説明

車両用乗員保護システム

【課題】乗員検出センサを設けずにイグニッションスイッチのオフ時でも乗員保護手段を作動させることのできる車両用乗員保護システムを提供する。
【解決手段】乗員が携帯するインテリジェントキー20と制御装置12との間で無線通信を行うことにより互いのIDコードを照合してドアの施解錠を行うとともに、その無線通信によりインテリジェントキー20の車内外の位置を認識する車両用電子キーシステム10と、衝突を検出または予測するGセンサ37や近接センサ38と、このGセンサ37や近接センサ38の出力に基づいて衝突が検出または予測されたときエアバッグ31〜34やプリテンショナ35,36を作動させる制御装置40とを有する乗員保護装置30とを備えた車両用乗員保護システム1であって、イグニッションスイッチ42のオフ時にインテリジェントキー20が車室内にあることを車両用電子キーシステム10が認識しているとき、制御装置40はエアバッグ31〜34やプリテンショナ35,36を作動可能状態にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、衝突を検出したとき又は衝突が予測されたとき乗員保護手段を作動させる車両用乗員保護システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、衝突を検出または予測する衝突判定検出手段と、この衝突判定検出手段の出力に基づいて衝突が検出または予測されたとき乗員保護手段を作動させる制御手段とを有する乗員保護装置が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
かかる乗員保護装置は、乗員検出センサを設けており、イグニッションスイッチのオフ時であっても、他の車両が衝突してきたときには、乗員検出センサが乗員を検出していれば乗員保護手段を作動させて乗員の保護を図るようになっている。
【特許文献1】特開平11−255067号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような乗員保護装置にあっては、乗員検出センサを設けているためコスト高になってしまうという問題があった。
【0005】
この発明の目的は、乗員検出センサを設けずにイグニッションスイッチのオフ時でも乗員保護手段を作動させることのできる車両用乗員保護システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、乗員が携帯する電子キーと車載装置との間で無線通信を行うことにより互いのIDコードを照合してドアの施解錠を行うとともに、その無線通信により前記電子キーの車内外の位置を認識する車両用電子キーシステムと、
衝突を検出または予測する衝突判定検出手段と、この衝突判定検出手段の出力に基づいて衝突が検出または予測されたとき乗員保護手段を作動させる制御手段とを有する乗員保護装置とを備えた車両用乗員保護システムであって、
イグニッションスイッチのオフ時に前記電子キーが車室内にあることを前記車両用電子キー装置が認識しているとき、前記制御手段は乗員保護手段を作動可能状態にすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、イグニッションスイッチのオフ時に電子キーが車室内にあることを車両用電子キーシステムが認識しているとき、制御手段は乗員保護手段を作動可能状態にするものであるから、乗員検出センサを設けなくてもイグニッションスイッチのオフ時でも乗員保護手段を作動させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、この発明に係る車両用乗員保護システムの実施の形態である実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例】
【0009】
図1は車両用乗員保護システム1の構成を示したブロック図である。この車両用乗員保護システム1は、インテリジェントキーシステム(車両用電子キーシステム)10と、乗員保護装置30とを備えている。
【0010】
インテリジェントキーシステム10は、ドアロック用モータMや図示しない各種の電装部品を駆動制御する制御装置(コントロールユニット)12と、乗員が携帯する携帯機であるインテリジェントキー(電子キー)20等とを備えている。
【0011】
制御装置(車載装置)12は、インテリジェントキー20との間で無線通信を行うことにより互いのIDコードを照合するとともに、このIDコードの照合結果に基づいてドアの施解錠を行ったり、その無線通信によりインテリジェントキー20の車内外の位置を認識するようになっている。この車内外の位置の認識は例えば電波の強度によって行う。
【0012】
