説明

車両

【課題】先行車両に対して安定した並走追従走行をすること。
【解決手段】追従車両3は、前後方向の制御と左右方向の制御を行うことにより、先行車両2に対して並走追従走行を行う。前後方向の制御は、フィードバック制御と、フィードフォワード制御を行う。フィードフォワード制御では、先行車両2から送信されてくる目標車速を、先行車両2が旋回する際に、追従車両3が先行車両2の内外周を走行することによる速度の増減で補正した値を用いる。左右方向の制御では、方位角φと相対角θを収束させる。この際に、追従車両3は、自車両の代表点7から先行車両2に対する目標点5までの目標点距離Δmを用いて、φとθの何れを優先的に制御するかを判断する。更に、目標点距離Δmが小さい場合、即ち、追従車両3と先行車両2が近接している場合には、φを制御する際のゲインを小さくする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に係り、例えば、他車両や自車両からの指令に基づいて、他の車両に並走追従して走行する追従走行に関する。
【背景技術】
【0002】
車両が走行する場合、先行する車両(以下、先行車両という)に追従しながらオートクルーズする車両について提案されている。
例えば、次の特許文献1では、単独走行可能な1人乗りの車両において、先行車両がホスト車両として走行し、一方、他の車両が追従車両としてホスト車両の横に並んで並走追従走行する場合について提案されている。
【特許文献1】特開2006−338117
【0003】
以下、従来の追従制御について説明する。
図10(a)は、追従車両3が先行車両2の進行方向に向かって左側を並走する場合を説明するための図である。
追従車両3は、先行車両2の代表点6から横方向距離aの位置に目標点5を設定する。
そして、追従車両3は、自車両の代表点7と目標点5との前後方向(進行方向、縦方向)の前後偏差Δdと、左右方向(横方向)の左右偏差Δwを計算し、これらの偏差が0に収束するように、自車両の車速と旋回をフィードバック制御する。
【0004】
図10(b)は、Δdを収束するフィードバック制御のブロック図である。
追従車両3は、Δdに比例係数kp1を掛けたものと、Δdを時間微分(「s」は微分を表す)して、これに比例係数kd1を掛けたものを加えることにより、車速指令値uFBを生成し、これを用いて車速をフィードバック制御(この例はPD制御)する。
車速指令値uFBは、目標車速や加速度指令や、アクセル開度などによる目標加速度といった車速に関する指令であって、追従車両3の前後方向の移動に関する前後方向指令値である。
【0005】
図10(c)は、Δwを収束するフィードバック制御のブロック図である。
追従車両3は、Δwに比例係数kp2を掛けたものと、Δwを時間微分して、これに比例係数kd2を掛けたものを加えることにより、旋回方向指令値uLRを生成し、これにより、追従車両3の旋回をフィードバック制御する。
左右方向指令値uLRは、旋回角度指令、ハンドル舵角、など、旋回に関する指令であって、追従車両3の左右方向(横方向)の移動に関する左右方向指令値である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、フィードバック制御は、偏差が生じてから初めて制御が行われるため、車両が近接して併走し、高速走行しながら旋回する場合など、特定の場合には応答が遅くて追従制御が十分に行えないという問題があった。
【0007】
そこで本発明は、先行車両に対して安定した並走追従走行できる車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)前記目的を達成するために、請求項1に記載の発明では、先行車両に対して並走追従走行を行う車両であって、前記先行車両に追従するための目標点を取得する目標点取得手段と、前記取得した目標点からの偏差に対してフィードバック制御を行うフィードバック手段と、前記先行車両の車速を制御するための車速制御情報を取得する車速制御情報取得手段と、前記取得した車速制御情報で規定される制御量を、前記先行車両に並走しながら旋回する際に必要な車速の増減量を用いて補正する補正手段と、前記補正手段による補正後の制御量を用いてフィードフォワード制御を行うフィードフォワード手段と、を具備したことを特徴とする車両を提供する。
(2)請求項2に記載の発明では、前記先行車両との距離を取得する距離取得手段と、前記先行車両が行う旋回の角速度を取得する角速度取得手段と、前記先行車両が旋回する際に、自車両が内周または外周の何れを走行するかを判断する判断手段と、を具備し、前記補正手段は、前記取得した距離と角速度を用いて補正量を取得し、前記判断手段が外周を走行すると判断した場合には、前記制御量を前記補正量だけ増加し、前記判断手段が内周を走行すると判断した場合には、前記制御量を前記補正量だけ減少させることを特徴とする請求項1に記載の車両を提供する。
(3)請求項3に記載の発明では、前記車速制御情報は、前記先行車両の加速度情報であり、前記補正手段は、前記取得した距離と角速度の積を微分して補正量を取得し、当該微分による補正量の急変を緩和する緩和手段を具備したことを特徴とする請求項2に記載の車両を提供する。
(4)請求項4に記載の発明では、自車両から前記取得した目標点への方位角を取得する方位角取得手段と、自車両と前記先行車両の進行方向の成す相対角を取得する相対角取得手段と、前記取得した方位角と相対角を用いて制御対象角を取得する制御対象角取得手段と、を具備し、前記フィードバック手段は、前記取得した制御対象角が収束するようにフィードバック制御することを特徴とする請求項1、請求項2、又は請求項3のうちの何れか1の請求項に記載の車両を提供する。
(5)請求項5に記載の発明では、自車両から前記取得した目標点までの目標点距離を取得する目標点距離取得手段を具備し、前記制御対象角取得手段は、前記取得した目標点距離が大きいほど、前記取得した方位角の前記制御対象角への寄与度を大きくすることを特徴とする請求項4に記載の車両を提供する。
