説明

通信装置及びクロック補正方法

【課題】GPS信号を正常に受信できない期間においても、ダブルオーブン型のOCXOを用いることなく、精度の高いクロック信号を用いて動作できる通信装置を提供する。
【解決手段】無線基地局は、水晶発振器11が発生させる発振パルス信号Pxoからクロック信号CLKを生成する生成部13と、GPS受信機12が受信するGPS信号から得られる基準パルス信号Prefを用いてクロック信号CLKの周波数誤差を補正する誤差補正部15と、温度を計測する温度センサ14と、誤差補正部15が補正した周波数誤差を示す誤差補正値を、誤差補正部15が補正を行った際の温度と対応付けて記憶する補正値記憶部16とを備える。基準パルス信号Prefが得られなくなった場合、誤差補正部15は、温度センサ14が計測する温度に対応する誤差補正値を補正値記憶部16から取得し、取得した誤差補正値を用いて周波数誤差を補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、GPS受信機を用いる通信装置及びクロック補正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無線基地局等の通信装置は、動作の同期をとるためのクロック信号を生成するクロック信号生成装置を有する。このようなクロック信号生成装置には、一般的に、水晶発振器(XO)が用いられている。
【0003】
水晶発振器は、温度が変化すると発振周波数が変化する特性(周波数温度特性)を持つ。このため、周波数の安定したクロック信号が必要とされる通信装置には、恒温槽付水晶発振器(以下、OCXO)が設けられる。OCXOは、恒温槽内に水晶発振器を収納したものである。
【0004】
近年では、2重の恒温槽を有するダブルオーブン型のOCXOが提供されている(例えば、特許文献1参照)。ダブルオーブン型のOCXOは、恒温槽が1つのみであるシングルオーブン型OCXOと比較して、精度の高いクロック信号を生成できる。
【0005】
また、GPS(Global Positioning System)受信機を具備する通信装置においては、GPS受信機が受信するGPS信号から得られる正確な基準パルス信号を利用し、クロック信号の周波数誤差を補正することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−117189号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、GPSを利用してクロック信号の周波数誤差を補正する構成は、GPS信号を正常に受信できている場合には有効であるものの、GPS信号を正常に受信できなくなると、クロック信号の周波数誤差を補正できず、クロック信号の精度が低下する問題がある。
【0008】
一方で、ダブルオーブン型のOCXOを利用すれば、GPS信号を正常に受信できない期間において、精度の高いクロック信号を生成可能になるが、ダブルオーブン型のOCXOはサイズ及びコストが大きいため、通信装置のサイズ及びコストが増大する問題がある。
【0009】
そこで、本発明は、GPS信号を正常に受信できない期間においても、ダブルオーブン型のOCXOを用いることなく、精度の高いクロック信号を用いて動作できる通信装置及びクロック補正方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するために、本発明は以下のような特徴を有している。まず、本発明の第1の特徴は、水晶発振器(水晶発振器11)と、GPS受信機(GPS受信機12)とを有する通信装置(例えば無線基地局1)であって、前記水晶発振器が発生させる発振パルス信号(発振パルス信号Pxo)から、前記通信装置における同期に用いられるクロック信号を生成するクロック生成部(クロック生成部13)と、前記GPS受信機が受信するGPS信号から得られる基準パルス信号(基準パルス信号Pref)を用いて、前記クロック信号の周波数誤差を補正する誤差補正部(誤差補正部15)と、前記水晶発振器の発振周波数に影響を与える温度を計測する温度計測部(温度センサ14)と、前記誤差補正部が補正した前記周波数誤差を示す誤差補正値を、前記誤差補正部が補正を行った際の前記温度と対応付けて記憶する補正値記憶部(補正値記憶部16)とを備え、前記基準パルス信号が得られなくなった場合、前記誤差補正部は、前記温度計測部が計測する温度に対応する前記誤差補正値を前記補正値記憶部から取得し、取得した前記誤差補正値を用いて前記周波数誤差を補正することを要旨とする。
