説明

車両検査装置

【課題】車輪側面を撮影して検査することができる車両検査装置を提供する。特に車輪毎に異なる磨耗の量、車輪の半径の計測を通じて複数カメラ間の各車輪の回転角に基づいて補正することで、複数の部分画像から、検査に好適な車輪全周の検査画像を形成する。
【課題を解決するための手段】線路に沿って設置され、線路を通過する車両の車輪側面の車輪画像を取得する画像取得装置と、画像取得装置が取得した画像を保存する画像保存装置と、画像処理を行う画像処理装置とを備え、画像保存装置は、磨耗のない基準車輪の正対化画像を予め保持しており、画像処理装置は、画像取得装置で取得した車輪画像に射影変換を施して車輪に正対する正対化画像を生成し、正対化画像について車輪の車軸位置を推定し、推定した車軸位置を、画像保存手段に保持している磨耗のない基準車輪の正対化画像の車軸位置に合致させた画像に修正して画像保存装置に保存する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両の車輪側面を撮影して、当該車輪側面の状態を検査記録する車両検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の走行距離に応じて車輪の磨耗や劣化が進むことから、劣化の進行を記録することは部品の交換時期を知るうえで重要である。ピット内に車両を止めて部品の点検を行うが、車輪については周辺部の各種部品に遮蔽されており、車輪全周を1回の撮影で取得して検査することはできない。
【0003】
このような事情から、車輪の検査を行う方法として車両の走行中にカメラ等で車輪を撮影する技術が開示されている。例えば特許文献1(特開平7−174672)に記載の車輪踏面欠陥検査装置は、線路脇に設置した複数のカメラで車輪踏面を連写し、当該連写画像から車輪踏面の欠陥を計測している。この際に車輪の汚れと欠陥は異物として検出されたうえでその縦横比に基づいて分類される。
【0004】
特許文献2(特開平5−126686)に記載の車輪検査装置も線路脇のカメラで接近してくる車輪の踏面を水平方向に長いスリット状に連写したうえで、これを垂直方向に積み重ねて、当該車輪1周分の車輪踏面を形成して保存するようになっている。
【0005】
ここでは全ての車輪は半径が同一であることを前提としていて、当該車輪の、周囲長の10分の1の等間隔で配置した10台のカメラで撮影した画像を1回転360度の10分の1すなわち36度ピッチで積み重ねることでパノラマ合成がなされる旨記載されている。しかし実際には磨耗により車輪毎に半径が異なるため、一定速度で走行する車両の各車輪の回転速度は異なる。したがって、前記10台のカメラによる車輪の分割画像は36度ピッチになっているとは限らず、したがって、36度ピッチで積み重ねても検査に好適なパノラマ画像を得ることはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】・・・特開平7−174672
【特許文献2】・・・特開平5−126686
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、車輪踏面だけでなく、車輪側面にも傷や割れが生じることから、車輪側面の検査も必要であるが、従来は、車輪を撮影して検査する技術について、車輪踏面しか行われておらず、車輪側面については考慮されていなかった。
【0008】
この車輪側面検査での問題点について後で詳細に説明するが、ごく簡単には車輪の磨耗によって車輪踏面検査では問題とならなかった多くの解決課題が発生した。これは例えば、車輪磨耗により車輪半径が変化するということであり、撮影画像における車軸位置の垂直方向と水平方向の一致化と、回転角の補正が求められる結果となった。
【0009】
さらに、車輪側面についても全周の状態を一覧にて表示検査することが有効であるが、この場合にも踏面検査にはない工夫が必要である。
本発明が解決しようとする課題は、車輪側面を撮影して検査することができる車両検査装置を提供することにある。
【0010】
さらに、車輪毎に異なる磨耗の量、車輪の半径の計測を通じて複数カメラ間の各車輪の回転角に基づいて補正することで、複数の部分画像から、検査に好適な車輪全周の検査画像を形成することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明においては、線路に沿って設置され、線路を通過する車両の車輪側面の車輪画像を取得する画像取得装置と、画像取得装置が取得した画像を保存する画像保存装置と、画像処理を行う画像処理装置とを備え、画像保存装置は、磨耗のない基準車輪の正対化画像を予め保持しており、画像処理装置は、画像取得装置で取得した車輪画像に射影変換を施して車輪に正対する正対化画像を生成し、正対化画像について車輪の車軸位置を推定し、推定した車軸位置を、画像保存手段に保持している磨耗のない基準車輪の正対化画像の車軸位置に合致させた画像に修正して画像保存装置に保存する。
【0012】
また、画像処理装置は、車軸位置を合致させたあとの車輪画像について、車軸位置を原点とする極座標変換を行って極座標画像を生成して、極座標画像を画像保存装置に保存する。
【0013】
また、画像保存装置は、車輪ボルトの極座標画像上でのテンプレート画像を予め保持しており、画像処理装置は、車軸位置を原点とする極座標変換を行った極座標画像に対してテンプレートマッチングによりボルト位置を確定する。
【0014】
また、画像処理装置は、極座標画像に対して欠陥の有無を検出する処理を行い、画像保存装置に保存する。
【0015】
さらに、画像処理装置は、極座標画像に対して欠陥の有無を検出する処理を行い、その欠陥位置をテンプレートマッチングにより確定したボルト位置との関係で画像保存装置に保存する。
【0016】
また、本発明においては、線路に沿って複数台設置され、線路を通過する車両の車輪側面の全周に亘る複数枚の車輪画像を取得する画像取得装置と、画像取得装置が取得した画像を保存する画像保存装置と、画像処理を行う画像処理装置とを備え、画像保存手段は、磨耗のない基準車輪の正対化画像を予め保持しており、画像処理装置は、車輪側面の全周に亘る複数枚の車輪画像のそれぞれに射影変換を施して車輪に正対する複数の正対化画像を生成し、複数の正対化画像について車輪の車軸位置をそれぞれ推定し、推定した車軸位置を、画像保存手段に保持している磨耗のない基準車輪の正対化画像の車軸位置に合致させた画像に修正して画像保存装置に保存する。
【0017】
また、画像処理装置は、車軸位置を合致させたあとの複数の車輪画像について、車軸位置を原点とする極座標変換を行って複数の極座標画像を生成し、複数の極座標画像を連結して車輪画像の全周に亘る極座標画像を作成して前記画像保存装置に保存する。
【0018】
また、表示手段を備え、連結した車輪画像の全周に亘る極座標画像の一部矩形領域を表示手段に表示する。
【0019】
また、表示手段を備え、記連結した車輪画像の全周に亘る極座標画像の一部の台形領域を抽出し、車輪形状にて表示手段に表示する。
【0020】
また、画像保存手段は、車輪ボルトの極座標画像上でのテンプレート画像を予め保持しており、画像処理装置は、車軸位置を原点とする極座標変換を行った極座標画像に対してテンプレートマッチングによりボルト位置を確定し、ボルト位置の間隔から、複数の極座標画像を連結して車輪画像の全周に亘る極座標画像を得る。
【0021】
また、画像処理装置は、車輪の半径又は直径を求め、この値により前記画像取得装置の、2台以上のカメラの間に回転する回転角をもとめ、回転角度に基づいて、2以上の画像取得装置が生成した極座標変換画像を接合して車輪全周分の極座標変換画像を生成する。
【0022】
また、画像処理装置は、車輪構造物の移動量をパタンマッチング処理で計測することにより、画像取得装置の、2台以上のカメラの間に回転する回転角をもとめ、回転角度に基づいて、2以上の画像取得装置が生成した極座標変換画像を接合して車輪全周分の極座標変換画像を生成する。
【0023】
さらに、車輪の半径の長さと、基準車輪の半径の長さとの差をもって、車輪の磨耗量と判定する。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、車輪側面を撮影して検査することができる車両検査装置を提供することができ、車輪ごとの側面の画像が管理され、車輪ID番号でデータベース管理することで所望の車輪の側面画像を参照することができる。
【0025】
また、画像処理により特徴点を検出することが可能であり、以前の同一車輪の特徴点と比較することで車輪の劣化の状況を把握することが可能となる。また、車輪の回転角に応じて補正してパノラマ形成することで、検査に好適な車輪全周画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施例に係る画像処理装置の処理フローを示す図。
【図2】線路と線路脇に設置された検査ユニットの位置関係を示す図。
【図3】車両検査装置1の全体構成図。
【図4】画像取得装置の構成を示す図。
【図5】カメラの撮影視野を説明するための図。
【図6】車輪ごとに磨耗度合いが相違することを示す図。
【図7】車輪に対してカメラが正対していないことを示す図。
【図8】車輪毎に、撮影時に水平方向の差異を生じることを示す図。
【図9(a)】基準車輪のときの撮影を示す図。
