説明

長尺センサ

【課題】誤判定が生じにくく、また、異物を感度よく検知することができる長尺センサを提供する。
【解決手段】長尺センサ21は、乗降口4を開閉可能な金属製のドア2に取着される取付基部22と、取付基部22から膨出し、中空部26を有する表皮カバー部23と、絶縁体270、及び、絶縁体270の少なくとも一部を挟んで相対向する一対の電極271,272を有するセンサ本体27とを備える。取付基部22をアースとしてのマイナス極とし、第1の電極271は、乗降口4周縁側の絶縁体270の表面にマイナス極として設けられ、第2の電極272は、取付基部22側にプラス極として設けられる。第2の電極272と取付基部22との間に間隙部28が設けられ、両電極271,272間の静電容量の変化、及び、第2の電極272のプラス極と取付基部22のアースマイナス極との間の静電容量の変化に基づき、異物が検知される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異物を検知するためのセンサに関するものであり、特に自動車等の車両において車両本体とドア等の開閉体との間に挟み込まれた異物を検知するための長尺センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、所謂ワンボックスカー等の車両においては、乗員の乗降口を大きく開閉して乗降の便を向上させるとともに、ドアをボディから離さないようにして、車両のボディに沿ってスライドするスライドドアを具備するものがある。そして、近年では、このスライドドアをモータ等を用いて自動開閉させるものが知られている。
【0003】
このようなドアの開閉システムにおいては、スライドドアの自動閉鎖動作中に何らかの異物(例えば、人体や衣服等)を挟み込まないようにする必要がある。そのため、異物を検知するセンサと、当該センサによって異物が検知された際に、スライドドアを停止させるとともに、開方向へと逆転制御する機構が設けられている。ここで、異物を検知するセンサとしては、復元性を有する中空状の絶縁体カバーと、当該絶縁体カバー内に設けられた相互に非接触状態の複数の電極線とからなるコードスイッチを、スライドドアの前側端縁部に設ける方法が知られている(例えば、特許文献1等参照)。当該技術について詳述すると、異物がボディ開口部及びスライドドア間に存在する場合には、スライドドアの閉鎖動作に伴い異物端縁部によってコードスイッチが押圧され、絶縁体カバー内部の電極線同士が接触し、短絡が生じる。そして、短絡が検知された際には、異物が存在するものと検知される。
【0004】
しかしながら、上記技術において、異物の検知は、電極線同士の接触が起こる程度の比較的大きな荷重が前記コードスイッチに加わることによって初めて可能となる。従って、異物が検知されるまでに、異物又はコードスイッチに対向するボディ側の部分に対して大きな荷重が加わってしまうおそれがある。
【0005】
そこで、上記不具合を解消すべく、静電容量式のセンサが提案されている(例えば、特許文献2等参照)。静電容量式のセンサは、静電容量が変化することに基づいて異物を検知するものである。そのため、静電容量式のセンサは、異物とは非接触な状態でも異物の検知が可能であり、また、異物と接触した場合においても、比較的早い段階で異物が検知可能であって、異物やボディ側の部分に対しても大きな荷重が加わるようなことはない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−123202号公報
【特許文献2】特開2007−18839号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、静電容量式センサに対して静電容量が比較的小さな異物(例えば、プラスチック等の絶縁体)が接近した場合、静電容量の変化は比較的小さい。また、静電容量が大きな材料であっても、小さな部位での接触によっては(接触面積の小さな接触では)静電容量の変化をとらえきれない場合がある。そのため、静電容量の変化量が比較的小さな場合等であっても異物の接触・接近が検知できるように、検知に用いる閾値を高く設定することが考えられる。
【0008】
なお、静電容量式センサにおいては、降雨等によってセンサやセンサ周辺に水が付着してしまうと、静電容量が変化してしまう。そのため、上述のように閾値を高く設定すると、水滴の付着により、異物が存在するとの誤判定を頻発してしまうおそれがある。
