説明

道路地図作成プログラム、地図作成装置及び位置表示システム

【課題】道路の出口を表す新しい道を生成して、地図の精度を改善する。
【解決手段】デジタルデータ化された道路地図及び該道路地図を含む領域を撮像した写真写真画像とを用いて道路地図を作成する地図作成装置であって、提供された写真画像と提供された道路地図との地理的な位置を整合し、前記整合された航空写真から、道路本線と出口分岐道とを区画する出口分岐線の始点及び終点を抽出し、前記抽出された始点及び終点を結ぶ出口分岐線を定め、前記定められた出口分岐線に基づいて出口分岐の位置を特定することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空写真から地理情報システム(GIS)の情報の抽出に関し、特に、自動車用ナビゲーションシステムの効率を改善するための、出口分岐道のモデリングの新しい方式の開発、及び、出口分岐道の情報に関する既存の自動車ナビゲーション用デジタルマップを航空写真を用いた評価に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車用ナビゲーションシステムの要求が高まると共に、ハードウェア及びソフトウェアの開発は高品質のロケーション・ベース・サービス(LBS)に達している。しかし、LBSの基本的な情報であるGISデータ、特に、自動車用ナビゲーションシステムに関する道路地図の正確さは重要な問題となっている。
【0003】
GPSデータを使用して地図上で位置を見つけることは「マップマッチング」と呼ばれ、車のナビゲーションシステムにおいて非常に重要な技術である。同様に、車が地図上で正確ではない位置にあることは「マップミスマッチング」と呼ばれる。この「マップミスマッチング」の問題は、ナビゲーションシステムで使用される地図データの不正確さに起因する。また、「マップミスマッチング」の問題解消するために、道路上の位置からのズレが所定の範囲内であれば、車の位置を道路上に引き込むロードマッチング技術が実用化されている。又、衛星等から撮像した画像を用いて、地図の精度を上げる技術もある(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2005−234603号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述したロードマッチング技術を用いても、車の位置と道路と地理的なミスマッチが予め定められた閾値より大きくいと、ナビゲーションシステムに表示される車の位置は、正しい道路上に表されず、突然正しい道路まで飛ぶことがある。特に、「マップミスマッチング」の問題は、道路の出口において(すなわち、ある道路を走行中の車が道路を変えたときに)頻繁に生じる。そして、ミスマッチが予め定められた閾値より大きくなると、ナビゲーションシステムに表示される車の位置は、道路本線から分岐道に(又は、分岐道から道路本線に)突然飛ぶことになる。
【0005】
具体的には、従来のナビゲーション用の道路地図では、道路本線のと出口分岐道との交点Pによって道路の分岐を表している。このことが、しばしば道路の出口付近でのナビゲーション処理における「マップミスマッチング」の問題を引き起こす。
【0006】
従来の地図の上の出口分岐点Pの情報は、あいまいで不正確である。そして、現実の分岐点と地図上の分岐点の対応を見つけるのことが難しく、多くの場合には両者の対応がとれていない。例えば、図3に示す道路地図の出口分岐において、道路本線ABと出口分岐PCとのなす角が大きければ、交点PはB方向に移動して、正しい出口分岐の位置から遠くなる。
【0007】
さらに、地図は実際の道路との正確性を保証することは困難である。多くの場合、地図作成者は、図3に示す交点Pのように、2本の道路の交点を厳密には定めていない。この不正確さは、車が道路本線AB上のV1を走行しているとき、ナビゲーションシステムは、出口分岐道を走行しているような表示をする点で問題となる。同様のことは、車が出口分岐道502のV2を走行しているときにも生じ、既に出口分岐道へ曲がった車がいまだに道路本線を走行しているように表示される。
【0008】
このような、「マップミスマッチング」は、現在の道路地図で引き起こされる問題の一例である。さらに、道路の出口のズレを評価する効果的な方法がないことも問題となっている。
【0009】