【図9(b)】磨耗車輪のときの撮影を示す図。
【図10】座標系の説明を示す図。
【図11】基準車輪70と画面上画像マトリクス25の関係を示す図。
【図12】基準車輪ワールド座標を示す図。
【図13】正対画像マトリクスを定義するための図。
【図14】車軸座標検出処理を説明する図。
【図15(a)】正対画像マトリクスの矩形を示す図。
【図15(b)】変換後の基準車輪極座標を示す図。
【図16(a)】変換対象とする車輪画像を示す図。
【図16(b)】変換後の極座標画像マトリクスを示す図。
【図17(a)】ボルトのテンプレートを示す図。
【図17(b)】極座標画像マトリクスを示す図。
【図17(c)】特徴点を示す図。
【図18】特徴点の位置特定とあいまいさを示す図。
【図19(a)】複数カメラからの複数画像を示す図。
【図19(b)】複数画像の接合画像を示す図。
【図20】車輪20に係る極座標画像マトリクスのパノラマ形成を示す図。
【図21(a)】車輪全周の極座標画像マトリクスを仮想メモリ展開した図。
【図21(b)】極座標画像マトリクスの一部を表示した例を示す図。
【図21(c)】車輪イメージで表示した例を示す図。
【図22(a)】車輪全周の極座標画像マトリクスを仮想メモリ展開した図。
【図22(b)】極座標画像マトリクスの一部を表示した例を示す図。
【図22(c)】車輪イメージで表示した例を示す図。
【図23】基準化正対画像マトリクスへの変換の重要性を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の車両検査装置の実施例を説明する。
【実施例】
【0028】
図2は、線路と線路脇に設置された検査ユニットの位置関係を示す図である。この図に示すように、検査ユニット2は、線路3、4の両脇に複数(本実施例では4つ)設置される。これらはそれぞれ、車両6の矢印で示した進行方向に対して右側車輪の外部を検査するユニットを2(RO)、右側車輪の内部を検査するユニットを2(RI)、車両6の進行方向に対して左側車輪の外部を検査するユニットを2(LO)、同じく左側車輪の内部を検査するユニットを2(LO)と命名し、それぞれ独立に車両6の左右の車輪外側と内側を検査するようになっている。
【0029】
一般に、車両検査は車両6が車庫に入る前に行われるので、検査ユニット2は、車庫前に設置されることが多い。車両は1以上連なって列車を構成するが、列車には編成番号が付されている。係る車両が、車庫前に近づくと、列車運行表と列車の到達通過時刻から編成番号が特定され、検査ユニット2が作動開始する。検査ユニット2は、編成番号の特定とともに、この列車の車輪構成も情報として得ることができる。このため、先頭から幾つ目の車輪の画像であるかを認識しながら、画像情報にコード化して画像ファイル名に反映させて保存すれば、後日、前記画像ファイルがどの編成の先頭から何番目の、左側または右側の車輪の内側または外側の画像であるかを特定できる。
【0030】
図3は、車両検査装置1の全体構成図である。この図で、車両検査装置1は、検査ユニット2と、データベース8と、パノラマ形成装置10と、ユーザインタフェース装置12で構成され、それぞれ通信線14を介して通信可能となっている。前述の図2の4つの検査ユニット2(RO)、2(RI)、2(LO)、2(LI)のそれぞれは、画像取得装置16、17、18、19を有しており、車輪の回転位置に応じて例えば4枚の画像を取得する。
【0031】
各画像取得装置は、同一機能にして独立に動作する。図3中の矢印は車両6を含めて構成される列車が有する複数の車輪の一つ(以後、単に車輪と表記する。)である車輪20が転がる方向である。各検査ユニット2は、それぞれの画像取得装置16、17、18、19で取得した車輪20の4分割撮影された4枚の車輪画像をデータベース8に送信し、データベース8はそれらを格納する。
【0032】
パノラマ形成装置10は、データベース8に格納された複数の分割車輪画像から1車輪分を統合した車輪全周画像を生成し、ユーザインタフェース装置12に送信する。ユーザインタフェース装置12は、キーボードやマウス等のコマンド入力装置と、表示装置を備えており、データベース8にアクセスして車輪に関する画像及び計測データを参照して後述する車輪の特徴点のパタンマッチング処理を行う。また、パノラマ形成装置10から送信される全周分の車輪画像を表示装置に表示する。なお、データベース8、パノラマ形成装置10、ユーザインタフェース装置12の動作については後に詳述する。
【0033】
図4は、画像取得装置の構成を示す図であり、複数ある画像取得装置のうちの16の構成を代表として示している。なお、他の画像取得装置も同一構成とされているので、ここではそれらの説明を省略する。画像取得装置16は、車両検知センサ21と、照明装置22と、カメラ23と、車輪計数装置24と、画像保存装置27と、画像処理装置26とで構成される。
【0034】
カメラ23は、線路4に沿って、隣接するカメラ(例えば画像取得装置17に付属するカメラ)と所定の間隔をもって設置され、車輪20の一周分を360度として、車輪20の所定の回転角毎に、線路4に接する付近を含めた部分を撮影する。本実施例の場合には画像取得装置16乃至19に1つずつのカメラを備えることで、合計4つのカメラで車輪1周分を撮影するため、およそ90度ピッチで4度撮影することとなる。
【0035】
図5は、カメラ23の撮影視野を説明する図であり、矩形25が画像取得手段16が備えるカメラ23の撮影視野である。本実施例の車輪20は中心に車軸210と8個のボルト31乃至37を有する。ただし、本発明の検査対象たる車輪はこれに限られず、中心に車軸があればよい。カメラの視覚視野である矩形25には車輪20の一部が含まれるが、車軸210及び線路4との接点211が視野に含まれる事は必須ではないが、後に説明するカメラキャリブレーション作業にとっては接点211が含まれている方が好ましい。
【0036】
4つのカメラで車輪の全周を撮影する場合には、カメラ23の視野は、接点211の両側に46度以上もたせなければならない。一方、視野を広げすぎると解像度が落ちるため、60度前後が適当である。したがって、矩形25の内部において、横線で示した領域28が接点211の両側46度(合計92度)及び、格子領域29も含めて両側60度(合計120度)の範囲が撮影される。
【0037】
また、カメラ23は車輪20を下方から見上げる画角となっているため、本来真円である車輪20は上下方向に縮んで歪みをもって撮影されている。なお、カメラ23は、20ナノ秒以下の短時間露光で撮影が可能なデジタルカメラである。照明装置22はカメラ23が20ナノ秒以下の露光でも十分に撮影できるような強い光量が必要であり、ストロボ制御されたLEDを利用することができる。
【0038】
図4に戻り、そのほかの構成について詳細に説明する。車輪検知センサ21は、例えば線路4に装着した磁気センサ又は線路4の近傍に設置した光電センサで構成することができ、車輪20が所定の位置に来たことを数十ナノ秒の遅延で検知し、同期信号を出力する。移動する車輪20をカメラ23で撮影するために画像に“流れ”が発生するが、その“流れ”の大きさが検出対象となる特徴点の幅の半分以下になるように、シャッター速度は十分高速に調整しておく。
【0039】
ここで、画像取得装置16のその他の装置の構成を、画像取得装置16の動作とともに説明する。まず、車輪検知センサ21が、車輪20が所定の位置に来たことを検知し、カメラ23と照明装置22と車輪計数装置24に同期信号を出力する。カメラ23は同期信号に同期して車輪20を撮影し、撮影した車輪画像は画像保存装置27に撮影時刻とともに保存される。照明装置22は同期信号に同期して発光し、車輪20の一部を照明する。
【0040】
車輪計数装置24は車輪検知センサ21の同期信号の立ち上がり回数を計数することで車両6の何番目の車輪を撮影したかを知ることができ、この順番を車輪番号として画像保存装置27に出力する。
【0041】
画像保存装置27は、車輪番号に前述した検査ユニット2のユニット番号を付したものを車輪IDとして、この車輪IDと車輪画像と通過時刻とを紐付けして保存する。検査ユニット2のユニット番号により、車両6のどの車輪をどこから撮影したかを特定することができる。
【0042】
また、車輪計数装置24は、同期信号の立ち上がり回数をあらかじめ定められた計数値まで計数することで、車両6の一編成の通過が完了したタイミングを知り、これを画像処理装置26に通知するとともに、計数値をリセットして新たな車両の到来に備える。なお、あらかじめ定められた計数値とは車両6を含む一編成分の、片側の車輪の数である。画像処理装置26は、車輪計数装置24による車両6を含む編成の通過完了通知の受信後に、画像保存装置27に保存された車輪画像を処理する。
【0043】
次に、図4の画像処理装置26の処理フローの詳細を説明する前に、実際に撮影される車輪側面画像を用いて各種の解析処理を行う場合に、特に側面検査であるがゆえに考慮すべき事項を図6乃至図9を用いて説明する。後述する画像処理装置26の処理フロー(図1)のステップS2乃至ステップS5はこの事項に対処するために設けられた処理である。
【0044】
