説明

道路と車両タイヤとの間で作用する摩擦を表す摩擦値を決定するための方法及び装置

本発明は、道路と車両タイヤとの間で作用する摩擦を表す摩擦値(Fμ)を決定するための方法に関する。このために、車輪のスリップのレベルを示す車両の車輪スリップ値(λij)が、車両の少なくとも1つの車輪のために決定される。摩擦値(Fμ)は、車輪スリップ値(λij)に基づき決定される。このため、車輪スリップ値(λij)は、予め規定された車両運転状態の間に異なる時点、特に、連続する時点に決定される。前記車輪スリップ値(λij)に基づき決定される車軸の車輪スリップ値(λij)又はスリップ値(λVA、,λHA)に関する頻度分布値が決定される。摩擦値(Fμ)は、前記頻度分布値を評価することによって決定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、路面と車両タイヤとの間に存在する摩擦係数を表す摩擦係数値を決定するための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このような方法及び装置は、様々に改良された従来技術から知られている。
【0003】
特許文献1は、自動車の制動及び/又は加速時に、路面の一般的な摩擦係数の利用の程度を監視するための装置を開示している。このために、装置は、車両の加速度及び車輪速度を感知するためのセンサを有する。車輪の瞬間的なスリップは、少なくとも1つの車輪に関するこれらの変数から決定され、また車両の加速度に対する車輪スリップの関数依存性を表す関数が形成される。このようにして決定される関数は、その関数に最も近い、したがって現在の路面状態に対応するスリップ特性曲線を選択するために、記憶されたスリップ特性曲線と比較される。次に、感知された最大加速度値とスリップ特性曲線の最大値との間の比率が形成される。この比率は、車輪がどのくらいの距離だけロック又は回転しているか、すなわち、路面の現在の摩擦係数の利用の程度がどのくらいの大きさかを示す基準である。
【0004】
特許文献2は、路面の摩擦係数を常時判定するための方法を開示している。このために、車両の縦方向の粘性摩擦係数の利用、及び車両の横方向の粘性摩擦係数の利用は、個々の車輪のために決定される車輪スリップ及びスリップ角の変数が、入力変数として送られる数学的タイヤモデルによって、個々の車輪のために決定される。粘性摩擦係数のこれらの利用の程度から、粘性摩擦係数の利用の現在の全体の程度が決定される。車両の全加速度は、車両の決定された縦方向加速度及び車両の決定された横方向加速度に基づき決定される。次に、路面の現在の摩擦係数を決定するために、粘性摩擦係数の利用の全体の程度及び車両の全加速度に関する2つの値の間の比率が形成される。
【0005】
特許文献3は、粘性摩擦/スリップ特性曲線を決定するための方法を開示している。このために、粘性摩擦係数/スリップ線図全体におけるそれぞれのタイヤ特性曲線のプロファイルは、車両の駆動モードにおいて、スリップの測定された値の対と、現在のスリップに利用される粘性摩擦係数の測定された値の対とから得られる。ブレーキスリップのそれぞれの値に関連する粘性摩擦の利用の程度は、測定された車両の制動減速度と、後車軸荷重成分と、車両の重心の軸距に関連する高さとに基づき計算して決定される。
【0006】
特許文献4は、摩擦係数が、決定された車輪スリップと車両加速度とに基づき決定される摩擦係数を決定するための方法を開示している。
【0007】
【特許文献1】独国特許出願公開第3705983A1号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第4435448A1号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第4300048A1号明細書
【特許文献4】特開平11−248438号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
公知の従来技術によると、当業者には次の目的が明らかになる。路面と車両タイヤとの間に存在する摩擦係数を表す摩擦係数値を決定するためのスリップに基づく方法又はそれに対応する装置を提供することを目的とし、このスリップに基づく方法又はそれに対応する装置は、従来技術から公知の方法及び装置と比較して、より容易な手段を用いて、すなわち技術的経費を減らして、前記摩擦係数値の決定処理を可能にする。
【0009】
この目的は、請求項1に記載の特徴によって、また請求項29に記載の特徴によって達成される。
【課題を解決するための手段】
【0010】
路面と車両タイヤとの間に存在する摩擦係数を表す摩擦係数値を決定するための方法では、車輪スリップ値は、車両の少なくとも1つの車輪のために決定され、車輪スリップ値は、この車両の車輪に存在する車輪のスリップを示す。摩擦係数値は、この車輪スリップ値に基づき決定される。
【0011】
本発明によれば、予め規定された車両運転状態の間に、車輪スリップ値は、様々な時点、特に、連続する時点に決定され、またその値の頻度分布は、これらの車輪スリップ値のために、又は値の頻度分布の車輪スリップ値に基づき決定される車軸に関連するスリップ値のために決定される。値のこの頻度分布は、摩擦係数値を決定するために評価される。
【0012】
注目すべき別の態様は、ナビゲーションシステムを使用して、車両の前方の道程にわたる道路のコースを決定し、かつ表示装置を使用して、危険な位置を示す道路標識をフェードイン表示することによって、道路のコースにおけるカーブ及び/又は環状交差点及び/又は交差点のような危険な位置を運転者に指示する警報システムにおいて、本発明による方法を使用することにより生じる。
【0013】
本発明による方法の実施及び本発明による装置の実装のために、2つの実施形態について以下に説明する。
【0014】
説明及び図面により、有利な改良形態を理解することが可能である。同様に、従属請求項に記載した主題の任意の所望の組み合わせから得られる有利な改良形態が含まれている。したがって、2つの実施形態の個々の技術的態様の有利な組み合わせ又は両方の実施形態の組み合わせも考えられる。
【0015】
本発明による方法及び本発明による装置の2つの実施形態のそれぞれについて、図面を参照して以下により詳細に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明による方法及び本発明による装置の第1の実施形態のそれぞれについて、図1を始めとして以下に説明する。
【0017】
ブロック101は、本発明による装置の中心部を示している。このブロック101では、本発明による方法が実行され、また本発明による方法は、フローチャートを用いて図2に示されており、以下に詳細に記載されている。
【0018】
本発明による方法を行うために、異なる入力変数がブロック101に送られる。車両の個々の車輪の車輪速度を示す車輪r.p.m値vijは、ブロック102からブロック101に送られる。ブロック102は、車両の個々の車輪に割り当てられる車輪速度センサと、感知された車輪速度が車輪r.p.m値に変換される変換手段とを備える。車輪速度センサと変換手段とを互いに構造的に別個に具体化することができるか、又は各車輪速度センサは、それに対応する変換手段を有することができる。車輪r.p.m値vijの代わりに、車両の個々の車輪の車輪速度を示す車輪速度値nijをブロック102からブロック101に送ることも可能である。この場合、必要な変換がブロック101で行われ、またブロック102は、車両の個々の車輪に割り当てられる車輪速度センサを備える。代替例として、車両内に収容された閉ループ及び/又は開ループ制御装置から、車輪r.p.m値vijをブロック101に対し利用可能にすることもできる。これらの閉ループ及び/又は開ループ制御装置は、例えば、車両のブレーキスリップ制御装置及び/又はトラクション制御装置及び/又はヨーレート制御装置であり得る。2つの値vijとnijと共に以下に使用される参照符号の体系は、次の意味を有する。指標iは、値が前輪又は後輪に関係するかどうかを指示する。指標jは、値が車両の左側車輪又は右側車輪に関係するかどうかを指示する。
【0019】
フィルタ処理されたヨーレートを示すヨーレート値ψ’filは、ブロック103からブロック101に送られる。この場合、ブロック103は、ヨーレートセンサと、それに対応するフィルタ手段とを備える。この関連において、ヨーレートセンサとフィルタ手段とが1つの構造ユニットを形成し得る。しかし、2つの構成要素は、車両内に空間的に別個に取付けることも可能である。同様に、代替例として、フィルタ処理されていないヨーレート値をブロック101に送ってもよい。この場合、必要なフィルタ処理はブロック101で行われる。ブロック102に関連して既に説明したように、車両内に収容された閉ループ及び/又は開ループ制御装置によって、特に、車両のヨーレートを制御するための装置によって、ヨーレート値ψ’fil又はフィルタ処理されていないヨーレート値をブロック101に対し利用可能にすることもできる。
【0020】
さらに、ブレーキライトスイッチ104によって発生され、またブレーキペダルが運転者によって作動されているか否かを指示する信号BLSが、ブロック101に送られる。
【0021】
ブロック101では、それに送られる入力変数vij、ψ’fil及びBLSを処理することによって、本発明による方法が実行される。本発明による方法により、路面と車両タイヤとの間に存在する摩擦係数を表す摩擦係数値Fμが決定される。この関連において、摩擦係数値Fμは摩擦係数の値を表すだけでなく、路面が滑りやすいか又は滑りにくいかどうかも指示する。すなわち、摩擦係数値Fμにより、摩擦係数に関する最終的な量的情報だけでなく、最終的な質的情報も、具体的には、路面が滑りやすいか又は滑りにくいかどうかを指示する情報も得ることが可能である。以下に記載する摩擦係数値Fμの主たる使用から明らかであるように、この主たる使用により、路面と車両タイヤとの間に存在する摩擦係数に関する最終的な質的情報を十分に完全に得ることができる。
【0022】
摩擦係数値Fμは、ブロック101から、例えばダッシュボードに設置される表示装置であるブロック105に送られ、この場合、表示装置は、組み合わせ計器に又は車両の中央コンソールに統合され、本例においては、表示装置をナビゲーションシステムと関連付けてもよい。この表示装置を使用して、表面が滑りやすい路面又は表面が滑りにくい路面のどちらに、車両が現在位置するかどうかを運転者に指示できる。例えば、雪片をフェードイン表示することによって、滑りやすい表面で運転中であることを運転者に通知できる。したがって、この結果、例えば、運転者が、滑りやすい路面において運転を継続することを可能にできる。
【0023】
ブロック105、又は表示装置105は、車両内に収容された警報システムの部分である。分かりやすくするために、このような警報システムが図1に示されている。しかし、より良く理解するために、このような警報システムの機能性について以下に説明する。
【0024】
このような警報システムはナビゲーションシステムを使用して、車両の前方の道程にわたる道路のコースを決定する。カーブ、環状交差点、交差点等のような危険な位置は、危険な位置を示す道路標識をフェードイン表示することによって、表示装置、本例では図1に示したブロック105で運転者に指示される。例えば、運転者がカーブで運転し、またこのカーブの曲率が所定の大きさを超えた場合、本例では例えば矢印であり得る適切な警報記号が、表示装置にフェードインされることによって、運転者は前方のこのカーブを認識する。このような警報システムの2つの異なる実施形態が考えられる。第1の実施形態では、車両の速度が、危険な位置に対応する速度閾値を超えた場合にのみ、警報が発せられる。第2の実施形態では、警報が発せられ、このようにして、車両の速度に関係なく、情報が表示装置にフェードインされる。
【0025】
代替例として、別の変数をブロック101に送ってもよく、このことは、破線で示した2つのブロック107と108によって指示される。一方では、外部温度を示す値Taussenをブロック107からブロック101に送ることが可能である。他方では、ウィンドシールドワイパの動作を表す値FScheibenwischerをブロック108からブロック101に送ることができる。これらの2つの値は、本発明による方法の基本機能の実施に絶対必要ではないが、これらの2つの値が利用可能である場合、これらの値を評価することによって、本発明による方法を改善することができる。2つの値TaussenとFScheibenwischerが考慮される具体的な方法については、図2の記載においてより詳細に説明する。
【0026】
図1は別のオプションを示している。この別のオプションは摩擦係数値Fμの出力及び評価に関する。摩擦係数値Fμが表示装置105に送られることに加えて、摩擦係数値Fμを様々な閉ループ及び/又は開ループ制御装置に送ることもでき、これらの制御装置は、車両内に収容され、また破線で示されているブロック106によって表されている。この場合、例えば、摩擦係数値Fμからの情報を使用して、閉ループ及び/又は開ループ制御装置の閉ループ及び/又は開ループ制御アルゴリズムを修正できる。閉ループ及び/又は開ループ制御装置として可能なものは、実施例では、ブレーキスリップ制御装置及び/又はトラクション制御装置及び/又はヨーレート制御装置及び/又は車間距離制御装置である。上に記載されている閉ループ及び/又は開ループ制御装置に、摩擦係数値Fμが付与された場合、これらの装置は、伝達できる力をかなり有利に利用できる。
【0027】
さらに、上述の警報システムでは、摩擦係数値Fμを処理することも可能である。次に、この処理により、例えば滑りやすい路面の場合に、すなわち摩擦係数が低い場合に、カーブ、交差点等に関する情報が、運転者へより早く出力されることになる。
【0028】
図1に示したブロック101で実行される図2に示されている本発明による方法について、以下に詳細に説明する。
