鉄道車両用振動制御装置
【課題】装置の大型化やコスト上昇を招くことなく、大きな超過遠心加速度に効果的に対処できる鉄道車両用振動制御装置を提供する。
【解決手段】車体1と該車体を弾性支持する台車2との間に介装され、該車体および台車の左右方向の相対変位を制御するアクチュエータ4と、前記車体の左右方向の振動加速度を検出する加速度検出手段8と、該加速度検出手段の検出結果に基づいて前記アクチュエータを制御するコントローラ10とからなる鉄道車両用振動制御装置において、鉄道車両が曲線区間を走行していることを検出するストロークセンサ9とを設け、鉄道車両が曲線区間を走行していることをストローク9が検知した場合に、アクチュエータ4の出力を抑制する。
【解決手段】車体1と該車体を弾性支持する台車2との間に介装され、該車体および台車の左右方向の相対変位を制御するアクチュエータ4と、前記車体の左右方向の振動加速度を検出する加速度検出手段8と、該加速度検出手段の検出結果に基づいて前記アクチュエータを制御するコントローラ10とからなる鉄道車両用振動制御装置において、鉄道車両が曲線区間を走行していることを検出するストロークセンサ9とを設け、鉄道車両が曲線区間を走行していることをストローク9が検知した場合に、アクチュエータ4の出力を抑制する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両の左右方向の振動を抑制する振動制御装置に係り、特に曲線区間走行時に発生する超過遠心加速度に有効に対処し得る鉄道車両用振動制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄道車両用振動制御装置は、一般に加速度センサにて車体の振動加速度を検出して、その検出結果をコントローラにて車体の振動を低減するように補償し、該補償結果に基づいて車体−台車間に設置されたアクチュエータを制御する構成となっていた。しかし、この従来一般の振動制御装置では、車両が曲線区間を高速で走行して車体に超過遠心加速度が作用すると、作動原理上、向心加速度を検出する加速度センサの特性によりアクチュエータが車体を外軌側へ移動させるように作動し、車体の左右動を規制するストッパに強く押付けられる。このため、超過遠心加速度が発生している間は、台車を介して伝達される軌道外乱が主因の加振により、車体に衝撃的な加速度が発生し、乗り心地が著しく悪化するという問題があった。
【0003】
そこで、特許文献1に記載のものでは、変位計にて車体と台車との相対変位を検出し、相対変位が所定値を超えると、該変位を抑制する方向にアクチュエータを制御し、車体と左右動ストッパとの接触を回避するようにしていた。また、特許文献2に記載のものでは、加速度制御用アクチュエータとは別に変位制御用アクチュエータを設置し、加速度制御と変位制御とを併用して、良好な乗り心地を確保するようにしていた。
【0004】
【特許文献1】特開昭61−275053号公報
【特許文献2】特開平6−278606号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかるに、最近は鉄道車両の高速化に伴って、超過遠心加速度が益々増大する傾向にあり、上記特許文献1、2に記載されるようにアクチュエータを積極的に制御する方式では、むしろ余計な振動が発生し、良好な乗り心地を安定して確保することが困難である、という問題があった。また、特許文献1に記載の制御方式では、アクチュエータを加速度制御と相対変位制御とに共用するため、大型のアクチュエータが必要になり、一方、特許文献2に記載の制御方式では、変位制御用アクチュエータの増設が必要になり、何れも装置の大型化並びにコスト上昇が避けられない、という問題もあった。
【0006】
本発明は、上記した従来の問題点に鑑みてなされたもので、その課題とするところは、装置の大型化やコスト上昇を招くことなく、大きな超過遠心加速度に効果的に対処できる鉄道車両用振動制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は、車体と該車体を弾性支持する台車との間に介装され、該車体および台車の左右方向の相対変位を制御するアクチュエータと、前記車体の左右方向の振動加速度を検出する加速度検出手段と、該加速度検出手段の検出結果に基づいて前記アクチュエータを制御するコントローラとからなる鉄道車両用振動制御装置において、車両走行状況を用いて鉄道車両が曲線区間を走行していることを検出する曲走検出手段を備え、前記コントローラは、鉄道車両が曲線区間を走行していることを前記曲走検出手段が検知した場合に、前記アクチュエータの出力を抑制することを特徴とする
【0008】
このように構成した鉄道車両用振動制御装置においては、車両が曲線区間を通過している場合には、アクチュエータの出力を抑制するので、大きな超過遠心加速度が発生しても、車体が左右動規制ストッパに強く押付けられることはなくなり、その上、余計な振動発生が抑制される。
また,前記アクチュエータと並列に配置された減衰係数切替式油圧ダンパを備え、アクチュエータの出力を抑制すると共に、油圧ダンパの減衰係数を高くすると,更に余計な振動発生が抑制される。
【0009】
本発明において、上記車両走行情報としては、車体と台車との左右方向の相対変位を検出するストロークセンサの変位情報を用いることができる。このようにストロークセンサの変位情報を用いる場合は、キロ程(地点)情報のように通信手段を経ることなく、直接情報を取込むことができるので、入手困難になる事態は避けられ、装置に対する信頼性が向上する。
【0010】
本発明において、上記曲線区間は、曲線の曲率が徐々に変化する曲線入口側および曲線出口側の緩和曲線区間と曲率が一定の円曲線区間とを含んでおり、本発明は、前記した緩和曲線区間を対象に、下記のごとき種々の態様でコントローラによるアクチュエータの制御を行うことができる。
【0011】
(1)鉄道車両が緩和曲線区間を通過中のみ前記アクチュエータの出力を抑制すること、
(2)鉄道車両が曲線入口側の緩和曲線区間を通過中は前記アクチュエータの出力を徐々に抑制し、曲線出口側の緩和曲線区間を通過中は該アクチュエータの出力を徐々に増加させること、
(3)鉄道車両が曲線入口側の緩和曲線区間の入口に向うに従って前記アクチュエータの出力を徐々に抑制し、曲線出口側の緩和曲線区間を通過した後に該アクチュエータの出力を徐々に増加させること、
(4)鉄道車両が曲線入口側の緩和曲線区間を通過中は前記アクチュエータの出力を徐々に抑制し、曲線出口側の緩和曲線区間を通過した後に該アクチュエータの出力を徐々に増加させること、
【0012】
緩和曲線区間は、超過遠心加速度が漸増、漸減する区間であり、この区間では車体の振動加速度と過渡状態にある超過遠心加速度とが重畳し、0.5Hz前後の周波数で車体を左右に大きく揺動させるようにアクチュエータの制御力が補償される場合あり、乗り心地が著しく悪化する。したがって、上記(1)〜(4)項に記載のように緩和曲線区間を対象にアクチュエータを制御する場合は、超過遠心加速度対策として特に有用となる。また、(2)〜(4)項に記載のようにアクチュエータの出力を徐々に低下または増加させる場合は、制御の切替えに伴う衝撃が緩和され、乗り心地はより一層改善される。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る鉄道車両用振動制御装置によれば、装置の大型化やコスト上昇を招くことなく、大きな超過遠心加速度に効果的に対処でき、その利用価値は大なるものがある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための最良の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0015】
