説明

車間距離制御装置

【課題】 車間時間または車間距離をステップ状に切り換えた時の車速変化を緩やかにする。
【解決手段】 車間時間がステップ状に切り換えられた時に、車間時間を所定の変化速度で変化させて目標車間時間T*を生成し、目標車間時間T*と車速検出値とに応じた目標車間距離を設定し、車間距離検出値が目標車間距離に一致するように車両の駆動力と制動力を制御する。これにより、車間時間をステップ状に切り換えた時の車速変化が緩やかになり、乗り心地をよくすることができる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、先行車との車間距離を目標車間距離に一致させる車間距離制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】レーザーレーダーにより先行車との車間距離を検出するとともに、車両の走行速度を検出し、車間距離と車速から現在の車間時間を求める。そして、現在の車間時間が車間時間切換スイッチにより設定された車間時間となるようにエンジン出力と変速比を制御する車間距離制御装置が知られている(例えば、特開平11−42957号公報参照)。
【0003】この車間距離制御装置では、車間時間切換スイッチを操作するたびに車間時間を長(2.4s)→中(2.0s)→短(1.8s)→長(2.4s)の順にサイクリックに切り換えている。なお、エンジンを始動した直後の初期状態には常に長(2.4s)の車間時間が設定される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の車間距離制御装置では、車間時間をステップ状に切り換えているので、車間時間切り換え時の車速に大きな加減速が発生し、乗り心地が悪くなるという問題がある。
【0005】本発明の目的は、車間時間または車間距離をステップ状に切り換えた時の車速変化を緩やかにすることにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】発明の第1の実施の形態を示す図1および図2に対応づけて請求項1〜4の発明を説明すると、(1) 請求項1の発明は、車間距離Lを検出する車間距離検出手段1と、車速Vを検出する車速検出手段2と、車間時間Toをステップ状に切り換える車間時間切換手段5と、車間時間Toがステップ状に切り換えられた時に、車間時間Toを所定の変化速度で変化させて目標車間時間T*を生成する目標車間時間生成手段21と、目標車間時間T*と車速検出値Vとに応じた目標車間距離L*を設定する目標車間距離設定手段21と、車間距離検出値Lが目標車間距離L*に一致するように車両の駆動力と制動力を制御する制御手段22〜25とを備える。
(2) 請求項2の車間距離制御装置は、目標車間時間生成手段21によって、車間時間Toを短くする場合の目標車間時間T*の変化速度を、車間時間Toを長くする場合の目標車間時間T*の変化速度よりも大きくするようにしたものである。
(3) 請求項3の車間距離制御装置は、目標車間時間生成手段21によって、車間時間Toを短くする場合に目標車間時間T*の変化速度を途中から大きくするようにしたものである。
(4) 請求項4の車間距離制御装置は、目標車間距離設定手段21は、予め定めた車間時間と車速に対する目標車間距離マップを備え、このマップから目標車間時間T*と車速検出値Vに対応する目標車間距離L*を表引き演算するようにしたものである。発明の第2の実施の形態を示す図7および図8に対応づけて請求項5〜9の発明を説明すると、(5) 請求項5の発明は、車間距離を検出する車間距離検出手段1と、車間距離をステップ状に切り換える車間距離切換手段5Aと、車間距離がステップ状に切り換えられた時に、車間距離を所定の変化速度で変化させて目標車間距離L*を生成する目標車間距離生成手段21Aと、車間距離検出値Lが目標車間距離L*に一致するように車両の駆動力と制動力を制御する制御手段22〜26とを備える。