【0009】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、その目的は、誤判定が生じにくく、また、静電容量の変化量が小さな場合等であっても異物を感度よく検知することができる静電容量式の長尺センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以下、上記目的を解決するのに適した各手段につき、項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果を付記する。
【0011】
手段1.車両本体に設けられた開口部を開閉可能な開閉体の金属製の縁部に取着される取付基部と、
前記取付基部から前記開口部周縁側に向けて膨出し、内部に中空部を有する表皮カバー部と、
可撓性を有する絶縁体、及び、前記絶縁体の少なくとも一部を挟んで相対向する一対の板状の電極を有し、前記中空部内に配設されるセンサ本体と
を備える長尺センサであって、
前記一対の板状の電極のうち、
第1の電極は、前記開口部周縁側において、前記絶縁体に埋設、又は、前記絶縁体の表面に取着され、
前記第1の電極とは異なる第2の電極は、前記第1の電極よりも前記取付基部側に設けられ、
前記中空部内において、前記第2の電極と前記取付基部との間に間隙部が設けられるとともに、前記取付基部をアースとしてのマイナス極とし、
前記第2の電極をプラス極とし、前記第1の電極をマイナス極とし、
前記両電極間の静電容量の変化、及び、前記第2の電極と前記アースマイナス極との間の静電容量の変化に基づき、異物の前記表皮カバー部への近接及び/又は接触を検知することを特徴とする長尺センサ。
【0012】
上記手段1によれば、樹脂等の静電容量の小さな異物や、鉛筆等の細く、接触面積が小さな異物が接触した場合であっても、静電容量の変化を感度よく検知することができる。
【0013】
また、上記手段1によれば、金属製の開閉体に取付ける取付基部をアースとしてのマイナス極とし、両電極のうち、取付基部側の第2の電極がプラス極とされており、第2の電極とアースマイナス極との間で静電容量が生じるようになっている。ここで、C=ε0×ε×S/d(C:静電容量、ε0:真空の比誘電率、ε:物体の持つ誘電率、S:電極面積、d:電極間距離)の公式からもわかるように、第1の電極をプラス極とした場合と比較して、第2の電極をプラス極とした場合には、電極間距離(アースマイナス極までの距離)dがより小さくなるため、前記間隙部が潰れ変形した際(つまり、dが減少した際)に、静電容量がより大きく変化する。従って、異物が接触した場合には、両電極の接近に伴い、両電極間の静電容量が変化するとともに、間隙部の潰れ変形により、第2の電極とアースマイナス極との間における静電容量が大きく変化することとなる。従って、異物接触時における静電容量の変化量を非常に大きなものとすることができ、水滴の付着による誤判定が発生しないような閾値を設定した場合においても、異物を感度よく検知することができる。
【0014】
尚、上記手段1による作用効果をより確実に発揮すべく、前記間隙部においては、前記第2の電極と前記取付基部との間の最大値を0.5mm以上とすることが望ましい。一方で、間隙部の潰れ変形量が同一であっても、第2の電極と取付基部との電極間距離dを大きくするに従って両者の間における静電容量の変化量は減少してしまう。従って、前記間隙部における、第2の電極と取付基部との間の最大値は3.0mm以下とすることが望ましい。
【0015】
手段2.前記取付基部の前記中空部側の面に、前記センサ本体の前記第2の電極の両側部近傍に当接して支持し、前記第2の電極との間に前記間隙部を形成する凸部を設けたことを特徴とする手段1に記載の長尺センサ。
【0016】
上記手段2によれば、前記凸部によって間隙部の形状維持を図ることができるため、間隙部を設けたことによる上述の作用効果がより確実に奏されることとなる。また、間隙部が潰れ変形した後に間隙部をより確実に復帰させることができる。
【0017】
手段3.前記表皮カバー部と前記センサ本体との間に空間部が設けられるとともに、
前記表皮カバー部の内周面、前記取付基部の前記中空部側の面、及び、前記センサ本体の外周面のうちのいずれかから突出する突部を設け、前記表皮カバー部に対する前記センサ本体の相対回転を規制可能に構成したことを特徴とする手段1又は2に記載の長尺センサ。
【0018】
上記手段3によれば、第2の電極と取付基部との間の間隙部が確実に形成され、手段1と同様の作用効果をより確実に発揮できる。
【0019】
