説明

車両用熱交換器

【課題】 ラジエータのコンパクト化を実現できる車両用熱交換器の提供。
【解決手段】 ラジエータ2の流通媒体の流通経路(熱交換部10のパイパス管11)をエンジンフード12に沿って配設し、該流通媒体をエンジンフード12と熱交換するように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジン冷却系の車両用熱交換器としてラジエータ、インタークーラ、オイルクーラ等が採用され、空調冷却系の車両用熱交換器としてコンデンサ等が採用されている(特許文献1〜4参照)。
また、このような車両用熱交換器は、エンジンルームの車両前部に配置され、流通媒体をエンジンルームに流入する車両走行風(あるいはファンによる強制風)と熱交換させて冷却するように構成されている。
【特許文献1】特開2006−57930号公報
【特許文献2】特開2006−240360号公報
【特許文献3】特開平11−287115号公報
【特許文献4】特開平6−34240号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、近年、車室内の拡大に伴ってエンジンルームは狭小化する傾向にあるため、車両用熱交換器のコンパクト化が望まれていた。
また、エンジンルームの車両前部に大型で複数の車両用熱交換器を搭載することは、車両衝突時の安全性を考慮するとあまり好ましくない。
【0004】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、車両用熱交換器のコンパクト化を実現できる車両用熱交換器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の請求項1記載の発明では、エンジン冷却系または空調冷却系の流通媒体の流通経路を車両のボディに沿って配設し、該流通媒体を車両のボディと熱交換するように構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の請求項1記載の発明にあっては、エンジン冷却系または空調冷却系の流通媒体の流通経路を車両のボディに沿って配設し、該流通媒体を車両のボディと熱交換するように構成したため、車両用熱交換器のコンパクト化を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、この発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0008】
以下、実施例1を説明する。
なお、本実施例1では車両用熱交換器をラジエータに適用した場合について説明する。
図1は本発明の実施例1の車両用熱交換器が採用された車両の概略図、図2は本実施例1のラジエータの斜視図、図3は本実施例1の熱交換部のパイパス管を説明する図、図4は図3のS4−S4線における断面図である。
図5、6は本実施例1の作用を説明する図、図7はその他の熱交換部のバイパス管11を配設する車両の部位の一例を説明する図である。
【0009】
先ず、全体構成を説明する。
図1に示すように、本実施例1の車両用熱交換器が採用された車両Aでは、エンジンルーム1内の車両前部にラジエータ2が搭載されると共に、このラジエータ2の車両後方側にファン3、エンジン4の順番で搭載されている。
【0010】
図2に示すように、ラジエータ2は、上下一対の樹脂製のタンク5,6の間にアルミ製のコア部7が配置される所謂ダウンフロー型のラジエータが採用されている。
なお、ラジエータ2は、左右一対のタンク5,6の間にコア部7が配置される所謂パラレルフロー型のラジエータを採用しても良い。
【0011】
タンク5には、その内部と連通した状態で車両後方側へ円筒状に突出する入力ポート5aが設けられる一方、タンク6には、その内部と連通した状態で車両後方側へ円筒状に突出する出力ポート6aが設けられている。
【0012】
コア部7は、それぞれ対応するタンク5,6が装着される一対のチューブプレート7a,7bと、両端部がチューブプレート7a,7bに挿通し固定された複数の偏平管状のチューブ7cと、隣接するチューブ7c同士間に配置された波状のフィン7dと、両端部がチューブプレート7a,7bに挿通し固定された一対のレインフォース7e,7fが備えられている。
【0013】
