輪郭形状測定装置
【課題】 生産現場においても、短時間で自動的にころの輪郭形状を精度良く測定し、形状評価が行える輪郭形状測定装置を提供する。
【解決手段】 被測定物支持手段1により支持されたころWに対し、センサ移動機構4によりセンサ3を軸方向および垂直方向に移動させ、センサ3の先端の測定子2をころWに接触させる。測定動作制御手段はセンサ移動機構4に一連の測定動作を行わせ、測定値記憶手段はころWの軸方向複数箇所のセンサ3の測定値を記憶する。判定手段は、測定値記憶手段に記憶されたころWの測定結果と、前記寸法データとを比較する。
【解決手段】 被測定物支持手段1により支持されたころWに対し、センサ移動機構4によりセンサ3を軸方向および垂直方向に移動させ、センサ3の先端の測定子2をころWに接触させる。測定動作制御手段はセンサ移動機構4に一連の測定動作を行わせ、測定値記憶手段はころWの軸方向複数箇所のセンサ3の測定値を記憶する。判定手段は、測定値記憶手段に記憶されたころWの測定結果と、前記寸法データとを比較する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、円筒ころ軸受、針状ころ軸受の構成部品である「ころ」の輪郭形状を精度良く測定できる輪郭形状測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図8は、円筒ころ軸受、針状ころ軸受の構成部品であるころの外観図である。一般的にころは円筒状であり、両端面に近い部分がクラウニングと呼ばれる曲面(同図の点線L1で表される部分)となっている。この点線L1で示した部分の寸法および形状が、軸受の負荷容量や寿命等の性能に大きく影響する。このため、ころのクラウニング形状を正しく管理することが軸受の性能を維持していく上で非常に大切である。そのために、輪郭形状を精度良く測定できる測定装置が必要となる。
【0003】
測定装置としては、例えば、株式会社東京精密の表面粗さ・輪郭形状測定機、サーフコムシリーズ(非特許文献1)や、株式会社ミツトヨの輪郭形状測定機、コントレーサシリーズ(非特許文献2)等が市販されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】株式会社東京精密 表面粗さ・輪郭形状測定機 製品カタログ http://www.accretech.jp/pdf/measuring/sfcm30a.pdf
【非特許文献2】株式会社ミツトヨ 輪郭形状測定機 製品カタログ Catalog No.4362(3) http://www.mitutoyo.co.jp/products/keijyou_rinkaku/cv_3100_4100.pdf
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これらの測定装置では、測定子がころ表面に押付けられ、ころ表面上を走査しながらころの輪郭形状を測定する。これら市販の測定装置は、ころの輪郭形状を十分な精度で測定できる性能を有するが、以下に示す問題がある。
図9は、市販の測定装置で測定したころの輪郭形状の測定結果の例を示す図である。図10(A)は、ころ、およびこのころを載置支持するワーク台が正しく設置された例を示す図である。図10(B)は、ワーク台に対してころが傾いて設置された例を示す図、図10(C)は、ワーク台が測定子の移動方向と平行に設置されていない例を示す図である。
【0006】
図10(B),(C)の状態でころWの輪郭形状を測定すると、図9に示すように、ころ軸方向に対するころ直径方向の測定結果が、不所望に傾いた結果となってしまう。このことは実際の作業現場では十分起こり得ることである。
ころのクラウニング部の形状の評価は、通常、図11に示すように、ころの端面30からころ軸方向所定の位置X1でのD値で判定する。このD値は、ころ外径面から前記位置X1までの径方向寸法を指す。ところが、図9のように、ころ軸方向に対するころ直径方向の測定結果が傾いた結果であると、前記D値が即座に判定できない。従来は、これを解決するために、以下の(1)や(2)の手法で対処してきた。
【0007】
(1)ワーク台に傾き調整機構を設け、ころの輪郭形状を測定する前に、ころを含むワーク台と測定子の移動方向とが平行となるように傾き調整を機械的に行う。この後、ころの輪郭形状の測定を実施する。
(2)ころの輪郭形状測定後に、この測定データをパーソナルコンピュータ等の記録装置に取り込んで、作業者がこのパーソナルコンピュータの演算部にて演算してころ輪郭の傾き補正を行う。
【0008】
ところが、実際の生産現場でころの輪郭形状を測定する場合、
(1)の手法では手間つまり時間がかかり、ころの生産効率が低下する。
(2)の手法は生産現場では行えず、一旦作業を中断する必要が生じる。
また、(1),(2)共に人手が必要であり、全自動での測定が困難であった。
【0009】
この発明の目的は、生産現場においても、短時間で自動的にころの輪郭形状を精度良く測定し、形状評価が行える輪郭形状測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明の輪郭形状測定装置は、ころ軸受の構成部品であるころWの輪郭形状を測定する測定装置であって、前記ころWを所定の位置および姿勢に支持する被測定物支持手段1と、この被測定物支持手段1に支持されたころWの輪郭形状を測定するセンサ3と、このセンサ3を、前記被測定物支持手段1に前記所定の位置および姿勢に支持されたころWの軸方向、およびこの軸方向に直交する垂直方向に移動させるセンサ移動機構4と、前記ころWの軸方向に沿って前記センサ3が走査するように、前記センサ移動機構4に一連の測定動作を行わせる測定動作制御手段5と、前記センサ3の走査の過程で前記ころWの軸方向複数箇所における前記センサ3の測定値を取り込んで記憶する測定値記憶手段6と、測定対象であるころWの目標値とする寸法データを記憶する目標寸法記憶手段7と、前記測定値記憶手段6に記憶されたころWの測定結果と前記目標寸法記憶手段7に記憶されたころWの寸法データとを比較し、測定されたころWの輪郭形状の良否を判定する判定手段8とを有することを特徴とする。
【0011】
この構成によると、ころWは被測定物支持手段1により支持される。この支持されたころWに対し、センサ移動機構4によりセンサ3を前記軸方向および垂直方向に移動させる。測定動作制御手段5は、センサ移動機構4に一連の測定動作を行わせ、センサ3を前記ころWの輪郭に沿って走査させる。測定値記憶手段6はころWの軸方向複数箇所のセンサ3の測定値を取り込んで記憶する。ところで目標寸法記憶手段7には、測定対象であるころWの目標値とする寸法データ、例えばころWの製作図面のデータが記憶されている。判定手段8は、測定値記憶手段6に記憶されたころWの測定結果と、前記寸法データとを比較する。これにより、判定手段8は、測定されたころWの輪郭形状の良否を判定する。このように、ころWの目標値とする寸法データを予め目標寸法記憶手段7に記憶しておき、実際の測定結果と比較するため、適切な形状評価が行える。このように、センサ移動機構4を介してセンサ3を走査させる測定動作制御手段5、およびセンサ3の測定値を取り込んで記憶する測定値記憶手段6を設け、かつ判定手段8を設けたので、生産現場においても、完全に全自動でころWの輪郭形状の測定から評価まで、従来のものより短時間で行える。
【0012】
前記判定手段8は、前記ころWの姿勢はころWの軸方向の傾きを含む場合に、前記測定値記憶手段6に記憶されたセンサ3の測定値に基づいて、前記ころWの軸方向の傾き誤差を補正する傾き誤差補正部8aと、この傾き誤差補正部8aで補正された補正データと前記寸法データとを比較する判定部8bとを有するものであっても良い。
【0013】
この場合において、前記傾き誤差補正部8aは、前記ころWの直線部分の測定箇所における2点以上の測定点を用いて、前記ころWの軸方向の傾き誤差を補正する機能を有するものであっても良い。例えば、ころWの直線部の両端位置、またはこの両端位置よりころ軸方向内側になる2点の位置が測定位置a、bとして設定される。ころWが傾きのない状態でその輪郭形状をセンサ3により測定すると、2点a、bの測定値は同じ変位値となるはずである。ころ設置時の傾きや、被測定物支持手段1自体の傾き等がある場合、2点a、bの測定値に差を生じる。この2点a、bの測定値の差から、判定手段8の傾き誤差補正部8aは、ころWの軸方向の傾き誤差を補正する。この補正後、判定部8bは、補正データと寸法データとを比較してころWの輪郭形状の良否を判定する。この場合、ころWの傾き調整を機械的に行う必要がなく、その分従来技術のものより、周辺設備を簡略化でき、かつ形状測定にかかる時間短縮を図ることができる。また、傾き誤差を補正するとき、測定作業等を一旦中断する必要もなく、サイクルタイムの短縮を図ることも可能となる。
