説明

電力出力装置

【課題】車両に搭載された電池の電池効率の低下を抑制する。
【解決手段】電力出力装置(100)は、車両(1)に搭載され、電力を出力可能な第1電池(21)及び第2電池(22)と、第1電池及び第2電池の一方の電池から電力が出力されている際に、第1電池及び第2電池の他方の電池の温度が第1所定温度以上となったことを条件に、第1電池及び第2電池の両方から電力が出力されるように、第1電池及び第2電池を制御する制御手段(23)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばハイブリッド自動車、電気自動車等の車両に搭載され、該車両に搭載された電動機等に電力を供給する電力出力装置の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の装置として、例えば、第1蓄電装置を構成する複数の蓄電セルと、第2蓄電装置を構成する複数の蓄電セルとが交互に配置され、スイッチ素子により、第1蓄電装置及び第2蓄電装置各々の充放電を制御する装置が提案されている(特許文献1参照)。或いは、蓄電池を包囲する水ジャケットに、内燃機関の冷却水を循環供給する装置が提案されている(特許文献2参照)。
【0003】
或いは、走行用モータに電力を供給する第1バッテリ及び第2バッテリを備え、走行用モータのトルクを増大する際に、第1バッテリ及び第2バッテリを直列接続する装置が提案されている(特許文献3参照)。或いは、持続性蓄電池及び瞬発性蓄電池を備え、要求される充放電量に応じて、持続性蓄電池と瞬発性蓄電池とを使い分ける装置が提案されている(特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−218272号公報
【特許文献2】実開昭61−035368号公報
【特許文献3】特開2005−210840号公報
【特許文献4】特開平11−252711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の背景技術によれば、蓄電池(又はバッテリ)の動作温度は十分には考慮されていない。すると、電池効率が低下する可能性があるという技術的問題点がある。
【0006】
本発明は、例えば上記問題点に鑑みてなされたものであり、電池効率の低下を抑制することができる電力出力装置を提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電力出力装置は、上記課題を解決するために、車両に搭載され、電力を出力可能な第1電池及び第2電池と、前記第1電池及び前記第2電池の一方の電池から電力が出力されている際に、前記第1電池及び前記第2電池の他方の電池の温度が第1所定温度以上となったことを条件に、前記第1電池及び前記第2電池の両方から電力が出力されるように、前記第1電池及び前記第2電池を制御する制御手段とを備える。
【0008】
本発明の電力出力装置によれば、当該電力出力装置は、例えばハイブリッド自動車等の車両に搭載されている。例えばニッケル水素電池、リチウムイオン電池、鉛蓄電池等である第1電池及び第2電池は、電力を出力可能である。尚、第1電池と第2電池とは、相隣接して配置されている。
【0009】
例えばメモリ、プロセッサ等を備えてなる制御手段は、第1電池及び第2電池の一方の電池から電力が出力されている際に、第1電池及び第2電池の他方の電池の温度が第1所定温度以上となったことを条件に、第1電池及び第2電池の両方から電力が出力されるように、第1電池及び第2電池を制御する。
【0010】
「第1所定温度」とは、第1電池及び第2電池の一方の電池から電力が出力されている際に、第1電池及び第2電池の両方から電力が出力されるように、第1電池及び第2電池を制御するか否かを決定する値であり、予め固定値として、又は何らかの物理量若しくはパラメータに応じた可変値として、設定されている。
【0011】
このような「第1所定温度」は、実験的若しくは経験的に、又はシミュレーションによって、例えば、電池の性能を適切に発揮できる温度範囲を求め、該求められた温度範囲の下限値として、又は該下限値よりも所定値だけ低い値として設定すればよい。
【0012】
本願発明者の研究によれば、以下の事項が判明している。即ち、電池の性能は、該電池の温度に応じて変動する。また、電池から電力が出力されている際(即ち、電池が使用されている際)、電池が発熱し電池の温度が上昇する。二つの電池のうち一方の電池が使用されている場合、該一方の電池の発熱に起因して、二つの電池のうち他方の電池の温度も上昇する。仮に、一方の電池のみ使用し続けるとすると、他方の電池の温度を上昇させるために(即ち、他方の電池に熱エネルギーを奪われるために)、一方の電池の温度が上昇しにくくなるおそれがある。すると、一方の電池の温度が、該一方の電池の使用に適した温度に到達するまでの時間が比較的長くなり、電池効率が低下するおそれがある。
【0013】
しかるに本発明では、制御手段により、第1電池及び第2電池の一方の電池から電力が出力されている際に、第1電池及び第2電池の他方の電池の温度が第1所定温度以上となったことを条件に、第1電池及び第2電池の両方から電力が出力されるように、第1電池及び第2電池が制御される。
【0014】
すると、他方の電池から電力が出力されることに起因して、該他方の電池の温度が上昇するため、一方の電池から他方の電池に移動する熱エネルギーが減少し、該一方の電池の電池効率の低下を抑制することができる。加えて、他方の電池は、予め一方の電池の温度上昇に起因して温められているので、他方の電池の温度を、比較的早期に、該他方の電池の性能を適切に発揮できる温度に到達させることができる。
【0015】
本発明の電力出力装置の一態様では、前記制御手段は、前記車両が始動される際に、前記第1電池及び前記第2電池のうち電池温度が高いほうの電池から電力が出力されるように、前記第1電池及び前記第2電池を制御する。
【0016】
この態様によれば、比較的早期に、第1電池又は第2電池の温度を、第1電池又は第2電池の性能を適切に発揮できる温度に到達させることができ、実用上非常に有利である。
【0017】
尚、第1電池の温度及び第2電池の温度のいずれが高いかは、例えば第1電池及び第2電池各々に温度センサを取り付け、該温度センサから出力される信号に基づいて判定すればよい。
【0018】
或いは、本発明の電力出力装置の他の態様では、前記制御手段は、前記車両が始動される際に、前記第1電池及び前記第2電池のうち充電レベルの高いほうの電池から電力が出力されるように、前記第1電池及び前記第2電池を制御する。
【0019】
この態様によれば、第1電池及び第2電池相互間の切り換えを抑制することができ、車両のドライバビリティの向上を図ることができ、実用上非常に有利である。
【0020】
尚、「充電レベル」は、電池の充電容量に対する充電残量の比率、即ち、SOC(State of Charge)を意味する。
