説明

酸化膜の除去方法及びバッチ式半導体デバイス製造装置

【課題】ウェハ表面のエッチング量の均一さを悪化させずに、エッチング量を増加せしめる酸化膜除去方法及びこの方法に用いるバッチ式半導体デバイス製造装置の提供。
【解決手段】フッ化水素又はフッ化アンモニウムをシリコンウェハ表面上の酸化膜と反応させる第1の工程と、この反応によって生じた反応生成物を200℃乃至530℃で加熱・蒸発させて除去する第2の工程とを有するドライエッチング工程を、隣接するシリコンウェハ同士の間隔を2mm乃至5mmに設定して実施する。エッチング室と、マイクロ波励起機構と、ロードロック室と、クリーンブースとで構成され、処理されるシリコンウェハの隣接するウェハ同士を2mm乃至5mmの間隔で載置し得るウェハボートを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化膜の除去方法及びバッチ式半導体デバイス製造装置に関し、特にウェハ上の酸化膜を揮発性の物質に変換して短時間で除去し、面内均一性の優れたウェハを得るための酸化膜の除去方法及びその除去方法に用いるバッチ式半導体デバイス製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体デバイスの微細化が進められると共に、デバイスの動作速度の高速化、高集積化や、薄膜化の要求がますます高まっている。その際に、シリコンウェハ(Si基板)上に各種の薄膜を形成するが、このような種々の成膜工程においては、その下地となる基板表面に自然酸化膜等の酸化膜(SiO膜)が存在するとデバイス特性が悪化するため、成膜前に自然酸化膜等を除去し、活性状態のウェハ表面とし、その上に所望の薄膜を堆積させる必要がある。
【0003】
従来、この自然酸化膜の除去には、フッ酸等を使用する湿式処理や、1000℃程度の高温による水素アニール処理が用いられていた。しかし、微細なホールの底部まで液が浸透し難いこと及びウェハ表面に好ましくないフッ素が残留すること等の問題があり、また、処理温度の低温化と半導体デバイスの微細化に伴って、乾式処理による自然酸化膜除去の要求がある。
【0004】
このような低温、乾式処理の自然酸化膜除去方法の一つとして、少なくとも水素原子を含むガスを高周波放電させ、プラズマを発生させて生成した、少なくとも水素を含むラジカルと三フッ化窒素ガス(NFガス)との混合物から生成したフッ化アンモニウム(NH)をエッチングガスとして用いたエッチング方法が知られている(例えば、特許文献1及び2参照)。このエッチング方法では、前記エッチングガスと基板表面の自然酸化膜とを反応せしめることで基板表面にケイフッ化アンモニウム((NHSiF)等の反応生成物を生じせしめ、この反応生成物を所定の温度に加熱して分解、蒸発させて除去することにより、酸化膜のない清浄な基板表面を得ている。
【0005】
特許文献1の場合、自然酸化物を除去するために要する温度は120〜150℃であり、自然酸化物の除去処理に要する時間は30分強である。しかし、自然酸化膜を除去処理したウェハを取り出すために、室温まで冷却する必要があり、その待機時間を入れると、時間がかかり過ぎる(30分)という問題がある。
【0006】
また、従来は、エッチングガスを基板表面の酸化膜と反応させる第1の工程と、第1の工程により基板表面に生成した揮発性反応生成物(揮発性物質)を加熱除去する第2の工程と、第2の工程で高温になった基板を冷却する第3の工程と、基板を成膜装置に移載する第4の工程と、成膜装置内を成膜温度まで昇温せしめる第5の工程と、成膜装置内で基板上に成膜する第6の工程とで酸化膜除去工程と成膜工程とが実施されていた。しかし、前記第2の工程における揮発性反応生成物の加熱除去を第5の工程で兼ねることにより、前記第2〜4の工程を省略することができる。その際、第5の工程の成膜温度での反応生成物の熱分解によって生じるフッ化水素(HF)又はフッ化アンモニウム等のガスによって二次的なエッチングが生じるが、この二次的なエッチングを利用することによって、酸化膜のエッチング量を従来の方法と比べて大きくできる可能性はある。しかし、この二次エッチングによるエッチング量の基板面内均一性が悪いため、二次エッチングの生じない場合と比べると歩留まりが悪くなるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−133284号公報
