説明

金属膜形成方法

【課題】本発明の目的は、多大なエネルギーを必要とせず製造が可能で、基板との密着性に優れ、且つ、基板との界面における凹凸が小さい金属膜を簡便な工程により形成しうる金属膜形成方法を提供する。
【解決手段】(a)基板上に、側鎖にシアノ基を有するユニットを含むポリマーを塗布してプライマー層を形成するプライマー層形成工程と、(b)該プライマー層表面に、無電解メッキ触媒またはその前駆体と相互作用する官能基及び重合性基を有するポリマーを塗布してポリマー層を形成するポリマー層形成工程と、(c)該ポリマー層に無電解メッキ触媒またはその前駆体を付与する触媒付与工程と、(d)無電解メッキを行い、ポリマー層上に金属膜を形成する金属膜形成工程と、を有する金属膜形成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板との密着性が良好である金属膜を形成しうる金属膜形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基板上に形成された金属膜は、パターン状にエッチングされることで様々な電化製品に、配線などとして使用されている。基板上に形成された金属膜(金属基板)は、基板表面を凹凸処理してアンカー効果により基板と金属層との密着性向上を図っていた。その結果、形成された金属膜は、基板界面部が凹凸状となり、電気配線として使用する際には、高周波特性が悪くなるという問題点があった。さらに、基板表面を凹凸処理するために、クロム酸などの強酸で基板を処理するという煩雑な工程が必要であり、改良が望まれていた。
【0003】
この問題を解決する為に、基板にモノマーを含む塗布液を塗布し、電子線やUV光を照射することにより、基板上に表面グラフトポリマーを導入し、無電解メッキにより金属膜を形成する方法が提案されている(特許文献1参照。)。この方法によれば、基板表面に凹凸を形成することなく、金属膜を形成しうるが、グラフトポリマーの形成にあたっては、基板に液状のモノマーを塗布し、液状のモノマーが存在している状態で電子線やUV光を照射する工程を必要としており製造上のハンドリングが困難であることが予想される。また、ここでは、実際の基板表面の状態や、基板と金属層との密着性について詳細な検討は未だなされていなかった。
【0004】
また、基板上にグラフトポリマーを導入して基板と金属層との密着性を向上する手法に関しては、ポリイミド基板にプラズマ処理を行って、ポリイミド基板表面に重合開始基を導入し、この重合開始基からモノマーを重合させてグラフトポリマーを基板上に導入し、当該グラフトポリマー上に金属層(銅層)を形成することで、ポリイミド基板と銅層との密着性を改良する方法が開示されている(非特許文献1及び2参照。)。しかし、この方法には、プラズマ処理という大掛かりな処理が必要であり、処理には大きなエネルギーが必要であり、より簡便な方法が求められていた。
【特許文献1】特開昭58−196238号公報
【非特許文献1】En Tang Kang,Yan Zhang,”Advanced Materials”,20,p1481−p1494
【非特許文献2】N.Inagaki,S.Tasaka,M.Matsumoto,”Macromolecules”,29,p1642−p1648
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来の技術の欠点を考慮してなされたものであり、以下の目的を達成することを課題とする。
即ち、本発明の目的は、多大なエネルギーを必要とせず製造が可能で、基板との密着性に優れ、且つ、基板との界面における凹凸が小さい金属膜を簡便な工程により形成しうる金属膜形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、鋭意検討の結果、シアノ基を側鎖に有するポリマーをプライマー層に用いることで、基板界面の凹凸が少ない場合であっても、密着性に優れた金属膜が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明の金属膜形成方法は、(a)基板上に、側鎖にシアノ基を有するユニットを含むポリマーを塗布してプライマー層を形成するプライマー層形成工程と、(b)該プライマー層表面に、無電解メッキ触媒またはその前駆体と相互作用する官能基、及び、重合性基を有するポリマーを直接化学結合させてポリマー層を形成するポリマー層形成工程と、(c)該ポリマー層に無電解メッキ触媒またはその前駆体を付与する触媒付与工程と、(d)無電解メッキを行い、ポリマー層上に金属膜を形成する金属膜形成工程と、を有することを特徴とする。
本発明の金属膜形成方法においては、(d)無電解メッキを行った後に、さらに、(e)電気メッキを行うこともできる。
また、金属膜をパターン状に形成する場合には、前記(b)ポリマー層形成工程の後、パターン状にエネルギーを付与する工程と、その後、現像する工程とを行って、パターン状のプライマー層を形成すればよい。
さらに、形成された金属膜の密着性向上を目的として、前記(d)金属膜形成工程の後、エネルギーを付与する工程を行うことができる。
【0007】
本発明に用いられる側鎖にシアノ基を有するユニットを含むポリマーとしては、下記一般式(1)で表されるユニットを含む重合体であるであることが好ましい。
【0008】
【化1】

【0009】
(前記一般式(1)中、Rは、水素原子、又は、置換若しくは無置換のアルキル基を表し、Xは、単結合、置換若しく無置換の二価の有機基、エステル基、アミド基、又は、エーテル基を表し、Lは、置換若しくは無置換の二価の有機基を表す。)
なお、プライマー層の塗布量としては、側鎖にシアノ基を有するユニットを含むポリマーの固形分換算で、0.1mg/m〜10mg/mの範囲であることが好ましい。
【0010】
また、前記ポリマー層の形成に用いる無電解メッキ触媒またはその前駆体と相互作用する官能基、及び、重合性基を有するポリマーの好ましい態様としては、下記式(a)及び式(b)で示されるユニットを含む共重合体が挙げられる。
【0011】
【化2】


上記式(a)及び式(b)中、R〜Rは、夫々独立して、水素原子、又は置換若しくは無置換のアルキル基を表し、X、Y及びZは、夫々独立して、単結合、置換若しく無置換の二価の有機基、エステル基、アミド基、又はエーテル基を表し、L及びLは、夫々独立して、置換若しくは無置換の二価の有機基を表し、Wはめっき触媒又はその前駆体と相互作用を形成する官能基を表す。
【0012】
また、前記ポリマー層の形成に用いる無電解メッキ触媒またはその前駆体と相互作用する官能基、及び、重合性基を有するポリマーの他の好ましい態様としては、無電解メッキ触媒またはその前駆体と相互作用する非解離性官能基、ラジカル重合性基、及びイオン性極性基を有するポリマーが挙げられ、、該無電解メッキ触媒またはその前駆体と相互作用する非解離性官能基、ラジカル重合性基、及びイオン性極性基を有するポリマーとしては、下記式(A),式(B)及び式(C)で示されるユニットを含む共重合体が好ましく挙げられる。
【0013】
【化3】

