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難燃延伸ポリエステルフィルム
説明

難燃延伸ポリエステルフィルム

【課題】 難燃性及び高温下での寸法安定性に優れる難燃延伸ポリエステルフィルムを提供する。
【解決手段】 ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート樹脂に、下記一般式(I)
【化1】


(式中、R1及びR2は炭素原子数1〜5の低級アルキル基、R3及びR4は水素原子又は炭素原子数1〜5の低級アルキル基、Yは−CH2−、−C(CH32−、−S−、−SO2−、−O−、−CO−若しくは−N=N−からなる群より選ばれる少なくとも1種の基、kは0又は1、mは0〜4の整数、nは1〜4の整数であり、R1〜R4はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。)
で表される有機リン化合物を配合してなる層を含む、少なくとも1層からなる難燃延伸ポリエステルフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難燃性を有する延伸ポリエステルフィルムに関するものであり、さらに詳しくは、難燃性、および高温下での寸法安定性に優れた、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート樹脂からなる延伸ポリエステルフィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリエステルフィルム、特にポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートの二軸延伸フィルムは、優れた機械的性質、耐熱性、耐薬品性を有するため、磁気テープ、強磁性薄膜テープ、写真フィルム、包装用フィルム、電子部品用フィルム、電気絶縁フィルム、金属ラミネート用フィルムおよび保護用フィルム等の素材として広く用いられている。
【0003】
近年、製造物責任法の施行に伴い、火災に対する安全性を確保するため、樹脂の難燃化が強く要望されている。
樹脂の難燃化方法としては、難燃性の元素を含有する、いわゆる難燃剤を配合する方法が一般的である。難燃剤としては、有機ハロゲン化合物、ハロゲン含有有機リン化合物、有機リン化合物、赤リンに代表される無機リン化合物、水酸化マグネシウムに代表される無機化合物等が挙げられる。
【0004】
有機ハロゲン化合物、ハロゲン含有有機リン化合物等のハロゲン系難燃剤は、難燃効果は高いものの、成形・加工時にハロゲンが遊離し、腐食性のハロゲン化水素ガスを発生して、成形・加工機器を腐食させ、また作業環境を悪化させる可能性が指摘されている。また、前記難燃剤は、火災などの燃焼に際しても、人体に有害なハロゲン化水素等のガスを発生するという報告もある。そのため、近年、ハロゲン系難燃剤に替わり、ハロゲンを含まない難燃剤を用いることが強く要望されている。
一方、前記無機リン化合物、無機化合物等の無機系難燃剤は、ハロゲン系難燃剤のような毒性はないものの、樹脂との相溶性に乏しく、また樹脂の透明性を著しく損なうことがある。
【0005】
また、有機リン化合物の難燃剤は、例えば、トリフェニルホスフェートに代表されるモノホスフェートは、揮発性が高く、ポリエステル樹脂に配合して成形・加工した場合、作業時の発煙や金型汚染等が生じる。特公昭51−19858号公報には、ポリエチレンテレフタレートに縮合リン酸エステルが配合された樹脂組成物が開示されている。しかしながら同公報が実施例で開示する縮合リン酸エステルは、同公報のリン化合物の一般式におけるR、Rがフェニル基であり、モノホスフェートに比べて揮発性が改善されるものの、ポリエチレンナフタレートのような高融点のポリエステル樹脂に配合して成形・加工した場合、樹脂に変色が生じ、十分な耐熱性を有していなかった。更に、特開昭52−102255号公報に記載の縮合リン酸エステルは、前記縮合リン酸エステルに比べて揮発牲、耐熱性が改善されるが、ポリエステル樹脂に配合して成形加工した場合、縮合リン酸エステル自体が褐色に変色し、樹脂への着色が避けられなかった。
【0006】
一方、特開平10−204271号公報には、透明性を有する成形材料用ポリエステル樹脂に特定構造を有する有機リン化合物が配合されたポリエステル組成物が開示されている。しかしながら、該公報は成形材料用に適した透明性を有するポリエステル樹脂の難燃化を目的としたものであり、具体的に例示されているポリエステル樹脂は、1,4−シクロヘキサンジメタノールで変性されたポリエチレンテレフタレート、イソフタル酸で変性されたポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートとポリアリレートのブレンドにとどまるものであった。
【0007】
さらに、特開2001−200077号公報、特開2001−253959号公報および特表2003−527470号公報には、ポリエステル樹脂または結晶性熱可塑性樹脂としてポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートおよびポリエチレンナフタレートが開示されており、該樹脂に有機リン化合物が配合された透明性および難燃性を有するフィルムが開示されている。しかしながら、これら公報は実際にはポリエチレンテレフタレートに関するものであり、また有機リン化合物もカルボキシホスフィン酸およびその無水物、ジメチルメチルホスフェートにとどまるものであった。
【0008】
ところで、携帯電話などの電子機器の技術進歩に伴って、フレキシブルプリント回路基板(以下、FPCと略記することがある)の需要が急激に伸びている。従来、FPC用途には銅箔張り合わせのポリイミドフィルムが使用されてきた。しかしながら、ポリイミドは、その素材の性質上フィルム化や薄膜化が困難であり、また素材自体も非常に高価で、さらに比較的吸水しやすく、吸水による寸法変化や形状変化が起こるなど、FPCなどの電子材料には好ましくない特性も有する。また、ポリイミド樹脂の性質上、黄色や褐色と言った着色を有している。
【0009】
また、ポリイミド代替として一部ポリエチレンテレフタレートフィルムがFPC用途に用いられているが耐熱性が劣り、高温での寸法安定性が不十分であることから、耐熱性を有するプラスチックフィルムの中では比較的安価なポリエチレンナフタレートフィルムが注目されてきている。
【0010】
近年、FPCが搭載される電子機器に用いられる樹脂についても、上述の理由でハロゲンを有しない難燃化が求めらつつあり、FPC基板として難燃性を有しながら、かつ高い耐熱寸法安定性を兼ね備えるフィルムが求められているのが現状である。
【0011】
【特許文献1】特公昭51−19858号公報
【特許文献2】特開昭52−102255号公報
【特許文献3】特開平10−204271号公報
【特許文献4】特開2001−200077号公報
【特許文献5】特開2001−253959号公報
【特許文献6】特表2003−527470号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、かかる従来技術の課題を解消し、難燃性に優れた延伸ポリエステルフィルムを提供することにある。また、本発明の他の目的は、難燃性および高温下での寸法安定性に優れ、さらに金属箔と高い接着性を有するフレキシブルプリント回路基板に好適な延伸ポリエステルフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、耐熱寸法安定性の高いポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートに特定構造の有機リン化合物を配合する層を含む、少なくとも1層からなる延伸ポリエステルフィルムにより、耐熱寸法安定性を阻害することなく難燃性を兼ね備えることができ、さらに金属箔と高い接着性を付与できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち本発明によれば、本発明の目的は、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート樹脂に、下記一般式(I)
【化1】

