説明

集積回路及びその製造方法

【課題】配線層の上に層間絶縁膜を堆積した集積回路において熱処理を施すと、配線間の狭い間隙部と、これにつながる広い開口部との接続部分にて、層間絶縁膜の破裂が起こり得る。
【解決手段】間隙部10と開口部12との接続部分に位置する配線4bの角部を面取りして、間隙部10の端部62を開口部12へ向けて末広がり形状とする。このようにパターニングした配線層の上に層間絶縁膜を堆積する。層間絶縁膜は間隙部10の狭い溝に起因して当該位置に空洞を形成し得る。端部62を設けることで、層間絶縁膜の堆積に関して、間隙部10と開口部12との接続部分での不連続性が緩和され、間隙部10の空洞の端が層間絶縁膜によって封止されにくくなり、熱処理での空洞の気圧上昇に伴う層間絶縁膜の破裂が抑制される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体基板等の基体表面を用いて形成される集積回路、及びその製造方法に関し、特に、配線層とその上に積層される層間絶縁膜との構造に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体基板上に回路を集積する半導体装置(集積回路)においては、半導体基板に形成される不純物拡散領域や当該基板上に積層されるポリシリコン等によってトランジスタ、抵抗、キャパシタ等の回路素子が形成される。さらにその上に絶縁層を介して配線層を構成する金属膜が形成され、この金属膜をパターニングして、回路素子間等を接続する配線などが形成される。
【0003】
配線パターンを設計する際には、例えば、集積度を高めるという目的から、複数の配線を、間隔を詰めて配置することが行われる。図6は、互いに近接した部分を有する複数配線の従来のパターン例を示す平面図である。図6に示す2本の配線2は、それぞれ途中で直角に延在方向を変える。これら配線2の水平部分2hは互いに近接して平行に配置される。一方、各配線2の垂直部2vは例えば、各配線2の接続先の位置の違いなどに応じて、互いの間に大きなスペースを置いて配置されている。配線層は、例えば、アルミニウム(Al)を蒸着して形成される。
【0004】
図7は、互いに近接した部分を有する複数配線の従来のパターンの他の例を示す平面図である。図7に示す2本の配線4(4a,4b)は互いに近接して平行に配置される。一方の配線4aの途中にて、他方の配線4bはコンタクト6を介して半導体基板の拡散層や下層の配線(図示せず)に接続されて終端している。
【0005】
配線層のパターニングが完了すると、配線層を覆う層間絶縁膜又はパッシベーション膜(本願ではこれらをまとめて層間絶縁膜を称する。)が形成される。例えば、層間絶縁膜は、TEOS(Tetra-ethoxy-silane)、BPSG(Borophosphosilicate Glass)、シリコン窒化膜(SiN膜)といった材料をCVD(Chemical Vapor Deposition)法等により堆積させて形成される。また、層間絶縁膜の堆積後、例えば、リフローによる平坦化などの目的で、熱処理が施され得る。
【0006】
なお、層間絶縁膜の上にさらに別の配線層を積層して配線を形成し、多層配線構造を形成することができる。
【特許文献1】特開2001−210808号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図6,図7に点線の円で囲む部分8は、2本の配線2又は配線4の互いに近接した部分が終わる部分である。図8は、例えば、図7における部分8を拡大した平面図である。配線4a,4bが近接配置される部分には、配線層がパターニングにより除去された狭い溝である間隙部10が設けられる。一方、近接配置された2つの配線の一方が図6に示すように向きを変えたり、図7に示すように終端する部分に隣接して、配線層が広く除去された開口部12が形成され得る。
【0008】
従来、層間絶縁膜の堆積後、熱処理を施すと、間隙部10と開口部12との接続部分にて層間絶縁膜が破裂し、平坦性が損なわれる等の問題があった。
【0009】
ちなみに、この現象は、図9に示すように、層間絶縁膜14が間隙部10の位置での凹凸に応じて形成し得る空洞16に起因する。なお、図9は、図8の線A−A’に沿った層間絶縁膜及び配線層の垂直断面図である。このような空洞16が生じる理由として、間隙部10での凹凸に応じて層間絶縁膜14にも凹凸が生じるとことに加えて、層間絶縁膜14は、狭い間隙部10の内部には堆積されにくい一方で、間隙部の入口近くでは比較的に速く成長し得ることが考えられる。一方、開口部12では、層間絶縁膜14は、開口部12の縁に生じる段差を覆い、開口部12に面する間隙部10の端部に現れる小さな空洞16を封止し得る。上述の問題に係る現象は、熱処理での空洞16内の気圧上昇により当該端部が破壊されるものであると考えられる。