配線基板及びその製造方法
【課題】低コストで高密度な接続パッド及び接続ビアを構成できる配線基板を提供する。
【解決手段】酸化アルミニウム基板10と、酸化アルミニウム基板10の厚み方向に貫通して形成された多数の貫通導体TCと、酸化アルミニウム基板10の上に形成され、接続パッドPが配置される部分に開口部20aが設けられた絶縁層20と、絶縁層20の開口部20aに形成され、複数の貫通導体TCの一端側に接続された接続パッドPとを含み、貫通導体TCが酸化アルミニウム基板10の外面から突出するか又は沈み込むことで凹凸が設けられている。
【解決手段】酸化アルミニウム基板10と、酸化アルミニウム基板10の厚み方向に貫通して形成された多数の貫通導体TCと、酸化アルミニウム基板10の上に形成され、接続パッドPが配置される部分に開口部20aが設けられた絶縁層20と、絶縁層20の開口部20aに形成され、複数の貫通導体TCの一端側に接続された接続パッドPとを含み、貫通導体TCが酸化アルミニウム基板10の外面から突出するか又は沈み込むことで凹凸が設けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は配線基板及びその製造方法に係り、さらに詳しくは、上下面側を導通可能にする多数の貫通導体を備えた配線基板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体チップを実装するための多層配線基板がある。そのような多層配線基板では、コア基板の両面側にビルドアップ配線が形成され、一方の面に半導体チップを実装するためのチップ接続用パッドが設けられ、他方の面に外部接続用パッドが設けられている。
【0003】
特許文献1には、複数のスルーホール導体を備えたポーラスアルミナ基板の両面に、選択されたスルーホール導体を露出させる開口部を備えた絶縁層を形成した後に、その開口部内のスルーホール導体に接続される配線を形成することにより、回路基板を構成することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−147241号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
後述するように、関連技術では、配線基板の接続パッド周りの構造を得るには、層間接続用のビア導体に繋がる金属パッド層を層間絶縁層の上に形成し、金属パッド層上に開口部が設けられたソルダレジストを形成する。さらに、金属パッド層の上にめっきによりコンタクト層が形成されて接続パッドが構成される。設計によっては、金属パッド層が引き回し配線の一端に繋がって形成される。
【0006】
関連技術の配線基板では、設計ルールに応じてビア導体、金属パッド層及び引き回し配線を配置するため、ビア導体や接続パッドのレイアウトやピッチに制約を受けやすく、接続パッド及びビア接続を低コストで高密度化することは容易ではない。
【0007】
本発明は以上の課題を鑑みて創作されたものであり、低コストで高密度な接続パッド及び接続ビアを構成できる配線基板及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は配線基板に係り、酸化アルミニウム基板と、前記酸化アルミニウム基板の厚み方向に貫通して形成された多数の貫通導体と、前記酸化アルミニウム基板の少なくとも一方の面に形成され、接続パッドが配置される部分に開口部が設けられた絶縁層と、前記絶縁層の開口部に形成され、複数の前記貫通導体の一端側に接続された前記接続パッドとを有し、少なくとも前記絶縁層の開口部内において、前記貫通導体が前記酸化アルミニウム基板の外面から突出するか又は沈み込むことで凹凸が設けられていることを特徴とする。
【0009】
本発明で使用される多数の貫通導体が形成された酸化アルミニウム基板は、アルミニウム基板を陽極酸化することに基づいて多数のスルーホールを形成した後に、スルーホールに貫通導体を充填することによって得られる。
【0010】
多数の貫通導体が形成された酸化アルミニウム基板には、開口部が設けられた絶縁層が形成されており、その開口部に複数の貫通導体に接続される接続パッドが形成されている。接続パッドPに接続される複数の貫通導体が接続ビアとして機能し、接続パッドと酸化アルミニウム基板の背面側とを導通可能にする。
【0011】
このように、多数の貫通導体が予め形成された酸化アルミニウム基板の任意の位置に接続パッドを配置することにより、接続パッド及び接続ビア構造を容易に構築することができる。従って、接続パッドのレイアウトが制約されることなく、高密度な接続ビア構造を低コストで形成することができる。
【0012】
さらに、貫通導体は酸化アルミニウム基板の外面から突出するか又は沈み込んで形成されており、これによって酸化アルミニウム基板の外面に凹凸が設けられている。酸化アルミニウム基板の外面の凹凸は、接続パッドが配置される絶縁層の開口部内のみに設けてもよいし、あるいは酸化アルミニウム基板の全面に設けてもよい。
【0013】
これにより、アンカー効果によって接続パッドが密着性がよい状態で貫通導体に信頼性よく電気接続される。さらに、酸化アルミニウム基板の全体に凹凸を設ける場合は、接続パッドばかりではなく、絶縁層の密着性を向上させることができる。
【0014】
また、絶縁層及びその開口部に形成される接続パッドは、酸化アルミニウム基板の片面のみに形成してもよいし、あるいは両面側に形成してもよい。
【0015】
本発明の配線基板は、多層配線基板を構成するための、接続パッドと接続ビアを備えた配線ユニットとして使用することができる。
【0016】
本発明の一つの好適な態様では、接続パッドと反対側の貫通導体の端部にビルドアップ配線層が接続されて多層配線基板が構成される。あるいは、酸化アルミニウム基板の両面側に接続パッドを形成し、両面側の接続パッドに配線部材をそれぞれ接続して多層配線基板を構成してもよい。
【0017】
また、本発明の一つの好適な態様では、接続パッドは無電解めっきによって形成された錫又は錫合金層からなる。接続パッドを低融点の錫又は錫合金層から形成することにより、低温側(350℃程度以下)の加熱処理によって接続パッドが軟化溶融する。
【0018】
このため、比較的低温の加熱処理によって配線基板の接続パッドに半導体チップのバンプ電極や配線部材の配線層を埋め込んで接続することができる。これにより、半導体チップと配線基板との接続距離を短くできると共に、耐熱性の低い有機基板から形成される配線部材を信頼よく接続することができる。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、本発明では、低コストで高密度な接続パッド及び接続ビアを構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は本発明に関連する関連技術の多層配線基板を示す断面図である。
【図2】図2(a)〜(d)は本発明の第1実施形態の第1配線基板の製造方法を示す断面図(その1)である。
【図3】図3(a)〜(d)は本発明の第1実施形態の第1配線基板の製造方法を示す断面図(その2)である。
【図4】図4は本発明の第1実施形態の第1配線基板の製造方法を示す断面図(その3)である。
【図5】図5は本発明の第1実施形態の第1配線基板を示す断面図である。
【図6】図6(a)〜(c)は本発明の第1実施形態の第1配線基板を使用して多層配線基板を構成する例を示す断面図である。
【図7】図7(a)〜(c)は本発明の第1実施形態の第2配線基板の製造方法を示す断面図である。
【図8】図8(a)及び(b)は本発明の第1実施形態の第2配線基板を使用して多層配線基板を構成する例を示す断面図である。
【図9】図9(a)〜(c)は本発明の第2実施形態の第1配線基板の製造方法を示す断面図である。
【図10】図10は本発明の第2実施形態の第1配線基板を使用して多層配線基板を構成する例を示す断面図である。
【図11】図11(a)〜(c)は本発明の第2実施形態の第2配線基板の製造方法を示す断面図である。
【図12】図12は本発明の第2実施形態の第2配線基板を使用して多層配線基板を構成する例を示す断面図である。
【図13】図13(a)〜(c)は本発明の第3実施形態の第1配線基板の製造方法を示す断面図(その1)である。
【図14】図14(a)及び(b)は本発明の第3実施形態の第1配線基板の製造方法を示す断面図(その2)である。
【図15】図15は本発明の第3実施形態の第1配線基板を使用して多層配線基板を構成する例を示す断面図である。
【図16】図16(a)〜(c)は本発明の第3実施形態の第2配線基板の製造方法を示す断面図である。
【図17】図17は本発明の第3実施形態の第2配線基板を使用して多層配線基板を構成する例を示す断面図である。
【図18】図18(a)〜(c)は本発明の第4実施形態の第1配線基板の製造方法を示す断面図である。
【図19】図19は本発明の第4実施形態の第1配線基板を使用して多層配線基板を構成する例を示す断面図である。
【図20】図20(a)〜(c)は本発明の第4実施形態の第2配線基板を使用して多層配線基板を構成する例を示す断面図である。
【図21】図21(a)〜(d)は本発明の第5実施形態の第1配線基板を使用して多層配線基板を構成する例を示す断面図である。
【図22】図22(a)〜(c)は本発明の第5実施形態の第2配線基板を使用して多層配線基板を構成する例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について、添付の図面を参照して説明する。
【0022】
(関連技術)
本発明の実施形態を説明する前に、本発明に関連する関連技術について説明する。図1は関連技術の配線基板を示す断面図である。
【0023】
図1に示すように、関連技術の配線基板では、コア基板(不図示)の上方に第1配線層100が形成されており、第1配線層100の上に第1層間絶縁層200が形成されている。第1層間絶縁層200には第1配線層100に到達する第1ビアホールVH1が形成されている。第1層間絶縁層200の上には、第1ビアホールVH1の側壁に形成された第1ビア導体VC1を介して第1配線層100に接続される第2配線層120が形成されている。
【0024】
第2配線層120の上には第2層間絶縁層220が形成されている。第1ビアホールVH1の残りの孔が第2層間絶縁層220で埋め込まれている。
【0025】
第2層間絶縁層220には第2配線層120に到達する第2ビアホールVH2が形成されている。第2層間絶縁層220の上には、第2ビアホールVH2に充填された第2ビア導体VC2に繋がって第2配線層120(下側配線層)に接続される第3配線層140が形成されている。
【0026】
第3配線層140は金属パッド層140a,140bを含んで形成される。右側の金属パッド層140aは島状に配置されており、左側に配置された金属パッド層140bは第3配線層140に繋がってその端部に配置されている。
【0027】
また、金属パッド層140a,140bの上に開口部300aが設けられたソルダレジスト300が第2層間絶縁層220の上に形成されている。さらに、金属パッド層140a,140bの上には下から順にニッケル/金めっき層からなるコンタクト層160が形成されている。金属パッド層140a,140b及びコンタクト層160によって接続パッドPが構成される。
【0028】
そして、半導体チップ400がバンプ電極420を介して配線基板の接続パッドPにフリップチップ接続されている。半導体チップ400の下側の隙間にはアンダーフィル樹脂440が充填されている。
【0029】
関連技術の配線基板では、接続パッドP周りの構造を得るには、金属パッド層140a,140bの形成は必須であり、さらに、その上にめっきによってコンタクト層160を形成する必要がある。また、設計によっては、接続パッドPに繋がる引き回し配線(第3配線層140)を配置する必要がある。
【0030】
また、接続パッドPをその下側の第2配線層120(下側配線層)に接続する必要があるため、第2ビア導体VC2の形成が必須である。
【0031】
このように、関連技術では、既存のフォトリソグラフィ技術に基づく設計ルールに応じて、第2ビア導体VC2、金属パッド層140a,140b及び引き回し配線140を配置する必要がある。このため、接続パッドPや第2ビア導体VC2のレイアウトやピッチにおいて制約を受けやすく、接続パッド及びビア接続を低コストで高密度化して形成することは容易ではない。
【0032】
(第1の実施の形態)
図2〜図6は本発明の第1実施形態の第1配線基板の製造方法及びそれを使用して構成される多層配線基板を示す断面図、図7及び図8は同じく第2配線基板の製造方法及びそれを使用して構成される多層配線基板を示す断面図である。
【0033】
第1実施形態の第1配線基板の製造方法では、図2(a)に示すように、まず、アルミニウム(Al)基板10aを用意する。次いで、図2(b)に示すように、シュウ酸溶液などを処理浴として用いて、アルミニウム基板10aを陽極として電気分解することにより、アルミニウム基板10aを電気化学的に酸化させて酸化アルミニウム基板10を得る。
【0034】
このとき、酸化アルミニウム基板10の表面から厚み方向に向かって多数の微細なホールHが同時に形成される。また、酸化アルミニウム基板10の下側には陽極酸化されていない薄膜のアルミニウム部10bが残された状態となる。
【0035】
続いて、図2(c)に示すように、酸化アルミニウム基板10の下側に残されたアルミニウム部10bをエッチングにより除去する。これにより、上面から下面まで貫通する多数のスルーホールTHが横方向に並んで設けられた酸化アルミニウム基板10が得られる。
【0036】
図2(c)の部分平面図に示すように、多数のスルーホールTHは酸化アルミニウム基板10を介して相互に分離された状態で基板方向に並んで配置される。
【0037】
好適な例としては、酸化アルミニウム基板10の厚みは70〜120μm程度に設定され、スルーホールTHの径は60〜200nmに設定され、スルーホールTHのピッチは100〜300nmに設定される。
【0038】