【0021】
本発明の電力出力装置の他の態様では、前記第1電池及び前記第2電池を夫々冷却可能な冷却手段を更に備え、前記制御手段は、前記第1電池及び前記第2電池の少なくとも一方の電池の温度が第2所定温度以上になることが予測される場合、前記少なくとも一方の電池を冷却するように、前記冷却手段を制御する。
【0022】
この態様によれば、第1電池及び第2電池の温度上昇を抑制することができる。ここで、「第2所定温度」を、例えば電池の性能を適切に発揮できる温度範囲の上限値に設定すれば、電池の温度を適切な温度範囲に保つことができる。
【0023】
「第2所定温度」は、第1電池及び第2電池の少なくとも一方の電池を冷却するように、冷却手段を制御するか否かを決定する値であり、予め固定値として、又は何らかの物理量若しくはパラメータに応じた可変値として、設定されている。
【0024】
本発明の電力出力装置の他の態様では、前記車両に搭載されたエンジンを冷却する冷却水を、前記第1電池及び前記第2電池に導く冷却水流路を更に備える。
【0025】
この態様によれば、第1電池及び第2電池を保温することができる、実用上非常に有利である。
【0026】
本発明の電力出力装置の他の態様では、前記車両は、シリーズハイブリッド車両である。
【0027】
この態様によれば、シリーズハイブリッド車両における電気効率の向上を図ることができ、実用上非常に有利である。
【0028】
本発明の作用及び他の利得は次に説明する実施するための形態から明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】第1実施形態に係る電力出力装置が搭載される車両の構成を示すブロック図である。
【図2】図1中のスイッチ操作により実現される電池構成を示す表である。
【図3】第1実施形態に係る電池の一具体例を示す図である。
【図4】図3の一部を拡大して示す拡大図である。
【図5】第1実施形態に係る電力出力装置を搭載する車両の走行開始前に、電池セル接続切換制御手段が実行する制御処理を示すフローチャートである。
【図6】走行時間と電池温度との関係の一例を示す概念図である。
【図7】第1実施形態に係る電力出力装置を搭載する車両の主に走行中に、電池セル接続切換制御手段が実行する制御処理を示すフローチャートである。
【図8】走行時間と電池温度との関係の他の例を示す概念図である。
【図9】第2実施形態に係る電力出力装置を搭載する車両の走行開始前に、電池セル接続切換制御手段が実行する制御処理を示すフローチャートである。
【図10】走行時間と電池温度との関係の他の例を示す概念図である。
【図11】走行時間と電池要求出力との関係の一例を示す概念図である。
【図12】第3実施形態に係る電力出力装置を搭載する車両の主に走行中に、電池セル接続切換制御手段が実行する制御処理を示すフローチャートである。
【図13】最初に電池21のみを使用し、その後電池21及び22を使用する場合の走行時間と電池温度との関係の一例を示す概念図である。
【図14】初めから電池21及び22を使用する場合の走行時間と電池温度との関係の一例を示す概念図である。
【図15】第4実施形態に係る電力出力装置を搭載する車両の走行開始前に、電池セル接続切換制御手段が実行する制御処理を示すフローチャートである。
【図16】経過時間と、電池温度及び貯蔵装置温度との関係の一例を示す概念図である。
【図17】第5実施形態に係る電力出力装置を搭載する車両の走行開始前に、電池セル接続切換制御手段が実行する制御処理を示すフローチャートである。
【0030】
【図18】経過時間と電池電圧との関係の一例を示す概念図である。
【図19】上段は、経過時間と電池要求出力との関係の一例を示す概念図であり、下段は、上段に示した関係に対応する経過時間と電池電圧との関係を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明に係る電力出力装置の実施形態について、図面に基づいて説明する。
【0032】
<第1実施形態>
本発明に係る電力出力装置の第1実施形態について、図1乃至図8を参照して説明する。
【0033】
(電力出力装置の構成)
先ず、本実施形態に係る電力出力装置が搭載される車両の構成について、図1を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る電力出力装置が搭載される車両の構成を示すブロック図である。
【0034】
図1において、車両1は、エンジン11と、該エンジン11の駆動軸に機械的に接続された発電機12と、該発電機12に電気的に接続されたインバータ13と、動力伝達機構16と、該動力伝達機構16に機械的に接続され、該動力伝達機構16に対して駆動力を出力可能な電動機15と、該電動機15に電気的に接続されたインバータ14と、インバータ13及び14に電気的に接続された電力出力装置100とを備えて構成されている。
【0035】
尚、電動機15は、モータ・ジェネレータ(電動発電機)により実現されてよい。また、本実施形態に係る車両1は、シリーズハイブリッド車両である。
【0036】
電力出力装置100は、電池21(電池バンクA)、電池22(電池バンクB)、電池セル接続切換制御手段23、電圧差調整手段24、冷却剤制御手段25及び昇圧器26を備えて構成されている。
【0037】
電圧差調整手段24は、電圧計33から出力される電池21の電圧を示す信号、及び電圧計34から出力される電池22の電圧を示す信号に基づく信号を、電池セル接続切換制御手段23に対して出力する。
【0038】
電池セル接続切換制御手段23は、温度センサ31から出力される電池21の温度を示す信号、温度センサ32から出力される電池22の温度を示す信号、電圧差調整手段24から出力される信号、アクセル開度センサ35から出力される信号、及び走行情報提供装置36から出力される信号に基づいて、スイッチSW1、SW2及びSW3を夫々制御する。
【0039】
電池セル接続切換制御手段23により、スイッチSW1、SW2及びSW3が夫々制御されることにより、図2に示す電池接続が実現される。図2は、図1中のスイッチ操作により実現される電池構成を示す表である。
【0040】
尚、図2中の“SW1”、“SW2”及び“SW3”の各々における数値は、図1中の“SW1”、“SW2”及び“SW3”の各々における端子の番号を示している。また、図2における「負荷」とは、図1における「インバータ14」、「電動機15」及び「動力伝達機構16」を意味する。
【0041】
再び図1に戻り、冷却剤制御手段25は、温度センサ31及び32の各々から出力される信号に基づいて、電池21、電池22、並びに電池21及び22の間の少なくとも一つに、エンジン11を冷却する冷却剤の一部を供給する。尚、図1において、冷却剤路を示す一点鎖線に記載された“A”、“B”及び“A−B”は、夫々、電池21のみを冷却可能な冷却剤路、電池22のみを冷却可能な冷却剤路、並びに電池21及び22を冷却可能な冷却剤路を示している。
