開閉体制御装置
【課題】簡単な構成で幼児に対する安全性を十分に確保することができる開閉体制御装置を提供する。
【解決手段】制御部2は、操作スイッチ5aが、所定時間内に所定回数以上操作されたときに、幼児が操作スイッチ5aをデタラメに操作している、いたずらを行っていると判断する。制御部2は、幼児がいたずらしていると判定した場合に、窓ガラス101の閉操作が行われると、当該閉操作を無効にし、駆動回路3による窓ガラス101の移動を禁止する駆動制限、または、駆動回路3による窓ガラス101の移動速度を通常よりも低速にする駆動制限を行う。これにより、幼児のいたずらに対する安全性が確保できるとともに、本体のコストアップが抑えられる。
【解決手段】制御部2は、操作スイッチ5aが、所定時間内に所定回数以上操作されたときに、幼児が操作スイッチ5aをデタラメに操作している、いたずらを行っていると判断する。制御部2は、幼児がいたずらしていると判定した場合に、窓ガラス101の閉操作が行われると、当該閉操作を無効にし、駆動回路3による窓ガラス101の移動を禁止する駆動制限、または、駆動回路3による窓ガラス101の移動速度を通常よりも低速にする駆動制限を行う。これにより、幼児のいたずらに対する安全性が確保できるとともに、本体のコストアップが抑えられる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両の窓や、サンルーフ等を開閉する開閉体制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の窓を開閉するパワーウィンド装置があった。パワーウィンド装置には、窓の開閉時、特に閉時、における、窓ガラスによる手等の異物の挟み込みに対する、安全機能が設けられている。具体的には、窓ガラスを移動するモータの負荷を監視し、この負荷の変動量が予め定められた閾値を超えたときに、窓ガラスによる異物の挟み込みが生じたと判定する機能、および、異物の挟み込みが生じたと判定したときに、窓ガラスの移動停止、または窓ガラスを逆方向に移動する機能が設けられている。
【0003】
パワーウィンド装置は、凍結等によって、窓の開閉時に、特定の位置で大きな負荷が作用することがある。上記の安全機能を設けたパワーウィンド装置では、この特定の位置で、異物の挟み込みが生じたと判定されるため、窓を全開したり、全閉することができない。このような事態が生じるのを防止する技術が、特許文献1、2等で提案されている。特許文献1は、異物の挟み込みが生じたと判定し、窓ガラス(開閉体)の停止または反転制御を行った後に、再度窓ガラスを閉じる操作スイッチの操作が行われ、このときにも異物の挟み込みが生じたと判定し、窓ガラスの停止または反転制御を繰り返す場合に、操作スイッチの操作が所定回数繰り返されると、異物の挟み込みが生じたかどうかの判定に用いる閾値を変更する構成である。この閾値の変更では、当初の第1閾値を、この第1閾値よりも異物の挟み込みが生じたと判定しにくい第2閾値に変更する。これにより、窓の開閉時に、凍結等によって特定の位置で大きな負荷が作用する状況になっても、窓を全開したり、全閉することができる。また、特許文献1では、第2閾値に変更した後、所定時間経過すると、第2閾値を第1閾値に戻している。また、特許文献2は、異物の挟み込みが生じたと判定したことによる窓ガラスの停止または反転制御を略同じ場所で連続して所定回数行うと、この場所で異物の挟み込み判定を行わない構成である。これにより、窓の開閉時に、凍結等によって特定の位置で大きな負荷が作用する状況になっても、窓を全開したり、全閉することができる。
【0004】
また、幼児に対する安全性を高めたパワーウィンド装置も提案されている(特許文献3参照)。この特許文献3は、シートに装備された圧力センサにより、着座しているのが幼児であるかどうかを検知し、幼児である場合に、通常時に比べて、異物の挟み込みが生じたかどうかの判定に用いる閾値を小さくしたり、異物の挟み込みが生じたと判定したときの逆方向への窓ガラスの移動量を大きくする構成を提案している。閾値を小さくすることで、異物の挟み込みが生じたと判定されやすくなる。すなわち、閾値を小さくすることが、異物の挟み込みが生じたと判定する感度を上げることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−143732号公報
【特許文献2】特許第3578568号公報
【特許文献3】特開平11−268531号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1、2は、窓の開閉時に、凍結等によって特定の位置で大きな負荷が作用する状況になっても、窓の全開や全閉が行えるように、窓ガラスによる異物の挟み込みが生じたと判定されにくくする制御を行っている。この制御では、幼児の腕等が挟み込まれたときに、速やかに、挟み込みが生じたと判定することができない。したがって、特許文献1、2に示されている構成では、幼児に対する安全性が十分に確保できないという問題があった。また、特許文献3は、幼児が着座している場合には、常に、異物の挟み込みが生じたかどうかの判定に用いる閾値を通常時よりも小さくして、異物の挟み込みが生じたと判定されやすくすることから、幼児に対する安全性を確保するものであった。しかし、着座している者が幼児であるかどうかを検出するための構成を必要とすることから、その構成が複雑になり、コストアップという問題があった。
【0007】
この発明の目的は、簡単な構成で幼児に対する安全性を十分に確保することができる開閉体制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の開閉体制御装置は、上記課題を解決するために、
操作スイッチの操作に応じた開閉体の移動指示を出力する移動指示出力手段と、
前記移動指示出力手段が出力した前記開閉体の移動指示に基づいて、電動機を駆動し、前記開閉体を移動させる駆動手段と、
所定時間内に、前記操作スイッチが所定回数以上繰り返し操作されたときに、前記移動指示出力手段が出力する前記操作スイッチの操作に応じた開閉体の移動指示を制限する駆動制限手段と、を備えている。
【0009】
この構成では、駆動制限手段が、所定時間内(例えば、5秒間)に、操作スイッチが所定回数(例えば5回)以上繰り返し操作されたときに、幼児が好奇心から操作スイッチをデタラメに操作している、すなわち幼児がいたずらしていると判断し、操作スイッチの操作に応じた開閉体の移動指示を制限する。この開閉体の移動指示の制限は、例えば、操作スイッチにおいて、開閉体の閉操作が行われた場合に、当該閉操作を無効にし、駆動手段による開閉体の移動を禁止する指示であってもよいし、駆動手段による開閉体の移動速度を通常よりも低速にする指示であってもよい。これにより、幼児のいたずらに対する安全性が確保できるとともに、本体のコストアップが抑えられる。
【0010】
また、所定時間内に、前記操作スイッチが所定回数以上繰り返し操作されたときに、その旨を報知する報知手段を備えてもよい。このように構成すれば、幼児がいたずらしていることを、保護者等に速やかに知らせることができる。すなわち、幼児のいたずらに対して、保護者等に速やかに対応させることができる。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、幼児のいたずらに対する安全性が確保できるとともに、本体のコストアップが抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】パワーウィンド装置における窓開閉機構の概略を示す図である。
【図2】パワーウィンド装置の主要部の構成を示す図である。
【図3】パワーウィンド装置の動作を示すフローチャートである。
【図4】パワーウィンド装置における開閉処理を示すフローチャートである。
【図5】パワーウィンド装置における手動開処理を示すフローチャートである。
【図6】パワーウィンド装置における手動開処理を示すフローチャートである。
【図7】パワーウィンド装置における感度変更処理を示すフローチャートである。
【図8】パワーウィンド装置における自動開処理を示すフローチャートである。
【図9】パワーウィンド装置における自動開処理を示すフローチャートである。
【図10】パワーウィンド装置における自動開処理を示すフローチャートである。
【図11】パワーウィンド装置における自動開処理を示すフローチャートである。
【図12】パワーウィンド装置における手動閉処理を示すフローチャートである。
【図13】パワーウィンド装置における手動閉処理を示すフローチャートである。
【図14】パワーウィンド装置における自動閉処理を示すフローチャートである。
【図15】パワーウィンド装置における自動閉処理を示すフローチャートである。
【図16】パワーウィンド装置における自動閉処理を示すフローチャートである。
【図17】パワーウィンド装置における自動閉処理を示すフローチャートである。
【図18】別のパワーウィンド装置における感度を引き上げる手法を説明する図である。
【図19】別のパワーウィンド装置の動作を示すフローチャートである。
【図20】別のパワーウィンド装置における移動速度変更処理を示すフローチャートである。
【図21】別のパワーウィンド装置における感度変更処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、この発明にかかる開閉体制御装置を適用したパワーウィンド装置の実施形態について説明する。
【0014】
図1は、この発明の実施形態であるパワーウィンド装置における窓開閉機構の概略の構成を示す図である。この窓開閉機構は、窓ガラス101を昇降させることにより、窓100を開閉する。窓ガラス101は、電動機であるモータ108により昇降させられる。窓ガラス101の下端には、この窓ガラス101を支持する支持部材103が取り付けられている。支持部材103には、第1アーム104および第2アーム105が係合されている。第1アーム104は、一端が支持部材103に係合され、他端がブラケット106に回転可能に支持されている。第2アーム105は、一端が支持部材103に係合され、他端がガイド部材107に係合されている。第1アーム104と第2アーム105とは、図示するように中点で回動自在に連結されている。ピニオン109は、モータ108により回転駆動される。ギヤ110は、ピニオン109と噛合して回転する。また、ギヤ110は、図示するように、扇形である。ギヤ110は、第1アーム104に固定されている。モータ108は、正逆方向に回転可能であり、正逆方向への回転によりピニオン109およびギヤ110を回転させて、第1アーム104を正逆方向へ回動させる。これに追随して、第2アーム105の他端がガイド部材107の溝に沿って横方向にスライドする。その結果、支持部材103が上下方向に移動して窓ガラス101を昇降させ、窓100を開閉する。また、モータ108には、エンコーダ108aが設けられている。
【0015】
図2は、この実施形態のパワーウィンド装置の主要部の構成を示す図である。この実施形態のパワーウィンド装置1は、窓100の開閉を制御する制御部2を備えている。制御部2は、駆動回路3に対して、窓100の開閉指示を出力する。駆動回路3は、制御部2から入力された100の開閉指示に基づいてモータ108を駆動し、窓ガラス101を昇降させる。パルス検出部4は、モータ108に設けられたエンコーダ108aの出力信号について、波形成形処理を行うとともに、波形成形処理を行ったパルス信号を制御部2に入力する。制御部2は、パルス検出部4から入力されたパルス信号の周波数からモータ108の回転速度を検出するとともに、このパルス信号の周波数変動からモータ108の負荷変動を検出する。操作部5は、窓100を開閉するときに操作する操作スイッチ5aを有する。操作部5は、操作スイッチ5aの操作状態に応じた信号を制御部2に入力する。操作スイッチ5aの操作状態は、中立、手動開、自動開、手動閉、および自動閉の5つである。中立は、操作スイッチ5aが中立の状態である。手動開は、操作スイッチ5aの押し下げ量が一定の範囲である状態であり、自動開は、操作スイッチ5aの押し下げ量が一定の範囲を超えている状態である。手動閉は、操作スイッチ5aの引き上げ量が一定の範囲である状態であり、自動閉は、操作スイッチ5aの引き上げ量が一定の範囲を超えている状態である。操作部5は、操作スイッチ5aの操作状態に応じて変化する、開信号、閉信号、および自動信号の3つの論理信号を制御部2に入力する。制御部2は、開信号、閉信号、および自動信号の3つの論理信号から、操作スイッチ5aの操作状態を判断する。