なお、図2(b)の陽極酸化工程において、アルミニウム基板10bの下面に保護金属層(不図示)を形成した状態で、アルミニウム基板10aを陽極酸化してもよい。この場合、アルミニウム基板10aの下面により近い部分まで陽極酸化することができる。そして、保護金属層及びアルミニウム部10bがエッチングにより除去される。
【0039】
次いで、図2(d)に示すように、多数のスルーホールTHが設けられた酸化アルミニウム基板10の下面にめっき給電層12を形成する。めっき給電層12の一例としては、下から順に、チタン(Ti)層/銅(Cu)層がスパッタ法などで形成される。
【0040】
さらに、図3(a)に示すように、めっき給電層12をめっき給電経路に利用する電解めっきによって、酸化アルミニウム基板10のスルーホールTH内に底部から上部にかけて銅めっきを施すことにより貫通導体TCを充填する。
【0041】
その後に、図3(b)に示すように、めっき給電層12が酸化アルミニウム基板10から除去される。これにより、厚み方向に貫通して形成された多数のスルーホールTHに貫通導体TC(線状導体)がそれぞれ充填された酸化アルミニウム基板10が得られる。図3(c)の部分平面図に示すように、多数の貫通導体TCは酸化アルミニウム基板10で相互に絶縁された状態で基板方向に並んで配置される。
【0042】
次いで、図3(c)に示すように、酸化アルミニウム基板10の下面をマスク(不図示)で保護した状態で、酸化アルミニウム基板10の上端側を貫通導体TCに対して選択的にエッチングする。酸化アルミニウム基板10のエッチャントとして、KOH又はNaOHなどのアルカリ液を使用することにより、酸化アルミニウム基板10を貫通導体TC(銅)に対して選択的にエッチングすることができる。
【0043】
これにより、貫通導体TCの上端側が酸化アルミニウム基板10の上面から上側に突出する突出部Txとなる。例えば、酸化アルミニウム基板10の厚みが100μm程度の場合は、貫通導体TCの突出部Txの高さは1〜5μmに設定される。多数の貫通導体TCの突出部Txによって酸化アルミニウム基板10の上面に凹凸が設けられる。
【0044】
次いで、図3(d)に示すように、酸化アルミニウム基板10の上面に、接続パッドが配置される部分に開口部20aが設けられた保護絶縁層20を形成する。保護絶縁層20の形成方法としては、感光性の液状又はフィルム状の樹脂を形成した後に、フォトリソグラフィによって露光・現像を行うことにより、樹脂に開口部を形成する方法がある。
【0045】
あるいは、プレス加工などで予め開口部が設けられた半硬化状態の樹脂フィルムを熱圧着してもよい。保護絶縁層20として、好適にはソルダレジストが使用される。
【0046】
このように、第1実施形態では、保護絶縁層20を形成する前に貫通導体TCの突出部Txが形成されて凹凸が設けられる。
【0047】
続いて、図4に示すように、図3(d)の酸化アルミニウム基板10を錫めっき用の置換めっき液(無電解めっき液)に浸漬させる。これにより、保護絶縁層20の開口部20a内に配置された貫通導体TCの突出部Txの露出面に置換めっきによって第1錫層30(置換めっき層)が形成される。
【0048】
つまり、置換めっき液内での銅と錫の置換反応によって、貫通導体TCの突出部Txの表層(銅)が錫に置換され、突出部Txの内部には銅が残された状態となる。
【0049】
次いで、図5に示すように、図4の酸化アルミニウム基板10を錫形成用の還元めっき液(無電解めっき液)に浸漬させる。これにより、保護絶縁層20の開口部20a内に、還元めっきによって第1錫層30に接続される第2錫層32(還元めっき層)が形成される。
【0050】
還元めっきでは、還元めっき液中の還元剤が触媒の存在下で酸化されて電子を放出し、その電子が還元めっき液中の錫イオンを還元することにより錫が析出する。
【0051】
このようにして、保護絶縁層20の開口部20aに、酸化アルミニウム基板10に設けられた貫通導体TCの突出部Txに電気接続される第1錫層30及び第2錫層32が形成されて接続パッドPが構成される。
【0052】
接続パッドPは、錫層の他に各種の錫合金層から形成してもよい。他の実施形態においても同様である。
【0053】
以上により、第1実施形態の第1配線基板1が得られる。
【0054】
図5に示すように、第1実施形態の配線基板1では、酸化アルミニウム基板10にその厚み方向に貫通する多数の貫通導体TCが横方向に並んで設けられている。全ての貫通導体TCの上端側は、酸化アルミニウム基板10の上面から上側に突き出る突出部Txとなっている。
【0055】
酸化アルミニウム基板10の上面には、所要部に開口部20aが設けられた保護絶縁層20が形成されている。保護絶縁層20の開口部20aには、貫通導体TCの突出部Txに電気接続される接続パッドPが形成されている。このようにして、接続パッドPの中で貫通導体TCが上側に突出している。
【0056】
接続パッドPは、貫通導体TCの突出部Tx(銅)の表層部に形成された第1錫層30と、第1錫層30に接続されて保護絶縁層20の開口部20aに形成された第2錫層32によって構成される。接続パッドPを構成する第1錫層30は置換めっきで形成され、第2錫層32は還元めっきで形成される。接続パッドPは錫合金層から形成されてもよい。
【0057】
接続パッドPの第1、第2錫層30,32がそのままコンタクト層として機能するため、ニッケル/金めっき層などのコンタクト層を別途形成する必要はない。
【0058】
接続パッドPは低融点(融点:232℃)の錫又は錫合金から形成されるため、後述するように、350℃程度以下の低温側の温度で第1配線基板1の接続パッドPに半導体チップ又は配線部材を接続することが可能になる。
【0059】
接続パッドPに接続される複数の貫通導体TCが接続ビアとして機能し、接続パッドPと酸化アルミニウム基板10の背面側とを導通可能にする。接続パッドPに接続されていない複数の貫通導体TCは、酸化アルミニウム基板10(絶縁体)で相互に電気絶縁されており、上下側の導通には関与しないようになっている。
【0060】
このように、多数の貫通導体TCを備えた酸化アルミニウム基板10の任意の位置に保護絶縁層20の開口部20aを配置した後に、その開口部20a内に無電解めっきによって第1、第2錫層30,32を形成することにより接続パッドPを容易に形成することができる。
【0061】
しかも、酸化アルミニウム基板10の全体に予め多数の貫通導体TCが設けられているため、任意の位置の貫通導体TCに接続パッドPを接続することにより、接続パッドPに接続される複数の貫通導体TCを接続ビアとして機能させることができる。
【0062】
従って、関連技術と違って、設計ルールに応じてビア導体や金属パッド層(銅)を配置したり、その後にコンタクト層(ニッケル/金めっき層)を形成したりする必要がなくなる。
【0063】
このように、本実施形態の配線基板1では、多数の貫通導体TCを備えた酸化アルミニウム基板10の任意の位置に接続パッドPを配置することにより、接続ビア構造を容易に構築できる。従って、接続パッドPや接続ビア(貫通導体TC)のレイアウトが制約されることなく、高密度な接続ビア構造を低コストで形成することができる。
【0064】
また、接続パッドPのピッチは、保護絶縁層20の開口部20aの配置で決定できるので、フォトリソグラフィ技術に基づいて狭ピッチ化を容易に図ることできる。
【0065】
さらには、多数の貫通導体TCの上端側を酸化アルミニウム基板10の上面から突出する突出部Txとすることにより、酸化アルミニウム基板10の上面に凹凸が設けられている。このため、アンカー効果によって接続パッドPが貫通導体TCに密着性がよい状態で形成され、電気接続の信頼性を向上させることができる。また、保護絶縁層20においても、酸化アルミニウム基板10の凹凸の上にアンカー効果によって密着性がよい状態で形成される。
【0066】
さらに、貫通導体TCの上端側が突出部Txとなっていることから、接続パッドPと貫通導体TCとの接触面積を大きくすることができるので、接続パッドPを信頼性よく貫通導体TCに電気接続することができる。
【0067】
次に、図5の第1配線基板1を配線ユニットとして使用して多層配線基板を構成する例について説明する。図6(a)に示すように、図5の配線基板1の下面にエポキシ樹脂やポリイミド樹脂などの第1層間絶縁層40を形成し、第1層間絶縁層40をレーザなどで加工することにより、接続パッドPに対応する部分に第1ビアホールVH1を形成する。さらに、第1ビアホールVH1を介して貫通導体TCの下端に接続される第1配線層50を形成する。第1配線層50は例えばセミアディティブ法によって形成される。
【0068】
詳しく説明すると、第1層間絶縁層40の下面及び第1ビアホールVH1内に、銅などのシード層(不図示)を形成する。次いで、第1配線層50が配置される部分に開口部が設けられためっきレジスト(不図示)をシード層の上に形成する。続いて、シード層をめっき給電経路に利用する電解めっきにより、めっきレジストの開口部に銅などの金属めっき層(不図示)を形成する。
【0069】
さらに、めっきレジストを除去した後に、金属めっき層をマスクにしてシード層をエッチングすることにより第1配線層50を得る。
【0070】
続いて、同様な方法により、第1配線層50の上に第2ビアホールVH2が設けられた第2層間絶縁層42を形成する。次いで、同様な方法により、第2ビアホールVH2を介して第1配線層50に接続される第2配線層52を第2層間絶縁層42の上に形成する。
【0071】
その後に、第2配線層52の接続部上に開口部44aが設けられたソルダレジスト44を形成する。
【0072】
さらに、第2配線層52の接続部にニッケル/金めっき層などのコンタクト層(不図示)を形成する。
【0073】
このようにして、一端側が接続パッドPに接続された複数の貫通導体TCの他端側に2層のビルドアップ配線層BWが接続されて形成される。
【0074】
以上により、第1実施形態の第1配線基板1の下面側にビルドアップ配線層BWが形成されて多層配線基板6が構成される。図6(a)では、2層のビルドアップ配線層BWを例示するが、ビルドアップ配線層はn層(1以上の整数)で任意に形成することができる(単層又は積層)。
【0075】
なお、前述した図3(c)の工程(貫通導体TCの突出部Txを得る工程)の後に、酸化アルミニウム基板10の下面側にビルドアップ配線層BWを形成してもよい。この場合は、ビルドアップ配線層BWを形成した後に、酸化アルミニウム基板10の上面側に開口部20aが設けられた保護絶縁層20と接続パッドPが形成される。
【0076】
ビルドアップ配線層BWを形成する工程は、この他にも実施可能な範囲で、接続パッドPを形成する工程の前又は後の所要の段階で行うことができる。
【0077】
図6(a)の多層配線基板6では、上面側の接続パッドPが半導体チップに接続されるチップ接続部となり、下面側の第2配線層52の接続部が実装基板(マザーボードなど)に接続される外部接続部となる。
【0078】
次に、図6(a)の多層配線基板6に半導体チップを実装する方法について説明する。
図6(b)に示すように、銅などからなるバンプ電極62を備えた半導体チップ60(LSIチップ)を用意する。さらに、多層配線基板6の保護絶縁層20の上にアンダーフィル樹脂材64aを塗布する。
【0079】
そして、図6(c)に示すように、260〜300℃の温度で加熱処理した状態で、半導体チップ60のバンプ電極62を多層配線基板6の接続パッドPに押し込む。このとき、接続パッドPは低融点の錫又は錫合金から形成されるため、加熱処理によって軟化溶融し、半導体チップ60のバンプ電極62が多層配線基板6の接続パッドPに埋め込まれる。
【0080】
これと同時に半導体チップ60の下面と多層配線基板6の保護絶縁層20との間にアンダーフィル樹脂64が形成されてそれらが接着される。
【0081】
このようにして、半導体チップ60のバンプ電極62が多層配線基板6の接続パッドPに埋め込まれて電気接続される。
【0082】
半導体チップ60のバンプ電極62は多層配線基板6の接続パッドPに埋め込まれるため、半導体チップ60と配線基板2との接続距離を短くすることができ、高速動作を必要とする高性能な半導体チップ60の性能を十分に引き出すことができる。
【0083】
前述したように、第1実施形態の第1配線基板1では、多数の貫通導体TCを備えた酸化アルミニウム基板10上の任意の位置に接続パッドPを配置することにより、層間接続を行う接続ビア構造を容易に構築することができる。
【0084】
また、接続パッドPは、保護絶縁層20の開口部20a内に無電解めっきで形成されるので、多数の貫通導体TCを備えた酸化アルミニウム基板10上の任意の位置にレイアウトが制約されることなく狭ピッチで形成することができる。
【0085】
このように、第1実施形態の第1配線基板1は配線ユニットとして機能し、多層配線基板の接続パッドとその下の接続ビアの構造に適用される。第1実施形態の第1配線基板1を使用することにより、高性能な半導体チップ用の多層配線基板を低コストで構成できると共に、多層配線基板の設計の自由度を広くすることができる。
【0086】
次に、第1実施形態の第2配線基板について説明する。第2配線基板は多数の貫通導体TCを備えた酸化アルミニウム基板10の両面側に接続パッドがそれぞれ配置される。
【0087】
第1実施形態の第2配線基板の製造方法では、図7(a)に示すように、前述した図3(c)の工程(貫通導体TCの突出部Txを得る工程)において、酸化アルミニウム基板10の両面側を貫通導体TCに対して選択的にエッチングする。これにより、酸化アルミニウム基板10の両面側において貫通導体TCの突出部Txがそれぞれ得られる。
【0088】
次いで、図7(b)に示すように、酸化アルミニウム基板10の両面側に、接続パッドが配置される部分に開口部20aが設けられた保護絶縁層20をそれぞれ形成する。両面側の保護絶縁層20の各開口部20aは、酸化アルミニウム基板10を挟んで相互に対向する位置に配置される。図7(b)では、保護絶縁層20は、後に接着剤として機能させるため半硬化樹脂から形成される。
【0089】