【0042】
ここで、電池21及び22について、図3及び図4を参照して説明を加える。図3は、本実施形態に係る電池の一具体例を示す図であり、図4は、図3の一部を拡大して示す拡大図である。尚、図4では、各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、該各部材毎に縮尺を異ならしめている。
【0043】
図3に示すように、電池21は複数の電池セル(図3中において“A”で示す電池セル)を備えて構成されている。電池21を構成する複数の電池セルは、互いに直列接続されている。同様に、電池22も複数の電池セル(図3中において“B”で示す電子セル)を備えて構成されている。電池22を構成する複数の電池セルも、互いに直列接続されている。また、図3に示すように、電池21を構成する電池セルと、電池22を構成する電池セルとは、交互に配置されている。
【0044】
尚、電池21及び22の各々を構成する電池セルは、例えば図3の手前側から奥側に向かって延びる長辺を有する直方体形状をしている。各電池セルに付されている“+”又は“−”は、電池セルの長辺上の図3の手前側に比較的近い位置に電極が形成されていること意味する。他方、各電池セルに付されている丸付きの“+”又は“−”は、電池セルの長辺上の図3の奥側に比較的近い位置に電極が形成されていることを意味する。
【0045】
図4に示すように、電池21(即ち、電池バンクA)を構成する電池セルと、電池22(即ち、電池バンクB)を構成する電池セルとの間には、冷却剤路A−Bが形成された熱伝導体201が配置されている。電池21を構成する電池セルは、冷却剤路Aが形成された電極接続端子202aにより相互に電気的に接続されている。他方、電池22を構成する電池セルは、冷却剤路Bが形成された電極接続端子202bにより相互に電気的に接続されている。
【0046】
ここで、図4に示すように、電極接続端子202aは、電池21を構成する電池セルに接触しているが、電池22を構成する電池セルには接触していない。このため、冷却剤路Aに冷却剤を供給することによって、電池21を構成する電池セルのみを冷却することができる。他方、電極接続端子202bは、電池22を構成する電池セルに接触しているが、電池21を構成する電池セルには接触していない。このため、冷却剤路Bに冷却剤を供給することによって、電池22を構成する電池セルのみを冷却することができる。また、冷却剤路A−Bに冷却剤を供給することによって、電池21及び22を冷却することができる。
【0047】
尚、冷却剤路A及びBの壁面、即ち、電極接続端子202a及び202bの内壁面は、絶縁性の膜で覆われている。
【0048】
尚、本実施形態に係る「電池21」、「電池22」、「電池セル接続切換制御手段23」及び「冷却剤制御手段25」は、夫々、本発明に係る「第1電池」、「第2電池」、「制御手段」及び「冷却手段」の一例である。
【0049】
(電池セル接続切換方法)
(車両1の走行開始前)
次に、以上のように構成された電力出力装置100を搭載する車両1の走行開始前に、電池セル接続切換制御手段23が実行する制御処理について、図5のフローチャートを参照して説明する。尚、本実施形態では、車両1の走行開始前において、電池21及び22は満充電状態であるとする。
【0050】
図5において、先ず、電池セル接続切換制御手段23は、走行情報提供装置36から出力される信号を受信することによって、該受信された信号により示される車両1の走行経路情報を入手する(ステップS101)。尚、走行経路情報は、例えば車両1の運転者により予め入力されている。
【0051】
次に、電池セル接続切換制御手段23は、走行経路情報に基づいて、走行中の電池要求出力の予測値Pexpを算出する(ステップS102)。次に、電池セル接続切換手段23は、温度センサ31及び32の各々から出力される信号により示される電池21の温度及び電池22の温度(Tempinit)に基づいて、電池適正温度範囲に入るまでの時間t及びtを算出する(ステップS103)。
【0052】
尚、時間tは、電池21及び22のうちの一方の電池のみを使用した場合に、該一方の電池の温度が電池適正温度範囲に入るまでの時間を意味する。他方、時間tは、電池21及び22を直列接続して使用した場合に(即ち、電池21及び22の両方を使用した場合に)、電池21及び22各々の温度が電池適正温度範囲に入るまでの時間を意味する。
【0053】
次に、電池セル接続切換制御手段23は、時間tが時間tより短く、且つ電池要求出力の予測値Pexp(t)が、電池21及び22のうち一方の電池のみを使用した場合における最大出力値Pbmax_pより小さいという条件を満たすか否かを判定する(ステップS104)。
【0054】
ステップS104における条件を満たすと判定された場合(具体的には、図6に示すような場合)(ステップS104:Yes)、電池セル接続切換手段23は、スイッチSW1が端子2に接続され、スイッチSW2が端子3に接続され、スイッチSW3が端子2に接続されるように、スイッチSW1、SW2及びSW3を夫々制御して(ステップS105)、処理を終了する。
【0055】
この場合、図2における「並列1」の接続状態となるので、電池21(即ち、電池バンクA)のみが使用される。尚、電池21に代えて電池22のみが使用されてもよい。具体的には、図2における「並列2」の接続状態とされてもよい。
【0056】
他方、ステップS104における条件を満たさないと判定された場合(ステップS104:No)、電池セル接続切換手段23は、スイッチSW1が端子1に接続され、スイッチSW2が端子3に接続され、スイッチSW3が端子2に接続されるように、スイッチSW1、SW2及びSW3を夫々制御して(ステップS106)、処理を終了する。この場合、図2における「直列1」の接続状態となるので、電池21及び22の両方が使用される。
【0057】
尚、図6は、走行時間と電池温度との関係の一例を示す概念図である。図6における実線aは、電池21及び22のうち一方の電池のみを使用した場合を表わしており、実線abは、電池21及び22の両方を使用した場合を表わしている。
【0058】
ここで、図6は、電池要求出力が比較的小さい場合における電池温度の変化の概念を示している。図6に示すように、電池要求出力が比較的小さい場合は、一方の電池のみを使用する方が、両方の電池を使用する場合に比べて電池温度が上昇しやすいことがわかる。即ち、電池要求出力が比較的小さい場合は、一方の電池のみを使用することによって、比較的早期に電池の温度を適切温度範囲内に昇温することができる。
【0059】
(車両1の走行中)
次に、電力出力装置100を搭載する車両1の主に走行中に、電池セル接続切換制御手段23が実行する制御処理について、図7のフローチャートを参照して説明する。
【0060】
