説明

車両用自動変速機の油圧制御装置

【課題】係合要素の解放時に、リニアソレノイド弁と係合要素との間に設けられた切換弁の切換位置を拘束せずに、その係合要素の係合油圧を制御して解放させることができる車両用自動変速機の油圧制御装置を提供する。
【解決手段】逆止弁120が、リニアソレノイド弁SL4の出力ポートとブレーキB3との間に第1油路切換弁108及び第3油路切換弁118と並列に設けられており、ブレーキB3側から上記出力ポート側への圧油の流れを許容する一方でそれの逆方向の流れは遮断するので、ブレーキB3が解放される場合のブレーキB3からの圧油は、第1、第3油路切換弁108、118を介さず逆止弁120を介して上記出力ポートに供給される。そのため、ブレーキB3の解放時に、リニアソレノイド弁SL4によりブレーキB3の係合油圧を制御でき、更に、第1、第3油路切換弁108、118の切換位置を拘束することがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用自動変速機の変速段を切り換える油圧制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両の動力伝達経路の一部を構成する自動変速機が有する係合要素を解放もしくは係合させることにより、その自動変速機の変速段を切り換える油圧制御装置が、従来から種々提案されている。例えば、特許文献1に示された車両用自動変速機の油圧制御装置がそれである。その特許文献1の車両用自動変速機は、上記係合要素の1つとして第1クラッチを備えている。そして、油圧制御装置は、上記第1クラッチの解放もしくは係合の油圧制御をするために、シフト操作装置が前進ポジションに操作されたときに所定のDレンジ圧が供給されるDレンジ圧管路と、逆止弁と、出力ポートの油圧を連続的に変化させることができる圧力制御バルブとを備えている。
【0003】
そして、前記圧力制御バルブは、それの出力ポートが前記第1クラッチに接続されており、入力ポートが前記Dレンジ圧管路に接続されている。また、前記逆止弁は、その第1クラッチとDレンジ圧管路との間にその圧力制御バルブと並列に設けられており、その第1クラッチからDレンジ圧管路への圧油の流れを許容する一方でその逆方向の流れは遮断する。
【0004】
前記油圧制御装置は、このような構成により、例えば、前記第1クラッチの係合中に前記シフト操作装置が前進ポジションからその他のポジションに操作された場合には、その第1クラッチの圧油を前記逆止弁を介して迅速に排出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−76926号公報
【特許文献2】特開2003−56683号公報
【特許文献3】特開2002−21992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の油圧制御装置において、前記圧力制御バルブが、例えばフェールセーフのために前記第1クラッチの係合油圧を遮断できる切換弁に置き換えられた場合を想定する。その場合、上記切換弁の入力ポートには、調圧された係合油圧が供給される。このような構成では、前記逆止弁が前記第1クラッチからの圧油の排出を許容するように上記切換弁と並列に設けられているので、上記第1クラッチの解放時はそれの圧油が上記逆止弁を通じて排出され、上記切換弁の切換位置が拘束されることが無い。しかし、上記圧油は、上記逆止弁を通じて、ドレン圧とされた前記Dレンジ圧管路に直接排出されるので、前記第1クラッチ(係合要素)の解放時の油圧を前記圧力制御バルブで制御できないという課題があった。そのため、上記解放時に、その係合要素の解放作動が瞬間的となり、変速ショックが大きくなるおそれがあった。なお、このような課題は未公知のことである。
【0007】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、係合要素の係合もしくは解放により変速段が切り換わる車両用自動変速機において、その係合要素の解放時に、油圧制御弁と係合要素との間に設けられた切換弁の切換位置を拘束せずに、その係合要素の係合油圧を制御して解放作動させることができる車両用自動変速機の油圧制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するための本発明の要旨とするところは、(a)変速段を切り換えるために油圧制御により解放もしくは係合される第1係合要素と第2係合要素とを含む車両用自動変速機の油圧制御装置であって、(b)入力ポートには前記第1係合要素を係合させるための係合元圧が供給され、出力ポートの油圧を連続的に変化させる係合圧調整弁と、その係合圧調整弁の出力ポートと前記第1係合要素との間を接続する一方で前記第2係合要素とその第2係合要素への油圧供給路との間を遮断する第1位置と、その出力ポートとその第1係合要素との間を遮断する一方でその第2係合要素とその油圧供給路とを相互に接続する第2位置とに、選択的に切り換えられる第1油路切換弁と、前記係合圧調整弁の出力ポートと前記第1係合要素との間に前記第1油路切換弁と並列に設けられ、その第1係合要素側からその出力ポート側への圧油の流れを許容する一方でそれの逆方向の流れは遮断する逆止弁とを、備え、(c)前記第1油路切換弁は、前記第1係合要素が係合され且つ前記第2係合要素が解放される場合に、前記第1位置に切り換えられることにある。
【発明の効果】
【0009】
このようにすれば、前記第1係合要素が解放される場合において、前記第1油路切換弁の切換位置を拘束せずに、すなわち、前記第1油路切換弁が前記第1位置と第2位置との何れに切り換えられていたとしても、前記係合圧調整弁により上記第1係合要素の油圧を制御して解放作動させることができる。これにより、上記第1係合要素の油圧を直ちにドレン圧にする場合と比較して、変速ショックを抑制できる。また、前記第1油路切換弁の第1位置では、上記係合圧調整弁からの油圧で上記第1係合要素を係合させることができる一方で前記油圧供給路からの油圧で前記第2係合要素を係合させることができない。逆に、前記第1油路切換弁の第2位置では、上記係合圧調整弁からの油圧で上記第1係合要素を係合させることができない一方で前記油圧供給路からの油圧で前記第2係合要素を係合させることができる。このような第1油路切換弁の構成により、前記車両用自動変速機のフェールなどに起因して上記第1係合要素と第2係合要素との両方が同時に係合されることを防止できる。なお、前述したように、前記第1油路切換弁は、前記第1係合要素が係合され且つ前記第2係合要素が解放される場合に、前記第1位置に切り換えられるが、これは、その第1油路切換弁の第1位置で、上記第2係合要素が係合されることをいかなる場合も排除するというものではない。例えば、その第1位置で第2係合要素との接続を遮断される前記油圧供給路以外の油路から上記第2係合要素に油圧が供給されて、その第2係合要素が係合される場合も考えられるからである。
【0010】