次いで、図7(c)に示すように、前述した図4及び図5と同様な無電解めっきにより、両面側の保護絶縁層20の開口部20a内に、貫通導体TCの突出部Txに接続される接続パッドPをそれぞれ形成する。
【0090】
接続パッドPは、貫通導体TCの突出部Txの表層部に形成される第1錫層30(置換めっき層)と、保護絶縁層20の開口部20aに配置される第2錫層32(還元めっき層)とから構成される(図5と同一構造)。
【0091】
これにより、第1実施形態の第2配線基板1aが得られる。
【0092】
次いで、図8(a)に示すように、第1配線部材W1及び第2配線部材W2を用意する。第1配線部材W1では、絶縁層70の両面側に銅などの配線層80がそれぞれ形成されており、両面側の配線層80は絶縁層70を貫通して設けられたビア導体82を介して相互接続されている。
【0093】
そして、第1配線部材W1の下面側の配線層80には第2配線基板1aの上面側の接続パッドPに接続される接続部80aが画定されている。
【0094】
また、第2配線部材W2においても同様に、絶縁層70の両面側に配線層80が形成されており、両面側の配線層80は絶縁層70を貫通して設けられたビア導体82を介して相互接続されている。
【0095】
そして、第2配線部材W2の上面側の配線層80には第2配線基板1aの下面側の接続パッドPに接続される接続部80aが画定されている。
【0096】
第1配線部材W1及び第2配線部材W2の配線層80の各接続部80aには、酸化防止剤又はニッケル/金めっき層などのコンタクト層が形成されている。
【0097】
第1配線部材W1及び第2配線部材W2としては、n層(nは1以上の整数)の任意の配線層を備えていればよく、コア基板をもたないコアレス基板又はコア基板を有するリジッド基板などの各種の配線部材を使用することができる。
【0098】
そして、図8(a)及び(b)に示すように、第1配線部材W1の下面側の配線層80の接続部80aを第2配線基板1aの上面側の接続パッドPに配置する。さらに、第2配線部材W2の上面側の配線層80の接続部80aを第2配線基板1aの下面側の接続パッドPに配置する。
【0099】
さらに、260〜300℃の温度で熱圧着することにより、第1配線部材W1の下面側の配線層80を第2配線基板1aの上面側の接続パッドPに埋め込むと同時に、第2配線部材W2の上面側の配線層80を第2配線基板1aの下面側の接続パッドPに埋め込む。
【0100】
前述したように、接続パッドPは低融点の錫又は錫合金から形成されるので、加熱処理によって接続パッドPが軟化溶融し、第1配線部材W1及び第2配線部材W2の各配線層80の接続部80aが第2配線基板1aの両面側の接続パッドPにそれぞれ埋め込まれる。
【0101】
このとき同時に、第2配線基板1aの両面側の半硬化状態の保護絶縁層20は流動・硬化する際に接着剤として機能する。これにより、第1配線部材W1及び第2配線部材W2は、それら各配線層80の接続部80a以外の部分が保護絶縁層20にそれぞれ埋め込まれた状態で、第2配線基板1aの両面側にそれぞれ接着される。
【0102】
このようにして、第1配線部材W1の配線層80は、第2配線基板1aの上側の接続パッドP、それに接続される複数の貫通導体TC及びそれに接続される下側の接続パッドPを介して第2配線部材W2の配線層80に電気接続される。
【0103】
これにより、第1配線部材W1、第2配線基板1a及び第2配線部材W2によって多層配線基板6aが構成される。
【0104】
第1実施形態の多層配線基板6aでは、第2配線基板1aの接続パッドPが低融点の錫又は錫合金から形成されるため、第1配線部材W1及び第2配線部材W2を低温側(350℃程度以下(260〜300℃))の温度で第2配線基板1aに接続することができる。従って、特に、第1配線部材W1及び第2配線部材W2として耐熱温度が350℃程度の有機基板を使用する際に、信頼性よく接続することができる。
【0105】
また、好適には、第1配線部材W1は、半導体チップが実装されることから比較的狭いピッチの高密度な配線層80を備えて構成される。また、第2配線部材W2は実装基板(マザーボード)に接続されることから、第2配線部材W2の配線層80は第1配線部材W1の配線層80より広いピッチの低密度のパターンで形成される。
【0106】
一つの多層配線基板内で高密度な配線層と低密度な配線層を備える場合、それらの配線層を同一基板上に作り込んでいくと、製造歩留りが低下しやすいと共に、製造効率が悪くなり、コスト上昇を招きやすい。
【0107】
本実施形態は、高密度の配線層80を備える第1配線部材W1と、それより低密度な配線層80を備える第2配線部材W2を別々の製造ラインで作成し、それらを第2配線基板1aによって相互接続している。このため、多層配線基板の製造歩留り及び製造効率を向上させることができ、低コスト化を図ることができる。
【0108】
しかも、前述したように、第1実施形態の第2配線基板1aは、酸化アルミニウム基板10の任意の位置に接続パッドPとそれに接続される貫通導体TC(接続ビア)を狭ピッチで容易に構築することができる。従って、各種の配線部材の接続手段として幅広く使用することができ、多層配線基板の設計の自由度を広くすることができる。
【0109】
(第2の実施の形態)
図9及び図10は本発明の第2実施形態の第1配線基板の製造方法及びそれを使用して構成される多層配線基板を示す断面図、図11及び図12は同じく第2配線基板の製造方法及びそれを使用して構成される多層配線基板を示す断面図である。
【0110】
第2実施形態の特徴は、前述した第1実施形態において、貫通導体TCの突出部Txを接続パッドが配置される領域のみに設けることにある。
【0111】
第2実施形態では、第1実施形態と同一要素及び同一工程については同一符号を付してその詳しい説明を省略する。
【0112】
図9(a)に示すように、第1実施形態の図3(b)の工程で得られる多数の貫通導体TCを備えた酸化アルミニウム基板10を用意する。そして、酸化アルミニウム基板10の上面に、接続パッドが配置される部分に開口部20aが設けられた保護絶縁層20を形成する。
【0113】
次いで、図9(b)に示すように、第1実施形態と同様な方法により、保護絶縁層20の開口部20aを通して酸化アルミニウム基板10の上端側を貫通導体TCに対して選択的にエッチングする。これにより、保護絶縁層20の開口部20a内のみに貫通導体TCの突出部Txが設けられる。
【0114】
このように、第2実施形態では、保護絶縁層20を形成した後に、貫通導体TCの突出部Txが形成されて凹凸が設けられる。
【0115】
その後に、図9(c)に示すように、第1実施形態と同様な無電解めっきにより、保護絶縁層20の開口部20aに、貫通導体TCの突出部Txに接続される接続パッドPを形成する。第1実施形態と同様に、接続パッドPは置換めっきで形成された第1錫層30と還元めっきで形成された第2錫層32から構成される(図5と同一構造)。
【0116】
これにより、第2実施形態の第1配線基板2が得られる。
【0117】
図9(c)に示すように、第2実施形態の第1配線基板2では、保護絶縁層20の開口部20a内の貫通導体TCのみが酸化アルミニウム基板10の上面から突き出る突出部Txを備えており、他の領域の貫通導体TCの上端面は酸化アルミニウム基板10の上面と同一高さに配置されて同一面を構成している。他の要素は第1実施形態の配線基板1と同一である。
【0118】
そして、図10に示すように、第1実施形態と同様に、配線基板2の下面側にビルドアップ配線層BWが形成されて、多層配線基板6が構成される。さらに、第1実施形態と同様に、半導体チップ60のバンプ電極62が多層配線基板6の接続パッドP(錫又は錫合金)に埋め込まれて接続される。
【0119】
次に、第2実施形態の第2配線基板について説明する。第2配線基板は、第1実施形態の第2配線基板1aと同様に、酸化アルミニウム基板10の両面側に接続パッドがそれぞれ配置される。
【0120】
第2実施形態の第2配線基板の製造方法では、図11(a)に示すように、前述した図9(a)の工程(保護絶縁層20の形成工程)において、酸化アルミニウム基板10の両面側に、接続パッドが配置される部分に開口部20aが設けられた保護絶縁層20をそれぞれ形成する。
【0121】
次いで、図11(b)に示すように、酸化アルミニウム基板10の両面側において、保護絶縁層20の開口部20aを通して、酸化アルミニウム基板10を貫通導体TCに対して選択的にエッチングする。
【0122】
さらに、図11(c)に示すように、第1実施形態と同様な無電解めっきにより、両面側の保護絶縁層20の開口部20aに、貫通導体TCの突出部Txに接続される錫又錫合金からなる接続パッドPをそれぞれ形成する。
【0123】
これにより、第2実施形態の第2配線基板2aが得られる。
【0124】
そして、図12に示すように、第1実施形態と同様な方法により、第2配線基板2aの上面側に第1配線部材W1を接着すると同時に、配線基板2aの下面側に第2配線部材W2を接着する。
【0125】
第1配線部材W1の下面側の配線層80の接続部80aが第2配線基板2aの上側の接続パッドPに埋め込まれて接続されると共に、第2配線部材W2の上面側の配線層80の接続部80aが第2配線基板2aの下側の接続パッドPに埋め込まれて接続される。
【0126】
これにより、第1配線部材W1、第2配線基板2a及び第2配線部材W2によって多層配線基板6aが構成される。
【0127】
第2実施形態の第1、第2配線基板2,2a及び多層配線基板6,6aは第1実施形態と同様な効果を奏する。第2実施形態では、保護絶縁層20の下の貫通導体TCに突出部Txが設けられていないので、保護絶縁層20の密着性に関しては第1実施形態より不利になる。
【0128】
(第3の実施の形態)
図13〜図15は本発明の第3実施形態の第1配線基板の製造方法及びそれを使用して構成される多層配線基板を示す断面図、図16及び図17は同じく第2配線基板の製造方法及びそれを使用して構成される多層配線基板を示す断面図である。
【0129】
第3実施形態が第1実施形態と異なる点は、第1実施形態と逆に、貫通導体の上端側を酸化アルミニウム基板に対して選択的にエッチングすることにより、貫通導体を酸化アルミニウム基板の上面から沈み込ませて凹凸を設けることにある。
【0130】
第3実施形態では、第1実施形態と同一要素及び同一工程については同一符号を付してその詳しい説明を省略する。
【0131】
図13(a)に示すように、まず、第1実施形態の図3(b)の工程で得られる多数の貫通導体TCを備えた酸化アルミニウム基板10を用意する。さらに、図13(b)に示すように、酸化アルミニウム基板10の下面をマスク(不図示)で保護した状態で、貫通導体TC(銅)を酸化アルミニウム基板10に対して選択的にエッチングする。
【0132】
貫通導体TC(銅)のエッチャントとして硫酸などを使用することにより、貫通導体TC(銅)を酸化アルミニウム基板10に対して選択的にエッチングすることができる。酸化アルミニウム基板10の上面からの貫通導体TCの沈み込みの深さは、酸化アルミニウム基板10の厚みが100μm程度の場合、0.1〜0.5μm程度に設定される。
【0133】
貫通導体TCの上端側が酸化アルミニウム基板10の上面から沈み込んで配置されることにより、酸化アルミニウム基板10の上面側に多数の凹部10xが構成される。これにより、酸化アルミニウム基板10の上面に凹凸が設けられた状態となる。
【0134】
次いで、図13(c)に示すように、酸化アルミニウム基板10の上面に、接続パッドが配置される部分に開口部20aが設けられた保護絶縁層20を形成する。
【0135】
このように、第3実施形態では、保護絶縁層20を形成する前に貫通導体TCを沈み込ませて凹凸が設けられる。
【0136】
次いで、図14(a)に示すように、第1実施形態と同様な置換めっきにより、酸化アルミニウム基板10の上面に構成された凹部10xの底面の貫通導体TCに第1錫層30を形成する。さらに、図14(b)に示すように、第1実施形態と同様な還元めっきにより、保護絶縁層20の開口部20aに第1錫層30に接続される第2錫層32を形成する。
【0137】
これより、第1錫層30及び第2錫層32によって、貫通導体TCに接続される接続パッドPが構成される。
【0138】
以上により、第3実施形態の第1配線基板3が得られる。
【0139】
図14(b)に示すように、第3実施形態の第1配線基板3では、酸化アルミニウム基板10にその厚み方向に貫通する多数の貫通導体TCが横方向に並んで設けられている。全ての貫通導体TCの上端側が酸化アルミニウム基板10の上面から下側に沈み込んで多数の凹部10xが構成されている。これによって、酸化アルミニウム基板10の上面に凹凸が設けられている。
【0140】
酸化アルミニウム基板10の上面には、所要部に開口部20aが設けられた保護絶縁層20が形成されている。保護絶縁層20の開口部20aには、凹部10xの底部の貫通導体TCの上端面に電気接続される接続パッドPが形成されている。接続パッドPは、貫通導体TCの上端面に置換めっきで形成された第1錫層30とそれに接続されて還元めっきで形成された第2錫層32とから構成される。
【0141】
このようにして、接続パッドPの中で酸化アルミニウム基板10が上側に突出している。他の要素は第1実施形態の第1配線基板1と同一である。
【0142】
そして、図15に示すように、第1実施形態と同様に、第1配線基板3の下面側にビルドアップ配線層BWが形成されて、多層配線基板6が構成される。さらに、第1実施形態と同様に、半導体チップ60のバンプ電極62が多層配線基板6の接続パッドP(錫又は錫合金)に埋め込まれて接続される。
【0143】
次に、第3実施形態の第2配線基板について説明する。第2配線基板は、第1実施形態の第2配線基板1aと同様に、酸化アルミニウム基板10の両面側に接続パッドがそれぞれ配置される。
【0144】
図16(a)に示すように、第1実施形態の図3(b)の工程で得られる多数の貫通導体TCを備えた酸化アルミニウム基板10を用意する。さらに、酸化アルミニウム基板10の両面側において、貫通導体TCを酸化アルミニウム基板10に対して選択的にエッチングすることにより、貫通導体TCの両端側を酸化アルミニウム基板10の上下面からそれぞれ沈み込ませて凹部10xをそれぞれ得る。
