説明

車両用フェンダーライナ

【課題】立体的な形状に容易に成形することができるとともに、高い吸音性能と優れた着氷防止性を発揮することができるように構成された車両用フェンダーライナを提供する。
【解決手段】車両用の外装用吸音材としてのフェンダーライナは、吸音作用を有する基材層11を備えている。この基材層11は、主繊維12とその主繊維12よりも低い融点を有するバインダー繊維13とを交絡させた繊維ウェブからなるシートを製造し、このシート状のウェブの上にLDPE樹脂からなる耐水性保護膜15を一体的に設け、その後、加熱プレス成形することにより立体的にフェンダーライナの形状に成形される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体のタイヤハウス内面に装着されて、車両の走行時に跳ね上げられた小石等の異物が車体に衝突することによる衝撃を吸収して衝撃音を抑えるとともに、付着した氷が剥離し易いフェンダーライナ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、フェンダーライナとしては、多数の短繊維を互いに絡合させた不織布を備えたものが知られている(特許文献1)。このように、不織布で形成されたフェンダーライナは、互いに絡合した繊維間に形成された無数の空隙が異物の衝突による衝撃を吸収するため、耐衝撃性や防音性(特に吸音性)を有するものの、遮音性能が低く、防音性能は十分ではない。さらに、フェンダーライナに付着した水が内部にまで浸透するため、水が凍った場合、氷が内部にまで成長して剥離し難くなるという問題もある。
【0003】
一方、タイヤが跳ね上げた小石等の衝突、及び水溜まり走行時の泥水等の飛散、衝突などからフェンダーを保護するため、高密度ポリエチレン(HDPE)樹脂を用いた成形品やポリエステル繊維に硬質スチレン−ブタジエンゴムを配合した硬質繊維板を用いた成形品等が知られている(特許文献2)。この硬質繊維板を用いたフェンダーライナは、小石等の衝突によるフェンダーライナの変形、破損などを抑制できる機能で不織布のものに比較して優れている。しかし、硬質繊維板の樹脂は吸音性能を有さず、遮音性能が低い。従って、エンジンノイズ及びロードノイズが十分に低減されない。さらに、HDPE樹脂を用いた成形品や硬質繊維板では、小石等の衝突及び泥水等の飛散、衝突などの衝撃を、人に聞こえ易い周波数域の音に変えるため、防音性能が低い。
【0004】
さらに、不織布で形成された防音緩衝材表面を耐水性フィルムで被覆することにより、耐水性及び耐異物付着性の向上を図ったフェンダーライナが知られている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−112661号公報
【特許文献2】特開2000−264255号公報
【特許文献3】特開2002−348767号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
すなわち、特許文献1に示すようなものでは、耐衝撃性や防音性で樹脂成形品に比較して優れているが、着氷防止性に劣るという問題もある。
【0007】
一方、特許文献2に示すようなものでは、小石等の衝突によるフェンダーライナの変形、破損などでは不織布よりも優れるが、エンジンノイズ及びロードノイズが十分に低減されない。
【0008】
そして、特許文献3に示すものは、吸音作用を有する不織布と撥水性を有する耐水性の樹脂フィルムを備えたフェンダーライナであって、主繊維とその主繊維よりも低い融点を有するバインダー繊維とを交絡させて形成した不織布製の繊維ウェブの表面に高融点のオレフィン系の樹脂からなる樹脂フィルムを重ねておいて、一緒にプレス成形することにより、不織布に該樹脂フィルムを接着するとともに成形するようになっている。
【0009】
ところが、不織布と樹脂フィルムの積層体を所望とする立体形状に成形するために加熱プレス成形する際に、積層体の両者を接着するようにしているので、プレス成形時の熱で樹脂フィルムが溶融破壊されないように高い融点(不織布の主繊維と同等或いはそれ以上の融点)を有する樹脂としている。そのために、フェンダーライナの形状に成形する際に樹脂フィルムの流動性が不足して部分的にフィルムが薄くなり、深絞り部分などでは場合によっては樹脂フィルムが裂ける可能性があった。
【0010】
本発明は、上記のような従来技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは、立体的な形状に容易に成形することができるとともに、高い吸音性能と優れた着氷防止性を発揮することができるように構成された車両用フェンダーライナを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1の発明は、吸音作用を有する基材層と、その表面に設けられた耐水性保護膜とを備えた車両用フェンダーライナであって、前記基材層は、主繊維と、その主繊維よりも低い融点を有するバインダー繊維とを交絡させた繊維ウェブからなり、前記耐水性保護膜としてLDPE樹脂が一体に設けられていることを特徴とする。
【0012】