(6)請求項6に記載の発明では、前記方位角の前記制御対象角への寄与度には上限が設けられていることを特徴とする請求項5に記載の車両を提供する。
(7)請求項7に記載の発明では、前記先行車両から旋回を制御するための旋回制御情報を取得する旋回制御情報取得手段と、前記取得した旋回制御情報を用いて前記制御対象角に対してフィードフォワード制御を行う旋回フィードフォワード手段と、を具備したことを特徴とする請求項4、請求項5、又は請求項6に記載の車両を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、先行車両の車速を制御するための車速制御情報を取得し、取得した車速制御情報で規定される制御量を、旋回する際に必要な車速の増減量を用いて補正し、補正後の制御量用いてフィードフォワード制御を行うので、先行車両に対して安定した並走追従走行が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
(1)実施の形態の概要
追従車両3(図2)は、前後方向の制御と左右方向の制御を行うことにより、先行車両2に対して並走追従走行を行う。
前後方向の制御は、先行車両2の横に設定した目標点からの偏差を0に収束させるフィードバック制御と、フィードバック制御の応答の遅れを補うフィードフォワード制御を行う。フィードフォワード制御では、先行車両2から送信されてくる目標車速(あるいは、目標加速度)を、先行車両2が旋回する際に、追従車両3が先行車両2の内外周を走行することによる速度の増減で補正した値を用いる。
また、左右方向の制御では、方位角φと相対角θ(図4)を収束させる。この際に、追従車両3は、自車両の代表点7から先行車両2に対する目標点5までの目標点距離Δmを用いて、φとθの何れを優先的に制御するかを判断する。
更に、目標点距離Δmが小さい場合、即ち、追従車両3と先行車両2が近接している場合には、φを急激に変化させて追従車両3と先行車両2が接触するのを避けるため、φを制御する際のゲインを小さくする。
【0011】
(2)実施の形態の詳細
本実施形態の車両は、通常の4輪車両に対しても適用が可能であるが、小型の車両で横方向の旋回自由度が高い車両に適用した場合に特に有効である。
そのため本実施形態では、特に小半径で旋回することが可能な倒立振り子車両(1軸2輪車両等)に適用した場合を例に説明することとする。なお、先行車両も倒立振り子車両を対象として説明するが、それ以外の4輪車両等であってもよい。
【0012】
倒立振り子車両は、搭乗部の姿勢を感知し、その姿勢に応じて、駆動輪の駆動方向で前後方向のバランスを保持するように姿勢制御を行いながら走行するものである。その姿勢制御の方法としては、例えば、米国特許第6,302,230号明細書、特開昭63−35082号公報、特開2004−129435公報、特開2004−276727公報で開示された各種制御方法が使用可能である。
【0013】
図1は、本実施形態の車両(追従車両3)の追従制御に関連する構成を表したものである。
図1に示されるように、追従車両3は、ECU(エレクトロニック・コントロール・ユニット)10と、レーザレーダ20、車速センサ30、ヨーレートセンサ40、無線通信装置50、駆動モータ60a、60bを備えている。
なお、図示しないが、駆動モータ60a、60bなどに駆動用の電力を供給し、また、ECU10に制御用の低電圧の電源を供給する、バッテリも備えている。
【0014】
ECU10は、図示しない各種プログラムやデータが格納されたROM、作業領域として使用されるRAM、外部記憶装置、インターフェース部等を備えたコンピュータシステムで構成されている。
倒立振り子車両に適用されている本実施形態においては、その姿勢を保持する姿勢制御プログラム、操縦装置からの各種指示信号に基づいて走行を制御する走行制御プログラム、本実施形態における先行車両2に対する追従走行を行うための追従走行プログラム等の各種プログラムがROMに格納されており、ECU10は、これら各種プログラムを実行することで対応する処理を行う。
【0015】
また、ECU10は、先行車両相対位置検出部11、追従制御部12、車両制御部13を備えている。
先行車両相対位置検出部11は、レーザレーダ20で測定された位置と距離に基づいて、先行車両2の相対位置および向き(進行方向)を検出し、追従制御部12に供給する。
なお、先行車両2から通信で車速およびヨーレートの情報を受信してもよい。
また、本実施形態では不要であるが、先行車両2から位置座標データを受信してデッドレコニングを行う場合には、自車両(追従車両3)の絶対位置を検出するためにGPS等の現在位置検出装置を備えるようにしてもよい。
【0016】
追従制御部12は、本実施形態における追従走行として、並走追従走行を行う場合の制御指令値(前後方向指令値、左右方向指令値)を車両制御部13に供給する。
追従制御部12は、車速センサ30から車速、ヨーレートセンサ40からヨーレートを取得する。また、無線通信装置50で受信した先行車両2の目標指令値を取得する。無線通信装置50は、先行車両2や他の車両(追従車両を含む)との間で車車間通信によりデータの送受信を行うようになっている。
追従制御部12は、フィードバック制御とフィードフォワード制御による、前後方向の前後制御部と左右方向の左右制御部を備えている。
追従制御部12は、先行車両相対位置検出部11、車速センサ30、ヨーレートセンサ40、無線通信装置50からの各入力に基づいて、前後制御部による前後制御指令値(目標速度、又は目標加速度)と、左右制御部による左右制御指令値(目標回転角速度ω)を車両制御部13に供給する。
【0017】
車両制御部13は駆動モータ60a、60bを制御する。
即ち、車両制御部13は、追従制御部12から供給される目標速度(又は目標加速度)となるように、駆動モータ60a、60bを制御する。具体的には、車両制御部13は、駆動モータ60用の速度(又は加速度)−電流マップを備えており、このトルク−電流マップに従って、追従制御部12から供給される目標速度(又は目標加速度)に対応する電流を駆動モータ60に対して出力するように電流制御を行う。
