説明

車両管理システムおよび車両管理方法

【課題】テストコース、サーキットをはじめとする施設において、コースの安全運用を可能にすること。
【解決手段】この車両管理システムは、管理された施設内のコース上を走行する車両に搭載され、外部からの電波を受信し該電波に基づいて自車両の現在位置を検出して位置情報を生成する測位手段と前記測位手段で生成された位置情報および前記車両を識別する車両識別情報を発信する無線送信手段とを有する車載装置と、コース近傍に設置され、通信圏内にある車載装置からの電波を受信する複数の無線基地局と、無線基地局が受信した位置情報と車両識別情報とを前記コースの地図情報と対応させて蓄積する記憶手段と、記憶手段が蓄積する位置情報、車両識別情報および地図情報に基づいてコース内における車両の位置を特定して表示する表示手段とを有する管理装置とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば管理された領域を走行中の車両の走行情報を把握して安全管理を可能にする車両管理システムおよび車両管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
テストコースやサーキットなど高速走行可能なコースを有する施設においては、コース上の車両がどこにどの様に走行しているか(走行状況)を常時監視し、コースの安全運用を図ることが必要である。従来、コース全体での車両の走行状況を管理するため、たとえば中央監視室を設けて監視員を配置するとともに、コース脇の要所にそれぞれコース監視員を配置することが行われている。そして、コース監視員が転倒車両、コースアウト車両、故障車両などを発見した場合には、コース監視員自らが後続車両に黄色の旗を振って通知するほか、必要に応じて中央監視室にいる監視員に連絡を取り、救急車両を手配するなど、コースの安全管理を図っている。
【0003】
ところで、コースは見通しが利くところばかりではないため、コース脇や中央監視室にいる監視員のみがコース状況を的確に把握しようとすると、監視員を多数配置する必要があり、コストがかかる。特に、敷地が広大でコースが複数あり、昼夜を問わず24時間運用で多くの車両が走行をしているような施設では、コース脇に監視員を配置して目視でコース状況を把握し、それらをすべて中央監視室で的確に把握することは現実的でない。
【0004】
このようなテストコースなどの周回コースを走行する自動車及び自動二輪車等の走行体の耐久試験や性能試験などの試験において車両の状況を管理する車両管理システムとしては、走行体の車速、エンジン回数、アクセル開度、水温、湯温等の走行データを逐次捕捉して出力する走行体用データ通信システムが提案されている(たとえば特許文献1)。
【0005】
しかし、従来の車両管理システムや車両管理方法では、車両自体の状態を管理するに留まっており、車両の走行状況を把握するには監視員など人手に頼らねばならないという問題があった。
【特許文献1】特開平7−273718号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、従来の車両管理システムや車両管理方法では、車両の走行状況を把握することができず、監視員の目視に頼らねばならないという問題があった。本発明はこのような課題を解決するためになされたもので、車両の走行状況を把握することでコースの安全運用を可能にする車両管理システムおよび車両管理方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した目的を達成するために、第1の発明の車両管理システムは、管理されたコース上を走行する車両に搭載され、外部からの電波を受信し該電波に基づいて自車両の現在位置を検出して位置情報を生成する測位手段とその測位手段で生成された位置情報および前記車両を識別する車両識別情報を発信する無線送信手段とを有する車載装置と、コース近傍に設置され、通信圏内にある車載装置からの電波を受信する複数の無線基地局と、その無線基地局が受信した位置情報と車両識別情報とをコースの地図情報と対応させて蓄積する記憶手段と、記憶手段が蓄積する位置情報、車両識別情報および地図情報に基づいてコース内における車両の位置を特定して表示する表示手段とを有する管理装置とを具備している。
【0008】
第2の発明の車両管理方法は、管理されたコースを走行する車両の現在位置を、前記車両に搭載した測位装置を用いて外部からの電波に基づいて又は自律的に検出しその位置情報を生成する測位ステップと、前記生成した位置情報を、前記車両を識別する車両識別情報とともに前記車両に搭載された無線通信装置を用いて無線基地局に向けて発信するステップと、前記コース近傍に設置した無線基地局を介して前記位置情報と前記車両識別情報を受信するステップと、前記受信した前記位置情報と前記車両識別情報とを前記コースの地図情報と対応させて記憶手段に蓄積するステップと、前記記憶手段が蓄積する前記位置情報、前記車両識別情報および前記地図情報に基づいて前記コース内における前記車両の位置を特定して表示するステップとを有している。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、コース上の管理対象の全車両の位置データを中央監視室の画面表示装置で一括してリアルタイムに確認することができ、コースの安全運用を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の一つの実施形態について図面を参照して詳細に説明する。本発明は、管理されたコース上の車両の現在位置をリアルタイムに管理するものである。ここで「コース」とは、一般に車両が走行する道路や領域などを含む概念を指すものとする。
【0011】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る車両管理システムの概略を示す図である。この実施形態は、本発明をたとえば自動車や自動二輪車などの車両用テストコースを有する施設に適用した例であり、複数のコース上を高速走行する複数の車両を管理するものである。図1に示すように、この実施形態に係る車両管理システム1は、コース9を走行する自動車や自動二輪車などの車両2に備えられた車載装置20と、コース9の周辺に設置され車載装置20と通信する無線基地局3と、コース9を管理する中央監視室4に配置され無線基地局3と伝送媒体5により接続された管理装置40とを有している。中央監視室4は、管理対象となる全車両の走行状況を一括して管理する役割を有する建物または部屋で、複数のコース9と同じ敷地内に設けられている。