考慮すべき事項の第1点は、図6に示すように車輪ごとに磨耗度合いが相違することである。一編成分の車輪の一方(左車輪又は右車輪)の片側(内側又は外側)は、すべて同一平面上を回転しながら通過する。しかし、車輪毎に磨耗の度合いが異なるためにその半径は異なり、それぞれの車軸は線路4から異なる直線上を通過する。図6では前記同一平面は図面の紙面と一致している。磨耗の少ない車輪20aの側面と車軸210a及び、磨耗の大きい車輪20bの側面と車軸210bは前記同一平面上にあるが、車軸210aと210bは線路4から異なる高さで移動する。
【0045】
考慮すべき事項の第2点は、図7に示すように車輪に対してカメラが正対していないということである。図7では前記同一平面は紙面に垂直で、線分40で表される。画像取得装置16乃至19はカメラ23を有するが、各カメラは平面40に正対しておらず、距離(distX)と、線路4を基準とした高さ(heightY)と、カメラ角度θはまちまちである。このため、後述の図1のステップS2で求めるカメラパラメータによって、仮想的に車輪20に正対するカメラv23で撮影したのと同等な正対化画像を得る必要がある。
【0046】
考慮すべき事項の第3点は、図8に示すように車輪毎に撮影時に水平方向の差異も生じるということである。車輪検知センサ21として光電センサを用いる場合、車輪20が光電センサのビームを遮る瞬間が車輪検知のタイミングである。図8の50は前記光電センサのビームを表し、図8上は、磨耗の少ない車輪20aがビーム50を遮る瞬間で、図8下が、磨耗が進んで半径が短くなった車輪20bがビーム50を遮る瞬間である。各車輪の車軸位置210aと210bを比較すると磨耗の進んだ車輪20bの車軸210bが左方にシフトしていることが分かる。
【0047】
考慮すべき事項の第4点は、図9に示すように車輪半径の大きさに応じて異なる回転角をもって撮影されるこということである。図9において、ビーム50は画像取得装置16に内蔵の車輪検知センサ21に係る光電センサビームで、ビーム51は画像取得装置17に内蔵の車輪検知センサ21に係る光電センサビームである。図9(a)では磨耗の進んでいない車輪20aはビーム50を遮ってから、更に90度回転してビーム51を遮る。
【0048】
図9(b)では磨耗の進んだ車輪20bがビーム50を遮った後、90度よりも更に回転してビーム51を遮る。これは磨耗により車輪半径が短くなり、これに伴って周囲長も短くなったため、ビーム50とビーム51の間でより多く回転するからである。ビーム50とビーム51の遮蔽の瞬間に画像取得装置16と17でそれぞれ車輪を撮影するため、車輪半径の大きさに応じて異なる回転角をもって撮影されることが分かる。
【0049】
以上に示したように、撮影された車輪側面画像を用いて検査を行うときには、画像の正対化と、撮影画像における車軸位置の垂直方向と水平方向の一致化と、回転角の補正が重要である。
【0050】
これらの問題の多くは、車輪の磨耗度合いによって生じていることが明らかであり、従来の車輪踏面検査の場合には問題にならなかった事項の解決が車輪側面検査では強く求められる。
【0051】
このことから、本発明においてはこれら諸問題の補正のために5つの座標系を導入して、同一画面上での評価を可能とする。以下、説明の便宜のため、5つの座標系を導入したときの座標間の相関関係を図10にまとめる。5つの座標系とは、画面上画像マトリクスと、基準車輪ワールド座標と、正対画像マトリクスと、基準車輪極座標と、極座標画像マトリクスであって、変換式により相互に変換可能である。
【0052】
第1の座標系である図10の画面上画像マトリクス[x,y]は、図4のカメラ23で撮影された図5の矩形25を範囲とするディジタル画像である。この画像は行列表現が可能であり、行数と列数で画素を特定する。以後、この行数と列数を画面上画像マトリクスの座標と呼ぶ。図5の矩形25の左上端を基点[0,0]とし、一画素当たりの大きさはミリメートル/画素である。
【0053】
第2の座標系である図10の基準車輪ワールド座標(X,Y)は、後述するところの図12において、基準車輪70が位置検出用のビーム50を遮るときに線路4と接している点71を原点とし、線路4に沿ってX軸をとり、これに垂直すなわち接点71と基準車輪70の車軸710を結ぶ直線をY軸に取る実数の座標系である。単位はミリメートルなどMKSA単位系で定めることができる。
【0054】
ここで、基準車輪70とは、車軸やボルトの配置は磨耗した実際の車輪20(図5の画面上画像マトリクスで表現される車輪)と同一であるが、車輪の磨耗が無いことが保証されている理想のあるいは仮想上の車輪である。基準車輪70の半径長は車輪半径長の最大値であって、既知の固定値rSTDである。したがって、車軸710の基準車軸ワールド座標は常に(0,rSTD)となる。
【0055】
第3の座標系である図10の正対画像マトリクス[j,i]は、後述のカメラパラメータをもって射影変換した後の正対化されたディジタル画像であって、行列表現が可能で行数と列数で画素を特定する。以後、この行数と列数を正対画像マトリクスの座標と呼ぶ。図13の矩形90の範囲が正対画像マトリクスであり、左上端を基点[0,0]とする。一画素当たりの大きさはミリメートル/画素で表現される。
【0056】
第4の座標系である図10の基準車輪極座標(t,r)は、実数値をとる座標系であって、前記の図12の基準車輪ワールド座標(X,Y)において、その車軸710からの距離rを縦軸とし、Y軸となす角度tを横軸とする座標系で表現したものである。r軸の単位はミリメートルなどMKSA単位系とし、t軸はラディアン又は(度)とすることができる。
【0057】
第5の座標系である図10の極座標画像マトリクス[q,p]は基準車輪極座標(t,r)をディジタル画像化したものであって、行列表現が可能であり、行数と列数で画素を特定する。以後、この行数と列数を極座標画像マトリクスの座標と呼ぶ。図16(b)の矩形2000が極座標画像マトリクスの例で、左上端を基点(0,0)とする。一画素当たりの大きさは水平方向がラディアン/画素、または度/画素で、垂直方向はミリメートル/画素とすることができる。
【0058】
以上の5つの座標系の間の変換の関係を示したものが図10であり、後でその関係を詳述するように、数(8)により画面上画像マトリクスから基準車輪ワールド座標への変換が可能で、その逆変換は数(5)でなされる。数(10)により基準車輪ワールド座標から正対画像マトリクスへの変換が可能で、その逆変換は数(9)でなされる。数(19)で基準車輪ワールド座標から基準車輪極座標への変換がなされ、その逆変換は数(20)でなされる。数(22)で基準車輪極座標から極座標画像マトリクスへの変換がなされ、その逆変換は数(21)でなされる。
【0059】
次に、画像処理装置26の処理フローを図1を参照して説明する。
【0060】
〔ステップ1:車輪画像入力〕
まず、ステップS1において、図4の画像保存装置27から車輪画像を入力する。
【0061】
車輪画像のファイル名は車輪IDを用いる。画像保存装置27は画像の撮影時刻も記録しているものとする。このときに得られる画像は、図5の画像であり、例えば先頭車輪の場合には、右側車輪内側について16,17,18,19からの4枚の画像が1組となって入力される。従って1組の車輪に対しては、左右と内外について評価するので、都合16枚の写真が入力される。
【0062】
〔ステップ2:正対化画像生成〕
次にステップS2では、図7で説明した車輪とカメラが正対していない点、つまりカメラキャリブレーションの問題について対策する。
【0063】
ここでステップS2での処理の前提となるカメラキャリブレーションについて説明しておく。カメラキャリブレーションはカメラ23の設置固定時に少なくとも1度行えば、以後はここで求めたカメラパラメータを用いて射影変換を行うことができる。図11は基準車輪70と画面上画像マトリクス25の関係を示す。ここで、基準車輪70の側面にキャリブレーションマーク91乃至94を付し、線路4との接点71からの、線路4の方向の距離と線路に垂直な方向の距離を実測する。単位はミリメートルが適当である。
【0064】
これらの値はすなわち図12の基準車輪ワールド座標である。キャリブレーションマーク91乃至94は基準車輪70における車軸710やボルトなど既知の構造を利用してもよい。ただし、画面上画像マトリクスの範囲である矩形25に含まれていなければならない。これらのキャリブレーションマーク91乃至94は、基準車輪ワールド座標上では、実測により既知の座標(X1,Y1)、(X2,Y2)、(X3,Y3)、(X4,Y4)とおくことができる。
【0065】
一方、キャリブレーションマーク91乃至94の画面上画像マトリクスにおける位置は、図5の矩形25の左上を(0,0)とする座標で表現することにしており、それぞれディジタル画像上で求めることができ、これらも既知とすることができる。そこでこれらを、[cx1,cy1]、[cx2,cy2]、[cx3,cy3]、[cx4,cy4]とする。
【0066】
ここで、求めるべき未知のカメラパラメータをc11、c12、c13、c21、c22、c23、c31、c32とする。ただし、基準車輪ワールド座標が実数であるのに対して画面上画像マトリクスは整数値であるから厳密には一致しないが、整数値の中でもっとも対応する実数値に近いものを選ぶものとする。このようにすると、画面上画像マトリクスの[x,y]と、基準車輪ワールド座標の(X,Y)には数(1)の関係が成立する。
【0067】
【数1】