【0014】
前記式(A)〜式(C)中、R〜Rは、夫々独立して、水素原子、又は置換若しくは無置換のアルキル基を表し、X、Y、Z、及びUは、夫々独立して、単結合、置換若しく無置換の二価の有機基、エステル基、アミド基、又はエーテル基を表し、L、L、及びLは、夫々独立して、置換若しくは無置換の二価の有機基を表し、Wはめっき触媒又はその前駆体と相互作用を形成する非解離性官能基を表し、Vはイオン性極性基を表す。
【0015】
これらの方法により形成された金属膜は、基板との密着性が0.2kN/m以上であることが好ましい。
本発明においては、プライマー層或いはさらにその表面に形成されるポリマー層をパターン状にすることで、パターン状の金属膜を形成することもでき、また、前記いずれかの金属膜形成方法により基板の必要領域全面に形成された金属膜をパターン状にエッチングして、パターン状の金属膜を形成することもできる。
本発明の金属膜は、基板との密着性が0.2kN/m以上であることが好ましい。
また、前記ポリマー層は、無電解メッキ触媒及び無電解メッキにより析出した金属から選ばれる少なくとも1種の微粒子を25体積%以上分散含有する領域を、前記ポリマー層と前記金属膜との界面から前記基板方向に0.05μm以上有することが好ましい。
【0016】
本発明の作用は明確でないが、以下のように推定される。
本発明においては、側鎖にシアノ基を有するユニットを含むポリマーは、被膜形成することで、樹脂基板に対しては、基板への濡れ性、親和性に優れるため密着性に優れたプライマー層を形成することができる。
また、その表面に無電解メッキ触媒またはその前駆体と相互作用する官能基、及び、重合性基を有するポリマーからなるポリマー層を塗布、乾燥させて形成することにより、ポリマー同士の相溶性、親和性に起因して基板との密着性に優れた、めっき触媒受容性のポリマー層を形成することができる。このポリマーは重合性基、好ましくは、ラジカル重合性基を有するために、エネルギー付与により硬化させることにより、架橋構造を有する強固な、メッキ触媒等の受容性に優れたポリマー層を形成しうる。
無電解メッキ触媒又はその前駆体と相互作用する官能基、及び、重合性基を有するポリマーを用いてなる基板との密着性と強度に優れたポリマー層が形成され、そこに無電解めっき触媒が効率的に吸着することから、金属膜とポリマー層との界面が、金属と、樹脂とのハイブリッド状態を形成するため、基板表面が平滑であっても金属膜と基板との密着性が高いものと考えられる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の金属膜形成方法によれば、多大なエネルギーを必要とせず製造が可能で、基板との密着性に優れ、且つ、基板との界面における凹凸が小さい金属膜を簡便な工程により形成しうるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を詳細に説明する。
[金属膜]
本発明の形成方法により得られる金属膜は、無電解メッキ触媒またはその前駆体と相互作用する官能基、及び、重合性基を有するポリマーからなるポリマー層に、無電解メッキ触媒又はその前駆体を付与した後、無電解メッキを行うことで設けた金属膜である。即ち、基板を粗化することなく形成されるため、基板表面が平滑でありながら、基板と金属膜との密着性に優れることを特徴とする。
【0019】
本発明の形成方法により得られる金属膜の密着力は好ましくは0.2kN/m以上であり、0.2〜2.0kN/m程度である。なお、従来法により基板を粗面化した上に形成された金属膜における基板と金属膜との密着性は、0.2〜3.0kN/m程度が一般的な値である。このことを考慮すれば、本発明の金属膜は実用上充分な密着性を有していることが分かる。
【0020】
また、本発明においては、金属膜と基板との間に存在するポリマー層が、無電解メッキ触媒及び無電解メッキにより析出した金属から選ばれる少なくとも1種の微粒子分散含有する領域を、前記ポリマー層と前記金属膜との界面から前記基板方向に0.05μm以上有することが好ましい。本発明においては、基板とポリマー層との間に、特定のユニットを含むポリマーを含有するプライマー層を形成するために、この金属膜との密着性に優れたポリマー層と基板との強固な密着を簡易な工程で達成することができる。
ポリマー層中に存在する微粒子の状態をさらに詳細に説明するに、このようなポリマー層中においては、金属膜とポリマー層との界面から基板方向に、無電解メッキ触媒及び/又は無電解メッキにより析出した金属を含む微粒子が、界面側に高密度で分散している。このときの微粒子分散状態において、金属膜とポリマー層との界面近傍に、微粒子が25体積%以上含まれている領域が存在することが、金属膜の密着力発現の観点から好ましく、更に好ましくは30体積%以上、より好ましくは40体積%以上、特に50体積%以上含まれる領域が存在することが好ましい。
また、ポリマー層中において、このように微粒子が高密度で存在する領域としては、ポリマー層と金属膜との界面から基板方向へ深さ0.05μm以上で存在することが好ましく、0.1μm以上がより好ましく、更に0.2μm以上が好ましく、特に0.3μm以上の深さまで存在することが好ましい。
【0021】
本発明においてはポリマー層を形成する際に、重合性基含有ポリマーを使用する。該ポリマーは、メッキ触媒吸着性の官能基に加え、重合性基を有するものであるが、メッキ受容性の観点から、上記2つの官能基に加えて、イオン性極性基を有するポリマーがより好ましい。
一般的に、金属膜においては、基板との界面における凹凸が少なくなることで、パターン状にエッチングすることで、高周波特性に優れた金属パターンを得ることができる。ここで、高周波特性とは、特に伝送損失が低くなる特性であり、更には、伝送損失の中でも導体損失が低くなる特性である。
【0022】
ところで、従来の金属膜においては、基板表面の凹凸を減らすと、基板と金属膜との密着性が低下してしまうため、やむを得ず基材表面を種々の方法により粗面化し、その上に金属膜を設けるといった手法が取られていた。そのため、従来の金属膜の基板との界面における凹凸は、2000nm以上であることが一般的であった。
一方、本発明の形成方法により得られる金属膜は、基板表面に後述するプライマー層を設けているため、金属膜との密着性に優れたポリマー層と基板との密着性が向上し、金属膜の基板との界面における凹凸が少なくても、優れた密着性を維持することが可能となり、高周波特性に優れた金属膜や、金属パターンが得られる。
このように、本発明の形成方法により得られる金属膜は、基板との界面における凹凸を最小限に留めつつ、基板と金属膜との密着性を維持することが可能となった。
【0023】
本発明の形成方法により作製された金属膜は、例えば、電磁波防止膜等として、また、金属膜をエッチングによりパターン化することで、半導体チップ、半導体パッケージ、各種電気配線板、FPC、COF、TAB、アンテナ、多層配線基板、マザーボード、等の種々の用途に適用することができる。
【0024】
このような金属膜は、以下に述べる本発明の金属膜形成方法により作製することができる。以下、本発明の金属膜形成方法について詳細に述べる。
[金属膜形成方法]
本発明の金属膜形成方法は、(a)基板上に、側鎖にシアノ基を有するユニットを含むポリマーを塗布してプライマー層を形成するプライマー層形成工程と、(b)該プライマー層表面に、無電解メッキ触媒またはその前駆体と相互作用する官能基、及び、重合性基を有するポリマーを塗布してポリマー層を形成するポリマー層形成工程と、(c)該ポリマー層に無電解メッキ触媒またはその前駆体を付与する触媒付与工程と、(d)無電解メッキを行い、ポリマー層上に金属膜を形成する金属膜形成工程と、を有することを特徴とする。
以下、上記(a)〜(d)の各工程について順次説明する。
〔(a)プライマー層形成工程〕
(a)工程では、基板上に、側鎖にシアノ基を有するユニットを含むポリマー(以下、適宜、シアノ基含有ポリマーと称する)を塗布してプライマー層を形成する。
【0025】
〔基板〕
本発明における「基板」とは、その表面にプライマー層を形成するための支持体となるものである。
本発明に使用される基板は、寸度的に安定な板状物であることが好ましく、例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、プラスチックフィルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリビニルアセタール、ポリイミド、エポキシ、ビスマレインイミド樹脂、ポリフェニレンオキサイド、液晶ポリマー、ポリテトラフルオロエチレン等)、上記の如き金属がラミネート若しくは蒸着された紙又はプラスチックフィルム等が含まれる。
【0026】
本発明における基板として、特開2005−281350号公報の段落番号[0028]〜[0088]に記載の重合開始部位を骨格中に有するポリイミドを含む基材を用いることもできる。
【0027】
また、本発明の金属膜形成方法により得られたパターン状の金属膜は、半導体パッケージ、各種電気配線基板等に適用することができる。このような用途に用いる場合は、以下に示す、絶縁性樹脂を含んだ基板、具体的には、絶縁性樹脂からなる基板、又は、適切な支持体表面に絶縁性樹脂からなる層を有する基板を用いることが好ましい。
【0028】
絶縁性樹脂からなる基板、絶縁性樹脂からなる層を得る場合には、公知の絶縁性樹脂組成物が用いられる。この絶縁性樹脂組成物には、主たる樹脂に加え、目的に応じて種々の添加物を併用することができる。例えば、絶縁層の強度を高める目的で、多官能のアクリレートモノマーを添加する、絶縁体層の強度を高め、電気特性を改良する目的で、無機、若しくは有機の粒子を添加する、などの手段をとることもできる。
なお、本発明における「絶縁性樹脂」とは、公知の絶縁膜や絶縁層に使用しうる程度の絶縁性を有する樹脂であることを意味するものであり、完全な絶縁体でないものであっても、目的に応じた絶縁性を有する樹脂であれば、本発明に適用しうる。
【0029】
絶縁性樹脂の具体例としては、例えば、熱硬化性樹脂でも熱可塑性樹脂でもまたそれらの混合物でもよく、例えば、熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ビスマレイミド樹脂、ポリオレフィン系樹脂、イソシアネート系樹脂等が挙げられる。
エポキシ樹脂としては、例えば、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、アルキルフェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェノールF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、フェノール類とフェノール性水酸基を有する芳香族アルデヒドとの縮合物のエポキシ化物、トリグリシジルイソシアヌレート、脂環式エポキシ樹脂等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。それにより、耐熱性等に優れるものとなる。
ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、シクロオレフィン系樹脂、これらの樹脂の共重合体等が挙げられる。
【0030】
熱可塑性樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリフェニレンスルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニルエーテル、ポリエーテルイミド等が挙げられる。
その他の熱可塑性樹脂としては、1,2−ビス(ビニルフェニレン)エタン樹脂(1,2−Bis(vinylphenyl)ethane)、若しくはこれとポリフェニレンエーテル樹脂との変性樹脂(天羽悟ら、Journal of Applied Polymer Science Vol.92,1252-1258(2004)に記載)、液晶性ポリマー(具体的には、クラレ製のベクスターなど)、フッ素樹脂(PTFE)などが挙げられる。
【0031】
熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂とは、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。これはそれぞれの欠点を補いより優れた効果を発現する目的で行われる。例えば、ポリフェニレンエーテル(PPE)などの熱可塑性樹脂は熱に対しての耐性が低いため、熱硬化性樹脂などとのアロイ化が行われている。たとえば、PPEとエポキシ、トリアリルイソシアネートとのアロイ化、或いは重合性官能基を導入したPPE樹脂とそのほかの熱硬化性樹脂とのアロイ化として使用される。またシアネートエステルは熱硬化性の中ではもっとも誘電特性の優れる樹脂であるが、それ単独で使用されることは少なく、エポキシ樹脂、マレイミド樹脂、熱可塑性樹脂などの変性樹脂として使用される。これらの詳細に関しては、“電子技術”2002/9号、P35に記載されている。また、熱硬化性樹脂として、エポキシ樹脂及び/又はフェノール樹脂を含み、熱可塑性樹脂としてフェノキシ樹脂及び/又はポリエーテルスルフォン(PES)を含むものも誘電特性を改善するために使用される。
【0032】
絶縁性樹脂組成物には、架橋を進めるために重合性の二重結合を有する化合物のようなもの、具体的には、アクリレート、メタクリレート化合物を含有していてもよく、特に多官能のものが好ましい。そのほか、重合性の二重結合を有する化合物として、熱硬化性樹脂、若しくは熱可塑性樹脂、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、フッ素樹脂等に、メタクリル酸やアクリル酸等を用い、樹脂の一部を(メタ)アクリル化反応させた樹脂を用いてもよい。
【0033】
本発明における絶縁性樹脂組成物には、樹脂被膜の機械強度、耐熱性、耐候性、難燃性、耐水性、電気特性などの特性を強化するために、樹脂と他の成分とのコンポジット(複合素材)も使用することができる。複合化するのに使用される材料としては、紙、ガラス繊維、シリカ粒子、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、フッ素樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂などを挙げることができる。
【0034】
更に、この絶縁性樹脂組成物には必要に応じて一般の配線板用樹脂材料に用いられる充填剤、例えば、シリカ、アルミナ、クレー、タルク、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウムなどの無機フィラー、硬化エポキシ樹脂、架橋ベンゾグアナミン樹脂、架橋アクリルポリマーなどの有機フィラーを一種又は二種以上配合してもよい。中でも、充填材としてはシリカを用いることが好ましい。
また、更に、この絶縁性樹脂組成物には、必要に応じて着色剤、難燃剤、接着性付与剤、シランカップリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、などの各種添加剤を一種又は二種以上添加してもよい。
【0035】
これらの材料を絶縁性樹脂組成物に添加する場合は、いずれも、樹脂に対して、1〜200質量%の範囲で添加されることが好ましく、より好ましくは10〜80質量%の範囲で添加される。この添加量が、1質量%未満である場合は、上記の特性を強化する効果がなく、また、200質量%を超えると場合には、樹脂特有の強度などの特性が低下する。
【0036】
このような用途に用いる場合の基板として、具体的には、1GHzにおける誘電率(比誘電率)が3.5以下である絶縁性樹脂からなる基板であるか、又は、該絶縁性樹脂からなる層を基材上に有する基板であることが好ましい。また、1GHzにおける誘電正接が0.01以下である絶縁性樹脂からなる基板であるか、又は、該絶縁性樹脂からなる層を基材上に有する基板であることが好ましい。
絶縁性樹脂の誘電率及び誘電正接は、常法により測定することができる。例えば、「第18回エレクトロニクス実装学会学術講演大会要旨集」、2004年、p189、に記載の方法に基づき、空洞共振器摂動法(例えば、極薄シート用εr、tanδ測定器、キーコム株式会社製)を用いて測定することができる。
このように、本発明においては誘電率や誘電正接の観点から絶縁樹脂材料を選択することも有用である。誘電率が3.5以下であり、誘電正接が0.01以下の絶縁性樹脂としては、液晶ポリマー、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、シアネートエステル樹脂、ビス(ビスフェニレン)エタン樹脂などが挙げられ、更にそれらの変性樹脂も含まれる。
【0037】
本発明に用いられる基板は、半導体パッケージ、各種電気配線基板等への用途を考慮すると、表面凹凸が500nm以下であることが好ましく、より好ましくは100nm以下、更に好ましくは50nm以下、最も好ましくは20nm以下である。この基板の表面凹凸(中間層や重合開始層が設けられている場合はその層の表面凹凸)が小さくなるほど、得られた金属パターン材料を配線等に適用した場合に、高周波送電時の電気損失が少なくなり好ましい。
【0038】
本発明においては、基板が板状物、例えば、樹脂フィルム(プラスチックフィルム)であれば、その両面に(a)工程及び後述する(b)工程を施すことで、樹脂フィルム基板の両面にポリマー層を形成することができる。
このように樹脂フィルム(基板)の両面にポリマー層が形成された場合には、更に、後述する(c)工程、及び(d)工程を行うことで、両面に金属膜が形成された表面金属膜材料を得ることができる。
【0039】
〔シアノ基含有ポリマー〕
本発明においてプライマー層の形成に用いうるシアノ基含有ポリマーは、側鎖にシアノ基を有するユニットを重合成分として有するポリマーであれば、特に制限されないが、側鎖にシアノ基を有するユニットとしては、下記一般式(1)で表されるユニットが好ましく、本発明におけるシアノ基含有ポリマーは、このようなユニットを重合成分として含むポリマーであることが好ましい。
【0040】
【化4】

