説明

転がり軸受、保持器セグメントおよび風力発電機の主軸支持構造

【課題】異音の発生や、破損のおそれが少ない転がり軸受及び、転がり軸受に安定して配置される保持器セグメントを提供する。
【解決手段】保持器セグメント15aは、ころを収容する第1ポケット23a、23cおよび第2ポケット23bを形成するように軸に沿う方向に延びる複数の柱部22a、22b、22c、22dと、この複数の柱部を連結するように周方向に延びる連結部を含む。ここで、第1ポケットの周方向両側に位置する柱部の外径側には、第1ポケットに収容されたころの外径側への移動を制限する外径側ころ止め部24a、24b、24c、24dが設けられ、第2ポケットの周方向両側に位置する柱部22b、22cの内径側には、第2ポケットに収容されたころの内径側への移動を制限する内径側ころ止め部25a、25bが設けられる。これにより、保持器セグメント15aは、ころ案内となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、転がり軸受、保持器セグメントおよび風力発電機の主軸支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
転がり軸受は、一般的には、外輪と、内輪と、外輪と内輪との間に配置される複数のころと、複数のころを保持する保持器とから構成される。ころを保持する保持器については、その材質や製造方法等により、樹脂製保持器、プレス保持器、削り保持器、溶接保持器等、様々な種類があり、それぞれ用途や特性に応じて使い分けられている。また、保持器は通常、一体型、すなわち、環状の一つの部品で構成されている。
【0003】
ここで、風を受けるためのブレードが取り付けられた風力発電機の主軸を支持する転がり軸受については、大きな荷重を受ける必要があるため、転がり軸受自体も大型となる。そうすると、ころや保持器等の各構成部材も大型となり、部材の生産や組み立てが困難となる。このような場合、各部材を分割可能とすると、生産や組み立てが容易となる。
【0004】
保持器を軸に沿う方向に延びる分割線によって分割した分割型の保持器に関する技術が、ヨーロッパ特許公報1408248A2(特許文献1)に開示されている。図7は、特許文献1に開示された分割型の保持器である保持器セグメントを示す斜視図である。図7を参照して、保持器セグメント101aは、ころを収容する複数のポケット104を形成するように軸に沿う方向に延びる複数の柱部103と、複数の柱部103を連結するように周方向に延びる連結部102a、102bとを有する。各ポケット104の周方向両側に位置する柱部103の内径側には、ポケット104に収容されるころが内径側へ抜け出るのを防止する内径側ころ止め部が設けられている。一方、外径側には、ころが外径側へ抜け出るのを防止する外径側ころ止め部は設けられておらず、平らである。また、柱部103の外径側の端面には、外輪との距離を保つための突出部106aが設けられており、柱部103の内径側の端面には、内輪との距離を保つための突出部106b(図示せず)が設けられている。
【0005】
図8は、図7に示した保持器セグメント101aを含む転がり軸受の一部を示す断面図である。図7および図8を参照して、保持器セグメント101aを含む転がり軸受111の構成を説明すると、転がり軸受111は、外輪112と、内輪113と、複数のころ114と、複数のころ114を保持する複数の保持器セグメント101a、101b、101c等とを有する。複数のころ114は、最もころの挙動が安定する位置であるPCD(Pitch Circle Diameter)105付近において、複数の保持器セグメント101aによって保持されている。複数のころ114を保持する保持器セグメント101aは、周方向において隣接する同一形状の保持器セグメント101b、101cと、周方向の端面107が当接するように連なって組み合わされている。複数の保持器セグメント101a、101b、101c等が連なって組み合わされ、転がり軸受111に含まれる一つの環状の保持器が形成されている。
【特許文献1】ヨーロッパ特許公報EP1408248A2
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1によると、保持器セグメント101aは、柱部103の外径側端面に設けられた突出部106aおよび内径側端面に設けられた突出部106bによって、外輪112および内輪113からの距離を保っている。すなわち、保持器セグメント101aは、外輪112または内輪113によって案内される軌道輪案内である。
