説明

電動巻上下装置用電源装置

【課題】蓄電デバイスの容量を大きくすることなく、自己発熱による容量の減少を抑え、且つ蓄電デバイスの寿命の短縮を防止又は抑制できる電動巻上下装置用電源装置を提供すること。
【解決手段】直流回路12の電圧が所定電圧値V0に達したら、制動用開閉素子19を閉じて直流回路12から回生電力電流を制動用抵抗器20に通電して消費するように構成した電動巻上下装置用電源装置であって、直流回路12に開閉素子Aを介して接続した蓄電デバイス17と、昇降用電動機15の回生時に開閉素子Aを閉じて回生電力を直流回路12から蓄電デバイス17に蓄電し、昇降用電動機15の力行運転時に蓄電デバイス17の蓄電電力を直流回路12及びインバータ14を介して昇降用電動機15に供給する充放電制御手段とを備え、充放電制御手段は蓄電デバイスの温度が所定設定温度値に達した場合に、開閉素子Aを開いて蓄電デバイス17の充放電を停止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電動チェーンブロックや電動ホイスト等の電動巻上下装置用電源装置に関し、特に昇降用電動機、横行用電動機、走行用電動機の回生時に発生する回生電力を効率よく電気二重層キャパシタやリチュウムイオンキャパシタ等の蓄電デバイスに蓄電し、力行時にこの蓄電した電力を昇降用電動機、横行用電動機、走行用電動機に供給する省エネルギー型の電動巻上下装置用電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図1はこの種の電動巻上下装置用電源装置のシステム構成例を示す図である。図示するように、電動巻上下装置用電源装置は、整流器101、平滑コンデンサ103を備えた直流回路102、インバータ104を備えている。そして交流電源(ここでは3相交流電源)106からの交流を整流器101で直流に変換し、直流回路102からインバータ104に供給し、該インバータ104で所定周波数の交流に変換して昇降用電動機105に供給するように構成されている。
【0003】
直流回路102には、開閉素子107を介して電気二重層キャパシタ等の蓄電デバイス108が接続されている。交流電源106が投入されると、制御部109は、蓄電デバイス108の蓄電電圧値VCと電源電圧値VIを比較し両者が等しいときには、開閉素子107を閉じる。これにより、直流回路102に蓄電デバイス108が接続され、昇降用電動機105の回生時(荷巻下げ時)の回生電力をインバータ104で直流に変換し、該変換した回生電力電流は直流回路102から蓄電デバイス108に蓄電される。また、制御部109は直流回路102の直流電圧値VDを監視し、直流回路102の直流電圧値VDが蓄電デバイス108の蓄電上限電圧となった場合、蓄電デバイス108の満充電と判断し、制動抵抗用素子(トランジスタ等)110を閉じて、回生電力を制御用抵抗器111で消費し、蓄電デバイス108の過充電を防止する。
【0004】
ここで電源電圧値VIとは、交流電源(3相交流電源)106の実効値電圧値をVACとした場合、VI=√2×VACである。なお、蓄電デバイス108の初期充電(初期蓄電)或いは蓄電電圧が低いときは、過大な充電電流を抑制するため、開閉素子117を開き、開閉素子112を閉じて、充電用抵抗器113を通して蓄電デバイス108を充電(蓄電)する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−238515号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記電動巻上下装置用電源装置において、電気二重層キャパシタやリチュウムイオンキャパシタ等の蓄電デバイス108は充放電を繰り返すことにより自己発熱する。図2は電気二重層キャパシタの熱特性を示す図である。図2において、曲線A、B、C、Dはそれぞれ稼働率KがK=0.88、0.5、0.2、0.1の場合の電流(A)による温度上昇ΔT(℃)を示す。ここで稼動率Kは、K=充放電時間/周期である。図示するように稼働率Kが大きい程、自己発熱が多く温度上昇率が大きくなる。
【0007】
また、電気二重層キャパシタの寿命は、ある電圧、温度範囲では式(1)で算出できる。