図1および図2は、本発明の第1の実施形態としての鉄道車両用振動制御装置を示したものである。図中、1は車体、2は台車であり、車体1は空気ばね3を介して台車2上に支持されている。車体1と台車2との相互間には、車体1の前位および後位に位置して左右方向のアクチュエータ4と左右方向の減衰切替式油圧ダンパ5とが各一対配設されている。アクチュエータ4および油圧ダンパ5は、車体1の下部に突設した中心ピン6と台車2の枠2aに立設した支柱7,7との間に相互に並列となるように配置されている。また、車体1の前位および後位には、車体1の左右方向の振動加速度を検出する加速度センサ(加速度検出手段)8が配設され、さらに、アクチュエータ4には、車体1と台車2との相対変位を検出するストロークセンサ(変位計)9が付設されている。なお、車体1と台車2との相互間には、車体1の左右動を規制するストッパ(左右動規制ストッパ)が設けられているが、これについては図示を省略している。
【0016】
一方、別途、コントローラ10が設けられており、該コントローラ10には、前記加速度センサ8から加速度信号が、前記ストロークセンサ9から変位信号がそれぞれ入力されるようになっている。コントローラ10は、後述の制御ブロック図(図3)に従って信号処理を行い、前記アクチュエータ4に制御力信号を、前記油圧ダンパ5に減衰係数切替信号をそれぞれ送出する。
【0017】
図3は、コントローラ10による制御ブロック図を示したものである。なお、ここでは車体の左右振動の抑制制御のためにスカイフック制御を適用している。車体の前位および後位の加速度センサ8の加速度検出結果a1,a2は、速度推定器11にて積分処理されて前・後位左右速度v1、v2に変換される。その後、車体の振動モードはヨー(首振り)とスエー(並進)とに分解され、車体のヨー運動による左右速度v1−v2はヨー制御器12に、車体のスエー並進速度vsはスエー制御器13にそれぞれ入力される。ヨー制御器12、スエー制御器13はそれぞれの振動モードに合せて振動を低減させるように前記アクチュエータ4の出力を制御する。なお、スカイフック制御の詳細については周知であるので、ここでは省略する。
【0018】
一方、ローパスフィルタ14と、曲線判定器15とゲイン演算器16とからなる直線/ゲイン演算器17が設けられている。直線/ゲイン演算器17は、車体の前位および後位のストロークセンサ9のストローク検出結果s1、s2をローパスフィルタ14を介して取込むことで、ストロークの定常成分のみを抽出する。そして、曲線判定器15にて直線/曲線の判定を行った後、ゲイン演算器16内のヨーゲイン演算器16aにてヨーゲインgyを、スエーゲイン演算器16bにてスエーゲインgsをそれぞれ決定する。このとき、曲線区間では直線区間に対し制御ゲインを低下させる。
【0019】
また、上記曲線判定器15は、前位ストローク、後位ストロークよりそれぞれ個別に曲線判定を行っているが、曲線入口、出口では超過遠心加速度に伴う前位ストローク、後位ストロークの変化に時間差が生じる。そのため、例えば、曲線入口では、C#data1は曲線を示し、C#data2は直線を示しているような時間が存在し得ることになる。この場合、曲線入口、出口ではゲインの低下度合いが緩やかになる。
【0020】
その後、乗算器18にてヨー制御器12の出力にヨーゲイン演算器16aの出力gyを、スエー制御器13の出力にスエーゲイン演算器16bの出力gsを乗じて、ヨーに対する制御力、スエーに対する制御力を求め、さらにリミッタ19を通して車体の前位および後位のアクチュエータ4の制御力(出力)u1、u2を出力する。なお、特に図示していないが、左右振動の抑制制御は、速度ゼロの場合も含めて常時行っても良いし、あるい速度閾値(例えば、150km/h)以上の場合に行ってもよい。
【0021】
図4は、制御フローを示したものである。制御演算は、サンプリング時間毎に、まず、ステップS1で車体の前・後位の左右加速度を読込み、次のステップS2で速度推定器11により車体の前・後位の左右速度に変換する。さらに、ステップS3で車体のヨー運動による前・後位の車体速度と車体のスエー(並進)速度vsとを算出する。
【0022】
一方、直線/ゲイン演算器17にストロークセンサ9のストローク検出結果s1、s2を取込み、まず、ステップS4でローパスフィルタ14によりローパス処理を行う。次いで、車体の前・後位のストロークを曲線判定器15に入力する(S5、S6)。曲線判定器15は、ストロークセンタをストロークゼロとしたとき、後述する変数「曲線データ」を出力するが、例えば、ストロークが設定された正の閾値より大きいときには、0<曲線データ<1(例えば、右曲線)、負の閾値より小さいときには、−1<曲線データ<0((直線)を出力する。なお、この閾値には一定のヒステリシスを設けるのが望ましく、例えば、直線から曲線への切替閾値s1,−s1、曲線から直線への切替閾値s2,−s2をそれぞれ個別に設ける。一例として、s1=15mm、s2=12mmなどとする。また、ここでは、前位ストロークによる曲線判定器15の出力(曲線データ)をC#data1、後位ストロークによる曲線判定器15の出力(曲線データ)をC#data2とする。なお、曲線判定器15での処理フローの詳細については、図5に基づいて後に詳述する。
【0023】
ゲイン演算器16は、入力(曲線データC#data1、C#data2)が0のときには直線と判断して1を出力し、0以外の時には、予め設定された曲線でのゲイン比から計算されるヨーゲインgy、スエーゲインgsを出力する(S7)。なお、このゲイン演算器16での処理フローの詳細については、図6に基づいて後に詳述する。
【0024】
次に、ステップS8において、乗算器18によりヨー制御器12の出力にヨーゲイン演算器12aの出力gyを、スエー制御器13の出力にスエーゲイン演算器25bの出力gsをそれぞれ乗ずる処理を行う。そして、次のステップS9において、曲線判定器15の判定結果が0以外の場合、すなわち曲線と判定した場合は、ステップS10において減衰係数切替式油圧ダンパ5の減衰係数を「高」に切替え、一方、ステップS9において、曲線判定器15の判定結果が0の場合、すなわち直線と判定した場合は、ステップS11において減衰係数切替式油圧ダンパ5の減衰係数を「低」に切替える。その後は、ステップS12において制御力の範囲チェックを行い、さらに、次のステップS13にて車体の前位および後位のアクチュエータ4の制御力u1、u2を算出し、ステップS14において前記制御力を出力する。
なお,ここではアクチュエータの出力を抑制すると共に、油圧ダンパの減衰係数を高くする場合について説明している。
【0025】
ここで、曲線判定器15での処理フローの詳細を図5に基づいて説明する。ただし、処理フローは所定のサンプリング時間で繰り返されるものとする。まず、車両が直線から右曲線へ進入する場合を考えると、曲線、直線の判定結果である変数「曲線データ」がゼロよりも大きいか(S21)、小さいか(S30)を判断する。この場合、直線時曲線データはゼロであるので、次いで、ストロークが直線から曲線への切替閾値s1より大きいか(S39)、小さいか(S40)を判断する。
【0026】
右曲線に進入した後、しばらくはストロークの値が閾値s1よりも小さいので、その間は、ステップS41にて曲線データをゼロとする。その後、ストロークが初めて閾値s1を越えると、曲線データ=delta#d(例えば、delta#d=0.1)とし、曲線データにゼロ以外の正の値が代入される(S42)。