【0068】
ここで、Hを消去して整理すると数(2)が得られる。
【0069】
【数2】

【0070】
これを行列で表現すると数(3)となる。
【0071】
【数3】

【0072】
数(3)の(X,Y)と[x,y]はキャリブレーションマーク91乃至94の基準車輪ワールド座標と画面上画像マトリックスの座標を代入して成立すべきであるからこれらを代入して数(4)を得る。
【0073】
【数4】

【0074】
数(4)の左辺の8×8行列の逆行列を両辺に乗じることにより、カメラパラメータc11、c12、c13、c21、c22、c23、c31、c32を求めることができる。
【0075】
また、キャリブレーションマークを5以上定めた場合は数(4)の左辺の行列は行数が列数よりも多くなる。この場合でも前記左辺の行列の転置行列を両辺に乗じることで、左辺の行列を8×8行列とし、カメラパラメータc11、c12、c13、c21、c22、c23、c31、c32について解くことができる。
【0076】
以上示した方法によりカメラパラメータが既知となれば、数(2)をx,yについてまとめた数(5)により、基準車輪ワールド座標(X,Y)から画面上画像マトリクス[x,y]への変換が可能となる。
【0077】
【数5】

【0078】
また、数(5)を基準車輪ワールド座標についてまとめると、数(6)を得る。
【0079】
【数6】

【0080】
これを行列表現で表すと数(7)となる。
【0081】
【数7】

【0082】
数(7)を変形して数(8)を得る。
【0083】
【数8】

【0084】
数(8)の右辺行列右肩の−1は逆行列を表す。逆行列はガウスの掃きだし法を始めとして様々な解法があり、容易に求めることができる。数(8)により、画面上画像マトリクス[x,y]から基準車輪ワールド座標(X,Y)への変換ができる。
【0085】
なお、ここではカメラキャリブレーションの被写体として基準車輪70を用いたが、基準車輪70及び車輪20の側面の存在する平面40上に格子状の目盛りを付した板を被写体としてもよい。
【0086】
続いて、図13を参照して、正対化画像のディジタル配列として正対画像マトリクスを詳細に定義する。正対画像マトリクスは[j,i]と表す。図11の矩形25は正対化前の画面上画像マトリクスで、図13の矩形90は、正対化した正対画像マトリクスであって、左上端を基点[0,0]とする。ここで、四隅の基準車輪ワールド座標をそれぞれ、左上のA点を(−W/2,H0)、右上のB点を(W/2,H0)、左下のC点を(W/2,H0+H)、右下のD点を(−W/2,H0+H)とする。W、H0、Hは既値の実数である。
【0087】
さらに、正対画像マトリクス[j,i]の1画素の水平方向の大きさを表すdx=W/M、及び垂直方向の大きさを表すdy=H/Nなるdxとdyを定義する。MとNは横と縦方向の画素数を表す自然数である。単位はともにミリメートル/画素となる。この場合、正対画像マトリクスはN行M列の行列となり、四隅の正対画像マトリクスはそれぞれ、A点が[0,0]、B点が[M−1,0]、C点が[0,N−1]、D点が[M−1,N−1]となる。
【0088】
以上のことから、基準車輪ワールド座標(X,Y)を数(9)で表すことができ、正対画像マトリクス[j,i]から基準車輪ワールド座標(X,Y)への変換が可能となる。
【0089】
【数9】

【0090】
また、数(9)をjとiについて解いた数(10)により、基準車輪ワールド座標(X,Y)から正対画像マトリクス[j,i]への変換が可能となる。
【0091】
【数10】

【0092】
数(10)において、jとiは一般に整数ではないが、それぞれ、左辺の値に最も近い整数を選択するものとする。数(9)により正対画像マトリクス[j,i]の点を基準車輪ワールド座標(X,Y)の点に変換する。続いて基準車輪ワールド座標(X,Y)の点を数(5)により画面上画像マトリクス[x,y]の点に変換する。数(5)で得られる値は一般に整数ではないが最も近い整数を選択し[x,y]とする。
【0093】
画面上画像マトリクス[x,y]は撮影された正対化前のディジタル画像であるから、対応する点の輝度を、正対画像マトリクス[j,i]の輝度として割り当てる。以上の処理を正対画像マトリクス[j,i]の全域に亘り行う。
【0094】
すなわち、j=0乃至M−1の範囲で、またi=0乃至N−1の範囲に亘って行う。なお、対応する点が画面上画像マトリクス[x,y]の領域である矩形25外の場合はゼロ又は255などの固定値を割り当てる。これにより正対画像マトリクス[j,i]は正対した車輪の部分画像となる。
【0095】
以上が図1の処理フローのステップS2で行われる。すなわち、ステップS2では、基準車輪70でカメラキャリブレーションを行ってカメラパラメータを算出し、カメラパラメータを用いて基準車輪70又は車輪20の画面上画像マトリクスを基準車輪ワールド座標に変換し、画面上画像マトリクスと、基準車輪ワールド座標と正対画像マトリクスの関係を用いて、カメラ23で撮影した画面上画像マトリクスから正対画像マトリクスを生成する。
【0096】
〔ステップ3:車軸位置の検出〕
次に、図14を参照して、ステップS3の車軸座標検出処理を説明する。
【0097】
図14は車輪20の車軸210の基準車輪ワールド座標(X,Y)及び正対画像マトリクス[x,y]を算出する方法を示す図である。基準車輪ワールド座標及び正対画像マトリクスで表現された車輪20は真円であるから、車輪の輪郭を円弧の一部と見なしてその中心すなわち車軸の位置を求めることができる。
【0098】
前述の通り、正対画像マトリクス[j.i]は図13矩形90の領域のディジタル画像である。このディジタル画像にソーベルフィルタ等の輪郭強調処理を加えて所定のしきい値で二値化した画像を矩形1000として示している。ここでは、輪郭エッジとして値の大きいほうを黒で表記している。水平線分1001は線路4の輪郭の一部として現れるものである。これはカメラ23を固定することで常に同じ場所に現れるので、あらかじめ処理対象から除外できる。
【0099】
一方、矩形1000の範囲1002に現れる輪郭は、車輪20の輪郭であって円弧の一部である。ここで、円の一部である輪郭上の任意の2点をそれぞれEとFとする。座標値は二値化された画像である矩形1000から知ることができる。
【0100】
ただし、これらは正対画像マトリクス[j.i]であるから、数(9)によって基準車輪ワールド座標に変換することができる。変換した基準車輪ワールド座標としてEとFの座標をそれぞれE(e,e)、F(f,f)とする。EとFの垂直二等分線Hは車軸210を通る。垂直二等分線Hは、この上の任意の点を(x,y)とすると数(11)で表される。
【0101】
【数11】