【0018】
また、車両制御部13は、追従制御部12から供給される目標回転角速度ω(左右制御指令値)で追従車両3が旋回するように、両駆動モータ60a、60bに対して異なる電流を出力することで、両駆動モータの60a、60bの差動により旋回を行うようにしてもよい。
【0019】
なお、本実施形態では倒立振り子車両を対象に説明しているが、それ以外の車両、例えば、4輪車両等にも適用が可能であり、その場合には、車両は操舵モータを備える。そして、車両制御部13は、追従制御部12から供給される目標回転角速度ωに対応する操舵角となるように操舵モータを制御する。
【0020】
次に、追従車両3が先行車両2と並走追従走行する場合に追従車両3が行う制御について説明する。
追従車両3が並走追従走行するに際して行う制御には、追従車両3が自車両の前後方向(車速方向、縦方向)に対して行う制御と、自車両の左右方向(車速に垂直な方向、横方向)に対して行う制御がある。
そして、前後方向に対して行う制御は、更に、目標速度で制御を行う場合と目標加速度で制御を行う場合があり、どちらを採用するかは、追従車両3の設計による。
そこで、本実施の形態では、追従車両3が先行車両2に並走追従走行する制御について、目標速度を用いて前後方向に行う場合、目標加速度を用いて前後方向に行う場合、左右方向に行う場合、の3つについて説明する。
【0021】
なお、先行車両2と追従車両3の関係は、図10の従来例と同様とし、追従車両3は、先行車両2の代表点6から左右方向(追従車両3が並列追従する側)のaの位置に目標点5を設定し、追従車両3の代表点7と目標点5との間には、左右方向の左右偏差Δw、前後方向の前後偏差Δdが発生するとする。
これらΔw、Δdは、追従車両3がレーザレーダ20(図1)で先行車両2の位置を測定したり、あるいは、先行車両2から無線通信により先行車両2の現在位置を送信してもらうなどして得ることができる。
【0022】
[目標速度を用いて前後方向に行う制御]
図2を用いて本制御の基本概念について説明する。
追従車両3は、先行車両2の左側を並走追従走行しており、先行車両2が、代表点6から距離rの位置にある旋回中心Cを中心として、旋回角速度(目標角加速度)ωで右旋回を行う場合について考える。
追従車両3は、先行車両2の代表点6を基準に定まる目標点5(図では代表点7と重なっている)と自車両の代表点7が一致するようにフィードバック制御すると共に、応答を高めるため、先行車両2から目標速度を送信してもらい、自車両も目標速度となるようにフィードフォワード制御も行っている。
このように、追従車両3は、先行車両2に追従するための目標点5を取得する目標点取得手段を備えている。
【0023】
ところで、先行車両2が直進している場合には、先行車両2と追従車両3の車速が等しいため、当該フィードフォワード制御にて足りるが、先行車両2が旋回する場合、追従車両3が先行車両2の外周を走向する場合には、追従車両3の車速は先行車両2よりも早くする必要があり、内周を走向する場合には、追従車両3の車速は先行車両2よりも遅くする必要がある。
そのため、先行車両2は、旋回に伴う車速の増減を計算して、これを先行車両2から送られてきた目標速度に加減して、これをフィードフォワード制御に用いる。
【0024】
図2の場合、先行車両2の車速(前後方向の速度)v1は、rωとなる。
代表点6、7間の距離を実車間距離aRとすると、追従車両3が、先行車両2の外周を並走追従走行する場合、追従車両3の車速(前後方向の速度)v2は、(r+aR)ωとなる。
このため、追従車両3は、先行車両2よりも(r+aR)ω−rω=aRωだけ、早く走行する必要があり、追従車両3は、先行車両2から送信されてきた目標速度にaRωを加算した値を自車両の目標速度とする。
【0025】
一方、追従車両3が先行車両2の内周側を並走する場合には、先行車両2から送信されてきた目標速度からaRωを減算した値を自車両の目標速度とする。
このようにして、追従車両3は、先行車両2に対して並走追従走向する場合、先行車両2の旋回によって生じる目標速度の過不足を補正し、当該補正後の値にてフィードフォワード制御することができる。
【0026】
図3(a)は、上記の制御を行う前後方向制御処理部70の機能ブロック図である。
前後方向制御処理部70は、フィードバック制御を行うフィードバック処理部72とフィードフォワード制御を行うフィードフォワード処理部71から構成されている。
なお、これら機能部は、例えば、ECU10のCPU(Central Processing Unit)が制御処理用のプログラムを実行することにより構成される。
【0027】
フィードバック処理部72は、前後偏差Δdが0に収束するようにフィードバック制御する処理部であり、前後偏差Δdが入力されると、これに比例係数kp1を乗ずると共に、前後偏差Δdを時間微分して(図中の「s」)これに比例係数kd1を乗じ、これらを加算して出力する。
これにより、追従車両3は、Δdが大きくなるほど(ゲインはkp1)、また、Δdの変化量が大きいほど(ゲインはkd1)、車速を上昇させて、Δdを0に収束させる。
【0028】
フィードバック処理部72が行う処理は、従来技術で行うフィードバック処理と同様に前後方向の距離を一定に保つ技術であり、一般にアダプティブオートクルーズ装置で行なわれているものと同様の制御である。
このように、フィードバック処理部72は、目標点5からの偏差に対してフィードバック制御を行うフィードバック手段として機能している。
【0029】
前後方向制御処理部70は、従来のフィードバック処理部72に加えて、フィードフォワード処理部71を備えている。これは、次のような背景による。
フィードバック制御は、制御対象の遅れやむだ時間など、信号入力から動作発現までの遅延が小さい場合は、制御対象を厳密に制御することが可能であるが、自動車のように遅延が大きいものの場合、動作のオーバーシュートやハンチングなどが生じる場合がある。
