説明

車両用空気調和装置

【課題】自動車の空調装置の空気吹出口より吹き出す温調空気の温度状態を、乗員が感覚的に、視覚によって簡便に得られるようにすること。
【解決手段】車両用内装部材に設けられて空調ダクトよりの温調空気を車室内に吹き出す空気吹出口31を照明手段である発光手段25によって照明し、その発光手段25の発光色を温調空気の温度に基づいて変更設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両に搭載される車両用空気調和装置に関し、特に、車室内に吹き出す温調空気の温度表示に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両に車両用空気調和装置は、インストルメントパネルやセンタコンソールに空調操作部を設けられている。マニュアル操作式の空気調和装置では、空調操作部に温度設定ボタンが設けられ、空調操作部に設定温度を数値で液晶表示するようになっている。全自動式の空気調和装置では、空調操作部に、自動設定された温調空気の温度を数値で液晶表示するようになっている(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開平7−149139号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の車両用空気調和装置では、温調空気の温度が空調操作部に数値表示されだけであり、空気吹出口より車室内に吹き出す温調空気の温感は、センタコンソールやインストルメントパネル等の車両用内装部材に設けられている空気調和装置の空気吹出口に、手や顔を近づけて空気吹出口より吹き出す温調空気(空調風)を肌で直接体感するしかなく、温調空気の温度状態を感覚的に得ることが難しい。
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、空気吹出口より吹き出す温調空気の温度状態を感覚的に、特に、乗員が視覚によって簡便に得られるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の課題を解決するために、本発明による車両用空気調和装置は、車両用内装部材に設けられて空調ダクトよりの温調空気を車室内に吹き出す空気吹出口と、前記空気吹出口を照明する照明手段と、前記温調空気の温度に基づいて前記照明手段の発光色を変更設定する発光色制御手段とを有する。
【0006】
本発明による車両用空気調和装置は、好ましくは、前記発光色制御手段は、前記温調空気の温度が高いほど前記照明手段が発光する色温度を低くし、前記温調空気の温度が低いほど前記照明手段が発光する色温度を高くする。
【0007】
本発明による車両用空気調和装置は、好ましくは、前記温調空気の温度が高いほど前記照明手段の発光波長を長くし、前記温調空気の温度が低いほど前記照明手段の発光波長を短くする。
【0008】
本発明による車両用空気調和装置は、好ましくは、更に、前記照明手段を裏面側に配置した状態で、前記空気吹出口を覆う通気性シートを有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明による車両用空気調和装置によれば、温調空気の温度に基づいて照明手段の発光色が変更設定されることにより、照明手段によって照明される空気吹出口の照明色が温調空気の温度に応じたものになり、その照明色より、空気吹出口より吹き出している温調空気の温度状態を視覚的に感じ取れるようになる。
【0010】
この照明手段の発光色、つまり、空気吹出口の照明色は、冷房時で、温調空気の温度が低い時ほど寒色である青色で、暖房時で、温調空気の温度が高い時ほど、暖色である赤色であればよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、本発明による車両用空気調和装置の一つの実施形態を、図1〜図5を参照して説明する。
【0012】
図1に示されているように、本実施形態の車両用空気調和装置(車載空気調和装置)は、インストルメントパネル11、ドアガーニッシュ12、リアシェルフ13、前部シート座部14、前部シート背もたれ部15、後部シート座部16、後部シート背もたれ部17の各々に、温調空気を車室内に吹き出す空気吹出口31を有する。
【0013】
つまり、インストルメントパネル11、ドアガーニッシュ12、リアシェルフ13、前部シート座部14、前部シート背もたれ部15、後部シート座部16、後部シート背もたれ部17は、何れも、枠形状内方に枠内エアチャンバ21を画定する閉環状の枠体20と、枠内エアチャンバ21が車室内に臨む面に張られた通気性シート30とを有し、枠体20は通風ダクト22(図2、図3参照)を画定する中空構造になっていて、枠体20には通風ダクト22に連通して枠内エアチャンバ21に向けて開口した空気出口23(図2、図3参照)が開口形成されている。通気性シート30は枠内エアチャンバ21が車室内に臨む面の全体を覆い、通気性シート30の枠内エアチャンバ対応部位が車室内に対する実質的な空気吹出口31になっている。
【0014】
図2、図3は、インストルメントパネル11の詳細を示している。インストルメントパネル11は、フロントウインドシールドガラス18の下縁に沿う形態で、フロントウインドシールドガラス18の車室内側に設けられている。