【0014】
前記傾き誤差補正部8aは、前記傾き誤差の補正に用いる測定点の位置を、目標寸法記憶手段7に記憶されたそれぞれのころ軸受またはころの型番毎の寸法データから自動的に決定しても良い。この場合、演算処理負荷の軽減を図ることが可能となる。
【0015】
前記傾き誤差補正部8aは、前記ころWの軸方向の傾き誤差を補正するとき、この補正量が所定の閾値以上となった場合に測定値を無効とする機能を有するものであっても良い。ころWが例えば異物を挟んで支持された場合、ころWが安定して固定されず、測定中にころWが動き誤測定をしてしまう可能性がある。そこで、傾き誤差を補正するとき、通常の測定では起こりえない想定外の大きな傾きが算出された場合の測定値を「異常」と判断する。すなわち、補正量が所定の閾値以上となった場合に、この測定値を「異常」と判断し無効とした。
【0016】
前記センサ3は、ころWに接触させる測定子2を備えた接触式の変位センサであっても良い。この測定子2をころWに接触させつつセンサ3をころWの輪郭に沿って走査させ、この測定子2の機械的変位を例えば電磁誘導等を利用して電気信号に変換する。
【0017】
センサ移動機構4の駆動源ma,mbとして、例えば位置検出器を含むモータ等が適用される。前記のようにセンサ3をころWの輪郭に沿って走査させると、センサ3のころ軸方向位置に対応する信号が位置検出器により出力されると共に、同センサ3の直交方向位置に対応する信号が位置検出器により出力される。センサ3のころ軸方向位置に対応する信号に基づく値を、ころWの輪郭の軸方向座標として測定値記憶手段6に記憶する。また、センサ3の直交方向位置に対応する信号と、前記測定子2自身の機械的変位に基づく電気信号との和により算出される値を、関係設定手段またはテーブル等に照らして、ころWの輪郭の径方向座標として前記軸方向座標と共に測定値記憶手段6に記憶する。
【0018】
前記センサ3の測定子2の先端部分を、測定対象であるころWの形状に応じて付け替え可能としても良い。ころWの形状に応じて、測定子2の先端部分の形状、寸法等を変えて使用することで、ころWの輪郭形状をより安定して計測することが可能となる。
【0019】
前記センサ3は、ころWに接触させない非接触方式のセンサ3であっても良い。
前記非接触方式のセンサ3は、レーザレンサであっても良い。
前記非接触方式のセンサ3は、静電容量センサであっても良い。
前記非接触方式のセンサ3は、磁気式センサであっても良い。
これらの場合、測定時にころWに傷を付ける心配がなく、製品の歩留まりを高めることができる。
【発明の効果】
【0020】
この発明の輪郭形状測定装置は、ころ軸受の構成部品であるころの輪郭形状を測定する測定装置であって、前記ころを所定の位置および姿勢に支持する被測定物支持手段と、この被測定物支持手段に支持されたころの輪郭形状を測定するセンサと、このセンサを、前記被測定物支持手段に前記所定の位置および姿勢に支持されたころの軸方向、およびこの軸方向に直交する垂直方向に移動させるセンサ移動機構と、前記ころの軸方向に沿って前記センサが走査するように、前記センサ移動機構に一連の測定動作を行わせる測定動作制御手段と、前記センサの走査の過程で前記ころの軸方向複数箇所における前記センサの測定値を取り込んで記憶する測定値記憶手段と、測定対象であるころの目標値とする寸法データを記憶する目標寸法記憶手段と、前記測定値記憶手段に記憶されたころの測定結果と前記目標寸法記憶手段に記憶されたころの寸法データとを比較し、測定されたころの輪郭形状の良否を判定する判定手段とを有する。このため、生産現場においても、短時間で自動的にころの輪郭形状を精度良く測定し、形状評価が行える。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】この発明の一実施形態に係る輪郭形状測定装置の構成を表す図である。
【図2】同輪郭形状測定装置の制御系のブロック図である。
【図3】同輪郭形状測定装置の動作説明図である。
【図4】同輪郭形状測定装置で得られた傾き補正前の測定値を示す図である。
【図5】同測定値を傾き補正した後のデータを示す図である。
【図6】この発明の他の実施形態に係る傾き補正の説明図である。
【図7】ころとワーク台との間にごみが挟まった場合の要部拡大図である。
【図8】ころ軸受の構成部品である「ころ」の外観図である。
【図9】従来の測定装置で測定したころの輪郭形状の測定結果の例を示す図である。
【図10】(A)は、ころ、およびこのころを載置支持するワーク台が正しく設置された例を示す図、(B)は、ワーク台に対してころが傾いて設置された例を示す図、(C)は、ワーク台が測定子の移動方向と平行に設置されていない例を示す図である。
【図11】ころの輪郭形状の評価を行う図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
この発明の一実施形態を図1ないし図5と共に説明する。この実施形態に係る輪郭形状測定装置は、例えば、円筒ころ軸受、針状ころ軸受の構成部品である「ころ」の輪郭形状を測定する装置である。以下の説明は、輪郭形状測定方法についての説明をも含む。図1に示すように、輪郭形状測定装置は、主に、測定装置本体Mと、制御ユニットCUと、出力手段9とを有する。
【0023】
測定装置本体Mについて説明する。
図1に示すように、測定装置本体Mは、被測定物支持手段1と、センサ3と、センサ移動機構4とを有する。被測定物支持手段1は、ころWを所定の位置および姿勢に支持するものであり、ワーク台12、ころ押え13,13、および、ばね部材14を備える。ワーク台12は例えば直方体状に形成され、このワーク台12の上面にころWが載置可能になっている。ワーク台12の上面から上方に立ち上がる柱部15,15が、後述する測定子2の移動方向(図1矢符X方向)に所定距離離隔して平行に配置される。対向する柱部15,15のうち一方の柱部15の内側面部に、ころ押え13が固着される。他方の柱部15の内側面部に、例えば円筒状のガイド部材(図示せず)が設けられ、且つ、このガイド部材内で移動可能に支持される圧縮コイルばねから成るばね部材14が設けられる。このばね部材14の一端が前記柱部15の内側面部に固定され、このばね部材14の他端にころ押え13が固定される。
【0024】
柱部15および前記ガイド部材により、一対のころ押え13,13は、測定子2の移動方向に平行で且つ一直線上に配置される。各ころ押え13の基端部が、柱部15の内側面部またはばね部材14に固着され、各ころ押え13の先端部が凸曲線形状である。ころ外周面の直線部がワーク台12の上面に載置されると共に、これらころ押え13の先端部間にころWが保持され、ころWの両端面が、ばね部材14の付勢力でもって両ころ押えの先端部により挟持される。よって、ころWが所定の位置および姿勢に支持される。なお、ころWをワーク台12に載置する動作は手動、自動のいずれでも良い。自動の場合、ローディング装置(図示せず)を設ける。
【0025】
センサ3は、図1の例では、前記支持されたころWに対して、同センサ先端の測定子2を接触させてころWの輪郭形状を測定する接触式の変位センサが適用される。この変位センサは、ケーシング3aと、このケーシング3aから突出する測定子2と、この測定子2の変位量を検出する検出手段とを有する。例えば、変位センサは、電気マイクロメータ等から成り、ケーシング3aと、このケーシング3aに内蔵される差動トランス3bと、この差動トランス3bのコア3baに繋がりケーシング3aから突出する測定子2と、ケーシング3a内に設けられ且つ測定子2を測定対象の輪郭に追従して接触させる付勢力を与えるばね部材3cとを有する。測定子2がころWに接触して変位すると、この測定子2に繋がるコア3baがばね部材3cの付勢力に抗して移動し、変位が電気信号として取り出される。
【0026】
センサ移動機構4は、センサ3を、前記所定の位置および姿勢に支持されたころWの軸方向(図1矢符X方向)、およびこの軸方向に直交する垂直方向(図1矢符Y方向)に移動させる。すなわち、センサ移動機構4は、ワーク台12を跨ぐ門形のフレーム16と、Xテーブル装置11と、Yテーブル装置10と、駆動源ma,mbとを有する。各駆動源ma(mb)は、例えば位置検出器ma1(mb1)を含むサーボモータ等である。Xテーブル装置11は、移動体であるXテーブル11aと、このXテーブル11aを図1X方向に案内する案内部材11bと、X方向に移動させるボールねじ機構18とを有する。
【0027】
