説明

金属物品を処理する方法及びその処理方法により製造した物品

【課題】金属物品を処理する方法及びその処理方法により製造した物品を提供する。
【解決手段】金属物品を処理する本方法は、表面を備えた物品上にクラッディング(2)を融接するステップと、クラッディング(2)を圧縮硬化深さ処理加工するステップとを含むことができる。クラッディングの外表面から測定した平均圧縮硬化深さは、該クラッディングの厚さよりも大きくすることができる。本明細書に含まれるのはまた、本方法により製造した物品である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、総括的には金属を処理する方法に関し、より具体的には、厳しい環境内での耐久性を向上させるように金属を処理する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
回転タービン構成部品は、製造、組立又は運転時に生じた表面損傷に起因する可能性がある耐疲労性能の低下のために早期破損を受けるおそれがある。そのような表面損傷には、鍛造欠陥、表面粗さ、打こん、ノッチ、引張残留応力、金属巻込み、化学偏析或いは酸化物欠陥などのような製造欠陥、並びに固体粒子又は水滴により生じた侵食、腐食孔、応力腐食割れ、異物損傷、摩擦、フレッティング或いは摺動摩耗などのような使用時発生欠陥が含まれる。
【0003】
耐疲労性能を高める方法には、溶射、メッキ、クラッディング、物理又は化学蒸着、ガス又はイオン窒化、高周波又は火炎焼入れ、浸炭並びにホウ化処理のような様々な表面強化施工手段を用いた様々な形式の表面強化法の適用が含まれる。残念ながら、単一の技術的方法が、全ての損傷メカニズムに対して有効であるということにはならない。薄肉皮膜は、運転状態下では耐久性に欠けており、一方、厚肉皮膜は、皮膜施工プロセスで生じた親金属表面損傷、熱影響部、皮膜欠陥、皮膜脆性、基体の化学変質、親金属との熱膨張不整合、並びに/或いは皮膜と親金属との間の物理的、化学的及び/又は機械的特性の差異で生じたその他の不適合性のために剥落するか若しくは耐疲労性能の低下を生じる傾向になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第6623579号明細書
【特許文献2】米国特許第6637643号明細書
【特許文献3】米国特許第6960395号明細書
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】JAYARAMAN, N., et al, Application of Low Plasticity Burnishing (LPB) to improve the corrosion fatigue performance and FOD tolerance of alloy 450 stainless steel, Proceedings of the Tri-Service Corrosion Conference, Las Vegas, NV, November 17-21, 2003
【非特許文献2】CHEN, D., et al.; Mechanisms of High Temperature Fatigue in Silicon Carbide Ceramics; Fatigue and Fracture Behavior of High Temperature Materials: pp 1-8, The Minerals, Metals & Materials Society 2000 Fall Meeting, St. Louis, Missouri, USA, October 8-12, 2000
【非特許文献3】SHIRATO K., et al.; High Temperature Cyclic Fatigue-Crack Growth in Monolithic Ti3SiC Ceramics; Fatigue and Fracture Behavior of High Temperature Materials; Peter K. Liaw Editor; pp 71-75, The Minerals, Metals & Materials Society 2000 Fall Meeting, St. Louis, Missouri, USA, October 8-12, 2000
【非特許文献4】PREVEY, Paul S., et al.; Improved HCF Performance and FOD Tolerance of Surface Treated Ti-6-2-4-6 Compressor Blades; 9th National Turbine Engine High Cycle Fatigue Conference; Pinehurst, North Caroline, March 16-19, 2004