このため、フィードバック制御は、車両の追従走行で車間距離を厳密に維持するのには適しておらず、例えば、高速道路を高速走行しながら数十mの車間距離で使用するなど、厳密な車間距離の維持を行わない場合に用いられている。
そこで、追従車両3は、追従制御の応答性をあげるために前後方向制御処理部70にフィードフォワード処理部71を設けた。
【0030】
フィードフォワード処理部71には、まず、先行車両2から無線送信されてくる前後方向指令値uLFB(目標速度で制御するため、ここでは、先行車両2の目標速度)が入力される。
ここで、前後方向指令値uLFBは、先行車両2の車速を制御するための車速制御情報として機能しており、このため、追従車両3は、車速制御情報取得手段を備えている。
【0031】
更に、フィードフォワード処理部71には、実車間距離aRと左右方向指令値uLLRが入力される。そして実車間距離aRと左右方向指令値uLLRは、車速増減関数fvtにより演算され、その演算値が前後方向指令値uLFBと加算される。
実車間距離aRは、代表点6、7の距離であり、レーザレーダ20による測定や先行車両2との通信によって得ることができる。このように、追従車両3は、先行車両2との距離を取得する距離取得手段を備えている。
【0032】
また、左右方向指令値uLLRは、先行車両2から受信したものであり、先行車両2の旋回に関する情報、例えば、ステアリング量など、少なくとも先行車両2の目標角速度ωを特定することができる情報である。
左右方向指令値uLLRからは、先行車両2の目標角速度ωが得られるようになっており、このため、追従車両3は、先行車両が行う旋回の角速度を取得する角速度取得手段を備えている。
車速増減関数fvtは、追従車両3が先行車両2の外周を走向する場合には、fvt=aRωであり、内周を走向する場合には、fvt=−aRωである。
【0033】
このように、フィードフォワード処理部71は、追従車両3が先行車両2の外周を走向する場合には、先行車両2の目標速度(前後方向指令値uLFB)にaRωを加算して先行車両2の目標速度を補正し、内周を走向する場合には、先行車両2の目標速度からaRωを減算して先行車両2の目標速度を補正し、追従車両3が先行車両2と共に旋回できる車速を出力する。
【0034】
このように、フィードフォワード処理部71は、車速制御情報(前後方向指令値uLFB)で規定される制御量を、先行車両2に並走しながら旋回する際に必要な車速の増減量(aRω)を用いて補正する補正手段と、当該補正手段による補正後の制御量(車速情報)を用いてフィードフォワード制御を行うフィードフォワード手段を備えている。
更に、追従車両3は、先行車両2が旋回する際に、自車両が内周または外周の何れを走行するかを判断する判断手段を備えており、補正手段は、距離(実車間距離aR)と角速度(目標角速度ω)を用いて補正量を取得し、判断手段が外周を走行すると判断した場合には、制御量を補正量だけ増加し、判断手段が内周を走行すると判断した場合には、制御量を補正量だけ減少させている。
【0035】
このように、フィードバック処理部72による処理とフィードフォワード処理部71による処理を行った後、前後方向制御処理部70は、フィードバック処理部72とフィードフォワード処理部71の出力を加算して前後方向指令値uFBとし、追従車両3は、前後方向指令値uFBに基づいて車速を増減させる。
このように、追従車両3は、偏差dを0に収束させるフィードバック制御と、補正された先行車両2の目標速度で走行するフィードフォワード制御を並行して行い、フィードバック制御による追従性を実現すると共に、フィードバック制御の応答性の不足をフィードフォワード制御で補完することができる。
【0036】
仮に、車速増減関数fvtによる補正がなく、フィードフォワード制御を前後方向指令値uLFBだけで行った場合には次のようになる。
先行車両2が旋回し、追従車両3が先行車両2の外周を走行しているとする。
この場合、先行車両2が追従車両3に送信する前後方向指令値uLFBによる目標車速では、追従車両3の車速が足りないため、追従車両3は、目標点5から遅れをとる。
【0037】
すると、追従車両3は、フィードフォワード制御の応答の減退を補完するためにフィードバック制御を主として行うことになり、フィードフォワード制御による効果が得られない。
特に、例えば旋回開始時や旋回終了時など、先行車両2と追従車両3の速度が大きく異なる場合には、このような傾向が顕著となる。
【0038】
このように、車速増減関数fvtによる補正がないと、旋回時にはほとんどフィードバック制御を行うことになり、フィードバック制御の応答性の低さから、車間距離の厳密な調整は困難となる。
そこで、フィードフォワード処理部71において、車速増減関数fvtを用いて左右方向指令値uLLRを補正すると、旋回時でもフィードフォワード制御を有効に作用させることができる。
【0039】
以上のように、追従車両3は、先行車両2に横追従し、更に、車両の制御が目標速度で行なわれる場合、前後方向制御処理部70は、先行車両2の旋回半径、旋回速度に応じて、追加(先行車両2が内側)、あるいは減少(先行車両2が外側)させる速度を算出し、先行車両2から通信で得た先行車制御量(速度目標値)とともに、フィードフォワード制御を行なう。
更に、追従車両3は、フィードバック処理部72によって縦方向偏差に対してのフィードバック制御も同時に行ない、制御量として統合することができる。
【0040】
[目標加速度を用いて前後方向に行う制御]
図3(b)は、前後方向制御処理部73の機能ブロック図であり、前後方向の制御を目標加速度を用いて行う。
前後方向制御処理部73は、前後方向制御処理部70のフィードフォワード処理部71をフィードフォワード処理部74で置き換えたものであり、フィードバック処理部72の構成は前後方向制御処理部70と同様である。
【0041】
前後方向制御処理部73は、目標加速度による制御を行うため、フィードフォワード処理部74に入力される前後方向指令値uLFBは、例えば、先行車両2のアクセル開度情報、ブレーキ情報など、先行車両2の目標加速度を表す情報となる。