【0015】
インストルメントパネル11は、閉環状の枠体20を含み、当該枠体20は枠形状内方に比較的内容積が大きい上方開口の枠内エアチャンバ21を画定している。枠体20は、通風ダクト22を画定する中空構造になっており、枠体20の内周面(枠体20が枠内エアチャンバ21に臨む面)24には通風ダクト22に連通して枠内エアチャンバ21に向けて開口した空気出口23が複数開口形成されている。通風ダクト22は、車載空気調和装置の空調ダクト51(図1参照)に連通接続され、空調ダクト51によって空気調和装置の温調空気を供給される。
【0016】
通気性シート30は、サランネットに代表されるメッシュクロスや多孔質シート等、通気性を有するシート材、つまり、多数の通気部の各々によって空気が通過し得る通気構造のシート材により構成されており、インストルメントパネル11の上面(意匠面)に表装材(表皮材)として張られ、枠内エアチャンバ21が車室内に臨む面(上面)の全体を覆い、枠内エアチャンバ21に対応する部位の全域が車室内に対する空気吹出口31になっている。
【0017】
車載空気調和装置の空調ダクト51よりの温調空気は、通風ダクト22を流れて横向きの空気出口23より大きい内容積の枠内エアチャンバ21に入り、流速を弱められる。そして、枠内エアチャンバ21の内圧が高まることにより、枠内エアチャンバ21の温調空気は、通気性シート30の多数の通気部を通過して枠内エアチャンバ21に対応する大きさの面状の空気吹出口31より車室内空間に吹き出す。
【0018】
これにより、枠内エアチャンバ21の大きさ(開口面積)に匹敵する大きい面状の空気吹出口31より車室内空間に空気が吹き出し、この空気は、強い方向性をもって吹き出すことがなく、拡散した緩慢な流れをもって車室内空間に吹き出す。これにより、空気吹出口31より車室内空間に吹き出す空気(風)は、刺激性強く乗員に直接当たることがなく、間接風になり、同時に熱の拡散が良くなり、車室内空間全体を、マイルドな自然な優しい感じで温度コントロールできるようになる。
【0019】
枠体20の内周面24には、空気吹出口31の照明手段として、空気吹出口31の外郭を縁取りするように、線状の発光手段(光源)25が設けられている。発光手段25は、通気性シート30の裏面側(枠内エアチャンバ21の側)にあって、枠内エアチャンバ21を縁取りするように、空気吹出口31のほぼ全体を間接照明する。
【0020】
換言すると、通気性シート30は、発光手段25をシート裏面側に配置した状態で、空気吹出口31を覆う。これにより、発光手段25が放つ光は、通気性シート30を透過する際に拡散し、車室内側において、通気性シート30を通して柔らかな間接照明光として、目に強い刺激を与えることなく、見られる。
【0021】
発光手段25は、例えば、RGBの各LEDチップをパッケージしたフルカラー表示発光ダイオードを線状配置したもの等、発光色を変化できるものにより構成されており、次に説明する車載空気調和装置の制御系によって温調空気の温度、つまり、空気吹出口31の吹出空気温度に応じた色相の発光を行う。
【0022】
図4は、全自動式の車載空気調和装置の制御系を示している。車載空気調和装置の制御部は、マイクロコンピュータ式のものであり、必要吹出口温度演算手段101を有する。必要吹出口温度演算手段101は、車室内温度を検出する内気温度センサ102、外気温度を検出する外気温度センサ103、日射状態を検出する日射センサ104の各々より情報信号を入力し、これらの情報信号に応じて最適の必要吹出口温度を予め設定されている計算法によって演算する。必要吹出口温度演算手段101は、必要吹出口温度の演算結果である指令値信号を、吹出温度制御部105と発光色制御部106へ出力する。
【0023】
吹出温度制御部105は、必要吹出口温度演算手段101によって演算された必要吹出口温度に応じてエアミキシングダンパ等による吹出温度操作部107の駆動制御を行う。これにより、空気吹出口31の吹出空気温度が、車室内温度、外気温度、日射状態に応じた最適の必要吹出口温度に設定される。
【0024】
発光色制御部106は、必要吹出口温度演算手段101によって演算された必要吹出口温度(温調空気の温度)に応じて発光手段25の発光色相の制御する。この発光色相制御は、温調空気の温度が高いほど発光手段25が発光する色温度を低くし、温調空気の温度が低いほど発光手段25が発光する色温度を高くする。あるいは、温調空気の温度が高いほど発光手段25の発光波長を長くし、温調空気の温度が低いほど発光手段25の発光波長を短くする。
【0025】
これにより、例えば、冷房時で、温調空気の温度、つまり、空気吹出口31の吹出空気温度が低い時ほど、発光手段25が寒色である青色に発光し、暖房時で、空気吹出口31の吹出空気温度が高い時ほど、発光手段25が暖色である赤色に発光する。
【0026】
この発光手段25による発光色により空気吹出口31の照明色が変わり、空気吹出口31の照明色が温調空気の温度に応じたものになり、その照明色より、空気吹出口31より吹き出している温調空気の温度状態を、視覚的に、しかも色彩的に、たやすく感じ取れるようになる。
【0027】
図5は、ドアガーニッシュ12の詳細を示している。なお、図5において、図1〜図3に対応する部分は、図1〜図3に付した符号と同一の符号を付けて、その説明を省略する