ここで、好適には、(a)前記係合圧調整弁は非作動時には前記出力ポートと入力ポートとの間を遮断する一方でその出力ポートとそれのドレンポートとを相互に連通させるものであり、(b)そのドレンポートにかかる油圧を前記係合元圧と前記第1係合要素が解放されるドレン圧とに選択的に切り換える第2油路切換弁が設けられており、(c)前記車両用自動変速機は、それのフェール時には、前記第1油路切換弁が前記第1位置に切り換えられ前記ドレンポートの油圧が前記第2油路切換弁により前記係合元圧とされて、前記第1係合要素が係合されるものであり、(d)前記第2油路切換弁は、前記第1油路切換弁が前記第2位置に切り換えられた状態で前記第1係合要素が係合される場合に、前記ドレンポートにかかる油圧を前記係合元圧にする。このようにすれば、前記係合圧調整弁の作動状態に拘わらず前記出力ポートの油圧は上記係合元圧になり、上記第1係合要素を係合させている圧油が前記逆止弁を介して排出されることを防止でき、その第1係合要素の係合力の低下を防止できる。また、前記第2油路切換弁はそもそもフェールセーフのために必要なものであるので、上記第1係合要素を係合させている圧油が上記逆止弁を介して排出されることを防止する目的で、切換弁を新たに設ける必要が無い。なお、前記車両用自動変速機のフェールとは、例えば、その車両用自動変速機が運転者の意に反して変速できなくなること等であり、具体的には、その車両用自動変速機の変速制御を実施するために設けられた電磁式の係合圧調整弁の全てが励磁不可能となるソレノイド全断線時のことである。また、前記係合圧調整弁の非作動時とは、その係合圧調整弁がソレノイド弁であれば非通電時(非励磁時)のことであり、その係合圧調整弁がパイロット圧に応じて出力ポートの油圧を変化させる圧力制御弁であればそのパイロット圧が零である場合のことである。
【0011】
また、好適には、(a)前記車両用自動変速機は、それの変速段を切り換えるために油圧制御により解放もしくは係合される第3係合要素を備えており、前記第1係合要素とその第3係合要素との両方が係合された場合に前進用の一変速段が達成されるものであり、(b)前記第2油路切換弁は、前記車両用自動変速機のフェール時に、前記ドレンポートにかかる油圧を前記係合元圧にする切換位置で、シフト操作装置が前進ポジションに操作されたときにその係合元圧になるDレンジ圧を前記第3係合要素に供給する。このようにすれば、前記車両用自動変速機のフェール時において、上記シフト操作装置が前進ポジションに操作されることにより前記一変速段が達成されるので、非フェール時すなわち通常時になされる上記車両用自動変速機の変速が不可能となっていても、前進走行することが可能となる。
【0012】
また、好適には、前記係合圧調整弁は、前記第1油路切換弁が前記第2位置に切り換えられた状態で前記第1係合要素が係合される場合に、前記出力ポートと前記入力ポートとを相互に連通させる。このようにすれば、上記出力ポートの油圧は前記係合元圧になり、上記第1係合要素を係合させている圧油が前記逆止弁を介して排出されることを防止でき、その第1係合要素の係合力の低下を防止できる。また、この係合圧調整弁の作動と、前記第2油路切換弁によって前記ドレンポートにかかる油圧が前記係合元圧にされることとが併せて実施されることにより、一層充分に、上記第1係合要素の係合力の低下を防止できる。
【0013】
また、好適には、(a)前記車両用自動変速機は、前記第1係合要素が係合され且つ前記第2係合要素が解放された場合に前進用の所定の変速段が達成され、その第1係合要素と第2係合要素との両方が係合された場合に後進変速段が達成されるものであり、(b)前記第1油路切換弁は、前記車両用自動変速機の変速段が前進変速段である場合に、前記第1位置に切り換えられる。このようにすれば、前記車両用自動変速機のフェールなどに起因してその車両用自動変速機の変速段が上記後進変速段に切り換わることを、上記第1油路切換弁により機械的に防止できる。
【0014】
また、好適には、前記第1油路切換弁は、前記第2位置で、シフト操作装置が後進ポジションに操作されたときに前記係合元圧になる後進レンジ圧を前記第1係合要素に供給するものである。このようにすれば、前記シフト操作装置が後進ポジションに操作された場合には、前記油圧供給路からの油圧で前記第2係合要素が係合されるのと同時に、前記第1係合要素が前記後進レンジ圧の供給により係合され、前記後進変速段が達成される。
【0015】
また、好適には、(a)前記第1油路切換弁からの油圧と、シフト操作装置が後進ポジションに操作されたときに前記係合元圧になる後進レンジ圧とを選択的にその第1係合要素に対して供給する第3油路切換弁が、その第1係合要素とその第1油路切換弁との間に設けられており、(b)その第3油路切換弁は、前記車両用自動変速機の変速段が前記後進変速段である場合に、前記第1係合要素に対して前記後進レンジ圧を供給する。このようにすれば、前記シフト操作装置が後進ポジションに操作された場合には、前記第1係合要素が前記後進レンジ圧の供給により係合される。更に、前記第1油路切換弁が前記第2位置で前記第2係合要素と前記油圧供給路とを相互に接続し、その油圧供給路からの油圧で前記第2係合要素が係合されることにより、前記後進変速段が達成される。また、好適には、前記第1油路切換弁は、前記第1位置で上記第2係合要素に前記後進レンジ圧を供給する。このようにすれば、前記シフト操作装置が後進ポジションに操作された場合に、上記第1油路切換弁の第1位置でも、上記第1係合要素および第2係合要素に上記後進レンジ圧が供給されその両方が係合されることにより、前記後進変速段を達成することが可能な油圧制御回路を構成できる。
【0016】
また、好適には、前記係合圧調整弁はリニアソレノイド弁である。このようにすれば、前記第1係合要素の係合油圧を電気的に直接制御できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明が好適に適用される油圧制御装置に制御される動力伝達装置の骨子図である。
【図2】図1の動力伝達装置に備えられた車両用自動変速機において複数の変速段(ギヤ段)を成立させる際の係合要素の作動状態を説明する作動表である。
【図3】図1の動力伝達装置に備えられた車両用自動変速機の変速を指示するためのシフト操作装置を説明する図である。
【図4】図1の動力伝達装置等を制御するために車両に設けられた電子制御装置の電気的な制御系統を説明するブロック線図である。
【図5】図3の油圧制御回路の要部、すなわち、前記車両用自動変速機が有するブレーキB3の係合作動及び解放作動に関わる部分を説明する回路図である。
【図6】図5の油圧制御回路を判り易く記号化し本発明に関わる部分を抽出して示した図である。
【図7】図6に相当し、その図6の油圧制御回路から第3油路切換弁を無くした他の油圧制御回路の構成例を説明する図である。
【図8】図5の油圧制御回路において、前記ブレーキB3が係合される場合の圧油の流れを説明する図である。
【図9】図5の油圧制御回路において、前記ブレーキB3が解放される場合の圧油の流れを説明する図である。
【図10】本発明のバルブ構成とは異なる他のバルブ構成例を示す図であって、図5乃至は図7と対比して、本発明がバルブ構成を小型化できるという効果を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。
【実施例】
【0019】
図1は、本発明が好適に適用される油圧制御装置100(図4参照)に制御される動力伝達装置8の骨子図であり、図2は、その動力伝達装置8に備えられた車両用自動変速機10(以下、単に「自動変速機10」という)において複数の変速段(ギヤ段)を成立させる際の係合要素の作動状態を説明する作動表である。この自動変速機10は、車両の左右方向(横置き)に搭載するFF車両等に好適に用いられるものであって、シングルピニオン型の第1遊星歯車装置12を主体として構成されている第1変速部14と、ダブルピニオン型の第2遊星歯車装置16及びシングルピニオン型の第3遊星歯車装置18を主体としてラビニヨ型に構成されている第2変速部20とを同軸線上に有し、入力軸22の回転を変速して出力回転部材24から出力する。上記入力軸22は入力部材に相当するものであり、本実施例では走行用の動力源であるエンジン28によって回転駆動されるトルクコンバータ30のタービン軸である。また、上記出力回転部材24は自動変速機10の出力部材に相当するものであり、図4に示す差動歯車装置34に動力を伝達するためにそのデフドリブンギヤ(大径歯車)36と噛み合う出力歯車すなわちデフドライブギヤとして機能している。上記エンジン28の出力は、トルクコンバータ30、自動変速機10、差動歯車装置34、及び1対の車軸38を介して1対の駆動輪(前輪)40へ伝達されるようになっている。なお、この自動変速機10は中心線に対して略対称的に構成されており、図1ではその中心線の下半分が省略されている。