このように、この例では、目標加速度が車速制御情報として機能している。
【0042】
フィードフォワード処理部74に入力される実車間距離aR、左右方向指令値uLLR、及び車速増減関数fvtは、フィードフォワード処理部71と同様である。
そして、フィードフォワード処理部74は、車速増減関数fvtの出力を時間で微分(図中の「s」)する。
【0043】
車速増減関数fvtからは、刻々と車速の増減が出力されるが、これを時間で微分することにより、車速増減の変化率、即ち、加速度が得られる。
ところで、車速増減関数fvtの出力を微分すると、例えば、左右方向指令値uLLRが急激に変化する場合などには、微分値がインパルス状になることがある。
このように、微分操作により信号がインパルス状になると、追従車両3はこれに応答して追従することができないため、図中の「1/(1+Ts)」により一次遅れの操作を行い、信号の急激な変化を緩和し(なまし)、これを前後方向指令値uLFBに加算する。
【0044】
ここで、時定数Tは追従車両3の応答性などを考慮して決められた適当な定数である。
このようにして、前後方向制御処理部73は、加速度により前後方向指令値uFBを生成することができ、追従車両3は、前後方向指令値uFBを目標加速度として車速を制御する。
このように、この例では、先行車両2から送られてくる車速制御情報は、先行車両2の加速度情報(目標加速度)であり、補正手段は、距離(aR)と角速度(左右方向指令値uLLRから得られる)の積を微分して補正量を取得し、追従車両3は、当該微分による補正量の急変を緩和する緩和手段(一次遅れの項)を備えている。
【0045】
ところで、このように目標加速度を用いたシステムを構成する背景について説明しておく。
実際の制御を考えた場合、制御対象は目標加速度を用いるものが実現しやすい。例えば、自動車のアクセルは加速度を調整するものであり、電気自動車であれば、モータも出力トルクを制御するよう構成されている場合が多い。
このため、制御出力も加速度指令値であることが望ましいが、fvtで算出されるものが目標速度であるため、これを加速度に変換する必要がある。そこで、前後方向制御処理部73は、この値を微分することとした。
【0046】
しかし、微分のみでは、演算結果がインパルス的に立ち上がることが多く、制御対象の応答性では追従できない場合があるため、前後方向制御処理部73は、この微分値に一次遅れを施すことにより、制御対象の応答性に適合させている。
この一次遅れの時定数Tは、車両の応答性を考慮して決められる。例えば、制御対象(車両)の前後方向の物理モデルが一次遅れとして近似できる場合は、この時定数Tv以上の値で設定する(T>Tv)。また、むだ時間Tfも含む場合は、これも加算して、それ以上の値に設定する(T>Tv+Tf)。物理モデルが二次以上の高次の遅れで表現される場合は、一次遅れに近似して前記基準を適用する。
【0047】
以上のように、前後方向制御処理部73では、先行車両2に横追従し、更に、車両の制御が目標加速度で行なわれる場合、追従車両3は、先行車両2の旋回半径、旋回速度に応じて、追加(先行車両2が内側)、あるいは減少(先行車両2が外側)させる速度を算出し、これを微分して、先行車両2から通信等で得た先行車制御量(加速度目標値)とともに、フィードフォワード制御を行なう。
そして、微分操作によりインパルス状になった指令値に対して、自車両の応答性を考慮した一次遅れ操作を指令値に施すことにより、自車両が応答可能な指令値を作用させる。
更に、追従車両3は、フィードバック処理部72によって縦方向偏差に対してのフィードバック制御も同時に行ない、制御量として統合する。
【0048】
[左右方向に行う制御]
図4は、左右方向に行う制御の基本概念を説明するための図である。
追従車両3の代表点7が目標点5から、前後偏差Δd、左右偏差Δwだけ変位しており、追従車両3と目標点5の成す角度を方位角φ、先行車両2と追従車両3の進行方向の成す角度(先行車両2と追従車両3の向きの差)を相対角θとする。
【0049】
車両のような非ホロノミック系では、相対角θの収束と、目標点5への収束を同時に実現することは困難であり、解は存在しない。
そこで、本実施の形態では、どちらか、より緊急度の高い、放置すると衝突の可能性があるパラメータを先に収束させるような構成をとる。
そのため、追従車両3では、方位角φと相対角θを用いて最終旋回角(収束させる制御対象角に相当)を設定し、これを収束させることにより、上記収束が成されるようにした。
【0050】
より具体的には、方位角φと相対角θを関数で演算することにより最終旋回角を計算するが、この計算において、代表点7と目標点5の目標点距離Δmをパラメータとして、方位角φの寄与度を重みづけする。
これにより、先行車両2と追従車両3が近接している場合に(目標点距離Δmが小さい場合に)、方位角φを急激に変化させると、先行車両2と追従車両3が接触する可能性があるため、方位角φを少しずつ変化させ(ゲインを小さくし)、目標点距離Δmが大きいときは、接触の可能性がないため、方位角φを大きく変化させる(ゲインを大きくする)。
また、目標点距離Δmが大きいほど、ゲインを大きくしていくと、出力(方位角φの変化)が大きくなりすぎる場合があるため、図5に示したように、目標点距離Δmが所定値k以上の場合には一定値となるように出力に上限を設けた。
このように、方位角φの最終旋回角(制御対象角)への寄与度には上限が設けられている。
【0051】
図6は、左右方向の制御を行う左右方向制御処理部75の機能ブロック図である。
左右方向制御処理部75には、目標点距離Δm、方位角φ、相対角θが入力されてフィードバック制御に用いられ、左右方向指令値uLLRがフィードフォワード制御に用いられる。
このように、追従車両3は、自車両から目標点5への方位角φを取得する方位角取得手段と、自車両と先行車両2の進行方向の成す相対角θを取得する相対角取得手段と、自車両から目標点5までの目標点距離Δmを取得する目標点距離取得手段を備えている。
【0052】
左右方向制御処理部75は、目標点距離Δmに比例定数kL1を乗じ、更に、これに方位角φを乗じて第1目標旋回角度ψを算出する。
