説明

道路形状認識装置

【課題】車両の進行方向前方に存在する道路の道路形状を正確に認識することができる道路形状認識装置を提供する。
【解決手段】道路形状認識装置1は、車両の進行方向前側を撮像した画像に基づいて道路の道路領域を検出し、その道路領域に基づいて道路の形状を推定する。これにより、道路形状を近傍から遠方まで正確に認識することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路形状認識装置に係り、特に、自車の進行方向前側に存在する道路の形状を認識する道路形状認識装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーダ等を用いて先行車の車速に合わせて自車の車速を制御するアダプティブ・クルーズ・コントロール(ACC)が製品化されている。さらに近年では、ナビゲーションシステムを用いて自車前方のカーブを検知し、カーブで自動的に減速するACCの技術が提案されている。
【0003】
このように自車の走行状態だけでなく、道路形状等の情報に基づいて車両を制御したり、運転者に警報を発するシステムでは、道路形状の検知誤差や工事による道路形状の変更、自車からカーブ等の所定箇所までの距離の算出誤差などの影響により、制御・警報タイミングにずれが発生するなどの問題がある。このため、道路形状をリアルタイムかつ高精度に計測する技術が重要となってくる。
【0004】
従来、このような目的のために開発された技術として、特許文献1に記載されたものが知られている。特許文献1に記載の従来の技術は、ミリ波レーダを用いて車両前方の静止物を検出し、該検出した静止物の中から前回の処理結果や、車両のヨーレートセンサや操舵角センサを用いて、道路形状の推定に有効な静止物のみを選択して、カーブ等の道路形状を推定するものである。また、前回の処理結果を用いる代わりに、複数道路形状を仮定して有効な静止物を道路形状毎に選択して、選択された静止物が最も多かったものを道路形状の推定に有効な静止物として選択するというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007―66047号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の手法では、前回の処理結果の道路形状に基づいて立体物を選択するのみであるため、道路形状が不連続である場合や、前回の処理で道路形状を誤って推定してしまった場合などに精度良く道路形状を推定することが難しくなる。
【0007】
また、前回の道路形状に基づいて静止物を選択する代わりに、複数の道路形状に対して静止物を選択する処理を行い、最も選択された静止物が多かった場合の静止物を有効とするため、複数の道路形状分だけ立体物選択処理を行う必要があり、道路形状に沿った立体物以外に多数の立体物を含む走行環境では誤った静止物を選択してしまうなどの問題がある。
【0008】
また、ヨーレートセンサや操舵角センサを用いて道路形状の推定に有効な静止物のみを選択して、カーブを推定する場合については、カーブ進入前にハンドルは操作せず、横加速度も発生しないので、カーブ進入前にカーブを検出することができないといった問題があった。そして、道路周辺に立体物が存在しない道路では、原理的にカーブを検出することが不可能であった。
【0009】
カーブなどの道路形状に応じた速度調整や道路の逸脱防止、警報処理などにおいて、運転者にとって違和感のない車両制御や警報処理等を行うためには、道路形状を高精度に認識する必要がある。
【0010】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、車両の進行方向前方に存在する道路の道路形状を正確に認識することができる道路形状認識装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決する本発明の道路形状認識装置は、車両の進行方向前側に存在する道路の道路形状を認識する道路形状認識装置であって、車両の進行方向前側を撮像し、その撮像した画像に基づき道路の道路領域を検出し、その検出した道路領域に基づき道路の道路形状を推定する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の道路形状認識装置によれば、撮像画像から道路の道路領域を検出して、その検出した道路領域から道路の道路形状を推定するので、撮像画像において、道路の道路領域を大きな面積で得ることができ、道路形状を近傍から遠方まで正確に認識することができる。したがって、従来のように白線や縁石等の物体を検出することが困難な遠方の道路形状や、白線や縁石等の物体が存在しない道路の道路形状の場合、あるいは、白線が存在する道路であっても遠方でカーブしており、白線の検知が困難な道路の道路形状の場合であっても、正確に認識することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1実施の形態における道路形状認識装置の機能ブロック図。
【図2】第1実施の形態の道路形状認識装置が適用される車載システムの構成図。
【図3】ステレオカメラの原理を示す図。
【図4】第1実施の形態における道路形状認識処理方法を示すフローチャート。
【図5】物体の三次元位置の座標系を示す図。
【図6】道路領域検出方法の一例を説明する図であり、(a)は左右のカメラにより撮像した左右の画像を示す図、(b)は相関値の系列の一例を示す図。
【図7】道路領域検出方法の一例を示す図であり、(a)は右カメラにより撮像した右画像、(b)は道路領域を示す図、(c)は道路領域の輝度分布と輝度範囲を示す図。
【図8】道路領域検出結果を示す図であり、(a)は遠方で右にカーブしている道路を撮像した画像を示す図、(b)は(a)の画像に基づいて道路領域を検出した例を示す図。
【図9】道路領域検出結果を示す図であり、(a)は遠方に上り坂がある道路を撮像した画像を示す図、(b)は(a)の画像に基づいて道路領域を検出した例を示す図。
【図10】道路形状を推定する際に用いるカーブの道路形状モデルの一例を示す図。
【図11】道路形状を推定する際に用いるカーブの道路形状モデルの一例を示す図。
【図12】道路形状を推定する際に用いる坂道の道路形状モデルの一例を示す図。
【図13】道路形状推定方法を説明する図であり、(a)は道路形状モデルの候補を示す図、(b)は道路形状モデルによって道路形状が推定された状態を示す図。
【図14】車両の進行方向前側に存在する三次元データの中からカーブの道路境界に存在する三次元データを選択する方法を説明する図。
【図15】車両の進行方向前側に存在する三次元データの中から坂道の道路境界に存在する三次元データを選択する方法を説明する図。
【図16】道路境界点に基づいてカーブの道路形状の推定結果を補正する道路形状算出方法を説明する図。
【図17】道路境界点に基づいて坂道の道路形状の推定結果を補正する道路形状算出方法を説明する図。
【図18】道路形状算出部が補正後の道路形状に基づき、カーブに接する円と、車両からカーブまでの距離を算出した結果の一例を示す図。