【0020】
上記エンジン28は、気筒内噴射される燃料の燃焼によって駆動力を発生させるガソリンエンジン等の内燃機関である。また、上記トルクコンバータ30は、上記エンジン28のクランク軸に連結されたポンプ翼車30aと、上記自動変速機10の入力軸22に連結されたタービン翼車30bと、一方向クラッチを介して上記自動変速機10のハウジング(変速機ケース)26に連結されたステータ翼車30cとを備えており、上記エンジン28により発生させられた動力を上記自動変速機10へ流体を介して伝達する流体伝動装置である。また、上記ポンプ翼車30a及びタービン翼車30bの間には、直結クラッチであるロックアップクラッチ32が設けられており、油圧制御等により係合状態、スリップ状態、或いは解放状態とされるようになっている。このロックアップクラッチ32が完全係合状態とされることにより、上記ポンプ翼車30a及びタービン翼車30bが一体回転させられる。
【0021】
図2の作動表は、前記自動変速機10により成立させられる各変速段とクラッチC1、C2、ブレーキB1、B2、B3の作動状態との関係をまとめたものであり、「○」は係合、「◎」はエンジンブレーキ時のみ係合、空欄は解放をそれぞれ表している。前記自動変速機10に備えられたクラッチC1、C2、及びブレーキB1、B2、B3(以下、特に区別しない場合は単にクラッチC、ブレーキBという)は、その自動変速機10の変速段を切り換えるために油圧制御により解放もしくは係合される係合要素であり、具体的には、多板式のクラッチやブレーキなど油圧アクチュエータによって係合制御される油圧式摩擦係合装置である。そして、油圧制御回路98(図4参照)のリニアソレノイド弁SL1〜SL4の励磁、非励磁、電流制御や、シフト操作装置46の操作と連動して作動するマニュアルバルブによって油圧回路が切り換えられること等により、上記クラッチCおよびブレーキBの係合、解放状態が切り換えられると共に、それらの係合、解放時の過渡油圧などが制御されるようになっている。
【0022】
前記自動変速機10では、前記第1変速部14及び第2変速部20の各回転要素(サンギヤS1〜S3、キャリアCA1〜CA3、リングギヤR1〜R3)の連結状態の組み合わせに応じて第1変速段(第1速ギヤ段)「1st」〜第6変速段(第6速ギヤ段)「6th」の6つの前進変速段が成立させられると共に、後進変速段「R」の後進変速段が成立させられる。図2に示すように、例えば前進ギヤ段では、クラッチC1及びブレーキB2の係合により第1速ギヤ段「1st」が、クラッチC1及びブレーキB1の係合により第2速ギヤ段「2nd」が、クラッチC1及びブレーキB3の係合により第3速ギヤ段「3rd」が、クラッチC1及びクラッチC2の係合により第4速ギヤ段「4th」が、クラッチC2及びブレーキB3の係合により第5速ギヤ段「5th」が、クラッチC2及びブレーキB1の係合により第6速ギヤ段「6th」が、それぞれ成立させられるようになっている。また、ブレーキB2及びブレーキB3の係合により後進ギヤ段「Rev」が成立させられ、クラッチC、ブレーキBのいずれもが解放されることによりニュートラル状態となるように構成されている。本実施例の自動変速機10では、第1変速段「1st」を成立させるブレーキB2には並列に一方向クラッチF1が設けられているため、発進時(加速時)には必ずしもブレーキB2を係合させる必要は無いのである。また、各変速段の変速比は、第1遊星歯車装置12、第2遊星歯車装置16、及び第3遊星歯車装置18の各ギヤ比(=サンギヤの歯数/リングギヤの歯数)ρ1、ρ2、ρ3によって適宜定められる。なお、ブレーキB3が本発明の第1係合要素に対応し、ブレーキB2が本発明の第2係合要素に対応し、クラッチC1が本発明の第3係合要素に対応する。また、第3速ギヤ段「3rd」が本発明の前進用の一変速段に対応し、第3速ギヤ段「3rd」及び第5速ギヤ段「5th」が本発明の前進用の所定の変速段に対応する。すなわち、自動変速機10は、上記第1係合要素であるブレーキB3と第3係合要素であるクラッチC1との両方が係合された場合に、前進用の一変速段である第3速ギヤ段「3rd」が達成されるものである。そして、自動変速機10は、上記第1係合要素であるブレーキB3が係合され且つ上記第2係合要素であるブレーキB2が解放された場合に前進用の所定の変速段である第3速ギヤ段「3rd」と第5速ギヤ段「5th」との何れかの変速段が達成され、その第1係合要素と第2係合要素との両方が係合された場合に後進変速段「R」が達成されるものである。
【0023】
図3は、シフトレバー44を備えたシフト操作装置46を説明する図である。このシフト操作装置46は例えば運転席の横に配設されており、そのシフト操作装置46に備えられたシフトレバー44は、前記自動変速機10の出力回転部材24をロックするための駐車位置「P」、後進走行のための後進走行位置「R」、自動変速機10内の動力伝達経路が遮断された中立状態とする中立位置「N」、自動変速モードで第1速ギヤ段乃至第6速ギヤ段の範囲で自動変速される前進走行位置「D」(最高速レンジ位置)、第1速ギヤ段乃至第4速ギヤ段の範囲で自動変速され且つ各ギヤ段でエンジンブレーキが作用させられる第4エンジンブレーキ走行位置「4」、第1速ギヤ段乃至第3速ギヤ段の範囲で自動変速され且つ各ギヤ段でエンジンブレーキが作用させられる第3エンジンブレーキ走行位置「3」、第1速ギヤ段乃至第2速ギヤ段の範囲で自動変速され且つ各ギヤ段においてエンジンブレーキが作用させられる第2エンジンブレーキ走行位置「2」、第1速ギヤ段で走行させられ且つエンジンブレーキが作用させられる第1エンジンブレーキ走行位置「L」へそれぞれ操作可能に設けられている。前記駐車位置「P」では、図示しないメカニカルパーキング機構によって機械的に駆動輪40の回転が阻止される。なお、前進走行のための前進走行位置「D」、第4エンジンブレーキ走行位置「4」、第3エンジンブレーキ走行位置「3」、第2エンジンブレーキ走行位置「2」、及び、第1エンジンブレーキ走行位置「L」は本発明の前進ポジションに対応し、後進走行位置「R」は本発明の後進ポジションに対応する。
【0024】
図4は、前記動力伝達装置8等を制御するために車両に設けられた電子制御装置90の電気的な制御系統を説明するブロック線図である。この図4に示す電子制御装置90は、例えばROM、RAM、CPU、入出力インターフェースなどを含む所謂マイクロコンピュータであって、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつROMに予め記憶されたプログラムに従って入力信号を処理することで、前記動力伝達装置8に関する種々の制御等を実行する。また、所謂アクセル開度として知られるアクセルペダル47の操作量ACCがアクセル操作量センサ48により検出されると共に、そのアクセル操作量(アクセル開度)ACCを表す信号が電子制御装置90に供給されるようになっている。アクセルペダル47は、運転者の出力要求量に応じて大きく踏み込み操作されるものであり、アクセル操作部材に相当し、アクセル操作量Accは出力要求量に相当する。また、エンジン28の回転速度NEを検出するためのエンジン回転速度センサ50、エンジン28の吸入空気量Qを検出するための吸入空気量センサ52、吸入空気の温度TAを検出するための吸入空気温度センサ54、エンジン28の電子スロットル弁の全閉状態(アイドル状態)及びその開度θTHを検出するためのアイドルスイッチ付スロットルセンサ56、車速V(出力回転部材24の回転速度NOUTに対応)を検出するための車速センサ58、エンジン28の冷却水温TWを検出するための冷却水温センサ60、常用ブレーキであるフットブレーキペダル62の操作の有無を検出するためのブレーキスイッチ64、シフトレバー44のレバーポジション(操作位置)PSHを検出するためのレバーポジションセンサ68、タービン回転速度NT(=入力軸22の回転速度NIN)を検出するためのタービン回転速度センサ70、油圧制御回路98内の作動油の温度であるAT油温TOILを検出するためのAT油温センサ72等が設けられており、それらのセンサやスイッチから、エンジン回転速度NE、吸入空気量Q、吸入空気温度TA、スロットル弁開度θTH、車速V、エンジン冷却水温TW、ブレーキ操作の有無、シフトレバー44のレバーポジションPSH、タービン回転速度NT、AT油温TOILなどを表す信号が電子制御装置90に供給されるようになっている。
