説明

電力変換装置

【課題】加圧部材による半導体積層ユニットへの加圧力の伝達を阻害することなく、半導体積層ユニットの積層方向と直交する方向のフレームに対する半導体積層ユニットの振動を抑制することができる電力変換装置を提供する。
【解決手段】電力変換装置1は、半導体モジュール11と、冷却管120とからなる半導体積層ユニット10と、半導体積層ユニット10を積層方向Xに加圧する加圧部材4とを有している。また、電力変換装置1は、加圧部材4と半導体積層ユニット10との間に介在する当接プレート3と、半導体積層ユニット10と加圧部材4と当接プレート3とを内側に配設したフレーム21とを有している。半導体積層ユニット10は、当接プレート3の積層方向Xの移動を許容しつつ、積層方向Xに直交する方向の振動を規制する振動規制手段34とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換回路を構成する半導体モジュールの冷却手段を備えた電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
DC−DCコンバータ回路やインバータ回路等の電力変換回路は、例えば、電気自動車やハイブリッド自動車等の動力源である交流モータに通電する駆動電力の生成に用いられる。
一般に、電気自動車やハイブリッド自動車等では、交流モータから大きな駆動トルクを確保するため大きな駆動電力が必要となってきている。それゆえ、その交流モータ向けの駆動電力を生成する上記電力変換回路においては、該電力変換回路を構成するIGBT等の電力用半導体素子を含む半導体モジュールからの発熱が大きくなる傾向にある。
【0003】
そこで、電力変換回路を構成する複数の半導体モジュールを冷却することができるように、冷媒を内部に流す複数の冷却管を半導体モジュールと積層した電力変換装置が提案されている(特許文献1、特許文献2)。
かかる電力変換装置9は、図12及び図13に示すごとく、半導体モジュール921と冷却管922との積層体である半導体積層ユニット92をフレーム93の内側に配置してなる。フレーム93は、上記積層方向と直交する方向に開口する開放部931を有する。また、フレーム93の内側には、半導体積層ユニット92を上記積層方向に加圧する加圧部材96が、半導体積層ユニット92の積層方向の一端に配されている。
【0004】
ところで、かかる電力変換装置9は、上述のごとく、例えば、電気自動車やハイブリッド自動車等、振動を受けやすい環境に設置される場合がある。
電力変換装置9では、加圧部材96によって、半導体積層ユニット92をフレーム93の内壁部に対して大きな力で加圧することで、半導体積層ユニット92を上記積層方向に固定している。そのため、上記振動が加わっても上記積層方向については、フレーム93に対して半導体積層ユニット92が振動することを抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−166819号公報
【特許文献2】特開2007−166820号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、フレーム93における開放部931の開口する方向(以下、これを開口方向という。)については、フレーム93に対する半導体積層ユニット92の固定手段がない。そのため、特に上記開口方向についても振動を受けやすい設置環境においては、半導体積層ユニット92における半導体モジュール921と冷却管922との間にずれが生じるおそれが考えられる。そうすると、半導体積層ユニット92における半導体モジュール921の冷却機能が低下するという事態を招くおそれもある。
【0007】
また、半導体積層ユニット92の一部や、半導体積層ユニット92と加圧部材96との間の介在物をフレーム93に固定することにより、半導体積層ユニット92の振動を規制することも考えられるが、この場合には、加圧部材96による半導体積層ユニット92への加圧力の伝達を阻害することとなる。
【0008】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであって、加圧部材による半導体積層ユニットへの加圧力の伝達を阻害することなく、半導体積層ユニットの積層方向と直交する方向のフレームに対する半導体積層ユニットの振動を抑制することができる電力変換装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、電力変換回路の一部を構成する複数の半導体モジュールと、該複数の半導体モジュールを両主面から冷却する複数の冷却管とを積層してなる半導体積層ユニットと、
該半導体積層ユニットにおける上記積層方向の一端側に配置され、該半導体積層ユニットを上記積層方向に加圧する加圧部材と、