フレーム16のうち脚部16a,16aに、梁部16bが架設されている。この梁部16bにおける長手方向つまりX方向に沿って、ボールねじ機構18のねじ軸が回転可能に設置される。前記ねじ軸は駆動源mbにより回転駆動可能である。Xテーブル11aには、ボールねじ機構18のナット部が設けられ、Xテーブル11aは、梁部16bに対しX方向に案内自在に支持される。よって、Xテーブル11aは、駆動源mbによりボールねじ機構18を介して図1X方向に移動可能に構成される。
【0028】
Yテーブル装置10は、移動体であるYテーブル10aと、このYテーブル10aを図1Y方向に案内する案内部材10bと、Y方向に移動させるボールねじ機構19とを有する。前記Xテーブル11aにおけるY方向に沿って、ボールねじ機構19のねじ軸が回転可能に設置される。前記ねじ軸は駆動源maにより回転駆動可能である。Yテーブル10aには、ボールねじ機構19のナット部が設けられ、Yテーブル10aは、Xテーブル11aに対しY方向に案内自在に支持される。よって、Yテーブル10aは、駆動源maによりボールねじ機構19を介して図1Y方向に移動可能に構成される。このYテーブル10aに、前記センサ3が取り付けられている。
【0029】
制御ユニットCUについて説明する。
制御ユニットCUは、例えば、コンピュータと、このコンピュータの記録媒体等に格納されて実行されるプログラムとでなる。図2に示すように、制御ユニットCUは、測定動作制御手段5と、測定値記憶手段6と、目標寸法記憶手段7と、判定手段8とを有する。測定動作制御手段5は、上記プログラムの一部となるプログラムを備え、このプログラムにより、前記支持されたころWの軸方向の少なくとも複数箇所に、センサ3の測定子2(図1)が順次接するように、センサ移動機構4に一連の測定動作を行わせる。この測定動作のプログラムは、例えば、オペレータのティーチング操作等により、ころWの型番毎にセンサ3を試験的に移動させて、そのセンサ3の移動軌跡を再現できるように、駆動源ma,mb(図1)を制御するプログラムである。測定値記憶手段6は、センサ3の測定値を取込んで記憶する手段である。測定値の取込みは、設定されたX方向のサンプリング間隔、または時間的なサンプリング間隔毎に行ってもよく、また設定されたX方向位置で行うようにしてもよい。測定値記憶手段6によるセンサ3の測定値の記憶は、センサ3のX方向位置と共に行ってもよい。
【0030】
具体的には、オペレータが測定開始スイッチSWをオンにすると、図3(1),(2)に示すように、センサ3がころWに対しX方向およびY方向に離隔した初期位置P1から、データ取得前の準備位置P2に移行する。このセンサ3の準備位置P2は、例えば、センサ3を初期位置P1からころWに近づくようにY方向に移動させた位置であって、その後、センサ3をX方向に移動させることにより、測定子2がころWの表面に倣って突没可能な位置である。図1〜図3に示すように、測定動作制御手段5は、前記プログラムに基づいて駆動源ma,mbを駆動制御することで、X,Yテーブル11a,10aを図1XおよびY方向に移動させ、センサ3を初期位置P1から準備位置P2に移動させる。
その後、測定動作制御手段5は、前記プログラムに基づいて駆動源mbのみ駆動制御することでXテーブル11aを図1X方向に移動させ、図3(3)〜(5)に示すように、センサ3を準備位置P2から順次データ取得開始位置P3、途中位置P4、データ取得終了位置P5に移動させる。このセンサ3の移動により、測定子2がころWの表面に倣って突没し、ころWの輪郭に沿って移動する。
【0031】
図3(3)〜(5)に示すように、測定動作制御手段5(図2)の制御により、測定子2をころ軸方向に走査すると、センサ3のX方向位置に対応する信号が駆動源mbの位置検出器mb1により出力されると共に、同センサ3のY方向位置に対応する信号が駆動源maの位置検出器ma1により出力される。
【0032】
また、図3(3)〜(5)に示すように、測定子2がころWに接触して変位すると、この測定子2に繋がるコア3baがばね部材3cの付勢力に抗して移動し、変位が電気信号として取り出される。この取り出された電気信号と、位置検出器ma1により出力される信号との和により算出される値が、ころWの輪郭の径方向座標となる。この径方向座標は、位置検出器mb1により出力される信号により得られるころWの輪郭の軸方向座標と共に、関連付けて測定値記憶手段6に記憶される。この場合において、一つの軸方向座標に関連付けられた一つの径方向座標が、所定のサンプリング間隔毎に複数個記憶される形態であっても良い。また、互いに関連付けられた軸方向および径方向座標が、連続的または間欠的に記憶される形態であっても良い。なお、測定動作制御手段5は、センサ3をデータ取得終了位置P5に移動させた後、駆動源ma,mbを駆動制御してX,Yテーブル11a,10aを移動させ、センサ3をころWから離隔した離隔位置P6,P7に順次移動させる。
【0033】
目標寸法記憶手段7は、測定対象であるころWの目標値とする寸法データを記憶する。前記寸法データは、目標寸法およびこの目標寸法に対する許容値を含む。この目標寸法に対する許容値は、関連付けられた軸方向および径方向座標として記憶されても良いし、ころWの任意の軸方向位置に対する径方向位置が一義的に求められる関数式等から成るものとして記憶されても良い。
例えば、目標寸法に対する許容値が座標として記憶される場合、ある軸方向座標に関連付けられた、目標寸法となる径方向座標が記憶されると共に、この径方向座標の負側公差と正側公差とが記憶される。この例では、直線部、クラウニング部共に、目標寸法となる径方向座標が記憶されると共に、この径方向座標の負側公差と正側公差とが記憶される。これら軸方向座標、径方向座標、負側公差、および正側公差は、ころWの製作図面のデータから軸受の型番またはころWの型番毎に予め入力し目標寸法記憶手段7に記憶しておく。
【0034】
前記測定値記憶手段6は、センサ3の信号を取り込む信号取込み動作と、この信号に得られた座標を記憶する2つの機能とを有する。測定子2がころWに接触して変位したとき、測定値記憶手段6は前記信号取込み動作を開始しする。その後、測定子2がころWから離れて変位しなくなると、測定値記憶手段6は前記信号取込み動作を終了する。
【0035】
判定手段8は、測定値記憶手段6に記憶されたころWの測定結果と、目標寸法記憶手段7に記憶されたころWの寸法データとを比較し、測定されたころWの輪郭形状の良否を判定する判定部8bを有する。この判定部8bによる判定結果は出力手段9に出力される。出力手段9は、例えば、モニタ(ディスプレイと同義)によって実現される。ただし、出力手段9はモニタだけに限定されるものではなく、プリンタ等であっても良い。
【0036】
判定手段8は、前記ころWの測定結果と、目標寸法記憶手段7に記憶されたころWの寸法データとを比較演算する演算プログラム等からなる。この演算プログラムは、上記コンピュータの記録媒体等に格納されて実行されるプログラムの一部である。
判定手段8は、測定値記憶手段6に関連付けて記憶された、ころWのクラウニング部の軸方向座標および径方向座標が、この軸方向座標における目標寸法に対する許容値に入っているか否かを判定する。換言すれば、判定手段8は、クラウニング部において、測定値記憶手段6に記憶された一つの軸方向座標に関連付けられた径方向座標(図5のD値)が、目標寸法記憶手段7に記憶された前記軸方向座標に関連付けられた、径方向座標の負側公差と正側公差との間に収まっているか否かを判断してころWの輪郭形状の良否を判定する。
判定手段8は、径方向座標(図5のD値)が決められた負側公差と正側公差との間に収まっていないとの判断で、ころ「不良」と判定し、その旨、出力手段9に出力させる。逆に判定手段8は、D値が決められた寸法の公差内にあるとの判断で、ころ「良」と判定し、その旨、出力手段9に出力させる。
【0037】
また、判定手段8は、測定値記憶手段6に記憶されたセンサ3の測定値に基づいて、ころWの軸方向の傾き誤差を補正する傾き誤差補正部8aを有する。つまり、センサ3の測定子2を図3(3)〜(5)に示すようにころWの輪郭に沿って移動させると、図4に示すような測定データが得られる。例えば、ころ設置時の傾きや、ワーク台12の傾き等によって、通常、傾きのある測定結果が得られる。図4の2点a,bの測定位置は、目標寸法記憶手段7に記憶された寸法データから、それぞれのころ軸受またはころWの型番の「ころ」毎に、ころWの直線部Laの両端位置、またはこれら両端位置よりころ軸方向内側になるように設定される。2点a,bの測定位置はころ測定前に目標寸法記憶手段7に入力されている。例えば、目標寸法記憶手段7には、ころ軸受またはころWの型番毎に目標寸法と共に前記2点a,bの測定位置を記憶させておき、適宜の入力手段からの入力で型番を選択することにより、その選択された型番の目標寸法および測定位置a,bが、判定手段8による判定対象として用いられる。
