説明

配合ポリマー電界効果トランジスタ

半導体本体を形成するための方法であって、この方法は、有機半導体材料と結合剤材料との混合物を形成する工程、前記半導体材料を少なくとも部分的に固化させる工程、および前記半導体材料を前記結合剤材料から少なくとも部分的に分離させるように前記結合剤材料を結晶化させる工程を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配合ポリマー電界効果トランジスタ(FET)に関する。
【背景技術】
【0002】
共役ポリマー半導体は溶液から加工でき、このことにより、かかる材料が広範囲の印刷技術に適合できるようになり、軽量で柔軟な基板上に電子デバイスを低費用で製造することが可能となる。溶液加工の特に魅力的な特徴は、数種類のポリマー成分の混合物からなる、意図された特性を持つ新規の材料を簡単に形成できることである。組成物および加工条件を賢明に選択することで、適切な共溶媒から蒸着されるポリマーブレンドの形態を注意深く制御することにより、得られる膜の機械的、光学的、および電子的特性を、単一成分系と比べて改善できることがしばしばある(非特許文献1及び非特許文献2)。場合によっては、例えば特定の印刷工程のためのインクレオロジー要件を満たすために、適切な結合剤ポリマーの添加が不可欠でさえある(非特許文献3)。ポリマー電界効果トランジスタ(FET)の場合、結合剤の使用は大きな課題である。なぜなら、2成分活性層では、電荷輸送が2成分のうちの一方で優先的に発生する傾向があり、例えば、最も低いイオン化電位を持つ成分中に正孔電荷担体が優先的に局在し、第2の半導体性または誘電体性成分の存在が装置性能を劣化させる傾向があるからである。このことはいくつかの系で観察されてきた。ポリ(3−ヘキシルチオフェン)(P3HT)とポリスチレン(PS)の混合物では、P3HTの比率が下がるのに従って、移動度は数桁も下がる(非特許文献4)。P3HTとPSの2成分ブロックコポリマーでは、BCP(ブロックコポリマー)全体におけるP3HTブロックの含有率が下がると伝導性が著しく低下する(非特許文献5)。ポリマーブレンドの形態は相分離によって制御されるが、かかる相分離は、混合エントロピーが小さい結果として、2つのポリマー間の好ましくないエンタルピー相互作用が小さい場合でさえも生じるものである。ほとんどの条件下では、相分離は被膜の面で横方向に進行する。鉛直方向に層状の形態はあまり一般的ではない(非特許文献6)が、もし活性成分をゲート誘電体との界面へと相分離させることができて電荷輸送のための連続的な経路を作成できるなら、電界効果トランジスタ用途にとって有利であると期待される(非特許文献7)。近年、鉛直方向に層状の形態はスピンコーティング中の中間形態であるが、薄膜の不安定性によって引き起こされて分解し、横方向に相分離した形態となることが報告されている(非特許文献8)。相分離はまたブロックコポリマーの形態も決定するものの、この場合、ナノメートルの規模で発生するにすぎない。文献においてポリマーブレンドおよびブロックコポリマーに関する文献中の研究の多くは、アモルファス−アモルファス系または結晶性−アモルファス系に関するものであった。結合剤が結晶性ポリマーである系についてはほとんど知られていない。従来の(非電気活性の)ポリマーについては、結晶性−結晶性配合物がこれまでに研究され、2つの成分ポリマーの融点に対して加工温度を調整することの効果が検討されている(非特許文献9)。従来の結晶性−結晶性ブロックコポリマーの微細構造もまたこれまでに検討されており、エピタキシーまたは指向性の溶媒結晶化の影響(非特許文献10)がこれまでに研究されている。
【0003】
特許文献1には、有機半導体を溶融加工するための方法が記載されている。ポリマーの形状の脱濡れ剤を有機半導体の溶液に混合する。有機半導体は好ましくはルブレン(rubrene)のような小分子半導体であり、融点より高い温度に加熱されると基板から脱濡れする傾向を持つものである。これを脱濡れ剤の存在によって防止する。脱濡れ剤は好ましくはポリスチレンのようなポリマーである。有機半導体の融点を下げ、また蒸着したままの状態にある膜で有機半導体が結晶化するのを防止するため、有機半導体の組成物に第2の物質を添加してもよい。この物質は1%から50%の組成で存在し、最も好ましくは5−15%の組成で存在する。有機半導体をさらに希釈すると、電荷輸送特性が劣化する。かかる劣化を回避するための結合剤ポリマーの要件についてはなんら言及されていない。
【0004】
特許文献2には、有機半導体をポリマー結合剤と混合するための方法が記載されている。ポリマー結合剤の要件は低い誘電定数を持つことである。しかしながら、特許文献2に記載の表から見て取れるように、結合剤は典型的には50%未満の重量比で組成物中に存在しており、すでにかかる範囲において、純粋な半導体ポリマーと比べて電界効果移動度が大幅に低下することが観察される。この文献には、結合剤を選択する場合の1つの基準は、その誘電定数εが、双極性障害が高まる結果としての移動度の低下を回避するのに十分低い必要があることである(PSに対してε=2.6)、と記載されている。しかしながら、半導体成分が結合剤によって希釈されている場合に観察される電界効果移動度の劣化を回避するための結合剤ポリマーの要件については何ら言及されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO 2005 104625号
【特許文献2】US 2004/0038459号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Morteani et al., Phys. Rev. Lett. 92, 247402 (2004)
【非特許文献2】Halls et al., Nature 376, 498 (1995)
【非特許文献3】de Gans, Adv. Mat. 16, 203 (2004)
【非特許文献4】Babel, et al. Macromolecules 37, 9835 (2004)
【非特許文献5】Liu, et. al., Angewandte Chemie International Edition 41, 329 (2002)
【非特許文献6】Arias et al., Macromolecules 34, 6005 (2001)
【非特許文献7】Chua, et al., Advanced Materials 16, 1609 (2004)
【非特許文献8】Heriot et al., Nature 4, 782 (2005)
【非特許文献9】Ikehara, et al. Macromolecules 38, 5104 (2005)
【非特許文献10】Park et al., Polymer 44, 6725 (2003)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、結合剤ポリマーを有機半導体組成物に混合する際に一般的に観察される電気性能の劣化を回避することに関する。本発明者は、これを実現するための鍵となる工程が結晶性の結合剤ポリマーを使用することであることを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の側面によれば、半導体本体を形成するための方法が提供され、この方法は、有機半導体材料と結合剤材料との混合物を形成する工程、前記半導体材料を少なくとも部分的に固化させる工程、および前記半導体材料を結合剤材料から少なくとも部分的に分離させるように前記結合剤材料を結晶化させる工程、を具備する。
【0009】
好ましくは、半導体材料を少なくとも部分的に固化させる工程は、結合剤を結晶化させる工程の前に行われる。半導体材料を少なくとも部分的に固化させる工程は、半導体材料を結晶化させることを含み得る。適切には、結合剤材料を結晶化させる工程は、混合物の温度を下げることを含む。
【0010】
好ましくは、有機半導体材料は半導体ポリマーである。好ましくは、結合剤材料は半結晶性ポリマーである。有機半導体ポリマーはポリマー結合剤とブロックコポリマーを形成し得る。結合剤材料は半導体性であり得る。
【0011】
好ましくは、混合物は溶媒を含んでおり、前記方法は、結合剤材料を結晶化させる工程の前に溶媒を除去する工程をさらに具備する。好ましくは、溶媒を除去する工程は、半導体材料を固化させる工程の前に行われる。
【0012】
有機半導体はポリ−3−ヘキシルチオフェン(P3HT)またはα−クウォーターチオフェン(quaterthiophene)(4T)であり得る。結合剤はイソタクチックポリスチレン(i−PS)または高密度ポリエチレン(HDPE)であり得る。
【0013】
本発明の第2の側面によれば、半導体本体を形成するための方法が提供され、この方法は、有機半導体材料と結合剤材料との混合物を形成する工程、前記半導体材料を少なくとも部分的に固化させる工程、および前記結合剤材料と隣接の媒体との界面で半導体材料を濃縮させるように前記結合剤材料を結晶化させる工程、を具備する。
【0014】
結合剤材料の界面は、結合剤材料の隣接し合う層間の界面を含み得る。
【0015】
本発明の第3の側面によれば、半導体本体を形成するための方法が提供され、この方法は、有機半導体材料と結合剤材料の混合物を形成する工程、および前記半導体材料を前記結合剤材料から分離させるように前記結合剤材料を合体させる工程、を具備する。
【0016】
好ましくは、半導体材料を固化させる工程は、結合剤材料を合体させる工程の前に行われる。好ましくは、半導体材料を固化させる工程は、半導体材料を結晶化させることを含む。
【0017】
適切には、結合剤材料を合体させる工程は、混合物の温度を下げることを含む。分離された半導体材料および結合剤材料は層状構造を形成し得る。
【0018】
好ましくは、有機半導体材料と結合剤材料の混合物は基板上に蒸着される。好ましくは、結合剤材料を合体させる工程は、結合剤材料を結晶化させることを含む。
【0019】
本発明の第4の側面によれば、半導体本体を備える電子デバイスが提供され、この本体は、有機半導体材料、結晶性結合剤材料を含む。
【0020】
好ましくは、有機半導体材料は半導体本体と隣接の媒体との界面で主に濃縮される。半導体本体は相分離され得る。
【0021】
結晶性結合剤材料は誘電体、半導体、または伝導体であり得る。有機半導体材料は半結晶性ポリマーであり得る。結晶性結合剤材料は半結晶性ポリマーであり得る。
【0022】
適切には、有機半導体材料は、結晶性結合剤材料よりも高い融点を持つ。
【0023】
結晶性結合剤材料は球状の微細構造を示し得る。
【0024】
半導体本体における有機半導体材料の濃度は、10、20、30、40、または50重量%未満であり得る。