【0027】
次のサンプリング時間では、ステップS21からステップS22に進み、ここでは曲線から直線への切替閾値s2よりも小さくないので、ステップS23、S24へ進み、例えば、曲線データ=delta#d=0.1とすれば、曲線データは0.1ずつインクリメントされていく。この曲線データのインクリメント処理により曲線データ(C#data1、C#data2)は1になるまで徐々に大きくなるが、曲線データは1よりも大きい値はとらない(S26、S27)。
【0028】
続いて、車両が右曲線から直線へ進んで行く際は、ステップS21からステップS22ヘ進み、ストロークが曲線から直線への切替閾値s2よりも小さくなるかを監視し、ストロークがs2よりも小さくなった場合には、ステップS25へ進み、例えば、曲線データ=−delta#d=−0.1)となり、−0.1ずつインクリメント(0.1ずつデクリメント)されていく。この曲線データ(C#data1、C#data2)は0になるまで徐々に小さくなるが、曲線データは0よりも小さい値はとらない(S28、S29)。
【0029】
一方、車両が直線から左曲線へ進入する場合を考えると、左曲線に進入した後しばらくは、ストロークの値は閾値−s1よりも大きいので、その間は、ステップS41にて曲線データ=0とする。その後、ストロークが初めて閾値−s1を越えて小さくなると、例えば、曲線データ=−delta#d=−0.1)とし、変数の曲線データにゼロ以外の負の値が代入される(S43)。
【0030】
次のサンプリング時間では、曲線データは、負の値であってステップS21からステップ30、S31に進む。この場合、曲線から直線への切替閾値−s2よりも大きくないので、ステップS32、S33へと進み、例えば、曲線データ=−delta#d=−0.1とすれば、曲線データは−0.1ずつインクリメント(0.1ずつデクリメント)されていく。この曲線データのインクリメント処理により曲線データ(C#data1、C#data2)は−1になるまで徐々に小さくなるが、曲線データは−1よりも小さい値はとらない(S35、S36)。
【0031】
続いて、車両が左曲線から直線へ進んで行く際は、ステップS21からステップS30、S31ヘ進み、ストロークが曲線から直線への切替閾値−s2よりも大きくなるかを監視し、ストロークが−s2よりも大きくなった場合には、ステップS34へ進み、例えば、曲線データ=delta#d=0.1となり、0.1ずつインクリメントされていく。この曲線データ(C#data1、C#data2)は0になるまで徐々に小さくなるが、曲線データは0よりも小さい値はとらない(S28、S29)。
【0032】
次に、ゲイン演算器16での処理フローの詳細を図6に基づいて説明する。曲線でのゲイン比は、[曲線ゲイン/直線ゲイン]<1となるように設定されるもので、ヨーゲインgy、スエーゲインgsを個別に設定するため、ヨーの曲線ゲイン比ry、スエーの曲線ゲイン比rsをそれぞれ設けていて、0<ry<1、0<rs<1の範囲で設定される。ヨーゲインgy、スエーゲインgsは、前位ストロークと後位ストロークから判定した曲線判定器15の出力(曲線データC#data1、C#data2)とヨーの曲線ゲイン比ry、およびスエーの曲線ゲイン比rsを用いて、それぞれ算出される(S51、S52)。
【0033】
このように、車両が曲線区間を通過していることを曲線判定器15が検出すると、ゲイン演算器16が直線時の制御ゲインに比べてゲインを減じるように曲線ゲイン比を出力するので、アクチュエータ4の出力が抑制される。したがって、超過遠心加速度が発生しても、アクチュエータ4によって車体1が左右動規制ストッパに強く押付けられることはなくなり、結果として車体1に衝撃的な加速度が発生することもなくなって、曲線区間の乗り心地が良好となる。本第1の実施形態においては特に、アクチュエータ4と並列に減衰係数切替式油圧ダンパ5を配置し、車両が曲線区間を通過しているときには油圧ダンパ5の減衰係数を「高」に切替えるので、車体1が左右動規制ストッパに押付けられることはほとんどなくなり、曲線区間の乗り心地がきわめて良好となる。
【0034】
前記第1の実施形態では、ストロークセンサ9により車体1と台車2との相対移動を検知し、この検知結果が、超過遠心加速度によりある一定値以上となったときに曲線区間であると判断し、制御ゲインを下げてアクチュエータ4の出力(制御力)を抑制する制御を行ったが、本発明は、緩和曲線区間に制御範囲を限定してアクチュエータ4の制御力を抑制する制御を行ってもよい。
【0035】
図7は、緩和曲線区間に制御範囲を限定した本発明の第2の実施形態を示したものである。なお、加速度センサ8の加速度検出結果の処理系は、前出図3に示したものと同じであるので、ここでは、直線/曲線ゲイン演算器17の処理系のみを示しかつ同一構成要素に同一符号を付すこととする。本第2の実施形態においては、ストロークセンサ9のストローク検出結果(前位加速度a1、後位加速度a2)を直線/曲線ゲイン演算器17内のローパスフィルタ14に取込んで、一定の定常成分のみを抽出した後、ハイパスフィルタ14´に取込み、前記定常成分を取除く処理を行う。ハイパスフィルタ14´のカットオフ周波数は、例えば、0.2Hzなどとする。すると、緩和曲線区間での超過遠心加速度の漸増、漸減に伴い、ストローク検出結果(車体1と台車2との相対変位)も漸増、漸減するが、このストロークが漸増、漸減する間のみ変位として抽出することができる。この場合、直線/曲線ゲイン演算器17内の曲線判定器15は、緩和曲線区間のみ曲線区間と判断することとなり、円曲線区間は曲線区間と判断されない。この結果、アクチュエータ4の制御力を抑制する区間を緩和曲線区間に限定することができる。
【0036】
前記第1、第2では、曲線区間の検出をストロークセンサ9のストローク検出結果に基づいて判断したが、本発明は、ストロークに代えて、キロ程(地点)情報を取込み、現在地点と既知の曲線位置情報とから曲線区間走行を判定するようにしてもよい。
【0037】
図8は、キロ程(地点)情報を取込んで曲線区間走行を判定する本発明の第3の実施形態を示したものである。なお、加速度センサ8の加速度検出結果の処理系は、前出図3に示したものと同じであるので、ここでは、直線/曲線ゲイン演算器の処理系のみを示すこととする。本第3の実施形態において、直線/曲線ゲイン演算器17は、1つの曲線判定器15´を備えており、この曲線判定器15´は、キロ程(地点)情報を取込み、曲線データベース20内の地点−曲線マップデータを用いて曲線区間走行を判定するようになっている。
【0038】
本第3の実施形態において、走行区間と制御ゲインおよび減衰係数切替タイミングとの関係は、例えば、図9に示すように設定する。すなわち、直線時のゲインを1としたとき、曲線入口側の緩和曲線通過中は制御ゲイン(ヨーゲインgy、スエーゲインgs)を徐々に下げ、円曲線区間ではゲインをgc(gc<1)と一定にし、曲線出口側の緩和曲線通過中は制御ゲインを徐々に上げていく。
【0039】
ここで、キロ程情報は、例えば、シリアル通信を経由して得ることができるが、この場合は、通信のサンプリング間隔がコントローラ10の制御周期に比べて遅い場合がある(例えば、キロ程は50ms毎に更新され、制御のサンプリング周期5msの場合など)。このような場合は、キロ程情報をローパスフィルタを介して取込むことで滑らかな曲線にする。なお、ローパスフィルタ処理による遅れが発生するが、等速度運動時は遅れ時間が一定になるので、これを用いて遅れを補正すればよい。