【0041】
前記一般式(1)中、Rは、水素原子、又は、置換若しくは無置換のアルキル基を表し、Xは、単結合、置換若しく無置換の二価の有機基、エステル基、アミド基、又は、エーテル基を表し、Lは、置換若しくは無置換の二価の有機基を表す。
【0042】
が、置換若しくは無置換のアルキル基である場合、無置換のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が挙げられ、また、置換アルキル基としては、メトキシ基、ヒドロキシ基、塩素原子、臭素原子、フッ素原子等で置換された、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が挙げられる。
なお、Rとしては、水素原子、メチル基、或いは、ヒドロキシ基又は臭素原子で置換されたメチル基が好ましい。
【0043】
Xが、置換若しくは無置換の二価の有機基の場合、該二価の有機基としては、置換若しくは無置換の脂肪族炭化水素基、置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基が挙げられる。
置換若しくは無置換の脂肪族炭化水素基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、又はこれらの基が、メトキシ基、ヒドロキシ基、塩素原子、臭素原子、フッ素原子等で置換されたものが好ましい。
置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基としては、無置換のフェニル基、若しくは、メトキシ基、ヒドロキシ基、塩素原子、臭素原子、フッ素原子等で置換されたフェニル基が好ましい。
なかでも、−(CH−(nは1〜3の整数)が好ましく、更に好ましくは−CH−である。
【0044】
は、直鎖、分岐、若しくは環状のアルキレン基、芳香族基、又はこれらを組み合わせた基であることが好ましい。該アルキレン基と芳香族基とを組み合わせた基は、更に、エーテル基、エステル基、アミド基、ウレタン基、ウレア基を介していてもよい。中でも、Lは総炭素数が1〜15であることが好ましく、特に無置換であることが好ましい。なお、ここで、Lの総炭素数とは、Lで表される置換若しくは無置換の二価の有機基に含まれる総炭素原子数を意味する。
具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、フェニレン基、及びこれらの基が、メトキシ基、ヒドロキシ基、塩素原子、臭素原子、フッ素原子等で置換されたもの、更には、これらを組み合わせた基が挙げられる。
【0045】
本発明に用いられるシアノ基含有ポリマーとしては、以下に示すようなシアノ基を有するモノマー由来のユニットを重合成分として含むことが好ましい。
【0046】
【化5】

【0047】
【化6】

【0048】
【化7】

【0049】
上記式中、Rは水素原子またはメチル基を表す。
本発明におけるシアノ基含有ポリマーとしては、上記モノマー由来のユニットを1種のみ含んでいても、2種以上含んでいてもよく、また、シアノ基を含有しないユニットを共重合成分として含んでいてもよい。
シアノ基含有ポリマーに含まれるシアノ基の量は、基板及びポリマー層との密着性の観点から、ポリマー1g当たり1.0mmol〜9.0mmolであることが好ましい。
【0050】
シアノ基含有ポリマーに含まれる他のユニットとしては、極性基を含まないユニットであれは、特に制限はないが、例えば、直鎖或いは環状のオレフィン系構造を有するユニット、共役ジエン系ユニット、極性基を持たない重合性モノビニル芳香族系ユニット、極性基を持たない(メタ)アクリレートモノマー由来のユニット、極性基を持たない(メタ)アクリルアミドモノマー由来のユニット等が好ましい。具体的には、例えば、以下に示すようなモノマー由来のユニットが挙げられる。
【0051】
【化8】

【0052】
上記式中、Rは水素原子またはメチル基を表し、XはO又はNHを表す。
【0053】
本発明におけるシアノ基含有ポリマーにおいて、側鎖にシアノ基を有するユニットを重合成分として含む場合の含有量は、モル比で、10〜100モル%の範囲であることが好ましく、より好ましくは、30〜100モル%である。
本発明におけるシアノ基含有ポリマーの重量平均分子量は、1000以上70万以下が好ましく、更に好ましくは2000以上20万以下である。特に、基板との密着性の観点から、本発明におけるシアノ基含有ポリマーの重量平均分子量は、10000以上であることが好ましい。
また、本発明におけるシアノ基含有ポリマーの重合度としては、10量体以上のものを使用することが好ましく、更に好ましくは20量体以上のものである。また、7000量体以下が好ましく、3000量体以下がより好ましく、2000量体以下が更に好ましく、1000量体以下が特に好ましい。
【0054】
以下、本発明に用いられるシアノ基含有ポリマーの具体例を示すが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0055】
【化9】

【0056】
【化10】

【0057】
【化11】

【0058】
【化12】

【0059】
プライマー層の形成は、上記シアノ基含有ポリマーを適切な溶媒に溶解した塗布液を調製し、基材表面に塗布し、乾燥することで行うことができる。
使用しうる溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールモノメチルエーテルの如きアルコール系溶剤、酢酸の如き酸、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンの如きケトン系溶剤、ホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンの如きアミド系溶剤、アセトニトリル、プロピロニトリルの如きニトリル系溶剤、酢酸メチル、酢酸エチルの如きエステル系溶剤、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートの如きカーボネート系溶剤、テトラヒドロフラン(THF)、1,4−ジオキサンの如きエーテル系溶剤、1,3−ジオキソランの如きアセタール系溶剤などが挙げられる。
この中でも、シアノ基含有ポリマーを用いた組成物とする場合には、アミド系、ケトン系、ニトリル系溶剤、カーボネート系溶剤、エーテル系溶剤、アセタール系溶剤が好ましく、具体的には、アセトン、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、アセトニトリル、プロピオニトリル、N−メチルピロリドン、ジメチルカーボネート、THF、1,3−ジオキソランが好ましい。
また、シアノ基含有ポリマーを含有する組成物を塗布する場合は、取り扱い安さから沸点が50〜150℃の溶剤が好ましい。なお、これらの溶剤は単一で使用してもよいし、混合して使用してもよい。
【0060】
また、本発明において、プライマー層塗布液には、界面活性剤を添加することができる。界面活性剤としては、溶剤に溶解するものであればよく、そのような界面活性剤としては、例えば、n−ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの如きアニオン性界面活性剤や、n−ドデシルトリメチルアンモニウムクロライドの如きカチオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンノニルフェノールエーテル(市販品としては、例えば、エマルゲン910、花王(株)製など)、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(市販品としては、例えば、商品名「ツイーン20」など)、ポリオキシエチレンラウリルエーテルの如き非イオン性界面活性剤等が挙げられる。
【0061】
また、必要に応じて可塑剤を添加することもできる。使用できる可塑剤としては、一般的な可塑剤が使用でき、フタル酸エステル類(ジメチルエステル、ジエチルエステル、ジブチルエステル、ジ−2−エチルヘキシルエステル、ジノルマルオクチルエステル、ジイソノニルエステル、ジノニルエステル、ジイソデシルエステル、ブチルベンジルエステル)、アジピン酸エステル類(ジオクチルエステル、ジイソノニルエステル)、アゼラインサンジオクチル、セバシンサンエステル類(ジブチルエステル、ジオクチルエステル)リン酸トリクレシル、アセチルクエン酸トリブチル、エポキシ化大豆油、トリメリット酸トリオクチル、塩素化パラフィンやジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンのような高沸点溶媒も使用することができる。
【0062】
基板上に、プライマー層塗布液組成物を塗布し、乾燥させて、プライマー層を形成する場合、乾燥条件は、50℃〜100℃で1分間〜5時間の範囲であることが好ましい。
プライマー層塗布液組成物の塗布量は、基板との密着性、均一な塗布膜を得る等の観点からは、固形分換算で、0.1g/m〜10g/mが好ましく、特に0.5g/m〜5g/mが好ましい。
なお、プライマー層は、転写法、印刷法などの公知の層形成方法を適用して形成することもできる。
また、プライマー層は所望により、印刷法(例えば、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、インクジェット印刷法、インプリント法など)や現像法(例えば、湿式エッチング、乾式エッチング、アブレーション、光による硬化・可塑化(ネガ型/ポジ型)など)などの手法を用いてパターン状に形成してもよい。
【0063】
〔(b)ポリマー層形成工程〕
(b)工程では、(a)工程で形成されたプライマー層上に、無電解メッキ触媒又はその前駆体と相互作用する官能基(以下、適宜、「相互作用性基」と称する。)及び、重合性基を有するポリマー層を形成する。
本発明における(b)工程は、プライマー層表面に、無電解メッキ触媒またはその前駆体と相互作用する官能基、及び、重合性基を有するポリマーを含む塗布液を塗布し、乾燥してポリマー層を形成する工程である。
【0064】
(b)工程におけるポリマー層の形成は、基板上のプライマー層に表面に、無電解メッキ触媒またはその前駆体と相互作用する官能基(相互作用性基)、及び、重合性基を有するポリマーを含む塗布液を塗布し、乾燥して、前記プライマー層表面全体に当該ポリマー層を形成させる態様が好ましい。
ここで、乾燥により、重合性基の一部が、重合反応により結合して、強固なポリマー層を形成する。このため、このポリマー層は、後述する無電解めっき工程において、無電解メッキ液に浸漬しても、損傷される懸念がない。
以下、本発明のポリマー層形成に有用な相互作用性基と重合性基とを有するポリマーの好ましい例を挙げて詳細に説明する。
【0065】
(無電解メッキ触媒またはその前駆体と相互作用する官能基及び重合性基を有するポリマー)
本発明に用いうる無電解メッキ触媒またはその前駆体と相互作用する官能基及び重合性基を有するポリマーは、ポリマーの主鎖に直接、或いは、適切な連結基を介して、相互作用性基及び重合性基が結合しているものであればよいが、相互作用性基を有するユニットと、重合性基を有するユニットとを含んで構成される共重合体であることが好ましい。
本発明に用いうる相互作用性基と重合性基とを含むポリマーの第1の好ましい態様として、下記式(a)で表される重合性基ユニット、及び、下記式(b)で表される相互作用性基ユニットを含む共重合体が挙げられる。
【0066】
【化13】

【0067】
上記式(a)及び式(b)中、R〜Rは、夫々独立して、水素原子、又は置換若しくは無置換のアルキル基を表し、X、Y及びZは、夫々独立して、単結合、置換若しく無置換の二価の有機基、エステル基、アミド基、又はエーテル基を表し、L及びLは、夫々独立して、置換若しくは無置換の二価の有機基を表す。Wはめっき触媒又はその前駆体と相互作用を形成する官能基を表す。
【0068】
〜Rが、置換若しくは無置換のアルキル基である場合、無置換のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が挙げられ、また、置換アルキル基としては、メトキシ基、ヒドロキシ基、塩素原子、臭素原子、フッ素原子等で置換された、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が挙げられる。
なお、Rとしては、水素原子、メチル基、或いは、ヒドロキシ基又は臭素原子で置換されたメチル基が好ましい。
としては、水素原子、メチル基、或いは、ヒドロキシ基又は臭素原子で置換されたメチル基が好ましい。
としては、水素原子が好ましい。
としては、水素原子が好ましい。
としては、水素原子、メチル基、或いは、ヒドロキシ基又は臭素原子で置換されたメチル基が好ましい。
【0069】
X、Y及びZが、置換若しくは無置換の二価の有機基の場合、該二価の有機基としては、置換若しくは無置換の脂肪族炭化水素基、置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基が挙げられる。
置換若しくは無置換の脂肪族炭化水素基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、又はこれらの基が、メトキシ基、ヒドロキシ基、塩素原子、臭素原子、フッ素原子等で置換されたものが好ましい。
置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基としては、無置換のフェニル基、若しくは、メトキシ基、ヒドロキシ基、塩素原子、臭素原子、フッ素原子等で置換されたフェニル基が好ましい。
中でも、−(CH−(nは1〜3の整数)が好ましく、更に好ましくは−CH−である。
【0070】
は、ウレタン結合又はウレア結合を有する二価の有機基が好ましく、ウレタン結合を有する二価の有機基がより好ましく、中でも、総炭素数1〜9であるものが好ましい。なお、ここで、Lの総炭素数とは、Lで表される置換若しくは無置換の二価の有機基に含まれる総炭素原子数を意味する。
の構造として、より具体的には、下記式(1−1)、又は、式(1−2)で表される構造であることが好ましい。
【0071】
【化14】