【0025】
好ましくは、半導体本体は幾何学的な面を定義し、有機半導体材料はラメラ構造を持っており、そのラメラ構造は概して前記面に存在するように配向される。
【0026】
デバイスは、トランジスタ、ダイオード、または光起電ダイオードであり得る。
【0027】
好ましくは、半導体本体と隣接の媒体との界面で濃縮される有機半導体材料は、トランジスタのソース電極からトランジスタのドレイン電極まで有機半導体材料を通って電荷が輸送されるための連続的な経路を構成する。
【0028】
本発明の第5の側面によれば、結合剤および有機半導体材料を含む半導体層が提供され、前記有機半導体材料はラメラ区域内に濃縮され、前記ラメラ区域は前記結合剤から分離し、前記層の面に概して存在するように配向される。
【0029】
本発明の第6の側面によれば、有機半導体材料および半結晶性ポリマー結合剤を含むプラスチック基板が提供される。
【0030】
基板内の有機半導体材料の濃度は、10、20、30、40、または50重量%未満であり得る。有機半導体材料は半導体ポリマーであり得る。好ましくは、基板はフレキシブルであり得る。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】図1は、(a)は、10重量%のポリ−3−ヘキシルチオフェン(P3HT):イソタクチックポリスチレン(i−PS)配合物について、Vds=−60Vで測定された転移特性、および同じ条件下で加工された、10%P3HT:アタクチックポリスチレン(a−PS)配合物について、Vds=−60Vで測定された転移特性を示し、(b)は、10重量%のP3HT:i−PS配合物の出力特性を示している。
【0032】
【図2】図2は、P3HT:i−PS(i−PSはM400,000)、およびP3HT:a−PS(a−PSはM400,000)の配合物におけるP3HT濃度の関数としての移動度を示している。
【0033】
【図3】図3は、P3HT/i−PS配合物(上)およびP3HT/a−PS配合物(下)の広角X線散乱(WAXS)撮像を示している。
【0034】
【図4】図4は、P3HTと高密度ポリエチレン(HDPE)(M51,000、M221,000)、低密度PE(LDPE)(M20,000、M200,000)、および超低密度PE(ULDPE)との配合物におけるP3HT濃度の関数としての移動度を示している。
【0035】
【図5】図5は、(a)は、冷却測定におけるDSCピーク温度および光学顕微鏡法から推定された、P3HTとHDPEとの配合物の2元非平衡組成−温度図を示している。黒丸:DSCによって得られたHDPE(M51,000、M221,000)。黒三角:DSCによって得られたP3HT(M14,000、M22,000)。白丸:光学顕微鏡法によって得られたHDPE(M21,000、M91,000)。白三角:光学顕微鏡法によって得られたP3HT(M14,000、M22,000)。(b)は、10μmHDPE薄膜(M10,000、M10,000)の、交差偏光子の下での光学顕微鏡像、および(c)は、交差偏光子なしでの光学顕微鏡像を示す。中心にはP3HT(M14,000、M22,000)の粒子があり(右側)、そこからP3HTを250℃で30分間拡散させている。
【0036】
【図6】図6は、P3HTをまず最初に結晶化させるという条件下で加工されたP3HT−PE配合物の斜入射X線回折(GIXD)走査(点線−面外回折、実線−面内回折)、およびPEをまず最初に結晶化させるという条件下で加工されたP3HT−PE配合物の面内回折を示している。主なPE反射(Q=1.52Å−1の110、Q=1.69Å−1の200、およびQ=2.11Å−1のより弱い210)を星印で表している。
【0037】
【図7】図7は、P3HT:HDPE配合物のラザフォード後方拡散スペクトルを示している。OおよびSからの170°におけるHeの最大反跳エネルギーを元素のマーカーで示す。P3HTをまず最初に結晶化させた高移動度膜で得られる大きなピークはP3HTの表面分離を示しており、PEをまず最初に結晶化させるという条件下で加工された同じ材料にはないものである。挿入図:厚み4mmの10重量%P3HT:HDPE配合膜の断面写真。
【0038】
【図8】図8は、120℃でキシレンから蒸着され、140℃まで加熱され、そして室温に冷却された膜について、移動度対温度を示している。×印:純粋なP3HT、白三角:P3HT:PE(5:95)配合物、黒三角:P3HT:PE(1:9)。
【0039】
【図9】図9は、P3HTおよびHDPEの2成分ブロックコポリマーにおけるP3HT濃度の関数としての移動度を示している。
【0040】
【図10】図10は、10−90 P3HT−PEおよびキシレンの2元非平衡組成−温度図を示している。概略的な加工経路を、Iは青色の、IIは赤色の矢印で表しており、両者とも、キシレン中のP3HT−PE希釈液であるLから始まり、SPEブロック+SP3HTブロックで終わっている。結晶化温度は示差走査熱量測定(DSC)冷却サーモグラフ(塗りつぶし符号)におけるピーク温度から推定され、目視で、P3HTのサーモクロミック特性(半塗りつぶし符号)を導き出している。三角:PE; 丸:P3HT。
【0041】
【図11】図11は、スキームI(上)およびII(下)によってそれぞれ加工されたP3HT−PEブロックコポリマーの光学顕微鏡写真、WAXS、GIXD、TEMおよびEDを示しており、特に記載しない限り、125℃以下でキシレン中の均質な0.1重量%溶液から開始している。左側のパネル:10−90P3HTの偏光光学顕微鏡像(左上:キシレン中の非常に希薄な0.01重量%溶液からの結晶化)、右側のパネル:WAXS(上)およびGIXD(下)。
【0042】
【図12】図12は、35−65 P3HT−PEの透過電子顕微鏡(TEM)画像(左側のパネル)および電子回折(ED)(右側のパネル)を示している。上側の画像および対応するEDは、キシレン中の0.01重量%溶液から調製されたサンプルから得たものである。
【0043】
【図13】図13は、2つの半固体レジームにおけるコポリマーの概略図を示している。
【0044】
【図14】図14は、出力電界効果トランジスタデバイス性能を示している。a:スキームIおよびIIによって加工された10−90P3HT−PEの薄膜を備えるFETの特徴。b:スキームIIを介して加工されたその他のポリマーの薄膜を備えるFETの特徴。AFMの挿入図は、右側のパネル。タッピングモードは10−90P3HT−PEおよび5−95 P3HT−PEを走査している。
【0045】
【図15】図15aは、電子スイッチングデバイスの概略図である。図15bは、鉛直方向に層状の二重層構造で製造されたFETデバイスである。
【0046】
【図16】図16は、光起電力電池に適したデバイス構造を示している。
【発明を実施するための形態】
【0047】
本発明の1つの側面によると、本発明者は半導体層を備える電子デバイスを開示する。前記半導体層は、有機半導体および結晶性結合剤を含んでいる。結晶性結合剤を使うことにより、電界効果移動度を全く劣化させることなく、活性ポリマー半導体の濃度を3〜5%またはそれ以下という低い値にまで低くすることができる。本発明において、結合剤という用語は、ただ単に、有機半導体層に混合される成分を指すに過ぎない。その主な役割は、材料の機械的特性、膜形成特性または加工特性を改質することである。そのようなものであるため、結合剤は、半導体層における電荷輸送に直接的には寄与しない誘電体材料であってよい。しかしながら、さらに電気光学機能または半導体機能を結合剤に組み込むことも可能である(例えば、図16の説明を参照のこと)。好ましくは、結合剤は結晶性ポリマーである。本発明の他の実施形態では、結合剤は、結晶性で溶液加工可能な小分子またはオリゴマー分子である。
【0048】
好ましくは、有機半導体および結晶性結合剤は半導体層において分離する。
【0049】
図15aは、基板1と、その上に蒸着されパターンニングされているゲート電極とを備える電子スイッチングデバイスの概略図である。その後ゲート誘電体層3が蒸着され、そしてソース−ドレイン電極4がパターンニングされる。その後、デバイスの半導体層が溶液または溶融物から蒸着される。半導体層は有機半導体および結晶性結合剤ポリマーを含む。結合剤の結晶性の性質の結果として、有機半導体層は基板5との界面および表面7へと分離するように駆り立てられ鉛直方向に層状の形態となる。両者の間にある結合剤層6は、低濃度の有機半導体を含み得る、これは例えば、有機半導体が結合剤の溶融相にいくらか混和性があるからである。しかしながら、有機半導体材料はほとんどが膜の表面および界面に分離して、そこでゲート誘電体/半導体界面に沿って電荷輸送の連続的な経路を形成し、たとえ有機半導体が低濃度である場合でも高い移動度をもたらす。このようにすることで、結合剤を有機半導体組成物に混合する際に通常観察されるような電気性能の劣化を回避することができる。
【0050】
好ましくは、結合剤の結晶度の程度は5%から100%の間である。
【0051】
本発明の1つの側面によると、本発明者は半導体層を備える電子デバイスを形成するための方法を開示する。この方法は、有機半導体と、結晶化可能な結合剤とを含む溶液から前記半導体層を蒸着させることを含む。好ましくは、蒸着条件は、結合剤および半導体が半導体層において分離するような条件である。好ましくは、蒸着条件は、結合剤、またはその実質的な割合が、蒸着中および/または蒸着後に結晶化するような条件である。好ましくは、蒸着条件は、有機半導体が、結合剤が結晶化する前に固化するように選択される。これは好ましくは溶媒を除去する際に起こる。その結果、好ましくは半導体層が層状形状に適合することになり、この層状形状は、好ましくは1つ以上の有機半導体の下位層および1つ以上の結合剤の層を備えている。これら下位層は、鉛直方向に区別し得る、すなわち、層が蒸着され得る基板に対してほぼ平行に存在し得るものである。
【0052】
理論に縛られることを望むものではないが、この方法は、結合剤の強力なエンタルピー結晶化力に基づく、すなわち、結合剤の結晶化の過程で、鉛直方向に層状の形態になるように半導体成分が膜の表面および界面へと追い出される力に基づくものと考えられる。
【0053】
半導体および結合剤は別個の材料であり得る。あるいは、これらは単一の材料の成分として、例えば、通常の分子のブロックとして構成されてもよい。前記単一の材料は、1つ以上の半導体ブロックまたは成分並びに1つ以上の結合剤ブロックまたは成分を含むポリマーを含み得る。
【0054】
本発明の1つの側面によると、本発明者は半導体層を備える電子デバイスを開示する。前記半導体層は、活性な半導体の第1のブロックと、半導体または誘電体の第2のブロックとの2成分ブロックコポリマーを含んでおり、前記第2のブロックは結晶性ポリマーである。
