説明

車両用ブレーキ液圧制御装置

【課題】製造コストを低減し、消費電力を小さくする。
【解決手段】マスタシリンダとストロークシミュレータ40との間の液圧路に設けられ、マスタシリンダ側のブレーキ液圧と車輪ブレーキ側のブレーキ液圧との差圧が開弁圧となったときに開弁して、ストロークシミュレータ40へのブレーキ液の流入を許容するとともに、マスタシリンダ側のブレーキ液圧と車輪ブレーキ側のブレーキ液圧との差圧が閉弁圧となったときに閉弁して、ストロークシミュレータ40へのブレーキ液の流入を遮断し、マスタシリンダのブレーキ液圧を車輪ブレーキへ付与するシミュレータ切替弁30を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ブレーキ液圧制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両、例えば、自動二輪車、自動三輪車、オールテレーンビークル(ATV)等の車両の連動ブレーキにおける制動力を、ポンプによる液圧の加圧によって制御するようにした車両用ブレーキ液圧制御装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この装置では、ブレーキ操作子の操作に応じた操作反力を当該ブレーキ操作子に付与するストロークシミュレータを有している。
【0003】
特許文献1に開示された車両用ブレーキ液圧制御装置は、電気式ブレーキ液圧制御モードと機械式ブレーキ液圧制御モードとを備えており、電気式ブレーキ液圧制御モードの実行時には、ストロークシミュレータを作用させてブレーキ操作子の操作に応じた操作反力をブレーキ操作子に付与するようにしている。また、電気式ブレーキ液圧制御モードの実行に異常が発生したときには、電気式ブレーキ液圧制御モードに係る構成要素をオフにして、機械式ブレーキ液圧制御モードに移行し、ブレーキ操作量に対応したブレーキ液圧をホイールシリンダに直接供給することで、フェイルセーフ機能を実現できるように構成されている。
【0004】
また、特許文献2に開示された車両用ブレーキ液圧制御装置においても、連動ブレーキによる制動を行うことができる。この車両用ブレーキ液圧制御装置では、ブレーキ液圧の大きさが電気的に制御され、ストロークシミュレータと車輪ブレーキに作用するブレーキ液圧を昇圧させるポンプとを備えて構成されている。
【0005】
【特許文献1】特開2002−264787号公報
【特許文献2】特開2006−123767号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、前記した特許文献1および特許文献2の車両用ブレーキ液圧制御装置では、マスタシリンダとストロークシミュレータとが電磁弁を介して連通・遮断されるようになっていた。このため、電磁弁やそれを制御するための電気部品等が必要であり、部品点数が多くなるとともにコストがかかり、また、消費電力が大きくなるという問題を有していた。
【0007】
このような観点から、本発明は、ストロークシミュレータを備えた車両用ブレーキ液圧制御装置において、製造コストを低減することができるとともに消費電力を小さくすることができる車両用ブレーキ液圧制御装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような課題を解決するために本発明の車両用ブレーキ液圧制御装置は、ブレーキ操作子のストローク量に応じたブレーキ液圧を発生するマスタシリンダから車輪ブレーキに至る液圧路を具備するブレーキ系統を備える車両用ブレーキ液圧制御装置であって、前記ブレーキ系統が、前記液圧路を開閉するカット弁を有するレギュレータと、前記レギュレータを迂回する吸入路と、前記吸入路に設けられ、前記レギュレータよりも前記マスタシリンダ側にあるブレーキ液を吸入して前記レギュレータよりも前記車輪ブレーキ側に吐出するポンプと、前記ポンプの吸入側において前記吸入路を開閉する吸入弁と、を具備しており、さらに、前記液圧路に設けられ、前記マスタシリンダからのブレーキ液圧が流入され前記ブレーキ操作子の操作反力を当該ブレーキ操作子に擬似的に付与するストロークシミュレータと、前記マスタシリンダと前記ストロークシミュレータとの間の前記液圧路に設けられ、前記マスタシリンダで発生させたブレーキ液圧と前記車輪ブレーキに付与されたブレーキ液圧とによって作動して、前記マスタシリンダ側と前記ストロークシミュレータ側との間を連通・遮断するシミュレータ切替弁と、を備え、前記シミュレータ切替弁は、常閉型の弁であり、前記マスタシリンダ側のブレーキ液圧と前記車輪ブレーキ側のブレーキ液圧との差圧が開弁圧となったときに開弁して、前記ストロークシミュレータへのブレーキ液の流入を許容するとともに、前記マスタシリンダ側のブレーキ液圧と前記車輪ブレーキ側のブレーキ液圧との差圧が閉弁圧となったときに閉弁して、前記ストロークシミュレータへのブレーキ液の流入を遮断し、前記マスタシリンダのブレーキ液圧を前記車輪ブレーキへ付与することを特徴とする。
【0009】
この車両用ブレーキ液圧制御装置によれば、例えば、ポンプが運転されることによって、昇圧されたブレーキ液圧が車輪ブレーキに作用すると、そのブレーキ液圧がシミュレータ切替弁に流入され、マスタシリンダ側のブレーキ液圧と車輪ブレーキ側のブレーキ液圧との差圧が開弁圧となると開弁してストロークシミュレータへのブレーキ液の流入が許容される。この状態からブレーキ操作子が操作されると、マスタシリンダ側のブレーキ液圧は、シミュレータ切替弁を通じてストロークシミュレータに流入され、これによって、ブレーキ操作子の操作反力がブレーキ操作子に対して擬似的に付与される。そして、マスタシリンダ側のブレーキ液圧と車輪ブレーキ側のブレーキ液圧との差圧が閉弁圧となったときに閉弁して、ストロークシミュレータへのブレーキ液の流入が遮断され、マスタシリンダ側のブレーキ液圧が車輪ブレーキへ付与される。つまり、本発明では、マスタシリンダ側とストロークシミュレータ側との間の連通・遮断を、マスタシリンダで発生させたブレーキ液圧と車輪ブレーキに付与されたブレーキ液圧とによって作動するシミュレータ切替弁によって好適に行うことができる。したがって、従来のように、これらの連通・遮断を行う電磁弁が不要となり、また、そのための電気的配線を必要とせず、コストの低減を図ることができる。また、この電磁弁が不要となる分、他の電磁弁等を含めたレイアウトの設定が行い易くなり、連通・遮断に係る液圧路などの設定も行い易くなって、部品組み付けの自由度も高まる。
【0010】
しかも、シミュレータ切替弁は、マスタシリンダ側のブレーキ液圧と車輪ブレーキ側のブレーキ液圧との差圧が閉弁圧となったときに閉弁して、ストロークシミュレータへのブレーキ液の流入を遮断し、マスタシリンダのブレーキ液圧を車輪ブレーキへ付与するので、ストロークシミュレータ側にブレーキ液圧が作用している状態から、車輪ブレーキ側にブレーキ液圧が作用するように切り替えられるときの移行がスムーズに行われるようになり、ブレーキ操作子の操作フィーリングが良好になる。