【0029】
本発明による方法はステップ201から開始して、ステップ202に続く。ステップ202では、様々な初期化処理が行われる。したがって、このステップでは、タイマtZaehler、予め規定された数のスリップクラスカウンタλkZaehler及び速度変化値表示器aZeigerが初期化される。個々のカウンタ又はポインタの意味について、以下のステップの記載においてより詳細に説明する。
【0030】
ステップ202からステップ203に続き、ステップ203において、ブロック101に送るべき入力変数が利用可能になる。これらの入力変数は、特に、車輪r.p.m値vij及び/又はヨーレート値ψ’fil及び/又は信号BLSである。
【0031】
ステップ203から続くステップ204では、車両の基準速度を示す速度値vrefが決定される。この理由は、地上の車両の実際の速度が、車輪のスリップを決定できるようにするために必要とされるからである。
【0032】
速度値vrefを決定するための以下に記載する方法は、後輪駆動の車両に関係する。対応する適応が、前輪駆動又は全輪駆動の車両に必要である。
【0033】
速度値vrefをできるだけ正確に決定するために、2つの状況、すなわち、駆動状況と制動状況とが区別される。これらの2つの状況は、信号BLSによって区別される。駆動状況では、ブレーキライトスイッチ104は作動されない。ブレーキライトスイッチ104によって発生される信号は、例えば、値0である。対照的に、制動状況では、ブレーキライトスイッチ104は作動される。ブレーキライトスイッチ104によって発生される信号は、例えば、値1である。すなわち、駆動状況及び制動状況の2つの状況は、ブレーキライトスイッチ104によって発生される信号を用いて区別される。
【0034】
駆動状況では、速度値vrefは、駆動されない2つの車輪の車輪r.p.mの平均値を形成することによって決定される。したがって、後輪駆動の車両の場合、速度値vrefは、前輪の車輪r.p.m vvjの平均値を形成することによって決定される。この関連において、速度値vrefの決定を改善するために、前輪の車輪r.p.m vvjは後輪の車輪r.p.m vhjよりも低く制限される。この制限の理由は、駆動状況において、駆動されない車輪が、駆動される車輪よりも高速であることがないからである。
【0035】
制動状況では、速度値vrefは、最速の車輪及び2番目に速い車輪の車輪r.p.mの平均値を形成することによって決定される。この理由は次のことによる。すなわち、制動状況では、より強く制動され、したがってより低速である2つの車輪は、速度値vrefが決定されている場合に使用されない。
【0036】
さらに、速度値vrefが決定されている場合、勾配制限が行われる。この勾配制限は次のように実施される。図2の図面から明らかであるように、例示した方法は周期的な方法である。したがって、速度値vrefの決定が実行されている限り、この速度値vrefに関する値は、サイクル時間の間隔で互いに間隔があけられる連続する時間ステップの間に、それぞれ決定される。使用するプロセッサの計算サイクルによって決定されるサイクル時間は、典型的に、約10〜20ミリ秒の大きさのオーダにある。速度値vrefが決定される個々の時間ステップ又は時点の間のこの短い時間間隔のため、連続する時間ステップの間に決定される速度値vrefの値の間の差は、ランダムに大きな値を取ることができないことが明らかである。この差が所定の閾値を超えたことが検出された場合、速度値vrefの値は、サイクル時間内で最大可能な速度値vrefの変化に関する値を考慮する先行する時間ステップに利用可能であった速度値vrefの値に基づき、以下の時間ステップの間に決定される。この処置が制限を構成する。
【0037】
サイクル時間はまた、例えば入力変数の値がブロック101で読み取られるタイミングパターンを予め規定する。
【0038】
速度値vrefの決定に関する説明の冒頭において、前輪駆動又は全輪駆動の車両では、対応する適応が、速度値vrefを決定するための処置に必要であることを述べた。上述の説明から明らかであるように、これらの適応は駆動状況にのみ関係する。前輪駆動の車両では、速度値vrefは、後輪の車輪r.p.m vhjの平均値を形成することによって決定される。
【0039】
ステップ204から続くステップ205では、車両の加速挙動及び/又は減速挙動を示す速度変化値axFiltが決定される。
【0040】
このため、フィルタ処理されていない速度変化値aは、最初に、次の式(1)によって速度値vrefから決定される。
ax(t)=(Vref(t)-Vref(t-1))/T 式(1)
【0041】
この関連において、値Tは、既述したように、10〜20ミリ秒の値を典型的に有するサイクル時間を示している。変数Tは現在の時間ステップを示している。したがって、t−1は、先行する時間ステップを示している。式(1)は微分商を形成する。当然、フィルタ処理されていない速度変化値aは、速度値vrefの数学的に公式化された時間導関数として決定することも可能である。
【0042】
図2に示したステップ205で同様に実行される別の計算ステップでは、速度変化値axFilt(t)は、次の式(2)を用いて、車両速度の変化に基づきフィルタ処理することによって、フィルタ処理されていない速度変化値aから決定される。
axFilt(t)=(ax(t-1)+ax(t))/2+df*ax(t) 式(2)
ここで、df = max (0.1, abs ((Vref(t) - Vref(t-1)) / Vref(t))
【0043】
maxという用語は、括弧内にある2つの値よりも価値に関してより大きな値が選択されることを意味する。absという用語は、括弧内にある式の絶対値が形成されることを意味する。
【0044】
式(2)で示したフィルタは低域通過フィルタの特性を有する。フィルタは平均値を形成し、また平均値は、車両の速度に基づき調整される。要約すると、微分商又は時間導関数を形成し、引き続き、微分商又は時間導関数をフィルタ処理することによって、速度変化値axFiltが、速度値vrefに基づき形成され、平均値は、フィルタ処理によって形成され、また車両の速度に基づき調整される。
【0045】
ステップ205から続くステップ206では、コーナリングが行われているか否かが決定される。このため、ヨーレート値ψ’filが評価される。本例では、ヨーレート値ψ’filの値が、予め規定された閾値よりも小さいかどうかがチェックされる。予め規定された閾値は、例えば、約0.6度/秒の大きさのオーダにあり得る。ヨーレート値ψ’filの値が、急なコーナリングが行われていないことに等しい予め規定された閾値よりも小さい場合、摩擦係数値Fμを決定でき、このために、ステップ206に続き、ステップ207が行われる。他方で、ヨーレート値ψ’filの値が、急なコーナリングが行われていることに等しい予め規定された閾値よりも大きい場合、摩擦係数値Fμを決定できない。このために、システムはステップ206からステップ202に飛び越えて戻る。
【0046】
ステップ206で行われる問い合わせは、摩擦係数値Fμが、直進走行中に単独に生じることを保証する。この理由は、コーナリング時に、異なるスリップ値が、コーナリング運動のため車両の両側に生じるからであり、またこれらのスリップ値は、摩擦係数値の決定時に歪曲の原因となる。
【0047】
しかし、コーナリング運動の場合、路面と車両タイヤとの間に存在する摩擦係数を推定することも可能である。このため、修正処置が必要である。例えば、コーナリング運動中、惰性走行の場合でも、ヨーレート制御装置によって、閉ループ制御介入を行うことも可能である。この場合にも、閉ループ制御介入を確実に検出できるようにするために、ヨーレートセンサの信号を評価しなければならない。速度値vrefとヨーレート値ψ’filとを用いて、惰性走行の場合でも、最小摩擦係数値を決定でき、したがって、摩擦係数の推定値を改善することが可能になる。このため、車両の縦方向加速度に関する値は、速度値vrefとヨーレート値ψ’filとに基づき決定される。前記縦方向加速度値は、例えば商を形成することによって速度変化値axFlitと比較され、また路面と車両タイヤとの間に存在する摩擦係数の推定値として使用される最小摩擦係数値を速度変化値axFlitから決定できる。
【0048】
既述のステップ207では、速度変化値axFilt(t)の絶対値が、予め規定された閾値よりも大きいかどうかがチェックされる。このことが当てはまる場合、ステップ207に続き、ステップ208が行われる。対照的に、このことが当てはまらない場合、ステップ207に続き、以下に記載するステップ213が行われる。
【0049】
既述のステップ208では、タイミングカウンタtZaehlerが増加する。このことは、例えば式(3)に従って行うことができる。
tZaehler=tZaehler+T 式(3)
【0050】
すなわち、タイミングカウンタtZaehlerは、ステップ208が処理される毎にサイクル時間Tの値によって増加される。ステップ208で実行されるタイミングカウンタの増加は、次の意味を有する。ステップ206と207で行われる2つの問い合わせによって、摩擦係数値Fμのみが決定される予め規定された車両運転状態が存在するかどうかが検出される。予め規定されたこの車両運転状態は、ヨーレート値ψ’fil及び/又は速度変化値axFilt(t)によって規定される。予め規定されたこの車両運転状態は、車両の最小加速度又は最小減速度が生じている直進走行である。ステップ208でタイミングカウンタを増加させることにより、予め規定されたこの車両運転状態がどのくらい存在しているかが記録させられる。
【0051】
ステップ208に続き、ステップ209が行われる。このステップ209では、本発明による方法に従って摩擦係数値Fμを決定するために必要なスリップ監視が行われる。このため、車両の個々の車輪に関する車輪スリップ値λijは、最初に、車輪r.p.m値vij及び速度値vrefに基づき公知の方法で決定される。
【0052】
以下の説明に関しては、2つの車軸を有する後輪駆動の車両が基準として使用されることを留意すべきである。前輪駆動の車両又は全輪駆動の車両では、以下の説明に対応する変更又は適応がなされる。
【0053】
決定された車輪スリップ値λijを開始点として、スリップ値λVAは前車軸のために決定され、またスリップ値λHAは後車軸のために決定される。前車軸のために、2つの車輪スリップ値λVJ、すなわち2つの前輪の車輪スリップ値から平均値を形成することによって、スリップ値λVAが決定される。同一のことが後車軸のスリップ値λHAに適用される。2つのスリップ値λVAとλHAはスリップ監視の残りの基準として使用される。したがって、スリップ監視は車軸基準で行われる。代替例として、スリップ監視が、一般に、車輪固有の基準で、すなわち車輪スリップ値λijを評価することによって行われるように意図することも可能である。この場合、次に、車両の車輪の各々のために、存在する摩擦係数に関する対応する最終情報が得られる。
【0054】
速度値vrefの決定に対応して、スリップ監視のために、駆動状況と制動状況との間の区別も行われる。後輪駆動の車両では、後車軸のために決定されるスリップ値λHAが駆動状況で評価される。対照的に、前車軸のために決定されるスリップ値λVAが制動状況で評価される。
【0055】
実際のスリップ監視は次のように行われる。運転試験によって、車輪スリップ値λijのために、したがって、車軸に関連するスリップ値λVAとλHAのために予想されるように、このスリップ値の範囲が予め決定される。ここで決定された値の全範囲は個々のスリップクラスに分割されている。この関連において、スリップ値が小さくなると、分割は細かくなることができ、すなわち、スリップ値が小さくなると、個々のスリップクラスの間隔長が小さくなる。対照的に、スリップ値が大きくなると、分割は大まかになることができ、すなわち、スリップ値が大きくなると、個々のスリップクラスの間隔長が大きくなることを意味する。このようにして決定されるスリップクラスの各々には、関連するスリップクラスカウンタλkzaehlerが割り当てられる。
【0056】
ステップ204に関連して既に説明したように、速度値vrefに関する値は、サイクル時間によって予め規定されているタイミングパターンの時間ステップ毎に決定される。その結果、車輪スリップ値λij、したがって同様に、車軸に関連するスリップ値λVA又はλHAも、これらの時間ステップ毎に存在している。
【0057】
車軸に関連する2つのスリップ値のいずれかが、駆動状況又は制動状況であるかどうかに応じて評価される。評価すべきスリップ値は個々のスリップクラスの間隔制限と比較される。評価すべきスリップ値の値が、これらのスリップクラスの1つの中に位置することが検出された場合、このスリップクラスに関連するスリップクラスカウンタλkzaehlerが増加する。
【0058】
図2の図面から明らかであるように、本発明による方法は周期的な方法である。したがって、ステップ209は、以下に記載するステップ210のタイミング条件が満たされていることを前提として、ステップ206と207の条件が満たされている限り行われる。すなわち、ステップ209、したがって、行われるスリップ監視又はスリップ値の分類は、予め規定された車両運転状態の間の連続する多数の時点のために実行される。この分類により、又はスリップ値を個々のスリップクラスに分類することにより、車軸に関連するスリップ値に関する値の頻度分布が得られる。
【0059】
要約すると、ステップ209が行われる度毎に、車軸に関連するスリップ値λVA又はλHAが決定される。次に、このスリップ値は、その値に基づきスリップクラスの1つに割り当てられる。この場合、スリップクラスに関連するスリップクラスカウンタλkzaehlerが増加される。この処理は、ステップ206と207の条件が、ステップ210に含まれる問い合わせによって規定された時間フレーム内に満たされるまで繰り返される。したがって、この処置により、スリップ値に関する値の頻度分布が得られる。