図7において、先ず、電池セル接続切換制御手段23は、電流計から出力される信号により示される充放電電流値を積算して、電池21及び22のうち現在使用されている電池のSOCを算出する(ステップS201)。次に、電池セル接続切換制御手段23は、算出されたSOCが、EV(Electric Vehicle)走行時におけるSOCの下限値SOCminより小さいか否かを判定する(ステップS202)。
【0061】
算出されたSOCが下限値SOCminより小さいと判定された場合(ステップS202:Yes)、電池セル切換接続制御手段23は、電池21及び22が直列接続されているか(即ち、図2における「直列1」の接続状態であるか)否かを判定する(ステップS203)。
【0062】
電池21及び22が直列接続されていると判定された場合(ステップS203:Yes)、電池セル切換接続制御手段23は、例えば電池21及び22に係るSOCが下限値SOCminより小さいことを示す信号を、例えば車両1における各種電子制御を行うECU(Electronic Control Unit)(図示せず)等に送信して、処理を終了する。
【0063】
尚、電池セル切換接続制御手段23から出力された信号を受信したECU等は、エンジン11を始動するように、該エンジン11を制御する。この結果、発電機12から電力が出力される。
【0064】
ステップS203の処理において、電池21及び22が直列接続されていない(ここでは、電池21及び22のうち一方の電池のみが使用されている)と判定された場合(ステップS203:No)、電池セル切換接続制御手段23は、電池21(即ち、電池バンクA)のみが使用されているか否かを判定する(ステップS204)。
【0065】
電池21のみが使用されていると判定された場合(ステップS204:Yes)、電池セル切換制御手段23は、スイッチSW1が端子2に接続され、スイッチSW2が端子3に接続され、スイッチSW3が端子1に接続されるように(即ち、電池21に代えて電池22のみが使用されるように(図2における「並列2」参照))、スイッチSW1、SW2及びSW3を夫々制御する(ステップS205)。その後、電池セル切換制御手段23は、ステップS201の処理を実行する。
【0066】
他方、電池22のみが使用されていると判定された場合(ステップS204:No)、電池セル切換制御手段23は、処理を終了する。ここで、本実施形態では、電池21及び22のうち一方の電池のみを使用する場合、電池21から使用するように構成されている。このため、ステップS204の処理において、“No”と判定された場合、電池21及び22の両方ともSOCが低下していることとなるので、エンジン11が始動され、発電機12から電力が出力される。
【0067】
尚、電池21及び22のうち一方の電池のみを使用する場合における電池の使用順序は、どちらが先であってもよい。電池22(即ち、電池バンクB)から使用するように構成した場合、ステップS204及びS205の処理は、夫々、「片バンク使用:バンクB使用?」及び「SW1→2、SW2→3、SW3→2」となる。
【0068】
ステップS202の処理において、算出されたSOCが下限値SOCmin以上であると判定された場合(ステップS202:No)、電池セル切換制御手段23は、時刻t3において、温度センサ32から出力される信号により示される電池22(即ち、電池バンクB)の温度が適正温度範囲内であるか否かを判定する(ステップS206)。
【0069】
電池22の温度が適正温度範囲内であると判定された場合(具体的には、図8に示すような場合)(ステップS206:Yes)、電池セル切換制御手段23は、スイッチSW1が端子2に接続され、スイッチSW2が端子2に接続され、スイッチSW3が端子1に接続されるように(即ち、電池21及び22が並列接続されるように(図2における「並列3」参照))、スイッチSW1、SW2及びSW3を夫々制御する(ステップS210)。
【0070】
ここで、電池21のみが使用されている際に、ステップS206の処理が実行された場合、電池21の熱が熱伝導体201(図4参照)を介して電池22に伝達され、該電池22の温度が適正温度範囲内になったと考えられる。この場合、電池セル制御における、電池21及び22間の熱作用(即ち、損失)の優先度が低下するため、電池21及び22を並列接続して損失を低減することが図られる。このように電池セルの接続を制御することによって、未使用であった電池22の温度が適正温度範囲内になっていることから、電池22の使用開始時から電池22のパフォーマンスが保証される。
【0071】
尚、図8は、走行時間と電池温度との関係の他の例を示す概念図である。図8における実線aは、電池21の温度変化を表わしており、実線bは、電池22の温度変化を表わしている。ここで、本実施形態に係る「適正温度範囲の下限値」は、本発明に係る「第1所定温度」の一例である。
【0072】
ステップS210の後、電池セル切換制御手段23は、電池21の電圧が、電池22の電圧と同等となるように昇圧器26を制御する(ステップS211)。その後、電池セル切換制御手段23は、ステップS201の処理を実行する。
【0073】
ステップS206の処理において、電池22の温度が適正温度範囲内でないと判定された場合(ステップS206:No)、電池セル接続切換制御手段23は、アクセル開度センサ35から出力される信号により示されるアクセル開度に基づく要求駆動力から、要求電池出力Preqを算出する(ステップS207)。
【0074】
次に、電池セル接続切換制御手段23は、算出された要求電池出力Preqが、電池21及び22のうち一方の電池のみを使用した場合における最大出力値Pbmax_pより大きいか否かを判定する(ステップS208)。
【0075】
要求電池出力Preqが最大出力値Pbmax_pより大きいと判定された場合(ステップS208:Yes)、電池セル接続切換制御手段23は、ステップS210の処理を実行する。
【0076】
他方、要求電池出力Preqが最大出力値Pbmax_p以下であると判定された場合(ステップS208:No)、電池セル接続切換制御手段23は、スイッチSW1が端子2に接続され、スイッチSW2が端子3に接続され、スイッチSW3が端子2に接続されるように(即ち、電池21のみが使用されるように(図2における「並列1」参照))、スイッチSW1、SW2及びSW3を夫々制御する(ステップS209)。その後、電池セル切換制御手段23は、ステップS201の処理を実行する。
【0077】
<第2実施形態>
本発明の電力出力装置に係る第2実施形態を、図9乃至図11を参照して説明する。第2実施形態では、電池セル接続切換制御手段が実行する制御処理が異なる以外は、第1実施形態の構成と同様である。よって、第2実施形態について、第1実施形態と重複する説明を省略すると共に、図面上における共通箇所には同一符号を付して示し、基本的に異なる点についてのみ、図9乃至図11を参照して説明する。
