説明

車両用発電制御装置

【課題】回生発電時に効率よく蓄電装置に充電しつつ、発電トルク変化によるドライバビリティの悪化を防止する.
【解決手段】蓄電装置12の推定充電率が目標充電率より低い場合には、蓄電装置の推定充電率が目標充電率となるよう発電機10の発電制御を行う通常発電制御手段と、車両の減速中でかつ内燃機関の燃料供給を停止している期間に、発電機の発電制御を行う回生発電制御手段とを備えた車両用発電制御装置において、車速に応じて減速時の回生発電における充電量を予測する回生時充電量予測手段を備え、回生時充電量予測手段で求めた回生時予測充電量の増加に伴って蓄電装置12の目標充電率を低下させるとともに、回生発電制御手段は、発電機において蓄電装置への充電有無で発電に必要となるトルクの差が所定トルク差以内となるよう発電量を減少する方向に制限する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両減速時の回生発電を積極的に実施する車両用発電制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の車両の発電制御装置のうち、特に車両減速時の回生発電を積極的に実施する車両用発電制御装置については、特許文献1に示されるように、車速の上昇に伴い発電装置から二次電池に対する充電率を低減させ、回生電流による充電を増加させるものがある。
【0003】
この特許文献1に示される従来装置によれば、車速のほぼ二乗に比例する回生エネルギが無駄なく回収できることになり、車両の走行に必要な燃料の消費を大幅に低減することが可能になる。
【0004】
また、回生発電時のトルク制御については、電気自動車に関するものであるが、特許文献2に示されるように、アクセルペダル及びブレーキペダルが共に操作されていない時にのみ、手動スイッチの操作に応じた回生制動力の可変制御を行うように構成されているものがある。
【0005】
この特許文献2に示される従来装置によれば、ドライバの好みで回生制動力を調整できるようにしながら、ドライバが十分な制動を望む際には確実に十分な回生制動力が発揮される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−58111号公報
【特許文献2】特開平8−163706号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述の従来の装置の場合、走行中の回生発電実行前は、蓄電装置の充電率は低く保たれており、特にブレーキ操作中は発電量を制限していないため、回生発電初期には、蓄電装置もしくは発電機の許容範囲内ではあるが大電流が流れ発電トルクも大きなものとなる。しかし、長い下り坂等で蓄電装置が満充電となり発電機が発電を停止すると、発電トルクが急に低下し、ショックの発生や減速感の変化(減少)によるドライバビリティの悪化が懸念される。
【0008】
また、回生制動力を運転者が設定できるようにした場合でも、設定した際の蓄電装置の充電率が特定されていなければ、設定時と異なる充電率の場合には運転者の期待した制動力が得られるかどうかは不明であり、一方、蓄電装置の充電率に応じた設定を行うには、装置および操作が複雑になり現実的ではない。
【0009】
また、前述のような回生制動力制限を実施することによる回生発電量の低下や回生発電期間が短い場合等で、回生電力量が不十分な状態で回生発電が終了した後の発電制御については、特に言及されていない。
【0010】
この発明は、前述した従来の装置における課題を解決するためになされたもので、回生発電時に効率よく蓄電装置に充電しつつ、回生発電時に必要となる発電トルク変化による
ドライバビリティの悪化を防止することができる車両用発電制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明に係わる車両用発電制御装置は、車両の駆動力を発生する内燃機関と、車両または内燃機関から供給される運動エネルギーを電気エネルギーに変換する発電機と、発電機で発電された電気エネルギーを蓄えるとともに車両で必要な電力を供給する蓄電装置と、蓄電装置の電圧および電流を検出する電圧・電流検出手段と、電圧・電流検出手段が検出した電圧および電流から蓄電装置の充電率を推定する推定充電率算出手段と、蓄電装置の目標充電率を算出する目標充電率算出手段と、蓄電装置の推定充電率が目標充電率算出手段で算出した目標充電率より低い場合には、蓄電装置の推定充電率が目標充電率となるよう発電機の発電制御を行う通常発電制御手段と、車両の減速中でかつ内燃機関の燃料供給を停止している期間に、蓄電装置の充電率が過充電とならない所定充電率以下で発電機の発電制御を行う回生発電制御手段と、車両の走行速度を検出する車速検出手段と、車速検出手段で検出した車速に応じて減速時の回生発電における充電量を予測する回生時充電量予測手段とを備え、目標充電率算出手段は、回生時充電量予測手段で求めた回生時予測充電量の増加に伴って蓄電装置の目標充電率を低下させるとともに、回生発電制御手段は、発電機において蓄電装置への充電有無で発電に必要となるトルクの差が所定トルク差以内となるよう発電量を減少する方向に制限し、通常発電制御手段は、回生発電制御手段が実行されているときは作動を停止するようにしたものである。