請求項2の発明は、請求項1に記載の車両用フェンダーライナにおいて、前記LDPE樹脂の耐水性保護膜が、前記基材層の該バインダー繊維と同レベルの軟化点を有することを特徴とする。
【0013】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載の車両用フェンダーライナにおいて、基材層の目付量が300〜1000g/mであって、主繊維及びバインダー繊維の割合が、主繊維:バインダー繊維=70重量%:30重量%〜50重量%:50重量%であり、耐水性保護膜の目付量が100g/m〜400g/mであることを特徴とする。
【0014】
請求項4の発明は、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の車両用フェンダーライナの製造方法であって、前記主繊維とバインダー繊維とからなる、前記基材層の繊維ウェブを製造し、該繊維ウェブの表面にLDPE樹脂からなる溶融樹脂を被覆し、ローラで加圧してLDPE樹脂からなる耐水性保護膜を該基材層に接着した積層シートを形成し、該積層シートを加熱成形して車両用フェンダーライナを形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
上記請求項1に記載の発明によれば、基材層では、主繊維とバインダー繊維とからなる繊維ウェブによって取り囲まれた空間としてのセルを極めて微小かつ多数形成させることが容易となり、吸音効果を向上出来る。さらに、基材層の表面に耐水性保護膜を一体的に設けることによって着氷防止機能を付与し、フェンダーライナの吸音性能を高めている。
【0016】
さらに、この耐水性保護膜は、跳ねた石等による表面の耐損傷性が優れることや遮音性に優れる。それとともに、泥、ゴミ、埃等が基材層の略網目状構造内に侵入するのを防止する機能を備える。その結果、立体的な形状に容易に成形することができるとともに、高い吸音効果を長期間に亘って維持することができる。特に、耐水性保護膜のLDPE樹脂が比較的柔らかくて伸び性が高く、耐衝撃性、耐損傷性に優れ、かつ成形性が良いので、耐水性保護膜を基材層と一緒にプレス成形する場合に、基材層の成形に追従して立体的な形状(立体的な3次元形状)に確実に成形することができる。
【0017】
上記請求項2の発明によれば、LDPE樹脂が溶融するので、成形性が良く、基材層への追従性に優れる。その結果、立体的な形状に確実に成形できるとともに、成形時にこの耐水性保護膜が部分的に薄くなったり、極端な場合には一部なくなったりすることを防止できる。
【0018】
上記請求項3に記載の発明によれば、吸音性能を高めるために良好な略網目状構造を有する基材層と耐水性保護膜とを確実に接着できるとともに、立体形状を容易に成形することができる。耐水性保護膜で耐衝撃性及び着氷防止機能が維持され、基材層の中により微少かつ多数のセルを形成させることで吸音性能を高めることができる。
【0019】
上記請求項4に記載の発明によれば、フェンダーライナの立体的な形状に容易に成形することができるとともに、高い吸音効果を長期間に亘って維持することができる。特に、耐水性保護膜のLDPE樹脂が比較的柔らかくて伸び性が高く、耐衝撃性、耐損傷性に優れ、かつ成形性が良いので、耐水性保護膜を基材層と一緒にプレス成形する場合に、基材層の成形に追従して立体的な形状(立体的な3次元形状)に確実に成形することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態に係るフェンダーライナを取り付けた車両の前部を示す要部側面図である。
【図2】図1のA−A線拡大断面図であり、フェンダーライナ及びその周辺部分を示す。
【図3】フェンダーライナの部分拡大図である。
【図4】フェンダーライナの製造装置を模式的に示す図である。
【図5】実施例1〜4及び比較例1について、1/3オクターブバンド毎の周波数帯域(単位:Hz)に対する残響室法吸音率(単位:%)を示す図である。
【図6】実施例1,5及び6について、1/3オクターブバンド毎の周波数帯域(単位:Hz)に対する残響室法吸音率(単位:%)を示すグラフである。
【図7】石跳ね衝撃音測定装置の模式図である。
【図8】図7に示す石跳ね衝撃音測定装置によって測定した結果をA特性フィルターで周波数分析しそれを500Hz〜10kHzのオーバーオール値に計算した結果を示す図である。
【図9】図8で求めた石跳ね衝撃音の結果と曲げ強度の測定結果との関係を示す図である。
【図10】着氷力測定装置を模式的に示す斜視図である。
【図11】図10の着氷力測定装置による測定結果と、飛び石試験法によって求めた表面状態のテスト結果を示す図である。
【図12】伸び率を測定する測定装置を模式的に示す図である。
【図13】図12で測定した伸び率を示す図である。
【図14】図12で測定した伸び率と荷重との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は本発明の実施形態に係るフェンダーライナを取り付けた車両の前部を示す要部側面図、図2は図1のA−A線拡大断面図であり、フェンダーライナ及びその周辺部分を示す。図3はフェンダーライナの部分拡大図、図4はフェンダーライナの製造装置を模式的に示す図である。
【0022】