【0078】
本実施形態では、例えばショッピングセンター等に車両1で移動し(即ち、電池21及び22の少なくとも一方に蓄えられている電力をある程度使用し)、比較的長時間放置した後に再び車両1を使用する場合を想定している。
【0079】
この場合、(i)電池21及び22が暖機されている、(ii)電池要求出力が比較的大きい、又は(iii)電池21及び22が消耗していることを条件に、電池21及び22が並列接続される。
【0080】
他方、電池21及び22のうち一方の電池のみを使用する場合、直近の電池要求出力に応じて、温度が比較的高い電池、又はSOCが比較的大きい電池が選択される。尚、本実施形態では、車両1の走行開始前において、電池21の温度が電池22の温度より高く、電池22のSOCが電池21のSOCよりも高いものとする。
【0081】
(車両1の走行開始前)
図9のフローチャートにおいて、電池セル接続切換制御手段23は、ステップS102の処理(図5参照)の後、電圧差調整手段24から出力される信号に基づいて、電池21及び22各々の電圧V及びVを取得する(ステップS301)。
【0082】
次に、電池セル接続切換制御手段23は、温度センサ31及び32の各々から出力される信号に基づいて、電池21及び22各々の温度temp及びtempを取得する(ステップS302)。
【0083】
次に、電池セル接続切換制御手段23は、取得された電圧V及びV等に基づいて、電池21及び22各々の残りSOCであるSOC及びSOCを夫々算出する(ステップS303)。
【0084】
次に、電池セル接続切換制御手段23は、電圧Vと電圧Vとが相互に異なるか否かを判定する(ステップS304)。電圧Vと電圧Vとが同じであると判定された場合(ステップS304:No)、電池セル切換制御手段23は、図5において“S10”で示す一連の処理を実行する。
【0085】
他方、電圧Vと電圧Vとが相互に異なると判定された場合(ステップS304:Yes)、電池セル切換制御手段23は、電池21の温度temp、及び電池22の温度tempが共に電池適正温度の下限値tempminより高いという条件を満たすか否かを判定する(ステップS305)。
【0086】
ステップS305における条件を満たすと判定された場合(ステップS305:Yes)、電池セル接続切換制御手段23は、スイッチSW1が端子2に接続され、スイッチSW2が端子2に接続され、スイッチSW3が端子1に接続されるように(即ち、電池21及び22が並列接続されるように(図2における「並列3」参照))、スイッチSW1、SW2及びSW3を夫々制御する(ステップS306)。
【0087】
次に、電池セル切換制御手段23は、電池21の電圧が、電池22の電圧と同等となるように昇圧器26を制御する(ステップS307)。
【0088】
ステップS305の処理において、ステップS305における条件を満たさないと判定された場合(ステップS305:No)、電池セル接続切換制御手段23は、時点tが所定時点tよりも前であり、且つ時点tにおける電池要求出力の予想値Pexp(t)が電池21及び22のうち一方の電池のみを使用した場合における最大出力値Pbmax_pよりも大きいという条件を満たすか否かを判定する(ステップS308)。
【0089】
ステップS308における条件を満たすと判定された場合(具体的には、図10及び図11に示すような場合)(ステップS308:Yes)、電池セル接続切換制御手段23は、ステップS306の処理を実行する。
【0090】
他方、ステップS308における条件を満たさないと判定された場合(ステップS308:No)、電池セル接続切換制御手段23は、電池21のSOC、及び電池22のSOCが共に電池消耗目安であるSOCmin2より小さいという条件を満たすか否かを判定する(ステップS309)。
【0091】
ステップS309における条件を満たすと判定された場合(ステップS309:Yes)、電池セル接続切換制御手段23は、ステップS306の処理を実行する。他方、ステップS309における条件を満たさないと判定された場合(ステップS309:No)、電池セル接続切換制御手段23は、時点tが所定時点tよりも前であり、且つ時点tにおける電池要求出力の予想値Pexp(t)が最大出力値Pbmax_pとほぼ等しいという条件を満たすか否かを判定する(ステップS310)。
【0092】
ステップS310における条件を満たすと判定された場合(具体的には、図11に示すような場合)(ステップS310:Yes)、電池セル接続切換制御手段23は、スイッチSW1が端子2に接続され、スイッチSW2が端子3に接続され、スイッチSW3が端子2に接続されるように(即ち、電池21のみが使用されるように(図2における「並列1」参照))、スイッチSW1、SW2及びSW3を夫々制御する(ステップS311)。これにより、電池の温度が比較的高い電池21が使用されることとなる。
【0093】
他方、ステップS310における条件を満たさないと判定された場合(ステップS310:No)、電池セル接続切換制御手段23は、スイッチSW1が端子2に接続され、スイッチSW2が端子3に接続され、スイッチSW3が端子1に接続されるように(即ち、電池22のみが使用されるように(図2における「並列2」参照))、スイッチSW1、SW2及びSW3を夫々制御する(ステップS312)。これにより、SOCが比較的大きい電池22が使用されることとなる。
【0094】
尚、図10は、走行時間と電池温度との関係の他の例を示す概念図である。図10における実線aは、電池21の温度変化を表わしており、実線bは、電池22の温度変化を表わしている。図11は、走行時間と電池要求出力との関係の一例を示す概念図である。
【0095】
尚、図9において、例えば“temp(i)”等における“i”は、センサの識別IDを意味する。以降の図においても同様である。
【0096】
<第3実施形態>
本発明の電力出力装置に係る第3実施形態を、図12乃至図14を参照して説明する。第3実施形態では、電池セル接続切換制御手段が実行する制御処理が異なる以外は、第1実施形態の構成と同様である。よって、第3実施形態について、第1実施形態と重複する説明を省略すると共に、図面上における共通箇所には同一符号を付して示し、基本的に異なる点についてのみ、図12乃至図14を参照して説明する。
【0097】
本実施形態では、温度センサ31及び32の各々により計測される現在の電池の温度、及び温度履歴から算出される温度勾配に基づいて、一定時間後の電池の温度を予想し、該予想された温度が適正温度範囲の上限値を超える場合に、冷却剤路A、B及びA−B(図4参照)の少なくとも一つに、冷却剤が放流される。
【0098】
(車両1の走行中)
図12のフローチャートにおいて、先ず、電池セル接続切換制御手段23は、温度センサ31及び32の各々から出力される信号に基づいて、電池21及び22各々の現在の温度を取得する(ステップS401)。