(6) 請求項6の車間距離制御装置は、車速Vを検出する車速検出手段2と、車間距離切換手段5Aで切り換えられた車間距離を車速に応じて補正する車間距離補正手段31とを備え、目標車間距離生成手段21Aによって、車間距離がステップ状に切り換えられた時に、車間距離補正手段31により補正された車間距離Loを所定の変化速度で変化させて目標車間距離L*を生成するようにしたものである。
(7) 請求項7の車間距離制御装置は、目標車間距離生成手段21Aによって、車間距離を短くする場合の目標車間距離L*の変化速度を、車間距離を長くする場合の目標車間距離L*の変化速度よりも大きくするようにしたものである。
(8) 請求項8の車間距離制御装置は、目標車間距離生成手段21Aによって、車間距離を短くする場合に目標車間距離L*の変化速度を途中から大きくするようにしたものである。
(9) 請求項9の車間距離制御装置は、車間距離補正手段31は、予め定めた車速に対する車間距離マップを備え、このマップから車速検出値Vに対応する車間距離Loを表引き演算するようにしたものである。
【0007】上述した課題を解決するための手段の項では、説明を分かりやすくするために一実施の形態の図を用いたが、これにより本発明が一実施の形態に限定されるものではない。
【0008】
【発明の効果】(1) 請求項1の発明によれば、車間時間がステップ状に切り換えられた時に、車間時間を所定の変化速度で変化させて目標車間時間を生成し、目標車間時間と車速検出値とに応じた目標車間距離を設定し、車間距離検出値が目標車間距離に一致するように車両の駆動力と制動力を制御するようにしたので、車間時間をステップ状に切り換えた時の車速変化が緩やかになり、乗り心地をよくすることができる。
(2) 請求項2の発明によれば、車間時間を短くする場合の目標車間時間の変化速度を、車間時間を長くする場合の目標車間時間の変化速度よりも大きくした。車間時間を短くして先行車との車間距離を短くする場合に、目標車間時間の変化速度を大きくすると車間時間切り換え時の加速度が大きくなるが、ある程度大きな加速度で先行車との車間距離を縮めた方が、車間時間を短くして車間距離を縮めようとする乗員の意志に合致することになり、乗員の期待感を満足させることができる。一方、車間時間を長くして先行車との車間距離を長くする場合には、目標車間時間の変化速度を大きくすると車間時間の切り換え時に大きな減速度が発生し、乗員に違和感を与えるので、ゆっくりと減速して車間距離を徐々に拡大する方が望ましい。
(3) 請求項3の発明によれば、車間時間を短くする場合に目標車間時間の変化速度を途中から大きくするようにした。目標車間時間の変化速度を途中から大きくし、目標車間距離を急激に減少させると大きな加速度が発生するが、例えば車間時間を大幅に切り換える場合には乗員が車間距離をすばやく縮めようとしている場合であり、そのような乗員の期待感を満足させることができる。また、目標車間時間の変化速度を最初から大きくすると、車間時間切り換え直後から大きな加速度で加速されることになり、乗員に不安感を与えるおそれがある。したがって、目標車間時間の変化速度を途中から大きくすることによって、先行車に接近する際の加速度を緩やかに増して乗員に不安感を与えないようにしながら、車間時間の急激な短縮操作にともなう乗員の期待感を満足させることができる。
(4) 請求項4の発明によれば、予め定めた車間時間と車速に対する目標車間距離マップを備え、このマップから目標車間時間と車速検出値に対応する目標車間距離を表引き演算するようにしたので、車間時間と車速に対する目標車間距離を任意に設定することができる。
(5) 請求項5の発明によれば、車間距離がステップ状に切り換えられた時に、車間距離を所定の変化速度で変化させて目標車間距離を生成し、車間距離検出値が目標車間距離に一致するように車両の駆動力と制動力を制御するようにしたので、車間距離をステップ状に切り換えた時の車速変化が緩やかになり、乗り心地をよくすることができる。
(6) 請求項6の発明によれば、車間距離がステップ状に切り換えられた時に、車間距離補正手段により補正された車間距離を所定の変化速度で変化させて目標車間距離を生成するようにしたので、請求項5の上記効果に加え、車速に応じた車間距離を設定することができる。