【0011】
本発明においては、前記シミュレータ切替弁を、前記ストロークシミュレータ側から前記マスタシリンダ側へのブレーキ液の通流を許容する一方向弁と、前記車輪ブレーキ側のブレーキ液圧を受けて移動し、前記一方向弁の弁体を押圧して離座させる押圧部材と、前記一方向弁を着座させる方向へ前記押圧部材を付勢する付勢手段と、を備えて構成してもよい。
【0012】
このような構成とすることによって、前記のように、ポンプが運転されることによって、昇圧されたブレーキ液圧が車輪ブレーキに作用してマスタシリンダ側のブレーキ液圧と車輪ブレーキ側のブレーキ液圧との差圧が開弁圧となると、押圧部材が付勢手段の付勢力に抗して移動し、一方向弁の弁体を押圧して離座させる。これによって、ストロークシミュレータへのブレーキ液の流入が許容される。この状態からブレーキ操作子が操作されると、マスタシリンダ側のブレーキ液圧は、離座した一方向弁を通じてストロークシミュレータに流入され、ブレーキ操作子の操作反力がブレーキ操作子に対して擬似的に付与される。そして、マスタシリンダ側のブレーキ液圧と車輪ブレーキ側のブレーキ液圧との差圧が閉弁圧となると、付勢手段によって一方向弁が着座される方向に移動されて閉弁され、ストロークシミュレータへのブレーキ液の流入が遮断される。これによって、マスタシリンダ側のブレーキ液圧が車輪ブレーキへ付与される。
このように、簡単な構成からなるシミュレータ切替弁で、マスタシリンダ側とストロークシミュレータとの連通・遮断を好適に行うことができる。
【0013】
本発明においては、前記押圧部材が、前記マスタシリンダ側のブレーキ液圧と前記車輪ブレーキ側のブレーキ液圧との差圧が閉弁圧となったときに、前記付勢手段によって一方向弁が着座する方向へ移動する構成とするのがよい。このように構成することによって、マスタシリンダのブレーキ液圧が車輪ブレーキへ付与されるようになり、これによって、ブレーキ操作子の操作反力が連続的となって、操作フィーリングが良好になる。
【0014】
また、本発明においては、二つの前記ブレーキ系統を有し、一方の前記ブレーキ系統に対応する前記車輪ブレーキにブレーキ液圧が付与された場合に、他方の前記ブレーキ系統に対応する前記ポンプが運転されて、当該ブレーキ系統に対応する前記車輪ブレーキにもブレーキ液圧が付与される構成としてもよい。このような構成によれば、一方のブレーキ系統のブレーキ操作子が操作されたときに、他方のブレーキ系統に対応する車輪ブレーキにブレーキ液圧が付与され、ポンプで昇圧されたブレーキ液圧が当該車輪ブレーキに付与されることとなる。そうすると、この昇圧されたブレーキ液圧は、シミュレータ切替弁にも流入され、マスタシリンダ側のブレーキ液圧と車輪ブレーキ側のブレーキ液圧との差圧が開弁圧となったときに開弁して、ストロークシミュレータへのブレーキ液の流入を許容する状態となる。この状態から他方のブレーキ系統のブレーキ操作子が操作されると、当該ブレーキ系統のマスタシリンダからのブレーキ液圧は、シミュレータ切替弁を通じてストロークシミュレータに流入し、ブレーキ操作子の操作反力がブレーキ操作子に対して擬似的に付与される。そして、マスタシリンダ側のブレーキ液圧と車輪ブレーキ側のブレーキ液圧との差圧が閉弁圧となったときに閉弁して、ストロークシミュレータへのブレーキ液の流入が遮断され、スタシリンダ側とストロークシミュレータ側との間が遮断され、マスタシリンダのブレーキ液圧が車輪ブレーキへ付与される。つまり、本発明では、マスタシリンダ側とストロークシミュレータとの連通・遮断を、マスタシリンダ側のブレーキ液圧と車輪ブレーキ側のブレーキ液圧とによって作動するシミュレータ切替弁によって好適に行うことができる。したがって、従来のように電磁弁を用いてこれらの切り替えを行ったときのように、余分な電気的配線を必要とせず、コストの低減を図ることができる。また、この電磁弁が不要となる分、他の電磁弁等を含めたレイアウトの設定が行い易くなり、連通・遮断に係る液圧路などの設定も行い易くなる。これによって部品組み付けの自由度も高まる。特に、二つのブレーキ系統を備えた構成において、効果的にコストの低減を図ることができ、また、レイアウト構成の簡略化を効果的に行うことができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る車両用ブレーキ液圧制御装置によると、ストロークシミュレータを備えた車両用ブレーキ液圧制御装置において、製造コストを削減することができるとともに消費電力を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、添付した図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、説明において、同一の要素には同一の符号を用い、重複する説明は省略する。
参照する図面において、図1は本発明の一実施形態に係る車両用ブレーキ制御装置を示すブレーキ液圧回路図、図2は一実施形態に係る車両用ブレーキ制御装置に適用されるシミュレータ切替弁の拡大断面図である。
【0017】
図1に示すように、本実施形態の車両用ブレーキ液圧制御装置(以下、「ブレーキ液圧制御装置」という。)Uは、例えば、自動二輪車、自動三輪車、オールテレーンビークル(ATV)等のバーハンドルタイプの車両に好適に用いられるものであり、図示しない車両の前輪および後輪に付与する制動力(ブレーキ液圧)を適宜制御する。以下においては、ブレーキ液圧制御装置Uを自動二輪車に適用した例について説明するが、ブレーキ液圧制御装置Uが搭載される車両を限定する趣旨ではない。
図1に示すように、ブレーキ液圧制御装置Uは、前輪のブレーキ系統FKと後輪のブレーキ系統RKとを備えて構成され、これらに設けられる各種部品を適宜制御するための制御装置20を備えて、前輪(不図示、以下同じ)に装着された車輪ブレーキFBおよび図示しない後輪(不図示、以下同じ)に装着された車輪ブレーキRBに付与する制動力(ブレーキ液圧)を適宜制御することによって、車輪ブレーキFB,RBの独立したアンチロックブレーキ制御および二つの車輪ブレーキFB,RBを連動させる連動ブレーキ制御が可能になっている。
【0018】
前輪のブレーキ系統FKは、前輪を制動するためのものであり、マスタシリンダFMCから車輪ブレーキFBに至る系統に、車輪ブレーキFBのブレーキ液圧を調整する液圧調整装置10F、シミュレータ装置10Sを備えて構成される。
また、後輪のブレーキ系統RKは、後輪を制動するためのものであり、マスタシリンダRMCから車輪ブレーキRBに至る系統に、車輪ブレーキRBのブレーキ液圧を調整する液圧調整装置10R、シミュレータ装置10Sを備えて構成される。
【0019】
なお、マスタシリンダFMC,RMCは、ブレーキ液を貯蔵するブレーキ液タンク室が接続された図示しないシリンダを有しており、シリンダ内にはブレーキ操作子であるブレーキレバーL1,ブレーキペダルL2の操作によりシリンダの軸方向へ摺動してブレーキ液を流出する図示しないロッドピストンが組み付けられている。
【0020】