【0099】
次に、電池セル接続切換制御手段23は、電池21及び22各々の温度履歴から温度勾配を求め、該求められた温度勾配と、電池21及び22各々の現在の温度とに基づいて、t秒後の温度予想値temp(t,i)及びtemp(t,i)を算出する(ステップS402)。
【0100】
次に、電池セル接続切換制御手段23は、電池21及び22のうち一方の電池のみを使用しているか(ここでは、電池21のみを使用しているか)否かを判定する(ステップS403)。一方の電池のみを使用していると判定された場合(ステップS403:Yes)、電池セル接続切換制御手段23は、電池21の温度予想値temp(t,i)が適正温度範囲の上限値Tempmaxより高く、且つ電池22の温度予想値temp(t,i)が適正温度範囲の下限値Tempminより低いという条件を満たすか否かを判定する(ステップS404)。
【0101】
ステップS404における条件を満たさないと判定された場合(ステップS404:No)、電池セル接続切換制御手段23は、ステップS401の処理を実行する。他方、ステップS404における条件を満たすと判定された場合(具体的には、図13における時点tに示すような場合)(ステップS404:Yes)、電池セル接続切換制御手段23は、冷却剤路Aに冷却剤を供給するように冷却剤制御手段25を制御する(ステップS405)。
【0102】
次に、電池セル接続切換制御手段23は、電池21の温度予想値temp(t,i)が適正温度範囲の上限値Tempmaxとほぼ等しく、且つ電池22の温度予想値temp(t,i)が適正温度範囲の下限値Tempminより高いという条件を満たすか否かを判定する(ステップS406)。
【0103】
ステップS406における条件を満たさないと判定された場合(ステップS406:No)、電池セル接続切換制御手段23は、ステップS401の処理を実行する。他方、ステップS406における条件を満たすと判定された場合(具体的には、図13における時点tに示すような場合)(ステップS406:Yes)、電池セル接続切換制御手段23は、電池22(即ち、電池バンクB)と電池21とが電気的に接続されるようにスイッチSW1、SW2及びSW3を夫々制御する(ステップS407)。
【0104】
次に、電池セル接続切換制御手段23は、冷却剤路A−Bに冷却剤を供給するように冷却剤制御手段25を制御する(ステップS408)。次に、電池セル接続切換制御手段23は、電池22の温度予測値temp(t,i)が適正温度範囲の上限値Tempmaxより高いか否かを判定する(ステップS409)。
【0105】
電池22の温度予測値temp(t,i)が適正温度範囲の上限値Tempmaxより高いと判定された場合(具体的には、図13における時点tに示すような場合)(ステップS409:Yes)、電池セル接続切換制御手段23は、冷却剤路Bに冷却剤を供給するように冷却剤制御手段25を制御する(ステップS410)。他方、電池22の温度予測値temp(t,i)が適正温度範囲の上限値Tempmax以下であると判定された場合(ステップS409:No)、電池セル接続切換制御手段23は、ステップS401の処理を実行する。
【0106】
ステップS403の処理において、電池21及び22の両方を使用していると判定された場合(ステップS403:No)、電池セル接続切換制御手段23は、電池21の温度予想値temp(t,i)が適正温度範囲の上限値Tempmaxより低く、且つ電池22の温度予想値temp(t,i)が適正温度範囲の下限値Tempminより高いという条件を満たすか否かを判定する(ステップS411)。
【0107】
ステップS411における条件を満たさないと判定された場合(ステップS411:No)、電池セル接続切換制御手段23は、ステップS401の処理を実行する。他方、ステップS411における条件を満たすと判定された場合(具体的には、図14における時点tに示すような場合)(ステップS411:Yes)、電池セル接続切換制御手段23は、冷却剤路A−Bに冷却剤を供給するように冷却剤制御手段25を制御する(ステップS412)。
【0108】
次に、電池セル接続切換制御手段23は、電池21の温度予測値temp(t,i)が適正温度範囲の上限値Tempmaxより高いか否かを判定する(ステップS413)。電池21の温度予測値temp(t,i)が適正温度範囲の上限値Tempmax以下であると判定された場合(ステップS413:No)、電池セル接続切換制御手段23は、ステップS401の処理を実行する。
【0109】
他方、電池21の温度予測値temp(t,i)が適正温度範囲の上限値Tempmaxより高いと判定された場合(具体的には、図14における時点tに示すような場合)(ステップS413:Yes)、電池セル接続切換制御手段23は、冷却剤路Aに冷却剤を供給するように冷却剤制御手段25を制御する(ステップS414)。
【0110】
次に、電池セル接続切換制御手段23は、電池22の温度予測値temp(t,i)が適正温度範囲の上限値Tempmaxより高いか否かを判定する(ステップS415)。
【0111】
電池22の温度予測値temp(t,i)が適正温度範囲の上限値Tempmaxより高いと判定された場合(具体的には、図14における時点tに示すような場合)(ステップS415:Yes)、電池セル接続切換制御手段23は、冷却剤路Bに冷却剤を供給するように冷却剤制御手段25を制御する(ステップS416)。他方、電池22の温度予測値temp(t,i)が適正温度範囲の上限値Tempmax以下であると判定された場合(ステップS415:No)、電池セル接続切換制御手段23は、ステップS401の処理を実行する。
【0112】
上述の如く、電池21及び22の少なくとも一方を適宜冷却することによって、電池21及び22の過熱を防止しつつ、電池21及び22各々の温度を適正温度範囲内に保つことができる。
【0113】
尚、図13は、最初に電池21のみを使用し、その後電池21及び22を使用する場合の走行時間と電池温度との関係の一例を示す概念図であり、図14は、初めから電池21及び22を使用する場合の走行時間と電池温度との関係の一例を示す概念図である。
【0114】
尚、本実施形態に係る「適正温度範囲の上限値Tempmax」は、本発明に係る「第2所定温度」の一例である。
【0115】
<第4実施形態>
本発明の電力出力装置に係る第4実施形態を、図15及び図16を参照して説明する。第4実施形態では、電池セル接続切換制御手段が実行する制御処理が異なる以外は、第1実施形態の構成と同様である。よって、第4実施形態について、第1実施形態と重複する説明を省略すると共に、図面上における共通箇所には同一符号を付して示し、基本的に異なる点についてのみ、図15及び図16を参照して説明する。
【0116】
本実施形態では、電池21及び22の温度の低下を抑制するために、エンジン11を併用したハイブリッド走行後であって、車両1及びエンジン11が共に停止された後に、エンジン11を冷却する冷却剤が少量ずつ、冷却剤路A、B及びA−Bの少なくとも一つに供給される。