(7) 請求項7の発明によれば、車間距離を短くする場合の目標車間距離の変化速度を、車間距離を長くする場合の目標車間距離の変化速度よりも大きくするようにした。先行車との車間距離を短くする場合に、目標車間距離の変化速度を大きくすると車間距離切り換え時の加速度が大きくなるが、ある程度大きな加速度で先行車との車間距離を縮めた方が、車間距離を縮めようとする乗員の意志に合致することになり、乗員の期待感を満足させることができる。また、先行車との車間距離を長くする場合には、目標車間距離の変化速度を大きくすると車間距離切り換え時に大きな減速度が発生し、乗員に違和感を与えるので、ゆっくりと減速して車間距離を徐々に拡大する方が望ましい。
(8) 請求項8の発明によれば、車間距離を短くする場合に目標車間距離の変化速度を途中から大きくするようにした。目標車間距離の変化速度を途中から大きくすると大きな加速度が発生するが、例えば車間距離を大幅に切り換える場合には乗員が車間距離をすばやく縮めようとしている場合であり、そのような乗員の期待感を満足させることができる。また、目標車間距離の変化速度を最初から大きくすると、車間距離切り換え直後から大きな加速度で加速されることになり、乗員に不安感を与えるおそれがある。したがって、目標車間距離の変化速度を途中から大きくすることによって、先行車に接近する際の加速度を緩やかに増して乗員に不安感を与えないようにしながら、車間距離の急激な短縮操作にともなう乗員の期待感を満足させることができる。
(9) 請求項9の発明によれば、予め定めた車速に対する車間距離マップを備え、このマップから車速検出値に対応する車間距離を表引き演算するようにしたので、車速に応じた車間距離を任意に設定することができる。
【0009】
【発明の実施の形態】《発明の第1の実施の形態》図1は第1の実施の形態の構成を示す。車間距離センサー1はレーザービームを車両前方の左右方向に走査して先行車からの反射光を受光し、先行車との車間距離L[m]を計測する。なお、電波や超音波により車間距離を計測するセンサーを用いてもよい。車速センサー2は変速機の出力軸に取り付けられ、その回転速度に応じた周期のパルス信号を出力する。この車速パルス信号の周期またはパルス数を計測することによって、車両の走行速度(車速)Vを検出することができる。また、スロットルセンサー3はスロットルバルブ開度θを検出し、さらにブレーキ液圧センサー4はブレーキ液圧Pを検出する。
【0010】車間時間切換スイッチ5は車間時間Toをステップ状に切り換えるスイッチであり、押すたびに車間時間Toが”遠”(2.4s)→”中”(2.0s)→”近”(1.8s)→”遠”(2.4s)の順にサイクリックに切り替わる。詳細を後述するが、この車間時間切換スイッチ5により設定された車間時間Toと車速Vとに基づいて目標車間距離L*が決定されるので、車間時間Toを目標車間距離L*に対応づけて直感的に理解させるために車間時間Toを”遠”、”中”、”近”と呼ぶ。
【0011】メインスイッチ6はコントローラー11や他の車間距離制御機器に電源を供給し、車間距離制御および車速制御の準備完了状態にする。セット/コーストスイッチ7は車間距離制御および車速制御の開始、目標車速V*の設定および目標車速V*の増加を行う操作スイッチであり、リジューム/アクセラレートスイッチ8は車間距離制御および車速制御の再開および目標車速V*の低減を行う操作スイッチである。さらに、キャンセルスイッチ9は車間距離制御および車速制御を解除するための操作スイッチである。ブレーキスイッチ10はブレーキペダルの踏み込みを検出するスイッチであり、このブレーキスイッチ10によりブレーキペダルの踏み込みが検出された時はキャンセルスイッチ9を操作した時と同様に車間距離制御および車速制御を解除する。
【0012】コントローラー11はCPU11aやメモリ11bなどの周辺部品を備え、スロットルアクチュエーター13、ブレーキアクチュエーター14、変速機アクチュエーター15を制御して車間距離制御と車速制御を行う。
【0013】スロットルアクチュエーター13はバキュームポンプ、ベントバルブ、セーフティバルブなどを備え、ポンプモーターやバルブソレノイドを駆動してスロットルバルブ開度θを調節し、エンジントルクすなわち車両の駆動力を制御する。ブレーキアクチュエーター14は負圧式ブースターを備え、ブレーキ液圧Pを調節して車両の制動力を制御する。変速機アクチュエーター15は変速機(不図示)の変速比rを切り換える。なお、変速機は有段変速機でも無段変速機でもよい。