【0016】
制御部2は、操作スイッチ5aの操作状態に基づいて、手動開処理、自動開処理、手動閉処理、自動閉処理による窓100の開閉動作を行う。手動開処理は、操作スイッチ5aの操作状態が手動開であり、且つ窓100が全開するまでの間、窓ガラス101を下降させる処理であり、手動閉処理は、操作スイッチ5aの操作状態が手動閉であり、且つ窓100が全閉するまでの間、窓ガラス101を上昇させる処理である。また、自動開処理は、窓100が全開するか、操作スイッチ5aの操作状態が手動閉、または自動閉になるまで、窓ガラス101を下降させる処理である。また、自動閉処理は、窓100が全閉するか、操作スイッチ5aの操作状態が手動開、または自動開になるまで、窓ガラス101を上昇させる処理である。但し、制御部2は、窓100を開閉しているときに、昇降させている窓ガラス101による異物の挟み込みが生じた判定したときには、窓ガラス101を逆方向に移動させるエラー処理を行って実行中の処理を中止する。
【0017】
ここで、制御部2における、窓ガラス101による異物の挟み込みが生じたかどうかを判定する機能について説明する。制御部2は、エンコーダ108aの出力信号をパルス検出部4で波形成形したパルス信号の周波数変動に基づいて、挟み込みが生じたかどうかを判定する。エンコーダ108aの出力信号をパルス検出部4で波形成形したパルス信号の周波数は、モータ108の回転速度に比例する。駆動回路3は、制御部2から窓ガラス101の昇降にかかる指示が行われているとき、モータ108に対して単位時間当たりに供給する電力を一定に保っている。このため、モータ108は、負荷変動がなければ、一定速度で回転する。制御部2は、このパルス信号の周波数の変動量が、設定されている閾値(閾値C)を超えたときに、窓ガラス101による異物の挟み込みが生じたと判定する。このパルス信号の周波数の変動量は、その時点における周波数Aと、予め定めた一定時間(X1)前における周波数Bと、の差分(B−A)である。
【0018】
なお、エンコーダ108aの出力信号をパルス検出部4で波形成形したパルス信号の周波数が、予め定めた周波数よりも低くなったときに、窓ガラス101による異物の挟み込みが生じたと判定する構成としてもよい。しかし、モータ108にかかる負荷は、図1に示した機構部の経年変化や、環境温度等によって変化することから、上述した差分を用いて判定する構成のほうが好ましい。
【0019】
また、この実施形態のパワーウィンド装置1は、幼児が操作スイッチ5aをデタラメに操作しているかどうか、すなわち幼児のいたずらの有無、を判定する。また、幼児がいたずらしていると判定すると、窓ガラス101による挟み込みが生じたと判定する感度を引き上げる。ここで、感度を引き上げるとは、より小さな負荷変動で窓ガラス101による異物の挟み込みが生じたと判定されるようにすることである。言い換えれば、窓ガラス101による異物の挟み込みが生じたと判定されやすくすることである。具体的には、上述した閾値Cを、幼児がいたずらしていると判定したときに、通常値から、この通常値よりも小さい値のいたずら値に置き換える。また、この実施形態のパワーウィンド装置1は、予め定めた所定時間、この実施形態では5秒、内に、操作スイッチ5aが所定回数、この実施形態では5回、以上操作されたときに、幼児がいたずらしていると判定する。この所定時間、および所定回数は、通常の操作で殆ど行われることがなく、且つ幼児がいたずらしていることを迅速且つ正確に検出できれば、どのように設定してもよい。このように、幼児がいたずらしていると判定したときに、感度を引き上げることで、窓ガラス101が、いたずらしている幼児の手や、洋服の袖等の異物を挟み込んだとき、速やかに挟み込みが生じたと判定される。したがって、幼児のいたずらに対する安全性を確保することができる。
【0020】
次に、この実施形態のパワーウィンド装置1の動作について説明する。この実施形態のパワーウィンド装置1は、搭載されている車両のイグニッションスイッチがオンされると起動し、オフされると停止する。図3は、パワーウィンド装置の動作を示すフローチャートである。パワーウィンド装置1は、イグニッションスイッチがオンされると、図3に示す処理を開始する。制御部2は、イグニッションスイッチがオンされると、窓ガラス101による異物の挟み込みが生じたかどうかの判定に用いる閾値Cを、通常値に設定する(s1)。次に、制御部2は、操作スイッチ5aの操作回数をカウントするカウンタをリセットする(s2)。s1、およびs2にかかる処理は、制御部2に設けられているメモリ(不図示)の初期設定にかかる処理である。制御部2は、s1、およびs2にかかる処理が完了すると、イグニッションスイッチがオフされるまで、操作スイッチ5aの操作に応じて、窓100を開閉する開閉処理を行う(s3、s4)。
【0021】
図4は、この実施形態のパワーウィンド装置のs3にかかる開閉処理を示すフローチャートである。制御部2は、操作部5から入力されている操作スイッチ5aの操作状態が、中立であるかどうかを判定する(s11)。制御部2は、s11で中立であると判定すると、本処理を終了し、上述したs4でイグニッションスイッチがオフされたかどうかを判定する。イグニッションスイッチがオフされていなければ、再度、この図4に示す開閉処理を実行する。すなわち、イグニッションスイッチがオフされるまで、この図4に示す開閉処理を繰り返し実行する。
【0022】
制御部2は、s11で中立でないと判定すると、すなわち操作スイッチ5aに対して何らかの操作が行われると、操作スイッチ5aの操作回数をカウントするカウンタ(不図示)のカウント値が0であるかどうかを判定する(s12)。パワーウィンド装置1は、s12でカウント値が0であると判定すると、タイマ(不図示)をリセットして、当該タイマによる計時をスタートし(s13)、s14以降の処理を実行する。カウンタ、およびタイマは、制御部2に設けられている。また、制御部2は、s12でカウント値が0でないと判定すると、s13にかかる処理を行うことなく、s14以降の処理を実行する。制御部2は、操作スイッチ5aの操作状態が、手動開、自動開、手動閉、自動閉の何れであるかを判定し(s14〜s16)、ここで判定した操作スイッチ5aの操作状態に応じた窓100の開閉処理に移行する(s17〜s20)。具体的には、スイッチ5aの操作状態が、手動開であれば手動開処理に移行し、自動開であれば自動開処理に移行する。また、手動閉であれば手動閉処理に移行し、自動閉であれば(手動開、自動開、手動閉でなければ)自動閉処理に移行する。
【0023】
以下、手動開処理、自動開処理、手動閉処理、自動閉処理について、この順番に説明する。
【0024】
図5、および図6は、この実施形態のパワーウィンド装置における手動開処理を示すフローチャートである。制御部2は、幼児が操作スイッチ5aをデタラメに操作していないかどうか(幼児がいたずらしていないかどうか)を判定し、幼児がいたずらしている場合に、窓ガラス101による挟み込みが生じたと判定する感度を引き上げる、感度変更処理を実行する(s31)。図7は、この感度変更処理を示すフローチャートである。制御部2は、タイマで計時している時間が、予め定められた所定時間、ここでは5秒、以上であるかどうかを判定する(s51)。制御部2は、5秒以上であれば、当該タイマをリセットし(s52)、操作スイッチ5aの操作回数をカウントしているカウンタのカウント値を1に設定する(s53)。s52、s53では、このタイミングを基準にして、所定時間である5秒間の間に、操作スイッチ5aが操作された回数をカウントするための設定を行っている。一方、制御部2は、s51で5秒未満であると判定すると、操作スイッチ5aの操作回数をカウントしているカウンタのカウント値を1カウントアップする(s54)。s54では、先に基準としたタイミングから5秒経過するまでの期間における、操作スイッチ5aの操作回数のカウントを行っている。制御部2は、s54で1カウントアップした操作スイッチ5aの操作回数が5回未満であるかどうかを判定する(s55)。s55では、操作スイッチ5aが5秒間に5回以上操作されたかどうかを判定している。制御部2は、s55で5回未満であると判定すると、本処理を終了する。一方、制御部2は、5回以上であれば、幼児がいたずらしていると判定し、窓ガラス101による異物の挟み込みが生じたかどうかの判定に用いる閾値Cを、いたずら値に設定し(s56)、本処理を終了する。s56にかかる処理が行われることで、窓ガラス101による異物の挟み込みが発生しているかどうかを判定する感度が引き上げられる。
【0025】
制御部2は、上記s31にかかる感度変更処理を完了すると、窓100が全開しているかどうかを判定する(s32)。制御部2は、窓100が全開していれば、本処理を終了する。一方、制御部2は、窓100が全開していなければ、駆動回路3に対して窓100を開する方向、すなわち窓ガラス101を下降させる方向、にモータ108を駆動することを指示する、窓開指示を行う(s33)。これにより、駆動回路3がモータ108を駆動し、窓ガラス101を下降させる。駆動回路3は、モータ108に対して単位時間当たりに供給する電力を一定に保つ。
【0026】
制御部2は、s33で窓開指示を行うと、窓100が全開するか(s34)、窓ガラス101による異物の挟み込みが生じるか(s35)、タイマの計測時間が5秒以上に達するか(s36)、操作スイッチ5aの操作状態が手動開から他の状態に変化する(s37)、のを待つ。制御部2は、s34で窓100が全開したと判定すると、駆動回路3に対する窓開指示を停止し(s38)、本処理を終了する。駆動回路3は、制御部2からの窓開指示の停止により、モータ108の駆動を停止する。また、制御部2は、s35で窓ガラス101による異物の挟み込みが生じたと判定すると、駆動回路3に対するモータ108の逆転駆動を指示する、逆転指示を行う(s39)。窓100の開時においては、例えば洋服の袖等の異物が下降している窓ガラス101の収納部に引き込まれた場合に、窓ガラス101による異物の挟み込みが生じたと判定される。また、s39では、窓100を閉する方向、すなわち窓ガラス101を上昇させる方向、にモータ108を駆動することを、駆動回路3に対して指示する。駆動回路3がモータ108を窓ガラス101が上昇する方向に駆動する。これにより、窓ガラス101の収納部に引き込まれた洋服の袖等の異物が、この収納部から送り出される。したがって、窓ガラス101に挟み込まれた異物を簡単に取り除くことができる。制御部2は、窓ガラス101が予め定められている一定量上昇するのを待って(s40)、駆動回路3に対する逆転指示を停止し(s41)、本処理を終了する。
【0027】
制御部2は、モータ108の負荷変動を検出し、変動量が設定されている閾値Cを超えていると、窓ガラス101による異物の挟み込みが生じたと判定する。上述したように、制御部2は、エンコーダ108aの出力信号をパルス検出部4で波形成形したパルス信号の周波数の変動量が、設定されている閾値Cを超えたときに、窓ガラス101による異物の挟み込みが生じたと判定する。このときの判定に用いる閾値Cは、この時点で設定されている通常値、またはいたずら値のどちらかである。閾値Cは、イグニッションスイッチのオン時に、通常値に設定される。しかし、イグニッションスイッチのオン後に、上述した感度変更処理において、幼児が操作スイッチ5aをデタラメに操作する、いたずらを行っていると判定していれば、閾値Cは、通常値から、いたずら値に置き換える設定変更がなされている。
【0028】
