説明

車両用ナビゲーション装置

【課題】 低コストで暗い道を避ける案内経路を適確に探索する車両用ナビゲーション装置を提供する。
【解決手段】 車両の現在位置を検出する位置検出手段と、車両の周囲の明るさを検出する照度検出手段と、現在日時を取得する日時取得手段と、取得した現在日時が夜間に含まれるかを判定する日時判定手段と、取得した現在日時が夜間に含まれる場合に、検出された車両の周囲の明るさが所定の値を下回るかを判定する照度判定手段と、検出された車両の周囲の明るさが所定の値を下回る場合に、現在位置およびその周辺を夜間走行困難区間として記憶する記憶手段と、を有する車両用ナビゲーション装置として提供可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に運転者が指定した目的地までの最適な経路を検索する車両用ナビゲーション装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両の走行に伴ってGPS(Global Positioning System:全地球測位システム)等により現在位置を検出し、その現在位置を表示装置上に道路地図と共に表示して、現在地から目的地までの適切な経路を設定し、表示装置や音声出力装置などによって案内する車両用ナビゲーション装置は、運転者の効率的で安全な運転に貢献している。
【0003】
従来の経路探索においては、経路探索時に指定可能な条件が比較的制限されていた。「最適」と感じる経路は、ユーザの運転技量、安全性への意識、通行の時間帯、天候、道路状況など種々の要因によって変動する。例えば、距離や時間の短さよりも通行の安全性を優先したいと欲するユーザもいる。また、いわゆるスクールゾーンやバスレーンなどが設置される時間帯には、これらの道路を避けて経路探索したいと欲するユーザもいる。夜間や悪天候時には、街路灯のある経路を優先して選択したいと欲するユーザもいる。従来は、こうした柔軟な要求に合致した経路探索を実現することができなかった。
【0004】
そこで、経路探索に対するユーザの要求に柔軟に対応するために、例えば、歩道や分離帯が用意されている道路が優先的に経路として選択されるような距離や時間よりも安全を考慮した経路探索、あるいはスクールゾーンやバスレーンのように所定の時間帯に設定される通行規制、凍結しやすい道路などのように季節による通行への影響等の通行日時などを条件に含めることにより、時間等に応じて変動する条件を考慮した経路探索を可能とする経路探索装置すなわち車両用ナビゲーション装置が考案されている(特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2003−21525号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の例は、道路に歩道や分離帯が整備されているか等の安全に関する情報、あるいは季節・時間帯による通行規制情報を予め記憶しておく必要がある。例えば日本全国の道路についてこれらの情報を地図データの一部として記憶するとなると膨大な記憶領域が必要となり車両用ナビゲーション装置のコスト上昇要因となる。また、使用者は必ずしも日本全国あるいはデータとして記憶されている範囲の道路をくまなく走行するわけではないので、折角のデータを有効活用できないという問題もある。
【0007】
また、安全に関する情報、あるいは通行規制情報は刻一刻と変化するものであり、地図データに記憶された時点の情報と使用者が実際に走行したときの状態が必ずしも一致するわけではなく、使用者に対して有益な情報を提供しているとはいえない。
【0008】
例えば、街路灯のない暗い道を避けて走行したい場合、従来技術では道路における街路灯の有無,街路灯の点灯時間帯,あるいは該道路を含む地域の日出/日没時刻は記憶できるが、該道路の実際の明るさまでは記憶することはできない。
【0009】
上記問題を背景として、本発明の課題は、低コストで暗い道を避ける案内経路を適確に探索する車両用ナビゲーション装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0010】
本発明は、上記課題を解決するための車両用ナビゲーション装置を提供するものである。即ち、請求項1によれば、車両の現在位置を検出する位置検出手段と、車両の周囲の明るさを検出する照度検出手段と、現在日時を取得する日時取得手段と、取得した現在日時が夜間に含まれるかを判定する日時判定手段と、取得した現在日時が夜間に含まれる場合に、検出された車両の周囲の明るさが所定の値を下回るかを判定する照度判定手段と、検出された車両の周囲の明るさが所定の値を下回る場合に、現在位置およびその周辺を夜間走行困難区間として記憶する記憶手段と、を有することを特徴とする車両用ナビゲーション装置として構成される。
