説明

部品位置の計測装置及び計測方法

【課題】蒸気タービンの構成部品位置を計測する際に、計測用の冶具の製作や取り付け等の手間が不要であり、構成部品位置を直接計測することで測定精度並びに信頼性の高い計測が可能な部品位置の計測装置及び計測方法を提供する。
【解決手段】レーザ光3を照射するレーザ発振器1と、レーザ発振器1からのレーザ光3の照射方向に沿って走行することが可能な装置本体5と、装置本体5に設けられ、レーザ光3を所望の角度へ屈折して照射する光学部品と、装置本体5に設けられ、光学部品により屈折され照射されたレーザ光3が構成部品により反射されたレーザ反射光の受光量を検出する受光素子8とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部品の位置を計測する装置及び計測方法に係わり、特に、蒸気タービン組立時における構成部品の位置をレーザ光を用いて計測する装置及び計測方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
蒸気タービンの組立、据付工程におけるアライメント調整作業をレーザ光を用いて行うためのレーザアライメント装置が、後述する特許文献1において開示されている。
【0003】
このレーザアライメント装置は、計測箇所に反射ミラーを取り付け、タービン軸上に配置された円筒レール上を走行するレーザ搭載測定ロボットが反射ミラーへレーザ光を照射し、その反射光をレーザ干渉測長装置により検出することで、反射ミラーの上下左右位置の計測を行い、その結果からアライメント調整を行うというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−256628号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記アライメント装置では、計測箇所毎に反射ミラーの取り付け作業が必要であり手間がかかるという問題があった。
【0006】
また、反射ミラーの取り付け位置の誤差等が原因となり測定精度が低下するおそれがあった。さらには、測定点が反射ミラーの取り付け位置に限られるため連続的な計測ができないという問題があった。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、作業効率、測定精度並びに信頼性を向上させることが可能な部品位置の計測装置及び計測方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の部品位置の計測装置は、
レーザ光を照射するレーザ発振器と、
前記レーザ発振器からの前記レーザ光の照射方向に沿って走行することが可能な装置本体と、
前記装置本体に設けられ、前記レーザ光を所望の角度へ屈折して照射する光学部品と、
前記装置本体に設けられ、前記光学部品により屈折され照射された前記レーザ光が被計測対象物としての部品により反射されたレーザ反射光の受光量を検出する受光素子と、
を備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の部品位置の計測方法は、被計測対象物としての部品に対してレーザ光を用いてその位置の計測を行う方法において、
レーザ発振器からレーザ光を照射し、
前記レーザ発振器から照射された前記レーザ光の照射方向に沿って走行することが可能な装置本体に設けられた光学部品を用いて、前記レーザ光を所望の角度へ屈折して照射し、
前記装置本体に設けられ、前記光学部品により屈折され照射されたレーザ光が前記部品によって反射されたレーザ反射光の受光量を受光素子を用いて検出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の部品位置の計測装置及び計測方法によれば、部品の位置を直接かつ連続的に計測することができるため、計測のための冶具の製作や冶具の取り付け等の手間が不要であり、また測定精度並びに信頼性を向上させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施の形態による部品位置の計測装置の構造を示した説明図。
【図2】同計測装置をタービン軸方向から見た場合の構造を示した図1におけるA−A線に沿う縦断面図。
【図3】マルチチップフィンの先端部の位置が蒸気タービン軸に対して垂直に配置されている場合におけるレーザ反射光を示す説明図並びに計測結果を示すグラフ。