【非特許文献5】SINGH, Nirbhay, et al., Effect of stress ratio and frequency on fatigue crack growth rate of 2618 aluminum alloy silicon carbide metalmatrix composite; Bull. Mater. Sci., Vol.24, No. 2. April 2001, pp 169-171
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の懸案事項の結果として、上に示した損傷メカニズムに対する抵抗力を与えるだけでなく、保護層(例えば、皮膜)の施工により或いは使用時における突然の又は進行性の保護層の喪失により発生する可能性がある損傷に対する高い許容性をも与えることになるデュアル保護方法に対する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書に開示しているのは、金属物品を処理する方法及びその処理方法により製造した物品である。
【0008】
1つの実施形態では、金属物品を処理する本方法は、表面を備えた物品上にクラッディングを融接するステップと、クラッディングを圧縮硬化深さ処理加工するステップとを含むことができる。クラッディングの外表面から測定した平均圧縮硬化深さは、該クラッディングの厚さよりも大きくすることができる。
【0009】
上記の及びその他の特徴は、以下の図及び詳細な説明によって例示する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】1つの例示的な表面強化プロセスを示す例示的なフローチャート。
【図2】例示的なタービンブレードの図。
【図3】図2のタービンブレードの前縁セクションの拡大図。
【図4】表面強化プロセスの適用によるベース材料の損傷率の著しい減少を示す例示的なグラフ。
【図5】レーザショックピーニング又は低可塑性バニシングのような特殊表面加工プロセスによって得られた圧縮残留応力の深さの増加を示す例示的なグラフ。
【図6】使用時に生じた損傷の存在下での耐疲労性能の強化又は表面強化加工プロセス(例えば、クラッディング、皮膜)による耐疲労性能の強化に対する深圧縮硬化発生プロセスの効果を示す例示的な棒グラフ。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、例示的な実施形態でありまた同様の要素には同じ符号を付した図を参照する。
【0012】
本明細書に開示するのは、損傷メカニズムに抗する長期保護と、皮膜を通り抜けて貫入する可能性がある又は該皮膜が過酷な運転条件により摩滅するような場所に発生する可能性がある表面損傷に対する高い許容性とを達成する方法である。特定の損傷メカニズム(例えば、腐食、フレッティング、侵食)に対する保護に利用可能な多くの皮膜が存在するが、単一の皮膜で全ての要件を満たすことはできない。例えば、蒸着法(物理的、化学的)によって施工された皮膜は、薄くなる(0.005インチ(0.127mm)よりも薄い)、多孔質になる、及び/又は脆弱になる傾向があり、また物品に対して機械的に接合(例えば、接着)され、従って過酷な運転条件下では長期耐久性に欠ける。溶射皮膜、例えば熱溶射皮膜(プラズマ、HVOF、等々)は、それらは最大0.020インチ(0.51mm)までの厚さを有しているが、同様に多孔質でありかつ/又は脆弱であり、単に機械的に接合されるに過ぎず、また過酷な運転条件下では長期耐久性に欠ける。回転部分(例えば、ブレード、ベーン、ステータ、等々のようなタービン構成部品)において、固体粒子、液滴又は吸込み異物は、保護皮膜を次第に又は突然に遊離させる。
【0013】
熱溶融法によって施工されたクラッディングのような厚い(すなわち、0.02インチ(0.51mm)よりも暑い)皮膜は、密度が高くかつ物品に対して冶金学的に接合される(例えば、物品及びクラッディングの接合部が該物品及びクラッディングの混合物となるように、例えば物品に対して融着される)。これらの皮膜は長期耐久性をもたらすことができるが、これらの皮膜は、熱影響部損傷を引き起こし、皮膜又はベース金属熱影響部内に割れを発生させ、また/或いは材料性能を大幅に低下させるおそれがある高い引張残留応力を生じさせる傾向がある。
【0014】
1つの又は複数の皮膜を用いて十分でない状態で修正されたか及び/又は皮膜によって引き起こされたかのいずれかである上記の問題に対処するために、厚く(0.02インチ(0.51mm)以上)かつ高い耐久性がある保護皮膜(例えば、クラッディング)を施工し、その後に深い圧縮硬化(例えば、残留応力層)(クラッディングの厚さよりも大きい)を生じさせるプロセス(例えば、レーザショックピーニング及び/又は低可塑性バニシング)を行って、被覆プロセスに起因する可能性がある深い欠陥或いは製造又は使用時に発生する可能性がある表面又は表面近くの損傷に対する許容性を与えるステップを含むデュアル保護方式が考案されている。従って、本明細書に開示しているのは、損傷抵抗力並びに損傷許容性の両方を備えるようにタービンブレードのような金属物品を処理する方法である。本方法は、相乗的な加工プロセスの組合せを用いている。