【特許文献2】特開2006−229085号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、上述の従来技術の問題点を解決することにあり、Si基板(シリコンウェハ)面内のエッチング量の均一性を悪化させずに、エッチング量を増加せしめるウェハ表面上の自然酸化物を含めた酸化膜(SiO膜)の除去方法及びこの除去方法を実施するためのバッチ式半導体デバイス製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の酸化膜の除去方法は、フッ化水素又はフッ化アンモニウムをシリコンウェハ表面上の酸化膜と反応させる第1の工程と、前記反応によって生じた反応生成物を200℃乃至530℃で加熱・蒸発させて除去する第2の工程とを有するドライエッチング工程を実施して酸化膜を除去する方法であって、隣接するシリコンウェハ同士の間隔を2mm乃至5mmに設定して該ドライエッチング工程を実施することを特徴とする。
【0010】
前記第2の工程における生成物の加熱・蒸発温度が200℃未満であると、2次エッチングの効果が得られないという問題があり、530℃を超えるとエッチング量や分布の制御が難しいという問題がある。また、前記隣接するシリコンウェハ同士の間隔が2mm未満であると、作業が困難であり、5mmを超えると、ウェハ面内のエッチング量の分布が悪化してしまう傾向がある。
【0011】
前記第2の工程における圧力を大気圧程度、好ましくは0.05MPa乃至0.1MPaに設定し、該ドライエッチング工程を実施することを特徴とする。
【0012】
上記ドライエッチング工程を、表面から酸化膜を除去したシリコンウェハ表面上にさらに成膜する工程を実施する成膜装置内で実施することを特徴とする。これにより、装置構成を削減できるというメリットがある。
【0013】
本発明のバッチ式半導体デバイス製造装置は、真空排気可能なエッチング室と、該エッチング室内へ導入される反応ガスを励起して活性種を発生させるためのマイクロ波励起機構と、該エッチング室と連結されている真空排気可能なロードロック室と、該ロードロック室と連結されているクリーンブースとで構成さており、また、ウェハボートとして、処理されるシリコンウェハの隣接するウェハ同士を2mm乃至5mmの間隔で載置し得るウェハボートを有している、シリコンウェハ表面上の酸化膜を除去するためのエッチング装置を有することを特徴とする。
【0014】
本発明のバッチ式半導体デバイス製造装置はまた、真空排気可能なチャンバで構成されており、ウェハボートとして、処理されるシリコンウェハの隣接するウェハ同士を2mm乃至5mmの間隔で載置し得るウェハボートを有している、シリコンウェハ表面上の酸化膜を除去するための高温炉を有することを特徴とする。
【0015】
本発明のバッチ式半導体デバイス製造装置はさらに、真空排気可能なエッチング室と、該エッチング室内へ導入される反応ガスを励起して活性種を発生させるためのマイクロ波励起機構と、該エッチング室と連結されている真空排気可能なロードロック室と、該ロードロック室と連結されているクリーンブースとで構成されており、また、ウェハボートとして、処理されるシリコンウェハの隣接するウェハ同士を2mm乃至5mmの間隔で載置し得るウェハボートを有しており、フッ化水素又はフッ化アンモニウムをシリコンウェハ表面上の酸化膜と反応させる工程を該ウェハボートに処理されるウェハを載置して行うことができるように構成されているシリコンウェハ表面上の酸化膜を除去するためのエッチング装置を有することを特徴とする。
【0016】
本発明のバッチ式半導体デバイス製造装置はさらにまた、真空排気可能なチャンバで構成されており、ウェハボートとして、処理されるシリコンウェハの隣接するウェハ同士を2mm乃至5mmの間隔で載置し得るウェハボートを有しており、フッ化水素又はフッ化アンモニウムをシリコンウェハ表面上の酸化膜と反応させることによって生じた反応生成物を200℃乃至530℃で加熱・蒸発させて除去する工程を、該ウェハボートに処理されるウェハを載置して行うことができるように構成されているシリコンウェハ表面上の酸化膜を除去するための高温炉を有することを特徴とする。
【0017】
本発明のバッチ式半導体デバイス製造装置はさらにまた、上記酸化膜除去方法の第1の工程と第2の工程とを実施できるように構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、隣接するウェハ同士の間隔を2mm乃至5mmとすることで、熱分解によってウェハ間に生じるフッ化水素ガス又はフッ化アンモニウム等のガスが、隣接するウェハの間からウェハの外側へ拡散し、流出するのを抑制することができるので、このガスによる二次的エッチングが利用でき、酸化膜に対するエッチング量の増大とウェハ面内の均一性を実現できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の酸化膜の除去方法に用いるドライエッチング装置の模式的断面図。
