車両用バッテリ搭載構造
【課題】バッテリの車体への搭載、メンテナンスを容易に行うことができる車両用バッテリ搭載構造を得る。
【解決手段】車両用バッテリ搭載構造10は、自動車Aのインストルメントパネル20内に配置され自動車Aの駆動用の電力を充電・放電するためのバッテリ40と、インパネリインフォースメント22を含んで構成されたインパネモジュール56と、バッテリ40をインパネリインフォースメント22に離脱可能に結合するボルトBとを備える。この車両用バッテリ搭載構造10は、ボルトBによって、バッテリ40をインパネモジュール56に対して一体に車体に搭載可能に結合したバッテリモジュール化状態と、車体搭載後にバッテリ40をインパネリインフォースメント22からメンテナンス可能に分離したバッテリ分離状態とをとり得る。
【解決手段】車両用バッテリ搭載構造10は、自動車Aのインストルメントパネル20内に配置され自動車Aの駆動用の電力を充電・放電するためのバッテリ40と、インパネリインフォースメント22を含んで構成されたインパネモジュール56と、バッテリ40をインパネリインフォースメント22に離脱可能に結合するボルトBとを備える。この車両用バッテリ搭載構造10は、ボルトBによって、バッテリ40をインパネモジュール56に対して一体に車体に搭載可能に結合したバッテリモジュール化状態と、車体搭載後にバッテリ40をインパネリインフォースメント22からメンテナンス可能に分離したバッテリ分離状態とをとり得る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動用のバッテリをインストルメントパネル内に搭載するための車両用バッテリ搭載構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ダッシュパネルとインストルメントパネルとの間で運転席側と助手席側とに亘ってバッテリを配置した自動車のバッテリ搭載構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−50801号公報
【特許文献2】特開平9−315162号公報
【特許文献3】特開2008−1147号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の如き従来の技術では、バッテリのメンテナンス時に該バッテリを車体から容易に取り外すことができず、この点に改善の余地がある。
【0005】
本発明は、バッテリの車体への搭載、メンテナンスを容易に行うことができる車両用バッテリ搭載構造を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明に係る車両用バッテリ搭載構造は、車両のインストルメントパネル内に配置され、該車両の駆動用の電力を充電、放電するためのバッテリと、インパネ部骨格部材を含んで構成されたインパネモジュールと、前記バッテリを前記インパネモジュールに対して一体に車体に搭載可能に結合したバッテリモジュール化状態と、前記バッテリを前記車体に固定された前記インパネ部骨格部材からメンテナンス可能に分離したバッテリ分離状態とをとり得るように、該バッテリとインパネモジュールとを離脱可能に結合するバッテリ着脱手段と、を備えている。
【0007】
請求項1記載の車両用バッテリ搭載構造では、バッテリは、バッテリ着脱手段によってインパネモジュールに一体化されたバッテリモジュール化状態で、インパネモジュールと一体的に車体に搭載される。これにより、バッテリの車体への搭載性が良好である。一方、このような車両への搭載後におけるバッテリのメンテナンス時に、該バッテリは、バッテリ着脱手段によってインパネ部骨格部材(インパネモジュールの主要部)からメンテナンス可能に分離される。これにより、インパネモジュール全体を車体から取り外すことなくバッテリのメンテナンスを行うことができる。
【0008】
このように、請求項1記載の車両用バッテリ搭載構造では、バッテリの車体への搭載、メンテナンスを容易に行うことができる。
【0009】
請求項2記載の発明に係る車両用バッテリ搭載構造は、請求項1記載の車両用バッテリ搭載構造において、前記バッテリ着脱手段によるバッテリ分離状態で、前記バッテリは、車載状態の前記インパネモジュールに対し車両後方に分離される。
【0010】
請求項2記載の車両用バッテリ搭載構造では、車両への搭載後におけるバッテリのメンテナンス時に該バッテリは、バッテリ着脱手段によってインパネ部骨格部材に対し車両後方側にメンテナンス可能に分離される。これにより、バッテリをインパネ部骨格部材に対し車室側に分離することができ、該バッテリのメンテナンスを一層容易に行うことができる。
【0011】
請求項3記載の発明に係る車両用バッテリ搭載構造は、請求項2記載の車両用バッテリ搭載構造において、前記車体のフロアには、前記バッテリを、車両前後方向にスライド可能に支持するバッテリガイド機構が設けられている。
【0012】
請求項3記載の車両用バッテリ搭載構造では、スライド機構に沿ってバッテリを車両前後方向にスライドさせることで、該バッテリの車体への搭載、メンテナンス時の分離を容易に行うことができる。これにより、車両搭載時には、インパネモジュールにバッテリがモジュール化された重量物をスライド機構に沿ってバッテリを車両前方に移動させて、該モジュールを精度良く車体に搭載することができる。また、バッテリのメンテナンス時には、スライド機構によってバッテリを車両後方に移動させて、該バッテリをインパネモジュール車体)から容易に分離することができる。
【0013】
請求項4記載の発明に係る車両用バッテリ搭載構造は、請求項3記載の車両用バッテリ搭載構造において、前記バッテリは、前記インストルメントパネル内における車幅方向中央部に配置されるようになっており、前記バッテリガイド機構は、コンソールボックスを車両前後方向にスライドさせる機能を兼ねる。
【0014】
請求項4記載の車両用バッテリ搭載構造では、バッテリ用のスライド機構がコンソールボックスのスライド機構を兼ねる。これにより、バッテリのメンテナンス時には、コンソールボックスを車両後方に移動させて、該バッテリのメンテナンススペースを確保することができる。また、簡単な構造で可動式コンソールボックスを実現することができる。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように本発明に係る車両用バッテリ搭載構造は、バッテリの車体への搭載、メンテナンスを容易に行うことができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係る車両用バッテリ搭載構造を構成するインパネモジュールの車体への搭載状態を模式的に示す斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係る車両用バッテリ搭載構造を構成するバッテリを車体への搭載後にインパネモジュールから分離した状態を示す斜視図である。
【図3】本発明の実施形態に係る車両用バッテリ搭載構造を構成するインパネモジュールの車体への搭載状態を模式的に示す側断面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る車両用バッテリ搭載構造を構成するバッテリを車体への搭載後にインパネモジュールから分離した状態を模式的に示す側断面図である。
【図5】本発明の実施形態に係る車両用バッテリ搭載構造を構成するスライド機構によるコンソールボックスのスライド状態を模式的に示す側断面図である。
【図6】本発明の実施形態に係る車両用バッテリ搭載構造が適用された自動車の車室内前部を示す斜視図である。
【図7】本発明の実施形態に係る車両用バッテリ搭載構造の要部を、インストルメントパネルを取り除いて模式的に示す背面図である。
【図8】本発明の実施形態に係る車両用バッテリ搭載構造を構成するスライド機構の一部を拡大して示す斜視図である。
【図9】本発明の実施形態に係る車両用バッテリ搭載構造を構成するスライド機構の一部を拡大して示す平面図である。
【図10】本発明の実施形態に係る車両用バッテリ搭載構造を構成するスライド機構の変形例を示す図7に対応する背面図である。
【図11】本発明の実施形態に係る車両用バッテリ搭載構造を構成するスライド機構の変形例を一部拡大して示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態に係る車両用バッテリ搭載構造10について、図1〜図9に基づいて説明する。なお、各図に適宜記す矢印FR、矢印UP、矢印Wは、車両用バッテリ搭載構造10が適用された自動車Aの前方向(進行方向)、上方向、車幅方向を示している。先ず、車両用バッテリ搭載構造10が適用された車内前部構造11の概略全体構成を説明し、次いで、車両用バッテリ搭載構造10について説明することとする。
【0018】
図6には、自動車Aの車内前部構造11が車室側から見た斜視図にて示されている。この図に示される如く、車内前部構造11は、車幅方向に離間して配置された左右一対のフロントピラー12を備えている。左右のフロントピラー12は、それぞれ車両上下方向に長手の車体骨格部材であり、車両下端が車両前後方向に沿って延在された車両下部の前後骨格部材であるロッカ14の車両前端に結合されると共に、車両上端が車両前後方向に沿って延在された車両上部の前後骨格部材であるルーフサイドレール(図示省略)の車両後端に結合されている。