また、制御部2は、s36でタイマの計測時間が5秒以上に達したと判定すると、操作スイッチ5aの操作回数をカウントしているカウンタをリセットし(s42)、s34に戻る。s42でカウンタがリセットされると、その後、s36にかかる判定が行われる毎に、このs42にかかる処理が行われることになるが、このことで、特に問題が生じることはない。また、s42でカウンタをリセットすると、s36にかかる判定処理が行われないように構成してもよい。すなわち、s42でカウンタをリセットした後は、s34、s35、s37にかかる判定だけを行うように構成してもよい。このようにすれば、s36にかかる処理を無駄に繰り返すことがなく、制御部2の負荷を低減することができる。
【0029】
制御部2は、s37で操作スイッチ5aの操作状態が手動開から他の状態に変化したと判定すると、図6に示す処理を実行する。操作スイッチ5aの変化した操作状態が中立、自動開、手動開、または自動閉のいずれであるかを判定する(s43〜s45)。制御部2は、変化した操作スイッチ5aの操作状態が中立であれば、駆動回路3に対する窓開指示を停止し(s46)、本処理を終了する。s46は、上述したs38と同じ処理である。また、制御部2は、変化した操作スイッチ5aの操作状態が自動開、手動閉、自動閉のいずれかであれば、その操作状態に応じた自動開処理、手動閉処理、自動閉処理のいずれかに移行する(s47〜s49)。
【0030】
次に、この実施形態のパワーウィンド装置における自動開処理について説明する。図8〜図11は、自動開処理を示すフローチャートである。制御部2は、図7に示した感度変更処理を実行する(s61)。制御部2は、窓100が全開しているかどうかを判定し(s62)、窓100が全開していれば本処理を終了する。一方、窓100が全開していなければ、駆動回路3に対して窓100を開する方向、すなわち窓ガラス101を下降させる方向、にモータ108を駆動することを指示する、窓開指示を行う(s63)。これにより、駆動回路3がモータ108を駆動し、窓ガラス101を下降させる。その後、制御部2は、s64〜s72において、上述した手動開処理で説明した、s34〜s42と同様の処理を行う。但し、s67では、操作スイッチ5aの操作状態が、自動開以外の状態に変化したかどうかを判定している。
【0031】
制御部2は、s67で操作スイッチ5aの操作状態が自動開から他の状態に変化したと判定すると、図9に示す処理を実行する。操作スイッチ5aの変化した操作状態が中立、手動開、手動閉、または自動閉のいずれであるかを判定する(s73〜s75)。制御部2は、変化した操作スイッチ5aの操作状態が手動閉、または自動閉のいずれかであれば、その操作状態に応じた手動閉処理、または自動閉処理に移行する(s76、s77)。また、制御部2は、変化した操作スイッチ5aの操作状態が中立であれば、窓100が全開するか(s78)、窓ガラス101による異物の挟み込みが生じるか(s79)、タイマの計測時間が5秒以上に達するか(s80)、操作スイッチ5aの操作状態が中立から他の状態に変化する(s81)、のを待つ。
【0032】
制御部2は、s78で窓100が全開したと判定すると、駆動回路3に対する窓開指示を停止し(s82)、本処理を終了する。また、制御部2は、s79で窓ガラス101による異物の挟み込みを検出すると、s83〜s85において、上述した手動開処理で説明した、s39〜s41にかかる処理を行う。また、s80でタイマの計測時間が5秒以上に達したと判定すると、操作スイッチ5aの操作回数をカウントしているカウンタをリセットし(s86)、s78に戻る。
【0033】
なお、s74で操作スイッチ5aの変化した操作状態が、手動開であると判定した場合については、後述する。
【0034】
制御部2は、s81で操作スイッチ5aの操作状態が中立から他の状態に変化したと判定すると、図10に示す処理を実行する。操作スイッチ5aの変化した操作状態が手動開、自動開、手動閉、または自動閉のいずれであるかを判定する(s87〜s89)。ここでは、操作スイッチ5aの変化した操作状態が手動開、自動開、手動閉でない場合に、自動閉であると判定している。制御部2は、変化した操作スイッチ5aの操作状態が手動閉、または自動閉のいずれかであれば、その操作状態に応じた手動閉処理、自動閉処理に移行する(s90、s91)。
【0035】
また、制御部2は、変化した操作スイッチ5aの操作状態が自動開であれば、図7に示した感度変更処理を実行し(s93)、上述したs64に戻る。s93で感度変更処理を行うので、操作スイッチ5aの操作回数を適正にカウントすることができ、その結果、幼児がいたずらしていないかどうかの判定精度を確保することができる。また、制御部2は、変化した操作スイッチ5aの操作状態が手動開であれば、図7に示した感度変更処理を実行する(s92)。そして、制御部2は、窓100が全開するか(s94)、窓ガラス101による異物の挟み込みが生じるか(s95)、判定時間を計測しているタイマの計測時間が5秒以上に達するか(s96)、操作スイッチ5aの操作状態が手動開から他の状態に変化する(s97)、のを待つ。この場合も、s92で感度変更処理を行うので、操作スイッチ5aを幼児がいたずらしていないかどうかの判定精度を確保することができる。また、上述したs74で変化した操作スイッチ5aの操作状態が手動開であると判定した場合には、s94以降の処理を実行する。制御部2は、操作スイッチ5aの操作状態が、自動開から中立に変化するときに、一時的に手動開になったことを検出することがある。この実施形態では、自動開から手動開に変化したときには、これを操作スイッチ5aの操作回数としてカウントしない。
【0036】
制御部2は、s94で窓100が全開したと判定すると、駆動回路3に対する窓開指示を停止し(s98)、本処理を終了する。また、制御部2は、s95で窓ガラス101による異物の挟み込みを検出すると、s99〜s101において、上述した手動開処理で説明した、s39〜s41にかかる処理を行う。また、s96でタイマの計測時間が5秒以上に達したと判定すると、操作スイッチ5aの操作回数をカウントしているカウンタをリセットし(s102)、s94に戻る。
【0037】
制御部2は、s97で操作スイッチ5aの操作状態が手動開から他の状態に変化したと判定すると、図11に示す処理を実行する。操作スイッチ5aの変化した操作状態が中立、自動開、手動閉、または自動閉のいずれであるかを判定する(s103〜s105)。ここでは、操作スイッチ5aの変化した操作状態が中立、自動開、手動閉でない場合に、自動閉であると判定している。制御部2は、変化した操作スイッチ5aの操作状態が中立であれば、上述したs78に戻る。また、制御部2は、変化した操作スイッチ5aの操作状態が自動開であれば、図7に示した感度変更処理を実行し(s106)、上述したs64に戻る。s106で感度変更処理を行うので、操作スイッチ5aを幼児がいたずらしていないかどうかの判定精度を確保することができる。また、制御部2は、変化した操作スイッチ5aの操作状態が手動閉、または自動閉のいずれかであれば、その操作状態に応じた手動閉処理、自動閉処理に移行する(s107、s108)。
【0038】
次に、この実施形態のパワーウィンド装置における手動閉処理について説明する。図12、および図13は、手動閉処理を示すフローチャートである。制御部2は、図7に示した感度変更処理を実行する(s111)。制御部2は、窓100が全閉しているかどうかを判定する(s112)。制御部2は、窓100が全閉していれば、本処理を終了する。一方、制御部2は、窓100が全閉していなければ、駆動回路3に対して窓100を閉する方向、すなわち窓ガラス101を上昇させる方向、にモータ108を駆動することを指示する、窓閉指示を行う(s113)。これにより、駆動回路3がモータ108を駆動し、窓ガラス101を上昇させる。
【0039】
制御部2は、s113で窓閉指示を行うと、窓100が全閉するか(s114)、窓ガラス101による異物の挟み込みが生じるか(s115)、タイマの計測時間が5秒以上に達するか(s116)、操作スイッチ5aの操作状態が手動閉から他の状態に変化する(s117)、のを待つ。制御部2は、s114で窓100が全閉したと判定すると、駆動回路3に対する窓閉指示を停止し(s118)、本処理を終了する。駆動回路3は、制御部2からの窓閉指示の停止により、モータ108の駆動を停止する。また、制御部2は、s115で窓ガラス101による異物の挟み込みが生じたと判定すると、駆動回路3に対するモータ108の逆転駆動を指示する、逆転指示を行う(s119)。窓100の閉時においては、指や腕等の異物が上昇している窓ガラス101と窓枠とに挟まれた場合に、窓ガラス101による異物の挟み込みが生じたと判定される。また、s119では、窓100を開する方向、すなわち窓ガラス101を下降させる方向、にモータ108を駆動することを、駆動回路3に対して指示する。駆動回路3がモータ108を窓ガラス101が下降する方向に駆動する。制御部2は、窓100が全開するのを待って(s120)、駆動回路3に対する逆転指示を停止し(s121)、本処理を終了する。このように、制御部2は、窓100の閉時に、窓ガラス101による異物の挟み込みが発生したと判定したときには、窓100を全開する。したがって、窓ガラス101と窓枠とに挟まれた指や腕等が挟み込まれたときの安全性を確保することができる。
【0040】
また、制御部2は、s116でタイマの計測時間が5秒以上に達したと判定すると、操作スイッチ5aの操作回数をカウントしているカウンタをリセットし(s122)、s114に戻る。s122でカウンタがリセットされると、その後、s116にかかる判定が行われる毎に、このs122にかかる処理が行われることになるが、このことで、特に問題が生じることはない。また、s122でカウンタをリセットした後については、s116にかかる判定処理が行われないようにしてもよい。すなわち、s122でカウンタをリセットした後は、s114、s115、s117にかかる判定だけを行うようにしてもよい。
【0041】
制御部2は、s117で操作スイッチ5aの操作状態が手動閉から他の状態に変化したと判定すると、図13に示す処理を実行する。操作スイッチ5aの変化した操作状態が中立、自動閉、手動開、または自動開のいずれであるかを判定する(s123〜s125)。制御部2は、変化した操作スイッチ5aの操作状態が中立であれば、駆動回路3に対する窓閉指示を停止し(s126)、本処理を終了する。また、制御部2は、変化した操作スイッチ5aの操作状態が自動閉、手動開、自動開のいずれかであれば、その操作状態に応じた自動閉処理、手動開処理、自動開処理に移行する(s127〜s129)。
【0042】
次に、この実施形態のパワーウィンド装置における自動閉処理について説明する。図14〜図16は、自動閉処理を示すフローチャートである。制御部2は、図7に示した感度変更処理を実行する(s131)。制御部2は、窓100が全閉しているかどうかを判定し(s132)、窓100が全閉していれば本処理を終了する。一方、窓100が全閉していなければ、駆動回路3に対して窓100を閉する方向にモータ108を駆動することを指示する、窓閉指示を行う(s133)。これにより、駆動回路3がモータ108を駆動し、窓ガラス101を下降させる。その後、制御部2は、s134〜s142において、上述した手動閉処理で説明した、s114〜s122と同様の処理を行う。但し、s137では、操作スイッチ5aの操作状態が、自動閉以外の状態に変化したかどうかを判定している。
【0043】
制御部2は、s137で操作スイッチ5aの操作状態が自動閉から他の状態に変化したと判定すると、図15に示す処理を実行する。操作スイッチ5aの変化した操作状態が中立、手動閉、手動開、または自動開のいずれであるかを判定する(s143〜s145)。制御部2は、変化した操作スイッチ5aの操作状態が手動開、または自動開のいずれかであれば、その操作状態に応じた手動開処理、または自動開処理に移行する(s146、s147)。また、制御部2は、変化した操作スイッチ5aの操作状態が中立であれば、窓100が全閉するか(s148)、窓ガラス101による異物の挟み込みが生じるか(s149)、判定時間を計測しているタイマの計測時間が5秒以上に達するか(s150)、操作スイッチ5aの操作状態が中立から他の状態に変化する(s151)、のを待つ。制御部2は、s148で窓100が全閉したと判定すると、駆動回路3に対する窓閉指示を停止し(s152)、本処理を終了する。また、制御部2は、s149で窓ガラス101による異物の挟み込みが発生したと判定すると、s153〜s155において、上述した手動開処理で説明した、s119〜s121にかかる処理を行う。また、s150でタイマの計測時間が5秒以上に達したと判定すると、操作スイッチ5aの操作回数をカウントしているカウンタをリセットし(s156)、s148に戻る。
