説明

車両用運転支援装置および車両用運転支援方法

【課題】自車両の走行状態に応じて、他車両の情報をドライバに報知する。
【解決手段】注意交差点判定部12によって、自車両が見通しの悪い注意交差点に接近したと判定した時に、車速センサ4によって検出される車速が所定車速以下であれば、無線通信装置1によって受信した他車両の情報をディスプレイ7に表示し、車速が所定車速より高ければ、他車両の情報をディスプレイ7に表示しない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車車間通信によって取得した情報を利用して、運転を支援する車両用運転支援装置および車両用運転支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自車両の周辺に存在する他車両と無線通信を行い、他車両の現在位置や速度等の情報を取得して、必要に応じて、ドライバに警報を発する技術が知られている(特許文献1参照)。特許文献1に記載の技術では、通信電波を遮る電波遮蔽物が存在する通信抑圧交差点の存在を検出すると、通信抑圧交差点に関する情報、および、自車の走行道路と交差する道路上を走行する車両の情報を、走行道路上の他車両に送信して、交差道路を走行する車両の情報を知らせている。
【0003】
【特許文献1】特開2004−246458号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の技術では、自車両の走行状態に関係なく、他車両の情報を受信して、ドライバに報知してしまうという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による車両用運転支援装置および車両用運転支援方法は、自車両が見通しの悪い注意交差点に接近した時に、自車両の速度が所定車速以下であると判定すると、無線通信を介して取得した他車両の車両情報をドライバに報知し、自車両の速度が所定車速より高いと判定すると、他車両の車両情報をドライバに報知しないことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明による車両用運転支援装置および車両用運転支援方法によれば、自車両が見通しの悪い注意交差点に接近した時に、自車両の速度が所定車速以下にならないと、他車両の車両情報をドライバに報知しないので、安全性をより向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
図1は、一実施の形態における車両用運転支援装置の構成を示す図である。一実施の形態における車両用運転支援装置は、無線通信装置1と、GPSユニット2と、地図データベース3と、車速センサ4と、アクセル開度センサ5と、ブレーキペダルセンサ6と、ディスプレイ7と、スピーカ8と、コントローラ10とを備え、例えば、カーナビゲーションシステムに適用されて使用される。
【0008】
無線通信装置1は、他の車両に搭載されている無線通信装置との間で無線通信(狭域無線通信)を行う。ここでは、他の車両との間で行う無線通信を車車間通信と呼ぶ。無線通信装置1には、車両の先端部に設置されている無線通信用アンテナ1Aが接続されており、直進性の高い電波を用いて、車車間通信を行う。GPSユニット2は、GPS衛星から発信されるGPS信号を受信して、自車両の現在位置を検出する。地図データベース3は、地図データを格納する。この地図データには、見通しの悪い交差点(以下、注意交差点と呼ぶ)に関するデータも含まれている。
【0009】
車速センサ4は、車両の速度を検出して、コントローラ10に出力する。アクセル開度センサ5は、アクセル開度を検出して、コントローラ10に出力する。ブレーキペダルセンサ6は、ブレーキペダル操作の有無を示す信号をコントローラ10に出力する。
【0010】
ディスプレイ7は、コントローラ10からの指示に基づいて、車両の現在地および現在地付近の地図を表示する。スピーカ8は、コントローラ10からの指示に基づいて、ドライバに警報を発する。
【0011】
コントローラ10は、CPU内部で行う処理機能上、通信制御部11と、注意交差点判定部12と、警報発令判定部13と、表示制御部14とを備える。通信制御部11は、無線通信装置1が行う車車間通信の制御を行う。注意交差点判定部12は、GPSユニット2によって検出される車両位置、および、地図データベース3に格納されている地図データに基づいて、自車両が注意交差点に近づいているか否かを判定する。
【0012】
警報発令判定部13は、GPSユニット2によって検出される車両位置、および、無線通信装置1によって受信される他車両の情報に基づいて、ドライバに警報を発令する必要があるか否かを判定する。無線通信装置1によって受信される他車両の情報には、他車両の速度および車両位置の情報が少なくとも含まれる。表示制御部14は、ディスプレイ7の表示制御を行う。
【0013】