【0019】
そして、車内前部構造11では、左右一対のフロントピラー12の下部を構成するフロントピラーロア12A間に、インパネ部16が配設されている。インパネ部16は、エンジンルームEと車室Cとを仕切るダッシュパネル18(図3、図4参照)と、インストルメントパネル20との間に形成された空間に、各種部品等を配設して構成されたモジュールとして捉えることができる。この実施形態に係るインパネ部16は、インストルメントパネル20を含んで構成されているものと捉えることができる。
【0020】
具体的には、インパネ部16は、図1及び図3に示される如く、インパネ部骨格部材としてのインパネリインフォースメント22を備えている。インパネリインフォースメント22は、左右のフロントピラーロア12Aの車両上部間を架け渡すインパネリインフォースメントアッパ24と、インパネリインフォースメントアッパ24の車幅方向略中央部で該車幅方向に離間して配置された左右一対のインパネリインフォースメントロア26とを含んで構成されている。
【0021】
左右のインパネリインフォースメントロア26は、図1に示される如く、それぞれの下端26Aが車体フロアFを構成するフロアトンネル30の側壁30Aに固定されて、センタクラスタ28(の内部骨格)を構成するように配置されている。この実施形態では、各インパネリインフォースメントロア26下端26Aとフロアトンネル30の側壁30Aとは、ボルトBによる締結構造とされている。
【0022】
そして、図1に示される如く、インパネ部16では、インパネリインフォースメントアッパ24に、ステアリング機構32が支持されている。ステアリング機構32は、図示しないステアリングコラムがインパネリインフォースメントアッパ24に固定されており、図示しないチルト機構によってステアリングホイール34の車両前後位置、車両上下位置を調整可能とされている。また、インパネ部16では、左右のインパネリインフォースメントロア26間にエアコンユニット36、オーディオユニット38が配設されている。
【0023】
さらに、この実施形態では、左右のインパネリインフォースメントロア26間におけるフロアトンネル30の上壁30B上に、バッテリ40が配設されている。バッテリ40は、自動車Aの駆動源(の1つ)となる図示しないモータに駆動用電力を供給するための蓄電池であって、高密度であることによって、左右のインパネリインフォースメントロア26間におけるエアコンユニット36の車両下方でかつオーディオユニット38の車両前方に配置される大きさで、十分な充電容量を有している。このバッテリ40を搭載した自動車Aは、電気自動車(外部電源によってバッテリ40に充電するもの、車載燃料電池等の内部電源によってバッテリ40に充電するものを含む)、又はモータの加えて駆動力発生用若しくは充電用の内燃機関を備えたハイブリッド自動車とされている。
【0024】
またさらに、図3に示される如く、インパネ部16を構成するエアコンユニット36は、ダッシュパネル18の上前部に固定的に設けられたカウル部42に開口したダクト孔44に連通されている。エアコンユニット36は、ダクト部36Aをダクト孔44に嵌合させることで、ダクト孔44(カウル部42)を通じて外気の取り入れ可能とされている。また、インパネ部16は、エアコンユニット36、オーディオユニット38、及びバッテリ40を含む電気系統のワイヤハーネス(図示省略)の先端に設けられたコネクタ部46を有する。コネクタ部46は、車両前方を向いて固定的に設けられており、ダッシュパネル18に固定的に設けられた待ち受けコネクタ48に対し機械的かつ電気的に接続されるようになっている。
【0025】
また、図2及び図6に示される如く、インパネ部16では、上記したインパネ部16の各要素が、上記したインストルメントパネル20によって車両後方(車室C)側から覆われている。インストルメントパネル20は、エアコンユニット36の空調エア吹出口36B等を車室Cに露出させている。インストルメントパネル20は、インパネリインフォースメントアッパ24に沿って車幅方向に延在するインパネアッパ部20Aの車幅方向中央部からセンタクラスタ28の意匠面を構成するセンタクラスタ部20Bが垂下されて、背面視で略「T」字状に形成されている。インストルメントパネル20には、小物等の収納部が適宜設けられ、必要に応じて収納部の蓋部も適宜設けられている。このインストルメントパネル20には、メーター部50が一体的に設けられている。また、図示は省略するが、インストルメントパネル20には、前席用の各種エアバッグ装置が一体化されている。換言すれば、メーター部50や各種エアバッグ装置もインパネ部16(後述するインパネモジュール56)の構成要素と把握することができる。
【0026】
さらに、車内前部構造11では、センタクラスタ28に対する車両後方であって、図示しない左右の座席間には、センタコンソール部52が設けられている。センタコンソール部52は、コンソールボックス54を有する。コンソールボックス54は、車両上向きに開口する図示しない収納部をコンソールリッド55で開閉可能に覆って構成されている。この実施形態では、センタコンソール部52は、車体フロアFのフロアトンネル30上に設けられている。
【0027】
(車両用バッテリ搭載構造の構成)
そして、以上説明したインパネ部16は、図1に実線にて示される如く、上記した各構成要素が車体への搭載前において該車体に対し一体的に搭載可能にモジュール化されたインパネモジュール56が、車体に搭載されることで構成されている。換言すれば、車体搭載前にはインパネモジュール56であったものが、車体に搭載されてインパネ部16(の主要部)を構成するようになっている。
【0028】
具体的には、インパネモジュール56は、インパネリインフォースメント22を骨格として、上記したステアリング機構32、エアコンユニット36、オーディオユニット38、バッテリ40、インストルメントパネル20、メーター部50、各種エアバッグ装置がモジュール化されて構成されている。インパネモジュール56の車体への搭載の際には、該インパネモジュール56をドア開口部から車室C内に進入させ、次いでインパネモジュール56を左右のフロントピラーロア12A間に移動させ、インパネリインフォースメントアッパ24の車幅方向両端24Aをフロントピラーロア12Aに固定すると共に、各インパネリインフォースメントロア26下端26Aをフロアトンネル30の側壁30Aに締結するようになっている。
【0029】
ここで、バッテリ40は、左右のインパネリインフォースメントロア26に対し、ボルトBによって取り外し可能に締結固定されている。したがって、この実施形態におけるバッテリ40固定用のボルトBが本発明におけるバッテリ着脱手段に相当する。この実施形態では、バッテリ40は、車幅方向に対向する平板状を成す一対のインパネリインフォースメントロア26に対し、該車幅方向からボルトBによって締結固定されている。
【0030】
また、この実施形態では、オーディオユニット38についても、車幅方向に対向する平板状を成す一対のインパネリインフォースメントロア26に対し、該車幅方向からボルトBによって締結固定されている。この実施形態におけるオーディオユニット38は、バッテリ40と一体に取り扱えるように、図示しない結合手段によってバッテリ40に結合されている。
【0031】
このオーディオユニット38は、図1及び図3に示される如く、操作パネルである車両後面をインストルメントパネル20におけるセンタクラスタ部20Bに形成された窓部20Cから、車両前後方向への全投影面積に亘って露出されている。これにより、車両用バッテリ搭載構造10では、ボルトBによる締結(拘束)状態が解消されたバッテリ40及びオーディオユニット38は、共に窓部20Cを通じて車両後方に取り出し可能とされている。換言すれば、車両用バッテリ搭載構造10では、バッテリ40は、インパネ部16(車両搭載状態のインパネモジュール56)の主要部であるインパネリインフォースメントアッパ24に対し、車両後方(車室C)に分離可能な構成とされている。
【0032】
さらに、図2に示される如く、センタクラスタ部20Bの側壁20Dには、バッテリ40のボルトBによる各インパネリインフォースメントロア2への締結部位を操作(ボルトBによる締結、締結解消の各作業)可能に露出させる操作窓20Eが形成されている。操作窓20Dは、カバー58にて開閉されるようになっている。
【0033】
そして、車両用バッテリ搭載構造10は、図1〜図4に示される如く、バッテリ40を車体に対する非搭載位置(後述する搭載準備位置、メンテナンス位置を含む)と車体に対する搭載位置との間で車両前後方向にスライド可能にガイドするバッテリガイド機構としてのスライド機構60を備えている。スライド機構60は、フロアトンネル30の上壁30Bに設けられたスライドレール62と、バッテリ40の下端部に設けられたスライダ64とを主要部として構成されている。
【0034】