このように、ブレーキ液圧制御装置Uは、前輪のブレーキ系統FKおよび後輪のブレーキ系統RKから構成されるが、各ブレーキ系統は同一の構成からなるので、以下においては主として前輪のブレーキ系統FKについて説明し、適宜後輪のブレーキ系統RKについて説明する。
【0021】
前輪のブレーキ系統FKは、前記したように液圧調整装置10Fおよびシミュレータ装置10Sを備えて構成される。
液圧調整装置10Fは、リザーバ2、ポンプ3、レギュレータ4および吸入弁5を備えており、さらに、前輪のブレーキ系統FKおよび後輪のブレーキ系統RKのそれぞれのポンプ3,3を駆動するための共通のモータ8を備えている。また、液圧調整装置10Fは、車輪ブレーキFBにかかるブレーキ液圧を制御する制御弁手段Vを備えている。
【0022】
シミュレータ装置10Sは、シミュレータ切替弁30と、ストロークシミュレータ40と、ブリーダ45とを備え、マスタシリンダFMC、車輪ブレーキFBおよび液圧調整装置10Fの間に設けられている。
なお、以下ではマスタシリンダFMCを通じてシミュレータ装置10Sのシミュレータ切替弁30に至る流路(油路、配管)を「出力液圧路D1」と称し、当該シミュレータ切替弁30から液圧調整装置10Fの入口ポート11を通じてレギュレータ4に至る流路を「出力液圧路D2」と称する。また、レギュレータ4から出口ポート12を通じ、さらにシミュレータ切替弁30を通じて車輪ブレーキFBに至る流路を「車輪液圧路E」と称し、出力液圧路D2からポンプ3に至る流路を「吸入液圧路J」と称する。さらに、ポンプ3から車輪液圧路Eに至る流路を「吐出液圧路G」と称し、車輪液圧路Eからリザーバ2に至る流路を「開放路H」と称する。
【0023】
液圧調整装置10Fの制御弁手段Vは、車輪液圧路Eを開放しつつ開放路Hを遮断する状態、車輪液圧路Eを遮断しつつ開放路Hを開放する状態および車輪液圧路Eを遮断しつつ開放路Hを遮断する状態を切り換える機能を有しており、入口弁6、出口弁7、チェック弁6aを備えて構成されている。
【0024】
入口弁6は、車輪液圧路Eに設けられた常開型の電磁弁である。入口弁6は、通常時に開いていることで、マスタシリンダFMCから出力液圧路D1,D2を通じて車輪ブレーキFBへブレーキ液圧が伝達するのを許容している。また、入口弁6は、前輪がロックしそうになったときに制御装置20により閉塞される(アンチロックブレーキ制御)ことで、マスタシリンダFMCから車輪ブレーキFBに伝達されるブレーキ液圧を遮断する。
【0025】
出口弁7は、車輪液圧路Eと開放路Hとの間に介設された常閉型の電磁弁である。出口弁7は、通常時に閉塞されているが、前輪がロックしそうになったときに制御装置20により開放される(アンチロックブレーキ制御)ことで、車輪ブレーキFBに作用するブレーキ液圧を開放路Hを通じてリザーバ2に逃がす。
【0026】
チェック弁6aは、入口弁6に並列に接続されている。このチェック弁6aは、車輪ブレーキFB側からレギュレータ4側へのブレーキ液の流入のみを許容する弁であり、ブレーキレバーL1からの入力が解除された場合に、入口弁6を閉じた状態にしたときにおいても、車輪ブレーキFB側からレギュレータ4側へのブレーキ液の流入を許容する。
【0027】
リザーバ2は、開放路Hに設けられており、出口弁7が開放されることによって逃がされるブレーキ液圧を吸収する機能を有している。また、リザーバ2と吸入液圧路Jとの間には、リザーバ2側からポンプ3側へのブレーキ液の流入のみを許容するチェック弁2aが介設されている。
【0028】
ポンプ3は、出力液圧路D2に通じる吸入液圧路Jと車輪液圧路Eに通じる吐出液圧路Gとの間に介設されており、リザーバ2で貯溜されているブレーキ液を吸入して吐出液圧路Gに吐出する機能を有している。このようなポンプ3の作動により、車輪液圧路Eに対してブレーキ液圧が伝達される。また、後記するアンチロックブレーキ制御時に、リザーバ2によるブレーキ液の吸収によって減圧された出力液圧路D2や車輪液圧路Eの圧力状態が回復される。なお、ブレーキレバーL1によるブレーキ操作終了後には、後記するカット弁4aが車輪液圧路Eから出力液圧路D2へのブレーキ液の流入を許容することで、車輪液圧路Eに流入したブレーキ液が出力液圧路D2を通じてマスタシリンダFMCに戻されるようになっている。また、ポンプ3は、連動ブレーキ制御の際にも駆動され、後記するように、マスタシリンダFMC側にあるブレーキ液を吸入して吐出液圧路Gに吐出することで、車輪ブレーキFBにブレーキ液圧を付与する。
【0029】
ポンプ3には、その吸入口側から吐出口側へのブレーキ液の流入のみを許容する一方向弁が内包されているので、吐出口側のブレーキ液圧が吸入側のブレーキ液圧より高くなっても、ブレーキ液が逆流することはない。また、ポンプ3の吐出側には、図示せぬダンパやオリフィスが設けられており、その協働作用によってポンプ3から吐出されたブレーキ液の脈動を減衰させている。
【0030】
レギュレータ4は、出力液圧路D2から車輪液圧路Eへのブレーキ液の流入を許容する状態および遮断する状態を切り換える機能と、出力液圧路D2から車輪液圧路Eへのブレーキ液の流入が遮断されているときに車輪液圧路Eおよび吐出液圧路Gのブレーキ液圧を設定値以下に調節する機能とを有しており、カット弁4a、チェック弁4bおよびリリーフ弁4cを備えて構成されている。
【0031】
カット弁4aは、マスタシリンダFMCに通じる出力液圧路D2と車輪ブレーキFBに通じる車輪液圧路Eとの間に介設された常開型の電磁弁であり、出力液圧路D2から車輪液圧路Eへのブレーキ液の流入を許容する状態および遮断する状態を切り換えるものである。このカット弁4aは、ポンプ3の作動時に遮断(閉弁)されるように、制御装置20により制御されるようになっており、マスタシリンダFMCからのブレーキ液圧が、出力液圧路D2から車輪液圧路Eに直接伝達されるのを遮断するようになっている。これにより、ブレーキ液は、後記するように出力液圧路D2から吸入液圧路J(吸入弁5)を通じてポンプ3に吸入される。また、カット弁4aは、ポンプ3の停止に伴って消磁され、連通(開弁)される。これにより、車輪液圧路Eからカット弁4aを通じてブレーキ液が出力液圧路D2に戻される。
【0032】
チェック弁4bは、カット弁4aに並列に接続されている。このチェック弁4bは、出力液圧路D2から車輪液圧路Eへのブレーキ液の流入のみを許容する弁であり、後記する後輪連動ブレーキ時に、ブレーキレバーL1の操作によって出力液圧路D2に吐出されたブレーキ液を車輪液圧路Eへ流入するようになっている。また、失陥等により、仮に、カット弁4aが閉じられた状態でロックした場合でも、出力液圧路D2から車輪液圧路Eへのブレーキ液の流入を許容する。
【0033】
リリーフ弁4cは、車輪液圧路Eのブレーキ液圧から出力液圧路D2のブレーキ液圧を差し引いたときの値が開弁圧以上になったときに開弁するものであるが、本実施形態では、カット弁4aとなる常閉型の電磁弁に機能として付加されている。なお、リリーフ弁4cの開弁圧(カット弁4aの開弁圧)は、電磁弁を駆動させるための電磁コイルに与える電流値の大きさを制御することで増減させることができる。