【0060】
上述のような車軸基準で行われるスリップ監視の代わりに、スリップ監視を車輪固有の基準で行うこともできる。この場合、このことは、例えば、μスプリット状態と称される状態を検出することも可能であるという利点を有する。さらに、車輪固有の基準で行われるスリップ監視は、例えばヨーレート制御装置によって行われるような非常に簡単な閉ループ制御介入でさえも明瞭に検出できるという利点を有する。この背景に対し、このような簡単な閉ループ制御介入が存在する場合、車軸に関連するスリップ監視から車輪固有のスリップ監視に切り換えることが適切である。長い閉ループ制御介入は、車軸に関連するスリップ監視によって感知され、このために、このような閉ループ制御介入が行われる場合、車輪固有の閉ループ制御介入を行う必要はない。
【0061】
上述のスリップ監視に加えて、速度変化値axFilt(t)の最大値もステップ209で決定される。このため、ステップ209が呼び出される毎に、値axFilt(t)の速度変化の現在の値が最初に決定される。速度変化値axFilt(t)の現在のこの値は、速度変化値ポインタaZeigerの値と比較される。この比較の間に、速度変化値axFilt(t)の現在の値が速度変化値ポインタaZeigerの値よりも大きいことが検出された場合、速度変化値axFilt(t)の現在の値は、速度変化値ポインタaZeigerの値に上書きされる。他方で、速度変化値axFilt(t)の現在の値が速度変化値ポインタaZeigerの値よりも小さい場合、上書きは不要である。
【0062】
ステップ209から、既に上述したステップ210に続く。このステップ210では、問い合わせが使用されて、タイミングカウンタtZeigerの値が、例えば10秒の期間に対応する予め規定された最初のタイミング閾値よりも大きいかどうかをチェックする。このことが当てはまらない場合、システムはステップ210からステップ203に飛び越えて戻る。他方で、タイミングカウンタtZeigerが、予め規定された最初のタイミング閾値よりも大きい場合、ステップ210に続き、ステップ211が行われる。
【0063】
ステップ211では、摩擦係数値Fμは、値の頻度分布と速度変化値axFilt(t)の最大値とを評価することによって決定される。
【0064】
このため、個々のスリップクラスにわたるスリップ値λVA又はλHAの分布率が最初に決定される。このために、すべてのスリップクラスの和が形成され、またこの和で個々のスリップクラスカウンタが除算される。この結果、一方では、速度変化値axFilt(t)の最大値が得られ、他方では、個々のスリップクラスにわたるスリップ値λVA又はλHAの分布率が得られる。次に、個々のスリップクラスの2つのパラメータを考慮しつつ、以下の表を用いて、摩擦係数値Fμが決定される。
【0065】
【表1】

【0066】
上記の表は次の構成を有する。表は、見出し線は別として、四連の横列に本質的に分割される。二連の横列は、滑りにくい路面に関する状態に関係し、また別の二連の横列は、滑りやすい路面に関する状態に関係する。特に、一連の横列は以下のようなものである。第1の一連の横列は、乾いたアスファルトの滑りにくい路面に関する異なる状態を記載しており、第2の一連の横列は、滑らかでない雪の滑りにくい路面に関する様々な状態を記載しており、第3の一連の横列は、滑らかな雪の滑りやすい路面に関する様々な状態を記載しており、また第4の一連の横列は、車両が、滑りやすい路面に位置し、それと同時に、ブレーキスリップ制御システム(ABS)及び/又はトラクション制御システム(TCS)及び/又はヨーレート制御システム(ESP)の閉ループコントローラの簡単な介入が行われる運転状態を記載している。
【0067】
四連の横列に関連する各々の個々の横列は、表の見出し線に対応する次の構成を有する。見出し「axfilt」を有する第1の縦列では、速度変化値axFilt(t)に関する値の範囲がその都度与えられる。次の関係がここで適用される。負の値は車両の減速度を表し、また正の値は車両の加速度を表す。この縦列に続きまた共同の見出し「スリップクラス」を有する縦列を用いて、車軸に関連するスリップ値λVA又はλHA、あるいは経験に従って予想すべき車輪スリップ値λijの値の範囲が、個々のスリップクラスに分割される。本発明の実施形態は、9つのスリップクラスに分割することに基づくが、このことは、限定することを意図するものではない。当然、この値の範囲をより細かく又はより大まかに分割することもできる。
【0068】
路面のそれぞれ存在する状態に応じて、上述の四連の横列に従って区別が実行され、また速度変化値axFilt(t)に関するそれぞれ存在する値の範囲により、車軸に関連するスリップ値λVA又はλHAあるいは車輪スリップ値λijの特性である分布が得られ、この分布が、頻度をスリップクラス毎に指定できる頻度分布と称されるものである。この頻度分布は、例えば、運転試験を用いて経験的に決定できる。この頻度分布は、車軸に関連するスリップ値λVA又はλHA、あるいは車両が滑りやすい路面又は滑りにくい路面を走行している場合に生じる車輪スリップ値λijが、通常、すなわち統計的にどのように分布されているかを指示している。個々のスリップクラスのために決定される頻度値は当然変動するので、最小頻度値及び最大頻度値は、個々のスリップクラスのためにその都度指定される。
【0069】
速度変化値axFilt(t)に関する値の範囲がどのくらい細かいかに応じて一連の横列を形成するように組み合わせられる個々の横列の数が分割される。
【0070】
表に含まれる横列の各々の個々の列が最小頻度値及び最大頻度値を利用して、車輪スリップ値λijに関する頻度分布と、路面のそれぞれの状態及び速度変化値axFilt(t)のそれぞれの値の範囲に関する特性である車軸に関連するスリップ値λVA又はλHAに関する頻度分布とを示す。
【0071】
摩擦係数値Fμ、及びそれに割り当てるべき情報は、次のように決定される。最初に、速度変化値axFilt(t)の最大値を評価することによって、表の考慮の対象となる横列が決定される。このため、第1のこの縦列で指定された間隔のいずれに、速度変化値axFilt(t)の最大値が含まれるかがチェックされる。次に、考慮の対象となるこれらの横列のいずれが、車軸に関連するスリップ値λVA又はλHAのために決定される値の頻度分布、あるいは車輪スリップ値λijのために決定される値の頻度分布に対応する分布を有するかが決定される。このため、考慮の対象となる横列毎に、スリップクラスカウンタλkzaehlerのすべてについて、前記カウンタにそれぞれ割り当てられる割合値が、それぞれ関連するスリップクラスの間隔に含まれるかどうかが決定される。すべてのスリップクラスに対応する横列がある場合、この横列は、摩擦係数値Fμに割り当てるべき情報を決定する。摩擦係数値Fμには、結果に応じて、情報「滑りやすい」又は情報「滑りにくい」、あるいはそれに対応して符号化された信号値が情報として割り当てられる。
【0072】
上述の処置に基づき、表に対する当たりが得られた場合、車両の最後の加速段階又は減速段階のために、タイヤと路面との間の状態が検出されており、その状態に応じて反応できる。
【0073】
上述の処置を用いて、連続する同一の予め規定された複数の車両運転状態の間に、別個の摩擦係数値をその都度決定できる。すなわち、互いに独立している時間的に連続する複数の処理において、摩擦係数値を決定できる。この処置に基づき、このような複数の摩擦係数値から平均値を形成することによって、本発明による方法を改善することが可能である。
【0074】
ここで、上記の表がどのように作成されるかについて詳細に説明する。加減速処理に関するスリップクラス特性分布率は、滑りにくい路面及び滑りやすい路面における運転試験によって予め経験的に決定され、また滑りやすい状態(積雪)に関する表、及び滑りにくい状態(乾いたアスファルト)に関する表として記憶されている。
【0075】
摩擦係数の推定を拡張するために、例えば砂利又は砂のような追加の路面に関するスリップ特性分布と、一例として、木の葉で覆われる路面又は水浸しの路面が挙げられる追加の路面状態に関するスリップ特性分布とを有する上記の表を拡張することが可能である。表は、別の一連の横列により対応して拡張される。
【0076】
ブレーキスリップコントローラによって及び/又はトラクションスリップコントローラによって及び/又はヨーレートコントローラによって閉ループ制御介入が行われる予め規定されたこのような車両運転状態は、上記の表に関連する特別な位置を取る。このような閉ループ制御介入が行われる場合、スリップ分布は、より高いスリップクラスの方向にシフトされる。このため、上記の表は、第4の一連の横列の2列である対応する2つの横列を有するが、この理由は、車輪スリップ値λijあるいは車軸に関連するスリップ値λVA又はλHAの値の頻度分布が、高いスリップ値を有する特に高い割合のスリップクラスを形成するので、このような運転状態において摩擦係数を特に容易かつ明瞭に検出できるからである。ブレーキスリップコントローラによって及び/又はトラクションスリップコントローラによって及び/又はヨーレートコントローラによって閉ループ制御介入が実行される運転状態があるかどうかを検出するために、これらのコントローラが作動しているかどうかを指示する対応するフラグを評価すること、又はこのような閉ループ制御介入を行うための対応する信号を出力することが可能である。分かりやすくするために、対応する信号は図1には表されていない。
【0077】
ステップ211に続き、ステップ212が行われ、ステップ212において、摩擦係数値Fμの別の処理が行われる。最初に、図1に示した表示装置105を用いて、摩擦係数値Fμの情報が運転者に表示される。すなわち、運転者には、現在運転中の道路が、滑りにくい表面であるか又は滑りやすい表面であるかどうかが通知される。さらに、別の処理のために、摩擦係数値Fμを、車両内に取付けられている他の閉ループ及び/又は開ループ制御装置106に送ることができる。システムはステップ212からステップ202に飛び越えて戻る。
【0078】
ステップ207において、速度変化値axFilt(t)の絶対値が、予め規定された閾値よりも小さいことが検出された場合、ステップ207に続き、既述のステップ213が行われる。このステップ213では、問い合わせによって、タイミングカウンタtZaehlerの値が、例えば0.5秒の期間に対応する予め規定された第2の時間閾値よりも大きいかどうかがチェックされる。このことが当てはまらない場合、システムはステップ213からステップ202に飛び越えて戻る。他方で、タイミングカウンタtZaehlerが第2の時間閾値よりも大きい場合、ステップ211に続き、ステップ213が行われる。
【0079】
時間カウンタtZaehlerを評価することによってステップ210と213で行われる2つの時間問い合わせは、次の背景を有する。予め規定された車両運転状態が、予め規定された最小期間の間存在し、したがって、このような多数の車輪スリップ値λijが、摩擦係数値Fμの決定を確実に考慮できるように決定されるまで、摩擦係数値Fμが生じないことを保証するように、ステップ213の時間問い合わせが意図される。ステップ210に含まれる時間問い合わせは、例えば値を10秒に設定できる予め規定された期間に到達するか又はその期間を超過した場合、摩擦係数値Fμの決定を終了する関数を有する。このことに関する背景は、別の車輪スリップ値λijのさらなる決定が、摩擦係数値Fμの決定の質の向上をもたらさないように、このように多数の車輪スリップ値λijが、特定の期間から始まって決定されることである。
【0080】
図1に関して既に示したように、摩擦係数値Fμの決定を改善するために、別の値をブロック101に送ることができる。これらは、例えば、外部温度を示す値Taussen、及びウィンドシールドワイパの動作を表す値FScheibenwischerである。これらの2つの変数が入力変数としてブロック101に対し利用可能な場合、本発明による方法では、ステップ201とステップ202との間に、任意の2つのステップが間挿される。分かりやすくするために、これらの任意の2つのステップは図2には示されていない。
【0081】
第1の任意のステップでは、外部温度を示す値Taussenを評価することによって、外部温度が、例えば15℃の外部温度を表す予め規定された温度閾値よりも高いかどうかをチェックすることが可能である。このことが当てはまる場合、滑りにくい路面が存在することを前提とすることが可能である。この場合、ステップ202〜ステップ213の処理を省略することが可能であり、またパラメータFμには、滑りにくい路面を表す値を直接割り当てることができる。
【0082】
第1の任意のこのステップの代わりとして及び/又はそれに加えて、第2の任意のステップを挿入することが可能である。第2の任意のこのステップでは、外部温度を示すパラメータTaussenと、ウィンドシールドワイパの動作を表すパラメータFScheibenwischerとを評価することによって、低い外部温度が存在し、同時に、ウィンドシールドワイパが動作しているかどうかをチェックすることが可能である。このことが当てはまる場合、すなわち、雨が降り、同時に、温度が低い場合、摩擦係数の低い路面の状態が存在することを前提とすることが可能である。この場合、ステップ202〜ステップ213の処理を省略することも可能であり、またパラメータFμには、滑りやすい路面を表す値を直接割り当てることができる。
【0083】