【0007】
上記したように、各保持器セグメント101a、101b、101c等は、独立しており、周方向に連結されていないため、保持器セグメント101a等が軌道輪案内である場合には、外輪112および内輪113の間で容易に移動し、径方向において、その位置は不安定となる。
【0008】
具体的には、たとえば、上記した構成の転がり軸受111を、横向きに配置して使用した場合、保持器セグメント101aが天の位置にあるときは、保持器セグメント101aは、下方向に移動し、下部に位置する内輪113の外径面115と柱部103の内径側端面に設けられた突出部106bとが接触して、内輪113に案内される内輪案内となる。一方、保持器セグメント101aが地の位置にあるときは、保持器セグメント101aは下方向に動き、下部に位置する外輪112の内径面116と柱部103の外径側端面に設けられた突出部106aとが接触して、外輪112に案内される外輪案内となる。
【0009】
このように、保持器セグメント101aが容易に径方向に移動し、転がり軸受111内における位置によって内輪案内となったり、外輪案内となったりすれば、保持器セグメント101aの径方向の位置が不安定となり、外輪112や内輪113と接するときに異音が発生したり、保持器セグメント101aが破損するおそれがある。
【0010】
この発明の目的は、異音の発生や、破損のおそれが少ない転がり軸受を提供することである。
【0011】
この発明の他の目的は、転がり軸受に安定して配置される保持器セグメントを提供することである。
【0012】
この発明のさらに他の目的は、異音の発生や、破損のおそれが少ない風力発電機の主軸支持構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明に係る転がり軸受は、複数のころと、複数のころを保持する保持器とを備える。上記した保持器は、軸に沿う方向に延びる分割線によって複数の保持器セグメントに分割されている。各保持器セグメントは、ころを収容する第1および第2ポケットを形成するように軸に沿う方向に延びる複数の柱部と、この複数の柱部を連結するように周方向に延びる連結部とを有する。柱部は、第1ポケット内に収容されたころの外径側への移動を制限する外径側ころ止め部と、第2ポケット内に収容されたころの内径側への移動を制限する内径側ころ止め部とを有する。
【0014】
このように構成することにより、保持器セグメントの柱部に設けられた外径側ころ止め部によって、保持器セグメントの内径側への移動が規制される。また、内径側ころ止め部によって、保持器セグメントの外径側への移動が規制される。その結果、保持器セグメントは、ころ案内となり、転がり軸受内において、安定して配置される。そうすると、保持器セグメントと外輪や内輪との接触による異音の発生や保持器セグメント等の破損を抑制することができる。ここで、第1ポケットとは、外径側へころが抜け出るのを防止する手段が設けられたポケットをいい、第2ポケットとは、内径側へころが抜け出るのを防止する手段が設けられたポケットをいう。また、保持器セグメントとは、一体型の環状の保持器を、軸に沿う方向に延びる分割線によって分割した単位体であり、ころを収容するポケットを2つ以上含むものである。すなわち、複数の保持器セグメントが周方向に連なって組み合わさり、1つの環状の保持器が形成される。
【0015】
保持器セグメントは、複数が集まって一つの環状の保持器を形成するため、その一つ一つの形状は小さく、かつ、単純である。したがって、製造が容易になり、生産性が向上するとともに、取扱い性や組み立て性も良好となる。
【0016】
好ましくは、第1ポケットと第2ポケットの間に配置される柱部は、外径側ころ止め部および内径側ころ止め部を有する。こうすることにより、外径側ころ止め部および内径側ころ止め部を、一つの柱部に設けることができるため、第1ポケットと第2ポケットとを隣接することができ、保持器セグメントに含まれるポケット数を少なくすることが可能となる。
【0017】
より好ましくは、保持器セグメントは、少なくとも3つポケットを有する。こうすることにより、第1ポケットまたは第2ポケットのいずれかを2つ以上含むことになる。そうすると、外径側ころ止め部または内径側ころ止め部についても、いずれかを2つ以上含むことになるため、転がり軸受内において、保持器セグメントがPCDに対して傾くおそれがなくなり、安定性をさらに向上することができる。