【図19】道路形状算出部が補正後の道路形状に基づき、カーブの角度と、車両からカーブまでの距離を算出した結果の一例を示す図。
【図20】道路形状算出部が補正後の道路形状に基づき、カーブの道路端の位置情報を算出した結果の一例を示す図。
【図21】道路形状算出部が補正後の道路形状に基づき、坂道の道路勾配の角度と坂道までの距離を算出した結果の一例を示す図。
【図22】コントロールユニットの処理を説明するフローチャート。
【図23】第2実施の形態における道路形状認識装置の機能ブロック図。
【図24】第3実施の形態における道路形状認識装置の機能ブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[第1実施の形態]
次に、本発明の第1実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
道路形状認識装置1は、図1に示す計測部(撮像部)30が、複数台のカメラ4により構成され、図2に示すような車載システム3に適用される。本実施の形態では、図2に示すように、カメラ4R(右カメラ)とカメラ4L(左カメラ)によって、車両周囲の環境を認識する機能を実現する。なお、カメラ4の台数は2台に限定されるものではなく、3台以上を備えていてもよい。また、カメラ4とは別体のコントロールユニット2や図示しない画像処理ユニットなどがカメラ4から画像を取り込んで処理する構成としてもよい。
【0015】
道路形状認識装置1は、図3に示すように、カメラ4R、4Lで同一の計測点P0を撮像した際に、生じる見え方の違い(以降、視差)を用いて、三角測量の原理で距離を求めることができる構成となっている。
【0016】
例えば、カメラ4R、4Lのレンズ5から計測点P0までの距離をZ、カメラ4R、4Lの間の距離をB、各カメラ4R、4Lのレンズ5aから撮像面5bまでの焦点距離をf、視差をδとすると、距離Zは下記の式(1)で求めることができる。ただし、単位は例えばすべてミリメートルとする。
【0017】

【0018】
道路形状認識装置1は、図2に示す車載システム3に適用される。車載システム3は、車両vに搭載され、道路形状認識装置1によって車両(以下、自車という。)vの進行方向前側に存在する道路の道路形状を検出し、コントロールユニット2に検出結果を送信し、検出結果に基づいてコントロールユニット2が車両を制御し、あるいは乗員に危険を報知するように構成されている。
【0019】
道路形状認識装置1は、図2に示すように、カメラ4Rおよびカメラ4Lに加え、CPU6、RAM9、プログラムROM10、データROM7を備えている。そして、コントロールユニット2は、CPU12、RAM11、プログラムROM14、データROM13を備えている。
【0020】
車載システム3は、道路形状認識装置1とコントロールユニット2とが互いに接続されており、さらに車室内に設置されて各種画像および各種情報を表示するためのディスプレイ15と、自車vがカーブ等に進入する際に速度超過などの危険性があるときなどに警告音声を発生するスピーカ19と、自車vのエンジンを始動する際にONとなるイグニッションスイッチ20と車載システム3を起動する起動スイッチ21が接続されており、ディスプレイ15の表示制御をはじめとして当該車載システム3全体の動作をコントロールユニット2が制御する構成となっている。
【0021】
道路形状認識装置1は、例えば車室内のルームミラー部に取り付けられており、自車vの進行方向前側である自車両前方の様子を、所定の俯角および取り付け位置で撮像するようになっている。
【0022】
カメラ4Rおよびカメラ4Lにより撮像された自車両前方の画像(以下、撮像画像という)は、道路形状認識装置1内部のRAM9に取り込まれ、自車両前方の道路の道路領域を検出するのに用いられる。道路形状認識装置1は、カメラ4R、4Lの画像に基づいて道路領域を検出し、道路領域に基づいて道路形状を算出する。
【0023】
道路形状認識装置1は、道路形状として、例えばカーブの曲率半径とカーブ入り口までの距離を算出し、ディスプレイ15に表示画像として検出結果を描画するか、自車が推定した道路形状に対して自車の速度が超過しており、道路の逸脱の危険性があるとコントロールユニット2が判断した場合などには、コントロールユニット2の制御の基でディスプレイ15とスピーカ19、またはディスプレイ15あるいはスピーカ19のいずれかにより運転者に報知する。また、危険を回避、軽減するように自動制動をかけるなど、車両をコントロールユニット2により制御してもよい。
【0024】
ディスプレイ15は、例えばLCD(Liquid Crystal Display)等の表示機器よりなり、コントロールユニット2による表示制御のもとで、例えば図示しないカーナビゲーションシステムによる走行経路案内の画像や、道路形状認識装置1の画像等の各種画像を表示する。また、ディスプレイ15は、道路形状認識装置1により急カーブ等を認識したときに、コントロールユニット2による制御のもとで、急カーブなどが存在する旨を報知するメッセージを表示する。
【0025】
コントロールユニット2は、CPU12、RAM11、データROM13やプログラムROM14がバスを介して接続された構成を有しており、CPU12がプログラムROM14に格納された各種制御プログラムを実行することで、システム全体の動作を制御するようになっている。
【0026】
道路形状認識装置1は、自車前方の車線や立体物等の物体を検知するとともに道路形状を算出する道路形状認識プログラムがプログラムROM10に格納されており、エンジンを始動するとCPU6がこれらのプログラムを実行することで、道路形状認識機能が実現され、図1の機能ブロック図のように、道路領域検出部31、道路形状推定部32、道路境界点抽出部33、道路形状算出部34として機能するようになっている。なお、車線や立体物等を検出する技術は、公知の技術であるので特に図示はしない。
【0027】
道路領域検出部31は、カメラ4Rとカメラ4Lの撮像画像の少なくともいずれか1つを処理して、アスファルト等からなる道路の道路領域を検出する機能を有する。道路形状推定部32は、道路領域検出部31で検出した道路領域を基に道路の道路形状を推定する機能を有する。道路境界点抽出部33は、道路と道路外との道路境界点を抽出する機能を有する。道路形状算出部34は、道路境界点抽出部33により抽出した道路境界点の三次元位置に基づいて、道路形状推定部32により推定した道路形状を補正して、より正確な道路形状を算出する機能を有する。
【0028】
以上のように構成される道路形状認識装置1は、上述したように、CPU6が道路形状認識プログラムを実行することで、例えば車線や縁石等の道路形状を認識可能な物体が見えない遠方においても、また、そのような物体が存在しない道路においても、アスファルト等からなる道路領域を検出することで、道路形状を正確に認識することができる。
【0029】