また、空間部を設けた場合、表皮カバー部に対するセンサ本体の相対回転が懸念されるが、上記手段3によれば、表皮カバー部の内周面やセンサ本体の外周面等から突出する突部によって、表皮カバー部に対するセンサ本体の相対回転を規制することができる。これにより、長尺センサを開閉体に取付ける際などにおいて、表皮カバー部に対してセンサ本体がねじれて配置されてしまうことを防止できる。その結果、センサ本体の有する異物検知性能を十分に発揮させることができる。
【0020】
手段4.前記絶縁体をオレフィン系熱可塑性エラストマーにより形成するとともに、
前記取付基部をカーボンを含有するEPDMソリッドゴム、前記表皮カバー部をカーボンを含有するEPDMスポンジゴムにより形成したことを特徴とする手段1乃至3のいずれかに記載の長尺センサ。
【0021】
上記手段4によれば、両電極間の間に位置する絶縁体がオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)により形成され、取付基部がカーボンを含有するEPDMソリッドゴムにより形成される。そのため、絶縁体や間隙部が潰れ変形した際に、両電極間の静電容量や第2の電極と取付基部との間の静電容量をより一層大きく変化させることができる。その結果、異物の検知精度の更なる向上を図ることができる。
【0022】
また、表皮カバー部をカーボンを含有するEPDMスポンジゴムにより形成することで、表皮カバー部の比誘電率を比較的大きく(例えば、10〜15程度に)することができる。従って、異物の接触に伴う表皮カバー部の変形量が僅かなものであっても、静電容量をより大きく変化させることができ、ひいては検知精度のより一層の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】スライドドアを具備する車両を示す斜視図である。
【図2】ECU等の電気的構成を示すブロック図である。
【図3】図1におけるJ−J線断面図である。
【図4】長尺センサの拡大断面図である。
【図5】(a)は、水滴が表皮カバー部に接触した状態を示す長尺センサの拡大断面図であり、(b)は、異物が長尺センサに接近した状態を示す長尺センサの拡大断面図である。
【図6】異物が接触状態にあるときの長尺センサの拡大断面図である。
【図7】別の実施形態における長尺センサの拡大断面図である。
【図8】別の実施形態における長尺センサの拡大断面図である。
【図9】別の実施形態における長尺センサの拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、一実施形態について図面を参照して説明する。
【0025】
図1はスライドドアを搭載した車両の概略斜視図である。同図に示すように、車両1は、そのボディ側面に金属製のスライドドア2(本発明の「開閉体」に相当し、以下、単に「ドア」と称することもある)を有している。当該スライドドア2は、ボディ側面の中央部に設けられたスライドレール3と、ボディ側面の天井部側及び床部側に設けられた図示しないスライドレールとによって、ボディ側面に支持されている。当該スライドドア2は、ボディ側面に示される開口部としての乗降口4を全閉した図示する全閉位置と、乗降口4を全開した全開位置(図中の二点鎖線参照)との間に亘ってボディ側面に沿ってスライドし、乗降口4を開閉できるように構成されている。尚、前記スライドドア2は、車両1の構成部品を介して接地(アース)された状態となっている。
【0026】
また、ボディのドアピラー5の後端面とスライドドア2の前方側サイドパネルとの間には、ボディとスライドドア2とを係合する図示しないロック機構が設けられている。そして、スライドドア2が図示する全閉位置までスライドされると、スライドドア2は、このロック機構により、全閉位置でロックされるように構成されている。
【0027】
また、前記スライドドア2の内部には、自動開閉機構(図示せず)が設けられている。当該自動開閉機構は、少なくとも全開位置にあるスライドドア2を全閉位置までスライド動作させる。加えて、自動開閉機構は、図2に示すように、スライドドア2の開閉動作を行う駆動モータ11と、当該駆動モータ11を駆動制御する電子制御ユニット(ECU)12とを備えている。ECU12には、運転席に配設される操作スイッチ13や、車両室内に配置されるリモートコントローラ(リモコン)スイッチ14等から閉鎖指令信号等が入力されるようになっている。また、ECU12には、駆動モータ11或いは別途の図示しない検出センサからの信号に基づき、スライドドア2の位置が現在どの程度であるのかが(全開位置、全閉位置をも含めて)把握可能となっている。
【0028】
尚、乗降口4が開状態(例えば、スライドドア2が全開位置)にあるときに、閉鎖指令信号が入力された場合、ECU12は、前記駆動モータ11を正転駆動制御する。これにより、スライドドア2が全閉位置までスライド動作され、全閉位置にてロックされるようになっている。そして、ロックが完了すると、駆動モータ11の動作が停止される。