【0015】
意外にも、深層圧縮硬化プロセス及び厚肉皮膜損傷抵抗層の両方を含むプロセスの組合せにより、損傷許容性及び損傷抵抗力の相乗作用が得られることが見出された。クラッディングは耐高サイクル疲労(HCF)性能を低下させまた深圧縮硬化処理もまた耐HCF性能を低下させることは知られている。クラッディングがバージン材料の耐高サイクル疲労性能を低下させることを考えれば、クラッディングを備えた物品が深圧縮硬化処理加工(例えば、レーザショットピーニング及び/又は低可塑性バニシング)と相乗的に作用し合って、深圧縮硬化処理加工のみで得られる耐高サイクル疲労性能よりも大きくまたバージン材料の耐高サイクル疲労性能よりさえも大きい耐高サイクル疲労性能を達成することになることは、全く予期しないものであった。
【0016】
損傷抵抗力は、空気ストリーム中の固体粒子又は水滴によって生じる侵食、多孔質の又は非連続性の付着物と組合さった腐食性環境によって生じる腐食孔、或いは腐食作用物、引張応力及び/又は感受性材料条件の存在下での応力腐食割れのようなメカニズムにより損傷を促進させる可能性がある過酷な運転条件に抗してベース材料を保護する。
【0017】
損傷抵抗力は、様々な被覆方法(例えば、溶射、メッキ、物理蒸着及び/又は化学蒸着)を使用する多様な皮膜によって得ることができる。しかしながら、これら皮膜の大部分は、その厚さが制限され、回転タービンブレードが直面する過酷な環境内では長期耐久性が得られそうにない。さらに、これらの皮膜に必要な表面前処理(例えば、乾式グリッドブラスト)並びに被覆プロセスそれ自体は、ベース材料の耐疲労性能を低下させる可能性がある。耐摩耗(例えば、侵食及び/又は腐食)材料の金属クラッディング(例えば、融接プロセス(例えば、レーザ溶接、プラズマ溶接、タングステン不活性ガス(「TIG」)溶接、等々)のいずれかによって施工された(ステライト、タングステンカーバイド及びその他)のような硬質皮膜)は、長期耐久性に十分な厚さの冶金学的接合保護層を形成することができる。本明細書で使用する場合に、クラッディングは、0.015インチ(0.381mm)以上の厚さを有する金属皮膜を含むことを意図している。具体的には、このクラッディングは、0.015インチ(0.381mm)〜0.25インチ(6.4mm)、或いはより具体的には、0.020インチ(0.51mm)〜0.15インチ(3.81mm)、或いはさらにより具体的には、0.020インチ(1.2mm)〜0.05インチ(1.27mm)の厚さを有することができる。
【0018】
クラッディングに隣接する熱影響部での高硬度(400、例えば400〜550以上のヌープ硬さ)を回避するために、クラッディングの第1の層は、ベース金属及びクラッディング材料(例えば、ニッケル及び/又はニッケル合金中間層のような金属又は金属合金中間層)との適合性を有する比較的軟質材料(例えば、350、例えば200〜350よりも小さいか又はそれに等しいヌープ硬さ)を含むことができ、後続の層はクラッディング材料(例えば、ステライト)になっている。中間層の厚さは、中間層及びクラッディング全体の厚さの20%よりも小さいか又はそれに等しくすることができる。例えば、中間層は、0.005インチ(0.127mm)〜0.015インチ(0.381mm)の厚さを有することができる。そのような中間層の使用により、クラッディングの熱影響部での応力腐食割れ、耐疲労性の低下及び/又は靭性の低下の危険性を減少させることができる。
【0019】
物品上にクラッディングを配置する時に、熱影響部が形成される。クラッディングプロセスと関連する1つの又は複数の熱影響部及び引張残留応力は、大幅な耐疲労性能の低下を引き起こす可能性がある。被覆又はクラッディング加工プロセスによる耐疲労性の低下を克服する高損傷許容性は、残留圧縮応力の大きな深さ(クラッディング及びあらゆる中間層の組合せの深さよりも大きい)を生じさせることによって得ることができる。平均圧縮硬化深さは、クラッディングの深さ(クラッディングの外表面から該クラッディングを通って物品まで測定した)を越えるのが望ましく、さらに関連する熱影響及び/又は機械的変形層の深さを越えるのがより望ましい。一般的なショットピーニングは、皮膜又はクラッディング影響ゾーンを制圧するのに必要な圧縮残留応力の大きな深さ(例えば、一般的に従来型のショットピーニングは、0.015インチ(0.381mm)よりも小さいか又はそれに等しい圧縮硬化深さを得ることができる。)を生じさせることができないことが明らかになった。従って、レーザショックピーニング(「LSP」)及び/又は低可塑性バニシング(「LPB」)のような方法が、所望の圧縮硬化深さを得るために用いられる。レーザショックピーニング及び低可塑性バニシングは、0.05インチ(1.27mm)以上、或いは具体的には、0.075インチ(1.90mm)以上、或いはより具体的には、0.10インチ(2.54mm)以上の平均圧縮硬化深さを得ることができる。
【0020】