【0145】
次いで、図16(b)に示すように、酸化アルミニウム基板10の両面側に、接続パッドが配置される部分に開口部20aが設けられた保護絶縁層20をそれぞれ形成する。
【0146】
次いで、図16(c)に示すように、第1実施形態と同様な無電解めっきにより、酸化アルミニウム基板10の両面側の保護絶縁層20の開口部20aに、貫通導体TCの両端面に接続される錫又は錫合金からなる接続パッドPをそれぞれ形成する。これにより、第3実施形態の第2配線基板3aが得られる。
【0147】
そして、図17に示すように、第1実施形態と同様な方法により、第2配線基板3aの上面側に第1配線部材W1を接着すると同時に、第2配線基板3aの下面側に第2配線部材W2を接着する。第1配線部材W1の下面側の配線層80の接続部80aが第2配線基板3aの上側の接続パッドPに埋め込まれて接続されると共に、第2配線部材W2の上面側の配線層80の接続部80aが第2配線基板3aの下側の接続パッドPに埋め込まれて接続される。
【0148】
これにより、第1配線部材W1、第2配線基板3a及び第2配線部材W2によって多層配線基板6aが構成される。
【0149】
第3実施形態の第1、第2配線基板3,3a及び多層配線基板6,6aは第1実施形態と同様な効果を奏する。
【0150】
第3実施形態では、貫通導体TCを酸化アルミニウム基板10の上面(又は両面)から沈み込ませることによって凹凸を設けている。このため、アンカー効果によって接続パッドPが貫通導体TCに密着性がよい状態で形成され、電気接続の信頼性を向上させることができる。また、保護絶縁層20においても、その下地の酸化アルミニウム基板10に凹凸が設けられているので、密着性がよい状態で形成される。
【0151】
(第4の実施の形態)
図18及び図19は本発明の第4実施形態の第1配線基板の製造方法及びそれを使用して構成される多層配線基板を示す断面図、図20は同じく第2配線基板の製造方法及びそれを使用して構成される多層配線基板を示す断面図である。
【0152】
第4実施形態の特徴は、前述した第3実施形態において、接続パッドが配置される領域のみにおいて貫通導体を酸化アルミニウム基板から沈み込ませることにある。
【0153】
第4実施形態では、第1、3実施形態と同一要素及び同一工程については同一符号を付してその詳しい説明を省略する。
【0154】
図18(a)に示すように、第1実施形態の図3(b)の工程で得られる多数の貫通導体TCを備えた酸化アルミニウム基板10を用意する。そして、酸化アルミニウム基板10の上面に、接続パッドが配置される部分に開口部20aが設けられた保護絶縁層20を形成する。
【0155】
次いで、図18(b)に示すように、第3実施形態と同様な方法により、保護絶縁層20の開口部20aを通して貫通導体TCの上端側を酸化アルミニウム基板10に対して選択的にエッチングする。これにより、酸化アルミニウム基板10の上面に凹部10xが構成される。
【0156】
このように、第4実施形態では、保護絶縁層20を形成した後に貫通導体TCを沈み込ませて凹凸が設けられる。
【0157】
その後に、図18(c)に示すように、第1実施形態と同様な無電解めっきにより、貫通導体TCの上端面に接続される接続パッドPを形成する。第3実施形態と同様に、接続パッドPは、置換めっきで形成された第1錫層30と還元めっきで形成された第2錫層32とから構成される(図14(b)と同一構造)。
【0158】
これより、第4実施形態の第1配線基板4が得られる。
【0159】
図18(c)に示すように、第4実施形態の第1配線基板4では、保護絶縁層20の開口部20a内の貫通導体TCのみが酸化アルミニウム基板10の上面から沈み込んで凹部10xが構成されており、他の領域の貫通導体TCの上端は酸化アルミニウム基板10の上面と同一高さに配置されて同一面を構成している。他の要素は第1、第3実施形態の第1配基板1,3と同一である。
【0160】
そして、図19に示すように、第1実施形態と同様に、第1配線基板4の下面側にビルドアップ配線BWが形成されて、多層配線基板6が構成される。さらに、第1実施形態と同様に、半導体チップ60のバンプ電極62が多層配線基板6の接続パッドP(錫又錫合金)に埋め込まれて接続される。
【0161】
次に、第4実施形態の第2配線基板について説明する。第2配線基板は、第1実施形態の第2配線基板1aと同様に、酸化アルミニウム基板10の両面側に接続パッドがそれぞれ配置される。
【0162】
図20(a)に示すように、前述した図18(b)の工程(保護絶縁層20をマスクにして貫通導体TCをエッチングする工程)を酸化アルミニウム基板10の両面において遂行する。これにより、酸化アルミニウム基板10の両面側において、保護絶縁層20の開口部20a内の貫通導体TCのみが酸化アルミニウム基板10の両面から沈み込んで凹部10xが構成される。
【0163】
さらに、図20(b)に示すように、第1実施形態と同様な無電解めっきにより、貫通導体TCの両端面に接続される錫又は錫合金からなる接続パッドPをそれぞれ形成する。
【0164】
これにより、第4実施形態の第2配線基板4aが得られる
そして、図20(c)に示すように、第1実施形態と同様な方法により、第2配線基板4aの上面側に第1配線部材W1を接着すると同時に、配線基板1cの下面側に第2配線部材W2を接着する。
【0165】
第1配線部材W1の下面側の配線層80の接続部80aが第2配線基板4aの上側の接続パッドPに埋め込まれて接続されると共に、第2配線部材W2の上面側の配線層80の接続部80aが第2配線基板4aの下側の接続パッドPに埋め込まれて接続される。
【0166】
これにより、第1配線部材W1、第2配線基板4a及び第2配線部材W2によって多層配線基板6aが構成される。
【0167】
第4実施形態の第1、第2配線基板4,4a及び多層配線基板6,6aは第1実施形態と同様な効果を奏する。第4実施形態では、保護絶縁層20の下の酸化アルミニウム基板10には凹凸が設けられていないので、保護絶縁層20の密着性に関しては第3実施形態より不利になる。
【0168】
(第5の実施の形態)
図21は本発明の第5実施形態の第1配線基板の製造方法及びそれを使用して構成される多層配線基板を示す断面図、図22は同じく第2配線基板の製造方法及びそれを使用して構成される多層配線基板を示す断面図である。
【0169】
第5実施形態が第1〜第4実施形態と異なる点は、貫通導体を酸化アルミニウム基板かの外面から突出させたり沈み込ませたりせずに、貫通導体の端面を酸化アルミニウム基板の面と同一高さに配置することにある。
【0170】
第5実施形態では、第1実施形態と同一要素及び同一工程については同一符号を付してその詳しい説明を省略する。
【0171】
図21(a)に示すように、第1実施形態の図3(b)の工程で得られる多数の貫通導体TCを備えた酸化アルミニウム基板10を用意する。第5実施形態では、酸化アルミニウム基板10又は貫通導体TCをエッチングする工程が省略され、全体にわたって貫通導体TCの端面が酸化アルミニウム基板10の外面と同一の高さに設定される。
【0172】
次いで、図21(b)に示すように、第1実施形態と同様な方法により、酸化アルミニウム基板10の上面に、接続パッドが配置される部分に開口部20aが設けられた保護絶縁層20を形成する。
【0173】
その後に、図21(c)に示すように、第1実施形態と同様な無電解めっきにより、保護絶縁層20の開口部20aに接続パッドPを形成する。第1実施形態と同様に、接続パッドPは置換めっきで貫通導体TCの上端面に形成された第1錫層30と還元めっきで形成された第2錫層32から構成される。
【0174】
これにより、第5実施形態の第1配線基板5が得られる。
【0175】
図21(c)に示すように、第5実施形態の第1配線基板5では、酸化アルミニウム基板10の全体にわたって、貫通導体TCの両端面と酸化アルミニウム基板10の両外面とが同一高さになって同一面を構成している。他の要素は第1実施形態の第1配線基板1と同一である。
【0176】
そして、図21(d)に示すように、第1実施形態と同様に、第1配線基板5の下面側にビルドアップ配線層BWが形成されて、多層配線基板6が構成される。さらに、第1実施形態と同様に、半導体チップ60のバンプ電極62が多層配線基板6の接続パッドP(錫又は錫合金)に埋め込まれて接続される。
【0177】
次に、第5実施形態の第2配線基板について説明する。第2配線基板は、第1実施形態の第2配線基板1aと同様に、酸化アルミニウム基板10の両面側に接続パッドがそれぞれ配置される。
【0178】
図22(a)に示すように、上記した図21(b)の工程(保護絶縁層20の形成工程)において、酸化アルミニウム基板10の両面側に、接続パッドが配置される部分に開口部20aが設けられた保護絶縁層20をそれぞれ形成する。
【0179】
次いで、図22(b)に示すように、第1実施形態と同様な無電解めっきにより、両面側の保護絶縁層20の開口部20aに、貫通導体TCに接続される接続パッドP(錫又は錫合金)をそれぞれ形成する。
【0180】
これにより、第5実施形態の第2配線基板5aが得られる。
【0181】
そして、図22(c)に示すように、第1実施形態と同様な方法により、第2配線基板5aの上面側に第1配線部材W1を接着すると同時に、第2配線基板5aの下面側に第2配線部材W2を接着する。
【0182】
第1配線部材W1の下面側の配線層80の接続部80aが第2配線基板5aの上側の接続パッドPに埋め込まれて接続されると共に、第2配線部材W2の上面側の配線層80の接続部80aが第2配線基板5aの下側の接続パッドPに埋め込まれて接続される。
【0183】
これにより、第1配線部材W1、第2配線基板5a及び第2配線部材W2によって多層配線基板6aが構成される。
【0184】
第5実施形態の第1、第2配線基板5,5a及び多層配線基板6,6aでは、酸化アルミニウム基板10の外面に凹凸が設けられていないので、接続パッドP及び保護絶縁層20の密着性に関しては酸化アルミニウム基板10の外面に凹凸を設けた他の実施形態より不利になる。
【0185】
第5実施形態のその他の構成については第1実施形態と同様な効果を奏する。
【符号の説明】
【0186】
1,2,3,4,5…第1配線基板、1a,2a,3a,4a,5a…第2配線基板、6,6a…多層配線基板、10…酸化アルミニウム基板、10a…アルミニウム基板、10b…アルミニウム部、10x…凹部、12…めっき給電層、20…保護絶縁層、20a,44a…開口部、30…第1錫層、32…第2錫層、40…第1層間絶縁層、42…第2層間絶縁層、44…ソルダレジスト、50…第1配線層、52…第2配線層、60…半導体チップ、62…バンプ電極、64…アンダーフィル樹脂、70…絶縁層、80…配線層、82…ビア導体、H…ホール、P…接続パッド、TH…スルーホール、TC…貫通導体,Tx…突出部、VH1…第1ビアホール、VH2…第2ビアホール、W1…第1配線部材、W2…第2配線部材。
【技術分野】
【0001】
本発明は配線基板及びその製造方法に係り、さらに詳しくは、上下面側を導通可能にする多数の貫通導体を備えた配線基板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体チップを実装するための多層配線基板がある。そのような多層配線基板では、コア基板の両面側にビルドアップ配線が形成され、一方の面に半導体チップを実装するためのチップ接続用パッドが設けられ、他方の面に外部接続用パッドが設けられている。
【0003】
特許文献1には、複数のスルーホール導体を備えたポーラスアルミナ基板の両面に、選択されたスルーホール導体を露出させる開口部を備えた絶縁層を形成した後に、その開口部内のスルーホール導体に接続される配線を形成することにより、回路基板を構成することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−147241号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
後述するように、関連技術では、配線基板の接続パッド周りの構造を得るには、層間接続用のビア導体に繋がる金属パッド層を層間絶縁層の上に形成し、金属パッド層上に開口部が設けられたソルダレジストを形成する。さらに、金属パッド層の上にめっきによりコンタクト層が形成されて接続パッドが構成される。設計によっては、金属パッド層が引き回し配線の一端に繋がって形成される。
【0006】
関連技術の配線基板では、設計ルールに応じてビア導体、金属パッド層及び引き回し配線を配置するため、ビア導体や接続パッドのレイアウトやピッチに制約を受けやすく、接続パッド及びビア接続を低コストで高密度化することは容易ではない。
【0007】
本発明は以上の課題を鑑みて創作されたものであり、低コストで高密度な接続パッド及び接続ビアを構成できる配線基板及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は配線基板に係り、酸化アルミニウム基板と、前記酸化アルミニウム基板の厚み方向に貫通して形成された多数の貫通導体と、前記酸化アルミニウム基板の少なくとも一方の面に形成され、接続パッドが配置される部分に開口部が設けられた絶縁層と、前記絶縁層の開口部に形成され、複数の前記貫通導体の一端側に接続された前記接続パッドとを有し、少なくとも前記絶縁層の開口部内において、前記貫通導体が前記酸化アルミニウム基板の外面から突出するか又は沈み込むことで凹凸が設けられていることを特徴とする。
【0009】
本発明で使用される多数の貫通導体が形成された酸化アルミニウム基板は、アルミニウム基板を陽極酸化することに基づいて多数のスルーホールを形成した後に、スルーホールに貫通導体を充填することによって得られる。
【0010】
多数の貫通導体が形成された酸化アルミニウム基板には、開口部が設けられた絶縁層が形成されており、その開口部に複数の貫通導体に接続される接続パッドが形成されている。接続パッドPに接続される複数の貫通導体が接続ビアとして機能し、接続パッドと酸化アルミニウム基板の背面側とを導通可能にする。