そして、左右方向制御処理部75は、第1目標旋回角度ψと相対角θに関数fstを作用させ、その結果出力される最終旋回角度に定数kA1を乗じ、フィードバック制御用の信号を生成する。
【0053】
ここで、関数fstは、方位角φと第1目標旋回角度ψの符号を調べ、符号が異なる場合には、φとψの和を最終旋回角度として出力し、符号が同じ場合には、絶対値が大きい方を最終旋回角度として出力する。
即ち、関数fstは、sgn(θ)≠sgn(ψ)の場合には、θ+ψを出力し、sgn(θ)=sgn(ψ)かつ|θ|≧|ψ|の場合には、θを出力し、sgn(θ)=sgn(ψ)かつ|θ|<|ψ|の場合にはψを出力する。
ここで出力された最終旋回角は、方位角φと相対角θを用いて得られた制御対象角として機能し、追従車両3は、制御対象角を取得する制御対象角取得手段を備え、また、最終旋回角を収束するようにフィードバック制御するフィードバック手段を備えている。
【0054】
更に、左右方向制御処理部75は、当該フィードバック制御用の信号に左右方向指令値uLLRを加算してフィードフォワード制御も行い、フィードバック制御とフィードフォワード制御の両方が行われた左右方向指令値uLRを出力する。
左右方向指令値uLRは、旋回角速度指令やハンドル舵角指令などとして使用され、追従車両3は、左右方向指令値uLRに従って、旋回を制御する。
このように、追従車両3は、先行車両2から旋回を制御するための旋回制御情報(左右方向指令値uLLR)を取得する旋回制御情報取得手段と、この旋回制御情報を用いて制御対象角に対してフィードフォワード制御を行う旋回フィードフォワード手段を備えている。
【0055】
左右方向制御処理部75は、以上のように信号を処理するが、その意味するところは次の通りである。
まず、左右方向制御処理部75は、目標点距離ΔmをkL1倍して方位角φを乗じることにより第1目標旋回角度ψを算出しているが、この第1目標旋回角度ψは、相対角θに対する方位角φの相対的な優先度を比較するため、方位角φを目標点距離Δmで重みづけした量である。
【0056】
このように、第1目標旋回角度ψは、方位角φに目標点距離Δmを乗じているため、方位角φの優先度は、目標点距離Δmに依存することになり、その依存の程度を表す因子(緊急度を決定する因子)がkL1である。
即ち、目標点距離Δmが小さいほど(先行車両2と追従車両3が近いほど)、第1目標旋回角度ψが小さくなり、方位角φの優先度が低くなり、一方、目標点距離Δmが大きいほど第1目標旋回角度ψが大きくなり、方位角φの優先度が高くなり、kL1は、相対角θに対する方位角φの優先度を相対的に決定している。
このように、目標点距離Δmが大きいほど、方位角φの優先度が高まり、最終旋回角(制御対象角)への寄与度が大きくなる。
【0057】
kL1の値は、例えば、次のようにして規定することができる。
追従車両3の制御時に許容できる目標点5からのずれ量をあらかじめ設定し、この値がΔpであったとき1を出力するように設定する。例えば、0.3mを許容できるずれ量Δ
pであった場合、0.3kL1=1よりkL1=3.3となる。
【0058】
また、上ではkL1を乗算項として表現しているが、関数として表現してもよい。
関数とする場合は、例えば上記3.3を基本とし、Δpが大きい場合に出力を制限する
、図5のような関数となる。これは、Δpが極端に大きくなる可能性がある場合に、挙動
が不安定になるのを防ぐことができる。
挙動が不安定にならないようなkは、実験的に決定することができる。
【0059】
関数fstは、方位角φと相対角θの優先度を評価し、これを用いて最終旋回角度を出力する。
ここで、関数fstは、方位角φの比較に第1目標旋回角度ψを用い、目標点距離Δmが加味された方位角φ(即ちψ)と相対角θを比較する。
これにより、目標点5から遠く離れているような場合には、方位角φの影響度が大きくなり(第1目標旋回角度ψが大きく出力される)優先的に目標点5への収束を行う。
【0060】
また、ほぼ目標点5を満たしているような場合は、方位角φの影響度が小さくなり(第1目標旋回角度ψが小さく出力される)、優先的に相対角θを0にする。
関数fstは、相対的に調整された第1目標旋回角度ψと、相対角θとを、その符号と値の大小で比較し、判断を最終的に行って出力を決定する。
【0061】
kA1は、制御系のフィードバック比例定数であり、採択された角度(関数fstが出力した最終目標角度)を実現するためのフィードバックゲインである。更に、kA1に微分定数や積分定数を追加してもよい。
【0062】
ところで、従来の左右方向の制御としては、例えばレーンキープ装置として用いられるものがある。
これは、例えば白線を認識して、車線内にとどまるように制御する装置であるが、これも高速道路のように、曲率が小さい(旋回半径が大きい)道路で主に使用される装置であり、急激な旋回などには対応していない。
【0063】
また、左右方向の制御について制御の応答性を向上させるために、先行車両2からの操舵角等の旋回情報を取得してこれを用いてフィードフォワード制御を行うことも可能である。
しかし、フィードフォワード制御は、先行車両2と追従車両3の向きがほとんど変わらない場合は効果的に機能するが、向きの違いが大きくなるにつれ、追従制御の効果が薄れるばかりか、先行車両2と追従車両3が接触する可能性もある。
【0064】
従来の技術では、数メートルの車間距離を維持し、縦または横に並んで走行する車両への利用を考えた場合、応答性や車間距離の制御精度に問題があり、このままでは車両が接触する可能性がある。また制御定数を厳密に選択したとしても、特定の速度や、旋回半径など、限られた場合にしか使用できない装置となってしまい、実用的ではない。
【0065】
そこで、左右方向制御処理部75は、方位角φと相対角θの優先度を判定して、これら2つの角度によるきめの細かい制御を行うと共に、先行車両2と追従車両3が近接している場合には方位角φを制御する際のゲインを低くするなどして、先行車両2と追従車両3が接触する可能性を低減している。
