説明

車両運転支援装置

【課題】ドライバーの運転操作の経年的な衰えを検出し、検出した衰えに応じた車両運転の支援を行う。
【解決手段】ドライバーの年齢別およびブレーキ操作開始時の車速別に、車両のブレーキ操作開始から車両停止までの期間における、車両の減速挙動を表す減速挙動データ(制動距離、減速度の標準偏差)を、減速時学習データとして記録し、当該減速時学習データが記録された後、車両のブレーキ操作開始時(ステップ210)に、減速時学習データ中の最新の期間における減速挙動データのうち現在の車速に相当する減速挙動データと、学習データ中の最新よりも過去の期間における減速挙動データのうち現在の車速に相当する減速挙動データと、を比較し(ステップ220)、その比較結果に基づいて、ドライバーの運転能力が所定基準以上に衰えているか否かを判定し(ステップ230、240)、判定結果に応じて制動力を変化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両運転支援装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、高齢化が進むことにより、交通事故の年代別の比率においても高齢者による交通事故の割合が増加しており、高齢者の交通事故を減らすことが可能な運転支援技術が必要と考えられている。高齢者の交通事故の要因としてハンドル操作やブレーキ操作不適といった事例が多いが、これは高齢化に伴い、認知、判断力などが低下し運転技術が衰えていると思われ、高齢者に対してはハンドル操作やブレーキ操作を支援することが有用であると考えられる。
【0003】
このような目的の車両運転支援装置としては、特許文献1に記載のものが知られている。特許文献1に記載の技術では、ドライバーの制動動作を学習し、ブレーキの制動力を調整するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−294218号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の技術は、ドライバーの経年的な運転操作の変化を検出できないため、ドライバーの運転技術が衰えているかどうかは判断できない。
【0006】
本発明は上記点に鑑み、ドライバーの運転操作の経年的な衰えを検出し、検出した衰えに応じた車両運転の支援を行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための請求項1に記載の発明は、期間別に、車両のブレーキ操作開始から車両停止までの前記車両の減速挙動を表す減速挙動データを、学習データとして記憶媒体に記録する記録手段(110〜170)と、前記学習データが前記記憶媒体に記録された後、前記車両のブレーキ操作開始時に、前記学習データ中の最新の期間における減速挙動データと、前記学習データ中の最新よりも過去の期間における減速挙動データとを比較し、その比較結果に基づいて、ドライバーの運転能力が所定基準以上に衰えているか否かを判定する判定手段(220、230、240)と、ドライバーの運転能力が所定基準以上に衰えていると前記判定手段(220、230、240)が判定した場合、ドライバーの運転能力が所定基準以上に衰えていないと前記判定手段(220、230、240)が判定した場合に比べて、制動力を大きくする制動制御手段(245、250)と、を備えた車両運転支援装置である。
【0008】
このように、車両のブレーキ操作開始から車両停止までの車両の減速挙動を表す減速挙動データを、最新のものとそれより過去のものとで比較することで、ドライバーの運転操作の経時的な衰えを検出し、ドライバーの減速操作を支援することができる。
【0009】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車両運転支援装置において、前記減速挙動データは、前記車両の制動距離を含むことを特徴とする。ドライバーの運転能力が衰えると、制動距離が長くなる傾向にあるので、このようにすることで、適切にドライバーの運転操作の経時的な衰えを検出することができる。
【0010】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の車両運転支援装置において、前記減速挙動データは、前記車両のブレーキ操作開始から車両停止までの減速度のばらつき度を示す値を含むことを特徴とする。
【0011】
ドライバーの運転能力が衰えると、車両のブレーキ操作開始から車両停止までの減速度のばらつき度が大きくなる傾向にある。これは、運転能力が衰えたドライバーは、制動開始当初は必要な制動力を満たせないブレーキ操作を行ってしまい、制動の終盤段階において、制動力が不足していることに気づいてブレーキ操作量を増やす場合が多いからである。したがって、上記のようにすることで、適切にドライバーの運転操作の経時的な衰えを検出することができる。
【0012】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の車両運転支援装置において、前記記録手段(110〜170)は、期間別かつ車両のブレーキ操作開始時の車速別に、前記ブレーキ操作開始から車両停止までの前記車両の減速挙動を表す減速挙動データを、前記学習データとして前記記憶媒体に記録し、前記判定手段(220、230、240)は、前記学習データが前記記憶媒体に記録された後、前記車両のブレーキ操作開始時に、前記学習データ中の最新の期間における減速挙動データのうち現在の車速に相当する減速挙動データと、前記学習データ中の最新よりも過去の期間における減速挙動データのうち現在の車速に相当する減速挙動データと、を比較し、その比較結果に基づいて、ドライバーの運転能力が所定基準以上に衰えているか否かを判定することを特徴とする。このように、現在の車速と同程度の車速条件で減速挙動データを比較することで、より高い精度で、ドライバーの運転操作の経時的な衰えを検出することができる。
【0013】
また、請求項5に記載の発明は、請求項1ないし4のいずれか1つに記載の車両運転支援装置において、前記制動制御手段(245、250)は、前記車両のブレーキ操作開始時に、前記車両の挙動または運転技術を表す指標の経時変化に関するデータに基づいて、運転操作においてドライバー自身が意識的にあるいは無意識に思い込んでいる年齢である思い込み年齢を推定し、前記推定した思い込み年齢と前記ドライバーの実際の年齢との乖離量に応じて制動力の大きさを変化させることを特徴とする。
【0014】
このように、車両の挙動または運転技術を表す指標の経時変化に関するデータに基づいてドライバーの思い込み年齢を推定し、推定した思い込み年齢に応じて制動力を制御することで、ドライバー自身も気づいていない運転操作の経時的な衰えを検出し、ドライバーの減速操作を支援することができる。
【0015】
また、請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の車両運転支援装置において、前記記録手段は、前記車両の挙動または運転技術を表す指標の経時変化に関するデータとして、前記車両の平均車速を、期間別に前記記憶媒体に記録し、前記制動制御手段(245、250)は、前記学習データとして前記記憶媒体に記録された平均車速において、平均車速の最新値に対して所定の範囲内に収まっている期間の始点におけるドライバーの年齢を、思い込み年齢として特定することを特徴とする。
【0016】
ドライバーは、年を取っても思い込み年齢に変化がない場合は、平均車速が変化しない傾向にある。したがって、平均車速に変化が少ない期間の最初の期間におけるドライバーの年齢を思い込み年齢とすることで、思い込み年齢を適切に特定することができる。
る。
【0017】