【0038】
ころWがころ軸方向に対し傾きのない状態で測定子2により測定された場合、前記2点a,bは同じ変位値、つまりセンサ3での測定値となるはずである。ころWがころ軸方向に対し傾いて設置された場合、2点a,bの測定値に差が生じる。
ここで、点aの位置であるX方向座標をax、このaxにおけるセンサ3の測定値をayとする。点bの位置であるX方向座標をbx、このbxにおけるセンサ3の測定値をbyとすると、ころWの傾きは以下の式で与えられる。
傾き値=(by−ay)/(bx−ax)
傾き誤差補正部8aは、得られた傾き値から、全ての点での測定データを傾き補正する。具体的には、例えば、全座標に関し、a点を基準として前記傾き値の角度分、図4矢符L2の方向に回転させる傾き補正を施す。矢符L2の回転方向とは、X軸およびY軸にそれぞれ直交する軸回りの回転方向である。この傾き補正により、図5の結果を得る。その後、判定手段8の判定部8bは、前述のように、ころWの輪郭形状の良否を行う。
【0039】
以上説明した輪郭形状測定装置によると、支持されたころWに対し、センサ移動機構4によりセンサ3をころ軸方向およびころ直径方向に移動させ、センサ3の測定子2を前記ころWに接触させる。測定動作制御手段5は、図3(3)〜(5)に示すようにセンサ移動機構4に一連の測定動作を行わせ、この間、測定値記憶手段6は、ころWの軸方向複数箇所のセンサ3の測定値を連続して取り込んで記憶する。判定手段8は、測定値記憶手段6に記憶されたころWの測定結果と、目標寸法記憶手段7に記憶された寸法データとを比較する。これにより、判定手段8は、測定されたころWの輪郭形状の良否を判定する。このように、ころWの目標値とする寸法データを予め目標寸法記憶手段7に記憶しておき、実際の測定結果と比較するため、適切な形状評価が行える。このように、センサ移動機構4を介してセンサ3を走査させる測定動作制御手段5、およびセンサ3の測定値を取り込んで記憶する測定値記憶手段6を設け、かつ判定手段8を設けたので、生産現場においても、完全に全自動でころWの輪郭形状の測定から評価まで、従来のものより短時間で行える。
【0040】
測定値記憶手段6に記憶されたセンサ3の測定値に基づいて、判定手段8は、前記ころWの軸方向の傾き誤差を補正し、この補正データと前記寸法データとを比較し得る。このため、ころWの傾き調整を機械的に行う必要がなく、その分従来技術よりも、周辺設備を簡略化でき、かつ形状測定にかかる時間短縮を図ることができる。傾き誤差を補正するとき、測定作業等を一旦中断する必要もなく、サイクルタイムの短縮を図ることも可能となる。
判定手段8が、傾き誤差の補正に用いる測定点の位置を、目標寸法記憶手段7に記憶されたそれぞれの型番毎の寸法データから自動的に決定する場合、演算処理負荷の軽減を図ることが可能となる。
【0041】
この発明の他の実施形態について説明する。
前述の実施形態では、傾き補正を前記2点a,bの測定結果から行っているが、2点a,bに限定されるものではない。傾き補正の精度をより上げるため、例えば、図6に示すように、3点以上(この例ではa,b,c,dの4点)の測定値から直線式Lbを導き出して、その直線式Lbの傾きαから傾き値を求めて傾き補正を行っても良い。
【0042】
判定手段8の傾き誤差補正部8aは、前記ころWの軸方向の傾き誤差を補正するとき、この補正量が所定の閾値以上となった場合に測定値を無効とする機能を有するものであっても良い。この輪郭形状測定装置で、ころWの輪郭形状を測定するとき、図7に示すように、ころWとワーク台12との間にゴミ等の異物17が挟まった場合、ころWが安定して固定されない。つまり測定中にころWが不所望に動き、誤測定をしてしまう可能性がある。そこで、本装置では、傾き補正を行うとき、通常の測定では起こりえない想定外に大きな傾き値が算出された場合、判定手段8の判定部8bは、この測定値を異常と判断し無効とする。この無効とした測定値の良否判定を行う必要がなくなるので、作業効率を高めることが可能となる。
【0043】
センサ3の測定子2の先端部分を、測定対象であるころWの形状に応じて付け替え可能としても良い。
測定子の先端部は球状の形状であるが、ころWのクラウニングの曲面半径Rの大きさに応じて、先端球部の半径Rのサイズを変える。例えば、クラウニングの曲面半径Rが小さい場合は、測定子の球部半径Rが大きいと測定誤差が発生するため、できるだけ小さな球部半径Rの測定子を使用することが望ましい。
逆に小さな球部半径Rの測定子は、破損しやすいなどの欠点もある。よって、用途により先端球部の半径Rの異なる測定子を使いわけることが必要となる。
ころWの形状に応じて、測定子2の先端部分の形状、寸法等を変えて使用することで、ころWの輪郭形状をより安定して計測することが可能となる。
前記各実施形態では、先端に測定子2を装備した接触方式のセンサ3を使用しているが、この接触方式のセンサ3の代わりに非接触方式の測定センサを使用しても良い。この非接触方式の測定センサとして、例えば、レーザセンサ、静電容量センサ、磁気センサ等を用途、精度に応じて使用することが可能である。非接触方式の測定センサを使用する場合、ころWに傷を付ける心配がなく、製品の歩留まりを高めることができる。
駆動源ma(mb)は、位置検出器を含まないモータであっても良い。例えば、このモータの出力するパルス信号により、センサ3のX方向位置、Y方向位置を検出し、ころWの輪郭形状を得るようにしても良い。
この発明の輪郭形状測定装置を用いて、軸受の構成部品以外のころの輪郭形状を測定することも可能である。
【符号の説明】
【0044】
1…被測定物支持手段
2…測定子
3…センサ
4…センサ移動機構
5…測定動作制御手段
6…測定値記憶手段
7…目標寸法記憶手段
8…判定手段
8a…傾き誤差補正部
8b…判定部
W…ころ
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、円筒ころ軸受、針状ころ軸受の構成部品である「ころ」の輪郭形状を精度良く測定できる輪郭形状測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図8は、円筒ころ軸受、針状ころ軸受の構成部品であるころの外観図である。一般的にころは円筒状であり、両端面に近い部分がクラウニングと呼ばれる曲面(同図の点線L1で表される部分)となっている。この点線L1で示した部分の寸法および形状が、軸受の負荷容量や寿命等の性能に大きく影響する。このため、ころのクラウニング形状を正しく管理することが軸受の性能を維持していく上で非常に大切である。そのために、輪郭形状を精度良く測定できる測定装置が必要となる。
【0003】
測定装置としては、例えば、株式会社東京精密の表面粗さ・輪郭形状測定機、サーフコムシリーズ(非特許文献1)や、株式会社ミツトヨの輪郭形状測定機、コントレーサシリーズ(非特許文献2)等が市販されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】株式会社東京精密 表面粗さ・輪郭形状測定機 製品カタログ http://www.accretech.jp/pdf/measuring/sfcm30a.pdf
【非特許文献2】株式会社ミツトヨ 輪郭形状測定機 製品カタログ Catalog No.4362(3) http://www.mitutoyo.co.jp/products/keijyou_rinkaku/cv_3100_4100.pdf
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これらの測定装置では、測定子がころ表面に押付けられ、ころ表面上を走査しながらころの輪郭形状を測定する。これら市販の測定装置は、ころの輪郭形状を十分な精度で測定できる性能を有するが、以下に示す問題がある。
図9は、市販の測定装置で測定したころの輪郭形状の測定結果の例を示す図である。図10(A)は、ころ、およびこのころを載置支持するワーク台が正しく設置された例を示す図である。図10(B)は、ワーク台に対してころが傾いて設置された例を示す図、図10(C)は、ワーク台が測定子の移動方向と平行に設置されていない例を示す図である。
【0006】
図10(B),(C)の状態でころWの輪郭形状を測定すると、図9に示すように、ころ軸方向に対するころ直径方向の測定結果が、不所望に傾いた結果となってしまう。このことは実際の作業現場では十分起こり得ることである。
ころのクラウニング部の形状の評価は、通常、図11に示すように、ころの端面30からころ軸方向所定の位置X1でのD値で判定する。このD値は、ころ外径面から前記位置X1までの径方向寸法を指す。ところが、図9のように、ころ軸方向に対するころ直径方向の測定結果が傾いた結果であると、前記D値が即座に判定できない。従来は、これを解決するために、以下の(1)や(2)の手法で対処してきた。
