説明

金属ナノ粒子層を挟んだ薄膜積層体

【課題】 透明かつ低比抵抗の薄膜積層体を提供すること。
【解決手段】 基板上に成膜したZnO薄膜層、その上に成膜した金属ナノ粒子層、更にその上に成膜したZnO薄膜層からなる薄膜積層体であって、結晶質である2つのZnO薄膜層が挟んだ金属ナノ粒子層は金属ナノ粒子を連結した金属ナノ層からなる構造をしており、比抵抗が8.0×10-4Ωcm以下であり、かつ可視光透過率が70%以上の薄膜積層体を得た。本発明の薄膜積層体は、透明導電膜、太陽光発電電極、電磁波シールド材等として使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属ナノ粒子層を挟んだ薄膜積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
ITO膜(Indium Tin Oxide膜)を使用した透明導電膜が知られている。ITO膜はスパッタリング粒子を200℃以上に加熱して表面拡散を起こさせることによって結晶質層を形成し、その比抵抗値は2.5×10−4Ωcm以下になり得る。しかし、結晶化するためには基板温度を上げることが必要であるが、基板温度を上げて成膜すると低比抵抗値は得られない。
【0003】
更に、ITO膜に使われているインジウムは希少金属であるため、このITO膜の代替金属として酸化亜鉛が有望視されている。しかし、低比抵抗値の酸化亜鉛膜は得られておらず、亜鉛の酸化膜である酸化亜鉛は透明であるが、透明導電膜としては使用できない。このため酸化亜鉛にAlなどをドープさせる方法が開発されているが、まだ十分に低い比抵抗値は得られていない。
【0004】
特開2000−129464号公報は、二つの誘電体ベースのコーティング間に金属層を含み、金属層に接触する酸化亜鉛に基づいた薄膜積層体を開示している。赤外線反射特性を有した薄膜積層体に含有する金属層として、銀が有利であると述べている。実施例ではAlをドープしたZnOを用いて、透過率72%を得ているが、金属層は金属ナノ粒子層でなく、しかも薄膜積層体の比抵抗に触れておらず、対象の薄膜積層体が導電膜として利用できるか不明であり、薄膜積層体の構造に改良すべき点がある。
【0005】
特開2006―206424号公報は、透明基板の上に誘電体層と金属層(例.Ag層)を2n層以上に積層(n≧1)した低反射率透明積層体を開示している。実施例に、透明基板としてのガラス板の上に、誘電体層としてのZnO層を、その上に金属層としてのAg層を、更にその上に誘電体層としてのZnO層を積層した低反射率透明積層体を開示している。これによって日射遮蔽性、高断熱性が得られるという。しかし、実施例ではAlを2%含有するZnOをターゲットとして得たZnOにAlをドープしたAZO膜の積層体であり、ZnO膜を室温のような低温で積層体を構成した実施例もないし、Ag層の詳細は不明であり、可視光透過率曲線にプラズモンによる効果が認められていないことからAg層は金属ナノ粒子層でなく、Agの膜構造に改良すべき点がある。

【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000―129464号公報(第7頁、図1)
【特許文献2】特開2006―206424号公報(第9頁、図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
発明者は、希少金属であるインジウムの代替金属として酸化亜鉛を使用しつつ、比抵抗値が低く、透明性がよい薄膜積層体を得るため鋭意検討した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明者は、上記課題を解決する下記の発明した。