【0025】
また、電子制御装置90は、基本的な制御として、例えば、予め記憶された関係から実際のアクセル開度ACC(%)等に基づいてスロットル開度θTH(%)を制御するスロットル開度制御、予め記憶された関係から実際のアクセル開度ACC(%)又はスロットル開度θTH(%)と車速V(km/h)等とに基づいて前記自動変速機10のギヤ段を自動的に切り換える変速制御、その変速制御に関するフィードバック制御及び学習制御、予め記憶された関係から出力軸回転速度(車速)NOUT及びスロットル開度θTH等に基づいて前記トルクコンバータ30に備えられたロックアップクラッチ32の係合、解放、或いはスリップを実行する制御等を実行する。
【0026】
また、電子制御装置90は、駆動力変化などの変速ショックが発生したり摩擦係合装置(クラッチCやブレーキB)の摩擦材の耐久性が損なわれたりすることがないように、シフトレバー44に操作位置に応じて、油圧制御回路98のリニアソレノイド弁SL1〜SL4、SLU、SLT、および電磁切換弁SLの励磁状態を制御し、すなわち、クラッチCやブレーキBの係合油圧PC1、PC2、PB1、PB2、PB3を連続的に変化させ、それらクラッチCやブレーキBの係合作動および解放作動を制御する。図2から明らかなように、本実施例の自動変速機10は、2つの係合要素の係合によりギヤ段が達成され、クラッチCおよびブレーキBの何れか1つを解放するとともに他の1つを係合させるクラッチツークラッチ変速により、隣接するギヤ段の変速が行われるようになっている。
【0027】
図5は、油圧制御回路98の要部、すなわち、ブレーキB3の係合作動及び解放作動に関わる部分を説明する回路図である。油圧制御回路98と電子制御装置90とが、自動変速機10の油圧制御装置100を構成する。なお、図5にブレーキB1は図示されていないが、油圧制御回路98がブレーキB1の油圧制御回路を含まないということではない。
【0028】
リニアソレノイド弁SL1、SL2、SL3、SL4(図4参照)は、、油圧制御回路98内に設けられており、電子制御装置90から出力される駆動信号(指示油圧)に従ってそれぞれ励磁状態が制御される。これらの励磁状態が制御により、前記クラッチC1、C2、ブレーキB1、B2およびB3の係合油圧PC1、PC2、PB1、PB2、PB3がそれぞれ独立に制御され、それにより、電子制御装置90は、第1速ギヤ段「1st」〜第6速ギヤ段「6th」、および後進ギヤ段「Rev」の何れかを択一的に成立させることができる。リニアソレノイド弁SL1〜SL4は何れも大容量型で、それらの出力油圧PSL1、PSL2、PSL3、PSL4が、そのままクラッチC1、C2、ブレーキB1、B2またはB3に供給され、それ等の係合油圧PC1、PC2、PB1、PB2またはPB3を直接制御する直接圧制御が行われる。
【0029】
上記リニアソレノイド弁SL1、SL2、SL3、SL4のうち、図5に示すリニアソレノイド弁SL4について、具体的に説明する。リニアソレノイド弁SL1、SL2、SL3については図5には示していない。リニアソレノイド弁SL4は、本発明の係合圧調整弁に対応するものであって、所謂ノーマルクローズ(N/C)型のリニアソレノイド弁である。つまり、リニアソレノイド弁SL4は、非作動時すなわち非通電時(非励磁時)には、それの出力ポートSL4bと入力ポートSL4aとの間を遮断する一方でその出力ポートSL4bとそれのドレンポートSL4dとを相互に連通させるものである。リニアソレノイド弁SL4の入力ポートSL4aには、ブレーキB3を係合させるための係合元圧として第1ライン圧PL1が供給されており、リニアソレノイド弁SL4は、出力ポートSL4bの油圧(出力油圧PSL4)をソレノイドの駆動電流に応じて連続的に変化させる。なお、上記第1ライン圧PL1は、油圧制御回路98に含まれるオイルポンプから圧送された作動油が、油圧制御回路98に含まれるリリーフ型の第1ライン圧調圧弁により調圧された油圧である。また、上記オイルポンプは、例えばエンジン28によって回転駆動される機械式ポンプである。また、上記第1ライン圧調圧弁は、リニアソレノイド弁SLT(図4参照)から供給される信号圧PSLTに応じて調圧動作するものであり、その信号圧PSLTは自動変速機10の入力トルク等に応じて変更される。
【0030】
電磁切換弁SLは、油圧制御回路98内に設けられたオンオフ切換弁であり、それの入力ポートSLaにはモジュレータ圧PMODが供給されており、非通電状態すなわちオフ状態では入力ポートSLaと出力ポートSLbとの間を遮断する一方で、通電状態すなわちオン状態では入力ポートSLaと出力ポートSLbとを相互に連通させる。すなわち、電磁切換弁SLは、オン状態で、出力ポートSLbの油圧(出力油圧PSL)をモジュレータ圧PMODにする。なお、電磁切換弁SLのオフ状態では、例えば、上記出力油圧PSLは略零であるドレン圧とされる。なお、上記モジュレータ圧PMODは、油圧制御回路98に含まれるモジュレータ圧調圧弁により、第1ライン圧PL1を元圧として、その元圧の変動に拘わらず一定の油圧に調圧された油圧である。
【0031】
第1油路切換弁108は、第1位置ap1と第2位置ap2とに選択的に切り換えられる切換弁であり、リターンスプリング108sとスプール弁子108aとを備え、油圧制御回路98内に設けられている。そのスプール弁子108aには、リターンスプリング108sの付勢力と電磁切換弁SLの出力油圧PSLに基づく推力とを加えた下向きの第1の推力と、Dレンジ圧PDに基づく推力とRレンジ圧PRに基づく推力とを加えた上向きの第2の推力とが軸方向に作用する。これにより、第1油路切換弁108は、上記第1の推力が上記第2の推力よりも小さい場合、すなわち、電磁切換弁SLがオフ状態である場合には、第1位置ap1に切り換えられる一方で、上記第1の推力が上記第2の推力よりも大きい場合、すなわち、電磁切換弁SLがオン状態である場合には、第2位置ap2に切り換えられる。
【0032】
第1油路切換弁108は、第1位置ap1では、リニアソレノイド弁SL4の出力ポートSL4bと第1連通路110とを相互に接続する、すなわち、第3油路切換弁118を介してその出力ポートSL4bとブレーキB3との間を接続する。更に、第1位置ap1では、ブレーキB2とそのブレーキB2への油圧供給路112との間を遮断する一方で、ブレーキB2とRレンジ圧PRが供給される管路とを相互に接続する。また、第1油路切換弁108は、第2位置ap2では、上記出力ポートSL4bと第1連通路110との間を遮断する、すなわち、その出力ポートSL4bとブレーキB3との間を遮断する。更に、第2位置ap2では、ブレーキB2とRレンジ圧PRが供給される管路との間を遮断する一方で、ブレーキB2と上記油圧供給路112とを相互に接続し、その接続により前記リニアソレノイド弁SL2の出力油圧PSL2をブレーキB2に供給する。なお、本実施例では、Rレンジ圧PRは、本発明の後進レンジ圧に対応する油圧であり、前記マニュアルバルブの油圧回路切換えによって、シフト操作装置46が後進走行位置「R」に操作されたときに第1ライン圧PL1になり、それ以外の操作位置「P,N,D,4,3,2,L」では略零のドレン圧になる油圧である。また、Dレンジ圧PDは、前記マニュアルバルブの油圧回路切換えによって、シフト操作装置46が前進走行位置「D」またはその他の前進走行用の操作位置「4,3,2,L」すなわち前記前進ポジションに操作されたときに第1ライン圧PL1になり、それ以外の操作位置「P,N,R」では略零のドレン圧になる油圧である。