空洞16の任意の部分ではなく端部にて破壊が生じることに関しては、当該端部を閉止する層間絶縁膜14の厚さや、空洞16の形状等に起因する強度が関係しているものと推察する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る集積回路は、基体の上に積層され、狭い溝を形成する間隙部及び当該間隙部につながる広い開口部が形成されたパターンを有する配線層と、前記配線層を覆って堆積された層間絶縁膜と、を有し、前記間隙部と前記開口部との接続部分に生じる前記配線層の前記パターンの角部は面取りされて、前記間隙部の端部が前記開口部へ向けて末広がりの形状に形成される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、間隙部10と開口部12との接続部分にて層間絶縁膜の破裂が生じることが抑制される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態(以下実施形態という)について、図面に基づいて説明する。本実施形態は、半導体基板を基体とする集積回路であり、図1は、実施形態に係る集積回路30の模式的な垂直断面図である。半導体基板32にイオン注入等により拡散層(図示せず)が形成された後、半導体基板32表面にゲート酸化膜やLOCOS(局所酸化膜)等のシリコン酸化膜34が形成される。シリコン酸化膜34の表面にポリシリコン層からなる電極36が形成され、その上に層間絶縁膜38が積層される。
【0013】
さらに、層間絶縁膜38の上に、金属配線層40、層間絶縁膜42、金属配線層44、層間絶縁膜46、金属配線層48、パッシベーション膜50が順次積層される。金属配線層40,44,48はそれぞれAl膜を蒸着して形成され、フォトリソグラフィ技術を用いて配線等の所望のパターンが各金属配線層に形成される。層間絶縁膜42,46は、TEOS、BPSGなどをCVD法により堆積させて形成される。パッシベーション膜50は、SiN膜やポリイミドといった材料をCVD法やスピンコートにより積層させて形成される。
【0014】
図2,図3は、例えば、金属配線層40を用いて形成される、互いに近接した部分を有する複数配線のパターン例を模式的に示す平面図である。ここでは上述の従来の構成との対比のため、図2,図3には、それぞれ図6,図7に示す従来の配線のレイアウトに本発明を適用したパターンを示しており、対比の便宜と説明の簡素化のため、図6,図7と同様の構成には同じ符号を付している。
【0015】
図2,図3に示す配線パターンが図6,図7のパターンと異なる点は、点線の円で囲む部分8内に存在する。当該部分8は上述したように、2本の配線2又は配線4の互いに近接した部分が終わる部分である。この部分には、配線層のパターンの角部52が存在するが、本発明では、当該角部52が面取りされる。
【0016】
図4は、例えば、図3における部分8を拡大した平面図である。間隙部10と開口部12との接続部分に生じる配線4bの角部が面取りされ、配線4bには、配線4aに対向する側面60hと、配線4bの開口部12の境界となる側面60vとの間に、これら側面60h,60vそれぞれに対して斜めに交差する側面60sが設けられる。
【0017】
この側面60sにより、間隙部10には、開口部12に向けて末広がりの形状の端部62が形成される。間隙部10の端部62の広がり角度は、側面60hに対する側面60sの折れ曲がり角度(配線4bの平面形状における外角)θで与えられる。例えば、θは45°に設定することができる。
【0018】
図5は、図4の線A−A’,B−B’,C−C’に沿った層間絶縁膜42,38及び金属配線層40の垂直断面図であり、図5(a)は配線4a,4bが平行に対向する位置(線A−A’)での断面、図5(b)は端部62の奥の位置(線B−B’)での断面、図5(c)は端部62の開口部12寄りの位置(線C−C’)での断面をそれぞれ表している。端部62を設けたことで、間隙部10として配線4a,4bの間に形成される溝の幅wは、開口部12に近づくほど大きくなる。溝の幅wが大きくなるにつれて、間隙部10に応じて形成される層間絶縁膜42内の空洞64は幅が拡大し、さらに溝の幅wが大きくなると、層間絶縁膜42が空洞64の上部を閉じることができなくなり、図5(c)に示すように、層間絶縁膜42は間隙部10内に窪み66(凹部)を形成する。この窪みは開口部12内に形成される層間絶縁膜42の凹部につながる。
【0019】
このように、間隙部10に末広がりの端部62を設けることで、間隙部10と開口部12との不連続性が緩和され、空洞64が封止されにくくなる。その結果、層間絶縁膜42の積層後の熱処理にて、空洞64の破裂が生じにくくなり、層間絶縁膜42の平坦性が向上する。
【0020】
間隙部10に層間絶縁膜42の空洞64が形成されるか否かは、上述の図5に示したように、間隙部10のアスペクト比(溝の深さd/溝の幅w)の影響を受ける。また、層間絶縁膜42の膜厚tも影響を及ぼす。間隙部10の上部を塞ぐ層間絶縁膜42の膜厚tの下限値をtminとすると、このtminより厚い層間絶縁膜42は間隙部10の上部を塞ぎ、間隙部10をその下に埋没させると共に空洞64を形成する可能性がある。なお、tminは概ね幅wの半分程度であると推察される。
【0021】
集積回路の集積度を上げる観点から、幅wは微細に設定される場合が多いので、アスペクト比が高くなる場合が多いと考えられる。アスペクト比(d/w)が高いほど、tmin/dは小さくなる。
【0022】