【0044】
なお、s144で操作スイッチ5aの変化した操作状態が、手動開であると判定した場合については、後述する。
【0045】
制御部2は、s151で操作スイッチ5aの操作状態が中立から他の状態に変化したと判定すると、図16に示す処理を実行する。操作スイッチ5aの変化した操作状態が手動閉、自動閉、手動開、または自動開のいずれであるかを判定する(s157〜s159)。制御部2は、変化した操作スイッチ5aの操作状態が手動開、または自動開のいずれかであれば、その操作状態に応じた手動開処理、自動開処理に移行する(s160、s161)。また、制御部2は、変化した操作スイッチ5aの操作状態が自動閉であれば、図7に示した感度変更処理を実行し(s163)、上述したs134に戻る。s163で感度変更処理を行うので、操作スイッチ5aの操作回数を適正にカウントすることができ、その結果、幼児がいたずらしていないかどうかの判定精度を確保することができる。
【0046】
また、制御部2は、変化した操作スイッチ5aの操作状態が手動閉であれば、図7に示した感度変更処理を実行する(s162)。そして、制御部2は、窓100が全閉するか(s164)、窓ガラス101による異物の挟み込みが生じるか(s165)、判定時間を計測しているタイマの計測時間が5秒以上に達するか(s166)、操作スイッチ5aの操作状態が手動閉から他の状態に変化する(s167)、のを待つ。s162においても、感度変更処理を行うので、幼児がいたずらしていないかどうかの判定精度を確保することができる。また、上述したs134で変化した操作スイッチ5aの操作状態が手動閉であると判定した場合には、s164以降の処理を実行する。制御部2は、操作スイッチ5aの操作状態が、自動閉から中立に変化するときに、一時的に手動閉になったことを検出することがあるので、自動閉から手動閉に変化したときには、これを操作スイッチ5aの操作回数としてカウントしない。
【0047】
制御部2は、s164で窓100が全閉したと判定すると、駆動回路3に対する窓閉指示を停止し(s168)、本処理を終了する。また、制御部2は、s165で窓ガラス101による異物の挟み込みを検出すると、s169〜s171において、上述した手動閉処理で説明した、s119〜s121にかかる処理を行う。また、s166でタイマの計測時間が5秒以上に達したと判定すると、操作スイッチ5aの操作回数をカウントしているカウンタをリセットし(s172)、s164に戻る。
【0048】
制御部2は、s167で操作スイッチ5aの操作状態が手動閉から他の状態に変化したと判定すると、図17に示す処理を実行する。操作スイッチ5aの変化した操作状態が中立、自動閉、手動開、または自動開のいずれであるかを判定する(s173〜s175)。制御部2は、変化した操作スイッチ5aの操作状態が中立であれば、上述したs148に戻る。また、制御部2は、変化した操作スイッチ5aの操作状態が自動閉であれば、図7に示した感度変更処理を実行し(s176)、上述したs134に戻る。s176で感度変更処理を行うので、幼児がいたずらしていないかどうかの判定精度を確保することができる。また、制御部2は、変化した操作スイッチ5aの操作状態が手動開、または自動開のいずれかであれば、その操作状態に応じた手動開処理、または自動開処理に移行する(s177、s178)。
【0049】
このように、この実施形態のパワーウィンド装置1は、上述した手動開処理、自動開処理、手動閉処理、および自動開処理において、モータ108の負荷変動を検出することにより、窓ガラス101による異物の挟み込みが生じたかどうかを判定している。また、所定時間内に、所定回数以上操作スイッチ5aが操作された場合に、幼児がいたずらしていると判定し、窓ガラス101による異物の挟み込みが生じたかどうかの判定に用いる閾値Cを、通常値から、いたずら値に変更することで、窓ガラス101による挟み込みが生じたと判定する感度を引き上げている。したがって、幼児がいたずらしているときには、窓ガラス101による異物の挟み込みが生じたかどうかを引き上げた感度で判定するので、幼児のいたずらに対する安全性を確保することができる。また、幼児がいたずらしているかどうかの判断を、ソフトウェアで行うので、本体のコストアップも抑えられる。さらに、幼児がいたずらしていなければ、通常の感度で窓ガラス101による異物の挟み込みが生じたかどうかを判定することから、窓ガラス101による異物の挟み込みが生じていないときに、異物の挟み込みが生じた判定する誤判定の発生頻度を抑えることができ、利便性を低下させることもない。
【0050】
また、上記実施形態のパワーウィンド装置1では、閾値Cがいたずら値に設定されると、閾値Cを通常値に戻すには、一旦、イグニッションスイッチをオフする構成であったが、以下のように構成してもよい。
(1)操作スイッチ5aが所定時間以上操作されなかったときに、閾値Cをいたずら値から、通常値に戻す。
(2)閾値Cをいたずら値に設定してから、所定時間経過後に、閾値Cをいたずら値から、通常値に戻す。
(3)窓100が全開、または全閉されてから、所定時間経過後に、閾値Cをいたずら値から、通常値に戻す。
また、上記実施形態では、閾値Cを、通常値から、いたずら値に変更することで、感度を引き上げるとしたが、閾値Cを変更するのではなく、以下のように構成してもよい。
【0051】
図18に示すように、モータ108の負荷変動量を算出するときに、通常時には、その時点の負荷と、通常時間(X1)前の負荷との差分とし、幼児がいたずらしていると判定した、いたずら時には、その時点の負荷と、通常時間(X1)よりも長い、いたずら時間(X2)前の負荷との差分とする。図18(A)は、時間軸に対する、エンコーダ108aの出力信号をパルス検出部4で波形成形したパルス信号の周波数を示し、図18(B)は、図18(A)に示す周波数変動に対して検出される負荷の変動量を示す図である。このように構成しても、感度を引き上げ、幼児のいたずらに対する安全性が確保できるとともに、本体のコストアップが抑えられる。また、利便性も確保できる。この場合には、図3に示すs1を、通常時間X1に設定する処理に変更し、図7に示すs56をいたずら時間X2に設定する処理に変更すればよい。
【0052】
次に、別の実施形態について説明する。上記実施形態では、幼児がいたずらしていると判定した場合に、感度を引き上げて、窓ガラス101による異物の挟み込みが発生したかどうかを判定するとしたが、この実施形態では、幼児がいたずらしていると判定した場合に、窓100の開閉動作時における窓ガラス101の移動速度を、通常時よりも低速にするものである。
【0053】
具体的に言うと、制御部2は、駆動回路3に対して窓100の開閉指示を行うときに、単位時間当たりにモータ108に供給する電力量として、第1の電力量、または第2の電力量を指示する構成である。ここで、第1の電力量は、第2の電力量よりも大きいものとする。また、駆動回路3は、制御部2から指示された第1の電力量、または第2の電力量の電力をモータ108に供給し、このモータ108を駆動する。したがって、モータ108の回転速度は、第1の電力量の電力が供給されているときのほうが、高速である。
【0054】
このパワーウィンド装置1は、イグニッションスイッチがオンされたときに、図19に示す処理を実行する。この図19に示す処理は、上記実施形態で説明した図3のs1を、単位時間当たりにモータ108に供給する電力量を第1の電力量に設定する処理(s201)に変更したものである。また、上記実施形態における感度変更処理に換えて、図20に示す移動速度変更処理を実行する。この図20に示す処理は、上記実施形態における、図7のs56を、単位時間当たりにモータ108に供給する電力量を第2の電力量に設定する処理(s202)に変更したものである。
【0055】
これにより、幼児がいたずらしていると判定したときには、窓100の開閉時における、窓ガラス101の移動速度を、通常時よりも低速にすることができる。したがって、幼児のいたずらに対する安全性が確保できるとともに、本体のコストアップが抑えられる。また、利便性も確保できる。
【0056】
なお、この場合には、上述した実施形態で説明した、手動開処理、自動開処理、手動閉処理、および自動閉処理における感度変更処理は、全て図20に示す移動速度変更処理に置き換えられる。
【0057】
また、幼児がいたずらしていると判定したときに、手動閉処理、および自動閉処理については窓ガラス101の移動速度を、通常時よりも低速にし、手動開処理、および自動開処理については窓ガラス101の移動速度を低速にしないようにしてもよい。
【0058】
また、幼児がいたずらしていると判定したときに、制御部2が、手動開処理、自動開処理、手動閉処理、および自動閉処理の全てを禁止する構成としてもよいし、手動閉処理、および自動閉処理については禁止し、手動開処理、および自動開処理については禁止しない構成としてもよい。このようにしても、幼児のいたずらに対する安全性が確保できるとともに、本体のコストアップが抑えられる。また、利便性も確保できる。
【0059】
さらに、幼児がいたずらしていると判定したときに、警告灯を点滅させたり、警告音による報知を行うようにしてもよい。例えば、室内灯を警告灯として点滅させてもよいし、ハザードランプを警告灯として点滅させてもよい。また、警告音としてクラクションをならすようにしてもよい。
【0060】
この場合、図7に示した感度変更処理を、図21に示す処理とすればよい。図21に示す感度変更処理は、s56につづいて、上述した幼児のいたずらを報知するステップ(s203)を追加したものである。これにより、幼児がいたずらしていることを、保護者等に速やかに知らせることができる。すなわち、幼児のいたずらに対して、保護者等に速やかに対応させることができる。したがって上記実施形態と同様に、幼児のいたずらに対する安全性が確保できるとともに、本体のコストアップが抑えられる。また、利便性も確保できる。
【0061】
ここでは、s56につづいて、s203を実行するとしたが、s56に換えて、s203を実行するように構成してもよい。また、図20に示すs202につづいて、s203を実行する構成としてもよいし、s202に換えて、s203を実行する構成としてもよい。
【0062】
なお、上記実施形態では、本願発明をパワーウィンド装置に適用して説明したが、本願発明はサンルーフを開閉する装置等にも適用できる。
【0063】
また、挟み込みが発生したと判定したときに窓ガラス101を反転駆動するのではなく、停止する構成としてもよい。さらに、挟み込みが発生したかどうかの判定や、挟み込みが発生したと判定したときの窓ガラス101の反転駆動や停止については、手動開処理、および自動開処理については禁止し、手動閉処理、および自動閉処理でのみ行うようにしてもよい。
【符号の説明】
【0064】
1−パワーウィンド装置
2−制御部
3−駆動回路
4−パルス検出部
5−操作部
5a−操作スイッチ
108−モータ
108a−エンコーダ
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両の窓や、サンルーフ等を開閉する開閉体制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の窓を開閉するパワーウィンド装置があった。パワーウィンド装置には、窓の開閉時、特に閉時、における、窓ガラスによる手等の異物の挟み込みに対する、安全機能が設けられている。具体的には、窓ガラスを移動するモータの負荷を監視し、この負荷の変動量が予め定められた閾値を超えたときに、窓ガラスによる異物の挟み込みが生じたと判定する機能、および、異物の挟み込みが生じたと判定したときに、窓ガラスの移動停止、または窓ガラスを逆方向に移動する機能が設けられている。
【0003】