【発明の効果】
【0012】
この発明の車両用発電制御装置によれば、車速に応じて減速時の回生発電における充電量を予測し、回生時予測充電量の増加に伴って蓄電装置の目標充電率を低下させるとともに、発電機において蓄電装置への充電有無で発電に必要となるトルクの差が所定トルク差以内となるよう回生発電量を減少する方向に制限するので、回生発電時に効率よく蓄電装置を充電することができるとともに、回生発電時の発電トルク変化によるドライバビリティの悪化を防止することができる。
【0013】
上述した、またその他の、この発明の目的、特徴、効果は、以下の実施の形態における詳細な説明および図面の記載からより明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明の実施の形態1の車両用発電制御装置における、電源系システム構成を示す構成図である。
【図2】この発明の実施の形態1の車両用発電制御装置における、車両発進から停止までの各パラメータの挙動を示すタイミングチャートである。
【図3】この発明の実施の形態1の車両用発電制御装置における、一定周期で実行される処理を示すフローチャートである。
【図4】この発明の実施の形態1の車両用発電制御装置における、回生発電制御処理を示すフローチャートである。
【図5】この発明の実施の形態1の車両用発電制御装置における、通常発電制御処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
実施の形態1.
以下、この発明の実施の形態1による車両用発電制御装置について、図面を参照しながら説明する。図1は、この発明の実施の形態1の車両用発電制御装置における、電源系システム構成を示す構成図である。
【0016】
図1において、内燃機関1は、複数の気筒(図示の例では4気筒)を備え、それぞれの気筒の吸気側及び排気側は、吸気弁(図示せず)及び排気弁(図示せず)を介して吸気管5及び排気管6に接続されている。又、内燃機関1は、それぞれの気筒に対応して設けられた複数の点火コイル7と、これらの点火コイル7から供給される高電圧によりそれぞれの気筒内に火花放電を発生する複数の点火プラグ(図示せず)とを備えている。
なお、それぞれの点火コイル7は、対応する点火プラグと一体に構成されている。
【0017】
エアクリーナ2は、吸気管5の上流側に設けられ、吸入する空気を浄化する。
吸気管5におけるエアクリーナ2の下流側に設けられた吸気量センサ3は、吸気管5を介して内燃機関1に吸入する吸気量を計測し、その計測値に対応する信号を出力する。
電動スロットル4は、スロットルバルブの開度を制御して内燃機関1への吸気量を調節する。
【0018】
アクセルセンサ16は、運転者によるアクセル操作量を検出し、その検出値に対応する信号を出力する。この信号によりアクセル操作の有無が検出でき、アクセル踏み込みの場合は加速要求があると判断でき、一方、アクセル操作が無く操作量が0であれば減速の意思であると判断し、所定条件成立で内燃機関への燃料供給を停止する。
また、ブレーキスイッチ17は、ブレーキの操作を検出し、ブレーキの踏み込み有無を示す信号を出力する。
【0019】
発電機10は、その回転子軸に固定されているプーリ11が内燃機関1のクランク軸に取り付けられたプーリ8にベルト9を介して連結されている。内燃機関1からの動力により発電機10の回転子を回転させて発電する。発電機10からの電力は、蓄電装置であるバッテリ12に供給されてバッテリ12の充電を行うこととなる。
また、バッテリ12にはバッテリセンサ18が設けられ、バッテリ12の電圧および電流を検出する。これらの値に基づいてバッテリ12への充電有無や充電率を推定する。
【0020】
マイクロコンピュータ等の演算装置(以下、CPUと称する)、及びメモリ等を含むコントロールユニット13は、吸気量センサ3、アクセルセンサ16、電動スロットル4、点火コイル7、発電機10、バッテリ12、バッテリセンサ18等に接続され、アクセルセンサ16、ブレーキスイッチ17やバッテリセンサ18等の各種センサからの出力信号に基づいて内燃機関1及び発電機10を制御する。また、車速を検出する車速センサ(図示せず)もコントロールユニット13に接続される。