【0034】
吸入弁5は、吸入液圧路Jに設けられた常閉型の電磁弁であり、吸入液圧路Jを開放する状態および遮断する状態を切り換えるものである。吸入弁5は、ポンプ3の作動に伴って制御装置20により開放(開弁)され、また、ポンプ3の停止に伴って遮断(閉弁)される。
【0035】
制御装置20は、主として前記した制御弁手段Vの入口弁6および出口弁7、モータ8の作動を制御するようになっており、前輪のブレーキ系統FKおよび後輪のブレーキ系統RKにおける制動力を独立に調整制御して前輪、後輪のロック傾向を解消するアンチロックブレーキ制御を行う。また、ブレーキレバーL1、ブレーキペダルL2のいずれか一方が操作されたときに、操作された側と異なる側のブレーキ系統における車輪ブレーキFBまたは車輪ブレーキRBに対して制動力を付与する制御を行う。そして、制御装置20は、例えば、ブレーキレバーL1の操作により前輪がロック状態に陥りそうになったときに、アンチロックブレーキ制御を行って前輪のブレーキ系統FKにおける制動力を調整制御するとともに、後輪のブレーキ系統RKにおける車輪ブレーキRBに対して制動力を付与する制御を行うようになっている。このような制御装置20には、前輪に固着されたパルサーギアの側面に対向して固定配置される前輪用車輪速度センサ21の信号、同じく後輪に固着されたパルサーギアの側面に対向して固定配置される後輪用車輪速度センサ22の信号が入力され、さらに、出力液圧路D2に設けられた液圧検出センサ11f,11rの信号の出力および車輪液圧路Eに設けられた液圧検出センサ12f,12rの信号の出力が入力されて、制御弁手段V,Vの入口弁6および出口弁7、モータ8の作動が制御されるようになっている。
【0036】
ここで、出力液圧路D2に設けられた液圧検出センサ11f,11rは、出力液圧路D2におけるブレーキ液圧の大きさを計測するものであり、計測されるブレーキ液圧は、マスタシリンダFMC,RMCにおけるブレーキ液圧と相関する物理量である。また、車輪液圧路Eに設けられた液圧検出センサ12f,12rは、車輪液圧路Eにおけるブレーキ液圧の大きさを計測するものであり、計測されるブレーキ液圧は、車輪ブレーキFB,RBにおけるブレーキ液圧と相関する物理量である。
【0037】
次に、本発明の特徴的構成であるシミュレータ装置10Sについて説明する。
この例では、図2に示すように、ブレーキ液圧制御装置U(図1参照)のボディを成す基体50Aの側面等に装着穴50が形成され、この装着穴50にシミュレータ切替弁30が収容される。
装着穴50は、開口側から奥側に向けて段状に順次縮径する有底円筒状を呈しており、開口部50aと、この開口部50aに通じる第一孔壁部51と、この第一孔壁部51よりも幾分径の小さい第二孔壁部52と、この第二孔壁部52よりも径の小さい第三孔壁部53と、この第三孔壁部53よりもさらに径の小さい第四孔壁部54と、この第四孔壁部54よりも径の小さい第五孔壁部55とを備えている。そして、第二孔壁部52の内側面には出力液圧路D1,D2が開口形成されており、また、第四孔壁部54の内側面にはシミュレータ装置10Sの後記するストロークシミュレータ40に通じる連通路41が開口形成されており、さらに、第五孔壁部55の内側面には車輪液圧路Eが開口形成されている。これによって、これらの液圧路を通じてブレーキ液がシミュレータ切替弁30に対して流出入可能となっている。
なお、装着穴50は、基体50Aに形成したものに限られず、他の部材に対して形成してもよい。
【0038】
シミュレータ切替弁30は、主として一方向弁31と、押圧部材36と、付勢手段としての戻しばね37とを備えて構成される。
一方向弁31は、ストロークシミュレータ40からマスタシリンダFMC側へのブレーキ液の通流を許容する弁である。この一方向弁31は、連通路41に通じる液路32aを備えて第三孔壁部53に周部32bがかしめ固定された基部32と、この基部32の液路32aの開口部32cに着座して開口部32cをシールする一方向弁としての弁体33と、基部32の開口部32cを覆うように配置され、通孔34aが形成されたリテーナ34と、リテーナ34の底面と弁体33との間に圧縮状態で配置された戻しばね35とを備えて構成される。
このような一方向弁31は、図2に示すように、第三孔壁部53にかしめ固定された状態で、出力液圧路D1,D2と連通路41との間を連通・遮断するようになっている。
【0039】
押圧部材36は、図3にも示すように、段付き円柱状を呈しており、図2に示すように、マスタシリンダFMC側のブレーキ液圧と車輪ブレーキFB側のブレーキ液圧との差圧が開弁圧となったときに一方向弁31側へ摺動可能である。そして、その摺動によって弁体33を押圧し、弁体33を開口部32cから離座させる役割をなす。また、押圧部材36は、マスタシリンダFMC側のブレーキ液圧と車輪ブレーキFB側のブレーキ液圧との差圧が閉弁圧となったときに、戻しばね37の戻し力によって、一方向弁31から離れる側(第五孔壁部55側)に戻され、弁体33を開口部32cに着座させるようになっている。
【0040】
具体的に押圧部材36は、第四孔壁部54の内側に配置された胴部36cと、この胴部36cの一端に設けられ、第五孔壁部55に挿通された一端部36aと、胴部36cの他端に設けられ、一方向弁31の液路32aに挿通された他端部36dとを備えて構成される。
胴部36cには、戻しばね37の一端が当接されるフランジ部36bが設けられ、また、一方向弁31の基部32の側壁に対向する部位に、ブレーキ液の通流を可能にする溝部36eが形成されている。この溝部36eは、押圧部材36が一方向弁31の弁体33へ向けて摺動して、胴部36cが一方向弁31の基部32に当接した状態においても、両端部の開口が液路32aおよび連通路41に臨むようになっており、これによって、ブレーキ液の通流が確保されるようになっている。
【0041】
一端部36aは、第五孔壁部55にOリング55aを介して摺動可能に挿入されており、その端面には、ブレーキ液流入室T2に流入される車輪液圧路Eのブレーキ液圧が作用するようになっている。
他端部36dは、一方向弁31の液路32aとの間にブレーキ液の通流が可能な隙間をもって挿通されており、一方向弁31側への摺動時にその先端部で弁体33を押圧するようになっている。
【0042】
ここで、押圧部材36の摺動圧力(開弁圧)は、押圧部材36の一端部36aの端面の受圧面積と、一方向弁31の開口部32cの面積との間に差をもたせることによって適宜設定することができる。
【0043】
戻しばね37は、一方向弁31の基部32と押圧部材36のフランジ部36bとの間に圧縮状態で配置され、装着穴50の奥方向(弁体33を開口部32cに着座させる方向)へ向けて押圧部材36を付勢するようになっている。これによって、車輪ブレーキFBにブレーキ液圧がかかっていない状態では、押圧部材36のフランジ部36bが第四孔壁部54内の側壁に当接した状態となり、押圧部材36の他端部36dが一方向弁31の弁体33から離れた状態に保持されて、弁体33が開口部32cに着座した状態となる。したがって、一方向弁31によって、出力液圧路D1,D2側とストロークシミュレータ40との間が遮断されるようになっている。