図1のフローチャートは、例示的な表面強化プロセスを示している。このプロセスは、クラッディングを受ける領域(例えば、スロット)を物品内に形成するステップを含む。スロットは、本発明の相乗的結果を得るためには必要とされないが、所望の構成部品の仕様に適合するように一般的に用いられる。この領域は、クラッディング及び任意選択的中間層の組合せの所望の寸法(深さ、幅及び高さ)に適合するような幾何学形状を有することができる。クラッディング及び任意選択的中間層は次に、この領域内に配置することができる。任意選択的に、クラッディングのオーバフィルは、該クラッディングを物品に合った所望の仕様に機械加工しかつ融合させる(例えば、研削(グラインディング)しかつ研磨(ポリシング)する)ことによって除去することができる。クラッディングが所定の位置に配置されると、その表面は任意選択的に、残留圧縮応力処理加工のために前処理しかつ/又は調整することができる。表面の前処理には、例えば熱処理(例えば、応力除去処理)、化学的処理、タンブリング、ブレンディング、ポリシング及び/又はショットピーニングを含むことができる。深残留圧縮応力処理加工するステップは、クラッディング表面及び該クラッディング表面の周りの隣接領域をレーザショックピーニングするステップ及び/又はそれらを低可塑性バニシングするステップを含むことができる。残留圧縮応力処理加工するステップの後に、その表面は次に、所望に応じて任意選択的にさらに加工することができる。例えば、損傷を除去するような後処理加工を用いることができ(例えば、ガラスビードピーニングを用いて、表面を平滑にしかつ/又は引張応力のような付加的残留応力を除去することができる。)、また/或いは加工領域はさらに、必要に応じて研磨(例えば、振動ポリシング)することができる。
【0021】
従って、本方法は、物品の所望の領域をクラッディング加工する融接プロセス(例えば、レーザクラッディング、プラズマリバースアーク、タングステン不活性ガス、等々)を用いるステップと、次に圧縮硬化深さピーニング加工プロセス(クラッディングの深さ(厚さ)よりも大きい該クラッディングの表面から測定した平均圧縮硬化深さまで)を用いるステップと含むことを理解されたい。任意選択的に、これらのプロセスの前、これらのプロセスの間及び/又はこれらのプロセスの後に、物品を準備し、清浄化し又は処理加工するための様々な準備及び処理作業を行うことができる。幾つかの実施可能性があるプロセスには、クリーニング(例えば、超音波浴、溶剤浴、等々)、サーフェシング(例えば、グリットブラスト、EDM、グラインディング、ポリシング)、機械加工(例えば、EDM、グラインディング)、表面改質(例えば、局所的熱処理、ピーニング、等々)が含まれる。
【0022】
図2は、例示的なタービンブレードの斜視図であり、一方、図3は、図2の前縁セクション3の拡大図である。図3に示すように、前縁セクションは、スロット4内に配置されたクラッディング2を含むことができ、セクション6は、クラッディング領域の周りに所望の圧縮残留応力を得るように処理加工された領域を示している。例えば、クラッディング領域の周りの最大0.5インチ(12.7mm)までを処理加工することができる。1つの実施形態では、クラッディング領域の周りの0.25インチ(6.35mm)〜0.375インチ(9.52mm)を処理加工することができる。
【0023】
図4は、損傷(例えば、重量損失、食孔深さ)対時間のグラフ図である。これから解るように、過酷な運転条件に曝される部分上に保護グラッディング又は皮膜(例えば、ステライト)を施工することによって大きな損傷率の減少が得られる。
【0024】
図5は、物品の表面の下方での残留応力対深さを示すグラフ図である。これから解るように、大きな圧縮残留応力深さの増加は、材料の表面を物理的に叩くショット(例えば、鋼、ステンレス鋼、セラミック又はガラス製の球形鋳造ショット或いは調整カットワイヤ(鍛造)ショット)を使用するショットピーニングプロセスと比べて、レーザショックピーニング(LSP)(レーザショックピーニングは衝撃波を使用する)及び低可塑性バニシング(LPB)のようなプロセスで達成可能である。圧縮硬化深さは、深い表面損傷に対する許容性をもたらすことができる。
【0025】
最後に、図6は、交互応力(平均からピーク応力まで)対平均応力を示す推定耐高サイクル疲労性能曲線を示すグラフ図である。この図は、レーザショックピーニング(LSP)又は低可塑性バニシングのようなプロセスによって得られた深圧縮硬化による大きな損傷許容性の強化を示している。ライン8は、ポリシング形状マークが荷重方向と平行でありかつ表面応力がゼロ又は僅かな圧縮状態に近くなるように表面をポリシングすることによって得られた低応力研削状態におけるベース(親)金属上で得られた結果を示している。このラインは、深圧縮硬化プロセス(例えば、レーザショックピーニング)をしていない状態かつクラッディングをしていない状態でのバージンかつ無損傷のベース材料性能を表している。