【図2】図1に示したドライエッチング装置1によりエッチング処理した後のウェハを加熱処理して反応生成物を蒸発せしめる縦型炉(高温炉)の模式的断面図。
【図3】ウェハを載置するウェハボートの模式的断面図であり、(a)は従来のウェハボートの模式的断面図、(b)は本発明で用いるウェハボートの模式的断面図。
【図4】図1に示すドライエッチング装置及び図2に示す縦型炉を用いて本発明の酸化膜の除去を実施するプロセスを説明するためのフローチャートであり、(a)はドライエッチング装置での処理、(b)は縦型炉での処理。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明に係る酸化膜の除去方法の実施の形態によれば、フッ化水素又はフッ化アンモニウムをシリコンウェハ表面上の自然酸化膜等の酸化膜(SiO膜)と反応させる(例えば、20℃乃至30℃)第1の工程と、前記反応によって生じた反応生成物を200℃以上、好ましくは200℃乃至530℃で加熱・蒸発させて除去する第2の工程とを有するドライエッチング工程を実施して酸化膜を除去する方法であって、隣接するシリコンウェハ同士の間隔を2mm乃至5mmに設定し、及び/又は前記第2の工程における圧力を大気圧程度好ましくは0.05MPa乃至0.1MPaに設定し、該ドライエッチング工程を実施して酸化膜を除去する。
【0021】
前記ドライエッチング工程を、表面か自然酸化膜を除去したシリコンウェハ表面上にさらに成膜する工程を実施する成膜装置内で実施することができる。
【0022】
上記したように、揮発性反応生成物を200℃以上で蒸発・除去させる。自然酸化膜等の酸化膜(SiO膜)を除去した後の各種成膜の工程が200℃以上の温度で実施される場合は、本発明によれば、高温炉などを用いて、わざわざ揮発性反応生成物を蒸発させる工程を設けなくても、揮発性反応生成物はこの成膜工程で蒸発させることができる。成膜装置は、成膜前に装置内温度を予め成膜温度まで上昇させて、装置内が安定した状態で成膜を始めるので、成膜温度に安定させる過程で揮発性反応生成物を蒸発させることができる。そのため、揮発性反応生成物の生成後に、成膜装置内で、この生成物の加熱除去工程と200℃以上で実施される成膜工程とを連続して行うので、酸化膜除去に要する時間を全体として短縮できる。
【0023】
本発明の実施の形態によれば、ウェハ上の自然酸化膜を除去する工程は、(1)水素ガス及び/又はアンモニアガスをマイクロ波やICPや熱によって励起して得られる水素ラジカルと三フッ化窒素ガスとを反応させてフッ化アンモニウムガスを生成せしめ、このフッ化アンモニウムガスからなるエッチングガスとシリコンの酸化膜とを反応させ、ケイフッ化アンモニウムを生成させる工程と、(2)ケイフッ化アンモニウムが生成されているウェハを所定の温度に加熱してケイフッ化アンモニウムを蒸発させる工程とを有する。このような工程を用いることにより酸化膜除去の処理時間を短縮し、また、面内均一性を良好にすることが可能である。
【0024】
上記(1)の工程では、ウェハ上での反応温度は、リモートプラズマを使用する場合、一般に20℃乃至30℃程度で良く、25℃程度が好ましく、温度が40℃を超えて高いと、却ってケイフッ化アンモニウムを生成する反応が進み難い。なお、リモートプラズマを使用しない場合は、使用するプラズマに合わせて反応温度を適宜設定することが出来る。また、上記(2)の工程では、ウェハ温度は200℃以上必要であり、好ましくは200℃乃至530℃であれば十分である。
【0025】
図1は、本発明の酸化膜の除去方法に用いるドライエッチング装置の模式的断面図である。本装置1は、例えば、50枚程度のバッチ単位でシリコンウェハ10の自然酸化膜の除去処理を行うものであり、エッチング室11と、エッチング室内へ導入される反応ガス(N、NH)を励起して活性種(ラジカル)を発生させるためのマイクロ波励起機構12と、エッチング室と連結されているロードロック室13と、ロードロック室と連結されているクリーンブース14とで構成されている。エッチング室11内には、図面上では、処理されるシリコンウェハ10を所定の間隔で載置してある石英製ウェハボート15(図3(b)参照)が、ロードロック室13から搬送され、配置されている状態が示されている。エッチング室11の外周には、ヒータ等の加熱手段16が設けられ、また、このエッチング室には、エッチング室内を排気できるように真空ポンプ17が取り付けられている。ロードロック室13には、室内を排気するための真空ポンプ18が取り付けられている。クリーンブース14内には、ウェハカセット19が載置され、このウェハカセットをロボット20によりクリーンブースとロードロック室との間を搬送できるように構成されている。