このようなマップミスマッチングは、運転手を混乱させて、安全運転を脅かす一つの要因となる。そこで、道路の出口を表す新しい道を生成して、地図の精度を改善すること、及び、既存の地図に関して道路の出口の情報を評価することが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の代表的な一例を示せば以下の通りである。すなわち、コンピュータに道路地図を作成させるためのプログラムであって、道路地図と該道路地図を含む領域を撮像した写真画像との地理的な位置を整合し、前記整合された写真画像から、道路本線と分岐道とを区画する出口分岐線の始点及び終点を抽出し、前記抽出された始点及び終点を結ぶ出口分岐線を定める手順と、前記定められた出口分岐線に基づいて、前記道路本線と前記分岐道との分岐位置を特定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、道路の出口を明確に定めることができる。
【0012】
また、出口を定義する出口分岐線は、航空写真から容易に抽出できる出口境界線に対応して定義される。よって、道路本線と分岐道とを効果的に区別することができる。このことは、マップミスマッチングを低減するのに有効であり、ナビゲーションシステムの性能を向上させる。
【0013】
さらに、本発明によって定められた出口の情報は、航空写真から容易に抽出でき、道路地図のデータ構造によく整合する。よって、地図データベースとスムーズに協働することができる。また、道路本線と分岐道とを、多様なリンクモードで論理的かつ物理的に結合させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0015】
図1は、本発明の実施の形態の道路地図作成システムの構成例を示す機能ブロック図である。
【0016】
本実施の形態の道路地図作成システムは、処理管理部110、道路分岐抽出部120、表示部130及び利用部140を備える。
【0017】
処理管理部110は、道路地図管理部111、航空写真管理部112及び地図・航空写真重畳部113を含む。道路地図管理部111は、道路地図のデジタルデータを格納する記憶媒体を含む。航空写真管理部112は、航空写真データを格納する記憶媒体を含む。地図・航空写真重畳部113は、道路地図管理部111に格納された道路地図データに対応する航空写真を航空写真管理部112から選択し、選択された航空写真と道路地図データとの位置を合わせをして、重畳する。なお、本実施例でいう航空写真は対象とする道路領域を上空から撮像した写真画像であればよい。
【0018】
道路分岐抽出部120は、分岐区域抽出部121及び分岐線抽出部122を含む。分岐区域抽出部121は、道路の分岐付近の道路地図及び航空写真を抽出する。分岐線抽出部122は、航空写真中の出口境界線を特定し、出口ベクトルを抽出する。
【0019】
表示部130は、画像表示部131、地図表示部132及び道路出口属性表示部133を含む。画像表示部131は、表示装置(図示省略)に表示される画像データを生成する。地図表示部132は、表示装置(図示省略)に地図を表示するための画像データを生成する。道路出口属性表示部133は、分岐線抽出部122によって特定された出口ベクトルに基づいて出口の大きさ(例えば、PS間の距離及びPE間の距離(図5参照))を算出し、さらに、出口の名称及び算出された出口の大きさ等の出口に関する属性データを表示するための表示データを生成する。
【0020】
利用部140は、地図更新部141及び地図精度評価部142を含む。地図更新部141は、分岐線抽出部122によって特定された出口ベクトルに基づいて、地図を更新する。地図精度評価部142は、地図更新部141によって更新された地図に基づいて、更新前の地図に表された出口位置の精度を算出する。
【0021】
なお、前述した各機能ブロックは、プロセッサ、記憶装置及びインターフェースを備えた計算機に実装される。すなわち、前述した各機能ブロックは、プロセッサによって実行される所定のプログラム及び記憶装置に記憶される所定のデータによって実現される。
【0022】
図2は、本発明の実施の形態の道路地図作成システムの処理を示すフローチャートである。
【0023】
まず、地図・航空写真重畳部113は、地図から道路の分岐位置を抽出する(S101)。例えば、図3に示すように道路の分岐は、道路本線と岐道との分岐点Pで表される。よって、道路本線の起点から終点の方向に道路本線上の分岐点Pを探し、分岐位置を抽出する。
【0024】
その後、抽出された分岐位置が道路の出口であるか入口であるかを判定する(S102)。具体的には、出口は車の進行方向に従って距離が離れるように分岐している。一方、入口は車の進行方向に従って距離が近づくように分岐している。このため、分岐点から進行方向に延びている分岐道は出口であると判定され、分岐点から進行方向の逆方向に延びている分岐道は入口であると判定される。
【0025】
判定の結果、分岐が出口であると判定されると、ステップS103に進む。一方、分岐が出口でないと判定されると、ステップS101に戻り、更に道路本線上の分岐点を探索し、次の分岐位置を抽出する。
【0026】