そして、認識結果を入力画像に重畳した画像等をディスプレイ15に出力するとともに、認識結果をコントロールユニット2に送信し、コントロールユニット2の制御のもとで危険があると判断した場合は、減速する制御を行うか、あるいは警報音を発生させて、車両の乗員に報知するようにしている。
【0030】
この減速する制御を行う際に、エンジンブレーキや回生ブレーキを用い、また走行路が上り坂または走行路の先が上り坂の場合は減速制御を行わないこと等により燃費を向上することができる。また、出力された道路形状に対して自車が逸脱する危険がある場合には、ステアリングやブレーキにより旋回制御やブレーキ制御を行うか、警報音を発生させて、車両の乗員に報知するようにしてもよい。
【0031】
ここで、以上のような道路形状認識装置1において、画像を撮像し道路形状を算出して結果を出力するまでの一連の処理の流れについて、フローチャートおよび図面を参照しながら説明する。
【0032】
図4は、本実施の形態における道路形状認識処理方法を示すフローチャートである。図4のフローチャートに示す一連の処理は、イグニッションスイッチ20(図2を参照)がオンとなったときにスタートし、イグニッションスイッチ20がオフとなるまで繰り返し行われる。
【0033】
そして、自車vが走行中であるか停止中であるか、また、ディスプレイ15に表示されている画像がカーナビゲーションシステム(図示せず)の走行経路案内画像であるか、その他の映像であるかに拘わらず実施される。ただし、自車vが走行中であるか停止中であるか、また、ディスプレイ15に表示されている画像がカーナビゲーションシステムの走行経路案内画像かその他の映像であるかに応じて、処理の実施を決定する構成としてもよい。
【0034】
まず、イグニッションスイッチ20がオンとなると、道路形状認識装置1により道路形状認識プログラムが実行され、初期化フラグがONに設定される(ステップS101)。次に、車載システム3の起動スイッチ21がONか否かを判定する(ステップS102)。そして、車載システム3の起動スイッチ21がONの場合は、初期化フラグがONか否かを判定する(ステップS103)。
【0035】
そして、初期化フラグがONのときは過去の道路形状認識結果をリセットするなどの初期化処理を実施して(ステップS104)、初期化フラグをOFFに設定する(ステップS105)。そして、ステップS103で初期化フラグがOFFのとき、あるいはステップS105で初期化フラグをOFFに設定した後に、道路形状を算出すべく、ステップS106以降に移行する。
【0036】
ステップS106では、アスファルト等からなる道路の道路領域を検出するとともに、カメラ4Rとカメラ4Lの見え方の違いから、自車vの進行方向前側に存在する物体の三次元位置を検出する処理が行われる。ただし、このときの三次元座標系は、例えば図5に示すようにカメラ4Rとカメラ4Lの中間点を原点Oとし、自車進行方向をZ軸、水平方向(車幅方向)をX軸、垂直方向をY軸とする直交座標系で表すものとする。
【0037】
例えば、自車vの進行方向前側に存在する車線や立体物等の物体は、カメラ4R、4Lの撮像画像を処理することで得られる3次元データを解析し、垂直構造物を立体物、水平かつ連続に存在する白線を車線として検出することができる。
【0038】
2台以上のカメラ(以下、ステレオカメラ)を用いることにより、分解能の高い3次元データを得ることができ、自車vの近傍に位置する車線や縁石等の小さい物体を高精度に検出することができる。
【0039】
また、ステレオカメラでは、三次元計測性能がレーダ装置等のように、対象物の反射特性に依存しないので、草木や建物などの多種多様な物体の三次元データを計測でき、道路形状に沿った三次元データについても、より多くの対象を検出することができる。
【0040】
道路領域検出部31は、例えば撮像画像を処理して物体の三次元位置を検出する際に得られる右カメラ4Rの画像(以下、右画像)と左カメラ4Lの画像(以下、左画像)間の相関値の系列(図6(b))を用いて道路領域を検出する。
【0041】
以下、図6を用いて、相関値の系列の算出から道路領域を検出する一例について説明する。図6は、道路領域検出方法の一例を説明する図であり、(a)は左右のカメラにより撮像した左右の画像を示す図、(b)は相関値の系列の一例を示す図である。
【0042】
図6(a)に示すように、右画像61Rに視差算出用のウィンドウ65Rを設定し、そのウィンドウ65Rと同サイズのウィンドウ65Lを左画像61Lの水平方向に操作して、右画像61Rのウィンドウ65Rと左画像61Lのウィンドウ65L内の画像が、どの程度類似しているかを表す相関値を計算していく(視差探索)。
【0043】
相関値は、下記の式(2)の差分絶対値和(SAD:Sub of Absolute Difference)などによって計算することができる。ただし、Nは視差算出対象ウィンドウの縦サイズ、Mは横サイズであり、I(i, j)は、右画像61Rの輝度値、T(i,j)は、左画像61Lの輝度値である。
【0044】

【0045】
そして、視差の探索範囲Sm分だけ、左画像61Lのウィンドウ65Lをシフトしていき、相関値を計算することで相関値の系列を得る(図6(b))。そして、Sm個の相関値の中から最小値Siを求め、Siが視差となる。
【0046】
ここで、Siの左隣の相関値Si-1と右隣の相関値Si+1を比較し、その差が所定値以下(類似していれば)であれば、右画像61Rの視差算出対象ウィンドウ65R内の画素は道路領域62Rであると判断し、当該画素に道路領域ラベルを付与する。
【0047】
例えば、道路領域62Rと判定された画素位置には、道路領域ラベルとして1を代入し、道路領域でないと判定された画素位置(例えば上空領域64R、道路外領域63R)には0を代入する。そして、右画像61Rの視差算出対象ウィンドウ65Rをシフトさせて、右画像61R全体の視差と道路領域ラベルを得る。
【0048】
道路領域ラベルを付与した道路領域検出結果の例を図8、図9に示す。図8は、道路領域検出結果を示す図であり、図8(a)は遠方で右にカーブしている道路82をカメラ4で撮像した画像81を示す図、図8(b)は図8(a)の画像81に基づいて道路領域検出部31で道路領域を検出した結果例を示す図である。
【0049】
図8(a)の画像81には、道路82と、道路外83と、上空84が撮像されている。画像81内の道路82は、遠方に移行するにしたがって消失点に接近し、漸次小さくなるように撮像される。したがって、遠方でカーブしている部分を含む領域85は、近傍位置と比較して相対的に解像度が低く、道路82に白線や縁石等が存在している場合には、ほとんど認識できない。したがって、従来の白線や縁石等によって道路形状を認識する方法では、遠方の道路形状を認識することは困難であった。
【0050】
これに対して、本発明の道路形状認識装置1は、道路領域検出部31によって道路の道路領域を検出する。図8(b)に示されるハッチング部分は、画素に道路領域ラベル1が付与された道路候補点からなり、ハッチング以外の部分は、画素に道路領域ラベル0が付与された非候補点からなる。なお、図8(b)に示される島状部分87はノイズが表されたものである。道路領域86は、図8(b)に示されるように、道路形状全体を認識することができ、道路が遠方で右側にカーブしていることが認識できる。