【0011】
このように、多数の貫通導体が予め形成された酸化アルミニウム基板の任意の位置に接続パッドを配置することにより、接続パッド及び接続ビア構造を容易に構築することができる。従って、接続パッドのレイアウトが制約されることなく、高密度な接続ビア構造を低コストで形成することができる。
【0012】
さらに、貫通導体は酸化アルミニウム基板の外面から突出するか又は沈み込んで形成されており、これによって酸化アルミニウム基板の外面に凹凸が設けられている。酸化アルミニウム基板の外面の凹凸は、接続パッドが配置される絶縁層の開口部内のみに設けてもよいし、あるいは酸化アルミニウム基板の全面に設けてもよい。
【0013】
これにより、アンカー効果によって接続パッドが密着性がよい状態で貫通導体に信頼性よく電気接続される。さらに、酸化アルミニウム基板の全体に凹凸を設ける場合は、接続パッドばかりではなく、絶縁層の密着性を向上させることができる。
【0014】
また、絶縁層及びその開口部に形成される接続パッドは、酸化アルミニウム基板の片面のみに形成してもよいし、あるいは両面側に形成してもよい。
【0015】
本発明の配線基板は、多層配線基板を構成するための、接続パッドと接続ビアを備えた配線ユニットとして使用することができる。
【0016】
本発明の一つの好適な態様では、接続パッドと反対側の貫通導体の端部にビルドアップ配線層が接続されて多層配線基板が構成される。あるいは、酸化アルミニウム基板の両面側に接続パッドを形成し、両面側の接続パッドに配線部材をそれぞれ接続して多層配線基板を構成してもよい。
【0017】
また、本発明の一つの好適な態様では、接続パッドは無電解めっきによって形成された錫又は錫合金層からなる。接続パッドを低融点の錫又は錫合金層から形成することにより、低温側(350℃程度以下)の加熱処理によって接続パッドが軟化溶融する。
【0018】
このため、比較的低温の加熱処理によって配線基板の接続パッドに半導体チップのバンプ電極や配線部材の配線層を埋め込んで接続することができる。これにより、半導体チップと配線基板との接続距離を短くできると共に、耐熱性の低い有機基板から形成される配線部材を信頼よく接続することができる。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、本発明では、低コストで高密度な接続パッド及び接続ビアを構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は本発明に関連する関連技術の多層配線基板を示す断面図である。
【図2】図2(a)〜(d)は本発明の第1実施形態の第1配線基板の製造方法を示す断面図(その1)である。
【図3】図3(a)〜(d)は本発明の第1実施形態の第1配線基板の製造方法を示す断面図(その2)である。
【図4】図4は本発明の第1実施形態の第1配線基板の製造方法を示す断面図(その3)である。
【図5】図5は本発明の第1実施形態の第1配線基板を示す断面図である。
【図6】図6(a)〜(c)は本発明の第1実施形態の第1配線基板を使用して多層配線基板を構成する例を示す断面図である。
【図7】図7(a)〜(c)は本発明の第1実施形態の第2配線基板の製造方法を示す断面図である。
【図8】図8(a)及び(b)は本発明の第1実施形態の第2配線基板を使用して多層配線基板を構成する例を示す断面図である。
【図9】図9(a)〜(c)は本発明の第2実施形態の第1配線基板の製造方法を示す断面図である。
【図10】図10は本発明の第2実施形態の第1配線基板を使用して多層配線基板を構成する例を示す断面図である。
【図11】図11(a)〜(c)は本発明の第2実施形態の第2配線基板の製造方法を示す断面図である。
【図12】図12は本発明の第2実施形態の第2配線基板を使用して多層配線基板を構成する例を示す断面図である。
【図13】図13(a)〜(c)は本発明の第3実施形態の第1配線基板の製造方法を示す断面図(その1)である。
【図14】図14(a)及び(b)は本発明の第3実施形態の第1配線基板の製造方法を示す断面図(その2)である。
【図15】図15は本発明の第3実施形態の第1配線基板を使用して多層配線基板を構成する例を示す断面図である。
【図16】図16(a)〜(c)は本発明の第3実施形態の第2配線基板の製造方法を示す断面図である。
【図17】図17は本発明の第3実施形態の第2配線基板を使用して多層配線基板を構成する例を示す断面図である。
【図18】図18(a)〜(c)は本発明の第4実施形態の第1配線基板の製造方法を示す断面図である。
【図19】図19は本発明の第4実施形態の第1配線基板を使用して多層配線基板を構成する例を示す断面図である。
【図20】図20(a)〜(c)は本発明の第4実施形態の第2配線基板を使用して多層配線基板を構成する例を示す断面図である。
【図21】図21(a)〜(d)は本発明の第5実施形態の第1配線基板を使用して多層配線基板を構成する例を示す断面図である。
【図22】図22(a)〜(c)は本発明の第5実施形態の第2配線基板を使用して多層配線基板を構成する例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について、添付の図面を参照して説明する。
【0022】
(関連技術)
本発明の実施形態を説明する前に、本発明に関連する関連技術について説明する。図1は関連技術の配線基板を示す断面図である。
【0023】
図1に示すように、関連技術の配線基板では、コア基板(不図示)の上方に第1配線層100が形成されており、第1配線層100の上に第1層間絶縁層200が形成されている。第1層間絶縁層200には第1配線層100に到達する第1ビアホールVH1が形成されている。第1層間絶縁層200の上には、第1ビアホールVH1の側壁に形成された第1ビア導体VC1を介して第1配線層100に接続される第2配線層120が形成されている。
【0024】
第2配線層120の上には第2層間絶縁層220が形成されている。第1ビアホールVH1の残りの孔が第2層間絶縁層220で埋め込まれている。
【0025】
第2層間絶縁層220には第2配線層120に到達する第2ビアホールVH2が形成されている。第2層間絶縁層220の上には、第2ビアホールVH2に充填された第2ビア導体VC2に繋がって第2配線層120(下側配線層)に接続される第3配線層140が形成されている。
【0026】
第3配線層140は金属パッド層140a,140bを含んで形成される。右側の金属パッド層140aは島状に配置されており、左側に配置された金属パッド層140bは第3配線層140に繋がってその端部に配置されている。
【0027】
また、金属パッド層140a,140bの上に開口部300aが設けられたソルダレジスト300が第2層間絶縁層220の上に形成されている。さらに、金属パッド層140a,140bの上には下から順にニッケル/金めっき層からなるコンタクト層160が形成されている。金属パッド層140a,140b及びコンタクト層160によって接続パッドPが構成される。
【0028】
そして、半導体チップ400がバンプ電極420を介して配線基板の接続パッドPにフリップチップ接続されている。半導体チップ400の下側の隙間にはアンダーフィル樹脂440が充填されている。
【0029】
関連技術の配線基板では、接続パッドP周りの構造を得るには、金属パッド層140a,140bの形成は必須であり、さらに、その上にめっきによってコンタクト層160を形成する必要がある。また、設計によっては、接続パッドPに繋がる引き回し配線(第3配線層140)を配置する必要がある。
【0030】
また、接続パッドPをその下側の第2配線層120(下側配線層)に接続する必要があるため、第2ビア導体VC2の形成が必須である。
【0031】
このように、関連技術では、既存のフォトリソグラフィ技術に基づく設計ルールに応じて、第2ビア導体VC2、金属パッド層140a,140b及び引き回し配線140を配置する必要がある。このため、接続パッドPや第2ビア導体VC2のレイアウトやピッチにおいて制約を受けやすく、接続パッド及びビア接続を低コストで高密度化して形成することは容易ではない。
【0032】
(第1の実施の形態)
図2〜図6は本発明の第1実施形態の第1配線基板の製造方法及びそれを使用して構成される多層配線基板を示す断面図、図7及び図8は同じく第2配線基板の製造方法及びそれを使用して構成される多層配線基板を示す断面図である。
【0033】
第1実施形態の第1配線基板の製造方法では、図2(a)に示すように、まず、アルミニウム(Al)基板10aを用意する。次いで、図2(b)に示すように、シュウ酸溶液などを処理浴として用いて、アルミニウム基板10aを陽極として電気分解することにより、アルミニウム基板10aを電気化学的に酸化させて酸化アルミニウム基板10を得る。
【0034】
このとき、酸化アルミニウム基板10の表面から厚み方向に向かって多数の微細なホールHが同時に形成される。また、酸化アルミニウム基板10の下側には陽極酸化されていない薄膜のアルミニウム部10bが残された状態となる。
【0035】
続いて、図2(c)に示すように、酸化アルミニウム基板10の下側に残されたアルミニウム部10bをエッチングにより除去する。これにより、上面から下面まで貫通する多数のスルーホールTHが横方向に並んで設けられた酸化アルミニウム基板10が得られる。
【0036】
図2(c)の部分平面図に示すように、多数のスルーホールTHは酸化アルミニウム基板10を介して相互に分離された状態で基板方向に並んで配置される。
【0037】
好適な例としては、酸化アルミニウム基板10の厚みは70〜120μm程度に設定され、スルーホールTHの径は60〜200nmに設定され、スルーホールTHのピッチは100〜300nmに設定される。
【0038】
なお、図2(b)の陽極酸化工程において、アルミニウム基板10bの下面に保護金属層(不図示)を形成した状態で、アルミニウム基板10aを陽極酸化してもよい。この場合、アルミニウム基板10aの下面により近い部分まで陽極酸化することができる。そして、保護金属層及びアルミニウム部10bがエッチングにより除去される。
【0039】
次いで、図2(d)に示すように、多数のスルーホールTHが設けられた酸化アルミニウム基板10の下面にめっき給電層12を形成する。めっき給電層12の一例としては、下から順に、チタン(Ti)層/銅(Cu)層がスパッタ法などで形成される。
【0040】
さらに、図3(a)に示すように、めっき給電層12をめっき給電経路に利用する電解めっきによって、酸化アルミニウム基板10のスルーホールTH内に底部から上部にかけて銅めっきを施すことにより貫通導体TCを充填する。
【0041】
その後に、図3(b)に示すように、めっき給電層12が酸化アルミニウム基板10から除去される。これにより、厚み方向に貫通して形成された多数のスルーホールTHに貫通導体TC(線状導体)がそれぞれ充填された酸化アルミニウム基板10が得られる。図3(c)の部分平面図に示すように、多数の貫通導体TCは酸化アルミニウム基板10で相互に絶縁された状態で基板方向に並んで配置される。
【0042】
次いで、図3(c)に示すように、酸化アルミニウム基板10の下面をマスク(不図示)で保護した状態で、酸化アルミニウム基板10の上端側を貫通導体TCに対して選択的にエッチングする。酸化アルミニウム基板10のエッチャントとして、KOH又はNaOHなどのアルカリ液を使用することにより、酸化アルミニウム基板10を貫通導体TC(銅)に対して選択的にエッチングすることができる。
【0043】
これにより、貫通導体TCの上端側が酸化アルミニウム基板10の上面から上側に突出する突出部Txとなる。例えば、酸化アルミニウム基板10の厚みが100μm程度の場合は、貫通導体TCの突出部Txの高さは1〜5μmに設定される。多数の貫通導体TCの突出部Txによって酸化アルミニウム基板10の上面に凹凸が設けられる。
【0044】
次いで、図3(d)に示すように、酸化アルミニウム基板10の上面に、接続パッドが配置される部分に開口部20aが設けられた保護絶縁層20を形成する。保護絶縁層20の形成方法としては、感光性の液状又はフィルム状の樹脂を形成した後に、フォトリソグラフィによって露光・現像を行うことにより、樹脂に開口部を形成する方法がある。
【0045】
あるいは、プレス加工などで予め開口部が設けられた半硬化状態の樹脂フィルムを熱圧着してもよい。保護絶縁層20として、好適にはソルダレジストが使用される。
【0046】
このように、第1実施形態では、保護絶縁層20を形成する前に貫通導体TCの突出部Txが形成されて凹凸が設けられる。
【0047】
続いて、図4に示すように、図3(d)の酸化アルミニウム基板10を錫めっき用の置換めっき液(無電解めっき液)に浸漬させる。これにより、保護絶縁層20の開口部20a内に配置された貫通導体TCの突出部Txの露出面に置換めっきによって第1錫層30(置換めっき層)が形成される。
【0048】
つまり、置換めっき液内での銅と錫の置換反応によって、貫通導体TCの突出部Txの表層(銅)が錫に置換され、突出部Txの内部には銅が残された状態となる。
【0049】
次いで、図5に示すように、図4の酸化アルミニウム基板10を錫形成用の還元めっき液(無電解めっき液)に浸漬させる。これにより、保護絶縁層20の開口部20a内に、還元めっきによって第1錫層30に接続される第2錫層32(還元めっき層)が形成される。
【0050】
還元めっきでは、還元めっき液中の還元剤が触媒の存在下で酸化されて電子を放出し、その電子が還元めっき液中の錫イオンを還元することにより錫が析出する。
【0051】
このようにして、保護絶縁層20の開口部20aに、酸化アルミニウム基板10に設けられた貫通導体TCの突出部Txに電気接続される第1錫層30及び第2錫層32が形成されて接続パッドPが構成される。
【0052】
接続パッドPは、錫層の他に各種の錫合金層から形成してもよい。他の実施形態においても同様である。
【0053】