【0066】
このように、左右方向制御処理部75は、追従車両3から目標点5への方位角φと、先行車両2と追従車両3の向きの差である相対角θとを用いて、最終旋回角度を目標相対角として算出し、これに対してフィードバック制御を行う。
そして、左右方向制御処理部75は、方位角φに対し、目標点5までの目標点距離Δmに応じたゲインkL1を乗じることで、目標点5の近傍での過度な反応を低減する。
更に、左右方向制御処理部75は、先行車両2から通信などで得た左右方向指令値uLLR(先行車制御量、より具体的には旋回角速度目標値、あるいは旋回半径目標値など)をもとに、フィードフォワード制御も同時に行い、制御量として統合する。
【0067】
図7は、ECU10が行う並列追従走行時の追従制御手順を説明するためのフローチャートである。
以下の処理は、ECU10のCPUが所定のプログラムに従って行うものである。
まず、追従車両3は、先行車両2の現在位置から目標点5の位置を算出する(ステップ5)。
次に、追従車両3は、前後方向指令値uFBを計算し(ステップ10)、更に、左右方向指令値uLRを計算する(ステップ15)。
そして、追従車両3は、前後方向指令値uFBを用いて前後方向の制御を行い、左右方向指令値uLRを用いて左右方向の制御を行う(ステップ17)。
以下、ECU10は、ステップ5〜17を繰り返す。
【0068】
図8は、前後方向制御処理部70が行う前後方向指令値計算処理の手順を説明するためのフローチャートである。
まず、追従車両3は、先行車両2との実車間距離aRを検出する(ステップ20)。
次に、追従車両3は、通信などにより先行車両2から左右方向指令値uLLRを受信する(ステップ25)。
【0069】
次に、追従車両3は、先行車両2との位置関係を把握する(ステップ30)。即ち、追従車両3は、レーザレーダ20を用いるなどして先行車両2を認識し、先行車両2の左右どちら側を並列走行しているか把握する。
追従車両3は、自車両の位置と、左右方向指令値uLLRから得られる旋回方向から、自車両が外周側になるのか、あるいは内周側になるのかを判断することができる。
【0070】
次に、追従車両3は、左右方向指令値uLLRから目標角速度ωを算出し(ステップ35)、実車間距離aRと目標角速度ωを車速増減関数fvtに入力して先行車両2に対する速度の増減分を算出する(ステップ40)。
更に、追従車両3は、先行車両2から受信した前後方向指令値uLFBを取得する(ステップ45)。
【0071】
そして、追従車両3は、前後偏差Δdを計算し(ステップ50)、車速増減関数fvtの出力、前後方向指令値uLFB、及び前後偏差Δdによるフィードバック制御信号を加えて前後方向指令値uFBを算出する(ステップ55)。
以上、前後方向制御処理部70が行う処理について説明したが、前後方向制御処理部73が行う処理も同様である。
【0072】
図9は、左右方向指令値計算処理の手順を説明するためのフローチャートである。
まず、追従車両3は、目標点距離Δmを算出し(ステップ60)、更に、方位角φを算出する(ステップ65)。
次に、追従車両3は、目標点距離ΔmにゲインとしてkL1を掛け(ステップ70)、更に、これに方位角φを掛けて第1目標旋回角度ψを算出する(ステップ75)。
【0073】
次に、追従車両3は、先行車両2との相対角θを算出し(ステップ80)、関数fstによる判定を行う(ステップ85)。
追従車両3は、第1目標旋回角度ψと相対角θの符号が異なる場合(ステップ85;Y)、追従車両3は、θ+ψを最終旋回角度とする(ステップ95)。
一方、第1目標旋回角度ψと相対角θの符号が同じ場合(ステップ85;N)、追従車両3は、相対角θの絶対値と第1目標旋回角度ψの絶対値を比較する(ステップ90)。
【0074】
比較の結果、相対角θの絶対値が第1目標旋回角度ψよりも小さかった場合(ステップ90;Y)、追従車両3は、第1目標旋回角度ψを最終旋回角度とし(ステップ100)、相対角θの絶対値が第1目標旋回角度ψ以上であった場合(ステップ90;N)、追従車両3は、相対角θを最終旋回角度とする(ステップ105)。
【0075】
このようにして最終旋回角度を決定した後、追従車両3は、左右方向指令値uLLRを取得し(ステップ110)、最終旋回角度にkA1を乗じた値と左右方向指令値uLLRを加算して左右方向指令値uLRを出力する(ステップ115)。
【0076】
以上に説明した本実施の形態により、次のような効果を得ることができる。
(1)追従車両3は、先行車両2に対して並走追従走行するにあたり、前後方向の制御に関しては、フィードバック制御に加えて、先行車両2からの前後方向指令値uLFBによるフィードフォワード制御を行うことができる。
そして、このフィードフォワード制御において、先行車両2が旋回する場合に必要な追従車両3の車速の増減を計算し、これを用いて前後方向指令値uLFBを補正することができる。
(2)補正した情報によりフィードフォワード制御するため、旋回中も、目標点5からのずれが小さく、フィードフォワード制御を効果的に持続することができる。
(3)目標加速度を用いてフィードフォワード制御する場合、先行車両2が旋回する場合に必要な追従車両3の車速の増減の微分に一次遅れの項を作用させることにより、フィードフォワード信号のインパルスを抑制することができる。
(4)追従車両3は、先行車両2に対して並走追従走行するにあたり、前後方向の制御に関しては、方位角φと相対角θを用いて最終旋回角を決定することができる。
(5)方位角φを収束させるためのゲインを目標点距離Δmによって変化させることができ、先行車両2と追従車両3が接近している場合に、方位角φが急激に変化して両車両が接触するのを防ぐことができる。
(6)先行車両2と追従車両3が所定の距離以上離れている場合には、方位角φを収束させるためのゲインが一定となり、方位角φの急激な変化を抑制している。
(7)非ホロノミック性をもつ車両において、前後方向、あるいは左右方向に短い車間距離で追従を行い、群走行を実現するシステムにおいて、前後方向制御と、左右方向制御の安定性を同時に保つことができる。