(式中、R1及びR2は炭素原子数1〜5の低級アルキル基、R3及びR4は水素原子又は炭素原子数1〜5の低級アルキル基、Yは−CH2−、−C(CH32−、−S−、−SO2−、−O−、−CO−若しくは−N=N−からなる群より選ばれる少なくとも1種の基、kは0又は1、mは0〜4の整数、nは1〜4の整数であり、R1〜R4はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。)
で表される有機リン化合物を配合してなる層を含む、少なくとも1層からなる難燃延伸ポリエステルフィルムによって達成される。
【0015】
また、本発明の難燃延伸ポリエステルフィルムは、その好ましい態様として、上述の有機リン化合物を配合してなる層において、有機リン化合物が該層の全重量に対し0.1〜50重量%の割合で配合されること、上述の有機リン化合物を配合してなる層の少なくとも一方の面にさらにポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート樹脂を主たる成分としてなる層を有すること、延伸ポリエステルフィルムの200℃×10分における熱収縮率がフィルムの長手方向および幅方向のいずれも−3〜3%であること、の少なくともいずれかを具備するものを好ましい態様として包含する。
【0016】
また、本発明は、有機リン化合物が、下記式(II)、下記式(III)および下記式(IV)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種であることも好ましい態様として包含する。
【0017】
【化2】