【0011】
このような特徴によれば、基準パルス信号が得られないとき、すなわち、GPS信号を正常に受信できないときには、温度計測部が計測する温度に対応する誤差補正値を補正値記憶部から取得し、取得した誤差補正値を用いて周波数誤差を補正する。
【0012】
このように、温度と周波数誤差との対応関係を保持しておき、当該対応関係を使用して周波数誤差を補正することができる。これにより、GPS信号を正常に受信できない場合であっても、GPS信号を正常に受信できる場合の補正を再現でき、ダブルオーブン型のOCXOを用いずに正確なクロック信号を生成可能になる。
【0013】
本発明の第2の特徴は、本発明の第1の特徴に係り、時間を計測する計時部(計時部17)をさらに備え、前記補正値記憶部は、前記誤差補正値を、前記誤差補正部が補正を行った際の前記時間と対応付けて記憶し、前記基準パルス信号が得られなくなった場合、前記誤差補正部は、前記計時部が計測する時間と、前記温度計測部が計測する温度とに対応する前記誤差補正値を前記補正値記憶部から取得し、取得した前記誤差補正値を用いて前記周波数誤差を補正することを要旨とする。
【0014】
本発明の第3の特徴は、本発明の第1又は第2の特徴に係り、前記基準パルス信号が得られなくなった場合、前記誤差補正部は、前記計時部が計測する時間に応じて、前記周波数誤差の補正を行う時間間隔を変更することを要旨とする。
【0015】
本発明の第4の特徴は、本発明の第1〜第3の何れかの特徴に係り、前記水晶発振器は、恒温槽が1つであるシングルオーブン型の恒温槽付水晶発振器であることを要旨とする。
【0016】
本発明の第5の特徴は、水晶発振器が発生させる発振パルス信号から、動作の同期をとるためのクロック信号を生成するステップと、前記水晶発振器の発振周波数に影響を与える温度を計測するステップと、GPS受信機が受信するGPS信号から得られる基準パルス信号を用いて、前記クロック信号の周波数誤差を補正するステップと、前記補正するステップにおいて補正した前記周波数誤差を示す誤差補正値を、前記補正するステップにおいて補正を行った際の前記温度と対応付けるステップとを含み、前記基準パルス信号が得られなくなった場合に、前記補正するステップでは、前記計測するステップにおいて計測される温度に対応する前記誤差補正値を用いて、前記周波数誤差を補正することを要旨とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、GPS信号を正常に受信できない期間においても、ダブルオーブン型のOCXOを用いることなく、精度の高いクロック信号を用いて動作できる通信装置及びクロック補正方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態に係る通信システムの全体概略構成図である。
【図2】本発明の実施形態に係るクロック信号生成装置の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施形態に係る補正値テーブルの構成例を示す図である。
【図4】本発明の実施形態に係るクロック信号生成装置の動作を示すフローチャートである。
【図5】本発明の実施形態に係る基地局本体部の内部実装例を示す図である。
【図6】補正値テーブルの解析結果の出力例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。具体的には、(1)全体概略構成、(2)無線基地局の構成、(3)クロック信号生成装置の動作、(4)基地局本体部の実装例、(5)作用効果、(6)その他の実施形態について説明する。以下の実施形態における図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。
【0020】
ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率などは現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な寸法などは以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0021】
(1)全体概略構成
図1は、本発明の通信装置の実施形態である無線基地局1を含む通信システムの全体概略構成図である。
【0022】