1.基板上に、ZnO薄膜層、金属ナノ粒子層、ZnO薄膜層をこの順序に積層し、前記金属ナノ粒子層はAg、Al、Cu、Au、Ni、Pd、Pt、Zn、Cdの群から選ばれた1以上の金属ナノ粒子が結晶成長し相互に連結してナノ層を形成していることを特徴とする薄膜積層体
2.金属ナノ粒子が少なくともAgを含むナノ粒子であると効果的である。
3.金属ナノ粒子層の厚さが5nm〜100nmである前記1又は2に記載の薄膜積層体
4.ZnO、金属ナノ粒子層、およびZnOの各薄膜層をDCマグネトロンスパッタリング法により室温において成膜した前記1、2又は3に記載の薄膜積層体
5.基板材料がガラス、セラミックス等の無機質板、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂である前記1、2、3又は4に記載の薄膜積層体
6.基板材料が透明ガラスで、薄膜積層体の比抵抗が8.0×10-4Ωcm以下で、かつ紫外線域の波長を含んだ可視光透過率が70%以上である前記1、2、3又は4に記載の薄膜積層体
【0009】
基板としては、(1)セラミックス膜(特に透明セラミックス膜)等の無機質板、(2)PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)、PS(ポリスチレン)、PMMA(アクリル)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PPE(ポリフェニレンエーテル)、PA(ナイロン/ポリアミド)、PC(ポリカーボネイト)等の熱可塑性樹脂、(3)PF(フェノール樹脂)、MF(メラミン)等の熱硬化性樹脂が使用できる。透明かつ低抵抗の熱可塑性樹脂フィルム又はシート薄膜を基板に使用すると、PDP、太陽電池、液晶のタッチパネルの電極、さらにはPDP、液晶の電磁波シールに使用できる。
【0010】
本発明の構成要素であるZnO薄膜層、金属ナノ粒子層、ZnO薄膜層は透明性がよいので透明性を有する基板を使用して薄膜積層体を構成し透明性を必要とする用途に使用することが望ましいが、例えばUVレーザーとか、シートダイオードに使用するときは基板が透明性を有すことは必須でない。
【0011】
金属ナノ粒子層のナノ粒子金属は、Ag、Al、Cu、Au等の低抵抗の金属粒子単独で、またはそれらの金属ナノ粒子の組み合わせで使用できる。これらは表面プラズモン現象が発現しやすいからである。その中でも特にAg又はAgと他の低抵抗の金属の組み合わせがよい。
金属ナノ粒子層は、金属ナノ粒子が電気的に連結されて形成されていることが好ましい。
金属ナノ粒子層の厚さは低比抵抗、透明性を確保できれば特に限定されるものではないが、実務的には5nm〜100nm、好ましくは5nm〜50nm、より好ましくは10nm〜30nmがよい。連結して金属ナノ粒子層を形成する金属ナノ粒子の形状と大きさは上記金属ナノ粒子層の厚さ内に収まれば特に制限はない。
【0012】
本発明の金属ナノ粒子層を挟んだ薄膜積層体は、基板上にZnO/金属ナノ粒子層/ZnOの順に積層している。この薄膜積層体は、基板上に設けたZnO薄膜層の上に金属ナノ粒子層を形成した後、さらに、その上にZnO薄膜層を設けることで得られる。成膜成層方法はDCマグネトロンスパッタリング法が好ましいが、これに限定されるものではない。
DCマグネトロンスパッタリング法において傾斜対向したターゲット配置を採用すると、スパッタリング粒子やArによる基板上に成膜するZnO薄膜層および金属ナノ粒子層の損傷を低減できる。
【0013】
本発明の薄膜積層体は、真空中で磁場で制御したスパッタリング法で、基板上に誘電体であるZnO薄膜層を室温において成膜し、その上に金属ナノ粒子層を結晶成長させた後、さらにその上にZnO薄膜層を積層して製造することが望ましい。ZnO薄膜層上に金属ナノ粒子層を形成させることにより、ZnO薄膜層を使用しているにも拘わらず比抵抗を低下させ、かつ透明性を高めたZnO薄膜層/金属ナノ粒子層/ZnO薄膜層からなる薄膜積層体が得られる。