【0018】
【化3】

【0019】
【化4】

【0020】
さらに本発明によれば、本発明の難燃延伸ポリエステルフィルムは、フレキシブルプリント回路基板に用いられること、本発明の難燃延伸ポリエステルフィルムの有機リン化合物を配合してなる層の一方の面に金属箔が積層されているフレキシブルプリント回路基板を好ましい態様として包含するものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート樹脂に特定構造を有する有機リン化合物が配合された層を含む、少なくとも1層からなる難燃延伸ポリエステルフィルムによって、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート樹脂の有する耐熱寸法安定性が阻害されることなく難燃性を備えることから、フレキシブルプリント回路基板に好適な難燃延伸ポリエステルフィルムを提供することができ、その工業的価値は極めて高い。
【0022】
さらに本発明によれば、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート樹脂に特定構造を有する有機リン化合物が配合された層を含む少なくとも1層からなる難燃延伸ポリエステルフィルムの、有機リン化合物を配合してなる層の一方の面に金属箔が積層されているフレキシブルプリント回路基板によって、耐熱寸法安定性、難燃性に加えて金属箔と高い接着性を有するフレキシブルプリント回路基板を提供することができ、その工業的価値は極めて高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明を詳しく説明する。
<ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート>
本発明におけるポリエステルフィルムには、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートが用いられる。かかるポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートの主たるジカルボン酸成分は2,6−ナフタレンジカルボン酸、主たるグリコール成分はエチレングリコールである。ここで「主たる」とは、本発明のポリエステルフィルムを構成するポリマーにおいて、全繰返し単位の80mol%以上、好ましくは85mol%以上、特に好ましくは90mol%以上を意味する。
【0024】
本発明におけるポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートは、単独でも他のポリエステルとの共重合体、2種以上のポリエステル混合体のいずれであってもかまわない。共重合体または混合体における他の成分は、繰返し構造単位の全モル数を基準として20mol%以下が好ましく、より好ましくは15mol%以下、特に好ましくは10mol%以下である。共重合体である場合、共重合体を構成する共重合成分として、分子内に2つのエステル形成性官能基を有する化合物を用いることができ、例えば、蓚酸、アジピン酸、フタル酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、フェニルインダンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、テトラリンジカルボン酸、デカリンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸等の如きジカルボン酸、p−オキシ安息香酸、p−オキシエトキシ安息香酸の如きオキシカルボン酸、或いはトリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、シクロヘキサンメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ビスフェノールスルホンのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ジエチレングリコール、ポリエチレンオキシドグリコールの如き2価アルコールを好ましく用いることができる。
【0025】
これらの化合物は1種のみ用いてもよく、2種以上を用いることができる。またこれらの中で好ましくは酸成分としては、イソフタル酸、テレフタル酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、p−オキシ安息香酸であり、グリコール成分としてはトリメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ビスフェノールスルホンのエチレンオキサイド付加物である。
【0026】
また、本発明におけるポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートは、例えば安息香酸、メトキシポリアルキレングリコールなどの一官能性化合物によって末端の水酸基および/またはカルボキシル基の一部または全部を封鎖したものであってよく、また極く少量の例えばグリセリン、ペンタエリスリトールの如き三官能以上のエステル形成性化合物で実質的に線状のポリマーが得られる範囲内で共重合したものであってもよい。
【0027】
本発明におけるポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートは、従来公知の方法、例えばジカルボン酸とグリコールの反応で直接低重合度ポリエステルを得る方法や、ジカルボン酸の低級アルキルエステルとグリコールとを従来公知のエステル交換触媒である、例えばナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、ストロンチウム、チタン、ジルコニウム、マンガン、コバルトを含む化合物の一種または二種以上を用いて反応させた後、重合触媒の存在下で重合反応を行う方法で得ることができる。重合触媒としては、三酸化アンチモン、五酸化アンチモンのようなアンチモン化合物、二酸化ゲルマニウムで代表されるようなゲルマニウム化合物、テトラエチルチタネート、テトラプロピルチタネート、テトラフェニルチタネートまたはこれらの部分加水分解物、蓚酸チタニルアンモニウム、蓚酸チタニルカリウム、チタントリスアセチルアセトネートのようなチタン化合物を用いることができる。
【0028】
エステル交換反応を経由して重合を行う場合は、重合反応前にエステル交換触媒を失活させる目的でトリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリ−n−ブチルホスフェート、正リン酸等のリン化合物が通常添加される。リン化合物の好ましい含有量は、リン元素としてのポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート中の含有量が20〜100重量ppmである。リン化合物の含有量が20ppm未満では、エステル交換反応触媒が完全に失活せず熱安定性が悪く、機械強度が低下することがある。一方、リン化合物の含有量が100ppmを超えると熱安定性が悪く、機械強度が低下する場合がある。なお、これらリン化合物は、エステル交換触媒を失活させる目的でポリエチレン2,6−ナフタレンジカルボキシレートの重縮合工程で使用されるものであり、その量も極めて少量であって、難燃性を付与する目的で配合されるものではない。
【0029】
本発明におけるポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートの固有粘度は、o−クロロフェノール中、35℃において、0.40dl/g以上であることが好ましく、0.40〜0.90dl/gであることが更に好ましい。固有粘度が0.40dl/g未満では工程切断が多発することがある。また固有粘度が0.9dl/gより高いと溶融粘度が高いため溶融押出が困難であるうえ、重合時間が長く不経済である。
【0030】
<有機リン化合物>
本発明において用いられる有機リン化合物は、下記一般式(I)で表される化合物である。
【0031】
【化5】