【図4】マルチチップフィンの先端部の位置が蒸気タービン軸に対して垂直でない場合におけるレーザ反射光を示す説明図並びに計測結果を示すグラフ。
【図5】マルチチップフィンの先端部の位置が蒸気タービン軸に対して垂直に配置されている場合に径方向全周を計測した結果を示すグラフ。
【図6】マルチチップフィンの先端部の位置が蒸気タービン軸に対して垂直でない場合に径方向全周を計測した結果を示すグラフ。
【図7】対物レンズによる集光焦点位置を変化させた場合におけるレーザ反射光を示す説明図並びに反射光量の変化を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態による部品位置の計測装置及び計測方法について、図面を参照して説明する。
【0013】
図1に、本発明の実施の形態による部品位置の計測装置として、蒸気タービン構成部品の位置を計測する装置の概略構成を示す。
【0014】
本実施の形態は後述するように、レーザ光を用いて、蒸気タービンにおけるノズルダイアフラム先端に設けられたマルチチップフィンの先端部と蒸気タービン軸との位置を求めるものである。
【0015】
本実施の形態による計測装置は、蒸気タービン軸方向に沿って配置された装置本体移動用レール4と、装置本体移動用レール4に沿って移動が可能な装置本体5と、レーザ光3を発振して照射するレーザ発振器1と、装置本体移動用レール4を支持する支持台2とを備えている。
【0016】
蒸気タービンがもたらす温度変化、振動等により計測条件が影響を受けないように、レーザ発振器1が蒸気タービンから十分離れた位置に配置されている。このレーザ発振器1から、蒸気タービン軸に沿って計測位置基準となるレーザ光3が照射される。
【0017】
装置本体5が、蒸気タービン軸上に沿って、支持台2で支持された装置本体移動用レール4上に配置されている。この装置本体5は、装置本体移動用レール4上を自由に移動することが可能である。装置本体5には、タービン軸の径方向(φと定義する)へレーザ光3を360度屈折可能な図示されていない回転式光学部品が搭載されている。この回転式光学部品により、レーザ発振器1から照射されたレーザ光3が被計測対象物へ屈折して照射される。
【0018】
さらに、装置本体5には図示されていない対物レンズが設けられている。回転式光学部品により屈折されたレーザ光3の被計測対象物上における集光焦点位置を、この対物レンズにより任意に変えることができる。
【0019】
装置本体移動用レール4には、レーザ光3を用いて読み取りが可能な位置情報が刻まれている。これにより、蒸気タービン軸上における装置本体5の位置(以下、Zと定義する)を、装置本体5が常時認識することが可能である。
【0020】
また、蒸気タービンにはその構成部品の一つとして、ノズルダイアフラム6上の部品としてマルチチップフィン7が設けられている。このマルチチップフィン7は、蒸気漏れ損失を改善するために設けられており、先端部が鋭角的な形状を有している。
【0021】
図2は図1におけるA−A線に沿う縦断面図であり、蒸気タービンの回転軸方向から見た装置本体5とノズルダイアフラム6の縦断面構造を示す。
【0022】
マルチチップフィン7は、ノズルダイアフラム6の内周側端面に配置されており、高精度に加工された半円構造を有している。
【0023】
本実施の形態は、上述したように、レーザ光3を用いて、マルチチップフィン7における鋭角的な形状を有する先端部の位置を検出することで、蒸気タービン軸に対するマルチチップフィン7の先端部までの位置を求める。
【0024】
以下、上述した計測装置を用いて部品位置を計測する方法について説明する。
【0025】
先ず、蒸気タービン軸に対する蒸気タービンの構成部品のずれを計測する方法について述べる。
【0026】
装置本体5が備える上述の回転式光学部品によって屈折したレーザ光3を、マルチチップフィン7に照射した状態で装置本体5を蒸気タービン軸上において走行させることで走査すると、以下に述べるようにマルチチップフィン7により反射された光が装置本体5に設けられた受光素子8によって検出される。
【0027】
図3(a)に、蒸気タービン軸に対し、マルチチップフィン7が垂直に配置されている状態におけるマルチチップフィン7の鋭角的な先端部7aの周辺と照射されたレーザ光3とを示す。ここで、回転式光学部品により照射されたレーザ光3を点線で示し、マルチチップフィン7により反射されたレーザ反射光10を実線で示す。
【0028】