【0012】
車載装置20は、車両2の現在位置を示す位置情報や車両2を運転する運転者の運転者識別情報(運転者ID)を取得して無線基地局3に向けて発信する無線装置である。車載装置20は、無線基地局3からの電波に基づいて車両2の位置情報を取得する測位機能と、運転者の運転者IDを取得するID読取り機能を有しており、取得した情報を無線基地局3に向けて発信する。車載装置20は、車両にあらかじめ登録された車両2の車両識別情報(車両ID)を保持しており、取得した情報を無線基地局3に向けて発信する際に、併せて、車両2の車両IDを発信する機能をも有している。
【0013】
無線基地局3は、車載装置20が発信した車両2の位置情報、車両ID、および運転者IDを管理装置40へ渡すとともに車載装置20に制御信号を発信する無線装置であり、コース9の大きさ・形状や数、管理対象たる車両2の数や速度などに応じてコース脇に複数設置される。無線基地局3の設置位置は、無線通信や車両走行への障害を考慮して決定される。たとえば、コース脇の樹木やコースのバンクなどは、マルチパスやフェージングの原因となり無線通信の障害となり得る。また、コースのブラインドコーナーや高速コーナーの近傍などは、走行する車両と物理的に衝突しやすく無線基地局を破損する原因となり得る。したがって、無線基地局3はこのような場所を避けて設置することが望ましい。特に、車両2が高速移動するほどマルチパスやフェージングの影響が大きくなるので、無線基地局3は、そのような影響が生じにくい場所に設置することが好ましい。このように、適切な場所に無線基地局3を設置することで、無線通信エリアの確保と車両の安全確保が可能になる。
【0014】
伝送媒体5は、無線基地局3と管理装置40とを結ぶ通信媒体である。伝送媒体5は、無線基地局3から中央監視室4に向けて発信された情報を中央監視室4に伝送する伝送媒体である。伝送媒体5は、中央監視室4から1つ又は複数の無線基地局3を宛先として発信された情報を、その指定された無線基地局3に伝送する伝送媒体でもある。
【0015】
管理装置40は、無線基地局3を介して受信した車両2の位置情報や運転者IDを蓄積し、これらの情報に基づいて車両2の位置や走行状況を管理するコンピュータ装置である。管理装置40は、無線基地局3を介して受信した車両2の位置情報等を解析するコンピュータ41と、同じく受信した車両2の位置情報等を蓄積する記憶部42と、コンピュータ41の解析結果や車両2の位置等を視覚的に表示する表示部43とを備えている。
【0016】
コンピュータ41は、記憶部42、表示部43、および伝送部44と連携して、プログラムを実行する機能を有する。コンピュータ41としては、汎用のパーソナルコンピュータやサーバー用コンピュータを用いることができる。
【0017】
記憶部42は、データやプログラム等の情報を不揮発的に記憶する記憶装置である。記憶部42は、コンピュータ41上で稼動するプログラムからの要求に応じて情報を記憶し、出力する機能を有する。記憶部42としては、たとえば、ハードディスクなどの読み書き可能な記憶装置を用いることができ、参照専用の情報の記憶については、CD−ROMやDVD−ROMなどの参照専用の媒体とその読み出し装置を用いることができる。記憶部42は、図1に示すようにコンピュータ41の外に設置することができるが、コンピュータ41の内部にあってもよい。
【0018】
表示部43は、たとえば、コースの縮小地図を表示するとともに車両2の現在位置を表示する表示装置である。表示部43は、コンピュータ41上で稼動するプログラムから渡された情報に基づいて、表示データを画面に表示する表示装置であり、例えばCRTや液晶ディスプレイなどである。表示部43は、たとえば管理対象の全コースと走行中の管理対象全車両を一画面に表示しても各車両の現在位置が視認できる程度の大きさで表示できるような大きさと解像度を有する表示装置であることが好ましい。
【0019】
管理装置40は、車両2の位置情報に基づいてコース9における車両の走行状況、たとえばコースアウトや転倒・転覆事故などを検出し、操作員に知らせる機能を有する。併せて、管理装置40は、検出したコースアウト車両や転倒・転覆事故車両の近傍を走行している管理対象車両を検索して、当該管理車両に警告を発する機能をも有している。管理装置40は、無線基地局3とともに車両管理装置を構成する。
【0020】
この実施形態に係る車両管理システムでは、車両2に搭載された車載装置20は、随時当該車両2(以下、「自車両」と称する。)の位置を検出して位置情報を生成する。そして、車載装置20は、生成した位置情報を自車両の車両IDとともに、自車両が位置する領域をカバーする無線基地局3に対して送信する。位置情報および車両IDを受信した無線基地局3は、伝送媒体5を介して当該情報を管理装置40に伝送する。管理装置40は、受け取った情報を解析して記憶部42に蓄積し、当該位置情報および予め記憶したコースの地図情報に基づいて、当該車両2の現在位置などの走行状況を表示部43に表示する。
【0021】
このように、この実施形態に係る車両管理システムによれば、コース上の車両位置を管理装置にて集中的に管理するので、コース9や車両2が多数存在する場合でも確実な車両管理を実現することができる。また、この実施形態に係る車両管理システムでは、コース上のすべての管理対象車両2の車載装置20がリアルタイムにそれぞれ自車両の位置を検出して位置情報等として無線基地局3に送信し、無線基地局3を介して受信したこれらの情報を管理装置40が解析して各車両2の現在位置をコース地図に重ねて画面表示するので、管理装置40を操作するオペレータ(操作員)は表示部43の表示を見て、管理対象すべての車両の現在位置等の走行状況をリアルタイムに把握することができ、安全運行に必要な措置をとることができる。さらに、この実施形態に係る車両管理システムでは、車両2に搭載した車載装置20から送信される位置情報を複数の無線基地局3により受信するので、全てのコース上の車両位置等を把握することができ、たとえば時速350km/h程度の高速で走行する車両が複数存在しても、すべての車両の現在位置情報等を表示部43に表示することができる。そして、この実施形態に係る車両管理システムでは、複数の無線基地局3を有するので、通信用周波数チャネルが限られている場合であってもより多くの車両2を管理することができる。