(式中、R1及びR2は炭素原子数1〜5の低級アルキル基、R3及びR4は水素原子又は炭素原子数1〜5の低級アルキル基、Yは−CH2−、−C(CH32−、−S−、−SO2−、−O−、−CO−若しくは−N=N−からなる群より選ばれる少なくとも1種の基、kは0又は1、mは0〜4の整数、nは1〜4の整数であり、R1〜R4はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。)
【0032】
上式中、置換基R1、R2、R3及びR4の炭素原子数1〜5の低級アルキル基としては、メチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、n−ブチル、iso−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、iso−ペンチル、tert−ペンチル、neo−ペンチルが例示され、中でもメチルが好ましい。
【0033】
一般式(I)で表される有機リン化合物は、公知の方法で製造することができる。例えば、特開平5−1079号に開示された方法が挙げられる。すなわち、本発明において用いられる有機リン化合物は、オルト位に立体障害基を有する芳香族モノヒドロキシ化合物とオキシハロゲン化リンの反応によりジアリールホスホロハリデートを得、これに芳香族ジヒドロキシ化合物を反応させることで得られる。かかる芳香族モノヒドロキシ化合物として、例えば2,6−キシレノール、2,4,6−トリメチルフェノールが挙げられ、芳香族ジヒドロキシ化合物としてレゾルシン、ハイドロキノン、ピロカテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールF、4,4’−ビフェノール、2,2’,6,6’−テトラメチル−4,4’−ビフェノールが例示される。
【0034】
上記方法により得られる有機リン化合物の中でも、下記式(II)、下記式(III)及び下記式(IV)で表される化合物が特に好ましく例示される。
【0035】
【化6】