図1に示す通信システムは、無線基地局1と、無線通信端末2とを有する。無線基地局1は、無線通信端末2との無線通信を行う。無線基地局1は、例えば電柱やビル壁面等に設置される小型基地局である。無線基地局1は、他の無線基地局と同期をとり、基地局間で連携した動作(例えば、干渉抑圧動作)を行っている。
【0023】
無線基地局1は、アンテナ部105と、基地局本体部100とを有する。アンテナ部105と基地局本体部100とは、ケーブル190を介して接続される。基地局本体部100は、電柱やビル壁面等に設置できるように小型・軽量に構成される。
【0024】
(2)無線基地局の構成
図2は、基地局本体部100に設けられるクロック信号生成装置10の構成を示すブロック図である。
【0025】
図2に示すように、クロック信号生成装置10は、水晶発振器11と、GPS受信機12と、クロック生成部13と、温度センサ14(温度計測部)と、誤差補正部15と、補正値記憶部16と、計時部17とを有する。
【0026】
水晶発振器11は、所定の発振周波数で発振することによってパルス信号を発生させる。以下において、当該パルス信号を発振パルス信号Pxoと称する。水晶発振器11は、水晶発振器11の温度が変化すると発振周波数が変化する特性(周波数温度特性)を持つ。本実施形態では、水晶発振器11は、恒温槽が1つであるシングルオーブン型OCXOである。
【0027】
温度センサ14は、温度を計測する。ここで、温度センサ14が計測する温度としては、水晶発振器11の温度、基地局本体部100内の温度、基地局本体部100外の温度(外気温度)の3種類のうちの少なくとも1つである。これら3種類の温度は、水晶発振器11の発振周波数に影響を与える。温度センサ14が計測した温度は、誤差補正部15に通知される。
【0028】
水晶発振器11としてOCXOを用いる場合には、水晶発振器11に予め備えられている温度計測用の素子を温度センサ14として使用できる。
【0029】
基地局本体部100内の温度を計測する場合、基地局本体部100の筐体110(図5参照)内において、水晶発振器11の外部に温度センサ14が設けられる。外気温度を計測する場合、筐体110の外部に温度センサ14が設けられる。
【0030】
GPS受信機12は、協定世界時(UTC)に同期した1秒周期のパルス信号である1PPS(Pulse Per Second)を出力する。以下において、当該パルス信号を基準パルス信号Prefと称する。ただし、GPS受信機12は、複数のGPS衛星と同期を取ることで基準パルス信号Prefを得ているが、GPS衛星との同期が取れなくなると基準パルス信号Prefが得られなくなる。そのような場合、一般的に、水晶発振器11の精度に依存したクロック信号CLKの生成(ホールドオーバ動作と称される)が行われる。
【0031】
クロック生成部13は、水晶発振器11が発生させる発振パルス信号Pxoから、無線基地局1における同期に用いられるクロック信号CLKを生成する。例えば、クロック生成部13は、発振パルス信号Pxoを所定パルス分カウントする毎に1クロック分のクロック信号CLKを出力するように構成されている。クロック生成部13が生成したクロック信号CLKは、基地局本体部100におけるデジタルユニット102(図5参照)等に供給される。
【0032】
計時部17は、現在の時間を計測する。計時部17が計測する現在の時間とは、日付又は時刻の少なくとも一方である。計時部17は、クロック生成部13が生成するクロック信号CLKを用いて、現在の時間を計時する。温度センサ14が計測する時間は、誤差補正部15に通知される。
【0033】
誤差補正部15は、GPS受信機12からの基準パルス信号Prefを用いて、クロック信号CLKの周波数誤差を補正する。基準パルス信号Prefを用いて周波数誤差を補正する方法としては、既存の各種手法が利用できる。
【0034】
補正値記憶部16は、誤差補正部15が補正した周波数誤差を示す誤差補正値と、誤差補正部15が補正を行った際の温度と、誤差補正部15が補正を行った際の時間とを対応付けたテーブルを記憶する。以下において、当該テーブルを補正値テーブルと称する。
【0035】
図3は、補正値テーブルの一例を示す図である。図3の例では、各補正値テーブルにおいて、時間(日付及び時刻)と、誤差補正値(図3中の“1PPS精度”)と、温度(ここでは、外気温度)とが対応付けられている。また、10分毎に1つのテーブルが存在し、例えば24時間分の補正値テーブルが作成される。なお、図3中のPPB(Parts Per Billion)とは、十億分の1を意味する。図3に示すような各補正値テーブルは、誤差補正部15によって作成され、補正値記憶部16によって記憶される。また、誤差補正部15は、補正値記憶部16に記憶されている補正値テーブルの更新も行う。