図3(b)に、受光素子8により計測された、蒸気タービン軸方向に対する光量の波形を、縦軸に受光された光量、横軸にタービン軸上の装置本体5の位置(Z)をとったグラフ上に示す。
【0029】
このグラフより明らかなように、反射光量が最大となる変極点が観測される位置x1がマルチチップフィン7の鋭角的な先端部7aのタービン軸上における位置となる。
【0030】
図4(a)に、蒸気タービン軸に対してマルチチップフィン7が傾いて配置されている状態を示す。
【0031】
このような場合であっても、図4(b)に示されたようにマルチチップフィン7の鋭角的な先端部7aから反射されたレーザ反射光10が最大となり変極点が観測され、この位置をx2とする。
【0032】
このような変極点が観測される蒸気タービン軸上の位置(Z)を、装置本体移動用レール4に刻まれた位置情報から読み取ることで、マルチチップフィン7の先端部7aのタービン軸上位置(Z)を検出することができる。
【0033】
このような計測を、蒸気タービンの径方向(φ)に沿って装置本体5を微小な角度を単位として回転させてその都度行っていく。そして、径方向の全周に渡って計測することで、蒸気タービン軸に対するマルチチップフィン7の取り付けの傾き具合が判明する。即ち、蒸気タービン構成部品の蒸気タービン軸に対する平行度を求めることができる。
【0034】
図5に、蒸気タービン軸に対して、蒸気タービン構成部品が平行に配置されている場合において、蒸気タービンの径方向(φ)に対してレーザ反射光10の光量が最大となった変極点が観測された蒸気タービン軸上の位置(Z)をプロットしたグラフを示す。
【0035】
この場合には、径方向(φ)のどの位置からも、変極点が蒸気タービン軸上(Z)における同一位置で観測されることになる。即ち、蒸気タービン構成部品が蒸気タービン軸に対して平行に設けられていることになる。
【0036】
図6に、蒸気タービン軸に対して、蒸気タービン構成部品がある傾きを持って配置されている場合において、蒸気タービンの径方向(φ)に対してレーザ反射光10の光量が最大となった変極点が観測された蒸気タービン軸上の位置(Z)をプロットしたグラフを示す。
【0037】
この場合は、径方向(φ)に対して、レーザ反射光10の光量の変極点は、蒸気タービン軸上における異なる位置(Z)で観測されることになる。この観測結果に基づいて、蒸気タービン軸に対する構成部品の平行度、即ち傾きの程度を求めることが可能となる。
【0038】
次に、本実施の形態による計測装置を用いて、蒸気タービン軸に対するマルチチップフィン7の鋭角的な先端部7aの位置を測定する手順について説明する。
【0039】
図7(a)〜(c)にそれぞれ示されたように、装置本体5において、回転式光学部品によって屈折されたレーザ光3は、その先に搭載されている対物レンズ11を図中上下方向、即ち先端部7aとの間の距離が変化する方向に動かすことで、レーザ光3の集光焦点位置を変えることができる。
【0040】
図7(b)に、マルチチップフィン7の先端部とレーザ光3の集光焦点位置とが一致している場合、図7(a)、(c)に一致していない場合をそれぞれ示す。
【0041】
そして図7(d)に、対物レンズの位置を変化させた時に受光素子8で観測されるマルチチップフィン7からの反射光量の変化を表す波形をグラフに示す。このグラフでは、縦軸が受光光量、横軸が対物レンズ11の位置を示す。
【0042】
図7(b)に示された対物レンズ11の位置y、即ち、対物レンズ11で集光されたレーザ光3の集光焦点位置がマルチチップフィン7の先端部7aと一致した時に観測される反射レーザ光が、図7(d)に示されるように最大となる。
【0043】
これにより、対物レンズ11の位置と、計測された反射光量とに基づいて、マルチチップフィン7の蒸気タービン軸上からの位置を計測することができる。
【0044】
ここで、上述の計測によって蒸気タービンの径方向(φ)におけるマルチチップフィン7の先端部7aの蒸気タービン軸上の位置(Z)が計測されたとする。
【0045】
蒸気タービンの径方向(φ)のある位置(φ‘)における、蒸気タービン軸(Z)上のある位置(Z’)において、対物レンズ11を先端部7aに向かって図中上下方向に移動させると、反射光量が変化し、反射光量が最大となるときの対物レンズ11の位置が判明する。
【0046】
このような計測を蒸気タービンの径方向(φ)全周に渡って行い、それぞれの径方向(φ)におけるある位置毎に反射光量が最大となる対物レンズ11の位置に基づいて、蒸気タービン軸に対する構成部品の上下左右方向の平行度と位置を求めることができる。得られた結果は、蒸気タービン構成部品のアライメントを調整する工程において用いることができる。