また、本実施例1のラジエータ2は、タンク5,6を除くコア部7の全ての構成部材がアルミ製であり、コア部7の各構成部材の接合部のうちの少なくとも一方にはクラッド層(ブレージングシート)が設けられ、これらは予め仮組みされた後、図外の加熱炉で熱処理されることにより各接合部がろう付けされて一体的に形成されている。
【0014】
図1に示すように、エンジン4の流通媒体の流通経路は、各接続管8a〜8cで制御バルブV1,V2を介してラジエータ2の入力ポート5aに接続される他、各接続管8d〜8fでポンプ9を介してラジエータ2の出力ポート6aに接続されている。
さらに、両端部がそれぞれ対応する制御バルブV1,V2に接続され、且つ、後述する熱交換部10を有するバイパス管11が配設されている。
【0015】
図3に示すように、熱交換部10は、パイパス管11の中途部分が蛇行するような形状を成してエンジンフード12の裏面に配設される他、その両端部はそれぞれ対応する制御バルブV1,V2に対して伸縮可能に接続されている。
また、図4(a)に示すように、バイパス管11はエンジンフード12の裏面に貼着された面方向の伝熱性に優れ、形状自由度の高い素材、例えばグラファイトから成るシート状の伝熱部材13にクリップ等の図外の固定手段を用いて固定されている。
さらに、パイパス管11の外周の一部は、伝熱部材13と同一素材の伝熱部材13aによって被覆されている。
なお、伝熱部材13,13aやパイパス管11の素材や配設レイアウト等は適宜設定でき、図4(b)に示すように、伝熱部材13を省略してバイパス管11を直接エンジンフード12に当接させても良い。
【0016】
次に、作用を説明する。
このように構成された車両Aでは、エンジン4の高負荷時において車両Aが停止中(夏場の渋滞時など)の場合には、図5に示すように、ファン3及びポンプ9が稼働すると共に、制御バルブV1が接続管8b側へ開く一方、制御バルブV2が接続管8c側へ開いた状態となる。
【0017】
この際、エンジン4から排出された高温な流通媒体は、両制御バルブV1,V2を介してラジエータ2の入力ポート5aからタンク5に流入した後、コア部7の各チューブ7cを流通してタンク6へ流入する間にファン3の強制風(矢印X1で図示)と熱交換して冷却された後、出力ポート6aからポンプ9を介して再びエンジン4へ戻る。
【0018】
一方、エンジン4の高負荷時において車両Aが走行中の場合には、図6に示すように、ポンプ9が稼働すると共に、制御バルブV1,V2がバイパス管11側へ開いた状態となる。
【0019】
この際、エンジン4から排出された高温な流通媒体は、制御バルブV1を介して熱交換部10のバイパス管11を流通した後、制御バルブV2を介してラジエータ2の入力ポート5aからタンク5へ流入する。
この際、熱交換部10のバイパス管11の高温な流通媒体を伝熱部材13を介して車両走行風(矢印X2で図示)を受けた低温なエンジンフード12と熱交換して冷却できる。
また、タンク5に流入した流通媒体は、コア部7の各チューブ7cを流通してタンク6に流入する間に車両走行風(矢印X3で図示)と熱交換してさらに冷却された後、出力ポート6aからポンプ9を介して再びエンジン4へ戻る。
【0020】
従って、従来の発明に比べてラジエータ2のタンク5に流入する流通媒体の温度を熱交換部10によって予め低くできるため、ラジエータ2に掛かる負荷を軽減してラジエータ2をコンパクトにできる。
【0021】
また、ラジエータ2をコンパクトにできることにより、車室内の拡大化に対応できる上、車両衝突時の安全性を向上できる。
【0022】
また、熱交換部10のバイパス管11をエンジンフード12に沿って配設したため、バイパス管11を沿わせるスペースを容易に確保して配管長を長く形成できる上、エンジンフード12は広い面積で車両走行風を直接受けるため、好適となる。
【0023】
なお、前述したファン3、ポンプ9、制御バルブV1,V2の作動は、この限りではなく、例えば、走行中であっても車両走行風が十分に得られないような低速走行時にはファン3を稼働させたり、高速走行時にはラジエータ2のみで流通媒体の冷却を行う等、流通媒体の温度状況に応じて適宜設定できる。
また、熱交換部10のバイパス管11の流通媒体の放熱性能を向上させれば、ラジエータ2を省略することも可能となる。
【0024】
さらに、熱交換部10のパイパス管11は、図7に示すように、車両Aのフェンダー20やルーフ21等のボディに沿って配設しても同様の効果が得られる。
しかしながら、車両床下に熱交換部10のパイパス管11を配設すると、排気系の熱による悪影響を受けやすく、熱気がエンジン4や車室内に籠もり易くなる上、車両走行風を直接受けることができないため、冷却性能が低下して好ましくない。