【0028】
ドアガーニッシュ12は、閉環状の枠体20をアームレスト部12Aに有する。ドアガーニッシュ12の枠体20は枠形状内方に車室内側の側方開口の枠内エアチャンバ21を画定している。この枠体20も、通風ダクト(図示省略)を画定する中空構造になっており、枠体20の内周面(枠体20が枠内エアチャンバ21に臨む面)24には通風ダクトに連通して枠内エアチャンバ21に向けて開口した空気出口23が複数開口形成されている。ドアガーニッシュ12の枠体20の通風ダクト22も、車載空気調和装置のダクト51に連通接続され、ダクト51(図1参照)によって空気調和装置の温調空気を供給される。
【0029】
アームレスト部12A部分の枠内エアチャンバ21が車室内に臨む面には通気性シート30がはめ込み式に張られている。アームレスト部12A部分の通気性シート30も、サランネットに代表されるメッシュクロスや多孔質シート等、通気性を有するシート材により構成されており、枠内エアチャンバ21が車室内に臨む面の全体を覆い、枠内エアチャンバ21に対応する部位の全域が車室内に対する空気吹出口31になっている。
【0030】
これにより、ドアガーニッシュ12部分においても、エアチャンバ21の大きさ(開口面積)に匹敵する大きい面状の空気吹出口31より車室内空間に空気が吹き出し、この空気は、強い方向性をもって吹き出すことがなく、拡散した緩慢な流れをもって車室内空間に吹き出す。
【0031】
アームレスト部12A部分の枠体20の内周面24にも、空気吹出口31の外郭を縁取りするように、線状の発光手段25が設けられている。発光手段25は、インストルメントパネル11部分と同様に、通気性シート30の裏面側(枠内エアチャンバ21の側)にあって空気吹出口31の照明手段をなし、枠内エアチャンバ21を縁取りするように、空気吹出口31を間接照明する。この発光手段25も、空気吹出口31の吹出空気温度(温調空気の温度)に応じた色相に発光することにより、乗員は、アームレスト部12Aの空気吹出口31においても、車載空気調和装置の作動状況(空調温度状態)を、視覚的に、感覚的に、把握できるようになる。
【0032】
なお、このような空気吹出口31の照明手段は、リアシェルフ13、前部シート座部14、前部シート背もたれ部15、後部シート座部16、後部シート背もたれ部17の各部の空気吹出口31に設けられてよく、車室内の各部おいて、車載空気調和装置の空調温度状態を、視覚的に、感覚的に、把握できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明による車両用空気調和装置を搭載された自動車の一つの実施形態を示す全体構成斜視図である。
【図2】本発明による車両用空気調和装置のインストルメントパネル部分の空気吹出口構造の一つの実施形態を示す斜視図である。
【図3】図2の線II−IIに沿った断面図である。
【図4】本発明による車両用空気調和装置の制御系の一つの実施形態を示すブロック線図である。
【図5】本発明による車両用空気調和装置のドアガーニッシュ部分の空気吹出口構造の一つの実施形態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0034】
11 インストルメントパネル
12 ドアガーニッシュ
13 リアシェルフ
14 前部シート座部
15 前部シート背もたれ部
16 後部シート座部
17 後部シート背もたれ部
18 フロントウインドシールドガラス
20 枠体
21 枠内エアチャンバ
22 通風ダクト
23 空気出口
24 内周面
25 発光手段
30 通気性シート
31 空気吹出口
51 ダクト
101 温度演算手段
102 内気温度センサ
103 外気温度センサ
104 日射センサ
105 吹出温度制御部
106 発光色制御部
107 吹出温度操作部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用内装部材に設けられて空調ダクトよりの温調空気を車室内に吹き出す空気吹出口と、
前記空気吹出口を照明する照明手段と、
前記温調空気の温度に基づいて前記照明手段の発光色を変更設定する発光色制御手段と、
を有する車両用空気調和装置。
【請求項2】
前記発光色制御手段は、前記温調空気の温度が高いほど前記照明手段が発光する色温度を低くし、前記温調空気の温度が低いほど前記照明手段が発光する色温度を高くする請求項1に記載の車両用空気調和装置。
【請求項3】
前記発光色制御手段は、前記温調空気の温度が高いほど前記照明手段の発光波長を長くし、前記温調空気の温度が低いほど前記照明手段の発光波長を短くする請求項1に記載の車両用空気調和装置。
【請求項4】
前記照明手段を裏面側に配置した状態で、前記空気吹出口を覆う通気性シートを有する請求項1から3の何れか一項に記載の車両用空気調和装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2009−90821(P2009−90821A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−263554(P2007−263554)
【出願日】平成19年10月9日(2007.10.9)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】