以上により、第1実施形態の第1配線基板1が得られる。
【0054】
図5に示すように、第1実施形態の配線基板1では、酸化アルミニウム基板10にその厚み方向に貫通する多数の貫通導体TCが横方向に並んで設けられている。全ての貫通導体TCの上端側は、酸化アルミニウム基板10の上面から上側に突き出る突出部Txとなっている。
【0055】
酸化アルミニウム基板10の上面には、所要部に開口部20aが設けられた保護絶縁層20が形成されている。保護絶縁層20の開口部20aには、貫通導体TCの突出部Txに電気接続される接続パッドPが形成されている。このようにして、接続パッドPの中で貫通導体TCが上側に突出している。
【0056】
接続パッドPは、貫通導体TCの突出部Tx(銅)の表層部に形成された第1錫層30と、第1錫層30に接続されて保護絶縁層20の開口部20aに形成された第2錫層32によって構成される。接続パッドPを構成する第1錫層30は置換めっきで形成され、第2錫層32は還元めっきで形成される。接続パッドPは錫合金層から形成されてもよい。
【0057】
接続パッドPの第1、第2錫層30,32がそのままコンタクト層として機能するため、ニッケル/金めっき層などのコンタクト層を別途形成する必要はない。
【0058】
接続パッドPは低融点(融点:232℃)の錫又は錫合金から形成されるため、後述するように、350℃程度以下の低温側の温度で第1配線基板1の接続パッドPに半導体チップ又は配線部材を接続することが可能になる。
【0059】
接続パッドPに接続される複数の貫通導体TCが接続ビアとして機能し、接続パッドPと酸化アルミニウム基板10の背面側とを導通可能にする。接続パッドPに接続されていない複数の貫通導体TCは、酸化アルミニウム基板10(絶縁体)で相互に電気絶縁されており、上下側の導通には関与しないようになっている。
【0060】
このように、多数の貫通導体TCを備えた酸化アルミニウム基板10の任意の位置に保護絶縁層20の開口部20aを配置した後に、その開口部20a内に無電解めっきによって第1、第2錫層30,32を形成することにより接続パッドPを容易に形成することができる。
【0061】
しかも、酸化アルミニウム基板10の全体に予め多数の貫通導体TCが設けられているため、任意の位置の貫通導体TCに接続パッドPを接続することにより、接続パッドPに接続される複数の貫通導体TCを接続ビアとして機能させることができる。
【0062】
従って、関連技術と違って、設計ルールに応じてビア導体や金属パッド層(銅)を配置したり、その後にコンタクト層(ニッケル/金めっき層)を形成したりする必要がなくなる。
【0063】
このように、本実施形態の配線基板1では、多数の貫通導体TCを備えた酸化アルミニウム基板10の任意の位置に接続パッドPを配置することにより、接続ビア構造を容易に構築できる。従って、接続パッドPや接続ビア(貫通導体TC)のレイアウトが制約されることなく、高密度な接続ビア構造を低コストで形成することができる。
【0064】
また、接続パッドPのピッチは、保護絶縁層20の開口部20aの配置で決定できるので、フォトリソグラフィ技術に基づいて狭ピッチ化を容易に図ることできる。
【0065】
さらには、多数の貫通導体TCの上端側を酸化アルミニウム基板10の上面から突出する突出部Txとすることにより、酸化アルミニウム基板10の上面に凹凸が設けられている。このため、アンカー効果によって接続パッドPが貫通導体TCに密着性がよい状態で形成され、電気接続の信頼性を向上させることができる。また、保護絶縁層20においても、酸化アルミニウム基板10の凹凸の上にアンカー効果によって密着性がよい状態で形成される。
【0066】
さらに、貫通導体TCの上端側が突出部Txとなっていることから、接続パッドPと貫通導体TCとの接触面積を大きくすることができるので、接続パッドPを信頼性よく貫通導体TCに電気接続することができる。
【0067】
次に、図5の第1配線基板1を配線ユニットとして使用して多層配線基板を構成する例について説明する。図6(a)に示すように、図5の配線基板1の下面にエポキシ樹脂やポリイミド樹脂などの第1層間絶縁層40を形成し、第1層間絶縁層40をレーザなどで加工することにより、接続パッドPに対応する部分に第1ビアホールVH1を形成する。さらに、第1ビアホールVH1を介して貫通導体TCの下端に接続される第1配線層50を形成する。第1配線層50は例えばセミアディティブ法によって形成される。
【0068】
詳しく説明すると、第1層間絶縁層40の下面及び第1ビアホールVH1内に、銅などのシード層(不図示)を形成する。次いで、第1配線層50が配置される部分に開口部が設けられためっきレジスト(不図示)をシード層の上に形成する。続いて、シード層をめっき給電経路に利用する電解めっきにより、めっきレジストの開口部に銅などの金属めっき層(不図示)を形成する。
【0069】
さらに、めっきレジストを除去した後に、金属めっき層をマスクにしてシード層をエッチングすることにより第1配線層50を得る。
【0070】
続いて、同様な方法により、第1配線層50の上に第2ビアホールVH2が設けられた第2層間絶縁層42を形成する。次いで、同様な方法により、第2ビアホールVH2を介して第1配線層50に接続される第2配線層52を第2層間絶縁層42の上に形成する。
【0071】
その後に、第2配線層52の接続部上に開口部44aが設けられたソルダレジスト44を形成する。
【0072】
さらに、第2配線層52の接続部にニッケル/金めっき層などのコンタクト層(不図示)を形成する。
【0073】
このようにして、一端側が接続パッドPに接続された複数の貫通導体TCの他端側に2層のビルドアップ配線層BWが接続されて形成される。
【0074】
以上により、第1実施形態の第1配線基板1の下面側にビルドアップ配線層BWが形成されて多層配線基板6が構成される。図6(a)では、2層のビルドアップ配線層BWを例示するが、ビルドアップ配線層はn層(1以上の整数)で任意に形成することができる(単層又は積層)。
【0075】
なお、前述した図3(c)の工程(貫通導体TCの突出部Txを得る工程)の後に、酸化アルミニウム基板10の下面側にビルドアップ配線層BWを形成してもよい。この場合は、ビルドアップ配線層BWを形成した後に、酸化アルミニウム基板10の上面側に開口部20aが設けられた保護絶縁層20と接続パッドPが形成される。
【0076】
ビルドアップ配線層BWを形成する工程は、この他にも実施可能な範囲で、接続パッドPを形成する工程の前又は後の所要の段階で行うことができる。
【0077】
図6(a)の多層配線基板6では、上面側の接続パッドPが半導体チップに接続されるチップ接続部となり、下面側の第2配線層52の接続部が実装基板(マザーボードなど)に接続される外部接続部となる。
【0078】
次に、図6(a)の多層配線基板6に半導体チップを実装する方法について説明する。
図6(b)に示すように、銅などからなるバンプ電極62を備えた半導体チップ60(LSIチップ)を用意する。さらに、多層配線基板6の保護絶縁層20の上にアンダーフィル樹脂材64aを塗布する。
【0079】
そして、図6(c)に示すように、260〜300℃の温度で加熱処理した状態で、半導体チップ60のバンプ電極62を多層配線基板6の接続パッドPに押し込む。このとき、接続パッドPは低融点の錫又は錫合金から形成されるため、加熱処理によって軟化溶融し、半導体チップ60のバンプ電極62が多層配線基板6の接続パッドPに埋め込まれる。
【0080】
これと同時に半導体チップ60の下面と多層配線基板6の保護絶縁層20との間にアンダーフィル樹脂64が形成されてそれらが接着される。
【0081】
このようにして、半導体チップ60のバンプ電極62が多層配線基板6の接続パッドPに埋め込まれて電気接続される。
【0082】
半導体チップ60のバンプ電極62は多層配線基板6の接続パッドPに埋め込まれるため、半導体チップ60と配線基板2との接続距離を短くすることができ、高速動作を必要とする高性能な半導体チップ60の性能を十分に引き出すことができる。
【0083】
前述したように、第1実施形態の第1配線基板1では、多数の貫通導体TCを備えた酸化アルミニウム基板10上の任意の位置に接続パッドPを配置することにより、層間接続を行う接続ビア構造を容易に構築することができる。
【0084】
また、接続パッドPは、保護絶縁層20の開口部20a内に無電解めっきで形成されるので、多数の貫通導体TCを備えた酸化アルミニウム基板10上の任意の位置にレイアウトが制約されることなく狭ピッチで形成することができる。
【0085】
このように、第1実施形態の第1配線基板1は配線ユニットとして機能し、多層配線基板の接続パッドとその下の接続ビアの構造に適用される。第1実施形態の第1配線基板1を使用することにより、高性能な半導体チップ用の多層配線基板を低コストで構成できると共に、多層配線基板の設計の自由度を広くすることができる。
【0086】
次に、第1実施形態の第2配線基板について説明する。第2配線基板は多数の貫通導体TCを備えた酸化アルミニウム基板10の両面側に接続パッドがそれぞれ配置される。
【0087】
第1実施形態の第2配線基板の製造方法では、図7(a)に示すように、前述した図3(c)の工程(貫通導体TCの突出部Txを得る工程)において、酸化アルミニウム基板10の両面側を貫通導体TCに対して選択的にエッチングする。これにより、酸化アルミニウム基板10の両面側において貫通導体TCの突出部Txがそれぞれ得られる。
【0088】
次いで、図7(b)に示すように、酸化アルミニウム基板10の両面側に、接続パッドが配置される部分に開口部20aが設けられた保護絶縁層20をそれぞれ形成する。両面側の保護絶縁層20の各開口部20aは、酸化アルミニウム基板10を挟んで相互に対向する位置に配置される。図7(b)では、保護絶縁層20は、後に接着剤として機能させるため半硬化樹脂から形成される。
【0089】
次いで、図7(c)に示すように、前述した図4及び図5と同様な無電解めっきにより、両面側の保護絶縁層20の開口部20a内に、貫通導体TCの突出部Txに接続される接続パッドPをそれぞれ形成する。
【0090】
接続パッドPは、貫通導体TCの突出部Txの表層部に形成される第1錫層30(置換めっき層)と、保護絶縁層20の開口部20aに配置される第2錫層32(還元めっき層)とから構成される(図5と同一構造)。
【0091】
これにより、第1実施形態の第2配線基板1aが得られる。
【0092】
次いで、図8(a)に示すように、第1配線部材W1及び第2配線部材W2を用意する。第1配線部材W1では、絶縁層70の両面側に銅などの配線層80がそれぞれ形成されており、両面側の配線層80は絶縁層70を貫通して設けられたビア導体82を介して相互接続されている。
【0093】
そして、第1配線部材W1の下面側の配線層80には第2配線基板1aの上面側の接続パッドPに接続される接続部80aが画定されている。
【0094】
また、第2配線部材W2においても同様に、絶縁層70の両面側に配線層80が形成されており、両面側の配線層80は絶縁層70を貫通して設けられたビア導体82を介して相互接続されている。
【0095】
そして、第2配線部材W2の上面側の配線層80には第2配線基板1aの下面側の接続パッドPに接続される接続部80aが画定されている。
【0096】
第1配線部材W1及び第2配線部材W2の配線層80の各接続部80aには、酸化防止剤又はニッケル/金めっき層などのコンタクト層が形成されている。
【0097】
第1配線部材W1及び第2配線部材W2としては、n層(nは1以上の整数)の任意の配線層を備えていればよく、コア基板をもたないコアレス基板又はコア基板を有するリジッド基板などの各種の配線部材を使用することができる。
【0098】
そして、図8(a)及び(b)に示すように、第1配線部材W1の下面側の配線層80の接続部80aを第2配線基板1aの上面側の接続パッドPに配置する。さらに、第2配線部材W2の上面側の配線層80の接続部80aを第2配線基板1aの下面側の接続パッドPに配置する。
【0099】
さらに、260〜300℃の温度で熱圧着することにより、第1配線部材W1の下面側の配線層80を第2配線基板1aの上面側の接続パッドPに埋め込むと同時に、第2配線部材W2の上面側の配線層80を第2配線基板1aの下面側の接続パッドPに埋め込む。
【0100】
前述したように、接続パッドPは低融点の錫又は錫合金から形成されるので、加熱処理によって接続パッドPが軟化溶融し、第1配線部材W1及び第2配線部材W2の各配線層80の接続部80aが第2配線基板1aの両面側の接続パッドPにそれぞれ埋め込まれる。
【0101】
このとき同時に、第2配線基板1aの両面側の半硬化状態の保護絶縁層20は流動・硬化する際に接着剤として機能する。これにより、第1配線部材W1及び第2配線部材W2は、それら各配線層80の接続部80a以外の部分が保護絶縁層20にそれぞれ埋め込まれた状態で、第2配線基板1aの両面側にそれぞれ接着される。
【0102】
このようにして、第1配線部材W1の配線層80は、第2配線基板1aの上側の接続パッドP、それに接続される複数の貫通導体TC及びそれに接続される下側の接続パッドPを介して第2配線部材W2の配線層80に電気接続される。
【0103】
これにより、第1配線部材W1、第2配線基板1a及び第2配線部材W2によって多層配線基板6aが構成される。
【0104】
第1実施形態の多層配線基板6aでは、第2配線基板1aの接続パッドPが低融点の錫又は錫合金から形成されるため、第1配線部材W1及び第2配線部材W2を低温側(350℃程度以下(260〜300℃))の温度で第2配線基板1aに接続することができる。従って、特に、第1配線部材W1及び第2配線部材W2として耐熱温度が350℃程度の有機基板を使用する際に、信頼性よく接続することができる。
【0105】
また、好適には、第1配線部材W1は、半導体チップが実装されることから比較的狭いピッチの高密度な配線層80を備えて構成される。また、第2配線部材W2は実装基板(マザーボード)に接続されることから、第2配線部材W2の配線層80は第1配線部材W1の配線層80より広いピッチの低密度のパターンで形成される。