【0044】
なお、戻しばね37の戻し力は、押圧部材36の一端部36aと第五孔壁部55との間に生じる摺動抵抗よりも大きくなるように設定されている。本実施形態では、マスタシリンダFMC側のブレーキ液圧と車輪ブレーキFB側のブレーキ液圧との差圧、つまり閉弁圧をゼロに設定している。したがって、閉弁圧となると、戻しばね37の戻し力によって、押圧部材36が一方向弁31の弁体33から離れる側(第五孔壁部55側)へ摺動する。
【0045】
蓋部材38は、有底円筒状を呈しており、外周壁に形成された凹部38aにOリング38cが装着されて、装着穴50の第一孔壁部51に密着した状態に挿入され、開口部50a側からリング状の抜け止め部材39で固定される。
このような蓋部材38は、装着穴50に固定された状態で、一方向弁31の周りにブレーキ液流入室T1を形成する。
【0046】
図1に示すように、ストロークシミュレータ40は、ブレーキレバーL1の操作反力をブレーキレバーL1に擬似的に付与するものであって、連通路41を介してシミュレータ切替弁30に接続されている。
【0047】
ストロークシミュレータ40は、シリンダ42と、シリンダ42の内部に摺動自在に挿入されたピストン43と、このピストン43を付勢するスプリング44とを備えており、ブレーキレバーL1の操作に起因してマスタシリンダFMCから吐出されたブレーキ液を、シミュレータ切替弁30、連通路41を介してシリンダ42に収容し、ピストン43に与えられるスプリング44の戻し力によってブレーキレバーL1の操作反力を発生させるようになっている。
【0048】
ブリーダ45は、ブレーキ液を封入する際に液路内に混入した空気を抜くためのものであり、連通路41に設けられている。
【0049】
ところで、マスタシリンダFMC側とストロークシミュレータ40との間には、前記のように、シミュレータ切替弁30が介設されており、これに設けられた一方向弁31がストロークシミュレータ40からマスタシリンダFMC側への通流を可能にするものであるので、弁体33が開口部32cに着座している状態、つまり、車輪ブレーキFBにブレーキ液圧が作用してなく、押圧部材36が弁体33側へ摺動していない状態では、ブレーキレバーL1が操作されても、マスタシリンダFMC側からストロークシミュレータ40へブレーキ液が通流することがない。
一方、ポンプ3の昇圧によって車輪ブレーキFBにブレーキ液圧が作用している状態では、図4に示すように、押圧部材36が一方向弁31側へ摺動して他端部36dが弁体33を押圧し、弁体33が開口部32cから離座することとなるので、この状態からブレーキレバーL1が操作されたときには、マスタシリンダFMCから吐出したブレーキ液がシミュレータ切替弁30を通じてストロークシミュレータ40に流入することとなる。
【0050】
ここで、押圧部材36は、マスタシリンダFMC側のブレーキ液圧と車輪ブレーキFB側のブレーキ液圧との差圧が閉弁圧となったときに、戻しばね37の戻し力によって戻されるようになっているので、マスタシリンダFMC側のブレーキ液圧が車輪ブレーキFB側のブレーキ液圧よりも下回っているときにのみ、ストロークシミュレータ40にブレーキ液が流入されることとなる。
【0051】
なお、図1に示すように、ストロークシミュレータ40に設けられたスプリング44の戻し力は、図2に示すように、シミュレータ切替弁30の一方向弁31に設けられた戻しばね35の戻し力よりも大きく設定されている。したがって、仮に、ストロークシミュレータ40のシリンダ42にブレーキ液が残留しても、そのブレーキ液は、ストロークシミュレータ40のスプリング44の戻し力によって、連通路41からシミュレータ切替弁30内に吐出され、さらに液路32aから開口部32cを通じてブレーキ液流入室T1に流入された後、出力液圧路D1を通じてマスタシリンダFMCに戻される。
【0052】
次に、図5〜図7の液圧回路を参照しつつ、連動ブレーキ制御およびアンチロックブレーキ制御について説明する。
【0053】
連動ブレーキ制御には、後輪のブレーキ系統RKに対応するブレーキペダルL2の操作に連動して前輪のブレーキ系統FKに対応する車輪ブレーキFBにブレーキ液圧を付与する制御(以下、「リア連動ブレーキ制御」という。)と、前輪のブレーキ系統FKに対応するブレーキレバーL1の操作に連動して後輪のブレーキ系統RKに対応する車輪ブレーキFBにブレーキ液圧を付与する制御(以下、「フロント連動ブレーキ制御」という。)と、が含まれている。なお、リア連動ブレーキ制御とフロント連動ブレーキ制御は、制御対象となるブレーキ系統が異なるだけで、基本的な動作は同一であるので、以下では、リア連動ブレーキ制御について説明を行い、フロント連動ブレーキ制御についての説明を省略する。
【0054】
運転者が後輪を制動すべくブレーキペダルL2を操作すると、図5に示すように、後輪のブレーキ系統RKにおいて、マスタシリンダRMCから出力液圧路D1にブレーキ液が吐出され、出力液圧路D1からシミュレータ装置10Sのシミュレータ切替弁30にブレーキ液が流入する。この段階では、車輪ブレーキRBにブレーキ液が作用していないので、図2に示すように、押圧部材36は一方向弁31側へ摺動しておらず、弁体33は開口部32cに着座している。したがって、出力液圧路D1を通じてシミュレータ切替弁30のブレーキ液流入室T1に流入したブレーキ液は、そのまま出力液圧路D2へ流出し、入口ポート11を通じて液圧調整装置10Rのレギュレータ4に至る。そして、ブレーキ液は、制御弁手段Vの入口弁6を通じて車輪液圧路Eに流入し、出口ポート12を通じてシミュレータ切替弁30のブレーキ液流入室T2に流入する。このとき、前記したブレーキ液流入室T1とブレーキ液流入室T2との間には、差圧が生じていないので、押圧部材36が摺動せず、ブレーキ液は、ブレーキ液流入室T2から車輪液圧路Eを通じて車輪ブレーキRBに作用する。これによって、ブレーキペダルL2の操作に応じた制動力が車輪ブレーキRBに付与される。
【0055】
一方、図5に示すように、出力液圧路D2に設けられた液圧検出センサ11rでマスタシリンダRMCからのブレーキ液圧の測定値が取得され、また、車輪液圧路Eに設けられた液圧検出センサ12rで車輪ブレーキRBへのブレーキ液圧の測定値が取得され、これらの物理量が制御装置20に取り込まれる。
ここで、制御装置20は、ブレーキペダルL2の操作に連動して前輪のブレーキ系統FKに対応する車輪ブレーキFBにブレーキ液圧を付与する必要があるか否か(すなわち、リア連動ブレーキ制御を実行する必要があるか否か)を、例えば、マスタシリンダRMCからのブレーキ液圧の測定値が所定の閾値に達したか否かを判定し、前輪にも制動力を作用させる必要があると判定した場合に、連動ブレーキ制御を行うべくモータ8を駆動する。この場合、制御装置20は、後輪のブレーキ系統RKに設けられた液圧検出センサ12rの測定値に基づいて、前輪のブレーキ系統FKに設けられた液圧検出センサ12fの目標圧力値を設定し、前輪のブレーキ系統FKのカット弁4aを閉弁させる制御、吸入弁5を開弁させる制御を行う。そして、前輪のブレーキ系統FKの液圧検出センサ12fで計測される測定値が目標圧力値に達するまでこの状態が継続され、車輪ブレーキFBに自動的にブレーキ液圧を作用させる。