【0018】
さらに好ましくは、保持器セグメントは、樹脂製である。保持器セグメントは、一体型の保持器と比較して、小型であり、かつ、単純形状である。そうすると、保持器セグメントを樹脂製とすることにより、射出成型等による製造が可能になり、大量生産が容易になる。
【0019】
さらに好ましくは、ころは、円錐ころである。上記した風力発電機の主軸等に使用される大型の転がり軸受においては、大きなスラスト荷重やモーメント荷重、ラジアル荷重等を受ける必要があるため、ころを円錐ころとした円錐ころ軸受が適用される。このような円錐ころ軸受に適用されると、円錐ころ軸受が大型となった場合でも、生産性が良好になるとともに、保持器セグメントを安定して転がり軸受内に配置することができ、外輪等との接触による異音の発生等を抑制することができる。
【0020】
この発明の他の局面においては、保持器セグメントは、複数のころを保持し、軸に沿う方向に延びる分割線によって分割される。また、保持器セグメントは、ころを収容する第1および第2ポケットを形成するように軸に沿う方向に延びる複数の柱部と、この複数の柱部を連結するように周方向に延びる連結部とを有する。ここで、柱部は、第1ポケット内に収容されたころの外径側への移動を制限する外径側ころ止め部と、第2ポケット内に収容されたころの内径側への移動を制限する内径側ころ止め部とを有する。
【0021】
このような保持器セグメントは、ころによって案内されるため、転がり軸受の中で安定して配置される。そうすると、外輪や内輪との接触による異音の発生等が抑制されることになる。
【0022】
この発明のさらに他の局面においては、風力発電機の主軸支持構造は、風力を受けるブレードと、その一端がブレードに固定され、ブレードとともに回転する主軸と、固定部材に組み込まれ、主軸を回転自在に支持する転がり軸受とを有する。上記した転がり軸受は、複数のころと、複数のころを保持する保持器とを備える。保持器は、軸に沿う方向に延びる分割線によって複数の保持器セグメントに分割されている。各保持器セグメントは、ころを収容する第1および第2ポケットを形成するように軸に沿う方向に延びる複数の柱部と、この複数の柱部を連結するように周方向に延びる連結部とを有する。ここで、柱部は、第1ポケット内に収容されたころの外径側への移動を制限する外径側ころ止め部と、第2ポケット内に収容されたころの内径側への移動を制限する内径側ころ止め部とを有する。
【0023】
このような保持器セグメントを備える転がり軸受を有する風力発電機の主軸支持構造は、保持器セグメントが安定して配置されるため、異音が発生したり、破損したりするおそれは少なくなる。
【発明の効果】
【0024】
この発明によれば、保持器セグメントは、柱部に設けられた外径側ころ止め部によって、保持器セグメントの内径側への移動が規制される。また、柱部に設けられた内径側ころ止め部によって、保持器セグメントの外径側への移動が規制される。その結果、保持器セグメントは、ころ案内となり、転がり軸受内において、安定して配置される。そうすると、保持器セグメントと外輪や内輪との接触による異音の発生や保持器セグメント等の破損を抑制することができる。
【0025】
また、このような保持器セグメントは、ころによって案内されるため、転がり軸受の中で安定して配置される。そうすると、外輪や内輪との接触が低減する。
【0026】
さらに、このような保持器セグメントを備える転がり軸受を有する風力発電機の主軸支持構造は、保持器セグメントが安定して配置されるため、異音が発生したり、破損したりするおそれは少なくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、この発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図2は、この発明の一実施形態に係る保持器セグメントを示す斜視図である。図1は、図2に示す保持器セグメントを、図2中の矢印A−Aで示す断面において切断した断面図である。なお、図1においては、保持器セグメントが保持する複数のころを点線で示しており、理解の容易の観点から、連結部21a、21bは図示していない。
【0028】