乗員保護装置30は、図示しないステアリングホイールに内設された運転席側フロントエアバッグ(乗員保護手段)31と、図示しないインストルメントパネルに内設された助手席側フロントエアバッグ(乗員保護手段)32と、図示しない運転席のシートバックに内接された運転席側サイドエアバッグ(乗員保護手段)33と、図示しない助手席のシートバックに内設された助手席側サイドエアバッグ(乗員保護手段)34と、必要時にシートベルトの緩みをとって乗員の体勢を正規の位置に規制する運転席側プリテンショナ(乗員保護手段)35および助手席側プリテンショナ(乗員保護手段)36と、加速度を検出するGセンサ(衝突判定検出手段)37と、他の車両の急接近状態を超音波によって検出する近接センサ(衝突判定検出手段)38と、Gセンサ37の出力信号と近接センサ38の出力信号とに基づいてROM39に格納されたプログラムに従って各エアバッグ31〜34の展開や各プリテンショナ35,36の駆動を制御する制御装置(制御手段)40とを備えている。なお、RAM41は必要なデータを記憶するメモリである。42はイグニションスイッチ、43はバッテリである。
[動 作]
次に、上記のように構成される車両用乗員保護システム1の動作を図2および図3に示すフロー図に基づいて説明する。
【0013】
ステップ1では、イグニッションスイッチ42がオフになったか否かが判断され、ノーであればステップ6へ進み、イエスであればステップ2へ進む。
【0014】
ステップ2では、ドアスイッチが開から閉になったか否かが判断され、ノーであればリターンし、イエスであればステップ3へ進む。
【0015】
すなわち、車外にいたドライバが乗車してイグニッションスイッチ42をオンするまでは、ステップ1からステップ2を経てステップ3へ進むことになる。
【0016】
ここでは、車外にいるドライバが乗車した場合について説明する。
【0017】
ステップ3では、制御装置12とインテリジェントキー20との間で無線通信を行い、この無線通信により制御装置12はインテリジェントキー20の車内外の位置を認識する。
【0018】
ステップ4では、インテリジェントキー20が車室内にあるか否かが判断され、ノーであればステップ7へ進み、イエスであればステップ5へ進む。
【0019】
ここでは、車外にいたドライバが乗車したことによりステップ4ではイエスと判断されてステップ5へ進む。
【0020】
ステップ5では、乗員保護装置30の制御装置40をウエイクアップさせるウエイクアップオン信号を出力してリターンする。
【0021】
すなわち、車外にいたドライバが乗車してイグニッションスイッチ42をオンするまでは、ステップ1ないしステップ5の処理動作が繰り返し行われ、制御装置40をウエイクアップさせるウエイクアップオン信号が制御装置12から出力されることになる。
【0022】
次に、乗車しているドライバがイグニッションスイッチ42をオンからオフにして下車する場合について説明する。
【0023】
この場合、イグニッションスイッチ42をまだオフにしていないとき、ステップ1ではノーと判断されてステップ6へ進む。ステップ6ではイグニッションスイッチ42がオンからオフになったか否かが判断され、ノーであればリターンする。すなわち、ドライバがイグニッションスイッチ42をオフするまでステップ1およびステップ6の処理動作が繰り返し行われることになる。
【0024】
ドライバがイグニッションスイッチ42をオフにすると、ステップ6でイエスと判断されてステップ3へ進む。
【0025】
ステップ3では、上述のように制御装置12とインテリジェントキー20との間で無線通信を行ってインテリジェントキー20の車内外の位置が認識される。
【0026】
そしてステップ4では、インテリジェントキー20が車室内にあるか否かが判断される。ドライバがまだ乗車している場合にはステップ5へ進み、ドライバがすでに下車している場合にはステップ7へ進む。
【0027】
ステップ7では、乗員保護装置30の制御装置40をウエイクアップさせないウエイクアップオフ信号を制御装置12が出力してリターンする。
【0028】
ドライバが下車していない場合には、ステップ4でイエスと判断されてステップ5へ進み、ステップ5ではウエイクアップオン信号を出力してリターンする。
【0029】
このように、イグニッションスイッチ42がオフされていても、ドライバが乗車していれば、制御装置40をウエイクアップさせるウエイクアップオン信号が制御装置12から出力される。
【0030】
一方、図3に示すフロー図のステップ10では、イグニッションスイッチ42がオンかオフかが判断され、ノーであればステップ13へ進み、イエスであればステップ10Aへ進む。
【0031】