【0022】
続いて、図2を参照してこの実施形態に係る車両管理システムの機能構成について詳細に説明する。図2は、この実施形態に係る車両管理システム1の機能構成を示す図である。図2に示すように、この車両管理システム1は、車載装置20と、無線基地局3(3a,3b,3c)と、管理装置40とを有している。
【0023】
まず車載装置20について説明する。図2に示すように、この車載装置20は、測位部21と、無線通信部22と、ID読取部23と、警告部24と、アンテナ25とを備えている。
【0024】
測位部21は、自車両の現在位置を測定して位置情報を生成する測位装置である。測位部21は、自車両の位置情報を緯度経度、基準点からの方位角と距離、座標位置などにより表される位置データや中間データを位置情報として生成する。測位部21としては、たとえば無線基地局3から受信した電波の電波強度に基づいて測位する電波測位装置を用いることができる。たとえば、正確な位置と発信される電波強度が既知となっている少なくとも3箇所の無線基地局3(3a,3b,3c)からの電波を受信し、受信した電波各々の電波強度に基づいて、自車両の位置を測位することができる。この方法による測位の場合、概ね2〜3mの精度で測位することができる。測位部21は、無線基地局3に限られず、測位用に別途発信された電波を受信して測位してもよい。測位部21は、位置情報を生成すると無線通信部22に渡す。なお、渡す位置情報には、姿勢情報を含んでも良い。
【0025】
無線通信部22は、測位部21が生成した位置情報や、車載装備20が搭載される車両2の車両ID、さらには後述するID読取部23が読み取った運転者IDを無線基地局3に向けて送信する無線通信装置である。併せて、無線通信部22は、無線基地局3からの電波の強度を検出して測位部21に渡す機能をも有している。無線通信部22としては、たとえば、送信用(上り通信用)に、2.4GHz帯の周波数、受信用(下り通信用)に、1.2GHz帯の周波数を用いた小電力の無線通信装置を用いることができる。なお、無線通信部22は、発信するデータを圧縮し、または展開する機能を有していてもよい。チャネルは、無線基地局3により、車両単位かつ無線基地局単位で決定される。基地局3から受信するチャネルは、コース上のすべての管理対象車両に対して、個別に割り当てられている。
【0026】
ID読取部23は、車載装置20が搭載される車両2を運転する運転者の識別情報読取装置である。ID読取部23は、運転者が携帯する記録媒体、例えばIDカードなどから運転者IDを読み取る機能を有する。ID読取部23としては、たとえば、無線IDタグやICカードの読取装置を用いることができる。
【0027】
警告部24は、運転者に対して警告情報を知らせる警告装置である。警告部24は、無線通信部22が受信した警告情報に基づいて各種警告を運転者に知らせる機能を有する。警告部24は、運転者の視覚または聴覚を通じて危険を通知するものであり、例えば黄色や赤色を点灯するランプ装置などの表示装置やブザー装置などの音響装置を用いることができる。また、警告部24は、警告情報の種類に応じてこれらの装置を制御する機能を有していてもよい。
【0028】
アンテナ25は、無線通信部22と接続されたアンテナである。アンテナ25は、無線通信部22の出力信号を無線基地局3に向けて発信するとともに、無線基地局3のからの電波を受信して無線通信部22に渡す。アンテナ25としては、例えば車載に好適な小型形状の単一型アンテナやF型アンテナなど、棒状のものや板状のものを用いることができ、使用する周波数帯や電力に合わせて適切なアンテナを選択することができる。
【0029】
この実施形態に係る車載装置20によれば、測位部21が、外部からの電波、すなわち無線基地局3からの電波強度に基づいて車載装置20の搭載された車両2の現在位置を測位するので、比較的簡単な構成で測位を実現することができる。また、この実施形態に係る車載装置20によれば、ID読取部23が、運転者IDを取得して無線通信部22を介して発信するので、車両管理だけでなく運転者の管理をも集中的に行うことができる。さらに、この実施形態に係る車載装置20によれば、無線通信部22が受信した警告情報に基づいて運転者に危険を通知するので、従来コース脇に配置していた監視員を配置することなく運転に必要な危険情報を運転者に知らせることができる。
【0030】
次に、無線基地局3について説明する。図2に示すように、この無線基地局3は、アンテナ31と、無線通信部32と、伝送部33とを有している。
【0031】
アンテナ31は、無線通信部32と接続されたアンテナである。アンテナ31は、無線通信部32の出力を車両2に搭載された車載装置20のアンテナ25に向けて送信するとともに、車両2の車載装置20から発信された電波を受信して無線通信部32に渡す。アンテナ31としては、無指向性の単一型アンテナなどを用いることができるが、必要に応じて指向性アンテナを使用してもよい。すなわち、使用する周波数帯や電力、無線基地局一箇所でカバーすべき範囲の広さ、周囲の立地条件などに合わせて適切な利得指向性のアンテナを選択することができる。
【0032】
無線通信部32は、無線基地局内に設置され、車載装置20と無線通信することができる無線通信装置である。無線通信部32は、車載装置20の無線通信部22と対応した周波数および無線方式を用いており、同期を取って通信する機能を有する。無線通信部32は、アンテナ31を介して車載装置20から送信された無線信号を受信して伝送部33に渡すとともに、伝送部33から受け取った信号を、アンテナ31を介して車載装置20に向けて無線送信する。無線通信部32は、隣接する無線基地局3に設置される無線通信部32と異なる周波数を用いており、周波数を繰り返し利用することで多数の車両管理を可能にしている。なお、高速走行する車両に対応して無線基地局間の切替時間(ハンドオーバー)を抑えるため、たとえば、コース9単位で無線通信部32の使用周波数を同一としてもよい。