【0106】
一つの多層配線基板内で高密度な配線層と低密度な配線層を備える場合、それらの配線層を同一基板上に作り込んでいくと、製造歩留りが低下しやすいと共に、製造効率が悪くなり、コスト上昇を招きやすい。
【0107】
本実施形態は、高密度の配線層80を備える第1配線部材W1と、それより低密度な配線層80を備える第2配線部材W2を別々の製造ラインで作成し、それらを第2配線基板1aによって相互接続している。このため、多層配線基板の製造歩留り及び製造効率を向上させることができ、低コスト化を図ることができる。
【0108】
しかも、前述したように、第1実施形態の第2配線基板1aは、酸化アルミニウム基板10の任意の位置に接続パッドPとそれに接続される貫通導体TC(接続ビア)を狭ピッチで容易に構築することができる。従って、各種の配線部材の接続手段として幅広く使用することができ、多層配線基板の設計の自由度を広くすることができる。
【0109】
(第2の実施の形態)
図9及び図10は本発明の第2実施形態の第1配線基板の製造方法及びそれを使用して構成される多層配線基板を示す断面図、図11及び図12は同じく第2配線基板の製造方法及びそれを使用して構成される多層配線基板を示す断面図である。
【0110】
第2実施形態の特徴は、前述した第1実施形態において、貫通導体TCの突出部Txを接続パッドが配置される領域のみに設けることにある。
【0111】
第2実施形態では、第1実施形態と同一要素及び同一工程については同一符号を付してその詳しい説明を省略する。
【0112】
図9(a)に示すように、第1実施形態の図3(b)の工程で得られる多数の貫通導体TCを備えた酸化アルミニウム基板10を用意する。そして、酸化アルミニウム基板10の上面に、接続パッドが配置される部分に開口部20aが設けられた保護絶縁層20を形成する。
【0113】
次いで、図9(b)に示すように、第1実施形態と同様な方法により、保護絶縁層20の開口部20aを通して酸化アルミニウム基板10の上端側を貫通導体TCに対して選択的にエッチングする。これにより、保護絶縁層20の開口部20a内のみに貫通導体TCの突出部Txが設けられる。
【0114】
このように、第2実施形態では、保護絶縁層20を形成した後に、貫通導体TCの突出部Txが形成されて凹凸が設けられる。
【0115】
その後に、図9(c)に示すように、第1実施形態と同様な無電解めっきにより、保護絶縁層20の開口部20aに、貫通導体TCの突出部Txに接続される接続パッドPを形成する。第1実施形態と同様に、接続パッドPは置換めっきで形成された第1錫層30と還元めっきで形成された第2錫層32から構成される(図5と同一構造)。
【0116】
これにより、第2実施形態の第1配線基板2が得られる。
【0117】
図9(c)に示すように、第2実施形態の第1配線基板2では、保護絶縁層20の開口部20a内の貫通導体TCのみが酸化アルミニウム基板10の上面から突き出る突出部Txを備えており、他の領域の貫通導体TCの上端面は酸化アルミニウム基板10の上面と同一高さに配置されて同一面を構成している。他の要素は第1実施形態の配線基板1と同一である。
【0118】
そして、図10に示すように、第1実施形態と同様に、配線基板2の下面側にビルドアップ配線層BWが形成されて、多層配線基板6が構成される。さらに、第1実施形態と同様に、半導体チップ60のバンプ電極62が多層配線基板6の接続パッドP(錫又は錫合金)に埋め込まれて接続される。
【0119】
次に、第2実施形態の第2配線基板について説明する。第2配線基板は、第1実施形態の第2配線基板1aと同様に、酸化アルミニウム基板10の両面側に接続パッドがそれぞれ配置される。
【0120】
第2実施形態の第2配線基板の製造方法では、図11(a)に示すように、前述した図9(a)の工程(保護絶縁層20の形成工程)において、酸化アルミニウム基板10の両面側に、接続パッドが配置される部分に開口部20aが設けられた保護絶縁層20をそれぞれ形成する。
【0121】
次いで、図11(b)に示すように、酸化アルミニウム基板10の両面側において、保護絶縁層20の開口部20aを通して、酸化アルミニウム基板10を貫通導体TCに対して選択的にエッチングする。
【0122】
さらに、図11(c)に示すように、第1実施形態と同様な無電解めっきにより、両面側の保護絶縁層20の開口部20aに、貫通導体TCの突出部Txに接続される錫又錫合金からなる接続パッドPをそれぞれ形成する。
【0123】
これにより、第2実施形態の第2配線基板2aが得られる。
【0124】
そして、図12に示すように、第1実施形態と同様な方法により、第2配線基板2aの上面側に第1配線部材W1を接着すると同時に、配線基板2aの下面側に第2配線部材W2を接着する。
【0125】
第1配線部材W1の下面側の配線層80の接続部80aが第2配線基板2aの上側の接続パッドPに埋め込まれて接続されると共に、第2配線部材W2の上面側の配線層80の接続部80aが第2配線基板2aの下側の接続パッドPに埋め込まれて接続される。
【0126】
これにより、第1配線部材W1、第2配線基板2a及び第2配線部材W2によって多層配線基板6aが構成される。
【0127】
第2実施形態の第1、第2配線基板2,2a及び多層配線基板6,6aは第1実施形態と同様な効果を奏する。第2実施形態では、保護絶縁層20の下の貫通導体TCに突出部Txが設けられていないので、保護絶縁層20の密着性に関しては第1実施形態より不利になる。
【0128】
(第3の実施の形態)
図13〜図15は本発明の第3実施形態の第1配線基板の製造方法及びそれを使用して構成される多層配線基板を示す断面図、図16及び図17は同じく第2配線基板の製造方法及びそれを使用して構成される多層配線基板を示す断面図である。
【0129】
第3実施形態が第1実施形態と異なる点は、第1実施形態と逆に、貫通導体の上端側を酸化アルミニウム基板に対して選択的にエッチングすることにより、貫通導体を酸化アルミニウム基板の上面から沈み込ませて凹凸を設けることにある。
【0130】
第3実施形態では、第1実施形態と同一要素及び同一工程については同一符号を付してその詳しい説明を省略する。
【0131】
図13(a)に示すように、まず、第1実施形態の図3(b)の工程で得られる多数の貫通導体TCを備えた酸化アルミニウム基板10を用意する。さらに、図13(b)に示すように、酸化アルミニウム基板10の下面をマスク(不図示)で保護した状態で、貫通導体TC(銅)を酸化アルミニウム基板10に対して選択的にエッチングする。
【0132】
貫通導体TC(銅)のエッチャントとして硫酸などを使用することにより、貫通導体TC(銅)を酸化アルミニウム基板10に対して選択的にエッチングすることができる。酸化アルミニウム基板10の上面からの貫通導体TCの沈み込みの深さは、酸化アルミニウム基板10の厚みが100μm程度の場合、0.1〜0.5μm程度に設定される。
【0133】
貫通導体TCの上端側が酸化アルミニウム基板10の上面から沈み込んで配置されることにより、酸化アルミニウム基板10の上面側に多数の凹部10xが構成される。これにより、酸化アルミニウム基板10の上面に凹凸が設けられた状態となる。
【0134】
次いで、図13(c)に示すように、酸化アルミニウム基板10の上面に、接続パッドが配置される部分に開口部20aが設けられた保護絶縁層20を形成する。
【0135】
このように、第3実施形態では、保護絶縁層20を形成する前に貫通導体TCを沈み込ませて凹凸が設けられる。
【0136】
次いで、図14(a)に示すように、第1実施形態と同様な置換めっきにより、酸化アルミニウム基板10の上面に構成された凹部10xの底面の貫通導体TCに第1錫層30を形成する。さらに、図14(b)に示すように、第1実施形態と同様な還元めっきにより、保護絶縁層20の開口部20aに第1錫層30に接続される第2錫層32を形成する。
【0137】
これより、第1錫層30及び第2錫層32によって、貫通導体TCに接続される接続パッドPが構成される。
【0138】
以上により、第3実施形態の第1配線基板3が得られる。
【0139】
図14(b)に示すように、第3実施形態の第1配線基板3では、酸化アルミニウム基板10にその厚み方向に貫通する多数の貫通導体TCが横方向に並んで設けられている。全ての貫通導体TCの上端側が酸化アルミニウム基板10の上面から下側に沈み込んで多数の凹部10xが構成されている。これによって、酸化アルミニウム基板10の上面に凹凸が設けられている。
【0140】
酸化アルミニウム基板10の上面には、所要部に開口部20aが設けられた保護絶縁層20が形成されている。保護絶縁層20の開口部20aには、凹部10xの底部の貫通導体TCの上端面に電気接続される接続パッドPが形成されている。接続パッドPは、貫通導体TCの上端面に置換めっきで形成された第1錫層30とそれに接続されて還元めっきで形成された第2錫層32とから構成される。
【0141】
このようにして、接続パッドPの中で酸化アルミニウム基板10が上側に突出している。他の要素は第1実施形態の第1配線基板1と同一である。
【0142】
そして、図15に示すように、第1実施形態と同様に、第1配線基板3の下面側にビルドアップ配線層BWが形成されて、多層配線基板6が構成される。さらに、第1実施形態と同様に、半導体チップ60のバンプ電極62が多層配線基板6の接続パッドP(錫又は錫合金)に埋め込まれて接続される。
【0143】
次に、第3実施形態の第2配線基板について説明する。第2配線基板は、第1実施形態の第2配線基板1aと同様に、酸化アルミニウム基板10の両面側に接続パッドがそれぞれ配置される。
【0144】
図16(a)に示すように、第1実施形態の図3(b)の工程で得られる多数の貫通導体TCを備えた酸化アルミニウム基板10を用意する。さらに、酸化アルミニウム基板10の両面側において、貫通導体TCを酸化アルミニウム基板10に対して選択的にエッチングすることにより、貫通導体TCの両端側を酸化アルミニウム基板10の上下面からそれぞれ沈み込ませて凹部10xをそれぞれ得る。
【0145】
次いで、図16(b)に示すように、酸化アルミニウム基板10の両面側に、接続パッドが配置される部分に開口部20aが設けられた保護絶縁層20をそれぞれ形成する。
【0146】
次いで、図16(c)に示すように、第1実施形態と同様な無電解めっきにより、酸化アルミニウム基板10の両面側の保護絶縁層20の開口部20aに、貫通導体TCの両端面に接続される錫又は錫合金からなる接続パッドPをそれぞれ形成する。これにより、第3実施形態の第2配線基板3aが得られる。
【0147】
そして、図17に示すように、第1実施形態と同様な方法により、第2配線基板3aの上面側に第1配線部材W1を接着すると同時に、第2配線基板3aの下面側に第2配線部材W2を接着する。第1配線部材W1の下面側の配線層80の接続部80aが第2配線基板3aの上側の接続パッドPに埋め込まれて接続されると共に、第2配線部材W2の上面側の配線層80の接続部80aが第2配線基板3aの下側の接続パッドPに埋め込まれて接続される。
【0148】
これにより、第1配線部材W1、第2配線基板3a及び第2配線部材W2によって多層配線基板6aが構成される。
【0149】
第3実施形態の第1、第2配線基板3,3a及び多層配線基板6,6aは第1実施形態と同様な効果を奏する。
【0150】
第3実施形態では、貫通導体TCを酸化アルミニウム基板10の上面(又は両面)から沈み込ませることによって凹凸を設けている。このため、アンカー効果によって接続パッドPが貫通導体TCに密着性がよい状態で形成され、電気接続の信頼性を向上させることができる。また、保護絶縁層20においても、その下地の酸化アルミニウム基板10に凹凸が設けられているので、密着性がよい状態で形成される。
【0151】
(第4の実施の形態)
図18及び図19は本発明の第4実施形態の第1配線基板の製造方法及びそれを使用して構成される多層配線基板を示す断面図、図20は同じく第2配線基板の製造方法及びそれを使用して構成される多層配線基板を示す断面図である。
【0152】
第4実施形態の特徴は、前述した第3実施形態において、接続パッドが配置される領域のみにおいて貫通導体を酸化アルミニウム基板から沈み込ませることにある。
【0153】
第4実施形態では、第1、3実施形態と同一要素及び同一工程については同一符号を付してその詳しい説明を省略する。
【0154】
図18(a)に示すように、第1実施形態の図3(b)の工程で得られる多数の貫通導体TCを備えた酸化アルミニウム基板10を用意する。そして、酸化アルミニウム基板10の上面に、接続パッドが配置される部分に開口部20aが設けられた保護絶縁層20を形成する。
【0155】
次いで、図18(b)に示すように、第3実施形態と同様な方法により、保護絶縁層20の開口部20aを通して貫通導体TCの上端側を酸化アルミニウム基板10に対して選択的にエッチングする。これにより、酸化アルミニウム基板10の上面に凹部10xが構成される。
【0156】
このように、第4実施形態では、保護絶縁層20を形成した後に貫通導体TCを沈み込ませて凹凸が設けられる。
【0157】
その後に、図18(c)に示すように、第1実施形態と同様な無電解めっきにより、貫通導体TCの上端面に接続される接続パッドPを形成する。第3実施形態と同様に、接続パッドPは、置換めっきで形成された第1錫層30と還元めっきで形成された第2錫層32とから構成される(図14(b)と同一構造)。
【0158】
これより、第4実施形態の第1配線基板4が得られる。
【0159】
図18(c)に示すように、第4実施形態の第1配線基板4では、保護絶縁層20の開口部20a内の貫通導体TCのみが酸化アルミニウム基板10の上面から沈み込んで凹部10xが構成されており、他の領域の貫通導体TCの上端は酸化アルミニウム基板10の上面と同一高さに配置されて同一面を構成している。他の要素は第1、第3実施形態の第1配基板1,3と同一である。
【0160】