【0102】
ここで数(11)のパラメータをα、β、γで置き換えて、数(12)とする。但し、α、β、γはEとFの座標系により確定するパラメータである。
【0103】
【数12】

【0104】
ここで、範囲1002の、車輪20の輪郭上の、任意の二点をk組(kは自然数)とって、これらの垂直二等分線をk本引く。このために添え字kを付して数(12)を数(13)に書き換える。ただし、k=1,2,...,kである。
【0105】
【数13】

【0106】
本の垂直二等分線は全て車軸210で交わるので数(13)の連立方程式の解が、車軸210の基準車輪ワールド座標になる。この連立方程式を解くために数(13)を行列表現の数(14)とする。
【0107】
【数14】

【0108】
さらに、簡単化のために行列Uで表して数(15)とする。
【0109】
【数15】

【0110】
数(15)の両辺にUの転置行列を乗じて数(16)とする。
【0111】
【数16】

【0112】
Uは2×2の行列となり、通常は逆行列が存在して(x,y)について解くことができる。これが車軸210の基準車輪ワールド座標(X,Y)である。数(16)の解き方は逆行列を両辺に乗じてもよいし、ガウスの掃きだし法でといてもよい。
【0113】
前記垂直二等分線が3本以上になると、車輪20の輪郭の検出位置に誤差を生ずるため車軸210の一点で交わらない。しかし、上述の方法により二乗誤差が最小の最適解として車軸210の車基準輪ワールド座標が求まる。
【0114】
なお、基準車輪ワールド座標(X,Y)を数(10)で正対画像マトリクスに変換すると、負の値になり得るが、これは車軸210が矩形90及び矩形1000の範囲内にないことを示しているが問題ない。
【0115】
以上が処理フローのステップS3である。ここでは基準車輪ワールド座標を数(11)乃至数(16)に代入したが、代わりに正対画像マトリクスの座標を代入してもよい。この場合、座標は実数として計算を行い、数(16)の解は車軸210の正対画像マトリクスにおける座標[j,i]となる。これを数(9)で変換すると、基準車輪ワールド座標すなわち(X,Y)となる。
【0116】
〔ステップ4:シフト補正〕
次にステップS4において、基準車輪への補正と車輪の半径長についてシフト補正を実行する。
【0117】
ステップS3の処理で車軸を求めると、基準車輪70にあっては、車軸710の基準車輪ワールド座標が(XSTD,YSTD)で、正対画像マトリクスの座標が[jSTD,iSTD]と表記できる。
【0118】
一方、車輪20にあっては、車軸210の基準車輪ワールド座標が(X,Y)で、正対画像マトリクスの座標が[j,i]である。前述の磨耗のため、一般に、(XSTD,YSTD)と(X,Y)及び、[jSTD,iSTD]と[j,i]は一致しない。
【0119】
しかし、後述の基準車輪極座標変換テーブルは基準車輪70に適合して作成するため、車輪20について使用する場合には、車軸の位置を併進移動により一致させる必要がある。
【0120】
補正前と補正後の正対画像マトリクスの座標をそれぞれ[j,i]、[j,i’]としたときの関係は数(17)で表される。数(17)により[j,i]を[j,i’]に変換する処理がステップS4である。
【0121】
この処理の後、すべての車輪の、正対画像マトリクスの車軸の座標は[jSTD,iSTD]となる。また、これを数(9)で基準車輪ワールド座標に変換すると、(XSTD,YSTD)となる。
【0122】
【数17】

【0123】
また、ここで、車輪20の半径はYミリメートルであり、基準車輪70からの磨耗量はYSTD−Yミリメートルであることも計算される。また、先の説明で出てきたrSTDとの関係は、rSTD=YSTDである。
【0124】
数(17)の逆変換は数(18)である。ここで、基準化正対画像マトリクス全般に亘り、各画素に対応する正対画像マトリクス内の画素輝度を参照して割り当てれば、車輪20の基準化正対画像マトリクスが得られる。
【0125】
【数18】

【0126】
〔ステップ5:極座標画像作成〕
次にステップS5において、基準車輪極座標変換テーブルの作成を行う。図15を参照して、ステップ5の基準車輪極座標画像作成について説明する。図15(a)は正対画像マトリクスの矩形90を示している。図15(b)は正対画像マトリクスを変換した基準車輪極座標画像である。
【0127】
画像処理装置26はあらかじめ基準車輪極座標変換テーブルを持っており、まず基準車輪極座標変換テーブルを生成することについて説明する。図15(b)に示す基準車輪極座標(t,r)は実数値をとる座標系であって、図15(a)の基準車輪70の車軸710からの距離rを縦軸、基準車輪70と線路4の接点71(すなわち、基準車輪ワールド座標の原点)と車軸710を結ぶ線分(すなわち、基準車輪ワールド座標のY軸)からの偏角tを横軸とする。r軸の単位はミリメートルなどのMKSA単位系としt軸はラディアン又は度とする。
【0128】
本実施例のように4つのカメラをもって約90度ピッチで120度程度の視野をもつ場合には、横軸の範囲は−π/3ラディアンからπ/3ラディアン、すなわち、−60度から60度までとするのが適当である。また、縦軸の範囲は接点70を含むRoからRwまでとする(RoとRwは実数)。ここで、数(19)により基準車輪ワールド座標(X,Y)から基準車輪極座標(t,r)へ変換される。
【0129】
【数19】

【0130】
また、数(20)により基準車輪極座標(t,r)から基準車輪ワールド座標(X,Y)へ変換される。
【0131】
【数20】

【0132】
次に、基準車輪極座標画像のディジタル配列として、図16(b)に示すような極座標画像マトリクス[q,p]を定義する。極座標画像マトリクス[q,p]は基準車輪極座標系によるディジタル画像であって、行列表現が可能であり、行数と列数で画素を特定する。以後行数と列数を座標と呼ぶ。極座標画像マトリクス[q,p]は、同図(a)の取り込まれた画像の矩形90の左上の点を基点として横軸にq、縦軸にpをとって示す座標である。
【0133】
ここで、極座標画像マトリクス[q,p]の1画素の水平方向の大きさを表すdq=2π/(3T)、垂直方向の大きさを表すdp=(Rw−Ro)/Rなるdqとdpを定義する(T、Rは自然数)。単位は水平方向が“ラディアン/画素”で、垂直方向が“ミリメートル/画素”となる。
【0134】
図16(b)の極座標画像マトリクス[q,p]は矩形2000の左上端を基点[0,0]とし、横方向q−1番目で縦方向p−1番目の輝度値を有する。また、極座標画像マトリクス[q,p]はR行T列の行列となり、矩形2000の、四隅の極座標画像マトリクスの座標はそれぞれ、O[0,0]、P[T−1,0]、Q[0,R−1]、R[T−1,R−1]となる。数(21)により極座標画像マトリクス[q,p]から車輪基準車輪極座標(t,r)への変換が可能である。
【0135】
【数21】