図1および図2を参照して、保持器セグメント15aは、ころを収容する2つの第1ポケット23a、23cおよび1つの第2ポケット23bを形成するように軸に沿う方向に延びる4つの柱部22a、22b、22c、22dと、4つの柱部22a、22b、22c、22dを連結するように周方向に延びる連結部21a、21bとを含む。連結部21a、21bは、転がり軸受に組み込まれた際に、複数の保持器セグメント15a等が周方向に連なって一つの環状の保持器を形成するように、周方向において所定の曲率を有している。すなわち、保持器セグメント15aは、一体型の環状の保持器を、軸に沿う方向に延びる分割線によって第1および第2ポケット23a〜23cを含むように切断し、分割した形状である。なお、ここでは、連結部21a、21bを複数含むこととしたが、一つであっても構わない。
【0029】
第1ポケット23aの周方向両側に位置する柱部22a、22bの外径側には、第1ポケット23aに保持されるころの外径側への移動を制限する外径側ころ止め部24a、24bが設けられている。こうすることにより、保持器セグメント15aが軸の内径側、すなわち、図1中の矢印Bの方向へ動こうとしても、外径側ころ止め部24a、24bがころに引っ掛かり、保持器セグメント15aの内径側への移動を規制することができる。
【0030】
また、第1ポケット23aに隣接する第2ポケット23bの周方向両側に位置する柱部22b、22cの内径側には、第2ポケット23bに保持されるころの内径側への移動を制限する内径側ころ止め部25a、25bが設けられている。こうすることにより、保持器セグメント15aが軸の外径側、すなわち、図1中の矢印Bと逆の方向へ動こうとしても、内径側ころ止め部25a、25bがころに引っ掛かり、外径側への動きを規制することができる。
【0031】
さらに、第2ポケット23bに隣接する第1ポケット23cの周方向両側に位置する柱部22c、22dの外径側には、第1ポケット23cに保持されるころの外径側への移動を制限する外径側ころ止め部24c、24dが設けられている。こうすることにより、保持器セグメント15aが軸の内径側、すなわち、図3中の矢印Bの方向へ動こうとしても、外径側ころ止め部24c、24dがころに引っ掛かり、保持器セグメント15aの内径側への移動を規制することができる。
【0032】
以上より、保持器セグメント15aが、内径側へ動こうとしても第1ポケット23a、23cの外径側ころ止め部24a、24b、24c、24dが、ころに引っ掛り、内径側への動きが規制される。また、保持器セグメント15aが、外径側へ動こうとしても第2ポケット23bの内径側ころ止め部25a、25bが、ころに引っ掛り、外径側への移動が規制される。そうすると、保持器セグメント15aの径方向の動きは、ころによって規制される。このような構成とすることにより、保持器セグメント15aは、いわゆるころ案内となり、径方向の位置が安定して配置される。
【0033】
また、保持器セグメント15a等は、各々独立しているため、転がり軸受内において、PCD16に対し、傾くおそれがある。しかし、保持器セグメント15aは、合計3つの第1および第2ポケット、具体的には、保持器セグメント15aの両端に2つの第1ポケット23a、23cおよび保持器セグメント15aの中央に1つの第2ポケット23bを有するため、保持器セグメント15aがPCD16に対して傾くおそれは少なくなり、安定性は良好である。
【0034】
ここで、第1ポケット23aと第2ポケット23bとの間に位置する柱部22bは、その外径側に外径側ころ止め部24bを有し、内径側に内径側ころ止め部25aを有する。また、第2ポケット23bと第1ポケット23cとの間に位置する柱部22cについても同様に、その外径側に外径側ころ止め部24cを有し、内径側に内径側ころ止め部25bを有する。このように構成することにより、第1ポケット23a、23cと第2ポケット23bを隣接することができるとともに、全体として、保持器セグメント15aに含まれる第1および第2ポケットを少なくすることができる。
【0035】
図3は、図1、図2に示す保持器セグメント15aを備えた転がり軸受11の一部を示す断面図である。図1、図2および図3を参照して、転がり軸受11は、外輪12と、内輪13と、外輪12および内輪13との間に配置される複数のころ14a、14b、14cと、ころ14a等を保持する複数の保持器セグメント15a等とを備える。保持器セグメント15aに隣接する保持器セグメント15b、15cは、周方向において最も端にある柱部22a、22d等の外側の幅面26が対面するように、転がり軸受11内において周方向に配置される。保持器セグメント15a、15b、15c等を複数連ねて組み合わせることにより、一つの環状の保持器を形成する。