【0033】
ところで、この実施形態に係る車両管理システムでは、車載装置20の測位部21は、無線基地局3の電波に基づいて車両2の現在位置を測位している。そのため、無線通信部32は、自己の無線基地局3の識別信号または位置信号を車載装置2に向けて発信するように構成してもよい。このように構成することで、測位部21は、コース9に設置された無線基地局3の位置を予め記憶していなくても、受信した電波および無線基地局の識別信号等に基づいて測位することが可能になる。
【0034】
伝送部33は、伝送路51と無線通信部32との間を取り持つインタフェース装置である。伝送部33は、無線通信部32から渡された信号を伝送路51を介して管理装置40の伝送部44に渡すように変換する機能と、伝送路51を介して管理装置40から受け取った情報を無線通信部32に渡すよう変換する機能を有する。伝送部33としては、例えばシリアル回線、イーサネット(商標名)回線などに用いる汎用の有線通信インタフェースカードなどを用いることができ、伝送路51に対応して選択される。
【0035】
伝送路51は、無線基地局3の伝送部33と管理装置40の伝送部44とを接続する伝送路である。伝送路51としては、たとえば光ファイバーなどの高速回線を用いることができる。この実施形態に係る車両管理システム1では、複数のコース上の複数の車両管理を実現するため、複数の無線基地局3を備えている。伝送路51は、これら複数の無線基地局3を一箇所の管理装置40で管理するためのリモート回線としての機能を有している。伝送路51は、コース9の数や範囲、無線基地局3の展開する領域の広さ、無線基地局3の数、伝送されるデータ量などに応じて決定される。なお、この実施形態では、伝送路51は有線通信であるものとして説明しているが、固定無線回線などを利用してもよく、すなわち、無線基地局3と管理装置40とを常時接続することのできる回線形態であればどのような回線でも利用することができる。
【0036】
次に、管理装置40について説明する。図2に示すように、この管理装置40は、コンピュータ41と、記憶部42と、表示部43と、伝送部44とを有するとともに、コンピュータ41上で稼動するプログラムで実現される位置管理部411と、乗車状況管理部412と、転倒判定部413と、コースアウト判定部414と、表示データ生成部415と、警告通知部416と、基地局管理部417とを有している。
【0037】
記憶部42は、たとえば、管理対象たる車両の車両IDや車種などの車両情報、コースを示す地図情報など、管理対象となるコースに関連する情報、運転者IDや運転者名などの運転者情報、基地局を管理するために必要な基地局情報、コンピュータ41上で稼動するこれらのプログラム、及び/またはオペレーティングシステムなどを予め記憶している。また、コース9に関連する情報として、たとえば、コースの位置や形状などのコース地図情報、コースを所定の複数のエリアに分割したエリアごとの位置範囲情報、エリアごとに設定した転倒判定傾斜角の情報、コースごとに設定した最高速度情報などをさらに記憶していてもよい。
【0038】
伝送部44は、伝送路51とコンピュータ41との間を取り持つインタフェース装置である。伝送部44は、コンピュータ41から渡された信号を伝送路51を介して無線基地局3の伝送部33に渡すように変換する機能と、伝送路51を介して無線基地局3から受け取った情報をコンピュータ41に渡すよう変換する機能を有する。伝送部44としては、例えばシリアル回線、イーサネット(商標名)回線などに用いる汎用の有線通信インタフェースカードなどを用いることができる。伝送部44は、コンピュータ41の外部にあるように図示しているが、コンピュータ41内に組み込まれていても良い。伝送部44は、伝送路51に対応して選択される。
【0039】
位置管理部411は、伝送部40を介して無線基地局3から受け取った位置情報に対応する車両の現在位置を特定し、当該位置情報と車両IDと地図情報とを対応付けて管理する管理手段である。位置管理部411は、受け取った車両IDと位置情報とに基づいて、当該車両が現在コース上のどの位置を走行しているか特定し、記憶部42に蓄積する機能を有する。併せて、車両2の事故等を判定するため、位置情報等を転倒判定部413およびコースアウト判定部414に渡す。
【0040】
乗車状況管理部412は、各車両を運転する運転者の乗車状況を管理する管理手段である。乗車状況管理部412は、受け取った車両IDと運転者IDとを対応付けて現在時刻とともに乗車状況情報として記憶部42に格納する機能を有する。また、乗車状況管理部412は、あらかじめ記憶部42に記憶されている車両IDや運転者IDなどとともに乗車状況情報を表示データ生成部に渡す機能をも有する。ここで、表示データ生成部に渡す乗車状況情報は、車種や運転者氏名などID以外の関連情報を含んでもよい。また、乗車状況管理部412は、乗車状況の履歴を記憶部42から検索して表示部43に渡す機能、運転者だけでなく同乗者の情報を管理する機能を有してもよい。
【0041】
乗車状況管理部412は、車両IDと運転者IDが車載装置20から送られてくるのを待機していてもよいが、位置管理部411から得られる車両の位置情報と地図情報とに基づいて、運転者が交代するであろう場所(たとえばコース出入り口に設置した入退場ゲートやピット出入り口に設置したピットゲートなど)に車両が到達したことを検知し、該車両の車載装置20に対して、車両IDと運転者IDを送信するように指示を発するように構成してもよい。また、車両位置に変化がなくなったときに、同様の指示を発するように構成してもよい。このような構成とすることで、運転者交代情報を適宜把握することができる。
【0042】