【0051】
図9は、道路領域検出結果を示す図であり、図9(a)は遠方に上り坂がある道路をカメラ4で撮像した画像を示す図、図9(b)は図9(a)の画像に基づいて道路領域検出部で道路領域を検出した例を示す図である。
【0052】
図9(a)の画像91には、道路92と、道路外93と、上空94が撮像されている。道路92は、画像91内において遠方に移行するにしたがって消失点に接近し、漸次小さくなるように撮像される。
【0053】
したがって、遠方の上り坂部分を含む領域95は、近傍位置と比較して相対的に解像度が低く、道路92に白線や縁石等が存在している場合には、ほとんど認識できない。したがって、従来の白線や縁石等によって道路形状を認識する方法では、遠方の道路形状を認識することは困難であった。
【0054】
これに対して、本発明の道路形状認識装置1は、道路領域検出部31によって道路領域を検出する。図9(b)に示されるハッチング部分は、画素に道路領域ラベル1が付与された道路候補点からなり、ハッチング以外の部分は、画素に道路領域ラベル0が付与された非候補点からなる。なお、図9(b)に示される島状部分97はノイズが表されたものである。道路領域96は、図9(b)に示されるように、道路形状全体を認識することができ、道路が遠方にまっすぐに延びて、その途中位置で、道路端の傾斜角度が立つ方向に変化していることから、道路途中で勾配が変化して上り坂となっていることが認識できる。
【0055】
このように、視差算出時に求める相関値の系列を用いて道路領域を検出することで、処理時間を短縮することができ、装置としての応答性を良好なものにすることができる。
【0056】
また、道路領域検出方法として、過去に検出した道路領域から輝度値、色の分布を取得して、道路領域75を検出してもよい。図7は、道路領域検出方法の他の一例を示す図であり、(a)は右カメラにより撮像した右画像、(b)はその右画像から輝度に基づいて検出した道路領域を示す図、(c)は道路領域の輝度分布と輝度範囲を示す図である。
【0057】
図7(a)に示す右画像71には、道路72と、道路外73と、上空74が撮像されている。例えば、図7(a)に示す右画像71から過去の道路領域中に存在する画素の輝度の情報を収集し、輝度の分布の平均値Bmと標準偏差σ等を求める。そして、図7(c)に示すように、輝度の分布の平均値Bmから標準偏差σあるいは2σの範囲に入る輝度を道路領域の輝度範囲76として求め、右画像71の輝度のうち、道路領域72の輝度範囲76に入る画素に道路領域ラベルを付与する。これにより、図7(b)に示されるように、道路領域75を検出することができ、道路形状全体を認識することができる。
【0058】
このとき、過去の道路領域の代わりに自車の車速や操舵角等を用いて道路形状を予測して、車線幅wを定義することで得られる道路領域を用いて輝度値や色等の分布を取得してもよく、また、前記相関値系列から求める道路領域と輝度や色の分布から求める道路領域を組み合わせてもよい。
【0059】
さらに、レーザレーダやミリ波レーダ(レーダ装置)等の図示しない立体物検出手段により、駐車車両や先行車両等の道路上の障害物を検出し、その障害物の領域の全部あるいは一部を道路領域とすることで、道路上の障害物により道路領域が遮蔽される影響を除去してもよい。
【0060】
また、道路領域がアスファルトと、横断歩道などの路面ペイント等の複数の輝度、色から構成される場合は、道路領域の輝度分布、色の分布を複数求めることで、アスファルトと路面ペイント等の領域を道路領域として検出してもよい。
【0061】
また、車載システム3が、図2に図示しないカーナビゲーションシステムを具備している場合には、カーナビゲーションシステムが有する地図データベースから、走行中の道路の形状等を取得して、道路領域の輝度、色情報を取得することもできる。
【0062】
例えば、地図データベースの情報を基にカーナビゲーションシステムがカーブ半径を求め、道路形状認識装置1に送信する。道路形状認識装置1のナビゲーション情報取得部では、カーナビゲーションシステムから得たカーブ半径に加え、道路幅、道路に対する自車の位置を定義することで画像上での道路領域を予測して、予測した道路領域内の輝度、色情報を取得することができる。
【0063】
また、カーナビゲーションシステムが地図データベースから、横断歩道等の路面ペイントの有無等の情報を取得し、道路形状認識装置1のナビゲーション情報取得部に送信すれば、道路形状認識装置1がカーナビゲーションシステムの情報を基に、道路領域がいくつの輝度、色から構成されるかを判定して複数の輝度や色の分布を求めてもよい。
【0064】
そして、ステップS107では、ステップS106で検出した道路領域に対して、図10、図11、図12のような曲線、直線等の組み合わせで表現される道路形状モデル101等を当てはめることで、道路形状を推定する処理が行われる。
【0065】
図10と図11は、道路形状を推定する際に用いるカーブの道路形状モデルの一例をそれぞれ示す図であり、図12は、道路形状を推定する際に用いる坂道の道路形状モデルの一例を示す図である。
【0066】
図10に示す道路形状モデル101は、X−Z平面において所定の曲率半径で右カーブする道路形状モデル(X=aZ+bZ+c)であり、道路幅wを有して互いに対向するように左右の道路端101L、101Rが規定される。
【0067】
図11に示す道路形状モデル110は、X−Z平面において自車vから進行方向前側に距離Zjだけ離間した接続点P11で右に折れ曲がる道路形状モデルであり、自車vから接続点P11までZ軸に沿って延在する道路形状111(X=eZ+f)と、接続点P11から進行方向に向かってZ軸に対して一定の傾斜角度で延在する道路形状112(X=gZ+h)とを組み合わせたものである。道路形状モデル110は、道路幅wを有して互いに対向するように左右の道路端111L、112L、111R、112Rが規定される。
【0068】
図12に示す道路形状モデル121は、Y−Z平面において所定の上り勾配を有する上り坂の道路形状モデル(Y=aZ+bZ+c)である。
【0069】
図13は、道路形状推定方法を説明する図であり、図13(a)は道路形状モデルの複数の候補を示す図、図13(b)は道路形状モデルによって道路形状が推定された状態を示す図である。
【0070】
例えば、図13(a)のように、道路形状モデル130の候補をNc個生成し、各候補1〜Ncを画像座標系に変換して、画像131上の道路領域132とそれぞれ重ね合わせる(図13(b))。そして、重ね合わせた際に、最も類似度が高かった道路形状モデル130を道路形状の推定結果として採用する。類似度は、例えば道路形状内に道路領域132と判定された画素を多く含む場合に高くなるように判断される。
【0071】
このように、X−Z平面の道路形状モデル130を用いて道路形状を推定することにより、実空間での道路形状を得ることができる。これにより、例えば図13(b)に示すように、道路領域検出結果にはノイズ134が発生するが、道路領域132全体と道路形状モデル130とを比較することで、このようなノイズの影響を軽減できる。