【0014】
本発明の薄膜積層体は、金属ナノ粒子によってプラズモンを発生させ、透過率を向上させたことにも特徴がある。表面プラズモン現象は金属表面に光が照射されると、金属表面の約50nm以下の表面層で光が生じる物理現象である。
透明な二つのZnO膜の間に、相互に連結した金属ナノ粒子からなる金属ナノ粒子を挟んだ本発明の薄膜積層体の表面プラズモン現象は、光の吸収と散乱の二つの因子が原因となって発現する。ZnO膜表面上に金属ナノ粒子層を堆積すると、表面プラズモン現象は金属ナノ粒子層の構造に依存して約540nm付近の波長領域において強く発現され、実用上使用できる光線の波長域を拡大させ、かつ可視光透過率を増大させる効果が高い。金属ナノ粒子層は、可視光域における光の散乱に強い影響を及ぼす。金属(例.Ag)ナノ粒子の結晶成長の形態は、比抵抗の減少、かつ透明性の確保に影響がある。
【0015】
基板を除く薄膜積層体全体の膜厚は特に制限はないが、45nm〜225nm、好ましくは45nm〜110nmであることが望ましい。ZnO膜単独の膜厚が110nm越えることは成膜に多大な時間を要し、かつ透明性が劣るので、生産上好ましくない。
【0016】
本発明の薄膜積層体のZnO薄膜層表面の凹凸の最大粗さは10nm以下、好ましくは5nm以下の平滑性を持つことが望ましい。本発明の薄膜積層体は平滑性が要求される透明導電膜電極用および/または太陽光発電電極用、さらには電磁波シールド用の基板が主な用途になるからである。
【発明の効果】
【0017】
誘電体である二つのZnO薄膜層の間に金属ナノ粒子層を挟んだ本発明のZnO/金属ナノ粒子層/ZnOからなる薄膜積層体は、その比抵抗は8.0×10―4Ωcm以下、条件によっては9.0×10-5Ωcm以下にでき、更に紫外線領域の波長を含んだ可視光透過率が70%以上、条件によっては80%以上にできるので、従来にまして導電性が高く、かつ透明性の高い。本発明により透明導電膜としての酸化亜鉛薄膜の用途を広げることが可能になった。
【0018】
本発明の薄膜積層体は、基板温度が室温であっても、二つの酸化亜鉛間に金属ナノ粒子層を挟んだ構造体からなる薄膜積層体を製造できる。本発明の薄膜積層体は、透明導電膜、太陽光発電電極、電磁波シールド材等として使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施例1の金属ナノ粒子層を挟んだ薄膜積層体の横断面図。
【図2】実施例1の薄膜積層体の製造に使用した傾斜対向型DCスパッタリング装置の模式図。
【図3】実施例1のZnO/Ag/ZnOからなる薄膜積層体におけるZnO膜表面上に堆積したAgナノ粒子層の電子顕微鏡像。
【図4】実施例1のZnO/Ag/ZnO薄膜積層体の可視光透過率曲線。
【図5】実施例1のZnO/Ag/ZnO薄膜積層体の比抵抗−Ag堆積時間曲線
【図6】実施例2のZnO/Al(Ag+Al)/ZnO薄膜積層体の可視光透過率曲線。
【図7】実施例3のZnO/Cu/ZnO薄膜積層体の可視光透過率曲線。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に本発明の実施の形態を説明する。
本発明の薄膜積層体は、図1に示す構造をしており、基板1の表面上に酸化亜鉛ZnO薄膜層2、その上に金属ナノ粒子層3、更にその上に酸化亜鉛ZnO薄膜層4がある。
本発明の薄膜積層体は、図2に示す傾斜対向ターゲット型DCマグネトロンスパッタリング装置を使って製造できる。
【0021】