【0036】
【化7】

【0037】
【化8】

【0038】
しかしながら、一般式(I)で表される有機リン化合物を得る方法は、上記方法に限定されない。また、本発明における有機リン化合物は、単独又は2種以上を併用して用いてもよい。
本発明における有機リン化合物の配合量は、発明の効果が十分に発揮される範囲であれば、特に限定されるものではない。好ましくは本発明の有機リン化合物を配合してなる層の全重量に対して0.1〜50重量%、より好ましくは0.5〜40重量%、特に好ましくは0.5〜30重量%である。有機リン化合物の配合量が下限に満たない場合、十分な難燃効果が得られないことがある。また、有機リン化合物の配合量がより好ましい下限に満たない場合、難燃効果が得られる一方で金属箔に対する十分な接着性が得られないことがある。一方、有機リン化合物の配合量が上限を超える場合、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート本来の耐熱性を維持できなくなることがある。
【0039】
本発明の有機リン化合物は、公知の方法で配合することができる。例えば、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート樹脂の重縮合反応終了後に反応釜中へ添加する方法、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート樹脂とともに溶融混練する方法、予めポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート樹脂に多量の有機リン化合物を含有させ、マスターペレットの形で配合する方法等が挙げられるが、これらの方法に限定されない。
【0040】
<他添加剤>
本発明の難燃延伸ポリステルフィルムには、フィルムの取り扱い性を向上させるため、発明の効果を損なわない範囲で不活性粒子などが添加されていても良い。不活性粒子としては、たとえば、炭酸カルシウム、シリカ、タルク、クレー、などの無機粒子、シリコーン、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂などからなる有機粒子、硫酸バリウム、酸化チタン等の顔料が挙げられ、単独あるいは2種以上添加しても良い。
【0041】
これら不活性粒子をポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートへ添加含有させる前に、精製プロセスを用いて、粒径調整、粗大粒子除去を行うことが好ましい。生成プロセスの工業的手段としては、粉砕手段で例えばジェットミル、ボールミル等が挙げられ、また分級手段では例えば乾式もしくは湿式遠心分離機等が挙げられる。なお、これらの手段は2種以上を組み合わせ、段階的に精製しても良いのはもちろんである。
【0042】
また、含有させる方法としては各種の方法を用いることが出来る。その代表的な方法として、下記のような方法を挙げることが出来る。
(ア)ポリエステル合成時のエステル交換反応もしくはエステル化反応終了前に添加、もしくは重縮合反応開始前に添加する方法。
(イ)ポリエステルに添加し、溶融混練する方法。
(ウ)上記(ア)、(イ)の方法において酸化チタンや他の滑剤を多量添加したマスターペレットを製造し、これら添加剤を含有しないポリエステルと混練して、所定量の添加物を含有させる方法。
【0043】
なお、前記(ア)のポリエステル合成時に添加する方法を用いる場合には、酸化チタンや他の滑剤をグリコールに分散したスラリーとして、反応系に添加することが好ましい。
【0044】
本発明の難燃延伸ポリステルフィルムには、さらに必要に応じて更に他の難燃剤、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、離型剤、着色剤、帯電防止剤、滑剤等の添加剤を、本発明の目的を損なわない範囲で配合することができる。
本発明におけるこれら添加剤は、難燃延伸ポリエステルフィルムが2層以上の積層構造を有する場合、いずれの層に配合されても構わない。
【0045】
<難燃延伸ポリエステルフィルム>
本発明における難燃延伸ポリエステルフィルムは、本発明の有機リン化合物を配合してなる層を含む、少なくとも1層からなるものである。
【0046】
また、本発明における難燃延伸ポリエステルフィルムは、本発明の有機リン化合物を配合してなる層(以下、A層と略記することがある)の少なくとも一方の面に、さらにポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート樹脂を主たる成分としてなる層(以下、B層と略記することがある)を有してもよい。ここで「主たる」とは、該B層の全重量に対しポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート樹脂の含有量が80重量%以上、より好ましくは90重量%上、特に好ましくは95重量%以上を意味する。ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート樹脂を主たる成分としてなる層(B層)は、該B層の全重量に対し20重量%以下、より好ましくは10重量%以下、特に好ましくは5重量%以下の範囲で、本発明の有機リン化合物、不活性粒子、その他添加剤を含有してもよいが、有機リン化合物の含有量は5重量%以下であって、かつA層における有機リン化合物の含有量未満であることが好ましい。
【0047】
本発明における難燃延伸ポリエステルフィルムの層構成は、上述の層構成以外に、さらに3層以上の構成であってもよく、例えばA層/B層/A層、B層/A層/B層が例示される。かかる層数の上限は、特に制限されないが201層であることが好ましい。
【0048】
<塗膜層>
本発明においては難燃延伸ポリエステルフィルム表面に各種の機能を付与するため、少なくとも一方の面にコーティングを行ってもよい。コーティング塗剤のバインダー樹脂としては、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂の各種樹脂が使用し得る。たとえば、ポリエステル、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステルアミド、ポリ塩化ビニル、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、およびポリオレフィン、ならびにこれらの共重合体やブレンド物である。なかでもポリエステル、ポリイミド、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリウレタンが好ましく例示される。かかるバインダー樹脂は、更に架橋剤を加えて架橋されたものでも良い。コーティング塗剤の溶媒としては、トルエン、酢酸エチル、メチルエチルケトンなどの有機溶媒および混合物が使用でき、更に水を溶媒としてもよい。本発明の塗膜層は、塗膜を形成する成分として、さらにポリアルキレンオキサイドなどの界面活性剤および不活性粒子を含んでいてもよい。また、本発明においては塗膜を形成する成分として、本発明の目的を損ねない範囲で上記成分以外にメラミン樹脂等の上述以外の樹脂、、軟質重合体、フィラー、熱安定剤、耐候安定剤、老化防止剤、レベリング剤、帯電防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、染料、顔料、天然油、合成油、ワックス、乳剤、充填剤、硬化剤、難燃剤などを配合してもよい。
【0049】
本発明においては、ポリエステルフィルムの少なくとも片面に前記成分からなる塗膜を積層してもよく、例えば延伸可能なポリエステルフィルムに塗膜を形成する成分を含む水溶液を塗布した後、乾燥、延伸し必要に応じて熱処理することにより積層することが出来る。
【0050】
上記の延伸可能なポリエステルフィルムとは、未延伸ポリエステルフィルム、一軸延伸ポリエステルフィルムまたは二軸延伸ポリエステルフィルムであり、これらの中でもフィルムの押出し方向(縦方向または長手方向)に一軸延伸した縦延伸ポリエステルフィルムが特に好ましい。
【0051】
ポリエステルフィルムへ水溶液(塗剤)を塗布する場合は、通常の塗工工程、すなわち二軸延伸後、熱固定したポリエステルフィルムに該フィルムの製造工程と切り離した工程で行うと埃、ちり等を巻き込み易い。かかる観点よりクリーンな雰囲気での塗布、すなわちフィルムの製造工程での塗布が好ましい。そして、この塗布によれば、塗膜のポリエステルフィルムへの密着性が更に向上する。
【0052】
塗布方法としては、公知の任意の塗布方法が適用できる。例えばロールコート法、グラビアコート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアーナイフコート法、含浸法およびカーテンコート法などを単独または組み合わせて用いることが出来る。
【0053】
<フレキシブルプリント回路基板>
本発明の難燃延伸ポリエステルフィルムは、他の機能を付与する目的で片面または両面に、さらに他層を積層した積層体としてもよい。ここでいう他の層とは、例えば透明なポリエステルフィルム、金属箔、ハードコート層が挙げられる。
【0054】
前記金属箔を積層する場合、難燃延伸ポリエステルフィルムの有機リン化合物を配合してなる層の一方の面に金属箔が積層され、フレキシブルプリント回路基板として用いられることが好ましい。本発明の有機リン化合物を配合してなる層は、接着層としての機能も有することから、本発明の有機リン化合物を配合してなる層と金属箔とを貼り合せることによって金属箔との接着性が高まり、バインダー成分を含む接着剤層を用いることなく剥離の少ないフレキシブルプリント回路基板が得られる。本発明におけるフレキシブルプリント回路基板は、場合に応じて有機リン化合物を配合してなる層と金属箔との間にさらに接着層を有してもよい。本発明において用いられる金属箔としては銅箔が例示される。金属箔の接合手段や形状の具体的手段としては特に制限はなく、例えば金属箔を難燃延伸ポリエステルフィルムに貼り合せた後、金属箔をパターンエッチングするいわゆるサブトラクティブ法、難燃延伸ポリエステルフィルム上に銅などをパターン状にメッキするアディティブ法、パターン状に打ち抜いた金属箔を難燃延伸ポリエステルフィルムに貼り合せるスタンピングホイルなどを利用することができる。