また、請求項7に記載の発明は、期間別に、車両のステアリングハンドル操作開始からステアリングハンドル操作終了までの前記車両のドライバーによるステアリングハンドル操作の挙動を表すハンドル操作データを、学習データとして記憶媒体に記録する記録手段(310〜370)と、前記学習データが前記記憶媒体に記録された後、前記車両のステアリングハンドル操作開始時に、前記学習データ中の最新の期間におけるハンドル操作データと、前記学習データ中の最新よりも過去の期間におけるハンドル操作データとを比較し、その比較結果に基づいて、ドライバーの運転能力が所定基準以上に衰えているか否かを判定する判定手段(420、430、440)と、ドライバーの運転能力が所定基準以上に衰えていると前記判定手段(420、430、440)が判定した場合、ドライバーの運転能力が所定基準以上に衰えていないと前記判定手段(420、430、440)が判定した場合に比べて、同じステアリング操作力に対して車両の操舵輪の角度を大きくする操舵角制御手段(445、450)と、を備えた車両運転支援装置である。
【0018】
このように、車両のステアリングハンドル操作開始からステアリングハンドル操作終了までの車両の減速挙動を表す減速挙動データを、最新のものとそれより過去のものとで比較することで、ドライバーの運転操作の経時的な衰えを検出し、ドライバーのステアリングハンドル操作を支援することができる。
【0019】
また、請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の車両運転支援装置において、前記ハンドル操作データは、前記車両のステアリングハンドル操作開始からステアリングハンドル操作終了までのステアリングハンドルの角速度の最大値を含むことを特徴とする。
【0020】
ドライバーの運転能力が衰えると、ステアリング操作時の前半にステアリング操作量が必要量より少なくなり、その結果、ステアリング操作時の後半に急なステアリング操作をしてしまう傾向にあるので、このようにすることで、適切にドライバーの運転操作の経時的な衰えを検出することができる。
【0021】
また、請求項9に記載の発明は、請求項7または8に記載の車両運転支援装置において、前記ハンドル操作データは、前記車両のステアリングハンドル操作開始からステアリングハンドル操作終了までのステアリングハンドルの角速度のばらつき度を示す値を含むことを特徴とする。
【0022】
ドライバーの運転能力が衰えると、車両のステアリングハンドル操作開始からステアリングハンドル操作終了までのステアリングハンドルの角速度の最大値または角速度のばらつき度が大きくなる傾向にある。これは、運転能力が衰えたドライバーは、ステアリングハンドル操作開始当初は必要な車両ヨーレートを満たせない操作を行ってしまい、ステアリングハンドル操作の終盤段階において、車両ヨーレートが不足していることに気づいてステアリングハンドル操作量を急に増やす場合が多いからである。したがって、上記のようにすることで、適切にドライバーの運転操作の経時的な衰えを検出することができる。
【0023】
また、請求項10に記載の発明は、請求項7ないし9のいずれか1つに記載の車両運転支援装置において、前記記録手段(210〜270)は、期間別かつステアリングハンドル操作開始時に進入しようとしているカーブの曲率別に、前記ステアリングハンドル操作開始からステアリングハンドル操作終了までの前記車両のステアリングハンドル操作の挙動を表すハンドル操作データを、前記学習データとして前記記憶媒体に記録し、前記判定手段(220、230、240)は、前記学習データが前記記憶媒体に記録された後、前記車両のステアリングハンドル操作開始時に、前記学習データ中の最新の期間におけるハンドル操作データのうち現在車両が進入しようとしているカーブと曲率が対応するハンドル操作データと、前記学習データ中の最新よりも過去の期間におけるハンドル操作データのうち現在車両が進入しようとしているカーブと曲率が対応するハンドル操作データと、を比較し、その比較結果に基づいて、ドライバーの運転能力が所定基準以上に衰えているか否かを判定することを特徴とする。
【0024】
このように、現在車両が進入しようとしているカーブと同程度の曲率条件でハンドル操作データを比較することで、より高い精度で、ドライバーの運転操作の経時的な衰えを検出することができる。
【0025】
また、請求項11に記載の発明は、請求項7ないし10のいずれか1つに記載の車両運転支援装置において、前記操舵角制御手段(445、450)は、車両のステアリング操作の開始時に、前記車両の挙動または運転技術を表す指標の経時変化に関するデータに基づいて、運転操作においてドライバー自身が意識的にあるいは無意識に思い込んでいる年齢である思い込み年齢を推定し、前記推定した思い込み年齢とドライバーの実際の年齢との乖離量に応じて、同じステアリング操作力に対して車両の操舵輪の角度を変化させることを特徴とする。
【0026】
このように、車両の挙動または運転操作に関するデータに基づいてドライバーの思い込み年齢を推定し、推定した思い込み年齢に応じて、同じステアリング操作力に対して車両の操舵輪の角度を変化させることを特徴とすることで、ドライバー自身も気づいていない運転操作の経時的な衰えを検出し、ドライバーの減速操作を支援することができる。
【0027】
また、請求項12に記載の発明は、請求項11に記載の車両運転支援装置において、前記記録手段は、前記車両の挙動または運転技術を表す指標の経時変化に関するデータとして、前記車両の平均車速を、期間別に前記記憶媒体に記録し、
前記操舵角制御手段(445、450)は、前記記憶媒体に記録された平均車速において、平均車速の最新値に対して所定の範囲内に収まっている期間の始点におけるドライバーの年齢を、思い込み年齢として特定することを特徴とする。
【0028】
ドライバーは、年を取っても思い込み年齢に変化がない場合は、平均車速が変化しない傾向にある。したがって、平均車速に変化が少ない期間の最初の期間におけるドライバーの年齢を思い込み年齢とすることで、思い込み年齢を適切に特定することができる。
る。
【0029】
なお、上記および特許請求の範囲における括弧内の符号は、特許請求の範囲に記載された用語と後述の実施形態に記載される当該用語を例示する具体物等との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施形態に係る車載システムの構成を示す図である。
【図2】減速時学習処理のフローチャートである。
【図3】減速時学習データの一例を示す図である。
【図4】減速運転支援処理のフローチャートである。
【図5】平均車速の推移を示すグラフである。
【図6】操舵時学習処理のフローチャートである。
【図7】操舵時学習データの一例を示す図である。
【図8】カーブ運転支援処理のフローチャートである。
【図9】対象ドライバーの運転技術指標の推移21と、平均的なドライバーの運転技術指標の推移22を例示するグラフである。
【図10】運転技術指標のギャップGを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について説明する。図1に、本実施形態に係る車載システムの構成を示す。この車載システムは、車両に搭載され、ナビゲーション装置1、アクセルセンサ2、ブレーキセンサ3、車速センサ4、ステアリングセンサ5、車両ECU6等を備えている。
【0032】
ナビゲーション装置1は、ユーザが設定した目的地までの誘導経路を算出し、誘導経理に沿った車両の移動を案内する装置である。本実施形態のナビゲーション装置1は、ドライバーの運転操作の経年的な衰えを検出して車両運転の支援を行うための車両運転支援装置としても機能する。
【0033】