図2は、一実施の形態における車両用運転支援装置によって行われる処理内容を示すフローチャートである。車両が起動すると、コントローラ10は、ステップS10の処理を開始する。ステップS10において、通信制御部11は、無線通信装置1を介して、自車両の情報を他車両に搭載されている無線通信装置に送信する。他車両に送信する車両情報には、車速センサ4によって検出される車速、アクセル開度センサ5によって検出されるアクセル開度、および、ブレーキペダルセンサ6によって検出されるブレーキペダル操作の有無の情報が含まれる。なお、他車両の車両情報は、無線通信装置1によって常に受信できる状態としておき、車両情報が送信されてくれば、随時受信する。
【0014】
ステップS10に続くステップS20において、注意交差点判定部12は、GPSユニット2によって検出される車両位置、および、地図データベース3に格納されている地図データに基づいて、自車両が注意交差点に接近したか否かを判定する。上述したように、注意交差点のデータは、地図データベース3に格納されている地図データに含まれている。
【0015】
図3は、注意交差点20の一例を示す図である。建物23が存在するために、車両21のドライバは、注意交差点20に近づいてくる他車両22を目視することができない。また、無線通信装置1は、直進性の高い電波を用いて、車車間通信を行うので、図3に示す車両21の位置では、交差道路を走行している他車両22から、車両情報を受信することもできない。
【0016】
ステップS20では、自車両が注意交差点から所定の距離範囲内に進入すると、自車両が注意交差点に接近したと判定する。自車両が注意交差点に接近していないと判定するとステップS20で待機し、注意交差点に接近したと判定すると、ステップS30に進む。ステップS30において、通信制御部11は、無線通信装置1を介して車両情報を送信する処理を停止して、ステップS40に進む。ただし、他車両から送信されてくる車両情報は、無線通信装置1によって常に受信しておく。
【0017】
ステップS40からステップS60までの処理は、表示制御部14によって行われる。ステップS40では、自車両が接近している注意交差点の拡大図とともに、無線通信装置1によって通信可能なエリアを表示させるための指令をディスプレイ7に出す。これにより、ディスプレイ7には、注意交差点の拡大図とともに、無線通信装置1によって通信可能なエリアが表示される。図4は、ディスプレイ7に表示される注意交差点の拡大図、および、無線通信装置1によって通信可能なエリア30の一例を示す図である。
【0018】
ステップS40に続くステップS50では、GPSユニット2によって検出される車両位置、および、地図データベース3に格納されている地図データに基づいて、自車両が通信可能エリア30内に進入したか否かを判定する。自車両が通信可能エリア内30内に進入していないと判定するとステップS20に戻り、通信可能エリア30内に進入したと判定すると、ステップS60に進む。
【0019】
ステップS60では、車速センサ4によって検出される車速が所定車速V1以下であるか否かを判定する。ここでは、車両が停止または徐行しているか否かを判定するために、所定車速V1を極低速の値に設定しておく。車速が所定車速V1より大きいと判定するとステップS20に戻り、所定車速V1以下であると判定すると、ステップS70に進む。
【0020】
ステップS70において、通信制御部11は、無線通信装置1を介して、他車両に車両情報を送信する処理を再開して、ステップS80に進む。ステップS80において、警報発令判定部13は、ドライバに警報を発令する必要があるか否かの判定処理を行う。ここでは、無線通信装置1によって受信される他車両の速度および車両位置を含む車両情報、および、GPSユニット2によって検出される車両位置に基づいて、注意交差点において、自車両が他車両と衝突する可能性が高いか否かを判断する。注意交差点において自車両が他車両と衝突する可能性が高いか否かを判断する処理を行うと、ステップS90に進む。
【0021】
ステップS90において、警報発令判定部13は、ステップS80で行った警報発令判定の結果に基づいて、ドライバに警報を発令する必要があるか否かを判定する。自車両が他車両と衝突する可能性が高いと判断した場合には、ドライバに警報を発令する必要があると判定し、自車両が他車両と衝突する可能性が低いと判断すると、ドライバに警報を発令する必要はないと判定する。ドライバに警報を発令する必要があると判定するとステップS100に進み、警報を発令する必要がないと判定すると、ステップS110に進む。
【0022】
ステップS100において、表示制御部14は、注意交差点において、他車両が接近してきていることをドライバに知らせるための表示指令をディスプレイ7に出す。これにより、ディスプレイ7には、他車両が接近中である旨の注意喚起表示が行われる。図5は、ディスプレイ7に表示される注意喚起表示の一例である。図5に示す注意喚起表示では、注意交差点に接近してきている他車両22をアイコンで表示するとともに、「注意(右)」という文字を表示することによって、自車両21の右方向から、他車両22が接近してきていることをドライバに知らせている。