【0011】
上記構成では、照度検出手段は常時明るさに関する情報を取得しているので、明るさに関するデータは常に最新のものに更新される。よって、明るさに関するデータを参照して何らかの処理を行なう場合は、その処理によって得られる結果の精度が向上する。
【0012】
請求項2によれば、本発明の車両用ナビゲーション装置は、目的地を設定する目的地設定手段と、現在位置から目的地までの案内経路を探索する経路探索手段と、探索された案内経路に夜間走行困難区間が含まれる場合、その夜間走行困難区間を含まないように案内経路を再探索する経路再探索手段と、を有する構成をとることもできる。
【0013】
従来の車両用ナビゲーション装置の機能の1つとして経路探索機能があるが、探索される経路は出発地と目的地が同じ場合、日時等の運転条件によらず同じルートを計算するのが現状である。しかし、現実の道路状況は、明るい日中等は安全な道でも、夜暗くなった際、街灯がない、もしくは少ないといった理由により、極端に前方の道路状況が分かりづらくなる道路もある。暗い道路での事故率は明るい道路の数倍も高くなる。また、運転に対する負荷も大きい。本発明は、夜間に暗い道路を通行することを避けて、事故に遭う確立を低くし、運転に対する負荷を低減するそのような状況を極力回避するための機能を提供するものである。
【0014】
本発明の車両用ナビゲーション装置では、常に変化する道路状況のうち、時間により変化する道路の明るさに着目し、暗い道は使用者にとって危険度が高い道と判断し、危険度が高い道は回避するように案内経路を探索するものである。上記構成の車両用ナビゲーション装置を用いれば、使用者は運転時の負担も大きくならず安全に目的地まで到達することが可能となる。
【0015】
請求項3によれば、本発明の車両用ナビゲーション装置は、電子地図データを表示する表示手段を有し、表示手段は、夜間走行困難区間を他の区間とは異なる表示色あるいは表示意匠により表示する構成をとることもできる。
【0016】
上記構成によって、経路案内を行なっている場合に案内経路に夜間走行困難区間が含まれているときでも、その夜間走行困難区間にどのくらいで到達するかを予め把握できるので、余裕を持って対応できる。また、経路案内を行なっていない場合でも、夜間走行困難区間を回避するように経路を選択して走行することが可能となるので、運転時の負荷の軽減および事故の回避につながるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
低コストで暗い道を避ける案内経路を適確に探索する車両用ナビゲーション装置を提供するという目的を、車両に搭載された照度センサにより道路の明るさを測定・記憶し、夜間には該記憶された明るさのデータに基づいて、所定の明るさよりも暗い道路を通行しないように案内経路を探索する車両用ナビゲーション装置により実現した。
【実施例】
【0018】
以下、本発明の実施の形態である車両用ナビゲーション装置について、図面を参照しながら説明する。図1は車両用ナビゲーション装置(以下、ナビゲーション装置と略称する)100の全体構成を示すブロック図である。ナビゲーション装置100は、位置検出器1,地図データ入力器6,操作スイッチ群7,リモートコントロール(以下リモコンと称する)センサ11,音声案内などを行なう音声合成回路24およびスピーカ15,半導体記憶装置9,表示装置10,ハードディスク装置(HDD)21,これらの接続された制御回路8,リモコン端末12を備えている。
【0019】
本発明の位置検出手段である位置検出器1は、周知の地磁気センサ2,ジャイロスコープ3,距離センサ4,および衛星からの電波に基づいて車両の位置を検出するGPSのためのGPS受信機5を有している。これらのセンサ等2,3,4,5は各々が性質の異なる誤差を持っているため、複数のセンサにより各々補完しながら使用するように構成されている。なお、精度によっては前述したうちの一部センサで構成してもよく、さらに、ステアリングの回転センサや各転動輪の車輪センサ等を用いてもよい。
【0020】
地図データ入力器6は、位置検出の精度向上のためのいわゆるマップマッチング用データ、道路の接続を表した道路データを含む各種データを記憶媒体20から入力するための装置である。記憶媒体としては、そのデータ量からCD−ROMやDVDを用いるのが一般的であるが、例えばメモリカード等の他の媒体を用いてもよい。
【0021】
地図データは、表示用となる所定の地図画像情報を記憶すると共に、リンク情報やノード情報等を含む道路網情報を記憶する。リンク情報は、各道路を構成する所定の区間情報であって、位置座標、距離、所要時間、道幅、車線数、制限速度等から構成される。また、ノード情報は、交差点(分岐路)等を規定する情報であって、位置座標、右左折車線数、接続先道路リンク等から構成される。また、リンク間接続情報には、通行の可不可を示すデータなどが設定されている。