転倒判定部413は、車両2が転倒したかどうかを判定する判定手段である。転倒判定部413は、車載装置20から送られる位置情報などに基づいて、車両2(特に自動二輪車)の転倒を判定する機能を有する。例えば、車両2の位置情報の変動幅などに基づいて、所定の変動幅を超えた場合に転倒したと判定する。なお、車両2の転倒判定は、車載装置20において実現してもよい。すなわち、車載装置20が測位部21に姿勢センサを備え、車両2の傾斜角が所定角度以上傾いた場合に転倒と判定して、無線基地局3に対し転倒信号を発信するように構成してもよい。この場合、転倒判定部413は、受け取った転倒信号および位置情報に基づいて転倒した車両を特定し、後述する表示データ生成部415に関連情報の表示を指示することになる。転倒判定部413は、転倒であると判定した場合には、判定結果と、該車両の位置情報と、対応する車両IDなどを警告通知部416に渡す。
【0043】
コースアウト判定部414は、車両2が走行する現在位置がコースアウトに該当するかどうかを判定する判定手段である。コースアウト判定部414は、車両2の位置情報を位置管理部411を介して随時受け取り、受け取った位置情報とあらかじめ記憶部42に記憶されている地図情報とに基づいて互いの位置(座標)をリアルタイムに比較する。そして、コースアウト判定部414は、車両2の走行位置がコース座標外の場合に、コースアウトであると判定する。コースアウト判定部414は、コースアウトであると判定した場合には、判定結果と、該車両の位置情報と、対応する車両IDなどを警告通知部416に渡す。
【0044】
警告通知部416は、たとえばコースアウトや転倒など、オペレータや他の車両の運転者に警告として通知すべき状況(事故等)が発生した場合に警告を発する警告手段である。警告通知部416は、コースアウトなどの事故種別、事故車両の車両ID、位置情報などに基づいて、当該事故車両の近くを走行する車両2を記憶部42から検索し、表示データ生成部415に対して警告情報の表示を指示するとともに、検索された車両2の車載装置20に対し警告情報を通知する機能を有する。警告通知部416は、事故車両の近くを走行中の車両2を位置管理部41を介して検索してもよい。ここで、警告通知部416は、単に事故車両と距離が近い車両を検索するのではなく、影響の大きい事故車両の後続車両を優先的に検索することが好ましい。なお、警告通知部416は、当該事故車両の位置情報に基づいて、その位置をカバーする無線基地局を通じて、当該基地局からの電波が届く範囲の全車両に対して警告情報を一斉に発してもよい。
【0045】
表示データ生成部415は、画面表示に必要なデータを生成する画像データ生成手段である。表示データ生成部415は、位置管理部411、乗車状況管理部412、転倒判定部413、コースアウト判定部414および警告通知部416から渡される情報に基づいて表示データを生成し表示部43に表示させる機能を有する。
【0046】
基地局管理部417は、複数の無線基地局3を一括管理する基地局管理手段である。基地局管理部417は、各無線基地局3がカバーするエリアやチャネル情報などを管理し、必要に応じて、無線基地局3に対してチャネル変更などの指示をする機能を有する。具体的には、基地局管理部417は、たとえば、高速走行する車両2に対しては、該車両2が走行するコースの通信範囲にある無線基地局3すべてと該車両2が同一チャネルで通信するようにチャネルを割り当て当該無線基地局3に旨の指示をするというような制御をすることができる。
【0047】
このように、この実施形態に係る車両管理システムでは、車両に自らの位置情報を発信する車載装置を備えるとともに、当該位置情報を受信する複数の無線基地局を備えるので、使用可能な周波数チャネルが限られていても多くの車両の位置を管理することができる。従って、たとえば複数のコースを備える施設において合計数百台単位の車両が走行している状況で、使用可能周波数チャネルが数十チャネル程度しかない場合であっても、無線基地局かつ車両ごとに周波数を繰り返し使用することで、全車両を管理することができる。
【0048】
また、この実施形態に係る車両管理システムでは、コースアウト判定部及び警告通知部を備えるので、コースアウトした車両の位置や車両情報を検出して表示部に表示するとともに、当該事故車両近傍を走行する車両に対して警告を発することができる。
【0049】
さらに、この実施形態に係る車両管理システムによれば、転倒判定部及び警告通知部を備えるので、走行中の車両が何らかの原因により転倒または横転した場合に、管理装置を操作するオペレータや当該転倒または横転した車両の周辺を走行する車両の運転者は、直ちにその事実を知ることができる。これにより、事故発生時の安全確保を早急に行うことが可能になる。併せて、コース脇に監視員を配置する必要がなくなり効率的な管理を実現することができる。
【0050】
また、この実施形態に係る車両管理システムでは、ID読取部を備えるので、たとえば、コースへの入場時や運転者交代時など所定のタイミングで運転者IDを読み取ることができる。すなわち、管理装置は、読み取った運転者IDに基づいてあらかじめ管理装置に登録された運転者IDと照合して認証することが可能になる。そして、認証結果に基づいて、車両2を現在運転する者の運転者名等を表示部43に表示させることにより、運転者の運転状況の管理や過時間乗車が原因で起こる事故を未然に防ぐことも可能となる。
【0051】
ここで、図3を参照して車載装置の測位部について詳細に説明する。図3は、この実施形態に係る車両管理システム1の車載装置20における測位部21の機能構成を示す図である。
【0052】
図3に示すように、測位部21は、電波測位部211と、自律測位部212と、測位制御部213とを具備している。
【0053】
電波測位部211は、外部からの電波たとえば無線基地局3からの電波に基づいて自車両の現在位置を測位し、位置情報を生成する機能を有する電波測位装置である。電波測位部211は、無線通信部22が検出した無線基地局の電波の強度に基づいて位置情報を生成し、測位制御部213に渡す。具体的には、たとえば、正確な位置と発信される電波強度が既知となっている少なくとも3箇所の無線基地局3からの電波を、無線通信部22を介して受信し、受信した電波各々の電波強度に基づいて、自車両の現在位置を求めて位置情報を生成する。
【0054】
自律測位部212は、外部からの電波によらずに、自律して自車両の現在位置を測位できる自律測位装置である。自律測位部212は、移動情報センサ214と、姿勢センサ215と、自律測位処理部216を具備する。