【0014】図2は、第1の実施の形態の車間距離制御と車速制御を示す制御ブロック図である。コントローラー11のCPU11aは、ソフトウエアー形態で目標車間距離生成部21、車間距離制御部22、車速制御部23、スロットル制御部24、ブレーキ制御部25および変速機制御部26を構成する。
【0015】目標車間距離生成部21は、車間時間切換スイッチ5で設定された車間時間Toと車速センサー2により検出された車速Vとに基づいて、目標車間距離L*を生成する。上述したように、車間時間切換スイッチ5は車間時間Toを遠(2.2s)、中(1.8s)、近(1.4s)の3段階にステップ状にしか切り換えられないため、この車間時間Toを車速Vに応じた目標車間距離L*に変換すると、目標車間距離L*もステップ状に変化することになる。このようなステップ状に変化する目標車間距離L*により車間距離制御を行うと、車間時間切り換え時に車速Vに大きな加減速が発生し乗り心地を悪化させることになる。そこでこの実施の形態では、目標車間距離生成部21において、ステップ状に変化する車間時間Toに対して所定の変化速度で緩やかに変化する目標車間距離L*を生成する。
【0016】図3は、車間時間Toがステップ状に切り換えられた時の目標車間時間T*の変化を示す。この例では、車間時間Toが時刻t1で遠から中へ、時刻t2で中から近へ、時刻t3で近から遠へ、時刻t4で遠から近へ切り換えられた時の目標車間時間T*の変化を示す。この一実施の形態では、目標車間時間T*の変化速度は増加時(車間時間Toを長くする場合)も減少時(車間時間Toを短くする場合)も同一とし、例えば0.6sec/secとする。
【0017】目標車間距離生成部21では、ステップ状に変化する車間時間Toに対して緩やかに変化する目標車間時間T*を生成した後、時々刻々変化する目標車間時間T*を車速Vに応じた目標車間距離L*に変換する。
【0018】図4は目標車間時間T*と車速Vに対する目標車間距離L*を示す。この実施の形態では、図4に示す予め設定された目標車間距離マップを参照し、目標車間時間T*と車速Vとに応じた目標車間距離L*を表引き演算する。図において、車速Vが80km/h以上では、車速Vと目標車間時間T*とに基づいて次式により目標車間距離L*が設定されている。
【数1】
*[m]=V[km/h]・T*[s]・1000/3600また、車速Vが80km/h未満では、図に示すように車速Vが0近傍でも所定の目標車間距離L*を確保するように、目標車間距離マップが設定されている。
【0019】車間距離制御部22は、車間距離センサー1で検出される車間距離Lを目標車間距離L*に一致させるための目標車速V*を演算する。また、車速制御部23は、車速センサー2で検出される車速Vを目標車速V*に一致させるための目標スロットルバルブ開度θ*、目標ブレーキ液圧P*および目標変速比r*を演算する。さらにスロットル制御部24は、スロットルセンサー3により検出されるスロットルバルブ開度θが、目標スロットルバルブ開度θ*に一致するようにスロットルアクチュエーター13を制御する。ブレーキ制御部25は、ブレーキ液圧センサー4により検出されるブレーキ液圧Pが目標ブレーキ液圧P*に一致するようにブレーキアクチュエーター14を制御する。変速機制御部26は、変速機の変速比rが目標変速比r*となるように変速機アクチュエーター15を制御する。
【0020】このように、車間時間Toがステップ状に切り換えられた時に、車間時間を所定の変化速度で変化させて目標車間時間T*を生成し、目標車間時間T*と車速検出値Vとに応じた目標車間距離L*を設定し、車間距離検出値Lが目標車間距離L*に一致するように車両の駆動力と制動力を制御するようにしたので、車間時間Toをステップ状に切り換えた時の車速変化が緩やかになり、乗り心地をよくすることができる。
