説明

車両検知装置

【課題】 自車の周囲を走行する車両の位置をユーザーに通知することが可能な車両検知装置を提供すること。
【解決手段】周辺検知装置5は、レーダ装置2から取得した前方車両情報と、車々間通信装置31から取得した前方車両情報との示す位置を、自車を基準としたマッピング領域にマッピングする。マッピングされた各車両位置のうち、所定距離よりも近接し、その進行方向の一致度合いが大きい複数の車両位置に関しては、当該車両位置を示す情報の信頼度を算出し、これに応じて車両位置を特定する。ナビゲーションECU44は、前述の特定結果から作成された車両位置情報に基づいて、自車の周囲を走行している車両をディスプレイ43に表示させ、ユーザーに通知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自車の周囲に存在する他車両の位置を報知する車両検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自車の前方を走行する車両を検知して通知するレーダ装置が公知である。前述のレーダ装置は、例えば自車の前方に所定周波数のミリ波を送信するとともに、当該ミリ波が自車の前方を走行する車両に当たって反射した反射波を受信する。そして、送信したミリ波と、受信した反射波との位相差や減衰レベルに基づき、自車の前方を走行する車両を検知してユーザーに通知するものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来装置は、自車の前方を走行する車両を検知するのみであり、自車と並んで走行している車両や、自車の後方を走行する車両を検知することは難しい。そのため、ユーザーは自車の前方を走行している車両の位置しか知ることができず、使い勝手が悪かった。
【0004】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、自車の周囲を走行している車両の位置をユーザーに通知することが可能な車両検知装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の車両検知装置は、自車の周囲を走行する車両の位置を検出するレーダ手段と、他車両に搭載され、当該他車両の絶対位置を検出する位置検出手段の検出結果を、当該他車両と通信を行うことによって当該他車両の位置情報として取得するとともに、当該他車両に搭載されたレーダ手段の検出結果も当該他車両と通信を行うことによって取得する通信手段と、自車に搭載されたレーダ手段の検出結果と、通信手段によって取得した他車両の位置情報および他車両におけるレーダ手段の検出結果とに基づいて、自車の周囲に存在する他車両の位置を特定する特定手段とを備えた車両検知装置であって、通信手段が取得した、他車両におけるレーダ手段および位置検出手段の検出結果から特定される車両位置が、自車に搭載されたレーダ手段の検出結果から特定される車両位置と重複するか否かを判定する判定手段と、判定手段によって、車両位置が重複すると判定された場合は、その重複する車両位置のいずれか1つを選択する選択手段と、自車におけるレーダ手段が検出した検出結果の信頼度を算出する信頼度算出手段とを備え、選択手段は、判定手段によって車両位置が重複すると判定された場合であって、信頼度算出手段によって算出された信頼度が所定の信頼度よりも大きい場合、自車におけるレーダ手段が検出した検出結果から特定される車両位置を選択し、特定手段は、重複する車両位置に関して、選択手段によって選択された車両位置を利用して位置特定を行うことを特徴とする。
【0006】
請求項2に記載のように、自車には、当該自車が走行する道路を特定する道路特定手段が設けられ、通信手段は、他車両が走行している道路に関する情報も取得し、特定手段は、通信手段が取得した、他車両が走行する道路が、自車が走行している道路と不一致である場合には、当該検出結果を他車両の位置を特定するデータから除外することが望ましい。自車と異なる道路を走行している車両からの検出結果は、車両位置の特定に不要となるためである。
【0007】
請求項3に記載のように、自車には、当該自車の進行方向を検出する進行方向検出手段が設けられ、通信手段は、他車両の進行方向に関する情報も取得し、特定手段は、通信手段が取得した、他車両の進行方向と、自車の進行方向との一致度合いが、所定の一致度合いよりも小さい場合には、当該検出結果を他車両の位置を特定するデータから除外することが望ましい。他車両の進行方向と自車の進行方向との一致度合いが、所定の一致度合いよりも小さい場合、当該他車両は対向車線等を走行していることとなり、このような車両からの検出結果は不要となるためである。