【0056】
モータ8が駆動すると前輪のブレーキ系統FKのポンプ3が作動し、図5中太い一点差線で示すように、マスタシリンダFMC側に貯溜されているブレーキ液(マスタシリンダFMC、出力液圧路D1,D2および吸入液圧路Jに貯溜されているブレーキ液)が、ポンプ3を通じて吐出液圧路Gに吐出され、制御弁手段Vの入口弁6を通じて車輪液圧路Eに供給される。そして、ブレーキ液は、シミュレータ装置10Sのシミュレータ切替弁30を介して車輪ブレーキFBに作用する。これによって、車輪ブレーキFBに作用するブレーキ液圧が増圧されることになり、リア連動ブレーキ制御が行われる。
【0057】
このとき、車輪液圧路Eを通じてシミュレータ切替弁30に流入したブレーキ液は、図4に示すように、ブレーキ液流入室T2において押圧部材36の一端部36aに作用し(開弁圧となる)、押圧部材36が一方向弁31側へ摺動する。これによって、一方向弁31の弁体33が開口部32cから離座する。つまり、一方向弁31を介して、図5に示すように、マスタシリンダFMC側とストロークシミュレータ40とがブレーキ液の通流可能に連通された状態となって待機される。
【0058】
この状態から、前輪側のブレーキレバーL1が操作されて、追加のブレーキ液圧がマスタシリンダFMCから吐出されると、吐出されたブレーキ液は、出力液圧路D1を通じてシミュレータ装置10Sのシミュレータ切替弁30に流入する。ここで、前記のように、一方向弁31の弁体33が開口部32cから離座しているので、シミュレータ切替弁30に流入したブレーキ液は、図6に示すように、ブレーキ液流入室T1から一方向弁31(図4参照)を通じて連通路41に流入し、ストロークシミュレータ40に流入する。これによって、ブレーキレバーL1の操作反力がブレーキレバーL1に擬似的に付与される。
【0059】
その後、マスタシリンダFMC側のブレーキ液圧が車輪ブレーキFB側のブレーキ液圧以上になると(閉弁圧となると)、図2に示すように、戻しばね37の戻し力によって、押圧部材36が一方向弁31から離れる側(第五孔壁部55側)に戻される。これによって、弁体33が開口部32cに着座し、一方向弁31が閉じられて、マスタシリンダFMC側とストロークシミュレータ40とが遮断される。これによって、図7に示すように、マスタシリンダFMC側のブレーキ液圧が出力液圧路D1からブレーキ液流入室T1を介して出力液圧路D2に吐出する。
【0060】
そして、出力液圧路D2に吐出したブレーキ液は、液圧調整装置10Fに流入して、レギュレータ4に至り、チェック弁4bを通じて制御弁手段Vへ流入し、入口弁6を通じて車輪液圧路Eに流入する。
その後、ブレーキ液は、出口ポート12を通じてシミュレータ切替弁30のブレーキ液流入室T2に流入する。このとき、前記したブレーキ液流入室T1にもマスタシリンダFMCからのブレーキ液圧が作用しており、ブレーキ液流入室T1とブレーキ液流入室T2との間で差圧が生じていないので、押圧部材36が摺動することがなく、ブレーキ液は、ブレーキ液流入室T2から車輪液圧路Eを通じて車輪ブレーキFBに作用する。これによって、ブレーキレバーL1の操作に応じた制動力が車輪ブレーキFBに付与される。
【0061】
次に、このような連動ブレーキ制御において、前記のような前輪のブレーキレバーL1による追加入力があったときの、ブレーキレバーL1のストロークと荷重との関係について説明する。まず、本実施形態のシミュレータ装置10Sを有さないブレーキ液圧制御装置では、図8(a)に示すように、ブレーキレバーL1の通常操作時(図中実線で示した線図)に比べて、ブレーキレバーL1の連動操作時には、初期ストロークN1の時点から、ブレーキレバーL1の通常操作時の荷重W1よりも大きい荷重W2が作用し、ブレーキレバーL1の操作感が硬くなって、ブレーキレバーL1の良好な操作フィーリングが得られない。
これに対して、本実施形態では、ストロークシミュレータ40にブレーキ液が流入することによって、図8(b)に示すように、ブレーキレバーL1の初期ストロークが再現され、ブレーキレバーL1の通常操作時の線図に対応するようにブレーキレバーL1に擬似的に操作反力が付与されることとなる。これによって、ブレーキレバーL1の良好な操作フィーリングが得られるようになる。
【0062】
なお、制御装置20は、液圧検出センサ11fによって取得されたマスタシリンダFMC側のブレーキ液圧の測定値が、所定値を超えたときに、モータ8の駆動を停止させてポンプ3を停止するように制御する。これによって、ポンプ3の作動による脈動がマスタシリンダFMC側に伝わり難くなり、ブレーキレバーL1の良好な操作フィーリングを得ることができる。
【0063】
アンチロックブレーキ制御は、車輪がロック状態に陥りそうになったときに実行されるものであり、ロック状態に陥りそうな車輪の車輪ブレーキFB,RBに対応する制御弁手段Vを制御して、車輪ブレーキFB,RBに作用するブレーキ液圧を減圧、増圧あるいは一定に保持する状態を適宜選択することによって実現される。減圧、増圧および保持のいずれを選択するかは、図示せぬ車輪速度センサから得られた車輪速度に基づいて、制御装置20によって判断される。なお、アンチロックブレーキ制御中は、カット弁4aを開弁させ、吸入弁5を閉弁させる。
【0064】
以下、アンチロックブレーキ制御の概要を説明するが、前記したように、前輪のブレーキ系統FK、後輪のブレーキ系統RKの構成が同一であるので、前輪のブレーキ系統FKに対してアンチロックブレーキ制御を実行する場合を例示することとする。
【0065】
アンチロックブレーキ制御によって車輪ブレーキFBに作用しているブレーキ液圧を減圧する場合には、前輪のブレーキ系統FKにおける入口弁6を閉弁させるとともに、出口弁7を開弁させる。このようにすると、車輪液圧路Eのブレーキ液が開放路Hを通ってリザーバ2に流入し、その結果、車輪ブレーキFBに作用していたブレーキ液圧が減圧することになる。なお、アンチロックブレーキ制御を実行する場合には、ポンプ3(直接的にはモータ8)を駆動し、リザーバ2に貯溜されたブレーキ液を車輪液圧路Eに還流する。
【0066】
アンチロックブレーキ制御によって車輪ブレーキFBに作用しているブレーキ液圧を保持する場合には、前輪のブレーキ系統FKにおける入口弁6を閉弁させるとともに、出口弁7を閉弁させる。このようにすると、車輪ブレーキFB、入口弁6および出口弁7で閉じられた流路内にブレーキ液が閉じ込められることになり、その結果、車輪ブレーキFBに作用しているブレーキ液圧が一定に保持されることになる。
【0067】