【0055】
図15aは、基板1と、その上に蒸着されパターンニングされたゲート電極2とを備える電子スイッチングデバイスの概略図を示している。ゲート誘電体層3がその後蒸着され、ソース−ドレイン電極4がその後パターンニングされる。その後、デバイスの半導体層が溶液からまたは融液から蒸着される。半導体層は、半導体ポリマーブロックおよび結晶性誘電体ブロックを持つ2成分ブロックコポリマーを含む。誘電体ブロックの結晶性の性質の結果として、半導体ブロックは、基板5との界面および表面7へと分離するように駆り立てられて鉛直方向に層状の形態となる。両者の間にあって、誘電体ブロック6に富む層6は、低濃度のポリマー半導体を含む場合があり、特に、(この場合に存在する誘電体との共有結合により)半導体ポリマーがミクロ相分離を行って界面または表面に到達することが可能でないように、膜厚が選択されている場合にそうである。しかしながら、膜の表面および界面に分離することができる半導体ポリマーは、電荷輸送のための連続的な経路をゲート誘電体/半導体界面に沿って形成し、その結果たとえポリマー半導体が低濃度の場合でも高い移動度をもたらす。このようにして、誘電体ブロックの長さが半導体ブロックの長さに対して長くなるため、半導体2成分ブロックコポリマーで一般的に観察される電気性能の劣化を回避することができる。
【0056】
本発明の1つの側面によると、本発明者は、活性な半導体の第1ブロックと結晶性半導体または誘電体の第2ブロックとの2成分ブロックコポリマーの半導体層を備える電子デバイスを形成するための方法を開示する。前記方法は、2成分ブロックコポリマーを含む溶液から前記半導体層を蒸着することを含む。好ましくは、蒸着条件は、溶媒を除去する際に、第2ブロックが結晶化する前に第1ブロックが固化するように選択される。理論に束縛されることを望まないが、この方法は結合剤の強力なエンタルピー結晶化力に基づく、すなわち、結合剤の結晶化の過程で、鉛直方向に層状の形態になるように半導体成分が膜の表面および界面へと追い出される力に基づくものと考えられる。
【0057】
本発明の1つの側面によると、本発明者は自立型半導体性の膜、繊維、テープ、およびその他の物を作るための方法を開示する。前記自立型半導体膜、繊維、テープ、およびその他の物は、有機半導体および結晶性結合剤を含む。
【0058】
結晶性−結晶性ポリマー配合物およびブロックコポリマーを使用することにより、機能性ポリマーの微細構造を制御するための新しい加工方法が可能となり、より少ない費用で高性能の半導体ポリマー膜を実現するためのより大きな柔軟性が得られ、すべてのアプリケーション要件を活性半導体ポリマー自体に設計する必要をなくすことで機械的および電気的特性の改善が可能となる。本発明の方法は、半導体ポリマー配合物において鉛直層状の構造を実現するための新しいアプローチを開拓するものであり、かかる半導体ポリマー配合物は、光起電力電池のようなその他のさまざまな装置用途でも関心の的である。多くの有機系製品の材料費は半導体ポリマーに左右されるため、性能を損なうことなく比較的高価な半導体材料をより安価な汎用ポリマーで希釈することによって、かかる技術は費用削減の大きな潜在的可能性をも提供する。これにより、ポリエチレンのような結合剤ポリマーの優れた機械的特性を利用した、自立型半導体ポリマー基板、繊維、テープ、およびその他の物の使用が可能となる。
【0059】
本発明の1つの側面によると、半導体本体を形成するための方法が提供される。この方法は、有機半導体材料と結合剤材料との混合物を形成する工程と、半導体材料を結合剤材料から分離させるように結合剤材料を合体させる工程とを具備する。結合剤材料、および結合剤材料を合体させる工程において主流となる条件は、好ましくは例えば、半導体材料が完全にまたは実質的に結合剤材料から分離することがエネルギー的に好都合となる局面を、結合剤材料に取らせるようにすることである。結合剤材料を合体させる工程は、好ましくは、結合剤材料を結晶化させることを含む。本方法は、好ましくは、結合剤材料を合体させる工程の前に、半導体材料を固化させる工程を具備する。混合物はまた溶媒を含んでいてもよい。半導体本体は半導体デバイスの半導体構成部材を形成し得る。
【0060】
本発明のそれぞれの側面において、有機半導体は2つ以上の有機半導体材料で構成することができる。これらは分離して2つ以上のそのような材料を含む配合相にすることができ、または互いに分離するのみならず結合剤からも分離することができる。結合剤は2つ以上の結合剤材料で構成することができる。これらは分離して2つ以上のそのような材料を含む配合相にすることができ、または互いに分離するのみならず半導体材料からも分離することができる。
【0061】
それぞれの実施形態において、有機半導体の濃度、または半導体ポリマーの活性状態での濃度は、半導体層または膜、または形成されるその他の形状の半導体構造物に対して、質量または体積比率で、好ましくは20%未満であり、より好ましくは10%未満であり、最も好ましくは5%または3%未満である。
【実施例】
【0062】
実施例1:P3HTとイソタクチックおよびアタクチックポリスチレンとの配合物
【0063】
第1の系として、本発明者は、結晶性イソタクチックポリスチレン(i−PS)とアモルファス性のアタクチックポリスチレン(a−PS)とを直接比較して、ポリスチレンと立体規則性を有するP3HTとの配合物を研究した。
【0064】
P3HTおよびi−PS(0.1重量%のP3HT、P3HTのi−PSに対する重量比は1:9)の3元配合溶液をトリクロロベンゼン(TCB)中で調製した。高温の溶液を、180℃で保持されている基板上にドロップキャスティングによって蒸着した。溶媒が蒸発した後、基板を結晶化温度T=120℃までゆっくりと冷却させ、この温度を維持して、サンプルを室温(RT)に冷却する前にi−PSを結晶化させた。P3HTおよびi−PSは同じような融点を持っており(約240℃)、これらのポリマーは両者とも室温において希釈液中でTCBに可溶である。ここで使用する条件下では、i−PSの結晶化速度は選択された結晶化温度Tcでは緩慢であるため、P3HTがまず最初に結晶化する。半導体ポリマーをまず最初に結晶化させる必要性については、以下により詳細に説明する。a−PSについては、本発明者は同じ加工条件を使用したが、この場合は、PSはアモルファスのままであった。
【0065】
斜入射広角度X線散乱(WAXS)を使用して、膜の微細構造を判断した。データは散乱ベクトルQ≡4πsinθ/λの関数として表され、ここでθはブラッグ角であり、λはX線波長である。2種類のPS間には微細構造に大きな違いが観察される;a−PSは本質的にアモルファスであるが、高結晶性のi−PSについてはシャープでより高次の反射が数多く観察される(図3)。デバイ−シェラーリング上の強度分布は本質的に均一であるように見え、i−PS結晶方位の等方分布に一致している。a−PSを含むサンプルでは、P3HT100回折はいくぶん弱く広範囲であり、より高次の回折は観察されない。i−PSでは、特徴的な100および200回折ピークはシャープでありはっきりと分解していて、P3HTがa−PSサンプル中よりも有意により結晶状態にあることを表している。P3HT300および020(「π−スタック」)ピークは、i−PSピークと重なり合っているため、観察することができない。ラメラ積層によるP3HTh00ピークはより大きな面外強度を示しており、これは共役ラメラが膜の面内で配向していることを表しており、電荷輸送にとって有利な配向である(Sirringhaus et al., Nature 401, 685 (1999))。
【0066】
これらの配合膜における電気輸送を、標準的なボトム‐ゲートFET構造で研究した。これは、上述の膜加工条件と同じ条件であらかじめパターニングしたAuソースおよびドレイン電極(L=20μm、W/L=500)を持つ、加熱したヘキサメチルジシラザン(HMDS)で処理したSi−SiOの上に、配合液をドロップキャスティングすることによって行った。P3HT:a−PS(1:9)配合膜の移動度は以前に報告された結果に一致して5・10−6cm/Vsecであった(図1)。P3HT:a−PS系における移動度は、以前の結果(Babel, et al. Macromolecules 37, 9835 (2004))に一致して、P3HT濃度の関数としての典型的なパーコレーション挙動を示している(図2)。移動度は、P3HT濃度が低下するのに従って単調な減少を示し、すでに30%の濃度で、移動度は純粋なP3HTの移動度を下回る桁となる。下回ると移動度がゼロとなるパーコレーション閾値は10%未満であるように見える。対照的に、P3HT/i−PSはずっと良好な性能を示しており、移動度は、純粋なP3HTの移動度に大変近い1・10−2cm/Vsという高い値を、10%の濃度に至るまで維持し、P3HT濃度が5〜10パーセントを下回った時に急速に低下するのみである。これは、アモルファス結合剤とは対照的に結晶を使用すると、半導体成分の濃度が低い場合でも電荷輸送のための連続的なネットワークを維持するという配合物の能力に劇的な影響を与えることができる明確な証拠である。
【0067】
実施例2:P3HTとポリエチレンとの配合物
【0068】
観察された現象の一般性を証明するために、本発明者はP3HTとポリエチレン(PE)との配合物も検討した。PEは安価な汎用結晶性ポリマー(ε=2.3)であり、広い範囲の分子量および結晶化度で入手できるものである。結晶度は、側鎖の量および分岐によって制御できる。本発明者は、分子量の異なる、高結晶性の高密度PE(HDPE)、半結晶性の直鎖状低密度PE(LLDPE)およびアモルファスに近い超低密度PE(ULDPE)を比較した。キシレンまたはTCBのいずれかにおけるP3HT−PEの高温溶液を、140℃の温度に維持した基板上にドロップキャスティングし、溶媒が蒸発するのを待ち、その後、RTまで冷却した。基板温度はPEの融点(T=115℃)を上回るがP3HTの融点は下回るものである。かかる条件下では、P3HTが溶媒の蒸発中にまず最初に結晶化しつつ溶融PEのマトリックスに埋め込まれていく。PEは後に、基板温度が室温まで下げ戻されるときに結晶化する。注目すべきことに、P3HT−HDPE配合物では、3〜5%程度の低いP3HT濃度で1・10−2cm/Vsという高い移動度が保持されており、この値は同じ条件で加工された同じ分子量の純粋なP3HT基準サンプルの移動度と同じである(図4)。膜蒸着条件を最適化することによって、たった10%のP3HTしか含有しない配合物で0.06cm/Vsまでの移動度を実現することが可能であり、この値はP3HTについて報告されている最も高い移動度に近いものである(Sirringhaus et al, Nature 401, 685 (1999))。移動度は、膜中のP3HT含有量が3%未満の時に急速に低下するのみである。P3HT:LLDPEについても類似の挙動が観察されるが、移動度の低下は10%というより高いP3HT濃度ですでに起こる。アモルファスに近いULDPEでは、膜中のP3HTの割合が少なくなるにつれて移動度が一本調子で低下していく。ULDPE配合物の挙動はa−PS配合物について上記報告されている従来のパーコレーション挙動にほぼ等しい。