【0033】
第2油路切換弁114は、電子制御装置90により制御される信号圧PFLに応じて、オン位置bponとオフ位置bpoffとに選択的に切り換えられる切換弁であり、リターンスプリング114sとスプール弁子114aとを備え、油圧制御回路98内に設けられている。そのスプール弁子114aには、上記信号圧PFLに基づく推力である下向きの第1の推力と、リターンスプリング114sの付勢力とモジュレータ圧PMODに基づく推力とを加えた上向きの第2の推力とが軸方向に作用する。これにより、第2油路切換弁114は、上記第1の推力が上記第2の推力よりも大きい場合、すなわち、信号圧PFLが供給された場合には、オン位置bponに切り換えられる一方で、上記第1の推力が上記第2の推力よりも小さい場合、すなわち、信号圧PFLが供給されていない場合には、オフ位置bpoffに切り換えられる。
【0034】
第2油路切換弁114は、オン位置bponでは、リニアソレノイド弁SL4のドレンポートSL4dに第1ライン圧PL1を供給する、すなわち、そのドレンポートSL4dにかかる油圧を第1ライン圧PL1にする。更に、そのオン位置bponでは、クラッチC1につながる第2連通路116にDレンジ圧PDを供給する。一方で、第2油路切換弁114は、オフ位置bpoffでは、ドレンポートSL4dにかかる油圧をブレーキB3が解放される略零の前記ドレン圧にするとともに、第2連通路116への油圧も上記ドレン圧にする。すなわち、リニアソレノイド弁SL4のドレンポートSL4dにかかる油圧に着目すれば、第2油路切換弁114は、信号圧PFLに応じて、そのドレンポートSL4dにかかる油圧を第1ライン圧PL1と上記ドレン圧とに選択的に切り換えるものである。なお、第2連通路116は、自動変速機10のフェール時にはクラッチC1に接続されるが、それ以外の場合にはクラッチC1とは遮断される構成となっている。自動変速機10のフェールとは、例えば、電子制御装置90による自動変速機10の変速制御が実施不可能になること等であり、具体的には、自動変速機10の変速制御を実施するために設けられたリニアソレノイド弁SL1〜SL4の全てが励磁不可能となるソレノイド全断線状態になることである。
【0035】
第3油路切換弁118は、電子制御装置90により制御されるリニアソレノイド弁SLUからの信号圧PSLUに応じて、オン位置cponとオフ位置cpoffとに選択的に切り換えられる切換弁であり、軸方向に直列的に配置されたスプール弁子118aとスプールプランジャ118bとリターンスプリング118sとを備え、油圧制御回路98内に設けられている。そのスプール弁子118aには、上記信号圧PSLUに基づく推力とリターンスプリング118sの付勢力とを加えた下向きの第1の推力と、Rレンジ圧PRに基づく推力である上向きの第2の推力とが軸方向に作用する。これにより、第3油路切換弁118は、上記第1の推力が上記第2の推力よりも大きい場合、すなわち、信号圧PSLUが供給された場合には、オン位置cponに切り換えられる一方で、上記第1の推力が上記第2の推力よりも小さい場合、すなわち、信号圧PSLUが供給されていない場合には、オフ位置cpoffに切り換えられる。なお、スプール弁子118aには、上記第1の推力に加えDレンジ圧PDに基づく下向きの推力も作用するので、例えば、Dレンジ圧PDが第1ライン圧PL1になっていれば、スプール弁子118aは、信号圧PSLUが供給されていなくても、オン位置cponに切り換えられる。
【0036】
第3油路切換弁118は、油圧回路においてブレーキB3と第1油路切換弁108との間に設けられており、オン位置cponでは、第1連通路110とブレーキB3とを相互に接続し、第1油路切換弁108からの油圧をブレーキB3に供給する。一方で、第3油路切換弁118は、オフ位置cpoffでは、第1連通路110とブレーキB3との間を遮断するとともに、Rレンジ圧PRをブレーキB3に供給する。すなわち、第3油路切換弁118は、信号圧PSLUに応じて、第1油路切換弁108からの油圧とRレンジ圧PRとを選択的にブレーキB3に対して供給する。
【0037】
逆止弁120は、油圧制御回路98内においてリニアソレノイド弁SL4の出力ポートSL4bとブレーキB3との間に第1油路切換弁108及び第3油路切換弁118と並列に設けられており、ブレーキB3側に配設されたオリフィス120aと、出力ポートSL4b側に配設されオリフィス120aの開口径よりも大径のチェックボール120bとを備えている。逆止弁120は、このような構成から、ブレーキB3側から上記出力ポートSL4b側への圧油の流れを許容する一方でそれの逆方向の流れは遮断する。
【0038】
油圧制御回路98は、前述したような構成であるが、それを判り易く記号化してその主要部を図示したものが図6である。このように構成された油圧制御回路98において、第1油路切換弁108は、ブレーキB3が係合され且つブレーキB2が解放される場合、具体的には、自動変速機10の第3速ギヤ段もしくは第5速ギヤ段が成立させられる場合に、電子制御装置90によって第1位置ap1に切り換えられる。更に、第1油路切換弁108は、上記第3,5速ギヤ段以外の前進ギヤ段(前進変速段)が成立させられる場合であってもシフト操作装置46が前記前進ポジション「D,4,3,2,L」に操作されている限り、第1位置ap1に切り換えられる、すなわち、自動変速機10の変速段が前進変速段である場合には、第1位置ap1に切り換えられる。また、好適には、第1油路切換弁108は、シフト操作装置46が非走行ポジション「P,N」に操作されている場合にも、第1位置ap1に切り換えられる。
【0039】
また、第1油路切換弁108は、自動変速機10の変速段が前記後進変速段である場合には、第2位置ap2に切り換えられる。自動変速機10の後進変速段では、図2の係合作動表に示すように、ブレーキB2及びブレーキB3の両方が係合されるが、そのブレーキB3の係合について詳細に説明すると、ブレーキB3の解放状態からの係合作動の進行中には、リニアソレノイド弁SL4の出力油圧PSL4がブレーキB3に供給され、そのブレーキB3の完全係合後に、第1油路切換弁108が第1位置ap1から第2位置ap2に切り換えられ、且つ、第3油路切換弁118がオン位置cponからオフ位置cpoffに切り換えられる。すなわち、ブレーキB3は、その係合作動の進行中には上記出力油圧PSL4で係合制御され、完全係合後にはRレンジ圧PRで係合状態が維持される。なお、ブレーキB2は、自動変速機10の変速段が後進変速段となり、第1油路切換弁108が第2位置ap2に切り換えられた場合には、リニアソレノイド弁SL2の出力油圧PSL2で係合される。また、第3油路切換弁118は、前進用の第1〜6速ギヤ段の何れが成立させられる場合でも、オン位置cponに切り換えられている。また、前記ブレーキB3の完全係合後に第3油路切換弁118がオン位置cponからオフ位置cpoffに切り換えられた場合には、第1油路切換弁108は第1位置ap1のままでもよく、そのようにしたとすれば、ブレーキB3の完全係合後に、ブレーキB2およびブレーキB3は共にRレンジ圧PRで係合状態が維持される。また、第3油路切換弁118は、自動変速機10の前記後進変速段が成立させられる場合に、第1油路切換弁108がリニアソレノイド弁SL4の出力ポートSL4bと第1連通路110との間を遮断したときにブレーキB3に対してRレンジ圧PRを供給すればよく、それがブレーキB3の完全係合後でなくても差し支えないが、上述したように、ブレーキB3の完全係合後にブレーキB3に対してRレンジ圧PRを供給するのが望ましい。なぜなら、その完全係合時に対してRレンジ圧PRの供給が早すぎると、ブレーキB3の係合ショックが生じ易くなるからである。