図1及び図7に示される如く、この実施形態では、スライドレール62は、車幅方向に並列して一対(2本)設けられている。図8に示される如く、各スライドレール62は、フロアトンネル30の上壁30Bに固定された底壁62Aと、底壁62Aに対向する天壁62Bと、底壁62Aと天壁62Bの幅方向両端から連結する一対の側壁62Cと、天壁62B幅方向中央部に形成されたスリット62Dの縁部に沿って底壁62A側に垂下されると共に底壁62Aとの間に隙間が形成された係合壁62Eとを主要部として構成されている。
【0035】
一方、スライダ64は、スライドレール62に対応して左右一対設けられている。スライダ64は、上端においてバッテリ40の下面40A(図7参照)に固定された固定部64Aと、固定部64Aの下端から幅方向の両側に延設された平壁部64Bと、平壁部64Bの幅方向両端から立設された一対の側壁64Cを主要部として構成されている。この実施形態では、スライダ64は、一対の略「J」状部材を背中合わせに接合して構成されている。
【0036】
図3及び図4に示される如く、スライド機構60は、固定部64Aをスリット62Dに挿通させることで、平壁部64Bを底壁62Aと天壁62B(係合壁62E)との間に、一対の側壁64Cを対応する側壁62Cと係合壁62Eとの間に挿入されるように、スライドレール62に対しスライダ64を組み付ける構成とされている。これにより、スライド機構60では、スライドレール62に対するスライダ64の脱落が防止されつつ、スライダ64すなわちバッテリ40がスライドレール62すなわちフロアトンネル30に対し車両前後方向にガイドされる構成とされている。
【0037】
また、スライド機構60では、図8及び図9に示される如く、各スライドレール62の車両後端にスライダ64を組み付けるためのスライダ挿入部62Fが形成されている。スライダ挿入部62Fは、スリット62Dの車両後端部が徐々に該後端に向けて徐々に拡幅されるように天壁62Bの車両後端を切り欠くことで、スライダ64を容易に組み付け得る誘い込み形状として形成されている。この実施形態では、図8に示される如く、一対の側壁62Cについても、車両後端に向けて徐々に低位となるように形成されている。
【0038】
以上により、車両用バッテリ搭載構造10では、バッテリ40をインパネモジュール56の一要素として車体に搭載する際、及びバッテリ40をインパネリインフォースメントアッパ24から分離する際に、該バッテリ40をスライド機構60にガイドしつつ車両前後方向に移動させる構成とされている。そして、車両用バッテリ搭載構造10では、インパネモジュール56をスライド機構60にてガイドしつつ車両前方に移動させることで、エアコンユニット36のダクト部36Aがダクト孔44に嵌合され、コネクタ部46が待ち受けコネクタ48結合されるようになっている。
【0039】
また、図2に示される如く、バッテリ40(に結合されたオーディオユニット38)における車両上下方向の下部には、バッテリ40をインパネリインフォースメントアッパ24から分離させる際に用いる持ち手としてのレバー66が設けられている。レバー66は、例えば、図示しないハートカム機構等によるプッシュオープン機構を介して支持されており、オーディオユニット38内への格納状態から車両前方に押圧されることで車両後方に突出され、これにより把持可能な持ち手として機能する構成とされている。
【0040】
さらに、車両用バッテリ搭載構造10では、スライド機構60を構成するスライドレール62がコンソールボックス54を車両前後方向にスライド可能に支持する機能を兼ねている。すなわち、図5に示される如く、コンソールボックス54には、スライダ64と同じ寸法形状を有するスライダ54Aが取り付けられており、該スライダ54Aがスライドレール62に組み付けられている。これにより、コンソールボックス54は、車両前後方向にスライド可能な可動式センタコンソール部として構成されている。なお、コンソールボックス54には、図示は省略するが、車両前後方向の所望の位置で保持するためのストッパが設けられている。
【0041】
以上説明した車両用バッテリ搭載構造10では、バッテリ40のスライダ64をスライダ挿入部62F上に位置させる位置が、バッテリ40(インパネモジュール56)の搭載準備位置とされる。したがって、車両用バッテリ搭載構造10では、搭載準備位置にセットしたバッテリ40を(介してインパネモジュール56を)スライド機構60によってガイドさせつつ車両前方に移動させることで、該バッテリ40を車体への適正な搭載位置に導くことができるようになっている。また、車両用バッテリ搭載構造10では、車両搭載後のバッテリ40を、メンテナンスのためにインパネリインフォースメントロア26に対し車両後方に所定距離だけ分離させた位置(図2及び図4参照)が、該バッテリ40のメンテナンス位置とされる。メンテナンス位置は、スライダ64のスライドレール62によるガイド状態が維持される範囲内で設定され、搭載準備位置に対し車両前方に位置する。また、この実施形態では、バッテリ40がメンテナンス位置をとる場合には、図2に示される如くコンソールボックス54が標準位置(使用範囲内の位置)よりも車両後方に後退されるようになっている。
【0042】
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0043】
上記構成の車両用バッテリ搭載構造10では、インパネリインフォースメント22にエアコンユニット36、オーディオユニット38、バッテリ40等を組み付けて構成されたインパネモジュール56を、図1に示される如くモジュールとして一体的に車体に搭載する。インパネモジュール56では、オーディオユニット38、バッテリ40は、それぞれボルトBによって、取り外し可能にインパネリインフォースメントロア26に締結固定される。このようにバッテリ40を含むインパネモジュール56を車体に搭載する際には、該インパネモジュール56をドア開口部から車室C内に進入させる。
【0044】
そして、バッテリ40のスライダ64をスライダ挿入部62F上に車両上方からアクセスさせ、この搭載準備位置から、固定部64Aがスリット62Dに入り込むようにインパネモジュール56を車両前方に前進させる(図3の想像線参照)。固定部64Aがスライドレール62に組み付けられた後は、インパネモジュール56の質量をスライドレール62(フロアトンネル30)に支持させつつ、該インパネモジュール56には主に車両前方への移動力を付与する。
【0045】
すると、インパネモジュール56は、スライド機構60によってガイドされつつほぼ真直ぐに車両前方に移動され、図3に実線にて示される如く所定の搭載位置に至る。このインパネモジュール56の車両前方への移動に伴って、ダクト孔44にはエアコンユニット36のダクト部36Aが嵌合されると共に、待ち受けコネクタ48にはインパネモジュール56のコネクタ部46が結合される。
【0046】
そして、インパネリインフォースメントアッパ24の車幅方向両端24Aを対応するフロントピラーロア12AにボルトB等によって固定すると共に、各インパネリインフォースメントロア26下端26Aを対応するフロアトンネル30の側壁30AにボルトB等によって固定することで、インパネモジュール56の搭載が完了する。次いで、スライド機構60のスライドレール62にコンソールボックス54のスライダ54Aを組み付け、コンソールボックス54を適宜位置にセットすることで、該コンソールボックス54の組付が完了する。以上により、図6に示される如き車内前部構造11が形成される。
【0047】
一方、インパネモジュール56の車体への搭載後におけるバッテリ40のメンテナンスの際には、図2に示される如く、インストルメントパネル20のカバー58を取り外し、操作窓20Eを通じてボルトBを取り外し、バッテリ40を、オーディオユニット38を左右のインパネリインフォースメントロア26に対する非拘束状態とする。次いで、オーディオユニット38の車両下部からレバー66を突出させ、該レバー66を把持してオーディオユニット38と共にバッテリ40を車室内に引き出す。このバッテリ40をメンテナンス位置にまで移動して該メンテナンス位置に保持し、該バッテリ40のメンテナンスを行う。
【0048】
このメンテナンス後は、バッテリ40をオーディオユニット38と共に搭載位置に復帰させ、ボルトBによる締結にてバッテリ40、オーディオユニット38を各インパネリインフォースメントロア26に固定する。次いで、操作窓20Eをカバー58にて閉止して、バッテリ40のメンテナンスを完了する。
【0049】
以上説明したように、車両用バッテリ搭載構造10では、バッテリ40がインパネリインフォースメント22のインパネリインフォースメントロア26に、操作窓20Eを通じて取り外し可能にボルトB固定されている。このため、バッテリ40を、インパネモジュール56にモジュール化してインパネ部16の構成部品と共に車体に組み付けることができる。これにより、バッテリの車体への搭載性が良好である。
【0050】
一方、バッテリ40をメンテナンスする際には、バッテリ40のボルトBによるインパネリインフォースメントロア26に対する拘束を解消することで、該バッテリ40をインパネリインフォースメント22から分離して車室C内のメンテナンス位置に移動することができる。これにより、インパネモジュール56の構成要素(部品)の全体を車体から取り外すことなく、バッテリ40をメンテナンス可能なメンテナンス位置に移動し、そのメンテナンスを行うことができる。