該加圧部材と上記半導体積層ユニットとの間に介在すると共に該半導体積層ユニットに対して面接触した当接プレートと、
上記半導体積層ユニットと上記加圧部材と上記当接プレートとを内側に配設したフレームと、
該フレームに対する上記当接プレートの上記積層方向の移動を許容しつつ、上記当接プレートの上記積層方向に直交する方向の振動を規制する振動規制手段とを有することを特徴とする電力変換装置にある(請求項1)。
【発明の効果】
【0010】
本発明にかかる電力変換装置は、上記当接プレートの上記積層方向に直交する方向の振動を規制する振動規制手段を有している。したがって、上記当接プレートを介して積層方向に加圧された上記半導体積層ユニットの上記積層方向と直交する方向の振動を抑制することができる。それゆえ、上記半導体モジュールと冷却管とのずれを防ぐことができる。
【0011】
特に、上記振動規制手段は、上記当接プレートの振動を規制することによって、上記半導体積層ユニットの振動を規制している。上記当接プレートは、上記加圧部材と上記半導体積層ユニットとの間に介在するものであり、この部分における積層方向に直交する方向の振動は大きくなりやすい。それゆえ、この部分にある上記当接プレートの振動を、上記振動規制手段が規制することにより、上記半導体積層ユニットの振動を効果的に抑制することができる。
【0012】
また、上記振動規制手段は、上記フレームに対する上記当接プレートの積層方向の移動を許容している。そのため、上記振動規制手段を設けても、加圧部材の加圧力が上記半導体積層ユニットに伝わることを阻害することがない。それゆえ、上記加圧部材の加圧力を上記半導体積層ユニットに充分に伝えることができる。
【0013】
以上のごとく、本発明によれば、加圧部材による半導体積層ユニットへの加圧力の伝達を阻害することなく、半導体積層ユニットの積層方向と直交する方向のフレームに対する半導体積層ユニットの振動を抑制することができる電力変換装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施例1における、電力変換装置を示す説明図。
【図2】図1のA−A線矢視断面図。
【図3】実施例1における、振動規制手段を示す部分説明図。
【図4】実施例3における、電力変換装置を示す要部断面図。
【図5】実施例3における、バックプレートの形状例を示す要部断面図。
【図6】実施例4における、電力変換装置を示す要部断面図。
【図7】実施例5における、電力変換装置を示す要部断面図。
【図8】実施例5における、バックプレートの形状例を示す要部断面図。
【図9】実施例6における、電力変換装置を示す要部断面図。
【図10】実施例7における、電力変換装置を示す要部断面図。
【図11】図10のB−B線矢視断面図。
【図12】背景技術における、電力変換装置の説明図。
【図13】図12のC−C線矢視断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
上記電力変換装置において、上記振動規制手段は、例えば、上記当接プレートや上記フレームとは別の部材を配置することにより構成することもできるし、上記当接プレートや上記フレームの形状等によって構成することもできる。
【0016】
また、上記振動規制手段は、上記フレームと上記当接プレートとの間に直接的又は間接的に介在された弾性部材からなることが好ましい(請求項2)。この場合には、効果的に上記フレームに対する上記当接プレートの上記積層方向の移動を許容しつつ、上記当接プレートの上記積層方向に直交する方向の振動を規制することができる。すなわち、弾性部材からなる上記振動規制手段によって、上記半導体積層ユニットの積層方向に直交する方向の振動を吸収しながら抑制することができる。
【0017】
また、上記振動規制手段は、上記フレーム及び上記当接プレートに直接的又は間接的に固定されていることが好ましい(請求項3)。この場合には、上記振動規制手段と上記フレーム及び上記当接プレートとの間における相対的な移動量をより確実に規制することができる。これにより、上記振動規制手段による振動抑制効果をより高めることができる。また、弾性体からなる振動規制手段は、上記加圧部材から上記半導体積層ユニットに加わる加圧力に伴う上記当接プレートの変位に対しては、形状を変形させながら追従することができる。したがって、上記振動規制手段が上記フレーム及び上記当接プレートに固定されていても、上記加圧部材の加圧力が、上記半導体積層ユニットへと充分に伝達される。
【0018】
また、上記振動規制手段は、上記フレームもしくはこれに固定された固定部材、又は上記当接プレートもしくはこれに固定された固定部材に対して、上記積層方向に摺動可能に配設されていることが好ましい(請求項4)。この場合には、上記加圧部材により生じる上記積層方向の加圧力を上記半導体積層ユニットに一層効率よく伝達しつつ、上記積層方向に直交する方向における振動を抑制することができる。