【0072】
上記式(1−1)及び式(1−2)中、R及びRは、夫々独立して、炭素原子、水素原子、及び酸素原子からなる群より選択される2つ以上の原子を用いて形成される2価の有機基であり、好ましくは、置換若しくは無置換の、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、又はブチレン基、エチレンオキシド基、ジエチレンオキシド基、トリエチレンオキシド基、テトラエチレンオキシド基、ジプロピレンオキシド基、トリプロピレンオキシド基、テトラプロピレンオキシド基が挙げられる。
【0073】
また、Lは、直鎖、分岐、若しくは環状のアルキレン基、芳香族基、又はこれらを組み合わせた基であることが好ましい。該アルキレン基と芳香族基とを組み合わせた基は、更に、エーテル基、エステル基、アミド基、ウレタン基、ウレア基を介していてもよい。中でも、Lは総炭素数が1〜15であることが好ましく、特に無置換であることが好ましい。なお、ここで、Lの総炭素数とは、Lで表される置換若しくは無置換の二価の有機基に含まれる総炭素原子数を意味する。
具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、フェニレン基、及びこれらの基が、メトキシ基、ヒドロキシ基、塩素原子、臭素原子、フッ素原子等で置換されたもの、更には、これらを組み合わせた基が挙げられる。
【0074】
また、式(b)中、Wは、無電解メッキ触媒またはその前駆体と相互作用する官能基であり、金属イオンと静電相互作用を形成可能な官能基、あるいは、金属イオンと配位形成可能な含窒素官能基、含硫黄官能基、含酸素官能基などを使用することができる。
Wで表される相互作用性基としては、例えば、アミノ基、アミド基、イミド基、ウレア基、3級のアミノ基、アンモニウム基、アミジノ基、トリアジン環、トリアゾール環、ベンゾトリアゾール基、イミダゾール基、ベンズイミダゾール基、キノリン基、ピリジン基、ピリミジン基、ピラジン基、ナゾリン基、キノキサリン基、プリン基、トリアジン基、ピペリジン基、ピペラジン基、ピロリジン基、ピラゾール基、アニリン基、アルキルアミン構造を含む基、イソシアヌル構造を含む基、ニトロ基、ニトロソ基、アゾ基、ジアゾ基、アジド基、シアノ基、シアネート基(R−O−CN)などの含窒素官能基;エーテル基、水酸基、フェノール性水酸基、カルボキシル基、カーボネート基、カルボニル基、エステル基、N−オキシド構造を含む基、S−オキシド構造を含む基、N−ヒドロキシ構造を含む基などの含酸素官能基;チオフェン基、チオール基、チオウレア基、チオシアヌール酸基、ベンズチアゾール基、メルカプトトリアジン基、チオエーテル基、チオキシ基、スルホキシド基、スルホン基、サルファイト基、スルホキシイミン構造を含む基、スルホキシニウム塩構造を含む基、スルホン酸基、スルホン酸エステル構造を含む基などの含硫黄官能基;ホスフォート基、ホスフォロアミド基、ホスフィン基、リン酸エステル構造を含む基などの含リン官能基;塩素、臭素などのハロゲン原子を含む基;および不飽和エチレン基などが挙げられ、塩構造をとりうる官能基においてはそれらの塩も使用することができる。
なかでも、極性が高く、めっき触媒またはその前駆体などへの吸着能が高いことから、エーテル基〔より具体的には、−O−(CH)n−O−(ここで、nは1〜5の整数を表す)で表される構造〕、カルボキシル基、またはニトリル基が特に好ましく、カルボキシル基及びニトリル基がさらに好ましい。
また、相互作用性基として、包接能を有する化合物由来の官能基を用いることもでき、例えば、シクロデキストリン、クラウンエーテル、環状ポリアミンなどを部分構造として含む官能基を導入することができる。
相互作用性基としてのこれら官能基は、ポリマーに一種単独で含まれていてもよく、2種以上が含まれていてもよい。
【0075】
本発明に用いうる相互作用性基と重合性基とを含むポリマーにおいて、前記式(a)で表される重合性基ユニットが、下記式(c)で表されるユニットであることが好ましい。
【0076】
【化15】

【0077】
上記式(c)中、R及びRは、夫々独立して、水素原子、又は置換若しく無置換のアルキル基を表し、Zは、単結合、置換若しくは無置換の二価の有機基、エステル基、アミド基、又はエーテル基を表し、Aは、酸素原子、又はNR(Rは、水素原子、又はアルキル基を表し、好ましくは、水素原子、又は炭素数1〜5の無置換のアルキル基である。)を表し、Lは、置換若しくは無置換の二価の有機基を表す。
【0078】
式(c)におけるR及びRは、前記式(a)におけるR及びRと同義であり、好ましい例も同様である。
【0079】
式(c)におけるZは、前記式(a)におけるZと同義であり、好ましい例も同様である。
また、式(c)におけるLも、前記式(a)におけるLと同義であり、好ましい例も同様である。
【0080】
本発明に用いうる相互作用性基と重合性基とを含むポリマーにおいて、前記式(c)で表されるユニットが、下記式(d)で表されるユニットであることが好ましい。
【0081】
【化16】

【0082】
式(d)中、R及びRは、夫々独立して、水素原子、又は置換若しく無置換のアルキル基を表し、V及びAは、夫々独立して、酸素原子、又はNR(Rは、水素原子、又はアルキル基を表し、好ましくは、水素原子、又は炭素数1〜5の無置換のアルキル基である。)を表し、Lは、置換若しくは無置換の二価の有機基を表す。
【0083】
式(d)におけるR及びRは、前記式(a)におけるR及びRと同義であり、好ましい例も同様である。
【0084】
式(d)におけるLは、前記式(a)におけるLと同義であり、好ましい例も同様である。
【0085】
前記式(c)及び式(d)において、Aは、酸素原子であることが好ましい。
また、前記式(c)及び式(d)において、Lは、無置換のアルキレン基、或いは、ウレタン結合又はウレア結合を有する二価の有機基が好ましく、ウレタン結合を有する二価の有機基がより好ましく、これら中でも、総炭素数1〜9であるものが特に好ましい。
【0086】
また、該相互作用性基と重合性基とを含むポリマーとしては、前記式(b)で表される相互作用性基ユニットが、下記式(e)で表されるユニットであることが好ましい。
【0087】
【化17】

【0088】
上記式(e)中、Rは、水素原子、又は置換若しく無置換のアルキル基を表し、Uは、酸素原子、又はNR’(R’は、水素原子、又はアルキル基を表し、好ましくは、水素原子、又は炭素数1〜5の無置換のアルキル基である。)を表し、を表し、Lは、置換若しくは無置換の二価の有機基を表す。
【0089】
式(e)におけるRは、前記式(a)におけるR及びRと同義であり、水素原子であることが好ましい。
【0090】
また、式(e)におけるLは、前記式(a)におけるLと同義であり、直鎖、分岐、若しくは環状のアルキレン基、芳香族基、又はこれらを組み合わせた基であることが好ましい。
特に、式(e)においては、L中の相互作用性基との連結部位が、直鎖、分岐、若しくは環状のアルキレン基を有する二価の有機基であることが好ましく、中でも、この二価の有機基が総炭素数1〜10であることが好ましい。
また、別の好ましい態様としては、式(e)におけるL中の相互作用性基との連結部位が、芳香族基を有する二価の有機基であることが好ましく、中でも、該二価の有機基が、総炭素数6〜15であることが好ましい。
【0091】
また、式(e)におけるWは前記式(b)におけるWと同義であり、式(b)におけるのと同様のものが挙げられ、このましい例もまた同様である。
【0092】
該相互作用性基と重合性基とを含むポリマーは、前記式(a)、式(c)及び式(d)から選択されるユニットと、式(b)及び式(e)から選択されるユニットとを適宜含んで構成されるものであり、重合性基と相互作用性基とを側鎖に有するポリマーである。
この相互作用性基と重合性基とを含むポリマーは、例えば、以下のように合成することができる。
【0093】
相互作用性基と重合性基とを含むポリマーを合成する際の重合反応の種類としては、ラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合が挙げられる。反応制御の観点から、ラジカル重合、カチオン重合を用いることが好ましい。
相互作用性基と重合性基とを含むポリマーは、1)ポリマー主鎖を形成する重合形態と側鎖に導入される重合性基の重合形態とが異なる場合と、2)ポリマー主鎖を形成する重合形態と側鎖に導入される重合性基の重合形態とが同一の場合と、でその合成方法が異なる。
【0094】
以上のようにして合成された相互作用性基と重合性基とを含むポリマーは、共重合成分全体に対し、重合性基ユニット、相互作用性基ユニットの割合が以下の範囲であることが好ましい。
即ち、重合性基ユニットが、共重合成分全体に対し5〜50mol%で含まれることが好ましく、更に好ましくは5〜40mol%である。5mol%以下では反応性(硬化性、重合性)が落ち、50mol%以上では合成の際にゲル化しやすく合成しにくい。
また、相互作用性基ユニットは、めっき触媒等に対する吸着性の観点から、共重合成分全体に対し5〜95mol%で含まれることが好ましく、更に好ましくは10〜95mol%である。
【0095】
相互作用性基と重合性基とを含むポリマーの重量平均分子量は、1000以上70万以下が好ましく、更に好ましくは2000以上20万以下である。特に、重合感度の観点から、相互作用性基と重合性基とを含むポリマーの重量平均分子量は、20000以上であることが好ましい。
また、相互作用性基と重合性基とを含むポリマーの重合度としては、10量体以上のものを使用することが好ましく、更に好ましくは20量体以上のものである。また、7000量体以下が好ましく、3000量体以下がより好ましく、2000量体以下が更に好ましく、1000量体以下が特に好ましい。
【0096】
本発明においてポリマー層の形成に好適に用いられる相互作用性基と重合性基とを含むポリマーにおいて、第1の態様に属するポリマーの具体例を以下に示すが、これらに限定されるものではない。
なお、これらの具体例の重量平均分子量は、いずれも、3000〜100000の範囲である。
【0097】
【化18】

【0098】
【化19】

【0099】
【化20】

【0100】
【化21】

【0101】
【化22】

【0102】
【化23】

【0103】
【化24】

【0104】
【化25】

【0105】
【化26】

【0106】
【化27】

【0107】
相互作用性基と重合性基とを含むポリマーの第2の好ましい態様としては、相互作用性基、及び重合性基に加えて、イオン性極性基を有するポリマーが挙げられ、より具体的には、下記式(A),式(B)及び式(C)で示されるユニットを含む共重合体が挙げられる。
【0108】
【化28】