車両1には、通常、前部の左右と後部の左右とにタイヤ2が配置され、これらのタイヤ2の上方にそれぞれホイールハウス3が配置されている。ホイールハウス3は、ホイールハウスパネルやホイールハウジングとも呼ばれ、車体の一部を構成する。ホイールハウス3は、金属製とされ、タイヤ2の上方を覆うような形状に成形されている。ホイールハウス3におけるタイヤ2側の面は車両の外側の面となっており、この外側の面を覆うようにフェンダーライナ10がホイールハウス3に取り付けられる。フェンダーライナ10は、車両1の走行中にタイヤ2が路面から跳ね上げる小石や泥水等によってポディパネルが傷つけられることを防止し、タイヤ2と路面とによって発生するロードノイズ等の騒音を低減させるための車両1の外装部品とされている。図1及び図2に示すように、フェンダーライナ10は、ホイールハウス3に沿う形状に成形され、ホイールハウス3にファスナー等(図示省略)で取り付けられている。
【0023】
次に、実施形態1のフェンダーライナ10の概略を説明する。図2及び図3に示すように、フェンダーライナ10は、ホイールハウス3に沿う形状に成形されかつホイールハウス3側に配置された基材層11と、タイヤ2側に配置された耐水性保護膜15とを備えている。
【0024】
前記基材層11は不織布からなる。耐水性保護膜15は、耐水性の素材で形成され、基材層11におけるホイールハウス3に面する側とは反対側の正面11aに積層されている。一方、ホイールハウス3に対向する、基材層11の背面11bには、基本的には何も積層されていない。背面11bとホイールハウス3とには、隙間tが設けられている。
【0025】
図3に示すように、不織布からなる基材層11は、主繊維12と、加熱溶融する合成繊維からなるバインダー繊維13とが交絡しながら融着された略網目状構造を有するように構成されている。すなわち、バインダー繊維13が主繊維12同士を交絡した状態で融着硬化させるように構成されていることから、フェンダーライナ10を立体的な3次元形状に容易かつ確実に成形させることができる上に、その形状を確実に保持させることができる。さらに、前記バインダー繊維13は、主繊維12とともに基材層11を構成する交絡繊維として繊維形状をとどめながら存在していることから、基材層11の内部に微小なセルをより多く形成させるのに大いに役立っている。その結果、基材層11の吸音性能を高めることができるように構成された構造体(略網目状構造)を容易に形成させることができる。特に、基材層11は、複数の繊維によって取り囲まれた空間としての微小なセルの集合体として存在しており、主としてそれらセルにより吸音効果が発揮されるようになっている。
【0026】
主繊維12は、不織布を構成する主要な繊維であり、天然繊維又は化学繊維のいずれであっても使用可能であるが、フェンダーライナ10の製造工程における加工容易性を高めるために、ナイロン等のポリアミド(PA)繊維、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル繊維等の合成繊維により構成されるのが好ましい。
【0027】
この主繊維12の繊維径としては、フェンダーライナ10の製造工程における加工安定性を高めるために、2T(デシテックス:dtex)〜17T、特に4T〜10Tであるのが好ましい。この主繊維12の繊維径が2T未満の場合には、強度が低下するおそれがある。逆に17Tを越える場合には、基材層11全体に占める主繊維12の体積の割合が著しく容易に高められることから、多数のセルを形成させることができなくなる。
【0028】
また、この主繊維12の繊維長としては、フェンダーライナ10の製造工程における加工安定性を高めるために、10〜100mmの範囲の短繊維であるのが好ましい。さらに、微小なセルをより多く形成させることができることから、機械捲縮等を有するように構成するのが好ましい。
【0029】
バインダー繊維13は、前記主繊維12とともに基材層11を構成する主要な繊維であり、前記主繊維12よりも低い融点を有する可溶性ポリマー単体、或いは可溶性ポリマーを鞘部とする芯鞘構造により構成されていることが好ましい。このバインダー繊維13としては、基材層11の内部に多数のセルを容易に形成させることができることから、複合繊維よりも細く形成するのが容易な可溶性ポリマー単体からなる合成繊維が好適に使用され、ポリエステル繊維、特に、融点が100〜130℃の低融点のPET繊維が良好な成形性を有することと入手容易かつ安価であることから、最も好適に使用される。さらに、このポリエステル繊維は、リサイクル性に優れているという利点もある。
【0030】
バインダー繊維13としては、熱可塑性樹脂の繊維、熱可塑性樹脂に充てん材等の添加剤を添加した繊維等を用いることができ、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン、PET等のポリエステル、ポリアミド、等の熱可塑性樹脂からなる繊維、これらの熱可塑性樹脂を変性させて融点を調整した熱可塑性樹脂からなる繊維、これらの熱可塑性樹脂に充てん材等の添加剤を添加した材質の繊維等を用いることができる。例えば、バインダー繊維13に主繊維12と相溶性のある繊維を用いると、主繊維12とバインダー繊維13との接着性が良好になり、基材層11に十分な形状保持性を付与することができる。