【0008】
請求項4に記載のように、信頼度算出手段は、自車におけるレーダ手段が他車両を検出した際の検出時刻および検出レベル、検出結果である相対距離のうち、少なくとも1つに基づいて信頼度を算出することが望ましい。検出時刻、相対距離、検出レベルの3つは、自車におけるレーダ手段の検出結果の信頼度への寄与が大きいためである。
【0009】
請求項5に記載のように、自車が備えるレーダ手段および位置検出手段の検出結果を、他車両へ送信する送信手段を設けることが望ましい。これにより、自車の周囲に存在する他車両も、自車から送信された検出結果から、自車の位置や進行方向を把握することができる。
【0010】
請求項6に記載のように、車両検知装置は、車両を自動運行させる装置と併用されることが望ましい。近年、クルーズコントロール装置に代表される車両自動運行装置は、その利便性から広く普及しつつある。しかしながら、前述の装置は、自車の前方を走行している車両を検知する機能を有するものの、自車の左右や後方を走行している車両を検知する機能は持たないことが多い。本車両検知装置を、車両を自動運行させる装置と併用することで、ユーザーは自車を自動運行しつつ、自車の周囲に存在する他車両の位置を知ることができ、さらに使い勝手がよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1は、本発明の一実施形態における車両検知装置1の全体構成を示すブロック図である。
【0012】
図1に示すように、レーダ装置2は、例えばミリ波送受信機から構成され、自車の前方に所定周波数のミリ波を送信するとともに、当該ミリ波が自車の前方を走行する各車両(他車両)に当たって反射した反射波を受信する。そして、送信したミリ波と、受信した反射波との位相差や減衰レベルに基づき、自車の前方を走行している各車両までの相対距離や、自車から見た各車両の相対方位、各車両の相対速度を測定する。その際には、反射波の受信レベルと、反射波の検出時刻も測定し、前述の相対距離や相対方位、相対速度と合わせて、各車両毎に前方車両情報を作成する。自車の前方を走行している各車両の相対距離や相対方位、相対速度の測定に関しては、超音波送受信機やレーザー送受信機を用いることとしても良い。
【0013】
車々間通信装置31は、例えば無線通信機であり、車々間通信アンテナ32を用いて自車の周囲を走行している各車両と通信を行う。そして、各車両に搭載された測定機器によって測定された、当該車両が走行している地点の緯度や経度、進行方向、道路名称を取得し、これらを各車両毎にまとめて通信車両情報を作成する。また、車々間通信装置31は、通信車両情報の1つとして、上述のレーダ装置2が搭載されている車両に関しては、前方車両情報も取得する。
【0014】
地図データ入力器41は、例えばハードディスクから構成され、各道路の名称を含む道路情報、建造物情報、各地域の住所情報や郵便番号情報などを含む地図情報を地図データとして記憶する。また、地図データ入力器41は、地図画像を表示するための地図画像データを記憶する。これらのデータに関しては、CD−ROMやDVD−ROM等に記憶することとしても良い。
【0015】
GPSアンテナ42は、人工衛星である図示しないGPS衛星から送信される位置測定用のGPS信号を受信する。
【0016】
ディスプレイ43は、例えば小型の液晶ディスプレイであり、各種ナビゲーション表示を行う。各種ナビゲーション表示に関しては、車載用ヘッドアップディスプレイ等を用いることとしてもよい。
【0017】
ナビゲーションECU44は、GPSアンテナ42が受信したGPS信号から、自車が走行している地点の緯度・経度を算出するとともに、自車の走行速度および進行方向を算出して、各種ナビゲーション動作を実行する。具体的には、自車位置周辺の地図画像データを地図データ入力器41から読み出すとともに、自車位置および自車の進行方向を示すマークを重畳した地図画像を生成し、ディスプレイ43に出力する。
【0018】