アクセルセンサ2は、車両のアクセルペダルに及ぼされた踏力を検出するセンサである。ブレーキセンサ3は、車両のブレーキペダルに及ぼされた踏力(ブレーキ踏力)を検出するセンサである。車速センサ4は、車速を検出するセンサである。ステアリングセンサ5は、車両のステアリングハンドルのステアリング角を検出する装置である。
【0034】
車両ECU6は、車両のアクチュエータを制御する装置である。具体的には、車両ECU6は、車両のエンジンを作動させるアクチュエータ群(燃料噴射装置、燃料点火装置等)、車両のサービスブレーキを作動させるアクチュエータ群(ブレーキ液圧バルブ、ブレーキ液圧ポンプ用のモータ等)、車両のステアリングハンドルに付勢するアクチュエータ等を制御することができるようになっている。これら各部1〜6は、車内LANを通じて互いに信号を送受信することができるようになっている。
【0035】
ここで、ナビゲーション装置1の構成について更に詳しく説明する。ナビゲーション装置1は、位置検出器11、地図データ入力器12、操作スイッチ群13、外部メモリ14、表示装置15、スピーカ16、制御回路17等を有している。
【0036】
位置検出器11は、GPS受信機、車速センサ、加速度センサ等、車両の位置、向き、車速、加速度等を検出するための信号を出力する装置である。
【0037】
地図データ入力器12は、記憶媒体(磁気ディスク、光学ディスク等)に記録された地図データを読み出す装置である。地図データには、道路および交差点の位置および接続関係の情報が含まれている。また、地図データには、道路上の各カーブのそれぞれについて、当該カーブの位置および曲率半径の情報も含まれている。
【0038】
操作スイッチ群13は、ユーザの操作を受け付ける装置である。外部メモリ14は、書き込み可能な不揮発性の記憶媒体であって、後述する各種学習データが記録されるようになっている。表示装置15は、画像をドライバーに見せる装置であり、スピーカ16は、車室内に音声を出力する装置である。
【0039】
制御回路17は、周知のマイクロコンピュータで構成され、当該マイクロコンピュータのROMに記録されたプログラムを実行することで、目的地までの誘導経路計算、誘導経路に沿った経路案内等を行うようになっている。
【0040】
以下、このような構成の車載システムの作動について説明する。ナビゲーション装置1の制御回路17は、上述のような処理とは別に、所定のプログラムを実行することで、図2に示すような減速時学習処理を実行する。
【0041】
具体的には、車両の走行中、ステップ110で、ブレーキペダルがオンになった(すなわち、ドライバーによるブレーキ操作が開始された)か否かを、ブレーキセンサ3の検出結果に基づいて、オンになったと判定するまで繰り返し判定し、オンになったと判定すると、現在の車速を車速センサから取得し、続いてステップ120に進む。
【0042】
ステップ120では、移動距離計測を開始する。例えば、車速センサに基づいて特定した車速を加算して移動距離を計測する処理を開始する。
【0043】
続いてステップ130では、車両の減速度(車速の加速度の正負の符号を入れ替えた値)を、加速度センサまたは車速センサの検出結果に基づいて取得する。そして、続くステップ140では、車両が停止したか否かを、車速センサの検出結果に基づいて判定し、停止していなければ、ステップ130に戻る。このような処理により、車両のブレーキ操作開始から車両停止までの期間における、車両の減速度の情報を、複数個(例えば100ミリ秒間隔で)取得してRAM等に記録する。
【0044】
ステップ140で車両が停止したと判定すると、続いてステップ150に進み、ステップ120の移動距離計測開始時から現時点までに車両が移動した距離を、今回の制動時の制動距離Lとする。
【0045】
続いてステップ160では、ステップ130で取得した複数個の減速度の標準偏差σdを算出する。なお、ここで算出するのは、標準偏差に限らず、当該複数個の減速度のばらつき度を示す量であれば、どのようなものであってもよい。
【0046】
続いてステップ170では、ステップ150で算出した制動距離Lおよびステップ160で算出した標準偏差σd、ブレーキペダルがオンになったと判定した時点で取得した車速V、および、ドライバーの年齢Aに基づいて、外部メモリ14中の減速時学習データを更新する。なお、ドライバーの年齢は、あらかじめ操作スイッチ群13を用いてドライバーが入力することで、制御回路17が外部メモリ14に記録するようになっている。
【0047】
図3に、外部メモリ14に記録される減速時学習データの一例を示す。この図に示すように、減速時学習データには、年齢(例えば1才刻み)と車速(例えば10km/h刻み)の組毎に1つのレコードが記録され、各レコードには、年齢と車速の組、および、当該年齢と車速の組に対応する制動距離と減速度の標準偏差が記録される。
【0048】
このような減速時学習データを更新するために、制御回路17は、ステップ170で、上述の年齢Aおよび車速Vに該当するレコードを減速時学習データ中で特定する。例えば、年齢Aが44才で、車速Vが50km/h以上60km/h未満の範囲内ならば、年齢44才、車速50km/hのレコードを、該当するレコードとして特定する。
【0049】
そして該当するレコードの制動距離および標準偏差の値を更新する。制動距離の更新は、当該レコードの更新が今回N回目で、今回の更新前の制動距離の値がL0で、今回のステップ150で算出した制動距離がLの場合、更新後の制動距離L1は、L1={(N−1)*L0+L}/Nという式によって算出する。すなわち更新後の制動距離、今回を含む過去N回分の制動距離の平均値とする。また、標準偏差についても同様に、今回を含む過去N回分の標準偏差の平均値を更新後の値とする。なお制御回路17は、各レコードの更新回数の情報も、外部メモリ14に記録する。
【0050】
このような減速時学習処理を、ブレーキ操作がある度に実行することで、制御回路17は、ドライバーの年齢別(すなわち期間別)かつ車両のブレーキ操作開始時の車速別に、ブレーキ操作開始から車両停止までの期間における、車両の減速挙動を表す減速挙動データとして、ブレーキ操作開始時の車速Vおよびブレーキ操作開始から車両停止までの期間における減速度の標準偏差σdを、平均値として記録する。
【0051】
次に、上記のようにして記録された減速時学習データの使用方法について説明する。制御回路17は、車両の走行中に、図2の処理と並列的に、図4の減速運転支援処理を繰り返し実行するようになっている。
【0052】
そして図4の処理において、まずステップ210で、ドライバーのブレーキ操作があったか否かを、ブレーキセンサ3の検出結果に基づいて判定し、ブレーキ操作がない場合は、今回の図4の処理を終了し、次回の図4の処理を実行する。
【0053】
ドライバーがブレーキ操作を行うと、制御回路17は、ステップ210でブレーキ操作があったと判定してステップ220に進み、減速時学習データ中の更新されたレコードから、現在の車速に相当するレコード(例えば、現在の車速が50km/h以上60km/h未満なら50km/hのレコード)を読み出す。そして、読み出したレコードのうち、最新の期間に対応するレコードN(現在のドライバーの年齢が60才なら、60才のレコード)と、最も短い制動距離が記録されているレコードXと、最も小さい標準偏差が記録されているレコードYと、を抽出する。そして、レコードN中の制動距離とレコードX中の制動距離とを比較し、そして、レコードN中の標準偏差とレコードY中の標準偏差とを比較する。
【0054】
続いてステップ230では、ステップ220の比較結果に基づいて、レコードN中の制動距離(最新の平均制動距離)とレコードX中の制動距離(過去最も短かった平均制動距離)とを比較し、レコードN中の制動距離がレコードX(またはレコードYでもよい)中の制動距離よりも第1基準量以上長いか否かを判定し、第1基準量以上長ければ、ドライバーの運転技術が所定基準以上に衰えたと判定してステップ245に進み、第1基準量以上長くなければステップ240に進む。