【0031】
また、バインダー繊維13に使用可能な繊維を鞘部とし、該鞘部よりも融点の高い芯部の外周を該鞘部で囲んだ芯鞘構造の繊維をバインダー繊維13として用いてもよい。この場合、芯部には、主繊維12に使用可能な繊維を用いることができる。芯部と鞘部の組み合わせは、PPとPE、PETとPE、高融点のPETと低融点のPET等とすることができる。芯鞘構造を有する繊維をバインダー繊維13に用いると、加熱時に鞘部のみが溶融して芯部が溶融しないため、立体的に成形されるフェンダーライナ10の形状保持性を向上させることができる。尚、これら芯鞘構造の場合には、鞘部を構成する繊維の融点は100〜130℃とすることが好ましく、芯部を構成する繊維は、主繊維12よりも低い融点を有している必要はなく、むしろ主繊維12と同等或いはそれ以上の融点を有するものであるのが好ましい。
【0032】
このバインダー繊維13の繊維径としては、フェンダーライナ10の製造工程における加工安定性を高めるために、2T〜17T、特に4T〜10Tであるのが好ましい。このバインダー繊維13の繊維径が2T未満の場合には、強度が低下するおそれがある。また、プレス成形時に溶融して繊維としての形状をとどめることができず、セルの形成に寄与しなくなるおそれもある。逆に17Tを越える場合には、基材層11全体に占めるバインダー繊維13の体積の割合が著しく容易に高められることから、多数のセルを形成させることができない。
【0033】
また、このバインダー繊維13の繊維長としては、フェンダーライナ10の製造工程における加工安定性を高めるために、10〜100mmの範囲の短繊維であるのが好ましい。さらに、微小なセルをより多く形成させることができることから、機械捲縮等を有するように構成するのが好ましい。
【0034】
一方、基材層11の厚さ(成形後)としては、好ましくは1〜6mm、より好ましくは2〜4mmである。この基材層11の厚さが1mm未満の場合には、フェンダーライナ10の剛性確保及び形状保持性を十分に得ることができないこと、多数のセルを形成させることができず充分な吸音効果を発揮させることができない。逆に6mmを越える場合にはフェンダーライナ10の軽量化ができない及びコストアップになるためである。
【0035】
また、基材層11の目付量としては、成形性や剛性を確保する上で300g/m以上必要であり、高くし過ぎるとコストアップになり重量アップになるので、1000g/m以下とすることが好ましい。また、耐水性保護膜の浸入し過ぎを防止する上からも、300g/m以上とすることが好ましい。特に、400〜700g/mとすることが好ましい。
【0036】
また、基材層11中に含まれるバインダー繊維13の含有量としては、好ましくは30〜50重量%、より好ましくは35〜45重量%である。この基材層11中のバインダー繊維13の含有量が30重量%未満の場合には、立体的な形状に成形されたフェンダーライナ10の形態安定性を充分に維持することができない。逆に50重量%を超える場合には、基材層11の強度維持に重要な役割をする主繊維12の含有量が相対的に低下し、フェンダーライナ10の強度及び耐久性を充分に高めることができない。
【0037】
耐水性保護膜15は、LDPE(低密度ポリエチレン)樹脂により構成されている。耐水性保護膜15としてLDPE樹脂とする理由は後で詳細に説明するが、フェンダーライナ10が立体的な形状に容易に成形されることができるとともに、フェンダーライナ10に高い吸音性能と優れた着氷防止性を両立して発揮するためである。そして、この耐水性保護膜15は、走行時のロードノイズを吸音するとともに、タイヤ2によって路面から撒き散らされた雨水や泥水を撥水して、フェンダーライナ10の外面が汚れるのを抑えることができるとともに着氷を防止できる。
【0038】
この耐水性保護膜15の目付量としては、100g/m〜400g/m、好ましくは200g/m〜300g/mである。100g/m未満では、耐水性保護膜15の層が不足し、部分的に薄い部分ができ、場合によっては層自体が存在しない部分が出る可能性が高くなる。一方、400g/mを超えると、吸音効果が損なわれる可能性が高くなる。
【0039】
この耐水性保護膜15の成形後の厚さは、50μm〜500μm、特に60μm〜400μmとすることが好ましい。50μm未満の場合には、耐水性保護膜が非常に破れやすくなる。逆に500μmを越える場合には、高い膜振動吸音が誘発できず、ロードノイズの吸音効果が損なわれるおそれがある。
【0040】
耐水性保護膜15の特徴を以下に述べる。耐水性保護膜15をLDPE樹脂とする理由は、LDPE樹脂が非通気性と非付着性(物が付着し難い)を兼ね備えるとともに、比較的柔らかくて伸び性が高く、耐衝撃性、耐損傷性に優れ、かつ成形性が良いからである。
【0041】