【0029】
さらに、本実施形態では、スライドドア2と乗降口4周縁との隙間に異物が存在していることを検知可能な長尺センサ21が設けられている。当該長尺センサ21は、静電容量計測手段15に電気的に接続されており、静電容量計測手段15は、前記ECU12に対して電気的に接続されている。ここで、静電容量計測手段15は、後述する第1の電極271及び第2の電極272間の静電容量などを所定時間毎に計測可能に構成されており、計測された静電容量(に関する情報)がECU12に対して伝送されるようになっている。本実施形態において、前記ECU12は、直前に計測された静電容量(基準静電容量)に対する伝送された静電容量の変化割合が、予め設定された閾値よりも大きい場合に、スライドドア2と乗降口4周縁との隙間に異物が存在しているものと検知する。そして、駆動モータ11の閉動作を一旦停止させるとともに、スライドドア2を開方向へと移動させる逆転駆動制御を行うようになっている。すなわち、ECU12は、停止制御手段としての機能をも発揮するよう構成されている。尚、前記閾値は、長尺センサ21及びその周辺に水滴が付着した際に誤判定が発生しない(ECU12により異物が存在すると判定されない)ような値に設定されている。
【0030】
次いで、長尺センサ21等の詳細について説明する。図3は、スライドドア2の前端縁及びボディのドアピラー5等を示す図1のJ−J線断面図である。図3に示すように、ボディのドアピラー5の後端側に沿って上下に延びるフランジ5aには、ウエザストリップ31が設けられている。ウエザストリップ31は、スライドドア2が同図実線で示す全閉位置までスライドされたときに、ボディとスライドドア2との間をシールする。尚、スライドドア2の全閉直前においては、当該スライドドア2は、この全閉位置から図において斜め右上に位置する。
【0031】
前記ウエザストリップ31は、押出成形により得られるものであり、フランジ5aに差し込み固定される取付基部32と、中空状のシール部33とを備えている。本実施形態において、取付基部32はEPDMソリッドゴムにより形成され、シール部33はEPDMスポンジゴムにより形成されている。そして、シール部33が、スライドドア2のインナパネルにより押圧されて潰れ変形することでシール機能が発揮されるようになっている。
【0032】
次に、長尺センサ21について説明する。本実施形態において、長尺センサ21は、ボディのドアピラー5と対向する、スライドドア2の前端部2bに取付けられている。長尺センサ21は、図4に示すように、スライドドア2の前端部2bに固定される取付基部22と、前記取付基部22からドアピラー5側へと膨出する表皮カバー部23とを備えている。尚、長尺センサ21は、スライドドア2の前縦辺部ほぼ全域に亘って装着されている。これにより、スライドドア2がその全閉位置までスライドされる際に、ドアピラー5の後端側面及びこれに対向するスライドドア2の前端縁間の全域に亘って異物が存在しているか否かを検知可能となっている。
【0033】
前記取付基部22は、比誘電率の比較的大きな(例えば、7.0以上13.0以下の)カーボンを含有したEPDMソリッドゴムを押出成形することにより形成されている。また、当該取付基部22は、基底部24と、当該基底部24から前記表皮カバー部23とは反対側へと延びる一対の側壁部25A,25Bとから構成されている。加えて、前記基底部24の両端縁には、ドアピラー5側へと突出する一対の突出部24A,24Bが形成されている。本実施形態においては、前記突出部24A,24Bのうち後述する中空部26側の部位がテーパ状の傾斜面SA,SBとなっている。加えて、前記取付基部22には、金属製のインサート22Nが埋設されている。
【0034】
また、前記表皮カバー部23は、前記基底部24の突出部24A,24Bからドアピラー5側へと膨出するようにして断面円弧状に形成されており、その内部には中空部26が形成されている。加えて、表皮カバー部23は、所定量のカーボンを含有してなるEPDMスポンジゴムにより形成されている。このため、表皮カバー部23の比誘電率は、常温下において7.0以上(例えば、10.0以上)と比較的大きくされている。また、表皮カバー部23は比較的薄肉に形成されており、容易に変形可能となっている。
【0035】
さらに、前記中空部26内には、絶縁体270と、第1の電極271と、第2の電極272とを備え、長尺状をなすセンサ本体27が配設されている。
【0036】