【0055】
移動情報センサ214は、車両2の移動速度や移動加速度などの移動情報を検出するセンサである。移動情報センサ214としては、移動速度を検出する速度センサや移動加速度を検出する加速度センサなどを組み合わせて実現することができる。
【0056】
姿勢センサ215は、車両2の傾きや進行方向など車両の姿勢を検出するセンサである。姿勢センサ215としては、ジャイロセンサ、操舵角センサなどを用いることができる。
【0057】
自律測位処理部216は、外部からの信号によらず自ら位置情報を生成する位置情報生成手段である。自律測位処理部216は、移動情報センサ214が検出した移動情報および姿勢センサ215が検出した姿勢情報に基づいて、自車両の現在位置を自律的に算出して位置情報を生成する機能を有する。
【0058】
測位制御部213は、電波測位部211が出力した情報と自律測位部212が出力した情報とを適宜調整して継続的な位置情報生成を可能にする測位制御手段である。たとえば、車両2がトンネルや山間部などの外部からの電波の不感領域を走行する場合など、電波測位部211で正常に測位できない場合に自律測位部212の出力を位置情報として選択して出力する機能を有する。
【0059】
この実施形態に係る測位部では、電波測位部211が、外部から受信した電波に基づいて自車両の現在位置を算出する。一方、自律測位処理部216は、移動情報センサ214が検出した移動情報と姿勢センサ215が検出した姿勢情報に基づいて自車両の現在位置を算出する。そして、測位制御部213は、両者によって算出された現在位置を比較して、精度が良くなるよう調整・補完して位置情報を生成し、生成した位置情報を無線通信部22に渡す。その結果、この測位部21はリアルタイムに自車両の現在位置を正確かつ持続的に求めて位置情報を生成し、無線通信部22に渡すことができる。なお、渡す位置情報には、姿勢センサ215が検出した姿勢情報を含めてもよい。この場合、管理装置40の転倒判定部413は、この姿勢情報から転倒か否かを判定できる。
【0060】
このように、この実施形態に係る車両システムにおける測位部によれば、外部からの信号によらず自律的に測位する自律測位部を備えるので、外部からの電波が遮蔽されてしまうエリアなど、外部からの電波による測位手段のみでは十分な精度の位置情報を得ることができない場合でも、自律的に自車両の現在位置を測位することができる。また、外部からの電波による測位と自律測位の二つの測位手段を合わせて用いることにより、コース上のどのエリアでもコース形状に関係なく測位が可能とあり、管理装置40は常に車両の現在位置を把握することができる。
【0061】
続いて、図2ないし図4を参照してこの実施形態に係る車両管理システム1の動作を説明する。図4は、この実施形態に係る車両管理システム1の動作のうち、車載装置20が自車両の位置を検出してから管理装置40の表示部43に表示されるまでの基本動作を示すフローチャートである。
【0062】
この実施形態に係る車両管理システム1では、車載装置20の測位部21は、自車両の位置を検出し位置情報を生成する(ステップ101。以下「S101」のように称する。)。測位部21は、電波測位部211および自律測位部212の少なくとも一方の測位結果に基づいて位置情報を生成し無線通信部22に渡す。
【0063】
無線通信部22は、測位部21から位置情報を渡されると、受け取った位置情報を車両IDとともに、アンテナ25を介して無線基地局3に向けて送信する(S102)。
【0064】
無線通信部32は、車載装置20の無線通信部22が送信した車両IDと位置情報の信号を、その車載装置20の通信圏内にある無線基地局3のアンテナ31を介して受信する。無線通信部32は、車両IDと位置情報とを受信すると伝送部33、伝送路51、および、管理装置40の伝送部44を介して、管理装置40の位置管理部411に送信する(S103)。
【0065】
車両IDと位置情報を受け取ると、位置管理部411は、受け取った位置情報と記憶部42に記憶された地図情報に基づいて、その車両のコース内における現在位置を特定する(S104)。そして、位置管理部411は、車両IDと位置情報と地図情報とを対応させて、その時の時刻とともに記憶部42に蓄積する。
【0066】
コース内における車両の現在位置を特定すると、位置管理部411は、その情報をコースアウト判定部414に渡す。コースアウト判定部414は、渡された位置情報と地図情報とに基づいて、当該車両がコースアウト状態か否かを判定する(S105)。
【0067】
判定の結果、コースアウトではない場合(S105のNo)、コースアウト判定部414は、渡された位置情報と地図情報とを転倒判定部413に渡す。
【0068】
転倒判定部413は、渡された位置情報等に基づいて、その車両が転倒状態か否かを判定する(S106)。
【0069】
判定の結果、転倒状態ではない場合(S106のNo)、転倒判定部413は、渡された位置情報および地図情報を表示データ生成部415に渡す。
【0070】
コースアウト判定部414の判定の結果コースアウトと判定された場合(S105のYes)、あるいは転倒判定部413の判定の結果当該車両が転倒状態であると判定された場合(S106のYes)、コースアウト判定部414および転倒判定部413は、車両ID、位置情報および地図情報を警告通知部416に渡す。
【0071】
車両ID、位置情報および地図情報を渡されると、警告通知部416は、位置情報に基づいて、コース内における当該コースアウト車両または転倒車両の周辺を走行する近隣車両を記憶部42から検索する(S108)。
【0072】
近隣車両が検索されると、警告通知部416は、コースアウトや転倒などの警告内容を含んだ警告情報を生成して、無線基地局3の無線通信部32を介して近隣車両に搭載された車載装置20に生成した警告情報を送信する(S109)。併せて、警告通知部416は、生成した警告情報を表示データ生成部415に渡す。
【0073】
車両IDおよび位置情報を受け取った表示データ生成部415は、当該車両IDおよび位置情報に基づいてコース内における当該車両位置データを生成する。同様に、警告情報を受け取った表示データ生成部415は、警告情報に基づいて表示データを生成する。そして、表示データ生成部415は、生成した車両位置データや警告情報データを表示部43に表示させる。