【0021】
図2は、この発明の実施の形態1の車両用発電制御装置における、車両発進から停止までの各パラメータの挙動を示すタイミングチャートであり、横軸は時間を示す。
【0022】
図2における各パラメータにつき、上から順に説明する。
アクセル操作量は、アクセルセンサ16からの信号でありアクセル操作が無いときに操作量0となる。ブレーキフラグは、ブレーキスイッチ17からの信号でありブレーキの踏み込み時に1となる。燃料停止フラグは、内燃機関1への燃料供給が停止されている時に1となる。
【0023】
回生時予測充電量は、車速に応じて減速時の回生発電における充電量を予測した値であり、回生時充電量予測手段で算出される。高車速になるほど、車両の運動エネルギーは増加するため、減速回生時に車両から発電機10に供給できる運動エネルギーが増加し、回生時の充電量も増加する。そのため、回生時予測充電量は、車速の上昇に伴って増加する傾向となる。ただし、発電機10やバッテリ12の性能により発電量や充電量が制限されるので、高車速になると回生時予測充電量も制限されることとなる。
また、停止直前では車両(駆動輪15)と内燃機関1が切り離され運動エネルギーの回収
は困難になるため、低車速時の回生時予測充電量は0に設定するのがよい。
【0024】
充電率は目標値と推定値があり、目標充電率は、バッテリ12の充電率の目標値で、目標充電率算出手段で算出される。目標充電率は、回生発電時に効率よくバッテリ12に充電できるよう、回生時予測充電量の増加に伴って目標充電率を低下させておくよう設定される。但し、バッテリ12の劣化等を考慮すると極端に低い充電率は避ける必要があるため、回生時予測充電量が所定値以上となった場合には目標充電率を一定値にしてもよい。
【0025】
推定充電率は、バッテリセンサ18が検出した電圧および電流からバッテリ12の充電率を推定した値であり、推定充電率算出手段で算出される。充電率の推定は公知の方法でよく、特許文献1に示されるようにバッテリ12の標準的な特性をコントロールユニット13に格納しておき、この特性と検出した電圧および電流とを対比することにより充電率を推定すればよい。最後に、発電電流は、発電機10から出力される電流であり、発電機10に設けた電流センサ(図示せず)からの信号である。
【0026】
これら各パラメータの挙動については、まず、車両が停止状態から、時間Aで運転者によりブレーキoff、アクセル踏み込みのため発進する。
時間Bで所定車速を超えると車速上昇に伴い回生時予測充電量は増加し目標充電率は低下するので、推定充電率が目標充電率より大きくなり、通常発電制御手段により発電機10の発電は停止する。その後は、推定充電率が目標充電率を下回るまでバッテリ12に蓄えられた電力を車両に供給するので、発電機は作動せず発電に掛かる燃料を削減できる。
【0027】
時間Cでは運転者が減速を行うべくアクセル操作量0、ブレーキ踏み込みとしたため、内燃機関1の燃料供給が停止され、車速が低下する。そしてこの期間に、回生発電制御手段により、回生発電が実行される。減速中は、内燃機関1への燃料供給がなく車両の運動エネルギーを発電に使用して回収することができるので、その分燃費を向上させることが可能となる。
【0028】
通常発電制御手段による発電では、バッテリ12の推定充電率が目標充電率を超えている場合に発電を実施しないが、回生発電では、内燃機関1の燃料を使用せずに発電するため、制約の範囲内でできる限り発電を実行するのがよく、目標充電率にかかわらず発電を行うこととなる。ただし、バッテリ12の推定充電率が100%を超えるまで充電を行うと過充電となり劣化が促進され寿命低下となるため、所定の充電率、例えば、制御誤差等を考慮して98%程度まで充電を行うようにするとよい。
【0029】
また、回生発電における制約については、エネルギー回収面から、回生発電初期はバッテリ12の推定充電率を低く維持していることもあり、バッテリ12が受け入れることのできる電流もしくは発電機10の最大発電電流までできる限り発電するのがよいとの考えがある。しかし、長い下り坂等でバッテリ12の推定充電率が所定の充電率となり発電機10が発電を停止することになると、発電トルクが急に低下し、ショックの発生や減速感の変化(減少)によるドライバビリティの悪化が懸念される。
【0030】
この点、通常発電制御手段による発電時は、内燃機関1により運度エネルギーが供給されているため、発電に必要なトルクに応じて内燃機関1の出力を変化させることで、発電による車両(ドライバビリティ)への影響を抑制することが可能であるが、回生発電時は、車両減速による運動エネルギーのみのため、発電トルクが変化するとそのまま車両の挙動へ影響を及ぼすこととなる。