【0055】
ステップ240では、ステップ220の比較結果に基づいて、レコードN中の標準偏差(最新の平均標準偏差)がレコードY(またはレコードXでもよい)中の標準偏差(過去最も小さかった平均標準偏差)よりも第2基準量以上大きいか否かを判定し、第2基準量以上大きければ、ドライバーの運転技術が衰えたと判定してステップ245に進み、第2基準量以上大きくなければ、ドライバーの運転技術が所定基準以上に衰えていないと判定し、今回の図4の処理を終了する。
【0056】
ステップ245では、ドライバーの思い込み年齢を推定し、推定した思い込み年齢における運転技量(ここではブレーキ操作の技量)と、現在の年齢における実際の技量との間に所定閾値以上のギャップがないかを算出する。あればステップ250へ進み、そうでなければ今回の図4の処理を終了する。
このステップの意義と動作についてさらに説明する。
(意義)
このステップの意義は、ドライバーの運転技量の経年変化よる衰えを、本人自身が自覚しているか否かを見極めるために存在する。つまり、上記ステップ230および240が肯定判定となった場合(すなわちステップ245へ移行する条件が成立した場合)においては特定の運転技術項目(ここではブレーキ操作)が加齢により一定以上衰えている可能性があると判断できる。よってこのときにはブレーキ操作に介入し、支援する制御を行う(ステップ250を移行する)ことが、ドライバーの安全運転を支援するのに効果的といえる。ただし、ドライバーによっては自らの運転技術の状態(衰え)を自覚している者とそうでない者がいる。前者は自らの技術に応じて慎重に運転を行う傾向にあるが、後者は衰えを自覚できていないため、時として危険な状況に陥りやすく、より支援を行うべき対象といえる。そこで、本実施形態では特に後者を支援すべく、ステップ245を設けているのである。なお、ステップ245は省略することも可能である。安全上の観点から、両者を支援することも当然考えられるからである。
(動作)
続いてステップ245の動作について詳しく説明する。まず、ドライバーの思い込み年齢とは、運転操作において、ドライバー自身が意識的にあるいは無意識に思い込んでいる年齢である。たとえば、60歳のドライバーが自分の運転技量は30歳の頃の自分自身の技量と同程度であるとか、あるいは30歳の他のドライバーの技量と同程度であると思い込んでいる場合、「30歳」が思い込み年齢である。すなわち、このように思い込み年齢が非常に若く、その運転技量にギャップがある場合、本人は実際には加齢による運転技量の衰えがあるにもかかわらず、それを自覚していない可能性があることになる。
【0057】
次に、その思い込み年齢を推定し、実年齢との運転技量にギャップがあるかを調べる方法(ステップ245の動作の詳細)について説明する。
【0058】
まず思い込み年齢を推定するには、対象としている運転操作(ここではブレーキ操作)以外の操作や挙動を活用する。たとえば、思い込み年齢推定用の特定の運転操作や挙動を予め定めておくことが考えられる。一例として、車両の平均車速を思い込み年齢推定用の挙動とした場合における推定方法を述べる。
【0059】
まず、あらかじめ走行の度に車両の車速をドライバーの年齢毎に平均化して(例えば、30歳時の平均車速、31歳時の平均車速)記録しておく。そして、その年齢毎の平均車速に基づいて、思い込み年齢を推定する。具体的には、この年齢毎の平均車速の推移(図5参照)において、平均車速の最新値(図5の例では、現在の年齢である60歳時の平均車速)に対するずれ量が所定の範囲D内に収まっている期間の始点における年齢(たとえば30歳)を、ドライバーの思い込み年齢として推定する。
【0060】
すなわち、この場合、ドライバーの実際の運転技量のうち、走行中の平均車速は30歳の頃と同程度であり、この技量では衰えは見られない。そのためドライバーは「自分の全ての運転技量は30歳の頃と同程度だ」と思い込んでいる可能性がある。
【0061】
ここで次に、推定した思い込み年齢(30歳)における対象の運転操作(ここではブレーキ操作)でのドライバーの運転技量と、実年齢(60歳)における運転技量とを比較する。本例では図3を参照し、車速50km/時でのデータにおける30歳時と60歳時の制動距離および減速度の標準偏差の比較を行う。そして、60歳時の制動距離が30歳時の制動距離よりも所定距離以上長く、かつ標準偏差が所定値以上大きい場合に、思い込み年齢とのギャップ大(ステップ245:yes)と判定し、続くステップ250に移行し介入支援を行う。この場合は、対象の運転操作において、ユーザの実年齢と思い込み年齢との技量差が大きく、衰えが激しいといえる。よってこの運転操作においては、ドライバーの認識よりも実際の技量が衰えている、すなわちドライバーが自らの運転技量について正確な自覚が不十分であることが推定される。
【0062】
一方で、30歳時と60歳時の比較結果が上記の条件以外である場合には、思い込み年齢とのギャップ小(ステップ245:no)と判定し、図4の処理を終了する。この場合は対象の運転操作において、ユーザの実年齢と思い込み年齢との技量差がそれほどでもなく、衰えが激しいとはいえない。よってこの運転操作において、ドライバーの認識と実際の技量との乖離が少ないと推定される。すなわち(自覚しておらず偶然そうなっている者も含められるが)ドライバーは自らの運転技量についての正しい自覚があるものとみなせる。
【0063】
すなわちこのようにすれば、実際には経年変化で運転技量に衰えがあるにもかかわらず、それを正確に自覚できず、自分はまだまだ衰えていないと思い込んでしまうドライバーに対しては、適切な介入支援(後述のステップ250)を行うことが可能となる。一方、自らの運転技量とその認識との間に乖離のないドライバーに対しては介入支援を行わないので、ユーザがわずらわしく感じたり、戸惑い、混乱したりするようなことがない。ゆえにドライバーの安全運転をより効果的に支援できるようになる。
【0064】
なお、思い込み年齢推定用の挙動、運転操作については上記に限らず様々なパターンが考えられる。たとえばドライバーが最も得意とする運転操作や最も経年変化の少ない運転操作、挙動を選択すると好適である。得てしてドライバーはこのような得意とする操作や、変化の少ない操作、挙動を根拠として思い込み年齢を思い込みやすいと考えられるためである。
【0065】
ステップ250では、ブレーキ圧を増加させる。具体的には、車両ECU6に対して、ブレーキ圧増加の命令を出力する。このブレーキ圧増加の命令を受けた車両ECU6は、ブレーキ踏力と、サービスブレーキのアクチュエータに発生させる制動輪のブレーキ圧との関係を変更し、同じブレーキ踏力に対して車両の制動輪に発生させるブレーキ圧を大きくする。例えば、ブレーキ踏力Fとブレーキ圧Pの関係がP=kF+bとなっている場合(ただし、kは比例係数、bは定数)、比例係数kの値をそれまでよりも大きくする。比例定数kの増加量は、本実施形態では一定値とする。
【0066】
このような図4の処理により、制御回路17がステップ230またはステップ240でドライバーの運転技術が衰えたと判定した場合、車両ECU6は、サービスブレーキのアクチュエータを制御して、同じブレーキ操作に対してそれまでよりも強い制動力を制動輪に発生させる。また、ステップ250を実行せずに図4の処理を終了する場合は、同じブレーキ操作に対してそれまでと同じ制動力を制動輪に発生させる。
【0067】
なお、一度変化した比例係数kは、次回以降のステップ250で増加しない限り、変化後の値を維持するようになっている。このため、比例係数kの値は、外部メモリ14に保持するようにする。これにより、ドライバーの運転技術の衰えと共に、比例係数kが経年的に増加していき、それと共に、同じブレーキ操作に対して発生する制動力が経年的に増加していく。
【0068】