【0040】
また、第1油路切換弁108がリニアソレノイド弁SL4の出力ポートSL4bと第1連通路110との間を遮断したときにブレーキB3に対してRレンジ圧PRを供給する油圧制御回路98としては、例えば、図7に示すように、第3油路切換弁118の無い構成も考え得る。すなわち、第1油路切換弁108は、図5に示すように、第2位置ap2では、ブレーキB3へつながる第1連通路110に接続されたポートを遮断するものであるが、図7に示すように、第2位置ap2で、リニアソレノイド弁SL4の出力ポートSL4bとブレーキB3との間を遮断する一方で、Rレンジ圧PRをブレーキB3に供給するものであってもよい。
【0041】
上述したように、第1油路切換弁108が第2位置ap2に切り換えられた状態でブレーキB3が係合される場合があるが、その場合において、リニアソレノイド弁SL4の出力油圧PSL4がブレーキB3の係合油圧PB3未満になると、逆止弁120がブレーキB3側からリニアソレノイド弁SL4の出力ポートSL4b側への圧油の流れを許容するので、ブレーキB3の係合油圧PB3が低下するおそれがある。そこで、第2油路切換弁114は、第1油路切換弁108が第2位置ap2に切り換えられた状態もしくは第3油路切換弁118がオフ位置cpoffに切り換えられた状態でブレーキB3が係合される場合、要するに、リニアソレノイド弁SL4側からその出力油圧PSL4がブレーキB3へ供給されない場合には、オン位置bponに切り換えられ、リニアソレノイド弁SL4のドレンポートSL4dにかかる油圧を第1ライン圧PL1にする。これにより、ブレーキB3を係合させている圧油が逆止弁120を介して上記ドレンポートSL4dから排出されることが防止される。このようにして、そのドレンポートSL4dにかかる油圧が第1ライン圧PL1にされてブレーキB3の係合力低下が防止されるが、上記第2油路切換弁114のオン位置bponへの切換えと併せて、リニアソレノイド弁SL4は、第1油路切換弁108が第2位置ap2に切り換えられた状態もしくは第3油路切換弁118がオフ位置cpoffに切り換えられた状態でブレーキB3が係合される場合、要するに、リニアソレノイド弁SL4側からその出力油圧PSL4がブレーキB3へ供給されない場合には、それの出力ポートSL4bと前記入力ポートSL4aとを相互に連通させてもよい。このようにしても、上記と同様に、逆止弁120を介したブレーキB3側から上記出力ポートSL4b側への圧油の流れが阻止される。
【0042】
油圧制御回路98は、自動変速機10のフェール状態において、シフト操作装置46が前進走行位置「D」に操作された場合には、前進用の一変速段を成立させる所謂リンプホーム機能を備えている。本実施例では、その前進用の一変速段は第3速ギヤ段とされており、油圧制御回路98は、自動変速機10のフェール状態において、シフト操作装置46が前進走行位置「D」に操作された場合には、ブレーキB3とクラッチC1とを係合させ第3速ギヤ段を成立させる。具体的に説明すると、自動変速機10のフェール時には、第1油路切換弁108が第1位置ap1に切り換えられ、且つ、第2油路切換弁114がオン位置bponに切り換えられてその第2油路切換弁114により第1油路切換弁108のドレンポートSL4dにかかる油圧が第1ライン圧PL1とされる。このとき、リニアソレノイド弁SL4は非作動状態(非励磁状態)であるため、それの出力ポートSL4bとドレンポートSL4dとが相互に連通されており、第1ライン圧PL1がブレーキB3に供給され、そのブレーキB3が係合される。また、第2油路切換弁114は、自動変速機10のフェール時には、前記ドレンポートSL4dにかかる油圧を第1ライン圧PL1にする切換位置すなわちオン位置bponで、Dレンジ圧PDをクラッチC1に第2連通路116を介して供給するので、シフト操作装置46が前進走行位置「D」に操作されたことにより、Dレンジ圧PDでクラッチC1が係合される。このようにして、前記リンプホーム機能が発揮される。
【0043】
本実施例には次のような効果(A1)乃至(A11)がある。(A1)本実施例によれば、リニアソレノイド弁(係合圧調整弁)SL4は、それの入力ポートSL4aには第1ライン圧(係合元圧)PL1が供給されており、出力ポートSL4bの油圧を連続的に変化させる。また、第1油路切換弁108は、上記出力ポートSL4bとブレーキB3(第1係合要素)との間を接続する一方でブレーキB2(第2係合要素)とそのブレーキB2への油圧供給路112との間を遮断する第1位置ap1と、上記出力ポートSL4bとブレーキB3(第1係合要素)との間を遮断する一方でブレーキB2と上記油圧供給路112とを相互に接続する第2位置ap2とに、選択的に切り換えられる。また、上記出力ポートSL4bとブレーキB3との間に第1油路切換弁108と並列に設けられた逆止弁120は、ブレーキB3側から上記出力ポートSL4b側への圧油の流れを許容する一方でそれの逆方向の流れは遮断する。更に、第1油路切換弁108は、ブレーキB3が係合され且つブレーキB2が解放される場合に、第1位置ap1に切り換えられる。従って、ブレーキB3がリニアソレノイド弁SL4の制御によりそれの出力油圧PSL4で係合される場合の圧油の流れは、図8の太い実線の矢印AR1のようになる。また、ブレーキB3が解放される場合の圧油の流れは、図9の太い実線の矢印AR2のようになり、その圧油は、第1油路切換弁108を介さず逆止弁120を介してリニアソレノイド弁SL4の出力ポートSL4bに供給される。そのため、ブレーキB3の係合時のみならず解放時にも、リニアソレノイド弁SL4によりブレーキB3の係合油圧PB3を制御でき、更に、ブレーキB3の解放時には、第1油路切換弁108の切換位置を拘束することがない。すなわち、第1油路切換弁108が何れの切換位置に切り換えられていたとしても、リニアソレノイド弁SL4によりブレーキB3の係合油圧PB3を制御して解放作動させることができる。これにより、その係合油圧PB3を直ちに前記ドレン圧にする場合と比較して、変速ショックを抑制できる。なお、本実施例では、第1油路切換弁108は、ブレーキB3が係合され且つブレーキB2が解放される場合に、第1位置ap1に切り換えられるが、ブレーキB2とブレーキB3との両方が係合される場合にも、第1位置ap1に切り換えられることがある。例えば、前述したように、前記後進変速段を成立させるためブレーキB2とブレーキB3との両方が係合される場合において、ブレーキB3の完全係合前すなわち係合作動の進行中には、第1油路切換弁108は、ブレーキB3に出力油圧PSL4を供給するため、第1位置ap1に切り換えられる。そのとき、その第1位置ap1ではブレーキB2にRレンジ圧PRが供給されて、ブレーキB2が係合される。
【0044】
(A2)また、第1油路切換弁108の第1位置ap1では、リニアソレノイド弁SL4の出力油圧PSL4でブレーキB3を係合させることができる一方でリニアソレノイド弁SL2の出力油圧PSL2でブレーキB2を係合させることができない。逆に、第1油路切換弁108の第2位置ap2では、上記出力油圧PSL4でブレーキB3を係合させることができない一方で上記出力油圧PSL2でブレーキB2を係合させることができる。このような第1油路切換弁108の構成により、自動変速機10のフェール例えばリニアソレノイド弁SL2,SL4の誤作動などに起因してブレーキB2及びブレーキB3の両方が同時に係合され前記後進変速段が成立させられることを防止できる。すなわち、第1油路切換弁108は、シフト操作装置46が後進走行位置「R」に操作されない限りブレーキB2及びブレーキB3の同時係合を禁止する機能を備えている。