【0040】
前記第3の実施形態では、曲線区間走行を検出してアクチュエータ4の制御力(出力)を制御するのは、曲線区間入口側の緩和曲線の始まりから曲線区間出口側の緩和曲線の終わりまでの区間内である。緩和曲線区間では、超過遠心加速度が漸増、漸減する区間であり、車体1の振動加速度と過渡状態にある超過遠心加速度とが重畳し、0.5Hz前後の周波数で車体を左右に大きく揺動させるようにアクチュエータ4の制御力が補償される場合あり、この場合は、乗り心地が著しく悪化する場合がある。
【0041】
本発明の第4の実施形態においては、例えば、図10に示すように、直線時のゲインを1としたとき、直線部から曲線入口側の緩和曲線に向って制御ゲイン(ヨーゲインgy、スエーゲインgs)を徐々に下げ、円曲線区間ではゲインをgcと一定にし、曲線出口側の緩和曲線を通過後は制御ゲインを徐々に上げていく。
【0042】
一方、上記した緩和曲線区間で乗り心地が大きく損われるのは、曲線出口側の緩和曲線である場合が多いので、例えば、図11に示すように、曲線入口側の緩和曲線では、曲線入口から制御ゲインを徐々に下げ、曲線出口側の緩和曲線のみで、制御ゲインを上げるタイミングを遅く調整しても良い。曲線出口側の緩和曲線のみで、制御ゲインを上げるタイミングを遅く調整するには、必ずしもキロ程と曲線データベース20に依らずに可能であり、前記ストロークセンサ9の検出結果からストロークが漸増する区間を曲線出口側の緩和曲線と判断し制御ゲインを調整しても良い。
【0043】
ここで、ストロークセンサ9を用いる場合、その直線走行時の値(ゼロ点)は、通常ある一定の範囲内に収まるようになる。しかし、車両検査などでアクチュエータ4を車両から切離し、あるいは車体1と台車2とを切離した場合、ストロークセンサ9のゼロ点がずれる場合がある。このことは、絶対位置検出形のストロークセンサを使用した場合に問題となる。
【0044】
そこで、(1)直線走行する、(2)ある一定以上の速度(例えば、180km/h)でアクティブ制御する、という条件を満たす適当な区間を抽出し、キロ程情報、速度情報、路線データベース情報等から前記抽出区間を(1)、(2)を満足するように走行している場合に、ある一定の時間(例えば、10秒)のストローク検出結果を記録し、その平均値をストロークセンサのゼロ点として更新するような制御を付加しても良い。
【0045】
なお、上記各実施形態では、車両が曲線区間を通過しているときには油圧ダンパ5の減衰係数を「高」に切替えるようにしたが、本発明は、油圧ダンパ5の減衰係数は一定として、アクチュエータ4の出力のみを抑制するようにしてもよいものである。超過遠心加速度が発生しても、アクチュエータ4によって車体1が左右動規制ストッパに強く押付けられることはないので、車体1に衝撃的な加速度が発生することもなくなって、曲線区間の乗り心地が良好となる。
【0046】
さらに、前記各実施の形態においては、アクチュエータの出力の抑制・増加をゲインを増加・減少によって行うものを示した。この場合、ゲインを増加させても実際のアクチュエータの制御状態によって出力値は、増加する場合も減少する場合もあるが、本発明におけるアクチュエータの出力の抑制・増加は、その傾向すなわち、同じセンサ入力があったときの出力値を小さく、または、大きくするもので、実際の走行中の出力値を小さくまたは大きくするものではない。
【0047】
なお、ゲインを変化させる方法以外にも、たとえば、アクチュエータへの出力値U1に対し、その上限値を規制する上限値規制手段を設けて、曲線区間でこの上限値を下げることで、アクチュエータの出力の抑制することも可能である。さらに、ゲインと上限値の両方を調整してもよい。
【0048】
また、上記アクチュエータ4の種類は任意であり、空気圧アクチュエータや油圧アクチュエータであっても、電磁式アクチュエータであっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の第1の実施形態としての鉄道車両用振動制御装置を模式的に示す正面図である。
【図2】本第1の実施形態としての振動制御装置の要部構造を模式的に示す平面図である。
【図3】本第1の実施形態における制御系を示す制御ブロック図である。
【図4】本第1の実施形態における制御フローを示すフロー図である。
【図5】本第1の実施形態における制御系を構成する曲線判定器の制御フローを示すフロー図である。
【図6】本第1の実施形態における制御系を構成するゲイン演算器の制御フローを示すフロー図である。
【図7】本発明の第2の実施形態における制御系を示す制御ブロック図である。
【図8】本発明の第3の実施形態における制御系を示す制御ブロック図である。
【図9】本第3の実施形態における走行区間と制御ゲインおよび減衰係数切替タイミングとの関係を示すグラフである。
【図10】本発明の第2の実施形態における走行区間と制御ゲインおよび減衰係数切替タイミングとの関係を示すグラフである。
【図11】本発明の第2の実施形態における走行区間と制御ゲインおよび減衰係数切替タイミングとの関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0050】
1 車体
2 台車
4 アクチュエータ
5 減衰係数切替式油圧ダンパ
8 左右方向の加速度センサ
9 ストロークセンサ(変位検知手段)
10 コントローラ
14 ローパスフィルタ
15、15´ 曲線判定器
16 ゲイン演算器
17 直線/曲線ゲイン演算器
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両の左右方向の振動を抑制する振動制御装置に係り、特に曲線区間走行時に発生する超過遠心加速度に有効に対処し得る鉄道車両用振動制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄道車両用振動制御装置は、一般に加速度センサにて車体の振動加速度を検出して、その検出結果をコントローラにて車体の振動を低減するように補償し、該補償結果に基づいて車体−台車間に設置されたアクチュエータを制御する構成となっていた。しかし、この従来一般の振動制御装置では、車両が曲線区間を高速で走行して車体に超過遠心加速度が作用すると、作動原理上、向心加速度を検出する加速度センサの特性によりアクチュエータが車体を外軌側へ移動させるように作動し、車体の左右動を規制するストッパに強く押付けられる。このため、超過遠心加速度が発生している間は、台車を介して伝達される軌道外乱が主因の加振により、車体に衝撃的な加速度が発生し、乗り心地が著しく悪化するという問題があった。
【0003】
そこで、特許文献1に記載のものでは、変位計にて車体と台車との相対変位を検出し、相対変位が所定値を超えると、該変位を抑制する方向にアクチュエータを制御し、車体と左右動ストッパとの接触を回避するようにしていた。また、特許文献2に記載のものでは、加速度制御用アクチュエータとは別に変位制御用アクチュエータを設置し、加速度制御と変位制御とを併用して、良好な乗り心地を確保するようにしていた。
【0004】
【特許文献1】特開昭61−275053号公報
【特許文献2】特開平6−278606号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかるに、最近は鉄道車両の高速化に伴って、超過遠心加速度が益々増大する傾向にあり、上記特許文献1、2に記載されるようにアクチュエータを積極的に制御する方式では、むしろ余計な振動が発生し、良好な乗り心地を安定して確保することが困難である、という問題があった。また、特許文献1に記載の制御方式では、アクチュエータを加速度制御と相対変位制御とに共用するため、大型のアクチュエータが必要になり、一方、特許文献2に記載の制御方式では、変位制御用アクチュエータの増設が必要になり、何れも装置の大型化並びにコスト上昇が避けられない、という問題もあった。