【0069】
希釈された配合物およびブロックコポリマーにおいてかかる高い性能を実現するためには、2つの成分を結晶化させる順序が重要であることが見出された。もし、PEがP3HTの前に結晶化するような、例えば、PEの融点未満の温度に保持されている基板上に高温溶液からドロップキャスティングするような膜加工条件を選択すると、ずっと低い性能が観察された。周囲のPEがすでに固化した時点でP3HTが結晶化する必要があるという条件下で加工されたP3HT/HDPE(1:9)配合の配合物では、8・10−6cm/Vsという低い移動度および100というオン‐オフ比が観察された。P3HTがまず最初に結晶化するという条件下で成長させた高移動度膜で見られたGIXRDは、P3HTおよびPEの両方が結晶性であることを示している(図6)。P3HT(h00)回折は面内散乱形状よりも面外散乱形状においてより顕著であり、これは、P3HTラメラが高い移動度に一致して優先的な面内配向を有していることを意味する。対照的に、同じ組成を持ってはいるが、PEをまず最初に結晶化させるという条件下で成長させた膜では、P3HTからの結晶性回折についてなんの証拠も観察されず、強力なPE回折が存在した。これは、固体PEの環境下でP3HTが固化すると、P3HTが効率的に結晶化できず、その結果移動度が低くなるということを示唆している。
【0070】
高結晶性P3HT/HDPE配合物において移動度が濃度に依存するという特異な濃度依存性を説明するために、本発明者は、DSCおよび光学顕微鏡法の組み合わせによって、P3HT:PE(溶媒の蒸発後のもの)の2元非平衡組成−温度図を作成した(図5)。臨界濃度Ccritである約1%を上回るP3HT濃度の場合、固体P3HT相Sが200℃未満の温度で結晶化し、PE富裕溶融物Lから相分離する。PEの融点である115℃より下に温度が低下すると、固体PE相Sが結晶化する。P3HT濃度がCcrit未満の場合、S相の結晶化温度は大幅に低くなり純粋なPEの結晶化温度に近づく。これは、P3HTのPE溶融物中への混和性が限られていることを表している。共融点の立場から、本発明者は、この相図が作成された分子量(HDPE−M21k;P3HT−M 14k)では、約0.5%のP3HTがPEに混和できると推定する。この限られた混和性は、PEの膜の上に固体P3HTの小さな粒子を置いて、基板をP3HTの融点を上回る温度に加熱すると、直接的に観察することができる。P3HTが周囲のPE液体膜中へと拡散するのを見ることができる(図5のb/c)。もしP3HTが混和性でなかったならば、溶融PE膜中への拡散は不可能であったであろう。相図から抽出されたCcritと、下回ると高結晶性配合物における移動度が急速に低下するP3HT濃度との間には、密接な相関関係があると思われる。本発明者は、分子量が高いHDPEは、小さなCcritの値を示し、これに対応して、分子量がより低くCcritの値がより大きいHDPEよりも、低濃度まで高い移動度の値を維持することを見出した。
【0071】
ラザフォード後方散乱スペクトル(RBS)を使って、膜の組成を深さの関数として分析した(図7)。高移動度の膜では、膜の表面ならびに基板との界面の両方にP3HTの分離層が存在するというまぎれもない証拠がある。後者は、基板の膜を持ち上げこれをひっくり返すことによってよりはっきりと観察された(データは示さず)。本発明者は、P3HT結晶化の前にPEが結晶化されるという条件下で加工された膜は、深さとは無関係の硫黄の兆候を示すことに注目する。これは、膜の厚み全体にわたってP3HTが均一に分布していることを示唆しており、電気輸送が悪いことと一致する。表面及び界面でのP3HTの形成は、厚みが非常に大きな(4mm)P3HT:HDPE(1:9)配合の配合膜では光学顕微鏡法によっても観察することができる(図7の挿入図)。膜を切開して断面を露出させると、膜の表面および界面の両方、並びに膜の内側の空隙の表面に、赤色の層を観察することができる(図7の挿入図、画像の左側)。濃度がCcrit未満の膜の場合、表面へのP3HTの分離は観察されない(図7の挿入図、画像の右側)。
【0072】
これらの観察から、ポリマー半導体と高結晶性結合剤ポリマーとの配合物において移動度は濃度に依存するという特異な濃度依存性について、次のような説明が示唆される。濃度がCcritを十分に上回る場合、配合物中にはP3HTが十分にあり、溶媒の除去後に純粋なP3HTの固相(S)が膜の成長温度で形成される。これらのP3HT結晶質はまだ溶融状態にある結合剤中に埋め込まれる。結合剤が結晶化する際に、P3HT結晶は、成長中の結合剤結晶の外へとP3HT鎖を追い出す強力なエンタルピー力によって、膜の表面および界面へと駆り立てられる。このような鉛直方向に層状の構造では、P3HTの連続的な膜がゲート誘電体との界面に形成され、界面にこの連続的な膜を形成するのに十分なP3HTが膜中にある限り、劣化しない電界効果移動度を維持することができる。これによって結合剤ポリマーの結晶性の重要な役割が説明される。というのは、アモルファス系では鉛直層状の構造を形成するための駆動力はずっと弱いことが予期されるからである。いったんP3HTの濃度がCcritに対比し得る濃度になると、利用可能なP3HTの増加した部分が結合剤溶融物中に溶解するため、この相を形成するのに利用可能な材料はますます少なくなる。結合剤が結晶化してしまうと、溶解したP3HTは、パーコレーション経路を形成することができない濃度で結合剤膜中に均一に分布されるため、電荷輸送のための連続的な経路を形成することはできない。これにより、P3HTの濃度がCcritに近づくにつれて移動度が急速に低下することが説明される。注目すべきは、2成分ブロックコポリマーの場合についても同様の説明が適用できると期待されることであり、この場合でも、P3HTの表面および界面への分離層の証拠がRBSにおいて観察された。ただ、配合物の場合に比べるとあまり顕著ではないことがわかったが、これは、P3HTをPE膜中により均一に分散させるような長い領域の相分離がないことによるものである可能性が高い。
【0073】
このモデルをさらにサポートする証拠が、膜形成のプロセス中にFET性能を測定することにより得られた。膜をFETプローブステーションにドロップキャスティングし、いったん溶媒を蒸発した後にFET特性を高温下で測定した。その後、基板温度をゆっくりと室温まで下げつつ、低下する温度の関数としてFET移動度を測定した(図8)。約5・10−5cm/Vsの移動度を持つきれいなFET特性が140℃で観察されたが、これはかかる温度でP3HTの固相がすでに存在していることの明らかな証拠である。冷却すると、移動度が1〜2桁大きくなるのが観察されたが、この事象は、DSCによって決定されたPE結晶化の始まり(110−115℃)未満まで温度がいったん低下すると、開始される。対照的に、純粋なP3HT基準サンプルでは、はるかに弱い温度依存性が観察される。これは、配合物における高い移動度をもたらす電荷輸送経路が形成されるのは、PEの結晶化の際に、P3HTの固相が界面へと追い出されるときであることの明らかな証拠である。
【0074】
本発明者はまた、P3HTの濃度が低い配合物デバイスは、純粋なP3HTデバイスと比べて大幅に改善された環境安定性を示すという証拠も得ている。P3HTは、空気および光にさらされるとドーピング誘発性の不安定性を示すことが知られている。本発明者は、ボトムゲートデバイスの稼動寿命を純粋なP3HTおよびP3HT/PE活性層と比較した。純粋なP3HTの場合、デバイスを空気および光にさらすとオン−オフ電流比が急速に劣化し、オフ電流が急速に上昇した。P3HT/PE配合活性層を持つデバイスは、デバイスの開始電圧がより正の値にシフトしたことを検出するまでに空気および光の中で何日間も保管ですることが可能である。これは、配合によってP3HTの環境安定性を大幅に改善できることを明確に示している。本発明者の取り組みは、例えば、これらに限られるわけではないが、ポリ(2,5−ビス(3−アルキルチオフェン−2−イル)チエノ[3,2−b]チオフェン(McCullouch et al., Nature Materials 5, 328 (2006))、またはポリ[5,5_−ビス(3−アルキル−2−チエニル)−2,2_−ビチオフェン](Ong, et al., J. Am. Chem. Soc. 126, 3378 (2004))などのポリチオフェン系のコポリマーを含む他の半導体ポリマーにも等しく適用可能である。これらはP3HTに比べて環境安定性を改善した。そして、本発明による配合方法を使用することにより、これらの材料を使うに必要な信頼性要件を満たすために、さらなる安定性の改善を達成することができる。
【0075】
実施例3:結晶性−結晶性のP3HT−ポリエチレンブロックコポリマー
【0076】
共役ポリマーブロックおよびアモルファスのポリマーブロックを含むブロックコポリマーに対する関心が高まっており、これは前者の良好な電子特性を後者の潜在的に優れた機械的特性および加工特性と組み合わせることを目的としている。共有結合で結合したブロックの微小規模の相分離によって促進された、このようなブロックコポリマーのサブミクロン(submicrometer)規模の構造は、球状、棒状から共連続相またはラメラにまでわたり、その成分の相対的な体積分率に大きく依存することが知られている(Park, C. et al., Polymer 44, 6725 (2003))。残念なことに、これまでのところ、このようなブロックコポリマーの電子特性は共役ポリマーの含有量が少なくなるにつれて急速に劣化することが報告されており、そのため両方のブロックを併せた品質を示すことはできなかった。2種類の結晶部分を含むブロックコポリマーは、より広い範囲の加工選択肢を提供することが示されている。かかるブロックコポリマーの微細構造は、それらの組成やいずれか一方のブロックの結晶化に依存し、言い換えると、第2のブロックが引き続いて結晶化する能力に大きく影響する場合がある(Liu, et al., Angewandte Chemie International Edition 41, 329 (2002))。
【0077】