【0051】
しかも、バッテリ40は、インパネリインフォースメント22に対し車両後方分離されて車室C内にメンテナンス位置が設定されているため、例えばエンジンルームや車体フロアFの下方等にメンテナンス位置が設定される構成と比較して、広いスペースでバッテリ40のメンテナンスを容易に行うことができる。
【0052】
このように、本発明に実施形態に係る車両用バッテリ搭載構造10では、バッテリ40の車体への搭載、メンテナンスを容易に行うことができる。
【0053】
またここで、車両用バッテリ搭載構造10では、車体フロアFのフロアトンネル30にスライドレール62が設けられているため、スライダ64を有するバッテリ40の車体への搭載、メンテナンス時の分離を容易に行うことができる。これにより、バッテリ40の車両搭載時には、バッテリ40を含んだ重量物であるインパネモジュール56を、スライドレール62に沿ってバッテリを車両前方に移動させて、精度良く車体に搭載することができる。このため、車両用バッテリ搭載構造10では、インパネモジュール56の車体への搭載動作に伴ってダクト孔44にエアコンユニット36のダクト部36Aを嵌合させると共に、待ち受けコネクタ48にコネクタ部46を結合させることができる。
【0054】
また、バッテリのメンテナンス時には、スライドレール62によってバッテリ40を支持(ガイド)させつつ、単体にあっても重量物であるバッテリ40をメンテナンス位置に容易に移動させることができる。すなわち、バッテリ40のメンテナンスに伴う作業が一層容易化される。
【0055】
さらに、車両用バッテリ搭載構造10では、バッテリ40用のスライド機構60のスライドレール62が、スライダ54Aとでコンソールボックス54のスライド機構を構成している。すなわち、スライドレール62を有効に利用してコンソールボックス54の可動構造を実現することができる。これにより、乗員の体格やシートポジションに応じてコンソールボックス54の車両前後位置を調整することができ、自動車Aの商品性の向上に寄与する。
【0056】
また、車両用バッテリ搭載構造10では、コンソールボックス54をスライドレール62に沿って車両後方(バッテリ40のメンテナンス位置に対する後方)に移動させることで、限られた車室Cの空間内でバッテリ40のメンテナンスペースを確保することができる。
【0057】
なお、上記した実施形態では、スライド機構60のスライドレール62がフロアトンネル30の上壁30B上にスライドレール62を固定した例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、図10及び図11に示される如く、フロアトンネル30内に設けられたトンネルリインフォースメント70を利用して、スライド機構60を構成するスライドレール72を設けた構成としても良い。
【0058】
具体的には、フロアトンネル30内における左右の側壁30Aと上壁30Bとの各角部には、それぞれ車両前後方向に延在する閉断面構造の骨格部材であるトンネルリインフォースメント70が接合されている。トンネルリインフォースメント70は、単独で閉断面構造を成しても良く、フロアトンネル30の上記角部を利用して閉断面構造を成しても良い。図10及び図11の例では、前者が採用されている。そして、トンネルリインフォースメント70におけるスライドレール72を構成する部分の天壁72A(及び上壁30B)には、スリット72Bが形成され、該スリット72Bの縁部からは係合壁72Cが垂下されている。
【0059】
また、スライドレール72の車両後端には、スライダ64を組み付けるためのスライダ挿入部72Dが形成されている。スライダ挿入部72Dは、天壁72Aにおける係合壁72Cに対する車両後方部分を切り抜いてスリット72Bの後端に連通された、車両上方に開口する孔として形成されている。この変形例では、この孔であるスライダ挿入部72Dに挿入されたスライダ64を、固定部64Aがスリット72Bに進入するように車両前方に移動させることで、スライダ64がスライドレール72に組み付けられるようになっている。また、同様にしてスライダ54Aがスライドレール72に組み付けられるようになっている。
【0060】
以上説明した変形例に係るスライドレール72をスライドレール62に代えて有するスライド機構60では、既存部材のトンネルリインフォースメント70を利用してスライドレール72が形成されているので、部品点数の削減を図りながらスライド機構60を得ることができる。また、フロアトンネル30内にスライド機構60の主要部が配置されるので、車室内の空間を有効に利用することが可能になる。
【0061】
なお、上記した実施形態及び変形例では、ステアリング機構32、エアコンユニット36、オーディオユニット38、バッテリ40、メーター部50、各種エアバッグ装置を含む例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、メーター部50、各種エアバッグ装置、ステアリング機構32、エアコンユニット36及びオーディオユニット38の一部若しくは全部に代えて、又はこれらの一部若しくは全部と共に、他の部品等がインパネモジュール56を構成するようにしても良い。したがって例えば、インパネモジュール56は、操作ペダル(ブレーキ、アクセル等のペダル)などがモジュール化された構成とすることができる。
【0062】
また、上記した実施形態及び変形例では、インパネモジュール56(インパネ部16)の主要部を成すインパネリインフォースメント22がインパネリインフォースメントアッパ24にインパネリインフォースメントロア26を接合して成る例を示したが、本発明はこれに限定されず、各種構造のインパネリインフォースメント22を採用し得る。
【0063】
さらに、上記した実施形態及び変形例では、バッテリ40がフロアトンネル30上に配置された例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、フロアトンネル30を有しない車両においてはバッテリ40を車体フロアF上に配置する構成としても良く、また例えば、バッテリ40を車幅方向中央から助手席側等へオフセットして(フロアトンネル30以外の位置に)配置するようにしても良い。また、本発明は、スライド機構60が車幅方向に並列された一対のスライドレール62を有する構成に限られることはなく、例えば、スライド機構60が単一の又は3本以上並列されたスライドレール62を有して構成されても良い。さらに、本発明は、1つのスライドレール62に対し1つのスライダ64が組み付けられる構成に限定されることはない。したがって例えば、左右一対のスライドレール62にそれぞれ複数のスライダ64が組み付けられるように、左右複数対のスライダ64を設けた構成としても良い。また、本発明におけるスライド機構60は、摺動によるスライド機構に限定されることはなく、例えば、スライドレール62及びスライダ64の何れか一方に、相手方に転がり接触するローラ等を設けた構成としても良い。
【0064】
またさらに、上記した実施形態及び変形例では、スライド機構60を利用してコンソールボックス54の可動機構を構成した例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、コンソールボックス54が車両前後方向の所定位置に保持される構成としても良い。この構成においてバッテリ40のメンテナンススペースを確保するために、例えば、コンソールボックス54は車両上方に取り外し可能に構成される。
【0065】
また、上記した実施形態及び変形例では、本発明におけるバッテリ着脱手段がボルトBである例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、クランプやベルトによる保持等、各種の離脱(拘束解除)可能な結合手段を本発明におけるバッテリ着脱手段として採用することができる。
【符号の説明】
【0066】
10 車両用バッテリ搭載構造
16 インパネ部(インパネモジュール)
20 インストルメントパネル
22 インパネリインフォースメント(インパネ骨格部材)
30 フロアトンネル(フロア)
40 バッテリ
54 コンソールボックス
56 インパネモジュール
60 スライド機構(バッテリガイド機構)
A 自動車(車両)
B ボルト(バッテリ着脱手段)
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動用のバッテリをインストルメントパネル内に搭載するための車両用バッテリ搭載構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ダッシュパネルとインストルメントパネルとの間で運転席側と助手席側とに亘ってバッテリを配置した自動車のバッテリ搭載構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−50801号公報
【特許文献2】特開平9−315162号公報
【特許文献3】特開2008−1147号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の如き従来の技術では、バッテリのメンテナンス時に該バッテリを車体から容易に取り外すことができず、この点に改善の余地がある。