【0006】
本発明は、上記した従来の問題点に鑑みてなされたもので、その課題とするところは、装置の大型化やコスト上昇を招くことなく、大きな超過遠心加速度に効果的に対処できる鉄道車両用振動制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は、車体と該車体を弾性支持する台車との間に介装され、該車体および台車の左右方向の相対変位を制御するアクチュエータと、前記車体の左右方向の振動加速度を検出する加速度検出手段と、該加速度検出手段の検出結果に基づいて前記アクチュエータを制御するコントローラとからなる鉄道車両用振動制御装置において、車両走行状況を用いて鉄道車両が曲線区間を走行していることを検出する曲走検出手段を備え、前記コントローラは、鉄道車両が曲線区間を走行していることを前記曲走検出手段が検知した場合に、前記アクチュエータの出力を抑制することを特徴とする
【0008】
このように構成した鉄道車両用振動制御装置においては、車両が曲線区間を通過している場合には、アクチュエータの出力を抑制するので、大きな超過遠心加速度が発生しても、車体が左右動規制ストッパに強く押付けられることはなくなり、その上、余計な振動発生が抑制される。
また,前記アクチュエータと並列に配置された減衰係数切替式油圧ダンパを備え、アクチュエータの出力を抑制すると共に、油圧ダンパの減衰係数を高くすると,更に余計な振動発生が抑制される。
【0009】
本発明において、上記車両走行情報としては、車体と台車との左右方向の相対変位を検出するストロークセンサの変位情報を用いることができる。このようにストロークセンサの変位情報を用いる場合は、キロ程(地点)情報のように通信手段を経ることなく、直接情報を取込むことができるので、入手困難になる事態は避けられ、装置に対する信頼性が向上する。
【0010】
本発明において、上記曲線区間は、曲線の曲率が徐々に変化する曲線入口側および曲線出口側の緩和曲線区間と曲率が一定の円曲線区間とを含んでおり、本発明は、前記した緩和曲線区間を対象に、下記のごとき種々の態様でコントローラによるアクチュエータの制御を行うことができる。
【0011】
(1)鉄道車両が緩和曲線区間を通過中のみ前記アクチュエータの出力を抑制すること、
(2)鉄道車両が曲線入口側の緩和曲線区間を通過中は前記アクチュエータの出力を徐々に抑制し、曲線出口側の緩和曲線区間を通過中は該アクチュエータの出力を徐々に増加させること、
(3)鉄道車両が曲線入口側の緩和曲線区間の入口に向うに従って前記アクチュエータの出力を徐々に抑制し、曲線出口側の緩和曲線区間を通過した後に該アクチュエータの出力を徐々に増加させること、
(4)鉄道車両が曲線入口側の緩和曲線区間を通過中は前記アクチュエータの出力を徐々に抑制し、曲線出口側の緩和曲線区間を通過した後に該アクチュエータの出力を徐々に増加させること、
【0012】
緩和曲線区間は、超過遠心加速度が漸増、漸減する区間であり、この区間では車体の振動加速度と過渡状態にある超過遠心加速度とが重畳し、0.5Hz前後の周波数で車体を左右に大きく揺動させるようにアクチュエータの制御力が補償される場合あり、乗り心地が著しく悪化する。したがって、上記(1)〜(4)項に記載のように緩和曲線区間を対象にアクチュエータを制御する場合は、超過遠心加速度対策として特に有用となる。また、(2)〜(4)項に記載のようにアクチュエータの出力を徐々に低下または増加させる場合は、制御の切替えに伴う衝撃が緩和され、乗り心地はより一層改善される。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る鉄道車両用振動制御装置によれば、装置の大型化やコスト上昇を招くことなく、大きな超過遠心加速度に効果的に対処でき、その利用価値は大なるものがある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための最良の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0015】
図1および図2は、本発明の第1の実施形態としての鉄道車両用振動制御装置を示したものである。図中、1は車体、2は台車であり、車体1は空気ばね3を介して台車2上に支持されている。車体1と台車2との相互間には、車体1の前位および後位に位置して左右方向のアクチュエータ4と左右方向の減衰切替式油圧ダンパ5とが各一対配設されている。アクチュエータ4および油圧ダンパ5は、車体1の下部に突設した中心ピン6と台車2の枠2aに立設した支柱7,7との間に相互に並列となるように配置されている。また、車体1の前位および後位には、車体1の左右方向の振動加速度を検出する加速度センサ(加速度検出手段)8が配設され、さらに、アクチュエータ4には、車体1と台車2との相対変位を検出するストロークセンサ(変位計)9が付設されている。なお、車体1と台車2との相互間には、車体1の左右動を規制するストッパ(左右動規制ストッパ)が設けられているが、これについては図示を省略している。
【0016】
一方、別途、コントローラ10が設けられており、該コントローラ10には、前記加速度センサ8から加速度信号が、前記ストロークセンサ9から変位信号がそれぞれ入力されるようになっている。コントローラ10は、後述の制御ブロック図(図3)に従って信号処理を行い、前記アクチュエータ4に制御力信号を、前記油圧ダンパ5に減衰係数切替信号をそれぞれ送出する。
【0017】
図3は、コントローラ10による制御ブロック図を示したものである。なお、ここでは車体の左右振動の抑制制御のためにスカイフック制御を適用している。車体の前位および後位の加速度センサ8の加速度検出結果a1,a2は、速度推定器11にて積分処理されて前・後位左右速度v1、v2に変換される。その後、車体の振動モードはヨー(首振り)とスエー(並進)とに分解され、車体のヨー運動による左右速度v1−v2はヨー制御器12に、車体のスエー並進速度vsはスエー制御器13にそれぞれ入力される。ヨー制御器12、スエー制御器13はそれぞれの振動モードに合せて振動を低減させるように前記アクチュエータ4の出力を制御する。なお、スカイフック制御の詳細については周知であるので、ここでは省略する。
【0018】
一方、ローパスフィルタ14と、曲線判定器15とゲイン演算器16とからなる直線/ゲイン演算器17が設けられている。直線/ゲイン演算器17は、車体の前位および後位のストロークセンサ9のストローク検出結果s1、s2をローパスフィルタ14を介して取込むことで、ストロークの定常成分のみを抽出する。そして、曲線判定器15にて直線/曲線の判定を行った後、ゲイン演算器16内のヨーゲイン演算器16aにてヨーゲインgyを、スエーゲイン演算器16bにてスエーゲインgsをそれぞれ決定する。このとき、曲線区間では直線区間に対し制御ゲインを低下させる。
【0019】
また、上記曲線判定器15は、前位ストローク、後位ストロークよりそれぞれ個別に曲線判定を行っているが、曲線入口、出口では超過遠心加速度に伴う前位ストローク、後位ストロークの変化に時間差が生じる。そのため、例えば、曲線入口では、C#data1は曲線を示し、C#data2は直線を示しているような時間が存在し得ることになる。この場合、曲線入口、出口ではゲインの低下度合いが緩やかになる。