前記絶縁体270は、可撓性を有するとともに、比誘電率が2.0以上4.0以下の材料〔例えば、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)等〕を押出成形することにより形成されたものである。当該絶縁体270の内部には、長尺センサ21の長手方向に沿って延びる空間270Sが設けられている。また、絶縁体270のうち、取付基部22側には、一対の脚部270A,270Bが設けられており、当該脚部270A,270Bが前記基底部24の傾斜面SA,SBに当接している。そして、ドアピラー5側から押圧力が加えられた際に、前記脚部270A,270Bの根元部分が屈曲し、ひいては前記センサ本体27が基底部24側へと接近するようになっている。尚、本実施形態では、前記絶縁体270の硬度が、ショアA値で30度以上60度以下とされている。
【0037】
前記第1の電極271は、銅箔により形成された帯状(板状)の電極箔である。また、第1の電極271は、前記空間270Sよりも表皮カバー部23側であって、絶縁体270の内部に配設されている。従って、第1の電極271の表面は、前記中空部26に露出しないように構成されている。
【0038】
前記第2の電極272は、第1の電極271と同様に銅箔により形成された帯状の電極箔である。第2の電極272は、前記絶縁体270の取付基部22側内部に設けられており、前記空間270Sを挟んで前記第1の電極271と相対向している。
【0039】
さらに、前記表皮カバー部23の内周面のうち前記基底部24側には、前記センサ本体27側へと突出する突部23A,23Bが形成されている。また、当該突部23A,23B同士の間隔は、前記脚部270A,270Bの先端同士の間隔よりも狭くされている。これにより、前記突部23A,23Bよりもドアピラー5側への脚部270A,270Bの相対移動が規制され、ひいては表皮カバー部23に対するセンサ本体27の相対回転が規制されている。
【0040】
また、本実施形態では、前記センサ本体27の基底部24側表面と取付基部22(基底部24)表面との間に間隙部28が形成されている。加えて、当該間隙部28においては、第2の電極272と取付基部22との間の間隔の最大値が0.5mm以上とされている。
【0041】
さらに、第2の電極272は、図示しない電荷供給装置に電気的に接続されており、当該電荷供給装置から所定の電荷が供給されている。一方で、前記第1の電極271は、接地(アース)されている。すなわち、第2の電極272がプラス極とされる一方で、第1の電極271がマイナス極とされ、両電極271,272によりコンデンサが構成されている。さらに、第2の電極272と接地された前記取付基部22(アースマイナス極)とによりコンデンサが構成されている。また、第2の電極272には、前記静電容量計測手段15が接続されており、静電容量計測手段15によって、少なくとも両電極271,272間の静電容量と、第2の電極272及び前記取付基部22のアースマイナス極の間の静電容量とを加算したものが計測されるようになっている。尚、センサ本体270の周辺に異物が接近した場合、静電容量計測手段15により計測される静電容量は、異物の有する静電容量の分だけ変化することとなる。
【0042】
尚、前記中空部26内において、前記表皮カバー部23の内周面と、前記センサ本体27(絶縁体270)の表皮カバー部23側表面との間には、空気で満たされた空間部29が設けられている。さらに、当該空間部29においては、表皮カバー部23と第1の電極271と間の間隔の最大値が0.5mm以上とされている。
【0043】
次に、図5及び図6を用いて、上述した長尺センサ21による異物の検知方法について説明する。尚、図5(a)は、水滴DWが長尺センサ21(表皮カバー部23)に付着した状態(水滴接触状態)を示しており、図5(b)は、人体等、静電容量の比較的大きな異物S1が長尺センサ21に接近した状態を示している。また、図6は、異物S2(例えば、ペン先等、サイズが比較的小さい絶縁物)が表皮カバー部23に対して接触した状態(接触状態)を示している。
【0044】
図5(a)に示すように、水滴DWが長尺センサ21に付着した場合、水滴DWとセンサ本体27との間には、空気で満たされ、比誘電率の比較的低い空間部29が介在している。このため、静電容量計測手段15によって計測される静電容量の変化量は比較的小さなものとなる。従って、静電容量の変化割合は、前記予め設定された閾値よりも小さなものとなり、ECU12は、異物が存在しないものと判断する(つまり、ECU12は、長尺センサ21に付着した水滴DWを異物とは判断しないこととなる)。
【0045】