【0036】
誤差補正部15は、GPS受信機12から基準パルス信号Prefが得られなくなった場合、すなわち、ホールドオーバ時には、温度センサ14が計測する温度と、計時部17が計測する時間とに対応する誤差補正値を補正値記憶部16から取得し、取得した誤差補正値を用いて、クロック信号CLKの周波数誤差を補正する。
【0037】
(3)クロック信号生成装置の動作
図4は、クロック信号生成装置10の動作を示すフローチャートである。
【0038】
ステップS11において、誤差補正部15は、GPS受信機12からの基準パルス信号Prefが得られているか否かを判定する。GPS受信機12からの基準パルス信号Prefが得られている場合には、処理がステップS12に進み、得られていない場合には、処理がステップS13に進む。
【0039】
ステップS12において、誤差補正部15は、基準パルス信号Prefを用いてクロック信号CLKの周波数誤差を補正するとともに、補正値テーブルを作成及び更新する。
【0040】
ステップS13〜ステップS15では、ホールドオーバ時動作が行われる。
【0041】
ステップS13において、温度センサ14が現温度を計測し、計時部17が現時間(日付及び時刻)を計測する。
【0042】
ステップS14において、誤差補正部15は、ステップS13で計測された温度及び時間に一致する補正値テーブルが補正値記憶部16に存在するか否かを判定する。
【0043】
ステップS13で計測された温度及び時間に一致する補正値テーブルが補正値記憶部16に存在する場合、ステップS14において誤差補正部15は、当該補正値テーブルから誤差補正値を取得する。
【0044】
そして、ステップS15において誤差補正部15は、取得した誤差補正値を用いて、クロック信号CLKの周波数誤差を補正する。
【0045】
なお、ステップS14において、誤差補正部15は、ステップS13で計測された温度及び時間の両方に一致する補正値テーブルが補正値記憶部16に存在せず、ステップS13で計測された温度に一致する補正値テーブルが補正値記憶部16に存在する場合には、ステップS14において当該補正値テーブルから誤差補正値を取得してもよい。
【0046】
その際、ステップS13で計測された温度に一致する補正値テーブルが複数存在する場合には、誤差補正部15は、それらの補正値テーブルの中から、ステップS13で計測された時間に最も近い時間の補正値テーブルを選択し、選択した補正値テーブルから誤差補正値を取得してもよい。
【0047】
なお、ステップS13〜ステップS15のホールドオーバ動作に加え、次のような処理を行ってもよい。誤差補正部15は、ステップS13で計測された時間から前後一定期間に対応する複数の補正値テーブルを参照し、それらの補正値テーブル中の誤差補正値の変化量が所定値未満である場合には、クロック信号CLKの周波数誤差を補正する時間間隔を長くする。一方、誤差補正部15は、ステップS13で計測された時間から前後一定期間に対応する複数の補正値テーブルを参照し、それらの補正値テーブル中の誤差補正値の変化量が所定値以上である場合には、クロック信号CLKの周波数誤差を補正する時間間隔を短くする。これにより、補正の必要性が低い場合における処理負荷を軽減できる。
【0048】
(4)基地局本体部の実装例
図5は、基地局本体部100の内部実装例を示す図である。ただし、各電子部品間を接続する配線等、本発明に関連しない構成を省略している。
【0049】
図5に示すように、基地局本体部100は、筐体110と、パワーアンプユニット101と、デジタルユニット102と、電源ユニット103と、水晶発振器11とを有する。
【0050】
パワーアンプユニット101と、デジタルユニット102と、電源ユニット103と、水晶発振器11とは、筐体110に収納されている。
【0051】
筐体110の外表面には、筐体110内の各電子部品(パワーアンプユニット101、デジタルユニット102、電源ユニット103等)が発生する熱を外部に放出するための放熱フィン111が形成されている。
【0052】