特に本実施形態では、ナビゲーションECU44は、後述する周辺検知装置5から取得した車両位置情報に基づき、自車の周囲を走行している各車両を、その進行方向と共に表示する画像を生成する。生成された画像は、前述の地図画像と共にディスプレイ43に出力され、左右に並べて表示される(図2参照)。また、算出された自車位置、走行速度、進行方向や、地図データ入力器41から読み出した、自車が走行している道路の名称を周辺検知装置5へ出力することも行う。
【0019】
なお、自車位置の検出に関しては、走行距離を検出可能な車速センサおよび進行方位を検出可能なステアリングセンサ等、他のセンサからの検出信号に基づいて行うこととしてもよい。
【0020】
周辺検知装置5は、自車のレーダ装置2から前方車両情報を取得するとともに、車々間通信装置31から前方車両情報を含む通信車両情報を取得する。さらに、ナビゲーションECU44から自車位置および自車の進行方向、自車が走行している道路名称を取得し、これらのデータに基づいて、自車の周囲を走行している各車両の位置を特定する。
【0021】
具体的には、まず、自車のレーダ装置2から取得した前方車両情報、および、車々間通信装置31から取得した通信車両情報の示す車両位置を、自車を基準としたマッピング領域にマッピングする。その際、通信車両情報に含まれる緯度・経度は、予め算出されている単位緯度・単位経度あたりの距離に基づき、公知である一次変換公式等を用いて、自車を基準とした相対位置に変換される。
【0022】
但し、通信車両情報に関しては、マッピングを行う前に、当該情報に含まれる道路名称を調べ、自車が走行している道路の道路名称と一致しない場合は、当該情報の示す車両位置のマッピングを行わない。また、通信車両情報に含まれる進行方向と、自車の進行方向との一致度合いが、所定の一致度合いよりも小さい場合にも、当該情報の示す車両位置のマッピングは行わない。もちろん、これ以外にも、通信車両情報の示す車両位置と自車位置との距離を算出し、これが所定距離以上であるものに関しては、マッピングを行わないこととしても良い。
【0023】
次に、マッピングされた各車両位置のうち、所定距離よりも近接している複数の車両位置があるか否かを調べる。所定距離よりも近接している複数の車両位置がある場合には、各車両位置における車両の走行速度を算出し、これが所定速度差以内である場合には、前述の各車両位置が重複するものであると判定する。そして、前述の複数の車両位置の中から、いずれか1つの車両位置を選択するとともに、その他を削除する。これらの処理に関する詳細については後述する。
【0024】
こうして、マッピング領域にマッピングされた各車両位置を、自車の周囲を走行している各車両の車両位置として特定して車両位置情報を作成し、ナビゲーションECU44および速度制御装置6へと出力する。
【0025】
速度制御装置6は、周辺検知装置5からの車両位置情報、および、ユーザーによって設定された車間距離や走行速度に基づき、スロットルバルブ7や変速機8を操作して、図示しない自車のエンジン制御を行う。
【0026】
図3は、本実施形態の車両検知装置が、自車の周囲を走行している各車両をユーザーに報知する処理に関するフローチャートである。本フローチャートの処理は、一定時間毎に実行される。
【0027】
ステップ301では、周辺検知装置5は、自車のレーダ装置2から前方車両情報を取得する。ステップ302では、車々間通信装置31から通信車両情報を取得する。前方車両情報に加え、通信車両情報も利用することで、自車の周囲に存在する他車両の位置をより正確に特定することができるのである。ステップ303では、ナビゲーションECU44から自車位置、自車の進行方向、自車が走行している道路の名称を取得する。
【0028】
ステップ304では、ステップ302で取得した通信車両情報のうち、これに含まれる道路名称が、ステップ303で取得した自車が走行している道路の道路名称と一致し、かつ、当該通信車両情報に含まれる進行方向と、ステップ303で取得した自車の進行方向との一致度合いが、所定の一致度合いよりも大きいような通信車両情報を、マッピングする通信車両情報として選択する。他の道路を走行している車両や、対向車線を走行する車両から送信された通信車両情報は、車両位置の特定に不要となるためである。
【0029】
ステップ305では、ステップ301で取得した前方車両情報、および、ステップ304で選択された通信車両情報から、自車の周囲を走行している車両の位置を特定し、車両位置情報を作成する。
【0030】