以上説明した通り、本実施形態のナビゲーション装置1は、期間別(具体的にはドライバーの年齢別)およびブレーキ操作開始時の車速別に、車両のブレーキ操作開始から車両停止までの期間における、車両の減速挙動を表す減速挙動データ(制動距離、減速度の標準偏差)を、減速時学習データとして外部メモリ14に記録し、当該減速時学習データが外部メモリ14に記録された後、車両のブレーキ操作開始時に、減速時学習データ中の最新の期間における減速挙動データのうち現在の車速に相当する減速挙動データと、学習データ中の最新よりも過去の期間における減速挙動データのうち現在の車速に相当する減速挙動データと、を比較し、その比較結果に基づいて、ドライバーの運転能力が所定基準以上に衰えているか否かを判定する。
【0069】
このように、車両のブレーキ操作開始から車両停止までの期間における車両の減速挙動を表す減速挙動データを、最新のものとそれより過去のものとで比較することで、ドライバーの運転操作の経時的な衰えを検出し、ドライバーの減速操作を支援することができる。また、現在の車速と同程度の車速条件で減速挙動データを比較することで、より高い精度で、ドライバーの運転操作の経時的な衰えを検出することができる。
【0070】
また、減速挙動データは、車両の制動距離を含んでいる。ドライバーの運転能力が衰えると、制動距離が長くなる傾向にあるので、このようにすることで、適切にドライバーの運転操作の経時的な衰えを検出することができる。
【0071】
また、減速挙動データは、車両のブレーキ操作開始から車両停止までの期間における減速度のばらつき度を示す値を含んでいる。ドライバーの運転能力が衰えると、車両のブレーキ操作開始から車両停止までの期間における減速度のばらつき度が大きくなる傾向にある。これは、運転能力が衰えたドライバーは、制動開始当初は必要な制動力を満たせないブレーキ操作を行ってしまい、制動の終盤段階において、制動力が不足していることに気づいてブレーキ操作量を増やす場合が多いからである。したがって、上記のようにすることで、適切にドライバーの運転操作の経時的な衰えを検出することができる。
【0072】
またナビゲーション装置1は、車両のブレーキ操作開始時に、車両の挙動または運転技術を表す指標の経時変化に関するデータに基づいて、ドライバーの思い込み年齢を推定し、指定した思い込み年齢とドライバーの実際の年齢との乖離量に応じて制動力の大きさを変化させる。
【0073】
このように、車両の挙動または運転技術を表す指標の経時変化に関するデータに基づいてドライバーの思い込み年齢を推定し、推定した思い込み年齢に応じて制動力を制御することで、ドライバー自身も気づいていない運転操作の経時的な衰えを検出し、ドライバーの減速操作を支援することができる。
【0074】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態における車載システムのハードウェア構成は、第1実施形態と同じである。本実施形態の車載システムの作動が第1実施形態と異なるのは、第1実施形態では車両が減速して停止するときのドライバーの運転技術の衰えに応じて制動力を増加させていたのに対し、本実施形態では、車両がカーブを曲がるときのドライバーの運転技術の衰えに応じて操舵輪の角度を増加させる点である。
【0075】
このために、本実施形態の制御回路17は、車両の走行中、図2の処理に代えて、図6に示す操舵時学習処理を実行するようになっている。
【0076】
具体的には、車両の走行中、ステップ310で、ステアリングハンドルの操作が開始した(操舵開始した)か否かを、ステアリングセンサ5の検出結果に基づいて、操舵開始したと判定するまで繰り返し判定し、操舵開始したと判定すると、現在の車速を車速センサから取得し、続いてステップ320に進む。なお、操舵開始したか否かは、ステアリングハンドルのステアリング角(中央位置がゼロ、左右方向とも正の値)が所定角度(例えば10度)以上となったか否かで判定する。
【0077】
ステップ320では、現在車両が進入しようとしているカーブの曲率を取得する。現在車両が進入しようとしているカーブは、位置検出器11の検出結果に基づいて算出した車両の現在位置および走行方向と、地図データ入力器12が読み出す地図データに基づいて特定する。また、当該カーブの曲率も、地図データに基づいて特定する。
【0078】
続いてステップ330では、車両のステアリングハンドルのステアリング角の角速度を、ステアリングセンサ5の検出結果に基づいて取得する。そして、続くステップ340では、操舵が終了したか否かを、ステアリングセンサ5の検出結果に基づいて判定し、終了していなければ、ステップ330に戻る。なお、操舵が終了したか否かは、ステアリング角が上記所定角度未満になったか否かで判定する。このような処理により、車両の操舵開始から操舵終了までの期間における、ステアリング角の情報を、複数個(例えば100ミリ秒間隔で)取得してRAM等に記録する。
【0079】
ステップ340で操舵が終了したと判定すると、続いてステップ350に進み、ステップ330で取得した複数個のステアリング角の角速度の最大値ωmaxを算出する。
【0080】
続いてステップ360では、ステップ330で取得した複数個のステアリング角の角速度の標準偏差σωを算出する。なお、ここで算出するのは、標準偏差に限らず、当該複数個のステアリング角の角速度のばらつき度を示す量であれば、どのようなものであってもよい。
【0081】
続いてステップ370では、ステップ350で算出したステアリング角速度の最大値ωmaxおよび標準偏差σω、ステップ320で取得した道路曲率R、および、ドライバーの年齢Aに基づいて、外部メモリ14中の操舵時学習データを更新する。なお、ドライバーの年齢は、あらかじめ操作スイッチ群13を用いてドライバーが入力することで、制御回路17が外部メモリ14に記録するようになっている。
【0082】
図7に、外部メモリ14に記録される操舵時学習データの一例を示す。この図に示すように、操舵時学習データには、年齢(例えば1才刻み)と道路曲率(所定量刻み)の組毎に1つのレコードが記録され、各レコードには、年齢と道路曲率の組、および、当該年齢と車速の組に対応するステアリング角速度の最大値と標準偏差が記録される。
【0083】
このような操舵時学習データを更新するために、制御回路17は、ステップ370で、上述の年齢Aおよび道路曲率に該当するレコードを操舵時学習データ中で特定する。そして該当するレコードのステアリング角速度の最大値および標準偏差の値を更新する。ステアリング角速度の最大値の更新は、当該レコードの更新が今回N回目で、今回の更新前の最大ステアリング角速度がω0で、今回のステップ150で算出した最大ステアリング角速度がωの場合、更新後の最大ステアリング角速度ω1は、ω1={(N−1)*ω0+ω}/Nという式によって算出する。これは、今回を含む過去N回分の制動距離の平均値である。また、標準偏差についても同様に、今回を含む過去N回分の標準偏差の平均値を更新後の値とする。なお制御回路17は、各レコードの更新回数の情報も、外部メモリ14に記録する。
【0084】
このような減速時学習処理を、操舵がある度に実行することで、制御回路17は、ドライバーの年齢別(すなわち期間別)かつ車両の操舵開始時に進入しようとしている道路の道路曲率別に、操舵開始から操舵終了までの期間における、車両のドライバーによるステアリングハンドル操作の挙動を表すハンドル操作データとして、当該期間中のステアリング角速度の最大値および標準偏差を、平均値として記録する。
【0085】
次に、上記のようにして記録された操舵時学習データの使用方法について説明する。制御回路17は、車両の走行中に、図6の処理と並列的に、図8のカーブ運転支援処理を繰り返し実行するようになっている。
【0086】