1=L0(V1/V0-n×2{(T0-T1)/m}
ここで、L0は基準電圧値V0、基準温度T0での寿命、V1は印加電圧値を示し、mは温度加速係数でm=7〜8℃、nは電圧化速度係数でn=9〜18である。
上記式(1)で示されるように、電気二重層キャパシタの寿命L1は、印加電圧値V1と温度T1の影響を受ける。
【0008】
上記のように電気二重層キャパシタは、充放電を繰り返すことにより自己発熱する特性を有し、この自己発熱を含む周囲温度の上昇により容量が減少する。一般的に電気二重層キャパシタの場合、使用温度が10℃上昇すると容量減少による寿命が1/2となる。この対策として容量の減少を見込んで、大きい容量の電気二重層キャパシタを用いることも考えられるが、寸法が大きくなり、大型化すると共に、コスト高となる。また、稼働率K(K=充放電時間/周期)を小さくする方法も考えられるが回生電力の有効利用、即ち省エネルギーの点から好ましくない。
【0009】
本発明は上述の点に鑑みてなされたもので、蓄電デバイスの容量を大きくすることなく、自己発熱を含む温度上昇による容量の減少を抑え、且つ蓄電デバイスの寿命の短縮を防止又は抑制できる電動巻上下装置用電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明は、整流器と、直流回路と、インバータとを備え、交流電源からの交流を整流器で直流に変換し直流回路を介してインバータに供給し、該インバータで交流に変換して昇降用電動機に供給すると共に、該昇降用電動機の回生時に発生する回生電力をインバータにより直流に変換して直流回路に供給し、該回生電力により直流回路電圧が所定電圧値V0に達したら、制動用開閉素子を閉じて直流回路から回生電力電流を制動用抵抗器に通電して消費するように構成した電動巻上下装置用電源装置であって、直流回路に開閉素子を介して接続した蓄電デバイスと、昇降用電動機の回生時に開閉素子を閉じて回生電力を直流回路から蓄電デバイスに蓄電し、昇降用電動機の力行運転時に蓄電デバイスの蓄電電力を直流回路及びインバータを介して該昇降用電動機に供給する充放電制御手段とを備え、充放電制御手段は蓄電デバイスの温度が所定設定温度値に達した場合に、開閉素子を開いて蓄電デバイスの充放電を停止することを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、上記電動巻上下装置用電源装置において、蓄電デバイスの温度を検出する温度センサを備え、充放電制御手段は温度センサの検出温度が所定設定温度値に達した場合に、開閉素子を開くことを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、上記電動巻上下装置用電源装置において、充放電制御手段は、蓄電デバイスの蓄電電流及び電圧に基づいて該蓄電デバイスの温度を算出する機能を備え、該算出した温度が所定設定温度値に達した場合に、開閉素子を開くことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、蓄電デバイスの温度が所定設定温度値に達した場合に、開閉素子を開いて蓄電デバイスの充放電を停止するので、所定設定温度値を蓄電デバイスの実用上の寿命及び容量減少に影響を与えない上限値に設定することにより、開閉素子を開いた後は蓄電デバイスの自己発熱は停止し、それ以上蓄電デバイスの温度が上昇しないから、蓄電デバイスの容量の減少を防止し、蓄電デバイスの稼働率を維持した上で、蓄電デバイスの短寿命化を防止できる。また、容量の減少を見越して大きい容量の蓄電デバイスを設置する必要がないことから、コストも高くならない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】従来の電動巻上下装置用電源装置のシステム構成例を示すブロック図である。
【図2】電気二重層キャパシタの温度上昇特性例を示す図である。
【図3】本発明に係る電動巻上下装置用電源装置のシステム構成例を示すブロック図である。
【図4】本発明に係る電動巻上下装置用電源装置の動作処理フローを示す図である。