【0055】
<熱収縮率>
本発明における難燃延伸ポリエステルフィルムの熱収縮率は、200℃×10分の条件でフィルムの長手方向および幅方向のいずれも−3〜3%であることが好ましい。また、本発明における熱収縮率は、好ましくは−1.5〜1.5%、特に好ましくは−1〜1%である。フィルムの熱収縮率が下限に満たない場合あるいは上限を超える場合は、例えば回路基板を形成する工程においてフィルムの熱収縮が大きいため、良好な回路が形成できない場合がある。
【0056】
本発明の熱収縮率は、ポリエステルの種類がポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート樹脂であること、および有機リン化合物が前述の特定のリン化合物であることによって達成されるものであるが、より好ましくは(Tm−100℃)以上、特に好ましくは220℃〜250℃の条件で熱固定処理を施すことによって達成される。また、該熱固定の後、オフライン工程にて150〜220℃で1〜60秒間熱処理し、50〜80℃で除冷するアニール処理を施してもよい。
【0057】
<製膜>
本発明における難燃延伸ポリエステルフィルムは、少なくとも1軸に延伸されていることが必要であるが、フィルムの厚薄斑良化などの観点から、2軸延伸されたポリエステルフィルムが好ましい。延伸方法としては、テンター法、インフレーション法等の従来知られている製膜方法を用いて製造することができる。
【0058】
例えば、予め乾燥したポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート樹脂を300℃に加熱された押出機に供給し、Tダイよりシート状に成形する。このTダイより押し出されたシート状成形物を表面温度60℃の冷却ドラムで冷却固化し、この未延伸フィルムをロール加熱、赤外線加熱等で加熱し、縦方向に延伸して縦延伸フィルムを得る。かかる延伸は2個以上のロールの周速差を利用して行うのが好ましい。縦延伸温度はポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートのガラス転移点(Tg)より高い温度、更にはTgより20〜40℃高い温度とするのが好ましい。縦延伸倍率は、使用する用途の要求に応じて適宜調整すればよいが、好ましくは2.5倍以上4.0倍以下、更に好ましくは2.8倍以上3.9倍以下である。縦延伸倍率が2.5倍以下ではフィルムの厚み斑が悪くなり良好なフィルムが得られない場合がある。また、縦延伸倍率が4.0倍以上では製膜中に破断が発生し易くなる。
【0059】
得られた縦延伸フィルムは、続いて横延伸、熱固定、熱弛緩の処理を順次施して二軸配向フィルムとするが、これらの処理はフィルムを走行させながら行う。横延伸処理は、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートのガラス転移点(Tg)より20℃高い温度から始め、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートの融点(Tm)より(120〜20)℃低い温度まで昇温しながら行う。この横延伸開始温度は(Tg+40)℃以下であることが好ましい。また横延伸最高温度は、Tmより(100〜40)℃低い温度であることが好ましい。横延伸開始温度が低すぎるとフィルムに破れが生じやすい。また横延伸最高温度が(Tm−120)℃より低いと、得られたフィルムの熱収縮率が大きくなり、また幅方向の物性の均一性が低下しやすい。一方横延伸最高温度が(Tm−20)℃より高いと、フィルムが柔らかくなりすぎ、製膜中にフィルムの破れが起こり易い。
【0060】
横延伸過程での昇温は連続的でも段階的(逐次的)でもよいが、通常は逐次的に昇温する。例えばステンターの横延伸ゾーンをフィルム走行方向に沿って複数に分け、各ゾーンごとに所定温度の加熱媒体を流すことで昇温する。
【0061】
横延伸倍率は、この用途の要求特性にもよるが、2.5倍以上4.0倍以下とするのが好ましい。更に好ましくは、2.8倍以上3.9倍以下である。横延伸倍率を2.5倍に満たないとフィルムの厚み斑が悪くなり良好なフィルムが得られないことがあり、一方4.0倍を超えると製膜中に破断が発生し易くなることがある。
【0062】
なお、2軸延伸されたフィルムはその後、熱固定処理が施される。本熱固定を施すことにより、フィルムの熱寸法安定性が向上し、例えば本熱固定処理を(Tm−100℃)以上の温度で施すことにより達成することが出来る。
また、更に熱収縮を抑えるために、フィルムを例えばオフライン工程にて150〜220℃で1〜60秒間熱処理し、50〜80℃で除冷するアニール処理を施してもよい。
【0063】
本発明におけるポリエステルフィルムが積層構成を有する場合は、以下の方法で未延伸フィルムを作成し、その後の延伸工程は上述の方法に従って行う。2層構成の場合について例示すると、まず有機リン化合物を配合したポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート樹脂層(A層)用に調整したポリエステル樹脂(a)を乾燥後、(Tm)〜(Tm+70)℃の温度範囲内で押出機内で溶融する。同時に、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート樹脂を主たる成分としてなる層(B層)用に調整したポリエステル樹脂(b)を乾燥後、他の押出機に供給し、(Tm)〜(Tm+70)℃の温度範囲内で溶融する。続いて、両方の溶融樹脂をダイ内部で積層する方法、例えばマルチマニホールドダイを用いた同時積層押出法により、積層された未延伸フィルムが製造される。かかる同時積層押出法によると、A層を形成する樹脂の溶融物とB層を形成する樹脂の溶融物はダイ内部で積層され、積層形態を維持した状態でダイよりシート状に成形される。
【0064】
上述の方法によって得られた延伸ポリエステルフィルムは、フィルム厚みが3〜125μmであることが好ましく、より好ましくは5〜100μm、更に好ましくは7〜75μmの範囲である。本発明における延伸ポリエステルフィルムが積層構成を有する場合も、前記フィルム厚みの範囲であることが好ましい。
【実施例】
【0065】
以下、実施例により本発明を詳述するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、各特性値は以下の方法で測定した。また、実施例中の%は、特に断らない限り、重量%を意味する。
【0066】
1.熱収縮率
フィルムサンプルに30cm間隔で標点をつけ、荷重をかけずに200℃のオーブンで10分間熱処理を実施し、熱処理後の標点間隔を測定して、フィルム連続製膜方向(MD方向)と、製膜方向に垂直な方向(TD方向)において、下記式にて熱収縮率を算出した。
熱収縮率(%)=(熱処理前標点間距離−熱処理後標点間距離)/熱処理前標点間距離×100
【0067】
2.融点
フィルムサンプル約10mgを測定用のアルミニウム製パンに封入して示差熱量計(TAinstruments社製商品名「DSC2920」)に装着し、25℃から20℃/分の速度で300℃まで昇温させて融点(℃)を測定した。
【0068】
3.燃焼性
得られたフィルムをUL−94 VTM法に準拠して評価した。サンプルを20cm×5cmにカットし、23±2℃、50±5%RH中で48時間放置し、その後、試料下端をバーナーから10mm上方に離し垂直に保持した。該試料の下端を内径9.5mm、炎長19mmのブンゼンバーナーを加熱源とし、3秒間接炎した。VTM−0,VTM−1,VTM−2の評価基準に沿って難燃性を評価した。
【0069】
4.接着性
得られたフィルムの有機リン化合物を配合してなる層の片面に厚さ35μmの銅箔層を熱プレスにより形成して、得られた積層体を10mm×200mmサンプリング後、JIS C 06471 8.1の方法B(180°ピール)に準拠して引き剥がし強さを測定した。その測定値を元に下記基準で判定した。
○: 引き剥がし強さ0.5N/mm以上
△: 引き剥がし強さ0.2N/mm以上0.5N/mm未満
×: 引き剥がし強さ0.2N/mm未満
【0070】
[実施例1〜3]
まず、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸ジメチルエステル100重量部、エチレングリコール60重量部を、エステル交換触媒として酢酸マンガン四水塩0.03重量部を使用して、常法に従ってエステル交換反応させた後、トリメチルフォスフェート0.023重量部を添加し実質的にエステル交換反応を行い、エチレングリコールに分散させた平均粒径0.3μmの球状シリカを表1に示す割合で添加した。ついで、三酸化アンチモン0.024重量部を添加し、引き続き高温高真空下で常法にて重縮合反応を行い、固有粘度0.61dl/g、DEG共重合量1.3モル%のポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートを得た。
【0071】
上記ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートを180℃ドライヤーで6時間乾燥後、押出機に投入し、そこへ下記式(II)で表される有機リン化合物を表1に示す割合で添加し、295℃で溶融混練し、290℃のダイスよりシート状に成形した。さらにこのシートを表面温度60℃の冷却ドラムで冷却固化した未延伸フィルムを140℃に加熱したロール群に導き、長手方向(縦方向)に3.1倍で延伸し、60℃のロール群で冷却した。続いて、縦延伸したフィルムの両端をクリップで保持しながらテンターに導き150℃に加熱された雰囲気中で長手方向に垂直な方向(横方向)に3.3倍で延伸した。その後テンタ−内で240℃の熱固定を行い、200℃で3%の弛緩後、均一に除冷して室温まで冷やし、50μm厚みの二軸延伸フィルムを得た。得られたフィルムの特性は表1の通りである。本実施例のフィルムは、高温寸法安定性および難燃性に優れていた。さらに、銅箔と貼りあわせた接着性評価において高い接着性が得られた。
【0072】
【化9】