【0026】
図2は、図1に示したドライエッチング装置1によりエッチング処理した後のウェハを加熱処理して揮発性反応生成物を蒸発せしめる縦型炉の模式的断面図である。この縦型炉2は、例えば、チャンバ21(高温炉)と、チャンバに連結されているロードロック室22と、ロードロック室と連結されているクリーンブース23とで構成されている。チャンバ21内には、図面上では、処理されるシリコンウェハ24を所定の間隔で載置してある石英製ウェハボート25(図3(b))が、ロードロック室22から搬送され、配置されている状態が示されている。チャンバ21の外周には、ヒータ等の加熱手段26が設けられ、また、チャンバ21には、チャンバ内を排気できるように真空ポンプ27が取り付けられている。ロードロック室22には、室内を排気するための真空ポンプ28が取り付けられている。クリーンブース23内には、ウェハカセット29が載置され、このウェハカセットをロボット30によりクリーンブースとロードロック室との間を搬送できるように構成されている。
【0027】
本発明で用いるドライエッチング装置と縦型炉とを別々に示して説明したが、これらを組み合わせて一つの酸化膜除去装置としてもよいことは勿論である。
【0028】
図3はウェハの載置されている石英製ウェハボートの模式的断面図を示し、(a)は従来のウェハボートを示し、(b)は本発明で用いるウェハボートを示す。図3(a)において、31はウェハ、32はウェハボートであり、隣接するウェハ同士の間隔は、9mmに設定されている。図3(b)において、33はウェハ、34はウェハボートであり、隣接するウェハ同士の間隔は2mm乃至5mmの範囲で等間隔に設定されている。
【0029】
以下、図3(b)に示す石英製ウェハボートを用い、図1に示すドライエッチング装置及び図2に示す縦型炉を用いて本発明の酸化膜の除去を実施するプロセスについて、図4のフローチャートを参照して説明する。
【0030】
例えば、図4(a)のフローチャートに示すように、まず、図1のクリーンブース14内に載置されているウェハカセット19をロボット20によりロードロック室13へ移送し、ここでウェハを図1に示す石英製ウェハボート15に移し、ロードロック室内を所定の圧力(例えば、0.01〜0.1Pa)まで排気する。次いで、ウェハボート15をエッチング室11内に移送した後、反応ガス(例えば、窒素ガス、アンモニアガス等)を導入する際に、マイクロ波励起機構12によりマイクロ波を印加(5〜10分間、また、1〜3kW、好ましくは2.8kW投入)し、励起して生成したHラジカルをエッチング室内へ導入し、圧力200〜800Pa、温度20〜30℃で反応(エッチング)を行う。この反応ガスの導入量は、一般に1000〜15000sccmであればよい。また、反応ガスとしての三フッ化窒素は、マイクロ波励起機構12を介さずに直接エッチング室11内へ導入する(一般に、2000〜4000sccm)。また、反応ガスとしてのアンモニアガス:窒素ガス:三フッ化窒素ガスの混合比は、一般には、1〜2:1〜10:1〜4、好ましくは1〜2:4〜6:2〜4、より好ましくは2:6:3であって、その合計流量が5〜10リットル/分、好ましくは7.2リットル/分であれば良い。このような条件下で所定の時間(5〜20分)エッチングする。
【0031】
上記エッチングプロセスにおいては、アンモニアガスと窒素ガスとの混合ガスを励起して得られる水素ラジカルと三フッ化窒素ガスとの反応により、エッチング室内でフッ化アンモニウムを生成せしめ、このフッ化アンモニウムとウェハ上の酸化膜との反応により、ケイフッ化アンモニウムを形成せしめる。これは、以下の反応式で示される。
【0032】
【化1】

【0033】
エッチングの終了後、反応ガスの導入及びマイクロ波の印加を停止し、エッチング室の排気を行う。エッチング室中のウェハボート15をロードロック室13内へ移送し、このボートからウェハをウェハカセット19に移す。
【0034】