線形14は、クラッディング又は深圧縮硬化プロセスをしていない状態で製造時に引き起こされた損傷(溶融欠陥、鍛造欠陥、熱処理の影響、急冷割れ、機械加工損傷、表面粗さ、引張応力、等々)及び/又は運転時に引き起こされた損傷(侵食、腐食、食孔、異物損傷、摩耗、等々)に起因したバージン材料に対する耐疲労性能の潜在的低下を示している。線10は、粒径及び微細構造の範囲を含む熱影響部、或いは温度勾配及び温度膨張差作用による皮膜及び/又は熱影響部内の高引張残留応力によって引き起こされたクラッディング/皮膜プロセスに起因する、若しくはクラッディング又は被覆に先立つ表面の前処理(放電加工、ミーリング、乾式グリットブラスト、等々)によって引き起こされた表面損傷に起因する、無損傷かつバージンのベース金属についての耐高サイクル疲労性能の低下を示している。線16は、圧縮硬化深さ処理加工に起因する、無損傷かつバージンのベース金属についての耐高サイクル疲労性能の低下を示している。線12は、高損傷許容性をもたらす深圧縮硬化プロセス(例えば、レーザショックピーニング)と長期間持続する損傷抵抗力をもたらすクラッディングとの組合せの相乗的効果を示している。線12は、線14及び線10において受けたのと同じ損傷の場合であっても大きな許容性を示す。
【0026】
図から明らかなように、相乗的プロセスにより、深圧縮残留応力層に起因する大いに高くなった損傷許容性並びに過酷な使用時条件に対する損傷(侵食、腐食、食孔、異物損傷、摩耗、等々)抵抗力を含む物品が得られる。上述の損傷メカニズムの場合であっても、本物品は、元の、バージンのかつ無損傷の材料状態に等しいか又はそれを越える耐高サイクル疲労性能を有する。
【0027】
特に明記しない限り、本明細書で使用する技術的及び科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者により普通に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に開示した範囲は、包括的なものでありかつ組合せ可能である。(例えば、「最大25重量%まで、或いはより具体的には、5重量%〜20重量%」の範囲は、「5重量%〜25重量%」の範囲の端点及び全ての中間値などを包含する)。「組合せ」というのは、ブレンド、混合物、合金、反応生成物及び同様のものを包含する。さらに、本明細書では、「第1の」、「第2の」及び同様のもののような用語は、如何なる順序、数量又は重要度をも表すのではなく、むしろ1つの要素を別の要素と区別するために使用しており、また本明細書では、「数詞のない表現」は、数量の限定を表すのではなく、むしろ記述したアイテムの少なくとも1つが存在していることを表す。本明細書で使用する場合における「1つの又は複数の」という表現は、それが修飾する用語のアイテムの単数及び複数の両方を含むことを意図しており、従って、その用語のアイテムの1つ又はそれ以上を含む(例えば、1つの又は複数の着色剤というのは、1つの又はそれ以上の着色剤を含む)。「±10%」という表記法は、表示した測定値が、記述値のマイナス(−)10%の量からプラス(+)10%の量まで存在することができることを意味する。明細書全体にわたる「1つの実施形態」、「別の実施形態」、「実施形態」、等々という言い方は、その実施形態に関して説明した特定の要素(例えば、特徴、構造及び/又は特性)が、本明細書に記載した少なくとも1つの実施形態内に含まれ、またその他の実施形態内に存在することができ或いは存在しなくてもよいことを意味する。さらに、記載した要素は、様々な実施形態においてあらゆる好適な方法で組合せることができ、またその中でそれら要素を記載している特定の組合せに限定されるものではないことを理解されたい。
【0028】
例示的な実施形態に関して本発明を説明してきたが、本発明の技術的範囲から逸脱することなく、様々な変更を行うことができかつ均等物をその要素と置き換えることができることは当業者には分かるであろう。さらに、本発明の本質的な技術的範囲から逸脱することなく、特定の状況又は物的事項を本発明の教示に適合するように多くの改良を行うことができる。従って、本発明は、本発明を実行するために考えられる最良の形態として開示した特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明は特許請求の範囲の技術的範囲内に属する全ての実施形態を含むことになることを意図している。
【符号の説明】
【0029】
2 クラッディング
4 スロット
6 セクション

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属物品を処理する方法であって、
物品表面を備えた物品上に、該物品表面と対向するその側面上に位置した外表面を有するクラッディングを融接するステップと、