これに対して、図5(b)に示すように、人体等の異物S1が長尺センサ21に近接したときにおいて、異物S1は水分含有量が比較的多いため、前記空間部29が介在していても、静電容量の変化量は十分に大きなものとなる。従って、異物S1が接近した場合には、静電容量の変化割合が前記閾値を超えることとなり、ECU12は、異物が存在するものと判断することとなる。すなわち、人体等の異物S1については、長尺センサ21に接近した段階で検知されるようになっている。
【0046】
一方、絶縁物や水分含有量が比較的少ないもの、或いは、サイズが比較的小さいものである異物S2が接触した場合には、静電容量の変化量が比較的小さなものとなる。そのため、静電容量の変化割合が、前記閾値よりも小さなものとなり得る。
【0047】
この場合、図6に示すように、異物S2が長尺センサ21に接近しただけでは異物S2を検知することができず、異物S2は長尺センサ21(表皮カバー部23)に対して接触することとなる。このとき、絶縁体270が空気よりも大きな比誘電率を有することから、両電極271,272間の間隙がわずかに減少しただけでも、両電極271,272間の静電容量が大きく変化する。また、前記脚部270A,270Bの付根部分が屈曲し、前記間隙部28が潰れる。このとき、基底部24が比較的大きな比誘電率を有し、また、第2の電極272とドア2端縁部との距離が比較的小さいことから、両者間の距離が減少したときの静電容量の変化量は非常に大きなものとなる。従って、両電極271,272間の静電容量、及び、第2の電極272及び取付基部22間の静電容量はともに大きく変化するため、静電容量の変化割合が非常に大きなものとなる。その結果、ECU12は、異物S2が存在するものと検知する。
【0048】
以上詳述したように、本実施形態によれば、人体等の異物S1が接近した場合には、静電容量が比較的大きく変化することとなる。すなわち、人体等の異物S1については、非接触状態で感度よく検知することができる。
【0049】
また、両電極271,272のうち、アースマイナス極である取付基部22に近接する第2の電極272がプラス極とされており、第2の電極272と取付基部22との間で静電容量が生じるようになっている。ここで、C=ε0×ε×S/d(C:静電容量、ε0:真空の比誘電率、ε:物体の持つ誘電率、S:電極面積、d:電極間距離)の公式からもわかるように、第1の電極271に電荷を供給した(第1の電極271をプラス極とした)場合と比較して、第2の電極272に電荷を供給した(第2の電極272をプラス極とした)場合には、アースマイナス極との距離dがより小さくなるため、間隙部28が潰れ変形した際(つまり、dが減少した際)に、静電容量がより大きく変化する。従って、異物が接触した場合には、両電極271,272の接近に伴い、両電極271,272間の静電容量が変化するとともに、間隙部28の潰れ変形により、第2の電極272と取付基部22(ドア2)との間における静電容量が大きく変化することとなる。従って、異物接触時における静電容量の変化量を非常に大きなものとすることができ、水滴の付着による誤判定が発生しないような閾値を設定した場合においても、静電容量の比較的小さな異物S2を感度よく検知することができる。
【0050】
さらに、表皮カバー部23とセンサ本体27との間に空間部29が形成されているため、センサ本体27を中空部26内に配置しやすくなっている。
【0051】
一方、間隙部28や空間部29が形成されていると、センサ本体27は中空部26内で安定しない。これに対して、本実施形態では、表皮カバー部23の内周面から突出する突部23A,23Bによって、表皮カバー部23に対するセンサ本体27の相対回転を規制している。これにより、長尺センサ21をドア2に取付ける際などにおいて、表皮カバー部23に対してセンサ本体27がねじれて配置されてしまうことを防止でき、その結果、センサ本体27の有する異物検知性能を十分に発揮させることができる。
【0052】
また、絶縁体270に設けられた可撓性を有する脚部270A,270Bによって、間隙部28が潰れた後に間隙部28を確実に復帰させることができる。これにより、異物のより一層確実な検知を図ることができる。さらに、脚部270A,270Bによって間隙部28の形状維持を図ることができるため、間隙部28を設けたことによる上述の作用効果がより確実に奏されることとなる。
【0053】
さらにまた、両電極271,272間の間に位置する絶縁体がTPOにより形成されるとともに、アースマイナス極としての取付基部22がカーボン含有のEPDMソリッドゴムにより形成されている。このため、絶縁体270や間隙部28が潰れ変形した際に、両電極271,272間の静電容量や第2の電極272と取付基部22との間の静電容量をより一層大きく変化させることができる。その結果、異物の検知精度の更なる向上を図ることができる。