【0117】
(車両1の走行開始前)
図15のフローチャートにおいて、電池セル接続切換制御手段23は、車両1及びエンジン11の停止を検知した後に(ステップS501)、温度センサ31及び32の各々から出力される信号に基づいて電池21及び22各々の温度を取得すると共に、図1には図示しない温度センサから出力される信号に基づいて電池21及び22間の温度を取得する(ステップS502)。
【0118】
次に、電池セル接続切換制御手段23は、ステップS502で取得された三種類の温度のうち少なくとも一つが、電池保温温度の下限値Tempstaより低いか否かを判定する(ステップS503)。
【0119】
ステップS502で取得された三種類の温度のうち少なくとも一つが、電池保温温度の下限値Tempstaより低いと判定された場合(具体的には、図16における時点t、t又はtに示すような場合)(ステップS503:Yes)、電池セル接続切換制御手段23は、冷却剤路A、B及びA−Bの少なくとも一つに、エンジン11を冷却するための冷却剤が貯留されている冷却剤貯蔵装置(図示せず)から冷却剤を供給するように、冷却剤制御手段25を制御する(ステップS504)。
【0120】
次に、電池セル接続切換制御手段23は、図1には図示しない温度センサから出力される信号に基づいて、冷却剤貯蔵装置の温度tempdep(t)を取得する(ステップS507)。
【0121】
ステップS503の処理において、ステップS502で取得された三種類の温度のいずれもが、電池保温温度の下限値Tempsta以上であると判定された場合(ステップS503:No)、電池セル接続切換制御手段23は、ステップS502で取得された三種類の温度のうち少なくとも一つが、電池保温温度の上限値Tempstpより高いか否かを判定する(ステップS505)。
【0122】
ステップS502で取得された三種類の温度のうち少なくとも一つが、電池保温温度の上限値Tempstpより高いと判定された場合(具体的には、図16における時点t又はtに示すような場合)(ステップS505:Yes)、電池セル接続切換制御手段23は、冷却剤路A、B及びA−Bの少なくとも一つに、エンジン11を冷却するための冷却剤が供給されていることを条件に、冷却剤の供給を停止するように冷却剤制御手段25を制御する(ステップS506)。
【0123】
他方、ステップS502で取得された三種類の温度のいずれもが、電池保温温度の上限値Tempstp以下であると判定された場合(ステップS505:No)、電池セル接続切換制御手段23は、ステップS507の処理を実行する。
【0124】
ステップS507の処理の後、電池セル接続切換制御手段23は、冷却剤貯蔵装置の温度tempdep(t)が冷却剤貯蔵装置の保温温度の上限値Tempdepmax以上であるか否かを判定する(ステップS508)。
【0125】
冷却剤貯蔵装置の温度tempdep(t)が冷却剤貯蔵装置の保温温度の上限値Tempdepmax以上であると判定された場合(具体的には、図16における時点tに示すような場合)(ステップS508:Yes)、電池セル接続切換制御手段23は、冷却剤路A、B及びA−Bの少なくとも一つに、エンジン11を冷却するための冷却剤が供給されていることを条件に、冷却剤の供給を停止するように冷却剤制御手段25を制御する(ステップS509)。
【0126】
次に、電池セル接続切換制御手段23は、電池21及び22各々のSOCが、当該制御処理(即ち、電池保温制御処理)を終了すべきSOCであるSOCdmin以上であるか否かを判定する(ステップS513)。
【0127】
電池21及び22各々のSOCが、SOCdmin以上であると判定された場合(ステップS513:Yes)、電池セル接続切換制御手段23は、ステップS502の処理を実行する。他方、電池21及び22各々のSOCのいずれかが、SOCdminより小さいと判定された場合(ステップS513:No)、電池セル接続切換制御手段23は、処理を終了する。
【0128】
ステップS508の処理において、冷却剤貯蔵装置の温度tempdep(t)が冷却剤貯蔵装置の保温温度の上限値Tempdepmaxより低いと判定された場合(ステップS508:No)、電池セル接続切換制御手段23は、冷却剤貯蔵装置の温度tempdep(t)が冷却剤貯蔵装置の保温温度の下限値Tempdepminより低いか否かを判定する(ステップS510)。
【0129】
冷却剤貯蔵装置の温度tempdep(t)が冷却剤貯蔵装置の保温温度の下限値Tempdepmin以上であると判定された場合(ステップS510:No)、電池セル接続切換制御手段23は、ステップS513の処理を実行する。
【0130】
他方、冷却剤貯蔵装置の温度tempdep(t)が冷却剤貯蔵装置の保温温度の下限値Tempdepminより低いと判定された場合(具体的には、図16における時点t又はtに示すような場合)(ステップS510:Yes)、電池セル接続切換制御手段23は、冷却剤路A、B及びA−Bの少なくとも一つに、冷却剤貯蔵装置から冷却剤を供給するように、冷却剤制御手段25を制御する(ステップS511)。
【0131】
次に、電池セル接続切換制御手段23は、冷却剤貯蔵装置の温度tempdep(t)が上昇したか否かを判定する(ステップS512)。冷却剤貯蔵装置の温度tempdep(t)が上昇したと判定された場合(ステップS512:Yes)、電池セル接続切換制御手段23は、ステップS513の処理を実行する。他方、冷却剤貯蔵装置の温度tempdep(t)は上昇しないと判定された場合(ステップS512:No)、電池セル接続切換制御手段23は、処理を終了する。
【0132】
上述の如く、エンジン11を冷却する冷却剤を用いて電池21及び22の保温を図ることにより、次回の車両1の始動時に電池21及び22のパフォーマンスが回復されるまでの時間を短縮することができる。
【0133】
尚、図16は、経過時間と、電池温度及び貯蔵装置温度との関係の一例を示す概念図である。
【0134】
<第5実施形態>
本発明の電力出力装置に係る第5実施形態を、図17乃至図19を参照して説明する。第5実施形態では、電池セル接続切換制御手段が実行する制御処理が異なる以外は、第1実施形態の構成と同様である。よって、第5実施形態について、第1実施形態と重複する説明を省略すると共に、図面上における共通箇所には同一符号を付して示し、基本的に異なる点についてのみ、図17乃至図19を参照して説明する。
【0135】
本実施形態では、電池21及び22間の電圧比が一定値を超えた場合、車両1の停止中に、低負荷走行時や走行以外の電力供給に電力消耗が比較的少ない電池が優先的に使用されるように、スイッチSW1、SW2及びSW3各々の接続が制御される。尚、本実施形態では、電池22のSOCが電池21のSOCよりも高いものとする。