前記クラッディングの外表面から測定した平均圧縮硬化深さが該クラッディングの厚さよりも大きくなるように該クラッディングを圧縮硬化深さ処理加工するステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記融接するステップが、耐摩耗材料を多層クラッディングするステップを含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記耐摩耗材料がステライトである、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記圧縮硬化深さ処理加工するステップが、レーザショックピーニングするステップ及び/又は低可塑性バニシングするステップを含む、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記平均圧縮硬化深さが0.05インチ(1.27mm)以上である、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記平均圧縮硬化深さが0.075インチ(1.90mm)以上である、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記平均圧縮硬化深さが0.10インチ(2.54mm)以上である、請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記融接するステップが、レーザ溶接、プラズマ溶接及びタングステン不活性ガス溶接から成る群から選択された加工プロセスを含む、請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記クラッディングを受ける陥凹部を前記物品内に形成するステップをさらに含み、前記クラッディングが、前記陥凹部内に融接される、
請求項1記載の方法。
【請求項10】
前記圧縮硬化深さ処理加工するステップの後に前記物品を後処理加工するステップをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項11】
前記圧縮硬化深さ処理加工するステップの前に前記物品を前処理加工するステップをさらに含み、前記前処理加工するステップが、ショットピーニング、ポリシング、ブレンディング、タンブリング、化学処理加工、及び上述の前処理加工の少なくとも1つを含む組合せから成る群から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項12】
前記物品が前縁を備えたタービンブレードであり、前記クラッディングが前記前縁内の陥凹部に融接される、請求項1記載の方法。
【請求項13】
前記クラッディングの周りの領域において前記物品を圧縮硬化深さ処理加工するステップをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項14】
前記物品と前記クラッディングとの間に中間層を融接するステップを含む、請求項1記載の方法。
【請求項15】
前記クラッディングが0.02インチ(0.51mm)よりも大きい厚さを有する、請求項1記載の方法。
【請求項16】
物品上に、厚さを有しかつ該物品と対向するその側面上に外表面を有するクラッディングを融接するステップと、
前記クラッディングの外表面から測定した平均圧縮硬化深さが該クラッディングの厚さよりも大きくなるように該クラッディングを圧縮硬化深さ処理加工するステップと
を含むプロセスによって形成される物品。
【請求項17】
金属物品を処理する方法であって、
クラッディングを受ける領域を前記物品内に準備するステップと、
物品表面を備えた物品上に、該物品表面と対向するその側面上に位置した外表面を有するクラッディングを融接するステップと、
前記クラッディング及び該クラッディングの周りの前記物品にレーザショックピーニング及び低可塑性バニシングの少なくとも1つを行うことによって加工物品を形成して、前記クラッディングの外表面から測定した平均圧縮硬化深さが該クラッディングの厚さよりも大きくなった該加工物品を形成するステップと
を含む方法。
【請求項18】
前記クラッディングが、前記物品表面と接触する中間層を含み、前記中間層が、前記クラッディング厚さの20%よりも小さい中間層厚さを有する、請求項17記載の方法。
【請求項19】
前記クラッディングを熱処理するステップをさらに含む、請求項17記載の方法。
【請求項20】
前記クラッディングが、前記物品表面と接触する中間層を含み、前記中間層が、前記クラッディング厚さの20%よりも小さい中間層厚さを有する、請求項19記載の方法。
【請求項21】
前記加工物品をショットピーニングするステップをさらに含む、請求項16記載の方法。
【請求項22】
前記物品が、鋼又はステンレス鋼又は高クロム鋼のような鉄合金材料を含む、請求項17記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−540(P2010−540A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−143833(P2009−143833)
【出願日】平成21年6月17日(2009.6.17)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】