【0109】
前記式(A)〜式(C)中、R〜Rは、夫々独立して、水素原子、又は置換若しくは無置換のアルキル基を表し、X、Y、Z、及びUは、夫々独立して、単結合、置換若しく無置換の二価の有機基、エステル基、アミド基、又はエーテル基を表し、L、L、及びLは、夫々独立して、置換若しくは無置換の二価の有機基を表し、Wはめっき触媒又はその前駆体と相互作用を形成する非解離性官能基を表し、Vはイオン性極性基を表す。
上記式(A)は、前記第1の好ましい態様で挙げた、式(a)で示される重合性基を含むユニットと同様であり、好ましい例も同じである。また、上記式(B)は、前記式(b)で表される相互作用性基を有するユニットと同様であり、好ましい例もまた同様である。第2の好ましい態様は、これらのユニットに、さらにイオン性極性基を有するユニットを共重合成分として含む態様である。
【0110】
第2の好ましい態様における式(A)〜式(C)のより好ましい例について説明する。
前記式(A)〜式(C)中、R〜Rが、置換若しくは無置換のアルキル基である場合、無置換のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が挙げられ、また、置換アルキル基としては、メトキシ基、ヒドロキシ基、塩素原子、臭素原子、フッ素原子等で置換された、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が挙げられる。
なお、Rとしては、水素原子、メチル基、或いは、ヒドロキシ基又は臭素原子で置換されたメチル基が好ましい。
としては、水素原子、メチル基、或いは、ヒドロキシ基又は臭素原子で置換されたメチル基が好ましい。
としては、水素原子が好ましい。
としては、水素原子が好ましい。
としては、水素原子、メチル基、或いは、ヒドロキシ基又は臭素原子で置換されたメチル基が好ましい。
としては、水素原子、メチル基、或いは、ヒドロキシ基又は臭素原子で置換されたメチル基が好ましい。
更に、特定ポリマーの柔軟性の観点から、R、R、及びRはいずれも水素原子であることが好ましい。
【0111】
X、Y、Z、及びUが、置換若しくは無置換の二価の有機基の場合、該二価の有機基としては、置換若しくは無置換の脂肪族炭化水素基、置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基が挙げられる。好ましくは、X、Y、Z、及びUはエステル基、アミド基、エーテル基であり、より好ましくは、エステル基、アミド基、最も好ましくはエステル基である。
【0112】
また、L、L、及びLは、それぞれ、直鎖、分岐、若しくは環状のアルキレン基、芳香族基、又はこれらを組み合わせた基であることが好ましい。該アルキレン基と芳香族基とを組み合わせた基は、更に、エーテル基、エステル基、アミド基、ウレタン基、ウレア基を介していてもよい。中でも、L、L、及びLはそれぞれ総炭素数が1〜15であることが好ましく、特に無置換であることが好ましい。なお、ここで、総炭素数とは、例えば、Lで表される置換若しくは無置換の二価の有機基に含まれる総炭素原子数を意味する。L及びLの場合も同様である。
具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、フェニレン基、及びこれらの基が、メトキシ基、ヒドロキシ基、塩素原子、臭素原子、フッ素原子等で置換されたもの、更には、これらを組み合わせた基が挙げられる。
【0113】
特に、式(C)で表されるユニットにおいては、適度な酸性(他の官能基を分解しない)、アルカリ水溶液中では親水性を示し、水を乾燥すると環状構造により疎水性を示しやすいという点から、Vがカルボン酸基であり、且つ、LのVとの連結部に4員〜8員の環構造を有することが好ましい。ここで、4員〜8員の環構造としては、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、フェニル基が挙げられ、中でも、シクロヘキシル基、フェニル基が好ましい。
また、式(C)で表されるユニットにおいては、適度な酸性(他の官能基を分解しない)、アルカリ水溶液中では親水性を示し、水を乾燥すると長鎖アルキル基構造により疎水性を示しやすいという点から、Vがカルボン酸基であり、且つ、Lの鎖長が6原子〜18原子であることが好ましい。ここで、Lの鎖長とは、式(C)中のUとVとの距離を表し、UとVとの間が6原子〜18原子の範囲で離間していることが好ましいことを意味する。Lの鎖長として、より好ましくは、6原子〜14原子であり、更に好ましくは、6原子〜12原子である。
【0114】
式(B)で表されるユニットにおいて、Wはめっき触媒又はその前駆体と相互作用を形成する非解離性官能基を表し、この非解離性官能基としては前述した一般式(b)におけるのと同義であり、好ましい例もまた同様である。具体的には、Wは、極性が高く、めっき触媒等への吸着能が高いといった点で、シアノ基又はエーテル基であることが好ましい。
【0115】
式(C)で表されるユニットにおいて、Vはイオン性極性基を表し、このイオン性極性基としては前述したものが挙げられる。なかでも、適度な酸性、すなわち、他の官能基を分解しない程度の酸性を発現するという点から、カルボン酸基が好ましく、特に、脂環式カルボン酸基が好ましい。
【0116】
特定ポリマーの第2の好ましい態様における各ユニットの好ましい含有量としては、式(A)で表されるユニットは、反応性(硬化性、重合性)及び合成の際のゲル化の抑制の点から、共重合ユニット全体に対し5mol%〜50mol%で含まれることが好ましく、更に好ましくは5mol%〜30mol%である。
式(B)で表されるユニットは、めっき触媒に対する吸着性の観点から、共重合ユニット全体に対し5mol%〜80mol%で含まれることが好ましく、更に好ましくは10mol%〜70mol%である。
式(C)で表されるユニットは、水溶液による現像性と耐湿密着性の点から、共重合ユニット全体に対し20mol%〜70mol%で含まれることが好ましく、更に好ましくは20mol%〜60mol%である。特に好ましくは30mol%〜50mol%である。この範囲にて、より現像性と耐湿密着力を両立することができる。
【0117】
なお、特定ポリマーのイオン性極性価(イオン性極性基がカルボン酸基の場合は酸価)としては、1.5mmol/g〜7.0mmol/gが好ましく、1.7mmol/g〜5.0mmol/gが更に好ましく、特に好ましくは1.9mmol/g〜4.0mmol/gである。イオン性極性価がこの範囲であることで、水溶液での現像性付与と湿熱経時時の密着力低下の抑制とを両立させることができる。
なお、イオン性極性を有するユニットの分子量により最適なユニット数とイオン性極性価は変化するが、その場合はイオン性極性価が上記範囲に入ることを優先とする。
【0118】
本発明における特定ポリマーの具体例を以下に示すが、これらに限定されるものではない。
なお、これらの具体例の重量平均分子量は、いずれも、3000〜150000の範囲である。
【0119】
【化29】