【0031】
そこで、発電機10がバッテリ12の充電時に必要とする発電トルクとバッテリ12への充電を停止した時の発電トルクとの差が、ドライバビリティに影響しない程度の所定ト
ルク差以内となるよう、回生時の発電量を減少する方向に制限しておくのがよい。
この場合、エネルギー回収量は若干目減りすることとなるが、ドライバビリティを確保することが可能となる。さらに、バッテリ12の推定充電率が所定の充電率に近くになるにつれ発電量を徐々に低下させてもよく、発電停止時のショックをより低減することが可能となる。
【0032】
時間Dでは、運転者によりブレーキoff、アクセル踏み込みのため、内燃機関1への燃料供給が再開され回生発電制御手段は停止する。時間C〜D間の回生発電によりバッテリ12の推定充電率は若干上昇したが、それ以上に車速低下により回生時予測充電量が減少し目標充電率が増加したため、時間Dでは、バッテリ12の推定充電率が目標充電率を下回っている。この場合、本来であれば回生発電制御手段による回生発電が終了しているので通常発電制御手段による発電を行うことになるが、回生発電が車両に対する加速要求(アクセル踏み込み)により終了したときには、車速が再び上昇することが予想されるので、所定期間、通常発電制御手段による発電を停止するとよい。車速が上昇し、再度目標充電率が低下すれば、通常発電制御手段による発電を行う必要がなくなるからである。
【0033】
所定期間としては、運転者の意思が車速に反映される程度でよく数10秒程度でよい。また、車速の変化が所定値以下となり運転者の要求車速に到達したと判断されるまで通常発電制御手段による発電を停止してもよい。
【0034】
その結果、通常発電制御手段による発電が所定期間停止され、その間に車速上昇に伴い目標充電率が低下するため、時間Dから時間Eの間では通常発電制御手段による発電は行われず、前述の時間B〜C間と同様の挙動となる。
バッテリ12が放電を続けた結果、時間Eで推定充電率と目標充電率が一致するので、その後は推定充電率が目標充電率を維持するよう、通常発電制御手段により発電制御が実行される。この場合、バッテリ12の充放電が行われないよう車両の使用する電力相当の発電を行えばよい。
【0035】
時間Fで、運転者が減速を行うべくアクセル操作量0としたため、内燃機関1の燃料供給が停止され車速が低下する。但し、ブレーキの踏み込みはないため、ブレーキの踏み込み時に比べ、より発電トルクを制限して回生発電を行う。
【0036】
ブレーキの踏み込みがない状態では、運転者の操作がないため、ブレーキ踏み込みがある状態に比べて発電トルク変化による車両挙動変化を認識しやすくなる。
また、運転者はアクセル操作量を0としただけで積極的な減速は望んでいないが、この状態で過大な回生発電によるトルクが掛かることで要求以上の減速感となれば、再度アクセルを踏み込むことになり、ドライバビリティが悪化するとともに、かえって燃費の悪化を招くこととなる。
【0037】
その後、時間Gでブレーキ踏み込みにより回生発電時の発電トルクが増加され、時間Hで、内燃機関1の回転速度低下により燃料停止条件から外れ燃料供給が再開されるので、回生発電は終了する。
【0038】
時間Hでは、バッテリ12の推定充電率が目標充電率を下回っており、回生発電制御手段による回生発電が加速要求以外で終了しているので、推定充電率が目標充電率となるよう通常発電制御手段による発電を行う。推定充電率と目標充電率が一致すれば、時間E〜F間同様、推定充電率が目標充電率を維持するよう、発電制御が実行される。
【0039】
推定充電率が目標充電率となるまでは、バッテリ12が受け入れることのできる電流もしくは発電機10の最大発電電流までできる限り発電するのがよい。通常発電制御手段に
よる発電時は、前述のように内燃機関1からエネルギーが供給されるため、発電トルクが車両の挙動へ影響を及ぼすことは少ない。また、停車後すぐに運転者により内燃機関1を停止されるとバッテリ12の充電率が低い状態で放置されることになり、バッテリ12の寿命低下や次回始動時の電力不足の懸念があるため、速やかに推定充電率が目標充電率となるよう発電する必要がある。
【0040】
次に、この発明の実施の形態1による車両用発電制御装置の動作について説明する。
図3は、この発明の実施の形態1の車両用発電制御装置における、一定周期で実行される処理を示すフローチャートである。図3に示すフローチャートの処理は、0.01秒の一定周期で実行される。
【0041】
図3において、まず、ステップS101にて推定充電率算出処理を実施して、バッテリ12の充電率を推定する。推定方法は、前述の通り、バッテリセンサ18が検出した電圧および電流とコントロールユニット13に格納したバッテリ12の標準的な特性とを対比して行うものでよい。