ステップ10Aでは、制御装置40がウエイクアップオン信号を出力してから所定時間経過したか否かが判断される。すなわち、ウエイクアップオン信号を出力してから計時を開始する内部タイマがタイムアップしたか否かが判断され、ノーであればタイプアップするまでステップ10Aで待機することになる。ここでは、所定時間は例えば20〜30秒に設定される。そして、内部タイマがタイムアップするとステップ11へ進む。
【0032】
ステップ11では、制御装置12がウエイクアップオン信号を出力したか否かが判断され、ノーであればステップ14へ進み、イエスであればステップ12へ進む。
【0033】
ステップ12では、エアバッグ展開許可にする。これは、例えばGセンサ37や近接センサ38を動作させるものである。
【0034】
ステップ13では、エアバッグ展開可能状態にする。すなわち、Gセンサ37による衝突の検知や近接センサ38による他の車両の急接近状態の検知に基づいて、制御装置40が各エアバッグ31〜34や各プリテンショナ35,36を作動可能状態にするものである。
【0035】
このように、制御装置12がウエイクアップオン信号を出力すれば、すなわちイグニッションスイッチ42がオフされていてもドライバが乗車していれば、制御装置40はGセンサ37や近接センサ38の検知に基づいて各エアバッグ31,〜34や各プリテンショナ35,36を作動可能状態にするものであるから、イグニッションスイッチ42のオフ時であっても他の車両が衝突してきたときや急接近してきたときには乗員を確実に保護することができる。
【0036】
しかも、イグニッションスイッチ42がオフされている際に、制御装置12とインテリジェントキー20との間で無線通信を行ってインテリジェントキー20が車内にあるとき、インテリジェントキーシステム10は乗員が車内にいると判断するものであるから、乗員検出センサを設けなくてもよく、このため車両用乗員保護システム1を安価にすることができる。
【0037】
ステップ11でノーと判断されてステップ14へ進んだ場合、すなわち、イグニッションスイッチ42がオフでドライバが車室にいない場合、ステップ14ではエアバッグユニットである乗員保護装置30の低消費電流モード、すなわちスリーピングモードとなり、バッテリ43の電流消費が抑制される。
【0038】
また、ステップ10Aで内部タイマがタイムアップしてからステップ11へ進むようにしたものであるからので、乗員が乗車してから着座する前にエアバッグ31〜34が展開してしまうのを防止することができ、また、イグニッションスイッチ42をオフにしてインテリジェントキー20を置き忘れて車外に出た場合に、バッテリ43の電流消費を抑制することができる。
【0039】
以上、この発明の最良の実施の形態の実施例を説明したが、この実施例に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない程度の設計変更は、この発明に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】この発明に係る車両用乗員保護システムの構成を示したブロック図である。
【図2】図1の車両用乗員保護システムを構成する車両用電子キーシステムの処理動作を示したフロー図である。
【図3】図1の車両用乗員保護システムを構成する乗員保護装置の処理動作を示したフロー図である。
【符号の説明】
【0041】
1 車両用乗員保護システム
10 車両用電子キーシステム
12 制御装置
20 インテリジェントキー(電子キー)
30 乗員保護装置
31〜34 エアバッグ(乗員保護手段)
35,36 プリテンショナ(乗員保護手段)
40 制御装置(制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員が携帯する電子キーと車載装置との間で無線通信を行うことにより互いのIDコードを照合してドアの施解錠を行うとともに、その無線通信により前記電子キーの車内外の位置を認識する車両用電子キーシステムと、
衝突を検出または予測する衝突判定検出手段と、この衝突判定検出手段の出力に基づいて衝突が検出または予測されたとき乗員保護手段を作動させる制御手段とを有する乗員保護装置とを備えた車両用乗員保護システムであって、
イグニッションスイッチのオフ時に前記電子キーが車室内にあることを前記車両用電子キー装置が認識しているとき、前記制御手段は乗員保護手段を作動可能状態にすることを特徴とする車両用乗員保護システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2007−230438(P2007−230438A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−56334(P2006−56334)
【出願日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】