【0120】
【化30】

【0121】
(特定ポリマーの合成方法)
以下、本発明の特定ポリマーの第2の好ましい態様の合成方法について説明する。
本発明における特定ポリマーは、前述の非解離性の相互作用性基、ラジカル重合性基、及びイオン性極性基を有するポリマーであれば特に限定されないが、相互作用性基、ラジカル重合性基、及びイオン性極性基のそれぞれを側鎖に有するポリマーであることが好ましい。本発明における特定ポリマーは、式(A)〜式(C)で表されるユニットを含む共重合体のような、相互作用性基を有するユニット、ラジカル重合性基を有するユニット、及びイオン性極性基を有するユニットを含む共重合体であることが好ましい。
以下、この相互作用性基を有するユニット、ラジカル重合性基を有するユニット、及びイオン性極性基を有するユニットを含む共重合体の態様を有する特定ポリマーと、その合成方法について説明する。
【0122】
上記のような共重合体の態様を有する特定ポリマーは、以下のように合成できる。
合成方法としては、下記のi)〜iii)が挙げられる。
i)非解離性の相互作用性基を有するモノマーと、ラジカル重合性基を有するモノマーと、イオン性極性基を有するモノマーと、を共重合する方法、
ii)非解離性の相互作用性基を有するモノマーと、二重結合前駆体を有するモノマーと、イオン性極性基を有するモノマーとを共重合させ、次に塩基などの処理により二重結合を導入する方法、
iii)非解離性の相互作用性基を有するモノマー及びイオン性極性基を有するモノマーを用いて合成され、且つ、反応性基を有するポリマーに、該ポリマー中の反応性基と反応しうるラジカル重合性基を有するモノマーを反応させ、二重結合を導入(重合性基を導入する)方法
これらの中でも、好ましいのは、合成適性の観点から、ii)の方法、及び、iii)の方法である。
以上のように、ラジカル重合性基は、ラジカル重合性基がペンダントされたモノマーを共重合することで特定ポリマー中に導入してもよいし、予め合成されたポリマー(例えば、イオン性極性基及び相互作用性基を有するポリマー)の一部に付加・置換させることで、特定ポリマー中に導入してもよい。
【0123】
なお、合成方法i)〜iii)において特定ポリマーを合成する際には、得られる特定ポリマーの吸水性を低下させるため、また、疎水性を向上させるために、他のモノマーを共重合成分として用いてもよい。他のモノマーとしては、一般的な、ラジカル重合系のモノマーが用いられ、ジエン系モノマー、アクリル系モノマー等が挙げられる。中でも、無置換アルキルのアクリル系モノマーが好ましい。具体的には、ターシャリーブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ブチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ベンジルメタクリレートなどが好ましく使用できる。
【0124】
上記本発明における上述した重合性基及び相互作用性基を有するポリマーの第2の態様においては、共重合ユニット全体に対し、相互作用性基含有ユニット、重合性基含有ユニット、イオン性極性基含有ユニットの割合が以下の範囲であることが好ましい。
即ち、相互作用性基含有ユニットは、めっき触媒に対する吸着性の観点から、共重合ユニット全体に対し5mol%〜80mol%で含まれることが好ましく、更に好ましくは10mol%〜70mol%である。
また、ラジカル重合性基含有ユニットは、反応性(硬化性、重合性)及び合成の際のゲル化の抑制の点から、共重合ユニット全体に対し5mol%〜50mol%で含まれることが好ましく、更に好ましくは5mol%〜30mol%である。
イオン性極性基含有ユニットは、水溶液による現像性と耐湿密着性の点から、共重合ユニット全体に対し20mol%〜70mol%で含まれることが好ましく、更に好ましくは20mol%〜60mol%である。特に好ましくは30mol%〜50mol%である。この範囲にて、より現像性と耐湿密着力を両立することができる。
【0125】
このようなポリマーでは、相互作用性基含有ユニットの含有割合が40mol%〜70mol%で、且つ、ラジカル重合性ユニットの含有割合が5mol%〜30mol%で、且つ、イオン性極性基含有ユニットの含有割合が20mol%〜50mol%であることが、特に好ましい態様である。
さらに、相互作用性基含有ユニットの含有割合が40mol%〜60mol%で、且つ、ラジカル重合性ユニットの含有割合が10mol%〜20mol%で、且つ、イオン性極性基含有ユニットの含有割合が30mol%〜50mol%であることが、最も好ましい態様である。
なお、この第2の態様のポリマーmにおけるイオン性極性価(イオン性極性がカルボン酸基の場合は酸価)としては、1.5mmol/g〜7.0mmol/gが好ましく、1.7mmol/g〜5.0mmol/gが更に好ましく、特に好ましくは1.9mmol/g〜4.0mmol/gである。酸価がこの範囲であることで、水溶液での現像性付与と湿熱経時時の密着力低下の抑制とを両立させることができる。
なお、イオン性極性を有するユニットの分子量により最適なユニット数とイオン性極性価は変化するが、その場合はイオン性極性価が上記範囲に入ることを優先とする。
【0126】
ただし、前述iii)の合成方法のように重合性基をポリマーに反応させて導入する場合は、100%導入することが困難な際には少量の反応性部分が残ってしまうことから、これが第4のユニットとなる可能性もある。
【0127】
第2の態様のポリマーの重量平均分子量は、3000以上15万以下が好ましく、更に好ましくは5000以上10万以下である。特に、重合感度の観点から、重量平均分子量は、20000以上であることが好ましい。
また、重合度としては、20量体以上のものを使用することが好ましく、更に好ましくは30量体以上のものである。また、1500量体以下が好ましく、1000量体以下がより好ましい。
【0128】
ポリマー層の形成に際しては、前記上述した各種の重合性基及び相互作用性基を有するポリマーのいずれにおいても、ポリマーを、ポリマー層形成用の組成物全体に対して、2質量%〜50質量%の範囲で含有することが好ましく、より好ましい範囲は、5質量%〜30質量%である。
【0129】
(溶剤)
上述した各種の重合性基及び相互作用性基を有するポリマーを含有する組成物に使用する溶剤は、組成物の主成分である重合性基及び相互作用性基を有する化合物などが溶解可能ならば特に制限はない。溶剤には、更に界面活性剤を添加してもよい。
使用できる溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールモノメチルエーテルの如きアルコール系溶剤、酢酸の如き酸、アセトン、シクロヘキサノンの如きケトン系溶剤、ホルムアミド、ジメチルアセトアミドの如きアミド系溶剤、水などが挙げられる。
【0130】
必要に応じて溶剤に添加することのできる界面活性剤は、溶剤に溶解するものであればよく、そのような界面活性剤としては、例えば、n−ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの如きアニオン性界面活性剤や、n−ドデシルトリメチルアンモニウムクロライドの如きカチオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンノニルフェノールエーテル(市販品としては、例えば、エマルゲン910、花王(株)製など)、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(市販品としては、例えば、商品名「ツイーン20」など)、ポリオキシエチレンラウリルエーテルの如き非イオン性界面活性剤等が挙げられる。
本発明において、ポリマー層の形成は、相互作用性基と重合性基とを有するポリマーを含有するポリマー層塗布液組成物塗布層を塗布し、乾燥して行う。
乾燥は、自然乾燥で溶媒を除去することで行ってもよいが、塗膜を加熱或いは露光することで行うことができる。
ポリマー層の塗布量は、十分なメッキ触媒またはその前駆体との相互作用性、及び、均一な塗布膜とを得る観点からは、固形分換算で0.1〜10g/m2が好ましく、特に0.5〜5g/m2が好ましい。
【0131】
〔(c)触媒付与工程〕
(c)工程においては、上記(b)ポリマー層形成工程によりプライマー層上に形成された相互作用性を有するポリマー層に、無電解メッキ触媒又はその前駆体が付与される。
<無電解メッキ触媒>
本工程において用いられる無電解メッキ触媒とは、主に0価金属であり、Pd、Ag、Cu、Ni、Al、Fe、Coなどが挙げられる。本発明においては、特に、Pd、Agがその取り扱い性の良さ、触媒能の高さから好ましい。0価金属を相互作用性領域に固定する手法としては、例えば、ポリマーが有する相互作用性基と相互作用するように荷電を調節した金属コロイドを、ポリマー層表面に適用する手法が用いられる。一般に、金属コロイドは、荷電を持った界面活性剤又は荷電を持った保護剤が存在する溶液中において、金属イオンを還元することにより作製することができる。金属コロイドの荷電は、ここで使用される界面活性剤又は保護剤により調節することができ、このように荷電を調節した金属コロイドを、ポリマーが有する相互作用性基と相互作用させると、相互作用性基は主に極性基である為に、ポリマー層に選択的に金属コロイド(無電解メッキ触媒)を吸着させることができる。
【0132】
<無電解メッキ触媒前駆体>
本工程において用いられる無電解めっき触媒前駆体とは、化学反応により無電解めっき触媒となりうるものであれば、特に制限なく使用することができる。主には、上記無電解めっき触媒として挙げた金属の金属イオンが用いられる。無電解めっき触媒前駆体である金属イオンは、還元反応により無電解めっき触媒である0価金属になる。無電解めっき触媒前駆体である金属イオンは、被めっき層へ付与した後、無電解めっき浴への浸漬前に、別途還元反応により0価金属に変化させて無電解めっき触媒としてもよいし、無電解めっき触媒前駆体のまま無電解めっき浴に浸漬し、無電解めっき浴中の還元剤により金属(無電解めっき触媒)に変化させてもよい。
【0133】
実際には、無電解めっき前駆体である金属イオンは、金属塩を用いて被めっき層上に付与する。使用される金属塩としては、適切な溶媒に溶解して金属イオンと塩基(陰イオン)とに解離されるものであれば特に制限はなく、M(NO、MCln、M2/n(SO)、M3/n(PO)(Mは、n価の金属原子を表す)などが挙げられる。金属イオンとしては、上記の金属塩が解離したものを好適に用いることができる。具体例としては、例えば、Agイオン、Cuイオン、Alイオン、Niイオン、Coイオン、Feイオン、Pdイオンが挙げられ、中でも、多座配位可能なものが好ましく、特に、配位可能な官能基の種類数、及び触媒能の点で、Pdイオンが好ましい。
無電解めっき触媒である金属、或いは、無電解めっき前駆体である金属塩を被めっき層に付与する方法としては、金属を適当な分散媒に分散した分散液、或いは、金属塩を適切な溶媒で溶解し、解離した金属イオンを含む溶液を調製し、その分散液又は溶液を被めっき層上に塗布するか、或いは、その分散液又は溶液中に被めっき層が形成された基板を浸漬すればよい。
【0134】
上記のように無電解めっき触媒又はその前駆体を接触させることで、被めっき層中の相互作用性基に、ファンデルワールス力のような分子間力による相互作用、又は、孤立電子対による配位結合による相互作用を利用して、無電解めっき触媒又はその前駆体を吸着させることができる。
このような吸着を充分に行なわせるという観点からは、分散液、溶液、組成物中の金属濃度、又は溶液中の金属イオン濃度は、0.001〜50質量%の範囲であることが好ましく、0.005〜30質量%の範囲であることが更に好ましい。また、接触時間としては、30秒〜24時間程度であることが好ましく、1分〜1時間程度であることがより好ましい。
【0135】
(その他の触媒)
本発明において、後述の(4)工程において、被めっき層に対して、無電解めっきを行わず直接電気めっきを行うために用いられる触媒としては、0価金属を使用することができる。この0価金属としては、Pd、Ag、Cu、Ni、Al、Fe、Coなどが挙げられ、中でも、多座配位可能なものが好ましく、特に、特に、相互作用性基(シアノ基)に対する吸着(付着)性、触媒能の高さから、Pd、Ag、Cuが好ましい。
【0136】
(有機溶剤、及び水)
上記のようなめっき触媒又は前駆体は、前述のように、分散液や溶液(触媒液)として被めっき層に付与される。
本発明における触媒液には、有機溶剤や水が用いられる。
この有機溶剤を含有することで、被めっき層に対するめっき触媒又は前駆体の浸透性が向上し、相互作用性基に効率よくめっき触媒又はその前駆体を吸着させることができる。
めっき触媒液の調製に用いられる有機溶剤としては、被めっき層に浸透しうる溶剤であれば特に制限は無いが、具体的には、アセトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、エチレングリコールジアセテート、シクロヘキサノン、アセチルアセトン、アセトフェノン、2−(1−シクロヘキセニル)、プロピレングリコールジアセテート、トリアセチン、ジエチレングリコールジアセテート、ジオキサン、N−メチルピロリドン、ジメチルカーボネート、ジメチルセロソルブなどを用いることができる。
また、その他の有機溶剤としては、ダイアセトンアルコール、γブチロラクトン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、エチレングリコールターシャリーブチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4ジオキサン、n−メチル−2−ピロリドンなどが挙げられる。
特に、めっき触媒又はその前駆体との相溶性、及び被めっき層への浸透性の観点ではアセトン、ジメチルカーボネート、ジメチルセロソルブが好ましい。
【0137】
本発明における触媒液には、水を用いてもよい。この水としては、不純物を含まないことが好ましく、そのような観点からは、RO水や脱イオン水、蒸留水、精製水などを用いるのが好ましく、脱イオン水や蒸留水を用いるのが特に好ましい。
更に、本発明における触媒液には、目的に応じて他の添加剤を含有することができる。
他の添加剤としては、例えば、膨潤剤(ケトン、アルデヒド、エーテル、エステル類等の有機化合物など)や、界面活性剤(アニオン性、カチオン性、双性、ノニオン性及び低分子性又は高分子性など)などが挙げられる。
以上説明した工程を経ることで、被めっき層中の相互作用性基とめっき触媒又はその前駆体との間に相互作用を形成することができる。
【0138】
〔(d)金属膜形成工程〕
(d)工程では、無電解メッキ触媒又はその前駆体を付与されたポリマー層である被めっき層に、メッキが行われることで、ポリマー層が生成した基板上に、高密度の金属膜が形成される。形成された金属膜は、優れた導電性、密着性を有する。
めっきの種類は、無電解めっき、電気めっき等が挙げられ、前記工程において、被めっき層との間に相互作用を形成しためっき触媒又はその前駆体の機能によって、選択することができる。
つまり、本工程では、めっき触媒又はその前駆体が付与された被めっき層に対し、電気めっきを行ってもよいし、無電解めっきを行ってもよい。
中でも、本発明においては、被めっき層中に発現するハイブリッド構造の形成性及び密着性向上の点から、無電解めっきを行うことが好ましい。また、所望の膜厚のめっき層を得るために、無電解めっきの後に、更に電気めっきを行うことがより好ましい態様である。
【0139】
(無電解めっき)
無電解めっきとは、めっきとして析出させたい金属イオンを溶かした溶液を用いて、化学反応によって金属を析出させる操作のことをいう。
本工程における無電解めっきは、例えば、無電解めっき触媒が付与された基板を、水洗して余分な無電解めっき触媒(金属)を除去した後、無電解めっき浴に浸漬して行なう。使用される無電解めっき浴としては一般的に知られている無電解めっき浴を使用することができる。
また、無電解めっき触媒前駆体が付与された基板を、無電解めっき触媒前駆体が被めっき層に吸着又は含浸した状態で無電解めっき浴に浸漬する場合には、基板を水洗して余分な前駆体(金属塩など)を除去した後、無電解めっき浴中へ浸漬される。この場合には、無電解めっき浴中において、めっき触媒前駆体の還元とこれに引き続き無電解めっきが行われる。ここで使用される無電解めっき浴としても、上記同様、一般的に知られている無電解めっき浴を使用することができる。
なお、無電解めっき触媒前駆体の還元は、上記のような無電解めっき液を用いる態様とは別に、触媒活性化液(還元液)を準備し、無電解めっき前の別工程として行うことも可能である。触媒活性化液は、無電解めっき触媒前駆体(主に金属イオン)を0価金属に還元できる還元剤を溶解した液で、0.1%〜50%、好ましくは1%〜30%がよい。還元剤としては、水素化ホウ素ナトリウム、ヂメチルアミンボランのようなホウ素系還元剤、ホルムアルデヒド、次亜リン酸などの還元剤を使用することが可能である。
【0140】
一般的な無電解めっき浴の組成としては、溶剤の他に、1.めっき用の金属イオン、2.還元剤、3.金属イオンの安定性を向上させる添加剤(安定剤)が主に含まれている。このめっき浴には、これらに加えて、めっき浴の安定剤など公知の添加物が含まれていてもよい。
無電解めっき浴に用いられる金属の種類としては、銅、すず、鉛、ニッケル、金、パラジウム、ロジウムが知られており、中でも、導電性の観点からは、銅、金が特に好ましい。
【0141】
また、上記金属に合わせて最適な還元剤、添加物がある。例えば、銅の無電解めっきの浴は、銅塩としてCuSO、還元剤としてHCOH、添加剤として銅イオンの安定剤であるEDTAやロッシェル塩などのキレート剤、トリアルカノールアミンなどが含まれている。また、CoNiPの無電解めっきに使用されるめっき浴には、その金属塩として硫酸コバルト、硫酸ニッケル、還元剤として次亜リン酸ナトリウム、錯化剤としてマロン酸ナトリウム、りんご酸ナトリウム、こはく酸ナトリウムが含まれている。また、パラジウムの無電解めっき浴は、金属イオンとして(Pd(NH)Cl、還元剤としてNH、HNNH、安定化剤としてEDTAが含まれている。これらのめっき浴には、上記成分以外の成分が入っていてもよい。
このようにして形成される無電解めっきによるめっき膜の膜厚は、めっき浴の金属イオン濃度、めっき浴への浸漬時間、或いは、めっき浴の温度などにより制御することができるが、導電性の観点からは、0.5μm以上であることが好ましく、3μm以上であることがより好ましい。
また、めっき浴への浸漬時間としては、1分〜6時間程度であることが好ましく、1分〜3時間程度であることがより好ましい。
【0142】
以上のようにして得られた無電解めっきによるめっき膜は、SEMによる断面観察により、被めっき層中に無電解めっき触媒やめっき金属からなる微粒子がぎっしりと分散しており、更に被めっき層上にめっき金属が析出していることが確認された。基板とめっき膜との界面は、ポリマーと微粒子とのハイブリッド状態であるため、基板(有機成分)と無機物(触媒金属又はめっき金属)との界面が平滑(例えば、凹凸差が500nm以下)であっても、密着性が良好となる。
【0143】
<電気メッキ工程>
本工程おいては、前記(c)工程において付与されためっき触媒又はその前駆体が電極としての機能を有する場合、その触媒又はその前駆体が付与された被めっき層に対して、電気めっきを行うことができる。
また、無電解メッキの後、形成された金属膜を電極とし、さらに電気メッキを行ってもよい。これにより基板との密着性に優れた金属膜をベースとして、そこに新たに任意の厚みをもつ金属膜を容易に形成することができる。この工程を付加することにより、金属膜を目的に応じた厚みに形成しうるため、本発明の金属膜を種々の応用に適用するのに好適である。
本発明における電気メッキの方法としては、従来公知の方法を用いることができる。なお、本工程の電気メッキに用いられる金属としては、銅、クロム、鉛、ニッケル、金、銀、すず、亜鉛などが挙げられ、導電性の観点から、銅、金、銀が好ましく、銅がより好ましい。
【0144】
電気メッキにより得られる金属膜の膜厚については、用途に応じて異なるものであり、メッキ浴中に含まれる金属濃度、或いは、電流密度などを調整することでコントロールすることができる。なお、一般的な電気配線などに用いる場合の膜厚は、導電性の観点から 本発明において、前述のめっき触媒、めっき触媒前駆体に由来する金属や金属塩、及び/又は、無電解めっきにより、被めっき層中に析出した金属が、該層中でフラクタル状の微細構造体として形成されていることによって、金属膜と被めっき層との密着性を更に向上させることができる。
被めっき層中に存在する金属量は、基板断面を金属顕微鏡にて写真撮影したとき、被めっき層の最表面から深さ0.5μmまでの領域に占める金属の割合が5〜50面積%であり、被めっき層と金属界面の算術平均粗さRa(JIS B0633−2001)が0.05μm〜0.5μmである場合に、更に強い密着力が発現される。
、0.5μm以上であることが好ましく、3μm以上であることがより好ましい。
【0145】
なお、前記(d)金属膜形成工程の後に、エネルギーを付与する工程を行い、プライマー層やポリマー層中に残存する重合性基を重合反応させることで、金属膜と基板との密着性を改良することもできる。
この工程におけるエネルギー付与方法としては、加熱によるエネルギー付与が簡易に行うことができ、好ましい。加熱温度140℃〜250℃で、加熱時間5分〜5時間の条件で加熱することができる。
加熱によるエネルギー付与を行う場合の手段としては、加熱炉、恒温器、ホットプレート等の手段を適用することが可能である。
付与されるエネルギー量は加熱温度と加熱時間により制御することができる。
【0146】
本発明においては、前記(d)工程(無電解メッキによる金属膜形成工程)又は前記(d)工程(電気メッキ工程)を行った後、(f)乾燥工程を行うことが密着性向上の観点から好ましい。
(f)乾燥工程
乾燥工程における乾燥処理は如何なる手段であってもよく、具体的には、自然乾燥、加熱乾燥、減圧乾燥、減圧加熱乾燥、送風乾燥などの手段により行うことができる。これらの中でも、乾燥に起因するポリマー層の変質を抑制するという観点からは、常温又はその近傍の温度条件で乾燥処理を行うことが好ましい。具体的には、前記(d)工程又は前記(e)工程終了後に、金属膜形成後の材料を、常温下に保存する自然乾燥、常温条件下での減圧乾燥、及び常温送風乾燥の各乾燥処理が好ましい。
加温を行うことなく水分を可能な限り除去する観点からは、これらの乾燥処理を、1時間以上、さらには24時間以上実施することが好ましい。乾燥処理条件は、必要とされる密着性などを考慮して適宜選択すればよいが、具体的には、金属膜形成後の材料を、例えば、25℃前後の温度雰囲気下で1〜3日程度、1〜3週間程度、或いは、1〜2ヶ月程度保存して乾燥する方法、通常の真空乾燥機による減圧下に1〜3日程度、或いは、1〜3週間程度、保存して乾燥する方法等が挙げられる。
【0147】
乾燥処理を行うことにより密着性が向上する作用は明確ではないが、充分な乾燥を行うことにより、密着性を低下させる要因である水分が金属膜中に保持されるのを防ぐことで、水分に起因する密着性の低下を抑制しうるものと推定している。
また、乾燥中における銅等からなる金属膜表面の酸化防止のために、酸化防止剤を金属膜表面に塗布することが好ましい。酸化防止剤としては、一般的に使用されるものが適用でき、例えば、アジミドベンゼン等が使用できる。
【0148】
(金属パターン形成方法)
本発明の金属膜形成方法を用いて金属パターンを形成する方法としては、前記(b)ポリマー層形成工程中、或いは、(b)ポリマー層形成工程の後、パターン状にエネルギー付与を行って、エネルギー付与領域を硬化させ、未硬化部分を現像除去してパターン状にメッキ受容層を形成する方法と、基板の全面に形成された金属膜をエッチングして不要部分を除去する方法が挙げられる。また、前記したように、(a)プライマー層の形成工程において、ポリマー層の形成に有用なプライマー層を、印刷法などの公知の方法によりパターン状に設ける方法をとることもできる。
エネルギー付与によりパターン形成する場合には、プライマー層、或いは、その表面に形成されたポリマー層表面へ、加熱や露光等の輻射線照射を用いてエネルギーをパターン状に付与すればよい。例えば、UVランプ、可視光線などによる光照射、ホットプレートなどでの加熱等が可能である。光源としては、例えば、水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプ、カーボンアーク灯、等がある。放射線としては、電子線、X線、イオンビーム、遠赤外線などがある。また、g線、i線、Deep−UV光、高密度エネルギービーム(レーザービーム)も使用される。
一般的に用いられる具体的な態様としては、熱記録ヘッド等による直接画像様記録、赤外線レーザーによる走査露光、マスクを介して行われるキセノン放電灯などの高照度フラッシュ露光や赤外線ランプ露光などが好適に挙げられる。
エネルギー付与に要する時間としては、目的とするポリマー層の強度や用いる光源により異なるが、通常、10秒〜5時間の間である。
【0149】
なお、エネルギーの付与を露光にて行う場合、その露光パワーは、重合反応を容易に進行させるため、また、架橋構造が形成されたポリマー層の分解を抑制するため、10mJ/cm〜5000mJ/cmの範囲であることが好ましく、より好ましくは、50mJ/cm〜3000mJ/cmの範囲である。
また、重合性基及び相互作用性基を有する化合物として、平均分子量2万以上、重合度200量体以上のポリマーを使用すると、低エネルギーの露光で重合反応が容易に進行するため、硬化したポリマー層の分解を更に抑制することができる。
【0150】
パターン状にエネルギー付与を施した後、未硬化部分のポリマーは現像により除去する。現像方法としては、飽和重層水を用いて十分に洗浄することにより現像する方法、或いは、メタノールなどのアルコール系溶剤で十分に洗浄することにより現像する方法などが挙げられる。
このようにして形成されたパターン状のポリマー層を有する基材に、前記(c)工程、(d)工程を行うことにより、メッキ触媒と相互作用しうるメッキ受容性のポリマー層の形成領域のみに金属膜が形成され、金属パターンが得られる。
【0151】
エッチングによりパターン形成する場合、エッチング方法としては、プリント配線基板の製造時に使用されている方法が何れも使用可能であり、湿式エッチング、ドライエッチング等が使用可能であり、任意に選択すれば良い。作業の操作上、湿式エッチング装置などが簡便で好ましい。エッチング液として、例えば塩化第二銅、塩化第二鉄等の水溶液を使用することができる。
【0152】
このよう、本発明の方法により得られた金属膜は、平滑な基板上に形成され、且つ、基板とプライマー層を介して強固に密着しているポリマー層との間にハイブリット状態で金属膜が形成されていることから、基板との密着性が高く、且つ、基板界面における平滑性にも優れている。このため、本発明の製造方法により得られた金属膜を用いて形成された金属パターンは、導電材料として用いた場合、高周波特性に優れるため、その応用範囲は広い。
【実施例】
【0153】
以下、実施例により、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
〔基板〕
基板として、ポリイミドフィルム(東レ・デュポン(株)製、カプトン500H)を用いた。
【0154】
〔プライマー層の形成〕
下記のプライマー層塗布液1に記載の化合物を混合攪拌し、塗布溶液を調製した。
ポリイミドフィルム(製品名:カプトン500H、東レデュポン社製)の上に下記プライマー層塗布液1を厚さ1μmになるように、スピンコート法により塗布し、60℃にて30分乾燥し、プライマー層1とした。
【0155】
<プライマー層塗布液1>
・シアノ基含有ポリマー1(下記構造) 10質量部
(シアノ基含有量:1.9mmol/g:重量平均分子量:130000)
・1,3−ジオキソラン 90質量部
【0156】
【化31】