【図5】本発明に係る電動巻上下装置用電源装置の他のシステム構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基いて詳細に説明する。図3は本発明に係る電動巻上下装置用電源装置のシステム構成例を示すブロック図である。図示するように、本電動巻上下装置用電源装置10は、整流器11、平滑コンデンサ13を具備する直流回路12、インバータ14、及び制御部21を備えている。直流回路12には開閉素子A(開閉素子Aの接点)を介して蓄電デバイス17が接続され、更に直流回路12には制動用開閉素子(トランジスタ等)19を介して制動用抵抗器20が接続されている。また、開閉素子A(開閉素子Aの接点)の両端には開閉素子B(開閉素子Bの接点)と充電用抵抗器18の直列回路が接続されている。
【0016】
制御部21には、蓄電デバイス17の蓄電電圧値VC、直流回路12の直流電圧値VD、直流回路12から蓄電デバイス17に供給される蓄電電流値ICが入力され、制御部21でこれらの電圧、電流値を監視できるようになっている。また、蓄電デバイス17には、温度を検出する温度センサ22が設けられ、該温度センサ22で検出した検出温度値Tも制御部21に入力されている。また、制御部21には制動用開閉素子19の駆動部(ゲート等)や開閉素子Aの動作コイルAX及び開閉素子Bの動作コイルBXが接続されている。
【0017】
また、蓄電デバイス17には、電気二重層キャパシタやリチュウムイオンキャパシタ等の蓄電できる種々の蓄電デバイスが使用できるが、ここでは、株式会社明電舎製のバイポーラ型電気二重層キャパシタを用いている。
【0018】
交流電源(ここでは200Vの三相交流電源)16の交流電力は、整流器11で直流に変換され直流回路12に供給される。直流回路12の直流電力はインバータ14に供給され所定周波数の三相交流に変換され、昇降用電動機15に供給される。これにより昇降用電動機15は昇降(巻上下げ)運転される。昇降用電動機15の回生時(荷巻下げ時)は、昇降用電動機15が発電する回生電力をインバータ14で直流に変換し、直流回路12に供給する。
【0019】
制御部21は、蓄電デバイス17の蓄電電圧値VCを監視し、該蓄電電圧値VCが所定の電圧値(ここではDC280V〜380V)である場合は、開閉素子Aの動作コイルAXに作動電流を供給し、開閉素子Aを動作させる。これにより開閉素子Aを閉じ(開閉素子Aの接点が閉じ)て上記回生電力電流を蓄電デバイス17に供給し蓄電する。昇降用電動機15の力行時(巻上げ時)は蓄電デバイス17に蓄電された電力を直流回路12を介してインバータ14に供給し、該インバータ14にて所定周波数の交流に変換し、昇降用電動機15に供給する。蓄電デバイス17の蓄電電圧値VCが設定上限値(ここでは380V)を超えた場合、制御部21は、制動用開閉素子19を閉じ(ON)て、直流回路12に供給された回生電力電流を制動用抵抗器20に通電して消費し、蓄電デバイス17の過充電を防止する。
【0020】
また、制御部21は上記蓄電デバイス17の充放電動作中に、温度センサ22で検出した蓄電デバイス17の温度値が所定の上限設定温度値になったら、開閉素子A及び開閉素子Bの動作コイルAX及び動作コイルBXに供給している作動電流を遮断して、開閉素子A及び開閉素子Bを不動作としその接点を開(OFF)とする。これにより、直流回路12と蓄電デバイス17は切り離され、蓄電デバイス17の充放電は停止する。この充放電停止中にインバータ14を介して直流に変換された昇降用電動機15の回生電力により、直流回路12の直流電圧値VDが所定電圧値に達したら、制御部21は制動用開閉素子19を閉じ(ON)として回生電力電流を制動用抵抗器20に通電し消費する。上記蓄電デバイス17の充電・充放電停止により、該蓄電デバイス17の自己発熱は停止する。温度センサ22の検出温度が上記上限設定温度値以下の所定の温度になったら、制御部21は開閉素子Aの動作コイルAXに作動電流を通電し、該開閉素子Aの接点を閉じ(ON)て、充放電を開始する。
【0021】