そして図8の処理において、まずステップ410で、ドライバーのハンドル操作(操舵)があったか否かを、ステアリングセンサ5の検出結果に基づいて判定し、ハンドル操作がない場合は、今回の図8の処理を終了し、次回の図8の処理を実行する。
【0087】
ドライバーがカーブを曲がるためにハンドル操作を行うと、制御回路17は、ステップ410でハンドル操作があったと判定してステップ420に進み、操舵時学習データ中の更新されたレコードから、現在進入しようとしている道路の道路曲率に相当するレコードを読み出す。そして、読み出したレコードのうち、最新の期間に対応するレコードM(現在のドライバーの年齢が60才なら、60才のレコード)と、最も小さい最大ステアリング角速度が記録されているレコードPと、最も小さい標準偏差が記録されているレコードQと、を抽出する。そして、レコードM中の最大ステアリング角速度とレコードP中の最大ステアリング角速度とを比較し、そして、レコードM中の標準偏差とレコードQ中の標準偏差とを比較する。
【0088】
続いてステップ430では、ステップ420の比較結果に基づいて、レコードM中の最大ステアリング角速度(最新の最大ステアリング角速度の平均値)とレコードP(またはレコードQでもよい)中の最大ステアリング角速度(過去最も小さかった最大ステアリング角速度の平均値)とを比較し、レコードM中の最大ステアリング角速度がレコードP中の最大ステアリング角速度よりも第3基準量以上大きいか否かを判定し、第3基準量以上大きければ、ドライバーの運転技術が所定基準以上に衰えたと判定してステップ445に進み、第3基準量以上大きくなければステップ440に進む。
【0089】
ステップ440では、ステップ420の比較結果に基づいて、レコードM中の標準偏差(最新の平均標準偏差)がレコードQ(またはレコードPでもよい)中の標準偏差(過去最も小さかった平均標準偏差)よりも第4基準量以上大きいか否かを判定し、第4基準量以上大きければ、ドライバーの運転技術が衰えたと判定してステップ445に進み、第4基準量以上大きくなければ、ドライバーの運転技術が所定基準以上に衰えていないと判定し、今回の図8の処理を終了する。
【0090】
ステップ445では、ドライバーの思い込み年齢を推定し、ドライバーの実際の年齢から当該思い込み年齢を減算した結果の値(ギャップ)を算出し、算出したギャップが所定のギャップ閾値以上であるか否かを判定し、所定のギャップ閾値以上であればステップ450に進み、そうでなければ今回の図8の処理を終了する。ドライバーの思い込み年齢の推定方法は、第1実施形態のステップ245における方法と同じでよい。
【0091】
ステップ450では、ステアリングアシスト量を増加させる。具体的には、車両ECU6に対して、ステアリングアシスト命令を出力する。このステアリングアシスト命令を受けた車両ECU6は、ステアリングアクチュエータのステアリングアシスト量の値を今までよりも大きくする。ステアリングアシスト量の増加量は、本実施形態では一定値とする。
【0092】
このような図8の処理により、制御回路17がステップ430またはステップ440でドライバーの運転技術が衰えたと判定した場合、車両ECU6は、ステアリングアシスト量、すなわち、ドライバーがステアリングハンドルを回した方向と同じ方向にステアリングハンドルを付勢する力の大きさ、を増加させることで、ドライバーの同じステアリング操作力に対してそれまでよりも大きい操舵輪の角度(直進方向を基準とする相対角度)を操舵輪に実現させる。また、ステップ450を実行せずに図8の処理を終了する場合は、やはしステアリングアシストは行うものの、ステアリングアシストの量がそれまでと同じであるので、ドライバーの同じステアリング操作力に対してそれまでと同じ操舵輪の角度を実現する。
【0093】
なお、一度変化したステアリングアシスト量は、次回以降のステップ450で増加しない限り、変化後の値を維持するようになっている。このため、ステアリングアシスト量の値は、外部メモリ14に保持するようにする。これにより、ドライバーの運転技術の衰えと共に、ステアリングアシスト量が経年的に増加していき、それと共に、同じステアリング操作力に対して実現する操舵輪の角度が経年的に増加していく。
【0094】
以上説明した通り、本実施形態のナビゲーション装置1は、期間別かつステアリングハンドル操作開始時に進入しようとしているカーブの曲率別に、ステアリングハンドル操作開始からステアリングハンドル操作終了までの期間における、車両のハンドル操作の挙動を表すハンドル操作データを、操舵時学習データとして外部メモリ14に記録し、操舵時学習データが外部メモリ14に記録された後、車両のステアリングハンドル操作開始時に、操舵時学習データ中の最新の期間におけるハンドル操作データのうち現在車両が進入しようとしているカーブと曲率が対応するハンドル操作データと、操舵時学習データ中の最新よりも過去の期間におけるハンドル操作データのうち現在車両が進入しようとしているカーブと曲率が対応するハンドル操作データと、を比較し、その比較結果に基づいて、ドライバーの運転能力が所定基準以上に衰えているか否かを判定する。
【0095】
このように、車両のステアリングハンドル操作開始からステアリングハンドル操作終了までの期間における車両の減速挙動を表す減速挙動データを、最新のものとそれより過去のものとで比較することで、ドライバーの運転操作の経時的な衰えを検出し、ドライバーのステアリングハンドル操作を支援することができる。また、現在車両が進入しようとしているカーブと同程度の曲率条件でハンドル操作データを比較することで、より高い精度で、ドライバーの運転操作の経時的な衰えを検出することができる。
【0096】
また、ハンドル操作データは、車両のステアリングハンドル操作開始からステアリングハンドル操作終了までの期間における、ステアリングハンドルの角速度の最大値および標準偏差を含む。
【0097】
ドライバーの運転能力が衰えると、車両のステアリングハンドル操作開始からステアリングハンドル操作終了までの期間におけるステアリングハンドルの角速度の最大値または角速度のばらつき度が大きくなる傾向にある。これは、運転能力が衰えたドライバーは、ステアリングハンドル操作開始当初は必要な車両ヨーレートを満たせない操作を行ってしまい、ステアリングハンドル操作の終盤段階において、車両ヨーレートが不足していることに気づいてステアリングハンドル操作量を急に増やす場合が多いからである。したがって、上記のようにすることで、適切にドライバーの運転操作の経時的な衰えを検出することができる。
【0098】
またナビゲーション装置1は、車両のステアリング操作の開始時に、車両の挙動または運転技術を表す指標の経時変化に関するデータに基づいて、ドライバーの思い込み年齢を推定し、指定した思い込み年齢とドライバーの実際の年齢との乖離量に応じてステアリングアシスト量を変化させる。
【0099】
このように、車両の挙動または運転技術を表す指標の経時変化に関するデータに基づいてドライバーの思い込み年齢を推定し、推定した思い込み年齢に応じてステアリングアシスト量を制御することで、ドライバー自身も気づいていない運転操作の経時的な衰えを検出し、ドライバーの減速操作を支援することができる。
【0100】
(他の実施形態)
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の範囲は、上記実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の各発明特定事項の機能を実現し得る種々の形態を包含するものである。例えば、以下のような形態も許容される。
【0101】
(1)上記第1実施形態のステップ245および第2実施形態のステップ445におけるドライバーの思い込み年齢の推定方法は、上述のような平均車速のデータ(車両の挙動を表す指標の経時変化のデータの一例に相当する)を用いた方法以外の方法を採用してもよい。