【0042】
次に、ステップS102では、回生時充電量予測処理を実施して、回生時におけるバッテリ12への充電量を予測する。予測方法としては、バッテリ12が受け入れることのできる電流、発電機10の最大発電電流、および車速に応じて減速時に得られる運動エネルギーから求められる最大回生発電量を基に、前述の通り、回生発電有無での発電トルク差が、ドライバビリティに影響しない程度の所定トルク差以内となるよう回生時の発電トルクを制限した時の発電量を求めるものでよい。所定トルク差は、後述の回生発電制御処理内で求めたものを使用する。
【0043】
ステップS103では、ステップS102で算出した回生時予測充電量に基づいてバッテリ12の目標充電率を算出する。回生時予測充電量に相当するバッテリ12の充電割合を求めて目標充電率を算出すればよく、回生時予測充電量が増加するに伴い目標充電率は低下することとなる。
【0044】
ステップS104で、車両減速中かつ燃料供給停止中であるか判定する。減速中かつ燃料供給停止中であると判定された場合(Yes)は、ステップS105に進んで後述する回生発電制御処理(図4)を実施して、図3に示す処理を終了する。
【0045】
一方、減速中かつ燃料供給停止中でない場合(No)は、回生発電制御処理は実行されていないため、ステップS106で加速要求による回生発電終了後20秒以内かを判断する。
【0046】
ステップS106において加速要求による回生発電終了後20秒以内と判断された場合(Yes)は、前述の通り、車速が再び上昇することが予想され、所定期間(20秒間)通常発電制御手段による発電を停止するので、図3に示す処理を終了する。
【0047】
一方、加速要求による回生発電終了後20秒以内でない場合(No)は、ステップS107において後述する通常発電制御処理(図5)を実施して図3に示す処理を終了する。
【0048】
次に、前述のステップS105において実施する回生発電制御処理について説明する。図4は、この発明の実施の形態1の車両用発電制御装置における、回生発電制御処理を示すフローチャートである。
【0049】
図4において、ステップS201で、発電F/B設定充電率に所定充電率を設定する。発電F/B設定充電率は、後述の発電F/B処理において、バッテリ12の推定充電率を
F/B制御する際の目標値となる。
【0050】
次に、ステップS202で、ブレーキ踏み込みの有無を判定する。
ブレーキ踏み込みがある場合(Yes)は、ステップS203で発電トルク制限値に10Nmを設定し、ブレーキ踏み込みがない場合(No)は、ステップS204で発電トルク制限値に5Nmを設定する。
なお、本実施の形態1では、発電トルク制限値に一定値を使用したが、回生発電時のトルクは車両の運動エネルギーから供給されるため、車速、変速比で変化させてもよい。
発電トルク制限値を適切に設定することで、ドライバビリティを確保しつつ、より多くの回生エネルギーの回収が可能となる。
【0051】
最後にステップS205において発電F/B処理を実行して図4の処理を終了する。
発電F/B処理は、バッテリ12の推定充電率が発電F/B設定充電率になるよう、先のステップ203ないしステップ204で設定した発電トルク制限値に基づく範囲内で発電機10の発電電流をF/B制御するものである。また、バッテリ12が受け入れることのできる電流および電圧ならびに発電機10の最大発電電流で制限される範囲で発電制御されることは言うまでもない。
【0052】
発電トルク制限値は回生発電有無での発電トルク差なので、例えば、車両に供給している電力に対応する発電トルクが2Nmである場合には、ブレーキ踏み込み時は12Nm、ブレーキ踏み込みがない時は7Nmの範囲で発電機10による発電を実行すればよい。
車両に供給している電力は、発電機10の発電電力とバッテリ12の充電に使用している電力の差から求められ、得られた電力と、あらかじめコントロールユニット13に格納している発電機10における発電電力と発電トルクの特性とを比較して、車両供給電力に対応する発電トルクが求められる。
【0053】
次に、前述の図3におけるステップS107において実施する通常発電制御処理について説明する。図5は、この発明の実施の形態1の車両用発電制御装置における、通常発電制御処理を示すフローチャートである。
【0054】
図5において、ステップS301で、発電F/B設定充電率に目標充電率を設定し、ステップS302で発電トルク制限値に100Nmを設定する。発電トルク制限値に100Nmを設定するのは、発電F/B処理を回生発電制御処理と共用しているため、発電トルク制限値を無効化するためである。
【0055】
最後にステップS303において、回生発電制御処理同様、発電F/B処理を実行して図5の処理を終了する。