【0022】
操作スイッチ群7は、例えば表示装置10と一体になったタッチスイッチもしくはメカニカルなスイッチ等が用いられる。タッチスイッチは、表示装置10の画面上に縦横に微細に配置された赤外線センサ、赤外線センサが検出した指等の接触を電気信号に変えるパネル部分、電気信号を外部機器へ送るための信号処理回路、および、これらを制御するコントローラを含んで構成される。例えば指やタッチペンなどでその赤外線を遮断すると、その遮断した位置が2次元座標値(X,Y)として検出される。タッチスイッチとして、ガラス基盤と透明なフィルムにスペーサと呼ばれる隙間を介してX軸方向、Y軸方向に電気回路が配線し、フィルム上を使用者がタッチすると、押された部分の配線がショートして電圧値が変わるため、これを2次元座標値(X,Y)として検出する、いわゆる抵抗膜方式を用いてもよい。あるいは、透明な導電性基盤のガラス面に電気信号を受ける物質を塗布し、指をガラス面に近づけると静電容量の変化を電気信号としてセンサで検知する、いわゆる静電容量方式を用いてもよい。
【0023】
メカニカルスイッチ,タッチスイッチの他に、マウスやカーソル等のポインティングデバイスを用いてもよい。また、音声認識ユニット30を用いて種々の指示を入力することも可能である。これは、音声認識ユニット30に接続されるマイク31から音声を入力することによって、その音声信号を周知の音声認識技術により音声認識処理して、その結果に応じた操作コマンドに変換するものである。音声認識ユニット30は、マイク31から入力された音声信号を適切なレベルに増幅する増幅器と、増幅後の音声信号をA/D変換した後、周知の隠れマルコフモデル等の音声認識アルゴリズムにより音声を識別するための音声信号処理装置(DSP:Digital Signal Processor)、音声を識別するための基準データが記憶されているメモリ等で構成されており、DSPにより音声信号がその音声に対応した数値情報に変換された後、制御回路8に送られる。これら操作スイッチ群7、リモコン端末12、および音声認識ユニット30によって、種々の指示を入力することが可能である。なお、操作スイッチ群7、リモコン端末12、マイク31,および音声認識ユニット30が本発明の目的地設定手段に相当する。
【0024】
送受信機13は、例えばVICS(Vehicle Information and Communication System:道路交通情報通信システム)センタ14から道路交通情報を受信するための装置である。
【0025】
また、通信ユニット19に携帯電話機17あるいは自動車電話機等の移動体通信機器を接続することによっても、外部ネットワークとの接続が可能で、インターネット等に接続することができる。さらに、ETC(自動料金収受システム,ETC:Electronic Toll Collection)車載器16と通信することにより、ETC車載器16がETC路上器から受信した料金情報などを本ナビゲーション装置100に取り込むことができる。また、ETC車載器16によって外部ネットワークと接続することも可能である。これら携帯電話機17あるいはETC車載器16を介してVICSセンタ14との通信を行なう構成をとってもよい。
【0026】
本発明の日時取得手段,日時判定手段,照度判定手段,経路探索手段,経路再探索手段である制御回路8は通常のコンピュータとして構成されており、周知のCPU81,ROM82,RAM83,入出力回路であるI/O84およびこれらの構成を接続するバスライン85が備えられている。CPU81は、HDD21に記憶されたナビプログラム21pおよびデータにより制御を行なう。また、HDD21へのデータの読み書きの制御はCPU81によって行なわれる。A/D変換部86は周知のA/D(アナログ/デジタル)変換回路を含み、例えば位置検出器1などから制御回路8に入力されるアナログデータをCPU81で演算可能なデジタルデータに変換するものである。
【0027】
HDD21に地図データを記憶する構成をとってもよい。また、HDD21には経路案内の補助情報や娯楽情報、その他にユーザが独自にデータを書き込むことができる。これらのデータは、操作スイッチ群7およびリモコン端末12の操作あるいはマイク31からの音声入力によって内容の書き換えが可能である。また、地図データ入力器6を用いて記憶媒体20から地図データ等を読み込んでHDD21の内容を更新することも可能である。また、車内の他の制御装置との間でデータの遣り取りを行なう車内LAN(Local Area Network)22を介して受信したデータを記録する構成をとってもよい。
【0028】