ステップS103では、航空写真管理部112に格納された複数の航空写真から、出口であると判定された分岐点に対応する航空写真を選択する。そして、選択された航空写真と分岐位置周辺の地図との位置を合わせて、航空写真と地図とを重ね合わせる。この重ね合わせは、航空写真と道路地図との両方に存在する特徴的な構造物(例えば、建造物)及び/又は道路の特徴点(例えば、交差点、道路の境界の屈曲点)の位置を合わせが行われる。
【0027】
次に、分岐区域抽出部121は、重ね合わされた航空写真及び地図から、道路出口区域を抽出する(S104)。具体的には、ステップS101で探索された分岐点Pの周辺で、出口分岐の全体を含むように、所定の画素数の領域を定める(図3の1点鎖線参照)。定められる領域の大きさは、出口分岐の大きさによって変えるとよい。また、定められる領域の大きさは、道路の進行方向と道路の横断方向で異なっても同じでもよい。さらに、定められる領域の大きさは、分岐点P、出口境界線及びその周辺を含めばよいので、分岐点Pに対して方向によって異なる大きさでもよい。
【0028】
次に、分岐線抽出部122は、航空写真から出口分岐線を抽出する(S105)。具体的には、航空写真から出口分岐線の始点S及び終点Eを探す。そして、探された出口分岐線の始点S及び終点Eを結んで出口ベクトルとする。この処理は、図4を用いて後に詳細を述べる。
【0029】
次に、道路出口属性表示部133は、出口ベクトルの属性を算出する(S106)。出口ベクトルの属性は、例えば、出口の誤差を評価するための長さを含む。出口の誤差を評価するための長さには様々なものがあるが、S'P間の距離及びE'P間の距離(図8参照)を用いるとよい。さらに、出口ベクトルの属性は、出口の名称も含む。出口の名称は、道路地図管理部111に格納された道路地図データから抽出される。
【0030】
その後、地図表示部132及び道路出口属性表示部133は、道路出口地図オブジェクトを作成する(S107)。具体的には、まず、ステップS105で定められた出口ベクトルの中点(c)を定める。そして、地図データを参照して、出口分岐道の中心線(cC)を定める。さらに、道路本線から出口ベクトルを経由して出口分岐道へのリンクを生成し、道路本線のデータと出口分岐道のデータとを結びつける。このリンクの生成は、図5、図6及び図7を用いて後に詳細を述べる。
【0031】
その後、地図更新部141は、出口ベクトルを用いて地図データを更新する(S108)。
【0032】
図4は、本発明の実施の形態の出口分岐線の抽出を示す図である。
【0033】
図2のステップS105では、分岐線抽出部122によって出口分岐線が抽出される。
【0034】
具体的には、図4に示すように、航空写真に写っている道路本線501と出口分岐道502との境界の道路上にペイントされた出口境界線503を探索する。この出口境界線503は所定の長さの白線が所定間隔で並んでいる特有のパターンを有するので、パターンマッチングによって探索できる。
【0035】
その後、探索された出口分岐線の始点504を見つける。具体的には、出口境界線503と出口分岐道の外側の側帯(車道と路側の境界)505とが交わる点で、出口境界線の外側の角506を、出口分岐線の始点504に定める。なお、出口境界線の中心線507上に始点504を定めてもよい。
【0036】
さらに、探索された出口分岐線の終点508を見つける。具体的には、出口境界線503と出口分岐道の内側の側帯509とが交わる点で、出口境界線の中心線510上を、出口分岐線の終点508に定める。すなわち、道路本線501と出口分岐道502とを区画する道路分離帯511の頂点を、出口分岐線の終点508に定める。なお、出口境界線の外側の角512に終点508を定めてもよい。
【0037】
なお、出口分岐線の始点504を見つける際に、補助的に、操作者による出口分岐線の始点(出口境界線の端点)付近の指示を受け付けてもよい。同様に、出口分岐線の終点508を見つける際に、補助的に、操作者による出口分岐線の終点(出口境界線の端点)付近の指示を受け付けてもよい。このように、操作者による指示を補助的に用いることによって、出口分岐線の始点504及び終点508を探す処理に必要な時間を短縮することができる。
【0038】
このようにして定められた出口分岐線の始点504及び終点508を結んで出口ベクトルとする。
【0039】
図5は、本発明の実施の形態の道路出口ベクトルのリンクの具体的方法の第1例を示す図である。
【0040】
前述したように、従来の道路地図によると、道路本線501ではAからPへのリンク及びPからBへのリンクが生成されている。これによって、地図の道路本線501上で、車はAからPを経由してBに進むことができる。さらに、道路本線501上のPから出口分岐道502上のCへのリンクが生成されている。これによって、地図の道路本線501上(A→P)を進んできた車は、道路本線501からPで分岐して、出口分岐道502をCに向けて進むことができる。
【0041】
本発明では、正しい出口の位置を示す出口ベクトル601を用いて、正確な道路地図を生成する。