【0157】
〔無電解メッキ触媒またはその前駆体と相互作用する非解離性官能基、ラジカル重合性基、及び、イオン性極性基を有するポリマーの合成〕
(特定ポリマー1の合成)
500mlの三口フラスコに、N,N−ジメチルアセトアミド20gを入れ、窒素気流下、65℃まで加熱した。そこへ、下記構造のモノマーM:20.7g、2−シアノエチルアクリレート(東京化成製)20.5g、アクリル酸(東京化成製)14.4g、V−65(和光純薬製)1.0gのN,N−ジメチルアセトアミド20g溶液を、4時間かけて滴下した。滴下終了後、更に3時間撹拌した。その後、N,N−ジメチルアセトアミド91gを足し、室温まで反応溶液を冷却した。
【0158】
【化32】

【0159】
上記の反応溶液に、4−ヒドロキシTEMPO(東京化成製)0.17g、トリエチルアミン75.9gを加え、室温で4時間反応を行った。その後、反応液に70質量%メタンスルホン酸水溶液112g加えた。反応終了後、水で再沈を行い、固形物を取り出し、下記構造の特定ポリマー1(重量平均分子量7.4万)を25g得た。
【0160】
【化33】

【0161】
〔実施例1〕
前記の如くしてプライマー層1が形成された基板に、下記組成からなる塗布液を厚さ1μmになるように、スピンコート法により塗布し、80℃にて30分乾燥した。
【0162】
<塗布液1の組成>
上述の合成法で得られた特定ポリマー1:0.2g、炭酸ナトリウム:0.03g、水:1.8gを混合攪拌し、塗布溶液を調製した。
次に、UV露光機(型番:UVX−02516S1LP01、USHIO電機社製)を用い、23mW/cmの照射パワー(ウシオ電機製紫外線積算光量計UIT150−受光センサーUVD−S254で照射パワー測定)にて300秒間照射させた。その後に1質量%NaCO水溶液中に5分間浸漬し、続いて、蒸留水にて洗浄し、上記特定ポリマーによるポリマー層が全面に形成された基板Aを得た。
【0163】
[めっき触媒の付与]
ポリマー層(被めっき層)を有する基板Aを、硝酸銀を10質量%水溶液に、10分間浸漬した後、アセトンに浸漬して洗浄した。
〔無電解メッキ及び電気メッキ〕
上記のようにして、めっき触媒が付与されたポリマー層を有する基板Aに対し、下記組成の無電解めっき浴を用い、26℃で10分間、無電解めっきを行った。得られた無電解銅めっき膜の厚みは0.3μmであった。
【0164】
<無電解メッキ浴の組成>
・蒸留水 774g
・ATSアドカッパーIW−A(奥野製薬工業製) 45mL
・ATSアドカッパーIW−M(奥野製薬工業製) 72mL
・ATSアドカッパーIW−C(奥野製薬工業製) 9mL
・NaOH 1.98g
・2,2’−ビピリジル 1.8mg
【0165】
続いて、無電解銅めっき膜を給電層として、下記組成の電気銅めっき浴を用い、3A/dmの条件で、電気めっきを20分間行った。このようにして、電気銅めっき膜の厚みが18μmである金属膜1を作製した。
【0166】
<電気メッキ浴の組成>
・硫酸銅 38g
・硫酸 95g
・塩酸 1mL
・カッパーグリームPCM(メルテックス(株)製) 3mL
・水 500g
【0167】
〔実施例2〕
実施例1におけるプライマー層に用いたシアノ基含有ポリマー1を下記シアノ基含有ポリマー2に変えてプライマー層2を基板に作成した他は、実施例1と同様にして厚み18μの金属膜2を得た。下記シアノ基含有ポリマー2におけるシアノ基含有量は、7.2mmol/gであり、GPC法により測定した重量平均分子量は、92000であった。
【0168】
【化34】