【0036】
上記したように、ころ案内である保持器セグメント15a等を備えることにより、転がり軸受11内において、保持器セグメント15a等は、径方向に安定して配置される。したがって、保持器セグメント15aのうち、柱部22a〜22dの径方向外側の端面27と外径側に位置する外輪12の内径面17との接触や、柱部22a〜22dの径方向内側の端面28と内径側に位置する内輪13の外径面18との接触による異音の発生は抑制される。また、これに伴って、保持器セグメント15aが、外輪12等との接触によって破損するおそれも少なくなる。
【0037】
なお、ここでは、保持器セグメント15aは、ころを収容する第1および第2ポケットを3つ有することにしたが、第1および第2ポケットをそれぞれ2つ以上、合計で4つ以上のポケットを有することにしてもよい。図4(A)および図4(B)は、第1および第2ポケットをそれぞれ2つ、合計で4つのポケットを有する保持器セグメントの断面図である。まず、図4(A)を参照して、保持器セグメント31は、2つの第1ポケット33a、33cおよび2つの第2ポケット33b、33dを形成するように軸に沿う方向に延びる複数の柱部32a、32b、32c、32d、32eと、複数の柱部32a、32b、32c、32d、32eを連結するように周方向に延びる連結部(図示せず)とを有する。第1ポケット33a、33cの周方向両側に位置する柱部32a、32b、32c、32dの外径側には、第1ポケット33a、33cに保持されるころの外径側への移動を制限する外径側ころ止め部34a、34b、34c、34dが設けられている。また、第2ポケット33b、33dの周方向両側に位置する柱部32b、32c、32d、32eの内径側には、第2ポケット33b、33dに保持されるころの内径側への移動を制限する内径側ころ止め部35a、35b、35c、35dが設けられている。
【0038】
こうすることにより、4つの第1および第2ポケット33a、33b、33c、33dのうち、隣接しない2つの第1ポケット33a、33cの柱部32a、32b、32c、32dに設けられた外径側ころ止め部34a、34b、34c、34dで、保持器セグメント31の内径側への動きを規制し、隣接しない2つの第2ポケット33b、33dの柱部32b、32c、32d、32eに設けられた内径側ころ止め部35a、35b、35c、35dで、保持器セグメント31の外径側への動きを規制することができる。したがって、交互に2つの第1および第2ポケットで外径側および内径側への動きを規制しているため、より安定して保持器セグメント31を配置することができるとともに、転がり軸受内において、保持器セグメント31がPCDに対して傾くおそれはさらに少なくなる。
【0039】
また、図4(B)に示すように、保持器セグメント36は、2つの第1ポケット37a、37dおよび2つの第2ポケット37b、37cを有し、隣接する第2ポケット37b、37cの周方向両側に位置する柱部38b、38c、38dに設けられた内径側ころ止め部で、外径側への動きを規制することができるようにし、保持器セグメント36の両端側に位置する第1ポケット37a、37dの周方向両側に位置する柱部38a、38b、38d、38eに設けられた外径側ころ止め部で、内径側への動きを規制することができるようにしてもよい。この場合も、2つの第1および第2ポケットで外径側および内径側への動きを規制することになるため、上記と同様に、より安定して保持器セグメント36を配置することができるとともに、転がり軸受内において、保持器セグメント36がPCDに対して傾くおそれはさらに少なくなる。
【0040】
なお、上記の実施の形態においては、保持器セグメントに収容されるころは、円筒状の円筒ころや、軸方向に徐々に径が大きくなる円錐ころを用いてもよい。円錐ころを用いた場合、保持器セグメントのうち、円錐ころに当接する柱部の壁面の間隔は、円錐ころの小径側端面から大径側端面に向かって徐々に大きくなるようにしてもよい。
【0041】