【0019】
また、上記当接プレートは、上記半導体積層ユニットに当接する当接面を構成する当接板部と、該当接板部から上記積層方向に上記加圧部材へ延設された庇部とを備え、該庇部における上記加圧部材と反対側の面に上記振動規制手段が配設されていることが好ましい(請求項5)。この場合には、上記振動規制手段から生じた異物が加圧部材に付着することを防ぐことができる。
【0020】
また、上記当接プレートは、上記庇部から上記加圧部材と反対側に立設されると共に、上記振動規制手段と上記半導体積層ユニットとの間に配置された衝立部を有することが好ましい(請求項6)。この場合には、上記振動規制手段から生じた異物が、上記半導体積層ユニットに付着することを防ぐことができる。これにより、上記半導体積層ユニットと、該半導体積層ユニットにおける電気接点等に異物が付着することによる導通不良や絶縁不良等の不具合を防止できる。
【0021】
また、上記加圧部材は、コイルバネを用いることができる(請求項7)。この場合には、上記振動規制手段による上記半導体積層ユニットの振動規制効果を充分に発揮することができる。すなわち、コイルバネは、伸縮方向に対して直交する方向にたわみやすいため、上記加圧部材をコイルバネとした場合、上記半導体積層ユニットの上記積層方向に対して直交する方向に振動しやすい。そこで、上記振動規制手段を設けることにより、上記半導体積層ユニットの振動を効果的に防止することができる。
【0022】
また、上記振動規制手段は、上記積層方向に直交すると共に互いに直交する二方向の上記当接プレートの振動を規制するよう構成されていることが好ましい(請求項8)。この場合には、上記半導体積層ユニットにおける上記積層方向と直交するあらゆる方向の振動を効果的に防止することができる。
【実施例】
【0023】
(実施例1)
本発明の実施例にかかる電力変換装置1について、図1及び図2を用いて説明する。
本例の電力変換装置1は、半導体積層ユニット10と、該半導体積層ユニット10を積層方向Xに加圧する加圧部材4とを有している。半導体積層ユニット10は、電力変換回路の一部を構成する複数の半導体モジュール11と、該複数の半導体モジュール11を両主面から冷却する複数の冷却管120とを積層してなる。そして、半導体積層ユニット10における積層方向Xの一端側に加圧部材4が配置されている。
また、電力変換装置1は、加圧部材4と半導体積層ユニット10との間に介在すると共に該半導体積層ユニット10に対して面接触した当接プレート3と、半導体積層ユニット10と加圧部材4と当接プレート3とを内側に配設したフレーム21とを有している。さらに、半導体積層ユニット10は、フレーム21に対する当接プレート3の積層方向Xの移動を許容しつつ、当接プレート3の積層方向Xに直交する方向の振動を規制する振動規制手段34とを有している。
【0024】
本例の電力変換装置1について、さらに詳細に説明する。
本例において、半導体モジュール11と冷却管120とが積層された方向を積層方向X、冷却管120の長手方向を横方向Y、また、積層方向X及び横方向Yの両方に対して直交する方向を高さ方向Zとして、以下説明する。
また、積層方向Xにおいて、半導体積層ユニット10に対して加圧部材4が配された側を前方とし、反対側を後方とする。また、高さ方向Zにおいて、後述する蓋体22が配される側を上方とし、反対側を下方とする。
【0025】
電力変換装置1は、図1及び図2に示すごとく、電力変換回路の一部を構成する半導体積層ユニット10と、半導体積層ユニット10を積層方向Xに加圧する加圧部材4と、半導体積層ユニット10と加圧部材4とを内包するフレーム21とを有している。
半導体積層ユニット10は、図1及び図2に示すごとく、電力変換回路の一部を構成する複数の半導体モジュール11と、該複数の半導体モジュール11を両主面から冷却する複数の冷却管120とを積層してなる。
【0026】
半導体モジュール11は、例えばIGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)、MOSFET(MOS型電界効果トランジスタ)等のスイッチング素子を内蔵してなる。半導体モジュール11は、スイッチング素子を樹脂モールドしてなる平板状の本体部111と、該本体部111の端面から互いに反対方向に突出した主電極端子112及び制御端子113とからなる。平板状の本体部111における主面の法線方向が積層方向Xとなるように、半導体モジュール11は冷却管120と積層されている。主電極端子112は、高さ方向Zの下方に突出させてあり、制御端子113は、高さ方向Zの上方に突出させてある。主電極端子112は、バスバー(図示略)と接続されており、該バスバーを介して被制御電力が半導体モジュール11に入出力される。また、制御端子113は、制御回路基板(図示略)と接続されており、スイッチング素子を制御する制御電流が入力される。また、半導体モジュール11は、一対の冷却管120の間に2個ずつ並列配置してある。