以下に、耐水性保護膜15、すなわちLDPE樹脂の特徴を説明する。耐水性保護膜15の融点は、100〜130℃、特に105〜120℃とすることが好ましい。融点が高過ぎると、加熱してプレス成形するときに、流動性が不足し、基材層11の成形方向に耐水性保護膜15が追従できず、成形性が悪くなるからであり、逆に融点が低過ぎると、溶け過ぎて基材層11の中に染み込み、耐水性保護膜15がなくなる可能性が増えるからである。特に、上記温度範囲とすることで、加熱してプレス成形する際に、耐水性保護膜15が基材層11内のバインダー繊維13と同様に溶融して、基材層11の成形時に基材層11に追従して成形され易くなるので、好適である。耐水性保護膜15のMI値は、1〜100g/10min、特に3〜50g/10minとすることが好ましい。MI値が高いと、基材層に染み込み易くなり、逆に低いと、接着力が不足するので、上記範囲とすることが好ましい。耐水性保護膜15の軟化点は80℃〜100℃とすることが好ましい。
【0042】
上記フェンダーライナ10の製造方法について以下に記載する。
【0043】
まず、主繊維12とバインダー繊維13とを用いて乾式不織布の繊維ウェブ14(図4参照)をシート状に形成した後、その繊維ウェブ14中の繊維12,13同士をニードルパンチにより互いに絡ませて交絡させる。次に、図4に示すように、このシート状の繊維ウェブ14が製造装置50のローラ51に運ばれる。シート状の繊維ウェブ14を圧縮するローラ51の上方に耐水性保護膜用の容器52が設けられている。この容器52内で、耐水性保護膜の素材は、容器52内で素材の融点よりも約20℃程度高い温度に加熱維持され、容器52の出口53から溶融状態の高粘性素材となって落下し、繊維ウェブ14の表面に被覆される。そして、繊維ウェブ14の表面に素材が重なった状態で、直ぐにローラ51で両者を圧着させて接合させる。これによって、繊維ウェブ14からなる基材層11の表面にLDPE樹脂からなる耐水性保護膜15が接着された積層シート材が形成される。
【0044】
特に、このようにして積層シートを形成する場合、耐水性保護膜15の流体の一部が基材層のセル内に染み込むが、基材層11の密度(目付量)と耐水性保護膜15のMI値や融点、加熱条件等を適正に設定することによって、多く染み込まないように設定できる。それによって、耐水性保護膜15が基材層11に強固に接着されるとともに、加熱して溶融させてプレス成形しても耐水性保護膜15が基材層11の表面上に確実に残るようになっている。
【0045】
次に、加熱してプレス成形する工程を説明する。上記で製造した積層シート材を遠赤外線ヒータ等(図示省略)で加熱してプレス金型に搬入する。この時に加熱温度は、バインダー繊維13を構成する可溶性ポリマー単体の融点以上の温度で行われ、主繊維12が加熱溶融する繊維により構成されている場合には、その主繊維12の融点未満の温度で行われる。尚、耐水性保護膜15はバインダー繊維13と同様な融点となっているので、加熱時に耐水性保護膜15も、バインダー繊維13と同様に溶融状態となって流動性が高くなっている。耐水性保護膜15が基材層11中のバインダー繊維13と同様に溶融されることでプレス成形時の成形性が高められ、このことで、プレス成形時に耐水性保護膜15が極端に薄くなる部分を防止している。かつ溶融した耐水性保護膜15が基材層11の中に浸透しないように、基材層11のセルの大きさや目付量が設定されており、かつこの加熱プレス以前に基材層11の表面に耐水性保護膜15の一部が既に被覆浸透しているので、さらに基材層11中に染み込んで耐水性保護膜15がなくならないようになっている。
【0046】
尚、上記実施形態では、基材層11と耐水性保護膜15の積層シートをプレス金型にセットする前に別の加熱手段で予備加熱するようにしているが、加熱されたプレス金型で成形し、別の加熱手段を省略するようにしても良い。
【0047】
尚、加熱温度は、基材層側が180℃〜220℃、耐水性保護膜側が130℃〜220℃で、時間は20秒〜2分、特に30秒〜60秒とすることが好ましい。特に、温度が低すぎると成形性が悪く、逆に高すぎると耐水性保護膜が基材層へ染み込み易くなる。また、時間は短すぎると成形不足となり、時間が長すぎると耐水性保護膜が基材層へ染み込み易くなる。
【0048】
本発明の実施形態によって発揮される効果について以下に記載する。フェンダーライナ10は、路面からタイヤ2が跳ね上げる小石や泥がフェンダーライナ10の外面を傷付けるのを防止することができる。さらに、このフェンダーライナ10は、タイヤ2と路面との間で発生する走行音、タイヤ2が跳ね上げる小石、砂、水、等がフェンダーライナ10に当たって発生する打撃音、ロードノイズ等の騒音が、基材層11で吸収され、その騒音が車両1の車内に伝わるのを著しく低減させることができる。すなわち、前記騒音は、フェンダーライナ10の最外層を構成する薄い耐水性保護層15から基材層11に伝達された後、その基材層11により音のエネルギーの減衰が図られ、車内に伝わる騒音量が減少する。
【0049】
また、フェンダーライナ10は、耐水性保護層15により路面上からタイヤ2が撒き散らす雨水や泥水を撥水するように構成されており、着氷が防止されるとともにフェンダーライナ10の外面が泥やゴミ等によって汚れるのが効果的に抑制される。さらに、耐水性保護層15により雨水や泥水が基材層11内に浸入しないことから、吸音作用が阻害されることがない。
【実施例】
【0050】
以下に、本発明の実施例について具体的に説明する。以下、実施例を示して具体的に本発明を説明するが、本発明は実施例により限定されるものではない。