【0047】
ところで、マルチチップフィン7の数は、蒸気タービンの出力や形式によって異なっているが、一般には少なくとも蒸気タービン構成部品上に100箇所以上設けられている。これらのマルチチップフィン7のタービン軸に対する位置を計測することで、例えば上半ケーシング等の重量のある部品を組み立てた影響等により、内部構成部品の位置に生じた変化を検出することもできる。
【0048】
さらに、マルチチップフィン7の先端部7aの計測のみならず、蒸気タービンの他の構成部品に対し、計測用に所定の加工を予め行っておくことで同様な手法を用いて計測を行うことが可能である。
【0049】
例えば、ある構成部品における測定すべき箇所に、反射率の異なる細い縞を予め加工しておくことが考えられる。特に、マルチチップフィンを有しない構成部品の位置を計測する場合には有用であると考えられる。このような加工を施した箇所にレーザ光を照射し、上述した測定を同様に行うことでタービン軸に対する部品の位置の測定が可能である。
【0050】
以上説明したように、本実施の形態の部品位置の計測装置及び計測方法によれば、部品の位置を直接かつ連続的に計測することが可能である。これにより、計測のために冶具を製作したり、冶具を取り付けるといった作業の手間が不要であるとともに、測定精度並びに信頼性を向上させることができる。
【0051】
上記実施の形態は一例であって本発明を限定するものではなく、本発明の技術的範囲内において様々に変形することが可能である。
【符号の説明】
【0052】
1 レーザ発信器
2 支持台
3 レーザ光
4 装置本体移動用レール
5 装置本体
6 ノズルダイアフラム
7 マルチチップフィン
8 受光素子
9 内部ケーシング
10 レーザ反射光
11 対物レンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を照射するレーザ発振器と、
前記レーザ発振器からの前記レーザ光の照射方向に沿って走行することが可能な装置本体と、
前記装置本体に設けられ、前記レーザ光を所望の角度へ屈折して照射する光学部品と、
前記装置本体に設けられ、前記光学部品により屈折され照射された前記レーザ光が被計測対象物としての部品により反射されたレーザ反射光の受光量を検出する受光素子と、
を備えることを特徴とする部品位置の計測装置。
【請求項2】
前記装置本体に設けられ、前記光学部品により屈折され照射された前記レーザ光の集光焦点位置を所望の位置に設定することが可能な対物レンズをさらに備えることを特徴とする請求項1記載の部品位置の計測装置。
【請求項3】
前記光学部品は、前記レーザ光を360度の範囲内で前記所望の角度へ屈折することが可能であることを特徴とする請求項1又は2記載の部品位置の計測装置。
【請求項4】
前記装置本体が前記レーザ光の照射方向に沿って走行する際に、前記装置本体の位置を読み取ることが可能なように、前記レーザ光を用いて読み取りが可能な位置情報が設けられたレールを備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一に記載の部品位置の計測装置。
【請求項5】
被計測対象物としての部品に対してレーザ光を用いてその位置の計測を行う方法において、
レーザ発振器からレーザ光を照射し、
前記レーザ発振器から照射された前記レーザ光の照射方向に沿って走行することが可能な装置本体に設けられた光学部品を用いて、前記レーザ光を所望の角度へ屈折して照射し、
前記装置本体に設けられ、前記光学部品により屈折され照射されたレーザ光が前記部品によって反射されたレーザ反射光の受光量を受光素子を用いて検出する
ことを特徴とする部品位置の計測方法。
【請求項6】
前記部品が、蒸気タービンのノズルダイアフラムに設けられたマルチフィンであることを特徴とする請求項5記載の部品位置の計測方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−185717(P2011−185717A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−50685(P2010−50685)
【出願日】平成22年3月8日(2010.3.8)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】