【0021】《第1の実施の形態の変形例》上述した第1の実施の形態では目標車間時間T*の変化速度を増加時も減少時も同一値0.6s/sとしたが、減少時(車間時間Toを短くする場合)は変化速度を大きくし、増加時(車間時間Toを長くする場合)は変化速度を小さくしてもよい。
【0022】図5は、変形例の車間時間Toの切り換えに対する目標車間時間T*の変化を示す。この例では、車間時間Toが時刻t11で遠から中へ、時刻t12で中から近へ、時刻t13で近から遠へ、時刻t14で遠から近へ切り換えられた時の目標車間時間T*の変化を示す。遠から中、中から近、あるいは遠から近へ車間時間を短くする、つまり車間距離を短くする場合には、目標車間時間T*の変化速度を大きくし、先行車への接近を速くする。逆に、近から中、中から遠、あるいは近から遠へ車間時間を長くする、つまり車間距離を長くする場合には、目標車間時間T*の変化速度を小さくし、車間距離を緩やかに増大させる。
【0023】車間時間を短くして先行車との車間距離を短くする場合に、目標車間時間T*の変化速度を大きくすると車間時間切り換え時の加速度が大きくなるが、車速制御部23において最大加速度αmaxが0.06G以下に制限されるので問題はない。この場合、ある程度大きな加速度で先行車との車間距離を縮めた方が、車間時間を短くして車間距離を縮めようとする乗員の意志に合致することになり、乗員の期待感を満足させることができる。一方、車間時間を長くして先行車との車間距離を長くする場合には、目標車間時間T*の変化速度を大きくすると車間時間の切り換え時に大きな減速度が発生し、乗員に違和感を与えるので、ゆっくりと減速して車間距離を徐々に拡大する方が望ましい。
【0024】《第1の実施の形態の他の変形例》車間時間Toが遠から近へ一気に切り換えられる場合は、車間距離を速く縮めようとする乗員の意志に合致させるために、目標車間時間T*の変化速度を途中からさらに大きくしてもよい。
【0025】図6は、他の変形例の車間時間Toの切り換えに対する目標車間時間T*の変化を示す。この例では、車間時間Toが時刻t21で遠から近へ一気に切り換えられた場合の目標車間時間T*の変化を示す。この場合、目標車間時間T*の変化速度を遠から近まで一定とせず、途中の中から近まで(t22〜t23)の変化速度を遠から中まで(t21〜t22)の変化速度よりも大きくする。
【0026】目標車間時間T*の変化速度を途中から大きくし、目標車間距離L*を急激に減少させると大きな加速度が発生するが、車速制御部23において最大加速度αmaxが0.06G以下に制限されるので問題はない。車間時間切換スイッチ5を遠から近へ一気に操作する場合は、乗員が車間距離をすばやく縮めようとしているのであり、この変形例によればそのような乗員の期待感を満足させることができる。なお、目標車間時間T*の変化速度を最初から大きくすると、車間時間切り換え直後から大きな加速度で加速されることになり、乗員に不安感を与えるおそれがある。したがって、目標車間時間T*の変化速度を途中から大きくすることによって、先行車に接近する際の加速度を緩やかに増して乗員に不安感を与えないようにしながら、車間時間の急激な短縮操作にともなう乗員の期待感を満足させることができる。
【0027】《発明の第2の実施の形態》上述した第1の実施の形態ではスイッチ5により車間時間Toをステップ状に切り換える例を示したが、スイッチ5により車間距離を切り換えるようにした第2の実施の形態を説明する。
【0028】図7は第2の実施の形態の構成を示す。なお、図1に示す第1の実施の形態の構成と同様な機器に対しては同一の符号を付して相違点を中心に説明する。車間距離切換スイッチ5Aは車間距離をステップ状に切り換えるスイッチであり、押すたびに車間距離が”遠”→”中”→”近”→”遠”の順にサイクリックに切り替わる。
【0029】図8は、第2の実施の形態の車間距離制御と車速制御の一部を示す制御ブロック図である。なお、図8には、図2に示す第1の実施の形態の制御ブロック図との相違点のみを図示する。コントローラー11AのCPU11aは、ソフトウエアー形態で車間距離補正部31、目標車間距離生成部21A、車間距離制御部22、車速制御部23、スロットル制御部24、ブレーキ制御部25および変速機制御部26を構成する。