【0051】
(実施例1)
主繊維は、繊維径6.6T、繊維長64mm、融点260℃のPET繊維を用いた。バインダー繊維は、繊維径6.6T、繊維長51mm、融点110℃のPET繊維を用いた。耐水性保護膜を形成する素材には、密度0.92程度、融点110℃、引っ張り強度14MPa、MI値20g/10min、軟化点100℃のLDPE樹脂を用いた。
【0052】
主繊維を60重量%、バインダー繊維を40重量%で、トータルの目付量が600g/mとなるように混合してニードリングにより絡合し、シート状ウェブ材料を作製した。LDPE素材を130℃に加熱して高粘性溶液として流して、シート状ウェブ材料の表面に目付量が200g/mとなるように被覆し、ローラで加圧して両者を接着して積層シートを作製した。
【0053】
その後、この積層シートを、基材層側で210℃、耐水性保護膜側で150℃に加熱して10秒間保持してからプレス金型にセットして、フェンダーライナの形状に成形した。成形後は、基材層の厚さは2.55mm、目付量は600g/mで、LDPE樹脂からなる耐水性保護層の厚さは0.25mm、目付量は200g/mであった。両者の合計厚さを2.8mmとした。
【0054】
尚、基材層及び耐水性保護膜の厚さは一定ではないので、全体を平均した厚さとしたが、大半の厚さで平均するようにしても良い。
【0055】
(実施例2)
実施例2が実施例1と異なるのは、基材層と耐水性保護膜の目付量を、それぞれ700g/m、200g/mにしたことで、後は実施例1と同じである。
【0056】
(実施例3)
実施例3が実施例1と異なるのは、基材層と耐水性保護膜の目付量を、それぞれ600g/m、300g/mにしたことで、後は実施例1と同じである。
【0057】
(実施例4)
実施例4が実施例1と異なるのは、基材層と耐水性保護膜の目付量を、それぞれ700g/m、300g/mにしたことで、後は実施例1と同じである。
【0058】
(実施例5)
実施例5は実施例1と同じ素材で作製し、金属プレートとの隙間をt=10mmにしたものである。
【0059】
(実施例6)
実施例6は実施例1と同じ素材で作製し、金属プレートとの隙間をt=20mmにしたものである。
【0060】
(比較例1)
比較例1は、主繊維とバインダー繊維とを交絡させて作製した不織布の例である。この主繊維は、繊維径6.6T、繊維長64mm、融点260℃のPET繊維を用いた。バインダー繊維は、繊維径6.6T、繊維長51mm、融点110℃のPET繊維を用いた。さらに、アクリル樹脂を混入した。主繊維とバインダー繊維との目付量630g/m、アクリル樹脂の目付量270g/mとして、厚さ3.3mmのものを作製した。以下、簡易的に比較例1(不織布)と示す。
【0061】
(比較例2)
比較例2は、樹脂製シート材の例である。樹脂製シート材の素材としてHDPE樹脂を用いて、厚さ1.2mmのシート材を作製した。このHDPE樹脂としては、目付量1100g/m、密度0.95程度、融点150℃、引っ張り強度40MPa、MI値1.4g/10min、軟化点130℃のものを用いた。以下、簡易的に比較例2(HDPE)と示す。
【0062】
(比較例3)
比較例3は、不織布の基材層の上に耐水性保護層を設けた例である。この基材層には実施例1と同じ主繊維及びバインダー繊維を用いて、耐水性保護膜には実施例1のLDPE樹脂でなくHDPE樹脂を用いたものを作製した。
【0063】
HDPEとしては、目付量200g/m、密度0.95程度、融点150℃、引っ張り強度40MPa、MI値1.4g/10min、軟化点130℃のものを用いた。以下、簡易的に比較例3(不織布/HDPE)と示す。
【0064】
(吸音試験の試験方法)
実施例1〜4及び比較例1(不織布)のサンプルについて、ブリューエル・ケアー社製の測定装置を用いて、周波数200〜6300Hzの範囲でISO354に準拠した残響室法吸音率を測定した。その測定結果を図5に示す。
【0065】
図5は、実施例1〜4及び比較例1について、1/3オクターブバンド毎の周波数帯域(単位:Hz)に対する残響室法吸音率(単位:%)をグラフにより示している。図5に示すように、実施例1〜4の吸音率は、周波数800〜2000Hzの範囲で比較的大きな吸音率を示した。この周波数範囲は、人の耳に比較的聞こえやすい中周波数域を含み、特に、人の耳の感度が最も高い2000Hzを含んでいる。
【0066】
それに対して、比較例1(不織布)では、上記範囲で思ったほどの吸音率を示さなかった。これは、本発明では、非通気性を備える軟質なLDPE樹脂を耐水性保護膜として採用し、不織布からなる基材層と積層しているので、両者の組合わせで共振による膜振動吸音を誘発しているからと考えられる。
【0067】
図6は、ホイールハウス3とフェンダーライナ10と間に隙間を設けない場合、隙間を設けた場合での吸音率の測定結果を示す。実際には、用意したサンプルに対して、実施例1は、金属プレートとの隙間t(図2参照)をゼロとし、実施例5及び6は、金属プレートとの隙間をt=10mm、t=20mmとした。尚、実施例5及び6は実施例1と同じ素材であって、隙間を変更しただけである。
【0068】