報告されている方法に従って、組成の異なる一連のP3HT−PEブロックコポリマーを合成し、その特徴を明らかにした(Radano, C. et al. J. Am. Chem. Soc 127, 12502 (2005))。ここで、本発明者は、これらのポリマーに利用可能な異なる加工選択肢を開示し、選択された電子特性に対してブロック組成物が及ぼす影響を検討した。表1に、ブロックコポリマーの選択した物理的特性、ならびにP3HTおよびPE基準材料の選択した物理的特性を一覧にしている。
【0078】
【表1】

【0079】
表1に見られるように、P3HTブロックはすべての材料で大まかには同じ数平均分子量Mを持っている。組成全体はPEブロック長が変化するのに従って変動する。また、125℃以下における、異なるポリマーのキシレン中0.1重量%溶液を含むバイアルの写真も示されている。これらの写真は溶解したコポリマーの異なる色を明らかにしており、すべての材料について、均一な溶液が得られることを示している。
【0080】
これらのブロックコポリマー膜における電気輸送を標準的なボトムゲートFET構造において検討した。これは、あらかじめパターンニングされているAuソースおよびドレイン電極(L=20μm、W/L=500)を持つ、加熱ヘキサメチルジシラザン(HMDS)で処理したSi−SiO上に、ブロックコポリマー溶液をドロップキャスティングすることによって行った。基板温度は120〜160℃の間で変動させた。P3HT:PE組成に対する移動度の依存性を図9に示す。移動度の組成依存性は、上記実施例2で説明したP3HT:PE配合物の場合に観察されたものに似ている。P3HTの重量パーセントが10%を上回ると、1・10−2cm/Vsという高い値の移動度が得られ、この値は同じ分子量の純粋なP3HTの移動度に似ている。P3HTの重量パーセントが10%を下回った場合にだけ、本発明者はまさに電界効果移動度の急速な低下を観察した。これは、P3HTに結合した結晶性ブロックを使うと、電気的活性ポリマーが誘電体ブロックと共重合する際の、以前に観察された電気特性の劣化(Liu, et. al., Angewandte Chemie International Edition 41, 329 (2002))を回避することができることの明らかな証拠である。
【0081】
本発明者はまた、移動度が蒸着温度に依存することも観察した。140〜160℃の蒸着温度では、6・10−2cm/Vsに迫る一層高い移動度が測定された。
【0082】
PEなどの多くの一般的な結晶性ポリマーは、融解物から高温で都合よく加工することができる。しかしながら、P3HTは融解温度が高く高温安定性が限られているため、この材料は、融解物よりはむしろ、例えばキシレンに溶解した溶液から加工することが通例になっていた。表1は、驚くべきことではないが、本発明のブロックコポリマーはP3HTホモポリマーの最終融解温度に迫る融解温度を示すことも明らかにしている。それゆえ、本研究では、材料は溶液から加工される。提示されたP3HT−PEブロックコポリマーは融解温度および溶解挙動を含む著しく異なる化学的および物理的特性を持つ構成要素を含むため、新規材料およびキシレンの相状態図が作成された。
【0083】
図10は、一例として、以下「10−90 P3HT−PE」と呼ぶ10重量%のP3HTおよびキシレンを含むブロックコポリマーの2元温度−組成図を示しており、示差走査熱量測定(DSC)冷却サーモグラフから作成され、P3HTのサーモクロミック特性を光学的に説明している。デカリン、シクロヘキサノン、およびクロロベンゼンなどの他の高沸点溶媒は、P3HT−PEと組み合わせると類似の相挙動を示した。図10の非平衡相図は、2つのはっきりと識別できる領域を明らかにしている。コポリマーが45重量%までの低濃度溶液では、P3HTブロックは可溶であり、5重量%未満では室温でも可溶であるが、一方PEブロックは可溶ではない。これに対して、より高濃度の溶液では、2つのブロックの相挙動は逆転し、PEブロックは可溶であるがP3HTブロックは可溶ではないという領域が存在する。より低濃度の領域ではP3HTブロックの温度遷移がない点に留意すべきであり、これは、適用した実験条件下では、P3HTブロックは検出可能なDSC発熱を示す秩序構造を形成しないことを示唆しているように思われる。
【0084】
この特有の相挙動は、明らかに2つの加工スキームを提供するものであり、図10に概略的に描かれているように、両者とも希薄で同質な溶液から開始し、その後明らかに異なる構造になる。Iという符号の付けられた加工スキームでは、ブロックコポリマー溶液はまず最初に室温に冷却され、すなわち組成の変化はなく、PEブロックを結晶化させ、その後溶媒を蒸発させる。一方、加工スキームIIでは、ポリマー溶液は高温(100℃を上回る温度)に維持された後に、この材料が室温に冷却される前に溶媒が蒸発し、これによりPE部分が結晶化する前にP3HTブロックが結晶化する。これら2つの加工経路は、P3HTブロックおよびPEブロックの結晶化順序が逆転するため、主として異なる構造を持つ固体をもたらすと予想される。
【0085】
図11は、2つの加工スキームによって得られる固体−固体の10−90P3HT−PEの実際に根本的に異なる形態を明らかにしている。左上の写真は、交差させた偏光子間で撮影したもので、高度に希釈した0.01重量%溶液から加工ルートIを介して調製した材料を示している。PEブロックの結晶化により従来の単結晶型の構造となる。対照的に、左下の写真は、希釈0.1重量%溶液から得られる同じP3HT−PEコポリマーであって、加工ルートIIを介して調製されたP3HT−PEコポリマーの薄膜を示している。この場合には、多くの結晶性ポリマーに典型的である球状の構造を識別することができる。微細構造の形態の違いに加えて、2つのスキームに従って加工されたP3HT−PEコポリマーはまた、結晶化順序の大きな違いも示しており、これはP3HTの結晶化順序でもっとも顕著である。図11の右側の図には、両方のスキームを介して加工された膜の広角X散乱(WAXS)および斜入射回折(GIXD)が描写されている。両方の場合において、PE110および200反射が存在する。しかしながら、通常のP3HT100および020反射は、スキームIIを介して調製されたサンプルでのみはっきりと検出することができた。
【0086】
同様の形態的および構造的特徴は、図12に図示するように、他のコポリマーの溶液加工サンプルでも見られた。図12の上の図は、ルートIを介して加工された、0.01重量%溶液から結晶化された35−65P3HT−PEコポリマーの透過電子顕微鏡(TEM)写真を示している。このTEM顕微鏡写真は再び従来のPE単結晶型の構造を明らかにしており、電子回折(ED)パターンは強力なPE110および200回折を示している(図12の右上)。しかしながら、P3HTの特徴的な020回折が明らかに無い点に留意すべきである。さらに、TEM画像ではより暗い領域を識別できるが、これはあまり順序良く配列されていないP3HTに起因すると考えられる。ルートIIを介して薄膜に加工された同じP3HT−PEコポリマーのTEM画像は、再び高結晶質のPEラメラを明らかにしており、EDは強力なPEの110および200回折を明らかにしている(それぞれ、図12の左下および右下)。これらのPEラメラは、もっと大きな尺度では典型的な球状超構造に組織され、偏光光学顕微鏡ではっきりと目視できる(図11の左下)。しかしながら、対照的に、EDは、上とは違い、連続的なP3HT020回折リングを見せており、これはP3HTブロックの実質的な配列を示し、PEラメラに関する好ましい配向が存在しないことを示している。
【0087】
これらの観察は、半固体相にあるコポリマーについて図13に概略的に示されるように、加工ルートに依存して2つの基本的に異なる構造が形成されることを強く示唆し、またこれに一致する。図11の温度組成図から明らかなように、スキームIは、PEブロックをまず最初に結晶化させて、P3HT部分の移動度を制限し、これにより、もしあっても、その後の固化の過程におけるP3HTの結晶配列を減少させる。これに対して、スキームIIはPEブロックより先にP3HTブロックを結晶化するように仕向け、これにより、ブロックコポリマーの共役半導体部分の高度に配列したラメラをもたらす。
【0088】
これら異なる構造がP3HT−PEブロックコポリマーの半導体特性にもたらす影響を探求するために、本発明者は、ボトムゲート、ボトムコンタクト電界効果トランジスタFETデバイス構造におけるこれらの性能を研究した。本発明者は、半導体ポリマーがまず最初に結晶化する加工ルートIIは、ルートIに比べて大幅に良好なデバイス性能をもたらすという明らかな証拠を見出した。図14aおよび14bは、それぞれルートIおよびIIを介して加工された10−90P3HT−PEの薄膜の典型的なFET伝達特性および出力特性を示している。スキームIを介して加工された薄膜を備えるFETは、きわめて粗悪なFET性能を示すことがわかった。FET移動度は非常に低く(典型的には10−5cm/Vs未満)、強度に非直線性の出力特性の証拠が見出されたが、これはおそらく、これらの条件下では、膜の微細構造は、電荷がPEの障壁を横切って移動する必要があるような構造であり、その結果、移動度が電界に大きく依存するまたは接触抵抗が大きくなることを示すものであろう。対照的に、スキームIIを介して加工された薄膜に基づくFETは優れたFET性能を示し、移動度は10−2cm/Vsのオーダーであった。P3HTの半導体特性にとって結晶化度の度合いが決定的に重要な意味を持つという公知の事実を考慮すると(Sirringhaus et al., Nature 401, 685 (1999))、この観察は、上で説明した異なるコポリマー膜の構造特性に合致する。同じ方法で製造され同じデバイス構造に設けたP3HTホモポリマー薄膜は、0.01cm/Vsecの飽和移動度を示したにすぎず、これはP3HT−PEの同等またはより優れた性能を示唆する。P3HTブロックを5重量%しか含有しないP3HT−PEコポリマーの薄膜は、電荷担体移動度、ヒステリシス、オン−オフ比および接触抵抗の著しい劣化を示したが、これはP3HTドメイン間の連結の断絶を示唆する(図9)。ルートIIを介して加工された薄膜の原子間力顕微鏡(AFM)タッピングモード画像はこのことを裏付けている。すなわち、10−90P3HT−PEの膜は、構造がより非連続的であると思われる5−95P3HT−PEブロックコポリマーの膜と比較すると、連続した、高度に配列した構造を示す(図14aおよび図14bの挿入図)。
【0089】