パワーウィンド装置は、凍結等によって、窓の開閉時に、特定の位置で大きな負荷が作用することがある。上記の安全機能を設けたパワーウィンド装置では、この特定の位置で、異物の挟み込みが生じたと判定されるため、窓を全開したり、全閉することができない。このような事態が生じるのを防止する技術が、特許文献1、2等で提案されている。特許文献1は、異物の挟み込みが生じたと判定し、窓ガラス(開閉体)の停止または反転制御を行った後に、再度窓ガラスを閉じる操作スイッチの操作が行われ、このときにも異物の挟み込みが生じたと判定し、窓ガラスの停止または反転制御を繰り返す場合に、操作スイッチの操作が所定回数繰り返されると、異物の挟み込みが生じたかどうかの判定に用いる閾値を変更する構成である。この閾値の変更では、当初の第1閾値を、この第1閾値よりも異物の挟み込みが生じたと判定しにくい第2閾値に変更する。これにより、窓の開閉時に、凍結等によって特定の位置で大きな負荷が作用する状況になっても、窓を全開したり、全閉することができる。また、特許文献1では、第2閾値に変更した後、所定時間経過すると、第2閾値を第1閾値に戻している。また、特許文献2は、異物の挟み込みが生じたと判定したことによる窓ガラスの停止または反転制御を略同じ場所で連続して所定回数行うと、この場所で異物の挟み込み判定を行わない構成である。これにより、窓の開閉時に、凍結等によって特定の位置で大きな負荷が作用する状況になっても、窓を全開したり、全閉することができる。
【0004】
また、幼児に対する安全性を高めたパワーウィンド装置も提案されている(特許文献3参照)。この特許文献3は、シートに装備された圧力センサにより、着座しているのが幼児であるかどうかを検知し、幼児である場合に、通常時に比べて、異物の挟み込みが生じたかどうかの判定に用いる閾値を小さくしたり、異物の挟み込みが生じたと判定したときの逆方向への窓ガラスの移動量を大きくする構成を提案している。閾値を小さくすることで、異物の挟み込みが生じたと判定されやすくなる。すなわち、閾値を小さくすることが、異物の挟み込みが生じたと判定する感度を上げることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−143732号公報
【特許文献2】特許第3578568号公報
【特許文献3】特開平11−268531号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1、2は、窓の開閉時に、凍結等によって特定の位置で大きな負荷が作用する状況になっても、窓の全開や全閉が行えるように、窓ガラスによる異物の挟み込みが生じたと判定されにくくする制御を行っている。この制御では、幼児の腕等が挟み込まれたときに、速やかに、挟み込みが生じたと判定することができない。したがって、特許文献1、2に示されている構成では、幼児に対する安全性が十分に確保できないという問題があった。また、特許文献3は、幼児が着座している場合には、常に、異物の挟み込みが生じたかどうかの判定に用いる閾値を通常時よりも小さくして、異物の挟み込みが生じたと判定されやすくすることから、幼児に対する安全性を確保するものであった。しかし、着座している者が幼児であるかどうかを検出するための構成を必要とすることから、その構成が複雑になり、コストアップという問題があった。
【0007】
この発明の目的は、簡単な構成で幼児に対する安全性を十分に確保することができる開閉体制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の開閉体制御装置は、上記課題を解決するために、
操作スイッチの操作に応じた開閉体の移動指示を出力する移動指示出力手段と、
前記移動指示出力手段が出力した前記開閉体の移動指示に基づいて、電動機を駆動し、前記開閉体を移動させる駆動手段と、
所定時間内に、前記操作スイッチが所定回数以上繰り返し操作されたときに、前記移動指示出力手段が出力する前記操作スイッチの操作に応じた開閉体の移動指示を制限する駆動制限手段と、を備えている。
【0009】
この構成では、駆動制限手段が、所定時間内(例えば、5秒間)に、操作スイッチが所定回数(例えば5回)以上繰り返し操作されたときに、幼児が好奇心から操作スイッチをデタラメに操作している、すなわち幼児がいたずらしていると判断し、操作スイッチの操作に応じた開閉体の移動指示を制限する。この開閉体の移動指示の制限は、例えば、操作スイッチにおいて、開閉体の閉操作が行われた場合に、当該閉操作を無効にし、駆動手段による開閉体の移動を禁止する指示であってもよいし、駆動手段による開閉体の移動速度を通常よりも低速にする指示であってもよい。これにより、幼児のいたずらに対する安全性が確保できるとともに、本体のコストアップが抑えられる。
【0010】
また、所定時間内に、前記操作スイッチが所定回数以上繰り返し操作されたときに、その旨を報知する報知手段を備えてもよい。このように構成すれば、幼児がいたずらしていることを、保護者等に速やかに知らせることができる。すなわち、幼児のいたずらに対して、保護者等に速やかに対応させることができる。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、幼児のいたずらに対する安全性が確保できるとともに、本体のコストアップが抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】パワーウィンド装置における窓開閉機構の概略を示す図である。
【図2】パワーウィンド装置の主要部の構成を示す図である。
【図3】パワーウィンド装置の動作を示すフローチャートである。
【図4】パワーウィンド装置における開閉処理を示すフローチャートである。
【図5】パワーウィンド装置における手動開処理を示すフローチャートである。
【図6】パワーウィンド装置における手動開処理を示すフローチャートである。
【図7】パワーウィンド装置における感度変更処理を示すフローチャートである。
【図8】パワーウィンド装置における自動開処理を示すフローチャートである。
【図9】パワーウィンド装置における自動開処理を示すフローチャートである。
【図10】パワーウィンド装置における自動開処理を示すフローチャートである。
【図11】パワーウィンド装置における自動開処理を示すフローチャートである。
【図12】パワーウィンド装置における手動閉処理を示すフローチャートである。
【図13】パワーウィンド装置における手動閉処理を示すフローチャートである。
【図14】パワーウィンド装置における自動閉処理を示すフローチャートである。
【図15】パワーウィンド装置における自動閉処理を示すフローチャートである。
【図16】パワーウィンド装置における自動閉処理を示すフローチャートである。
【図17】パワーウィンド装置における自動閉処理を示すフローチャートである。
【図18】別のパワーウィンド装置における感度を引き上げる手法を説明する図である。
【図19】別のパワーウィンド装置の動作を示すフローチャートである。
【図20】別のパワーウィンド装置における移動速度変更処理を示すフローチャートである。
【図21】別のパワーウィンド装置における感度変更処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、この発明にかかる開閉体制御装置を適用したパワーウィンド装置の実施形態について説明する。
【0014】
図1は、この発明の実施形態であるパワーウィンド装置における窓開閉機構の概略の構成を示す図である。この窓開閉機構は、窓ガラス101を昇降させることにより、窓100を開閉する。窓ガラス101は、電動機であるモータ108により昇降させられる。窓ガラス101の下端には、この窓ガラス101を支持する支持部材103が取り付けられている。支持部材103には、第1アーム104および第2アーム105が係合されている。第1アーム104は、一端が支持部材103に係合され、他端がブラケット106に回転可能に支持されている。第2アーム105は、一端が支持部材103に係合され、他端がガイド部材107に係合されている。第1アーム104と第2アーム105とは、図示するように中点で回動自在に連結されている。ピニオン109は、モータ108により回転駆動される。ギヤ110は、ピニオン109と噛合して回転する。また、ギヤ110は、図示するように、扇形である。ギヤ110は、第1アーム104に固定されている。モータ108は、正逆方向に回転可能であり、正逆方向への回転によりピニオン109およびギヤ110を回転させて、第1アーム104を正逆方向へ回動させる。これに追随して、第2アーム105の他端がガイド部材107の溝に沿って横方向にスライドする。その結果、支持部材103が上下方向に移動して窓ガラス101を昇降させ、窓100を開閉する。また、モータ108には、エンコーダ108aが設けられている。
【0015】
図2は、この実施形態のパワーウィンド装置の主要部の構成を示す図である。この実施形態のパワーウィンド装置1は、窓100の開閉を制御する制御部2を備えている。制御部2は、駆動回路3に対して、窓100の開閉指示を出力する。駆動回路3は、制御部2から入力された100の開閉指示に基づいてモータ108を駆動し、窓ガラス101を昇降させる。パルス検出部4は、モータ108に設けられたエンコーダ108aの出力信号について、波形成形処理を行うとともに、波形成形処理を行ったパルス信号を制御部2に入力する。制御部2は、パルス検出部4から入力されたパルス信号の周波数からモータ108の回転速度を検出するとともに、このパルス信号の周波数変動からモータ108の負荷変動を検出する。操作部5は、窓100を開閉するときに操作する操作スイッチ5aを有する。操作部5は、操作スイッチ5aの操作状態に応じた信号を制御部2に入力する。操作スイッチ5aの操作状態は、中立、手動開、自動開、手動閉、および自動閉の5つである。中立は、操作スイッチ5aが中立の状態である。手動開は、操作スイッチ5aの押し下げ量が一定の範囲である状態であり、自動開は、操作スイッチ5aの押し下げ量が一定の範囲を超えている状態である。手動閉は、操作スイッチ5aの引き上げ量が一定の範囲である状態であり、自動閉は、操作スイッチ5aの引き上げ量が一定の範囲を超えている状態である。操作部5は、操作スイッチ5aの操作状態に応じて変化する、開信号、閉信号、および自動信号の3つの論理信号を制御部2に入力する。制御部2は、開信号、閉信号、および自動信号の3つの論理信号から、操作スイッチ5aの操作状態を判断する。
【0016】
制御部2は、操作スイッチ5aの操作状態に基づいて、手動開処理、自動開処理、手動閉処理、自動閉処理による窓100の開閉動作を行う。手動開処理は、操作スイッチ5aの操作状態が手動開であり、且つ窓100が全開するまでの間、窓ガラス101を下降させる処理であり、手動閉処理は、操作スイッチ5aの操作状態が手動閉であり、且つ窓100が全閉するまでの間、窓ガラス101を上昇させる処理である。また、自動開処理は、窓100が全開するか、操作スイッチ5aの操作状態が手動閉、または自動閉になるまで、窓ガラス101を下降させる処理である。また、自動閉処理は、窓100が全閉するか、操作スイッチ5aの操作状態が手動開、または自動開になるまで、窓ガラス101を上昇させる処理である。但し、制御部2は、窓100を開閉しているときに、昇降させている窓ガラス101による異物の挟み込みが生じた判定したときには、窓ガラス101を逆方向に移動させるエラー処理を行って実行中の処理を中止する。
【0017】
ここで、制御部2における、窓ガラス101による異物の挟み込みが生じたかどうかを判定する機能について説明する。制御部2は、エンコーダ108aの出力信号をパルス検出部4で波形成形したパルス信号の周波数変動に基づいて、挟み込みが生じたかどうかを判定する。エンコーダ108aの出力信号をパルス検出部4で波形成形したパルス信号の周波数は、モータ108の回転速度に比例する。駆動回路3は、制御部2から窓ガラス101の昇降にかかる指示が行われているとき、モータ108に対して単位時間当たりに供給する電力を一定に保っている。このため、モータ108は、負荷変動がなければ、一定速度で回転する。制御部2は、このパルス信号の周波数の変動量が、設定されている閾値(閾値C)を超えたときに、窓ガラス101による異物の挟み込みが生じたと判定する。このパルス信号の周波数の変動量は、その時点における周波数Aと、予め定めた一定時間(X1)前における周波数Bと、の差分(B−A)である。