各電子部品(パワーアンプユニット101、デジタルユニット102、電源ユニット103等)は、熱を発生している。筐体110には、各電子部品(パワーアンプユニット101、デジタルユニット102、電源ユニット103等)が発する熱が伝達される。筐体110に伝達された熱は、筐体110の外表面(放熱フィン111等)から外気中に放出される。このように、基地局本体部100の筐体110は、温度管理が図られている。
【0053】
パワーアンプユニット101は、アナログ回路として構成される。パワーアンプユニット101は、パワーアンプ及びフィルタ回路等を含み、主に無線信号の増幅処理を行う。
【0054】
デジタルユニット102は、デジタル回路として構成され、各種の信号処理を行う。デジタルユニット102は、DSP、FPGA、MPU等を含む。デジタルユニット102は、水晶発振器11からのクロック信号に同期して動作する。デジタルユニット102には、上述した誤差補正部15や補正値記憶部16等が設けられている。
【0055】
電源ユニット103は、アナログ回路として構成され、パワーアンプユニット101やデジタルユニット102等に電力を供給する。
【0056】
図5の例において、電源ユニット103は、筐体110内側の下部に位置する。電源ユニット103は、筐体110の底壁に直接取り付けられている。
【0057】
パワーアンプユニット101は、筐体110内側の上部に位置する。パワーアンプユニット101は、筐体110の上壁に直接取り付けられている。
【0058】
デジタルユニット102は、筐体110内側の中央部に位置する。デジタルユニット102は、パワーアンプユニット101に取り付けられている。
【0059】
水晶発振器11は、筐体110内側の下部に位置する。水晶発振器11は、筐体110に接触した状態で配設される。具体的には、筐体110の底壁に直接取り付けられている。
【0060】
筐体110において水晶発振器11が配設される部分は、常時動作する電子部品(例えば電源ユニット103)の近傍に位置しており、筐体110の中でも、最も温度変化が少ない部分である。
【0061】
各電子部品(パワーアンプユニット101、デジタルユニット102、電源ユニット103等)のうちで、水晶発振器11の動作温度範囲と最も動作温度範囲が近い電子部品の近傍に、水晶発振器11を配設することが好ましい。水晶発振器11の動作温度範囲は、水晶発振器11の仕様上定められており、例えば60℃〜70℃程度である。
【0062】
(5)作用効果
本実施形態によれば、誤差補正部15は、基準パルス信号Prefが得られないとき、すなわち、GPS受信機12がGPS信号を正常に受信できないときには、温度センサ14が計測する温度に対応する誤差補正値を補正値記憶部16から取得し、取得した誤差補正値を用いて周波数誤差を補正する。
【0063】
このように、温度と周波数誤差との対応関係を保持しておき、当該対応関係を使用して周波数誤差を補正することができる。これにより、GPS信号を正常に受信できない場合であっても、GPS信号を正常に受信できる場合と同等の精度での補正が可能になる。
【0064】
また、本実施形態では、温度に加えて時間を考慮して補正を行うことで、周波数誤差を補正する精度をさらに向上させることができる。
【0065】
このように、過去データを元にして安定したクロック制御を行う仕組みを基地局内に作ることで、ダブルオーブン型のOCXO等の高価なOCXOが必要なくなり、安価なOCXOを選択することが可能となる。また、オーブン(恒温槽)分のスペースを削減できるため、基地局内での他の電子部品の配設スペースを確保することが容易になる。
【0066】
(6)その他の実施形態
上記のように、本発明は実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなる。
【0067】
例えば、補正値記憶部16に記憶されている補正値テーブルを解析し、解析結果を出力(表示又は印刷等)する手段をさらに設けてもよい。これにより、オペレータは、クロック信号生成装置10の状態を把握することができる。補正値テーブルの解析結果を出力(表示又は印刷等)する例を図6に示す。補正値テーブルを作成することで、環境の変化に対する部品の特性データも収集する事が可能となるため、年間を通して収集したデータの分析を行うことで、温度変化と周波数変動の傾向が明確になる。収集データの分布を用いて得られた周波数の変動情報から、温度の変化に対する変動を予想することも可能となり、予測に用いた周波数の安定動作を行うこともできる。