ターゲットは基板に対して45度の角度で設置しているため、シャッターを開けて基板を回転させながらコーティングを行う時に、スパッタリングされた粒子が基板に到着したときに起こすZnO薄膜の損傷を低減させることができる。そのため、この装置を使用すれば、コーティング時の基板温度は低くでき、室温でコーティングできる。製造したZnO薄膜表面上に金属ナノ粒子層を堆積すること、さらにその上にZnO薄膜層を成膜することにより、低比抵抗の導電性のよい薄膜積層体を得ることができる。その際、金属ナノ粒子層は、基板を固定させて加熱せずに短時間に成膜することが良い。
【0022】
本傾斜対向ターゲット型DCマグネトロンスパッタリング装置は、ターゲット材を4枚同時に設置することができる特徴を有している。ターゲットして酸化物ターゲット(酸化亜鉛)や金属ターゲットのいずれも使用可能である。ターゲットT1として金属1、ターゲットT2として金属2、ターゲットT3として金属3およびターゲットT4として金属4の純金属を同時に設置することができる。導電性の良い薄膜積層体を得るには、金属として電気抵抗が低い金属を使用することが望ましい。
【0023】
ZnO薄膜層の成膜にはターゲットT1に純亜鉛(99.99%)を設置し、スパッタガスとして酸素とアルゴンの混合ガスを用いてスパッタリングするのが望ましい。その際、チャンバー内の圧力を6.0×10−1Pa〜7.0×10−1Paにするのが良い。金属ナノ粒子層のコーティングに際して、金属ナノ粒子層単体の堆積には、ターゲットT3に純銀(99.99%)、純Al(99.99%)、純銅(99.99%)あるいは純金(99.99%)のいずれか一つを設置するのがよい。
【0024】
2種類の金属ナノ粒子がランダムに分布した金属ナノ粒子層を得る場合、例えばターゲットT2に純Al(99.99%)、純銅(99.99%)あるいは純金(99.99%)のいずれか一つ、ターゲットT3に純銀(99.99%)を設置するのが良い。3種類の金属ナノ粒子の金属ナノ粒子がランダムに分布した金属ナノ粒子層を得る場合、例えばターゲットT2として純銅(99.99%)または純金(99.99%)、ターゲットT3として純銀(99.99%)、ターゲットT4として純Al(99.9%)を設置するのがよい。
【0025】
チャンバー内の圧力は6.0×10−1Pa〜7.0×10−1Paにしてアルゴンガスを用いてスパッタリングするのが良い。堆積時間は特に制限はないが、金属ナノ粒子および金属ナノ膜が得られる5秒〜45秒、好ましくは10秒〜30秒が良い。ZnO/金属ナノ粒子層/ZnOからなる薄膜積層体の透明性と比抵抗は、二つのZnO間に挟まれた金属ナノ粒子層の構造(金属ナノ膜と金属ナノ粒子の大きさ、形状および密度等)の影響を受ける。
【実施例1】
【0026】
図2に示す傾斜対向型DCマグネトロンスパッタリング装置を用いてZnO/Ag/ZnOの薄膜積層体を製造した。チャンバー内にあるターゲットT1およびターゲットT3の位置に、それぞれ純亜鉛(純度99.99%、300×62×5mm)板、および純銀(99.99%、300×62×5mm)板を予め取り付けた。また、ガラス基板は中心部の回転台に取り付けた。
【0027】
その後、チャンバー内を3.0×10−3Pa〜3.3×10−3Pa以下になるまで真空にした。ガラス基板表面上にZnO膜を成膜する。まず、チャンバー内にAr/Oの流量比が50/3(sccm)である混合ガスを流入させて、チャンバー内の圧力を6.0×10−1Pa〜7.0×10−1Paに調整した。基板を取り付けた回転台は回転速度5rpmで回転させながら、コイル電流5A、アノード電圧20V、バイアス電圧0V、純亜鉛ターゲットの電流は0.1A、ターゲット電圧250V〜260Vの条件下でスパッタリングした。そのZnO膜の成膜速度は0.514nm/sであった。コーティング時間を100分としてガラス基板表面上に膜厚50nmのZnO膜を得た。