【0042】
具体的には、まず、ステップS105で定められた出口ベクトルの中点cを定める。中点cは、始点S及び終点Eの座標を平均することによって求めることができる。その後、地図データを参照して、出口分岐道の中心線(cC)603を定める。
【0043】
次に、道路本線から出口ベクトルを経由して出口分岐道へのリンクを生成する。まず、出口ベクトルの始点Sを、道路本線上に投影した点S’を生成する。投影点S’は、始点Sから道路本線APに垂直に下ろした点を用いる。なお、道路本線の中心線602に垂直で始点Sを通る線と道路本線APとの交点を投影点S’としてもよい。
【0044】
次に、道路本線501上のAから投影点S’へのリンク621、投影点S’から始点Sへのダミーリンク622、始点Sから終点Eへの出口ベクトルによるリンク601、終点Eから中点cへのダミーリンク623及び中点cから出口分岐道502上のCへのリンク624が生成される。生成された投影点S’から始点Sへのリンク622及び終点Eから中点cへのリンク623は、道路を結びつけるためのダミーリンクであり、車の正しい経路を示すものではない。
【0045】
このリンクS’→S→E→cによって、道路本線のデータと出口分岐道のデータとを結びつける。これによって、地図の道路本線501上の点Aから進んできた車は、A→S’→S→E→c→Cとリンクを辿って、道路本線501から分岐して出口分岐道502をCに向けて進むことができる。
【0046】
このとき、道路本線上のリンクは、AからS’へのリンク621及びS’からBへのリンクが生成される。このリンクによって、地図の道路本線501上で、車はAからS’を経由してBに進むことができる。
【0047】
図6は、本発明の実施の形態の道路出口ベクトルのリンクの具体的方法の第2例を示す図である。
【0048】
前述した第1例(図5)では、道路本線611と出口ベクトル601とを、出口ベクトル601の始点Sでリンクしたが、第2例(図6)では、道路本線611と出口ベクトル601とを、出口ベクトル601の中点cでリンクする。
【0049】
第2例では、前述した第1例と同様に、出口ベクトルの中点cを定め、出口分岐道の中心線(cC)603を定める。
【0050】
次に、道路本線から出口ベクトルを経由して出口分岐道へのリンクを生成する。まず、出口ベクトルの中点cを、道路本線上に投影した点C’を生成する。投影点C’は、中点cから道路本線APに垂直に下ろした点を用いる。なお、道路本線の中心線602に垂直で中点cを通る線と道路本線APとの交点を投影点C’としてもよい。
【0051】
次に、道路本線501上のAから投影点C’へのリンク721、投影点C’から中点cへのダミーリンク722及び中点cから出口分岐道502上のCへのリンク723が生成される。生成された投影点C’から中点cへのリンク722は、道路を結びつけるためのダミーリンクであり、車の正しい経路を示すものではない。
【0052】
このリンクC’→cによって、道路本線のデータと出口分岐道のデータとを結びつける。これによって、地図の道路本線501上の点Aから進んできた車は、A→C’→c→Cとリンクを辿って、道路本線501から分岐して出口分岐道502をCに向けて進むことができる。
【0053】
このとき、道路本線上のリンクは、AからC’へのリンク721及びC’からBへのリンクが生成される。このリンクによって、地図の道路本線501上で、車はAからC’を経由してBに進むことができる。
【0054】
図7は、本発明の実施の形態の道路出口ベクトルのリンクの具体的方法の第3例を示す図である。
【0055】
前述した第1例(図5)では、道路本線611と出口ベクトル601とを、出口ベクトル601の始点Sでリンクしたが、第3例(図7)では、道路本線611と出口ベクトル601とを、出口ベクトル601の終点Eでリンクする。
【0056】
第3例では、前述した第1例と同様に、出口ベクトルの中点cを定め、出口分岐道の中心線(cC)603を定める。
【0057】
次に、道路本線から出口ベクトルを経由して出口分岐道へのリンクを生成する。まず、出口ベクトルの終点Eを、道路本線上に投影した点E’を生成する。投影点E’は、終点Eから道路本線APに垂直に下ろした点を用いる。なお、道路本線の中心線602に垂直で終点Eを通る線と道路本線APとの交点を投影点E’としてもよい。
【0058】
次に、道路本線501上のAから投影点E’へのリンク821、投影点E’から終点Eへのダミーリンク822、終点Eから中点cへのダミーリンク823及び中点cから出口分岐道502上のCへのリンク824が生成される。生成された投影点E’から終点Eへのリンク822及び終点Eから中点cへのリンク823は、道路を結びつけるためのダミーリンクであり、車の正しい経路を示すものではない。
【0059】