半導体記憶装置9はEEPROM(Electrically Erasable & Programmable Read Only Memory:電気的消去・プログラム可能・読出し専用メモリ)やフラッシュメモリ等の書き換え可能な半導体によって構成され、ナビゲーション装置100の動作に必要な情報およびデータが記憶されている。なお、半導体記憶装置9は、車両のアクセサリスイッチがオフ状態、すなわちナビゲーション装置100がオフ状態になっても、記憶内容が保持されるようになっている。
【0029】
また、半導体記憶装置9の代わりにナビゲーション装置100の動作に必要な情報およびデータをHDD21に記憶してもよい。さらに、ナビゲーション装置100の動作に必要な情報およびデータを半導体記憶装置9とHDD21に分けて記憶してもよい。この場合、HDD21よりも半導体記憶装置9へのアクセス速度の方が速いため、読み書きの頻度が比較的多いものを半導体記憶装置9に記憶し、読み書きの頻度が比較的少ないものをHDD21に記憶するとよい。半導体記憶装置9に記憶された内容をHDD21にバックアップ保存するようにしてもよい。半導体記憶装置9あるいはHDD21が本発明の記憶手段に相当する。
【0030】
本発明の表示手段である表示装置10は周知のカラー液晶表示器で、例えばドット・マトリックスLCD(Liquid Crystal Display)およびLCD表示制御を行なうためのドライバ回路を含んで構成されている。ドライバ回路は、例えば、画素毎にトランジスタを付けて目的の画素を確実に点灯させたり消したりすることができるアクティブマトリックス駆動方式が用いられ、制御回路8から送られる表示指示および表示画面データに基づいて表示を行なう。表示装置10の画面には位置検出器1から入力された車両の現在位置マークと、記憶媒体20から入力された地図データと、更に地図上に表示する誘導経路等付加データとを重ね合わせて表示すると共に、本画面に経路案内の設定および経路誘導中の案内や画面の切り換え操作を行なうためのメニューボタンが表示される。
【0031】
スピーカ15は制御回路8のI/O34に接続される周知の音声合成回路24に接続され、ナビプログラム21pの指令によって半導体記憶装置9あるいはHDD21に記憶されるデジタル音声データを音声合成回路24においてアナログ音声に変換したものが送出される。なお、音声合成の方法には、音声波形をそのままあるいは符号化して蓄積しておき、必要に応じて繋ぎあわせる録音編集方式、音声波形を分析してパラメータに変換された形で蓄積し、それを繋ぎ合せて音声合成回路を駆動し音声を作り出すパラメータ編集方式、文字列あるいは音素記号列から、音声学的・言語学的規則に基づいて、音声を作り出す規則合成方式などがある。
【0032】
車速センサ23は周知のロータリエンコーダ等の回転検出部を含み、例えば車輪取り付け部付近に設置されて車輪の回転を検出してパルス信号として制御回路8に送るものである。制御回路8では、その車輪の回転数を車両の速度に換算して、車両の現在位置と所定の場所までの予想到達時間を算出したり、車両の走行区間毎の平均車速を算出する。車速データを車内LAN(Local Area Network)22を介して他の車載機器から取得する方法をとってもよい。
【0033】
本発明の照度検出手段である光センサ25は例えば車両のダッシュパネル上部に取り付けられ、車両の周囲の明るさを測定するもので、光量を電気抵抗の変化で測定する光導電型センサを用いる。光導電型センサは、自動点灯/消灯を行なう街路灯にも用いられている。光導電素子としては、例えば、硫化カドミウム(CdS),カドミウムセレン(CdSe),あるいは、その混晶体を用いる。硫化カドミウムの抵抗値は照射光が強くなると低くなり、照射光が弱くなると高くなる特性を持つ。光センサ25の電気抵抗の変化は該電気抵抗の両端に発生する電圧値として検出されて制御回路8に入力される。制御回路8では光センサ25からの電圧値はI/O84を経由してCPU81の入力ポートに送られる。そして、光センサ25からの電圧値をA/D変換部86においてCPU81で演算可能なデジタルデータに変換される。車両周囲の明るさに応じて車両のヘッドライトを自動点灯させるオートライトコントロールシステムに用いられる光センサを用いてもよい。
【0034】
外部データ入出力器26は、例えば取り外し可能な外部記憶装置と接続するための入出力回路,コネクタを含むものである。外部記憶装置を介して光磁気ディスク等に半導体記憶装置9あるいはHDD21に記憶されている内容の少なくとも一部をバックアップデータとして記憶することができる。
【0035】
このような構成を持つことにより、ナビゲーション装置100は、制御回路8のCPU81によりナビプログラム21pが起動されると、運転者が操作スイッチ群7あるいはリモコン端末12の操作あるいはマイク31からの音声入力によって、表示装置10上に表示されるメニューから目的地経路を表示装置10に表示させるための経路案内処理を選択した場合、次のような処理を実施する。