【0169】
〔実施例3〕
〔無電解メッキ触媒またはその前駆体と相互作用する官能基及び重合性基を有するポリマーの合成〕
(特定ポリマー2の合成)
500ml三口フラスコに、N,N−ジメチルアセトアミド200g、ポリアクリル酸(和光純薬製、分子量:25000)30g、2−エチル−4−エチル−イミダゾール0.9g、ジターシャリーペンチルハイドロキノン25mg、下記モノマーB 27gを入れ、窒素気流下、100℃、5時間反応させた。
【0170】
【化35】

【0171】
その後、反応液を50gとり、氷浴中で4NNaOHを11.6ml加え、酢酸エチルで再沈を行い、下記構造単位からなる特定ポリマー2(重量平均分子量:6.7万)を濾取、蒸留水で洗浄、乾燥し2.7g得た。
【0172】
【化36】

【0173】
実施例1で用いた、プライマー層1が形成された基板に、下記組成からなる塗布液2を厚さ1μmになるように、スピンコート法により塗布し、80℃にて30分乾燥した。
【0174】
<塗布液2の組成>
・特定ポリマー2 0.25g
・メタノール 3.0g
次に、三永電機製のUV露光機(型番:UVF−502S、ランプ:UXM−501MD)を用い、1.5mW/cmの照射パワー(ウシオ電機製紫外線積算光量計UIT150−受光センサーUVD−S254で照射パワー測定)にて、280秒間照射させ、その後に、得られた膜を飽和重曹水にて洗浄し、基板全面にポリマー層2を形成した。ここで、積算露光量は420mJ/cmであった。
基板に1.5kW高圧水銀灯を使用し30秒間露光を行った。その後に得られた膜を飽和重曹水にて洗浄し、上記特定ポリマーによるポリマー層が全面に形成された基板Bを得た。
【0175】
〔無電解メッキ及び電気メッキ〕
得られた基板Bを、硝酸銀(和光純薬製)1質量%の水溶液に5分間浸漬した後、蒸留水で洗浄した。その後、以下の組成からなる無電解メッキ浴にて、20分間無電解メッキし、金属膜を作製した。
【0176】
<無電解メッキ浴の組成>
・蒸留水 176g
・硫酸銅・5水和物 1.9g
・EDTA・2Na 5.54g
・NaOH 1.58g
・PEG(分子量1000) 0.019g
・2,2−ビピリジル 0.18mg
・ホルムアルデヒド水溶液 1.01g
【0177】
その後、金属膜を、更に、下記組成の電気メッキ浴にて20分間電気メッキし、厚み18μmの金属膜3を作製した。
【0178】
<電気メッキ浴の組成>
・硫酸銅・五水和物 135g
・濃硫酸 342g
・塩酸 0.25g
・カッパーグリームST−901C 9mL
(ローム・アンド・ハース電子材料(株)製)
・水 234g
【0179】
〔比較例1〕
実施例1におけるプライマー層に用いたシアノ基含有ポリマー1を比較ポリマーであるポリ(スチレン−ブタジエン)共重合体(共重合比:55/45、Mw:200000)に変えてプライマー層3を基板に作成した他は、実施例1と同様にして厚み18μmの金属膜を得た。
〔比較例2〕
実施例1におけるプライマー層に用いたシアノ基含有ポリマー1を比較ポリマーであるポリスチレン(Mw:170000)に変えてプライマー層4を基板に作成した他は、実施例1と同様にして厚み18μmの金属膜を得た。
〔比較例3〕
実施例1におけるプライマー層に用いたシアノ基含有ポリマー1を比較ポリマーであるポリブタジエン(Mw:290000)に変えてプライマー層5を基板に作成した他は、実施例1と同様にして厚み18μmの金属膜を得た。
【0180】
<評価>
(密着性)
実施例1〜3、比較例1〜3で得られた金属膜について、JIS K5600に準拠したクロスカット法により、基材からの金属膜の剥離の有無を目視により観察した。剥がれが少ないほど密着性に優れるものであり、以下の評価で◎〜○であれば実用上の密着性を達成するものと評価する。
◎:剥がれ無し
○:剥がれ1マス/100マス〜10マス/100マス
△:剥がれ11マス/100マス〜49マス/100マス
×:剥がれ50マス以上/100マス
結果を下記表1に示す。
【0181】
【表1】

【0182】
上記表1の結果によれば、実施例1〜3により得られた各金属膜は、そのいずれもが、比較例1〜3により得られた金属膜よりも基板との密着力が良好になっていた。これは、本発明で用いたプライマー層が、シアノ基を有するユニットを含まないこと以外は、類似のユニットにより形成されたポリマーを含有するプライマー層を備えた比較例に対して、基板とポリマー層との密着性を著しく向上させたためと推測される。
【0183】
(実施例4)
(特定ポリマー1のパターン形成)
実施例1と同様にして、特定ポリマー1を用いた塗布溶液を調整した。
実施例1で用いたのと同じ、シアノ基含有ポリマー1をプライマー層として形成された基板に、該塗布溶液をスピンコート法にて厚さ1μmになるように塗布し、80℃にて5分乾燥して塗膜を形成した。
その後、該塗膜表面に、幅5mm、長さ50mmのパターンが0.1mm間隔で並んだマスクAを配置し、該マスクを介して、三永電機製のUV露光機(型番:UVF−502S、ランプ:UXM−501MD)を用い、10mW/cmの照射パワー(ウシオ電機製紫外線積算光量計UIT150−受光センサーUVD−S254で照射パワー測定)にて、100秒間照射することで、基板のプライマー層上に対して特定ポリマー1をパターン状に硬化した。
その後、攪拌した状態の飽和重曹水中に、露光後の基板を5分間浸漬し、続いて蒸留水により洗浄した。これにより、幅5mm、長さ50mmのパターン形状で、厚み0.5μmの特定ポリマー層を有する基板を得た。
パターン状のポリマー層が形成された基板を用いて、実施例1と同様にして無電解めっき、電解メッキを行ったところ、基板上に、幅5mm、長さ50mmのパターン形状の金属膜が形成された。
【0184】
(密着性の評価)
得られたパターン状の金属膜に対して、実施例1及び実施例2と同様にして、クロスカット法による密着性評価を行ったところ、剥がれは全く認められず、密着性は良好であった。
【0185】
(実施例5)
実施例4において、マスクAに代えて、ライン・アンド・スペース=100μm/100μmくし型配線のマスクBを配置し、それを介して同様の条件で露光することで、基板のプライマー層上に対して特定ポリマー1をパターン状に硬化した。
その後、攪拌した状態の飽和重曹水中に5分間浸漬し、続いて蒸留水により洗浄した。これにより、ライン・アンド・スペース=100μm/100μmくし型配線のパターン形状で、厚み0.5μmの特定ポリマー層を有する基板を得た。
パターン状のポリマー層が形成された基板を用いて、実施例1と同様にして無電解めっき、電解メッキを行ったところ、基板上に、L/S=100μm/100μmのパターン形状の金属膜が形成された。
得られたパターン状の金属膜に対して、実施例1及び実施例2と同様にして、クロスカット法による密着性評価を行ったところ、剥がれは全く認められず、密着性は良好であった。
実施例4及び実施例5より、本発明の金属膜の製造方法によりポリマー層をパターン状に形成することで、容易に、任意のパターン状の、基板との密着性に優れた金属膜を形成することができることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)基板上に、側鎖にシアノ基を有するユニットを含むポリマーを塗布してプライマー層を形成するプライマー層形成工程と、(b)該プライマー層表面に、無電解メッキ触媒またはその前駆体と相互作用する官能基及び重合性基を有するポリマーを塗布してポリマー層を形成するポリマー層形成工程と、(c)該ポリマー層に無電解メッキ触媒またはその前駆体を付与する触媒付与工程と、(d)無電解メッキを行い、ポリマー層上に金属膜を形成する金属膜形成工程と、を有する金属膜形成方法。
【請求項2】
前記無電解メッキを行った後に、さらに、(e)電気メッキを行う請求項1記載の金属膜形成方法。
【請求項3】
前記(b)ポリマー層形成工程の後に、さらに、パターン状にエネルギーを付与する工程と、その後、現像する工程とを有する請求項1または請求項2記載の金属膜形成方法。
【請求項4】
前記(d)金属膜形成工程の後に、さらに、エネルギーを付与する工程を有する請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の金属膜形成方法。
【請求項5】
前記側鎖にシアノ基を有するユニットを含むポリマーが、下記一般式(1)で表されるユニットを含む重合体である請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の金属膜形成方法。
【化1】


(前記一般式(1)中、Rは、水素原子、又は、置換若しくは無置換のアルキル基を表し、Xは、単結合、置換若しく無置換の二価の有機基、エステル基、アミド基、又は、エーテル基を表し、Lは、置換若しくは無置換の二価の有機基を表す。)
【請求項6】
前記無電解メッキ触媒またはその前駆体と相互作用する官能基及び重合性基を有するポリマーが、下記式(a)及び式(b)で示されるユニットを含む共重合体である請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の金属膜形成方法。
【化2】


上記式(a)及び式(b)中、R〜Rは、夫々独立して、水素原子、又は置換若しくは無置換のアルキル基を表し、X、Y及びZは、夫々独立して、単結合、置換若しく無置換の二価の有機基、エステル基、アミド基、又はエーテル基を表し、L及びLは、夫々独立して、置換若しくは無置換の二価の有機基を表し、Wはめっき触媒又はその前駆体と相互作用を形成する官能基を表す。
【請求項7】
前記無電解メッキ触媒またはその前駆体と相互作用する官能基及び重合性基を有するポリマーが、無電解メッキ触媒またはその前駆体と相互作用する非解離性官能基、ラジカル重合性基、及びイオン性極性基を有するポリマーである請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の金属膜形成方法。
【請求項8】
前記無電解メッキ触媒またはその前駆体と相互作用する非解離性官能基、ラジカル重合性基、及びイオン性極性基を有するポリマーが、下記式(A),式(B)及び式(C)で示されるユニットを含む共重合体である請求項7に記載の金属膜形成方法。
【化3】


前記式(A)〜式(C)中、R〜Rは、夫々独立して、水素原子、又は置換若しくは無置換のアルキル基を表し、X、Y、Z、及びUは、夫々独立して、単結合、置換若しく無置換の二価の有機基、エステル基、アミド基、又はエーテル基を表し、L、L、及びLは、夫々独立して、置換若しくは無置換の二価の有機基を表し、Wはめっき触媒又はその前駆体と相互作用を形成する非解離性官能基を表し、Vはイオン性極性基を表す。
【請求項9】
前記プライマー層の塗布量が、前記側鎖にシアノ基を有するユニットを含むポリマーの固形分換算で、0.1mg/m〜10mg/mの範囲である請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の金属膜形成方法。

【公開番号】特開2010−84196(P2010−84196A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−254717(P2008−254717)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】