【0068】
また、上述した実施形態では、補正値テーブルに時間(日付及び時刻)が含まれていたが、時間を省略する構成も可能である。この場合、計時部17を不要とすることができる。
【0069】
上述した実施形態では、水晶発振器11がシングルオーブン型の恒温槽付水晶発振器であると説明したが、恒温槽を有しない水晶発振器を水晶発振器11として使用してもよい。
【0070】
また、クロック信号生成装置10を無線基地局1に設ける場合に限らない。近年の無線通信端末はGPS受信機を搭載しているものが多いため、無線通信端末2にクロック信号生成装置10を設けることも可能である。
【0071】
このように本発明は、ここでは記載していない様々な実施形態等を包含するということを理解すべきである。したがって、本発明はこの開示から妥当な特許請求の範囲の発明特定事項によってのみ限定されるものである。
【符号の説明】
【0072】
1…無線基地局、2…無線通信端末、10…クロック信号生成装置、11…水晶発振器、12…GPS受信機、13…クロック生成部、13…生成部、14…温度センサ、15…誤差補正部、16…補正値記憶部、17…計時部、100…基地局本体部、101…パワーアンプユニット、102…デジタルユニット、103…電源ユニット、105…アンテナ部、110…筐体、111…放熱フィン、190…ケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水晶発振器と、GPS受信機とを有する通信装置であって、
前記水晶発振器が発生させる発振パルス信号から、前記通信装置における同期に用いられるクロック信号を生成するクロック生成部と、
前記GPS受信機が受信するGPS信号から得られる基準パルス信号を用いて、前記クロック信号の周波数誤差を補正する誤差補正部と、
前記水晶発振器の発振周波数に影響を与える温度を計測する温度計測部と、
前記誤差補正部が補正した前記周波数誤差を示す誤差補正値を、前記誤差補正部が補正を行った際の前記温度と対応付けて記憶する補正値記憶部と
を備え、
前記基準パルス信号が得られなくなった場合、前記誤差補正部は、前記温度計測部が計測する温度に対応する前記誤差補正値を前記補正値記憶部から取得し、取得した前記誤差補正値を用いて前記周波数誤差を補正する通信装置。
【請求項2】
時間を計測する計時部をさらに備え、
前記補正値記憶部は、前記誤差補正値を、前記誤差補正部が補正を行った際の前記時間と対応付けて記憶し、
前記基準パルス信号が得られなくなった場合、前記誤差補正部は、前記計時部が計測する時間と、前記温度計測部が計測する温度とに対応する前記誤差補正値を前記補正値記憶部から取得し、取得した前記誤差補正値を用いて前記周波数誤差を補正する請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記基準パルス信号が得られなくなった場合、前記誤差補正部は、前記計時部が計測する時間に応じて、前記周波数誤差の補正を行う時間間隔を変更する請求項1又は2に記載の通信装置。
【請求項4】
前記水晶発振器は、恒温槽が1つであるシングルオーブン型の恒温槽付水晶発振器である請求項1〜3の何れか一項に記載の通信装置。
【請求項5】
水晶発振器が発生させる発振パルス信号から、動作の同期をとるためのクロック信号を生成するステップと、
前記水晶発振器の発振周波数に影響を与える温度を計測するステップと、
GPS受信機が受信するGPS信号から得られる基準パルス信号を用いて、前記クロック信号の周波数誤差を補正するステップと、
前記補正するステップにおいて補正した前記周波数誤差を示す誤差補正値を、前記補正するステップにおいて補正を行った際の前記温度と対応付けるステップと
を含み、
前記基準パルス信号が得られなくなった場合に、前記補正するステップでは、前記計測するステップにおいて計測する温度に対応する前記誤差補正値を用いて、前記周波数誤差を補正するクロック補正方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−263503(P2010−263503A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−113949(P2009−113949)
【出願日】平成21年5月8日(2009.5.8)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】