【0005】
本発明は、バッテリの車体への搭載、メンテナンスを容易に行うことができる車両用バッテリ搭載構造を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明に係る車両用バッテリ搭載構造は、車両のインストルメントパネル内に配置され、該車両の駆動用の電力を充電、放電するためのバッテリと、インパネ部骨格部材を含んで構成されたインパネモジュールと、前記バッテリを前記インパネモジュールに対して一体に車体に搭載可能に結合したバッテリモジュール化状態と、前記バッテリを前記車体に固定された前記インパネ部骨格部材からメンテナンス可能に分離したバッテリ分離状態とをとり得るように、該バッテリとインパネモジュールとを離脱可能に結合するバッテリ着脱手段と、を備えている。
【0007】
請求項1記載の車両用バッテリ搭載構造では、バッテリは、バッテリ着脱手段によってインパネモジュールに一体化されたバッテリモジュール化状態で、インパネモジュールと一体的に車体に搭載される。これにより、バッテリの車体への搭載性が良好である。一方、このような車両への搭載後におけるバッテリのメンテナンス時に、該バッテリは、バッテリ着脱手段によってインパネ部骨格部材(インパネモジュールの主要部)からメンテナンス可能に分離される。これにより、インパネモジュール全体を車体から取り外すことなくバッテリのメンテナンスを行うことができる。
【0008】
このように、請求項1記載の車両用バッテリ搭載構造では、バッテリの車体への搭載、メンテナンスを容易に行うことができる。
【0009】
請求項2記載の発明に係る車両用バッテリ搭載構造は、請求項1記載の車両用バッテリ搭載構造において、前記バッテリ着脱手段によるバッテリ分離状態で、前記バッテリは、車載状態の前記インパネモジュールに対し車両後方に分離される。
【0010】
請求項2記載の車両用バッテリ搭載構造では、車両への搭載後におけるバッテリのメンテナンス時に該バッテリは、バッテリ着脱手段によってインパネ部骨格部材に対し車両後方側にメンテナンス可能に分離される。これにより、バッテリをインパネ部骨格部材に対し車室側に分離することができ、該バッテリのメンテナンスを一層容易に行うことができる。
【0011】
請求項3記載の発明に係る車両用バッテリ搭載構造は、請求項2記載の車両用バッテリ搭載構造において、前記車体のフロアには、前記バッテリを、車両前後方向にスライド可能に支持するバッテリガイド機構が設けられている。
【0012】
請求項3記載の車両用バッテリ搭載構造では、スライド機構に沿ってバッテリを車両前後方向にスライドさせることで、該バッテリの車体への搭載、メンテナンス時の分離を容易に行うことができる。これにより、車両搭載時には、インパネモジュールにバッテリがモジュール化された重量物をスライド機構に沿ってバッテリを車両前方に移動させて、該モジュールを精度良く車体に搭載することができる。また、バッテリのメンテナンス時には、スライド機構によってバッテリを車両後方に移動させて、該バッテリをインパネモジュール車体)から容易に分離することができる。
【0013】
請求項4記載の発明に係る車両用バッテリ搭載構造は、請求項3記載の車両用バッテリ搭載構造において、前記バッテリは、前記インストルメントパネル内における車幅方向中央部に配置されるようになっており、前記バッテリガイド機構は、コンソールボックスを車両前後方向にスライドさせる機能を兼ねる。
【0014】
請求項4記載の車両用バッテリ搭載構造では、バッテリ用のスライド機構がコンソールボックスのスライド機構を兼ねる。これにより、バッテリのメンテナンス時には、コンソールボックスを車両後方に移動させて、該バッテリのメンテナンススペースを確保することができる。また、簡単な構造で可動式コンソールボックスを実現することができる。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように本発明に係る車両用バッテリ搭載構造は、バッテリの車体への搭載、メンテナンスを容易に行うことができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係る車両用バッテリ搭載構造を構成するインパネモジュールの車体への搭載状態を模式的に示す斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係る車両用バッテリ搭載構造を構成するバッテリを車体への搭載後にインパネモジュールから分離した状態を示す斜視図である。
【図3】本発明の実施形態に係る車両用バッテリ搭載構造を構成するインパネモジュールの車体への搭載状態を模式的に示す側断面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る車両用バッテリ搭載構造を構成するバッテリを車体への搭載後にインパネモジュールから分離した状態を模式的に示す側断面図である。
【図5】本発明の実施形態に係る車両用バッテリ搭載構造を構成するスライド機構によるコンソールボックスのスライド状態を模式的に示す側断面図である。
【図6】本発明の実施形態に係る車両用バッテリ搭載構造が適用された自動車の車室内前部を示す斜視図である。
【図7】本発明の実施形態に係る車両用バッテリ搭載構造の要部を、インストルメントパネルを取り除いて模式的に示す背面図である。
【図8】本発明の実施形態に係る車両用バッテリ搭載構造を構成するスライド機構の一部を拡大して示す斜視図である。
【図9】本発明の実施形態に係る車両用バッテリ搭載構造を構成するスライド機構の一部を拡大して示す平面図である。
【図10】本発明の実施形態に係る車両用バッテリ搭載構造を構成するスライド機構の変形例を示す図7に対応する背面図である。
【図11】本発明の実施形態に係る車両用バッテリ搭載構造を構成するスライド機構の変形例を一部拡大して示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態に係る車両用バッテリ搭載構造10について、図1〜図9に基づいて説明する。なお、各図に適宜記す矢印FR、矢印UP、矢印Wは、車両用バッテリ搭載構造10が適用された自動車Aの前方向(進行方向)、上方向、車幅方向を示している。先ず、車両用バッテリ搭載構造10が適用された車内前部構造11の概略全体構成を説明し、次いで、車両用バッテリ搭載構造10について説明することとする。
【0018】
図6には、自動車Aの車内前部構造11が車室側から見た斜視図にて示されている。この図に示される如く、車内前部構造11は、車幅方向に離間して配置された左右一対のフロントピラー12を備えている。左右のフロントピラー12は、それぞれ車両上下方向に長手の車体骨格部材であり、車両下端が車両前後方向に沿って延在された車両下部の前後骨格部材であるロッカ14の車両前端に結合されると共に、車両上端が車両前後方向に沿って延在された車両上部の前後骨格部材であるルーフサイドレール(図示省略)の車両後端に結合されている。
【0019】
そして、車内前部構造11では、左右一対のフロントピラー12の下部を構成するフロントピラーロア12A間に、インパネ部16が配設されている。インパネ部16は、エンジンルームEと車室Cとを仕切るダッシュパネル18(図3、図4参照)と、インストルメントパネル20との間に形成された空間に、各種部品等を配設して構成されたモジュールとして捉えることができる。この実施形態に係るインパネ部16は、インストルメントパネル20を含んで構成されているものと捉えることができる。
【0020】
具体的には、インパネ部16は、図1及び図3に示される如く、インパネ部骨格部材としてのインパネリインフォースメント22を備えている。インパネリインフォースメント22は、左右のフロントピラーロア12Aの車両上部間を架け渡すインパネリインフォースメントアッパ24と、インパネリインフォースメントアッパ24の車幅方向略中央部で該車幅方向に離間して配置された左右一対のインパネリインフォースメントロア26とを含んで構成されている。
【0021】
左右のインパネリインフォースメントロア26は、図1に示される如く、それぞれの下端26Aが車体フロアFを構成するフロアトンネル30の側壁30Aに固定されて、センタクラスタ28(の内部骨格)を構成するように配置されている。この実施形態では、各インパネリインフォースメントロア26下端26Aとフロアトンネル30の側壁30Aとは、ボルトBによる締結構造とされている。
【0022】
そして、図1に示される如く、インパネ部16では、インパネリインフォースメントアッパ24に、ステアリング機構32が支持されている。ステアリング機構32は、図示しないステアリングコラムがインパネリインフォースメントアッパ24に固定されており、図示しないチルト機構によってステアリングホイール34の車両前後位置、車両上下位置を調整可能とされている。また、インパネ部16では、左右のインパネリインフォースメントロア26間にエアコンユニット36、オーディオユニット38が配設されている。
【0023】