このリンクE’→E→cによって、道路本線のデータと出口分岐道のデータとを結びつける。これによって、地図の道路本線501上の点Aから進んできた車は、A→E’→E→c→Cとリンクを辿って、道路本線501から分岐して出口分岐道502をCに向けて進むことができる。
【0060】
このとき、道路本線上のリンクは、AからE’へのリンク821及びE’からBへのリンクが生成される。このリンクによって、地図の道路本線501上で、車はAからE’を経由してBに進むことができる。
【0061】
以上説明したように、リンクの第1例から第3例のようにリンクを辿ることによって、道路本線501と、正しい出口分岐線(出口ベクトル)によって記載される出口分岐道502とが結びつけられ、道路地図上の車の正しい位置を示すことができる。
【0062】
図8は、本発明の実施の形態の地図精度評価の説明図である。
【0063】
地図精度評価部142は、道路地図管理部111に格納された地図データ上の分岐点Pの位置と、分岐線抽出部122によって定められた出口分岐線の始点Sとの誤差を評価する。すなわち、出口出発点Sから分岐点Pまでのベクトルと、出口ベクトルSEとを比較して、誤差を求める。なお、出口出発点の投影点S’から分岐点Pまでのベクトルと、投影された出口ベクトルS'E'とを比較しても、ほぼ同様の結果が得られる。よって、本実施の形態では、計算の容易の観点から、投影点S’、E’を用いる。
【0064】
具体的には、数式(1)を用いて、出口出発点の投影点S’から分岐点PまでのベクトルS'Pと、投影された出口ベクトルS'E'とを比較して、偏差εを求める。
【0065】
【数1】

【0066】
その結果、偏差εが負であれば、分岐点Pの位置は出口区間より(正しい分岐点Sの位置より)手前の分岐点手前区間にある。また、偏差εが0から100%の間であれば、分岐点Pの位置は出口区間内にある。また、偏差εが100%より大きければ、分岐点Pの位置は出口区間を超過した分岐点超過区間にある。
【0067】
図9は、本発明の実施の形態の地図精度評価処理のフローチャートである。
【0068】
まず、地図精度評価部142は、道路地図管理部111に格納された地図データから、分岐点Pの位置(座標)を抽出する(S111)。ステップS111の処理は、前述したステップS101の処理と同じである。
【0069】
次に、前述した道路地図作成処理(図2)のステップS105において探し出された出口ベクトルの始点Sと、ステップS111で抽出された分岐点Pとの間の距離を算出する(S112)。出口ベクトルの始点Sと分岐点Pとの間の距離を分岐点位置オフセット距離と定め、ベクトルSPを地図上に表示する(S113)。
【0070】
次に、出口出発点の投影点S’から分岐点PまでのベクトルS'Pと、投影された出口ベクトルS'E'とを比較して、偏差εを求める(S114)。
【0071】
その結果、偏差εが負であれば、分岐点Pの位置は出口区間より手前にあることが分かる(S115)。また、偏差εが0から100%の間であれば、分岐点Pの位置は出口区間内にあることが分かる(S116)。また、偏差εが100%より大きければ、分岐点Pの位置は出口区間を超過した位置にあることが分かる(S117)。
【0072】
複数の出口について求められた偏差εを、ステップS115からS117で区別した後、偏差εをグラフに表示する(S118)。これによって、地図の誤差の傾向を知ることができる。
【0073】
図10は、本発明を適用したカーナビゲーションの実施の形態の説明図である。
【0074】
カーナビゲーションシステムは、位置取得部、演算部、記憶部及び表示部を備える。位置取得部は、GPS受信機を備え、GPS衛星からの信号によって、車の位置情報を取得する。演算部は、プロセッサを含み、位置取得部が取得した車の位置を利用して演算処理を実行する。特に、本実施の形態では、図11に示す処理を実行する。記憶部は、演算部で実行されるプログラム及び演算部で用いられる地図情報を格納する記憶装置である。表示部は、演算部によって演算された結果をユーザに表示する。
【0075】
次に、車が道路本線を進むか、出口分岐道に進むかを判定する出口分岐判定の一例について説明する。
【0076】
まず、道路本線上を出口準備区間(A−S’)、出口区間(S’−E’)及び出口超過区間(E−B)に区分する。道路本線を走行する車Vがどの区間に存在するかは、数式(1)を用いて解散されるパラメータaによって判定される。
【0077】
【数2】

【0078】
前述のように定義されるaが1であれば、車Vは投影点S’上にある。また、aが0であれば、車Vは投影点E’上にある。すなわち、aが100%を超えれば車Vは出口準備区間にあり、aが100%以下及び0%以上であれば車Vは出口区間にあり、aが0%未満であれば車Vは出口超過区間にある。
【0079】
道路本線を走行する車Vは、A→S’に進む。そして、a=0となり、車VがS’に到達し、さらにC’に進む。車VがS’からC’に進む間に、車Vの実際の位置(例えば、GPSによって取得した車が実在する位置)が領域Aを通過するか否かを判定する。