【0018】
なお、エンコーダ108aの出力信号をパルス検出部4で波形成形したパルス信号の周波数が、予め定めた周波数よりも低くなったときに、窓ガラス101による異物の挟み込みが生じたと判定する構成としてもよい。しかし、モータ108にかかる負荷は、図1に示した機構部の経年変化や、環境温度等によって変化することから、上述した差分を用いて判定する構成のほうが好ましい。
【0019】
また、この実施形態のパワーウィンド装置1は、幼児が操作スイッチ5aをデタラメに操作しているかどうか、すなわち幼児のいたずらの有無、を判定する。また、幼児がいたずらしていると判定すると、窓ガラス101による挟み込みが生じたと判定する感度を引き上げる。ここで、感度を引き上げるとは、より小さな負荷変動で窓ガラス101による異物の挟み込みが生じたと判定されるようにすることである。言い換えれば、窓ガラス101による異物の挟み込みが生じたと判定されやすくすることである。具体的には、上述した閾値Cを、幼児がいたずらしていると判定したときに、通常値から、この通常値よりも小さい値のいたずら値に置き換える。また、この実施形態のパワーウィンド装置1は、予め定めた所定時間、この実施形態では5秒、内に、操作スイッチ5aが所定回数、この実施形態では5回、以上操作されたときに、幼児がいたずらしていると判定する。この所定時間、および所定回数は、通常の操作で殆ど行われることがなく、且つ幼児がいたずらしていることを迅速且つ正確に検出できれば、どのように設定してもよい。このように、幼児がいたずらしていると判定したときに、感度を引き上げることで、窓ガラス101が、いたずらしている幼児の手や、洋服の袖等の異物を挟み込んだとき、速やかに挟み込みが生じたと判定される。したがって、幼児のいたずらに対する安全性を確保することができる。
【0020】
次に、この実施形態のパワーウィンド装置1の動作について説明する。この実施形態のパワーウィンド装置1は、搭載されている車両のイグニッションスイッチがオンされると起動し、オフされると停止する。図3は、パワーウィンド装置の動作を示すフローチャートである。パワーウィンド装置1は、イグニッションスイッチがオンされると、図3に示す処理を開始する。制御部2は、イグニッションスイッチがオンされると、窓ガラス101による異物の挟み込みが生じたかどうかの判定に用いる閾値Cを、通常値に設定する(s1)。次に、制御部2は、操作スイッチ5aの操作回数をカウントするカウンタをリセットする(s2)。s1、およびs2にかかる処理は、制御部2に設けられているメモリ(不図示)の初期設定にかかる処理である。制御部2は、s1、およびs2にかかる処理が完了すると、イグニッションスイッチがオフされるまで、操作スイッチ5aの操作に応じて、窓100を開閉する開閉処理を行う(s3、s4)。
【0021】
図4は、この実施形態のパワーウィンド装置のs3にかかる開閉処理を示すフローチャートである。制御部2は、操作部5から入力されている操作スイッチ5aの操作状態が、中立であるかどうかを判定する(s11)。制御部2は、s11で中立であると判定すると、本処理を終了し、上述したs4でイグニッションスイッチがオフされたかどうかを判定する。イグニッションスイッチがオフされていなければ、再度、この図4に示す開閉処理を実行する。すなわち、イグニッションスイッチがオフされるまで、この図4に示す開閉処理を繰り返し実行する。
【0022】
制御部2は、s11で中立でないと判定すると、すなわち操作スイッチ5aに対して何らかの操作が行われると、操作スイッチ5aの操作回数をカウントするカウンタ(不図示)のカウント値が0であるかどうかを判定する(s12)。パワーウィンド装置1は、s12でカウント値が0であると判定すると、タイマ(不図示)をリセットして、当該タイマによる計時をスタートし(s13)、s14以降の処理を実行する。カウンタ、およびタイマは、制御部2に設けられている。また、制御部2は、s12でカウント値が0でないと判定すると、s13にかかる処理を行うことなく、s14以降の処理を実行する。制御部2は、操作スイッチ5aの操作状態が、手動開、自動開、手動閉、自動閉の何れであるかを判定し(s14〜s16)、ここで判定した操作スイッチ5aの操作状態に応じた窓100の開閉処理に移行する(s17〜s20)。具体的には、スイッチ5aの操作状態が、手動開であれば手動開処理に移行し、自動開であれば自動開処理に移行する。また、手動閉であれば手動閉処理に移行し、自動閉であれば(手動開、自動開、手動閉でなければ)自動閉処理に移行する。
【0023】
以下、手動開処理、自動開処理、手動閉処理、自動閉処理について、この順番に説明する。
【0024】
図5、および図6は、この実施形態のパワーウィンド装置における手動開処理を示すフローチャートである。制御部2は、幼児が操作スイッチ5aをデタラメに操作していないかどうか(幼児がいたずらしていないかどうか)を判定し、幼児がいたずらしている場合に、窓ガラス101による挟み込みが生じたと判定する感度を引き上げる、感度変更処理を実行する(s31)。図7は、この感度変更処理を示すフローチャートである。制御部2は、タイマで計時している時間が、予め定められた所定時間、ここでは5秒、以上であるかどうかを判定する(s51)。制御部2は、5秒以上であれば、当該タイマをリセットし(s52)、操作スイッチ5aの操作回数をカウントしているカウンタのカウント値を1に設定する(s53)。s52、s53では、このタイミングを基準にして、所定時間である5秒間の間に、操作スイッチ5aが操作された回数をカウントするための設定を行っている。一方、制御部2は、s51で5秒未満であると判定すると、操作スイッチ5aの操作回数をカウントしているカウンタのカウント値を1カウントアップする(s54)。s54では、先に基準としたタイミングから5秒経過するまでの期間における、操作スイッチ5aの操作回数のカウントを行っている。制御部2は、s54で1カウントアップした操作スイッチ5aの操作回数が5回未満であるかどうかを判定する(s55)。s55では、操作スイッチ5aが5秒間に5回以上操作されたかどうかを判定している。制御部2は、s55で5回未満であると判定すると、本処理を終了する。一方、制御部2は、5回以上であれば、幼児がいたずらしていると判定し、窓ガラス101による異物の挟み込みが生じたかどうかの判定に用いる閾値Cを、いたずら値に設定し(s56)、本処理を終了する。s56にかかる処理が行われることで、窓ガラス101による異物の挟み込みが発生しているかどうかを判定する感度が引き上げられる。
【0025】
制御部2は、上記s31にかかる感度変更処理を完了すると、窓100が全開しているかどうかを判定する(s32)。制御部2は、窓100が全開していれば、本処理を終了する。一方、制御部2は、窓100が全開していなければ、駆動回路3に対して窓100を開する方向、すなわち窓ガラス101を下降させる方向、にモータ108を駆動することを指示する、窓開指示を行う(s33)。これにより、駆動回路3がモータ108を駆動し、窓ガラス101を下降させる。駆動回路3は、モータ108に対して単位時間当たりに供給する電力を一定に保つ。
【0026】
制御部2は、s33で窓開指示を行うと、窓100が全開するか(s34)、窓ガラス101による異物の挟み込みが生じるか(s35)、タイマの計測時間が5秒以上に達するか(s36)、操作スイッチ5aの操作状態が手動開から他の状態に変化する(s37)、のを待つ。制御部2は、s34で窓100が全開したと判定すると、駆動回路3に対する窓開指示を停止し(s38)、本処理を終了する。駆動回路3は、制御部2からの窓開指示の停止により、モータ108の駆動を停止する。また、制御部2は、s35で窓ガラス101による異物の挟み込みが生じたと判定すると、駆動回路3に対するモータ108の逆転駆動を指示する、逆転指示を行う(s39)。窓100の開時においては、例えば洋服の袖等の異物が下降している窓ガラス101の収納部に引き込まれた場合に、窓ガラス101による異物の挟み込みが生じたと判定される。また、s39では、窓100を閉する方向、すなわち窓ガラス101を上昇させる方向、にモータ108を駆動することを、駆動回路3に対して指示する。駆動回路3がモータ108を窓ガラス101が上昇する方向に駆動する。これにより、窓ガラス101の収納部に引き込まれた洋服の袖等の異物が、この収納部から送り出される。したがって、窓ガラス101に挟み込まれた異物を簡単に取り除くことができる。制御部2は、窓ガラス101が予め定められている一定量上昇するのを待って(s40)、駆動回路3に対する逆転指示を停止し(s41)、本処理を終了する。
【0027】
制御部2は、モータ108の負荷変動を検出し、変動量が設定されている閾値Cを超えていると、窓ガラス101による異物の挟み込みが生じたと判定する。上述したように、制御部2は、エンコーダ108aの出力信号をパルス検出部4で波形成形したパルス信号の周波数の変動量が、設定されている閾値Cを超えたときに、窓ガラス101による異物の挟み込みが生じたと判定する。このときの判定に用いる閾値Cは、この時点で設定されている通常値、またはいたずら値のどちらかである。閾値Cは、イグニッションスイッチのオン時に、通常値に設定される。しかし、イグニッションスイッチのオン後に、上述した感度変更処理において、幼児が操作スイッチ5aをデタラメに操作する、いたずらを行っていると判定していれば、閾値Cは、通常値から、いたずら値に置き換える設定変更がなされている。
【0028】
また、制御部2は、s36でタイマの計測時間が5秒以上に達したと判定すると、操作スイッチ5aの操作回数をカウントしているカウンタをリセットし(s42)、s34に戻る。s42でカウンタがリセットされると、その後、s36にかかる判定が行われる毎に、このs42にかかる処理が行われることになるが、このことで、特に問題が生じることはない。また、s42でカウンタをリセットすると、s36にかかる判定処理が行われないように構成してもよい。すなわち、s42でカウンタをリセットした後は、s34、s35、s37にかかる判定だけを行うように構成してもよい。このようにすれば、s36にかかる処理を無駄に繰り返すことがなく、制御部2の負荷を低減することができる。
【0029】
制御部2は、s37で操作スイッチ5aの操作状態が手動開から他の状態に変化したと判定すると、図6に示す処理を実行する。操作スイッチ5aの変化した操作状態が中立、自動開、手動開、または自動閉のいずれであるかを判定する(s43〜s45)。制御部2は、変化した操作スイッチ5aの操作状態が中立であれば、駆動回路3に対する窓開指示を停止し(s46)、本処理を終了する。s46は、上述したs38と同じ処理である。また、制御部2は、変化した操作スイッチ5aの操作状態が自動開、手動閉、自動閉のいずれかであれば、その操作状態に応じた自動開処理、手動閉処理、自動閉処理のいずれかに移行する(s47〜s49)。
【0030】
次に、この実施形態のパワーウィンド装置における自動開処理について説明する。図8〜図11は、自動開処理を示すフローチャートである。制御部2は、図7に示した感度変更処理を実行する(s61)。制御部2は、窓100が全開しているかどうかを判定し(s62)、窓100が全開していれば本処理を終了する。一方、窓100が全開していなければ、駆動回路3に対して窓100を開する方向、すなわち窓ガラス101を下降させる方向、にモータ108を駆動することを指示する、窓開指示を行う(s63)。これにより、駆動回路3がモータ108を駆動し、窓ガラス101を下降させる。その後、制御部2は、s64〜s72において、上述した手動開処理で説明した、s34〜s42と同様の処理を行う。但し、s67では、操作スイッチ5aの操作状態が、自動開以外の状態に変化したかどうかを判定している。
【0031】