さらに、この実施形態では、左右のインパネリインフォースメントロア26間におけるフロアトンネル30の上壁30B上に、バッテリ40が配設されている。バッテリ40は、自動車Aの駆動源(の1つ)となる図示しないモータに駆動用電力を供給するための蓄電池であって、高密度であることによって、左右のインパネリインフォースメントロア26間におけるエアコンユニット36の車両下方でかつオーディオユニット38の車両前方に配置される大きさで、十分な充電容量を有している。このバッテリ40を搭載した自動車Aは、電気自動車(外部電源によってバッテリ40に充電するもの、車載燃料電池等の内部電源によってバッテリ40に充電するものを含む)、又はモータの加えて駆動力発生用若しくは充電用の内燃機関を備えたハイブリッド自動車とされている。
【0024】
またさらに、図3に示される如く、インパネ部16を構成するエアコンユニット36は、ダッシュパネル18の上前部に固定的に設けられたカウル部42に開口したダクト孔44に連通されている。エアコンユニット36は、ダクト部36Aをダクト孔44に嵌合させることで、ダクト孔44(カウル部42)を通じて外気の取り入れ可能とされている。また、インパネ部16は、エアコンユニット36、オーディオユニット38、及びバッテリ40を含む電気系統のワイヤハーネス(図示省略)の先端に設けられたコネクタ部46を有する。コネクタ部46は、車両前方を向いて固定的に設けられており、ダッシュパネル18に固定的に設けられた待ち受けコネクタ48に対し機械的かつ電気的に接続されるようになっている。
【0025】
また、図2及び図6に示される如く、インパネ部16では、上記したインパネ部16の各要素が、上記したインストルメントパネル20によって車両後方(車室C)側から覆われている。インストルメントパネル20は、エアコンユニット36の空調エア吹出口36B等を車室Cに露出させている。インストルメントパネル20は、インパネリインフォースメントアッパ24に沿って車幅方向に延在するインパネアッパ部20Aの車幅方向中央部からセンタクラスタ28の意匠面を構成するセンタクラスタ部20Bが垂下されて、背面視で略「T」字状に形成されている。インストルメントパネル20には、小物等の収納部が適宜設けられ、必要に応じて収納部の蓋部も適宜設けられている。このインストルメントパネル20には、メーター部50が一体的に設けられている。また、図示は省略するが、インストルメントパネル20には、前席用の各種エアバッグ装置が一体化されている。換言すれば、メーター部50や各種エアバッグ装置もインパネ部16(後述するインパネモジュール56)の構成要素と把握することができる。
【0026】
さらに、車内前部構造11では、センタクラスタ28に対する車両後方であって、図示しない左右の座席間には、センタコンソール部52が設けられている。センタコンソール部52は、コンソールボックス54を有する。コンソールボックス54は、車両上向きに開口する図示しない収納部をコンソールリッド55で開閉可能に覆って構成されている。この実施形態では、センタコンソール部52は、車体フロアFのフロアトンネル30上に設けられている。
【0027】
(車両用バッテリ搭載構造の構成)
そして、以上説明したインパネ部16は、図1に実線にて示される如く、上記した各構成要素が車体への搭載前において該車体に対し一体的に搭載可能にモジュール化されたインパネモジュール56が、車体に搭載されることで構成されている。換言すれば、車体搭載前にはインパネモジュール56であったものが、車体に搭載されてインパネ部16(の主要部)を構成するようになっている。
【0028】
具体的には、インパネモジュール56は、インパネリインフォースメント22を骨格として、上記したステアリング機構32、エアコンユニット36、オーディオユニット38、バッテリ40、インストルメントパネル20、メーター部50、各種エアバッグ装置がモジュール化されて構成されている。インパネモジュール56の車体への搭載の際には、該インパネモジュール56をドア開口部から車室C内に進入させ、次いでインパネモジュール56を左右のフロントピラーロア12A間に移動させ、インパネリインフォースメントアッパ24の車幅方向両端24Aをフロントピラーロア12Aに固定すると共に、各インパネリインフォースメントロア26下端26Aをフロアトンネル30の側壁30Aに締結するようになっている。
【0029】
ここで、バッテリ40は、左右のインパネリインフォースメントロア26に対し、ボルトBによって取り外し可能に締結固定されている。したがって、この実施形態におけるバッテリ40固定用のボルトBが本発明におけるバッテリ着脱手段に相当する。この実施形態では、バッテリ40は、車幅方向に対向する平板状を成す一対のインパネリインフォースメントロア26に対し、該車幅方向からボルトBによって締結固定されている。
【0030】
また、この実施形態では、オーディオユニット38についても、車幅方向に対向する平板状を成す一対のインパネリインフォースメントロア26に対し、該車幅方向からボルトBによって締結固定されている。この実施形態におけるオーディオユニット38は、バッテリ40と一体に取り扱えるように、図示しない結合手段によってバッテリ40に結合されている。
【0031】
このオーディオユニット38は、図1及び図3に示される如く、操作パネルである車両後面をインストルメントパネル20におけるセンタクラスタ部20Bに形成された窓部20Cから、車両前後方向への全投影面積に亘って露出されている。これにより、車両用バッテリ搭載構造10では、ボルトBによる締結(拘束)状態が解消されたバッテリ40及びオーディオユニット38は、共に窓部20Cを通じて車両後方に取り出し可能とされている。換言すれば、車両用バッテリ搭載構造10では、バッテリ40は、インパネ部16(車両搭載状態のインパネモジュール56)の主要部であるインパネリインフォースメントアッパ24に対し、車両後方(車室C)に分離可能な構成とされている。
【0032】
さらに、図2に示される如く、センタクラスタ部20Bの側壁20Dには、バッテリ40のボルトBによる各インパネリインフォースメントロア2への締結部位を操作(ボルトBによる締結、締結解消の各作業)可能に露出させる操作窓20Eが形成されている。操作窓20Dは、カバー58にて開閉されるようになっている。
【0033】
そして、車両用バッテリ搭載構造10は、図1〜図4に示される如く、バッテリ40を車体に対する非搭載位置(後述する搭載準備位置、メンテナンス位置を含む)と車体に対する搭載位置との間で車両前後方向にスライド可能にガイドするバッテリガイド機構としてのスライド機構60を備えている。スライド機構60は、フロアトンネル30の上壁30Bに設けられたスライドレール62と、バッテリ40の下端部に設けられたスライダ64とを主要部として構成されている。
【0034】
図1及び図7に示される如く、この実施形態では、スライドレール62は、車幅方向に並列して一対(2本)設けられている。図8に示される如く、各スライドレール62は、フロアトンネル30の上壁30Bに固定された底壁62Aと、底壁62Aに対向する天壁62Bと、底壁62Aと天壁62Bの幅方向両端から連結する一対の側壁62Cと、天壁62B幅方向中央部に形成されたスリット62Dの縁部に沿って底壁62A側に垂下されると共に底壁62Aとの間に隙間が形成された係合壁62Eとを主要部として構成されている。
【0035】
一方、スライダ64は、スライドレール62に対応して左右一対設けられている。スライダ64は、上端においてバッテリ40の下面40A(図7参照)に固定された固定部64Aと、固定部64Aの下端から幅方向の両側に延設された平壁部64Bと、平壁部64Bの幅方向両端から立設された一対の側壁64Cを主要部として構成されている。この実施形態では、スライダ64は、一対の略「J」状部材を背中合わせに接合して構成されている。
【0036】
図3及び図4に示される如く、スライド機構60は、固定部64Aをスリット62Dに挿通させることで、平壁部64Bを底壁62Aと天壁62B(係合壁62E)との間に、一対の側壁64Cを対応する側壁62Cと係合壁62Eとの間に挿入されるように、スライドレール62に対しスライダ64を組み付ける構成とされている。これにより、スライド機構60では、スライドレール62に対するスライダ64の脱落が防止されつつ、スライダ64すなわちバッテリ40がスライドレール62すなわちフロアトンネル30に対し車両前後方向にガイドされる構成とされている。
【0037】
また、スライド機構60では、図8及び図9に示される如く、各スライドレール62の車両後端にスライダ64を組み付けるためのスライダ挿入部62Fが形成されている。スライダ挿入部62Fは、スリット62Dの車両後端部が徐々に該後端に向けて徐々に拡幅されるように天壁62Bの車両後端を切り欠くことで、スライダ64を容易に組み付け得る誘い込み形状として形成されている。この実施形態では、図8に示される如く、一対の側壁62Cについても、車両後端に向けて徐々に低位となるように形成されている。
【0038】
以上により、車両用バッテリ搭載構造10では、バッテリ40をインパネモジュール56の一要素として車体に搭載する際、及びバッテリ40をインパネリインフォースメントアッパ24から分離する際に、該バッテリ40をスライド機構60にガイドしつつ車両前後方向に移動させる構成とされている。そして、車両用バッテリ搭載構造10では、インパネモジュール56をスライド機構60にてガイドしつつ車両前方に移動させることで、エアコンユニット36のダクト部36Aがダクト孔44に嵌合され、コネクタ部46が待ち受けコネクタ48結合されるようになっている。