【0023】
ステップS100において、ディスプレイ7に注意喚起表示を行うと、ステップS110に進む。ステップS110において、表示制御部14は、GPSユニット2によって検出される車両位置、および、地図データベース3に格納されている地図データに基づいて、自車両が注意交差点を通過したか否かを判定する。自車両が注意交差点を通過していないと判定するとステップS90に戻る。一方、自車両が注意交差点を通過したと判定すると、ディスプレイ7の表示を、元の表示に戻して、ステップ10に戻る。元の表示とは、例えば、通常のナビゲーション地図表示である。
【0024】
一実施の形態における車両用運転支援装置によれば、自車両が見通しの悪い注意交差点に接近した時に、自車両の速度が所定車速以下であれば、無線通信装置1によって受信した他車両の情報をディスプレイ7に表示し、自車両の速度が所定車速より高ければ、他車両の情報をディスプレイ7に表示しない。車速が所定車速以下にならなければ、他車両の情報をディスプレイ7に表示しないので、安全性をより向上させることができる。すなわち、車速が所定車速より高ければ、他車両の情報がディスプレイ7に表示されないので、運転支援のために他車両の情報をディスプレイ7に表示させるためには、ドライバは、車速を所定車速以下に落とさざるを得ない。
【0025】
回折度の高い電波を用いて車車間通信を行う場合には、電波の到達範囲が大きくなって、車車間通信で得られる他車両の情報が増大するため、他車両との衝突可能性判定処理を行う処理負荷が大きくなる。しかし、一実施の形態における車両用運転支援装置では、直進性の高い電波を用いて車車間通信を行っているため、衝突可能性判定処理を行う他車両の情報が制限され、衝突可能性判定処理の処理負荷を軽減することができる。
【0026】
一実施の形態における車両用運転支援装置によれば、自車両が注意交差点に接近した時に、無線通信装置1による通信可能なエリアに進入してから、自車両の速度が所定車速以下であれば、他車両の情報をディスプレイ7に表示し、自車両の速度が所定車速より高ければ、他車両の情報をディスプレイ7に表示しないようにした。これにより、通信可能エリア内で最新の他車両情報を取得してから、車速が所定車速以下になった状態で、最新の他車両情報をディスプレイ7に表示することができる。
【0027】
また、一実施の形態における車両用運転支援装置によれば、自車両が注意交差点に接近した時に、無線通信装置1による通信可能なエリアをディスプレイ7に表示するので、ドライバは、他車両の情報を受信できる通信可能エリアを容易に確認することができる。
【0028】
さらに、一実施の形態における車両用運転支援装置によれば、車両の先端部に無線通信用アンテナ1Aを設置したので、注意交差点において、他車両の情報をいち早く取得することができる。
【0029】
本発明は、上述した一実施の形態に限定されることはない。例えば、地図データベース3に格納する地図データには、注意交差点に関するデータを予め含めておくものとして説明したが、注意交差点に関するデータが含まれていない地図データを用いることもできる。この場合、地図データに登録されている交差点の道路形状、および、地図データに登録されている交差点付近の建物の情報に基づいて、見通しの悪い交差点であるか否かを判定することができる。
【0030】
上述した一実施の形態では、車車間通信によって、他車両の情報を取得するものとして説明したが、路側に設置されている路側機に車両情報を送信し、路側機から他車両の情報を受信するようにしてもよい。
【0031】
図2に示すフローチャートのステップS60では、車速が所定車速V1以下であるか否かを判定したが、車両が停止したか否かを判定するようにしてもよい。この場合には、車両が停止したと判定した場合に、ステップS70以降の処理を行うことになる。
【0032】
上述した一実施の形態では、無線通信装置1を介して受信した他車両の車両情報、例えば、他車両が接近してきている旨の情報をディスプレイ7に表示したが、他車両が接近してきている旨の音声をスピーカ8から出力して、ドライバに報知することもできる。
【0033】
特許請求の範囲の構成要素と第1の実施の形態の構成要素との対応関係は次の通りである。すなわち、無線通信装置1および無線通信用アンテナ1Aが通信手段を、ディスプレイ7および/またはスピーカ8が報知手段を、注意交差点判定部12が注意交差点接近判定手段を、車速センサ4が車速検出手段を、表示制御部14が車速判定手段を、GPSユニット2が位置検出手段を、警告発令判定部13が衝突可能性判定手段をそれぞれ構成する。なお、以上の説明はあくまで一例であり、発明を解釈する上で、上記の実施形態の構成要素と本発明の構成要素との対応関係に何ら限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】一実施の形態における車両用運転支援装置の構成を示す図