アンチロックブレーキ制御によって車輪ブレーキFBに作用しているブレーキ液圧を増圧する場合には、入口弁6を開弁させるとともに、出口弁7を閉弁させる。このようにすると、マスタシリンダFMCで発生したブレーキ液圧が、出力液圧路D1,D2および車輪液圧路Eを介して車輪ブレーキFBに付与されることになるので、車輪ブレーキFBに作用するブレーキ液圧が増圧することになる。
【0068】
なお、アンチロックブレーキ制御や連動ブレーキ制御が実行されていない状態(通常設定状態)においては、各弁を駆動させる電磁コイルを消磁させ、カット弁4aおよび入口弁6を開弁させるとともに、出口弁7および吸入弁5を閉弁させる。この状態で、運転者がブレーキレバーL1、ブレーキペダルL2を操作すると、マスタシリンダFMC,RMCで発生したブレーキ液圧が、それぞれの出力液圧路D1,D2および車輪液圧路Eを介してそのまま車輪ブレーキFB,RBに付与されることになる。
【0069】
以上説明した本実施形態のブレーキ液圧制御装置Uによると、例えば、リア連動ブレーキ制御によりポンプ3が運転されることによって、昇圧されたブレーキ液圧が前輪の車輪ブレーキFBに作用し、そのブレーキ液圧がシミュレータ切替弁30にも流入して開弁圧に至ると、一方向弁31が押圧部材36に押圧されて開弁(弁体33が離座)され、マスタシリンダFMC側とストロークシミュレータ40との間が連通される。この状態からブレーキレバーL1が操作されると、マスタシリンダFMCからのブレーキ液圧は、シミュレータ切替弁30を通じてストロークシミュレータ40に流入され、ブレーキレバーL1の操作反力がブレーキレバーL1に対して擬似的に付与される。
そして、マスタシリンダFMC側のブレーキ液圧と車輪ブレーキFB側のブレーキ液圧との差圧が閉弁圧となると、シミュレータ切替弁30の一方向弁31が閉弁(弁体33が着座)されてマスタシリンダFMC側とストロークシミュレータ40との間が遮断され、マスタシリンダFMC側のブレーキ液圧が車輪ブレーキFB側へ流入する。つまり、本実施形態では、マスタシリンダFMC側とストロークシミュレータ40との連通・遮断を、マスタシリンダFMC側のブレーキ液圧と車輪ブレーキFB側のブレーキ液圧とによって作動するシミュレータ切替弁30によって好適に行うことができる。したがって、従来のように、これらの連通・遮断を行う電磁弁が不要となり、また、そのための電気的配線を必要とせず、コストの低減を図ることができるとともに消費電力を低減することができる。また、他の電磁弁等を含めたレイアウトの設定が行い易くなり、連通・遮断に係る液圧路などの設定も行い易くなって、部品組み付けの自由度も高まる。このことは、電磁弁等が設けられる基体50Aのコンパクト化にも寄与する。
【0070】
しかも、シミュレータ切替弁30は、例えば、マスタシリンダFMC側のブレーキ液圧と車輪ブレーキFB側のブレーキ液圧との差圧が閉弁圧となったときに閉弁(弁体33が着座)してマスタシリンダFMC側とストロークシミュレータ40との間を遮断し、マスタシリンダFMC側のブレーキ液圧が車輪ブレーキFBへ流入するので、ストロークシミュレータ40にブレーキ液圧が作用している状態から、車輪ブレーキFB側にブレーキ液圧が作用するように切り替えられるときの移行がスムーズに行われるようになり、ブレーキレバーL1の操作フィーリングが良好になる。
【0071】
また、シミュレータ切替弁30は、主として、一方向弁31と、押圧部材36と、戻しばね37と、蓋部材38とを装着穴50に装着することで、少ない部品点数で簡単に構成することができ、マスタシリンダFMC側とストロークシミュレータ40との連通・遮断を電磁弁を用いずに好適に行うことができる。
【0072】
また、押圧部材36は、例えば、リア連動ブレーキ制御時に、ブレーキレバーL1による追加操作が行われた場合に、マスタシリンダFMC側のブレーキ液圧と車輪ブレーキFB側のブレーキ液圧との差圧が閉弁圧になると、戻しばね37によって一方向弁31の弁体33が開口部32cに着座する方向へ移動するようになっているので、ブレーキレバーL1の初期ストロークからマスタシリンダFMC側のブレーキ液圧が車輪ブレーキFB側のブレーキ液圧に達するまでは、ストロークシミュレータ40にブレーキ液が流入し、達した後は、車輪ブレーキFB側にブレーキ液が流入することとなる。したがって、流入するブレーキ液がストロークシミュレータ40から車輪ブレーキFB側へスムーズに切り替えられることとなり、ブレーキレバーL1に付与される操作反力が連動ブレーキ制御によるブレーキ液圧を反映したものとなって、操作フィーリングが良好になる。
【0073】
また、シミュレータ切替弁30は、マスタシリンダFMC側のブレーキ液圧と車輪ブレーキFB側のブレーキ液圧とを利用して、機械的に押圧部材36を摺動させることで、例えば、マスタシリンダFMC側とストロークシミュレータ40との連通・遮断を行っているので、従来の電磁弁のような電気的制御を必要とせず、構成が簡単であるとともに信頼性の高いブレーキ制御を行うことができる。
また、ポンプ3で昇圧されたブレーキ液圧を押圧部材36の摺動(移動)に利用するので、別途、ブレーキ液を昇圧させるための部材を必要とせず、経済的である。
【0074】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記した実施形態に限定されることなく適宜変形して実施することが可能である。
例えば、前記実施形態では、装着穴50の奥側に車輪液圧路Eが形成され、入口側に出力液圧路D1,D2が形成された例を示したが、これに限られることはなく、図9に示すように、装着穴60の入口側に車輪液圧路Eを形成し、奥側に出力液圧路D1,D2を形成することで、シミュレータ切替弁30’(図10参照)を構成してもよい。なお、前記シミュレータ切替弁30と同一の要素には同一の符号を用い、重複する説明は省略する。
【0075】
装着穴60は、ブレーキ液圧制御装置U(図1参照)のボディを成す基体50Aの異なる側面等に形成されており、開口側から奥側に向けて段状に順次縮径する有底円筒状を呈している。装着穴60は、開口部60aと、この開口部60aに通じる第一孔壁部61と、この第一孔壁部61よりも径の小さい第二孔壁部62と、この第二孔壁部62よりも径の小さい第三孔壁部63と、この第三孔壁部63よりも幾分径の小さい第四孔壁部64とを備えている。そして、第一孔壁部61の内側面には車輪液圧路Eが開口形成されており、また、第二孔壁部62の内側面には連通路41が開口形成されており、さらに、第四孔壁部64の内側面には出力液圧路D1,D2が開口形成されている。
【0076】
一方向弁31は、第三孔壁部63に基部32の周部32bがかしめ固定され、リテーナ34が第四孔壁部64内に配置されて、ブレーキ液流入室T1を形成している。押圧部材36は、一端部36aが開口部60a側に向けられるとともに他端部36dが一方向弁31側へ向けられて、第二孔壁部62内に配置されている。