【0039】
また、図2に示される如く、バッテリ40(に結合されたオーディオユニット38)における車両上下方向の下部には、バッテリ40をインパネリインフォースメントアッパ24から分離させる際に用いる持ち手としてのレバー66が設けられている。レバー66は、例えば、図示しないハートカム機構等によるプッシュオープン機構を介して支持されており、オーディオユニット38内への格納状態から車両前方に押圧されることで車両後方に突出され、これにより把持可能な持ち手として機能する構成とされている。
【0040】
さらに、車両用バッテリ搭載構造10では、スライド機構60を構成するスライドレール62がコンソールボックス54を車両前後方向にスライド可能に支持する機能を兼ねている。すなわち、図5に示される如く、コンソールボックス54には、スライダ64と同じ寸法形状を有するスライダ54Aが取り付けられており、該スライダ54Aがスライドレール62に組み付けられている。これにより、コンソールボックス54は、車両前後方向にスライド可能な可動式センタコンソール部として構成されている。なお、コンソールボックス54には、図示は省略するが、車両前後方向の所望の位置で保持するためのストッパが設けられている。
【0041】
以上説明した車両用バッテリ搭載構造10では、バッテリ40のスライダ64をスライダ挿入部62F上に位置させる位置が、バッテリ40(インパネモジュール56)の搭載準備位置とされる。したがって、車両用バッテリ搭載構造10では、搭載準備位置にセットしたバッテリ40を(介してインパネモジュール56を)スライド機構60によってガイドさせつつ車両前方に移動させることで、該バッテリ40を車体への適正な搭載位置に導くことができるようになっている。また、車両用バッテリ搭載構造10では、車両搭載後のバッテリ40を、メンテナンスのためにインパネリインフォースメントロア26に対し車両後方に所定距離だけ分離させた位置(図2及び図4参照)が、該バッテリ40のメンテナンス位置とされる。メンテナンス位置は、スライダ64のスライドレール62によるガイド状態が維持される範囲内で設定され、搭載準備位置に対し車両前方に位置する。また、この実施形態では、バッテリ40がメンテナンス位置をとる場合には、図2に示される如くコンソールボックス54が標準位置(使用範囲内の位置)よりも車両後方に後退されるようになっている。
【0042】
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0043】
上記構成の車両用バッテリ搭載構造10では、インパネリインフォースメント22にエアコンユニット36、オーディオユニット38、バッテリ40等を組み付けて構成されたインパネモジュール56を、図1に示される如くモジュールとして一体的に車体に搭載する。インパネモジュール56では、オーディオユニット38、バッテリ40は、それぞれボルトBによって、取り外し可能にインパネリインフォースメントロア26に締結固定される。このようにバッテリ40を含むインパネモジュール56を車体に搭載する際には、該インパネモジュール56をドア開口部から車室C内に進入させる。
【0044】
そして、バッテリ40のスライダ64をスライダ挿入部62F上に車両上方からアクセスさせ、この搭載準備位置から、固定部64Aがスリット62Dに入り込むようにインパネモジュール56を車両前方に前進させる(図3の想像線参照)。固定部64Aがスライドレール62に組み付けられた後は、インパネモジュール56の質量をスライドレール62(フロアトンネル30)に支持させつつ、該インパネモジュール56には主に車両前方への移動力を付与する。
【0045】
すると、インパネモジュール56は、スライド機構60によってガイドされつつほぼ真直ぐに車両前方に移動され、図3に実線にて示される如く所定の搭載位置に至る。このインパネモジュール56の車両前方への移動に伴って、ダクト孔44にはエアコンユニット36のダクト部36Aが嵌合されると共に、待ち受けコネクタ48にはインパネモジュール56のコネクタ部46が結合される。
【0046】
そして、インパネリインフォースメントアッパ24の車幅方向両端24Aを対応するフロントピラーロア12AにボルトB等によって固定すると共に、各インパネリインフォースメントロア26下端26Aを対応するフロアトンネル30の側壁30AにボルトB等によって固定することで、インパネモジュール56の搭載が完了する。次いで、スライド機構60のスライドレール62にコンソールボックス54のスライダ54Aを組み付け、コンソールボックス54を適宜位置にセットすることで、該コンソールボックス54の組付が完了する。以上により、図6に示される如き車内前部構造11が形成される。
【0047】
一方、インパネモジュール56の車体への搭載後におけるバッテリ40のメンテナンスの際には、図2に示される如く、インストルメントパネル20のカバー58を取り外し、操作窓20Eを通じてボルトBを取り外し、バッテリ40を、オーディオユニット38を左右のインパネリインフォースメントロア26に対する非拘束状態とする。次いで、オーディオユニット38の車両下部からレバー66を突出させ、該レバー66を把持してオーディオユニット38と共にバッテリ40を車室内に引き出す。このバッテリ40をメンテナンス位置にまで移動して該メンテナンス位置に保持し、該バッテリ40のメンテナンスを行う。
【0048】
このメンテナンス後は、バッテリ40をオーディオユニット38と共に搭載位置に復帰させ、ボルトBによる締結にてバッテリ40、オーディオユニット38を各インパネリインフォースメントロア26に固定する。次いで、操作窓20Eをカバー58にて閉止して、バッテリ40のメンテナンスを完了する。
【0049】
以上説明したように、車両用バッテリ搭載構造10では、バッテリ40がインパネリインフォースメント22のインパネリインフォースメントロア26に、操作窓20Eを通じて取り外し可能にボルトB固定されている。このため、バッテリ40を、インパネモジュール56にモジュール化してインパネ部16の構成部品と共に車体に組み付けることができる。これにより、バッテリの車体への搭載性が良好である。
【0050】
一方、バッテリ40をメンテナンスする際には、バッテリ40のボルトBによるインパネリインフォースメントロア26に対する拘束を解消することで、該バッテリ40をインパネリインフォースメント22から分離して車室C内のメンテナンス位置に移動することができる。これにより、インパネモジュール56の構成要素(部品)の全体を車体から取り外すことなく、バッテリ40をメンテナンス可能なメンテナンス位置に移動し、そのメンテナンスを行うことができる。
【0051】
しかも、バッテリ40は、インパネリインフォースメント22に対し車両後方分離されて車室C内にメンテナンス位置が設定されているため、例えばエンジンルームや車体フロアFの下方等にメンテナンス位置が設定される構成と比較して、広いスペースでバッテリ40のメンテナンスを容易に行うことができる。
【0052】
このように、本発明に実施形態に係る車両用バッテリ搭載構造10では、バッテリ40の車体への搭載、メンテナンスを容易に行うことができる。
【0053】
またここで、車両用バッテリ搭載構造10では、車体フロアFのフロアトンネル30にスライドレール62が設けられているため、スライダ64を有するバッテリ40の車体への搭載、メンテナンス時の分離を容易に行うことができる。これにより、バッテリ40の車両搭載時には、バッテリ40を含んだ重量物であるインパネモジュール56を、スライドレール62に沿ってバッテリを車両前方に移動させて、精度良く車体に搭載することができる。このため、車両用バッテリ搭載構造10では、インパネモジュール56の車体への搭載動作に伴ってダクト孔44にエアコンユニット36のダクト部36Aを嵌合させると共に、待ち受けコネクタ48にコネクタ部46を結合させることができる。
【0054】
また、バッテリのメンテナンス時には、スライドレール62によってバッテリ40を支持(ガイド)させつつ、単体にあっても重量物であるバッテリ40をメンテナンス位置に容易に移動させることができる。すなわち、バッテリ40のメンテナンスに伴う作業が一層容易化される。
【0055】
さらに、車両用バッテリ搭載構造10では、バッテリ40用のスライド機構60のスライドレール62が、スライダ54Aとでコンソールボックス54のスライド機構を構成している。すなわち、スライドレール62を有効に利用してコンソールボックス54の可動構造を実現することができる。これにより、乗員の体格やシートポジションに応じてコンソールボックス54の車両前後位置を調整することができ、自動車Aの商品性の向上に寄与する。
【0056】
また、車両用バッテリ搭載構造10では、コンソールボックス54をスライドレール62に沿って車両後方(バッテリ40のメンテナンス位置に対する後方)に移動させることで、限られた車室Cの空間内でバッテリ40のメンテナンスペースを確保することができる。
【0057】