【0080】
領域Aは、道路本線501の出口区間のうち道路中心線901より出口分岐側で、かつ、出口ベクトルの中点Cより始点S側の四角形で区分される。具体的には、領域Aは、出口ベクトルの始点Sと投影点S’を結ぶ線分622、出口ベクトルの中点Cと投影点C’を結ぶ線分902、出口ベクトル601、及び道路本線の中心線901で囲まれる略長方形で定義される。
【0081】
領域Bは、道路本線501の出口区間のうち、領域Aを除いた領域である。具体的には、領域Bは、出口ベクトルの始点Sと投影点S’を結ぶ直線622、出口ベクトルの終点Eと投影点E’を結ぶ直線902、出口ベクトル601、及び道路本線の中央分離線903で囲まれる略長方形から領域Aを除いて定義される。
【0082】
なお、道路本線が片側3車線以上の場合、出口に最も近い車線上を領域Aと定めてもよい。
【0083】
すなわち、領域Aは、道路本線の幅の所定の割合の幅を有する長方形によって定義される。なお、所定の割合は、道路本線の車線数によって定めるとよい。
【0084】
車VがS’からC’に進む間に、車の実際の位置が領域Aを通過すると、車Vは出口分岐道502に進むと判定し、車Vの位置を本道501から出口ベクトル601に移す。本道501と出口ベクトル601は、S→S’のダミーリンクにょってリンクされているので、本道501を進む車Vは、出口ベクトル601を経由して出口分岐道502に進むことができる。
【0085】
なお、車Vが領域Aを通過しても、出口区間を過ぎ、出口超過区間に入っても、道路本線501上にあれば、車Vは道路本線上を進んでいると判定し、車Vは出口ベクトル602から道路本線E→Bに戻される。
【0086】
図11は、本発明を適用したカーナビゲーションの実施の形態の処理のフローチャートである。
【0087】
まず、GPSによって、車の位置を取得する(S121)。次に、前述した数式(2)を用いてaを算出して、車がどの区間を走行中かを判定する(S122)。
【0088】
その結果、車が出口区間を走行中と判定されると、出口表示をする(S124)。出口表示は、具体的には、出口ベクトルの始点S及び終点Eを、道路地図上に重畳して表示する。
【0089】
次に、車の道路本線上の位置を算出する(S125)。具体的には、車と出口ベクトルの距離d1及び車と道路本線の境界(対向車線との間の中央分離線)903の距離d2を求める。
【0090】
次に、出口区間における車が存在する位置を判定する(S126)。具体的には、ステップS125で算出された車の位置によって(すなわち、d1とd2を比較することによって)、車が道路本線上の出口側を走行しているのか、中央分離線側を走行しているのかが分かる。例えば、図10において、車がV’にいるとき、d1はd2より大きいので、車は中央分離線側の車線を走行していことが分かる。さらに、パラメータaを用いて、車が出口区間のどこにいるのかを判定する。
【0091】
その結果、
100%≧a≧50% かつ d1≦d2
であれば、車は領域Aを走行中であると判定できる。また、
50%>a≧0 又は d1>d2
であれば、車は領域Bを走行中であると判定できる。
【0092】
そして、車が領域Aに存在すれば、車は出口分岐道502に進入する可能性が高いと判定し、地図上の車の走行位置を出口分岐道502に引き込む(S127)。一方、車が領域Bに存在すれは、車は出口分岐道502に進入する可能性が低い(道路本線501をそのまま走行するする可能性が高い)と判定し、地図上の車の走行位置は道路本線上を維持する(S128)。
【0093】
このとき、車速が所定値以下の場合にのみ、出口分岐道502に引き込んでもよい。車が領域Aを走行中であったとしても、車速が速い場合は、出口分岐道502に分岐する可能性は低いからである。
【0094】
また、ステップS122において、車が出口区間に到達していない(出口準備区間にいる)と判定されると、車の位置座標と出口ベクトルの始点Sの位置座標を用いて、車と出口ベクトルの始点(出口始点)との距離VSを算出する(S129)。
【0095】
その後、算出された距離VSと出口ベクトルの長さSEとを比較する(S130)。
【0096】
例えば、後述する数式(3)が真であれば、車は出口始点に近づいていると判定して、出口準備表示をする(S131)。具体的には、出口準備表示は、出口が近づいている旨、及び/又は出口側のレーンに変えるような指示を表示部に表示する。なお、表示部による表示と併用して又は単独で、音声によって運転者に注意を促してもよい。
【0097】
【数3】

【0098】
ここで、計数nは任意の数を設定しうる。また、nを車速に応じて変更してもよい。すなわち、車速が早ければ、nを大きな値にして、出口より十分遠い位置から出口準備表示をする。
【0099】