ステップ306では、ステップ305で作成した車両位置情報をナビゲーションECU44および速度制御装置6へと送信する。これにより、ユーザーはディスプレイ43に表示された画像から、自車の周囲を走行している各車両の位置や進行方向を即座に把握することができる。また、ユーザーは速度制御装置6によって自車を自動運行しつつ、自車の周囲に存在する他車両の位置を知ることができるため、使い勝手がよい。
【0031】
ステップ307では、ステップ301で自車のレーダ装置2から取得した前方車両情報と、ステップ303でナビゲーションECU44から取得した自車位置、自車の進行方向、自車が走行している道路の名称とを、通信車両情報として、車々間通信装置31を介して他車両へと送信する。これにより、自車の周囲を走行している車両も、自車から送信された通信車両情報から、自車の位置や進行方向を把握することができるのである。
【0032】
図4は、本実施形態の車両検知装置が、自車の周囲を走行している各車両の位置を特定する処理の詳細を示すフローチャートである。本フローチャートの処理は、前述の図3のフローチャートにおける、ステップ305の処理に相当する。
【0033】
ステップ401では、周辺検知装置5は、自車のレーダ装置2から取得した前方車両情報、および、選択した通信車両情報の示す車両位置を、自車を基準としたマッピング領域にマッピングする。ステップ402では、ステップ401でマッピングした各車両位置における車両の走行速度を算出する。
【0034】
ステップ403では、ステップ401でマッピングされた各車両位置のうち、所定距離よりも近接しており、かつ、ステップ402で算出された各車両位置における車両の走行速度が、所定速度差以内であるような、複数の車両位置を検索する。ステップ404では、ステップ403で検索された複数の車両位置の中から、いずれか1つを選択するとともに、その他を削除する。前述の関係を満たすような複数の車両位置がある場合、これらは同一車両の位置を示している可能性が高いためである。
【0035】
ステップ405では、マッピング領域上にマッピングされている各車両位置を、自車の周囲を走行している各車両の車両位置として特定し、車両位置情報を作成する。
【0036】
図5は、本実施形態の車両検知装置が、前方車両情報および通信車両情報の示す車両位置をマッピングする処理の詳細を示すフローチャートである。本フローチャートの処理は、前述の図4のフローチャートにおける、ステップ401の処理に相当する。
【0037】
ステップ501では、周辺検出装置5は、自車のレーダ装置2から取得した前方車両情報、および、選択された通信車両情報のうち、車両位置のマッピングを未だ行っていない情報があるか否かを判定する。車両位置のマッピングを未だ行っていない情報がある場合には、ステップ502へ進む。そうでない場合には、処理を終了する。
【0038】
ステップ502では、車両位置のマッピングを未だ行っていない情報を1つ選択し、当該情報の示す緯度・経度や相対距離を、自車を基準とした車両位置に変換して、マッピング領域上にマッピングする。ステップ503では、ステップ502で変換した車両位置における車両の進行方向を、自車を基準とした進行方向に変換する。変換された進行方向は、他車両の位置とともにディスプレイ43に表示され、ユーザーに通知されることとなる。その後、ステップ501へ戻り、上述の処理を繰り返す。
【0039】
図6は、本実施形態の車両検知装置において、検索された複数の車両位置の中から、いずれか1つを選択し、車両位置の特定を行う処理に関するフローチャートである。本フローチャートの処理は、前述の図4のフローチャートにおける、ステップ404の処理に相当する。
【0040】
ステップ601では、周辺検出装置5は、検索された複数の車両位置のうち、自車のレーダ装置2から取得した前方車両情報の示す車両位置があるか否かを判定する。これがある場合は、ステップ602へ進む。ない場合には、ステップ604へ進む。
【0041】
ステップ602では、自車のレーダ装置2から取得した前方車両情報の信頼度を算出するとともに、これが所定値よりも大きいか否かを判定する。算出された信頼度が所定値よりも大きい場合は、ステップ603へ進み、自車のレーダ装置2から取得した前方車両情報の示す車両位置を選択し、その他を削除して処理を終了する。一方、算出された信頼度が所定値よりも小さい場合は、ステップ604へ進む。算出された信頼度に応じて車両位置の選択を行うことで、自車のレーダ装置2が検出した車両位置と重複する車両位置がある場合でも、車両位置を正確に特定することが可能となるのである。