【0136】
また、数(22)により車輪基準車輪極座標(t,r)から極座標画像マトリクス[q,p]への変換が可能である。
【0137】
【数22】

【0138】
また、図10の格座標間の関係を示す図式を参照して明らかなように、数(21)と数(20)の順序で変換を進めることで、極座標画像マトリクス[q,p]の矩形2000の画素が基準車輪ワールド座標(X,Y)に変換される。
【0139】
さらに数(10)により基準車輪ワールド座標(X,Y)から正対画像マトリクス[j,i]へ変換できることから、極座標画像マトリクス[q,p]の画素を正対画像マトリクス[j,i]へと対応付けることができる。正対画像マトリクス[j,i]はステップS2で生成された正対化されたディジタル画像であるから、対応する画素の輝度が極座画像マトリクスの各画素へ割り当てられる。
【0140】
以上の処理を図16(b)の矩形2000全域に亘って行うことで極座標画像マトリクスと正対画像マトリクスの各画素の対応関係が決まる。この対応関係をテーブル化することで、以後、数(21)と数(20)と数(10)による計算を省くことができる。尚、極座標画像マトリクスの座標[q,p]と画面上画像マトリクスの座標[x,y]は整数でなければならないので、数(19)の計算結果に最も近い整数を選択する。
【0141】
この結果、極座標画像マトリクス[q,p]に対応する正対画像マトリクス[j,i]更にはその元画像である、画面上画像マトリクス[x,y]が撮影範囲である矩形90及び矩形25の範囲外のときはゼロまたは255などの固定輝度値を割り当てる。
【0142】
ところで、上記で得られた基準車輪極座標変換テーブルは、基準車輪70の車軸710を基準として変換される基準車輪極座標変換テーブルである。車輪20にあっては補正が必要であり、このためにステップS4で作成した基準化正対画像マトリクスの輝度値を、正対画像マトリクスの代わりに参照する。
【0143】
以上の処理により分割撮影された車輪画像は基準車輪極座標画像をディジタル画像化した極座標画像マトリクスに変換される。例えば、図16(a)の車軸210を中心とする同心円上に存在する特徴点121や122は、それぞれ図16(b)のように水平方向の特徴点121と122に変換される。ボルト33、34、35もそれぞれ変換される。なお、特徴点121、122は例えば車輪20についた傷である。また、車輪20の輪郭は水平線分123に変換される。以上が処理フローにおけるステップS5の処理である。
【0144】
〔ステップ6:ボルト検出〕
次にステップS6、S7においてボルト検出及び特徴点検出を行うことについて説明する。まず、図17を参照して、ステップ6のボルト検出処理を説明する。
【0145】
極座標画像マトリクスはディジタル画像であるから正規化相関によるパタンマッチングによる検出が可能である。ボルト形状は既知であり、ボルトの基準車輪極座標変換後の形状も既知であって、これを図17(a)に示すようにテンプレート登録しておくことができる。
【0146】
図17(b)は極座標画像マトリクスの例であって、基準車輪極座標変換されたボルト33、34、35が示されている。撮影のタイミングにより車輪の位相すなわち回転角はまちまちであるが、ボルト33、34、35は車軸から等距離の位置を移動するので基準車輪極座標変換後は水平線上を移動する。
【0147】
したがって、図17(a)のテンプレートを水平線上近傍で探査すれば、ボルト33、34、35を検出することができる。ただし、ボルト間に形状の差異が無いので車輪上のボルトを特定することはできない。車輪上に例えばボルトがk(kは自然数)個あるときには、k通りの曖昧さを残して特定される。ここで、ある特定のボルトのみが他と異なる形状をしており、これをテンプレートとして検出した場合には、ボルトを特定することができるので、車輪の回転角も一意に特定される。以上がステップS6のボルト検出処理である。
【0148】
〔ステップ7:特徴点検出〕
次に図17を参照して、ステップS7の特徴点検出処理について説明する。
【0149】
図17(b)は特徴点131を有する車輪20の基準車輪極座標マトリクスの例である。ステップS6で検出したボルト領域以外の領域について、当該極座標画像マトリクスに対してソーベルフィルタ処理後に所定のしきい値で二値化して特徴点の有無と、特徴点がある場合はその端点の位置を検出することができる。
【0150】
同時に特徴点131に最近傍のボルト、図17(b)の例ではボルト35の位置(q,p)からの水平方向の変位を計算し、前記ボルト位置と当該ボルトからの変位を特徴点131の位置情報とする。このように最近傍のボルトとの位置関係で車輪上の特徴点131の位置を特定する。さらに、特徴点131は、図17(c)のように特徴点の始点と終点位置を把握することができる。
【0151】
図18は、ボルトの数が8の場合の、特徴点の位置特定とあいまいさを示す図である。8つのボルトの形状が同じでボルト35が図18のボルトのいずれであるかを特定できない場合は、特徴点131は位置132乃至139の8通りの曖昧さをもって記録される。
【0152】
しかし、前述したように8つのボルトのいずれか一つが特殊な形状であって、特殊なボルトの位置が特定できれば、その他のボルト位置の順番から特徴点の位置を一意に決定できる。また、車輪の所定に領域に所定のマークを刻印し、マークを検出してこれを基準とすることで位置特定の差異の曖昧さをなくすこともできる。以上がステップS7の特徴点検出処理である。
【0153】
〔ステップ8:出力〕
ステップS8において、図2の画像処理装置26はステップS7までに得られた種種の画像及びデータをデータベース8に出力する。
【0154】
データベース8に出力する画像及びデータは、車輪画像、車輪ID、通過時刻、ステップS2で生成した正対化画像、ステップS3で求めた車軸位置及び、この車軸位置と基準車輪ワールド座標の原点との差異から計算できる車輪半径の長さ、ステップS5で生成した極座標画像マトリクス、ステップS6で求めたボルト位置、ステップS7で求めた特徴点の位置と長さである。以上が図1に示した画像処理装置26における一連の処理フローである。
【0155】
またデータベース8は、画像取得装置16乃至19からに画像及び計測したデータを車輪ID毎にまとめ、通過時刻をインデクスとして保持する。通過時刻が列車運行表を介して編成番号と紐付けされていれば、編成番号と、車輪IDと前記検査ユニット番号からなるインデクスで一意に特定が可能となる。
【0156】
次に図17(b)(c)を参照して、極座標画像マトリクスで行う特徴点のパタンマッチング処理を説明する。図17(c)はデータベース8に保存されている極座標画像マトリクスから切り出した特徴点の輝度パタンであって、テンプレートパタン130である。これは過去に、ステップS7で検出された特徴点の画像がステップS8で出力されて、データベース8に前記インデクス管理されて保存されていたものである。後日、同一の車輪が検査に係ったときに、データベース8から読み出してテンプレートパタン130とする。もっともこのテンプレートとしての特徴点画像の切り出しと管理は、ユーザインタフェース12の表示装置とポインティングデバイスを用いてオペレータが手作業で行うことも可能である。
【0157】
テンプレートパタン130は特徴点の外接矩形であって、水平方向をt軸、垂直方向をr軸とし、外接矩形の左上隅を基点(0,0)としてTmp[q,p]で表される。このとき、テンプレートの高さ、すなわち垂直方向の画素数をh、テンプレートの幅すなわち水平方向の画素数をwとする。一方、図13(b)の極座標画像マトリクスの輝度パタンをTrg[q,p]で表すとする。このとき、両者の正規化相関によるパタンマチングによる類似度Sim[q,p]は数(23)で表される。
【0158】
【数23】