一方、数式(3)が偽であれば、車は出口始点から遠いと判定し、出口準備表示(S131)をしない。
【0100】
また、ステップS122において、車が出口区間を過ぎている(出口超過区間を走行中)と判定されると、出口超過表示をする(S132)。具体的には、出口超過表示は、出口を通り過ぎた旨を表示部に表示する。なお、表示部による表示と併用して又は単独で、音声によって運転者に注意を促してもよい。
【0101】
このとき、ステップS127で車を出口分岐道に引き込んだが、車の実際の位置が道路本線上にあれば、車の地図上の位置を道路本線上に修正する。一方、ステップS128で車を道路本線に引き込んだが、車の実際の位置が出口分岐道上にあれば、車の地図上の位置を出口分岐道上に修正する。
【0102】
次に、出口分岐判定(S126)の別の例について説明する。
【0103】
以下に説明する第2例では、数式(4)で定義される出口分岐確率Pを用いて、車が出口分岐道502に進むか否かを判定する。
【0104】
【数4】

【0105】
数式(4)において、パラメータaは、数式(2)で算出され、車が出口区間のどこにいるかを示すパラメータである。d1及びd2は、ステップS125で算出された車の位置を示すパラメータである。Kは、確率Pを後の処理で扱いやすい値にするための予め定められた係数である。
【0106】
そして、計算された確率Pと所定の閾値との比較結果に基づいて、地図上の車の走行位置を出口分岐道502に引き込むか否かを判定する。すなわち、計算された確率Pが所定値(例えば、0.5)以上であれば、車は出口分岐道502に進入する可能性が高いので、地図上の車の走行位置を出口分岐道502に引き込む(S127)。一方、計算された確率Pが所定値未満であれば、車は道路本線501を走行するする可能性が高いので、車の地図上の位置は道路本線上が維持される(S128)。
【0107】
また、前述したと同様に、車速が所定値以下の場合にのみ、出口分岐道502に引き込んでもよい。また、確率Pを車速の関数としてもよい。具体的には、車速が遅ければPが大きくなり、車速が速ければPが小さくなる関数とする。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】本発明の実施の形態の道路地図作成システムの構成例を示す機能ブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態の道路地図作成システムの処理を示すフローチャートである。
【図3】本発明の実施の形態で用いられる道路地図の出口分岐の説明図である。
【図4】本発明の実施の形態の出口分岐線の抽出を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態の道路出口ベクトルのリンクの具体的方法の第1例を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態の道路出口ベクトルのリンクの具体的方法の第2例を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態の道路出口ベクトルのリンクの具体的方法の第3例を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態の地図精度評価の説明図である。
【図9】本発明の実施の形態の地図精度評価処理のフローチャートである。
【図10】本発明を適用したカーナビゲーションの実施の形態の説明図である。
【図11】本発明を適用したカーナビゲーションの実施の形態の処理のフローチャートである。
【符号の説明】
【0109】
110 処理管理部
111 道路地図管理部
112 航空写真管理部
113 地図・航空写真重畳部
120 道路分岐抽出部
121 分岐区域抽出部
122 分岐線抽出部
130 表示部
131 画像表示部
132 地図表示部
133 道路出口属性表示部
140 利用部
141 地図更新部
142 地図精度評価部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路地図と該道路地図を含む領域を撮像した写真画像との地理的な位置を整合する手順と、
前記整合された写真画像から、道路本線と分岐道とを区画する出口分岐線の始点及び終点を抽出する手順と、
前記抽出された始点及び終点を結ぶ出口分岐線を定める手順と、
前記定められた出口分岐線に基づいて、前記道路本線と前記分岐道との分岐位置を特定する手順と、をコンピュータに実行させるプログラム。
【請求項2】
前記道路本線と分岐道とを区画する出口分岐線の始点及び終点を抽出する手順では、前記道路本線と前記分岐道との境界を示す道路上に表示された出口境界線の端点を、前記整合された写真画像から、前記出口分岐線の始点及び終点として抽出することを特徴とする請求項1に記載のプログラム。
【請求項3】