【0020】
その後、乗算器18にてヨー制御器12の出力にヨーゲイン演算器16aの出力gyを、スエー制御器13の出力にスエーゲイン演算器16bの出力gsを乗じて、ヨーに対する制御力、スエーに対する制御力を求め、さらにリミッタ19を通して車体の前位および後位のアクチュエータ4の制御力(出力)u1、u2を出力する。なお、特に図示していないが、左右振動の抑制制御は、速度ゼロの場合も含めて常時行っても良いし、あるい速度閾値(例えば、150km/h)以上の場合に行ってもよい。
【0021】
図4は、制御フローを示したものである。制御演算は、サンプリング時間毎に、まず、ステップS1で車体の前・後位の左右加速度を読込み、次のステップS2で速度推定器11により車体の前・後位の左右速度に変換する。さらに、ステップS3で車体のヨー運動による前・後位の車体速度と車体のスエー(並進)速度vsとを算出する。
【0022】
一方、直線/ゲイン演算器17にストロークセンサ9のストローク検出結果s1、s2を取込み、まず、ステップS4でローパスフィルタ14によりローパス処理を行う。次いで、車体の前・後位のストロークを曲線判定器15に入力する(S5、S6)。曲線判定器15は、ストロークセンタをストロークゼロとしたとき、後述する変数「曲線データ」を出力するが、例えば、ストロークが設定された正の閾値より大きいときには、0<曲線データ<1(例えば、右曲線)、負の閾値より小さいときには、−1<曲線データ<0((直線)を出力する。なお、この閾値には一定のヒステリシスを設けるのが望ましく、例えば、直線から曲線への切替閾値s1,−s1、曲線から直線への切替閾値s2,−s2をそれぞれ個別に設ける。一例として、s1=15mm、s2=12mmなどとする。また、ここでは、前位ストロークによる曲線判定器15の出力(曲線データ)をC#data1、後位ストロークによる曲線判定器15の出力(曲線データ)をC#data2とする。なお、曲線判定器15での処理フローの詳細については、図5に基づいて後に詳述する。
【0023】
ゲイン演算器16は、入力(曲線データC#data1、C#data2)が0のときには直線と判断して1を出力し、0以外の時には、予め設定された曲線でのゲイン比から計算されるヨーゲインgy、スエーゲインgsを出力する(S7)。なお、このゲイン演算器16での処理フローの詳細については、図6に基づいて後に詳述する。
【0024】
次に、ステップS8において、乗算器18によりヨー制御器12の出力にヨーゲイン演算器12aの出力gyを、スエー制御器13の出力にスエーゲイン演算器25bの出力gsをそれぞれ乗ずる処理を行う。そして、次のステップS9において、曲線判定器15の判定結果が0以外の場合、すなわち曲線と判定した場合は、ステップS10において減衰係数切替式油圧ダンパ5の減衰係数を「高」に切替え、一方、ステップS9において、曲線判定器15の判定結果が0の場合、すなわち直線と判定した場合は、ステップS11において減衰係数切替式油圧ダンパ5の減衰係数を「低」に切替える。その後は、ステップS12において制御力の範囲チェックを行い、さらに、次のステップS13にて車体の前位および後位のアクチュエータ4の制御力u1、u2を算出し、ステップS14において前記制御力を出力する。
なお,ここではアクチュエータの出力を抑制すると共に、油圧ダンパの減衰係数を高くする場合について説明している。
【0025】
ここで、曲線判定器15での処理フローの詳細を図5に基づいて説明する。ただし、処理フローは所定のサンプリング時間で繰り返されるものとする。まず、車両が直線から右曲線へ進入する場合を考えると、曲線、直線の判定結果である変数「曲線データ」がゼロよりも大きいか(S21)、小さいか(S30)を判断する。この場合、直線時曲線データはゼロであるので、次いで、ストロークが直線から曲線への切替閾値s1より大きいか(S39)、小さいか(S40)を判断する。
【0026】
右曲線に進入した後、しばらくはストロークの値が閾値s1よりも小さいので、その間は、ステップS41にて曲線データをゼロとする。その後、ストロークが初めて閾値s1を越えると、曲線データ=delta#d(例えば、delta#d=0.1)とし、曲線データにゼロ以外の正の値が代入される(S42)。
【0027】
次のサンプリング時間では、ステップS21からステップS22に進み、ここでは曲線から直線への切替閾値s2よりも小さくないので、ステップS23、S24へ進み、例えば、曲線データ=delta#d=0.1とすれば、曲線データは0.1ずつインクリメントされていく。この曲線データのインクリメント処理により曲線データ(C#data1、C#data2)は1になるまで徐々に大きくなるが、曲線データは1よりも大きい値はとらない(S26、S27)。
【0028】
続いて、車両が右曲線から直線へ進んで行く際は、ステップS21からステップS22ヘ進み、ストロークが曲線から直線への切替閾値s2よりも小さくなるかを監視し、ストロークがs2よりも小さくなった場合には、ステップS25へ進み、例えば、曲線データ=−delta#d=−0.1)となり、−0.1ずつインクリメント(0.1ずつデクリメント)されていく。この曲線データ(C#data1、C#data2)は0になるまで徐々に小さくなるが、曲線データは0よりも小さい値はとらない(S28、S29)。
【0029】
一方、車両が直線から左曲線へ進入する場合を考えると、左曲線に進入した後しばらくは、ストロークの値は閾値−s1よりも大きいので、その間は、ステップS41にて曲線データ=0とする。その後、ストロークが初めて閾値−s1を越えて小さくなると、例えば、曲線データ=−delta#d=−0.1)とし、変数の曲線データにゼロ以外の負の値が代入される(S43)。
【0030】
次のサンプリング時間では、曲線データは、負の値であってステップS21からステップ30、S31に進む。この場合、曲線から直線への切替閾値−s2よりも大きくないので、ステップS32、S33へと進み、例えば、曲線データ=−delta#d=−0.1とすれば、曲線データは−0.1ずつインクリメント(0.1ずつデクリメント)されていく。この曲線データのインクリメント処理により曲線データ(C#data1、C#data2)は−1になるまで徐々に小さくなるが、曲線データは−1よりも小さい値はとらない(S35、S36)。
【0031】
続いて、車両が左曲線から直線へ進んで行く際は、ステップS21からステップS30、S31ヘ進み、ストロークが曲線から直線への切替閾値−s2よりも大きくなるかを監視し、ストロークが−s2よりも大きくなった場合には、ステップS34へ進み、例えば、曲線データ=delta#d=0.1となり、0.1ずつインクリメントされていく。この曲線データ(C#data1、C#data2)は0になるまで徐々に小さくなるが、曲線データは0よりも小さい値はとらない(S28、S29)。
【0032】
次に、ゲイン演算器16での処理フローの詳細を図6に基づいて説明する。曲線でのゲイン比は、[曲線ゲイン/直線ゲイン]<1となるように設定されるもので、ヨーゲインgy、スエーゲインgsを個別に設定するため、ヨーの曲線ゲイン比ry、スエーの曲線ゲイン比rsをそれぞれ設けていて、0<ry<1、0<rs<1の範囲で設定される。ヨーゲインgy、スエーゲインgsは、前位ストロークと後位ストロークから判定した曲線判定器15の出力(曲線データC#data1、C#data2)とヨーの曲線ゲイン比ry、およびスエーの曲線ゲイン比rsを用いて、それぞれ算出される(S51、S52)。
【0033】
