイヤに生じる前後力、横力及び上下力に代えて又は加えて、タイヤと路面との摩擦を考慮してもよい。具体的には、タイヤと路面との摩擦係数たる路面摩擦係数μに対応するコーナリングパワーKf,Krを特定し、該コーナリングパワーKf,Krを表す変数を含む関係式(1)を用いて後輪目標舵角σrを決定する。これにより、例えば路面摩擦係数μの高低にも左右するコーナリング時に、車両10における不適切な横移動を抑制することが可能となる。
【0082】
尚、本実施形態によれば、係数τ1及びτ2は、横加速度Vs、ロール剛性配分率及び前後加速度Vfrに対応すべく特定されたコーナリングパワーKf,Krに基づいて算出されるが、横加速度Vs、ロール剛性配分率、前後加速度Vfr、タイヤに生じる力、及びタイヤと路面との摩擦のうち、少なくとも一つの変数から直接に算出されてもよい。
【0083】
図5は、係数τ1及び前後加速度Vfrの関係を示すグラフである。図5において、縦軸は係数τ1を、横軸は前後加速度Vfrを夫々表している。例えば、係数τ1は、前後加速度Vfrが検出された時に、このような図5を使用して自動的に取得される。具体的には、ECU100は、図5のグラフから、前後加速度Vfrに対応する係数τ1の値を読み取る。このように、一つの変数から一義的に係数τ1及びτ2を特定すれば、比較的迅速に且つ容易にして、前後輪の目標舵角σf,σrを決定することも可能である。
【0084】
本発明は、上述した実施例に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う車両の制御装置もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0085】
FL、FR…前輪、RL、RR…後輪、10…車両、11…車速センサ、12…横加速度センサ、13…前後加速度センサ、14…前輪舵角センサ、15…後輪舵角センサ、100…ECU、200…4輪バイワイヤ機構、210…ステアリングホイール、220…ステアリングシャフト、240…操舵角センサ、250…前輪用アクチュエータ、260…操舵シャフト、270…後輪用アクチュエータ、280…操舵シャフト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前輪を操舵可能な前輪側操舵機構と、前記操舵される前輪の舵角に対し、走行状態に応じて異なる舵角をとるように後輪を操舵可能な後輪側操舵機構とを有する車両を制御する車両制御装置であって、
予め設定された前記車両のヨー角を特定するための第1関数から、前記ヨー角を零とした場合における前記前輪の舵角と前記後輪の舵角との関係を表す第2関数に含まれる時定数の値を、決定する時定数決定手段と、
前記決定された値を前記時定数に代入した前記第2関数を用い、前記ヨー角を零とした場合における前記操舵される前輪の舵角に対し前記後輪がとるべき舵角たる後輪目標舵角を決定する目標舵角決定手段と、
前記前輪側操舵機構を制御することに並行して、前記後輪が前記決定された後輪目標舵角をとるように前記後輪側操舵機構を制御する制御手段と
を備えることを特徴とする車両制御装置。
【請求項2】
前記時定数決定手段は、前記時定数の値を、前記車両の横加速度と、前記車両のローリングに作用するロール剛性とに基づいて、前記第1関数から決定することを特徴とする請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項3】
前記時定数決定手段は、前記時定数の値を、前記車両の前後加速度に基づいて、前記第1関数から決定することを特徴とする請求項1又は2に記載の車両制御装置。
【請求項4】
前記第2関数は、
変数として、前記前輪の舵角σf、前記後輪目標舵角σr、ラプラス演算子s、前記前輪に生じるコーナリングパワーKf、前記後輪に生じるコーナリングパワーKr、前記前輪の舵軸から前記後輪の舵軸までの距離l、前記車両の重心から前記前輪の舵軸までの距離lf、前記重心から前記後輪の舵軸までの距離lr、前記車両の重量m、前記車両のヨーイングに作用する、前記ヨー角に係る慣性モーメントI、前記車両の速度V、並びに前記時定数としての係数τ1及びτ2を含んでいる場合に、式(1)で示され、
【数1】

前記式(1)における前記係数τ1及びτ2は、式(2)及び式(3)で夫々示される
【数2】

【数3】

ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の車両制御装置。
【請求項5】
前記後輪側操舵機構は、前記操舵される前輪の舵角に対し、前記車両の速度に応じて逆位相又は同位相となる舵角をとるように、前記後輪を操舵することを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の車両制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−285036(P2010−285036A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−139449(P2009−139449)
【出願日】平成21年6月10日(2009.6.10)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】