ここで、第1の実施形態に従って、本発明による方法の核心についてもう一度要約する。本発明によるこの方法では、滑りにくい路面に関するタイヤスリップ挙動が、滑りやすい路面に関するタイヤスリップ挙動とは典型的に異なるという事実が利用される。このようにして、μスリップ曲線で表される関係が利用される。スリップ挙動は、予め規定された車両運転状態の間に決定される。予め規定されたこの車両運転状態は、車両の加速段階又は減速段階の間に行われる直進走行である。したがって、予め規定されたこの車両運転状態は、速度変化値によって規定される車両運転状態である。基本的に、車軸に関連するスリップ値λVA又はλHAは、|axFilt|>0.5m/秒の加速段階又は減速段階の間に、及び最小時間0.5秒〜最大時間10秒の間に決定される。この時間中、スリップ値はサイクル毎に計算されて分類され、生じた度数は、対応するスリップクラスに記憶され、また最大の加速度値又は減速度値は加速段階又は減速段階の間に決定される。加速段階又は減速段階の終了後に、生じたスリップ値の絶対度数は、スリップクラスにわたるスリップ値の分布率として計算される。次に、決定される値、すなわち、スリップクラスの割合値と、最大の加速度値又は減速度値とがチェックされて、それらの値が所定の範囲内にあるかどうかを決定する。個々のスリップクラスのために、また決定された加速度又は減速度のために、最小許容値と最大許容値とによってユニークに規定される範囲がその都度存在する。表の線のすべての範囲の条件が満たされた場合に、表に対する当たりが確認される。各スリップ監視段階の後に、表に完全に目を通し、この結果、表に対する多数の当たりも可能である。
【0084】
本発明による装置又は本発明による方法の第2の実施形態について、図3を始めとして説明する。この関連において、第2の実施形態のブロック又はステップが、第1の実施形態のブロック又はステップに対応する場合、このことについて以下に指摘する。第1の実施形態のブロック又はステップに関する説明は、この場合、第2の実施形態のブロック又はステップにも適用される。同一のことが他の方面にも適用される。
【0085】
図3は、本発明による装置の第2の実施形態を概略的に示しており、ブロック301はこの装置の中心部を表している。図4を参照して、このブロックの具体的な構造についてより詳細に説明する。
【0086】
本発明による方法を行うために、様々な入力変数がブロック301に送られる。車両の個々の車輪の車輪速度を示す車輪速度値nijは、ブロック302からブロック301に送られる。この関連において、ブロック302は、車両の個々の車輪に割り当てられる車輪速度センサを備える。当然、第1の実施形態の処置も同様のものであると考えられるので、車輪速度値nijはブロック301に送られず、代わりに、車輪r.p.m値vijがブロック301に送られる。この場合、ブロック302はブロック102に対応する。フィルタ処理されたヨーレートを示すヨーレート値ψ’filは、ブロック303からブロック301に送られる。ブロック303はブロック103に対応する。
【0087】
車両の横方向加速度を示す横方向加速度値ayは、ブロック304からブロック301に送られる。ブロック304及び横方向加速度値ayの供給の両方は、次の意味を有する破線で表される。横方向加速度値ayは、本発明による方法を行うために必ずしも必要とされない。横方向加速度値ayが必要とされるかどうかは、ブロック407に関連して詳細に記載するカーブ検出のどのタイプが実施されるかに依存する。
【0088】
さらに、ブレーキライトスイッチ305によって発生される信号BLSは、ブロック301に送られる。この信号は、例えば、ブレーキライトスイッチが切り換えられ、したがってブレーキペダルが作動されている場合に状態TRUEを取る論理信号であり、またブレーキライトスイッチが切り換えられず、したがってブレーキペダルが作動されていない場合に状態FALSEを取る論理信号である。さらに、ブレーキライトスイッチ305はブレーキライトスイッチ104に対応する。
【0089】
車両内に収容された閉ループ及び/又は開ループ制御装置の状態に関する情報を含む値FEAAZは、ブロック306からブロック301に送られる。すなわち、この値は、閉ループ及び/又は開ループ制御装置の1つ又は複数が作動して、閉ループ及び/又は開ループ制御介入を行っているかどうかをそうであるならば指示する情報を含む。これらの装置は、例えば、車両のブレーキスリップ制御装置及び/又はトラクションスリップ制御装置及び/又はヨーレート制御装置であり得る。
【0090】
変数FEAAZは、この関連において、上述の装置のいずれが作動しているかに応じて、異なる情報内容を有する。例えば、ブレーキスリップ制御装置が作動している場合、変数FEAAZは、車両の各車輪のために、ブレーキスリップがこの車両の車輪に生じているか否かを指示する情報を含む。トラクションスリップ制御装置が作動している場合、FEAAZ変数は、車両の各車輪のために、駆動スリップがこの車両の車輪に生じているか否かを指示する情報を含む。両方の場合において、情報は、次の理由により車輪固有の基準で利用可能になる。ブレーキスリップを制御するための介入の場合、及びトラクションスリップを制御するための介入の場合の両方において、比較的長い期間の間、高いブレーキスリップ値又は駆動スリップ値が車両の個々の車輪に生じる。このことにより、値の頻度分布を決定する間に、車輪固有の基準で決定された値の頻度分布が、絶対値の大きさであるスリップ値に向かってシフトされることになる。シフトされたこのような頻度分布を正確に解釈できるようにするために、車輪に生じているブレーキスリップ又は駆動スリップに関する情報が評価される。さらに、このような状態では、利用されている摩擦係数、したがって実際に存在している摩擦係数の基準を構成する伝達力を推定することによって、決定された摩擦係数値でプラウシビリティチェックを行うことができる。この理由は、車輪の高いスリップを示す値の頻度分布が、滑りやすい路面が存在する印象を与える可能性があるからである。伝達力を推定する間に、過度に高い摩擦係数が存在していることが明らかになった場合、滑りやすい路面は存在せず、その代わりに、滑りにくい路面が存在しなければならない。その詳細について以下に説明する。
【0091】
対照的に、車両のヨーレートを制御するための装置が作動している場合、パラメータFEAAZは、単に、制動介入が行われるか否かを指示する車両の車輪の1つにおけるグローバル情報を含む。このグローバル情報は、次の理由により十分である。ヨーレート制御の範囲内で行われる制動介入により、著しい横方向スリップ値が生じる可能性がある間に、横方向力学の観点で不安定な車両の状態を安定させるために、車両に作用するヨートルクがもたらされる。摩擦係数値を決定するための本発明の方法は、車両の個々の車輪に存在する縦方向スリップの評価に基づくので、値の頻度分布を決定する間にこのような運転状態を考慮することにより、結果の歪曲、すなわち、決定された摩擦係数値の歪曲がもたらされる。このため、変数FEAAZが、ヨーレートを制御するための装置の制動介入が行われていることを指示する場合、値の頻度分布の決定は、この介入が行われている期間の間中断される。同時に、このような運転状態では、雪片記号の出力が省略される。その詳細について以下に説明する。
【0092】
外部温度を示す変数Taussenは、例えば、温度センサでありかつブロック107に対応するブロック307からブロック301に送られる。さらに、パラメータFRegenをブロック301に選択的に送ることができ、このことは、例えば雨センサであるブロック308から破線表示で指示されている。この変数は、例えば、降雨による水又は濡れた路面からの水(水しぶき)がウィンドシールドの位置にあるかどうかをブロック301に通知する。このことの代わりとして又はそれに加えて、この変数によって、ブロック301には、ウィンドシールドワイパの拭き取り動作に関する情報を提供できる。この情報は、例えば、時間単位毎の拭き取り処理数を含み得る。
【0093】
さらに、ウィンドシールドワイパの動作状態を表す変数FScheibenwischerをブロック301に選択的に送ることができ、このことは、ブロック108に対応するブロック309から破線表示で指示されている。変数FScheibenwischerは様々な情報項目を含むことができる。例えば、ウィンドシールドワイパが間隔動作モードにあり、また雨センサに関連して、可変の間隔長による間隔の拭き取りが行われているかどうかについての情報により、及び/又はウィンドシールドワイパがその停止位置の外側にあるかどうか、すなわち、ウィンドシールドワイパが現在動いているかどうかについての情報により、及び/又は汚れたウィンドスクリーンを清掃するために、運転者が洗浄拭き取り機能を作動したかどうかについての情報により、この場合、ウィンドシールドワイパの動作に基づき、路面が濡れていると結論すること、したがって滑りやすいと結論することは必ずしも可能ではない。
【0094】
ブロック301では、それに送られた入力変数を処理することによって、第2の実施形態の本発明による方法が実行される。本発明によるこの方法によれば、路面と車両タイヤとの間に存在する摩擦係数を表す摩擦係数値Fμが決定される。第1の実施形態のように、路面が滑りにくいか又は滑りやすいかどうかについて区別した形態で、道路の状態を質的に表す基準が決定される。
【0095】
ブロック301を出発点として、摩擦係数値Fμがブロック310及びブロック311の両方に送られる。この関連において、図3に選択した図面は、単一の値のみがこれらの2つのブロックに送られる効果に限定することを意図するものではない。代わりに、この図面はまた、摩擦係数値Fμが、ブロック310のために意図されている成分、及びブロック311のために意図されている成分の両方を含む可能性があることが意図され、この結果、別個の値はブロック310及びブロック311の両方に送られる。ブロック310は、第1の実施形態に関連して既に説明した警報システムであり、この警報システムは、表示装置を用いて、危険な位置を示す道路標識をフェードイン表示することによって、道路のコースにおける危険な位置を運転者に指示する。表示装置は、ブロック105に対応するブロック311によって図3に示されている。
【0096】
摩擦係数値Fμが使用されて、すなわち路面が滑りやすいか又は滑りにくいかどうかが決定されている摩擦係数のクラスを警報システム310に通知する。この関連において、摩擦係数値Fμは、特に、次の状態を取り、したがって、次の情報を含むことができる。摩擦係数情報は利用可能ではなく、またこの状態は、特に摩擦係数の決定を初期化する場合に取られ、すなわち、高い摩擦係数が存在し、したがって滑りにくい路面が存在することと、低い摩擦係数が存在し、したがって滑りやすいか又は濡れた路面が存在することを初期化する場合に、前記状態が取られる。
【0097】
摩擦係数値Fμによって警報システム310に伝達される情報は、警報システムの作動方法に影響を及ぼす。例えば、この情報は、特性曲線を切り換えるために、あるいは摩擦係数に依存するパラメータ又は特性線図にアクセスするために、すなわち当該パラメータ又は特性線図を選択するために使用される。この結果、車両の速度が、危険な位置に対応する速度閾値を超えた場合にのみ、警報が発せられる警報システムの場合、運転者情報を生じさせる速度閾値は、摩擦係数の低い道路状態に低減でき、したがって、運転者へより早く通知できる。情報がフェードイン表示され、このようにして、運転者が、車両の速度とは無関係に警報を受ける警報システムでは、この情報は、路面が滑りやすい場合、すなわち、摩擦係数が低い場合により早く発せられることができる。したがって、全体的に、警報システムの両方の実施形態により、運転者がより早く警報を受ける。
【0098】
既述したように、ブロック311は、警報システムに含まれる表示装置である。摩擦係数値Fμを用いて表示装置311に伝達される情報は、例えば雪片であり得る警報記号の表示をトリガし、この警報記号の表示により、低い摩擦係数が存在すること、したがって、滑りやすい路面であることを運転者が認識するようになる。このため、警報システム310と同一の情報、すなわち、決定される摩擦係数のクラスに関する情報が、表示装置311に対し利用可能になる1つの可能性がある。代わりに、単に、警報記号を表示する要求を送ることができる。別の代替例として、変数又は信号を表示装置311に送らないことが可能である。この場合、表示装置311は、警報システム310の内部に発生される変数によって作動される。
【0099】
図4を参照して、ブロック301の作動方法について以下により詳細に説明する。ブロック401が使用されて、それに送られる車輪速度値nijに基づき、車輪r.p.m値vijを決定する。このため、車輪速度は、車輪の円周に関する値を用いて車輪r.p.m値に変換される。次に、このようにして決定される車輪r.p.m値がフィルタ処理されて、車輪r.p.m値vijとしてブロック402とブロック403とに出力される。図3に関連して既に説明したように、車輪r.p.m値vijが車輪速度値nijの代わりにブロック301に送られる場合、この方法ではブロック401は不要である。この場合、ブロック401の機能はブロック302に含まれる。
【0100】
ブロック402では、車両の基準速度を示す速度値vrefは、ブロック402に送られる車輪r.p.m値vijに基づき決定される。速度値vrefを決定する間に、第1の実施形態と同様に、制動状況と駆動又は惰性走行状況との間で区別が行われる。この区別は、ブロック402に送られる信号BLSによって行われ、次の関係が信号BLSに適用される。ブレーキライトスイッチの作動時には、制動状況が生じ、またブレーキライトスイッチの非作動時には、駆動又は惰性走行状況が生じる。制動状況が生じた場合、車輪r.p.mが最も高い車両の車輪が最初に決定される。速度値vrefは、フィルタ処理によってこの車輪r.p.mから決定される。この関連において、決定すべき速度値vrefを制限するように、フィルタ処理が意図される。他方で、駆動状況が生じた場合、速度値vrefは、駆動されない2つの車輪の車輪r.p.m値の平均値を形成することによって決定され、したがって、後輪駆動の車両の場合、このことは、2つの前輪の車輪r.p.m値から決定される。速度値vrefを決定する間に、連続する2つのサイクル時間に関する時間経過に伴う速度値の変化が、最大値に制限されるように、制限が行われることが有利である。速度値vrefは、ブロック403、ブロック406、ブロック409に送られ、また破線で表されているように、ブロック407には選択的に送られる。