【0056】
なお、本実施の形態1では、発電機10とバッテリ12を直接接続しているが、間にDC/DCコンバータ等の装置を配置してもよい。また、バッテリの代わりに電気二重層キャパシタを用いてもよい。これらにより、発電機の効率や発電能力を向上させることが可能となる。
【0057】
また、発電機10は内燃機関1とベルトで接続するものとしたが、内燃機関1と変速機14の間に発電機を備える形態であってもよく、電動機と兼用できるもの(発電電動機)でもよい。
【0058】
以上のように、この発明の実施の形態1の車両用発電制御装置によれば、車速に応じて減速時の回生発電における充電量を予測し、回生時予測充電量の増加に伴って蓄電装置の目標充電率を低下させるとともに、発電機において蓄電装置への充電有無で発電に必要と
なるトルクの差が所定トルク差以内となるよう、回生発電量を減少する方向に制限するので、回生発電時に効率よく蓄電装置を充電することができるとともに、回生発電時の発電トルク変化によるドライバビリティの悪化を防止することができる。
【0059】
また、回生発電制御手段における所定トルク差は、ブレーキ操作が有りブレーキが踏み込まれているときに比べ、ブレーキ操作の無い時に、より小さい値とするので、ブレーキ操作の無い時には過大な回生発電トルクとならず、ドライバビリティの悪化を防止することができる。
【0060】
また、回生発電が、車両に対する加速要求により終了した場合には、通常発電制御の作動を所定期間停止させるので、加速で目標充電率が低下するのを待つことで通常発電実行の機会を低減でき、燃費の向上を図ることができる。
【符号の説明】
【0061】
1 内燃機関 2 エアクリーナ
3 吸気量センサ 4 電動スロットル
5 吸気管 6 排気管
7 点火コイル 8、11 プーリ
9 ベルト 10 発電機
12 バッテリ 13 コントロールユニット
14 変速機 15 駆動輪
16 アクセルセンサ 17 ブレーキスイッチ
18 バッテリセンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の駆動力を発生する内燃機関と、前記車両または前記内燃機関から供給される運動エネルギーを電気エネルギーに変換する発電機と、前記発電機で発電された電気エネルギーを蓄えるとともに前記車両で必要な電力を供給する蓄電装置と、前記蓄電装置の電圧および電流を検出する電圧・電流検出手段と、前記電圧・電流検出手段が検出した電圧および電流から前記蓄電装置の充電率を推定する推定充電率算出手段と、前記蓄電装置の目標充電率を算出する目標充電率算出手段と、前記蓄電装置の推定充電率が前記目標充電率算出手段で算出した目標充電率より低い場合には、前記蓄電装置の推定充電率が目標充電率となるよう前記発電機の発電制御を行う通常発電制御手段と、前記車両の減速中でかつ前記内燃機関の燃料供給を停止している期間に、前記蓄電装置の充電率が過充電とならない所定充電率以下で前記発電機の発電制御を行う回生発電制御手段と、前記車両の走行速度を検出する車速検出手段と、前記車速検出手段で検出した車速に応じて減速時の回生発電における充電量を予測する回生時充電量予測手段とを備え、前記目標充電率算出手段は、前記回生時充電量予測手段で求めた回生時予測充電量の増加に伴って前記蓄電装置の目標充電率を低下させるとともに、前記回生発電制御手段は、前記発電機において前記蓄電装置への充電有無で発電に必要となるトルクの差が所定トルク差以内となるよう発電量を減少する方向に制限し、前記通常発電制御手段は、前記回生発電制御手段が実行されているときは作動を停止することを特徴とする車両用発電制御装置。
【請求項2】
前記回生発電制御手段における前記所定トルク差は、ブレーキ操作が有りブレーキが踏み込まれているときに比べ、ブレーキ操作の無い時に、より小さい値とすることを特徴とする請求項1に記載の車両用発電制御装置。
【請求項3】
前記回生発電制御手段による発電が、前記車両に対する加速要求により終了した場合は、前記通常発電制御手段の作動を所定期間停止させることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用発電制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−92673(P2012−92673A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−238536(P2010−238536)
【出願日】平成22年10月25日(2010.10.25)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】