【0007】
(1)ワーク台に傾き調整機構を設け、ころの輪郭形状を測定する前に、ころを含むワーク台と測定子の移動方向とが平行となるように傾き調整を機械的に行う。この後、ころの輪郭形状の測定を実施する。
(2)ころの輪郭形状測定後に、この測定データをパーソナルコンピュータ等の記録装置に取り込んで、作業者がこのパーソナルコンピュータの演算部にて演算してころ輪郭の傾き補正を行う。
【0008】
ところが、実際の生産現場でころの輪郭形状を測定する場合、
(1)の手法では手間つまり時間がかかり、ころの生産効率が低下する。
(2)の手法は生産現場では行えず、一旦作業を中断する必要が生じる。
また、(1),(2)共に人手が必要であり、全自動での測定が困難であった。
【0009】
この発明の目的は、生産現場においても、短時間で自動的にころの輪郭形状を精度良く測定し、形状評価が行える輪郭形状測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明の輪郭形状測定装置は、ころ軸受の構成部品であるころWの輪郭形状を測定する測定装置であって、前記ころWを所定の位置および姿勢に支持する被測定物支持手段1と、この被測定物支持手段1に支持されたころWの輪郭形状を測定するセンサ3と、このセンサ3を、前記被測定物支持手段1に前記所定の位置および姿勢に支持されたころWの軸方向、およびこの軸方向に直交する垂直方向に移動させるセンサ移動機構4と、前記ころWの軸方向に沿って前記センサ3が走査するように、前記センサ移動機構4に一連の測定動作を行わせる測定動作制御手段5と、前記センサ3の走査の過程で前記ころWの軸方向複数箇所における前記センサ3の測定値を取り込んで記憶する測定値記憶手段6と、測定対象であるころWの目標値とする寸法データを記憶する目標寸法記憶手段7と、前記測定値記憶手段6に記憶されたころWの測定結果と前記目標寸法記憶手段7に記憶されたころWの寸法データとを比較し、測定されたころWの輪郭形状の良否を判定する判定手段8とを有することを特徴とする。
【0011】
この構成によると、ころWは被測定物支持手段1により支持される。この支持されたころWに対し、センサ移動機構4によりセンサ3を前記軸方向および垂直方向に移動させる。測定動作制御手段5は、センサ移動機構4に一連の測定動作を行わせ、センサ3を前記ころWの輪郭に沿って走査させる。測定値記憶手段6はころWの軸方向複数箇所のセンサ3の測定値を取り込んで記憶する。ところで目標寸法記憶手段7には、測定対象であるころWの目標値とする寸法データ、例えばころWの製作図面のデータが記憶されている。判定手段8は、測定値記憶手段6に記憶されたころWの測定結果と、前記寸法データとを比較する。これにより、判定手段8は、測定されたころWの輪郭形状の良否を判定する。このように、ころWの目標値とする寸法データを予め目標寸法記憶手段7に記憶しておき、実際の測定結果と比較するため、適切な形状評価が行える。このように、センサ移動機構4を介してセンサ3を走査させる測定動作制御手段5、およびセンサ3の測定値を取り込んで記憶する測定値記憶手段6を設け、かつ判定手段8を設けたので、生産現場においても、完全に全自動でころWの輪郭形状の測定から評価まで、従来のものより短時間で行える。
【0012】
前記判定手段8は、前記ころWの姿勢はころWの軸方向の傾きを含む場合に、前記測定値記憶手段6に記憶されたセンサ3の測定値に基づいて、前記ころWの軸方向の傾き誤差を補正する傾き誤差補正部8aと、この傾き誤差補正部8aで補正された補正データと前記寸法データとを比較する判定部8bとを有するものであっても良い。
【0013】
この場合において、前記傾き誤差補正部8aは、前記ころWの直線部分の測定箇所における2点以上の測定点を用いて、前記ころWの軸方向の傾き誤差を補正する機能を有するものであっても良い。例えば、ころWの直線部の両端位置、またはこの両端位置よりころ軸方向内側になる2点の位置が測定位置a、bとして設定される。ころWが傾きのない状態でその輪郭形状をセンサ3により測定すると、2点a、bの測定値は同じ変位値となるはずである。ころ設置時の傾きや、被測定物支持手段1自体の傾き等がある場合、2点a、bの測定値に差を生じる。この2点a、bの測定値の差から、判定手段8の傾き誤差補正部8aは、ころWの軸方向の傾き誤差を補正する。この補正後、判定部8bは、補正データと寸法データとを比較してころWの輪郭形状の良否を判定する。この場合、ころWの傾き調整を機械的に行う必要がなく、その分従来技術のものより、周辺設備を簡略化でき、かつ形状測定にかかる時間短縮を図ることができる。また、傾き誤差を補正するとき、測定作業等を一旦中断する必要もなく、サイクルタイムの短縮を図ることも可能となる。
【0014】
前記傾き誤差補正部8aは、前記傾き誤差の補正に用いる測定点の位置を、目標寸法記憶手段7に記憶されたそれぞれのころ軸受またはころの型番毎の寸法データから自動的に決定しても良い。この場合、演算処理負荷の軽減を図ることが可能となる。
【0015】
前記傾き誤差補正部8aは、前記ころWの軸方向の傾き誤差を補正するとき、この補正量が所定の閾値以上となった場合に測定値を無効とする機能を有するものであっても良い。ころWが例えば異物を挟んで支持された場合、ころWが安定して固定されず、測定中にころWが動き誤測定をしてしまう可能性がある。そこで、傾き誤差を補正するとき、通常の測定では起こりえない想定外の大きな傾きが算出された場合の測定値を「異常」と判断する。すなわち、補正量が所定の閾値以上となった場合に、この測定値を「異常」と判断し無効とした。
【0016】
前記センサ3は、ころWに接触させる測定子2を備えた接触式の変位センサであっても良い。この測定子2をころWに接触させつつセンサ3をころWの輪郭に沿って走査させ、この測定子2の機械的変位を例えば電磁誘導等を利用して電気信号に変換する。
【0017】
センサ移動機構4の駆動源ma,mbとして、例えば位置検出器を含むモータ等が適用される。前記のようにセンサ3をころWの輪郭に沿って走査させると、センサ3のころ軸方向位置に対応する信号が位置検出器により出力されると共に、同センサ3の直交方向位置に対応する信号が位置検出器により出力される。センサ3のころ軸方向位置に対応する信号に基づく値を、ころWの輪郭の軸方向座標として測定値記憶手段6に記憶する。また、センサ3の直交方向位置に対応する信号と、前記測定子2自身の機械的変位に基づく電気信号との和により算出される値を、関係設定手段またはテーブル等に照らして、ころWの輪郭の径方向座標として前記軸方向座標と共に測定値記憶手段6に記憶する。
【0018】
前記センサ3の測定子2の先端部分を、測定対象であるころWの形状に応じて付け替え可能としても良い。ころWの形状に応じて、測定子2の先端部分の形状、寸法等を変えて使用することで、ころWの輪郭形状をより安定して計測することが可能となる。
【0019】
前記センサ3は、ころWに接触させない非接触方式のセンサ3であっても良い。
前記非接触方式のセンサ3は、レーザレンサであっても良い。
前記非接触方式のセンサ3は、静電容量センサであっても良い。
前記非接触方式のセンサ3は、磁気式センサであっても良い。
これらの場合、測定時にころWに傷を付ける心配がなく、製品の歩留まりを高めることができる。
【発明の効果】
【0020】
この発明の輪郭形状測定装置は、ころ軸受の構成部品であるころの輪郭形状を測定する測定装置であって、前記ころを所定の位置および姿勢に支持する被測定物支持手段と、この被測定物支持手段に支持されたころの輪郭形状を測定するセンサと、このセンサを、前記被測定物支持手段に前記所定の位置および姿勢に支持されたころの軸方向、およびこの軸方向に直交する垂直方向に移動させるセンサ移動機構と、前記ころの軸方向に沿って前記センサが走査するように、前記センサ移動機構に一連の測定動作を行わせる測定動作制御手段と、前記センサの走査の過程で前記ころの軸方向複数箇所における前記センサの測定値を取り込んで記憶する測定値記憶手段と、測定対象であるころの目標値とする寸法データを記憶する目標寸法記憶手段と、前記測定値記憶手段に記憶されたころの測定結果と前記目標寸法記憶手段に記憶されたころの寸法データとを比較し、測定されたころの輪郭形状の良否を判定する判定手段とを有する。このため、生産現場においても、短時間で自動的にころの輪郭形状を精度良く測定し、形状評価が行える。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】この発明の一実施形態に係る輪郭形状測定装置の構成を表す図である。