【0027】
冷却管120は、その長手方向(横方向Y)の両端部において、隣り合う他の冷却管120と連結管123を通じて連結されている。そして、積層方向Xの一端に配された冷却管120における横方向Yの両端部に、冷媒導入管121及び冷媒排出管122が接続されている。これら冷却管120、連結管123、冷媒導入管121及び冷媒排出管122によって、冷却器12が構成されている。この冷却器12は、アルミニウム等の金属によって構成されている。
【0028】
冷媒導入管121及び冷媒排出管122は、図1に示すごとく、半導体積層ユニット10の前端部に配された冷却管120の前面から、前方に向かって突出するよう設けてある。冷媒導入管121から導入された冷却媒体は、適宜連結管123を通り、各冷却管120に分配されると共にその長手方向(横方向Y)に流通する。そして、各冷却管120を流れる間に、冷却媒体は半導体モジュール11との間で熱交換を行う。熱交換により温度上昇した冷却媒体は、適宜下流側の連結管123を通り、冷媒排出管122に導かれ排出される。冷却媒体としては、例えば、水やアンモニア等の自然冷媒、エチレングリコール系の不凍液を混入した水、フロリナート等のフッ化炭素系冷媒、HCFC123、HFC134a等のフロン系冷媒、メタノール、アルコール等のアルコール系冷媒、アセトン等のケトン系冷媒等の冷媒を用いることができる。
【0029】
フレーム21は、上方に開口した開口部217を有する。そしてフレーム21の上面には、開口部217を閉塞する蓋体22が固定されている。
フレーム21は、図2に示すごとく、半導体積層ユニット10の下方に配される矩形形状の底部211と、底部211の外周において上方に立設した壁部212とからなる。底部211には、半導体モジュール11の主電極端子112を挿通する底部端子挿通穴216が形成されている。また、壁部212は、積層方向Xの両側に配された前方壁部213及び後方壁部214と、前方壁部213と後方壁部214とをその両端において連結する一対の側方壁部215とを有する。
【0030】
蓋体22は、図2に示すごとく、半導体モジュール11の制御端子113を挿通する蓋体端子挿通穴221を有しており、ボルト(図示略)により、フレーム21の4つの壁部212を上端において連結するように配される。
フレーム21及び蓋体22は、例えば、アルミニウム、ステンレス鋼等の金属又は合金によって構成することができる。
【0031】
図1及び図2に示すごとく、半導体積層ユニット10は、フレーム21の内側に加圧部材4の付勢力によって押圧保持されている。加圧部材4はコイルバネからなり、その付勢力によって、半導体積層ユニット10を積層方向Xに押圧保持している。加圧部材4は、前方壁部213と半導体積層ユニット10の前面との間に配されている。
【0032】
加圧部材4と半導体積層ユニット10との間には、半導体積層ユニット10に対して面接触した当接プレート3を配してある。
当接プレート3は、図2に示すごとく、加圧部材4の後端部と半導体積層ユニット10の前面との間に配される当接板部31と、該当接板部31の上端から前方へ立設した庇部32と、当接板部31の下端から前方へ立設した脚板部33とからなる。
庇部32における上面と脚板部33における下面には、振動規制手段34をそれぞれ配してある。本例における振動規制手段34は、直方体形状を有する弾性部材からなり、庇部32及び脚板部33にそれぞれ接着固定してある。そして、庇部32に固定した振動規制手段34は、フレーム21に固定された固定部材である蓋体22に接着固定し、脚板部33に固定した振動規制手段34はフレーム21の底部211に接着固定してある。
【0033】
電力変換装置1を組み立てるにあたって、フレーム21の内側に半導体積層ユニット10と振動規制手段34を固定した当接プレート3と加圧部材4とを配した後、フレーム21の壁部212における上端に蓋体22を連結することにより、庇部32に設けた振動規制手段34は、蓋体22の下面に当接し、脚板部33の上面に設けた振動規制手段34はフレーム21の底部211における上面に当接する。このとき、フレーム21が変形しない範囲で、フレーム21により、弾性部材を圧縮することが好ましい。これにより、弾性部材に付勢力が生じ、半導体積層ユニット10の振動をより確実に防止することができる。
【0034】
本例においては、冷媒導入管121及び冷媒排出管122を半導体積層ユニット10の前方側に配したが、これに限るものではなく、加圧部材4とは反対側に配してもよい。例えば、冷媒導入管121と冷媒排出管122を後端部に配される冷却管120の後面から後方に向かって突出させてもよい。
【0035】