なお、上記した実施形態では、スライド機構60のスライドレール62がフロアトンネル30の上壁30B上にスライドレール62を固定した例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、図10及び図11に示される如く、フロアトンネル30内に設けられたトンネルリインフォースメント70を利用して、スライド機構60を構成するスライドレール72を設けた構成としても良い。
【0058】
具体的には、フロアトンネル30内における左右の側壁30Aと上壁30Bとの各角部には、それぞれ車両前後方向に延在する閉断面構造の骨格部材であるトンネルリインフォースメント70が接合されている。トンネルリインフォースメント70は、単独で閉断面構造を成しても良く、フロアトンネル30の上記角部を利用して閉断面構造を成しても良い。図10及び図11の例では、前者が採用されている。そして、トンネルリインフォースメント70におけるスライドレール72を構成する部分の天壁72A(及び上壁30B)には、スリット72Bが形成され、該スリット72Bの縁部からは係合壁72Cが垂下されている。
【0059】
また、スライドレール72の車両後端には、スライダ64を組み付けるためのスライダ挿入部72Dが形成されている。スライダ挿入部72Dは、天壁72Aにおける係合壁72Cに対する車両後方部分を切り抜いてスリット72Bの後端に連通された、車両上方に開口する孔として形成されている。この変形例では、この孔であるスライダ挿入部72Dに挿入されたスライダ64を、固定部64Aがスリット72Bに進入するように車両前方に移動させることで、スライダ64がスライドレール72に組み付けられるようになっている。また、同様にしてスライダ54Aがスライドレール72に組み付けられるようになっている。
【0060】
以上説明した変形例に係るスライドレール72をスライドレール62に代えて有するスライド機構60では、既存部材のトンネルリインフォースメント70を利用してスライドレール72が形成されているので、部品点数の削減を図りながらスライド機構60を得ることができる。また、フロアトンネル30内にスライド機構60の主要部が配置されるので、車室内の空間を有効に利用することが可能になる。
【0061】
なお、上記した実施形態及び変形例では、ステアリング機構32、エアコンユニット36、オーディオユニット38、バッテリ40、メーター部50、各種エアバッグ装置を含む例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、メーター部50、各種エアバッグ装置、ステアリング機構32、エアコンユニット36及びオーディオユニット38の一部若しくは全部に代えて、又はこれらの一部若しくは全部と共に、他の部品等がインパネモジュール56を構成するようにしても良い。したがって例えば、インパネモジュール56は、操作ペダル(ブレーキ、アクセル等のペダル)などがモジュール化された構成とすることができる。
【0062】
また、上記した実施形態及び変形例では、インパネモジュール56(インパネ部16)の主要部を成すインパネリインフォースメント22がインパネリインフォースメントアッパ24にインパネリインフォースメントロア26を接合して成る例を示したが、本発明はこれに限定されず、各種構造のインパネリインフォースメント22を採用し得る。
【0063】
さらに、上記した実施形態及び変形例では、バッテリ40がフロアトンネル30上に配置された例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、フロアトンネル30を有しない車両においてはバッテリ40を車体フロアF上に配置する構成としても良く、また例えば、バッテリ40を車幅方向中央から助手席側等へオフセットして(フロアトンネル30以外の位置に)配置するようにしても良い。また、本発明は、スライド機構60が車幅方向に並列された一対のスライドレール62を有する構成に限られることはなく、例えば、スライド機構60が単一の又は3本以上並列されたスライドレール62を有して構成されても良い。さらに、本発明は、1つのスライドレール62に対し1つのスライダ64が組み付けられる構成に限定されることはない。したがって例えば、左右一対のスライドレール62にそれぞれ複数のスライダ64が組み付けられるように、左右複数対のスライダ64を設けた構成としても良い。また、本発明におけるスライド機構60は、摺動によるスライド機構に限定されることはなく、例えば、スライドレール62及びスライダ64の何れか一方に、相手方に転がり接触するローラ等を設けた構成としても良い。
【0064】
またさらに、上記した実施形態及び変形例では、スライド機構60を利用してコンソールボックス54の可動機構を構成した例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、コンソールボックス54が車両前後方向の所定位置に保持される構成としても良い。この構成においてバッテリ40のメンテナンススペースを確保するために、例えば、コンソールボックス54は車両上方に取り外し可能に構成される。
【0065】
また、上記した実施形態及び変形例では、本発明におけるバッテリ着脱手段がボルトBである例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、クランプやベルトによる保持等、各種の離脱(拘束解除)可能な結合手段を本発明におけるバッテリ着脱手段として採用することができる。
【符号の説明】
【0066】
10 車両用バッテリ搭載構造
16 インパネ部(インパネモジュール)
20 インストルメントパネル
22 インパネリインフォースメント(インパネ骨格部材)
30 フロアトンネル(フロア)
40 バッテリ
54 コンソールボックス
56 インパネモジュール
60 スライド機構(バッテリガイド機構)
A 自動車(車両)
B ボルト(バッテリ着脱手段)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のインストルメントパネル内に配置され、該車両の駆動用の電力を充電、放電するためのバッテリと、
インパネ部骨格部材を含んで構成されたインパネモジュールと、
前記バッテリを前記インパネモジュールに対して一体に車体に搭載可能に結合したバッテリモジュール化状態と、前記バッテリを前記車体に固定された前記インパネ部骨格部材からメンテナンス可能に分離したバッテリ分離状態とをとり得るように、該バッテリとインパネモジュールとを離脱可能に結合するバッテリ着脱手段と、
を備えた車両用バッテリ搭載構造。
【請求項2】
前記バッテリ着脱手段によるバッテリ分離状態で、前記バッテリは、車載状態の前記インパネモジュールに対し車両後方に分離される請求項1記載の車両用バッテリ搭載構造。
【請求項3】
前記車体のフロアには、前記バッテリを、車両前後方向にスライド可能に支持するバッテリガイド機構が設けられている請求項2記載の車両用バッテリ搭載構造。
【請求項4】
前記バッテリは、前記インストルメントパネル内における車幅方向中央部に配置されるようになっており、
前記バッテリガイド機構は、コンソールボックスを車両前後方向にスライドさせる機能を兼ねる請求項3記載の車両用バッテリ搭載構造。
【請求項1】
車両のインストルメントパネル内に配置され、該車両の駆動用の電力を充電、放電するためのバッテリと、
インパネ部骨格部材を含んで構成されたインパネモジュールと、
前記バッテリを前記インパネモジュールに対して一体に車体に搭載可能に結合したバッテリモジュール化状態と、前記バッテリを前記車体に固定された前記インパネ部骨格部材からメンテナンス可能に分離したバッテリ分離状態とをとり得るように、該バッテリとインパネモジュールとを離脱可能に結合するバッテリ着脱手段と、
を備えた車両用バッテリ搭載構造。
【請求項2】
前記バッテリ着脱手段によるバッテリ分離状態で、前記バッテリは、車載状態の前記インパネモジュールに対し車両後方に分離される請求項1記載の車両用バッテリ搭載構造。
【請求項3】
前記車体のフロアには、前記バッテリを、車両前後方向にスライド可能に支持するバッテリガイド機構が設けられている請求項2記載の車両用バッテリ搭載構造。
【請求項4】
前記バッテリは、前記インストルメントパネル内における車幅方向中央部に配置されるようになっており、
前記バッテリガイド機構は、コンソールボックスを車両前後方向にスライドさせる機能を兼ねる請求項3記載の車両用バッテリ搭載構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−179866(P2010−179866A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−27075(P2009−27075)
【出願日】平成21年2月9日(2009.2.9)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月9日(2009.2.9)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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