【図2】同輪郭形状測定装置の制御系のブロック図である。
【図3】同輪郭形状測定装置の動作説明図である。
【図4】同輪郭形状測定装置で得られた傾き補正前の測定値を示す図である。
【図5】同測定値を傾き補正した後のデータを示す図である。
【図6】この発明の他の実施形態に係る傾き補正の説明図である。
【図7】ころとワーク台との間にごみが挟まった場合の要部拡大図である。
【図8】ころ軸受の構成部品である「ころ」の外観図である。
【図9】従来の測定装置で測定したころの輪郭形状の測定結果の例を示す図である。
【図10】(A)は、ころ、およびこのころを載置支持するワーク台が正しく設置された例を示す図、(B)は、ワーク台に対してころが傾いて設置された例を示す図、(C)は、ワーク台が測定子の移動方向と平行に設置されていない例を示す図である。
【図11】ころの輪郭形状の評価を行う図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
この発明の一実施形態を図1ないし図5と共に説明する。この実施形態に係る輪郭形状測定装置は、例えば、円筒ころ軸受、針状ころ軸受の構成部品である「ころ」の輪郭形状を測定する装置である。以下の説明は、輪郭形状測定方法についての説明をも含む。図1に示すように、輪郭形状測定装置は、主に、測定装置本体Mと、制御ユニットCUと、出力手段9とを有する。
【0023】
測定装置本体Mについて説明する。
図1に示すように、測定装置本体Mは、被測定物支持手段1と、センサ3と、センサ移動機構4とを有する。被測定物支持手段1は、ころWを所定の位置および姿勢に支持するものであり、ワーク台12、ころ押え13,13、および、ばね部材14を備える。ワーク台12は例えば直方体状に形成され、このワーク台12の上面にころWが載置可能になっている。ワーク台12の上面から上方に立ち上がる柱部15,15が、後述する測定子2の移動方向(図1矢符X方向)に所定距離離隔して平行に配置される。対向する柱部15,15のうち一方の柱部15の内側面部に、ころ押え13が固着される。他方の柱部15の内側面部に、例えば円筒状のガイド部材(図示せず)が設けられ、且つ、このガイド部材内で移動可能に支持される圧縮コイルばねから成るばね部材14が設けられる。このばね部材14の一端が前記柱部15の内側面部に固定され、このばね部材14の他端にころ押え13が固定される。
【0024】
柱部15および前記ガイド部材により、一対のころ押え13,13は、測定子2の移動方向に平行で且つ一直線上に配置される。各ころ押え13の基端部が、柱部15の内側面部またはばね部材14に固着され、各ころ押え13の先端部が凸曲線形状である。ころ外周面の直線部がワーク台12の上面に載置されると共に、これらころ押え13の先端部間にころWが保持され、ころWの両端面が、ばね部材14の付勢力でもって両ころ押えの先端部により挟持される。よって、ころWが所定の位置および姿勢に支持される。なお、ころWをワーク台12に載置する動作は手動、自動のいずれでも良い。自動の場合、ローディング装置(図示せず)を設ける。
【0025】
センサ3は、図1の例では、前記支持されたころWに対して、同センサ先端の測定子2を接触させてころWの輪郭形状を測定する接触式の変位センサが適用される。この変位センサは、ケーシング3aと、このケーシング3aから突出する測定子2と、この測定子2の変位量を検出する検出手段とを有する。例えば、変位センサは、電気マイクロメータ等から成り、ケーシング3aと、このケーシング3aに内蔵される差動トランス3bと、この差動トランス3bのコア3baに繋がりケーシング3aから突出する測定子2と、ケーシング3a内に設けられ且つ測定子2を測定対象の輪郭に追従して接触させる付勢力を与えるばね部材3cとを有する。測定子2がころWに接触して変位すると、この測定子2に繋がるコア3baがばね部材3cの付勢力に抗して移動し、変位が電気信号として取り出される。
【0026】
センサ移動機構4は、センサ3を、前記所定の位置および姿勢に支持されたころWの軸方向(図1矢符X方向)、およびこの軸方向に直交する垂直方向(図1矢符Y方向)に移動させる。すなわち、センサ移動機構4は、ワーク台12を跨ぐ門形のフレーム16と、Xテーブル装置11と、Yテーブル装置10と、駆動源ma,mbとを有する。各駆動源ma(mb)は、例えば位置検出器ma1(mb1)を含むサーボモータ等である。Xテーブル装置11は、移動体であるXテーブル11aと、このXテーブル11aを図1X方向に案内する案内部材11bと、X方向に移動させるボールねじ機構18とを有する。
【0027】
フレーム16のうち脚部16a,16aに、梁部16bが架設されている。この梁部16bにおける長手方向つまりX方向に沿って、ボールねじ機構18のねじ軸が回転可能に設置される。前記ねじ軸は駆動源mbにより回転駆動可能である。Xテーブル11aには、ボールねじ機構18のナット部が設けられ、Xテーブル11aは、梁部16bに対しX方向に案内自在に支持される。よって、Xテーブル11aは、駆動源mbによりボールねじ機構18を介して図1X方向に移動可能に構成される。
【0028】
Yテーブル装置10は、移動体であるYテーブル10aと、このYテーブル10aを図1Y方向に案内する案内部材10bと、Y方向に移動させるボールねじ機構19とを有する。前記Xテーブル11aにおけるY方向に沿って、ボールねじ機構19のねじ軸が回転可能に設置される。前記ねじ軸は駆動源maにより回転駆動可能である。Yテーブル10aには、ボールねじ機構19のナット部が設けられ、Yテーブル10aは、Xテーブル11aに対しY方向に案内自在に支持される。よって、Yテーブル10aは、駆動源maによりボールねじ機構19を介して図1Y方向に移動可能に構成される。このYテーブル10aに、前記センサ3が取り付けられている。
【0029】
制御ユニットCUについて説明する。
制御ユニットCUは、例えば、コンピュータと、このコンピュータの記録媒体等に格納されて実行されるプログラムとでなる。図2に示すように、制御ユニットCUは、測定動作制御手段5と、測定値記憶手段6と、目標寸法記憶手段7と、判定手段8とを有する。測定動作制御手段5は、上記プログラムの一部となるプログラムを備え、このプログラムにより、前記支持されたころWの軸方向の少なくとも複数箇所に、センサ3の測定子2(図1)が順次接するように、センサ移動機構4に一連の測定動作を行わせる。この測定動作のプログラムは、例えば、オペレータのティーチング操作等により、ころWの型番毎にセンサ3を試験的に移動させて、そのセンサ3の移動軌跡を再現できるように、駆動源ma,mb(図1)を制御するプログラムである。測定値記憶手段6は、センサ3の測定値を取込んで記憶する手段である。測定値の取込みは、設定されたX方向のサンプリング間隔、または時間的なサンプリング間隔毎に行ってもよく、また設定されたX方向位置で行うようにしてもよい。測定値記憶手段6によるセンサ3の測定値の記憶は、センサ3のX方向位置と共に行ってもよい。
【0030】
具体的には、オペレータが測定開始スイッチSWをオンにすると、図3(1),(2)に示すように、センサ3がころWに対しX方向およびY方向に離隔した初期位置P1から、データ取得前の準備位置P2に移行する。このセンサ3の準備位置P2は、例えば、センサ3を初期位置P1からころWに近づくようにY方向に移動させた位置であって、その後、センサ3をX方向に移動させることにより、測定子2がころWの表面に倣って突没可能な位置である。図1〜図3に示すように、測定動作制御手段5は、前記プログラムに基づいて駆動源ma,mbを駆動制御することで、X,Yテーブル11a,10aを図1XおよびY方向に移動させ、センサ3を初期位置P1から準備位置P2に移動させる。
その後、測定動作制御手段5は、前記プログラムに基づいて駆動源mbのみ駆動制御することでXテーブル11aを図1X方向に移動させ、図3(3)〜(5)に示すように、センサ3を準備位置P2から順次データ取得開始位置P3、途中位置P4、データ取得終了位置P5に移動させる。このセンサ3の移動により、測定子2がころWの表面に倣って突没し、ころWの輪郭に沿って移動する。
【0031】
図3(3)〜(5)に示すように、測定動作制御手段5(図2)の制御により、測定子2をころ軸方向に走査すると、センサ3のX方向位置に対応する信号が駆動源mbの位置検出器mb1により出力されると共に、同センサ3のY方向位置に対応する信号が駆動源maの位置検出器ma1により出力される。
【0032】