また、冷媒導入管121と冷媒排出管122とは、本例のごとく両方を一方向に突出するように配設してもよいし、それぞれ異なる方向へ突出するように配設してもよい。例えば、冷媒導入管121と冷媒排出管122とのいずれか一方を、半導体積層ユニット10における前方に配された冷却管120から前方に向かって突出するように配し、他方を半導体積層ユニット10における後方に配された冷却管120から後方に向かって突出するように配してもよい。
【0036】
また、本例に示すごとく、振動規制手段34をフレーム21及び蓋体22に固定した場合、振動規制手段34は、振動規制手段34のなす直方体の長手方向が、横方向Yとなるように配することが好ましい。この場合には、横方向Yの振動をより効果的に抑制することができる。
【0037】
次に、本例における作用効果を説明する。
電力変換装置1は、当接プレート3の積層方向Xに直交する方向の振動を規制する振動規制手段34を有している。したがって、当接プレート3を介して積層方向Xに加圧された半導体積層ユニット10の積層方向Xと直交する方向の振動を抑制することができる。それゆえ、半導体モジュール11と冷却管120とのずれを防ぐことができる。
【0038】
特に、振動規制手段34は、当接プレート3の振動を規制することによって、半導体積層ユニット10の振動を規制している。当接プレート3は、加圧部材4と半導体積層ユニット10との間に介在するものであり、この部分における積層方向Xに直交する方向の振動は大きくなりやすい。それゆえ、この部分にある当接プレート3の振動を、振動規制手段34が規制することにより、半導体積層ユニット10の振動を効果的に抑制することができる。
【0039】
また、振動規制手段34は、フレーム21に対する当接プレート3の積層方向Xの移動を許容している。そのため、振動規制手段34を設けても、加圧部材4の加圧力が半導体積層ユニット10に伝わることを阻害することがない。それゆえ、加圧部材4の加圧力を半導体積層ユニット10に充分に伝えることができる。
【0040】
また、振動規制手段34は、フレーム21及び蓋体2と当接プレート3との間に介在された弾性部材からなる。そのため、効果的にフレーム21に対する当接プレート3の積層方向Xの移動を許容しつつ、当接プレート3の積層方向Xに直交する方向の振動を規制することができる。すなわち、弾性部材からなる振動規制手段34によって、半導体積層ユニット10の積層方向Xに直交する方向の振動を吸収しながら抑制することができる。
【0041】
また、振動規制手段34は、フレーム21及び当接プレート3に固定されている。そのため、振動規制手段34とフレーム21及び当接プレート3との間における相対的な移動量をより確実に規制することができる。これにより、振動規制手段34による振動抑制効果をより高めることができる。また、弾性体からなる振動規制手段34は、加圧部材4から半導体積層ユニット10に加わる加圧力に伴う当接プレート3の変位に対しては、形状を変形させながら追従することができる。したがって、振動規制手段34がフレーム21及び当接プレート3に固定されていても、加圧部材4の加圧力が、半導体積層ユニット10へと充分に伝達される。
【0042】
また、当接プレート3は、半導体積層ユニット10に当接する当接面を構成する当接板部31と、該当接板部31から積層方向Xに加圧部材4へ延設された庇部32とを備え、該庇部32における加圧部材4と反対側の面に振動規制手段34が配設されている。そのため、振動規制手段34から生じた異物が加圧部材4に付着することを防ぐことができる。
【0043】
また、加圧部材4は、コイルバネを用いることができる。そのため、振動規制手段34による半導体積層ユニット10の振動規制効果を充分に発揮することができる。すなわち、コイルバネは、伸縮方向に対して直交する方向にたわみやすいため、加圧部材4をコイルバネとした場合、半導体積層ユニット10の積層方向Xに対して直交する方向に振動しやすい。そこで、振動規制手段34を設けることにより、半導体積層ユニット10の振動を効果的に防止することができる。
【0044】
以上のごとく、本例によれば、加圧部材4による半導体積層ユニット10への加圧力の伝達を阻害することなく、半導体積層ユニット10の積層方向Xと直交する方向のフレーム21に対する半導体積層ユニット10の振動を抑制することができる電力変換装置1を提供することができる。
【0045】
(実施例2)
本例は、図1及び図2に示した実施例1の電力変換装置において、振動規制手段34を低摩擦部材に変更した例である。本例においては、振動規制手段34がフレーム21及び蓋体22に対して固定されていない。すなわち、フレーム21及び蓋体22と振動規制手段34との間において摺動可能に構成されており、当接プレート3は、積層方向Xに移動することができる。