【0072】
このとき、計測部30としてステレオカメラを用いれば道路面の高さ等が分かるため、他のセンサを用いるより精度のよい推定ができる。また、図12に示すように、Y−Z平面の道路形状モデル121を用いれば、同様にして坂道の道路形状を推定することができる。
【0073】
また、車載システム3が図2に図示しないカーナビゲーションシステムを具備している場合には、地図データベースから走行中の道路の形状等を取得して、道路形状モデル130の候補を生成することもできる。
【0074】
例えば、カーナビゲーションシステムが地図データベースから、カーブ半径を取得し、道路形状認識装置1に送信する。道路形状認識装置1では、カーナビゲーションシステムから得たカーブ半径付近の道路形状候補のみを生成することで効率よく、かつ精度良く道路形状の推定を行うことができる。また、一般道か高速道路のいずれを走行中であるかの情報を取得できれば、高速道路では、カーブ半径が大きい道路形状モデルの候補のみを生成する構成にしてもよい。
【0075】
さらに、道路形状を推定する際に、近距離については白線や、縁石等の道路端を検出して、道路幅や3次関数の係数等を求め、遠くについては道路領域を用いて道路形状を推定するか、白線や縁石等の道路端等と、道路領域とを用いて道路形状を推定する構成としてもよい。
【0076】
また、ステップS108の道路境界点抽出処理では、図14、図15のようにステップS106で推定した道路形状141、151をもとに、ステレオカメラで計測した三次元データ群の中から、道路と道路外の境界に存在する三次元データを選択し、その選択した三次元データを道路境界点として抽出する処理が行われる。
【0077】
図14に示す例では、左道路端141Lと右道路端141Rのうち、左道路端141Lの情報を用いて道路境界点を抽出している。右カーブでは、右道路端141Rが立体物等により遮蔽されることがあるため、左道路端141Lを用いることで安定した結果を得ることができる。
【0078】
図14に示す例の場合、ステップS107の道路形状推定処理により推定した道路形状141の左道路端141Lに対して、三次元データ抽出領域142を設定し、自車vの進行方向前側で検出した三次元データ143a〜143nの中から、三次元データ抽出領域142内の三次元データ143a〜143eを、道路境界に存在する三次元データとして選択している。そして、その選択した三次元データ143a〜143eを道路境界点として抽出している。
【0079】
また、図15に示す例の場合、ステップS107の道路形状推定処理により推定した道路形状151に対して、三次元データ抽出領域152を設定し、自車vの進行方向前側で検出した三次元データ153a〜153hの中から、三次元データ抽出領域152内の三次元データ153a〜153cを、道路境界に存在する三次元データとして選択している。そして、その選択した三次元データ153a〜153cを道路境界点として抽出している。
【0080】
例えば、道路境界に存在する三次元データを選択する場合に、単に三次元データ抽出領域142、152内の三次元データ143a〜143e、153a〜153cを選択するだけでなく、連続性等を考慮して選択することでさらに精度のよい道路境界点が抽出できる。
【0081】
さらに、レーザレーダやミリ波レーダ等の図示しない立体物検出手段により、駐車車両や先行車両等の道路上の立体物を検出し、その立体物の領域の全部あるいは一部の三次元データを抽出しない構成としてもよい。駐車車両や先行車両等の道路上の立体物を除外することで、立体物が存在しないときと同じ道路形状を求めることができるようになる。
【0082】
また、車載システム3が図2に図示しないカーナビゲーションシステムを具備している場合には、地図データベースから走行中の道路の形状等を取得して、地図データベースの道路形状を考慮して道路境界点を抽出することもできる。
【0083】
例えば、カーナビゲーションシステムが地図データベースから、カーブ半径を取得し、道路形状認識装置1に送信する。道路形状認識装置1では、カーナビゲーションシステムから得たカーブ半径に沿うように三次元データ抽出領域142、152を設定することで、効率良く、かつ精度良く道路境界点を抽出することができる。
【0084】
そして、ステップS109では、ステップS107で推定された道路形状を補正して、補正後の道路形状を算出する処理が行われる。道路形状算出部34は、図16、図17のようにステップS108で抽出した道路境界点の三次元位置を用いて道路形状のずれを補正する。例えばカーブの道路形状の場合は、道路形状モデルを3次関数X=aZ+bZ+cとし、係数cは道路幅wから求めると、aとbのみを算出すればよい。
【0085】
これは、下記の式(3)で表される最小二乗法などにより求めることができる。最小二乗法の入力データとしては、例えば道路形状推定部32で推定した道路形状を所定の間隔でサンプリングした道路形状の座標列と、道路境界点抽出部33により抽出した三次元位置の座標列である。これらの座標列を(Xi, Zi)とする。ただし、i=1,2,・・・Lであり、Lは、サンプリングした道路形状の座標列と、三次元位置の座標列の総数である。
【0086】

【0087】
また、道路形状算出部34は、ステップS109で道路形状を補正した結果、もしくは、ステップS107の道路形状推定部32の結果のいずれかに基づいて、カーブの曲率半径Rとカーブまでの距離Dcを算出する(図18)。道路形状モデルに3次関数X=aZ+bZ+cを用いた場合には、下記の式(4)により曲率半径Rを算出することができる。
【0088】

【0089】
上記した式(4)では、距離Zが決まれば曲率半径Rが一意に求まる。したがって、図18のように、カーブの曲率半径Rを求める注視点P18(Xf、Zf)を定義する。注視点P18(Xf、Zf)は、例えばZ軸と道路形状181のカーブ外側の道路端(図18では左道路端181L)との交点として定義できる。
【0090】
そして、図18に示すように、曲率半径Rが注視点P18(Xf、Zf)に接するように円182の中心182a(Cx、Cz)を求めると、自車vからカーブまでの距離Dcを円182の中心のZ座標であるCzとすることができる。このとき、道路形状を直線と3次関数など複数のモデルで近似することにより実際の道路形状に近い結果を得ることができる。
【0091】
また、カーブの曲率半径の変わりに、注視点P19(Xf、Zf)でZ軸と道路形状191のなす角度をカーブの角度θとして求めてもよい(図19)。さらに、道路端の位置情報として、3次関数等で求めた道路形状そのものを出力してもよく、図20のように所定の距離間隔で道路201の道路形状をサンプリングし、右道路端201Rの位置の系列PiR、左道路端201Lの位置の系列PiLを算出して出力してもよい。ただし、iは道路形状をN個のセグメントに分割した際のセグメント番号であり、1からNの値を取る。
【0092】