また、図3(3)〜(5)に示すように、測定子2がころWに接触して変位すると、この測定子2に繋がるコア3baがばね部材3cの付勢力に抗して移動し、変位が電気信号として取り出される。この取り出された電気信号と、位置検出器ma1により出力される信号との和により算出される値が、ころWの輪郭の径方向座標となる。この径方向座標は、位置検出器mb1により出力される信号により得られるころWの輪郭の軸方向座標と共に、関連付けて測定値記憶手段6に記憶される。この場合において、一つの軸方向座標に関連付けられた一つの径方向座標が、所定のサンプリング間隔毎に複数個記憶される形態であっても良い。また、互いに関連付けられた軸方向および径方向座標が、連続的または間欠的に記憶される形態であっても良い。なお、測定動作制御手段5は、センサ3をデータ取得終了位置P5に移動させた後、駆動源ma,mbを駆動制御してX,Yテーブル11a,10aを移動させ、センサ3をころWから離隔した離隔位置P6,P7に順次移動させる。
【0033】
目標寸法記憶手段7は、測定対象であるころWの目標値とする寸法データを記憶する。前記寸法データは、目標寸法およびこの目標寸法に対する許容値を含む。この目標寸法に対する許容値は、関連付けられた軸方向および径方向座標として記憶されても良いし、ころWの任意の軸方向位置に対する径方向位置が一義的に求められる関数式等から成るものとして記憶されても良い。
例えば、目標寸法に対する許容値が座標として記憶される場合、ある軸方向座標に関連付けられた、目標寸法となる径方向座標が記憶されると共に、この径方向座標の負側公差と正側公差とが記憶される。この例では、直線部、クラウニング部共に、目標寸法となる径方向座標が記憶されると共に、この径方向座標の負側公差と正側公差とが記憶される。これら軸方向座標、径方向座標、負側公差、および正側公差は、ころWの製作図面のデータから軸受の型番またはころWの型番毎に予め入力し目標寸法記憶手段7に記憶しておく。
【0034】
前記測定値記憶手段6は、センサ3の信号を取り込む信号取込み動作と、この信号に得られた座標を記憶する2つの機能とを有する。測定子2がころWに接触して変位したとき、測定値記憶手段6は前記信号取込み動作を開始しする。その後、測定子2がころWから離れて変位しなくなると、測定値記憶手段6は前記信号取込み動作を終了する。
【0035】
判定手段8は、測定値記憶手段6に記憶されたころWの測定結果と、目標寸法記憶手段7に記憶されたころWの寸法データとを比較し、測定されたころWの輪郭形状の良否を判定する判定部8bを有する。この判定部8bによる判定結果は出力手段9に出力される。出力手段9は、例えば、モニタ(ディスプレイと同義)によって実現される。ただし、出力手段9はモニタだけに限定されるものではなく、プリンタ等であっても良い。
【0036】
判定手段8は、前記ころWの測定結果と、目標寸法記憶手段7に記憶されたころWの寸法データとを比較演算する演算プログラム等からなる。この演算プログラムは、上記コンピュータの記録媒体等に格納されて実行されるプログラムの一部である。
判定手段8は、測定値記憶手段6に関連付けて記憶された、ころWのクラウニング部の軸方向座標および径方向座標が、この軸方向座標における目標寸法に対する許容値に入っているか否かを判定する。換言すれば、判定手段8は、クラウニング部において、測定値記憶手段6に記憶された一つの軸方向座標に関連付けられた径方向座標(図5のD値)が、目標寸法記憶手段7に記憶された前記軸方向座標に関連付けられた、径方向座標の負側公差と正側公差との間に収まっているか否かを判断してころWの輪郭形状の良否を判定する。
判定手段8は、径方向座標(図5のD値)が決められた負側公差と正側公差との間に収まっていないとの判断で、ころ「不良」と判定し、その旨、出力手段9に出力させる。逆に判定手段8は、D値が決められた寸法の公差内にあるとの判断で、ころ「良」と判定し、その旨、出力手段9に出力させる。
【0037】
また、判定手段8は、測定値記憶手段6に記憶されたセンサ3の測定値に基づいて、ころWの軸方向の傾き誤差を補正する傾き誤差補正部8aを有する。つまり、センサ3の測定子2を図3(3)〜(5)に示すようにころWの輪郭に沿って移動させると、図4に示すような測定データが得られる。例えば、ころ設置時の傾きや、ワーク台12の傾き等によって、通常、傾きのある測定結果が得られる。図4の2点a,bの測定位置は、目標寸法記憶手段7に記憶された寸法データから、それぞれのころ軸受またはころWの型番の「ころ」毎に、ころWの直線部Laの両端位置、またはこれら両端位置よりころ軸方向内側になるように設定される。2点a,bの測定位置はころ測定前に目標寸法記憶手段7に入力されている。例えば、目標寸法記憶手段7には、ころ軸受またはころWの型番毎に目標寸法と共に前記2点a,bの測定位置を記憶させておき、適宜の入力手段からの入力で型番を選択することにより、その選択された型番の目標寸法および測定位置a,bが、判定手段8による判定対象として用いられる。
【0038】
ころWがころ軸方向に対し傾きのない状態で測定子2により測定された場合、前記2点a,bは同じ変位値、つまりセンサ3での測定値となるはずである。ころWがころ軸方向に対し傾いて設置された場合、2点a,bの測定値に差が生じる。
ここで、点aの位置であるX方向座標をax、このaxにおけるセンサ3の測定値をayとする。点bの位置であるX方向座標をbx、このbxにおけるセンサ3の測定値をbyとすると、ころWの傾きは以下の式で与えられる。
傾き値=(by−ay)/(bx−ax)
傾き誤差補正部8aは、得られた傾き値から、全ての点での測定データを傾き補正する。具体的には、例えば、全座標に関し、a点を基準として前記傾き値の角度分、図4矢符L2の方向に回転させる傾き補正を施す。矢符L2の回転方向とは、X軸およびY軸にそれぞれ直交する軸回りの回転方向である。この傾き補正により、図5の結果を得る。その後、判定手段8の判定部8bは、前述のように、ころWの輪郭形状の良否を行う。
【0039】
以上説明した輪郭形状測定装置によると、支持されたころWに対し、センサ移動機構4によりセンサ3をころ軸方向およびころ直径方向に移動させ、センサ3の測定子2を前記ころWに接触させる。測定動作制御手段5は、図3(3)〜(5)に示すようにセンサ移動機構4に一連の測定動作を行わせ、この間、測定値記憶手段6は、ころWの軸方向複数箇所のセンサ3の測定値を連続して取り込んで記憶する。判定手段8は、測定値記憶手段6に記憶されたころWの測定結果と、目標寸法記憶手段7に記憶された寸法データとを比較する。これにより、判定手段8は、測定されたころWの輪郭形状の良否を判定する。このように、ころWの目標値とする寸法データを予め目標寸法記憶手段7に記憶しておき、実際の測定結果と比較するため、適切な形状評価が行える。このように、センサ移動機構4を介してセンサ3を走査させる測定動作制御手段5、およびセンサ3の測定値を取り込んで記憶する測定値記憶手段6を設け、かつ判定手段8を設けたので、生産現場においても、完全に全自動でころWの輪郭形状の測定から評価まで、従来のものより短時間で行える。
【0040】
測定値記憶手段6に記憶されたセンサ3の測定値に基づいて、判定手段8は、前記ころWの軸方向の傾き誤差を補正し、この補正データと前記寸法データとを比較し得る。このため、ころWの傾き調整を機械的に行う必要がなく、その分従来技術よりも、周辺設備を簡略化でき、かつ形状測定にかかる時間短縮を図ることができる。傾き誤差を補正するとき、測定作業等を一旦中断する必要もなく、サイクルタイムの短縮を図ることも可能となる。
判定手段8が、傾き誤差の補正に用いる測定点の位置を、目標寸法記憶手段7に記憶されたそれぞれの型番毎の寸法データから自動的に決定する場合、演算処理負荷の軽減を図ることが可能となる。
【0041】
この発明の他の実施形態について説明する。
前述の実施形態では、傾き補正を前記2点a,bの測定結果から行っているが、2点a,bに限定されるものではない。傾き補正の精度をより上げるため、例えば、図6に示すように、3点以上(この例ではa,b,c,dの4点)の測定値から直線式Lbを導き出して、その直線式Lbの傾きαから傾き値を求めて傾き補正を行っても良い。
【0042】
判定手段8の傾き誤差補正部8aは、前記ころWの軸方向の傾き誤差を補正するとき、この補正量が所定の閾値以上となった場合に測定値を無効とする機能を有するものであっても良い。この輪郭形状測定装置で、ころWの輪郭形状を測定するとき、図7に示すように、ころWとワーク台12との間にゴミ等の異物17が挟まった場合、ころWが安定して固定されない。つまり測定中にころWが不所望に動き、誤測定をしてしまう可能性がある。そこで、本装置では、傾き補正を行うとき、通常の測定では起こりえない想定外に大きな傾き値が算出された場合、判定手段8の判定部8bは、この測定値を異常と判断し無効とする。この無効とした測定値の良否判定を行う必要がなくなるので、作業効率を高めることが可能となる。