次いで、図4(b)のフローチャートに示すように、上記したようにして得られたケイフッ化アンモニウムが表面に形成されたウェハが載置されているウェハカセット29を、図2に示す縦型炉のクリーンブース23からロボット30によりロードロック室22内へ移送し、ここでウェハを図3(b)に示す石英製ウェハボート25に移し、このウェハボートを所定の温度(例えば、200〜530℃)に保持されているチャンバ(高温炉)21内に移送した後、チャンバ内に窒素ガス等のパージガスを流しながら、上記した所定の圧力、所定の時間(5〜30分)、ケイフッ化アンモニウムを蒸発させる。その後、チャンバ21内をベントし、チャンバ内のウェハボート25をロードロック室22内に移送し、このボートからウェハをウェハカセット29に移し、このカセットをクリーンブース23内へ移送して酸化膜の除去プロセスを終了する。この全工程の処理時間は、40〜60分程度である。
【実施例1】
【0035】
本実施例では、図1及び2に示す装置並びに図3(b)に示す石英製ウェハボートを用い、図4(a)及び(b)に示すフローチャートに従ってシリコンウェハ表面上の自然酸化膜を除去した。このウェハボートとしては、複数枚(例えば、50枚)のシリコンウェハを、隣接するウェハ同士を2mm、3mm、4mm及び5mmの等間隔で載置できるように構成されたものをそれぞれ用い、また、比較のために1.5mm、5.5mm及び10mmの等間隔で載置できるように構成されたものをそれぞれ用いた。
【0036】
始めに、真空中、例えば常温(20〜30℃)で、アンモニアガスと窒素ガスとの混合ガスに対してマイクロ波を印加して励起し、水素ラジカルを得た。かくして得られた水素ラジカルと三フッ化窒素ガスとを反応させてフッ化アンモニウムガスを生成せしめ、エッチングガスとしてのこのフッ化アンモニウムガスとシリコンウェハ上の自然酸化膜とを、常温(20〜30℃)で反応させてケイフッ化アンモニウムを生成させた。このとき、シリコンウェハは、アンモニアガス、窒素ガス、及び三フッ化窒素ガスの混合比が2:6:3で合計流量が14.4リットル/分、圧力が266Paの雰囲気に晒し、8分間励起マイクロ波を2.8kW投入して処理された。
【0037】
次いで、表面にケイフッ化アンモニウムが形成されたシリコンウェハを200℃に保持した高温炉のチャンバ内に入れ、チャンバ内を大気圧程度(0.1MPa)に設定し、30分間処理して、ケイフッ化アンモニウムを蒸発させた後、ウェハを取り出した。
【0038】
上記全工程の処理時間は、70分であった。
【0039】
上記のようにして得られたエッチング済みウェハのエッチング量について、反射分光法により評価した。その結果、隣接するウェハ同士を2mm、3mm、4mm及び5mmの間隔で載置できるように構成された各ウェハボートを用いた場合は、ウェハ間に生じるエッチングガスがウェハ同士の間からウェハの外側へ拡散し、流出するのが抑制されて、二次エッチングによるエッチング量の増大と面内均一化を実現できた。一方、隣接するウェハ同士を1.5mm、5.5mm及び6mmの間隔で載置できるように構成された各ウェハボートを用いた場合、1.5mmでは、ウェハボートにウェハを搬送することが難しいという問題があり、5.5mm及び10mmでは、間隔が広くなるに従って、ウェハ間に生じるエッチングガスがウェハ同士の間からウェハの外側へ拡散し、流出するために、二次エッチングの作用を利用できず、エッチング量の増大や面内均一化を達成できなかった。従って、上記したように、隣接するシリコンウェハ同士の間隔を、2mm乃至5mmに設定した場合に、酸化膜に対するエッチング量の増大と格別のウェハ面内均一化を達成できることが分かった。
【0040】
(比較例1)
二次エッチング(第2の工程)を180℃に保持した高温炉のチャンバ内で行うことを除いて、実施例1の工程を繰り返したところ、2次エッチングの効果が得られず、また、550℃に保持した高温炉のチャンバ内で同様に行ったところ、エッチング量や分布の制御が難しかった。かくして、二次エッチングは、200℃乃至530℃で行うことが好ましい。
【0041】
(比較例2)
二次エッチングでの圧力:0.1MPaを0.1Paに設定して実施例1の工程を繰り返したところ、二次エッチングの効果が見られない。これは、蒸発したフッ化水素やケイフッ化アンモニウムが排気されてしまうためである。また、0.2MPaに設定して同様に行ったところ、目的とするエッチングができなかった。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明によれば、ウェハ表面上に形成されており、半導体デバイス特性の劣化の原因となる自然酸化膜等の酸化膜を除去する際に、二次エッチングによるエッチング量の増大と面内均一化を実現できる。従って、酸化膜の除去された活性状態のウェハ表面に所望の薄膜を堆積させることが可能であるので、半導体デバイス分野で各種成膜の際に利用可能である。