坂道の場合は、図21に示すように、勾配変化点を注視点P21(Yf、Zf)として設定する。そして、補正後の道路211の道路形状から、その接線212とZ軸の成す角度を道路211の勾配角度θ’として求め、また、自車vから注視点P21までの距離Dsを求める(図21)。坂道についても、カーブと同様に3次関数等の道路形状モデルの係数や、サンプリングした道路形状のデータを求め、出力してもよい。
【0093】
そして、車載システム3が図2に図示しないカーナビゲーションシステムを具備している場合には、ナビゲーション情報取得部が自車位置検出部からの検出信号に基づき地図データベースから走行中の道路の形状等を取得することにより、道路形状を精度良く算出することもできる。
【0094】
ステップS110では、ステップS109までに求めた道路形状のうち少なくとも一つの結果を送信する。コントロールユニット2は、道路形状認識装置1により求めた道路形状算出結果に基づいて、制御・警報内容を決定し、自車vを制御するか乗員に警報を発する、あるいは自車vを制御し、かつ乗員に警報を発する処理を行う。
【0095】
その処理について図22のフローチャートに沿って説明する。本実施の形態では、道路形状に応じて適正車速を求め、減速、警報処理を実施する例について説明するが、道路形状に応じて自動的に旋回する等の処理を行ってもよい。
【0096】
図22に示す一連の処理は、イグニッションスイッチ20がオンとなったときにスタートし、イグニッションスイッチ20がオフとなるまで繰り返し行われる。自車vが走行中であるか停止中であるか、また、ディスプレイ15に表示されている画像がカーナビゲーションシステムの走行経路案内画像か、その他の映像であるかに拘わらず、実施される。ただし、自車vが走行中であるか停止中であるか、また、ディスプレイ15に表示されている画像がナビゲーションシステムの走行経路案内画像か、その他の映像であるかに応じて、処理の実施を決定する構成としてもよい。
【0097】
まず、イグニッションスイッチ20がオンとなると、コントロールユニット2により運転支援プログラムが実行され、初期化処理を実行する(ステップS201)。このとき、カーナビゲーションプログラム等の各種プログラムが同時に実行されていてもよい。次に、システムの起動スイッチ21がONか否かを判定する(ステップS202)。そして、システムの起動スイッチ21がONとなったときは、道路形状算出結果受信処理を実行し道路形状の情報をRAM11に格納する(ステップS203)。
【0098】
次に、ステップS204により道路形状に応じた適性速度を算出する。例えば、カーブの場合であればカーブの曲率半径とカーブまでの距離に応じて予め適性車速を設定しておくことで、道路形状にあった適性車速を得ることができる。
【0099】
前述の道路形状認識装置1によって、道路領域を利用して遠方までの道路形状を算出することができ、道路形状に応じた目標車速をリアルタイムで求めることができる。さらに、ステレオカメラ4では、画像上での形状に加えて各画素の三次元位置が求まっているため、道路境界に存在する三次元データのみを適切に選択すれば、精度良く道路形状を算出することができ、乗員に対して違和感の小さい車両制御、警報が可能となる。
【0100】
そして、ステップS205では、ステップS204により求めた適性車速と自車vの車速とを比較し、自車vの車速の方が大きければブレーキ、エンジンブレーキ、回生ブレーキのいずれか少なくとも1つで減速制御するか、あるいは運転者に速度超過を警告するメッセージや音声、警告を発する。このとき、減速制御と警告を同時に行ってもよい。
【0101】
また、警報は、ディスプレイ15かスピーカ19のいずれか、あるいはディスプレイ15とスピーカ19の両方を用いて乗員に警報を発する。ここで、警報にはディスプレイ15、スピーカ19の他にシートベルトや、アクセル、ブレーキペダル、ステアリング、シート等を振動させるなどによって警報を発してもよい。
【0102】
本発明を適用した道路形状認識装置1は、すべての処理をCPU6により実行する構成となっているが、画像処理専用LSIなどで画像処理の一部、あるいは全てを処理するようにしてもよい。
【0103】
以上説明したように、本発明を適用した道路形状認識装置1によれば、計測部30のカメラ4R、4Lで撮像した各画像を処理して、アスファルト等からなる道路領域を検出し、その検出した道路領域に基づいて道路形状を推定するので、道路領域は白線や縁石に比べ面積が広く検出でき、白線や縁石などが存在しない道路や、白線や縁石などが見えない遠方の道路においても、精度良く道路形状を算出することができる。
【0104】
特に、ステレオカメラを用いると、画像上での道路形状を求めるだけでなく、物体の三次元位置を利用することができ、カーブの曲率半径等を高精度に求めることができる。さらに、道路境界点抽出部33と道路形状算出部34を具備すれば、道路形状推定部32で推定した道路形状に基づき、ステレオカメラで算出した三次元データ群から道路境界を検出することができ、さらに精度のよい道路形状を算出することができる利点がある。
【0105】
また、本実施の形態の構成に加えて、カーナビゲーションシステムを具備すれば、カーナビゲーションシステムの自車位置検出部から得られる自車位置の情報と、カーナビゲーションシステムの地図データベースから得られる地図データとから、走行中の道路が高速道路か一般道かなどの道路種別を判定し、道路種別などに基づいて道路形状の係数の取り得る値の範囲を決定することができる。
【0106】
また、道路形状認識装置1における一連の処理または一部の処理を、コントロールユニット2内あるいは図示しない別の処理装置で処理される構成としてもよく、また、コントロールユニット2の処理が道路形状認識装置1内で処理される構成としてもよい。
【0107】
以上説明した本実施の形態では、計測部30として2つのカメラ4R、4Lを用いる例を示したが、カメラを1つのみと、レーザレーダ、ミリ波レーダなどのレーダ装置とを用いた構成でもよく、またはカメラ、レーザレーダ、ミリ波レーダなどを組み合わせた構成であってもよい。
【0108】
例えば、単眼カメラとレーダ装置とを組み合わせて、単眼カメラで道路領域を検出し、レーダ装置で物体の三次元位置を検出することで、上記した本実施の形態と同様の処理を実現できる。なお、単眼カメラとレーダ装置等の複数のセンサを組み合わせる場合は、カメラとレーダ装置の取り付け位置、取り付け角度を予め求めておき、座標系を合わせておくことが必要である。また、単眼カメラのみで構成した場合も、ステレオカメラ、単眼カメラとレーダ装置の組み合わせ等よりも精度は落ちるものの、道路形状を算出することができる。
【0109】
さらに、X−Z平面やY−Z平面などの2次元平面上での道路形状の当てはめだけでなく、X−Y−Z空間で平面や曲面の当てはめを行うことでカーブや勾配に加えバンク等の道路形状も推定することができる。
【0110】
道路形状認識装置1が出力する、カーブまでの距離Dcとカーブの曲率半径R、カーブ接線角度θ、坂までの距離Ds、勾配θ’のすくなくとも1つから検出した道路形状を走行する適正速度を算出することで、道路形状に応じた車両制御や警報処理が可能となる。