【0073】
[実施例4]
実施例1の方法によって得られたポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート(固有粘度0.61)を180℃で6時間乾燥した後、295℃に加熱された押出機に供給し、そこへ式(II)で表される実施例1で用いた有機リン化合物を表1に示す割合で添加し、295℃で溶融混練した(A層)。一方、実施例1の方法によって得られたポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート(固有粘度0.61)を180℃ドライヤーで6時間乾燥後、他方の押出機に投入し(B層)、それぞれ溶融した状態で2層に積層し(厚み比率 A層:B層=1:4)、かかる積層構造を維持した状態でダイスよりシート状に成形した以外は、実施例1と同様にして延伸フィルムを得た。得られたフィルムのフィルム厚みは50μm(A層:10μm,B層:40μm)であり、特性は表1の通りである。本実施例のフィルムは、高温寸法安定性および難燃性に優れていた。さらに、銅箔と貼りあわせた接着性評価において高い接着性が得られた。
【0074】
[比較例1]
有機リン化合物添加しないで、ポリエステル樹脂としてポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート樹脂だけを用いた以外は実施例1と同様に延伸フィルムを得た。得られたフィルムの特性は表1の通りである。本比較例のフィルムは、寸法安定性に優れるものの、難燃性が十分ではなかった。さらに、銅箔と貼りあわせた接着性評価において十分な接着性は得られなかった。
【0075】
[比較例2]
ポリエステル樹脂として固有粘度0.62dl/gのポリエチレンテレフタレート樹脂を用いた。160℃ドライヤーで6時間乾燥後、押出機に投入し、そこへ上式(II)で表される有機リン化合物を表1に示す割合で添加し、290℃で溶融混練し、280℃のダイスよりシート状に成形した。さらにこのシートを表面温度20℃の冷却ドラムで冷却固化した未延伸フィルムを110℃に加熱したロール群に導き、長手方向(縦方向)に3.1倍で延伸し、20℃のロール群で冷却した。続いて、縦延伸したフィルムの両端をクリップで保持しながらテンターに導き120℃に加熱された雰囲気中で長手に垂直な方向(横方向)に3.3倍で延伸した。その後テンタ−内で210℃の熱固定を行い、180℃で3%の弛緩後、均一に除冷して室温まで冷やして50μm厚みの二軸延伸フィルムを得た。得られたフィルムの特性は表1の通りである。本比較例のフィルムは、寸法安定性に劣り、難燃性もV−2レベルで十分ではなかった。
【0076】
[比較例3]
有機リン化合物として、実施例1で用いた式(II)で表される有機リン化合物に代えて、下記式(V)で表される有機リン化合物を用いた以外は実施例1と同様の組成および同様の混練条件で溶融混練を行ったが、有機リン化合物の熱分解が激しく、安定して製膜を行うことができなかった。
【0077】
【化10】