開口部12に堆積する層間絶縁膜42の膜厚は基本的にtとなるのに対し、間隙部10の底面からの空洞64の高さは、膜厚がtminを越えた以降、基本的に変化しない。そのため、tが大きくなるにしたがって、空洞64の底部と開口部12との間の層間絶縁膜42の高低差が大きくなる。この高低差は、層間絶縁膜42が空洞64を封止し易くなるように作用し得る。この作用は、端部62を長くすると共に、端部62の広がり角度(図4に示す例では角度θ)を小さくして、端部62の両端間での膜厚の勾配を低下させることで緩和することが可能である。
【0023】
面取りは、側面60sのように直線的なものには限られず、例えば、平面図上、円弧のような曲線となるような面取りとしてもよい。
【0024】
上述の実施形態では、第1層の金属配線層40とそれに堆積される層間絶縁膜42とについての本発明の適用例を説明したが、他の金属配線層に対しても本発明を適用することができる。具体的には、金属配線層44に対し適用することで、層間絶縁膜46の破裂を抑制することができ、金属配線層48に対し適用すれば、パッシベーション膜50としてCVD法で堆積されるSiN膜の破裂を抑制できる。また、電極36を形成するポリシリコン層のパターンに本発明を適用して、層間絶縁膜38の破裂を抑制できる。本発明は、基体がなんであるかには限定されずに適用され、例えば、基体はサファイア基板などでもよい。さらに、本発明は、微細な間隙部と広い開口部との接続部を有する層の上にCVD法等で他の層を堆積する構造に広く適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態に係る集積回路の模式的な垂直断面図である。
【図2】互いに近接配置される複数配線のパターンの一例を模式的に示す平面図である。
【図3】互いに近接配置される複数配線のパターンの他の例を模式的に示す平面図である。
【図4】図3に示す配線パターンの一部を拡大した平面図である。
【図5】図4の線A−A’,B−B’,C−C’に沿った層間絶縁膜及び金属配線層の垂直断面図である。
【図6】互いに近接配置される複数配線の従来のパターンの一例を示す平面図である。
【図7】互いに近接配置される複数配線の従来のパターンの他の例を示す平面図である。
【図8】図6又は図7に示す配線パターンの一部を拡大した平面図である。
【図9】図8の線A−A’に沿った層間絶縁膜及び配線層の垂直断面図である。
【符号の説明】
【0026】
2,4 配線、10 間隙部、12 開口部、30 集積回路、32 半導体基板、34 シリコン酸化膜、36 電極、38,42,46 層間絶縁膜、40,44,48 金属配線層、50 パッシベーション膜、62 端部、64 空洞。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体の上に積層され、狭い溝を形成する間隙部及び当該間隙部につながる広い開口部が形成されたパターンを有する配線層と、
前記配線層を覆って堆積された層間絶縁膜と、を有し、
前記間隙部と前記開口部との接続部分に生じる前記配線層の前記パターンの角部は面取りされて、前記間隙部の端部が前記開口部へ向けて末広がりの形状に形成されること、
を特徴とする集積回路。
【請求項2】
請求項1に記載の集積回路において、
前記層間絶縁膜は、その下に前記端部以外の前記間隙部を埋没させる膜厚に堆積されること、を特徴とする集積回路。
【請求項3】
請求項2に記載の集積回路において、
前記間隙部の前記端部の前記開口部側は、前記層間絶縁膜が前記間隙部内に窪みを形成して堆積される広さまで拡大されていること、を特徴とする集積回路。
【請求項4】
基体の上に積層され、狭い溝を形成する間隙部及び当該間隙部につながる広い開口部が形成されたパターンを有する配線層と、前記配線層を覆って堆積された層間絶縁膜と、を有する集積回路を製造する方法において、
前記基体上に積層された前記配線層をパターニングして、前記間隙部と前記開口部との接続部分に生じる前記配線層の前記パターンの角部が面取りされ、前記間隙部の端部が前記開口部へ向けて末広がりの形状となる前記パターンを形成する配線層パターニング工程を有すること、
を特徴とする集積回路の製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の集積回路の製造方法において、
パターニングされた前記配線層に、前記端部以外の前記間隙部を埋没させる膜厚の前記層間絶縁膜を堆積する層間絶縁膜堆積工程を有すること、を特徴とする集積回路の製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載の集積回路の製造方法において、
前記間隙部の前記端部の前記開口部側は、前記層間絶縁膜が前記間隙部内に窪みを形成して堆積される広さまで拡大されていること、を特徴とする集積回路の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−212262(P2009−212262A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−52894(P2008−52894)
【出願日】平成20年3月4日(2008.3.4)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(506227884)三洋半導体株式会社 (1,155)
【Fターム(参考)】