本例において、振動規制手段34には、フッ素樹脂等の低摩擦樹脂や、低摩擦コーティングを施した金属等からなる低摩擦部材を用いることが好ましい。また、フレーム21の底部211上面及び蓋体22の下面には、低摩擦コーティング等の低摩擦処理を施すことが好ましい。この場合には、振動規制手段34とフレーム21及び蓋体22との間の摺動性を向上し、当接プレート3を滑らかに移動させることができる。
その他の構成は実施例1と同様である。
【0046】
本例の電力変換装置1においては、振動規制手段34が、フレーム21及び蓋体22に対して、積層方向Xに摺動可能に配設されている。そのため、加圧部材4により生じる積層方向Xの加圧力を半導体積層ユニット10に一層効率よく伝達しつつ、積層方向Xに直交する方向における振動を抑制することができる。
また、実施例1と同様の作用効果を得ることができる。
【0047】
(実施例3)
本例は、図4及び図5に示すごとく、振動規制手段34を当接プレート3により構成した例である。
図4に示す当接プレート3は、その庇部32をフレーム21の蓋体22に当接し、脚板部33をフレーム21の底部211に当接させてある。これによって、当接プレート3自体が、当接プレート3の高さ方向Zの振動を規制する振動規制手段34を構成している。
【0048】
本例において、当接プレート3とフレーム21及び蓋体22との当接面には、低摩擦コーティング等の低摩擦処理を施してあることが好ましい。この場合には、振動規制手段34とフレーム21及び蓋体22との間の摺動性を向上し、当接プレート3を滑らかに移動させることができる。
【0049】
また、図5に示すごとく、当接プレート3において庇部32と脚板部33とを形成することなく、当接板部31により構成することもできる。この場合には、当接板部31の上端を蓋体22に当接し、当接板部31の下端をフレーム21の底部211に当接させてある。
その他の構成は、実施例1と同様である。
本例においては、実施例2と同様の作用効果を得ることができる。
【0050】
(実施例4)
本例は、図6に示すごとく、当接プレート3の庇部32に振動規制手段34としての弾性部材を設け、当接プレート3の脚板部33は、フレーム21と接触させてある。
本例において、振動規制手段34は、庇部32及び蓋体22に対して接着固定してある。
その他の構成は実施例1と同様である。
本例においても、実施例1と同様の作用効果を得ることができる。
【0051】
(実施例5)
本例は、図7及び図8に示すごとく、当接プレート3の庇部32を前方に向かって延長すると共に、衝立部35とを設けた例である。
衝立部35は、庇部32から加圧部材4と反対側に立設されると共に、振動規制手段34と半導体積層ユニット10との間に設けてある。
本例において、庇部32と衝立部35は、図7に示すごとく、平板状の当接板部31に、庇部32と衝立部35により形成された略L字断面の接合部材351を接合して形成してもよい。また、図8に示すごとく、曲げ加工によって、庇部32及び衝立部35を形成してもよい。
振動規制手段34は、庇部32に接着固定されていると共に、蓋体22に対して摺動可能に配置されている。
その他の構成は実施例1と同様である。
【0052】
本例の電力変換装置1においては、当接プレート3が庇部32を備えているため、加圧部材4への異物の付着を防止することができる。したがって、振動規制手段34と蓋体22とが摺動することによって摩耗粉等の異物が生じたとしても、加圧部材4への異物の付着を効果的に防止することができる。
【0053】
また、当接プレート3は、庇部321から加圧部材4と反対側に立設されると共に、振動規制手段34と半導体積層ユニット10との間に配置された衝立部35を有している。そのため、振動規制手段34から生じた異物が、半導体積層ユニット10に付着することを防ぐことができる。これにより、半導体積層ユニット10と、該半導体積層ユニット10における電気接点等に異物が付着することによる導通不良や絶縁不良等の不具合を防止できる。
本例においても、実施例1と同様の作用効果を得ることができる。
尚、振動規制手段34を蓋体34に固定し、振動規制手段34と庇部32との間において摺動させることもできる。
【0054】
(実施例6)
本例は、図9に示すごとく、当接プレート3の庇部32における上面に振動規制手段34を設け、当接プレート3の下端をフレーム21から離して配置した例である。本例において、振動規制手段34は弾性部材からなり、振動規制手段34は庇部32及び蓋体22の両方に固定してある。また、振動規制手段34を、脚板部33に設けて、脚板部33とフレーム21の底部211との両方に固定し、当接プレート3の上端を蓋体22から離して形成してもよい。
その他の構成は実施例1と同様である。
本例においても、実施例1と同様の作用効果を得ることができる。
【0055】
(実施例7)