【0042】
ステップ604では、複数の車両位置の各々を示す通信車両情報および前方車両情報の選択指数を、それぞれ算出する。ステップ605では、ステップ604で算出された各情報の選択指数のうち、これが最も高い情報の示す車両位置を選択するとともに、その他を削除して処理を終了する。これにより、自車のレーダ装置2から前方車両情報が取得できない場合や、取得した前方車両情報の信頼度が所定値より小さい場合でも、自車の周囲を走行している各車両の位置を正確に特定することができるのである。
【0043】
図7は、本実施形態の車両検知装置において、自車のレーダ装置2から取得した前方車両情報の信頼度を算出する処理の詳細を示すフローチャートである。本フローチャートの処理は、前述の図6のフローチャートにおける、ステップ602の処理と対応する。
【0044】
ステップ701では、周辺検出装置5は、図示しない内部カウンタをリセットする。ステップ702では、前方車両情報に含まれる反射波の検出時刻と、図示しない内部時計の時刻とから、所定時間が経過したか否かを判定する。所定時間が未だ経過していないと判定された場合は、ステップ703へ進み、内部カウンタの値を1だけ加算する。所定時間が既に経過していると判定された場合は、ステップ704へ進む。
【0045】
ステップ704では、前方車両情報に含まれる相対距離が所定距離よりも小さいか否かを判定する。前方車両情報に含まれる相対距離が所定距離よりも小さいと判定された場合は、ステップ705へ進み、内部カウンタの値を1だけ加算する。所定距離よりも大きいと判定された場合は、ステップ706へ進む。
【0046】
ステップ706では、前方車両情報に含まれる反射波の受信レベルが所定レベルよりも大きいか否かを判定する。前方車両情報に含まれる反射波の受信レベルが所定レベルよりも大きい場合は、ステップ707へ進み、内部カウンタの値を1だけ加算する。所定レベルよりも小さいと判定された場合は、ステップ708へ進む。
【0047】
ステップ708では、現在の内部カウンタの値を、レーダ装置2から取得した前方車両情報の信頼度として算出する。このように、レーダ装置2が反射波を検出した時刻や、当該反射波の検出レベル、測定された相対距離を利用することで、レーダ装置2から取得した前方車両情報の信頼度を確実に算出することができるのである。
【0048】
なお、前述の図6のフローチャートにおいて、ステップ604の選択指数を算出する際にも、本フローチャートの処理と同様の処理を行う。この場合、ステップ708で算出される信頼度が、各情報の選択指数となる。
【0049】
このように、本実施形態の車両検知装置では、自車のレーダ装置2が作成した前方車両情報、および、車々間通信装置31が取得した通信車両情報から、自車の周囲を走行している各車両の位置を特定し、これをディスプレイ41に表示させる。これにより、本車両検知装置は、自車の前方を走行する車両の位置に加え、自車の左右や後方を走行する車両の位置までも特定してユーザーに通知することができ、使い勝手が良い。
【0050】
次に、本実施形態の変形例について説明する。
【0051】
本変形例の車両検知装置では、自車の周囲を走行している各車両の位置特定に際し、自車のレーダ装置2から取得した前方車両情報と、車々間通信装置31から取得した通信車両情報とを同等に取り扱う点が、前述の実施形態と異なる。言い換えれば、自車のレーダ装置2から取得した前方車両情報を、その信頼度に応じて優先的に利用するのではなく、自車のレーダ装置2から取得した前方車両情報、および、車々間通信装置31から取得した通信車両情報の各々における信頼度を算出し、これが最も高い情報の示す車両位置を選択して、その他を削除するものである。
【0052】
図8は、本変形例の車両検知装置が、自車の周囲を走行している各車両の位置を特定する処理の詳細を示すフローチャートである。本フローチャートの処理は、前述の図3のフローチャートにおける、ステップ305の処理に相当する。
【0053】
ステップ801では、周辺検知装置5は、自車のレーダ装置2から取得した前方車両情報、および、車々間通信装置31から取得した通信車両情報の示す車両位置を、自車を基準としたマッピング領域にマッピングする。ステップ802では、ステップ801でマッピングした各車両位置における車両の走行速度を算出する。
【0054】