【0054】
加えて、表皮カバー部23がカーボンを含有するため、異物の接触に伴う表皮カバー部23の変形量が僅かなものであっても、静電容量をより大きく変化させることができる。従って、検知精度のより一層の向上を図ることができる。
【0055】
尚、上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。勿論、以下において例示しない他の応用例、変更例も当然可能である。
【0056】
(a)上記実施形態では、絶縁体270の脚部270A,270Bが基底部24の幅方向に沿って延びるとともに、当該脚部270A,270Bが基底部24の傾斜面SA,SBに当接することで、センサ本体27に押圧力が加わった際に、間隙部28が潰れるように構成されている。これに対して、図7に示すように、絶縁体370の脚部370A,370Bを基底部35の幅方向に対して斜め方向に延びる断面略ハの字状に形成することで、センサ本体37に押圧力が加わった際に、間隙部38が潰れるように構成することとしてもよい。
【0057】
(b)上記実施形態では、表皮カバー部23に対するセンサ本体27の相対回転を規制すべく、表皮カバー部23の内周面からセンサ本体27側へと延びる突部23A,23Bが設けられている。これに対して、図7に示すように、取付基部34の内周面(中空部側の面)から突出する突部34A,34Bを設けることで、表皮カバー部36に対するセンサ本体37の相対回転を規制することとしてもよい。
【0058】
また、突部を設ける部位は表皮カバー部23(36)や取付基部22(34)に限定されるものではなく、例えば、絶縁体270(370)の外周面から表皮カバー部23(36)側へと突出するようにして突部を設けることとしてもよい。
【0059】
(c)上記実施形態では特に記載していないが、図8に示すように、表皮カバー部36の内周面から突出し、絶縁体370の外周面と当接する支持部41A,41Bを設けることで、表皮カバー部36を支持することとしてもよい。この場合には、表皮カバー部36が潰れ変形した後の表皮カバー部36の復帰性を高めることができるとともに、空間部39の形状維持を図ることができる。その結果、異物をより一層確実に検知することができる。
【0060】
尚、異物の接触時において表皮カバー部36の潰れ変形を阻害しない位置に支持部41A,41Bを配設することが好ましい。従って、同図に示すように、表皮カバー部36のうち取付基部34からドアピラー5側へと延びる側壁部36A,36Bと両者を連結する連結部36Cとの境界部分からセンサ本体37側へと突出するようにして支持部41A,41Bを設けることとしてもよい。この場合には、表皮カバー部36が潰れ変形した際に、支持部41A,41Bの先端部の間隔が開き、支持部41A,41Bは異物の接触方向と略同一の方向へと向くこととなる。このため、表皮カバー部36をより容易に潰れ変形させることができ、異物の検知精度を十分に確保することができる。
【0061】
(d)上記実施形態では、間隙部28を形成すべく、絶縁体270に脚部270A,270Bが設けられているが、図9に示すように、中空部56内において、取付基部52(基底部54)から表皮カバー部53側へと突出する凸部54A,54Bを設けることで、間隙部58を設けることとしてもよい。尚、図9において、凸部54A,54Bは断面略円形状をなしているが、異物の接触時において間隙部58をより容易に潰れ変形させるべく、前記凸部を異物の接触方向と交差する方向へと延びる板状に形成することとしてもよい。
【0062】
(e)上記実施形態では、ECU12は、静電容量の変化割合に基づいて異物を検知しているが、静電容量の変化量に基づいて異物を検知することとしてもよい。また、第2の電極272に発振回路を電気的に接続するとともに、前記静電容量測定手段に代えて、静電容量の経時変化にかかる前記発振回路からの発振出力に応じた周波数信号を計測する周波数計測手段を設け、当該周波数計測手段によって計測された周波数信号に基づいて、異物を検知することとしてもよい。
【0063】
(f)上記実施形態では、第1、第2の電極271,272は銅箔により形成されているが、両電極271,272を、導電率の高い他の金属材料やカーボン含有材料(導電性樹脂)等により形成することとしてもよい。また、両電極271,272を、平板状をなす網状の銅線に形成することとしてもよい。さらに、両電極271,272を、絶縁体270の表面に金属材料を塗装することで設けることとしてもよい。加えて、塗装に際して所定のパターンを形成することとしてもよい。但し、異物の検知精度を向上させるという観点からは、両電極271,272を優れた導電性能を有する材料(例えば、金や銅等)により形成することがより好ましい。