そして、図19に示すように、第1実施形態と同様に、第1配線基板4の下面側にビルドアップ配線BWが形成されて、多層配線基板6が構成される。さらに、第1実施形態と同様に、半導体チップ60のバンプ電極62が多層配線基板6の接続パッドP(錫又錫合金)に埋め込まれて接続される。
【0161】
次に、第4実施形態の第2配線基板について説明する。第2配線基板は、第1実施形態の第2配線基板1aと同様に、酸化アルミニウム基板10の両面側に接続パッドがそれぞれ配置される。
【0162】
図20(a)に示すように、前述した図18(b)の工程(保護絶縁層20をマスクにして貫通導体TCをエッチングする工程)を酸化アルミニウム基板10の両面において遂行する。これにより、酸化アルミニウム基板10の両面側において、保護絶縁層20の開口部20a内の貫通導体TCのみが酸化アルミニウム基板10の両面から沈み込んで凹部10xが構成される。
【0163】
さらに、図20(b)に示すように、第1実施形態と同様な無電解めっきにより、貫通導体TCの両端面に接続される錫又は錫合金からなる接続パッドPをそれぞれ形成する。
【0164】
これにより、第4実施形態の第2配線基板4aが得られる
そして、図20(c)に示すように、第1実施形態と同様な方法により、第2配線基板4aの上面側に第1配線部材W1を接着すると同時に、配線基板1cの下面側に第2配線部材W2を接着する。
【0165】
第1配線部材W1の下面側の配線層80の接続部80aが第2配線基板4aの上側の接続パッドPに埋め込まれて接続されると共に、第2配線部材W2の上面側の配線層80の接続部80aが第2配線基板4aの下側の接続パッドPに埋め込まれて接続される。
【0166】
これにより、第1配線部材W1、第2配線基板4a及び第2配線部材W2によって多層配線基板6aが構成される。
【0167】
第4実施形態の第1、第2配線基板4,4a及び多層配線基板6,6aは第1実施形態と同様な効果を奏する。第4実施形態では、保護絶縁層20の下の酸化アルミニウム基板10には凹凸が設けられていないので、保護絶縁層20の密着性に関しては第3実施形態より不利になる。
【0168】
(第5の実施の形態)
図21は本発明の第5実施形態の第1配線基板の製造方法及びそれを使用して構成される多層配線基板を示す断面図、図22は同じく第2配線基板の製造方法及びそれを使用して構成される多層配線基板を示す断面図である。
【0169】
第5実施形態が第1〜第4実施形態と異なる点は、貫通導体を酸化アルミニウム基板かの外面から突出させたり沈み込ませたりせずに、貫通導体の端面を酸化アルミニウム基板の面と同一高さに配置することにある。
【0170】
第5実施形態では、第1実施形態と同一要素及び同一工程については同一符号を付してその詳しい説明を省略する。
【0171】
図21(a)に示すように、第1実施形態の図3(b)の工程で得られる多数の貫通導体TCを備えた酸化アルミニウム基板10を用意する。第5実施形態では、酸化アルミニウム基板10又は貫通導体TCをエッチングする工程が省略され、全体にわたって貫通導体TCの端面が酸化アルミニウム基板10の外面と同一の高さに設定される。
【0172】
次いで、図21(b)に示すように、第1実施形態と同様な方法により、酸化アルミニウム基板10の上面に、接続パッドが配置される部分に開口部20aが設けられた保護絶縁層20を形成する。
【0173】
その後に、図21(c)に示すように、第1実施形態と同様な無電解めっきにより、保護絶縁層20の開口部20aに接続パッドPを形成する。第1実施形態と同様に、接続パッドPは置換めっきで貫通導体TCの上端面に形成された第1錫層30と還元めっきで形成された第2錫層32から構成される。
【0174】
これにより、第5実施形態の第1配線基板5が得られる。
【0175】
図21(c)に示すように、第5実施形態の第1配線基板5では、酸化アルミニウム基板10の全体にわたって、貫通導体TCの両端面と酸化アルミニウム基板10の両外面とが同一高さになって同一面を構成している。他の要素は第1実施形態の第1配線基板1と同一である。
【0176】
そして、図21(d)に示すように、第1実施形態と同様に、第1配線基板5の下面側にビルドアップ配線層BWが形成されて、多層配線基板6が構成される。さらに、第1実施形態と同様に、半導体チップ60のバンプ電極62が多層配線基板6の接続パッドP(錫又は錫合金)に埋め込まれて接続される。
【0177】
次に、第5実施形態の第2配線基板について説明する。第2配線基板は、第1実施形態の第2配線基板1aと同様に、酸化アルミニウム基板10の両面側に接続パッドがそれぞれ配置される。
【0178】
図22(a)に示すように、上記した図21(b)の工程(保護絶縁層20の形成工程)において、酸化アルミニウム基板10の両面側に、接続パッドが配置される部分に開口部20aが設けられた保護絶縁層20をそれぞれ形成する。
【0179】
次いで、図22(b)に示すように、第1実施形態と同様な無電解めっきにより、両面側の保護絶縁層20の開口部20aに、貫通導体TCに接続される接続パッドP(錫又は錫合金)をそれぞれ形成する。
【0180】
これにより、第5実施形態の第2配線基板5aが得られる。
【0181】
そして、図22(c)に示すように、第1実施形態と同様な方法により、第2配線基板5aの上面側に第1配線部材W1を接着すると同時に、第2配線基板5aの下面側に第2配線部材W2を接着する。
【0182】
第1配線部材W1の下面側の配線層80の接続部80aが第2配線基板5aの上側の接続パッドPに埋め込まれて接続されると共に、第2配線部材W2の上面側の配線層80の接続部80aが第2配線基板5aの下側の接続パッドPに埋め込まれて接続される。
【0183】
これにより、第1配線部材W1、第2配線基板5a及び第2配線部材W2によって多層配線基板6aが構成される。
【0184】
第5実施形態の第1、第2配線基板5,5a及び多層配線基板6,6aでは、酸化アルミニウム基板10の外面に凹凸が設けられていないので、接続パッドP及び保護絶縁層20の密着性に関しては酸化アルミニウム基板10の外面に凹凸を設けた他の実施形態より不利になる。
【0185】
第5実施形態のその他の構成については第1実施形態と同様な効果を奏する。
【符号の説明】
【0186】
1,2,3,4,5…第1配線基板、1a,2a,3a,4a,5a…第2配線基板、6,6a…多層配線基板、10…酸化アルミニウム基板、10a…アルミニウム基板、10b…アルミニウム部、10x…凹部、12…めっき給電層、20…保護絶縁層、20a,44a…開口部、30…第1錫層、32…第2錫層、40…第1層間絶縁層、42…第2層間絶縁層、44…ソルダレジスト、50…第1配線層、52…第2配線層、60…半導体チップ、62…バンプ電極、64…アンダーフィル樹脂、70…絶縁層、80…配線層、82…ビア導体、H…ホール、P…接続パッド、TH…スルーホール、TC…貫通導体,Tx…突出部、VH1…第1ビアホール、VH2…第2ビアホール、W1…第1配線部材、W2…第2配線部材。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化アルミニウム基板と、
前記酸化アルミニウム基板の厚み方向に貫通して形成された多数の貫通導体と、
前記酸化アルミニウム基板の少なくとも一方の面に形成され、接続パッドが配置される部分に開口部が設けられた絶縁層と、
前記絶縁層の開口部に形成され、複数の前記貫通導体の一端側に接続された前記接続パッドとを有し、
少なくとも前記絶縁層の開口部内において、前記貫通導体が前記酸化アルミニウム基板の外面から突出するか又は沈み込むことで凹凸が設けられていることを特徴とする配線基板。
【請求項2】
前記接続パッドは、無電解めっきにより形成された錫又は錫合金層からなることを特徴とする請求項1に記載の配線基板。
【請求項3】
前記接続パッドの中で、前記貫通導体又は前記酸化アルミニウム基板が上側に突出していることを特徴とする請求項1又は2に記載の配線基板。
【請求項4】
前記酸化アルミニウム基板の両面側に、前記絶縁層の開口部が対向した状態で前記絶縁層がそれぞれ形成されており、
前記両面側の絶縁層の開口部に前記接続パッドがそれぞれ形成されていることを特徴とする請求項2に記載の配線基板。
【請求項5】
前記一端側が前記接続パッドに接続された前記複数の貫通導体の他端側に接続されたn層(nは1以上の整数)の配線層をさらに有することを特徴とする請求項2に記載の配線基板。
【請求項6】
前記接続パッドに半導体チップのバンプ電極が接続されていることを特徴とする請求項5に記載の配線基板。
【請求項7】
前記配線基板の上面側の前記接続パッドに接続部が接続された第1配線部材と、
前記配線基板の下面側の前記接続パッドに接続部が接続された第2配線部材とをさらに有することを特徴とする請求項4に記載の配線基板。
【請求項8】
厚み方向に貫通する多数の貫通導体が設けられた酸化アルミニウム基板を用意する工程と、
前記酸化アルミニウム基板の少なくとも一方の面に、接続パッドが配置される部分に開口部が設けられた絶縁層が形成され、かつ、少なくとも前記絶縁層の開口部の前記貫通導体が前記酸化アルミニウム基板の外面から突出するか又は沈み込むことで凹凸が設けられた構造を得る工程と、
前記絶縁層の開口部に、複数の前記貫通導体の一端側に接続される前記接続パッドを形成する工程とを有することを特徴とする配線基板の製造方法。
【請求項9】
前記接続パッドを形成する工程において、
前記貫通導体の露出面に錫又は錫合金からなる置換めっき層を形成した後に、前記置換めっき層に接続される錫層又は錫合金層を無電解めっきにより形成して前記接続パッドを得ることを特徴とする請求項8に記載の配線基板の製造方法。
【請求項10】
前記凹凸は、前記酸化アルミニウム基板の表面をエッチングするか、又は前記貫通導体をエッチングする工程により得られることを特徴とする請求項8又は9に記載の配線基板の製造方法。
【請求項11】
前記凹凸は、前記絶縁層を形成する前に形成されることを特徴とする請求項8乃至10のいずれか一項に記載の配線基板の製造方法。
【請求項12】
前記凹凸は、前記絶縁層を形成した後に形成されることを特徴とする請求項8乃至10のいずれか一項に記載の配線基板の製造方法。
【請求項1】
酸化アルミニウム基板と、
前記酸化アルミニウム基板の厚み方向に貫通して形成された多数の貫通導体と、
前記酸化アルミニウム基板の少なくとも一方の面に形成され、接続パッドが配置される部分に開口部が設けられた絶縁層と、
前記絶縁層の開口部に形成され、複数の前記貫通導体の一端側に接続された前記接続パッドとを有し、
少なくとも前記絶縁層の開口部内において、前記貫通導体が前記酸化アルミニウム基板の外面から突出するか又は沈み込むことで凹凸が設けられていることを特徴とする配線基板。
【請求項2】
前記接続パッドは、無電解めっきにより形成された錫又は錫合金層からなることを特徴とする請求項1に記載の配線基板。
【請求項3】
前記接続パッドの中で、前記貫通導体又は前記酸化アルミニウム基板が上側に突出していることを特徴とする請求項1又は2に記載の配線基板。
【請求項4】
前記酸化アルミニウム基板の両面側に、前記絶縁層の開口部が対向した状態で前記絶縁層がそれぞれ形成されており、
前記両面側の絶縁層の開口部に前記接続パッドがそれぞれ形成されていることを特徴とする請求項2に記載の配線基板。
【請求項5】
前記一端側が前記接続パッドに接続された前記複数の貫通導体の他端側に接続されたn層(nは1以上の整数)の配線層をさらに有することを特徴とする請求項2に記載の配線基板。
【請求項6】
前記接続パッドに半導体チップのバンプ電極が接続されていることを特徴とする請求項5に記載の配線基板。
【請求項7】
前記配線基板の上面側の前記接続パッドに接続部が接続された第1配線部材と、
前記配線基板の下面側の前記接続パッドに接続部が接続された第2配線部材とをさらに有することを特徴とする請求項4に記載の配線基板。
【請求項8】
厚み方向に貫通する多数の貫通導体が設けられた酸化アルミニウム基板を用意する工程と、
前記酸化アルミニウム基板の少なくとも一方の面に、接続パッドが配置される部分に開口部が設けられた絶縁層が形成され、かつ、少なくとも前記絶縁層の開口部の前記貫通導体が前記酸化アルミニウム基板の外面から突出するか又は沈み込むことで凹凸が設けられた構造を得る工程と、
前記絶縁層の開口部に、複数の前記貫通導体の一端側に接続される前記接続パッドを形成する工程とを有することを特徴とする配線基板の製造方法。
【請求項9】
前記接続パッドを形成する工程において、
前記貫通導体の露出面に錫又は錫合金からなる置換めっき層を形成した後に、前記置換めっき層に接続される錫層又は錫合金層を無電解めっきにより形成して前記接続パッドを得ることを特徴とする請求項8に記載の配線基板の製造方法。
【請求項10】
前記凹凸は、前記酸化アルミニウム基板の表面をエッチングするか、又は前記貫通導体をエッチングする工程により得られることを特徴とする請求項8又は9に記載の配線基板の製造方法。
【請求項11】
前記凹凸は、前記絶縁層を形成する前に形成されることを特徴とする請求項8乃至10のいずれか一項に記載の配線基板の製造方法。
【請求項12】
前記凹凸は、前記絶縁層を形成した後に形成されることを特徴とする請求項8乃至10のいずれか一項に記載の配線基板の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2011−171531(P2011−171531A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−34314(P2010−34314)
【出願日】平成22年2月19日(2010.2.19)
【出願人】(000190688)新光電気工業株式会社 (1,516)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月19日(2010.2.19)
【出願人】(000190688)新光電気工業株式会社 (1,516)
【Fターム(参考)】
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