蓋部材38は、第一孔壁部61から第二孔壁部62に亘る大きさの有底円筒状とされており、大径部38Bと小径部38Aとからなる。大径部38Bは、外周壁に形成された凹部38bにOリング38cが装着されて、第一孔壁部61に密着した状態に挿入され、開口部60a側からリング状の抜け止め部材39で固定される。また、小径部38Aは、外周壁に形成された凹部38aにOリング38cが装着されて、第二孔壁部62に密着した状態に挿入され、中空部38Dには、押圧部材36の一端部36aがOリング38eを介して摺動可能に挿入される。また、中空部38Dには、ブレーキ液流入室T2が形成され、このブレーキ液流入室T2に通孔381を通じて車輪液圧路Eが連通する。
【0077】
このようなシミュレータ切替弁30’によれば、押圧部材36は、車輪液圧路Eのブレーキ液圧(車輪ブレーキ側のブレーキ液圧)を受けて一方向弁31側へ摺動可能であり、その摺動により、図11に示すように、弁体33を押圧して弁体33を開口部32cから離座させる役割をなす。また、押圧部材36は、マスタシリンダFMC側(出力液圧路D1側)のブレーキ液圧が車輪ブレーキFB側(車輪液圧路E側)のブレーキ液圧以上になったときに、戻しばね37の戻し力によって、一方向弁31から離れる側(第一孔壁部61側)に戻されるようになっている。したがって、マスタシリンダFMC側のブレーキ液圧が、車輪ブレーキFB側のブレーキ液圧以上となると、一方向弁31の弁体33が開口部32cに着座することとなる(図9参照)。
【0078】
したがって、このようなシミュレータ切替弁30’を用いることによっても、前記実施形態と同様の作用効果が得られ、ストロークシミュレータ40を備えたブレーキ液圧制御装置Uにおいて、製造コストを低減することができるとともに消費電力を小さくすることができる。
【0079】
なお、前記したシミュレータ切替弁30,30’の各構成部材は、前記した形状に限られるものではなく、任意の形状を採用することができる。
また、前記実施形態では、ブレーキ液圧制御装置Uをバーハンドルタイプの車両(自動二輪車)に適用した例について説明したが、これに限られるものではなく、例えば、四輪自動車等に対しても適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の一実施形態に係る車両用ブレーキ液圧制御装置に適用されるブレーキ液圧回路図である。
【図2】シミュレータ切替弁を示す断面図である。
【図3】シミュレータ切替弁を示す分解斜視図である。
【図4】シミュレータ切替弁の動作を示す断面図である。
【図5】ブレーキ液圧回路図の説明図である。
【図6】ブレーキ液圧回路図の説明図である。
【図7】ブレーキ液圧回路図の説明図である。
【図8】(a)(b)は連動ブレーキ制御に対応するブレーキレバーのストロークと荷重との関係を示した図である。
【図9】シミュレータ切替弁の変形例を示す断面図である。
【図10】シミュレータ切替弁の変形例を示す分解斜視図である。
【図11】シミュレータ切替弁の変形例の動作を示す断面図である。
【符号の説明】
【0081】
2 リザーバ
3 ポンプ
4 レギュレータ
4a カット弁
4c リリーフ弁
5 吸入弁
6 入口弁
7 出口弁
8 モータ
10F,10R 液圧調整装置
10S シミュレータ装置
20 制御装置
30 シミュレータ切替弁
30’ シミュレータ切替弁
31 一方向弁部材
32 基部
32a 液路
32c 開口部
33 弁体
36 押圧部材
37 戻しばね
38 蓋部材
40 ストロークシミュレータ
41 連通路
44 スプリング
50 装着穴
50A 基体
FB,RB 車輪ブレーキ
FK,RK ブレーキ系統
FMC,RMC マスタシリンダ
L1 ブレーキレバー(ブレーキ操作子)
L2 ブレーキペダル(ブレーキ操作子)
U ブレーキ液圧制御装置
V 制御弁手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレーキ操作子のストローク量に応じたブレーキ液圧を発生するマスタシリンダから車輪ブレーキに至る液圧路を具備するブレーキ系統を備える車両用ブレーキ液圧制御装置であって、
前記ブレーキ系統が、前記液圧路を開閉するカット弁を有するレギュレータと、前記レギュレータを迂回する吸入路と、前記吸入路に設けられ、前記レギュレータよりも前記マスタシリンダ側にあるブレーキ液を吸入して前記レギュレータよりも前記車輪ブレーキ側に吐出するポンプと、前記ポンプの吸入側において前記吸入路を開閉する吸入弁と、を具備しており、
さらに、前記液圧路に設けられ、前記マスタシリンダからのブレーキ液圧が流入され前記ブレーキ操作子の操作反力を当該ブレーキ操作子に擬似的に付与するストロークシミュレータと、
前記マスタシリンダと前記ストロークシミュレータとの間の前記液圧路に設けられ、前記マスタシリンダで発生させたブレーキ液圧と前記車輪ブレーキに付与されたブレーキ液圧とによって作動して、前記マスタシリンダ側と前記ストロークシミュレータ側との間を連通・遮断するシミュレータ切替弁と、を備え、
前記シミュレータ切替弁は、常閉型の弁であり、
前記マスタシリンダ側のブレーキ液圧と前記車輪ブレーキ側のブレーキ液圧との差圧が開弁圧となったときに開弁して、前記ストロークシミュレータへのブレーキ液の流入を許容するとともに、前記マスタシリンダ側のブレーキ液圧と前記車輪ブレーキ側のブレーキ液圧との差圧が閉弁圧となったときに閉弁して、前記ストロークシミュレータへのブレーキ液の流入を遮断し、前記マスタシリンダのブレーキ液圧を前記車輪ブレーキへ付与することを特徴とする車両用ブレーキ液圧制御装置。
【請求項2】
前記シミュレータ切替弁は、
前記ストロークシミュレータ側から前記マスタシリンダ側へのブレーキ液の通流を許容する一方向弁と、
前記車輪ブレーキ側のブレーキ液圧を受けて移動し、前記一方向弁の弁体を押圧して離座させる押圧部材と、
前記一方向弁を着座させる方向へ前記押圧部材を付勢する付勢手段と、
を備えてなることを特徴とする請求項1に記載の車両用ブレーキ液圧制御装置。
【請求項3】
前記押圧部材は、前記マスタシリンダ側のブレーキ液圧と前記車輪ブレーキ側のブレーキ液圧との差圧が閉弁圧となったときに、前記付勢手段によって一方向弁が着座する方向へ移動することを特徴とする請求項2に記載の車両用ブレーキ液圧制御装置。
【請求項4】
二つの前記ブレーキ系統を有し、
一方の前記ブレーキ系統に対応する前記車輪ブレーキにブレーキ液圧が付与された場合に、他方の前記ブレーキ系統に対応する前記ポンプが運転されて、当該ブレーキ系統に対応する前記車輪ブレーキにもブレーキ液圧が付与されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の車両用ブレーキ液圧制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−213633(P2008−213633A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−52895(P2007−52895)
【出願日】平成19年3月2日(2007.3.2)
【出願人】(000226677)日信工業株式会社 (840)
【Fターム(参考)】