【0101】
ブロック403では、車両の車輪に関する車輪スリップ値λijは、ブロック403に送られる車輪r.p.m値vijと、速度値vrefとに基づきブロック403で決定される。車輪スリップ値λijを決定する間に、ブロック403にも送られる信号BLSを用いて、制動状況と駆動状況との間で区別が行われる。制動状況が生じた場合、車輪スリップ値λijが次式に従って決定される。
λij = (vij - vref) / vref
他方で、駆動状況が生じた場合、車輪スリップ値λijが次式に従って決定される。
λij = (vij - vref) / vij
車輪スリップ値λijは、以下に記載するブロック404に別の処理のために送られる。
【0102】
ブロック406では、それに送られる速度値vrefを評価することによって、静止状態検出が行われる。このため、速度値vrefは、例えば、3m/秒の大きさのオーダの予め規定された閾値と比較される。この評価の結果は、論理変数に一致する変数FStillを用いて、以下に記載するブロック408に送られる。例えば、次の関係が変数FStillに適用される。速度値vrefが閾値未満に降下した場合、車両が実質的に静止又は完全に静止していることを前提とすることが可能であり、このため、変数FStillには値TRUEが割り当てられる。他方で、速度値vrefが閾値よりも大きいことが検出された場合、車両が走行していることが検出され、また変数FStillには値FALSEが割り当てられる。このようにして、変数FStillは、車両が実質的に静止しているかどうかについての情報、又は車両が完全に静止しているかどうかについての情報を含む。
【0103】
ブロック407では、それに送られる変数を評価することによって、コーナリング検出が行われる。コーナリング検出の結果は、論理変数に一致する変数FKurveを用いてブロック408に送られる。このようにして、変数FKurveは、車両がコーナリング中であるか否かについての情報、又は車両がカーブを通過走行しているか否かについての情報を含む。コーナリングの検出を行うための2つの代替実施形態がある。第1の実施形態では、横方向加速度値ay及びヨーレート値ψ’filは、コーナリングを検出するために評価される。第1の本実施形態では、上述の2つのパラメータの少なくとも1つが、それぞれ関連する閾値を超えた場合、コーナリングが行われている。この場合、パラメータFKurveには値TRUEが割り当てられる。他方で、横方向加速度値ay及びヨーレート値ψ’filの両方が、それぞれ関連する閾値未満であることが検出された場合、直進走行が検出される。この場合、値FALSEが変数FKurveに割り当てられる。横方向加速度に関する閾値は、例えば、2m/秒^2の大きさのオーダにある。ヨーレートに関する閾値は、例えば、10°/秒の大きさのオーダにある。第2の実施形態では、ヨーレート値ψ’fil及び速度値vrefは、コーナリングを検出するために評価される。このため、車両の車輪の軌跡FzgSpurbreiteを考慮しつつヨー角値ψ’fil及び速度値vrefに基づき形成される商が閾値S1と比較される次式が、評価される。
(|ψ’fil|・FzgSpurbreite )/(2・vref)>S1

【0104】
本実施形態では、上記の式が満たされる場合、すなわち、前述の商が閾値S1よりも大きく、また速度値vrefが、例えば値がゼロである関連する閾値よりも大きい場合、コーナリングが行われている。この場合、値TRUEはパラメータFKurveに割り当てられる。そうでなければ、コーナリングは行われておらず、このため、パラメータFKurveには値FALSEが割り当てられる。
【0105】
上記の式では、商は、車両が通過走行しているカーブの半径の基準を表している。閾値S1は、値の頻度分布に基づくそれぞれのスリップ範囲が分割されるスリップクラスの多数の間隔長に対応する。したがって、商は、多数の間隔長と比較されるが、この理由は、例えば転回操作中に行われるような急なコーナリングが、車両の両側に異なる車輪スリップ値を生じさせるからであり、このことは、車両の左側車輪及び右側車輪に関する値の頻度分布をシフトすることによって明確になる。したがって、閾値S1は、コーナリングのために生じる値の頻度分布のシフトの基準である。
【0106】
コーナリングを検出する手段の代替実施形態は、ブロック407への速度値vref及び横方向加速度値ayの両方の供給が破線で表されている図4に指示されている。
【0107】
既述のブロック408では、ブロックに送られる変数FStillとFKurveが使用されて、値の頻度分布が決定されている予め規定された車両運転状態が存在するかどうかを検出する。この評価の結果は、変数FKlassを用いてブロック408によって出力される。2つの変数FStillとFKurveを評価する間に、これらの2つの変数の少なくとも1つが値TRUEを有することが検出された場合、値の頻度分布の決定は行われない。言い換えれば、車両が実質的に静止状態にある場合、又は車両がカーブ、特に急カーブを通過走行している場合、値の頻度分布は決定されない。この場合、例えば、値FALSEがパラメータFKlassに割り当てられる。そうでなければ、このことは、車両が実質的に静止状態ではなく、またカーブを通過走行していない場合に、値の頻度分布が決定されることを意味する。異なる方法で定式化が行われる。
値の頻度分布は、ある最小速度で走行中に本質的に直線で行われる。この場合、例えば、値TRUEが変数FKlassに割り当てられる。したがって、車両が、実質的に静止状態にあるか又は急カーブを通過走行している運転状態が、フェードアウト表示されるが、この理由は、車輪のスリップが関連している限り、前記運転状態が、値の頻度分布を評価することによる摩擦係数値の決定によって信頼性の高い、すなわち利用可能な結果が供給されない極めて動的な経過であるからである。
【0108】
ブロック408で行われる評価の結果は、3つのブロック403又は404又は405の1つに送られる。このことは、3つのブロック403、404及び405が含まれる破線内に形成されたブロックに変数FKlassを送ることによって図4に指示されている。このことにより、これらの3つのブロックの少なくとも1つの作動順序に影響を与えることが可能になり、このようにして、値の頻度分布の決定又は評価に様々な方法で介入すること、あるいは前記決定又は評価を妨げることが可能になる。
【0109】
既述のブロック404では、それに送られた車輪スリップ値λijが分類され、すなわち、車輪スリップ値λijの値の頻度分布が決定される。この分類の結果、すなわち、車両の個々の車輪のために決定された値の頻度分布は、既述のブロック405に値λktabijの形態で送られる。ブロック405では、それに送られた車両の個々の車輪に関する値の頻度分布が評価され、この結果、車両の車輪の各々のために、車輪摩擦係数値Fμijが決定される。この評価の結果は、以下に記載するブロック411に別の処理のために摩擦係数値Fμijの形態で送られる。ブロック404、405及び411で行われる作動順序について、図5に関連して詳細に説明する。パラメータFEAAZは、3つのブロック403、404及び405が含まれる破線内のブロックに送られる。このパラメータが、ヨーレートの閉ループ制御を実行するための装置の制動介入が行われていることを指示した場合、ブロック404で行われる値の頻度分布の決定は、前述の制動介入が持続する限りフェードアウト表示される。代替例として、ブロック405で行われる評価も省略できる。
【0110】
既述のブロック409では、車両の加速度を示す縦方向加速度変数axは、ブロック409に送られた速度値vrefに基づき決定される。この縦方向加速度変数axは、例えば、時間導関数を形成することによって、又は適切なフィルタ処理によって得ることが可能である。縦方向加速度変数axはブロック410に送られる。
【0111】
伝達力はブロック410で推定される。一般的に、この推定中に定式化が行われて、車両に作用する加速度、特に、車両に作用する縦方向加速度が、重力定数に関して設定され、それぞれの運転状態に利用される摩擦係数の基準の決定を可能にする。伝達力のこの推定の具体的な実施に関して、2つの形態が考えられる。第1の形態では、車両の2つの運転状態、すなわち、制動状況及び駆動又は惰性走行状況は、ブロック410に送られる信号BLSを用いて伝達力を推定する場合に識別される。制動状況では、前軸及び後軸の両方の摩擦係数に関する推定値は、現在の実際の車両の加速度又は減速度、重力定数g、及び標準的なアスファルト道路の転動抵抗値を表す変数MUE_ROLLから得られる。摩擦係数に関する推定値は、例えば、次式に従って得られる。
μPlausVA=μPlausHA=|ax|/(g*MUE_ROLL)
【0112】
駆動又は惰性走行状況では、伝達力が推定されている場合、前車軸と後車軸との間で区別が行われる。前車軸に関して、摩擦係数に関する推定値μPlausVAは値MUE_ROLLに一致し、一方、後車軸の摩擦係数に関する推定値μPlausHAは、次式に従って得られる。
μPlausHA=(FLuft+FRoll+FAntrieb)/(a*m*g)
【0113】
すなわち、車両に作用する縦方向加速度は、重力定数gに関して設定され、構造的に条件付けられた車軸荷重分布の結果として後車軸に作用する割合が、要因aによって考慮される。車両に作用する加速度の決定は、例えば、それぞれの運転状態に存在しかつエンジン介入から生じる車両の加速度、又は制動介入から生じる車両の減速度、ならびに空気抵抗及び/又は転動抵抗から生じる減速率を含む。2つの変数μPlausVAとμPlausHAはブロック411に送られる。
【0114】
第2の実施形態では、伝達力の推定が提案され、またこの推定は、計算の複雑さを減らして行われる。第2の実施形態では、制動状況と駆動状況との間で区別が行われず、また前車軸及び後車軸を別個のものとは考えない。この場合、伝達力は、例えば、次の商を用いて推定され、
μPlaus=(FLuft+FRoll+FAntrieb)/(m*g)
ここで、変数μPlausは、現在の駆動状態に利用される摩擦係数の基準を構成する。変数μPlausはブロック410からブロック411に送られる。第2の本実施形態は第1の実施形態と多少違うだけなので、第2の実施形態については、ここでのみ言及し、これ以降はさらに詳細に説明しない。このため、変数μPlausは図4に記入されていない。
【0115】
変数μPlausVAとμPlausHAに加えて、別の変数がブロック411に送られる。これらの変数は、図3に関連して既に説明した変数FEAAZとTaussen、ならびに選択的に送られる変数FRegenとFScheibenwischerである。さらに、信号BLSはブロック411に送られる。ブロック411では、摩擦係数値Fμijは、上述の変数を用いてプラウシビリティについてチェックされ、また摩擦係数値Fμは、処理で得られる結果に基づき決定される。このプラウシビリティチェックの間に、例えば、車両が進んだ距離に基づき、又は予め規定された状態が存在する期間にわたって考慮される別の条件を考慮に入れることができる。
【0116】
本発明による装置の第2の実施形態のブロック301で実行される本発明による方法について、図5を用いて以下に説明する。特に、ブロック404、405及び411の作動方法についてここで詳細に説明する。本発明によるこの方法は、ステップ501から開始して、異なる変数が初期化されるステップ502に続く。一方では、以下に記載するスリップクラスカウンタλktabijが初期化される。他方では、中間値Fμ_Plaus、車輪の摩擦係数値Fμij及び摩擦係数値Fμが初期化される。中間値Fμ_Plaus及び車輪の摩擦係数値Fμijの両方、ならびに摩擦係数値Fμには、摩擦係数情報が現在利用可能ではないという事実を表す値が各々割り当てられる。摩擦係数値Fμが、ブロック310のために意図されている成分、及びブロック311のために意図されている成分の両方を含む場合、これらの2つの成分はまた、摩擦係数値Fμに関する説明に従って初期化される。
【0117】
ステップ502から、ブロック301に送るべき入力変数が利用可能になるステップ503に続く。特に、これらの変数は、車輪速度値nij、ヨーレート値ψ’fil、選択的に処理された横方向加速度値ay、信号BLS、変数FEAAZ、変数Taussen、及び選択的に処理された2つの変数FRegenとFScheibenwischerである。この関連において、変数Taussen、FRegen及びFScheibenwischerが、ステップ503が実行される毎に更新された形式で存在せず、更新された値が、例えば、各10回の実行でのみ利用可能になるように意図することが可能である。このことは、例えば、外部温度のみがゆっくり変化するので正当化される。
【0118】
異なる変数は次のステップ504で決定される。これらの変数は、ブロック401で決定された車輪r.p.m値vij、ブロック402で決定された速度値vref、ブロック406で決定された変数FStill、ブロック407で決定された変数FKurve、及びブロック409で決定された縦方向加速度変数axである。車輪スリップ値λijは、ステップ504から続くステップ505で決定される。
【0119】
ステップ505からステップ506に続き、ステップ506において、予め規定された車両運転状態が存在するかどうかが決定される。このため、ブロック408に関連して記載した2つの変数FStillとFKurveの評価が行われる。車両が、予め規定された運転状態にあること、この場合、車両が、最小速度で本質的に直進走行中であることがステップ506で検出された場合、このために、車輪スリップ値λijに関する値の頻度分布を決定でき、このようにして、ステップ506に続き、ステップ507が行われる。対照的に、ステップ506において、予め規定された車両運転状態が存在しないこと、この場合、車両が実質的に静止状態にあるか、又は車両がカーブ、特に急カーブを通過走行していることが検出された場合、車輪スリップ値λijに関する値の頻度分布を決定できず、このため、ステップ506の後に、ステップ503が再び行われる。ステップ506を用いて行われる分岐動作は、予め規定された車両運転状態が存在せず、それにもかかわらず、このために必要とされる変数、特に車輪スリップ値λijが利用可能にされる限り、値の頻度分布が行われないことを保証する。