上記例では、蓄電デバイス17に温度センサ22を設け、制御部21で蓄電デバイス17の温度を監視し、該温度が上限設定温度に達したら、開閉素子A及び開閉素子Bを不動作としそれぞれの接点を開(OFF)き、充放電を停止している。しかしながら、蓄電デバイス17の温度は直流回路12から蓄電デバイス17への供給電流値(蓄電電流値)IC、蓄電電圧値VC、稼働率K(K=充放電時間/周期)により推定できるから、制御部21は蓄電電流値IC、蓄電電圧値VC、稼働率Kを監視し、蓄電デバイス17の推定温度値が上記上限設定温度値に達したら、開閉素子Aを開き(OFF)、充放電を停止してもよい。この場合は充放電を停止してから、蓄電デバイス17の温度が上記上限設定温度値以下の所定の温度になったと推定される時間が経過したら、再び開閉素子Aを閉じて、蓄電デバイス17の充放電を開始する。
【0022】
図4は上記制御部21の動作処理フローを示す図である。ステップST1で交流電源16を投入する。続いてステップST2では、開閉素子Aの動作コイルAX及び開閉素子Bの動作コイルBXの作動電流を遮断して、該開閉素子A及び開閉素子Bの接点を開(OFF)とする。続いてステップST3では蓄電デバイス17の蓄電電圧値VCが直流回路12の直流電圧値VDより小さいかを判断し、イエス(Y)の場合はステップST4に移行し、ノー(N)の場合はステップST5に移行する。ステップST4では開閉素子Aの動作コイルAXの作動電流を遮断してその接点を開(OFF)とすると共に、開閉素子Bの動作コイルBXに作動電流を通電してその接点を閉(ON)とし、初期充電を行う。
【0023】
ステップST5では開閉素子Aの動作コイルAXに作動電流を通電してその接点を閉(ON)とすると共に、開閉素子Bの動作コイルBXの作動電流を遮断してその接点を開(OFF)とし、運転開始(蓄電デバイス17への充放電を開始)する。即ち、昇降用電動機15の回生時の回生電力をインバータ14で直流に変換し、直流回路12を経て蓄電デバイス17に充電し、力行時は蓄電デバイス17の蓄電電力は直流回路12を経てインバータ14に供給され、所定周波数の交流に変換して昇降用電動機15に供給する。
【0024】
ステップST6では、蓄電デバイス17の温度が上限値(上限設定値)を超えたか否かを判断し、イエス(Y)であったらステップST7に移行し、ノー(N)であったらステップST8に移行する。ステップST7では開閉素子Aの動作コイルAXの作動電流を遮断して開(OFF)とすると共に、開閉素子Bの動作コイルBXの作動電流を遮断してその接点を開(OFF)とする。これにより蓄電デバイス17への初期充電及び充放電を停止する。ステップST8では開閉素子Aの動作コイルAXに作動電流を通電してその接点を閉(ON)とすると共に、開閉素子Bの動作コイルBXの作動電流を遮断して開(OFF)して、蓄電デバイス17の充放電を行う。
【0025】
続く、ステップST9では、直流回路12の直流電圧値VDが所定電圧値(ここでは380V)以上であるか否かを判断し、イエス(Y)であったらステップST10に移行し、ノー(N)であったらステップST11に移行する。ステップST10では制動用開閉素子19を閉(ON)とし、直流回路12に供給された回生電力電流を制動用抵抗器20に通電して消費する。ステップST11では制動用開閉素子19を開(OFF)とし、直流回路12に供給された回生電力電流を蓄電デバイス17に供給して蓄電する。
【0026】
制御部21には、例えば制御用マイクロコンピュータが実装されており、上記動作処理は該制御用マイクロコンピュータで、動作処理プログラムを実行することにより行う。
【0027】
図5は本発明に係る電動巻上下装置用電源装置の他の構成例を示すブロック図である。本電動巻上下装置用電源装置が図3に示す電動巻上下装置用電源装置と相違する点は、本電動巻上下装置用電源装置では、インバータ(INV)基本制御部31を備えた汎用インバータ制御装置30を使用し、該汎用インバータ制御装置30を制御部21で制御する構成を採用している。汎用インバータ制御装置30のインバータ基本制御部31に、図3の制御部21が接続されている。制御部21には、蓄電デバイス17の蓄電電圧値VC、直流回路12の直流電圧値VD、直流回路12から蓄電デバイス17に供給される蓄電電流値ICが入力され、制御部21でこれらの電圧、電流値を監視できるようになっている。また、制御部21には温度センサ22で検出した蓄電デバイス17の検出温度値Tが入力されている。インバータ基本制御部31には直流回路12の直流電圧値VDが入力され、更に開閉素子Aの動作コイルAX及び開閉素子Bの動作コイルBXが接続されている。