制御部2は、s67で操作スイッチ5aの操作状態が自動開から他の状態に変化したと判定すると、図9に示す処理を実行する。操作スイッチ5aの変化した操作状態が中立、手動開、手動閉、または自動閉のいずれであるかを判定する(s73〜s75)。制御部2は、変化した操作スイッチ5aの操作状態が手動閉、または自動閉のいずれかであれば、その操作状態に応じた手動閉処理、または自動閉処理に移行する(s76、s77)。また、制御部2は、変化した操作スイッチ5aの操作状態が中立であれば、窓100が全開するか(s78)、窓ガラス101による異物の挟み込みが生じるか(s79)、タイマの計測時間が5秒以上に達するか(s80)、操作スイッチ5aの操作状態が中立から他の状態に変化する(s81)、のを待つ。
【0032】
制御部2は、s78で窓100が全開したと判定すると、駆動回路3に対する窓開指示を停止し(s82)、本処理を終了する。また、制御部2は、s79で窓ガラス101による異物の挟み込みを検出すると、s83〜s85において、上述した手動開処理で説明した、s39〜s41にかかる処理を行う。また、s80でタイマの計測時間が5秒以上に達したと判定すると、操作スイッチ5aの操作回数をカウントしているカウンタをリセットし(s86)、s78に戻る。
【0033】
なお、s74で操作スイッチ5aの変化した操作状態が、手動開であると判定した場合については、後述する。
【0034】
制御部2は、s81で操作スイッチ5aの操作状態が中立から他の状態に変化したと判定すると、図10に示す処理を実行する。操作スイッチ5aの変化した操作状態が手動開、自動開、手動閉、または自動閉のいずれであるかを判定する(s87〜s89)。ここでは、操作スイッチ5aの変化した操作状態が手動開、自動開、手動閉でない場合に、自動閉であると判定している。制御部2は、変化した操作スイッチ5aの操作状態が手動閉、または自動閉のいずれかであれば、その操作状態に応じた手動閉処理、自動閉処理に移行する(s90、s91)。
【0035】
また、制御部2は、変化した操作スイッチ5aの操作状態が自動開であれば、図7に示した感度変更処理を実行し(s93)、上述したs64に戻る。s93で感度変更処理を行うので、操作スイッチ5aの操作回数を適正にカウントすることができ、その結果、幼児がいたずらしていないかどうかの判定精度を確保することができる。また、制御部2は、変化した操作スイッチ5aの操作状態が手動開であれば、図7に示した感度変更処理を実行する(s92)。そして、制御部2は、窓100が全開するか(s94)、窓ガラス101による異物の挟み込みが生じるか(s95)、判定時間を計測しているタイマの計測時間が5秒以上に達するか(s96)、操作スイッチ5aの操作状態が手動開から他の状態に変化する(s97)、のを待つ。この場合も、s92で感度変更処理を行うので、操作スイッチ5aを幼児がいたずらしていないかどうかの判定精度を確保することができる。また、上述したs74で変化した操作スイッチ5aの操作状態が手動開であると判定した場合には、s94以降の処理を実行する。制御部2は、操作スイッチ5aの操作状態が、自動開から中立に変化するときに、一時的に手動開になったことを検出することがある。この実施形態では、自動開から手動開に変化したときには、これを操作スイッチ5aの操作回数としてカウントしない。
【0036】
制御部2は、s94で窓100が全開したと判定すると、駆動回路3に対する窓開指示を停止し(s98)、本処理を終了する。また、制御部2は、s95で窓ガラス101による異物の挟み込みを検出すると、s99〜s101において、上述した手動開処理で説明した、s39〜s41にかかる処理を行う。また、s96でタイマの計測時間が5秒以上に達したと判定すると、操作スイッチ5aの操作回数をカウントしているカウンタをリセットし(s102)、s94に戻る。
【0037】
制御部2は、s97で操作スイッチ5aの操作状態が手動開から他の状態に変化したと判定すると、図11に示す処理を実行する。操作スイッチ5aの変化した操作状態が中立、自動開、手動閉、または自動閉のいずれであるかを判定する(s103〜s105)。ここでは、操作スイッチ5aの変化した操作状態が中立、自動開、手動閉でない場合に、自動閉であると判定している。制御部2は、変化した操作スイッチ5aの操作状態が中立であれば、上述したs78に戻る。また、制御部2は、変化した操作スイッチ5aの操作状態が自動開であれば、図7に示した感度変更処理を実行し(s106)、上述したs64に戻る。s106で感度変更処理を行うので、操作スイッチ5aを幼児がいたずらしていないかどうかの判定精度を確保することができる。また、制御部2は、変化した操作スイッチ5aの操作状態が手動閉、または自動閉のいずれかであれば、その操作状態に応じた手動閉処理、自動閉処理に移行する(s107、s108)。
【0038】
次に、この実施形態のパワーウィンド装置における手動閉処理について説明する。図12、および図13は、手動閉処理を示すフローチャートである。制御部2は、図7に示した感度変更処理を実行する(s111)。制御部2は、窓100が全閉しているかどうかを判定する(s112)。制御部2は、窓100が全閉していれば、本処理を終了する。一方、制御部2は、窓100が全閉していなければ、駆動回路3に対して窓100を閉する方向、すなわち窓ガラス101を上昇させる方向、にモータ108を駆動することを指示する、窓閉指示を行う(s113)。これにより、駆動回路3がモータ108を駆動し、窓ガラス101を上昇させる。
【0039】
制御部2は、s113で窓閉指示を行うと、窓100が全閉するか(s114)、窓ガラス101による異物の挟み込みが生じるか(s115)、タイマの計測時間が5秒以上に達するか(s116)、操作スイッチ5aの操作状態が手動閉から他の状態に変化する(s117)、のを待つ。制御部2は、s114で窓100が全閉したと判定すると、駆動回路3に対する窓閉指示を停止し(s118)、本処理を終了する。駆動回路3は、制御部2からの窓閉指示の停止により、モータ108の駆動を停止する。また、制御部2は、s115で窓ガラス101による異物の挟み込みが生じたと判定すると、駆動回路3に対するモータ108の逆転駆動を指示する、逆転指示を行う(s119)。窓100の閉時においては、指や腕等の異物が上昇している窓ガラス101と窓枠とに挟まれた場合に、窓ガラス101による異物の挟み込みが生じたと判定される。また、s119では、窓100を開する方向、すなわち窓ガラス101を下降させる方向、にモータ108を駆動することを、駆動回路3に対して指示する。駆動回路3がモータ108を窓ガラス101が下降する方向に駆動する。制御部2は、窓100が全開するのを待って(s120)、駆動回路3に対する逆転指示を停止し(s121)、本処理を終了する。このように、制御部2は、窓100の閉時に、窓ガラス101による異物の挟み込みが発生したと判定したときには、窓100を全開する。したがって、窓ガラス101と窓枠とに挟まれた指や腕等が挟み込まれたときの安全性を確保することができる。
【0040】
また、制御部2は、s116でタイマの計測時間が5秒以上に達したと判定すると、操作スイッチ5aの操作回数をカウントしているカウンタをリセットし(s122)、s114に戻る。s122でカウンタがリセットされると、その後、s116にかかる判定が行われる毎に、このs122にかかる処理が行われることになるが、このことで、特に問題が生じることはない。また、s122でカウンタをリセットした後については、s116にかかる判定処理が行われないようにしてもよい。すなわち、s122でカウンタをリセットした後は、s114、s115、s117にかかる判定だけを行うようにしてもよい。
【0041】
制御部2は、s117で操作スイッチ5aの操作状態が手動閉から他の状態に変化したと判定すると、図13に示す処理を実行する。操作スイッチ5aの変化した操作状態が中立、自動閉、手動開、または自動開のいずれであるかを判定する(s123〜s125)。制御部2は、変化した操作スイッチ5aの操作状態が中立であれば、駆動回路3に対する窓閉指示を停止し(s126)、本処理を終了する。また、制御部2は、変化した操作スイッチ5aの操作状態が自動閉、手動開、自動開のいずれかであれば、その操作状態に応じた自動閉処理、手動開処理、自動開処理に移行する(s127〜s129)。
【0042】
次に、この実施形態のパワーウィンド装置における自動閉処理について説明する。図14〜図16は、自動閉処理を示すフローチャートである。制御部2は、図7に示した感度変更処理を実行する(s131)。制御部2は、窓100が全閉しているかどうかを判定し(s132)、窓100が全閉していれば本処理を終了する。一方、窓100が全閉していなければ、駆動回路3に対して窓100を閉する方向にモータ108を駆動することを指示する、窓閉指示を行う(s133)。これにより、駆動回路3がモータ108を駆動し、窓ガラス101を下降させる。その後、制御部2は、s134〜s142において、上述した手動閉処理で説明した、s114〜s122と同様の処理を行う。但し、s137では、操作スイッチ5aの操作状態が、自動閉以外の状態に変化したかどうかを判定している。
【0043】
制御部2は、s137で操作スイッチ5aの操作状態が自動閉から他の状態に変化したと判定すると、図15に示す処理を実行する。操作スイッチ5aの変化した操作状態が中立、手動閉、手動開、または自動開のいずれであるかを判定する(s143〜s145)。制御部2は、変化した操作スイッチ5aの操作状態が手動開、または自動開のいずれかであれば、その操作状態に応じた手動開処理、または自動開処理に移行する(s146、s147)。また、制御部2は、変化した操作スイッチ5aの操作状態が中立であれば、窓100が全閉するか(s148)、窓ガラス101による異物の挟み込みが生じるか(s149)、判定時間を計測しているタイマの計測時間が5秒以上に達するか(s150)、操作スイッチ5aの操作状態が中立から他の状態に変化する(s151)、のを待つ。制御部2は、s148で窓100が全閉したと判定すると、駆動回路3に対する窓閉指示を停止し(s152)、本処理を終了する。また、制御部2は、s149で窓ガラス101による異物の挟み込みが発生したと判定すると、s153〜s155において、上述した手動開処理で説明した、s119〜s121にかかる処理を行う。また、s150でタイマの計測時間が5秒以上に達したと判定すると、操作スイッチ5aの操作回数をカウントしているカウンタをリセットし(s156)、s148に戻る。
【0044】
なお、s144で操作スイッチ5aの変化した操作状態が、手動開であると判定した場合については、後述する。
【0045】
制御部2は、s151で操作スイッチ5aの操作状態が中立から他の状態に変化したと判定すると、図16に示す処理を実行する。操作スイッチ5aの変化した操作状態が手動閉、自動閉、手動開、または自動開のいずれであるかを判定する(s157〜s159)。制御部2は、変化した操作スイッチ5aの操作状態が手動開、または自動開のいずれかであれば、その操作状態に応じた手動開処理、自動開処理に移行する(s160、s161)。また、制御部2は、変化した操作スイッチ5aの操作状態が自動閉であれば、図7に示した感度変更処理を実行し(s163)、上述したs134に戻る。s163で感度変更処理を行うので、操作スイッチ5aの操作回数を適正にカウントすることができ、その結果、幼児がいたずらしていないかどうかの判定精度を確保することができる。
【0046】
また、制御部2は、変化した操作スイッチ5aの操作状態が手動閉であれば、図7に示した感度変更処理を実行する(s162)。そして、制御部2は、窓100が全閉するか(s164)、窓ガラス101による異物の挟み込みが生じるか(s165)、判定時間を計測しているタイマの計測時間が5秒以上に達するか(s166)、操作スイッチ5aの操作状態が手動閉から他の状態に変化する(s167)、のを待つ。s162においても、感度変更処理を行うので、幼児がいたずらしていないかどうかの判定精度を確保することができる。また、上述したs134で変化した操作スイッチ5aの操作状態が手動閉であると判定した場合には、s164以降の処理を実行する。制御部2は、操作スイッチ5aの操作状態が、自動閉から中立に変化するときに、一時的に手動閉になったことを検出することがあるので、自動閉から手動閉に変化したときには、これを操作スイッチ5aの操作回数としてカウントしない。