ラザフォード後方散乱スペクトル(RBS)を使って、膜の組成を深さの関数として分析した。高移動度の膜では、P3HTの分離層が膜の表面ならびに基板との界面の両方に存在するというまぎれもない証拠がある。分離の量は配合物の場合にくらべるといくらか顕著さは劣るが、これは、誘電体ブロックとの共有結合を課せられることによってP3HTブロックの移動度が制約されることによると考えられる。にもかかわらず、膜の表面および界面の両方で分離した層が検出可能であり、これが、半導体ブロックの長さが短い場合でも優れた電荷輸送特性を実現する役割を担っている。本発明者はふたたび、P3HTの前にPEが結晶化したという条件下で加工された膜は、深さとは無関係の硫黄の兆候を示すことに注目する。これは、膜の厚み全体にわたってP3HTが均一に分布していることを示唆しており、劣悪な電気輸送に一致する。
【0090】
この実施例は、活性半導体ブロックに結合した結晶性誘電体ブロックを使うと、電気活性ポリマーが誘電体ブロックと共重合する際に以前に観察された電気性能の劣化を回避することができることを明確に示している(Liu, et al., Angewandte Chemie International Edition 41, 329 (2002))。この実施例はまた、2つのブロックが結晶化する順序が非常に重要であることも示している。良好な性能を実現するためには、これら2つのブロックおよび加工条件は、誘電体ブロックの固化/結晶化の前に活性な半導体が固化/結晶化するように選択される必要がある。
【0091】
実施例4:鉛直層状ポリマー半導体−結晶性ゲート誘電体二重層の製造
【0092】
実施例1および2で、本発明者は、鉛直方向に層状の二重層を形成するための方法を実証した。この方法では、結合剤ポリマーの結晶化の過程で半導体ポリマーは膜の表面および表面との界面に向かって駆り立てられる。この技術を使って、結晶性結合剤がトランジスタのゲート誘電体を形成しているデバイスを製造することができる(図15b)。このような鉛直層状の二重層構造はこれまでは有機FETデバイスの製造に使用されてきた(Chua, et al., Advanced Materials 16, 1609 (2004))が、これまでに開示されてきた特定の方法は、3元配合物溶液の一般的な表面張力駆動アセンブリに頼るものであり、本願で開示するような結晶化駆動アセンブリに頼るものではなかった。基板1上には、ソースおよびドレイン電極8が蒸着され、適切なパターニング技術、例えば、限定されるわけではないが、フォトリソグラフィー、レーザー研磨、または直接書き込み印刷のようなパターニング技術によってパターンニングされる。半導体/誘電体二重層は有機半導体および結晶性誘電体ポリマーの溶液から蒸着される。蒸着条件は、実施例1および2で詳細に説明したように、有機半導体がまず最初に結晶化し、そして結合剤ポリマーの結晶化の過程で膜の表面および界面へと追い出されるように、選択される。このようなやり方で、ソース−ドレイン電極と接触する有機半導体の層9、ゲート誘電体層10、6、および有機半導体の表面層11を持つ鉛直層状の形態が作られる。デバイスは、半導体/誘電体層の表面にゲート電極12を蒸着およびパターンニングすることによって完成する。半導体および誘電体層の相対的な厚みは、配合溶液の組成を変動させることによって調節できるが、有機半導体の移動度は典型的には5〜10%未満の半導体組成の場合にだけしか劣化しないため、厚みを所望の値に調節するために広い範囲の組成物を利用することができる。表面層11はゲート電極と直接接触しているので、その存在がデバイスの性能に大きく影響することはない。
【0093】
実施例5:半導体−ゲート誘電体ブロックコポリマー活性層を有する有機電界効果トランジスタ
【0094】
実施例3で示したように、半導体ポリマーブロックおよび結晶性ポリマー誘電体ブロックを含む2成分ブロックコポリマーを使うと、鉛直層状のラメラ構造を形成することができる。この構造では、誘電体ブロックの結晶化の過程で半導体ブロックが層の表面/界面へと追い出されるようにして、微小規模の相分離が行われる。これを使ってブロックコポリマーの誘電体ブロックがデバイスのゲート誘電体として機能する有機FETデバイスを製造することができる(図15b)。基板1上には、ソースおよびドレイン電極8が蒸着され、限定されるわけではないが、フォトリソグラフィー、レーザー研磨、または直接書き込み印刷のような適切なパターニング技術によってパターンニングされる。半導体/誘電体ブロックコポリマーは溶液から蒸着される。蒸着条件は、実施例3で詳細に説明したように、有機半導体ブロックがまず最初に結晶化し、そして誘電体ブロックの結晶化の過程で膜の表面および界面へと追い出されるように、選択される。このようなやり方で、ソース−ドレイン電極と接触する有機半導体ブロック9と、その上に設けられた誘電体ブロック10とを持つ鉛直層状の形態が作られる。半導体ブロックの表面分離層が表面に存在していてもよい。有機半導体の表面層11が生成される。デバイスは、半導体/誘電体層の表面にゲート電極12を蒸着およびパターンニングすることによって完成する。半導体および誘電体層の相対的な厚みは、配合溶液の組成を変動させることによって調節できるが、有機半導体の移動度は典型的には5〜10%未満の半導体組成の場合にだけしか劣化しないため、厚みを所望の値に調節するために広い範囲の組成物を利用することができる。表面層11はゲート電極と直接接触しているので、その存在がデバイスの性能に大きく影響することはない。このような半導体−誘電体ブロックコポリマーの面内ラメラ構造を使用することは、例えば、チャネル長さがサブミクロン(submicrometer)であるがゆえにゲート誘電体の厚みが典型的には50nm未満、好ましくは10〜20nmのオーダーでなければならないという理由で、厚みの薄いゲート誘電体を必要とする有機電界効果デバイスにとっては、特に魅力的である(Sele, et al., Advanced Materials 17, 997 (2005))。本発明の特に好ましい実施形態は、半導体−結晶性2成分ブロックコポリマーの膜であり、その厚みは半導体ブロックおよび誘電体ブロックの単一の二重層によって決定される。これは、溶液の濃度、蒸着条件、および基板の適切な表面処理(基板からの薄膜の脱濡れを防止するため)を調節することによって達成され得る。直鎖3成分ブロックコポリマーまたは分岐ブロックコポリマーのような他のブロックコポリマーも同様に使用することができ、同じやり方で加工することができる。
【0095】
実施例5:有機半導体および結晶性結合剤ポリマーを含む自立半導体膜の製造
【0096】
本発明によって可能となる用途は半導体特性を持つ自立基板の製造である。P3HTのような普通のポリマー半導体は、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、またはポリエチレンナフタレート(PEN)などの一般的構造のポリマーよりも機械的特性および機械的強度が著しく劣る傾向があるため、自立膜の製造には使用できない。また、ポリマー半導体は、その合成方法が本来的により高価であるかまたは一般的な誘電体ポリマーの場合よりもあまり開発がなされていないため、ずっと費用が高くなる傾向がある。限定されるわけではないが、上述の実施例で検討したようなPE、PET、PENまたはポリプロピレン(PP)などの結晶性ポリマー結合剤に、少ない割合の半導体材料を混合することにより、誘電体結合剤材料それ自体の機械的特性に非常に近い機械的特性を持ち、良好な電荷輸送特性を備えた半導体機能も併せ持つ基板を作ることができる。その基板の半導体機能を使って、例えば、かかる基板上に、検知デバイス、電子スイッチングデバイス、または有機半導体の光吸収により光信号を検出するためのデバイスなどの電子デバイスを実現することができる。自立膜はまた、加工可能なオリゴマーおよび小分子結合剤材料をベースとすることもできる。
【0097】
実施例6:HDPEと小分子有機半導体クウォーターチオフェンの配合物(4T−HDPE)
【0098】
本発明による方法は、結晶性結合剤ポリマーと小分子有機半導体の配合物にも適用することができる。ここで、本発明者はこれをα−クウォーターチオフェン(quaterthiophene)によって実証する。既存の(非置換)オリゴチオフェンのうち、α−クウォーターチオフェンは、材料の融解温度および可溶性の点からみて電子特性と加工可能性との間に良好な妥協点を提供する。一方、5つ以上のチオフェン単位を含むオリゴチオフェンは、電子特性が優れている点で興味深いものではあるが、不都合なことに250℃を越える高い融解温度を示す。
【0099】
α−クウォーターチオフェンの示差走査熱量測定(DSC)は、溶融加工は215℃を超える比較的高い温度も必要とし、同様の温度で昇華が始まることを示している。従って、溶融加工は比較的小さな加工ウィンドウしか許容されない。しかしながら、その高い同族性とは対照的に、4Tは比較的直進的な溶液加工が可能である。例えば、10重量%以下の濃度の場合、デカリンなどの一般的な非塩素性良性溶媒においてこの物の溶解温度は約140℃未満であり、対応する結晶化温度Tは110℃未満であることが見出されている。このような溶液は、多環式テトラセンおよびペンタセンなどの他の共役オリゴマーとは対照的に、(核磁気共鳴(NMR)によって確認されたように)熱的にかなり安定であることがわかった。
【0100】
4T:HDPE配合物は高温でデカリン中に均質な希釈液を形成した。上述の、2つの異なる固化の順序を導くことができるP3HT:PE2成分系(すなわち、PEの前にP3HTが結晶化する、およびその逆)とは対照的に、本発明者は、4Tが、検討したすべての濃度においてPEよりも高い結晶化温度を示し、従って、常にポリマーよりも先に結晶化することを見出した。好都合なことに、これは、高い移動度、低いパーコレーション閾値の系を生み出すのに最も有利な結晶化順序である。
【0101】
それゆえ、本発明者は、4T:HDPE配合物を用いて、異なる固化速度が誘発される微細構造に及ぼす影響および配合物の電子特性に及ぼす影響を検討することができた。この目的で、本発明者は次の2つの加工経路を取った。スキームIでは、2つの成分の高温溶液を室温で形成し、引き続いて同じ温度で溶媒を蒸発させて、材料を希釈液からゆっくりと結晶化させた。130℃以下の高温で溶媒を「瞬時に」除去し(スキームII)、その結果、4Tをより濃度の高い粘性液体からより速く結晶化させ、その後ポリマーを固化させた。
【0102】
室温で高温溶液形成および溶媒除去を行うと粗い微細構造となるが、高温で作成された(すなわち、高速溶媒除去)4T:HDPE膜は、半導体の明らかにより微細でより均質な分布を特徴とした。
【0103】