【0045】
(A3)本実施例の油圧制御装置100は、上述したように、ブレーキB3の係合時のみならず解放時にも、リニアソレノイド弁SL4によりブレーキB3の係合油圧PB3を制御でき、更に、シフト操作装置46が後進走行位置「R」に操作されない限りブレーキB2及びブレーキB3の同時係合を禁止する機能を備えているが、これらの2つの機能を図10に示すバルブ構成で実現することも可能である。図10では、第1油路切換弁108と逆止弁120とが設けられておらず、その替わりに、リニアソレノイド弁SL4のフェール時などに出力油圧PSL4のブレーキB3への供給を遮断する第1遮断弁302と、ブレーキB3の係合油圧PB3が信号圧として供給されブレーキB3の係合時には出力油圧PSL2のブレーキB2への供給を遮断する第2遮断弁304とが設けられている。このような図10に示すバルブ構成では、ブレーキB3の係合時のみならず解放時にも前記出力油圧PSL4をブレーキB3に供給するためには、第1遮断弁302の切換位置が拘束されるので、第1遮断弁302に前記同時係合の禁止の機能を兼ね備えさせることが困難である。そのため、同時係合の禁止の機能を備えるために、第2遮断弁304が設けられている。従って、ブレーキB3の係合時および解放時に前記出力油圧PSL4をブレーキB3に供給する機能と上記同時係合を禁止する機能とを備える上で、図10に示すバルブ構成では、第1遮断弁302及び第2遮断弁304の合計2つバルブが必要であるところ、本実施例の油圧制御装置100は、第1油路切換弁108が上記同時係合を禁止する機能を備えているので、第1油路切換弁108と逆止弁120との構成で、前記2つの機能を実現することができる。すなわち、図10に示すバルブ構成と比較して、安価で小型化されたバルブ構成とすることができる。
【0046】
(A4)また、本実施例によれば、リニアソレノイド弁SL4の入力ポートSL4aには第1ライン圧PL1が供給されており、第2油路切換弁114は、第1油路切換弁108が第2位置ap2に切り換えられた状態でブレーキB3が係合される場合には、リニアソレノイド弁SL4のドレンポートSL4dにかかる油圧を第1ライン圧PL1にするので、リニアソレノイド弁SL4の作動状態に拘わらず出力油圧PSL4は第1ライン圧PL1になり、ブレーキB3を係合させている圧油が逆止弁120を介して排出されることを防止でき、そのブレーキB3の係合力の低下を防止できる。また、第2油路切換弁114は、そもそもフェールセーフのために必要なもの、すなわち、前記リンプホーム機能を備える上で必要なものであるので、ブレーキB3を係合させている圧油が逆止弁120を介して排出されることを防止する目的で新たに切換弁を設ける必要が無く、既存の第2油路切換弁114にブレーキB3の係合力の低下防止機能を兼ね備えさせることができる。
【0047】
(A5)また、本実施例によれば、自動変速機10のフェール時には、第1油路切換弁108が第1位置ap1に切り換えられ、且つ、第2油路切換弁114がオン位置bponに切り換えられてその第2油路切換弁114によりリニアソレノイド弁SL4のドレンポートSL4dにかかる油圧が第1ライン圧PL1とされる。また、第2油路切換弁114は、オン位置bponでは、Dレンジ圧PDをクラッチC1に第2連通路116を介して供給する。従って、自動変速機10のフェール時において、シフト操作装置46が前進走行位置「D」などの前進ポジションに操作されることにより第3速ギヤ段が達成されるので、非フェール時すなわち通常時になされる自動変速機10の変速が不可能となっていても、前進走行することが可能となる。
【0048】
(A6)また、本実施例によれば、リニアソレノイド弁SL4は、第1油路切換弁108が第2位置ap2に切り換えられた状態でブレーキB3が係合される場合には、それの出力ポートSL4bと入力ポートSL4aとを相互に連通させてもよく、そのようにしたとすれば、リニアソレノイド弁SL4の出力油圧PSL4は更に確実に第1ライン圧PL1になり、ブレーキB3を係合させている圧油が逆止弁120を介して排出されることを防止でき、そのブレーキB3の係合力の低下を防止できる。
【0049】
(A7)また、本実施例によれば、自動変速機10は、ブレーキB3が係合され且つブレーキB2が解放された場合に、前進用の変速段、具体的には第3速ギヤ段または第5速ギヤ段が達成され、ブレーキB3とブレーキB2との両方が係合された場合に前記後進変速段が達成されるものである。そして、第1油路切換弁108は、自動変速機10の変速段が前進変速段である場合に第1位置ap1に切り換えられ、シフト操作装置46が後進走行位置「R」に操作されない限りブレーキB2及びブレーキB3の同時係合を禁止する機能を備えている。従って、自動変速機10のフェールなどに起因して自動変速機10の変速段が前記後進変速段に切り換わることを、第1油路切換弁108により機械的に防止できる。なお、第1油路切換弁108は、前記後進変速段が成立させられる場合においてブレーキB3の係合制御の進行中には第1位置ap1とされ、その係合制御の完了後には、第2位置ap2とされる。
【0050】
(A8)また、本実施例によれば、図7に示すように、第3油路切換弁118が無く、第1油路切換弁108が、第2位置ap2で、リニアソレノイド弁SL4の出力ポートSL4bとブレーキB3との間を遮断する一方で、Rレンジ圧PRをブレーキB3に供給するものであってもよい。そのようにしたとすれば、シフト操作装置46が後進走行位置「R」に操作された場合には、油圧供給路112からの出力油圧PSL2でブレーキB2が係合されるのと同時に、ブレーキB3がRレンジ圧PRの供給により係合され、前記後進変速段が達成される。
【0051】
(A9)また、本実施例によれば、第3油路切換弁118は、自動変速機10の変速段が前記後進変速段である場合に、ブレーキB3に対してRレンジ圧PRを供給するので、シフト操作装置46が後進走行位置「R」に操作された場合には、ブレーキB3がRレンジ圧PRの供給により係合される。更に、第1油路切換弁108は、自動変速機10の変速段が前記後進変速段である場合には、第2位置ap2に切り換えられ、リニアソレノイド弁SL2の出力油圧PSL2でブレーキB2が係合される。これらのブレーキB2およびB3の係合により前記後進変速段が達成される。このように、その後進変速段が達成される場合に、第3油路切換弁118がブレーキB3に対しRレンジ圧PRを供給することにより、ブレーキB3を係合させる目的で第1油路切換弁108の切換位置を拘束しなくなり、第1油路切換弁108を第2位置ap2に切り換えることが可能になる。
【0052】
(A10)また、本実施例によれば、リニアソレノイド弁SL4は、それの出力油圧PSL4をソレノイドの駆動電流に応じて連続的に変化させるものであるので、ブレーキB3の係合油圧PB3を電気的に直接制御できる。
【0053】
(A11)また、本実施例によれば、ブレーキB3は、自動変速機10の後進変速段を成立させるために係合される場合に、その係合作動の進行中にはリニアソレノイド弁SL4の出力油圧PSL4を供給され、ブレーキB3の完全係合後にはRレンジ圧PRの供給を受けてその係合状態が維持される。これにより、ブレーキB3の係合に起因した変速ショックを抑えることができる。また、ブレーキB3の完全係合後には、リニアソレノイド弁SL4を制御する必要が無い。また、ブレーキB3では、その完全係合後においてRレンジ圧PRが供給されることにより、充分な係合力すなわち充分なトルク容量が確保される。
【0054】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、これはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【0055】