このように、車両が曲線区間を通過していることを曲線判定器15が検出すると、ゲイン演算器16が直線時の制御ゲインに比べてゲインを減じるように曲線ゲイン比を出力するので、アクチュエータ4の出力が抑制される。したがって、超過遠心加速度が発生しても、アクチュエータ4によって車体1が左右動規制ストッパに強く押付けられることはなくなり、結果として車体1に衝撃的な加速度が発生することもなくなって、曲線区間の乗り心地が良好となる。本第1の実施形態においては特に、アクチュエータ4と並列に減衰係数切替式油圧ダンパ5を配置し、車両が曲線区間を通過しているときには油圧ダンパ5の減衰係数を「高」に切替えるので、車体1が左右動規制ストッパに押付けられることはほとんどなくなり、曲線区間の乗り心地がきわめて良好となる。
【0034】
前記第1の実施形態では、ストロークセンサ9により車体1と台車2との相対移動を検知し、この検知結果が、超過遠心加速度によりある一定値以上となったときに曲線区間であると判断し、制御ゲインを下げてアクチュエータ4の出力(制御力)を抑制する制御を行ったが、本発明は、緩和曲線区間に制御範囲を限定してアクチュエータ4の制御力を抑制する制御を行ってもよい。
【0035】
図7は、緩和曲線区間に制御範囲を限定した本発明の第2の実施形態を示したものである。なお、加速度センサ8の加速度検出結果の処理系は、前出図3に示したものと同じであるので、ここでは、直線/曲線ゲイン演算器17の処理系のみを示しかつ同一構成要素に同一符号を付すこととする。本第2の実施形態においては、ストロークセンサ9のストローク検出結果(前位加速度a1、後位加速度a2)を直線/曲線ゲイン演算器17内のローパスフィルタ14に取込んで、一定の定常成分のみを抽出した後、ハイパスフィルタ14´に取込み、前記定常成分を取除く処理を行う。ハイパスフィルタ14´のカットオフ周波数は、例えば、0.2Hzなどとする。すると、緩和曲線区間での超過遠心加速度の漸増、漸減に伴い、ストローク検出結果(車体1と台車2との相対変位)も漸増、漸減するが、このストロークが漸増、漸減する間のみ変位として抽出することができる。この場合、直線/曲線ゲイン演算器17内の曲線判定器15は、緩和曲線区間のみ曲線区間と判断することとなり、円曲線区間は曲線区間と判断されない。この結果、アクチュエータ4の制御力を抑制する区間を緩和曲線区間に限定することができる。
【0036】
前記第1、第2では、曲線区間の検出をストロークセンサ9のストローク検出結果に基づいて判断したが、本発明は、ストロークに代えて、キロ程(地点)情報を取込み、現在地点と既知の曲線位置情報とから曲線区間走行を判定するようにしてもよい。
【0037】
図8は、キロ程(地点)情報を取込んで曲線区間走行を判定する本発明の第3の実施形態を示したものである。なお、加速度センサ8の加速度検出結果の処理系は、前出図3に示したものと同じであるので、ここでは、直線/曲線ゲイン演算器の処理系のみを示すこととする。本第3の実施形態において、直線/曲線ゲイン演算器17は、1つの曲線判定器15´を備えており、この曲線判定器15´は、キロ程(地点)情報を取込み、曲線データベース20内の地点−曲線マップデータを用いて曲線区間走行を判定するようになっている。
【0038】
本第3の実施形態において、走行区間と制御ゲインおよび減衰係数切替タイミングとの関係は、例えば、図9に示すように設定する。すなわち、直線時のゲインを1としたとき、曲線入口側の緩和曲線通過中は制御ゲイン(ヨーゲインgy、スエーゲインgs)を徐々に下げ、円曲線区間ではゲインをgc(gc<1)と一定にし、曲線出口側の緩和曲線通過中は制御ゲインを徐々に上げていく。
【0039】
ここで、キロ程情報は、例えば、シリアル通信を経由して得ることができるが、この場合は、通信のサンプリング間隔がコントローラ10の制御周期に比べて遅い場合がある(例えば、キロ程は50ms毎に更新され、制御のサンプリング周期5msの場合など)。このような場合は、キロ程情報をローパスフィルタを介して取込むことで滑らかな曲線にする。なお、ローパスフィルタ処理による遅れが発生するが、等速度運動時は遅れ時間が一定になるので、これを用いて遅れを補正すればよい。
【0040】
前記第3の実施形態では、曲線区間走行を検出してアクチュエータ4の制御力(出力)を制御するのは、曲線区間入口側の緩和曲線の始まりから曲線区間出口側の緩和曲線の終わりまでの区間内である。緩和曲線区間では、超過遠心加速度が漸増、漸減する区間であり、車体1の振動加速度と過渡状態にある超過遠心加速度とが重畳し、0.5Hz前後の周波数で車体を左右に大きく揺動させるようにアクチュエータ4の制御力が補償される場合あり、この場合は、乗り心地が著しく悪化する場合がある。
【0041】
本発明の第4の実施形態においては、例えば、図10に示すように、直線時のゲインを1としたとき、直線部から曲線入口側の緩和曲線に向って制御ゲイン(ヨーゲインgy、スエーゲインgs)を徐々に下げ、円曲線区間ではゲインをgcと一定にし、曲線出口側の緩和曲線を通過後は制御ゲインを徐々に上げていく。
【0042】
一方、上記した緩和曲線区間で乗り心地が大きく損われるのは、曲線出口側の緩和曲線である場合が多いので、例えば、図11に示すように、曲線入口側の緩和曲線では、曲線入口から制御ゲインを徐々に下げ、曲線出口側の緩和曲線のみで、制御ゲインを上げるタイミングを遅く調整しても良い。曲線出口側の緩和曲線のみで、制御ゲインを上げるタイミングを遅く調整するには、必ずしもキロ程と曲線データベース20に依らずに可能であり、前記ストロークセンサ9の検出結果からストロークが漸増する区間を曲線出口側の緩和曲線と判断し制御ゲインを調整しても良い。
【0043】
ここで、ストロークセンサ9を用いる場合、その直線走行時の値(ゼロ点)は、通常ある一定の範囲内に収まるようになる。しかし、車両検査などでアクチュエータ4を車両から切離し、あるいは車体1と台車2とを切離した場合、ストロークセンサ9のゼロ点がずれる場合がある。このことは、絶対位置検出形のストロークセンサを使用した場合に問題となる。
【0044】
そこで、(1)直線走行する、(2)ある一定以上の速度(例えば、180km/h)でアクティブ制御する、という条件を満たす適当な区間を抽出し、キロ程情報、速度情報、路線データベース情報等から前記抽出区間を(1)、(2)を満足するように走行している場合に、ある一定の時間(例えば、10秒)のストローク検出結果を記録し、その平均値をストロークセンサのゼロ点として更新するような制御を付加しても良い。
【0045】
なお、上記各実施形態では、車両が曲線区間を通過しているときには油圧ダンパ5の減衰係数を「高」に切替えるようにしたが、本発明は、油圧ダンパ5の減衰係数は一定として、アクチュエータ4の出力のみを抑制するようにしてもよいものである。超過遠心加速度が発生しても、アクチュエータ4によって車体1が左右動規制ストッパに強く押付けられることはないので、車体1に衝撃的な加速度が発生することもなくなって、曲線区間の乗り心地が良好となる。
【0046】
さらに、前記各実施の形態においては、アクチュエータの出力の抑制・増加をゲインを増加・減少によって行うものを示した。この場合、ゲインを増加させても実際のアクチュエータの制御状態によって出力値は、増加する場合も減少する場合もあるが、本発明におけるアクチュエータの出力の抑制・増加は、その傾向すなわち、同じセンサ入力があったときの出力値を小さく、または、大きくするもので、実際の走行中の出力値を小さくまたは大きくするものではない。
【0047】