ステップ803では、ステップ801でマッピングされた各車両位置のうち、所定距離よりも近接しており、かつ、ステップ802で算出された各車両位置における車両の走行速度が、所定速度差以内であるような、複数の車両位置を検索する。ステップ804では、ステップ803で検索された各車両位置を示す情報の信頼度を算出するとともに、算出された信頼度が最も高い情報の示す車両位置を選択し、その他を削除する。
【0055】
ステップ805では、マッピング領域上にマッピングされている各車両位置を、自車の周囲を走行している各車両の車両位置として特定し、車両位置情報を作成する。
【0056】
なお、本変形例において、レーダ装置2から取得した前方車両情報および車々間通信装置31から取得した通信車両情報の信頼度は、前述の実施形態における図7のフローチャートの処理に従って算出されることとなる。
【0057】
本実施形態および本変形例の車両検知装置では、自車のレーダ装置2から取得した前方車両情報と、車々間通信装置31から取得した通信車両情報のうち、自車と同じ道路を同じ方面(上り・下り)に走行している車両から送信された通信車両情報とが示す車両位置を、マッピング領域にマッピングし、車両位置の特定を行った。しかしながら、通信車両情報に関しては、当該情報を送信する車両のステアリング操舵角、走行加速度、回転角速度等も受信するものとし、前述の条件に加えて、これらのパラメータが所定値よりも小さいものを、マッピング領域にマッピングすることとしても良い。これにより、走行状態が急激に変化(車線変更等)している車両から送信された通信車両情報を除外することができ、車両位置をより正確に特定することが可能となる。もちろん、方向指示器の設定を受信し、これが左折や右折に設定されていない通信車両情報をマッピングすることとしても良いし、これらを組み合わせて利用しても良い。
【0058】
また、本実施形態および本変形例の車両検知装置は、算出された信頼度や選択指数に基づいて、重複する複数の車両位置の中からいずれか1つを選択して、車両位置の特定を行った。しかしながら、各車両位置の検出時刻が最新のものを選択したり、当該車両までの相対距離が最も短いものを選択することとしても良い。さらに、自車や他車両に搭載されたレーダ装置2の検出範囲中心により近い車両位置を選択することとしても良い。
【0059】
さらに、本実施形態および本変形例の車両検知装置は、特定された車両位置を示す情報に含まれる進行方向を、当該車両の進行方向とした。しかしながら、同一車両を示す複数の車両位置がある場合、当該車両までの相対距離が最も短い情報に含まれる進行方向を、当該車両の進行方向としても良い。これにより、各車両の進行方向までも、より正確に特定することができる。
【0060】
最後に、本実施形態および本変形例の車両検知装置は、車々間通信によって、自車の周囲を走行している車両から通信車両情報を取得した。しかしながら、通信車両情報に関してはインターネット等を利用して取得することとしても良い。この場合、自車の周囲を走行する車両から送信される通信車両情報は、管理センター等の基地局へ送信されることとなり、自車は前述の基地局を介して、通信車両情報を取得することとなる。もちろん、人工衛星等の移動体を基地局としても良い。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の一実施形態における車両検知装置の全体構成を示すブロック図である。
【図2】本実施形態の車両検知装置において、自車の周囲を走行している車両をディスプレイに表示した一例を示す図である。
【図3】本実施形態の車両検知装置が、自車の周囲を走行している各車両をユーザーに報知する処理に関するフローチャートである。
【図4】本実施形態の車両検知装置が、自車の周囲を走行している各車両の位置を特定する処理の詳細を示すフローチャートである。
【図5】本実施形態の車両検知装置が、前方車両情報および通信車両情報の示す車両位置をマッピングする処理の詳細を示すフローチャートである。
【図6】本実施形態の車両検知装置において、検索された複数の車両位置の中から、いずれか1つを選択し、車両位置の特定を行う処理に関するフローチャートである。
【図7】本実施形態の車両検知装置において、自車のレーダ装置から取得した前方車両情報の信頼度を算出する処理の詳細を示すフローチャートである。