【0111】
[第2実施の形態]
図23は、第2実施の形態における道路形状認識装置の機能ブロック図である。
本実施の形態における道路形状認識装置1’は、図23に示すように、選択部40と、第1認識部41と、第2認識部42を備えている。選択部40は、道路周辺の立体物の有無や見通しなどがよい場合には第1認識部41を選択し、道路周辺の立体物により見通しが悪く、前方の道路形状の一部が死角となっている場合には第2認識部42を選択する。
【0112】
第1認識部41は、道路領域に基づいて道路形状を認識するものであり、その処理の内容は、上述の第1実施の形態と同様であるのでその詳細な説明は省略する。第2認識部42は、進行方向前側に存在する物体を検出して、その物体の三次元位置に基づいて道路形状を認識するものであり、物体検知部51、道路形状予測部52、物体選択部53、道路形状推定部54を有している。
【0113】
物体検知部51は、計測部30であるカメラ4R、4Lの撮像画像を処理して物体を検出する機能を有する。物体には、車線などの路面標示と、縁石や樹木、建物といった立体物が含まれる。ここでは、物体を検出するとともに、その三次元位置も計測される。
【0114】
道路形状予測部52は、物体検知部51で検出した車線を基に遠方の道路形状を予測する機能を有するものである。この予測は、車線だけでなく、ガードレールや縁石などの道路を構成する立体物で予測してもよく、車線でなければならないといった制約はない。
【0115】
物体選択部53は、道路形状予測部52により予測した道路形状付近の立体物を選択する機能を有する。道路形状推定部54は、物体選択部53により選択した立体物の三次元位置情報と道路形状予測部52で道路形状を予測する際に用いた車線情報とを用いて道路形状を再度求める機能を有する。
【0116】
上記構成を有する第2認識部42は、カメラ4R、4Lで撮像した画像を処理し、車線や縁石といった道路を構成する物体から道路形状を予測し、道路形状を構成する車線等により予測した結果を基に道路に沿って存在する建物、樹木等を含む立体物を正しく選択することで、白線や縁石などに加えその他の立体物の位置情報を利用でき、高精度な道路形状の推定が実現できる。
【0117】
特に、ステレオカメラ4を用いると、車線や縁石を検出できるだけでなく、その三次元位置を取得できるので、道路形状を精度よく予測できるとともに、草木を含む多種多様な立体物を検出でき、多くの立体物の位置情報を利用することができる。
【0118】
また、第2認識部42の道路形状推定部54は、車線などの道路を構成する物体と建物などの道路に沿って存在する物体の距離を算出し、道路形状の推定に用いる立体物の位置情報を補正することで、車線等の道路形状を構成する物体と、建物等の道路に沿って存在する物体の位置誤差を吸収でき、より精度の高い道路形状の推定が可能となる。また、車線などの道路を構成する物体と建物などの道路に沿って存在する物体の距離を算出する代わりに、自車走行車線の左側に存在する車線数、右側に存在する車線数を求め、車線数に応じて道路形状の推定に用いる立体物の位置情報を補正する構成としてもよい。
【0119】
上記構成を有する道路形状認識装置1’によれば、立体物により見通しが悪く、前方の道路形状の一部が死角になっている場合は、選択部40が第2認識部42を選択することにより、見通しの悪い道路においても、精度を下げることなく、道路形状を算出することができる。
【0120】
[第3実施の形態]
図24は、第3実施の形態における道路形状認識装置の機能ブロック図である。
本実施の形態における道路形状認識装置1”は、図24に示すように、第1認識部41と、第2認識部42と、道路形状統合部43を備えている。第1認識部41と第2認識部42は、上述の各実施の形態と同様であるのでその詳細な説明を省略する。
【0121】
道路形状認識装置1”によれば、第1認識部41で道路領域に基づいて道路形状を算出する処理と、第2認識部42で立体物を用いて道路形状を算出する処理の両方を行い、道路形状統合部43が立体物の有無などからいずれかの道路形状を選択するか、又は、両方の平均をとるなどにより統合して1つの道路形状を出力するので、見通しが悪い道路などにおいても、精度を下げることなく、道路形状を算出することができる。
【0122】
本実施の形態における道路形状認識装置1”が正常に動作しているか否かは、見通しが良く車線のある道路、見通しが良く車線のない道路、見通しが悪く車線がある道路、見通しが悪く車線のない道路等において、道路形状を算出できるかどうか、道路形状の検出率、道路形状の検出距離、道路形状の算出精度を比較することで確認できる。
【0123】
本発明は、上述の各実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0124】
1、1’、1” 道路形状認識装置
2 コントロールユニット
3 車載システム
4R カメラ
4L カメラ
6 CPU
7 データROM
9 RAM
10 プログラムROM
11 RAM
12 CPU
13 データROM
14 プログラムROM
15 ディスプレイ
19 スピーカ
20 イグニッションスイッチ
21 起動スイッチ
30 計測部(撮像部)
31 道路領域検出部
32 道路形状推定部
33 道路境界点抽出部
34 道路形状算出部
40 選択部
41 第1認識部
42 第2認識部
43 道路形状統合部
51 物体検知部
52 道路形状予測部
53 物体選択部
54 道路形状推定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の進行方向前側に存在する道路の道路形状を認識する道路形状認識装置であって、
前記車両の進行方向前側を撮像する撮像部と、
該撮像部により撮像した画像に基づき前記道路の道路領域を検出する道路領域検出部と、
該道路領域検出部により検出した道路領域に基づき前記道路の道路形状を推定する道路形状推定部と、を有することを特徴とする道路形状認識装置。
【請求項2】
前記道路領域検出部は、前記撮像装置により撮像した画像の輝度情報と色情報の少なくとも一方に基づいて前記道路領域を検出することを特徴とする請求項1に記載の道路形状認識装置。
【請求項3】
前記道路領域検出部は、該道路領域検出部によって過去に道路領域を検出した過去画像から前記道路領域の輝度または色の分布の少なくとも一方の情報を取得し、該取得した情報に基づいて前記画像から前記道路の道路領域を検出することを特徴とする請求項2に記載の道路形状認識装置。
【請求項4】
自車位置周辺の地図データを地図データベースから取得するナビゲーション情報取得部を有し、
前記道路領域検出部は、前記地図データベースから得られる道路領域の輝度又は色の分布の少なくとも一方の情報に基づいて前記画像から前記道路の道路形状を検出することを特徴とする請求項2に記載の道路形状認識装置。
【請求項5】
前記道路領域検出部は、前記撮像部によって撮像された前記道路上の障害物の全部又はその一部を道路領域として検出することを特徴とする請求項2に記載の道路形状認識装置。