【0159】
過去に取得した極座標画像マトリクスから生成したテンプレートパタン130と、後日新たに取得した極座標画像マトリクス上の特徴点131の形状が極端に変化していなければ両者はq軸とp軸に併進移動による探査をするのみで該当する位置を検出できる。また、撮影開始時の、当該車輪の回転角の差異によりqは変化するものの、車軸からの距離は前述ステップ4の補正処理により不変であるからパタンマッチング処理の際にもテンプレートパタン130を取得した際の極座標画像マトリクスの座標[q130,p130]も一緒に保存しておき、p130を固定して、類似度Sim[q,p130]をq軸方向のみに探査すればよい。
【0160】
これによって、過去に取得した極座標画像マトリクス上の特徴点と、新たに取得した極座標画像マトリクス上の特徴点とが、車輪20上の同一箇所の特徴点であるかを特定し、特徴点の長さ、形状の経年変化を観察する。特徴点の形状の同否は前記特徴点をいくつかの線分に分割した各部分の、線分方向の同否で表現される。これらのパタンマッチング処理は画像処理装置26にて行ってもよいが、オフライン処理としてユーザインタフェース12に内蔵の情報処理装置に行わせてもよい。
【0161】
図3のパノラマ形成装置10は画像取得装置16乃至19から出力される極座標画像マトリクス151乃至154から車輪全周分のパノラマ極座標画像マトリクスを形成する。図19は基準車輪70のパノラマ極座標画像マトリクスの形成を示す図である。同図(a)の画像取得装置16乃至19に1つずつ内蔵するカメラ25は基準車輪70が90度回転するたびに撮影するように設置されているため、極座標画像マトリクス151乃至154の各々±45度の範囲を水平方向に接合すると、図19(b)に示すパノラマ形成した極座標画像マトリクスが得られる。
【0162】
図20は車輪20に係る極座標画像マトリクスのパノラマ形成を示す図である。車輪20は前記4つのカメラ25の撮影タイミングをL度ピッチで回転するので、画像取得装置16乃至19で得られた極座標画像マトリクス161乃至164の中央から±L/2度分をL度ピッチで接合する。ここでLは数(24)で得られる。
【0163】
【数24】

【0164】
数(24)において、YSTDは基準車輪の半径で既知の値である。Yは車輪20の半径であって、ステップS4の処理で算出される。尚、画像取得装置16乃至19の各々でステップS4の処理を行うことにより車輪20の半径は独立に4回計測されることになるが、これらの値の平均値又は中央値を数(24)のYに用いることができる。また、カメラ間の回転角度は車輪20の半径を用いることなく、ボルトなどの周期的な構造物の移動を前述のパタンマッチングにより計測することもできる。
【0165】
本実施例のように4つのカメラで撮影する場合、ボルトの配置が4の倍数すなわち、4、8、12、16、個が等間隔である場合には、90度ピッチで回転する場合には各撮影画像で同位置にボルトが存在するため、パタンマッチングによりボルトの位置がずれて検出されることで90度からのずれ角度を算出することができる。
【0166】
ここで、より一般化したパノラマ形成方法について説明する。検査対称たる車輪でもっとも周囲長の長い車輪(先の実施例では基準車輪)の周囲長をLmax、最も周囲長の短い車輪の周囲長をLminとし、撮影に用いるカメラの数をNcam(左記に実施例では4)とする。この場合、Ncam個のカメラはLmax/Ncamの等間隔で線路脇に配置し、各カメラは車輪と線路の接点を中央にして±(180/Ncam)×(Lmax/Lmin)度の範囲すなわち、(360/Ncam)×(Lmax/Lmin)度の範囲を撮影できるように設置する必要がある。
【0167】
このように設定すると、最大半径の車輪も最小半径の車輪もNcamのカメラで漏れなく撮影が可能で、重複も最も少ない。また、これら統合してパノラマ化するには(360/Ncam)×(Lmax/L)ピッチで、各極座標画像マトリクスとも±(180/Ncam)×(Lmax/L)の範囲を接合する。ここでLは車輪20の周囲長である。
【0168】
パノラマ形成装置10は極座標画像マトリクスをパノラマ形成した画像をデータベース8に前記インデクス管理の下保存する。
【0169】
図21を参照してユーザインタフェース装置12の表示機能に車輪に係るパノラマ画像を表示する処理について説明する。図21(a)はパノラマ形成装置10で生成し、データベース8に保存されているパノラマ形成した車輪全周の極座標画像マトリクスを、ユーザインタフェース装置12の表示機能に係る仮想メモリ上に展開したものである。
【0170】
この仮想メモリに展開した画像の全部又は一部をユーザインタフェース12の表示機能に係る表示メモリに書き込むことで前記表示機能に前記パノラマ形成した車輪全周の極座標画像マトリクスの全部又は一部が表示される。前記表示機能に表示できる画素数は限られているため、前記極座標画像マトリクス全体を表示する場合には表示画素を間引くなどして表示解像度を落とす必要がある。
【0171】
一部表示する場合には、ユーザインタフェース装置12のマウスやキーボードなどのポインティングデバイスを用いて、図21(a)に示す表示パラメータtDISP1を制御して所望の一部を表示することができる。ここで、表示パラメータtDISP1とは前記パノラマ形成された極座標画像マトリクスの左端基点からのオフセット画素数を示し、このオフセット画素数で指定される矩形1700の範囲に属する画素を前記表示機能に係る表示メモリに書き込むこのようにして極座標画像マトリクスの一部を表示した例が図21(b)である。その他のパラメータを操作して矩形1700の縦横画素数を変化させれば図21(b)においては異なる解像度で異なる範囲の極座標画像マトリクスを表示することができる。
【0172】
先に図10に示したように数(9)、(19)、(22)の順に変換をたどると、任意の基準化正対画像マトリクスの画素[j,i’]に対応する極座標画像マトリクス[q,p]を求めることができる。前記パノラマ形成された極座標画像マトリクスについては画像取得装置16、17、18、19についてそれぞれ、[q+3×qoffset,p]、[q+2×qoffset,p]、[q+qoffset,p]、[q,p]と、所定のオフセットqoffsetを加えて求めることができる。
【0173】
ここで、qoffsetは、(基準車輪70に係る極座標画像マトリクス90度分の画素数)×(基準車輪70の半径の長さ)/(撮影に係る車輪の半径の長さ)で算出される。
【0174】
基準化正対画像マトリクスの画素[j,i’]と前記パノラマ形成された極座標画像マトリクスの画素[q,p]の関係をテーブル化しておき、たとえば、図21(a)の表示パラメータtDISP2として基準を定めてパノラマ形成した極座標画像マトリクスの所定の画素をアクセスして、前記変換テーブルに基づいて前記表示メモリに書き込むことで、図21(c)に示すように車輪の任意の部分又は全体をユーザインタフェース12の表示機能に表示することができる。
【0175】
車軸付近は広い角度に亘り表示されるため、おおよそ1701の破線矩形で示す領域が基準正対画像マトリクスとして変換されて図21(c)として表示される。このように、図21(c)のように、任意の車輪位置の状態を、車輪イメージで表示することができる。
【0176】
図21(a)のパノラマ形成した車輪全周の極座標画像マトリクスの水平方向は360度分の角度を表し、その右端の更に右は左端につながるべきものである。したがって、表示パラメータtDISP1および表示パラメータtDISP2が増加して、図22(a)に示すように矩形1700及び破線矩形1701が右端からはみ出る場合には左端の該当部分をアクセスして表示又は逆変換後に表示することで図22(b)及び(c)に示すように車輪の任意の部分を表示することができる。
【0177】
ステップ3において検出した車軸位置に基づいて、ステップ4にて基準化正対画像マトリクスへの変換を行っている。図23を参照して、この基準化正対画像マトリクスへの変換の重要性を説明する。
【0178】
図23左は基準車輪70を、ステップ5で作成した基準車輪極座標変換テーブル2020を用いて極座標画像マトリクスに変換した例を示す。矩形90は正対画像マトリクスの範囲を表す。
【0179】
図23中央は、磨耗した車輪20について、ステップ4の処理を経ずに、基準車輪極座標変換テーブル2020を用いて極座標画像マトリクスに変換した例を示す。基準車輪極座標変換テーブル2020で想定する車軸の位置710bと車軸210に差異があるために、歪んだ極座標画像マトリクスとなる。
【0180】
図23右は、磨耗した車輪20について、ステップ4の処理で基準化正対画像マトリクスに変換後に、基準車輪極座標変換テーブル2020を用いて極座標画像マトリクスに変換した例を示す。車軸210と想定された車軸の位置710bが一致しているため、歪みのない極座標画像マトリクスが得られる。
【0181】
ただし、ドットパタンで示した領域2021と2022は、カメラ23の視野からはずれていて、原画像たる画面上画像マトリクスに含まれていなかった領域である。車軸の磨耗により生じる垂直方向のずれで生じる領域2021は、レール4に関する領域であって、本発明の車両検査装置では問題はない。
【0182】
しかし、車輪検知タイミングの遅延による水平方向のずれで生じる領域2022は車輪側面の領域が含まれる可能性があるので問題となる。このことから、車輪検知タイミングの遅延は少なく抑えるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0183】
本発明は列車の車輪側面画像を撮影し、その傷の経年変化を追跡すると共に、データベースに格納の過去データの閲覧が可能であり、車両検査装置として有用である。
【符号の説明】
【0184】
1 ・・・ 車両検査装置
2 ・・・ 検査ユニット
3、4 ・・・ 線路
6 ・・・ 車両
20 ・・・ 車輪
210 ・・・ 車輪20の車軸
16、17、18、19 ・・・ 撮影処理手段
8 ・・・データベース
10 ・・・パノラマ形成手段
12 ・・・ユーザインタフェース装置
20 ・・・ 車輪
21 ・・・ 車輪検知センサ
22 ・・・ 照明装置
23 ・・・ カメラ
24 ・・・ 車輪計数装置
25 ・・・ 画面上画像マトリクスの範囲である矩形
26 ・・・ 画像処理装置
27 ・・・ 画像保存装置
28 ・・・ 90度の視野範囲
29 ・・・ 120度の視野範囲
30〜37 ・・・ 車輪20のボルト
40 ・・・ 車輪側面の通る平面
50、51 ・・・ 車輪検知センサ21に係る光電ビーム
70 ・・・ 基準車輪
710 ・・・ 基準車輪70の車軸
91a、92a、93a、94a ・・・ キャリブレーションマークの画面上画像マトリクス上での点
91b、92b、93b、94b ・・・ キャリブレーションマークの基準車輪ワールド座標上での点
71 ・・・ 基準車輪70と線路4の接点
90 ・・・ 正対画像マトリクスの範囲を示す矩形
710b ・・・ 基準車輪極座標変換テーブル2020で想定する車軸の位置
2020 ・・・ ステップ5で作成した基準車輪極座標変換テーブル2020
2021 ・・・ 車輪の磨耗により生じる画像情報の欠落
2022 ・・・ 車輪検知タイミングの遅延により生じる画像情報の欠落
1000 ・・・ 二値化した画像
1001 ・・・ 線路4の輪郭の一部
1002 ・・・ 車輪輪郭の存在する範囲
121、122 ・・・ 同心円上に存在する特徴点
130 ・・・ 特徴点のテンプレートパタン
2000 ・・・ 極座標画像マトリクスの範囲を示す矩形
132〜139 ・・・ 車輪20上の特徴点
151〜154 ・・・ 基準車輪70の極座標画像マトリクス
161〜164 ・・・ 車輪20の極座標画像マトリクス
1700 ・・・ ユーザインタフェース装置12の表示機能で表示する範囲
1701 ・・・ ユーザインタフェース装置12の表示機能で表示する範囲