【図8】本変形例の車両検知装置が、自車の周囲を走行している各車両の位置を特定する処理の詳細を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0062】
1…車両検知装置
2…レーダ装置
31…車々間通信装置
32…車々間通信アンテナ
41…地図データ入力器
42…GPSアンテナ
43…ディスプレイ
44…ナビゲーションECU
5…周辺検知装置
6…速度制御装置
7…スロットルバルブ
8…変速機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車の周囲を走行する車両の位置を検出するレーダ手段と、
他車両に搭載され、当該他車両の絶対位置を検出する位置検出手段の検出結果を、当該他車両と通信を行うことによって当該他車両の位置情報として取得するとともに、当該他車両に搭載されたレーダ手段の検出結果も当該他車両と通信を行うことによって取得する通信手段と、
前記自車に搭載されたレーダ手段の検出結果と、前記通信手段によって取得した前記他車両の位置情報および前記他車両におけるレーダ手段の検出結果とに基づいて、前記自車の周囲に存在する他車両の位置を特定する特定手段とを備えた車両検知装置であって、
前記通信手段が取得した、前記他車両におけるレーダ手段および位置検出手段の検出結果から特定される車両位置が、前記自車に搭載されたレーダ手段の検出結果から特定される車両位置と重複するか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段によって、車両位置が重複すると判定された場合は、その重複する車両位置のいずれか1つを選択する選択手段と、
前記自車におけるレーダ手段が検出した検出結果の信頼度を算出する信頼度算出手段とを備え、
前記選択手段は、前記判定手段によって車両位置が重複すると判定された場合であって、前記信頼度算出手段によって算出された信頼度が所定の信頼度よりも大きい場合、前記自車におけるレーダ手段が検出した検出結果から特定される車両位置を選択し、
前記特定手段は、前記重複する車両位置に関して、前記選択手段によって選択された車両位置を利用して位置特定を行うことを特徴とする車両検知装置。
【請求項2】
前記自車には、当該自車が走行する道路を特定する道路特定手段が設けられ、
前記通信手段は、前記他車両が走行している道路に関する情報も取得し、
前記特定手段は、前記通信手段が取得した、前記他車両が走行する道路が、前記自車が走行している道路と不一致である場合には、当該検出結果を他車両の位置を特定するデータから除外することを特徴とする請求項1に記載の車両検知装置。
【請求項3】
前記自車には、当該自車の進行方向を検出する進行方向検出手段が設けられ、
前記通信手段は、前記他車両の進行方向に関する情報も取得し、
前記特定手段は、前記通信手段が取得した、前記他車両の進行方向と、前記自車の進行方向との一致度合いが、所定の一致度合いよりも小さい場合には、当該検出結果を他車両の位置を特定するデータから除外することを特徴とする請求項1に記載の車両検知装置。
【請求項4】
前記信頼度算出手段は、前記自車におけるレーダ手段が前記他車両を検出した際の検出時刻および検出レベル、検出結果である相対距離のうち、少なくとも1つに基づいて信頼度を算出することを特徴とする請求項1記載の車両検知装置。
【請求項5】
前記自車が備えるレーダ手段および位置検出手段の検出結果を、前記他車両へ送信する送信手段を設けることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の車両検知装置。
【請求項6】
前記車両検知装置は、車両を自動運行させる装置と併用されることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の車両検知装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−293510(P2008−293510A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−163834(P2008−163834)
【出願日】平成20年6月23日(2008.6.23)
【分割の表示】特願2003−348673(P2003−348673)の分割
【原出願日】平成15年10月7日(2003.10.7)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】