図6に示すように、本発明では上記隙間を調整することにより、吸音率のピークをどの周波数帯にすることが良いかを選択でき、自由に設定できることが判る。尚、他の実施例2〜4でも同様なことが言えると予測されるので、それらの実施例については、測定を省いた。
【0069】
(石跳ね衝撃音の試験方法)
実車走行時に、タイヤが跳ね上げる小石等がフェンダーライナに当たって生じるランダムな衝撃に対する放射音を評価するため、簡易な石跳ね衝撃音測定装置を使用した。
【0070】
図7は、その石跳ね衝撃音測定装置100を模式的に示す。石跳ね衝撃音測定装置100は、ブリューエル・ケアー社製の加振器101と、加振器101に接続された鋼球102とを備え、鋼球102に対向してマイク103を備えている。鋼球102は約100g、直径27mmであって、マイク103はインテンシティープローブを使用した。テストするサンプルSは、300mm×300mmのものを作製した。サンプルSとしては、実施例1、比較例1(不織布)、比較例2(HDPE)及び比較例3(不織布/HDPE)のものを使用した。
【0071】
試験方法は、鋼球102に接してサンプルSを置いて、このサンプルSから150mm離れた位置にマイク103を設置し、加振器101を0〜400Hzで10秒間ランダム振動させて、衝撃音を測定した。各データの比較は、人間の聴感特性を考慮し、A特性フィルターで周波数分析しそれを500Hz〜10kHzのオーバーオール値に計算した。その結果を図8に示す。実施例1は78.5dB(A)、比較例1(不織布)は79.6dB(A)、比較例2(HDPE)は92.2dB(A)、比較例3(不織布/HDPE)は81.3dB(A)であった。実施例1が一番良い結果を示した。
【0072】
さらに、これらのサンプルについて、衝撃吸収機能の代用特性として、曲げ強度を測定した。この曲げ強度は、JIS K 7171に準拠して測定した。この時のサンプルSの大きさ:50mm×150mm、スパン:100mm、試験スピード:50mm/minである。
【0073】
この曲げ強度の結果と、図8で求めた石跳ね衝撃音の結果とを図9に示す。図9に示すように、実施例1と比較例1(不織布)とを比較すると、石跳ね衝撃音の特性で他の例と比較して近似してよい結果を有しているが、両者には曲げ強度で大きな差異があった。また、実施例1と比較例3(不織布/HDPE)では、曲げ強度で近似してよい結果を示すが、石跳ね衝撃音の特性で大きな差異がある。尚、比較例2(HDPE)では、石跳ね衝撃音の特性及び曲げ強度のいずれでも、実施例1に比較してかなり異なった値であった。
【0074】
この結果からして、本発明に比較して、比較例1(不織布)では曲げ強度(衝撃吸収能)が不十分であり、比較例3(不織布/HDPE)は石跳ね衝撃音への吸音率が不足し、比較例2(HDPE)では、石跳ね衝撃音の特性及び曲げ強度のいずれでも大きく異なる結果であった。
【0075】
(着氷試験の試験方法)
図10は、着氷力測定装置200を模式的に示している。この測定装置200は、平板状の鉄製固定基板201と略U字型の鉄製押さえ部材202とでサンプルS2を挟持し、ステンレス製リング部材204内でサンプルS2に付着した氷205を押し部材203でせん断するのに必要なせん断力を測定する装置とされている。リング部材204には、内径50mm、外形55mm、高さ40mmのSUS304製の部材を用いた。予め水を滲み込ませたサンプルS2にリング部材204を載置し、リング部材204内に水を入れて凍らせた。そして、サンプルS2を固定基板201と押さえ部材202とで挟持し、ボルト206で固定した。
【0076】
押し部材203をリング部材204に向けて10mm/minの速度で下降させ、押し部材203に加わる最大の力、すなわち、サンプルに付着した氷205のせん断力を測定した。
【0077】
以上の測定を、実施例1、実施例4、比較例1(不織布)、比較例2(HDPE)、比較例3(不織布/HDPE)のサンプルについて行った。図11に、着氷力に相当するせん断力を測定した結果を示す。
【0078】
図11において、実施例1と実施例4及び比較例2(HDPE)と比較例3(不織布/HDPE)については、せん断力が20N以下であり、これらについては、氷が付着しても剥がれ易く、良好な防着氷性能が得られることが確認された。しかし、比較例1(不織布)では、せん断力が220N以上であり、着氷した氷が十分に剥がれなかった。従って、本発明のフェンダーライナは、氷が付着しても剥がれ易く、良好な防着氷性能が得られることが確認された。
【0079】
(飛び石試験法による耐久試験方法)
また、実車走行時に、タイヤが跳ね上げる小石等がフェンダーライナに当たって生じる耐水性保護膜の耐久性を評価するため、JASO M 104に規定する耐久試験である飛び石試験法でテストして表面の耐久性を測定した。その結果を一緒に図11に示す。
【0080】
前述した着氷試験では、比較例2(HDPE)及び比較例3(不織布/HDPE)でも、良好な防着氷性能が得られるが、比較例2(HDPE)は、以前の図8と図9で評価した吸音性能で、本発明の実施例に対して悪い結果を示しており、吸音性能で不十分であった。また、比較例3(不織布/HDPE)は、図11に示す耐久性のテスト結果では、表面のHDPE樹脂製の耐水性保護膜に亀裂が生じており、細かいひび割れも見られた。比較例3(不織布/HDPE)に細かいひび割れが生じる結果は、本発明のLDPE樹脂の耐水性保護膜に比較して、比較例3(不織布/HDPE)のHDPE樹脂の耐水性保護膜では伸び性が悪いためと思われる。