図5および図6は、上記した転がり軸受を主軸支持軸受45として適用した、風力発電機の主軸支持構造の一例を示している。主軸支持構造の主要部品を支持するナセル42のケーシング43は、高い位置で、旋回座軸受41を介して支持台40上に水平旋回自在に設置されている。風力を受けるブレード47を一端に固定する主軸46は、ナセル42のケーシング43内で、軸受ハウジング44に組み込まれた主軸支持軸受45を介して、回転自在に支持されている、主軸46の他端は増速機48に接続され、この増速機48の出力軸が発電機49のロータ軸に結合されている。ナセル42は、旋回用モータ50により、減速機51を介して任意の角度に旋回させられる。
【0042】
軸受ハウジング44に組み込まれた主軸支持軸受45は、この発明の一実施形態に係る転がり軸受であって、複数のころと、複数のころを保持する保持器とを備える。上記した保持器は、軸に沿う方向に延びる分割線によって複数の保持器セグメントに分割されている。各保持器セグメントは、ころを収容する第1および第2ポケットを形成するように軸に沿う方向に延びる複数の柱部と、この複数の柱部を連結するように周方向に延びる連結部とを有する。柱部は、第1ポケット内に収容されたころの外径側への移動を制限する外径側ころ止め部と、第2ポケット内に収容されたころの内径側への移動を制限する内径側ころ止め部とを有する。
【0043】
主軸支持軸受45は、大きな風力を受けるブレード47を一端に固定する主軸46を支持するため、大きな荷重がかかることになる。そうすると、主軸支持軸受45自体も大型にする必要がある。ここで、分割が可能な保持器セグメントを備える転がり軸受とすることにより、保持器の生産性、取扱い性、組み立て性が良好となるため、転がり軸受自体の生産性も良好となる。また、上記した保持器セグメントはころ案内であるため、径方向に安定して配置されるため、外輪や内輪等と接触することは少なくなり、接触に伴う異音の発生が抑制されるとともに、接触による破損のおそれも減少する。
【0044】
また、上記の実施の形態においては、保持器セグメントの周方向の端部が、柱部となるように分割されていたが、これに限らず、連結部において分割されていてもよい。このような場合、保持器セグメントは、隣接する保持器セグメントと、連結部において、連なることになる。
【0045】
なお、このような保持器セグメント15a等を備える転がり軸受を大型にした場合であっても、保持器セグメント15a等は小型であり、かつ、単純形状であるため、その材質を樹脂製とし、射出成型等することによって、容易に製造することができる。こうすることにより、生産性が良好となる。
【0046】
また、上記の実施の形態においては、保持器セグメント15aに含まれる連結部21a、21bは、予め所定の曲率を有するように構成している。しかし、連結部21a、21bを、可撓性のある樹脂等の部材で構成し、周方向に弾性を持たせ、製造時においては所定の曲率を有さず、真直ぐな形状とし、転がり軸受に組み込む際に、所定の曲率を持たせて組み込むことができるようにしてもよい。こうすることにより、製造時において、保持器セグメント15a等をより単純な形状とすることができ、さらに生産性等が良好となる。
【0047】
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示した実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0048】
この発明に係る保持器セグメントは、転がり軸受内において安定して配置され、この発明に係る転がり軸受は、保持器セグメントと外輪等との接触が少ないため、異音の抑制が要求される保持器セグメントおよび転がり軸受に有効に利用できる。また、この発明に係る風力発電機の主軸支持構造は、分割型である保持器セグメントが安定して配置される転がり軸受を含むため、大型で、異音の抑制が要求される場合に有効に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】この発明の一実施形態に係る保持器セグメントを、柱部を含む断面で切断した場合の断面図である。
【図2】この発明の一実施形態に係る保持器セグメントの斜視図である。
【図3】この発明の一実施形態に係る転がり軸受の一部を示す断面図である。
【図4】この発明の他の実施形態に係る保持器セグメントの断面図であり、(A)第1ポケットと第2ポケットが交互に設けられた場合、(B)第1ポケットと第2ポケットが交互に設けられていない場合を示す。