【0047】
制御部2は、s164で窓100が全閉したと判定すると、駆動回路3に対する窓閉指示を停止し(s168)、本処理を終了する。また、制御部2は、s165で窓ガラス101による異物の挟み込みを検出すると、s169〜s171において、上述した手動閉処理で説明した、s119〜s121にかかる処理を行う。また、s166でタイマの計測時間が5秒以上に達したと判定すると、操作スイッチ5aの操作回数をカウントしているカウンタをリセットし(s172)、s164に戻る。
【0048】
制御部2は、s167で操作スイッチ5aの操作状態が手動閉から他の状態に変化したと判定すると、図17に示す処理を実行する。操作スイッチ5aの変化した操作状態が中立、自動閉、手動開、または自動開のいずれであるかを判定する(s173〜s175)。制御部2は、変化した操作スイッチ5aの操作状態が中立であれば、上述したs148に戻る。また、制御部2は、変化した操作スイッチ5aの操作状態が自動閉であれば、図7に示した感度変更処理を実行し(s176)、上述したs134に戻る。s176で感度変更処理を行うので、幼児がいたずらしていないかどうかの判定精度を確保することができる。また、制御部2は、変化した操作スイッチ5aの操作状態が手動開、または自動開のいずれかであれば、その操作状態に応じた手動開処理、または自動開処理に移行する(s177、s178)。
【0049】
このように、この実施形態のパワーウィンド装置1は、上述した手動開処理、自動開処理、手動閉処理、および自動開処理において、モータ108の負荷変動を検出することにより、窓ガラス101による異物の挟み込みが生じたかどうかを判定している。また、所定時間内に、所定回数以上操作スイッチ5aが操作された場合に、幼児がいたずらしていると判定し、窓ガラス101による異物の挟み込みが生じたかどうかの判定に用いる閾値Cを、通常値から、いたずら値に変更することで、窓ガラス101による挟み込みが生じたと判定する感度を引き上げている。したがって、幼児がいたずらしているときには、窓ガラス101による異物の挟み込みが生じたかどうかを引き上げた感度で判定するので、幼児のいたずらに対する安全性を確保することができる。また、幼児がいたずらしているかどうかの判断を、ソフトウェアで行うので、本体のコストアップも抑えられる。さらに、幼児がいたずらしていなければ、通常の感度で窓ガラス101による異物の挟み込みが生じたかどうかを判定することから、窓ガラス101による異物の挟み込みが生じていないときに、異物の挟み込みが生じた判定する誤判定の発生頻度を抑えることができ、利便性を低下させることもない。
【0050】
また、上記実施形態のパワーウィンド装置1では、閾値Cがいたずら値に設定されると、閾値Cを通常値に戻すには、一旦、イグニッションスイッチをオフする構成であったが、以下のように構成してもよい。
(1)操作スイッチ5aが所定時間以上操作されなかったときに、閾値Cをいたずら値から、通常値に戻す。
(2)閾値Cをいたずら値に設定してから、所定時間経過後に、閾値Cをいたずら値から、通常値に戻す。
(3)窓100が全開、または全閉されてから、所定時間経過後に、閾値Cをいたずら値から、通常値に戻す。
また、上記実施形態では、閾値Cを、通常値から、いたずら値に変更することで、感度を引き上げるとしたが、閾値Cを変更するのではなく、以下のように構成してもよい。
【0051】
図18に示すように、モータ108の負荷変動量を算出するときに、通常時には、その時点の負荷と、通常時間(X1)前の負荷との差分とし、幼児がいたずらしていると判定した、いたずら時には、その時点の負荷と、通常時間(X1)よりも長い、いたずら時間(X2)前の負荷との差分とする。図18(A)は、時間軸に対する、エンコーダ108aの出力信号をパルス検出部4で波形成形したパルス信号の周波数を示し、図18(B)は、図18(A)に示す周波数変動に対して検出される負荷の変動量を示す図である。このように構成しても、感度を引き上げ、幼児のいたずらに対する安全性が確保できるとともに、本体のコストアップが抑えられる。また、利便性も確保できる。この場合には、図3に示すs1を、通常時間X1に設定する処理に変更し、図7に示すs56をいたずら時間X2に設定する処理に変更すればよい。
【0052】
次に、別の実施形態について説明する。上記実施形態では、幼児がいたずらしていると判定した場合に、感度を引き上げて、窓ガラス101による異物の挟み込みが発生したかどうかを判定するとしたが、この実施形態では、幼児がいたずらしていると判定した場合に、窓100の開閉動作時における窓ガラス101の移動速度を、通常時よりも低速にするものである。
【0053】
具体的に言うと、制御部2は、駆動回路3に対して窓100の開閉指示を行うときに、単位時間当たりにモータ108に供給する電力量として、第1の電力量、または第2の電力量を指示する構成である。ここで、第1の電力量は、第2の電力量よりも大きいものとする。また、駆動回路3は、制御部2から指示された第1の電力量、または第2の電力量の電力をモータ108に供給し、このモータ108を駆動する。したがって、モータ108の回転速度は、第1の電力量の電力が供給されているときのほうが、高速である。
【0054】
このパワーウィンド装置1は、イグニッションスイッチがオンされたときに、図19に示す処理を実行する。この図19に示す処理は、上記実施形態で説明した図3のs1を、単位時間当たりにモータ108に供給する電力量を第1の電力量に設定する処理(s201)に変更したものである。また、上記実施形態における感度変更処理に換えて、図20に示す移動速度変更処理を実行する。この図20に示す処理は、上記実施形態における、図7のs56を、単位時間当たりにモータ108に供給する電力量を第2の電力量に設定する処理(s202)に変更したものである。
【0055】
これにより、幼児がいたずらしていると判定したときには、窓100の開閉時における、窓ガラス101の移動速度を、通常時よりも低速にすることができる。したがって、幼児のいたずらに対する安全性が確保できるとともに、本体のコストアップが抑えられる。また、利便性も確保できる。
【0056】
なお、この場合には、上述した実施形態で説明した、手動開処理、自動開処理、手動閉処理、および自動閉処理における感度変更処理は、全て図20に示す移動速度変更処理に置き換えられる。
【0057】
また、幼児がいたずらしていると判定したときに、手動閉処理、および自動閉処理については窓ガラス101の移動速度を、通常時よりも低速にし、手動開処理、および自動開処理については窓ガラス101の移動速度を低速にしないようにしてもよい。
【0058】
また、幼児がいたずらしていると判定したときに、制御部2が、手動開処理、自動開処理、手動閉処理、および自動閉処理の全てを禁止する構成としてもよいし、手動閉処理、および自動閉処理については禁止し、手動開処理、および自動開処理については禁止しない構成としてもよい。このようにしても、幼児のいたずらに対する安全性が確保できるとともに、本体のコストアップが抑えられる。また、利便性も確保できる。
【0059】
さらに、幼児がいたずらしていると判定したときに、警告灯を点滅させたり、警告音による報知を行うようにしてもよい。例えば、室内灯を警告灯として点滅させてもよいし、ハザードランプを警告灯として点滅させてもよい。また、警告音としてクラクションをならすようにしてもよい。
【0060】
この場合、図7に示した感度変更処理を、図21に示す処理とすればよい。図21に示す感度変更処理は、s56につづいて、上述した幼児のいたずらを報知するステップ(s203)を追加したものである。これにより、幼児がいたずらしていることを、保護者等に速やかに知らせることができる。すなわち、幼児のいたずらに対して、保護者等に速やかに対応させることができる。したがって上記実施形態と同様に、幼児のいたずらに対する安全性が確保できるとともに、本体のコストアップが抑えられる。また、利便性も確保できる。
【0061】
ここでは、s56につづいて、s203を実行するとしたが、s56に換えて、s203を実行するように構成してもよい。また、図20に示すs202につづいて、s203を実行する構成としてもよいし、s202に換えて、s203を実行する構成としてもよい。
【0062】
なお、上記実施形態では、本願発明をパワーウィンド装置に適用して説明したが、本願発明はサンルーフを開閉する装置等にも適用できる。
【0063】
また、挟み込みが発生したと判定したときに窓ガラス101を反転駆動するのではなく、停止する構成としてもよい。さらに、挟み込みが発生したかどうかの判定や、挟み込みが発生したと判定したときの窓ガラス101の反転駆動や停止については、手動開処理、および自動開処理については禁止し、手動閉処理、および自動閉処理でのみ行うようにしてもよい。
【符号の説明】
【0064】
1−パワーウィンド装置
2−制御部
3−駆動回路
4−パルス検出部
5−操作部
5a−操作スイッチ
108−モータ
108a−エンコーダ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作スイッチの操作に応じた開閉体の移動指示を出力する移動指示出力手段と、
前記移動指示出力手段が出力した前記開閉体の移動指示に基づいて、電動機を駆動し、前記開閉体を移動させる駆動手段と、
所定時間内に、前記操作スイッチが所定回数以上繰り返し操作されたときに、前記移動指示出力手段が出力する前記操作スイッチの操作に応じた開閉体の移動指示を制限する駆動制限手段と、を備えた開閉体制御装置。
【請求項2】
前記駆動制限手段は、所定時間内に、前記操作スイッチが所定回数以上繰り返し操作されたときに、前記操作スイッチの操作に応じた開閉体の移動速度を通常よりも低速にする移動指示を行う、請求項1に記載の開閉体制御装置。
【請求項3】
所定時間内に、前記操作スイッチが所定回数以上繰り返し操作されたときに、その旨を報知する報知手段を備えた請求項1、または2に記載の開閉体制御装置。
【請求項1】
操作スイッチの操作に応じた開閉体の移動指示を出力する移動指示出力手段と、
前記移動指示出力手段が出力した前記開閉体の移動指示に基づいて、電動機を駆動し、前記開閉体を移動させる駆動手段と、
所定時間内に、前記操作スイッチが所定回数以上繰り返し操作されたときに、前記移動指示出力手段が出力する前記操作スイッチの操作に応じた開閉体の移動指示を制限する駆動制限手段と、を備えた開閉体制御装置。
【請求項2】
前記駆動制限手段は、所定時間内に、前記操作スイッチが所定回数以上繰り返し操作されたときに、前記操作スイッチの操作に応じた開閉体の移動速度を通常よりも低速にする移動指示を行う、請求項1に記載の開閉体制御装置。
【請求項3】
所定時間内に、前記操作スイッチが所定回数以上繰り返し操作されたときに、その旨を報知する報知手段を備えた請求項1、または2に記載の開閉体制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2012−36724(P2012−36724A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−220124(P2011−220124)
【出願日】平成23年10月4日(2011.10.4)
【分割の表示】特願2006−297238(P2006−297238)の分割
【原出願日】平成18年11月1日(2006.11.1)
【出願人】(510123839)オムロンオートモーティブエレクトロニクス株式会社 (110)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月4日(2011.10.4)
【分割の表示】特願2006−297238(P2006−297238)の分割
【原出願日】平成18年11月1日(2006.11.1)
【出願人】(510123839)オムロンオートモーティブエレクトロニクス株式会社 (110)
【Fターム(参考)】
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