【0077】
また、本実施の形態は、次の構成を提供することができる。
先行車両に対して並走追従走行を行う車両であって、前記先行車両に追従するための目標点を取得する目標点取得手段と、自車両から前記取得した目標点への方位角を取得する方位角取得手段と、自車両と前記先行車両の進行方向の成す相対角を取得する相対角取得手段と、前記取得した方位角と相対角を用いて制御対象角を取得する制御対象角取得手段と、前記取得した制御対象角が収束するようにフィードバック制御するフィードバック手段と、を具備したことを特徴とする車両(第1の構成)。
自車両から前記取得した目標点までの目標点距離を取得する目標点距離取得手段を具備し、前記制御対象角取得手段は、前記取得した目標点距離が大きいほど、前記取得した方位角の前記制御対象角への寄与度を大きくすることを特徴とする第1の構成の車両(第2の構成)。
前記方位角の前記制御対象角への寄与度には上限が設けられていることを特徴とする第2の構成の車両(第3の構成)。
前記先行車両から旋回を制御するための旋回制御情報を取得する旋回制御情報取得手段と、前記取得した旋回制御情報を用いて前記制御対象角に対してフィードフォワード制御を行う旋回フィードフォワード手段と、を具備したことを特徴とする第1の構成、第2の構成、又は第3の構成の車両(第4の構成)。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】追従車両の構成を示した図である。
【図2】追従車両が行う前後方向の制御の基本概念を説明するための図である。
【図3】前後方向制御処理部の機能ブロック図である。
【図4】追従車両が行う左右方向の制御の基本概念を説明するための図である。
【図5】方位角φの寄与度の上限を説明するための図である。
【図6】左右方向制御処理部の機能ブロック図である。
【図7】並列追従走行時の追従制御手順を説明するためのフローチャートである。
【図8】前後方向指令値計算処理の手順を説明するためのフローチャートである。
【図9】左右方向指令値計算処理の手順を説明するためのフローチャートである。
【図10】従来例を説明するための図である。
【符号の説明】
【0079】
2 先行車両
3 追従車両
5 目標点
6 代表点
7 代表点
10 ECU
11 先行車両相対位置検出部
12 追従制御部
13 車両制御部
20 レーザレーダ
30 車速センサ
40 ヨーレートセンサ
50 無線通信装置
60a、60b 駆動モータ
70 前後方向制御処理部
71 フィードフォワード処理部
72 フィードバック処理部
73 前後方向制御処理部
74 フィードフォワード処理部
75 左右方向制御処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先行車両に対して並走追従走行を行う車両であって、
前記先行車両に追従するための目標点を取得する目標点取得手段と、
前記取得した目標点からの偏差に対してフィードバック制御を行うフィードバック手段と、
前記先行車両の車速を制御するための車速制御情報を取得する車速制御情報取得手段と、
前記取得した車速制御情報で規定される制御量を、前記先行車両に並走しながら旋回する際に必要な車速の増減量を用いて補正する補正手段と、
前記補正手段による補正後の制御量を用いてフィードフォワード制御を行うフィードフォワード手段と、
を具備したことを特徴とする車両。
【請求項2】
前記先行車両との距離を取得する距離取得手段と、
前記先行車両が行う旋回の角速度を取得する角速度取得手段と、
前記先行車両が旋回する際に、自車両が内周または外周の何れを走行するかを判断する判断手段と、
を具備し、
前記補正手段は、前記取得した距離と角速度を用いて補正量を取得し、前記判断手段が外周を走行すると判断した場合には、前記制御量を前記補正量だけ増加し、前記判断手段が内周を走行すると判断した場合には、前記制御量を前記補正量だけ減少させることを特徴とする請求項1に記載の車両。
【請求項3】
前記車速制御情報は、前記先行車両の加速度情報であり、
前記補正手段は、前記取得した距離と角速度の積を微分して補正量を取得し、
当該微分による補正量の急変を緩和する緩和手段を具備したことを特徴とする請求項2に記載の車両。
【請求項4】
自車両から前記取得した目標点への方位角を取得する方位角取得手段と、
自車両と前記先行車両の進行方向の成す相対角を取得する相対角取得手段と、
前記取得した方位角と相対角を用いて制御対象角を取得する制御対象角取得手段と、
を具備し、
前記フィードバック手段は、前記取得した制御対象角が収束するようにフィードバック制御することを特徴とする請求項1、請求項2、又は請求項3のうちの何れか1の請求項に記載の車両。
【請求項5】
自車両から前記取得した目標点までの目標点距離を取得する目標点距離取得手段を具備し、
前記制御対象角取得手段は、前記取得した目標点距離が大きいほど、前記取得した方位角の前記制御対象角への寄与度を大きくすることを特徴とする請求項4に記載の車両。
【請求項6】
前記方位角の前記制御対象角への寄与度には上限が設けられていることを特徴とする請求項5に記載の車両。
【請求項7】
前記先行車両から旋回を制御するための旋回制御情報を取得する旋回制御情報取得手段と、
前記取得した旋回制御情報を用いて前記制御対象角に対してフィードフォワード制御を行う旋回フィードフォワード手段と、
を具備したことを特徴とする請求項4、請求項5、又は請求項6に記載の車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−149636(P2010−149636A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−328615(P2008−328615)
【出願日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(591261509)株式会社エクォス・リサーチ (1,360)
【Fターム(参考)】