【図2】一実施の形態における車両用運転支援装置によって行われる処理内容を示すフローチャート
【図3】注意交差点の一例を示す図
【図4】ディスプレイに表示される注意交差点の拡大図、および、無線通信装置によって通信可能なエリアの一例を示す図
【図5】ディスプレイに表示される注意喚起表示の一例を示す図
【符号の説明】
【0035】
1…無線通信装置、2…GPSユニット、3…地図データベース、4…車速センサ、5…アクセル開度センサ、6…ブレーキペダルセンサ、7…ディスプレイ、8…スピーカ、10…コントローラ、11…通信制御部、12…注意交差点判定部、13…警報発令判定部、14…表示制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信を介して、他車両の車両情報を取得する通信手段と、
前記通信手段によって取得された他車両の車両情報をドライバに報知する報知手段と、
自車両が見通しの悪い交差点(以下、注意交差点)に接近中であるか否かを判定する注意交差点接近判定手段と、
車速を検出する車速検出手段と、
前記注意交差点接近判定手段によって、自車両が注意交差点に接近中であると判定されると、前記車速検出手段によって検出される車速が所定車速以下であるか否かを判定する車速判定手段とを備え、
前記報知手段は、前記車速判定手段によって、前記車速検出手段によって検出される車速が所定車速以下であると判定されると、前記通信手段によって取得された他車両の車両情報をドライバに報知し、前記車速検出手段によって検出される車速が前記所定車速より高いと判定されると、他車両の車両情報をドライバに報知しないことを特徴とする車両用運転支援装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用運転支援装置において、
前記報知手段は、前記通信手段によって取得された他車両の車両情報を表示する表示手段であることを特徴とする車両用運転支援装置。
【請求項3】
請求項2に記載の車両用運転支援装置において、
前記表示手段は、前記注意交差点接近判定手段によって、自車両が注意交差点に接近中であると判定されると、前記通信手段による無線通信が可能なエリア(以下、通信可能エリア)を表示することを特徴とする車両用運転支援装置。
【請求項4】
請求項3に記載の車両用運転支援装置において、
前記車速判定手段は、車両が前記通信可能エリアに進入すると、前記車速検出手段によって検出される車速が所定車速以下であるか否かを判定することを特徴とする車両用運転支援装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の車両用運転支援装置において、
車両の位置を検出する位置検出手段と、
前記位置検出手段によって検出される自車両の位置、および、前記通信手段によって取得された他車両の車両情報に基づいて、注意交差点に接近してきている他車両と自車両との衝突可能性を判定する衝突可能性判定手段とをさらに備え、
前記報知手段は、前記衝突可能性判定手段によって自車両と他車両との衝突可能性が高いと判定されると、前記通信手段によって取得された他車両の車両情報とともに、ドライバに対する注意喚起を報知することを特徴とする車両用運転支援装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の車両用運転支援装置において、
前記通信手段は、直進性の高い電波を用いて、無線通信を行うことを特徴とする車両用運転支援装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の車両用運転支援装置において、
前記通信手段は、車両の先端部に設置される通信用アンテナを備えることを特徴とする車両用運転支援装置。
【請求項8】
無線通信を介して取得した他車両の車両情報をドライバに報知する車両用運転支援方法において、
自車両が見通しの悪い交差点(以下、注意交差点)に接近中であるか否かを判定し、
自車両が注意交差点に接近中であると判定すると、自車両の速度が所定車速以下であるか否かを判定し、自車両の速度が所定車速以下であると判定すると、無線通信を介して取得した他車両の車両情報をドライバに報知し、自車両の速度が前記所定車速より高いと判定すると、他車両の車両情報をドライバに報知しないことを特徴とする車両用運転支援方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−141114(P2007−141114A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−336582(P2005−336582)
【出願日】平成17年11月22日(2005.11.22)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】