【0028】
制御部21は、蓄電デバイス17の蓄電電圧値VCを監視し、該蓄電電圧値VCが所定の電圧値(ここではDC280V〜380V)である場合は、開閉素子Aを閉じる信号をインバータ基本制御部31に送る。インバータ基本制御部31はこの信号を受けて、開閉素子Aの動作コイルAXに作動電流を供給し、開閉素子Aを動作させその接点を閉(ON)とする。これにより昇降用電動機15の回生時(巻下げ時)の回生電力電流は直流回路12から蓄電デバイス17に供給され、蓄電される。昇降用電動機15の力行時(巻上時)は蓄電デバイス17に蓄電された電力を直流回路12を介してインバータ14に供給し、該インバータ14にて所定周波数の交流に変換し、昇降用電動機15に供給する。蓄電デバイス17の蓄電電圧値VCが設定上限値(ここでは380V)を超えた場合、制御部21は制動用開閉素子19を閉じ(ON)て、直流回路12に供給された回生電力電流を制動用抵抗器20に通電し消費し、蓄電デバイス17の過充電を防止する。
【0029】
また、制御部21は上記蓄電デバイス17の充放電動作中に、温度センサ22で検出した蓄電デバイスの温度値が所定の上限設定温度値になったら、開閉素子Aを開く(OFF)信号をインバータ基本制御部31に送る。インバータ基本制御部31はこの信号を受けて開閉素子Aの動作コイルAXに供給している作動電流を遮断して、開閉素子Aを不動作とし接点を開く(OFF)。これにより、直流回路12と蓄電デバイス17は切り離され、蓄電デバイス17の充放電は停止する。この充放電停止中にインバータ14を介して直流に変換された昇降用電動機15の回生電力により直流回路12の直流電圧値VDが所定電圧値に達したら、制御部21は制動用開閉素子19を閉じる信号をインバータ基本制御部31に送る。インバータ基本制御部31はその信号を受けて制動用開閉素子19を閉(ON)として回生電力電流を制動用抵抗器20に通電し消費する。上記蓄電デバイス17の充放電停止により、該蓄電デバイス17の温度が下がり、上記上限設定温度値以下の所定の温度になったら、制御部21は開閉素子Aを閉じ(ON)る信号をインバータ基本制御部31に送る。インバータ基本制御部31はこの信号を受け開閉素子Aの動作コイルAXに作動電流を通電とその接点を閉(ON)として充放電を開始する。
【0030】
上記蓄電デバイス17の温度は上記のように、該蓄電デバイス17への蓄電電流値IC、蓄電電圧値VC、稼働率K(K=充放電時間/周期)により算出し推定できる。制御部21は蓄電電流値IC、蓄電電圧値VC、稼働率Kを監視し、蓄電デバイス17の推定温度を算出し、該算出した値が上記上限設定温度値に達したら、開閉素子Aを開く信号をインバータ基本制御部31に送るようにしてもよい。インバータ基本制御部31でこの信号を受けて開閉素子Aを不動作としてその接点を開(OFF)とし、充放電を停止する。この場合も充放電を停止してから、蓄電デバイス17の温度が上記上限設定温度値以下の所定の温度になったと推定される時間が経過したら、制御部21は再び開閉素子Aを閉じる信号をインバータ基本制御部31に送る。インバータ基本制御部31は、この信号を受けて開閉素子Aを閉じて、蓄電デバイス17の充放電を開始する。
【0031】
上記のように蓄電デバイス17の温度を温度センサ22で検出し、或いは蓄電デバイス17への蓄電電流値IC、蓄電電圧値VC、稼働率K(K=充放電時間/周期)により算出し推定温度が所定の設定温度に達したら開閉素子Aを開いて蓄電デバイス17の充放電を停止するから、蓄電デバイス17が上記設定温度を超えることがない。よって、この設定温度値を、温度による蓄電デバイス17の容量の減少、及び寿命の短縮が実際の使用において、支障とならない範囲の上限値に設定することにより、電気二重層キャパシタやリチュウムイオンキャパシタ等からなる蓄電デバイスの温度による容量減少や寿命短縮を実際の使用に支障のない範囲に納めることができる。
【0032】