【0043】
センサ3の測定子2の先端部分を、測定対象であるころWの形状に応じて付け替え可能としても良い。
測定子の先端部は球状の形状であるが、ころWのクラウニングの曲面半径Rの大きさに応じて、先端球部の半径Rのサイズを変える。例えば、クラウニングの曲面半径Rが小さい場合は、測定子の球部半径Rが大きいと測定誤差が発生するため、できるだけ小さな球部半径Rの測定子を使用することが望ましい。
逆に小さな球部半径Rの測定子は、破損しやすいなどの欠点もある。よって、用途により先端球部の半径Rの異なる測定子を使いわけることが必要となる。
ころWの形状に応じて、測定子2の先端部分の形状、寸法等を変えて使用することで、ころWの輪郭形状をより安定して計測することが可能となる。
前記各実施形態では、先端に測定子2を装備した接触方式のセンサ3を使用しているが、この接触方式のセンサ3の代わりに非接触方式の測定センサを使用しても良い。この非接触方式の測定センサとして、例えば、レーザセンサ、静電容量センサ、磁気センサ等を用途、精度に応じて使用することが可能である。非接触方式の測定センサを使用する場合、ころWに傷を付ける心配がなく、製品の歩留まりを高めることができる。
駆動源ma(mb)は、位置検出器を含まないモータであっても良い。例えば、このモータの出力するパルス信号により、センサ3のX方向位置、Y方向位置を検出し、ころWの輪郭形状を得るようにしても良い。
この発明の輪郭形状測定装置を用いて、軸受の構成部品以外のころの輪郭形状を測定することも可能である。
【符号の説明】
【0044】
1…被測定物支持手段
2…測定子
3…センサ
4…センサ移動機構
5…測定動作制御手段
6…測定値記憶手段
7…目標寸法記憶手段
8…判定手段
8a…傾き誤差補正部
8b…判定部
W…ころ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ころ軸受の構成部品であるころの輪郭形状を測定する測定装置であって、
前記ころを所定の位置および姿勢に支持する被測定物支持手段と、
この被測定物支持手段に支持されたころの輪郭形状を測定するセンサと、
このセンサを、前記被測定物支持手段に前記所定の位置および姿勢に支持されたころの軸方向、およびこの軸方向に直交する垂直方向に移動させるセンサ移動機構と、
前記ころの軸方向に沿って前記センサが走査するように、前記センサ移動機構に一連の測定動作を行わせる測定動作制御手段と、
前記センサの走査の過程で前記ころの軸方向複数箇所における前記センサの測定値を取り込んで記憶する測定値記憶手段と、
測定対象であるころの目標値とする寸法データを記憶する目標寸法記憶手段と、
前記測定値記憶手段に記憶されたころの測定結果と前記目標寸法記憶手段に記憶されたころの寸法データとを比較し、測定されたころの輪郭形状の良否を判定する判定手段と、
を有することを特徴とする輪郭形状測定装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記判定手段は、
前記ころの姿勢はころの軸方向の傾きを含む場合に、前記測定値記憶手段に記憶されたセンサの測定値に基づいて、前記ころの軸方向の傾き誤差を補正する傾き誤差補正部と、
この傾き誤差補正部で補正された補正データと前記寸法データとを比較する判定部と、
を有する輪郭形状測定装置。
【請求項3】
請求項2において、前記傾き誤差補正部は、前記ころの直線部分の測定箇所における2点以上の測定点を用いて、前記ころの軸方向の傾き誤差を補正する機能を有する輪郭形状測定装置。
【請求項4】
請求項3において、前記傾き誤差補正部は、前記傾き誤差の補正に用いる測定点の位置を、目標寸法記憶手段に記憶されたそれぞれのころ軸受またはころの型番毎の寸法データから決定する輪郭形状測定装置。
【請求項5】
請求項2ないし請求項4のいずれか1項において、前記傾き誤差補正部は、前記ころの軸方向の傾き誤差を補正するとき、この補正量が所定の閾値以上となった場合に測定値を無効とする機能を有する輪郭形状測定装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか1項において、前記センサは、ころに接触させる測定子を備えた接触式の変位センサである輪郭形状測定装置。
【請求項7】
請求項6において、前記変位センサの測定子の先端部分を、測定対象であるころの形状に応じて付け替え可能とした輪郭形状測定装置。
【請求項8】
請求項1ないし請求項5のいずれか1項において、前記センサは、ころに接触させない非接触方式のセンサである輪郭形状測定装置。
【請求項9】
請求項8において、前記非接触方式のセンサは、レーザレンサである輪郭形状測定装置。
【請求項10】
請求項8において、前記非接触方式のセンサは、静電容量センサである輪郭形状測定装置。
【請求項11】
請求項8において、前記非接触方式のセンサは、磁気式センサである輪郭形状測定装置。
【請求項1】
ころ軸受の構成部品であるころの輪郭形状を測定する測定装置であって、
前記ころを所定の位置および姿勢に支持する被測定物支持手段と、
この被測定物支持手段に支持されたころの輪郭形状を測定するセンサと、
このセンサを、前記被測定物支持手段に前記所定の位置および姿勢に支持されたころの軸方向、およびこの軸方向に直交する垂直方向に移動させるセンサ移動機構と、
前記ころの軸方向に沿って前記センサが走査するように、前記センサ移動機構に一連の測定動作を行わせる測定動作制御手段と、
前記センサの走査の過程で前記ころの軸方向複数箇所における前記センサの測定値を取り込んで記憶する測定値記憶手段と、
測定対象であるころの目標値とする寸法データを記憶する目標寸法記憶手段と、
前記測定値記憶手段に記憶されたころの測定結果と前記目標寸法記憶手段に記憶されたころの寸法データとを比較し、測定されたころの輪郭形状の良否を判定する判定手段と、
を有することを特徴とする輪郭形状測定装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記判定手段は、
前記ころの姿勢はころの軸方向の傾きを含む場合に、前記測定値記憶手段に記憶されたセンサの測定値に基づいて、前記ころの軸方向の傾き誤差を補正する傾き誤差補正部と、
この傾き誤差補正部で補正された補正データと前記寸法データとを比較する判定部と、
を有する輪郭形状測定装置。
【請求項3】
請求項2において、前記傾き誤差補正部は、前記ころの直線部分の測定箇所における2点以上の測定点を用いて、前記ころの軸方向の傾き誤差を補正する機能を有する輪郭形状測定装置。
【請求項4】
請求項3において、前記傾き誤差補正部は、前記傾き誤差の補正に用いる測定点の位置を、目標寸法記憶手段に記憶されたそれぞれのころ軸受またはころの型番毎の寸法データから決定する輪郭形状測定装置。
【請求項5】
請求項2ないし請求項4のいずれか1項において、前記傾き誤差補正部は、前記ころの軸方向の傾き誤差を補正するとき、この補正量が所定の閾値以上となった場合に測定値を無効とする機能を有する輪郭形状測定装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか1項において、前記センサは、ころに接触させる測定子を備えた接触式の変位センサである輪郭形状測定装置。
【請求項7】
請求項6において、前記変位センサの測定子の先端部分を、測定対象であるころの形状に応じて付け替え可能とした輪郭形状測定装置。
【請求項8】
請求項1ないし請求項5のいずれか1項において、前記センサは、ころに接触させない非接触方式のセンサである輪郭形状測定装置。
【請求項9】
請求項8において、前記非接触方式のセンサは、レーザレンサである輪郭形状測定装置。
【請求項10】
請求項8において、前記非接触方式のセンサは、静電容量センサである輪郭形状測定装置。
【請求項11】
請求項8において、前記非接触方式のセンサは、磁気式センサである輪郭形状測定装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−2279(P2011−2279A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−144014(P2009−144014)
【出願日】平成21年6月17日(2009.6.17)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月17日(2009.6.17)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】
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