【0120】
図5に示されている2つのステップ505と506の順序を変えて、ステップ506に続き、ステップ505を行うこともできる。このことは、予め規定された車両運転状態が存在する場合に、車輪スリップ値λijが単独に決定されることを意味する。これに対し、図5に示した2つのステップ505と506の構成に基づき、予め規定された車両運転状態が存在する場合、また当該状態が存在しない場合の両方で、車輪スリップ値λijが決定される。
【0121】
既述のステップ507では、車輪スリップ値λijの値の頻度分布が決定される。この関連において、関連する車輪スリップ値λijに関する値の別個の頻度分布は、車両の車輪の各々のために決定される。運転試験では、最小スリップ値及び最大スリップ値によって示されている考慮すべきスリップ範囲が決定される。このスリップ範囲は、値の頻度分布を決定するための基準として利用される。このスリップ範囲は、等距離の幅、すなわち、同一の間隔長を有することが有利である予め規定された数のスリップクラスに分割される。例えば第1の実施形態に指示されているように、個々のスリップクラスの間隔長を、値の頻度分布の予想された構成に適応させること、及びある範囲のより狭いスリップクラスと、ある範囲のより広いスリップクラスとを許容することも考えられる。スリップクラスは、「ゼロ」スリップ値に対して対称的に配置されることが有利である。最小スリップ値を含むか又はその値のすぐ近くにあるスリップクラスは、最初のスリップクラスと称される。最大スリップ値を含むか又はその値のすぐ近くにあるスリップクラスは、最後のスリップクラスと称される。
【0122】
図5の図面から明らかであるように、この方法は周期的な方法である。この関連において、ステップ503〜509は、例えば、10〜100ミリ秒の大きさのオーダのサイクル時間毎に1回実行すべきである。この結果、値の頻度分布を決定するために、予め規定されたスリップクラスに分類される車輪スリップ値λijは、10〜100ミリ秒の範囲にある。予め規定された車両運転状態が存在する場合、値の頻度分布は、サイクル時間毎に更新されて評価される。車両の車輪の各々のために、値の頻度分布が有利に決定され、このことは、対応する車輪スリップ値の分類が、車両の車輪の各々のために行われることを意味する。
【0123】
値の頻度分布は、既述のスリップクラスカウンタλktabijを用いて決定され、車両の車輪の各々のために、別個のスリップクラスカウンタが設けられる。スリップクラスカウンタは、ベクトル値と称される多次元値であることが有利であり、この多次元値は、スリップクラスの数に一致するいくつかのカウンタ要素を有する。このようにして、各々の個々のカウンタ要素は、関連するスリップクラスの車輪スリップ値の値の発生頻度を表しており、一方、スリップクラスカウンタそれ自体は、全スリップ範囲の車輪スリップ値の値の頻度分布を表している。
【0124】
値の頻度分布の決定が基礎とされる処置について以下に説明する中において、任意の所望の時点は、この時点に存在する車輪スリップ値と共に考慮される。決定された車輪スリップ値の値が、最小スリップ値及び最大スリップ値によって規定されるスリップ範囲内にある場合、車輪スリップ値がいずれのスリップクラスにあるかが決定される。このために、車輪スリップ値がスリップクラスの2つの範囲制限と比較される。スリップクラスの範囲制限内に車輪スリップ値があるスリップクラスに関連するスリップクラスカウンタのカウンタ要素が増加される。この結果、それぞれのスリップクラスにある車輪スリップ値により、このスリップクラスの発生頻度の値に変化が引き起こされ、前記頻度は、カウンタ要素によって表される。車輪スリップ値と、最大スリップ値及び最小スリップ値とを比較する間に、車輪スリップ値の値が最小スリップ値よりも低いことが検出された場合、最初のスリップクラスに関連するカウンタ要素は増加される。この比較の間に、車輪スリップ値の値が最大スリップ値よりも大きいことが検出された場合、最後のスリップクラスに関連するカウンタ要素は増加される。
【0125】
既述したように、本発明による摩擦係数値の決定は周期的な方法である。このため、個々の発生頻度の決定時に、したがって値の頻度分布の決定時に、適切な標準化が必要であるが、この理由は、すべての発生頻度の和、すなわち、1つのスリップクラスカウンタのカウンタ要素の値の和が常に100%にならなければならないからである。
【0126】
スリップクラスの発生頻度が更新される場合、このような更新は、車輪スリップ値の値がこのスリップクラス内にあるときに必要であり、以前の発生頻度の値、すなわち、更新処理前に生じた値は、新たに加えられた値よりも大きく重み付けされることが有利である。
【0127】
ステップ507から続くステップ508では、車両の個々の車輪のために、車輪の摩擦係数値Fμijが決定される。図6a、図6b及び図6cを参照して、ここで基準として利用される処置について説明し、この場合、車両の車輪の1つのみが考慮されるが、処置は車両のすべての車輪について同一である。
【0128】
図6aは、車両の1つの車輪のために決定される車輪スリップ値の分類によって得られる値の頻度分布を示しており、前記分布は車輪/道路の摩擦係数対の特性である。図6aには、最初のスリップクラスから始まって、最後のスリップクラスで終わるスリップクラスが横座標にプロットされている。縦座標には、発生頻度とも称される個々のスリップクラスの頻度hがプロットされている。図6aに示されている線図全体は、車両の1つの車輪のために決定される関連する車輪スリップ値に関する値の頻度分布を表している。
【0129】
車両の車輪の各々のために、車輪の摩擦係数値Fμijの決定が次のように行われる。最初に、最大頻度を有するスリップクラス、すなわち、すべてのスリップクラスの最大発生頻度を有するスリップクラスが決定される。次に、最初のスリップクラスを出発点として、最大発生頻度を有するスリップクラスに向かって、そのスリップクラスg1の第1の発生頻度が、予め規定された値MUE_HAEUFIGKEIT_MINよりも大きい前記スリップクラスg1が決定される。このスリップクラスg1のために、平均スリップ値λg1が決定される。それに対応して、最後のスリップクラスを出発点として、最大発生頻度を有するスリップクラスに向かって、そのスリップクラスg2の第1の発生頻度が、予め規定された値MUE_HAEUFIGKEIT_MINよりも大きい前記スリップクラスg2が決定される。同様に、このスリップクラスg2のために、平均スリップ値λg2が決定される。
【0130】
引き続くステップでは、2つのスリップクラスg1とg2を出発点として、車輪スリップ値の変動gが次式に従って決定される。
g = λg2 - λg1
【0131】
上述の説明によれば、スリップクラスは、予め規定された値MUE_HAEUFIGKEIT_MINに一致する最小発生頻度を有する必要があるので、これらのスリップクラスは、変動gによって示されているスリップの変化を決定する間に考慮される。
【0132】
変動g及び最大発生頻度の2つの変数を用いて、車輪スリップ値のパターン、すなわち値の頻度分布を描くか又は特徴づけることができ、このようにして、路面が滑りにくいか又は滑りやすいかどうかについての決定を行うことが可能である。具体的には、値の頻度分布は、路面が滑りにくい場合に狭くて高く、一方、路面が滑りやすい場合に広くて平坦である。
【0133】
路面が滑りにくいか又は滑りやすいかどうかについての区別は、決定基準の関数を満たす境界線によって実行される。図6bは、第1の境界線を示している。図6bは、座標系の横座標に変動gがプロットされ、また座標系の縦座標に最大発生頻度がプロットされる座標系を示しており、このことは、次の形態の関数式によって示されている放物線状の境界線である。
hGRenzlinie=P1*g^2+P2*g+P3
【0134】
変動gと最大頻度分布とからなる値の対が、放物線状のこの境界線を越えている場合、路面が滑りにくいことが決定される。対照的に、値の対が境界線よりも下にある場合、路面が滑りやすいことが決定される。この結果、決定された値の対と、境界線によって予め規定されている値とを比較することによって、車両の車輪の各々のために、車輪の摩擦係数値Fμijを決定することが可能である。
【0135】
図6bに示した境界線の代替形態の境界線が図6cに示されている。この境界線は、複数の線形成分によって異なる部分で規定される。図示した境界線は、5つの基準点によって予め規定されている4つの線形成分を有する。このことは、この構成に限定することを意図するものではない。当然、数値的により小さな基準点を有する境界線を使用することも可能である。複数の基準点を互いに結ぶために、基準点によって予め規定されている曲線プロファイルの近似値に対して、他の関数を線形成分として使用することも可能である。第2の境界線は、第1の境界線と比較して、評価に必要な計算の複雑さが減るという利点を有する。同様に、境界線を越える値の対により路面が滑りにくいことを想定でき、また境界線の下にある値の対により路面が滑りやすいことを想定できる分類が、第2の境界線に適用される。
【0136】
要約すると、車輪の摩擦係数値Fμijは、それぞれの車輪スリップ値λijのために決定された値の頻度分布の車輪スリップに関連する変動を示す第1の変数、具体的に変動gに基づき、また値の頻度分布に関連するすべてのスリップクラスの最大発生頻度に一致する第2の変数に基づき決定される。車輪の摩擦係数値Fμijの値は、最後に、第1及び第2の変数の値と、滑りにくい路面状態及び滑りやすい路面状態について予め規定されている値の対とを比較することによって決定される。
【0137】
車輪の摩擦係数値Fμijを決定するための上述の処置を次のように有利に補足できる。この関連において、第1の境界線に基づく評価、及び第2の境界線に基づく評価の両方のために、有利なこの補足を使用することが可能であるべきである。最大頻度分布を有するスリップクラスのために、平均スリップ値が決定される。この平均スリップ値は、車輪の摩擦係数値Fμijを決定する際に考慮され、このことにより、変動と最大発生頻度とからなる値の対を比較することに加えて、滑りにくい路面が存在しているか、又は滑りやすい路面が存在しているかどうかについて評価するために、境界線により、別の条件が利用可能になる状態がもたらされる。この場合、決定される値の対が境界線を越えており、またトラクション制御システムの作動時に、上述の平均スリップ値が、車輪のスリップ状態を表す閾値よりも小さく、かつブレーキスリップ制御システムの作動時に、上述の平均スリップ値が、車輪のスリップ状態を表す閾値よりも大きい場合に、滑りにくい路面が検出され、またその対応値が車輪の摩擦係数値Fμijに割り当てられる。上述の3つのすべての条件が満たされない場合、路面は滑りやすく、またその対応値が車輪の摩擦係数値Fμijに割り当てられる。
【0138】
ここで、図6aに示した値の頻度分布について、もう一度詳細に説明する。この頻度分布の形態は、これらの頻度分布が、いわば、ガウス分布に従って配置されていることを示している。したがって、変動変数は標準偏差の特徴を有する。本発明による方法が、高性能のプロセッサ又はコンピュータを有する制御ユニットで実施される場合、代わりに、標準分布を変動の代わりに決定して評価することが可能である。これらのおそらくは別の措置により、値の頻度分布を評価することによって、路面の状態に関する最終的な質的情報だけでなく最終的な量的情報も提供する摩擦係数値を決定することが可能である方法を実施することが可能になる。
【0139】
ステップ508から続くステップ509では、摩擦係数値Fμが決定される。このため、ブロック411に送られた変数及び信号を評価することによって、中間値Fμ_Plausが最初に決定される。このことは、ブロック411に記憶される様々なプラウシビリティ問い合わせを用いて行われ、これにより、ブロック411に送られた変数及び信号の異なるサブセットが、プラウシビリティチェックの間に評価される。ステップ502に関連して既に説明したように、中間値Fμ_Plausには、摩擦係数情報が現在利用可能ではないことを示す値が初期化後に割り当てられる。以下に指定するプラウシビリティ問い合わせの1つが満たされると、中間値Fμ_Plausには、滑りやすい路面を表す値が割り当てられる。他方で、次のプラウシビリティ問い合わせのいずれも満たされない場合、中間値Fμ_Plausには、滑りにくい路面を表す値が割り当てられる。
【0140】
特定のプラウシビリティ問い合わせは以下のようなものである。考慮の対象となる車両は、後輪駆動の車両であり、このため、後輪は駆動される車輪であり、前輪は駆動されない車輪であることを留意すべきである。
−前輪の1つが、滑りやすい路面にあることが検出され、また変数μPlausVAの値が所定の閾値未満であるか?
−ブレーキライトスイッチが作動され、また外部温度が、予め規定された閾値未満であるか?
−両方の前輪が、滑りやすい路面にあることが検出され、また変数μPlausVAの値が、予め規定された閾値未満であり、かつ外部温度が、予め規定された閾値未満であるか?
−後輪の1つが、滑りやすい路面にあることが検出され、また変数μPlausHAの値が、予め規定された閾値未満であり、かつ外部温度が、予め規定された閾値未満であるか?
−両方の後輪が、滑りやすい路面にあることが検出され、また変数μPlausHAの値が、予め規定された閾値未満であり、かつ外部温度が、予め規定された閾値未満であるか?