【0136】
(車両1の走行開始前)
図17のフローチャートにおいて、電池セル接続切換制御手段23は、車両1及びエンジン11の停止を検知した後に(ステップS601)、電圧差調整手段24から出力された信号に基づいて取得された電池21の電圧Vと電池22の電圧Vとの比が、昇圧器26における昇圧比の許容上限ConvRより大きいか否かを判定する(具体的には、V/V>ConvR又はV/V<1/ConvRを満たすか否かを判定する)(ステップS602)。
【0137】
ステップS602における条件を満たすと判定された場合(具体的には、図18における時点tに示すような場合)(ステップS602:Yes)、電池セル接続切換制御手段23は、電池21が充電されたか否かを判定する(ステップS603)。
【0138】
電池21が充電されたと判定された場合(ステップS603:Yes)、電池セル接続切換制御手段23は、スイッチSW1が端子2に接続され、スイッチSW2が端子3に接続され、スイッチSW3が端子2に接続されるように(即ち、電池21のみが使用されるように(図2における「並列1」参照))、スイッチSW1、SW2及びSW3を夫々制御する(ステップS607)。
【0139】
他方、電池21が充電されていないと判定された場合(ステップS603:No)、電池セル接続切換制御手段23は、スイッチSW1が端子2に接続され、スイッチSW2が端子3に接続され、スイッチSW3が端子1に接続されるように(即ち、電池22のみが使用されるように(図2における「並列2」参照))、スイッチSW1、SW2及びSW3を夫々制御する(ステップS604)。その後、電池セル接続切換制御手段23は、例えば図15に示した電池保温制御等を実行する(ステップS605)。
【0140】
ステップS602の処理において、ステップS602における条件を満たさないと判定された場合(具体的には、図18における時点tに示すような場合)(ステップS602:No)、電池セル接続切換制御手段23は、スイッチSW1が端子2に接続され、スイッチSW2が端子2に接続され、スイッチSW3が端子1に接続されるように(即ち、電池21及び22が並列接続されるように(図2における「並列3」参照))、スイッチSW1、SW2及びSW3を夫々制御する(ステップS606)。
【0141】
仮に、上述のような制御処理が実行されない場合、例えば図19の上段に示すように、電池21及び22のうち一方の電池のみを使用した場合における最大出力値Pbmax_pより小さい電池要求出力が、断続的に要求された場合、一方の電池(ここでは、電池21)のみが使用され続けられる状況が生じる。この結果、図19の下段に示すように、電池21の電圧のみが低下する(図中の実線V参照)。すると、昇圧器26を用いて電池21及び22を並列接続した場合であっても、電池21の電圧と電池22の電圧とを同一にすることができず、電池21及び22間において充放電が生じる。
【0142】
しかるに本実施形態では、上述のような制御処理が実行されるので、電池21の電圧と電池22の電圧との間に極端な電圧差が生じることを防止することができる。この結果、電池21及び22が並列接続された場合であっても、適切に電力が出力される。
【0143】
尚、図18は、経過時間と電池電圧との関係の一例を示す概念図である。図18における実線Vは、電池21の電圧変化を表わしており、実線Vは、電池22の電圧変化を表わしている。
【0144】
図19上段は、経過時間と電池要求出力との関係の一例を示す概念図であり、下段は、上段に示した関係に対応する経過時間と電池電圧との関係を示す概念図である。
【0145】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う電力出力装置もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0146】
1…車両、11…エンジン、12…発電機、13、14…インバータ、15…電動機、21、22…電池、23…電池セル接続切換制御手段、24…電圧差調整手段、25…冷却剤制御手段、26…昇圧器、31、32…温度センサ、33、34…電圧計、35…アクセル開度センサ、36…走行情報提供装置、100…電力出力装置、SW1、SW2、SW3…スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、
電力を出力可能な第1電池及び第2電池と、
前記第1電池及び前記第2電池の一方の電池から電力が出力されている際に、前記第1電池及び前記第2電池の他方の電池の温度が第1所定温度以上となったことを条件に、前記第1電池及び前記第2電池の両方から電力が出力されるように、前記第1電池及び前記第2電池を制御する制御手段と
を備えることを特徴とする電力出力装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記車両が始動される際に、前記第1電池及び前記第2電池のうち電池温度が高いほうの電池から電力が出力されるように、前記第1電池及び前記第2電池を制御することを特徴とする請求項1に記載の電力出力装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記車両が始動される際に、前記第1電池及び前記第2電池のうち充電レベルの高いほうの電池から電力が出力されるように、前記第1電池及び前記第2電池を制御することを特徴とする請求項1に記載の電力出力装置。
【請求項4】
前記第1電池及び前記第2電池を夫々冷却可能な冷却手段を更に備え、
前記制御手段は、前記第1電池及び前記第2電池の少なくとも一方の電池の温度が第2所定温度以上になることが予測される場合、前記少なくとも一方の電池を冷却するように、前記冷却手段を制御する
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の電力出力装置。
【請求項5】
前記車両に搭載されたエンジンを冷却する冷却水を、前記第1電池及び前記第2電池に導く冷却水流路を更に備えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の電力出力装置。
【請求項6】
前記車両は、シリーズハイブリッド車両であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の電力出力装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2011−167027(P2011−167027A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−29796(P2010−29796)
【出願日】平成22年2月15日(2010.2.15)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】