【0030】車間距離補正部31は、車間距離切換スイッチ5Aで設定された車間距離を車速センサー2により検出された車速Vに応じて補正し、車間距離Loを求める。なお、遠、中、近に対応する車間距離を例えば車速120km/h程度を基準に定め、車速Vに応じて補正しないようにしてもよい。この場合は車間距離補正部31は不要である。
【0031】図9は車間距離の遠、中、近を車速Vに応じて補正した車間距離Loを示す。この実施の形態では、図9に示す予め設定された車間距離補正マップを参照し、車間距離の遠、中、近と車速Vとに応じた車間距離Loを表引き演算する。この車間距離補正マップは、車速V=80km/hにおける車間距離を基準にして定めたものである。すなわち、車速V=80km/hにおいて、車間距離”遠”の場合は車間時間を2.2sとして車間距離Lo=50mとし、”中”の場合は車間時間を1.8sとして車間距離Lo=40mとし、”近”の場合は車間時間を1.4sとして車間距離Lo=30mとする。なお、車間距離補正マップは、図に示すように車速Vが0近傍でも所定の車間距離Loを確保するように設定されている。
【0032】目標車間距離生成部21Aは、車速Vに応じて補正された車間距離Loを、所定の変化速度で変化させた目標車間距離L*を生成する。上述したように、車間距離切換スイッチ5Aは車間距離を遠、中、近の3段階にステップ状にしか切り換えられないため、この車間距離を車速Vに応じて補正した車間距離Loもステップ状に変化することになる。このようなステップ状に変化する車間距離Loにより車間距離制御を行うと、車間距離切り換え時に車速Vに大きな加減速が発生し乗り心地を悪化させることになる。そこでこの実施の形態では、目標車間距離生成部21Aにおいて、ステップ状に変化する車間距離Loに対して所定の変化速度で緩やかに変化する目標車間距離L*を生成する。
【0033】図10は、車間距離がステップ状に切り換えられた時の目標車間距離L*の変化を示す。この例では、車間距離が時刻t1で遠から中へ、時刻t2で中から近へ、時刻t3で近から遠へ、時刻t4で遠から近へ切り換えられた時の目標車間距離L*の変化を示す。この実施の形態では、目標車間距離L*の変化速度は増加時(車間距離を長くする場合)も減少時(車間距離を短くする場合)も同一とする。
【0034】目標車間距離生成部21Aで生成された目標車間距離L*は、図2に示す車間距離制御部22へ出力される。なお、車間距離制御部22以降の車速制御部23、スロットル制御部24、ブレーキ制御部25および変速機制御部26については図2に示す第1の実施の形態と同様であり説明を省略する。
【0035】このように、車間距離がステップ状に切り換えられた時に、車間距離を所定の変化速度で変化させて目標車間距離L*を生成し、車間距離検出値Lが目標車間距離L*に一致するように車両の駆動力と制動力を制御するようにしたので、車間距離をステップ状に切り換えた時の車速変化が緩やかになり、乗り心地をよくすることができる。
【0036】《第2の実施の形態の変形例》上述した第2の実施の形態では目標車間距離L*の変化速度を増加時も減少時も同一値としたが、減少時(車間距離を短くする場合)は変化速度を大きくし、増加時(車間距離を長くする場合)は変化速度を小さくしてもよい。
【0037】図11は、変形例の車間距離の切り換えに対する目標車間距離L*の変化を示す。この例では、車間距離が時刻t11で遠から中へ、時刻t12で中から近へ、時刻t13で近から遠へ、時刻t14で遠から近へ切り換えられた時の目標車間距離L*の変化を示す。遠から中、中から近、あるいは遠から近へ車間距離を短くする場合には、目標車間距離L*の変化速度を大きくし、先行車への接近を速くする。逆に、近から中、中から遠、あるいは近から遠へ車間距離を長くする場合には、目標車間距離L*の変化速度を小さくし、車間距離を緩やかに増大させる。
【0038】先行車との車間距離を短くする場合に、目標車間距離L*の変化速度を大きくすると車間距離切り換え時の加速度が大きくなるが、車速制御部23において最大加速度αmaxが0.06G以下に制限されるので問題はない。この場合、ある程度大きな加速度で先行車との車間距離を縮めた方が、車間距離を縮めようとする乗員の意志に合致することになり、乗員の期待感を満足させることができる。一方、先行車との車間距離を長くする場合には、目標車間距離L*の変化速度を大きくすると車間距離切り換え時に大きな減速度が発生し、乗員に違和感を与えるので、ゆっくりと減速して車間距離を徐々に拡大する方が望ましい。