【0074】
このように、この実施形態に係る車両管理システムでは、管理対象の車両に搭載した車載装置が自己の位置情報を発信するので、管理装置を操作するオペレータに管理対象車両の現在位置をリアルタイムかつ視覚的に通知することができる。さらに、この実施形態に係る車両管理システムでは、コース上で発生した事故等について周囲を走行する車両に警告を発するので、コース脇に監視員を配置することなく安全な車両管理を実現することができる。
【0075】
次に、図5および図6を参照して、本発明の第2の実施形態について詳細に説明する。図5は、本発明の第2の実施形態に係る車両管理システムの概略を示す図であり、図6は、この実施形態に係る車両管理システムの車載装置における測位部の機能構成を示す図である。なお、図5および図6においては、図1および図3と同一の構成には同一の符号を付して示し、重複する説明を省略する。
【0076】
この実施形態に係る車両管理システムは、図1ないし3に示す第1の実施形態に係る車両管理システムの車載装置における測位部21を衛星からの電波により測位を実現する測位部21Aに置き換えたものである。
【0077】
図5および図6に示すように、この実施形態の車両管理システム2では、車載装置20は、無線基地局3の電波ではなく、測位衛星Sからの電波を受信して車両2の位置情報を生成している。
【0078】
図6に示すように、この実施形態に係る測位部21Aは、移動情報センサ215、姿勢センサ215および自律測位処理部216を有し自律的に測位する自律測位部212と、測位衛星からの電波により測位する衛星測位部217と、自律測位部212および衛星測位部217の出力から位置情報を生成する測位制御部213とを備えている。すなわち、この実施形態に係る測位部21Aは、第1の実施形態に係る測位部21における電波測位部211を衛星測位部217に置き換えたものである。
【0079】
衛星測位部217は、測位用(測地用)の電波を地球に向けて発信している測位衛星からの電波を受信して測位を行う衛星測位装置である。衛星測位部217は、たとえばGPS(Global Positioning System)やGLONASS(Global Orbiting Navigation Satellite System)、準天頂衛星をはじめとする測位用衛星からの電波に基づいて自車両の現在位置を検出する。
【0080】
このような測位用衛星からの電波を用いた測位は、原理的に高精度の位置情報を得ることができ、また、測位地点の天頂方向が開けていれば測位が可能であることから、広範囲のエリアで正確な測位が可能になる。これにより、コース上のさまざまなエリアを走行している車両の位置データを求めることができ、オペレータは常に車両の現在位置を正確に把握することができる。
【0081】
以上説明したように本発明によれば、車両側で測位した車両位置データや移動速度データを無線通信を用いて送信することで全車両とリアルタイム通信することができ、また入退場管理手段を用いることにより車両と運転者の照合管理も行うことができる。また、安全面に関しては、転倒検知、横転検知、コースアウト検知手段により事故が発生した際にその情報をリアルタイムに得ることができ、事故発生を周辺車両への通知することにより多重事故の回避や迅速な救急活動を行うことが可能になり、テストコースやサーキットの安全運行を行うことができる。
【0082】
なお、本発明は上記実施形態のみに限定されるものではない。本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【0083】
上記実施形態は、高速走行する車両を管理する車両管理システムとして説明したが、これには限定されない。比較的低速な特殊車両が走行するコースであっても、あるいは高速車両と低速車両とが混在するコースであっても、車両の数および速度に応じた無線基地局を配置することで、同様の効果を奏することができる。
【0084】
また、上記実施形態では、テストコースのように管理された施設内に設けられた閉じたコースを走行する車両を管理するものとして説明したが、これにも限定されない。高速道路や一般道、さらには道路を特に有さない領域など、開放された領域であっても、管理対象の車両に車載装置を搭載するとともに管理対象車両の数と速度に応じて無線基地局を配置することで、無線基地局のカバーする領域内の車両を集中的に管理することができる。
【0085】
さらに、上記実施形態では、車載装置から発信される車両の位置情報および運転者IDを管理装置にて集中管理する例を説明したが、これにも限定されない。すなわち、車載装置が車両の状態、例えばエンジン回転数などの駆動系情報やブレーキ特性などの制動系情報など、走行する車両に関係する情報を検出するセンサを備えて無線基地局に対し発信する構成としてもよい。この場合、管理装置が、車両の位置情報、運転者ID、事故の有無等に加えて、車両の走行に関する諸情報を併せて表示するとともに蓄積することで、管理領域内の走行車両のあらゆる情報を一元管理することが可能になる。
【0086】
また、上記実施形態の車両管理システムでは、管理装置がコンピュータ上で稼動するコンピュータプログラムにより実現されるものとして説明したが、電子回路などハードウェアにより実現されてもよい。
【0087】
そして、上記実施形態では管理対象を車両として説明したが、鉄道や航空機など、所定の領域内を移動するあらゆる移動体に適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明は、たとえば、自動車産業、運輸業、電気通信産業などさまざまな産業に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る車両管理システムの概略図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る車両管理システムの機能構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る車両管理システムの測位部の構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係る車両管理システムにおける車両位置の測位から表示までの処理フロー図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態に係る車両管理システムの概略図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係る車両管理システムの測位部の機能構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0090】