【0141】
外部温度に関する上述の閾値は、例えば、+10℃である。上述のプラウシビリティ問い合わせに加えて、例えば、変数FScheibenwischerが評価されるプラウシビリティ問い合わせ、あるいは車両内に収容されているヨーレート制御装置が作動しているかどうか、又は車両内に収容されているトラクションスリップ制御システムが作動しているかどうか、又は車両内に収容されているブレーキスリップ制御システムが作動しているかどうかが検出される評価に基づくプラウシビリティ問い合わせを考慮することも可能である。
【0142】
次に、摩擦係数値Fμは、中間変数Fμ_Plausの値に基づき決定される。以下の説明は、摩擦係数値Fμが、図3に関連して既に説明したように、ブロック310のために意図されている成分、及びブロック311のために意図されている成分の両方を含むという前提に基づく。しかし、このことは、この構成に限定することを意図するものではない。2つのブロック310と311のために、単一の摩擦係数値Fμが使用される場合に、以下の説明を応用又は転用できる。
【0143】
ステップ502に関連して既に説明したように、ブロック310のために意図されている摩擦係数値Fμの成分には、摩擦係数情報が現在利用可能ではないことを示す値が初期化後に割り当てられる。摩擦係数値Fμのこの成分は、簡単にするために以下で切り換え成分と称される。この初期化状態の直後に、中間変数Fμ_Plausが、滑りにくい路面を表す値を有する場合、切り換え成分には、滑りにくい路面を表す値が割り当てられる。この値を割り当てた後に、中間値Fμ_Plausが、滑りやすい路面を表す値を有する場合、切り換え成分には、滑りやすい路面を表す値が直接割り当てられる。同時に、例えば500メートルの大きさのオーダの第1の距離値が走行距離計に割り当てられる。中間変数Fμ_Plausが、初期化状態の直後に、滑りやすい路面を表す値を有する場合、滑りやすい路面を表す値は、切り換え成分に直接割り当てられる。この場合にも、第1の距離値が走行距離計に割り当てられる。一般的に、中間変数Fμ_Plausが、滑りやすい路面を表す値を有する場合、摩擦係数値Fμには、同様に、滑りやすい路面を表す値が直接割り当てられる。
【0144】
切り換え成分に、滑りやすい路面を表す値が割り当てられた後に、中間変数Fμ_Plausが、滑りにくい路面を表す値を有する場合、切り換え成分を、滑りにくい路面を表す値に切り換えることは、車両が、第1の距離値に対応する予め規定された距離を走行し、またこの距離の間に、中間変数Fμ_Plausの値が再び変化しなくなるまで実行されない。
【0145】
車両が、第1の距離値に対応する距離を走行している間に、中間変数Fμ_Plausが、滑りやすい路面に対応する値を再び有する場合、第1の距離値よりも大きな第2の距離値が、走行距離計に割り当てられる。第2の走行距離計は1000メートルの大きさのオーダにある。このことは、中間変数Fμ_Plausが、滑りにくい路面を表す値を再び取る場合、摩擦係数値Fμに、滑りにくい路面を表す値が再び割り当てられる前に、車両が、より長い距離を走行しなければならないことを保証する。
【0146】
要約すると、滑りにくい路面を表す値から、滑りやすい路面を表す値への切り換え成分の変更は、直接、すなわち、車両が、予め規定された距離を走行することを必要とすることなく、したがって、意図的に遅延を引き起こすことなく行われる。対照的に、滑りやすい路面を表す値から、滑りにくい路面を表す値への切り換え成分の変更は、車両が進んだ距離に依存する遅延によって行われる。この関連において、車両が進んだ距離は、異なる長さであり、また滑りにくい路面を表す値と、滑りやすい路面を表す値との間の中間変数Fμ_Plausの切り換えが1回又は繰り返して行われるかどうかに依存する。
【0147】
ステップ502に関連して既に説明したように、ブロック311のために意図されている摩擦係数値Fμの成分には、摩擦係数情報が現在利用可能ではないことを示す値が初期化後に割り当てられる。摩擦係数値Fμのこの成分は、簡単にするために以下で表示成分と称される。この初期化状態の直後に、中間変数Fμ_Plausが、滑りにくい路面を表す値を有する場合、その値は表示成分に割り当てられる。この値を割り当てた後に、中間変数Fμ_Plausが、滑りやすい路面を表す値を有する場合、予め規定された期間が経過した後まで、滑りやすい路面を表す値は表示成分に割り当てられない。この期間中、中間変数Fμ_Plausが、滑りにくい路面に対応する値を再び有する場合、摩擦係数値Fμのために、滑りにくい路面を表す値が保持される。言い換えれば、滑りにくい路面を表す値から、滑りやすい路面を表す値への表示成分の切り換えは、中間変数Fμ_Plausが、予め規定された期間の間に、滑りやすい路面を表す値を有するまで行われない。初期化状態の直後に、中間変数Fμ_Plausが、滑りやすい路面を表す値を有する場合、この場合にも、予め規定された期間が経過した後まで、滑りやすい路面を表す値は表示成分に割り当てられない。同様に本例において、中間値Fμ_Plausが、この期間中に、摩擦係数値Fμのために、滑りにくい路面に対応する値を再び有する場合、滑りにくい路面を表す値が保持される。表示成分に、滑りやすい路面を表す値が割り当てられた後に、中間変数Fμ_Plausが、滑りにくい路面を表す値を有する場合、滑りにくい路面を表す値への表示成分の切り換えは、車両が、第3の距離値によって規定されかつ1000メートルの大きさのオーダにある距離を走行し、またこの距離の間に、中間変数Fμ_Plausの値が再び変化しなくなるまで実行されない。車両が、第3の距離値に対応する距離を走行している間に、中間値Fμ_Plausが、滑りやすい路面に対応する値を再び有する場合、車両が、第3の距離値に対応する距離を走行したかどうかをチェックするために使用される走行距離計は、中間変数Fμ_Plausがその値を再び変化させたかどうかがチェックされる予め規定された期間の後にリセットされる。したがって、その結果、車両は再びこの距離を走行しなければならない。予め規定された期間中に、中間変数Fμ_Plausがその値を変化させて、滑りにくい路面を表す値を再び取ったことが検出された場合、既に行われている予め規定された距離に沿った走行が継続される。
【0148】
表示成分は次のように要約できる。滑りにくい路面を表す値から、滑りやすい路面を表す値への表示成分の変更は、予め規定された期間が経過した後まで、したがって遅延があるまで行われない。滑りやすい路面を表す値から、滑りにくい路面を表す値への表示成分の変更も即座には行われない。この変化も、遅延によって行われ、正確に言うと、車両が、予め規定された距離を走行するまで行われない。変数FEAAZが、ヨーレートを制御するために制動介入が実行されていることを指示する場合、表示成分の出力、したがって雪片記号の表示が抑制されることが有利である。
【0149】
ステップ509の後に、ステップ503が再び行われる。
【0150】
最後に、第1の実施形態の本発明による方法と、第2の実施形態の本発明による方法とを比べて、2つの方法に含まれる共通の特徴、及び2つの方法における差異について説明する。両方の方法は共通して以下のことを有する。予め規定された車両運転状態の間に、様々な時点に車輪スリップ値λijが決定される。値の頻度分布は、これらの車輪スリップ値λijのために、又はそれらの値に基づき決定される車軸に関連するスリップ値λVA、λHAのために決定される。値のこの頻度分布を評価することによって、摩擦係数値Fμが決定される。この処置は、車輪スリップ値λij及び値の頻度分布の両方が、予め規定された車両運転状態の間に決定され、一方、車輪スリップ値λijの存在が、値の頻度分布を決定するための基準であることを意味すると理解すべきである。値の頻度分布を評価することによって決定される摩擦係数値Fμが、路面と車両タイヤとの間にそれぞれ存在する摩擦係数を可能な限り再現することを保証するために、値の頻度分布は、予め規定された車両運転状態の間に存在する車輪スリップ値のみのために決定される。しかし、このことは、予め規定された車両運転状態が存在する場合にのみ、すなわち単独に、車輪スリップ値が決定されることを必ずしも意味しない。このことは可能であるが、必要ではない。例えば、第2の実施形態に関連する図5から例えば明らかであるように、車輪スリップ値を連続的に決定でき、また予め規定された車両運転状態が存在する場合にのみ、車輪スリップ値の値の頻度分布が決定されて評価される。この処置は、車輪スリップ値が、例えば、車両内に存在するスリップ制御システムによって利用可能になる場合に特に適切である。代替例として、例えば、第1の実施形態に関連する図2から明らかであるように、予め規定された車両運転状態が存在する場合に、車輪スリップ値を単独に決定できる。車輪スリップ値の連続的決定も第1の実施形態によって可能であることを留意すべきである。
【0151】
値の頻度分布の決定及び評価が関係している限り、第1の実施形態と第2の実施形態とには次のような違いがある。本発明による方法の第1の実施形態では、値の頻度分布の決定及び評価が時間的に制限される。値の頻度分布の決定及び評価の両方は、規定された時間ウィンドウ内で行われる。さらに、予め規定された車両運転状態が存在するまで、値の頻度分布は決定されない。この決定は、予め規定された車両運転状態が、進行中の決定の間にもはや存在しない場合に中断される。対照的に、本発明による方法の第2の実施形態では、値の頻度分布の決定及び評価が時間的に制限されず、すなわち、連続的に行われる。時間ウィンドウは予め規定されていない。予め規定された車両運転状態が存在する場合、値の頻度分布は、更新又は進行する形態で決定される。車両運転状態が、値の頻度分布の連続的決定の間にもはや存在しない場合、頻度分布の決定は一時中断又は中断されるが、終了はしない。この頻度分布の決定は、運転状態が再び存在した後に再び継続される。
【0152】
両方の実施形態において、予め規定された車両運転状態が存在しない場合、車輪のスリップの決定又は値の頻度分布の決定又は頻度分布の評価を含むステップの少なくとも1つが行われないことが考えられる。
【0153】
矢印を用いて図1、図3及び図4に示されている個々のブロックへの異なる変数の供給は、例えば、車両内に収容されているCANバスによって行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0154】
【図1】第1の実施形態に関する本発明による装置のブロック回路図の形態の概略図である。
【図2】第1の実施形態に関する本発明による装置で実行される本発明による方法を示したフローチャートである。
【図3】第2の実施形態に関する本発明による装置のブロック回路図の形態の概略図である。
【図4】第2の実施形態に関する本発明による装置の中心部のブロック回路図の形態の概略図である。
【図5】第2の実施形態に関する本発明による装置で実行される本発明による方法を示したフローチャートである。
【図6a】第2の実施形態に関する値の頻度分布のグラフである。
【図6b】第2の実施形態に適用される第1の決定基準のグラフである。
【図6c】第2の実施形態に適用される第2の決定基準のグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
路面と車両タイヤとの間に存在する摩擦係数を表す摩擦係数値(Fμ)を決定する方法であって、
車両の少なくとも1つの車輪に関する車輪スリップ値(λij)が決定され、該車輪スリップ値(λij)が、前記車両の車輪に存在する車輪のスリップを示し、
前記摩擦係数値(Fμ)が、前記車輪スリップ値(λij)に基づき決定される方法において、予め規定された車両運転状態の間に、前記車輪スリップ値(λij)が、様々な時点、特に、連続する時点において決定され、前記値の頻度分布が、これらの車輪スリップ値(λij)のために、又はこれらの車輪スリップ値(λij)に基づき決定される車軸に関連するスリップ値(λVA、λHA)のために決定され、前記値の頻度分布を評価することによって、前記摩擦係数値(Fμ)が決定されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記車輪スリップ値が、速度値(vref)に基づき決定され、該速度値(vref)を決定する間に、駆動状況と制動状況との間で区別が行われることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記速度値(vref)を決定する間に、時間経過に伴う決定すべき前記速度値の変化が制限されるように、勾配制限が行われることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記車両の加速挙動及び/又は減速挙動を示す速度変化値(axFilt)、及び/又は前記車両のフィルタ処理されたヨーレートを示すヨーレート値(ψ’fil)がさらに決定されて、前記摩擦係数値(Fμ)を決定する間に考慮されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記予め規定された車両運転状態が、速度変化値(axFilt)によって及び/又はヨーレート値(ψ’fil)によって規定されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記予め規定された車両運転状態が、最小加速度又は最小減速度で走行中の、直進走行であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記車両の基準速度を示す速度値(vref)、及び/又は前記車両の前記フィルタ処理されたヨーレートを示すヨーレート値(ψ’fil)、及び/又は前記車両の横方向加速度を示す横方向加速度値(ay)が決定されて、前記摩擦係数値(Fμ)を決定する間に考慮されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記予め規定された車両運転状態が、速度値(vref)によって及び/又はヨーレート値(ψ’fil)によって及び/又は横方向加速度値(ay)によって規定されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記予め規定された車両運転状態が、最小速度で走行中の、直進走行であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記摩擦係数値(Fμ)が、車軸に関連するスリップ値(λVA、λHA)のために決定された前記値の頻度分布を評価することによって決定され、駆動される車軸のために決定される前記車軸に関連するスリップ値が駆動状況で評価され、駆動されない車軸のために決定される前記車軸に関連するスリップ値が制動状況で評価されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
ヨーレート制御装置の簡単な調整介入が行われる場合、前記摩擦係数値(Fμ)が、前記車輪スリップ値(λij)のために決定された前記値の頻度分布を評価することによって決定されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
車輪の摩擦係数値(Fμij)が、前記車輪スリップ値(λij)のために決定された前記値の頻度分布を評価することによってその都度決定され、前記摩擦係数値(Fμ)が、前記車輪の摩擦係数値(Fμij)に基づき決定されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記摩擦係数値(Fμ)が、プラウシビリティ問い合わせによって、前記車輪の摩擦係数値(Fμij)を含む様々な値に基づき決定されることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記プラウシビリティ問い合わせにおいて、前記車輪の摩擦係数値(Fμij)だけでなく、現在の駆動状態において前記車両の前車軸又は後車軸で利用される前記摩擦係数値の基準を構成する変数(μPlausVA、μPlausHA)、及び/又は前記車両内に収容された閉ループ及び/又は開ループ制御装置の状態に関する情報を含む変数(FEAAZ)、及び/又は外部温度を示す変数(Taussen)、及び/又は雨センサから来る変数(FRegen)、及び/又はウィンドシールドワイパの動作状態を表す変数(FScheibenwischer)、及び/又は運転者によるブレーキペダルの作動を表す信号(BLS)が考慮されることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記駆動状態で利用される前記摩擦係数の推定が、前記摩擦係数値(Fμ)を決定する際に考慮されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記摩擦係数値(Fμ)が少なくとも2つの値を含み、第1の値が、滑りやすい路面を表し、また第2の値が、滑りにくい路面を表すことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記車両が走行した距離、及び/又は時間条件が、前記値の間で切り換える場合に考慮されることを特徴とする、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
滑りやすい路面を表す一方の値から、滑りにくい路面を表す他方の値への前記切り換えが、予め規定された距離だけ前記車両が進むまで実行されないことを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
滑りにくい路面を表す前記一方の値から、滑りやすい路面を表す前記他方の値への前記切り換えが、予め規定された期間が経過するまで実行されないことを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記予め規定された車両運転状態の間に、速度変化値(axFilt)の最大値が決定され、該最大値が、前記値の頻度分布を評価する間に考慮されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記車輪スリップ値(λij)が、前記予め規定された車両運転状態の間に、最小期間及び/又は最大期間によって規定される予め規定された期間の間にのみ決定されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記外部温度を示す変数(Taussen)、及び/又は前記ウィンドシールドワイパの前記動作を表す変数(FScheibenwischer)が決定され、前記これらの2つの変数の少なくとも1つに基づき規定される条件が存在する場合、前記値の頻度分布の決定が省略又は中断され、代わりに、予め規定された摩擦係数値(Fμ)が利用されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