前記プログラムは、さらに、
前記出口分岐線の特徴点の前記道路本線への投影点を計算する手順と、
少なくとも、前記投影点、前記特徴点及び前記出口分岐線の中心点をリンクすることによって、前記道路本線と前記分岐道とを結合する手順と、をコンピュータに実行させる請求項1に記載のプログラム。
【請求項4】
前記出口分岐線の特徴点は、前記出口分岐線の始点であって、
前記プログラムは、前記始点の道路本線上への投影点、前記出口分岐線の始点、出口分岐線の終点及び前記出口分岐線の中心点を順にリンクすることによって、道路本線と分岐道とを結合することを特徴とする請求項3に記載のプログラム。
【請求項5】
前記出口分岐線の特徴点は、前記出口分岐線の中心点であって、
前記プログラムは、前記中心点の道路本線上への投影点及び前記出口分岐線の中心点を順にリンクすることによって、道路本線と分岐道とを結合することを特徴とする請求項3に記載のプログラム。
【請求項6】
前記出口分岐線の特徴点は、前記出口分岐線の終点であって、
前記プログラムは、前記終点の道路本線上への投影点、前記出口分岐線の終点及び前記出口分岐線の中心点をリンクすることによって、道路本線と分岐道とを結合することを特徴とする請求項3に記載のプログラム。
【請求項7】
演算部及び記憶部を備え、デジタルデータ化された道路地図及び該道路地図を含む領域を撮像した写真画像とを用いて道路地図を作成する地図作成装置であって、
前記演算部は、
提供された写真画像と提供された道路地図との地理的な位置を整合し、
前記整合された航空写真から、道路本線と分岐道とを区画する出口分岐線の始点及び終点を抽出し、
前記抽出された始点及び終点を結ぶ出口分岐線を定め、
前記定められた出口分岐線に基づいて、前記道路本線と前記分岐道との分岐位置を特定することを特徴とする地図作成装置。
【請求項8】
前記演算部は、前記道路本線と前記分岐道との境界を示す道路上に表示された出口境界線の端点を、前記整合された航空写真から、前記出口分岐線の始点及び終点として抽出することを特徴とする請求項7に記載の地図作成装置。
【請求項9】
前記演算部は、さらに、
前記出口分岐線の特徴点の前記道路本線への投影点を計算し、
少なくとも、前記投影点、前記特徴点及び前記出口分岐線の中心点をリンクすることによって、前記道路本線と前記分岐道とを結合することを特徴とする請求項7に記載の地図作成装置。
【請求項10】
演算部、表示部及び記憶部を備え、位置測定装置によって測定された位置情報に基づいて地図上に位置を表示する位置表示システムであって、
前記記憶部は、道路本線と分岐道とを区画する出口分岐線を含む地図のデータを格納し、
前記演算部は、
前記位置測定装置によって測定された位置を、前記道路本線上で特定し、
前記特定された位置が前記出口分岐線を用いて定められる該出口分岐線に接する所定領域内であれば、前記車の表示位置を前記分岐道に引き込むことを特徴とする位置表示システム。
【請求項11】
前記所定領域は、前記出口分岐線の半分を1辺とし、前記出口分岐線の始点を一つの頂点とし、前記道路本線の幅の所定の割合の長さの他辺を有する略四角形の領域であることを特徴とする請求項10に記載の位置表示システム。
【請求項12】
前記演算部は、前記車の速度が所定値以下であり、かつ、前記車が前記分岐道に進む確率が大きいと判定した場合に、前記車の位置を前記分岐道に引き込むことを特徴とする請求項10に記載の位置表示システム。
【請求項13】
前記演算部は、
前記道路本線に略平行な第1軸及び前記道路本線に略直交する第2軸を定め、
前記演算部は、
前記測定された位置の、前記第2軸における位置を判定し、
前記出口分岐線の始点と前記車の位置との間の前記第2軸方向の第1の長さと、前記道路本線の中央分離線と前記車の位置との間の前記第2軸方向の第2の長さとを算出し、
前記第1の長さが長ければ小さな値を与え、前記第2の長さが長ければ大きな値を与える関数を用いて、前記車が前記分岐道に進む確率を算出し、
前記前記算出された確率が所定の閾値を超えると、前記測定された位置を走行する車は前記分岐道に進む確率が大きいと判定し、前記車の表示位置を前記分岐道に引き込むことを特徴とする請求項10に記載の位置表示システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−20604(P2008−20604A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−191361(P2006−191361)
【出願日】平成18年7月12日(2006.7.12)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(000001487)クラリオン株式会社 (1,722)
【出願人】(501348139)株式会社 エイチ・シー・エックス (86)
【Fターム(参考)】