【0028】
次に得たZnO膜表面上にAgナノ粒子層を堆積するために、チャンバー内にArガスを50sccmの流量で流入させた。そのときのチャンバー内の圧力は、6.0×10−1Pa〜7.0×10−1Paとして、基板を取り付けた回転台は固定させた。コイル電流5A、アノード電圧20V、バイアス電圧0V、純銀ターゲットの電流は0.4A、ターゲット電圧270V〜280Vの条件でAgナノ粒子層を堆積した。その堆積速度は0.4nm/sであった。堆積時間を10秒〜45秒に変えてZnO膜表面上に直接Agナノ粒子層を堆積させた。
【0029】
このAgナノ粒子層は、図3の電子顕微鏡写真が示すようにZnO膜表面上に直接堆積した金属ナノ膜上に金属ナノ粒子から構成されていた。Agナノ粒子径は、20nm〜50nmの範囲に分布しており、粒子径が30nm〜40nmのAgナノ粒子が最も多かった。堆積時間が長くなっても、Agナノ粒子径はほとんど同じであり、その密度は増加した。
得たAgナノ粒子層表面上にZnO膜を成膜した。その成膜条件は、上記のZnO膜の成膜条件と同一にした。得たZnO膜は、Agナノ粒子間およびAgナノ粒子頂上に堆積した構造であった。薄膜積層体の成膜中の基板温度は30℃とした。
【0030】
製造した薄膜積層体のガラス基板を含めた最大の可視光透過率は、図4に示すように、Agナノ粒子の堆積時間が10秒では75%、15秒では78%、20秒では87%、25秒では80%、30秒では80%、35秒では74%、40秒では74%、45秒では68%であった。可視光透過率曲線が示すようにAgナノ粒子層の構造によって可視光透過率が変化し、かつその波長域が長波長域から短波長域に変化している。これはAgナノ粒子層の構造に基づく表面プラズモン現象の原因のうち散乱効果が強く現れたものと考えられる。また、紫外線領域の370nmの透過率にピークが現れているが、これは表面プラズモンがAgナノ粒子による吸収効果に依存した現象と考えられる。製造した薄膜積層体の比抵抗は、図5に示すように7.4×10―4Ωcm(堆積時間=10秒)、5.3×10―5Ωcm(堆積時間=20秒)、1.8×10―5Ωcm(堆積時間=30秒)、1.4×10―5Ωcm(堆積時間=40秒)であった。この薄膜積層体のX線回折測定を行ったところ酸化亜鉛の(100)を示す回折ピークとAgの(111)を示す回折ピークが観察され、室温で成膜したZnO薄膜層は結晶質であることが確認できた。また、原子間力顕微鏡より求めた薄膜積層体表面の凹凸は、平均粗さはRa=0.655nmー0.232nmであり、最大粗さは約5.0nmであった。
【実施例2】
【0031】

実施例1と同様に傾斜対向型DCマグネトロンスパッタリング装置を使用して、ZnO/金属ナノ粒子層/ZnOからなる薄膜積層体を製造した。金属ナノ粒子層として、Agナノ粒子層単体、Alナノ粒子層単体並びにAgおよびAlナノ粒子からなるものを別々に製造した。
チャンバー内のターゲットの位置に、ターゲットT1には純亜鉛(純度99.99%、300×62×5mm)板、ターゲットT3には純銀(99.99%、300×62×5mm)板、ターゲットT4には純Al(純度99.99%、300×62×5mm)板を取り付けた。ZnO膜のコーティング条件は、実施例1と同様な条件の下でZnO膜を成膜した。
【0032】
金属ナノ粒子層は、Agナノ粒子層単体あるいはAlナノ粒子層単体をZnO膜表面上に堆積した他、2つの金属ナノ粒子層からなる混合層をZnO膜表面上に直接堆積した。その堆積条件は実施例1と同じとした。ただし、純Alターゲットの電流は0.2A(堆積速度=0.08nm/sec、堆積時間=16秒)および0.4A(堆積速度=0.15nm/sec、堆積時間=13秒)に変えた。金属ナノ粒子層の上にZnO膜を実施例1の条件と同様にして成膜した。