【請求項6】
前記撮像部は、複数のカメラを備え、
前記道路領域検出部は、前記複数のカメラにより撮像した各画像を処理して前記車両の進行方向前側に存在する物体の三次元位置を検出し、該物体の三次元位置を検出する際に前記複数のカメラから得られる画像間の相関値の系列に基づいて前記道路領域を検出することを特徴とする請求項1に記載の道路形状認識装置。
【請求項7】
前記道路形状推定部は、前記道路領域検出部により検出した道路領域と予め設定された複数の道路形状モデルとの形状の類似度をそれぞれ判定し、該類似度が最も高い道路形状モデルを前記道路の道路形状として採用することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の道路形状認識装置。
【請求項8】
前記道路形状推定部は、前記道路領域検出部により検出した道路領域に基づいて、複数の道路形状モデルを生成することを特徴とする請求項7に記載の道路形状認識装置。
【請求項9】
自車位置周辺の地図データを地図データベースから取得するナビゲーション情報取得部を有し、
前記道路形状推定部は、前記地図データベースから得られる道路形状の情報に基づいて前記道路形状モデルの候補を生成することを特徴とする請求項7に記載の道路形状認識装置。
【請求項10】
前記道路形状推定部は、前記道路のカーブの曲率半径、前記カーブまでの距離、前記カーブの接線角度、前記道路の坂の勾配、前記坂までの距離、前記車両と前記カーブ又は前記車両と前記坂との相対位置、前記道路の道路形状を道路形状モデルで近似した道路形状モデル係数の少なくともいずれか1つを道路形状として推定することを特徴とする請求項7に記載の道路形状認識装置。
【請求項11】
前記道路と道路外との道路境界点を抽出する道路境界点抽出部と、
該道路境界点抽出部により抽出した道路境界点に基づいて前記道路形状推定部により推定した道路形状を補正する道路形状算出部と、を有することを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の道路形状認識装置。
【請求項12】
前記道路境界点抽出部は、前記道路形状推定部により推定した道路形状に基づいて、前記車両の進行方向前側に存在する三次元データのうち、前記道路と道路外との境界に存在する三次元データを選択し、該選択した三次元データを前記道路境界点として抽出することを特徴とする請求項11に記載の道路形状認識装置。
【請求項13】
前記車両の進行方向前側に存在する物体の三次元データを検出するレーダ装置を有し、
前記道路境界点抽出部は、該レーダ装置の検出結果から前記境界に存在する三次元データを抽出することを特徴とする請求項12に記載の道路形状認識装置。
【請求項14】
前記道路境界点抽出部は、前記道路上に存在する駐車車両や先行車両等の障害物の三次元データを前記境界に存在する三次元データから除外することを特徴とする請求項12に記載の道路形状認識装置。
【請求項15】
自車位置周辺の地図データを地図データベースから取得するナビゲーション情報取得部を有し、
前記道路境界点抽出部は、前記地図データベースから得られる道路形状の情報に基づいて前記道路境界点を抽出することを特徴とする請求項11に記載の道路形状認識装置。
【請求項16】
前記道路形状算出部は、前記道路のカーブの曲率半径、前記カーブまでの距離、前記カーブの接線角度、前記道路の坂の勾配、前記坂までの距離、前記車両と前記カーブ又は前記車両と前記坂との相対位置、前記道路の道路形状を道路形状モデルで近似した道路形状モデル係数の少なくともいずれか1つを道路形状として算出することを特徴とする請求項11に記載の道路形状認識装置。
【請求項17】
自車位置周辺の地図データを地図データベースから取得するナビゲーション情報取得部を有し、
前記道路形状算出部は、前記地図データベースから得られる道路形状の情報に基づいて前記道路形状を補正することを特徴とする請求項11に記載の道路形状認識装置。
【請求項18】
車両の進行方向前側に存在する道路の道路形状を認識する道路形状認識装置であって、
前記車両の進行方向前側を撮像した画像に基づき前記道路の道路領域を検出し、該検出した道路領域に基づいて前記道路の道路形状を算出する第1認識部と、
前記車両の進行方向前側を撮像した画像に基づき前記車両の進行方向前側に存在する物体の三次元位置を検出し、該検出した物体の三次元位置に基づいて前記道路の道路形状を算出する第2認識部と、
前記道路の道路周辺に立体物が存在するか否か、もしくは見通し条件に基づいて前記第1認識部と前記第2認識部のいずれか一方を選択し、該選択した方に道路形状の算出を行わせる選択部と、を有することを特徴とする道路形状認識装置。
【請求項19】
車両の進行方向前側に存在する道路の道路形状を認識する道路形状認識装置であって、
前記車両の進行方向前側を撮像した画像に基づき前記道路の道路領域を検出し、該検出した道路領域に基づいて前記道路の道路形状を算出する第1認識部と、
前記車両の進行方向前側を撮像した画像に基づき前記車両の進行方向前側に存在する物体の三次元位置を検出し、該検出した物体の三次元位置に基づいて前記道路の道路形状を算出する第2認識部と、
前記第1認識部により算出された前記道路の道路形状と、前記第2認識部により算出された前記道路の道路形状とを統合して一つの道路形状を出力する道路形状統合部と、を有することを特徴とする道路形状認識装置。
【請求項20】
前記第1認識部は、前記車両の進行方向前側を撮像する撮像部と、該撮像部により撮像した画像に基づき前記道路の道路領域を検出する道路領域検出部と、該道路領域検出部により検出した道路領域に基づき前記道路の道路形状を推定する道路形状推定部とを有し、
前記第2認識部は、前記車両の前方に存在する物体の三次元位置を検出する検出部と、該検出部で検出した物体の三次元位置に基づき遠方の道路形状を推定する道路形状予測部と、該道路形状予測部により予測した道路形状付近の立体物を選択する立体物選択手段と、該立体物選択手段により選択された立体物の三次元位置情報と、前記道路形状予測部で前記道路形状を予測する際に用いた車線や縁石等の道路を構成する物体の情報とを用いて道路形状を再度求める道路形状算出部を有することを特徴とする請求項18又は19に記載の道路形状認識装置。
【請求項21】
前記請求項1から請求項20のいずれか一項に記載の道路形状認識装置と、
該道路形状認識装置から出力される道路形状に基づいて、該道路形状を有する道路を走行する適正速度を算出し、前記車両の走行速度を制御するコントロールユニットと、を有することを特徴とする車載システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2011−28659(P2011−28659A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−176015(P2009−176015)
【出願日】平成21年7月29日(2009.7.29)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】