【0036】
即ち、運転者が表示装置10上の地図に基づいて目的地を入力すると、GPS受信機5から得られる衛星のデータに基づき車両の現在位置が求められ、該現在位置から目的地までの最適な案内経路を求める処理が行われる。そして、表示装置10上の道路地図に案内経路を重ねて表示し、運転者に適切な経路を案内する。このような自動的に最適な案内経路を設定する手法は、ダイクストラ法等の手法が知られている。また、表示装置10およびスピーカ15の少なくとも一方によって、操作時のガイダンスや動作状態に応じたメッセージの報知を行なう。
【0037】
ダイクストラ法では、リンク情報,ノード情報,リンク間接続情報を用いて、現在地から各ノードに至るまでの経路評価値(経路計算コスト)を算出し、目的地までの全ての経路評価値の計算が終了した段階で、総評価値が最小となるリンクを接続して目的地までの経路を設定している。この場合の評価値は、道路長・道路種別・道路幅員・車線数・交差点での右左折・信号機の有無などに応じて設定されている。例えば、道路幅員が広いほど評価値が低く、車線数が多いほど評価値が低い。
【0038】
各リンクでの経路計算コストの計算は、例えば次式を用いて行われる。経路計算コスト=リンク長×道路幅員係数×道路種別係数×渋滞度。ここで、道路幅員係数とは道路幅に応じて設定される係数であり、道路種別係数とは有料道路等の道路種別に応じて設定される係数である。そして、渋滞度とは、その道路の渋滞度合に応じて設定される係数である。
【0039】
最適な案内経路が求められると、制御回路8は案内経路の右左折する交差点あるいは案内の目印となる建物等の案内対象点を設定する。そして、設定された案内対象点に対し、車両がある一定距離まで近づいたときに音声により案内すべきポイントとして、案内実施点を決定する。案内実施点は、例えば、案内対象点が交差点の場合、一般道では700m手前,300m手前,100m手前、高速道路では2km手前,1km手前,500m手前といったように複数設定することができる。
【0040】
図2のフロー図を用いて、本発明の経路探索処理について説明する。なお、本処理はCPU81により実行されるナビプログラム21pに含まれ、ナビプログラム21pの他の処理とともに繰り返し実行される。
【0041】
まず、日付および時刻の情報から走行時間帯が日中かどうかを調べ、日中であれば(S1:Yes)処理を終了する。なお、日付および時刻の情報は、日時データを生成するための周知の時計ICを制御回路8に内蔵して用いる方法、GPS受信機5よりGPS信号を取得して該GPS信号に含まれる日時データを用いる方法、VICSセンタ14との通信データに含まれる日時データを用いる方法、ETC車載器16とETC路上機との通信で得られる日時データを取得する方法等のいずれを用いてもよい。
【0042】
また、日中かどうかの判定は記憶媒体20あるいはHDD21に記憶されている全国の主要都市の日出/日没時刻により行なう。すなわち、位置検出器1で検出される車両の現在位置が含まれる都市かあるいは車両の現在位置に最も近い都市の日出/日没時刻を判定に用いる。
【0043】
走行時間帯が日中でない場合(S1:No)は、車両に光センサ25が接続されているかを調べる。光センサ25からの電圧信号はI/O84を経由してCPU81の入力ポートに送られる。明るさの変化に対して光センサ25が出力する電圧値を予め0.5V〜4.5Vの範囲なるように調整しておけば、A/D変換部86においても相応の値に変換される。例えば、A/D変換部86がデータ長8ビットのA/D変換を行なう場合は、0.5V〜4.5Vはで19H〜0EAHで表される(”H”は16進数の意味で以下同じ)。よって、A/D変換の値が00H〜18Hあるいは0EBH〜0FFHの範囲にある場合は、光センサ25が異常または未接続と判断できる。
【0044】
車両に光センサ25が接続されていて光センサ25が正常な場合(S2:Yes)は、光センサ25からの電圧値を取得して車両周囲の明るさを求める(S3)。そして、A/D変換後の明るさデータに対して閾値を設定し、走行中の道路が明るいか暗いかを区分する。なお、閾値は使用者が設定可能としてもよい。
【0045】
走行中の道路が「暗い」道路であると区分された場合(S4:Yes)、記憶媒体20に記憶されている地図データの当該走行位置に「夜間は暗い」という情報を追加する(S5)。また、当該走行位置を含むリンク情報に「夜間は暗い」という情報を追加する(S6)。
【0046】