【0102】
例えば、異なる複数の運転技術(ハンドル操作技術、ブレーキ操作技術、アクセル操作技術)毎に、その操作技術の高低を表す運転技術指標を本車両のドライバー(以下、対象ドライバーという)の年齢毎に記録することで、運転技術を表す指標の経時変化のデータを蓄積する。例えば、ハンドル操作技術の運転技術指標としては、上述の第2実施形態において操舵時学習データとして記録したステアリング角の角速度の1年間の平均値を、年齢毎に記録し、ブレーキ操作技術の運転技術指標としては、上述の第1実施形態において操舵時学習データとして記録した減速度の標準偏差の1年間の平均値を年齢毎に記録し、アクセル操作技術の運転技術指標としては、アクセル操作時の加速度の標準偏差の1年間の平均値を年齢毎に記録する。
【0103】
一方で、これら運転技術指標について、平均的なドライバー(たとえば対象ドライバー以外の他のドライバー)の年齢毎の推移のデータをあらかじめ作成して外部メモリ14に記録しておく。このデータは多数のドライバーの情報を収集することで統計的に作成することができる。そして、各運転技術指標について、対象ドライバーの運転技術と平均的なドライバーの運転技術の推移を比較し、当該運転技術指標における対象ドライバーの衰え度合いを算出する。例えば、ブレーキ操作技術については、図9に示すように、対象ドライバーの年齢毎のブレーキ操作運転技術指標の推移21と、平均的なドライバーのブレーキ操作の運転技術指標の年齢毎の推移22とを比較し、対象ドライバーの現在の年齢(60歳)における年齢毎のブレーキ操作運転技術指標の値を推移22において実現する年齢Aを算出する。この年齢Aが、ブレーキ操作運転技術指標における対象ドライバーの衰え度合いである。たとえば、運転技術(ブレーキ操作)の衰えがあまりない対象ドライバーであれば、60歳にして平均的なドライバーの30歳に相当する操作ができる。このとき、30歳が思い込み年齢の候補(「衰え度合い」と文言を定義した)となる。
そして、このようにして算出した各運転技術指標におけるドライバーの衰え度合い(年齢A)のうち、最も小さい衰え度合いを、思い込み年齢として採用する。たとえば上記の例でいけば、ブレーキ操作において衰え度合いが30歳、ハンドル操作においては65歳、アクセル操作においては40歳であったとすると、最も小さい値である、ブレーキ操作の30歳が思い込み年齢として採用される。このようにするのは、ドライバーは、自分の得意な技術(ここではブレーキ操作)だけで自分の運転能力を判断してしまいがちであるからである。つまり、ブレーキ操作が30歳(最も若く適切な運転ができている年齢)に相当する操作ができるとすると、他の操作(ハンドル操作やアクセル操作)もあたかも30歳に相当する操作ができるものと思い込みがちとなるからである。
【0104】
なお、図9に示したブレーキ操作の運転技術指標から算出した年齢A(たとえば30歳)が対象ドライバーの思い込み年齢となった場合、対象ドライバーの他の運転技術指標(例えばハンドル操作)においては、図10に示すように、実線23が当該対象ドライバーの運転技術指標を示し、破線24が平均的なドライバーの運転技術指標を示している場合は、当該対象ドライバーの現在の年齢(60歳)の運転技術指標と、当該対象ドライバーの思い込み年齢における平均的なドライバーの運転技術指標との差が、対象ドライバーの思い込み運転技術と実際の運転技術とのギャップGになる。
【0105】
また、この方法では第1実施形態で説明した平均車速を用いて行った推定方法と異なり、対象となる運転操作、挙動(運転技術指標)と、思い込み年齢推定用の運転操作、挙動(運転技術指標)とが一致していてもギャップGの算出が行える。すなわちたとえば、ブレーキ操作の運転技術指標から思い込み年齢(30歳)が特定された場合、ブレーキ操作における60歳時と30歳時の自らの運転技量の差を算出することによってギャップGが求められる。
【0106】
(2)あるいは、運転シーン(例えば、定常シーン、緊急シーン等)毎に、上記(1)のように思い込み年齢を算出するようになっていてもよい。具体的には、上記のような運転技術毎の運転技術指標の記録およびそれら記録された運転技術指標に基づく思い込み年齢の算出を、運転シーン毎に分けて行えばよい。
【0107】
この場合、運転シーンとして定常シーンと緊急シーンを採用する場合、車両の加速度(または減速度)が所定の値以上の場合は緊急シーンであるとし、車両の加速度(または減速度)が所定の値未満の場合は定常シーンであるとすればよい。なお、緊急シーンにおける運転技術指標としては、例えば、ハンドル操作技術の運転技術指標としては、操舵時(カーブ走行時)のハンドル角速度の最大値の1年間の平均を採用し、ブレーキ操作技術の運転技術表としては、制動距離の1年間の平均を採用してもよい。
【0108】
(3)ナビゲーション装置1は、上記第1実施形態の機能と第2実施形態の機能を併せ持っていてもよい。
【0109】
(4)また、上記第1、第2実施形態では、ステップ250における比例定数kの増加量およびステップ450におけるステアリングアシスト量の増加量は、一定であったが、これらの値は必ずしも一定でなくてもよい。
【0110】
例えば、レコードN中の最大ステアリング角速度からレコードX(またはレコードY)中の最大ステアリング角速を減算した値が大きいほど、上記比例定数kの増加量を大きくしてもよい。また例えば、レコードM中の最大ステアリング角速度からレコードP(またはレコードQ)中の最大ステアリング角速を減算した値が大きいほど、上記ステアリングアシスト量の増加量を大きくしてもよい。
【0111】
また例えば、レコードN中の標準偏差からレコードY(またはレコードX)中の標準偏差を減算した値が大きいほど、上記比例定数kの増加量を大きくしてもよい。また例えば、レコードM中の標準偏差からレコードQ(またはレコードP)中の標準偏差を減算した値が大きいほど、上記ステアリングアシスト量の増加量を大きくしてもよい。
【0112】
また例えば、推定した思い込み年齢からドライバー実年齢を減算した結果のギャップが大きいほど、上記比例定数kの増加量およびステアリングアシスト量の増加量を大きくしてもよい。
【0113】
また例えば、上記(1)で説明したギャップGが大きいほど、上記比例定数kの増加量およびステアリングアシスト量の増加量を大きくしてもよい。
【0114】
(5)また、ステップ245、445においては、思い込み年齢とのギャップがあるかどうかは、例えばブレーキ操作を開始するタイミングの経年的変化を記憶し、制動距離が長くなっているにも関わらず、ブレーキ操作の開始タイミングが変化していない場合に思い込み年齢とのギャップがあると判断してもよい。
【0115】
(6)また、ドライバーが初めて上記ナビゲーション装置1が搭載された車両を運転するとき、もしくは長期間当該車両に乗らなかった後久しぶりに当該車両を運転する場合など、当該ドライバーの過去の減速時学習データ、操舵時学習データが存在しない場合には、外部メモリ14より、一般的に車を乗り続けた人を想定した所定の減速時学習データ、操舵時学習データを取り込んで使用してもよい。この場合、当該乗り続けた人よりも運転技術が衰えている可能性があると判断し、アシスト量を強くするという作動になる。
【0116】
(7)また、上記比例定数kの増加量やブレーキアシスト量の増加量は、車両によりブレーキやハンドルの特性が異なる為、車両毎の係数を補正した値としてもよい。
【0117】
(8)また、上記の実施形態において、制御回路17がプログラムを実行することで実現している各機能は、それらの機能を有するハードウェア(例えば回路構成をプログラムすることが可能なFPGA)を用いて実現するようになっていてもよい。
【0118】