2元4T:HDPE混合物の相挙動に対して、固化の速度が大きな影響を及ぼすこともわかった。すべての温度/組成図は、広い範囲の温度および組成にわたって2つの成分の間に混和性のギャップがある単純な偏晶相挙動を示している。しかしながら、半導体種の融解温度、溶解温度、および結晶化温度は、4T:HDPE配合物の製造方法によって大きく影響された。高温で溶液形成することによって得られた配合物では、4TのTおよびTの両方について大幅により低い値が記録され、この配合物のより小さな結晶サイズおよびドメインサイズに合致している。
【0104】
選択された加工経路は分子配列にも影響を及ぼす可能性が高く、分子配列は共役種の半導体特性に影響する可能性が高いことが知られているので、異なったやり方で加工された4T:HDPE配合物に対して、純粋な4TおよびHDPEを基準として、広角X線散乱(WAXS)を行った。2元混合物の場合、それぞれの成分に由来する回折が観察された。純粋な4Tは、スキームIに従って加工されると低温多形体として結晶化し、ルートIIを介すると高温の変形として結晶化し、これはHDPEと配合した4Tについても見られた。しかしながら、偶数の数のチオフェン単位のα−オリゴチオフェンの場合は、電荷輸送特性は多形体によりほとんど影響されないことが報告されているため、ここではあまり関係がない。
【0105】
最初の一連の実験では、4T:HDPE配合物の薄膜の電子特性をボトム−ゲートボトムコンタクトFET構造で検討した。室温で溶媒をゆっくりと除去することによって作られた4T:HDPEに基づくトランジスタでは、小さなソース−ドレイン電流が記録された。かかる膜における移動度は10−6cm/Vs未満と推定された。
【0106】
著しく対照的に、高温で作られた4T:HDPE層を備えるデバイスについては、きれいなFET特性が観察された。事実、10重量%の4Tを含む配合物については、10の電流移動度および1×10−4cm/Vs以下の電荷−担体移動度が測定された。これは気相蒸着された純粋なα−クウォーターチオフェンで報告されているμFET値に匹敵するものである。
【0107】
4T:HDPE2成分中の半導体含有量が10重量%未満にまで低くなると、電子特性は急激に劣化した。これらのデバイスについては10−6cm/Vs未満の電荷−担体移動度が得られ、15V以下の閾値電圧Vthの明確なシフトが観察された。これは、ソース−ドレイン電極からより濃度の高い絶縁体からなる活性層へと電荷担体が効率的に注入されるのを防止する障壁が形成された可能性があることを示している。
【0108】
重要な点は、スキームIIを介して加工され、(高温で)液体−液体相分離を特徴とした4T:HDPE2成分に基づくデバイスで、純粋な4Tに匹敵するFET性能が記録されたことである。これに対し、2つの成分が液体状態で混和可能であった配合物は、半導体の含有量が少なくなるのに従って電荷輸送の急激な劣化を示し、固化スキームIによって誘発されるような大規模な相分離を示す活性層に基づくFETの場合に見られるデバイス性能に類似のデバイス性能を持っていた。
【0109】
本発明において説明するプロセスおよびデバイスは、上の実施例のいずれかに記載の材料に限定されるわけではない。本方法は一般的に適用可能である。本発明者は、ポリ([2−メトキシ−5−(3’,7’−ジメチルオクチルオキシ)]−p−フェニレンビニレン(OC10−PPV)などの結晶性ポリマー配合物と配合した広い範囲の他の有機半導体だけでなく、HDPEと配合したルブレンおよびテトラセンなどの小分子半導体でも、類似の輸送特性を観察した。好ましくは、有機半導体は結晶性材料であるが、半結晶性ならびにアモルファス材料も使用できる。好ましくは、有機半導体は誘電体結合剤ポリマーの融点より高い温度で固化する。電気活性半導体層に使用できる可能性のある材料としては、10−3cm/Vsを上回り好ましくは10−2cm/Vsを上回る適切な電界効果移動度を示すどのような溶液加工可能な共役ポリマー性またはオリゴマー性材料でもよい。適切と思われる材料は、例えばH. E. Katz, J. Mater. Chem. 7, 369 (1997)、またはZ. Bao, Advanced Materials 12, 227 (2000) において、これまでに報告されてきている。その他の可能性のあるものとしては、可溶性の側鎖を持つ小型共役分子が挙げられる(J. G. Laquindanum, et al., J. Am. Chem. Soc. 120, 664 (1998))。
【0110】
本発明はまた、他の加工可能な半導体にも適用可能であり、制限されるわけではないが、ZnO、CdSe、またはSi(B. A. Ridley, et al., Siceience 286, 746 (1999))などの無機コロイド状ナノ粒子などがあり、これらは結合剤と一緒に溶媒中に分散させることができる。
【0111】
ポリエチレンオキシド(PEO)およびPPなどの他の結晶性結合剤ポリマーもまた、首尾よく使用することができた。他の結晶性または半結晶性結合剤ポリマーの例としては、PETおよびPENなどのポリエステルが挙げられる。非常に広い範囲の使用できる結晶性または半結晶性結合剤ポリマーがある。種々の材料およびこれらの加工についての総説は、Wunderlich, Macromolecular Physics, Vol 1-3, New York, London; Academie Press 1973に記載されている。結合剤ポリマー(配合物の場合)または第2のブロック(ブロックコポリマーの場合)は、誘電体ポリマーである必要はない。それは、電気活性有機半導体と配合された/共重合された結晶性半導体ポリマーであってもよい。その場合、電気活性有機半導体は、結合剤ポリマーのエネルギーレベルに対して、電荷輸送が電気活性ポリマーにおいて優先的に発生するように配置されたエネルギーレベルを持つと考えられる。
【0112】
結合剤ポリマーは優先的に、誘電定数が3.5未満、好ましくは3未満である低誘電率ポリマーである。これにより、結合剤成分の双極性無秩序によって電気活性半導体の密度状態が無秩序誘発的に広がるのが回避される。
【0113】
本発明は、ボトムゲート、トップコンタクトおよびボトムコンタクトデバイスを含む広い範囲のデバイス構造物に適用可能である。電気活性半導体成分の分離はデバイスの表面および界面の両方で発生するため、トップゲート構造物も使用できる。ゲート誘電体層としては、限られるわけではないが、SiO、またはSiNなどの広い範囲の液相または気相蒸着誘電体、またはPMMA、ポリビニルフェノールなどのポリマー誘電体、および文献で公知の(例えば、Facchetti et al., Adv. Mat. 17, 1705 (2005)参照)その他のゲート誘電体を使用することができる。電極は広範囲の材料から製造でき、気相蒸着金属、導電性ポリマー、または印刷可能な金属ナノ粒子インクが挙げられる。活性半導体層を含むデバイスのさまざまな層のパターンニングは、フォトリソグラフィー、ナノインプリンティングまたはレーザー研磨などの減法パターンニングによっても、またはインクジェット、オフセット、グラビア、フレキソ印刷またはスクリーン印刷による加法パターンニングによってもよい(Forrest et al. Nature 428, 911 (2004))。デバイスおよび回路のすべての層および成分を溶液加工および印刷技術によって蒸着しパターンニングするのが好ましいが、1つ以上の成分を真空蒸着技術によって蒸着し、および/またはフォトリソグラフィープロセスによってパターンニングしてもよい。
【0114】
ここで開示した、ポリマー配合物およびブロックコポリマーに鉛直層状の形態を作成するための方法は、その他のデバイス構造にも適用可能である。例えば、光起電力電池では、2つのポリマー間の界面で生成された電荷の効率的な電荷収集を確実に行えるようにするため、電子輸送ポリマーの層の下に正孔輸送ポリマーの層を持つ(またはその逆の)二重層の形態が必要とされる(Arias et al., Macromolecules 34, 6005 (2001))(図16)。この場合、配合物は、低い/高い融点を持つ結晶性正孔輸送ポリマー14と、より高い/より低い融点を持つ結晶性電子輸送ポリマー15とを含む場合がある。この場合、膜は、基板上でアノード13と接触すると思われるポリマーがまず最初に結晶化し、そして基板との界面へと駆り立てられるように、加工することができる。電子輸送ポリマーがその上に配置され、カソード16と接触する。この場合、電子がカソードに集まるのを妨げないために、電子輸送層の上に正孔輸送ポリマーの表面層が存在するという事態は回避すべきである。これは、例えば、電子輸送の結晶化の過程における正孔輸送ポリマーの分離が、好ましくは膜の開放面と反対側の界面に向けられるように、基板の相対的な表面張力、および2つのポリマーの表面張力を調節することによって、達成される。あるいは、これら2つのポリマーを、下にある電子輸送層が溶けない溶媒中で正孔輸送ポリマーの上部表面層を洗い落とすことが可能となるように、選択してもよい。正孔輸送ポリマーが電子輸送ポリマーの上に配置されるという逆の構造を同様の方法で製造できる点に留意すべきである。
【0115】
上述のように製造されたTFTのようなデバイスは、1つ以上を互いにおよび/またはその他のデバイスと一体化することで、より複雑な回路またはデバイスの一部とすることができる。かかる用途の例としては、ディスプレイまたはメモリデバイスのための論理回路およびアクティブマトリックス回路系、またはユーザー定義のゲートアレー回路が挙げられる。
【0116】
本発明は上述の実施例に限定されるわけではない。本発明の側面は、ここで説明した概念のすべての新規かつ進歩的な側面、およびここで説明した特徴のすべての新規かつ進歩的な組み合わせを含んでいる。
【0117】
ここに出願人は、ここで説明した個々の特徴、および2つ以上のそのような特徴のあらゆる組み合わせを別に開示し、その範囲において、そのような特徴または特徴の組み合わせがここで説明したあらゆる問題を解決するかどうかにかかわらず、クレームの範囲に限られることなく、当業者の通常の一般的な知識に照らし合わせて全体として本明細書に基づいて、そのような特徴または組み合わせを実施することができる。出願人は、本発明の側面があらゆるそのような個々の特徴または特徴の組み合わせからなり得ることを表明する。上述の記載に鑑みて、本発明の範囲内においてさまざまな改変を行い得ることは当業者にとって明らかであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体本体を形成するための方法であって、
有機半導体材料と結合剤材料との混合物を形成する工程、
前記半導体材料を少なくとも部分的に固化させる工程、および
前記半導体材料を前記結合剤材料から少なくとも部分的に分離させるように、前記結合剤材料を結晶化させる工程、
を具備する方法。