【符号の説明】
【0043】
1 ドライエッチング装置 2 縦型炉(チャンバ)
10 シリコンウェハ 11 エッチング室
12 マイクロ波励起機構 13 ロードロック室
14 クリーンブース 15 ウェハボート
16 加熱手段 17、18 真空ポンプ
19 ウェハカセット 20 ロボット
21 チャンバ 22 ロードロック室
23 クリーンブース 24 シリコンウェハ
25 ウェハボート 26 加熱手段
27、28 真空ポンプ 29 ウェハカセット
30 ロボット 31、33 ウェハ
32、34 ウェハボート


【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ化水素又はフッ化アンモニウムをシリコンウェハ表面上の酸化膜と反応させる第1の工程と、前記反応によって生じた反応生成物を200℃乃至530℃で加熱・蒸発させて除去する第2の工程とを有するドライエッチング工程を実施して酸化膜を除去する方法であって、隣接するシリコンウェハ同士の間隔を2mm乃至5mmに設定して該ドライエッチング工程を実施することを特徴とする酸化膜の除去方法。
【請求項2】
前記第2の工程における圧力を0.05MPa乃至0.1MPaに設定することを特徴とする請求項1記載の酸化膜の除去方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載のドライエッチング工程を、表面から酸化膜を除去したシリコンウェハ表面上にさらに成膜する工程を実施する成膜装置内で実施することを特徴とする酸化膜の除去方法。
【請求項4】
真空排気可能なエッチング室と、該エッチング室内へ導入される反応ガスを励起して活性種を発生させるためのマイクロ波励起機構と、該エッチング室と連結されている真空排気可能なロードロック室と、該ロードロック室と連結されているクリーンブースとで構成さており、また、ウェハボートとして、処理されるシリコンウェハの隣接するウェハ同士を2mm乃至5mmの間隔で載置し得るウェハボートを有している、シリコンウェハ表面上の酸化膜を除去するためのエッチング装置を有することを特徴とするバッチ式半導体デバイス製造装置。
【請求項5】
真空排気可能なチャンバで構成されており、ウェハボートとして、処理されるシリコンウェハの隣接するウェハ同士を2mm乃至5mmの間隔で載置し得るウェハボートを有している、シリコンウェハ表面上の酸化膜を除去するための高温炉を有することを特徴とするバッチ式半導体デバイス製造装置。
【請求項6】
真空排気可能なエッチング室と、該エッチング室内へ導入される反応ガスを励起して活性種を発生させるためのマイクロ波励起機構と、該エッチング室と連結されている真空排気可能なロードロック室と、該ロードロック室と連結されているクリーンブースとで構成されており、また、ウェハボートとして、処理されるシリコンウェハの隣接するウェハ同士を2mm乃至5mmの間隔で載置し得るウェハボートを有しており、フッ化水素又はフッ化アンモニウムをシリコンウェハ表面上の酸化膜と反応させる工程を、該ウェハボートに処理されるウェハを載置して行うことができるように構成されているシリコンウェハ表面上の酸化膜を除去するためのエッチング装置を有することを特徴とするバッチ式半導体デバイス製造装置。
【請求項7】
真空排気可能なチャンバで構成されており、ウェハボートとして、処理されるシリコンウェハの隣接するウェハ同士を2mm乃至5mmの間隔で載置し得るウェハボートを有しており、フッ化水素又はフッ化アンモニウムをシリコンウェハ表面上の酸化膜と反応させることによって生じた反応生成物を200℃乃至530℃で加熱・蒸発させて除去する工程を、該ウェハボートに処理されるウェハを載置して行うことができるように構成されているシリコンウェハ表面上の酸化膜を除去するための高温炉を有することを特徴とするバッチ式半導体デバイス製造装置。
【請求項8】
請求項1又は2記載の酸化膜除去方法の第1の工程と第2の工程とを実施できるように構成されていることを特徴とするバッチ式半導体デバイス製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−38109(P2013−38109A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−170534(P2011−170534)
【出願日】平成23年8月3日(2011.8.3)
【出願人】(000231464)株式会社アルバック (1,740)
【Fターム(参考)】