(9)また、本発明の車両運転支援装置は、ナビゲーション装置以外の車載装置において実現されていてもよい。
【符号の説明】
【0119】
1 ナビゲーション装置
2 アクセルセンサ
3 ブレーキセンサ
4 車速センサ
5 ステアリングセンサ
6 車両ECU
11 位置検出器
12 地図データ入力器
13 操作スイッチ群
14 外部メモリ
15 表示装置
16 スピーカ
17 制御回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
期間別に、車両のブレーキ操作開始から車両停止までの前記車両の減速挙動を表す減速挙動データを、学習データとして記憶媒体に記録する記録手段(110〜170)と、
前記学習データが前記記憶媒体に記録された後、前記車両のブレーキ操作開始時に、前記学習データ中の最新の期間における減速挙動データと、前記学習データ中の最新よりも過去の期間における減速挙動データとを比較し、その比較結果に基づいて、ドライバーの運転能力が所定基準以上に衰えているか否かを判定する判定手段(220、230、240)と、
ドライバーの運転能力が所定基準以上に衰えていると前記判定手段(220、230、240)が判定した場合、ドライバーの運転能力が所定基準以上に衰えていないと前記判定手段(220、230、240)が判定した場合に比べて、制動力を大きくする制動制御手段(245、250)と、を備えた車両運転支援装置。
【請求項2】
前記減速挙動データは、前記車両の制動距離を含むことを特徴とする請求項1に記載の車両運転支援装置。
【請求項3】
前記減速挙動データは、前記車両のブレーキ操作開始から車両停止までの減速度のばらつき度を示す値を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の車両運転支援装置。
【請求項4】
前記記録手段(110〜170)は、期間別かつ前記車両のブレーキ操作開始時の車速別に、前記ブレーキ操作開始から車両停止までの前記車両の減速挙動を表す減速挙動データを、前記学習データとして前記記憶媒体に記録し、
前記判定手段(220、230、240)は、前記学習データが前記記憶媒体に記録された後、前記車両のブレーキ操作開始時に、前記学習データ中の最新の期間における減速挙動データのうち現在の車速に相当する減速挙動データと、前記学習データ中の最新よりも過去の期間における減速挙動データのうち現在の車速に相当する減速挙動データと、を比較し、その比較結果に基づいて、ドライバーの運転能力が所定基準以上に衰えているか否かを判定することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の車両運転支援装置。
【請求項5】
前記制動制御手段(245、250)は、前記車両のブレーキ操作開始時に、前記車両の挙動または運転技術を表す指標の経時変化に関するデータに基づいて、運転操作においてドライバー自身が意識的にあるいは無意識に思い込んでいる年齢である思い込み年齢を推定し、前記推定した思い込み年齢と前記ドライバーの実際の年齢との乖離量に応じて制動力の大きさを変化させることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の車両運転支援装置。
【請求項6】
前記記録手段は、前記車両の挙動または運転技術を表す指標の経時変化に関するデータとして、前記車両の平均車速を、期間別に前記記憶媒体に記録し、
前記制動制御手段(245、250)は、前記学習データとして前記記憶媒体に記録された平均車速において、平均車速の最新値に対して所定の範囲内に収まっている期間の始点におけるドライバーの年齢を、思い込み年齢として特定することを特徴とする請求項5に記載の車両運転支援装置。
【請求項7】
期間別に、車両のステアリングハンドル操作開始からステアリングハンドル操作終了までの前記車両のドライバーによるステアリングハンドル操作の挙動を表すハンドル操作データを、学習データとして記憶媒体に記録する記録手段(310〜370)と、
前記学習データが前記記憶媒体に記録された後、前記車両のステアリングハンドル操作開始時に、前記学習データ中の最新の期間におけるハンドル操作データと、前記学習データ中の最新よりも過去の期間におけるハンドル操作データとを比較し、その比較結果に基づいて、ドライバーの運転能力が所定基準以上に衰えているか否かを判定する判定手段(420、430、440)と、
ドライバーの運転能力が所定基準以上に衰えていると前記判定手段(420、430、440)が判定した場合、ドライバーの運転能力が所定基準以上に衰えていないと前記判定手段(420、430、440)が判定した場合に比べて、同じステアリング操作力に対して前記車両の操舵輪の角度を大きくする操舵角制御手段(445、450)と、を備えた車両運転支援装置。
【請求項8】
前記ハンドル操作データは、前記車両のステアリングハンドル操作開始からステアリングハンドル操作終了までのステアリングハンドルの角速度の最大値を含むことを特徴とする請求項7に記載の車両運転支援装置。
【請求項9】
前記ハンドル操作データは、前記車両のステアリングハンドル操作開始からステアリングハンドル操作終了までのステアリングハンドルの角速度のばらつき度を示す値を含むことを特徴とする請求項7または8に記載の車両運転支援装置。
【請求項10】
前記記録手段(210〜270)は、期間別かつステアリングハンドル操作開始時に進入しようとしているカーブの曲率別に、前記ステアリングハンドル操作開始からステアリングハンドル操作終了までの前記車両のステアリングハンドル操作の挙動を表すハンドル操作データを、前記学習データとして前記記憶媒体に記録し、
前記判定手段(220、230、240)は、前記学習データが前記記憶媒体に記録された後、前記車両のステアリングハンドル操作開始時に、前記学習データ中の最新の期間におけるハンドル操作データのうち現在前記車両が進入しようとしているカーブと曲率が対応するハンドル操作データと、前記学習データ中の最新よりも過去の期間におけるハンドル操作データのうち現在前記車両が進入しようとしているカーブと曲率が対応するハンドル操作データと、を比較し、その比較結果に基づいて、ドライバーの運転能力が所定基準以上に衰えているか否かを判定することを特徴とする請求項7ないし9のいずれか1つに記載の車両運転支援装置。
【請求項11】
前記操舵角制御手段(445、450)は、前記車両のステアリング操作の開始時に、前記車両の挙動または運転技術を表す指標の経時変化に関するデータに基づいて、運転操作においてドライバー自身が意識的にあるいは無意識に思い込んでいる年齢である思い込み年齢を推定し、前記推定した思い込み年齢とドライバーの実際の年齢との乖離量に応じて、同じステアリング操作力に対して前記車両の操舵輪の角度を変化させることを特徴とする請求項7ないし10のいずれか1つに記載の車両転支援装置。
【請求項12】
前記記録手段は、前記車両の挙動または運転技術を表す指標の経時変化に関するデータとして、前記車両の平均車速を、期間別に前記記憶媒体に記録し、
前記操舵角制御手段(445、450)は、前記記憶媒体に記録された平均車速において、平均車速の最新値に対して所定の範囲内に収まっている期間の始点におけるドライバーの年齢を、思い込み年齢として特定することを特徴とする請求項11に記載の車両運転支援装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−254694(P2012−254694A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−128290(P2011−128290)
【出願日】平成23年6月8日(2011.6.8)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】