【図5】この発明に係る転がり軸受を用いた風力発電機の主軸支持構造の一例を示す図である。
【図6】図5に示す風力発電機の主軸支持構造の図解的側面図である。
【図7】従来における保持器セグメントの斜視図である。
【図8】図7に示す保持器セグメントを、柱部を含む断面で切断した場合の断面図である。
【符号の説明】
【0050】
11 転がり軸受、12 外輪、13 内輪、14a,14b,14c ころ、15a,15b、15c,31,36 保持器セグメント、16 PCD、17 内径面、18 外径面、21a,21b 連結部、22a,22b,22c,22d,32a,32b,32c,32d,32e,38a,38b,38c,38d,38e 柱部、23a,23c,33a,33c,37a,37d 第1ポケット、23b,33b,33d,37b,37c 第2ポケット、24a,24b,24c,24d,34a,34b,34c,34d 外径側ころ止め部、25a,25b,35a,35b,35c,35d 内径側ころ止め部、26 幅面、27,28 端面、40 支持台、41 旋回座軸受、42 ナセル、43 ケーシング、44 軸受ハウジング、45 主軸支持軸受、46 主軸、47 ブレード、48 増速機、49 発電機、50 旋回用モータ、51 減速機。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のころと、前記複数のころを保持する保持器とを備える転がり軸受であって、
前記保持器は、軸に沿う方向に延びる分割線によって複数の保持器セグメントに分割されており、
前記各保持器セグメントは、ころを収容する第1および第2ポケットを形成するように軸に沿う方向に延びる複数の柱部と、この複数の柱部を連結するように周方向に延びる連結部とを有し、
前記柱部は、前記第1ポケット内に収容されたころの外径側への移動を制限する外径側ころ止め部と、前記第2ポケット内に収容されたころの内径側への移動を制限する内径側ころ止め部とを有する、転がり軸受。
【請求項2】
前記第1ポケットと前記第2ポケットの間に位置する柱部は、前記外径側ころ止め部および前記内径側ころ止め部を有する、請求項1に記載の転がり軸受。
【請求項3】
前記保持器セグメントは、少なくとも3つのポケットを有する、請求項1または2に記載の転がり軸受。
【請求項4】
前記保持器セグメントは、樹脂製である、請求項1〜3のいずれかに記載の転がり軸受。
【請求項5】
前記ころは、円錐ころである、請求項1〜4のいずれかに記載の転がり軸受。
【請求項6】
複数のころを保持し、軸に沿う方向に延びる分割線によって分割される保持器セグメントであって、
前記保持器セグメントは、ころを収容する第1および第2ポケットを形成するように軸に沿う方向に延びる複数の柱部と、この複数の柱部を連結するように周方向に延びる連結部とを有し、
前記柱部は、前記第1ポケット内に収容されたころの外径側への移動を制限する外径側ころ止め部と、前記第2ポケット内に収容されたころの内径側への移動を制限する内径側ころ止め部とを有する、保持器セグメント。
【請求項7】
風力を受けるブレードと、
その一端が前記ブレードに固定され、ブレードとともに回転する主軸と、
固定部材に組み込まれ、前記主軸を回転自在に支持する転がり軸受とを有する風力発電機の主軸支持構造であって、
前記転がり軸受は、複数のころと、前記複数のころを保持する保持器とを備え、
前記保持器は、軸に沿う方向に延びる分割線によって複数の保持器セグメントに分割されており、
前記各保持器セグメントは、ころを収容する第1および第2ポケットを形成するように軸に沿う方向に延びる複数の柱部と、この複数の柱部を連結するように周方向に延びる連結部とを有し、
前記柱部は、前記第1ポケット内に収容されたころの外径側への移動を制限する外径側ころ止め部と、前記第2ポケット内に収容されたころの内径側への移動を制限する内径側ころ止め部とを有する、風力発電機の主軸支持構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−170538(P2007−170538A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−368588(P2005−368588)
【出願日】平成17年12月21日(2005.12.21)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】