【0078】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明によって得られた難燃延伸ポリエステルフィルムは、難燃性及び高温下での寸法安定性に優れることから、難燃性を要求される電気・電子部品用途あるいは自動車部品用途に用いることができ、特にフレキシブルプリント回路基板用に好適に使用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート樹脂に、下記一般式(I)
【化1】

(式中、R1及びR2は炭素原子数1〜5の低級アルキル基、R3及びR4は水素原子又は炭素原子数1〜5の低級アルキル基、Yは−CH2−、−C(CH32−、−S−、−SO2−、−O−、−CO−若しくは−N=N−からなる群より選ばれる少なくとも1種の基、kは0又は1、mは0〜4の整数、nは1〜4の整数であり、R1〜R4はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。)
で表される有機リン化合物を配合してなる層を含む、少なくとも1層からなる難燃延伸ポリエステルフィルム。
【請求項2】
有機リン化合物を配合してなる層において、有機リン化合物が該層の全重量に対し0.1〜50重量%の割合で配合されてなる請求項1に記載の難燃延伸ポリエステルフィルム。
【請求項3】
有機リン化合物を配合してなる層の少なくとも一方の面に、さらにポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート樹脂を主たる成分としてなる層を有する請求項1または2に記載の難燃延伸ポリエステルフィルム。
【請求項4】
200℃×10分における熱収縮率がフィルムの長手方向および幅方向のいずれも−3〜3%である請求項1〜3のいずれかに記載の難燃延伸ポリエステルフィルム。
【請求項5】
有機リン化合物が、下記式(II)、下記式(III)及び下記式(IV)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1〜4のいずれかに記載の難燃延伸ポリエステルフィルム。
【化2】

【化3】

【化4】

【請求項6】
フレキシブルプリント回路基板に用いられることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の難燃延伸ポリエステルフィルム。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の難燃延伸ポリエステルフィルムの、有機リン化合物を配合してなる層の一方の面に金属箔が積層されることを特徴とするフレキシブルプリント回路基板。

【公開番号】特開2006−63211(P2006−63211A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−248300(P2004−248300)
【出願日】平成16年8月27日(2004.8.27)
【出願人】(301020226)帝人デュポンフィルム株式会社 (517)
【Fターム(参考)】