【0039】《第2の実施の形態の他の変形例》車間距離が遠から近へ一気に切り換えられる場合は、車間距離を速く縮めようとする乗員の意志に合致させるために、目標車間距離L*の変化速度を途中からさらに大きくしてもよい。
【0040】図12は、他の変形例の車間距離の切り換えに対する目標車間距離L*の変化を示す。この例では、車間距離が時刻t21で遠から近へ一気に切り換えられた場合の目標車間距離L*の変化を示す。この場合、目標車間距離L*の変化速度を遠から近まで一定とせず、途中の中から近まで(t22〜t23)の変化速度を遠から中まで(t21〜t22)の変化速度よりも大きくする。
【0041】目標車間距離L*の変化速度を途中から大きくすると大きな加速度が発生するが、車速制御部23において最大加速度αmaxが0.06G以下に制限されるので問題はない。車間距離切換スイッチ5Aを遠から近へ一気に操作する場合は、乗員が車間距離をすばやく縮めようとしているのであり、この変形例によればそのような乗員の期待感を満足させることができる。なお、目標車間距離L*の変化速度を最初から大きくすると、車間距離切り換え直後から大きな加速度で加速されることになり、乗員に不安感を与えるおそれがある。したがって、目標車間距離L*の変化速度を途中から大きくすることによって、先行車に接近する際の加速度を緩やかに増して乗員に不安感を与えないようにしながら、車間距離の急激な短縮操作にともなう乗員の期待感を満足させることができる。
【0042】なお、上述した一実施の形態とその変形例では、単一の車間距離切換スイッチ5または車間距離切換スイッチ5Aを操作することによって遠→中→近→遠とサイクリックに車間時間または車間距離を切り換える例を示したが、遠、中、近と別個のスイッチを設けてもよい。また、車間時間および車間距離の切り換え段数は上述した遠、中、近の3段階に限定されず、2段階または4段階以上でもよい。さらに、車間時間切換スイッチ5で切り換える車間時間、および車間距離切換スイッチ5Aで切り換える車間距離の値は上述した実施の形態に限定されない。
【0043】上述した一実施の形態とその変形例では、車間時間または車間距離の切り換え時に必要に応じてブレーキアクチュエーター14により車両に制動力を発生させる例を示したが、車間時間または車間距離の切り換え時にはブレーキアクチュエーター14による制動力を用いず、エンジンブレーキのみにより制動力を発生させるか、あるいは、変速機アクチュエーター15により変速比rを切り換えてエンジンブレーキにより強力な制動力を発生させるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】 第1の実施の形態の構成を示す図である。
【図2】 第1の実施の形態の制御ブロック図である。
【図3】 車間時間切換スイッチによる車間時間Toの切り換えに対する目標車間距離T*の変化を示す図である。
【図4】 目標車間時間T*と車速Vに対する目標車間距離L*を示す図である。
【図5】 変形例の車間時間Toの切り換えに対する目標車間時間T*の変化を示す図である。
【図6】 変形例の車間時間Toの切り換えに対する目標車間時間T*の変化を示す図である。
【図7】 第2の実施の形態の構成を示す図である。
【図8】 第2の実施の形態の制御ブロック図である。
【図9】 車間距離遠、中、近を車速Vに応じて補正した車間距離Loを示す図である。
【図10】 車間距離がステップ状に切り換えられた時の目標車間距離L*の変化を示す図である。
【図11】 変形例の車間距離の切り換えに対する目標車間距離L*の変化を示す図である。
【図12】 他の変形例の車間距離の切り換えに対する目標車間距離L*の変化を示す図である。
【符号の説明】
1 車間距離センサー
2 車速センサー
3 スロットルセンサー
4 ブレーキ液圧センサー
5 車間時間切換スイッチ