【0064】
(g)上記実施形態では、絶縁体270の内部に第1の電極271が配設されているが、絶縁体270の表皮カバー部23側表面に第1の電極271を取着することとしてもよい。
【0065】
(h)上記実施形態では、絶縁体270を形成する素材として、TPOが例示されているが、EPDMスポンジゴムなど、他の可撓性を有する素材により絶縁体270を形成することとしてもよい。
【0066】
(i)上記実施形態において、取付基部22はインサート22Nを備えて構成されているが、インサート22Nを省略することとしてもよい。
【0067】
(j)上記実施形態では、ボディ側面に設けられた乗降口4を開閉するためのスライドドア2を有する場合について具体化している。つまり、上記実施形態における開閉体はスライドドア2とされている。これに対し、本発明の技術思想を他の開閉体(例えば、非スライドタイプ)に適用することとしてもよい。他の開閉体としては、例えば、上部が支持されているハッチバックタイプのバックドアや、車両天井部を開閉するスライディングルーフ、ドアの窓部を開閉するドアガラス等を挙げることができる。
【符号の説明】
【0068】
1…車両、2…スライドドア(開閉体)、4…乗降口(開口部)、21…長尺センサ、22,34,52…取付基部、23…表皮カバー部、23A,23B,34A,34B…突部、26,56…中空部、27,37…センサ本体、28,38,58…間隙部、29,39…空間部、41A,41B…支持部、54A,54B…凸部、270,370…絶縁体、270A,270B,370A,370B…脚部、271…第1の電極、272…第2の電極。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両本体に設けられた開口部を開閉可能な開閉体の金属製の縁部に取着される取付基部と、
前記取付基部から前記開口部周縁側に向けて膨出し、内部に中空部を有する表皮カバー部と、
可撓性を有する絶縁体、及び、前記絶縁体の少なくとも一部を挟んで相対向する一対の板状の電極を有し、前記中空部内に配設されるセンサ本体と
を備える長尺センサであって、
前記一対の板状の電極のうち、
第1の電極は、前記開口部周縁側において、前記絶縁体に埋設、又は、前記絶縁体の表面に取着され、
前記第1の電極とは異なる第2の電極は、前記第1の電極よりも前記取付基部側に設けられ、
前記中空部内において、前記第2の電極と前記取付基部との間に間隙部が設けられるとともに、前記取付基部をアースとしてのマイナス極とし、
前記第2の電極をプラス極とし、前記第1の電極をマイナス極とし、
前記両電極間の静電容量の変化、及び、前記第2の電極と前記アースマイナス極との間の静電容量の変化に基づき、異物の前記表皮カバー部への近接及び/又は接触を検知することを特徴とする長尺センサ。
【請求項2】
前記取付基部の前記中空部側の面に、前記センサ本体の前記第2の電極の両側部近傍に当接して支持し、前記第2の電極との間に前記間隙部を形成する凸部を設けたことを特徴とする請求項1に記載の長尺センサ。
【請求項3】
前記表皮カバー部と前記センサ本体との間に空間部が設けられるとともに、
前記表皮カバー部の内周面、前記取付基部の前記中空部側の面、及び、前記センサ本体の外周面のうちのいずれかから突出する突部を設け、前記表皮カバー部に対する前記センサ本体の相対回転を規制可能に構成したことを特徴とする請求項1又は2に記載の長尺センサ。
【請求項4】
前記絶縁体をオレフィン系熱可塑性エラストマーにより形成するとともに、
前記取付基部をカーボンを含有するEPDMソリッドゴム、前記表皮カバー部をカーボンを含有するEPDMスポンジゴムにより形成したことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の長尺センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−54289(P2011−54289A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−199372(P2009−199372)
【出願日】平成21年8月31日(2009.8.31)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】