1…車両管理システム、2…車両、3…無線基地局、4…中央監視室、9…コース、
20…車載装置、21…測位部、22…無線通信部、23…ID読取部、24…、警告部、25…アンテナ、
31…アンテナ、32…無線通信部、33…伝送部、
40…管理装置、41…コンピュータ、42…記憶装置(記憶部)、43…画面表示装置(表示部)、44…伝送部、
211…測位用電波受信部、212…自律測位部、213…測位制御部、214…移動情報計測用センサ、215…姿勢計測用センサ、216…自律測位データ処理部、
411…位置管理部、412…乗車状況管理部、413…転倒判定部、414…コースアウト判定部、415…表示データ生成部、416…警告通知部、417…基地局管理部、
S…測位用衛星。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管理されたコースを走行する車両に搭載され、外部からの電波を受信し該電波に基づいて自車両の現在位置を検出して位置情報を生成する測位手段と前記測位手段で生成された位置情報および前記車両を識別する車両識別情報を発信する無線送信手段とを有する車載装置と、
前記コース近傍に設置され、通信圏内にある前記車載装置からの電波を受信する複数の無線基地局と、
前記無線基地局が受信した前記位置情報と前記車両識別情報とを前記コースの地図情報と対応させて蓄積する記憶手段と、前記記憶手段が蓄積する前記位置情報、前記車両識別情報および前記地図情報に基づいて前記コース内における前記車両の位置を特定して表示する表示手段とを有する管理装置と
を具備することを特徴とする車両管理システム。
【請求項2】
前記測位手段は、測位用衛星からの電波を受信し該電波に基づいて前記車両の位置を検出して位置情報を生成することを特徴とする請求項1に記載の車両管理システム。
【請求項3】
前記測位手段は、前記車両の移動速度または移動加速度を検出する移動センサと、前記車両の姿勢を検出する姿勢センサと、前記外部からの電波状態が不良である場合に前記移動センサおよび姿勢センサの検出結果に基づいて自律的に測位する自律測位手段とをさらに具備したことを特徴とする請求項1および2のいずれか1項に記載の車両管理システム。
【請求項4】
前記管理装置は、
前記受信した位置情報および前記記憶した地図情報に基づいて前記受信した位置情報に対応する前記車両の走行状況が正常か否かを判定する状態判定手段と、
前記判定の結果前記受信した位置情報に対応する前記車両の走行状況が異常である場合に、前記受信した位置情報が示す位置周辺を走行する他の車両の車両識別情報を前記記憶手段から読み出し、該読み出した他の車両の車両識別情報に対応する車載端末に対して前記無線基地局を介して警告信号を発信するとともに前記表示手段に警告表示を表示させる警告発信手段とをさらに具備し、
前記車載端末は、前記警告信号を受信して運転者に対し危険を通知する警告表示手段をさらに具備したこと
を特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の車両管理システム。
【請求項5】
前記無線送信手段は、前記自律測位手段が検出した前記車両の姿勢情報をさらに発信し、
前記管理装置は、
前記無線基地局を介して受信した位置情報および前記記憶した地図情報に基づいて、前記車両の転倒を判定する転倒判定手段と、
前記判定の結果前記受信した位置情報に対応する前記車両が転倒状態である場合に、前記受信した位置情報に基づいて該当する車両識別情報を表示手段に表示させる転倒表示手段と
をさらに具備したことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の車両管理システム。
【請求項6】
前記車載端末は、運転者が携帯し該運転者を識別する運転者識別情報を記録した記録媒体から前記運転者識別情報を読み出す読取手段をさらに備えるとともに、前記無線送信手段は前記運転者識別情報をさらに発信し、
前記管理装置の記憶手段は、前記無線基地局を介して受信した前記運転者識別情報を前記車両識別情報と対応付けて記憶すること
を特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の車両管理システム。
【請求項7】
管理されたコースを走行する車両の現在位置を、前記車両に搭載した測位装置を用いて外部からの電波に基づいて又は自律的に検出しその位置情報を生成する測位ステップと、
前記生成した位置情報を、前記車両を識別する車両識別情報とともに前記車両に搭載された無線通信装置を用いて無線基地局に向けて発信するステップと、
前記コース近傍に設置した無線基地局を介して前記位置情報と前記車両識別情報を受信するステップと、
前記受信した前記位置情報と前記車両識別情報とを前記コースの地図情報と対応させて記憶手段に蓄積するステップと、
前記記憶手段が蓄積する前記位置情報、前記車両識別情報および前記地図情報に基づいて前記コース内における前記車両の位置を特定して表示するステップと
を有することを特徴とする車両管理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−87035(P2006−87035A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−272343(P2004−272343)
【出願日】平成16年9月17日(2004.9.17)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】