【0025】
次に、効果を説明する。
以上、説明したように、本実施例1の車両用熱交換器にあっては、ラジエータ2の流通媒体の流通経路(熱交換部10のパイパス管11)をエンジンフード12に沿って配設し、該流通媒体をエンジンフード12と熱交換するように構成したため、ラジエータ2のコンパクト化を実現できる。
【0026】
また、車両Aのボディをエンジンフード12としたため、広い放熱面積を容易に確保して配管長を長く形成できる上、車両走行風を効率よく利用でき、好適となる。
【0027】
また、車両Aのボディをフェンダー20またはルーフ21としたため、エンジンフード12と同様に広い放熱面積を容易して確保して配管長を長く形成できる上、車両走行風を効率よく利用でき、好適となる。
【0028】
以上、本実施例を説明してきたが、本発明は上述の実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても、本発明に含まれる。
例えば、本実施例1では、車両用熱交換器はエンジン冷却系のラジエータに限らず、コンデンサ、ラジエータとコンデンサが一体的に形成された一体型熱交換器、インタークーラ、オイルクーラの他、空調冷却系のコンデンサ等の一般的な全ての車両用熱交換器に適用できる。
【0029】
また、本実施例1では、エンジン4から排出された流通媒体をコア部7のバイパス管11に流通させることによりエンジンフード12と熱交換させて冷却することとしたが、エンジンスタート時にエンジンフード12の表面温度が流通媒体の温度(外気と略同一温度)よりも高い場合には、流通媒体を暖めてエンジン4の暖気を行うのに利用することも考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施例1の車両用熱交換器が採用された車両の概略図である。
【図2】本実施例1のラジエータの斜視図である。
【図3】本実施例1の熱交換部のパイパス管を説明する図である。
【図4】図3のS4−S4線における断面図である。
【図5】本実施例1の作用を説明する図である。
【図6】本実施例1の作用を説明する図である。
【図7】その他の熱交換部のバイパス管を配設する車両の部位の一例を説明する図である。
【符号の説明】
【0031】
A 車両
V1、V2 制御バルブ
1 エンジンルーム
2 ラジエータ
3 ファン
4 エンジン
5、6 タンク
5a 入力ポート
6a 出力ポート
7 コア部
7a、7b チューブプレート
7c チューブ
7d フィン
7e、7f レインフォース
8a、8b、8c、8d、8e、8f、8g 接続管
9 ポンプ
10 熱交換部
11 パイパス管
12 エンジンフード
13、13a 伝熱部材
20 フェンダー
21 ルーフ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン冷却系または空調冷却系の流通媒体の流通経路を車両のボディに沿って配設し、該流通媒体を車両のボディと熱交換するように構成したことを特徴とする車両用熱交換器。
【請求項2】
請求項1記載の車両用熱交換器において、
前記車両のボディをエンジンフードとしたことを特徴とする車両用熱交換器。
【請求項3】
請求項1または2記載の車両用熱交換器において、
前記車両のボディをフェンダーとしたことを特徴とする車両用熱交換器。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の車両用熱交換器において、
前記車両のボディをルーフとしたことを特徴とする車両用熱交換器。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の車両用熱交換器において、
前記車両のボディは裏面にシート状の伝熱部材が貼着され、該伝熱部材に前記流通媒体の流通経路として配設された配管が当接固定されたことを特徴とする車両用熱交換器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2008−87747(P2008−87747A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−274220(P2006−274220)
【出願日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】