【0033】
製造した薄膜積層体のガラス基板を含めた最大の可視光透過率は、図6に示すように、Agナノ粒子層単体では87%、Alナノ粒子層単体では78%、Ag+Alナノ粒子の混合ナノ粒子層では60%(0.2A)および64%(0.4A)であった。ZnO/金属ナノ粒子層/ZnOからなる薄膜積層体の透明性は、薄膜積層体の間に挟んだ金属ナノ粒子の種類が、最大可視光透過率を変えた。この薄膜積層体の比抵抗値は、Agナノ粒子層単体(堆積時間=20秒);5.6×10―5Ωcm、Alナノ粒子単体(堆積時間=3分);12Ωcm、Ag+Alナノ粒子混合層(堆積時間=16秒);7.6×10―4Ωcm、Ag+Alナノ粒子混合層(堆積時間=13秒);1.8×10―3Ωcmであった。
【実施例3】
【0034】

実施例1と同様に傾斜対向型DCマグネトロンスパッタリング装置を使用してZnO/Cu/ZnOからなる薄膜積層体を製造した。ターゲットT1として純亜鉛(純度99.99%、300×62×5mm)板を設置した他に、ターゲットT3には純銅(99.99%、300×62×5mm)板を取り付けた以外は、成膜条件は実施例1と同様にした。
Cuナノ粒子層は、ZnO膜表面上に直接堆積した。その堆積条件は、純Agと同じにして堆積時間を35秒、70秒、105秒および140秒に変えた。再度、その上にZnO膜を実施例1の条件と同様にして成膜した。
【0035】
製造した薄膜積層体のガラス基板を含めた最大の可視光透過率は、図7に示すように、堆積時間が35秒で79%、70秒で70%、105秒で60%、140秒で53%であった。この薄膜積層体の比抵抗値は、3.8×10―2Ωcm(35秒)、2.9×10―3Ωcm(70秒)、6.1×10―4Ωcm(105秒)、5.4×10―4Ωcm(140秒)であった。
【符号の説明】
【0036】

1 基板
2 酸化亜鉛ZnO薄膜層
3 金属ナノ粒子層
4 酸化亜鉛ZnO薄膜層
T1 ターゲット
T2 ターゲット
T3 ターゲット
T4 ターゲット


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に、ZnO薄膜層、金属ナノ粒子層、ZnO薄膜層をこの順序に積層し、前記金属ナノ粒子層はAg、Al、Cu、Au、Ni、Pd、Pt、Zn、Cdの群から選ばれた1以上の金属ナノ粒子が結晶成長し相互に連結してナノ層を形成していることを特徴とする薄膜積層体
【請求項2】
金属ナノ粒子が少なくともAgを含むナノ粒子である請求項1に記載の薄膜積層体
【請求項3】
金属ナノ粒子層の厚さが5nm〜100nmである請求項1又は2に記載の薄膜積層体
【請求項4】
ZnO、金属ナノ粒子層、およびZnOの各薄膜層をDCマグネトロンスパッタリング法により室温において成膜した請求項1、2又は3に記載の薄膜積層体
【請求項5】
基板材料がガラス、セラミックス等の無機質板、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂である請求項1、2、3又は4に記載の薄膜積層体
【請求項6】
基板材料が透明ガラスで、薄膜積層体の比抵抗が8.0X10-4Ωcm以下で、かつ紫外線域の波長を含んだ可視光透過率が70%以上である請求項1、2、3又は4に記載の薄膜積層体

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−241638(P2010−241638A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−92037(P2009−92037)
【出願日】平成21年4月6日(2009.4.6)
【出願人】(500415346)
【出願人】(509098456)
【Fターム(参考)】