本例は、図10及び図11に示すごとく、振動規制手段34と当接プレート3との間に、レール部材343を介在させた例である。
振動規制手段34は、蓋体22の下面に固定してある。また、レール部材343は、庇部32の上面に固定されており、振動規制手段34を積層方向Xに摺動可能に保持している。レール部材343は、積層方向Xに互いに平行に形成された一対のレール壁部344と、該一対のレール壁部344の下端同士を繋ぐレール底部345とからなる。振動規制手段34は、レール部材343におけるレール底部345と一対のレール壁部344の間に摺動可能に保持されている。
また、レール部材343と、振動規制手段34とは、互いの間の摩擦抵抗を小さくするよう構成してあることが好ましい。
その他の構成は実施例1と同様である。
【0056】
振動規制手段34は、レール部材343によって、積層方向Xに直交すると共に互いに直交する二方向(横方向Y及び高さ方向Z)の当接プレート3の振動を規制されている。そのため、半導体積層ユニット10における積層方向Xと直交するあらゆる方向の振動を効果的に防止することができる。
また、実施例2と同様の作用効果を得ることができる。
【0057】
また、加圧部材4は、コイルバネに限らず、板バネ等のバネ部材や、他の弾性体等、種々の部材を用いることができる。
【符号の説明】
【0058】
1 電力変換装置
10 半導体積層ユニット
11 半導体モジュール
120 冷却管
21 フレーム
3 当接プレート
31 当接板部
34 振動規制手段
4 加圧部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力変換回路の一部を構成する複数の半導体モジュールと、該複数の半導体モジュールを両主面から冷却する複数の冷却管とを積層してなる半導体積層ユニットと、
該半導体積層ユニットにおける上記積層方向の一端側に配置され、該半導体積層ユニットを上記積層方向に加圧する加圧部材と、
該加圧部材と上記半導体積層ユニットとの間に介在すると共に該半導体積層ユニットに対して面接触した当接プレートと、
上記半導体積層ユニットと上記加圧部材と上記当接プレートとを内側に配設したフレームと、
該フレームに対する上記当接プレートの上記積層方向の移動を許容しつつ、上記当接プレートの上記積層方向に直交する方向の振動を規制する振動規制手段とを有することを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電力変換装置において、上記振動規制手段は、上記フレームと上記当接プレートとの間に直接的又は間接的に介在された弾性部材からなることを特徴とする電力変換装置。
【請求項3】
請求項2に記載の電力変換装置において、上記振動規制手段は、上記フレーム及び上記当接プレートに直接的又は間接的に固定されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の電力変換装置において、上記振動規制手段は、上記フレームもしくはこれに固定された固定部材と、上記当接プレートもしくはこれに固定された固定部材との間において、上記積層方向に摺動可能に配設されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の電力変換装置において、上記当接プレートは、上記半導体積層ユニットに当接する当接面を構成する当接板部と、該当接板部から上記積層方向に上記加圧部材へ延設された庇部とを備え、該庇部における上記加圧部材と反対側の面に上記振動規制手段が配設されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項6】
請求項5に記載の電力変換装置において、上記当接プレートは、上記庇部から上記加圧部材と反対側に立設されると共に、上記振動規制手段と上記半導体積層ユニットとの間に配置された衝立部を有することを特徴とする電力変換装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の電力変換装置において、上記加圧部材は、コイルバネからなることを特徴とする電力変換装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の電力変換装置において、上記振動規制手段は、上記積層方向に直交すると共に互いに直交する二方向の上記当接プレートの振動を規制するよう構成されていることを特徴とする電力変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−210098(P2012−210098A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−74697(P2011−74697)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】