なお、ゲインを変化させる方法以外にも、たとえば、アクチュエータへの出力値U1に対し、その上限値を規制する上限値規制手段を設けて、曲線区間でこの上限値を下げることで、アクチュエータの出力の抑制することも可能である。さらに、ゲインと上限値の両方を調整してもよい。
【0048】
また、上記アクチュエータ4の種類は任意であり、空気圧アクチュエータや油圧アクチュエータであっても、電磁式アクチュエータであっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の第1の実施形態としての鉄道車両用振動制御装置を模式的に示す正面図である。
【図2】本第1の実施形態としての振動制御装置の要部構造を模式的に示す平面図である。
【図3】本第1の実施形態における制御系を示す制御ブロック図である。
【図4】本第1の実施形態における制御フローを示すフロー図である。
【図5】本第1の実施形態における制御系を構成する曲線判定器の制御フローを示すフロー図である。
【図6】本第1の実施形態における制御系を構成するゲイン演算器の制御フローを示すフロー図である。
【図7】本発明の第2の実施形態における制御系を示す制御ブロック図である。
【図8】本発明の第3の実施形態における制御系を示す制御ブロック図である。
【図9】本第3の実施形態における走行区間と制御ゲインおよび減衰係数切替タイミングとの関係を示すグラフである。
【図10】本発明の第2の実施形態における走行区間と制御ゲインおよび減衰係数切替タイミングとの関係を示すグラフである。
【図11】本発明の第2の実施形態における走行区間と制御ゲインおよび減衰係数切替タイミングとの関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0050】
1 車体
2 台車
4 アクチュエータ
5 減衰係数切替式油圧ダンパ
8 左右方向の加速度センサ
9 ストロークセンサ(変位検知手段)
10 コントローラ
14 ローパスフィルタ
15、15´ 曲線判定器
16 ゲイン演算器
17 直線/曲線ゲイン演算器
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と該車体を弾性支持する台車との間に介装され、該車体および台車の左右方向の相対変位を制御するアクチュエータと、前記車体の左右方向の振動加速度を検出する加速度検出手段と、該加速度検出手段の検出結果に基づいて前記アクチュエータを制御するコントローラとからなる鉄道車両用振動制御装置において、車両走行状況を用いて鉄道車両が曲線区間を走行していることを検出する曲走検出手段を備え、前記コントローラは、鉄道車両が曲線区間を走行していることを前記曲走検出手段が検知した場合に、前記アクチュエータの出力を抑制することを特徴とする鉄道車両用振動制御装置。
【請求項2】
車両走行情報として、車体と台車との左右方向の相対変位を検出するストロークセンサの変位情報を用いることを特徴とする請求項1に記載の鉄道車両用振動制御装置。
【請求項3】
前記アクチュエータと並列に配置された減衰係数切替式の油圧ダンパを設け、前記コントローラは、鉄道車両が曲線区間を走行していることを前記曲走検出手段が検知した場合に、前記油圧ダンパの減衰力を高くすることを特徴とする請求項1または2に記載の鉄道車両用振動制御装置。
【請求項4】
前記コントローラは、鉄道車両が緩和曲線区間を通過中のみ前記アクチュエータの出力を抑制することを特徴とする請求項1乃至3いずれかに記載の鉄道車両用振動制御装置。
【請求項5】
前記コントローラは、鉄道車両が曲線入口側の緩和曲線区間を通過中は前記アクチュエータの出力を徐々に抑制し、曲線出口側の緩和曲線区間を通過中は該アクチュエータの出力を徐々に増加させることを特徴とする請求項1乃至3いずれかに記載の鉄道車両用振動制御装置。
【請求項6】
前記コントローラは、鉄道車両が曲線入口側の緩和曲線区間に向うに従って前記アクチュエータの出力を徐々に抑制し、曲線出口側の緩和曲線区間を通過した後に該アクチュエータの出力を徐々に増加させることを特徴とする請求項1乃至3いずれかに記載の鉄道車両用振動制御装置。
【請求項7】
前記コントローラは、鉄道車両が曲線入口側の緩和曲線区間を通過中は前記アクチュエータの出力を徐々に抑制し、曲線出口側の緩和曲線区間の出口を通過した後に該アクチュエータの出力を徐々に増加させることを特徴とする請求項1乃至3いずれかに記載の鉄道車両用振動制御装置。
【請求項8】
前記アクチュエータの出力の増減は、ゲインの増減により行うことを特徴とする請求項1乃至7いずれかに記載の鉄道車両用振動制御装置。
【請求項1】
車体と該車体を弾性支持する台車との間に介装され、該車体および台車の左右方向の相対変位を制御するアクチュエータと、前記車体の左右方向の振動加速度を検出する加速度検出手段と、該加速度検出手段の検出結果に基づいて前記アクチュエータを制御するコントローラとからなる鉄道車両用振動制御装置において、車両走行状況を用いて鉄道車両が曲線区間を走行していることを検出する曲走検出手段を備え、前記コントローラは、鉄道車両が曲線区間を走行していることを前記曲走検出手段が検知した場合に、前記アクチュエータの出力を抑制することを特徴とする鉄道車両用振動制御装置。
【請求項2】
車両走行情報として、車体と台車との左右方向の相対変位を検出するストロークセンサの変位情報を用いることを特徴とする請求項1に記載の鉄道車両用振動制御装置。
【請求項3】
前記アクチュエータと並列に配置された減衰係数切替式の油圧ダンパを設け、前記コントローラは、鉄道車両が曲線区間を走行していることを前記曲走検出手段が検知した場合に、前記油圧ダンパの減衰力を高くすることを特徴とする請求項1または2に記載の鉄道車両用振動制御装置。
【請求項4】
前記コントローラは、鉄道車両が緩和曲線区間を通過中のみ前記アクチュエータの出力を抑制することを特徴とする請求項1乃至3いずれかに記載の鉄道車両用振動制御装置。
【請求項5】
前記コントローラは、鉄道車両が曲線入口側の緩和曲線区間を通過中は前記アクチュエータの出力を徐々に抑制し、曲線出口側の緩和曲線区間を通過中は該アクチュエータの出力を徐々に増加させることを特徴とする請求項1乃至3いずれかに記載の鉄道車両用振動制御装置。
【請求項6】
前記コントローラは、鉄道車両が曲線入口側の緩和曲線区間に向うに従って前記アクチュエータの出力を徐々に抑制し、曲線出口側の緩和曲線区間を通過した後に該アクチュエータの出力を徐々に増加させることを特徴とする請求項1乃至3いずれかに記載の鉄道車両用振動制御装置。
【請求項7】
前記コントローラは、鉄道車両が曲線入口側の緩和曲線区間を通過中は前記アクチュエータの出力を徐々に抑制し、曲線出口側の緩和曲線区間の出口を通過した後に該アクチュエータの出力を徐々に増加させることを特徴とする請求項1乃至3いずれかに記載の鉄道車両用振動制御装置。
【請求項8】
前記アクチュエータの出力の増減は、ゲインの増減により行うことを特徴とする請求項1乃至7いずれかに記載の鉄道車両用振動制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−247333(P2008−247333A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−94308(P2007−94308)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
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