5A 車間距離切換スイッチ
6 メインスイッチ
7 セット/コーストスイッチ
8 リジューム/アクセラレートスイッチ
9 キャンセルスイッチ
10 ブレーキスイッチ
11,11A コントローラー
11a CPU
11b メモリ
13 スロットルアクチュエーター
14 ブレーキアクチュエーター
15 変速機アクチュエーター
21,21A 目標車間距離生成部
22 車間距離制御部
23 車速制御部
24 スロットル制御部
25 ブレーキ制御部
26 変速機制御部
31 車間距離補正部

【特許請求の範囲】
【請求項1】車間距離を検出する車間距離検出手段と、車速を検出する車速検出手段と、車間時間をステップ状に切り換える車間時間切換手段と、車間時間がステップ状に切り換えられた時に、車間時間を所定の変化速度で変化させて目標車間時間を生成する目標車間時間生成手段と、目標車間時間と車速検出値とに応じた目標車間距離を設定する目標車間距離設定手段と、車間距離検出値が目標車間距離に一致するように車両の駆動力と制動力を制御する制御手段とを備えることを特徴とする車間距離制御装置。
【請求項2】請求項1に記載の車間距離制御装置において、前記目標車間時間生成手段は、車間時間を短くする場合の目標車間時間の変化速度を、車間時間を長くする場合の目標車間時間の変化速度よりも大きくすることを特徴とする車間距離制御装置。
【請求項3】請求項1または請求項2に記載の車間距離制御装置において、前記目標車間時間生成手段は、車間時間を短くする場合に目標車間時間の変化速度を途中から大きくすることを特徴とする車間距離制御装置。
【請求項4】請求項1〜3のいずれかの項に記載の車間距離制御装置において、前記目標車間距離設定手段は、予め定めた車間時間と車速に対する目標車間距離マップを備え、前記マップから目標車間時間と車速検出値に対応する目標車間距離を表引き演算することを特徴とする車間距離制御装置。
【請求項5】車間距離を検出する車間距離検出手段と、車間距離をステップ状に切り換える車間距離切換手段と、車間距離がステップ状に切り換えられた時に、車間距離を所定の変化速度で変化させて目標車間距離を生成する目標車間距離生成手段と、車間距離検出値が目標車間距離に一致するように車両の駆動力と制動力を制御する制御手段とを備えることを特徴とする車間距離制御装置。
【請求項6】請求項5に記載の車間距離制御装置において、車速を検出する車速検出手段と、前記車間距離切換手段で切り換えられた車間距離を車速に応じて補正する車間距離補正手段とを備え、前記目標車間距離生成手段は、車間距離がステップ状に切り換えられた時に、前記車間距離補正手段により補正された車間距離を所定の変化速度で変化させて目標車間距離を生成することを特徴とする車間距離制御装置。
【請求項7】請求項5または請求項6に記載の車間距離制御装置において、前記目標車間距離生成手段は、車間距離を短くする場合の目標車間距離の変化速度を、車間距離を長くする場合の目標車間距離の変化速度よりも大きくすることを特徴とする車間距離制御装置。
【請求項8】請求項5〜7のいずれかの項に記載の車間距離制御装置において、前記目標車間距離生成手段は、車間距離を短くする場合に目標車間距離の変化速度を途中から大きくすることを特徴とする車間距離制御装置。
【請求項9】請求項6〜8のいずれかの項に記載の車間距離制御装置において、前記車間距離補正手段は、予め定めた車速に対する車間距離マップを備え、前記マップから車速検出値に対応する車間距離を表引き演算することを特徴とする車間距離制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図6】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2001−1789(P2001−1789A)
【公開日】平成13年1月9日(2001.1.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−176896
【出願日】平成11年6月23日(1999.6.23)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】