なお、上記実施形態例では、昇降用電動機15を備え、力行時に昇降用電動機15に電力を供給し、回生時に昇降用電動機15の回生電力を蓄電デバイス17に蓄電する電動巻上下装置用電源装置を例に説明したが、昇降用電動機15の他に、走行用電動機、横行用電動機を備え、力行時に昇降用電動機15、走行用電動機、横行用電動機に電力を供給し、回生時にこれら昇降用電動機15、走行用電動機、横行用電動機の回生電力を蓄電デバイス17に蓄電する電動巻上下装置用電源装置にも本発明は適用できる。
【0033】
以上本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。蓄電デバイスとして、上記例では電気二重層キャパシタやリチュウムイオンキャパシタを使用できるが、これに限定されるものではなく、充放電特性のよいリチウムイオン電池等も利用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、電気二重層キャパシタやリチュウムイオンキャパシタ等からなる蓄電デバイスを搭載し、昇降用電動機の回生時の回生電力を蓄電デバイスに蓄電し、昇降用電動機の力行時にこの蓄電した電力を昇降用電動機に送るようにした電動巻上下装置用電源装置において、蓄電デバイスの充放電による温度上昇を設定上限範囲に抑えることができるから、蓄電デバイスの寿命短縮防止又は抑制することができる電動巻上下装置用電源装置として利用することができる。
【符号の説明】
【0035】
10 電動巻上下装置用電源装置
11 整流器
12 直流回路
13 平滑コンデンサ
14 インバータ
15 昇降用電動機
16 交流電源
17 蓄電デバイス
18 充電用抵抗器
19 制動用開閉素子
20 制動用抵抗器
21 制御部
22 温度センサ
23 操作ボックス
30 汎用インバータ制御装置
31 インバータ(INV)基本制御部
A 開閉素子
B 開閉素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
整流器と、直流回路と、インバータとを備え、交流電源からの交流を前記整流器で直流に変換し前記直流回路を介して前記インバータに供給し、該インバータで交流に変換して昇降用電動機に供給すると共に、該昇降用電動機の回生時に発生する回生電力を前記インバータにより直流に変換して前記直流回路に供給し、該回生電力により前記直流回路電圧が所定電圧値V0に達したら、制動用開閉素子を閉じて前記直流回路から前記回生電力電流を制動用抵抗器に通電して消費するように構成した電動巻上下装置用電源装置であって、
前記直流回路に開閉素子を介して接続した蓄電デバイスと、
前記昇降用電動機の回生時に前記開閉素子を閉じて回生電力を前記直流回路から前記蓄電デバイスに蓄電し、前記昇降用電動機の力行運転時に前記蓄電デバイスの蓄電電力を前記直流回路及び前記インバータを介して該昇降用電動機に供給する充放電制御手段とを備え、
前記充放電制御手段は、前記蓄電デバイスの温度が所定設定温度値に達した場合に、前記開閉素子を開いて蓄電デバイスの充放電を停止することを特徴とする電動巻上下装置用電源装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電動巻上下装置用電源装置において、
前記蓄電デバイスの温度を検出する温度センサを備え、前記充放電制御手段は該温度センサの検出温度が前記所定設定温度値に達した場合に、前記開閉素子を開くことを特徴とする電動巻上下装置用電源装置。
【請求項3】
請求項2に記載の電動巻上下装置用電源装置において、
前記充放電制御手段は、前記蓄電デバイスの蓄電電流及び電圧に基づいて該蓄電デバイスの温度を算出する機能を備え、該算出した温度が前記所定設定温度値に達した場合に、前記開閉素子を開くことを特徴とする電動巻上下装置用電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−202399(P2010−202399A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−52631(P2009−52631)
【出願日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【出願人】(000129367)株式会社キトー (101)
【Fターム(参考)】