【0081】
このことを確認するために、図12に示す簡易測定装置300を用いて、実施例1と比較例3(不織布/HDPE)について、伸び率を測定した。
【0082】
(伸び率の測定方法)
図12の簡易測定装置300を説明する。図12(A)に示すように、簡易測定装置300は、250×250の矩形状の設置台301を備える。サンプルS3の周囲をピン等の取付部材302で設置台301に取り付ける。この時、一辺の取付部材302と対向する他辺の取付部材302との間隔を230mmとした。そして、サンプルS3の中央を押す押し棒303は、先端が半径20mmのものを用いた。測定時には、サンプルS3を所定温度に加熱し、押し棒303を900mm/minの速度で押付けて、サンプルS3が材料破壊するまで押すように行った。材料破壊が生じた時の荷重と伸び率を測定した。伸び率は、図12(B)及び(C)に示すように、押し込んでいった長さをY、押し棒303とピン302までの長さをXとして、サンプルS3の伸びた長さZを、Z=X+Yの関係式から求め、元の長さに対して伸びた長さを算出した。尚、サンプルS3の加熱温度は、基材層側を210℃とし、耐水性保護膜側を180℃、150℃、110℃とした。
【0083】
測定した結果を、図13に示す。また、基材層側を210℃とし、耐水性保護膜側を150℃とした時の荷重と伸び率との関係を図14に示す。
【0084】
図13及び図14に示すように、比較例3(不織布/HDPE)では、耐水性保護膜側の加熱温度を110℃と低く押えた場合には、全く伸びずに破損した。また、比較例3(不織布/HDPE)でも、耐水性保護膜側の加熱温度を150℃、180℃にした場合ではある程度の伸びを認められるが、本発明の実施例1に比較して、伸び率の値が悪い結果となった。この結果からして、プレス金型で成形する時に、耐水性保護膜が基材層に追従して伸びて成形できることが要求されるが、この追従成形性について比較例3(不織布/HDPE)は劣ることが判明した。
【0085】
以上示したように、本発明のフェンダーライナによると、良好な防着氷性能と良好な吸音性能が同時に得られることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0086】
自動車のフェンダーライナに有利に適用できる。
【符号の説明】
【0087】
10 フェンダーライナ
11 基材層
12 主繊維
13 バインダー繊維
14 繊維ウェブ
15 耐水性保護膜
50 製造装置
100 石跳ね衝撃音測定装置
200 着氷力測定装置
300 簡易測定装置
S サンプル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸音作用を有する基材層と、その表面に設けられた耐水性保護膜とを備えた車両用フェンダーライナであって、
前記基材層は、主繊維と、その主繊維よりも低い融点を有するバインダー繊維とを交絡させた繊維ウェブからなり、
前記耐水性保護膜としてLDPE樹脂が一体に設けられていることを特徴とする車両用フェンダーライナ。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用フェンダーライナにおいて、
前記LDPE樹脂の耐水性保護膜が、前記基材層のバインダー繊維と同レベルの軟化点を有することを特徴とする車両用フェンダーライナ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の車両用フェンダーライナにおいて、
基材層の目付量が300〜1000g/mであって、
主繊維及びバインダー繊維の割合が、主繊維:バインダー繊維=70重量%:30重量%〜50重量%:50重量%であり、
耐水性保護膜の目付量が100g/m〜400g/mであることを特徴とする車両用フェンダーライナ。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1つに記載の車両用フェンダーライナの製造方法であって、
前記主繊維とバインダー繊維とからなる、前記基材層の繊維ウェブを製造し、
該繊維ウェブの表面にLDPEからなる溶融樹脂を被覆し、ローラで加圧してLDPE樹脂からなる耐水性保護膜を該基材層に接着した積層シートを形成し、
該積層シートを加熱成形して車両用フェンダーライナを形成することを特徴とする車両用フェンダーライナの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−240821(P2011−240821A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−114593(P2010−114593)
【出願日】平成22年5月18日(2010.5.18)
【出願人】(000135988)株式会社ヒロタニ (16)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】