【特許請求の範囲】
【請求項1】
線路に沿って設置され、該線路を通過する車両の車輪側面の車輪画像を取得する画像取得装置と、該画像取得装置が取得した画像を保存する画像保存装置と、画像処理を行う画像処理装置とを備え、
前記画像保存装置は、磨耗のない基準車輪の正対化画像を予め保持しており、
前記画像処理装置は、前記画像取得装置で取得した車輪画像に射影変換を施して前記車輪に正対する正対化画像を生成し、
該正対化画像について前記車輪の車軸位置を推定し、
該推定した車軸位置を、前記画像保存手段に保持している磨耗のない基準車輪の正対化画像の車軸位置に合致させた画像に修正して前記画像保存装置に保存することを特徴とする車両検査装置。
【請求項2】
請求項1記載の車両検査装置において、
前記画像処理装置は、車軸位置を合致させたあとの前記車輪画像について、車軸位置を原点とする極座標変換を行って極座標画像を生成して、該極座標画像を前記画像保存装置に保存することを特徴とする車両検査装置。
【請求項3】
請求項2記載の車両検査装置において、
前記画像保存装置は、車輪ボルトの極座標画像上でのテンプレート画像を予め保持しており、
前記画像処理装置は、車軸位置を原点とする極座標変換を行った前記の極座標画像に対してテンプレートマッチングによりボルト位置を確定することを特徴とする車両検査装置。
【請求項4】
請求項2記載の車両検査装置において、
前記画像処理装置は、前記極座標画像に対して欠陥の有無を検出する処理を行い、前記画像保存装置に保存することを特徴とする車両検査装置。
【請求項5】
請求項3記載の車両検査装置において、
前記画像処理装置は、前記極座標画像に対して欠陥の有無を検出する処理を行い、その欠陥位置をテンプレートマッチングにより確定したボルト位置との関係で前記画像保存装置に保存することを特徴とする車両検査装置。
【請求項6】
線路に沿って複数台設置され、該線路を通過する車両の車輪側面の全周に亘る複数枚の車輪画像を取得する画像取得装置と、該画像取得装置が取得した画像を保存する画像保存装置と、画像処理を行う画像処理装置とを備え、
前記画像保存手段は、磨耗のない基準車輪の正対化画像を予め保持しており、
前記画像処理装置は、前記の車輪側面の全周に亘る複数枚の車輪画像のそれぞれに射影変換を施して前記車輪に正対する複数の正対化画像を生成し、
該複数の正対化画像について前記車輪の車軸位置をそれぞれ推定し、
該推定した車軸位置を、前記画像保存手段に保持している磨耗のない基準車輪の正対化画像の車軸位置に合致させた画像に修正して前記画像保存装置に保存することを特徴とする車両検査装置。
【請求項7】
請求項6記載の車両検査装置において、
前記画像処理装置は、車軸位置を合致させたあとの前記複数の車輪画像について、車軸位置を原点とする極座標変換を行って複数の極座標画像を生成し、
該複数の極座標画像を連結して車輪画像の全周に亘る極座標画像を作成して前記画像保存装置に保存することを特徴とする車両検査装置。
【請求項8】
表示手段を備える請求項7記載の車両検査装置において、
前記連結した車輪画像の全周に亘る極座標画像の一部矩形領域を表示手段に表示することを特徴とする車両検査装置。
【請求項9】
表示手段を備える請求項7記載の車両検査装置において、
前記連結した車輪画像の全周に亘る極座標画像の一部の台形領域を抽出し、車輪形状にて表示手段に表示することを特徴とする車両検査装置。
【請求項10】
請求項7記載の車両検査装置において、
前記画像保存手段は、車輪ボルトの極座標画像上でのテンプレート画像を予め保持しており、
前記画像処理装置は、車軸位置を原点とする極座標変換を行った前記の極座標画像に対してテンプレートマッチングによりボルト位置を確定し、
ボルト位置の間隔から、複数の極座標画像を連結して車輪画像の全周に亘る極座標画像を得ることを特徴とする車両検査装置。
【請求項11】
請求項7に記載の車両検査装置において、
前記画像処理装置は、車輪の半径又は直径を求め、この値により前記画像取得装置の、2台以上のカメラの間に回転する回転角をもとめ、前記回転角度に基づいて、2以上の画像取得装置が生成した極座標変換画像を接合して車輪全周分の極座標変換画像を生成することを特徴とする車両検査装置。
【請求項12】
請求項7に記載の車両検査装置において、
前記画像処理装置は、車輪構造物の移動量をパタンマッチング処理で計測することにより、前記画像取得装置の、2台以上のカメラの間に回転する回転角をもとめ、前記回転角度に基づいて、2以上の画像取得装置が生成した極座標変換画像を接合して車輪全周分の極座標変換画像を生成することを特徴とする車両検査装置。
【請求項13】
請求項6に記載の画像検査装置において、
該車輪の半径の長さと、基準車輪の半径の長さとの差をもって、車輪の磨耗量と判定することを特徴とする車両検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9(a)】
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【図9(b)】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15(a)】
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【図15(b)】
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【図16(a)】
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【図16(b)】
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【図17(a)】
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【図17(b)】
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【図17(c)】
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【図18】
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【図19(a)】
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【図19(b)】
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【図20】
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【図21(a)】
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【図21(b)】
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【図21(c)】
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【図22(a)】
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【図22(b)】
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【図22(c)】
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【図23】
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【公開番号】特開2011−53059(P2011−53059A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−201649(P2009−201649)
【出願日】平成21年9月1日(2009.9.1)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(390021577)東海旅客鉄道株式会社 (413)
【Fターム(参考)】