【請求項2】
前記半導体材料を少なくとも部分的に固化させる工程は、前記結合剤を結晶化させる工程の前に行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記半導体材料を少なくとも部分的に固化させる工程は、前記半導体材料を結晶化させる工程を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記結合剤材料を結晶化させる工程は、前記混合物の温度を下げる工程を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記有機半導体材料は半導体ポリマーである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記結合剤材料は半結晶性ポリマーである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記有機半導体ポリマーは前記ポリマー結合剤とブロックコポリマーを形成する、請求項5に従属する請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記結合剤材料は半導体性である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記混合物は溶媒を含んでおり、前記方法は、さらに、前記結合剤材料を結晶化させる工程の前に前記溶媒を除去する工程を具備する、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記溶媒を除去する工程は、前記半導体材料を固化させる工程の前に行われる、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記有機半導体は、ポリ−3−ヘキシルチオフェン(P3HT)である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記有機半導体は、α−クウォーターチオフェン(4T)である、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記結合剤は、イソタクチックポリスチレン(i−PS)である、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記結合剤は、高密度ポリエチレン(HDPE)である、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
半導体本体を形成するための方法であって、
有機半導体材料と結合剤材料との混合物を形成する工程、
前記半導体材料を少なくとも部分的に固化させる工程、および
前記結合剤材料と隣接の媒体との界面で前記半導体材料を濃縮させるように、前記結合剤材料を結晶化させる工程、
を具備する方法。
【請求項16】
前記結合剤材料の界面は、結合剤材料の隣接し合う層間の界面を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
半導体本体を形成するための方法であって、
有機半導体材料と結合剤材料との混合物を形成する工程、および
前記半導体材料を前記結合剤材料から分離させるように、前記結合剤材料を合体させる工程、
を具備する方法。
【請求項18】
さらに、前記結合剤材料を合体させる工程の前に、前記半導体材料を固化させる工程を具備する請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記半導体材料を固化させる工程は、前記半導体材料を結晶化させる工程を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記結合剤材料を合体させる工程は、前記混合物の温度を下げる工程を含む、請求項17〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記分離された半導体材料および結合剤材料は層状構造を形成する、請求項17〜20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
さらに、前記有機半導体材料と前記結合剤材料との混合物を基板上に蒸着する工程を具備する、請求項17〜21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記結合剤材料を合体させる工程は、前記結合剤材料を結晶化させる工程を含む、請求項17〜22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
半導体本体を備える電子デバイスであって、前記半導体本体は、
有機半導体材料と、
結晶性結合剤材料とを含む、
電子デバイス。
【請求項25】
前記有機半導体材料は、前記半導体本体と隣接の媒体との界面で主に濃縮される、請求項24に記載の電子デバイス。
【請求項26】
前記半導体本体は相分離される、請求項24または25に記載の電子デバイス。
【請求項27】
前記結晶性結合剤材料は誘電体である、請求項24〜26のいずれか1項に記載の電子デバイス。
【請求項28】
前記結晶性結合剤材料は半導体または伝導体である、請求項24〜26のいずれか1項に記載の電子デバイス。
【請求項29】
前記有機半導体材料は半結晶性ポリマーである、請求項24〜28のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項30】
前記結晶性結合剤材料は半結晶性ポリマーである、請求項24〜29のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項31】
前記有機半導体材料は、前記結晶性結合剤材料よりも高い融点を持つ、請求項24〜30のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項32】
前記結晶性結合剤材料は球状の微細構造を示す、請求項24〜31のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項33】
前記半導体本体における前記有機半導体材料の濃度は50重量%未満である、請求項24〜32のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項34】
前記半導体本体における前記有機半導体材料の濃度は20重量%未満である、請求項24〜32のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項35】
前記半導体本体における前記有機半導体材料の濃度は10重量%未満である、請求項24〜32のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項36】
前記半導体本体は幾何学的な面を定義し、前記有機半導体材料はラメラ構造を持ち、前記ラメラ構造は概して前記面に存在するように配向される、請求項24〜35のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項37】
前記有機半導体は、ポリ−3−ヘキシルチオフェン(P3HT)である、請求項24〜36のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項38】
前記有機半導体は、α−クウォーターチオフェン(4T)である、請求項24〜36のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項39】
前記結合剤は、イソタクチックポリスチレン(i−PS)である、請求項24〜38のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項40】
前記半結晶性ポリマーは、高密度ポリエチレン(HDPE)である、請求項24〜39のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項41】
前記デバイスはトランジスタである、請求項24〜40のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項42】
前記半導体本体と隣接の媒体との界面で濃縮される前記有機半導体材料は、前記トランジスタのソース電極から前記トランジスタのドレイン電極まで前記有機半導体材料を通って電荷輸送のための連続的な経路を構成する、請求項25に従属する請求項41に記載のデバイス。
【請求項43】
前記デバイスはダイオードである、請求項24〜41のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項44】
前記デバイスは光起電ダイオードである、請求項43に記載のデバイス。
【請求項45】
結合剤および有機半導体材料を含む半導体層であって、前記有機半導体材料はラメラ区域内に濃縮され、前記ラメラ区域は前記結合剤から分離し前記層の面に概して存在するように配向される、半導体層。
【請求項46】
有機半導体材料および半結晶性ポリマー結合剤を含むプラスチック基板。
【請求項47】
前記基板における前記有機半導体材料の濃度は50重量%未満である、請求項46に記載のプラスチック基板。
【請求項48】
前記基板における前記有機半導体材料の濃度は20重量%未満である、請求項46に記載のプラスチック基板。
【請求項49】
前記基板における前記有機半導体材料の濃度は10重量%未満である、請求項46に記載のプラスチック基板。
【請求項50】
前記有機半導体材料は半導体ポリマーである、請求項46〜49のいずれか1項に記載のプラスチック基板。
【請求項51】
前記基板はフレキシブルである、請求項46〜50のいずれか1項に記載のプラスチック基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公表番号】特表2009−543323(P2009−543323A)
【公表日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−517414(P2009−517414)
【出願日】平成19年6月29日(2007.6.29)
【国際出願番号】PCT/GB2007/002460
【国際公開番号】WO2008/001123
【国際公開日】平成20年1月3日(2008.1.3)
【出願人】(503372842)ケンブリッジ エンタープライズ リミティド (32)
【出願人】(507276519)テヒニッシェ・ウニヴェルシテート・エインドホーフェン (2)
【出願人】(506160846)
【氏名又は名称原語表記】Eidgenossische Technische Hochschule Zurich
【Fターム(参考)】