例えば、前述の実施例において、リニアソレノイド弁SL4のドレンポートSL4dに第2油路切換弁114が接続されているが、その第2油路切換弁114が設けられておらず、上記ドレンポートSL4dが前記ドレン圧とされていている油圧制御回路も考え得る。そのようにした場合には、第1油路切換弁108が第2位置ap2に切り換えられた状態でブレーキB3が係合される場合に、リニアソレノイド弁SL4は、逆止弁120を介したブレーキB3側から出力ポートSL4b側への圧油の流れを阻止するため、上記出力ポートSL4bと入力ポートSL4aとを相互に連通させる。
【0056】
また、前述の実施例において、リニアソレノイド弁SL1〜SL4は、それの出力油圧PSL1〜PSL4をソレノイドの駆動電流に応じて連続的に変化させるものであるが、出力油圧PSL1〜PSL4が電流制御されるのではなく、例えば、リニアソレノイド弁SL1〜SL4が、パイロット圧に応じて出力油圧が制御される圧力制御弁に置き換えられても差し支えない。
【0057】
また、前述の実施例において、第1油路切換弁108、第2油路切換弁114、第3油路切換弁118は、パイロット圧に応じて切り換えられるものであるが、ソレノイドを備えておりそのソレノイドの励磁・非励磁に応じて切り換えられる電磁弁であっても差し支えない。
【0058】
また、前述の実施例において、逆止弁120は、オリフィス120aとチェックボール120bとを含んで構成されているが、その構成に限定させるものではない。
【0059】
また、前述の実施例において、第1ライン圧PL1は、前記オイルポンプから圧送された作動油が、前記第1ライン圧調圧弁により調圧された油圧であるが、その第1ライン圧調圧弁により調圧されなくても差し支えない。また、図5において、第1ライン圧PL1は複数箇所に供給されているが、それらの全てが同一の圧力である必要は無い。
【0060】
また、前述の実施例において、本発明の前進用の所定の変速段には、第3速ギヤ段「3rd」及び第5速ギヤ段「5th」の2つのギヤ段が対応するが、1つのギヤ段が対応してもよいし、3以上のギヤ段が対応しても差し支えない。
【0061】
また、前述の実施例において、油圧制御回路98は、自動変速機10のフェール状態において、シフト操作装置46が前進走行位置「D」に操作された場合には、第3速ギヤ段を成立させるが、他のフェール処理がなされても差し支えない。
【符号の説明】
【0062】
10:自動変速機(車両用自動変速機)
46:シフト操作装置
100:油圧制御装置
108:第1油路切換弁
112:油圧供給路
114:第2油路切換弁
118:第3油路切換弁
120:逆止弁
SL4:リニアソレノイド弁(係合圧調整弁)
SL4a:入力ポート
SL4b:出力ポート
SL4d:ドレンポート
B2:ブレーキ(第2係合要素)
B3:ブレーキ(第1係合要素)
C1:クラッチ(第3係合要素)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
変速段を切り換えるために油圧制御により解放もしくは係合される第1係合要素と第2係合要素とを含む車両用自動変速機の油圧制御装置であって、
入力ポートには前記第1係合要素を係合させるための係合元圧が供給され、出力ポートの油圧を連続的に変化させる係合圧調整弁と、
該係合圧調整弁の出力ポートと前記第1係合要素との間を接続する一方で前記第2係合要素と該第2係合要素への油圧供給路との間を遮断する第1位置と、該出力ポートと該第1係合要素との間を遮断する一方で該第2係合要素と該油圧供給路とを相互に接続する第2位置とに、選択的に切り換えられる第1油路切換弁と、
前記係合圧調整弁の出力ポートと前記第1係合要素との間に前記第1油路切換弁と並列に設けられ、該第1係合要素側から該出力ポート側への圧油の流れを許容する一方でそれの逆方向の流れは遮断する逆止弁と
を、備え、
前記第1油路切換弁は、前記第1係合要素が係合され且つ前記第2係合要素が解放される場合に、前記第1位置に切り換えられる
ことを特徴とする車両用自動変速機の油圧制御装置。
【請求項2】
前記係合圧調整弁は非作動時には前記出力ポートと入力ポートとの間を遮断する一方で該出力ポートとそれのドレンポートとを相互に連通させるものであり、
該ドレンポートにかかる油圧を前記係合元圧と前記第1係合要素が解放されるドレン圧とに選択的に切り換える第2油路切換弁が設けられており、
前記車両用自動変速機は、それのフェール時には、前記第1油路切換弁が前記第1位置に切り換えられ前記ドレンポートの油圧が前記第2油路切換弁により前記係合元圧とされて、前記第1係合要素が係合されるものであり、
前記第2油路切換弁は、前記第1油路切換弁が前記第2位置に切り換えられた状態で前記第1係合要素が係合される場合に、前記ドレンポートにかかる油圧を前記係合元圧にする
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用自動変速機の油圧制御装置。
【請求項3】
前記車両用自動変速機は、それの変速段を切り換えるために油圧制御により解放もしくは係合される第3係合要素を備えており、前記第1係合要素と該第3係合要素との両方が係合された場合に前進用の一変速段が達成されるものであり、
前記第2油路切換弁は、前記車両用自動変速機のフェール時に、前記ドレンポートにかかる油圧を前記係合元圧にする切換位置で、シフト操作装置が前進ポジションに操作されたときに該係合元圧になるDレンジ圧を前記第3係合要素に供給する
ことを特徴とする請求項2に記載の車両用自動変速機の油圧制御装置。
【請求項4】
前記係合圧調整弁は、前記第1油路切換弁が前記第2位置に切り換えられた状態で前記第1係合要素が係合される場合に、前記出力ポートと前記入力ポートとを相互に連通させる
ことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の車両用自動変速機の油圧制御装置。
【請求項5】
前記車両用自動変速機は、前記第1係合要素が係合され且つ前記第2係合要素が解放された場合に前進用の所定の変速段が達成され、該第1係合要素と第2係合要素との両方が係合された場合に後進変速段が達成されるものであり、
前記第1油路切換弁は、前記車両用自動変速機の変速段が前進変速段である場合に、前記第1位置に切り換えられる
ことを特徴とする請求項2乃至4の何れか1項に記載の車両用自動変速機の油圧制御装置。
【請求項6】
前記第1油路切換弁は、前記第2位置で、シフト操作装置が後進ポジションに操作されたときに前記係合元圧になる後進レンジ圧を前記第1係合要素に供給するものである
ことを特徴とする請求項5に記載の車両用自動変速機の油圧制御装置。
【請求項7】
前記第1油路切換弁からの油圧と、シフト操作装置が後進ポジションに操作されたときに前記係合元圧になる後進レンジ圧とを選択的に該第1係合要素に対して供給する第3油路切換弁が、該第1係合要素と該第1油路切換弁との間に設けられており、
該第3油路切換弁は、前記車両用自動変速機の変速段が前記後進変速段である場合に、前記第1係合要素に対して前記後進レンジ圧を供給する
ことを特徴とする請求項5に記載の車両用自動変速機の油圧制御装置。
【請求項8】
前記係合圧調整弁はリニアソレノイド弁である
ことを特徴とする請求項1乃至7の何れか1項に記載の車両用自動変速機の油圧制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−185552(P2010−185552A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−31702(P2009−31702)
【出願日】平成21年2月13日(2009.2.13)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】