図3はリンク情報に含まれる道路の明るさに関する情報の一例で、明るさをコストに換算たものである。このコストを本来設定されているリンクのコストに加算する。光センサ25で検出される明るさのA/D変換値を記憶してもよい。図3のように明るさを3段階に区分してもよい。「暗い」道路ほどコストが高くなる。そして、使用者によりどの明るさを「夜間は暗い」とするか設定可能としてもよい。日中/夜間の分類の他に、例えば1時間毎のような時間帯毎の明るさに関する情報を記憶するようにしてもよい。
【0047】
使用者が目的地を設定して経路探索を実行した場合(S7:Yes)、上述のダイクストラ法などによって案内経路を探索する。このとき、探索された案内経路のリンク情報のいずれかに「夜間は暗い」という情報が含まれている場合(S8:Yes)、当該リンクすなわち道路の区間を含まないように案内経路を再探索する(S9)。暗いと判定された道路のリンク情報に含まれるコスト値を十分高くしておけば、1回の探索で「夜間は暗い」道路の区間を含まないように案内経路を探索することも可能である。
【0048】
そして、表示装置10の表示画面に表示される地図上で、「夜間は暗い」道路を他の道路と表示色あるいは表示意匠を変えて表示する(S10)。例えば、「夜間は暗い」道路は他の道路よりも明度を下げる、あるいは「夜間は暗い」道路の表示色を黒系統の色とする等して、地図上にはあたかも道路が存在しないように表示させ、使用者が「夜間は暗い」道路以外の道路を選択して走行するように誘導可能に表示する。
【0049】
上記の実施の形態において、使用者による各種設定は以下のように行なう。使用者が操作スイッチ群7あるいはリモコン端末12の操作、あるいはマイク31からの音声入力によって、表示装置10上に表示されるメニューから機能設定メニューを表示装置10に表示させ、その中から暗い道を回避する機能に関する設定画面を選択して表示させる。そして、それぞれの項目について選択・設定を行なう。選択・設定された内容は、半導体記憶装置9あるいはHDD21の所定の領域に記憶される。
【0050】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、これらはあくまで例示にすぎず、本発明はこれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づく種々の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】ナビゲーション装置の構成を示すブロック図。
【図2】本発明の経路探索処理を説明するためのフロー図。
【図3】明るさに応じてリンクのコストが設定される例を示す図。
【符号の説明】
【0052】
1 位置検出器(位置検出手段)
7 操作スイッチ群(目的地設定手段)
8 制御回路(日時取得手段,日時判定手段,照度判定手段,経路探索手段,経路再探索手段)
9 半導体記憶装置(記憶手段)
10 表示装置(表示手段)
12 リモコン端末(目的地設定手段)
20 記憶媒体
21 ハードディスク装置(HDD,記憶手段)
25 光センサ(照度検出手段)
30 音声認識ユニット(目的地設定手段)
31 マイク(目的地設定手段)
100 ナビゲーション装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の現在位置を検出する位置検出手段と、
前記車両の周囲の明るさを検出する照度検出手段と、
現在日時を取得する日時取得手段と、
前記取得した現在日時が夜間に含まれるかを判定する日時判定手段と、
前記取得した現在日時が夜間に含まれる場合に、前記検出された車両の周囲の明るさが所定の値を下回るかを判定する照度判定手段と、
前記検出された車両の周囲の明るさが所定の値を下回る場合に、前記現在位置およびその周辺を夜間走行困難区間として記憶する記憶手段と、
を有することを特徴とする車両用ナビゲーション装置。
【請求項2】
目的地を設定する目的地設定手段と、
前記現在位置から前記目的地までの案内経路を探索する経路探索手段と、
前記探索された案内経路に前記夜間走行困難区間が含まれる場合、その夜間走行困難区間を含まないように案内経路を再探索する経路再探索手段と、
を有するものである請求項1に記載の車両用ナビゲーション装置。
【請求項3】
前記電子地図データを表示する表示手段を有し、
前記表示手段は、前記夜間走行困難区間を他の区間とは異なる表示色あるいは表示意匠により表示するものである請求項1または2に記載の車両用ナビゲーション装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2006−220479(P2006−220479A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−32851(P2005−32851)
【出願日】平成17年2月9日(2005.2.9)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】