決定されている前記値の頻度分布が、異なる摩擦係数値のために決定される予め規定された頻度分布と比較され、前記決定されている値の頻度分布に一致する前記予め規定された頻度分布に関連する当該摩擦係数値が、摩擦係数値として決定されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
速度変化値(axFilt)が、前記予め規定された頻度分布を区別するために別の特徴として利用されることを特徴とする、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記速度変化値(axFilt)に関する値の範囲が、前記予め規定された頻度分布にその都度割り当てられ、速度変化値(axFilt)の前記最大値が、前記予め規定された車両運転状態の間に決定され、また前記決定された値の頻度分布の比較が、前記予め規定された頻度分布とのみ行われ、前記値の範囲において、前記速度変化値(axFilt)に関して、前記速度変化値(axFilt)の最大値が存在することを特徴とする、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記車輪スリップ値又は前記車軸に関連するスリップ値に関する前記値の範囲が、複数のスリップクラスに分割され、前記個々のスリップクラスのために存在する前記頻度が、前記決定された値の頻度分布と前記予め規定された頻度分布とを比較する間に比較されることを特徴とする、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
前記車輪の摩擦係数値(Fμij)が、前記それぞれの車輪スリップ値(λij)のために決定された、前記車輪のスリップに関連する前記値の頻度分布の変化を示す第1の変数(g)に基づき、また前記値の頻度分布に関連する前記すべてのスリップクラスの最大発生頻度に対応する第2の変数に基づき決定されることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項28】
前記車輪の摩擦係数値(Fμij)が、前記第1の変数の値及び前記第2の変数の値と、滑りにくい路面に関する状態、及び滑りやすい路面に関する状態について予め規定されている値の対とを比較することによって決定されることを特徴とする、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
路面と車両タイヤとの間に存在する摩擦係数を表す摩擦係数値(Fμ)を決定するための装置であって、
車両の少なくとも1つの車輪に関する車輪スリップ値(λij)が決定され、該車輪スリップ値(λij)が、前記車両の車輪に存在する車輪のスリップを示し、
前記摩擦係数値(Fμ)が、前記車輪スリップ値(λij)に基づき決定される装置において、予め規定された車両運転状態の間に、前記車輪スリップ値(λij)が、様々な時点、特に、連続する時点に決定され、また前記値の頻度分布が、これらの車輪スリップ値(λij)のために、又はこれらの車輪スリップ値(λij)に基づき決定される車軸に関連するスリップ値(λVA、λHA)のために決定され、前記値の頻度分布を評価することによって、前記摩擦係数値(Fμ)が決定されることを特徴とする装置。
【請求項30】
前記摩擦係数値(Fμ)が表示装置(105、311)に送られ、これにより、前記摩擦係数値(Fμ)の情報が運転者に表示されること、及び/又は前記摩擦係数値(Fμ)が、前記車両内に取付けられている他の閉ループ及び/又は開ループ制御装置(106)に別の処理のために送られること、及び/又は前記摩擦係数値(Fμ)が、前記車両内に収容されている警報システム(310)に送られ、該警報システムが、ナビゲーションシステムを使用して、前記車両の前方の道程にわたる道路のコースを決定し、また前記警報システムが、表示装置(105、311)を使用して、危険な位置を示す道路標識をフェードイン表示することによって、前記道路の前記コースにおける危険な位置を前記運転者に指示することを特徴とする、請求項29に記載の装置。
【請求項31】
ナビゲーションシステムを使用して、前記車両の前方の前記道程にわたる前記道路の前記コースを決定し、また表示装置(105)を使用して、危険な位置を示す道路標識をフェードイン表示することによって、前記道路の前記コースにおけるカーブ及び/又は環状交差点及び/又は交差点のような危険な位置を前記運転者に指示する警報システムにおける請求項1に記載の方法の使用。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
路面と車両タイヤとの間に存在する摩擦係数を表す摩擦係数値(Fμ)を決定する方法であって、
車両の少なくとも1つの車輪に関する車輪スリップ値(λij)が決定され、該車輪スリップ値(λij)が、前記車両の車輪に存在する車輪のスリップを示し、
前記摩擦係数値(Fμ)が、前記車輪スリップ値(λij)に基づき決定され、予め規定された車両運転状態の間に、前記車輪スリップ値(λij)が、様々な時点、特に、連続する時点に決定される方法において、前記車輪スリップ値(λij)又は車軸に関連するスリップ値(λVA、λHA)が、考慮すべきスリップ範囲が細かく分割されるスリップクラスに分類されることで、これらの車輪スリップ値(λij)のために、又はこれらの車輪スリップ値(λij)に基づき決定される前記車軸に関連するスリップ値(λVA、λHA)のために、頻度分布が決定され、前記値の頻度分布を評価することによって、前記摩擦係数値(Fμ)が決定されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記車輪スリップ値が、速度値(vref)に基づき決定され、該速度値(vref)を決定する間に、駆動状況と制動状況との間で区別が行われることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記速度値(vref)を決定する間に、時間経過に伴う決定すべき前記速度値の変化が制限されるように、勾配制限が行われることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記車両の加速挙動及び/又は減速挙動を示す速度変化値(axFilt)、及び/又は前記車両のフィルタ処理されたヨーレートを示すヨーレート値(ψ’fil)がさらに決定されて、前記摩擦係数値(Fμ)を決定する間に考慮されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記予め規定された車両運転状態が、速度変化値(axFilt)によって及び/又はヨーレート値(ψ’fil)によって規定されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記予め規定された車両運転状態が、最小加速度又は最小減速度で走行中の、直進走行であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記車両の基準速度を示す速度値(vref)、及び/又は前記車両の前記フィルタ処理されたヨーレートを示すヨーレート値(ψ’fil)、及び/又は前記車両の横方向加速度を示す横方向加速度値(ay)が決定されて、前記摩擦係数値(Fμ)を決定する間に考慮されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記予め規定された車両運転状態が、速度値(vref)によって及び/又はヨーレート値(ψ’fil)によって及び/又は横方向加速度値(ay)によって規定されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記予め規定された車両運転状態が、最小速度で走行中の、直進走行であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記摩擦係数値(Fμ)が、車軸に関連するスリップ値(λVA、λHA)のために決定された前記値の頻度分布を評価することによって決定され、駆動される車軸のために決定される前記車軸に関連するスリップ値が駆動状況で評価され、駆動されない車軸のために決定される前記車軸に関連するスリップ値が制動状況で評価されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
ヨーレート制御装置の簡単な調整介入が行われる場合、前記摩擦係数値(Fμ)が、前記車輪スリップ値(λij)のために決定された前記値の頻度分布を評価することによって決定されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
車輪の摩擦係数値(Fμij)が、前記車輪スリップ値(λij)のために決定された前記値の頻度分布を評価することによってその都度決定され、前記摩擦係数値(Fμ)が、前記車輪の摩擦係数値(Fμij)に基づき決定されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記摩擦係数値(Fμ)が、プラウシビリティ問い合わせによって、前記車輪の摩擦係数値(Fμij)を含む様々な値に基づき決定されることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記プラウシビリティ問い合わせにおいて、前記車輪の摩擦係数値(Fμij)だけでなく、現在の駆動状態において前記車両の前車軸又は後車軸で利用される前記摩擦係数値の基準を構成する変数(μPlausVA、μPlausHA)、及び/又は前記車両内に収容された閉ループ及び/又は開ループ制御装置の状態に関する情報を含む変数(FEAAZ)、及び/又は外部温度を示す変数(Taussen)、及び/又は雨センサから来る変数(FRegen)、及び/又はウィンドシールドワイパの動作状態を表す変数(FScheibenwischer)、及び/又は運転者によるブレーキペダルの作動を表す信号(BLS)が考慮されることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記駆動状態で利用される前記摩擦係数の推定が、前記摩擦係数値(Fμ)を決定する際に考慮されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記摩擦係数値(Fμ)が少なくとも2つの値を含み、第1の値が、滑りやすい路面を表し、また第2の値が、滑りにくい路面を表すことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記車両が走行した距離、及び/又は時間条件が、前記値の間で切り換える場合に考慮されることを特徴とする、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
滑りやすい路面を表す一方の値から、滑りにくい路面を表す他方の値への前記切り換えが、予め規定された距離だけ前記車両が進むまで実行されないことを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
滑りにくい路面を表す前記一方の値から、滑りやすい路面を表す前記他方の値への前記切り換えが、予め規定された期間が経過するまで実行されないことを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記予め規定された車両運転状態の間に、速度変化値(axFilt)の最大値が決定され、該最大値が、前記値の頻度分布を評価する間に考慮されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記車輪スリップ値(λij)が、前記予め規定された車両運転状態の間に、最小期間及び/又は最大期間によって規定される予め規定された期間の間にのみ決定されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記外部温度を示す変数(Taussen)、及び/又は前記ウィンドシールドワイパの前記動作を表す変数(FScheibenwischer)が決定され、前記これらの2つの変数の少なくとも1つに基づき規定される条件が存在する場合、前記値の頻度分布の決定が省略又は中断され、代わりに、予め規定された摩擦係数値(Fμ)が利用されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
決定されている前記値の頻度分布が、異なる摩擦係数値のために決定される予め規定された頻度分布と比較され、前記決定されている値の頻度分布に一致する前記予め規定された頻度分布に関連する当該摩擦係数値が、摩擦係数値として決定されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
速度変化値(axFilt)が、前記予め規定された頻度分布を区別するために別の特徴として利用されることを特徴とする、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記速度変化値(axFilt)に関する値の範囲が、前記予め規定された頻度分布にその都度割り当てられ、速度変化値(axFilt)の前記最大値が、前記予め規定された車両運転状態の間に決定され、また前記決定された値の頻度分布の比較が、前記予め規定された頻度分布とのみ行われ、前記値の範囲において、前記速度変化値(axFilt)に関して、前記速度変化値(axFilt)の最大値が存在することを特徴とする、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記車輪スリップ値又は前記車軸に関連するスリップ値に関する前記値の範囲が、複数のスリップクラスに分割され、前記個々のスリップクラスのために存在する前記頻度が、前記決定された値の頻度分布と前記予め規定された頻度分布とを比較する間に比較されることを特徴とする、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
前記車輪の摩擦係数値(Fμij)が、前記それぞれの車輪スリップ値(λij)のために決定された、前記車輪のスリップに関連する前記値の頻度分布の変化を示す第1の変数(g)に基づき、また前記値の頻度分布に関連する前記すべてのスリップクラスの最大発生頻度に対応する第2の変数に基づき決定されることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項28】
前記車輪の摩擦係数値(Fμij)が、前記第1の変数の値及び前記第2の変数の値と、滑りにくい路面に関する状態、及び滑りやすい路面に関する状態について予め規定されている値の対とを比較することによって決定されることを特徴とする、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
路面と車両タイヤとの間に存在する摩擦係数を表す摩擦係数値(Fμ)を決定するための装置であって、
車両の少なくとも1つの車輪に関する車輪スリップ値(λij)が決定され、該車輪スリップ値(λij)が、前記車両の車輪に存在する車輪のスリップを示し、
前記摩擦係数値(Fμ)が、前記車輪スリップ値(λij)に基づき決定され、予め規定された車両運転状態の間に、前記車輪スリップ値(λij)が、様々な時点、特に、連続する時点に決定される装置において、前記車輪スリップ値(λij)又は車軸に関連するスリップ値(λVA、λHA)が、考慮すべきスリップ範囲が細かく分割されるスリップクラスに分類されることで、これらの車輪スリップ値(λij)のために、又はこれらの車輪スリップ値(λij)に基づき決定される前記車軸に関連するスリップ値(λVA、λHA)のために、前記値の頻度分布が決定され、前記値の頻度分布を評価することによって、前記摩擦係数値(Fμ)が決定されることを特徴とする装置。
【請求項30】
前記摩擦係数値(Fμ)が表示装置(105、311)に送られ、これにより、前記摩擦係数値(Fμ)の情報が運転者に表示されること、及び/又は前記摩擦係数値(Fμ)が、前記車両内に取付けられている他の閉ループ及び/又は開ループ制御装置(106)に別の処理のために送られること、及び/又は前記摩擦係数値(Fμ)が、前記車両内に収容されている警報システム(310)に送られ、該警報システムが、ナビゲーションシステムを使用して、前記車両の前方の道程にわたる道路のコースを決定し、また前記警報システムが、表示装置(105、311)を使用して、危険な位置を示す道路標識をフェードイン表示することによって、前記道路の前記コースにおける危険な位置を前記運転者に指示することを特徴とする、請求項29に記載の装置。
【請求項31】
ナビゲーションシステムを使用して、前記車両の前方の前記道程にわたる前記道路の前記コースを決定し、また表示装置(105)を使用して、危険な位置を示す道路標識をフェードイン表示することによって、前記道路の前記コースにおけるカーブ及び/又は環状交差点及び/又は交差点のような危険な位置を前記運転者に指示する警報システムにおける請求項1に記載の方法の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6a】
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【図6b】
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【図6c】
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【公表番号】特表2006−521237(P2006−521237A)
【公表日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−504760(P2006−504760)
【出願日】平成16年3月19日(2004.3.19)
【国際出願番号】PCT/EP2004/002916
【国際公開番号】WO2004/083012
【国際公開日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(598051819)ダイムラークライスラー・アクチェンゲゼルシャフト (1,147)
【Fターム(参考)】